第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)経営方針及び経営戦略

(Vision 2030)

エネルギー変革期において期待されるのは中長期のビジョンであることから、Vision 2030として「未来を変えるエネルギー、社会を支えるエネルギー、新たな価値を創造する。」というスローガンを掲げ、以下の3つの施策に取り組み、ありたい姿の実現を目指してまいります。

 

<Vision 2030及びありたい姿>

0102010_001.png

 

 

(第7次連結中期経営計画の基本方針)

当社グループは、第6次連結中期経営計画において収益改善施策の着実な実行により稼ぐ力を向上させ、財務体質を大幅に改善させました。

第7次連結中期経営計画は、第6次連結中期経営計画のコンセプトをしっかりと引き継ぎながら、新たなステージへ変革し、企業価値向上をテーマとしてまいります。そのような位置づけを明確にすべく、スローガンを『Oil & New ~Next Stage~』として、「収益力の確保」「成長に向けたNew領域の拡充」「三位一体の資本政策実現」「経営基盤の変革」の4点を基本方針に、持続的な企業価値の向上に取り組んでおります。企業価値向上に向けて、非財務資本の活用による事業戦略の実現と、これによる収益力の向上、資本政策の充実、成長事業の拡大を図り、企業価値の最大化につなげてまいります。

 

<基本方針>

0102010_002.png

 

 

(第7次連結中期経営計画 収益計画(2025年度))

Oil事業における構造改善に加え、New事業の収益拡大により1,400億円(2022年度業績予想値、第7次連結中期経営計画公表時点)から250億円の増益を見込んでおり、在庫影響を除く経常利益は2025年度において1,650億円を目指しています。

 

<収益計画>

0102010_003.png

 

 

(第7次連結中期経営計画 投資計画(2023年度~2025年度))

グリーン電力サプライチェーンを中心に、New事業への投資を拡大し、第7次連結中期経営計画期間中の総投資額は4,200億円を見込んでいます。New事業への投資は全体の33%に相当し、風力発電事業への投資が大半となります。加えて、石油精製販売においては、現状の高い競争力を維持するための安全操業投資を中心に、必要不可欠な投資を実施してまいります。

 

<投資計画>

0102010_004.png

 

 

(第7次連結中期経営計画 資本政策)

株主還元、財務健全性、資本効率を三位一体で実行していくことで、企業価値の最大化を目指してまいります。また、株主の皆様への利益還元につきましては、資本政策を三位一体で実現していくなかで、最大限拡大していきます。

 

<資本政策>0102010_005.png

 

 

(第7次連結中期経営計画 経営基盤の変革)

HRX(Human Resources Transformation)、DX(Digital Transformation)、GX(Green Transformation)を中心とした経営基盤の変革に取り組んでまいります。KPIとしてエンゲージメント指数の改善、人材育成投資の強化、データ活用コア人材の育成、GHG排出量削減を掲げています。

 

<経営基盤の変革>

0102010_006.png

 

 

(第7次連結中期経営計画 経営目標(2025年度))

第7次連結中期経営計画は企業価値向上を目指す新たなステージと位置づけています。収益力の向上、資本政策の充実、成長事業の拡大をしっかり実現し、ステークホルダーの皆様にご評価いただけますよう、努めてまいります。

 

<経営目標(2025年度)>

0102010_007.png

 

《当事業年度における各事業セグメントの重点施策》

(石油事業)

石油事業においては、2013年度の坂出製油所閉鎖に加え、2019年度より開始したキグナス石油㈱への燃料油供給により、当社グループは生産数量が販売数量を下回るショートポジションを確立し、製油所の高稼働を維持しております。

更なる稼働率向上のため、APM(注1)導入範囲の拡大やデジタルツイン(注2)構築に向けたVRデータ整備等DX強化を推進しました。

 

(注1)Asset Performance Managementの略。グローバルスタンダードの保全・設備信頼性業務プロセスをシステムに記憶させ、保全のビッグデータを効率的かつ効果的に管理し、網羅性・予見性・管理性を高めることができる。

(注2)現実の製油所がデジタルの仮想空間で再現され、必要とする製油所設備の情報(運転データ、補修履歴、機器スペック等)をすぐに参照できる状態を作り出すこと。

 

カーライフ事業につきましては、デジタル化への対応として、2019年に開発した「カーライフスクエア」アプリが、2024年3月末時点で726万ダウンロードとなり、多くのお客様からのご支持を頂いております。「カーライフスクエア」ではお客様とのつながり強化を目的として、アプリ上で見積りから決済まで完了できるコミット車検のほか、燃料油・カーケア商品のお得なクーポンの提供やお勧めの給油タイミングのお知らせ等、様々なサービスを提供しております。アプリやコスモ・ザ・カード会員のデータを用いて、お客様の属性に合わせた情報配信を自動で行う等「新規顧客の獲得」及び「既存顧客の定着」の施策を実施しており、今後は異業種パートナーの持つデータも組み合わせ、販売促進に取り組んでまいります。

 

 

(石油化学事業)

石油化学事業は、国内最大規模のエチレン生産能力を持つ丸善石油化学㈱において基礎化学品分野では高稼働/高効率操業の実現、環境に左右されにくい機能化学品分野では半導体レジスト用樹脂等の生産拡大を目指しております。

韓国のHD Hyundai Oilbank Co., Ltd.とコスモ石油㈱との合弁会社であるHD Hyundai Cosmo Petrochemical Co., Ltd.につきましては、外部環境の変化に十分留意しながら、中長期的にアジア地域を中心として見込まれるポリエステル需要の増大に対応するべく高稼働を目指し、パラキシレン製造において競争力強化に努めてまいります。

 

(石油開発事業)

石油開発事業では、2017年度よりヘイル油田において生産を開始しておりますが、当初想定よりも油層の圧力低下が見られるため、生産を意図的に抑制しております。今後、油層圧回復の施策を実行し、生産量の回復・最大化を目指してまいります。このほかの既存油田(ムバラス油田、ウム・アル・アンバー油田、ニーワット・アル・ギャラン油田)につきましても、安定した生産を継続しました。

また、2021年度に取得した海上探鉱鉱区(Offshore Block 4)においては探鉱作業を行い、本鉱区における石油及び天然ガスの商業生産の可能性を調査しております。脱化石燃料の流れの中でも、必要とされるエネルギーを継続して供給することは当社グループの責任であると考えており、今後石油需要の減退が進行していく過程でも、その責任を果たすべく本鉱区を取得しております。本鉱区は、豊富な石油・天然ガスの資源量が賦存するだけでなく、単位数量あたり操業費がその他の地域と比べて低いとされるアラビア湾の浅海に位置し、かつ商業生産に至った場合には隣接するアブダビ石油㈱が保有する油田施設を共同で活用できるため、開発・操業コストの大幅な低減が期待されます。今後も、引き続き本鉱区における石油及び天然ガスの商業生産の可能性を調査すべく、探鉱作業を実施してまいります。

 

(再生可能エネルギー事業)

再生可能エネルギー事業では風力発電事業を中心にグリーン電力サプライチェーンの構築に取り組んでおります。コスモエコパワー㈱は、風力発電業界におけるパイオニア的企業であり、国内シェアは第3位となります。

陸上風力に関しては、順調な稼働を継続しており、またノンファーム型接続の開始等により新規サイトの開発も着実に進めています。2023年4月には上勇知ウィンドファーム(北海道)及び大分ウィンドファーム(大分県)の運転を開始しました。陸上風力では運転中の風力サイトとFIT(固定価格買取制度)取得済みのサイトを合わせた751MWに加え、現在開発中の複数のプロジェクトにより、2030年度には約900MWの規模を目指しております。

洋上風力に関しては、世界的な脱炭素の流れを受けて大規模なグリーン電源に対する期待は高まっており、当社としては、しっかりと収益性を確保した上で、プロジェクトを進めてまいります。2030年には陸上、洋上を合わせて1,500MW超の設備容量を目指します。

 

(2)経営環境

当連結会計年度における日本経済は、雇用・所得環境が改善する下で各種政策の効果もあって、景気は緩やかに回復しております。一方で世界的な金融引締めに伴う影響や中国経済の先行き懸念など、海外景気の下振れが日本の景気を下押しするリスクとなっております。個人消費は持ち直しに足踏みがみられますが、設備投資は持ち直しの動きがみられ、消費者物価は緩やかに上昇しております。こうしたなかで、石油製品の国内需要は、緩やかに需要減退の傾向がみられます。

原油価格(ドバイ原油)は、期初1バレル84ドル台から、米国や欧州における利上げの決定や中国景気の停滞等

が重しとなるなか、OPECプラスによる協調減産の維持やサウジアラビアとロシアによる自主的な原油供給削減策等により一時上昇しました。その後、OPECプラスによる協調減産の強化が見送られ自主減産の規模も限定的であるとの観測等により下落しました。年明け以降、中東やウクライナの地政学リスクの高まりが原油価格の押し上げ要因となり上昇基調で推移し、当連結会計年度末は86ドル台となりました。

為替相場は、期初1ドル133円台から、米国の金融引締め長期化への警戒感が根強く一時151円台まで円安が進行しましたが、日銀の金融政策決定会合を受けて金融政策の早期正常化観測が高まり円高で推移する場面もありました。その後、日銀の金融政策決定会合でマイナス金利の解除が決定されたものの、当面は緩和的な金融政策の継続が示唆されたことから円安の動きとなり、当連結会計年度末は151円台となりました。

 

 

(3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

中長期的には世界的に脱炭素社会への流れが加速し、エネルギー分野においても再生可能エネルギーが主力電源化に向けて拡大、SAFの供給、その他にも水素、アンモニア等、脱炭素技術の開発が進むものと考えておりますが、石油は引き続き、重要なエネルギー資源であり、石油製品がエネルギー需要の大きな比率を占めると考えております。このようななか、石油事業を中心に収益力を強化しつつ、長期的な方向性を見据え、次の成長に向けて事業ポートフォリオを拡充してまいります。第7次連結中期経営計画においては、「収益力の確保」「成長に向けたNew領域の拡充」「三位一体の資本政策実現」「経営基盤の変革」を基本方針とし、企業価値の向上に取り組んでまいります。

第7次連結中期経営計画を実行する上で、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題は以下のとおりとなります。

 

《各事業セグメントにおける課題》

(石油事業(石油精製事業))

石油精製事業においては、製油所デジタルプラント化に向けた取り組み、運転/保全力の向上による更なる稼働率改善等を図ってまいります。また、定期整備の短縮に加えて、トラブルによる計画外停止を削減するためのソフトウェアであるAPMを導入し、予見性、網羅性、管理性を向上させることで、製油所高稼働の維持を推進してまいります。

 

(石油事業(石油販売・カーライフ事業))

石油販売・カーライフ事業においては、当社グループの持つ豊富な顧客データと、異業種パートナーとのデータ連携を組み合わせることで、マーケティングサイエンスによる燃料油販売の高度化を進めてまいります。

 

(石油化学事業)

石油化学事業においては、高稼働/高効率操業の実現、外部環境に左右されにくい化成品及び機能化学品の生産拡大を目指してまいります。

丸善石油化学㈱千葉工場においては、A認定(注)の取得に加えて、石油精製と石油化学の連携の深化と競争力の強化、市況環境に応じたパラキシレン生産量の最大化を目指してまいります。

また、機能化学品については、メチルエチルケトン(MEK)等の化成品、需要が増加している半導体レジスト用樹脂の生産拡大を進めてまいります。

 

(注)従来のスーパー認定制度に、テクノロジー活用やサイバーセキュリティの要件などが追加された認定制度

   (正式名称:認定高度保安実施者制度)

 

(石油開発事業)

石油開発事業においては、ヘイル油田や既存油田の生産量最大化、操業コストの最適化により収益構造を強靭化してまいります。また、2021年度に取得した海上探鉱鉱区(Offshore Block 4)においては探鉱作業を行い、本鉱区における石油及び天然ガスの商業生産の可能性を調査しております。

加えて、アブダビ国営石油会社と協働し、CCS・CCUSの実証検討等の低炭素化に向けた取組を推進してまいります。

 

(再生可能エネルギー事業)

世界的な脱炭素化の潮流のなか、今後大きな成長が期待される風力発電事業を中心に、引き続き積極的に規模拡大を進めてまいります。陸上風力においては、2023年4月に上勇知ウィンドファーム(北海道)及び大分ウィンドファーム(大分県)の運転を開始しております。その他にも、新むつ小川原(青森県)、新岩屋(青森県)、遠州(静岡県)、あぶくま南(福島県)等の開発を着実に推進することで、2030年において陸上風力の設備容量約900MWの達成を目指しております。

さらに、2050年のカーボンニュートラル達成に向けて、事業環境整備・投資機会拡大が見込まれる洋上風力においては、日本における同分野のリーディングカンパニーを目指しております。2022年12月に秋田港能代港プロジェクトの商業運転を開始しており、その他にも複数地域において洋上風力プロジェクトの開発を進めております。洋上風力においては競合他社の増加やコストの上昇等、事業環境の厳しさが増していますが、当社グループでは建設、O&M、売電先を含めた全てのサプライチェーンを精査し、徹底的なコスト競争力の強化を図ります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループは、「私たちは、地球と人間と社会の調和と共生を図り、無限に広がる未来に向けての持続的発展をめざします。」というグループ理念と、このグループ理念の原点に改めて向き合い整理した当社グループのサステナビリティの基本的な考え方に基づき、8つの最重要マテリアリティを特定しました。第7次連結中期経営計画における重点施策の一つとして、このマテリアリティに取り組むことで、持続的な企業成長と企業価値向上を図るサステナブル経営を推進しております。

2023年度の具体的な取組としては、特定した最重要マテリアリティのKPIの設定とモニタリング、2050年カーボンネットゼロへのロードマップの見直し等を、サステナビリティ戦略会議において討議し、実施してきました。また、ビジネスと人権に関する取組として、2021年に策定した人権方針に基づき、2023年8月から11月にかけて人権デューデリジェンスを実施しました。今後も、経営層、従業員のリテラシー向上を図りながら、当社グループとして取り組むべきESG施策の充実を進めていきます。

顧客、株主、地域住民、従業員等すべてのステークホルダーを含む社会の持続的発展に、サステナブル経営によって貢献してまいります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)サステナビリティ課題全般について

①ガバナンス

当社グループでは、コスモエネルギーグループ理念及び企業行動指針を実践し職務を適正かつ効率的に執行するため、「内部統制システムに関する基本方針」に基づき、当社及びグループ各社の取締役及び社員の職務執行の体制、これを支えるためのリスクマネジメント及び内部監査の体制、監査等委員会による監査が実効的に行われることを確保するための体制を整備・運用しています。また、内部統制を統括する組織として社長執行役員を議長とするサステナビリティ戦略会議を設置しています。

サステナビリティ戦略会議は、当社の執行役員及び経営企画部長をはじめ、中核事業会社(コスモ石油㈱、コスモ石油マーケティング㈱、コスモエネルギー開発㈱)の社長及びサステナビリティ担当役員、常勤監査等委員で構成されます。当戦略会議において、第7次連結中期経営計画におけるマテリアリティの活動の実績・評価を行い、重要なものを取締役会に報告しています。また、サステナビリティ戦略会議の実務機関として、サステナビリティ推進部長を事務局長とするサステナビリティコミッティを必要に応じて開催しています。2023年度はサステナビリティ戦略会議を計7回開催し、15件の議題を討議しました。そのうち7件の議題について取締役会へ審議、付議・報告しました。サステナビリティ戦略会議にて討議された事項は、必要に応じてサステナビリティ連絡会を通じ、グループ各社へ共有しています。加えて、取締役及び執行役員が、サステナブル経営を推進していくにあたり、2022年度よりESG目標への取組に対する評価も役員報酬に反映しています。

また、中核事業会社及び準中核事業会社(丸善石油化学㈱)に、それぞれの機能に応じた委員会を設置し、当社のサステナビリティ戦略会議と連携をとることによりグループ全体の統制を図っています。

 

0102010_008.png

 

②戦略(マテリアリティの特定)

2023年4月の第7次連結中期経営計画のスタートに合わせ、当社グループは目指すべき2050年の社会の実現に向け、社会と当社グループの持続的な発展と中長期的な企業価値及び業績に影響を与える重要なESG課題(マテリアリティ)を見直し、以下の8課題を特定しました。

 

0102010_009.png

 

最重要マテリアリティは、持続的な価値創造のためのマテリアリティである「気候変動対策」「クリーンなエネルギー・製品・サービスの提供」「収益事業の構造改革」と、事業継続の基盤となるマテリアリティである「安全操業・安定供給」「グループリスクマネジメントの強化」「コンプライアンスと理念・価値観の共有」「人材の活躍推進・健康増進・働きがいの向上」「デジタル変革(DX)」に分類されます。

持続的な価値創造のためのマテリアリティは、連結中期経営計画を社会課題の観点からも推進し、それらを事業継続の基盤となるマテリアリティが支えます。当社グループでは、マテリアリティのあるべき姿の実現に向けたさまざまな取組を実施しています。

0102010_010.png

 

③リスク管理

当社グループは、リスクマネジメントをマテリアリティの一つと位置づけ、事業活動を通じて発生するリスクを把握の上、適切な管理体制を整備し、計画・実践・評価・是正措置のサイクルを構築しています。リスク管理の詳細については「3 事業等のリスク」を参照ください。

 

④指標及び目標

特定した各マテリアリティにおいて、あるべき姿とKPIを定めて進捗管理を行っております。

マテリアリティ

あるべき姿

主なKPI

2023年度実績

気候変動対策

・GHG排出量(注)が適切に管理されている状態

・2050年カーボンネットゼロ達成に向けて進捗している状態

GHG排出量削減:

2030年度 30%以上

(2013年度比)

15%削減

CO₂排出削減量

(Scope1、2)

(2013年度比)

951千t-CO₂削減

CO₂削減貢献量

483千t-CO₂貢献

クリーンなエネルギー・製品・サービスの提供

・顧客のニーズに合致したクリーンな燃料を開発し、提供できている状態

・国内再生可能エネルギー発電のリーディングカンパニーとなっている状態

・バリューチェーン全体でクリーンな製品を開発し、提供できている状態

・低炭素・脱炭素化に対応した技術・サービスを開発し、提供できている状態

クリーン燃料の供給

バイオETBE 240千KL

・バイオETBEの供給:297千KL

・廃食用油原料のSAF供給:2025年度約3万KL/年に向け設備建設中

・風力発電設備容量

・その他再生可能エネルギー発電設備容量

・風力発電設備容量(当期末時点):295MW

・その他再生可能エネルギー事業を検討中

・次世代原料の供給量

・化石燃料以外の売上

・新規事業の研究開発費・投資額

次世代原料及び新規事業に関する研究開発に取り組み中

収益事業の構造改革

・既存事業で上げた収益を新たな事業に投資することで、脱炭素社会において事業収益を上げている状態

・クリーン技術を中心とした新規事業により企業価値の向上が図られている状態

新規事業(New)への投資額

2023年度はSAF供給事業を中心に投資を実施

 

 

マテリアリティ

あるべき姿

主なKPI

2023年度実績

人材の活躍推進・健康増進・働きがいの向上

・年齢・性別・国籍・職種・所属・職歴にかかわらず、あらゆる従業員が能力を最大限に発揮できる状態

・多様な意見を取り入れた活発な議論がなされ、意思決定がなされている状態

・過重労働やハラスメントが防止できており、従業員が安心して健康に働ける状態

・従業員が自らの心身の健康管理に進んで取り組み、健康管理・増進に努めている状態

・従業員が事業戦略の実現に向け、自律的に強み、専門性を向上させ、活かしている状態

・従業員が活力高く挑戦し、働きがい・やりがいを持って持続的に成長している状態

・女性管理職比率:

 2025年度 10%以上

・新卒学卒女性採用比率:

 50%以上

・女性管理職比率:7.1%(2024年4月1日現在)

・新卒学卒女性採用比率:53%(2024年4月入社者含)

・ストレスチェックの受検率(ココロの健康)

・特定保健指導実施率(カラダの健康)

・ストレスチェック受検率:98.7%

・特定保健指導実施率の向上に向けた健康への取組を実践中

従業員の育成・研修に対する投資額

研修費用:年間13万円/人

従業員意識調査「仕事のやりがい・誇り」のスコア:60ポイント以上

従業員意識調査スコア:

60ポイント

コンプライアンスと理念・価値観の共有

・法令・社規規範が遵守できている状態

・役員・従業員等がグループ理念、方針、社内規程を認識・遵守できている状態

・企業行動指針・方針が浸透していて、個々が適切な判断ができる状態

コンプライアンス違反件数

重大コンプライアンス違反件数:ゼロ件

従業員意識調査スコア

・コンプライアンス教育:83%以上

・通報窓口の認知度:

 94%以上

・企業行動指針の理解:72%以上

従業員意識調査スコア

・コンプライアンス教育:82%

・通報窓口の認知度:

 94%

・企業行動指針の理解:74%

グループリスクマネジメントの強化

・オペレーショナルリスクに加え、自社にとっての戦略リスク(機会も含む)が識別できており、適切なリスクヘッジ、リスクテイクができている状態

・グループ全体の重大リスクが把握・管理できている状態

・コスモエネルギーグループ重点取組リスクのモニタリング

・各社重点取組リスクのモニタリング

・コスモエネルギーグループ重点取組リスク及び各社重点取組リスクの選定、リスク低減計画・実施評価を実行

・ERM(全社的リスクマネジメント)の体制と手法構築に関する方針について決定

 

 

マテリアリティ

あるべき姿

主なKPI

2023年度実績

デジタル変革(DX)

・ビジネス変革を実現すべく、デジタル技術を活用して仕事の進め方を変え、変革に挑戦し続ける企業文化が醸成されている状態

・顧客や従業員に対して、データ利活用を軸とし、社内外の課題を解決するためのソリューションを提供することで、社内外のCX(顧客体験価値)向上が図られている状態

データ活用コア人材の育成:2025年度 900名以上

・データ活用コア人材の育成:389名

・人材創出の目標に向け、座学研修、業務活用及び事例横展開や各部署とのコミュニケーション実施等の取組によりDXへの意識改革を推進中

安全操業・安定供給

・従業員の傷害が防止できている状態

・プラント事故及び製品(品質)事故が防止できている状態

・操業地域や周辺住民の安全を脅かさない操業ができている状態

・災害時や非常時等も含めて、エネルギーが安定的に供給できている状態

・労災件数

・事故件数

・環境影響のある事故件数

・災害時・非常時の供給及び販売体制:24時間以内の再開

・重大労働災害件数:

 ゼロ件

・重大事故件数:2件

・BCP発動:実績なし

 

(注)GHG排出量はScope1、2排出量から、再生可能エネルギー及びバイオ燃料による削減貢献分を控除した数値となります。

 

 

(2)気候変動への対応

当社グループは、気候変動の視点をより一層取り入れた経営計画を策定し実行していくことが、地球や社会、そして私たちの持続的な発展に不可欠であるとの認識から、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に賛同し、2021年5月に「2050年カーボンネットゼロ」宣言を行い、その実現に向けた取組と工程をとりまとめたロードマップを2022年5月に公表いたしました。

このロードマップの策定は、最重要マテリアリティの一つとして特定した「気候変動対策」に対応するものであり、TCFDにおけるシナリオ分析や外部環境・内部環境の分析等を実施し、ロードマップに反映させております。2023年5月には、サプライチェーン全体を含めたロードマップの改定を行い、5つの重点取組テーマを掲げ、取組を推進しています。

第7次連結中期経営計画においては、『Oil & New~Next Stage~』に基づき、グリーン電力サプライチェーン強化、次世代エネルギー事業の拡大、石油事業の低炭素化を推進することで、持続可能なカーボンニュートラル社会の実現を目指しています。

 

0102010_011.jpg0102010_012.png

 

ガバナンス

気候変動に関するガバナンスは、サステナビリティ戦略のガバナンスに組み込まれています。当社は、サステナビリティ戦略会議において、気候変動関連の課題を含む重要な業務や方針に関する事項の審議を行っています。

気候変動に関する議題として、2050年カーボンネットゼロに向けたロードマップの改定等気候変動問題に関する対応方針、計画策定、指標等の審議及び決定を行いました。また、グループ全体の事業活動から生じる環境負荷を最小化させる環境保全活動(リスク低減施策)を実施しています。

サステナビリティ戦略会議において審議及び決定された内容は、構成員が担当する部署へ周知するとともに、事務局がサステナビリティ連絡会にて、グループ会社に連絡・報告しています。

2050年カーボンネットゼロに向けたロードマップについては、サステナビリティ戦略会議での討議を経て、2023年5月に取締役会において改訂決議を行っています。GHG排出削減に関する指標の設定と進捗管理についても同様に、サステナビリティ戦略会議において報告・討議した後、取締役会において決議・報告を行っています。

 

 

②戦略

(短期・中期・長期の気候変動関連のリスクと機会及びビジネスへの影響)

当社グループは、2050年カーボンネットゼロ社会の実現に向け、社会と当社グループの持続的な発展と中長期的な企業価値に影響を与える重要なESG課題(マテリアリティ)を特定しています。持続的な価値創造のためのマテリアリティとして、「気候変動対策」「クリーンなエネルギー・製品・サービスの提供」「収益事業の構造改革」を特定し、事業継続のための基盤となるマテリアリティの一つとして、「グループリスクマネジメントの強化」を特定しています。これらのマテリアリティに関する取組の進捗を計る指標として、再生可能エネルギー事業の拡大やGHG排出削減量を設定し、気候変動関連のリスクと機会の視点を取り入れながら、気候変動対策の取組を積極的に推進しています。

事業活動において想定しうる気候変動リスクと機会について、外部環境による事業環境の変化を想定し、

TCFD提言に示されている気候変動リスク項目に基づき重要度を検討しています。

 

当社グループが想定するリスクと機会の主な項目と影響は以下のとおりです。

0102010_013.png

対象範囲  石油精製/販売、石油化学、石油開発、電力(再生可能エネルギー等)

発生時期(短・中・長期)の考え方 短期:1年以内、中期:1~5年以内、長期:5年~20年

発生時の影響度  小:10億円未満、中:10億円以上~100億円未満、大:100億円以上

 

(シナリオ分析、戦略のレジリエンス)

当社グループのシナリオ分析では、石油事業、石油化学事業、石油開発事業を対象事業とし、2030年~2050年の事業影響を想定しています。

シナリオとして、4℃(成り行き)、1.5℃(より低炭素移行)の2つの温度帯におけるシナリオについて、一般的に利用されている国際エネルギー機関(IEA)のパラメーターを利用し、1.5℃シナリオでは、NZE、APSシナリオ、4℃シナリオでは、STEPSシナリオを選択し、IEAシナリオに不足する物理リスクの自然災害等の想定は、IPCCのRCP8.5、RCP6.0、RCP2.6や国内外の政府機関等のシナリオを参考として想定いたしました。

4℃シナリオでは、石油事業はグローバルで需要増加が見込まれる一方で、気候変動に起因する異常気象の頻発や激甚化により、風水害による装置や機器の故障を要因とする損失や、保険料の増加をはじめとするコストの増加が発生する恐れがあることが予想されます。

1.5℃シナリオでは、脱炭素化が大きく推進され、カーボンプライシングや排出量取引価格が高額化することから石油需要の減少も加速することが予想され、事業における排出削減やポートフォリオ見直しの必要性が高まることが認識されました。再生可能エネルギー事業において優位性を保つことができれば、売上を増加させる機会を獲得できることも認識され、エネルギー企業の事業ポートフォリオの変換が進み、太陽光、風力、水力、その他の再生可能エネルギー市場の更なる開拓が必要とされています。

このような分析に基づき、第7次連結中期経営計画のグリーン電力サプライチェーン強化、次世代エネルギーの拡大、石油事業の低炭素化の推進施策に反映させ、取組を進めています。

 

(気候変動シナリオによる財務影響評価)

シナリオ分析に基づき、4℃及び1.5℃シナリオにおける財務影響評価を行いました。以下の前提条件による試算の結果は次のとおりです。

4℃シナリオについては、4℃の世界観に基づき、自然災害による物理リスク、需要減による移行リスクについて試算し、1.5シナリオについては、1.5℃の世界観に基づき、需要減及び炭素税による移行リスクについて試算を行いました。

0102010_014.jpg

自然災害:(直近5年程度で最大の豪雨災害被害額×集中豪雨の年間発生率)+(石油・石油化学の保険料×集中豪雨の年間発生率)

需要減 :2030年の想定経常利益×需要変動率(IEA STEPS、APSの比率を参照)

炭素価格:2030~2050年のScope1・2想定排出量×炭素価格(IEA NZEを参照)

 

(主要なリスクへの対応策及び機会の取り込み)

今回のシナリオ分析では、主力事業である石油事業・石油化学事業・石油開発事業を対象範囲とし、2030年、2040年、2050年の断面で財務影響評価を実施しました。

気候変動リスクに対する機会側面として、当社は、Vision 2030において「グリーン電力サプライチェーンの強化」「次世代エネルギー拡大」を掲げています。今後、これらの事業を中心としたNew領域への投資を拡大させる計画としており、機会面のインパクト拡大に取り組む予定です。また、最新のシナリオを参考にした分析や機会の収益見通しを反映させる等の検討を行い、より長期断面での分析やその他事業への横展開、毎年更新される

IEA等のシナリオを参考にした分析の精度向上を実施し、定期的にサステナビリティ戦略会議で報告する等、

TCFD提言に沿った開示と経営戦略を一体化した体制強化に継続的に取り組みます。

 

③リスク管理

当社グループのリスクマネジメントについては「3 事業等のリスク」をご参照ください。

気候変動に関するリスクについては、グループ全社にまたがる重要な経営課題として、サステナビリティ戦略会議において継続的に議論を行う体制を整え、リスクの把握と対応状況の評価等を実施しています。

 

④指標と目標

当社グループでは、気候変動関連リスクに関し、「GHG排出量の削減」を重点課題としています。長期の

GHG削減目標としては、「2050年カーボンネットゼロ」の実現に向け、「2030年には自社操業に伴う排出量

(Scope1+2)を、削減貢献量を含め30%削減(2013年度比)し、2050年には、社会全体のカーボンニュートラル実現に貢献すべく、Scope3を含めたカーボンネットゼロを目指す」という方針を掲げています。

2023年度の当社グループの事業活動におけるGHG排出量について、Scope1は6,886千t-CO

Scope2は226千t-CO、Scope3は76,047千t-CO(カテゴリー1~15を対象に算定)でした。

 

2023年度の実績等、2023年度の取組、評価等の詳細については、2024年9月に更新予定の当社ウェブサイトの「サステナビリティサイト」をご参照ください。

https://www.cosmo-energy.co.jp/ja/actions/sustainability.html

 

 

(3)人的資本

当社グループは、Vision 2030を実現する人材集団を形成し、企業価値を高めることを目指しており、「人材の育成・開発」「組織風土」「健康」をメインテーマとして施策に取り組んでおります。2023年度より開始した第7次連結中期経営計画では「経営基盤の変革」を基本方針に掲げており、その1つの柱がHRX「人が活き、人を活かす人材戦略の実践」です。これまで以上に経営戦略と人材戦略を一体として捉え経営戦略を実現できる強い組織を作り上げるため、人材の価値の最大化を目指し各種施策や投資を行っています。

年齢、性別、国籍、職種、所属及び職歴等に関わらず、あらゆる役員及び従業員が公正に処遇され、能力を最大限に発揮できる環境づくりを目指しています。

 

①戦略

(人材戦略のありたい姿と基本方針)

当社グループは、人材を経営資本と捉え、その価値を最大限に引き出すことが重要であると認識しています。従業員が健康でエンゲージメント高く活き活きと働ける環境を整えウェルビーイングを実現すること、また従業員の自律的な成長を促し個の能力と組織の力を向上させることで、経営戦略の早期達成を目指します。

グループ企業行動指針においても、人材の活用及び能力の向上に取り組むことを示していますが、その指針の下、基本方針として「人材活用方針」「健康経営方針」を以下のとおり定めています。

 

a人材活用方針

多様な人材の活躍推進

多様な価値観を尊重し、年齢、性別、国籍、職種、所属及び職歴等に関わらず、あらゆる従業員が公正に処遇され、能力を最大限に発揮できる環境づくりを行います。

ジョブ型志向による能力発揮の促進

それぞれの従業員に求められる役割、職責及び目標を明確にし、能力を最大限に発揮した従業員に報います。

自律的成長の促進

当社グループ全体の収益及び成長に「こだわり」を持ち、自ら課題を設定して課題の解決に取り組むことができる従業員を育成していきます。

個の強化の促進

それぞれの従業員に求められる育成課題に対し、業務目標や行動計画を明確にして自律的キャリアの形成や行動変容を促し、その成長を評価していきます。

 

b健康経営方針

取組体制

当社グループは、役員及び従業員並びにコスモ石油健康保険組合と一体となって、役員及び従業員の心身の健康維持・増進に取り組みます。

自律的な健康管理・増進の促進

当社グループは、役員及び従業員が自らの心身の健康管理に進んで取り組み、健康の維持、増進及び傷病の予防に努めることを促進していきます。

健康リスクの予防及び早期対応等の取組

当社グループは、グループ各社の各事業場における業務内容や勤務体系等に合わせて健康リスクを把握し、疾病及びメンタルヘルス不調の予防、早期対応及び重症化予防並びにそれらの再発防止に取り組みます。

職場環境づくり

当社グループは、役員及び従業員の健康を大切にする職場風土を醸成し、健康で働きがいのある環境づくりに取り組みます。

コミュニケーションと教育

当社グループ及びコスモ石油健康保険組合は、本方針をすべての役員及び従業員に周知するとともに、継続的な教育及び啓発活動によって、役員及び従業員が自らの健康を管理し、維持、増進及び傷病の予防に努める健康意識(ヘルスリテラシー)向上に取り組みます。

 

 

(第7次連結中期経営計画期間中の重要テーマ)

第7次連結中期経営計画期間において当社グループは、下記4つを重要テーマと捉え、人事施策を実行しています。

a人材育成強化

育成体系の整備、ジョブ型の人材マネジメントの推進、経営人材の育成及びラインを通じた育成を強化するとともに、整備したグループ人事基盤をベースに、従業員の自律的キャリア形成意識を促進しています。2023年度は、従来の自己申告制度を改定したキャリア申告(注1)を開始し、ジョブチャレンジ制度(注2)においては従業員個々人の能力伸長に重点を置いたものに改定する等、より自律的キャリアを意識した制度としています。

bダイバーシティ&インクルージョン

勤務地限定制度、テレワーク制度の継続等の制度対応、柔軟な働き方の定着と併行し、従業員の意識改革に注力することで、画一的な価値観・マネジメントスタイルからの転換を図り、多様な価値観・知識・スキルを融合させるよう、取り組んでいます。2023年度は1on1の推進によりコミュニケーションが活性化され、エンゲージメント指数は2025年度目標を早期達成しました。

c健康経営の推進

健康管理を経営課題として戦略的に捉え、収益・企業価値向上への投資として取組んでいきます。経営陣のコミットメントやラインを通じたフォロー、健康保険組合と協同したコラボヘルス等を進めています。2023年度には産業医/医療職・健康保険組合・重点取組企業の人事部門からなる健康経営推進委員会の設置を決定、意識改革に向け様々なセミナーを実施しました。結果として「健康経営優良法人2024」に認定され、2019年から6年連続での認定を受けています。

dグループ人事基盤の構築

人事システムを刷新し、グループ内の人材情報を可視化することで、従業員のキャリア自律を促すとともに、経営戦略に応じた適所適材を実現します。2023年度は新しい人材育成ツールとしてCTP(コスモタレントパレット)をリリースし、育成に関する情報を一元管理できるようにしました。

 

(注1)従業員が自らの短期~中長期のキャリアについてシステム上で申告し、上長と面談する制度

(注2)従業員が希望の仕事や挑戦したい職種に自ら手を挙げて応募し、選考を経て異動を実現できる制度

 

②指標と目標

Vision 2030に向け、第7次連結中期経営計画では人材戦略の実行度を確認する指標として目標値を設定し、人的資本に関する情報開示及びステークホルダーとの対話強化にも取り組んでいます。

非財務指標

2025年度目標

2023年度実績

従業員一人あたり教育投資  (注)1

18万円

13万円

女性管理職比率       (注)2

10

(2026年4月1日時点)

7.1

(2024年4月1日時点)

男女賃金格差        (注)3

75以上継続

76

男性育休取得率       (注)4

50以上継続

62

エンゲージメント指数    (注)5

60ポイント

60ポイント

(注)1 当社及び中核事業会社(コスモ石油㈱、コスモ石油マーケティング㈱、コスモエネルギー開発㈱)を中心とした従業員を対象としています。

2 当社及び中核事業会社を中心とした基幹職従業員を対象とし、コスモ石油㈱から社外への出向者を含んでいます。

3 当社及び中核事業会社を中心とした従業員のうち正規雇用労働者における比率となります。

4 当社及び中核事業会社を中心とした従業員を対象としています。育児休職制度に加え、就業期間においても出産休暇や子の看護を目的とした休暇、テレワーク制度やコアタイムなしのフレックス制度等により、柔軟な働き方が可能となっています。育児休職を一つの選択肢としつつ、従業員が自律的に制度を選択しながら、育児との両立ができる環境を整えています。

5 従業員意識調査における「仕事のやりがい・誇り」に関する3項目のプラス回答者の割合を指し、当社及び中核事業会社に在籍する従業員のみを対象としています。

6 当社及び中核事業会社の従業員はコスモ石油㈱からの出向となり、人事関連制度が同一となることから、対象の範囲を上記のとおりとしております。

 

3【事業等のリスク】

当社グループは、リスクマネジメントをマテリアリティの一つと位置づけ、事業活動を通じて発生するリスクを把握の上、適切な管理体制を整備し、計画・実践・評価・是正措置のサイクルを構築しています。当社グループのマテリアリティについては「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (1)サステナビリティ課題全般について ④指標及び目標」をご参照ください。

また、当社グループを取り巻く事業環境の変化や様々なリスクに対し、より適切に対応するため、中長期の視点を持つとともに、リスクを事業機会として捉え、企業価値を最大化しようとする全社的リスクマネジメント (ERM:Enterprise Risk Management)の構築に取り組んでいます。COSO(米国トレッドウェイ委員会支援組織委員会) ERMフレームワークの考え方を参考に2023年9月12日開催のサステナビリティ戦略会議において、ERMの体制と手法構築に関する方針について決定しました。リスク抽出においては、経営によるトップダウン型のアプローチ手法を導入するとともに、リスク管理においてはリスクオーナー設定によるリスクカテゴリ毎のグループ横断的なリスク管理を推進しています。

なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)リスク管理体制

当社グループでは、各社の事業を発展的かつ安全に運営するため、サステナビリティ戦略会議にてグループ全体に関わるリスクへの対策を審議するとともに、各社におけるリスクへの取組状況を集約して、対策の進捗を討議しています。その結果を取締役会へ報告するとともに、サステナビリティ連絡会を通じて各社へ展開します。

また、サステナビリティ戦略会議の実務機能を担う機関として、サステナビリティ推進部長を事務局長とするサステナビリティコミッティを必要に応じて開催しています。

 

0102010_015.png

 

 

(2)リスク管理の運営

経営視点による中長期的リスク(経営層へのヒアリング・アンケートによりトップダウンで抽出)及び各部門・グループ各社からボトムアップで抽出したリスクのうち、影響度や発生可能性が上位かつ、マテリアリティとの関連性や業界特性上の重要性が高いリスクを選定し、サステナビリティ戦略会議で経営層による議論のもと、トップリスクとして決定し、取締役会へ報告しています。

決定したトップリスクについては、グループ横断的に統制を図るため、実務責任者として当社グループ全体におけるグループリスクオーナーと、中核事業会社におけるリスクオーナーを設定します。

グループリスクオーナーであるグループ全体の統括責任者が、トップリスクへの対策とその計画策定、並びにKPIを設定し、モニタリング・レビューを行い、更なる改善活動に繋げます。中核事業会社のリスクオーナーはグループリスクオーナーとの連携のもと、各社においてリスクへの対策とその計画策定、並びにKPIを設定し、モニタリング・レビューを行い、更なる改善活動に繋げます。

また、トップリスクに含まれない、各部門・グループ各社から抽出したリスクについても、全社的リスクマネジメントの中で管理しております。

 

リスク管理の業務フロー図

0102010_016.png

 

 

(3)トップリスク

2024年度期初に決定したトップリスクは、以下に記載のとおりです。トップリスクについては「(2)リスク管理の運営」に記載のとおり決定し、管理します。

No.

トップリスク

カテゴリ

マテリアリティとの関連

想定されるシナリオ

脱炭素化の進展による石油需要の減少・事業資産への影響

戦略

自動車のEV化やグリーン電力発電が想定外のスピードで浸透すること等により、石油製品需要の急減や取引先の方針変更等が発生し、事業や事業資産に影響を及ぼす

環境規制・気候変動対策の強化に伴うポートフォリオ・戦略投資への影響

戦略

環境規制・気候変動対策強化の動向に合わせた対応が困難となり、戦略投資に影響が発生する、あるいは投資回収が長期化する等、経済損失を被る

カーボンニュートラル燃料への対応遅れ

戦略

カーボンニュートラル燃料に関して、上市されている当該燃料の調達が困難となる、あるいは新しい技術開発・導入が遅れる、または失敗することにより、対応が遅れる

原料・資材価格の変動

(注)

戦略

 

政情変化や経済変化等に伴う原油やLNG等の資源価格のボラティリティ上昇や、資機材、労務費等のコスト上昇、為替レートの変動により業績が悪化する

労働市場の変化による人材確保・育成の困難化

戦略

労働人口が減少する中で、既存・新規事業の両面で多様性かつ専門性を持った人材の確保・育成が困難になる

自然災害

戦略

地震や津波等の大規模自然災害により当社設備が壊滅的な被害を受け、早期復旧が困難となり巨額の損失を被る

品質不正

業務

品質管理が徹底されていないことにより、品質不正が発生することで、広域にわたる製品回収等により損失を被るほか、ステークホルダーからの信用を失う

サプライチェーンの中断

業務

当社グループのサプライチェーンは広範囲に及ぶため、取引先における人員不足や政治情勢の悪化等により、原油生産拠点での操業停止、船舶輸送、製油所の整備や給油所の運営等において、サプライチェーンの中断、損失が発生する

情報セキュリティリスク

業務

・サイバー攻撃により業務停止や情報漏洩、身代金請求等の被害が発生する

・投資あるいは専門人材等の不足によりサイバー攻撃の対策を十分に行うことができず、被害が増大する

・顧客情報管理の委託先に対する指導・監査を適切に行うことができず、個人情報が流出し、顧客からの信頼を失う

10

生産設備における事故、不具合・故障

業務

製油所・油田・発電所での事故や不具合・故障により、操業継続及び自然環境・生物に影響が発生し、損失を被るほか、キャッシュ・フロー創出に影響する

11

内部統制不備による不正/不適切行為の発生

財務・

コンプライアンス

内部統制システムが十分に機能せず、人員・ノウハウやIT技術導入不足等により重大な不備や不正が発生し、行政指導や刑事罰を受けるほか、ステークホルダーからの信用を失う

(注)2024年5月9日に公表した2025年3月期通期連結業績予想の経常利益へ与える原油価格変動、為替変動の感応度を測定しております。2024年4月~2025年3月の前提条件は原油価格85ドル/バレル、為替145円/ドルとしており、前提より原油価格+1ドル/バレルあたりの影響額及び為替+1円/ドルあたりの影響額は以下のとおりであります。なお期間中において原油価格、為替に変動なく一定に推移した前提で試算しております。

0102010_017.png

 

 

なお、トップリスクに関連するリスク顕在化の可能性、影響の内容及び対策については次のとおりであります。

 

(トップリスクNo.1 脱炭素化の進展による石油需要の減少・事業資産への影響)

当社グループの売上高のうち主要な部分を占めるガソリン・灯油・軽油は、一般消費者の需要動向の影響を強く受けます。燃料油の国内需要は、少子高齢化や人口減少、自動車ハイブリッド化等による燃費改善や燃料転換等の構造的要因から減少傾向が継続するものと想定しております。また、石油化学製品は海外での石油化学プラントの新増設により、需給が緩和される可能性があります。また、油価の下落、産油国の政策変更による供給先変更及び国内のみならず海外も含めた経済や政治の動向等で需要が変動した場合は、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

そのため、当社グループは、需要減少に備え国内販路の確保や収益油種を集中して生産できる体制の構築等に取り組んでおります。また、石油事業以外の新たな取組としては、グリーン電力販売の拡大、蓄電事業の実証の着実な推進、水素事業の推進に取り組んでおります。

 

(トップリスクNo.2 環境規制・気候変動対策の強化に伴うポートフォリオ・戦略投資への影響)

再生可能エネルギー事業に関する制度の変更など、環境規制・気候変動対策の強化が発生し、早急な対策が必要となり、事業の経済性を十分に確保できず、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

風力発電事業では、開発段階において各種許認可の取得に加え、風況観測及び環境アセスメントが必要となるため、建設工事着工前から一定程度の先行的な投資が発生します。開発段階で事業化を断念しなければならない事象が発生し、投資額が回収できない場合は、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

洋上風力発電事業では、当社グループが出資する特別目的会社(SPC)を通じて事業化検討を進めておりますが、入札の結果、失注となった場合等、事業化を断念しなければいけない事象が発生した場合は、出資額が回収できないと判断し減損処理を実施するため、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、洋上風力事業へは多数の企業が参画しており競争が激化していることから、出資に対する収益性が低下する可能性があります。

これら政策、開発、出資に関するリスクについてはそれぞれ施策を講じてリスク低減に取り組んでおります。

一般海域における洋上風力発電事業の開発は「海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律」(平成30年法律第89号)に則って行われ、具体的な手続、スケジュールは経済産業省及び国土交通省により進められています。当社グループが想定している時期に促進区域に指定されず、事業計画に遅れが出るもしくは中止となった場合は、当社グループの経営成績及び財政状態及び将来の成長性に影響を及ぼす可能性があります。

上記に対し、当社グループでは事業候補地におけるフィージビリティスタディ等を実施し、リスク低減に取り組んでおります。

なお、当社グループにおける気候変動に関するリスク及び取組については、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2)気候変動への対応」をご参照ください。

 

(トップリスクNo.3 カーボンニュートラル燃料への対応遅れ)

カーボンニュートラル燃料は、既存の石油製品サプライチェーンの活用かつ、液体燃料の低炭素化を促進する技術であることから脱炭素社会の実現への期待は大きくなっています。一方で、現状では生産効率やコスト等が課題であり、普及に向けて技術開発に取り組む必要があります。脱炭素社会が到来し、カーボンニュートラル燃料が主流となった環境において、当社グループの技術開発の失敗やカーボンニュートラル燃料を扱えない場合には製品の供給が困難となり、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、脱炭素社会に向けた様々な技術開発・検討を行っており、リスク低減に取り組んでおります。

 

(トップリスクNo.4 原料・資材価格の変動)

原油価格は、世界経済の動向や産油国の生産方針等の需給動向に加え、中東産油国の周辺地域を中心とした戦争勃発や政情の不安定化、テロ等の不測の事態を含む多様な要因により変動する恐れがあります。石油開発事業における原油価格に関するリスクに加え、当社グループは、原油在庫の価格を総平均法で評価しているため、原油価格の下落局面では、期初の在庫単価と期中に仕入れた下落した在庫単価が平均され売上原価を押し上げることになり、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループの主要な石油製品コストは、国際市況である原油価格や為替レートを反映した形で決定されるのに対し、販売活動は主に国内で行っており、販売価格は国内市況を反映して決定されます。国際市況と国内市況とのギャップやタイムラグが生じた場合は、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

また、原油価格の下落により、棚卸資産の期末における正味売却価額が帳簿価額よりも低下し、棚卸資産の収益性が低下したと判断する場合があります。この場合、棚卸資産の収益性の低下を反映するために計上した評価損が、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

なお、当社グループは原油及び石油製品の輸出入に係る価格変動のリスクをヘッジすることを目的としてデリバティブ取引を利用しています。具体的な取組については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 金融商品関係」をご参照ください。

資材価格の変動に関して、洋上風力設備の建設工事着工は入札時からのリードタイムが数年あるため、その間に鋼材や労務費等の上昇が発生した場合、建設費用が増加する可能性があります。また、海外からの資機材搬入の遅延等さまざまな要因により、工事が遅延する可能性があります。建設費増加または工事遅延が発生した場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性がありますが、当社グループではパートナーとの提携等により、これらのリスクの低減に努めております。

 

(トップリスクNo.5 労働市場の変化による人材確保・育成の困難化)

近年、労働人口が減少する中で有能な人材の確保をめぐる競争は激化しています。在籍している社員の流出防止や、経営戦略の推進に必要な人材の確保・育成ができない場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態が悪影響を受ける可能性があります。

そのため、当社グループは、事業成長の源泉及び組織活力の維持を担う人材の継続的な確保と育成に努めています。既存・新規事業の両面で多様性かつ専門性を持った人材の確保・育成に対応するため、処遇制度の見直し、自律的キャリア形成強化、人材育成への投資強化、 女性・キャリア採用強化に取り組んでおります。具体的には、社内公募制度改定、管理職育成プログラム強化、自己啓発への補助拡大等を実施しています。当社グループの取組については、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (3)人的資本」をご参照ください。

 

(トップリスクNo.6 自然災害)

自然災害の発生時には、当社グループの設備が被害を受け巨額の損失を被るほか、何らかの要因で操業が停止する可能性があります。

そのため、当社グループでは巨大地震等の自然災害を想定し、その影響を最小限に抑えるため、非常用電源設置、耐震改修、BCPマニュアル整備等を行っています。BCPの強化として、2023年度の首都直下及び南海トラフ地震を想定した各訓練では、演習対象を従来「発災から2時間」としていたものを「発災から24時間」にまで拡大し、対応方針策定などの意思決定に重点を置いて実施しました。訓練を通じて抽出されたBCPの体制や訓練運営上の課題に対して、対策を進めております。

 

(トップリスクNo.7 品質不正)

当社グループは、日々製品・サービスの品質管理体制の強化に努めておりますが、出荷後に品質不正が判明することで、広域にわたり製品回収を行うことにより多額の損失を被るだけでなく、顧客からの信頼喪失やブランドイメージの低下により、当社グループの経営成績及び財務状態に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループにおいて、過去に品質管理の不備が顕在化した事案を踏まえ、教育の徹底、試験法管理の見直し、監査の強化等の対策を継続実施し、リスク低減に取り組んでおります。

 

(トップリスクNo.8 サプライチェーンの中断)

昨今のウクライナ紛争の長期化、中東地域や東アジア地域の政情変化、欧米及び中国の経済変化に伴う原油価格の急激な変動、テロ等の不測の事態により原油調達が影響を受ける可能性があります。また、原油生産拠点での操業停止のほか、必要物資の確保が困難になる等の要因により、製油所の整備ができず操業停止に至る場合や給油所の運営が中断された場合は、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。そのため、当社グループにおける必要物資確保のために施策を講じてリスクの低減に取り組んでおります。

なお、サプライチェーンにおける人権リスク等の把握が遅れ、リスク発現時にサプライチェーンの変更が求められるほか、中断を招く可能性があります。人権リスクに対しては、2021年に策定した人権方針に基づき、2023年8月から11月にかけて人権デューデリジェンスを実施しました。

 

 

(トップリスクNo.9 情報セキュリティリスク)

サイバー攻撃によって、事業活動の混乱、機密情報の喪失、個人情報の漏洩等が発生する可能性があり、近年その可能性は高まっております。また、何らかの要因により個人情報を含む機密情報の消失、漏洩、改ざん等のリスクが顕在化した場合には、事業運営に支障をきたす恐れがあるほか、顧客からの信頼を失い、ブランドイメージが低下し、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。そのため、当社グループではランサムウエアへの対応手順の整備、ウイルス対策や個人情報保護等の対策強化を実施しております。さらに、顧客情報を含む機密情報の管理、取り扱いにつきましては、社内体制、社内規程等を整備し、外部への委託先に対して監督管理及び監査を実施しております。

 

(トップリスクNo.10 生産設備における事故、不具合・故障)

設備の老朽化や人為的なミスを原因とする事故や労働災害によって、製油所、物流基地及び油槽所等の操業が停止する可能性があります。また、製油所、物流基地及び油槽所等以外でも給油所、タンカー及びローリーでの事故で事業運営に支障をきたす場合は、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、事故を未然に防止するために、OMS(注1)の仕組み強化、千葉製油所・四日市製油所のスーパー認定に引き続き堺製油所のA認定(注2)取得を目指すことで、安全安定操業の水準向上に取り組んでおります。加えて、APM(注3)の導入範囲拡大やデジタルツイン構築、各種データ連携、VRデータ整備などDX強化に取り組むことで、トラブルの低減及び更なる稼働率の向上を目指しております。

 

(注1)OMS(Operations Management System):「あるべき姿(世界トップレベルの安全安定操業)」と現状のギャップを洗い出し、「規則・マニュアル化」、「教育・訓練」、「定着・実践」、「継続的改善」を繰り返すことで、「あるべき姿」をめざす操業マネジメントシステム。

(注2)A認定:従来のスーパー認定制度に、テクノロジー活用やサイバーセキュリティの要件などが追加された高圧ガス保安法における認定制度(正式名称:認定高度保安実施者制度)。

(注3)APM(Asset Performance Management System):グローバルスタンダードの保全・設備信頼性業務プロセスをシステムに記憶させ、保全のビッグデータを効率的かつ効果的に管理し、網羅性・予見性・管理性を高めることができる。

 

(トップリスクNo.11 内部統制不備による不正/不適切行為の発生)

組織内外の環境の変化やコンプライアンス違反等が生じ、当社グループが構築した内部統制システムが有効に機能しない場合、ステークホルダーの信頼を失い当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。そのため、当社グループでは、法令等の遵守のために財務報告に係る内部統制を含む、有効な内部統制システムの整備、運用及び強化を図っております。内部通報制度については、体制見直しや教育の強化を実施いたしました。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況

 当社グループは、第7次連結中期経営計画において、スローガンを『Oil&New~Next Stage~』として、「収益力の確保」「成長に向けたNew領域の拡充」「三位一体の資本政策実現」「経営基盤の変革」の4点を基本方針に、非財務資本の活用による事業戦略の実現と、これによる収益力の向上、資本政策の充実、成長事業の拡大を図り、持続的な企業価値の向上に取り組んでおります。また、当連結会計年度において、ROE及びPER向上の取組を加速し、PBR1倍について早期に達成いたしました。

 こうした経営活動の結果、当連結会計年度の連結経営成績は、売上高は2兆7,296億円(前期比△623億円)、営業利益は1,492億円(前期比△146億円)、経常利益は1,616億円(前期比△29億円)、親会社株主に帰属する当期純利益は821億円(前期比+142億円)となりました。

 各セグメントの業績を示すと次のとおりであります。

(石油事業)

 石油事業につきましては、前期比で原油価格が下落したこと等により、売上高は2兆4,456億円(前期比△59億円)となりました。一方、国内市況が良化したこと等により、セグメント利益は907億円(前期比+250億円)となりました。なお、在庫評価の影響を除くセグメント利益は913億円(前期比+472億円)となっております。

(石油化学事業)

 石油化学事業につきましては、前期比で製品市況が悪化したこと等により、売上高は3,618億円(前期比△784億円)、セグメント損失は78億円(前期はセグメント利益38億円)となりました。

(石油開発事業)

 石油開発事業につきましては、前期比で原油販売価格が下落したこと等により、売上高は1,278億円(前期比△102億円)、セグメント利益は683億円(前期比△162億円)となりました。

(再生可能エネルギー事業)

 再生可能エネルギー事業につきましては、前期比で風力発電における風況が良化したこと等により、売上高は143億円(前期比+21億円)、セグメント利益は28億円(前期比+2億円)となりました。

 

 当連結会計年度末の連結財政状態は、総資産は2兆2,119億円となり、前連結会計年度末に比べ911億円増加しております。負債合計は1兆4,852億円となり、前連結会計年度末に比べ278億円増加しております。純資産合計は7,268億円となり、前連結会計年度末に比べ634億円増加しております。

 

②キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は1,055億円となり、前連結会計年度末に比べ437億円増加しております。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果、資金の増加は1,779億円(前期は81億円の資金の増加)となり、これは主に、税金等調整前当期純利益を計上したこと等によるものです。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果、資金の減少は328億円(前期は812億円の資金の減少)となり、これは主に、有形固定資産の取得による支出等によるものです。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果、資金の減少は1,042億円(前期は811億円の資金の増加)となり、これは主に、コマーシャル・ペーパーの減少等によるものです。

 

 

③生産、受注及び販売の実績

a生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

生産高(百万円)

前年同期比(%)

石油事業

 

1,553,275

82.6

石油化学事業

 

451,792

86.6

石油開発事業

 

12,645

64.4

合計

2,017,713

83.3

(注)1 自家燃料は除いております。

2 委託処理分を含み、受託処理分は除いております。

3 上記の金額にセグメント間の生産高は含まれておりません。

 

b受注実績

当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前年同期比(%)

受注残高(百万円)

前年同期比(%)

その他

13,091

104.2

12,979

164.0

 

c販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(百万円)

前年同期比(%)

石油事業

 

2,341,027

100.5

石油化学事業

 

313,115

84.5

石油開発事業

 

39,141

74.4

再生可能エネルギー事業

 

14,156

116.8

その他

 

22,129

78.7

合計

2,729,570

97.8

(注)1 上記の金額にセグメント間の販売高は含まれておりません。

2 最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自  2022年4月1日

至  2023年3月31日)

当連結会計年度

(自  2023年4月1日

至  2024年3月31日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

キグナス石油㈱

353,336

12.7

363,430

13.3

※販売実績には、当該顧客と同一の企業集団に属する顧客に対する販売実績を含めております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①重要な会計方針及び見積り

 当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり採用した会計方針及びその適用方法並びに見積りの評価については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」、財務諸表の作成にあたり採用した会計方針及びその適用方法並びに見積りの評価については、「第5 経理の状況 2 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 重要な会計方針」に記載のとおりです。

 なお、連結財務諸表の作成に関して、認識している重要な見積りを伴う項目については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 重要な会計上の見積り」を参照ください。

 

 

②経営成績の分析

a売上高

 売上高は、前連結会計年度に比べ623億円減少し、2兆7,296億円となりました。これは主に、石油化学事業において製品市況が悪化したこと等によるものです。

 

b売上原価、販売費及び一般管理費

 売上原価は、前連結会計年度に比べ612億円減少し、2兆4,099億円となりました。売上高に対する売上原価の比率は、0.2ポイント減少して、88.3%となりました。

 販売費及び一般管理費は、前連結会計年度に比べ135億円増加し、1,704億円となりました。売上高に対する販売費及び一般管理費の比率は、0.6ポイント増加して、6.2%となりました。

 

c営業利益

 営業利益は、前連結会計年度に比べ146億円減少し、1,492億円となりました。これは主に、石油開発セグメントにおいて原油販売価格が下落したこと等によるものです。

 

d営業外損益

 営業外損益は、前連結会計年度に比べ117億円改善し、124億円の利益となりました。これは主に、為替差益が88億円増加したこと等によるものです。

 

e特別損益

 特別損益は、前連結会計年度に比べ45億円改善し、67億円の損失となりました。これは主に、受取補償金が64億円増加したこと等によるものです。

 

f親会社株主に帰属する当期純利益

 親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に比べ142億円増加し、821億円となりました。これは主に、法人税等が前連結会計年度に比べ68億円減少し646億円となったこと及び非支配株主に帰属する当期純利益が前連結会計年度に比べ57億円減少し83億円となったこと等によるものです。なお、1株当たりの当期純利益は、938.11円となりました。

 

 なお、セグメントごとの経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

(石油事業)

 国内市況が良化したこと等により、セグメント利益は前連結会計年度に比べ250億円増加し、907億円となりました。

 2024年度は、海外市況の悪化を見込むことにより当連結会計年度比で減益となる見通しとなっております。

(石油化学事業)

 製品市況が悪化したこと等により、セグメント損失は78億円(前連結会計年度はセグメント利益38億円)となりました。

 2024年度は、国内販売数量の増加を見込むことにより当連結会計年度比で増益となる見通しとなっております。

(石油開発事業)

 原油販売価格が下落したこと等により、セグメント利益は前連結会計年度に比べ162億円減少し、683億円となりました。

 2024年度は、操業コストの増加により当連結会計年度比で減益となる見通しとなっております。

(再生可能エネルギー事業)

 風力発電における風況が良化したこと等により、セグメント利益は前連結会計年度に比べ2億円増加し、28億円となりました。

 2024年度は、設備容量拡大に伴うコストが増加することにより当連結会計年度比で減益となる見通しとなっております。

 

 

③資本の財源及び資金の流動性に関する分析

a資金需要

 当社グループの資金需要は主に運転資金と設備投資に関するものです。

 運転資金需要は製品製造のための原材料仕入のほか、製造費、販売費及び一般管理費等によるものであり、設備投資需要は競争力強化を目的とした石油・石油化学製品の製造設備、サービスステーション設備や販売促進のためのシステム投資、原油の生産設備、風力発電設備等の取得や維持更新等によるものです。

 

b財務政策

 2023年4月より開始された第7次連結中期経営計画では、株主還元、財務健全性、資本効率を三位一体で実行することで企業価値の最大化を目指しております。財務健全性においては、資産に内在するリスク、求められる資本効率、柔軟な資金調達といった観点を総合的に精査し、自己資本並びにネットD/Eレシオの目標値を設定しております。

 当社は、財務の安全性と効率性を両立させる財務運営を目指しており、短期並びに長期社債による直接金融と金融機関からの借入等の間接金融を機動的に行うことで効率的な資金調達を行っております。また、原油備蓄資金の制度融資も活用しており、市中の金融機関のみならず政府系金融機関とも関係を維持し、調達先の多様化を行っております。また、持株会社である当社が一括して資金を調達し、グループ会社に融通するグループ金融体制を構築しており、資金の集中化並びに効率化を行っております。

 当社は、円滑な資金調達を行うために日本格付研究所(JCR)並びに格付け投資情報センター(R&I)から格付を取得しております。当連結会計年度末において当社の格付は、JCR、R&IともにA-(安定的)となります。

(特定融資枠契約)

 平時における十分な流動性の確保と災害発生等の緊急時に円滑な資金調達を行うために取引金融機関と特定融資枠契約(コミットメントライン契約)を締結しております。なお、当連結会計年度末における当該契約の極度額は1,201億円です。

 

c株主還元方針

 当社グループは、株主の皆様への利益還元を重要な課題の一つとして認識しております。

 第7次連結中期経営計画では、株主還元、財務健全性、資本効率のいずれも欠けることなく、三位一体で実行していくことを資本政策として掲げ、企業価値の最大化を図っており、株主還元方針としましては、総還元性向60%以上(3ヵ年累計、在庫影響を除く純利益に対する比率)、配当1株当たり300円以上としております。

 また、財務健全性が目標値(自己資本6,000億円以上、ネットD/Eレシオ1.0倍)に到達した場合は原則として追加の還元を実施いたします。

 当連結会計年度は、堅調な収益をベースに配当の引き上げを行い、前連結会計年度から150円増配の1株当たり300円の配当を行うとともに、下限配当についても同額の300円に引き上げました。加えて、取得総額230億円または取得株式総数350万株を上限とする自己株式の取得の実施を予定しており、これにより当連結会計年度は単年で総還元性向60%(在庫影響を除く純利益に対する比率)を実現しております。

 引き続き企業価値向上を目指し、収益環境や株価等を見極めながら、柔軟に早期還元実現を検討してまいります。

 

 

d財政状態

 当社グループは、自己資本やネットD/Eレシオといった財務健全性の向上を重要な課題の一つとして認識しております。財務健全性に加え、株主還元、資本効率を三位一体で実行することで企業価値の最大化を目指してまいります。

 

(資産)

 当連結会計年度末における流動資産は1兆1,227億円となり、前連結会計年度末に比べ867億円増加しております。これは主に、売掛金が755億円増加したこと等によるものです。固定資産は1兆891億円となり、前連結会計年度末に比べ44億円増加しております。これは主に、有形固定資産が39億円増加したこと等によるものです。

 この結果、総資産は2兆2,119億円となり、前連結会計年度末に比べ911億円増加しております。

(負債)

 当連結会計年度末における流動負債は1兆76億円となり、前連結会計年度末に比べ50億円減少しております。これは主に、コマーシャル・ペーパーが673億円減少したこと等によるものです。固定負債は4,775億円となり、前連結会計年度末に比べ327億円増加しております。これは主に、社債が186億円増加したこと等によるものです。

 この結果、負債合計は1兆4,852億円となり、前連結会計年度末に比べ278億円増加しております。

(純資産)

 当連結会計年度末における純資産合計は7,268億円となり、前連結会計年度末に比べ634億円増加しております。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益821億円を計上したこと等によるものです。

 この結果、自己資本比率は27.1%(前連結会計年度末は24.9%)となりました。

 

eキャッシュ・フロー

 当連結会計年度の各キャッシュ・フローの状況は、次のとおりであります。営業活動は税金等調整前当期純利益を計上したこと等により1,779億円のプラスとなりました。投資活動は有形固定資産の取得による支出等により328億円のマイナスとなりました。財務活動はコマーシャル・ペーパーの減少等により1,042億円のマイナスとなりました。

 以上の結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べ437億円増加の1,055億円となりました。

 なお、当社グループのキャッシュ・フロー指標のトレンドは下記のとおりであります。

 

2020年3月期

2021年3月期

2022年3月期

2023年3月期

2024年3月期

自己資本比率

14.6%

19.0%

23.5%

24.9%

27.1%

時価ベースの自己資本比率

7.8%

12.9%

11.4%

17.7%

30.4%

キャッシュ・フロー対有利子負債比率

6.1年

3.6年

5.4年

84.5年

3.5年

インタレスト・カバレッジ・レシオ

11.8倍

23.1倍

16.7倍

1.3倍

38.3倍

(注)1 各指標は、以下の計算式によっております。

自己資本比率:自己資本/総資産

時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産

キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー

インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い

2 各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。

3 株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式総数(自己株式控除後)により計算しております。

4 営業キャッシュ・フローは連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている借入金、コマーシャル・ペーパー、社債を対象としております。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。

 

 

④経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループは、中期的な経営の方向性を2025年度が最終年度となる第7次連結中期経営計画にて目標値として定めております。当該連結中期経営計画初年度の評価として、当連結会計年度における客観的指標の実績を示すとともにその達成状況を分析すると以下のとおりとなります。

 

0102010_018.png

 

 株主還元・財務健全性・資本効率等、多くの指標で2025年度の目標を達成しております。その他の指標につきましても順調に推移しておりますが、引き続き全指標において目標を達成すべく各種施策を実行してまいります。

 

5【経営上の重要な契約等】

(1)1999年10月12日、コスモ石油㈱と日石三菱㈱(現・ENEOS㈱)との間で、原油調達・精製・物流及び潤滑油の各分野に関して、業務提携に関する基本協定を締結しました。

 

(2)2011年2月3日、アブダビ首長国最高石油評議会と連結子会社のアブダビ石油㈱は操業している3油田の利権の更新と新鉱区の追加取得について、新たな利権協定を締結しました。アブダビ石油㈱は、同利権地域におけるアブダビ海域において石油の採掘・貯蔵・輸送及び販売を行っております。

(注)本協定は、前協定(1967年12月6日締結及び1979年4月28日締結)が期限満了となった2012年12月6日より

発効しました。

 

6【研究開発活動】

 当社グループの研究開発活動は、連結子会社のコスモ石油㈱、コスモ石油ルブリカンツ㈱、丸善石油化学㈱及びコスモエンジニアリング㈱で実施しております。コスモ石油㈱では、石油製品や石油精製プロセス・触媒等の石油精製分野の競争力強化に関する研究を実施するとともに石油化学分野、石油開発分野、コーポレート研究分野において研究開発を実施しております。コスモ石油ルブリカンツ㈱では、環境対応潤滑油商品化のために技術開発に取り組むとともに、消費者のニーズに応える潤滑剤及び放熱材料の商品開発等を行っております。丸善石油化学㈱では、石油化学製品、溶剤や半導体レジスト周辺材料等の機能化学品等、既存事業の強化、拡大に向けた研究開発に取り組むと共に、カーボンニュートラルや新規事業化に資する製品・技術開発を目指して研究活動を行っております。コスモエンジニアリング㈱では、プラント保全、次世代エネルギー、カーボンニュートラル対応及びデジタルトランスフォーメーション等の各種技術について、時代のニーズに応える研究活動を行っております。

 この結果、当社グループの当連結会計年度における研究開発費の総額は5,703百万円であります。

 以下に主要な研究概要をセグメント別に記載いたします。

 

(1)石油事業

コスモ石油㈱では、石油製品や石油精製プロセス・触媒等の石油精製分野の競争力強化に関する研究を実施するとともに石油化学分野、石油開発分野、コーポレート研究分野において研究開発を実施しております。

石油精製分野では、長年培った触媒の調製・運転管理技術を活かして、製油所の高効率稼動や精製コストの削減等に取り組んでおります。また、2021年度からNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)事業に採択された「国産廃食用油を原料とするバイオジェット燃料製造サプライチェーンモデルの構築」において、廃食用油を原料としたSAF(Sustainable Aviation Fuel:持続可能な航空燃料)サプライチェーンモデルを実証・構築し、2025年度から国内初となる大規模SAF生産を目指しております。さらに将来に向けて、その他原料を用いたSAFの調査等も進めております。石油化学分野では、コスモ松山石油、丸善石油化学との連携により、石油化学工場における未利用留分の燃料利用や石油留分の高付加価値化(石油化学製品化)、それぞれが持つ技術や資産の融合による新製品開発等、シナジー創出や事業拡大に貢献する研究開発に取り組んでおります。石油開発分野では、2016年度より原油タンク底部に蓄積する原油スラッジの削減技術に関する共同研究を独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)と実施しており、さらなる技術改良及び技術ニーズ調査を進めながら商業化の可能性を確認してまいります。コーポレート研究分野では、「2050年カーボンネットゼロ宣言」の実現に向けた研究開発に着手しており、2020年度よりNEDO事業「革新的プラスチック資源循環プロセス技術開発」に参画し、廃プラスチックを高い転換率で石油化学原料に転換するプロセス技術の開発に取り組んでおります。また、2023年2月よりNEDO事業「再エネ由来電力を利用した液体合成燃料プロセスの研究開発」にJPEC(一般財団法人石油エネルギー技術センター)からの再委託として参画し、液体合成燃料の燃料利用技術における規格適合化処理技術を検討しております。また、戸田工業㈱(以下「戸田工業」)とカーボンニュートラル実現に向けた環境対応技術の実用化のため、2023年1月に共同開発について基本合意書を締結し、戸田工業が保有するメタン直接改質法による低炭素水素製造技術やCO₂分離回収技術に関する環境対応技術の適用に向けて、コスモ石油中央研究所にて評価、検討を実施いたします。さらに、2023年4月より国立大学法人京都大学とカーボンネットゼロに向け新時代のポートフォリオを育てていくための新たな事業創出を目指し、次世代エネルギーの安定供給技術等に関する共同研究の可能性を検討することを目的に、包括連携提携書を締結して連携を行っております。2023年度は溶融塩電解技術に着目し、京都大学と溶融塩電解によるCO₂の炭素固定化技術に関して共同研究を進めるとともに、製造プロセス開発として溶融塩電気化学プロセスに取り組む、アイ’エムセップ㈱と連携し、技術の実用化に向けた検討を進めております。

 

 

コスモ石油ルブリカンツ㈱では、環境対応を最重要テーマとして、脱炭素・カーボンニュートラル、自動車や産業機械の電動化、デジタル化といった事業環境の変化に対応する最先端の商品開発に取り組んでおります。また、自社開発技術の更なる発展による要素技術開発・商品開発も並行して実施しております。

車両用潤滑油・工業用潤滑油・グリースの分野では、バイオマス原料を採用した省燃費タイプのエンジン油、最新車両に適合する変速機油、長寿命ガスエンジン油、電動車用油剤の開発や、各国の化学物質規制や複雑化するサプライチェーンに対応した商品開発、省エネルギー・省資源技術確立のための更なる研究開発に取り組んでおります。

また、デジタル化に対応する製品として、電子部品の放熱材料(製品名:「コスモサーマルグリース」、「コスモサーマルギャップフィラー」)、低トルク・省電力の「HDD動圧軸受油」等の高付加価値商品の開発を行い、さらには産学連携による新規商品開発にも取り組んでおります。

 

(2)石油化学事業

丸善石油化学㈱は、石油化学製品、溶剤や半導体レジスト周辺材料等の機能化学品、既存事業の強化、拡大及びカーボンニュートラル、新規事業化に資する製品・技術開発を目指して研究活動を行っております。エチレンやプロピレン等、ナフサの熱分解による石油化学製品の生産過程で併産されるアセチレン、C4、C5留分等の未利用留分を原料とし、ビニルエーテル類や、未利用留分の付加価値をさらに高めた製品の開発、量産化に向けたプロセス技術の開発を実行中です。一方、年を追うごとに微細化、高性能化が進む最先端のロジック、メモリー等の各種デバイスの生産に使用される半導体レジスト材料、周辺材料等の分野では、ますます高度化、多様化する顧客の要望に応えるために、生産技術、製品評価技術の向上、DX技術の活用等、新規の製品・技術を創出するための研究開発を推進しております。

また、カーボンニュートラル、新規事業に繋がる製品・技術開発におきましては、産学連携の強化による社会的価値の創出を目指して開発に取り組んでおります。

 

(3)その他

コスモエンジニアリング㈱は、プラント産業分野での経験やノウハウをベースとした技術力をさらに強化して、様々な顧客のニーズに的確に応えられるよう、以下の主要4点について研究活動を進めております。

①脱炭素社会対応:CO₂回収を含めたブルー水素製造設備やアンモニア供給関連設備建設に向けた技術開発、またバイオ燃料等のCCUS技術開発を進めております。

②デジタル技術活用:内製業務のデジタルトランスフォーメーションを進めております。

③プラント設計/保全関連技術:工事管理システム、スマート設計ツール、3Dモデリングを活用したプラント設計/保全・プラント更新事業、ロボットを利用した検査、補修技術を開発しております。

④物流・ロジスティクス関連:当社主力製品であるADPAC(注)の競争力・汎用性をより強化するため、

 IoTやビッグデータ活用による物流・ロジスティクスの最適化・効率化について技術開発を進めております。

 

(注)ADPAC:物流・在庫管理から設備監視・保全支援まで様々な内容をコンパクトにまとめたパッケージシステム。