文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1)会社の経営の基本方針
アイシングループ経営理念
(2)目標とする経営指標
当社グループは、「アイシングループビジョン2030」において、2030年度の経営目標を営業利益率8%、ROIC(投下資本利益率)13%としています。
※ROIC(投下資本利益率):税引後営業利益÷(棚卸資産+有形固定資産+無形資産)
(3)中長期的な会社の経営戦略及び会社の対処すべき課題
自動車業界は、新型コロナウイルス感染症の収束や半導体不足の解消などにより、生産・販売ともコロナ禍前に戻りつつあります。一方でカーボンニュートラルの高まり、モビリティの電動化・知能化が進み産業構造は大きな変化の真っ只中にあります。
このような中、当社はこの変化を成長機会と捉え、培ってきた強みを生かして経営理念に掲げる「“移動”に感動を、未来に笑顔を。」を実現するために、「2030年にめざす姿」を改めて定めました。
同時に、2030年を見据えた2025年中期経営計画を策定するとともに、昨年9月「中長期事業戦略説明会」を東京で開催し、社外に公表しました。
① 2030年にめざす姿
電動化・知能化に対応するため、クルマ全体で電費に貢献できる高付加価値なBEV(バッテリーEV)商材・ブレーキ、ユーザーエクスペリエンスを高める安心快適エントリーの開発を加速します。これらの製品を成長領域と位置づけ、事業ポートフォリオの変革を推進し、2030年には5.5~6兆円水準の売上収益を目指していきます。また成長領域への投資拡大のために、グループ全体での収益体質強化・保有資産の圧縮やリスキリングによりヒト・モノ・カネのリソーセスシフトを行います。
② 2030年を見据えた2025年中期経営計画
2025年の中期経営目標は、「事業ポートフォリオの入れ替え」「既存製品の収益性向上」「成長領域のリソーセスシフト」とパワートレインユニット販売台数の増加等により、売上収益5兆円、営業利益3,000億円以上、営業利益率6%以上、ROIC10%以上としました。また、持続的な成長と中長期的な企業価値向上の実現に向けて、成長領域での事業拡大と資本効率の向上をはかり、PBR1倍超の早期実現を目指します。
当社グループは、「“移動”に感動を、未来に笑顔を。」の経営理念に基づき、私たちの商品・サービスによって、環境・社会課題に具体解を示し、人々の笑顔あふれる持続的な社会をつくっていきたいと考えています。このような価値観は、国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」と親和性が高く、事業活動を通じてSDGsの達成に貢献できると考えています。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1)全般的な考え方及び取組
① ガバナンス
当社グループは社長執行役員を議長とするサステナビリティ会議を年2回開催し、サステナビリティに関する活動の方向性を議論・決定すると共に、マテリアリティに基づくSDGs2030年度目標に向けた活動の進捗管理を行っています。また、その内容については、取締役会に付議・報告を行っており、2023年度の取締役会では、チャレンジ促進に向けた人事制度・施策や、物流の2024年問題を踏まえた物流改革の取り組みなどについて議論しました。なお、サステナビリティ会議で決定した方針に基づき、各委員会等で目標達成に向けた活動を推進しています。
② 戦略
優先課題(マテリアリティ)の選定プロセス
当社グループでは、以下のプロセスで2019年度にマテリアリティを選定しています。ステークホルダーからの期待・要望、当社グループにとっての重要性の2軸から評価し、優先順位付けを行っています。
Step1.SDGsの17の目標と169のターゲットを軸に、事業及びサプライチェーンと関連性がある項目を抽出し課題を特定
Step2.ステークホルダーの期待・要望、アイシングループにとっての重要性から優先順位付けを行いマテリアリティマトリクスを作成
Step3.社外有識者及び社外役員との対話を通じ、妥当性を確認
Step4.「事業活動を通じた社会課題の解決」と「活動を支える経営基盤」の2軸で優先課題を特定し、取締役会で承認
③ リスク管理
④ 指標及び目標
取締役会から承認を得た優先課題(マテリアリティ)に対し、KPIと2030年度目標を設定し、具体的な活動計画へ落とし込むとともに取り組みを推進しています。
優先課題(マテリアリティ)とKPI・2030年度目標
自動車業界では、カーボンニュートラル、電動化、知能化の流れが一層加速しており、産業構造が大きく変わりつつあります。当社グループはこの変化を機会と捉え、電動化・知能化など成長領域の開発を加速しています。このような中、気候変動と人的資本は中長期的な企業価値に影響を与える重要なサステナビリティ課題と認識し取り組んでいます。詳細は各項目をご参照ください。
(2)気候変動への対応(TCFD提言への取り組み)
当社グループは、2019年11月にTCFD(気候関連財務情報タスクフォース)へ賛同し、TCFDの提言に基づきシナリオ分析を実施しています。気候変動がもたらす事業活動へのリスクと機会を明確にしてその対応を経営戦略に盛り込むとともに、関連情報を開示しています。
① ガバナンス
気候変動への対応を重要な経営戦略と位置付け、「地球温暖化防止への取り組み」を優先課題(マテリアリティ)に選定しています。「サステナビリティ会議」、「環境委員会」、「カーボンニュートラル推進会議」で議論した内容を取締役会に付議・報告し、必要に応じて事業戦略・計画を修正しています。
② 戦略
カーボンニュートラルを喫緊のグローバル課題として捉え、「生産」と「製品」の両軸で2050年カーボンニュートラルの実現を目指しています。生産面では、徹底した省エネ活動や革新生産技術開発によるエネルギー使用量削減、再生可能エネルギーや新エネルギーなどのクリーンエネルギーの導入・切替を実施します。
製品面では、電動車向け製品の更なる進化、エネルギーと資源の循環システムの普及を進め、モビリティ・エネルギー技術融合による新価値創出を目指します。
また、TCFD提言が推奨する定義を踏まえた気候変動に伴う移行・物理的リスク、機会を分析し、定期的に対応を決定しています。
<気候変動のリスクと機会、当社グループの対応>
区分 |
リスク/機会 の種類 |
影響段階 |
当社グループへの影響 |
時間的視点 短・中・長 |
財務影響 大・中・小 |
対応 |
移行 リスク |
市場 |
調達 |
低炭素原材料の需要が高まり必要な原材料の価格高騰による調達コストの増加 |
中 |
大 |
・製品設計時点での軽量化や材料置換による使用原材料の削減 ・サーキュラーエコノミーの推進による購入原材料の削減 |
新たな規制 |
直接操業 |
炭素税や再生可能エネルギー導入などの政策によるコストの増加 |
中 |
大 |
・エネルギー使用ミニマム化に向けた省エネ活動の推進 ・地域ごとの特徴を活かした再生可能エネルギーの導入 |
|
製品需要 |
電動化の推進で電動車向け製品需要が拡大する一方、ガソリン車向け製品需要が減少 |
中 |
大 |
・2030年までにパワートレインユニット販売台数の電動化率増加を見据えて製品構成を電動車向けへシフト ・高効率&小型化の電動ユニット、回生協調ブレーキ、熱マネジメントシステムや空力デバイスなど、幅広い製品によるモビリティの電動化とエネルギーソリューションでカーボンニュートラルへ貢献する製品の拡販を強化 |
||
物理的 リスク |
緊急性 |
直接操業 |
気象災害(大雨、台風、洪水など)の発生頻度増加や激甚化による被災時のサプライチェーン寸断の発生や一時的操業の停止 |
短 |
中 |
・異常気象発生時における行動基準及びルールの策定 ・調達物流のBCP高度化 ・リスクのある拠点を抽出して定期的にモニタリング ・浸水対策計画の策定、実施 |
事業機会 |
製品需要 |
製品・ サービス |
電動化の推進による電動車向け製品の需要拡大 |
中 |
大 |
・高効率&小型化により電費向上した電動ユニットのスピーディな市場投入 ・車種別ユニット共通化、材料使用量低減によるコスト低減 ・回生協調ブレーキシステム進化による電動車の航続距離向上 ・関連製品の生産能力拡大 |
CO₂削減に寄与する製品・サービスへの需要拡大に伴う新規事業創出 |
中 |
中 |
・ペロブスカイト型太陽電池の市場投入・シェア確保 ・ヤシ殻由来のバイオ成型炭の販売 ・CO₂を炭酸カルシウムとして固定化する技術の事業化 |
|||
省エネルギーかつ低炭素排出の製品需要の拡大 |
中 |
中 |
・高効率で安定したエネルギー供給や、停電時の自立発電機能によるレジリエンス向上に貢献する家庭用燃料電池コジェネ「エネファーム(SOFC)」のさらなる高効率化と拡販 ・自治体と協業で脱炭素事業を推進し、街づくりへ貢献 |
(注) <時間的視点> 短:~2025年度、中:~2030年度、長:~2050年度
<財務影響> 大:事業が停止、又は大幅な縮小・拡大の影響が想定される
中:事業の一部への影響が想定される
※財務影響小は開示対象から除外
③ リスク管理
当社グループに影響を与えるリスクはリスクマネジメント委員会で特定・抽出されます。その中でも最重点に位置づけられた気候変動リスクは、環境委員会等において定期的にモニタリング・管理しています。また、各国の法規制、ステークホルダーとの対話、CDPなどの外部評価、顧客動向を受け、対応策の検討・見直しを実施しています。
④ 指標と目標
<2030年度目標>
・生産CO₂排出量(スコープ1,2):2013年度比50%以上削減
・ライフサイクルCO₂排出量(スコープ1,2,3):2019年度比25%以上削減
<2035年度目標>
・生産CO₂排出量(スコープ1,2):カーボンニュートラル
<2050年度目標>
・ライフサイクルCO₂排出量(スコープ1,2,3):カーボンニュートラル
<指標>(2022年度実績※)
・生産CO₂排出量(スコープ1,2):227.9万t-CO₂(2013年度比18%削減)
・ライフサイクルCO₂排出量(スコープ1,2,3):1,683.0万t-CO₂(2019年度比6%削減)
※2023年度実績は、第三者検証後に当社サステナビリティサイト
(https://www.aisin.com/jp/sustainability/)にて公開予定
(3)人的資本
当社グループでは、働く仲間一人ひとりが主役であり、働く仲間こそが強みであるとの考えから、経営理念の提供価値の最初に「働く仲間」を位置づけています。目指す人材マネジメントの実践を通じて、新たな価値を創出し、働く仲間へ働きがいと人生の幸せを提供します。
目指す人材マネジメント
その中で、現在の重点課題は、経営基盤の強化と成長領域の拡大を実現するために、これまで培ったアイシンらしさを活かしながら、価値提案型で機敏に最適対応できる人・組織へ変革することです。
目指す姿を“グループ・グローバル連結でチャレンジ推進&どこよりも人が育ち、全員が活躍”している状態と整理し、目指す姿と現状のギャップを埋める取り組みとして“①プロ人材の活躍・成長”“②チャレンジの促進”“③グループ総合力の強化”を特定しました。
また、すべての活動のベースとして、職場の風通し向上を推進しています。「フルモデルチェンジのために一番重要なのが、まず人材、そして職場風土」という社長自らのメッセージのもと、労使トップの対話の場である労使懇談会では組織間や職場内の風通しにおける課題を重点に据えて話し合いをしています。部・工場単位でも、労使懇談会を毎月開催するなど、各階層での本音の対話を進めています。
事業戦略を踏まえた目指す姿と重点取り組み
① プロ人材の活躍・成長
新たな価値を生み出していく会社に変容するためには、社会・お客様目線で大きく課題創造し、全体最適で自発的に行動できる多様なプロの全員活躍が必須です。当社ではこの目指す人材像を“プロ人材”と定義し、その基盤能力を整理して活躍と成長に向けた諸施策を推進しています。
プロ人材の育成と活躍を目指した人事制度づくりについては、先だって管理職層の人事制度改定から着手しています。制度改定のコンセプトを①加点主義、②時価主義、③流動性・外向きの加速と見定め、2023年度下期から、評価・昇格・報酬の制度改定を実施しました。よりプロ人材としての能力発揮を意識した業務遂行を促すことで、個々の能力伸長と全員活躍を図っています。
・社会環境・顧客ニーズの変化を捉える
社外者との社会課題解決の取り組みを通じて、社内での経験だけでは気付きにくい新たな価値観の構築を目的として実施している「越境学習プログラム」では、前年度参加者30人に対し、2023年度の参加者は155人と、大幅に制度を拡充しています。参加者本人や職場上司からは、参加によって得た気づき・学びが意識の変容に結び付きつつあるとの実感の声が増えており、今後はより一層の行動変容を期待しています。
・人間力を高める
周囲の共感を引き出し、チームの成果を最大化するために必要な要素である人間力向上の取り組みとして、「志」醸成研修を2023年度より実施しています。管理職層40名を対象とし、それぞれが自分らしさ・アイシンらしさに謙虚に向き合い、外部知見も踏まえながら深く考える場をつくることで、リーダーとして何を成し遂げるのか?誰にどんな価値を提供したいのか?といった「自らの志」を再整理し、行動変容に繋げることを目指した研修を実施しています。
② チャレンジの促進
会社・組織が「正解のない時代において、あるべき姿を描き一歩ずつ変化していく」=チャレンジを生み出すため、「チャレンジする人・職場づくり」をキーワードに風土そのものの変革に取り組んでいます。
・個々の働きがいを高める
管理職層に関しては、管理職層ポストがそれぞれ担う“役割の大きさ”と、個人の発揮能力を関連付けた配置により、役割認識をより深め、役割遂行と能力発揮の最大化をはかる仕組みへと制度を刷新しました。個人ごとに現在の職責・成果にしっかりと報いることで、より一層のチャレンジを促進しています。
評価運用についても、上司・部下の面談等を通して個人の夢・志と組織の課題のすり合わせを徹底するよう運用を見直し、その制度理解・浸透に向けた周知活動を継続すると共に、評価面談の実施状況を労使双方で確認し、好事例の周知展開や課題のある職場の個別支援をしています。
また、職場ごとでもチャレンジを称賛する取り組みをしており、一例を挙げると、営業機能ではチーム・個人単位のチャレンジを表彰する制度を実施しています。お客様との窓口業務以外にも納入管理や売上管理など業務内容が多岐に渡る中で、受注活動のみならず、革新性、業務の高度化・効率化、組織力強化を表彰対象とし、すべての営業パーソンのチャレンジを促進しています。
このような職場ごとの活動を加速するため、情報発信・相互研鑽の場として、全部長の出席するマネジメント研究会を開催するなど、職場課題や取り組み事例の共有に積極的に取り組んでいます。
指標 |
実績 (2022年度) |
実績 (2023年度) |
目標 ( |
働きがい (社員意識調査より) |
3.4ポイント |
|
|
(注1)指標は5段階評価。働きがいは「仕事の充実感」、「仕事の適応感」の設問で測定しています。
(注2)次年度以降、連結グループ共通の指標を設定する計画のため、2023年度時点で共通の指標で管理をしている当社グループの主要会社4社(当社、アイシン高丘、アイシン化工、アドヴィックス)の数値を基に算出しています。
③ グループ総合力の強化
グローバル化が進む事業戦略の実現に向けて、当社が持つグローバルな事業基盤を最大限活用するため、組織横断視点で機敏に組織を最適化し、多様な人材の価値観を最大活用するグループ総合力の強化を目指しています。
・経営人材の計画的な育成・確保
候補人材を経営幹部が直接発掘し、選抜人材に対して経営上影響度の大きい重要テーマや国内・海外ポストの任用を積極的に行っています。また、自身の価値観を磨き上げ、より高い人間力・視座を得るため、専門家からのコーチング、経営知識の習得、他流試合などを、一人ひとりの特性を考慮して個別に実施しています。
グローバルで多様化するニーズに対応した魅力ある製品・サービスを提供するため、海外拠点についてはグローバル共通指標でポストの見える化を行う「AG2(アイシングローバルグレーディング)」を用いて重要ポストを特定し、サクセッションプランの策定、経営人材としての教育実施など、計画的な人材開発を通じてローカル人材の登用と現地の自立化を推進しています。
・多様な人材の価値を最大化する組織づくり
当社では、ダイバーシティ&インクルージョンの実現を会社の変革や新しい価値創造を実現させる最重点と捉え、役員全員が自身の行動宣言を行い、社長自らが先頭に立ってメッセージを発信しながら活動を牽引しています。
2014年から活動を始めた、現場の声を吸い上げて施策に反映していくプロジェクト「きらり」を通じて多くの施策が誕生しています。例えば「イクボス塾」は、ダイバーシティマネジメントを含めた部下との対話の大切さを学ぶ場として生み出され、現在は階層別教育にその要素を取り入れています。その他にも、「休職中のキャリア意識啓発」、「キャリアメンター制度」などに継続して取り組んでいます。
技能系職場においては、性別・体格・年齢等に関わらず「誰もが」働きやすく活躍できる職場というコンセプトのもとにD&I環境管理基準を制定し、工程や環境整備等の活動を拡充しています。
女性管理職比率向上施策についても、女性管理職比率をサステナビリティに関する重要KPIと位置づけ、中核グループ会社の定例役員会議にて議論を行う等、全員が当事者意識を持って当社の課題に向き合っています。
こうした取り組みが評価され、自動車・輸送機企業で「なでしこ銘柄」(主催:経済産業省、東京証券取引所)に4年連続で選定されています。
指標 |
実績 (2022年度) |
実績 (2023年度) |
目標 ( |
|
2.5% |
|
|
(注) 次年度以降、連結グループ共通の指標を設定する計画であり、2023年度時点で共通の指標で管理をしている当社グループの主要会社4社(当社、アイシン高丘、アイシン化工、アドヴィックス)の数値を基に算出しています。
(1)基本的な考え方
当社グループのリスクマネジメントは、事業活動とともに企業経営のクルマの両輪であると考えています。様々な経営戦略を実行していく中で、外部環境の急激な変化により、経営に影響を与えるリスクが増加しています。そのような成長を阻害する可能性のあるリスクを把握し、コントロールすることと事業継続力強化の両面で取り組んでいきます。
① 方針
企業がその目的を達成しようとする活動に対して、重大な影響を及ぼす様々なリスクを未然防止・抑制対応し、万が一発生した場合は、経営への影響を最小化し、企業の持続性を保証することで、ステークホルダーの皆様からの期待に応えていきます。
② 目指す姿~リスクマネジメントの高度化~
当社は、1997年の刈谷工場火災において、皆様にご迷惑とご心配をおかけしました。これを機に、同じ失敗を繰り返さないようERMを導入し、全社的なリスクマネジメントに取り組んできました。近年、能登半島地震や線状降水帯の頻発など自然災害や部品供給問題、地政学・経済安全保障リスクなど経営を取り巻くリスクは複雑化・多様化しています。
このような中、「リスクマネジメントの高度化=あらゆるリスクを最小化できている状態」を目指し、2022年度からは、経営戦略に関するリスクを含め統合的に管理する新たなリスクマネジメントプロセスを導入し、経営戦略の遂行を阻害する「経営戦略リスク」と、事業の円滑な運営を阻害する「オペレーショナルリスク」の両面から、リスクの予兆を捉え、影響度を適切に分析・評価し「先手を打つ」リスクマネジメントを実践していきます。
(2)リスクマネジメントの体制と取り組み
リスクマネジメント推進体制として、社長をはじめCxO、監査役及びグループ11社の社長などが参加するリスクマネジメント委員会を設置しています。当社グループ内のリスク発生状況及び当社グループ内外の環境・動向を踏まえ、グループで取り組むべき重点リスクの審議・方向付けを行い、リスクへの対応力を強化しています。選定した各リスクについてはそれぞれに機能主管部署を定め、グループのリスク対策責任者、推進者を任命し、平時における被害の未然防止・抑制対応、有事の際の早期復旧・被害最小化に取り組んでいます。さらに、これらの対策の有効性評価、改善及び標準化を行い、リスクマネジメントサイクルを回すことでリスクに対する実効性を高めています。
また、定期的な取締役会への報告を通して、事業や戦略に関する議論に資する情報を提供するとともに、リスクマネジメントに関する監督を受けています。
リスクマネジメント体制 リスクマネジメントプロセス
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(3)重点リスクの選定
当社では年2回のサイクルで、リスクアセスメントを実施し、社内機能部署の専門的な視点、グループ会社の業務特性に基づく視点、及び海外拠点の地理的な視点から、想定されるリスクを洗い出しています。それらのリスクの影響度や発生頻度を軸とした分析結果に、これまでのリスク対策による抑制・軽減度を加味しリスクの評価を行っています。また、これら内部でのリスク評価に加えて、2021年からは外部の視点を追加し、得意先や投資家などのステークホルダーが重要視しているリスクや、グローバルリスクレポートなどの専門機関によるリスクの評価を参考に、リスクマネジメント委員会で最重点リスクと重点リスクを決定しています。
重点リスク選定フロー
(4)事業等のリスク
当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性のあるリスクのうち、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のあると考えられる主な事項を以下に記載しています。なお、以下は当社グループに関するすべてのリスクを網羅したものではなく、記載した以外にも投資家の判断に影響を及ぼす事項が発生する可能性があります。また、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものです。
① 経済状況
当社グループの連結売上収益のうち、重要な部分を占める自動車関連製品の需要は、当社グループが製品を販売している国又は地域の経済状況の影響を受けます。したがって、日本、北米、欧州、中国、タイ、インドネシア、インドなど当社グループの主要市場における経済や景気及びそれに伴う自動車需要の縮小は、当社グループの財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。
こうしたリスクに対処するために、当社グループでは、グローバルでの経済状況の変化や自動車需要の動向を常に注視するとともに、外部環境の変化に強い収益体質に向けて、需要変動に対応した柔軟な生産体制づくりの推進や既存領域の収益改善活動・構造改革を加速させています。
② 為替レートの変動
当社グループは、海外連結子会社の財務諸表を連結財務諸表作成のため円貨換算しており、現地通貨建ての項目は、現地通貨における価値に変動がない場合も、換算時の為替レートにより円貨換算後の価値が影響を受ける可能性があります。また、当社グループが行う外貨建取引から生じる費用・収益及び外貨建債権・債務の円換算額は、為替レートの変動の影響を受ける場合があり、当社グループが日本で生産し、輸出する取引における他の通貨に対する円高は、当社グループ製品のグローバルベースでの相対的な価格競争力を低下させるなど、当社グループの財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、通貨別に為替リスクを測定したうえでヘッジ効果とヘッジコストを勘案し、許容可能な為替リスク量まで為替リスクを軽減するため、デリバティブ取扱要領に従い、為替予約、通貨スワップ、通貨オプションを利用してヘッジをしています。
③ 金融市況の変動
株式市況の低迷等により当社グループの保有する株式等の価値変動が生じ、当社グループの財政状態や経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、株式保有が企業価値向上に必要不可欠と認められる場合を除き、原則保有しない方針であり、株式保有を通じた共同技術開発や事業提携を推進する必要性がある場合に政策保有株式を保有しています。保有している政策保有株式については、保有意義又は今後の縮減方針等について、取締役会で検証しています。そのうえで、保有が企業価値向上に必要不可欠ではないと判断した場合には、取引先各社との対話を通じて縮減を進めています。
また、市場の金利状況により、資金運用・資金調達の受取・支払利息が増減し、当社グループの経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、資産と負債の統合管理をはかるとともに、金利スワップ等により金利変動によるリスクを軽減するための対策を講じています。
当社グループの確定給付制度債務の算出において前提条件とした割引率・制度資産などについて、金融市況の悪化により、実際の結果が前提条件よりも低下・減少することで当社グループの確定給付制度債務が増加するなど、当社グループの財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、企業年金の積立金の運用が、従業員の安定的な資産形成に加えて自らの財政状態にも影響を与えることを踏まえ、年金運用の目的やプロセスについて十分に理解している人材の計画的な登用・配置などの人事面や運営面における取り組みにより、企業年金が運用の専門性を高めてアセットオーナーとして期待される機能を発揮できるよう努めています。また、政府の規制や人材戦略・人事制度を踏まえ、適宜制度の見直しを検討、実施しています。
④ 原材料や部品の調達
当社グループは、製品の製造に必要な原材料や部品を国内・海外の複数のグループ外供給元から調達しています。これらのグループ外供給元とは、取引基本契約を結び、安定的な取引を行っていますが、昨今の半導体部品に代表されるように需給バランスの急激な変化や、地政学の影響や需要の急激な変化、供給元が災害等により被災するなど供給能力の制約により、当社グループの生産に必要な量を確保することが困難となった場合、当社グループの財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。また、資源やエネルギー費・労務費等の高騰により当社グループが調達している原材料や部品の価格が上昇し、内部努力や販売価格への転嫁などにより影響を吸収できない場合には、当社グループの財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、得意先への製品の継続的な供給要請に応えられるよう、供給元とのコミュニケーションを強化し、確実な納期の確保、安定的かつ柔軟な供給体制の構築に努めています。安定的な生産や調達活動に影響を及ぼす自然災害や火災などへの対応として、平時から災害に備えるとともに、サプライチェーン情報管理システムを整備するなど有事の際の迅速な初動・復旧を確実に実行できるよう取り組んでいます。
また、価格転嫁に関しては、供給元への能動的な声掛けにより、相談しやすい環境づくりを行い、1社1社、協議のうえ適切な取引を行うと共に、得意先とも共有・協議し、収益逼迫要因とならないよう、回収交渉を推進しております。併せて、供給元と一体になった新材料・新工法開発や工程改善による原価低減活動を積極的に推進することなどにより、最適な価格の維持に努めています。
⑤ 得意先への依存
当社グループの連結売上収益の大部分を占める自動車部品事業は、世界の主要自動車メーカーを得意先としています。当社グループの業績は、各自動車メーカーの業績や販売・生産動向の変動など当社グループが管理できない要因により影響を受ける可能性があります。また、当社グループの連結売上収益に占めるトヨタグループに対する連結売上収益の割合は、当連結会計年度において65.5%を占めており、トヨタグループの事業戦略や購買政策等は、当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、強みである「幅広い商品群」と「ものづくり力」をベースとして、電動化製品を中心に新規顧客の開拓や市場多角化を積極的に推進し、収益の多様化をはかっています。また、既存の顧客との関係を強化し、顧客満足度を向上させることで、長期かつ継続的なパートナーシップを築いています。
⑥ 価格競争
当社グループの連結売上収益の大部分を占める自動車部品事業におけるグローバルでの価格競争は、大変厳しいものとなっています。得意先からの価格引き下げ要請や自動車メーカーによる部品の内製化、エレクトロニクス製品メーカーなど新しい競合先の台頭や既存の競合先間の提携などにより、価格競争力や製品の優位性が維持できない場合には、当社グループ製品に対する需要の低下及び製品価格の低下を通じて、当社グループの財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、「幅広い商品群」と「ものづくり力」を強みに、高品質で高い付加価値を有する自動車関連製品をグローバルで供給し続けることで優位性を確保するとともに、事業環境を見極めたグローバルでの効率的な事業体制の構築やIoTやAIを活かした生産性向上をはかるとともに、体制面では「製品開発センター」を新設し、魅力ある製品戦略立案と設計・品質・原価企画により、商品競争力・コスト競争力の強化をはかっています。
⑦ 新商品開発
当社グループは、新しい価値を提供し豊かな社会づくりに貢献できるよう、未来を見据えた新商品開発に努めています。今後も、環境・燃費、安全・安心、快適・利便を追求した独創的な魅力ある新商品を開発できると考えていますが、最先端の新商品開発と販売のプロセスは、その性質から複雑かつ不確実なものであり、以下をはじめとする様々なリスクが含まれます。
(ⅰ)新商品や新技術への投資に必要な資金と資源を、今後十分充当できる保証はありません。
(ⅱ)長期的な投資と大量の資源投入が、成功する新商品又は新技術の創造へつながる保証はありません。
(ⅲ)当社グループが市場からの支持を獲得できる新商品又は新技術を正確に予想できるとは限らず、またこれらの商品の販売が成功する保証はありません。
(ⅳ)新たに開発した商品又は技術が、独自の知的財産権として保護される保証はありません。
(ⅴ)技術の急速な進歩と市場ニーズの変化により、当社グループの商品が時代遅れになる可能性があります。
(ⅵ)現在開発中の新技術の商品化遅れにより、市場の需要についていけなくなる可能性があります。
上記のリスクをはじめとして、当社グループが業界と市場の変化を十分に予測できず、魅力ある新商品のタイムリーな開発と市場への投入ができない場合には、将来の成長と収益性を低下させ、財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、持続的な成長と持続可能な社会の実現に向け、電動化・知能化技術を中心に社会課題の解決に貢献するソリューション型商品の拡充に取り組んでいます。電動駆動ユニットや駐車支援システムなど、商品ラインアップの拡充に向けて、競争力が弱く、成長が望めない商品への開発リソーセスを制御・ソフト領域へシフトするとともに、デジタル開発による効率化をはかり、商品開発を加速していきます。また、あらゆる領域で自前主義にこだわらずパートナーとの技術連携を積極的に取り入れ、新規事業の開拓も加速していきます。
さらに、当社グループが保有する製品群間の連携を促進し、製品横断での技術・商品開発を強化するため、2024年4月に「製品開発センター」を新設しました。既存商品の強みであるアクチュエータや駆動ユニットの電動化といったハードウェアに、センシング技術とソフトウェアを組合せて統合的に制御することで知能化をはかり、付加価値の高い商品に作り上げていきます。また、エネルギー関連分野にも注力し、カーボンニュートラルにつながるエネルギー領域の技術開発を積極的に進めます。
これらの開発は、当社グループの持つ様々な技術を結集し、さらに機動的な社外連携も実施しながら、アイシンらしい魅力ある商品の開発を強力に進めていきます。
⑧ 海外事業展開
当社グループは、世界の主要自動車メーカーの近くで多様なニーズに対応し、高い付加価値を有する製品を開発、提供できるよう、グローバルな供給体制を構築しています。当社グループが事業を展開している国又は地域における事業運営には以下のようなリスクが内在しており、これらの事象が発生した場合には当社グループの財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。
(ⅰ)予期しえない法律・規制、不利な影響を及ぼす租税制度の変更
(ⅱ)社会的共通資本(インフラ)が未整備なことによる当社グループの活動への悪影響
(ⅲ)不利な政治的又は経済的要因の発生
(ⅳ)人材の採用と確保の難しさ
(ⅴ)テロ、戦争、疾病その他の要因による社会的混乱
当社グループは、国内グループ会社に加え、北中南米、欧州、中国、アセアン・インドを統括する各地域統括本部長が、グループに共通する経営上のリスクと国や地域によって異なるリスクの情報を共有することによって効果的な対策を推進し、グローバルな視点でリスクマネジメントを強化しています。2022年4月には地政学リスクの高まりや複雑化を踏まえ、全社横断的な会議体として「経済安全保障委員会」を設置し、経営トップを中心にレピュテーションを踏まえた高度な判断を必要とする経済安全保障リスクに対応していく体制を構築しています。また、2024年4月、当社グループ経営戦略本部に事業戦略部と地域統括部を設置し、地域毎の事業課題認識と上記リスクを踏まえた事業戦略・地域戦略策定を一元的に行い、当社グループが事業展開する国又は地域の経済・政治・社会的状況に加えて、事業に関連する各国の環境関連規制、製品の安全性・品質関連規制、輸出入関連規制の情報をタイムリーに収集し、適時適切な対応をとっています。
⑨ 事業投資
当社グループは、グローバルでの事業拡大に向け、成長領域や需要の拡大が見込まれる事業への投資を行い、更なる企業価値の向上に努めています。しかしながら、投資判断時に想定していなかった水準で、市場環境や経営環境が悪化し、事業計画との乖離等により期待されるキャッシュ・フローが創出できない場合、有形固定資産の減損処理などにより、当社グループの財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。また、当社連結子会社において経営環境の著しい悪化や収益状況の悪化等が将来にわたって見込まれる場合、繰延税金資産の回収可能性の判断などに影響を及ぼす可能性があり、当社及び当社連結子会社の財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、変化の激しい事業環境の中、競争力と成長性を見極めた事業ポートフォリオ変革に努めています。具体的には、電動化・知能化に対応する製品を成長領域と位置づけ、ヒト・モノ・カネのリソーセスシフトを行っています。また、当社グループの中長期の方向性及びグループを含めた意思決定については、取締役会運用基準に則り、取締役会にて審議・決議するとともに経営会議、執行会議、各種機能会議等で、当社グループ各社の業績や重要な投資に対してのモニタリングを実施し、今後の方向性や業績改善のための対策を検討しています。
⑩ 製品の欠陥
当社グループは、お客様に高い品質を確保した商品を提供するため、厳格な品質管理体制や品質管理基準に従い、グローバルで各種製品を製造しています。しかしながら、すべての製品について欠陥がなく、将来にリコールが発生しないという保証はありません。また、製造物責任賠償については保険に加入していますが、この保険が最終的に負担する賠償額を十分にカバーできるという保証はありません。大規模なリコールや製造物責任賠償につながるような製品の欠陥は、多額のコストや当社グループの評価に重大な影響を与え、当社グループの財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、徹底したTQM(Total Quality Management 総合的品質管理)活動を続け、グローバルで開発から生産にいたるまで、厳格な品質保証体制のもと、企画、製品設計、生産準備から量産にいたる各階段の節目管理を行い、お客様の信頼に応えるものづくりを実践しています。また、以下事項を強化し品質の更なる向上をはかっています。
・お客様の要求及び法規認証遵守状況の確認
・リスクの高い製品、工法の要素技術に対する審議
・海外を含めた仕入先の評価と体質改善
・重点領域の電動化に対応したDX活用による開発精度向上
⑪ 災害等による影響
当社グループは、大規模地震や台風・豪雨等の自然災害、火災・爆発事故や感染症等の人的災害の発生により、グループ会社に人的・物的被害が生じるリスクを想定しており、これらのリスクの発生による操業停止で、顧客への製品供給に支障をきたした場合、財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。特に当社グループの工場や取引先は、国内外に所在しており、これらの地域で大規模な災害等が発生した場合、生産・物流活動が停止、遅延する可能性があります。
こうしたリスクに対処するために、当社グループすべてを対象としたリスクマネジメント委員会において、特にリソーセスを投入し取り組むべき重点リスクの審議・方向付けを行い、リスクへの対応力強化に取り組んでいます。甚大な被害が想定される自然災害に対しては、平時から緊急時の対応に関する実践要領をまとめた「危機管理ガイド」や、過去の被災経験を標準化したガイド「学び・気づき」に基づき、グループ一体となってリスクの未然防止及び被害最小化を推進しています。その成果として、当期に発生した能登半島地震においてグループ会社が被災しましたが、2016年の熊本地震以降の震災の教訓を活かした吊りものの落下対策や、停電時に備えた自家発電の配備などのグループ全体での取り組みにより、被害を少なくするとともに、生産・納入への影響を限定することができました。一方、新たな課題として今回の地震で深刻な被害を受けた液状化に加え、昨今の線状降水帯により想定を超えた降雨被害が発生しており、引き続きグループを上げて対策に取り組んでいます。
今後も従業員とその家族、顧客を始めとするすべてのステークホルダーの皆様の健康と安全確保を最優先に考え、様々なリスクに対し代替生産やバックアップなどあらゆる手段で顧客への製品・サービスの供給継続に努めています。
⑫ 気候変動
当社グループは全世界で事業を展開しているため、中長期にわたり様々な気候変動に関する影響を受けると認識し、「気候変動への対応」を優先課題(マテリアリティ)の1つとして選定しました。また、TCFD提言に沿ってシナリオを分析し、その対応策を事業戦略に組み込み推進しています。主な脱炭素社会への移行リスクとして、
(ⅰ)低炭素原材料の需要が高まり必要な原材料の価格高騰による調達コストの増加
(ⅱ)炭素税や再生可能エネルギー導入などの政策によるコストの増加
(ⅲ)電動化の推進で電動車向け製品需要が拡大する一方、ガソリン車向け製品需要が減少
につながる可能性があります。
こうしたリスクに対し当社グループは「生産」と「製品」の両軸で対応しています。
生産面では、徹底した省エネ活動や革新生産技術開発によるエネルギー使用量削減、再生可能エネルギーなどのクリーンエネルギーの導入・切替を実施しています。
製品面では、電動車向け製品の更なる進化、エネルギーと資源の循環・普及を進め、モビリティ・エネルギー技術融合による新価値創出を目指します。詳細については、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2)気候変動への対応(TCFD提言への取り組み)」をご参照ください。
⑬ 知的財産権
当社グループは、新価値を創造して提供する将来事業の優位性・安全性を確保するため、独自の技術とノウハウ等を蓄積し知的財産を戦略的に獲得するとともに、第三者の知的財産権侵害のリスク軽減に努めています。なお、特定の国及び地域においては、法的要件により、知的財産の完全な保護が不可能又は限定的にしか保護されない可能性があります。また、保有する知的財産権が無効となる可能性があります。そのため、第三者による当社グループの知的財産権の不正使用あるいは権利侵害を防ぐための手段が有効に機能しない可能性があります。また、当社グループの製品は広範囲にわたる技術を利用しているため、将来的に知的財産権を侵害したとして第三者から訴訟を提起されることにより訴訟費用が発生する可能性があります。
こうしたリスクに対処するために、当社グループでは、知的財産管理の専門部署を設け、関係部門と連携して、特許をはじめとする各種知的財産権により技術等の知的資本を戦略的に領域を定めて保護するとともに特許調査等を行い第三者の知的財産権の侵害予防に努めています。また、訴訟提起された場合には、侵害性や、対象権利の有効性、使用権有無等を迅速に判断して適切に対応しています。
⑭ 情報セキュリティ
当社グループでは、日々巧妙化するサイバー攻撃等の脅威や「会社情報」「得意先・お客様情報」等の情報漏洩から守ることは、リスク管理上の重要課題と捉え、情報セキュリティの強化に取り組んでいます。しかしながら、サイバー攻撃を含む意図的な行為や過失等により、情報システム等に障害が生じる場合や、機密情報及び個人情報が外部に流出する可能性があります。また、サプライチェーン等の事業活動が一時的に中断する可能性があります。このような事象が発生した場合、当社グループの事業活動の停滞や社会的信用の低下等により、当社グループの財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、「アイシングループ情報セキュリティ基本方針」を基本に、お客様や取引先からお預かりした、又は当社グループが保有する事業活動に関わる情報資産は、当社グループの重要な資産であるとの認識に立ち、組織的かつ継続的に情報セキュリティ対策に取り組んでいます。また、当社グループ全体のサイバー攻撃や内部不正等のリスクから企業を守るため、セキュリティ専門組織「情報セキュリティ推進部」を設置し、当社グループ全体でのセキュリティ対策の実施とセキュリティ脆弱性情報の収集・展開・対応を行い、早期検知と迅速な対応に努めています。
⑮ コンプライアンス
当社グループは、事業活動を遂行するうえで、コンプライアンスを基本においていますが、規制当局による措置その他の法的手続きに関するリスクを有しています。これらのリスクにより、当社グループに対して損害賠償請求や規制当局による金銭的な賦課を課され、又は事業の遂行に関する制約が加えられる可能性があります。また、社会情勢の変化、価値観や働き方などの多様化に伴い、ハラスメント等のリスクが増加する可能性があります。当社グループが重大なコンプライアンス違反を起こした場合は、当社グループの社会的信用の失墜による事業への悪影響などにより、当社グループの財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、グループ全役職員の行動規範となる「アイシングループ企業行動憲章」及びその具体的な行動基準となる「社会的責任を踏まえた行動指針」を策定しています。また、コンプライアンスに関わる方針・体制を決める会議体として、「企業行動倫理委員会」を設置し、グループ主要11社の取締役社長、担当役員、常勤監査役が、法令遵守を含むコンプライアンスの活動状況及び当社グループの課題を確認すると共に、次年度の活動方針、実施事項を承認しています。さらに、活動を推進するのはあくまで人であると考え、各種教育活動を継続的に行い、従業員一人ひとりのコンプライアンス意識向上に努めています。また、コンプライアンスリスクの高いグループ会社に対して、重点支援を行い、グループとしてのリスク低減をはかっています。一方で、問題の早期発見・是正に対しては、内部通報窓口を社内外に設置し、早期解決に努めています。
⑯ 人権
当社グループは、国内・海外で事業活動を遂行するうえでの基本として人権の尊重を捉えていますが、サプライチェーンを含めた事業活動が各国・各地域で人権へ影響を及ぼすリスクがあると認識しています。これらのリスクは顕在化や取組み不足によって、社会的信用の失墜につながり、当社グループの財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、グループ全社員の行動規範である「アイシングループ企業行動憲章」及び「社会的責任を踏まえた行動指針」の中で、人権の尊重を明確に宣言しています。また、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づき、「アイシングループ人権方針」を策定し、人権尊重へのコミットメントを行うとともに、サプライチェーンに対しても「仕入先サステナビリティガイドライン」を通じて人権方針への理解・支持を求めています。また、「人権専門委員会」を設置し、今後の重点分野・活動計画を承認しています。人権デュー・ディリジェンスの取組みでは、グループ・サプライチェーンに対する主要人権分野に関するセルフチェックや、勉強会、現地での対話・実態確認を通じて、必要な指導・コンテンツ提供等を行い、連携・支援を進めています。さらに、相談窓口の設置・運用、外部専門家との対話、「責任ある外国人労働者受け入れプラットフォーム」の活動への参画等、総合的・継続的に人権への取組みを推進しています。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度の売上収益については、日米を中心とした車両生産台数の増加や円安に加え、電動ユニット販売台数の増加により、前連結会計年度(4兆4,028億円)に比べ11.5%増の4兆9,095億円となりました。
利益については、第3四半期連結会計期間に品質関連費用を計上したものの、事業環境の改善や企業体質改善努力により、営業利益は前連結会計年度(579億円)に比べ147.5%増の1,433億円、税引前利益は前連結会計年度(737億円)に比べ103.2%増の1,498億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は前連結会計年度(376億円)に比べ141.1%増の908億円となりました。
また、当連結会計年度末の資産については、現金及び現金同等物、非流動資産のその他の金融資産の増加等により、前連結会計年度末(4兆1,358億円)に比べ12.3%増の4兆6,430億円となりました。負債については、社債及び借入金の減少があったものの、営業債務及びその他の債務、未払法人所得税等、繰延税金負債の増加等により、前連結会計年度末(2兆1,443億円)に比べ4.5%増の2兆2,409億円となりました。資本については、当期利益の計上、有価証券評価差額金の増加等により、前連結会計年度末(1兆9,914億円)に比べ20.6%増の2兆4,020億円となりました。
セグメント別の業績は、次のとおりです。なお、当連結会計年度より、当社グループにおける業績管理区分の見直し等に伴い、「日本」、「北米」、「欧州」及び「中国」の4区分としていた報告セグメントを、「日本」、「北米」、「欧州」、「中国」及び「アセアン・インド」の5区分に変更しています。以下の前連結会計年度比較については、前連結会計年度の数値を変更後の報告セグメント区分に組み替えた数値で比較しています。
(ⅰ)日本
売上収益については、車両生産台数の増加や円安に加え、電動ユニット販売台数の増加により、前連結会計年度(2兆8,534億円)に比べ12.0%増の3兆1,952億円となりました。利益については、品質関連費用の計上があったものの、増産効果や企業体質改善努力・構造改革効果等により、626億円の営業利益(前連結会計年度営業損失45億円)となりました。
(ⅱ)北米
売上収益については、車両生産台数や電動ユニット販売台数の増加により、前連結会計年度(8,290億円)に比べ20.7%増の1兆5億円となりました。利益については、品質関連費用の計上があったものの、売上収益の増加や企業体質改善努力等による増益により、251億円の営業損失(前連結会計年度営業損失325億円)となりました。
(ⅲ)欧州
売上収益については、パワートレインユニット販売台数の増加等により、前連結会計年度(3,535億円)に比べ6.3%増の3,758億円となりました。営業利益については、前連結会計年度に計上した一過性収益の減少等により、前連結会計年度(83億円)に比べ7.4%減の77億円となりました。
(ⅳ)中国
売上収益については、ハイブリッドトランスミッション生産台数の増加等により、前連結会計年度(5,485億円)に比べ15.8%増の6,353億円となりました。営業利益については、売上収益の増加や構造改革効果等により、前連結会計年度(160億円)に比べ127.3%増の364億円となりました。
(ⅴ)アセアン・インド
売上収益については、円安の影響等により、前連結会計年度(4,926億円)に比べ1.5%増の5,001億円となりました。営業利益については、タイにおける新車販売が低調であった影響等により、前連結会計年度(585億円)に比べ4.1%減の561億円となりました。
(注)各セグメントの売上収益の金額は、外部顧客への売上収益に加え、セグメント間の内部売上収益も含めた金額としています。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況について、現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)の残高は、営業活動により4,997億円の増加、投資活動により931億円の減少、財務活動により2,116億円の減少、現金及び現金同等物に係る換算差額により132億円の増加、売却目的で保有する資産に含まれる現金及び現金同等物の増減額により14億円の増加の結果、当連結会計年度末には5,271億円となり、前連結会計年度末(3,176億円)に比べ2,094億円(65.9%)の増加となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により得られた資金は、前連結会計年度(2,379億円)に比べ2,617億円(110.0%)増加し、4,997億円となりました。これは、営業債権及びその他の債権の増減額が1,701億円減少したこと、税引前利益が761億円増加したことにより資金の増加があったこと等によります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により使用した資金は、前連結会計年度(1,868億円)に比べ937億円(50.1%)減少し、931億円となりました。これは、投資の売却及び償還による収入が1,124億円増加したことにより使用した資金の減少があったこと等によります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により使用した資金は、前連結会計年度(1,277億円)に比べ839億円(65.7%)増加し、2,116億円となりました。これは、借入とその返済による収支が748億円減少したことにより使用した資金の増加があったこと等によります。
③ 生産、受注及び販売の実績
(ⅰ)生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称 |
生産高(百万円) |
前期比増減率(%) |
日本 |
3,201,819 |
13.1 |
北米 |
1,007,786 |
23.4 |
欧州 |
373,993 |
19.0 |
中国 |
631,690 |
14.2 |
アセアン・インド |
499,613 |
0.8 |
その他 |
42,563 |
17.7 |
合計 |
5,757,466 |
14.1 |
(注1) 金額は販売価格によっており、セグメント間の内部取引消去前の数値によっています。
(注2) 上記金額には、外部仕入先等からの仕入高が含まれています。
(ⅱ)受注実績
主要な事業である自動車部品製造・販売について、当社グループのすべてのセグメントは、トヨタ自動車㈱をはじめとした大手自動車メーカーより、約3ヶ月前後の予約的発注指示を受け、生産能力を勘案し生産計画を立て、生産を行っています。
(ⅲ)販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称 |
販売高(百万円) |
前期比増減率(%) |
日本 |
3,195,265 |
12.0 |
北米 |
1,000,535 |
20.7 |
欧州 |
375,855 |
6.3 |
中国 |
635,316 |
15.8 |
アセアン・インド |
500,111 |
1.5 |
その他 |
42,631 |
17.9 |
合計 |
5,749,715 |
12.4 |
(注1) 金額は販売価格によっており、セグメント間の内部取引消去前の数値によっています。
(注2) 主な相手先の販売実績及び総販売実績に対する割合は、次のとおりです。
なお、割合はセグメント間の内部取引消去後の総販売実績に対して記載しています。
相手先 |
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
||
販売高(百万円) |
割合(%) |
販売高(百万円) |
割合(%) |
|
トヨタ自動車㈱ |
1,174,595 |
26.7 |
1,406,717 |
28.7 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において判断したものです。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(昭和51年大蔵省令第28号)第93条の規定により、IFRS(国際会計基準)に準拠して作成しています。連結財務諸表の作成において、経営者は、会計方針の適用並びに資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす判断、見積り及び仮定の設定を行っています。実際の業績はこれらの見積りとは異なる場合があります。
見積り及びその基礎となる仮定は継続して見直しています。会計上の見積りの見直しによる影響は、その見積りを見直した会計期間及び将来の会計期間において認識しています。
上記のうち、当社グループの連結財務諸表で認識する金額に重要な影響を与える見積り及び仮定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 2.作成の基礎 (4)重要な会計上の判断、見積り及び仮定」に記載しています。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
② 経営成績の分析
当連結会計年度の売上収益は前連結会計年度に比べ11.5%増の4兆9,095億円、営業利益は147.5%増の1,433億円、税引前利益は103.2%増の1,498億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は141.1%増の908億円となりました。
以下、連結損益計算書に重要な影響を与えた要因について分析します。
(ⅰ)売上収益
当連結会計年度の売上収益4兆9,095億円を事業の種類ごとに見ると、自動車部品事業では前連結会計年度に比べ11.6%増の4兆7,745億円となりました。その事業ごとの内訳としては、パワートレイン関連では11.0%増の2兆7,227億円、走行安全関連では10.3%増の9,891億円、車体関連では14.5%増の9,392億円、CSS関連他では13.8%増の1,234億円となりました。また、エナジーソリューション関連他では8.5%増の1,350億円となりました。
(ⅱ)売上原価、販売費及び一般管理費
売上原価は、前連結会計年度(4兆14億円)に比べ8.9%増の4兆3,589億円となり、売上収益に対する割合は90.9%から88.8%に低下しました。これは、生産性向上の取り組みなどにより、売上収益に対する労務費の割合が低下したことなどによります。
販売費及び一般管理費は、製品保証費の増加などにより、前連結会計年度(3,391億円)に比べ23.2%増の4,177億円となり、売上収益に対する割合は7.7%から8.5%に上昇しました。
(ⅲ)その他の収益、その他の費用
その他の収益は、前連結会計年度(266億円)に比べ8.2%増の287億円となりました。
その他の費用は、固定資産減損損失の減少などにより、前連結会計年度(308億円)に比べ40.6%減の183億円となりました。
(ⅳ)金融収益、金融費用
金融収益は、前連結会計年度(250億円)に比べ1.6%増の254億円となりました。
金融費用は、支払利息の減少などにより、前連結会計年度(165億円)に比べ36.4%減の105億円となりました。
(ⅴ)持分法による投資損益
持分法による投資損益は、持分法適用関連会社に対する投資に係る減損損失を計上したことなどにより、前連結会計年度(持分法による投資利益73億円)に比べ、持分法による投資損失84億円と157億円減少しました。
(ⅵ)法人所得税費用
当連結会計年度の法人所得税費用は、前連結会計年度(258億円)に比べ43.5%増加し、370億円となりました。
(ⅶ)非支配持分に帰属する当期利益
当連結会計年度の非支配持分に帰属する当期利益は、前連結会計年度(102億円)に比べ114.8%増加し、219億円となりました。
(ⅷ)親会社の所有者に帰属する当期利益
当連結会計年度の親会社の所有者に帰属する当期利益は、前連結会計年度(376億円)に比べ141.1%増加し、908億円となり、基本的1株当たり当期利益も139円77銭から336円93銭に増加しました。
③ 資本の財源及び資金の流動性
(ⅰ)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載しています。
(ⅱ)資金需要
当社グループの資金需要の主なものは、BEV商材、ブレーキ、安心快適エントリーを中心とした成長領域への設備投資や研究開発投資です。
今後の持続的な成長のために必要な設備投資及び研究開発投資による資金需要が見込まれる場合には、長期資金の調達を実行する可能性があります。
(ⅲ)財務戦略
当社グループは、企業価値の最大化を目標として、すべてのステークホルダーとの良好な関係を築き、長期安定的な成長と発展を目指しています。
当社グループの資本政策は、「財務の安全性」と「資本の効率性」のバランスをとることで、常に低コストで資金調達をできる状態に保ち、企業価値の向上を目指すことを基本方針としています。具体的には、キャピタリゼーション比率(注1)を指標として用い、当該比率が概ね25%~30%となることが最適な資本構成であると考えています。
「財務の安全性」については、格付会社による評価をひとつの目安とし、高い信用格付を維持することにより、低コストでの資金調達がいつでも可能になるよう努めています。一方、「資本の効率性」については、格付が維持できる範囲で、負債による資金調達を優先し、資本の規模を抑制することで、全体の資本コストの低減をはかっています。また、キャッシュ・マネジメント・サービス(CMS)(注2)を導入することで、連結ベースでの財務戦略や当社グループ内での資金の有効活用を実現しています。
(注1) 有利子負債と資本(純資産)のバランスを示す指標です。
(有利子負債 /(有利子負債+資本合計))
(注2) グループ企業の資金を親会社や中核会社が同一銀行内に専用口座を設置して集中管理することにより、効率的な連結運営や資金運用をする手法、又はその仕組みを指します。
(ⅳ)資金調達
当社は、安定的かつ低コストで資金を確保することを基本方針としています。
資金調達にあたっては、平均残存期間の維持及び返済年限の平準化に資する調達年限を設定し、市場動向等を勘案した最適な資金調達手段を選択・実行しています。また、当社は高い信用格付けを維持するとともに、金融機関や投資家等と幅広く良好な関係を構築しており、競争力のある調達コストの維持・追求に努めています。
当連結会計年度末の社債及び借入金残高7,262億円のうち、2,725億円はハイブリッド社債とハイブリッドローンで調達しており、格付会社より残高の50%である1,362億円について資本性の認定を受けています。
当社では、経営を取り巻く様々なリスクに対応できるよう、現預金だけでなく、コミットメントライン契約を締結するなど、十分な流動性の確保に努めています。
④ 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)目標とする経営指標」に記載のとおりです。当連結会計年度においては、既存事業資産の圧縮やグローバルでの在庫低減に取り組んだものの、第3四半期連結会計期間に品質関連費用を計上したことなどにより、営業利益率は2.9%、ROIC(投下資本利益率)は5.3%となりました。
当目標の達成に向けた取り組みについては、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)中長期的な会社の経営戦略及び会社の対処すべき課題」に記載のとおりです。
該当事項はありません。
「“移動”に感動を、未来に笑顔を。」を経営理念に掲げる当社グループは、事業を通じ技術力やものづくり力を結集することで、社会課題の解決に貢献し持続可能な社会の実現を目指しています。
カーボンニュートラルの達成に向けた電動車向け製品の開発では、地域によって異なるお客様のニーズやエネルギー事情等に幅広く対応していくため、eAxle・プラグインハイブリッド・ハイブリッドの電動ユニットをフルラインアップで提供できる開発体制を整えています。eAxleについては、最重要製品と位置づけ、2022年に第1世代eAxleの量産開始以降、多様化する顧客仕様への対応に加え、更なる「高効率化」と「小型化」を低コストで実現するための新製品開発に取り組んでいます。また、自動車の電動化により車両構造が大きく変わることを機会と捉え、複数の部品や機能を1つにまとめたXin1のeAxle、熱マネジメントデバイス、電池骨格やギガキャスト部品に加え、空力デバイス、回生協調ブレーキシステム、アクティブリアステアリングシステムなど「走る」「曲がる」「止まる」の基本性能向上に貢献する技術開発を車両全体目線で統合的に進めています。
“移動”に感動を提供する安心・快適・利便なモビリティの実現では、ドアシステム、ドライバーモニターシステム、自動駐車システムなどこれまで培ってきたセンシング技術や多彩なアクチュエーション技術をベースに、周辺監視技術、車室内センシング技術を進化させ、人工知能技術の活用など高度な車室内外の状態認識による、「ゼロストレスエントリー」「快適移動空間」のソリューション提供に取り組んでいきます。
自動車の知能化や新たな価値の創造への取り組みでは、当社グループが提供する幅広い製品に関するハードウェア技術と、周辺監視技術、電子制御技術、ナビゲーション技術などこれまで培ってきたソフトウェア技術を更に進化させ、ソフトウェアでさまざまな機能を統合制御することにより「電費・安全・快適・走り」を追求し、新たな自動車の価値向上に貢献していきます。また、カーナビゲーションシステムで培った位置情報活用・分析技術、プラットフォーム技術、ソフトウェア開発力を活用し、物流支援、道路維持管理、地域移動支援など移動に関するソリューションをソフトウェアやサービスとして迅速に提供していくことで、様々な社会課題の解決に貢献していきます。
エナジーソリューション関連では、これまでのエネファームやガスコジェネなどの開発実績をベースに、新たな価値創造に取り組むとともに、各大学や研究機関と連携し、水素を活用する燃料電池関連の技術開発やクリーンエネルギーを生み出すペロブスカイト太陽電池などの開発を進めています。
当社グループの研究開発体制は、日本セグメントに所在する当社及び主要子会社が研究開発活動の中心を担っており、海外研究開発拠点及び先端研究機関と連携し、グローバルな研究開発活動を展開しています。
なお、当連結会計年度の研究開発費は、BEV商材、ブレーキ、安心快適エントリーを中心とした成長領域への研究開発活動を行った結果、総額