第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

当社グループは、企業理念を以下のとおり定めています。また、企業理念に謳われた使命を果たし、持続的な成長を遂げるために、社員一人ひとりが持つべき考え方、価値観、行動規範をKDDIフィロソフィとして定め、心をひとつにしてこれらを共有し実践していくことに努めております。

 

■企業理念

 KDDIグループは、全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、お客さまの期待を超える感動をお届けすることにより、豊かなコミュニケーション社会の発展に貢献します。

 

 

(1)中長期的な会社の経営戦略

 現代社会において、通信はあらゆるものに溶け込んでおり、通信の社会的役割がより一層重要になる中、AI技術の進化により、生活や産業など社会全般において新たな価値創造の時代が到来しつつあります。また、日本国内では、生産性向上や脱炭素化など、サステナブルな社会の実現に向け、産業構造の変革が期待されています。

 

 当社は、データ及び生成AIによるデジタル社会インフラの進展など、社会全体を取り巻く急速な環境変化に対応するため、中期経営戦略期間を1年延長(2022-25年度)するとともに、事業戦略を「新サテライトグロース戦略」としてアップデートいたしました。アップデートした事業戦略の下、2022年5月に策定した「KDDI VISION 2030」の実現に向けて、今後も『「命」「暮らし」「心」をつなぐ』を使命に、社会的に重要な役割を果たすとともに、お客さまの期待を超える感動をお届けすることで、引き続き社会の持続的成長と企業価値の向上を目指してまいります。

 

<中期経営戦略(2022-25年度)>

■企業理念

KDDIグループは、全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、お客さまの期待を超える感動をお届けすることにより、豊かなコミュニケーション社会の発展に貢献します。

■ブランドメッセージ

  Tomorrow, Together KDDI / おもしろいほうの未来へ。au

■目指す姿

  ①お客さまに一番身近に感じてもらえる会社

  ②ワクワクを提案し続ける会社

  ③社会の持続的な成長に貢献する会社

■KDDI VISION 2030

「つなぐチカラ」を進化させ、誰もが思いを実現できる社会をつくる。

■財務目標

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持続的な成長に向け、成長投資・株主還元を引き続き強化します。EPS※については、2018年度対比1.5倍を引き続き目指します。株主還元については、安定的な配当を継続し、配当性向40%超、成長投資の状況などを鑑み、機動的な自己株式取得を実施します。

※ 「Earnings Per Share」の略で、1株当たり当期利益。

 

 

(2)対処すべき課題(中期経営戦略 ―サステナビリティ経営―)

「中期経営戦略(2022-25年度)」では、パートナーの皆さまとともに社会の持続的成長と企業価値の向上を目指す-サステナビリティ経営-を根幹にしています。高品質・高信頼の「5G通信」をベースとし、「データドリブン」の実践と「生成AI」の社会実装を進めるコア事業を中心に、パートナーの皆さまと共に新たな価値が生まれる時代を目指すとともに、それを支える経営基盤を強化します。

 

<事業戦略 ~ 新サテライトグロース戦略 ~>

コア事業に加え、それらと連携し当社の成長を牽引する事業領域(Orbit1)、新たな成長に挑戦する事業領域(Orbit2)を推進し、KDDIグループの企業価値の最大化を図ります。

 

■Orbit1

(1)DX(デジタルトランスフォーメーション)

・ 法人事業ブランド「KDDI BUSINESS」のもと、2024年5月にビジネスプラットフォーム「WAKONX(ワコンクロス)」を発表しました。多様なお客さま接点とさまざまなパートナー企業とともに通信事業で培ってきた強みを活かし、お客さまの事業成長、社会課題解決に貢献いたします。AIにより業界DXを最適化し、必要不可欠な機能をワンストップで提供することでお客さまと共にイノベーションを起こしてまいります。

(2)金融

・ 金融クロスユースの拡大を推進し、通信と金融によるエンゲージメント向上へ寄与します。また、金融各機能のさらなるスケール化を推進し、KDDIグループの金融各社の成長を実現します。

(3)エネルギー

・ 電力小売事業を引き続き強化するとともに、脱炭素関連事業の拡大を図り、カーボンニュートラルへ貢献します。

 

■Orbit2

(1)LX(モビリティ/宇宙/ヘルスケア/スポーツ・エンタメ/Web3・メタバース)

・ 新たな成長の柱として、当社の強みである通信や新技術を活用するとともにパートナリングによってお客さまのライフスタイルの変革に挑戦し、さらなる事業拡大を目指します。

 

当社は新サテライトグロース戦略の推進とあわせて、「To Global」「With Life」「For Future」をテーマに

未来への取り組みも進めることで、「お客さまに一番身近に感じてもらえる会社」、「誰もが思いを実現でき

る社会をつくる」ことを目指します。

 

<経営基盤強化>

KDDIグループは、社会と企業の持続的な成長に貢献するため、特に以下の3つの経営基盤を強化します。

(1)カーボンニュートラルの実現

・ 2040年度までにScope3を含むサプライチェーン全体からのCO2排出量を実質ゼロにする「ネットゼロ」を目指します。そして、この達成に向けて、当社グループ全体で2030年度のCO2排出量実質ゼロの実現を目指し、基地局・通信設備などでの省電力化や再生可能エネルギーへのシフトを推し進めます。

(2)人財ファースト企業への変革

・ 「新人事制度の浸透」「KDDI版ジョブ型人事制度によるプロ人財育成」「社員エンゲージメント向上」の三位一体改革に取り組んでおり、社員が幸せで、活力ある企業であり続けるために、社員の「健康」を重要な経営課題と捉え、社員一人ひとりの健康を組織で支える健康経営を推進し、豊かな未来に向けて挑戦し続けていきます。

(3)グループ一体経営の推進とガバナンスの強化

・ 経営層と従業員の共通の考え方・行動規範として掲げる「KDDIフィロソフィ」を礎に、人権を尊重し、透明性・公正性を担保したコーポレート・ガバナンス体制との相乗効果により、リスクマネジメント・情報セキュリティ体制の強化を進め、グループ一体経営の推進に努めていきます。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)サステナビリティ全般

 当社は発足以来、「豊かなコミュニケーション社会の発展に貢献すること」を企業理念として掲げてまいりました。昨今、生活やビジネスのさまざまな場所でIoTが活用され、通信が果たす役割はますます重要になっており、さらには価値観の多様化やサステナビリティの重要性の高まり、次世代技術の発展など、事業を取り巻く環境は大きく変化しています。

 このような事業環境の変化に対応しながら、ありたい未来社会を実現するため、当社は2022年5月に2030年に向けたビジョンとして「KDDI VISION 2030:『つなぐチカラ』を進化させ、誰もが思いを実現できる社会をつくる。」を新たに掲げました。あらゆるものに通信がますます溶け込んでいく時代の中、「つなぐチカラ」を進化させ、2030年には、あらゆる産業や生活シーンで付加価値を提供できる存在、「社会を支えるプラットフォーマー」になることを目指しています。

 2030年を見据え、2022年に始動した中期経営戦略では、「サステナビリティ経営」を根幹とし、パートナーの皆さまとともに「社会の持続的成長」と「企業価値向上」の好循環を目指しています。

 そして、この「サステナビリティ経営」のもと、「事業戦略(新サテライトグロース戦略)」とそれを支える「経営基盤強化(カーボンニュートラルの実現・人財ファースト企業への変革・グループガバナンスの強化)」を推進しています。

 

①ガバナンス

サステナビリティ推進体制

 サステナビリティ関連のリスク及び機会はサステナビリティ委員会におけるKPIの進捗確認等を通じて管理し、同委員会から取締役会へ定期的に報告することで取締役会がそれらを監視する体制をとっています。

 同委員会は、委員長を代表取締役社長、委員会メンバーを取締役で構成し、サステナビリティを全社経営戦略の柱として取り組んでいます。

 なお、サステナビリティ推進の達成度は全社重点KPIに織り込まれており、役員報酬ならびに全社員の賞与がサステナビリティ推進の達成度に連動する制度設計とすることで、サステナビリティ経営の浸透や行動変容に繋げています。

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マテリアリティ選定プロセス

 当社グループは、23.3期に始動した中期経営戦略の策定に伴い、次のプロセスにてサステナビリティに関する重要課題(マテリアリティ)を選定しています。

1.サステナビリティ情報開示の国際的なガイドラインであるGRI要請項目および情報通信業界に対するESG評価機関の要請事項から、重要課題を抽出

2.「長期投資家等マルチステークホルダーの関心事項(縦軸)」と「事業へのインパクト(横軸)」をそれぞれ点数化し、優先順位を設定

3.社外有識者等へのヒアリングにより得られた意見を反映し、6つの最重要課題(マテリアリティ)を特定

4.サステナビリティ委員会および取締役会で妥当性を審議し、確定

 

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②戦略

6つの重要課題(マテリアリティ)

 長期投資家等マルチステークホルダーの関心事項と事業へのインパクトを軸に、中期経営戦略における課題をマッピングし集約いたしました。当社の事業変革に必要なイノベーションの推進、事業の多様化に伴う人財強化やガバナンス強化、気候変動など国際社会の課題意識の高まりに対応しています。

 

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 当社グループの6つの重要課題(マテリアリティ)に対処するための取組み(実施内容)、指標及び目標は次の

とおりです。中期経営戦略の見直しに伴い、サステナビリティ中期目標も期間・指標等を見直します(期間は「25.3期まで」から「26.3期まで」に見直し)。

提供価値

サステナビリティ中期目標(23.3期-26.3期)

実施内容

指標

24.3期実績

26.3期

①未来社会の創造

新サテライトグロース戦略に基づく事業創造・研究開発プロジェクトの推進※1

プロジェクト数(累計)

44件

80件

自治体さまと連携した

LXサービスの提供

LXサービス提供地域・施設数の拡大

イノベーションの推進

による知的資本の強化

5G/Beyond 5G+新サテライトグロース

関連領域の保有特許件数※1

対前年23%増

対前年15%増

②サステナブルな

産業・インフラ環境

の実現

産業・インフラDXへの貢献

IoT回線数(累計)※2

4,197万回線

5,400万回線

お客さまの働き方改革を

推進

KDDIのお客さま(法人)における、

働き方改革を支援するソリューションの導入率※1

31%

37%

5Gエリアの拡大

5G人口カバー率

政府目標97%(26.3期)への貢献※1

重大事故撲滅

重大事故発生件数(設備障害)

※総務省の事故報告判断基準

ガイドライン等に準ずる

0件

0件

③地域共創の実現

地域のデバイド解消支援

支援者数(累計)

※スマホ教室、店頭サポート、使い方サポート、スマホ・ケータイ安全教室、地域体験応援サービスのご利用者数(累計)

※1※3

1,180万人

2,000万人

金融格差の解消

決済・金融取扱高

18.0兆円

22.1兆円

④グローバルでの

地域・経済格差の解消

新興国における

グローバル事業の拡大

新興国の国民の人権を尊重し、

国民の生活に不可欠な社会インフラの維持に取り組む

モンゴルにおける

通信を活用した

教育や次世代の育成

安全なモバイル・インターネット利用

等を促すための教育活動の支援者数※1(累計)

8,000人

⑤カーボンニュートラルの実現

通信設備を含むKDDIの

カーボンニュートラル化※4

KDDIグループの

カーボンニュートラル実現

 Scope 1+2 ※1※5

(目標:FY2030)

全世界のKDDIデータセンターで利用する電力の実質再生可能エネルギー割合

100%の達成

※他社のデータセンター施設や設備を

一部借り受けてサービス提供する形態、閉局予定のデータセンターは除く※1

53%

100%

Scope 1+2+3

ネットゼロの達成※1

(目標:FY2040)

追加性ある再生可能

エネルギー

追加性ある再生可能エネルギー

50%達成※1

(KDDI単体)

追加性ある再生可能エネルギー電力量

:42百万kWh

(目標:FY2030)

次世代再エネ

ソリューションの提供

法人お客さま向けへのカーボンニュートラル支援ソリューションの提供拡大

※グリーンICT/通信、電力SL、DX-SL、コンサルティング等

⑥KDDIグループ全体の経営基盤強化

グループ全体のガバナンスと情報セキュリティの強化

重大事故発生件数※6

・サイバーセキュリティ起因の個人情報の

 漏えいおよび重大なサービスの停止

・個人情報の不適切な利用

・上記以外の重大事故

0件

0件

先進セキュリティ技術への

取組み件数※7(累計)

12件

23件

⑦人権の尊重

人権を尊重した事業活動の実施

グループ会社を含めた事業活動における人権リスク評価の実施と

その結果に基づく改善

人権デューデリジェンス

※8

人権侵害の恐れがある

高リスク取引先の活動改善対応率※1

対応率

75%

改善率100%の継続

⑧多様なプロ人財の活躍とエンゲージメント向上

プロ人財育成の

ためのキャリア開発

(人材育成方針)

各専門領域のプロ人財比率

(KDDI単体)

40%

※戦略領域

45

※全領域

全社員におけるDX基礎スキル

研修修了者(KDDI単体:累計)

※習得機会はグループ会社へ拡大

10,721

※9

社員エンゲージメント

サーベイの実施

(社内環境整備方針)

社員エンゲージメントスコアの

維持向上(KDDI単体)

74

72以上を維持

多様性を重視した人財の

活躍推進(DE&I関連)

(社内環境整備方針)

女性取締役の構成比率

(KDDI単体)

16.6%

25%以上

女性経営基幹職の構成比率※10

(KDDI単体)

11.0%

※11

※1 事業環境、社会動向の変化、事業拡大等に伴い改定

※2 サービス開始時からの数値

※3 24.3期実績は、改定前の指標によるもの

※4 カーボンニュートラル実現への取組みの詳細はKDDIウェブサイトご参照

(https://www.kddi.com/corporate/sustainability/efforts-environment/carbon/)

※5 KDDI連結でカーボンニュートラル実現を目指す

※6 主務官庁への報告・届け出等レピュテーションを著しく棄損する事案

※7 KDDI単体、KDDI総合研究所によるニュースリリース・トピックス件数

※8 KDDIグループ調達額90%および人権リスクが把握された取引先が対象

※9 25.3期目標は「全社員」

※10 受入出向者・在籍出向者ともに含まず集計

経営基幹職:組織のリーダーならびに専門領域のエキスパート、実績値は2024年4月1日時点の比率

※11 25.3期目標は「15%以上」

 

※24年度より統廃合された実施内容・指標は当社ホームページ
          (https://www.kddi.com/extlib/files/corporate/sustainability/targets/pdf/targets_besshi.pdf)を参照

 

③リスク管理

リスクマネジメント及び内部統制システムの考え方

 当社は、会社法に基づき「内部統制システム構築の基本方針」を取締役会にて決議し、当該方針に従ってリスク管理体制を含む内部統制システムを整備・運用しています。経営目標の達成に対し影響を及ぼす原因や事象を「リスク」と位置付け、リスクマネジメントの強化が重要な経営課題と認識し、事業を継続し社会への責任を果たしていくために、グループ全体でリスクマネジメント活動を推進しています。

 

リスクマネジメント及び内部統制活動

 当社は、コーポレート統括本部を中核として、リスクマネジメント活動を一元的に推進する体制を整えています。また、グループ全体の持続的な成長を実現するため、当社及びグループ会社全体でリスクマネジメント活動を推進しています。当社に44名、グループ会社各社に計45名の「内部統制責任者」を配置し、さらにそれを統括する5名の「内部統制統括責任者」を任命しており、同責任者のもと、内部統制システムの整備・運用およびリスクマネジメント活動を推進するとともに、リスクが発現しにくい企業風土を醸成するため業務品質向上活動を展開しています。

 

リスクマネジメント活動サイクル

 当社は、会社の危機を未然に防ぐためには、その予兆を把握し、事態が悪化する前に対策を講じることが重要という認識のもと、リスクマネジメント活動のPDCAサイクルを構築しています。また、リスクの発現時には迅速かつ適切な対応がとれる危機管理体制を整備しています。

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リスク特定プロセス

 当社は、リスク情報を定期的に洗い出し、会社事業に重大な影響を与えるリスクを重要リスクと位置付け、これらの重要リスクの発現およびその発現した際の影響を可能な限り低減するための対応策を検討し、対策を講じています。2023年度は、経営目標を確実に達成するために、過去に顕在化した課題のほか、事業環境の変化を踏まえ、重要リスク23項目を選定し、リスクの予見、重要リスクの低減活動およびリスクアプローチによる内部監査を実施しました。情報セキュリティ活動においても、グループ全体の統一基準を制定し、グループ全体で情報セキュリティレベルの向上を推進し、情報セキュリティリスクの低減を図っています。これら重要リスクの状況については、「3.事業等のリスク」にも反映しています。

 

内部統制報告制度(J-SOX)への対応

 2008年度から適用された金融商品取引法に基づく内部統制報告制度への対応として、財務報告の信頼性を確保すべく、当社および国内・海外の主要なグループ子会社11社の計12社に対して、内部統制評価を実施しました。評価結果については内部統制報告書として取りまとめ、2024年6月に内閣総理大臣に提出し、投資家の皆さまに開示しています。

 

業務品質向上活動

 当社は、内部統制部門を全社の業務品質向上活動の推進事務局とし、各部門の内部統制責任者が推進責任者となり、業務の効率化・標準化を図りながら自律的に業務の品質を高める業務品質向上活動に取り組んでいます。この活動による業務改善案件はデータベース化され、全従業員が自部門の業務品質向上活動に活用できる仕組みを整えています。また、優秀で意欲的な業務改善案件を表彰する制度を導入しており、従業員一人ひとりの業務品質に対する意識・モチベーションの向上を図っています。

 

業務品質向上の浸透活動

• 各部門における自律的な目標および推進計画を策定し、全社に共有

• 優秀な業務改善案件に対する全社表彰の実施(年1回)

• 業務品質向上活動に対する意識調査アンケートの実施(年1回)

 

④指標及び目標

上記に記載の②戦略の項目をご参照ください。

 

 

(2)人的資本・多様性

①ガバナンス

(1)に記載のサステナビリティ全般における①ガバナンスの項目をご参照ください。

 

戦略

「サステナビリティ経営」を根幹とし、新サテライトグロース戦略の推進と、それを支える経営基盤の強化により、パートナーの皆さまとともに社会の持続的成長と企業価値の向上を目指していきます。このうち経営基盤の強化の1つとして、人財ファースト企業への変革を推進しております。

 

[KDDI Vison 2030の実現に向けて]

a.サステナブルな人財ポートフォリオの実現

 事業環境が大きく変化し、DX、金融、エネルギーなど事業領域を広げる新サテライトグロース戦略を推進していく中では、これまで以上に多様な専門性を持つ人財を獲得し、その人財同士が混ざり合うことで、事業や組織機能の高度化につながるイノベーションを創出していく必要があります。そのためにも、専門性を持ち、自律したプロ人財が挑戦・成長し続けなければなりません。KDDIグループにおいて、個性と能力を発揮できる場所を見つけ、挑戦しながらスキルを高め、さらにレベルの高い挑戦をしていきます。それぞれの領域のプロ人財が認め合い・高め合った結果、グループ全体でプロ人財を輩出し続ける“サステナブルな人財ポートフォリオ”を充足させることで、人財ファースト企業への変革を目指していきます。

 

b.社会をつなぐチカラの進化

「生きがい改革によるウェルビーイング向上」も人財ファースト企業として追求していく重要な要素です。仕事と生活の垣根がなくなりつつある「ワークライフインテグレーション」の時代においては、働き方や働きがいだけではなく、社員の“生きがい”追求にも取り組んでいく必要があります。生きがい改革を通じてKDDIはさらに魅力的な会社となり、お客さま・パートナー企業・労働市場とのエンゲージメントを高められ、愛され信頼され続ける会社となることを目指しています。

 

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[人事戦略(人材育成方針および社内環境整備方針)]

a.三位一体改革

 人財ファースト企業への変革を実現させるために、三位一体改革(①新人事制度の浸透、②KDDI版ジョブ型人事制度によるプロ人財育成、③社員エンゲージメント向上)」を21.3期から進めてきました。その中核に据えている「KDDI版ジョブ型人事制度」では、全ての社員が既存の通信事業で培った経験も活かしながら、新たな領域でも通用する能力を積極的に身に付け、社外でも通用するプロ人財となることを目指しています。

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(注)DX基礎スキル研修修了者、女性経営基幹職の構成比率は、25.3期目標を記載

 

 

[新人事制度の浸透(人材育成方針および社内環境整備方針に関する取り組み)]

a. 事業戦略遂行に資する人財ポートフォリオ

 新サテライトグロース戦略の展開に伴う事業ポートフォリオの組み換えに対して、事業戦略遂行に必要な人財力の質的・量的な充足を図るため、内部で人員をシフトさせ、外部から確保しなければなりません。そのために人財力のあるべき姿と現状のギャップを捉えた人財ポートフォリオを構築することを計画しています。

 人財ポートフォリオの中では、KDDI全社員のスキルの発揮状況を数値化して捉えることができます。KDDIにおける30の専門領域に対して、職務役割・職務内容により細分化した“ジョブ”を定義し、各ジョブの遂行に必要なスキルも定義した上で、それぞれのスキルに対するアセスメントを作成しています。アセスメントの結果を活用することで、各組織が目指す姿に対して、現状のスキルの発揮状況とのギャップ(質・量)の把握に取り組んでいます。

 また、性別、年齢や経歴などの情報も人財ポートフォリオで一元的に管理することで、組織と人の最適な組み合わせをデータで導くことができるようになります。これらの取り組みにより、人財シフトをより活性化させ、事業戦略と人事戦略の結びつきを強化していきます。

 

b.キャリア自律の促進

 社員の主体的なキャリア実現に向けた個人の能力開発や成長支援のため、上司とメンバーによる定期的な1on1を実施しています。1on1の実施頻度や内容とエンゲージメントスコアとに相関があることも分かっており、上司のキャリア支援力向上に向け、全ライン長を対象としたキャリアマネジメント研修を実施しています。年1回の「キャリアプラン申告」は、自身の今後のキャリアについて考え、上司との1on1で具体的なアクションについて対話し、キャリア開発の方向性や業務アサイン変更、社内副業・人財公募の案件紹介などについて双方で検討する場となっています。

 社員のキャリア情報を蓄積、見える化したタレントマネジメントシステム「X-Career」を導入しています。広範な事業領域を活用した社員の多様な成長・挑戦機会を積極的に支援するシステムで、社員一人ひとりがキャリアを拡大、深耕し、個々のキャリアが融合することでイノベーションを創出することを目的としています。グループ全体で人財の流動化を促進し、グループ内/外への出向機会、キャリア実現のための異動機会、人財公募を拡大することで、社員の自律的なキャリア形成を促進していきます。

 

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c. 多様な人財の活躍促進

 人財多様性の実現のステップの第一歩として、ジェンダーギャップ解消に取り組んでいます。社員エンゲージメントサーベイの結果は全体的に女性のスコアがやや低い傾向にあります。平等な対応をするだけではギャップを縮めることができないため、形式的に平等な対応をすることに留まらず、ジェンダーに由来する不公平な障壁を取り払い、スタート地点を合わせるための支援を強化しています。

 女性経営基幹職の構成比率に関する数値目標達成に向けて、本部長層の意識改革を目的とした「アンコンシャス・バイアス研修」や、女性リーダーの実体験を聞くことができる「女性経営基幹職とのラウンドテーブル」、DE&Iと女性活躍の必要性を浸透させるための全社員を対象としたeラーニング研修など、多様な人財が能力を活かし、高いパフォーマンスを発揮するための組織風土改革と環境整備に取り組んでいます。また、女子学生を対象としたセミナーやインターンシップの実施などを通して、採用の段階から女性の比率を増加することを目指しています。

 さらに、男性社員の育児休業取得を推進し、男性育児休業取得率100%も目指しています。そのためにも、男性社員とその家族を対象としたワークショップを継続的に実施しています。

 

[KDDI版ジョブ型人事制度によるプロ人財育成(人材育成方針に関する取り組み)]

a.KDDI DX Universityによるリスキリング

 イノベーション創出の源泉となるプロ人財の育成、社員のDXスキル向上を推進するため、21.3期に社内人財育成機関「KDDI DX University(KDU)」を設立しました。データ・テクノロジーを活用したビジネス変革を推進するために、全社員への受講を目指した「DX基礎スキル研修」を実施しています。加えて、DX関連の5領域※を対象に専門領域別の「DXコアスキル集中研修」「DX専門スキル研修」を実施しています。24.3期には、生成AI、Web3.0やデジタルツインの専門型研修も拡充する等、技術トレンドへ弾力的に対応しています。

※ビジネスディベロップメント、コンサルタント&プロダクトマネージャ、テクノロジスト、データサイエンティスト、エクスペリエンスアーキテクトのDXに注力した5つの専門領域

 

b. 社内副業による越境学習

 21.3期より、本業以外での経験を積むことによるスキルアップ、および、適所適材を実現させることを目的として、社内副業制度を導入しました。「自分の専門性を磨く場が欲しい」「他の部署を経験したい」という社員からの声がありましたが、会社指示による数年ごとの定期異動や兼務という方法が主で、希望に沿った柔軟な対応が困難でした。「社内副業制度」を導入することで、社員は自らの希望でKDDI社内・KDDIグループ内の募集業務に手を挙げ、定期異動と比較してより速く、より柔軟に新しい場への挑戦が可能になります。

 副業業務は、「QRコード決済アプリの改善」や「ICT/IoTを用いた地域課題の解決」等、幅広くラインアップされています。社内副業制度は社員の専門性の探索や新たなスキルの習得を加速させるとともに、組織の壁を超えた人財シナジーによるイノベーション創出の機会を増やすことにつながっています。

 

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[社員エンゲージメント(社内環境整備方針に関する取り組み)]

a. エンゲージメントサーベイ結果の活用促進

 四半期ごとに社員エンゲージメントサーベイを実施しています。総合エンゲージメントスコアは、現在のサーベイを開始した20.3期以降、上昇を続け、22.3期以降はサステナビリティ中期目標である「72以上」を維持しています。特に、「人間関係」「支援」「承認」のキードライバーが改善されており、これは上司とメンバーの定期的な1on1による信頼関係の構築や業務・キャリア形成の支援が影響していると考えています。また、エンゲージメントデータの分析体制を整備することで、人事制度や働き方の施策検討におけるサーベイ結果の活用を進めています。今後は、さらなるエンゲージメント向上を目指し、デモグラフィック別の分析を強化すると同時に、リーダー向けの研修や職場ごとの分析環境整備にも取り組み、全社と各職場双方で活動を推進していきます。

 

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サーベイ開始当初から課題となっていた「挑戦する風土」は改善の傾向を示しています。1on1を通じて、チーム内の心理的安全性の土台形成がなされたこと、本人の挑戦を促すような対話がされたこと、新人事制度導入により個々の挑戦に報いる評価へと転換したことが要因であると分析しています。

 

b.社内カウンセラーによる全社員面談

 社員からの自発的な申告なしには社員の心身の不調を把握することが難しいという課題を解決するため、従来の相談窓口に来る社員を待つ受け身の対応ではなく、会社側から全社員へ能動的に話を聴く仕組みとして、上司以外の第三者である社内カウンセラーによる半期ごとの全社員面談を20.3期から実施しています。面談の目的は①メンタルヘルス不調の早期発見、②適切な勤務管理の徹底、③健全な職場環境の構築です。社内カウンセラーは24.3期末時点で39人おり、多くがライン長経験者や資格保有者など豊富な知見と経験を持つエルダー公募による着任者です。面談の実施者を社外カウンセラーではなく社内カウンセラーとしたのは、KDDIの経営方針やフィロソフィ、組織風土、就業規則や社内ルールを理解している社員の方が良い聴き手になれるとの考えによります。経験豊富なベテラン社員が社内カウンセラーとしてさまざまな悩みを抱えている社員一人ひとりに寄り添って傾聴することで安心感を与え、メンタルヘルス不調の早期発見だけではなく、キャリア形成支援にも良い効果を発揮しています。また、社内カウンセラー自身も社員が前向きに取り組むための支援にやりがいを感じており、誰もが生き生きと働ける職場の実現に向けて、さまざまな社員の活性化に着実につながっています。

 

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c.KDDIグループ健康経営宣言

 KDDIグループは、社員が幸せで、活力ある企業であり続けるためには、社員の「健康」が重要な経営課題と捉えています。「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、お客さまの期待を超える感動をお届けすることにより、豊かなコミュニケーション社会の発展に貢献します」の企業理念のもと、社員一人ひとりの健康を組織で支える健康経営を推進し、豊かな未来に挑戦し続けることを宣言しています。

 今後も、KDDIグループは、社員が心身ともに健康で意欲をもって働く環境を作ることによって、社員一人ひとりの生産性を最大化し、KDDIグループの持続的成長、さらには、サステナブルな社会の実現に貢献していきます。

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リスク管理

(1)に記載のサステナビリティ全般における③リスク管理の項目をご参照ください。

 

指標及び目標

[人材育成方針に関する指標内容当該指標を用いた目標及び実績]

 各専門領域のプロ人財比率、DX基礎スキル研修修了者の各指標の目標及び実績は、(1)に記載の「サステナビリティ全般」における②戦略の項目をご参照ください。DX基礎スキル研修修了者については、KDDI単体全社員が習得するとともに、当社グループへ順次拡大します。

 

[社内環境整備方針に関する指標内容当該指標を用いた目標及び実績]

 社員エンゲージメントスコア、女性取締役の構成比率、女性経営基幹職の構成比率の各指標の目標及び実は、(1)に記載の「サステナビリティ全般」における②戦略の項目をご参照ください。

 社員エンゲージメントスコアついては、当社グループ各社でも、同様の従業員満足度調査を当社グループへ順次拡大しています。

 

(3)カーボンニュートラルの実現、地球環境保護

 当社では、「カーボンニュートラルの実現」を重点課題(マテリアリティ)の一つとしており、2030年度カーボンニュートラル実現※に加え、お客さまへ再生可能エネルギーを提供し、地球規模の課題である気候変動問題の解決に貢献することを目指しています。環境保全への姿勢を定めた「KDDI環境憲章」のもと、かけがえのない地球を次の世代に引き継ぐことができるよう、地球環境保護を推進することがグローバル企業としての重要な責務であると捉え、脱炭素社会の実現、生物多様性の保全、循環型社会の形成に向けた取り組みをグループ会社全体で一体的に推進しています。

 気候変動についてはTCFDフレームワーク、生物多様性についてはTNFDフレームワークに準拠して記載しております。

 

※KDDIのカーボンニュートラルの定義は以下をご参照ください。

 https://www.kddi.com/corporate/sustainability/efforts-environment/carbon/

 

①ガバナンス

 当社は、事業を通じた社会課題の解決(SDGs)・社会貢献・気候変動対策などのサステナビリティ(持続可能性)に関する課題を審議する機関として、代表取締役社長が委員長を務め取締役会の主要メンバー等で構成するサステナビリティ委員会を設置しています。サステナビリティ委員会では、当社における気候変動・自然資本に関する重要な課題や取り組みについて確認および議論を行い、リスクと機会に関する監視、監督を行うとともに報告事項などの承認を行う責任を担っています。上期には「前年度目標達成状況の確認」と「目標未達の場合はその要因分析と対策確認」、下期には「当年度目標進捗状況の確認」と「次年度目標の設定」を行います。また、取締役会は四半期ごとに気候変動・自然資本に関するサステナビリティ委員会からの報告を受け、重要な課題や取り組みに対する施策実施の監督および指示を行っています。

また、自然関連リスク等の評価と対応で影響を受けるステークホルダーとのエンゲージメントとして、地域社会や住民の方などへの影響も考慮し、「KDDIグループ人権方針」を定めています。これは、企業理念に基づき、すべてのステークホルダーに対する責任を果たすため、人権尊重の取り組みを明確にするものとして位置付けられています。この方針に基づき、「KDDIグループ重要人権課題」を設定していますが、その中で、「人権に配慮したサービス・商品の提供」を達成するために、「地域社会との調和とサプライチェーン上の人権侵害の排除」を掲げています。設備等の建設にあたって地域住民の人権に配慮するとともに、サプライチェーン上において紛争鉱物の使用等による人権侵害が発生しないように注視することを約束しています。また、現実のおよび潜在的な人権への負の影響に関する対応について、自治体、地域社会、サプライヤー、専門家など関連するステークホルダーとの対話と協議を行うことにより、人権尊重の取り組み向上と改善に努めています。

 

②戦略

当社は、①COP21で採択されたパリ協定の合意を受けた「急速に脱炭素社会が実現する1.5℃シナリオ(産業革命前からの世界の平均気温上昇が1.5℃)」と「気候変動対策が何らされず物理的影響が顕在化する4℃シナリオ(産業革命前からの世界の平均気温上昇が4℃)」の2つの分析と、②バリューチェーンにおける自然関連リスク等を特定し、評価を行いました。

KDDIは2024年5月9日、自然資本保全への貢献のため、中長期の環境保全計画である「KDDI GREEN PLAN」を策定しました。KDDIは「地球環境との調和」を経営の重要なテーマと捉えており、これまで「KDDI GREEN PLAN 2030」を掲げ、「循環型社会の形成」、「脱炭素社会の実現」、「生物多様性の保全」を重点課題として環境価値向上に取り組んできました。今回、中長期的な企業価値向上のため、リスクの低減と事業機会の創出についての目標を新設し「KDDI GREEN PLAN」に改称することで、さらなる環境価値向上を目指し活動の活発化を推進していきます。

 

 

a.気候変動

シナリオ分析結果

・急速に脱炭素社会が実現する1.5℃シナリオ(産業革命前からの世界の平均気温上昇を1.5℃とする目標が達成される未来)

参照::IEA(International Energy Agency)「World Energy Outlook 2021」 Net Zero Emissions by 2050 Scenario(NZE Scenario)

移行リスク分析

KDDIとしてのリスク内容

KDDIの対応

政策・

法規制

(短期・中期戦略)

炭素税

炭素税課税リスク※1

化石燃料電力から再生可能エネルギー電力への切り替えを推進

都条例
排出規制

削減量未達となったCO2排出量に対するクレジット(排出枠)買い取りのコスト増加リスク

21.3期~25.3期の第三計画期間に発生が予想される未達CO2排出量19万t-CO2に相当する排出権(第二計画期間に発生したCO2排出権)を21.3期に4万t-CO2、2023年1月に15万t-CO2をあらかじめ購入した。この排出権は、21.3期~25.3期の第三計画期

間の実績により26.3期~27.3期に充当を予定。

消費電力削減・CO2排出量削減への新技術導入

(中期戦略)

通信量の増加に伴い発生する通信設備の消費電力の増加リスク

脱炭素に貢献するサステナブルなデータセンターを目指し、液体でIT機器を冷却する液浸冷却装置を用いたサーバ冷却のための消費される電力を94%削減する三菱重工社とNECネッツエスアイ社との共同研究開発中。また、基地局スリープ機能(トラフィックの少ない夜間帯にスリープさせる)を導入し消費電力の削減を推進。ミリ波無線機1機種に対応する機能を内製開発し、ノウハウの蓄積と課題の洗い出し実施中。無線機1台あたり年間約100kWhの電力消費の削減が可能となる見込み。

市場・評判

(長期戦略)

カーボンニュートラル目標未達や再生可能エネルギー化の取り組み遅れによるKDDI企業評価低下および加入者減のリスク

化石燃料電力から再生可能エネルギー電力への切り替えを推進。当社の事業運営で消費する電力27億kWhを再生可能エネルギー由来のメニューに切り替え予定。また、グループ会社としてauリニューアブルエナジーを設立し、太陽光発電など追加性のある再生可能エネルギー発電事業を開始。

※1 2030年度のCO2排出量見込みは約67.5万t-CO2 のため、炭素税14,280円/t-CO2の場合、年間約100億円の課税を想定

 

・気候変動対策が何らされず物理的影響が顕在化する4℃シナリオ(産業革命前からの世界の平均気温が4℃上昇する未来)

物理的リスク分析

(物理的シナリオ「RCP8.5」を用いて分析)

KDDIとしてのリスク内容

KDDIの対応

急性

(台風や洪水等の)異常気象による災害の激甚化と頻度の上昇

迅速な通信網復旧対応を行うための緊急復旧要員人件費等のコスト増加リスク

BCP※2の見直しと災害時復旧訓練実施による効率的な復旧作業への備え

慢性

平均気温上昇

お客さまからお預かりしたサーバを冷却するための、KDDIデータセンターの空調電力使用量の増加リスク

高効率空調装置の導入や再生可能エネルギーへの置換

2 Business Continuity Plan(事業継続計画)

参照: IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change)第5次評価報告書

 

b.自然資本

 バリューチェーンにおける自然関連リスク等を特定し、評価しています。事業規模と自然資本との関係から、優先度を定性的に評価・判断し、自然関連リスク等を分析、対応策を検討・推進しています。

 

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自社固有の事業的観点等を踏まえ、識別した依存と影響の重要な項目は以下の通りです。

・ 携帯端末の原材料(特に金属類)の採取における鉱山掘削、特に陸域の土地利用変化や水資源への影響

・ 携帯端末の製造における有害物質の使用による土壌汚染

・ 基地局建設や通信ケーブル設置に伴う陸域をはじめとした土地利用変化への影響

・ 基地局・通信ケーブルを構成する原材料調達における水資源や気候・土地の安定化機能への依存

 

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③リスク管理

当社グループのリスク管理を主管するコーポレート統括本部は、気候変動や自然資本関連を含め、当社の財務上および経営戦略上、重大な影響を及ぼすすべての事業部門のリスクの抽出を年2回、半期ごとに実施しています。抽出されたリスクの中で、気候変動・自然資本に関するリスクについては、環境ISOの仕組みを活用し、環境マネジメントシステム(EMS)のアプローチで管理しています。管理対象のリスクは、関係する各主管部門においてリスク低減に関する定量的な年間目標を策定し、四半期ごとに進捗評価を行います。進捗評価で指摘された改善内容については、サステナビリティ委員会傘下の部会であるカーボンニュートラル部会で報告され、全社・全部門に関係するリスクと機会については、サステナビリティ委員会で議論のうえ承認されます。

 

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④指標及び目標

KDDIは、脱炭素社会の実現を加速させるため、KDDIグループ(※1)として2040年度末までにネットゼロ達成を目指す目標を含む4つの環境目標を策定

 

 

環境目標(※2)

目標年度

内容

1

KDDIグループネットゼロ達成

2040年度

KDDIグループの事業活動に関わる排出(Scope1(※3)およびScope2(※4))に加え、Scope3(※5)を含むサプライチェーン全体からのCO2排出量を実質ゼロにする「ネットゼロ」を達成。

2

KDDIグループカーボンニュートラル達成

2030年度

KDDIグループの事業活動に関わる排出(Scope1およびScope2)

3

KDDI追加性(※6)再生可能エネルギー比率50%以上

2030年度

KDDIが消費する電力に占める、追加性のある再生可能エネルギーの比率50%以上を達成

4

Telehouseのデータセンターが使用する電力の100%を再生可能エネルギー由来の電力に切り替え

2025年度

KDDIグループがTelehouseブランドで展開している全世界のデータセンターに関して、目標を「使用電力の100%を再生可能エネルギー由来の電力に切り替える」と再定義し、目標年度を1年前倒して達成。

(※1)KDDI本体および連結子会社を対象とします。

(※2)各目標の定義については、以下をご参照ください。

    https://www.kddi.com/corporate/sustainability/efforts-environment/carbon/

(※3)事業者自らによる温室効果ガスの直接排出。

(※4)他者から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出。

(※5)Scope2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他者の排出)。

(※6)企業自身が太陽光発電設備などを新たに導入することで、社会全体の再生可能エネルギー導入量増加につながる効果を持つこと。

 

当社は、2012年度よりKDDI単体、2021年度より当社グループの温室効果ガス排出量を算出し環境負荷の定量的把握を通じて、気候変動が当社に及ぼすリスクと機会の管理を行っています。

 

CO2排出量

2023年度(推定値、連結)

Scope1(事業者自らによる温室効果ガスの直接排出)

24,644 t-CO2

Scope2(他者から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出)の合計値

1,053,778 t-CO2

最新情報は、9月以降に公表予定のサステナビリティ統合レポート2024における温室効果ガススコープ1+2の排出量(実績)に関する記載をご参照ください。

 

また、当社ではスコープ2以外の間接排出であるスコープ3排出量を2040年度末までに実質ゼロにすることを目標にしており、2022年度のスコープ3排出量の実績値はKDDI単体において5,252,273 t-CO2となりました。スコープ3排出量のうち、カテゴリ1、カテゴリ2が全体の92%を占めており、今後も温室効果ガス排出削減にむけ活動を進めていきます。

自然関連の指標として、温室効果ガス排出量のほかに、水資源消費量、産業廃棄物排出量等を定量的に把握するとともに、廃棄物削減の取り組みを測る指標として使用済み携帯電話などの回収数をモニタリングしています。

さらに、KDDIグループのサプライチェーン全体の状況を把握するため、主要なお取引先さまに対してアンケートを行い、サステナブル調達における環境取り組みの重要性をご理解いただけるよう啓発・支援するとともに、課題や取り組み状況の共有をお願いしています。アンケート結果をはじめとしたサステナブル調達の推進に関する事項は、サステナビリティ担当役員(コーポレート統括本部長)に定期的に報告され監督されています。2023年度からは、3社(日本電信電話株式会社、KDDI、ソフトバンク株式会社)共通SAQ(Self-Assessment Questionnaire(自評価調査))を導入し、お取引先さまとのさらなるエンゲージメント強化に向けて取り組んでいます。

 

3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」)の状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

また、現時点では必ずしもリスクとして認識されない事項についても、投資家の投資判断上、重要であると考えられる事項については、投資家に対する積極的な情報開示の観点から開示しております。

当社は、リスクマネジメント活動を一元的に推進する体制を整えています。また、グループ全体の持続的な成長を実現するため、当社のみならず子会社などを含むグループ全体でのリスクマネジメントの推進に取り組んでいます。当社は、会社の危機を未然に防ぐためには、その予兆を把握し、事態が悪化する前に対策を講じることが重要という認識のもと、リスクマネジメント活動のPDCAサイクルを構築しています。また、リスクの発見時には迅速かつ適切な対応がとれる危機管理体制を整備しています。当社は、これらのリスクによる問題発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の適時適切な対応に努める所存であります。

本項においては、将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は当連結会計年度末現在において判断したものであり、潜在的リスクや不確定要因はこれらに限られるものではありませんのでご留意ください。

 

(1)他の事業者や他の技術との競争、市場や事業環境の急激な変化

新型コロナウイルス感染症の流行により、あらゆる領域で急速なデジタルシフトが進んだことで、通信の果たす役割もますます重要になっています。政府においても、デジタル実装を通じた地域活性化を推進する「デジタル田園都市国家構想」が掲げられ、人々の暮らしやビジネスのデジタル化が加速しています。当社は生活者の新たなライフスタイルをサポートし、経済発展と社会課題の解決を両立するレジリエントな未来社会の創造に向けた取り組みを推進します。

なお、他の事業者や他の技術との競争、市場や事業環境の急激な変化により、主に以下の事項に不確実性が存在し、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

・当社グループの期待通りの需要が存在するかどうか

・当社グループの期待通りに契約数を維持拡大できるかどうか

・人口減少、高齢化に伴い期待通りの収入をあげられるかどうか

・新規事業への参入等により期待通りの収入をあげられるかどうか

・競争激化に伴う料金値下げによる通信料収入の低下、販売コミッションやお客さま維持コストの増大

・契約者のサービス利用頻度が下がることによる通信料収入の低下

・不測の事態が発生した場合であってもネットワーク及びコンテンツの品質等がお客さまの満足度を維持できるかどうか

・他の事業者と比較して、常により魅力のある端末やコンテンツ等の商品、サービスを提供できるかどうか

・物販事業拡大に伴う商品不具合への対応

・端末の高機能化等に伴う端末価格の上昇販売コミッションの増加

・迷惑メール、主にスマートフォンのセキュリティ脆弱性がもたらす脅威によるお客さま満足度の低下や防止対応コストの増加

・新周波数対応による基地局建設やデータトラフィック急増に伴うネットワークコストの増加

・当社の必要に応じた周波数を獲得できるかどうか

・新たな高速データ無線技術による競争激化

・通信方式、端末、ネットワーク、ソフトウェア等における特定技術への依存による影響

・無料通話アプリ等の拡大に伴う音声通話料収入の縮小

・他の電気通信事業者との接続料金値上げの可能性

・異業種との提携、通信と電力等のその他商品とのセット販売、MNO、MVNO事業者の新規参入、他事業者の事業領域の拡大等の事業環境の変化に伴う競争の激化

・金融事業における競争において期待通りの収入を上げられるかどうか

・金融事業の市況変動及び債務者の信用状況の悪化により、不良債権の増加や担保不動産価値の減少が生じることによる貸倒引当金の追加計上

・燃料高騰等による通信設備コストの増加及びエネルギー事業における電力調達コストの増加

 

(2)通信の秘密及び顧客情報の不適切な取り扱いや流出、及び、当社の提供する製品・サービスの不適切な利用等

近年、第三者によるサイバー攻撃等によって、重要な機密情報が外部流出する事故やサービス不正利用が世界的に発生しており、大きな社会問題となっています。これらのサイバー攻撃は、今や、自然災害や気候変動などに迫る大きなリスクとして考えられるようになっています。

当社は電気通信事業者として通信の秘密の保護を遵守するとともに、取り扱う情報資産の保護や管理については、情報セキュリティ委員会を設置し、内部からの情報漏洩防止、外部ネットワークからの不正侵入を防ぐための全社的対応策の策定及びGDPRなどのグローバル法制度の対応を実施しています。

当社グループでは、「KDDI行動指針」、「KDDIセキュリティポリシー」、「KDDIプライバシーポリシー」、「KDDIグループAI開発・利活用原則」の策定や企業倫理委員会の設置などにより、コンプライアンス体制を確立しています。その他、顧客情報を管理するシステムでは、利用権限の管理やアクセスログの保存、監視の強化、さらに、社内データの持ち出しや業務パソコンからの外部メモリーへのコピーを禁止し、技術的、組織的、人的な観点から各種の安全管理措置を強化しています。

これらの啓発活動として、当社全社員に対して継続的に通信の秘密及び顧客情報の保護に関する教育を行い、また、業務委託先、特に販売店であるauショップに対しても、情報漏えいのリスクを踏まえ、定期的な監査や教育、 セキュリティポリシーの遵守、情報取扱いに関連した業務改善を徹底し、管理強化を図っています。加えて、リスクの高い顧客情報取扱い業務に対しては、監査を強化しています。さらに、適正な顧客情報の取り扱いを行うために、社内組織の整備、第三者による評価の実施、サービス導入前のプライバシー影響評価(PIA)の導入等の対応を実施しています。

また、サイバー攻撃による事業影響の回避や低減に向け、事業を担うシステムが守るべきセキュリティ対策の基準をセキュリティ規程として定め、規程への準拠状況を審査しています。本審査を、システムの企画から開発への移行フェーズにおいて厳格に実施することで、企画・設計段階からセキュリティ対策を考慮した「セキュリティバイデザイン」を実現するだけでなく、高度なセキュリティ監視を支える技術開発を進め、システムのセキュリティを強化し、安心・安全なサービスの提供に努めています。

更に、お客様に安心・安全に製品・サービスをご利用いただくための取り組みとして、「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律」等に基づき、未成年のご契約時は原則としてフィルタリングサービスの設定を実施するとともに、フィルタリングサービスの利便性や認知度向上にも積極的に取り組んでいます。また、KDDIでは、フィッシング詐欺を検知し関連機関と連携することで偽サイトによる被害を抑止し、サービスの不正利用を24時間365日で監視する体制を構築しています。サービスの不正利用の手口は日々巧妙化しているため、新たな脅威への対策にも取り組んでいきます。

これらの取り組みにもかかわらず、従業員の故意・過失、または悪意を持った第三者によるサイバー攻撃等により、通信の秘密及び顧客情報の漏洩、サービス停止・サービス品質低下が発生した場合、もしくは、当社の提供する製品・サービスが不適切に利用された場合、当社グループのブランドイメージや信頼性の失墜、補償・課徴金を伴う可能性があります。また、将来的に通信の秘密及び顧客情報保護、サイバー攻撃防護体制の整備のため、更なるコストが増加する可能性があり、当社グループの経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)通信障害・自然災害・事故等

当社グループは音声通信、データ通信等のサービスを提供するために、国内外の通信ネットワークシステム及び通信機器等に依存しております。ネットワークシステムや通信機器の障害などによるサービスの停止が発生した場合、当社グループのブランドイメージや信頼性の失墜、顧客満足度の低下により経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

また、大規模な誤請求・誤課金、販売代理店の閉鎖や物流の停止に伴う商品・サービスの提供機会損失、SNSなどの媒体を通じた風評被害等が発生した場合も同様の影響が生じる可能性があります。

当社グループは通信障害・自然災害・事故等によるサービスの停止、中断等のリスクを可能な限り低減するため、ネットワークの信頼性向上とサービス停止の防止対策に取り組んでおります。具体的には災害時においても通信サービスを確保できるよう、防災業務実施の方針を定め、災害に備えた対策を図り、国内外の関係機関と密接な連絡調整を行っています。災害が発生した場合には、各社組織の各機能を最大限に発揮して24時間365日、通信の疎通確保と施設の早期復旧に努めております。

 

当社連結子会社であるKDDI Summit Global Myanmar Co., Ltd.(以下「KSGM」)は、ミャンマー運輸通信省傘下組織であるミャンマー国営郵便・電気通信事業体(MPT)の通信事業運営のサポートを行っておりますが、2021年2月に発生した政変によって事業活動が制限されるなどした場合、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

また、KSGMは本事業活動におけるリース債権を保有しており、2022年4月以降開始されたミャンマー中央銀行及び外国為替監督委員会による外国為替管理の規制により、USドル建てのリース債権の回収に制限を受けております。当連結会計年度において、当該リース債権の一部について損失評価引当金を計上しましたが、今後の回収状況によっては、引当金の追加計上等により、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。なお、損失評価引当金の詳細は、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 連結財務諸表注記 32. 金融商品」に記載しています。

当社グループのサービスの提供が停止する主な事由として以下のものが考えられます。

・地震及び津波、台風、洪水等の自然災害やそれに伴う有害物質の飛散等の2次災害

・感染症の世界的流行(パンデミック)

・戦争、テロ、事故その他不測の事態

・電力不足、停電

・コンピューターウィルス、サイバー攻撃、ハッキング

・オペレーションシステムのハード、ソフトの不具合

・通信機器等の製品やサービスに係る欠陥

 

(4)電気通信事業等に関する法規制、政策決定等

電気通信事業をはじめ、電気事業や金融事業等に関する法律、規制の改廃または政策決定等が、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。当社グループのブランドイメージや信頼性に影響を与える社会的問題を含め、こうした法規制や政策決定等に対して当社グループは適切に対応していると考えておりますが、将来において適切な対応ができなかった場合には、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

また、今後の競争政策の在り方について、総務省等における様々な審議会や研究会、意見募集等を通じて、他の電気通信事業者等との公正競争を有効に機能させるための措置の必要性を訴えておりますが、この取り組みに関わらず結果として当社の競争優位性が相対的に損なわれた場合にも、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

 2024年4月に「日本電信電話株式会社等に関する法律の一部を改正する法律」(以下 改正NTT法)が成立し、改正NTT法の付則で「日本電信電話株式会社等に関する法律の廃止を含め」検討することおよび「令和七年に開会される国会の常会を目途」と時限を設ける旨が規定されたことは、今後の議論に先立ち、あらかじめ法制度のあり方を方向づけるとともに拙速な議論を招きかねず、極めて強い懸念があります。

 

 日本の電気通信事業の公平な競争環境の確保は、公正競争ルールを規定した電気通信事業法と、日本電信電話公社から資産や設備を継承した日本電信電話株式会社と東日本電信電話株式会社および西日本電信電話株式会社に対して公益的な責務などを課す「日本電信電話株式会社等に関する法律(以下 NTT法)」を組み合わせて実現されるものであり、NTT法も含め通信政策の見直しを検討していくことは必要ですが、NTT法の廃止には慎重な検討が必要と考えております。NTT法の廃止が行われた場合、以下の懸念があり、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

・NTTグループ一体化で日本の健全かつ公正な競争環境が阻害され、利用者料金の高止まりやイノベーションの停滞など国民の利益が損なわれる懸念

・NTTがユニバーサルサービスの提供に関する公益的な責務を負わなくなることで、地域を問わず安心安全・強靭かつ高速・大容量の通信環境実現が困難となる懸念

・NTTグループの強大な市場支配力により、地域事業者が排除され、地域サービス衰退の懸念

 

その他、電気通信事業等に関する法律、規制の改廃または政策決定や当社グループの競争優位性等の観点で、以下の電気通信事業をはじめ、電気事業や金融事業等の政策決定等に限らず、不確実性が存在しています。

・事業者間接続料金の算定方式、会計制度の見直し

・指定電気通信設備制度、禁止行為規制の見直し

・ユニバーサルサービス制度の見直し

・MNO、MVNO等による移動通信事業への新規事業者参入

・周波数割り当て制度の見直し

・電波利用料制度の見直し

・電波の健康への影響に関する規制

・NTT東・西の固定電話網のIP網への移行に関するルール

・独占禁止法及びそれに関するルール

・消費者保護に関するルール

・不適正利用の防止に関するルール

・有害サイト等の増加等によるインターネットに関するルール

・インターネットのサービス品質計測及び広告表示に関するルール

・電話リレーサービス制度の見直し

・電気小売に関するルール

・金融事業に関するルール

・データの管理・利活用に関するルール

・プラットフォーマーに関する規制

・経済安全保障の確保に関するルール

 

(5)公的規制

当社グループは、事業展開する各国において、事業・投資の許可、国家安全保障、さまざまな政府規制の適用を受けております。また、通商、独占禁止法、特許、消費者、租税、為替、環境、労働、金融、電力等の法規制の適用を受けております。当社グループはこれらの法規制に係る情報を早期に収集し、必要な手続・対応を行っております。なお、これらの規制が強化された場合や当社グループ及び業務委託先等において規制を遵守できなかった場合、当社グループの活動が制限され、コストの増加につながる可能性があります。

 

(6)訴訟・特許

当社グループは、国内外で事業活動を行っており、その遂行に当たっては、各国の法令その他社会規範を遵守し、公正で健全な企業活動を行っております。また、保有する商品、技術またはサービスに係る知的財産権を保護するとともに、第三者の知的財産権を侵害しないよう努めています。なお、予期せぬ知的財産権を含む各種権利等の侵害を理由とする訴訟が提訴され、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7)人材の確保・育成・労務管理

当社グループは、技術革新に即応すべく全社をあげて人材育成、キャリア形成の支援に注力しておりますが、期待通りの効果が出るまで一定の期間を要することがあり、将来的に人材投資コストが増加する可能性があります。また、当社グループは法令に基づき適正な労務管理、働き方改革の推進に努めております。なお、将来において適切な対応ができなかった場合には、当社グループのブランドイメージや信頼性の失墜により、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8)退職給付関係

当社グループは、確定給付企業年金制度(基金型)、退職一時金制度(社内積立)ならびに確定拠出年金制度を設けております。定期的に退職給付債務の将来予測に基づく資産運用方針、運用機関の見直しを行っております。なお、今後当社グループの年金資産の運用利回り低下により年金資産の時価が下落した場合、または、退職給付債務を計算する上での前提条件(割引率、人員構成、昇給率等)が大幅に変更になった場合に損失が発生する可能性があります。

 

(9)減損会計

当社グループは、IFRSに準拠して資産の減損の兆候の判定や減損テスト等を行い適切な処理を行っております。将来において事業状況が悪化した場合、回収可能価額の低下により、保有するのれんを含む資産の減損損失が発生する可能性があります。

 

(10)電気通信業界の再編及び当社グループの事業再編

当社グループは、市場環境の変化に対して、事業戦略の着実な推進や必要に応じて事業再編を行っておりますが、国内外の電気通信業界の再編が、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

a.経営成績の状況

業界動向と当社の状況

近年、通信の機能は、社会のさまざまなところに溶け込み、一人ひとりの生活に無くてはならないものになっています。政府においても、地方を中心にデジタル技術の実装を進めていく「デジタル田園都市国家構想」を掲げており、社会課題の解決や地域活性化に向けたDX推進がますます重要になっています。

 

当社は2022年5月、事業環境の変化に対応しながら、「ありたい未来社会」を実現するため、「KDDI VISION 2030:「つなぐチカラ」を進化させ、誰もが思いを実現できる社会をつくる。」を策定しました。当社の使命は、人々の「命」「暮らし」「心」をつなぐことであり、「KDDI VISION 2030」の実現に向けて、事業の核である通信をさらに磨き、「つなぐチカラ」を進化させていきます。そして「KDDI Digital Twin for All」を掲げ、フィジカル空間とサイバー空間の融合による新たな付加価値の創造と、事業を通じた社会の持続的成長に貢献していきます。

 

同時に、2030年を見据えた中期経営戦略を推進し、サステナビリティ経営を根幹に、事業戦略であるサテライトグロース戦略と、それを支える経営基盤の強化を通じて、パートナーの皆さまとともに、企業価値の向上と社会の持続的成長を目指しています。

 

サテライトグロース戦略では、通信事業の進化と、通信を核とした①DX (デジタルトランスフォーメーション) ②金融 ③エネルギー ④LX (ライフトランスフォーメーション) ⑤地域共創 (CATV等)の5つの注力領域の拡大を推進してきました。

 

核となる通信においては、「ずっと、もっと、つなぐぞ。au」をスローガンに、お客さまの日常において5Gを快適にご利用いただけるよう、生活動線を重視し、主要な鉄道路線や商業地域などの5Gエリア化を進めています。加えて、非日常の体験も広く支えるべく、Space Exploration Technologies Corp.(以下「スペースX」)との提携により、衛星ブロードバンドインターネット「Starlink」を活用し、これまでサービス提供が困難とされていた山間部や島しょ地域などにおける通信環境整備も行ってきました。山小屋の通信環境改善による安全で快適な登山活動の支援や、イベント時の通信混雑緩和・キャッシュレス決済への活用など、そのユースケースを拡大しており、本年1月に発生した令和6年能登半島地震においては、スペースXの日本法人であるStarlink Japan合同会社とともに、災害医療派遣チームDMAT(Disaster Medical Assistance Team)への医療活動支援や、エリア復旧における車載型/可搬型/船上基地局のバックホール回線に活用したほか、避難所や自衛隊、自治体、電力会社などへの提供も行いました。また、本年2月には、制度改正に伴い、「Starlink」の海上向けサービス「MARITIME」の領海外でのサービス提供を開始しています。本年は衛星とスマートフォンの直接通信サービスの提供開始を予定(※1)しており、通信エリアを日本全土にまで拡張することで、「日本のどこにいても、つながらないがなくなるように」体験の実現に取り組んでいきます。

 

また、注力領域の一つであるDXでは、さまざまな業界ごとの個別ニーズに応じたビジネスプラットフォームを提供し、法人のお客さまのDXを支援する中で、新たに生まれた付加価値によって、人々の暮らしがトランスフォームされていくようなDXの好循環を目指し、通信技術をあらゆるものに溶け込ませ、お客さまが意識することなく5Gを活用できる環境を整備してきました。さらに、金融では通信とのシナジーの最大化を目指してさまざまな事業を展開し、モバイル通信サービスと、インターネット専業銀行の「auじぶん銀行」、キャッシュレス決済の「au PAY」、クレジットカードの「au PAY カード」などの各種金融サービスを連携し、スマートフォンひとつでさまざまな金融サービスをお得に便利にご利用いただけるよう、サービスの拡充を進めてきました。加えて、LXでは昨年3月に、メタバース・Web3サービスである「αU (アルファユー)」を始動し、リアルとバーチャルがつながり、いつどこにいても、音楽ライブやアート鑑賞、友人との会話やショッピングなどが楽しめる「豊かな未来社会」を創造してきました。

 

また、当社ではDXやLXの成長に向けた基盤強化として、生成AIの活用を推進しています。昨年5月から、社員1万人を対象に生成AIを活用したAIチャットサービスである「KDDI AI-Chat」の利用を開始し、社員のAIスキル向上や業務の効率化を行っているほか、本年4月には、LLM(大規模言語モデル)の社会実装を進める株式会社ELYZA(以下「ELYZA」)を連結子会社化しました。ELYZAの持つ国内トップクラスのLLMの研究開発力と当社グループの計算基盤、ネットワーク資源などのアセットを組み合わせ、生成AIの社会実装を加速させていきます。

 

 さらに当社は、重要課題(マテリアリティ)の一つとして「カーボンニュートラルの実現」を掲げ、これに向けた取り組みにも積極的に取り組んでいます。

 昨年4月より、auリニューアブルエナジー株式会社にて太陽光発電を中心とした再生可能エネルギーの発電事業

を推進しています。当社グループとして、2040年度末までにネットゼロ、2030年度末までにカーボンニュートラル

の達成を目指します。また、Telehouseブランドのデータセンターでは2025年度末までに使用電力を全て再生可能エネルギー由来の電力へ切り替えます。当社単体では、2030年度末までに追加性のある再生可能エネルギー比率を50%以上にすべく、携帯電話基地局・通信設備の省電力化や再生可能エネルギーへのシフトを強力に推し進めます。

 

変化の激しい事業環境の中で持続的に成長し続けていくためには、イノベーションの推進、社員や組織の高度な自律性と成長を促す「人財ファースト企業」への変革が不可欠です。イノベーションの推進においては、5G及びBeyond5Gの研究開発、設備投資の強化に加え、サテライトグロース戦略に基づく事業創造・研究開発・Web3/AI・先進セキュリティ技術への取組みを加速し、スタートアップとのコラボレーションなどパートナーシップをより深化させてきました。また、日本電信電話株式会社との光ネットワーク技術のグローバル標準化に向けた取組みや、ソフトバンク株式会社との5G設備の共用等、競合他社との協調にも取り組んでいます。さらに、「人財ファースト企業」への変革については、「新人事制度の浸透」「KDDI版ジョブ型人事制度によるプロ人財育成」「社員エンゲージメント向上」の3つの柱で推し進め、「KDDI DX University」の活用による全社員のDXスキル向上とプロフェッショナル人財の育成により、注力領域への要員シフトも実行してきました。

 

なお、当社は、本年5月、不安定な世界情勢やお客さまニーズの多様化など、事業を取り巻く環境が激しく変化する中、中期経営戦略期間を1年延長するとともに、事業戦略を「新サテライトグロース戦略」としてアップデートしました。当社グループは、こうした環境変化において事業機会を見出し、中期経営戦略で掲げたサステナビリティ経営に一層磨きをかけ、持続的な成長を目指していきます。

また、引き続き、経営層と従業員の共通の考え方・行動規範として掲げる「KDDIフィロソフィ」と、人権を尊重し、透明性・公正性を担保したコーポレート・ガバナンス体制との相乗効果により、リスクマネジメント・情報セキュリティ体制の強化を進め、グループ一体経営の推進に努めていきます。

 

※1 電波関連法令の整備に基づき提供予定。

 

 

連結業績

 

 

 

 

 

 

(単位:百万円)

 

2023年3月期

自 2022年4月1日

至 2023年3月31日

2024年3月期

自 2023年4月1日

至 2024年3月31日

比較増減

 

増減率(%)

 

 

売上高

 

5,671,762

5,754,047

82,285

1.5

 

 

売上原価

 

3,260,030

3,323,514

63,483

1.9

 

売上総利益

 

2,411,731

2,430,533

18,802

0.8

 

 

販売費及び一般管理費

 

1,408,391

1,503,680

95,290

6.8

 

 

その他の損益(△損失)

 

67,840

24,786

△43,053

△63.5

 

 

持分法による投資利益

 

6,213

9,945

3,732

60.1

 

営業利益

 

1,077,393

961,584

△115,809

△10.7

 

 

金融損益(△損失)

 

1,517

11,652

10,135

668.1

 

 

その他の営業外損益(△損失)

 

612

19,490

18,877

 

税引前当期利益

 

1,079,523

992,725

△86,797

△8.0

 

 

法人所得税費用

 

339,484

336,621

△2,863

△0.8

 

当期利益

 

740,039

656,104

△83,934

△11.3

 

 

親会社の所有者

 

679,113

637,874

△41,239

△6.1

 

 

非支配持分

 

60,926

18,230

△42,695

△70.1

(注)その他の営業外損益の増減率は1,000%以上となるため、「-」と記載しております。

当期より、組織変更に伴い当社事業、連結子会社及び関連会社の一部所管セグメントを見直しております。これに伴い、前期のセグメント情報については、変更後のセグメント区分に基づき作成したものを開示しております。

また、当期よりIFRS第17号「保険契約」を適用しております。これに伴い、前期の数値については、当該会計基準を遡って適用した後の数値を開示しております。

当期の売上高は、前期と比較し、エネルギー事業収入やモバイル通信料収入(ローミング収入等含む)の減少等があったものの、コーポレートDX・ビジネスDX・事業基盤サービスで構成されるNEXTコア事業の成長による収入の増加等により、5,754,047百万円(1.5%増)となりました。

営業利益は、前期と比較し、NEXTコア事業の成長による収入の増加等があったものの、ミャンマー通信事業リース債権引当、低稼働通信設備の減損・撤去引当の計上やモバイル通信料収入(ローミング収入等含む)の減少等により、961,584百万円(10.7%減)となりました。

親会社の所有者に帰属する当期利益は、637,874百万円(6.1%減)となりました。

 

 

b.セグメント別の状況

パーソナルセグメント

パーソナルセグメントでは、個人のお客さま向けにサービスを提供しています。

日本国内においては、「au」「UQ mobile」「povo」のマルチブランドで提供する5G通信サービスを中心に、金融、エネルギー、LXなどの各種サービスを連携し拡充することで、新たな付加価値・体験価値の提供を目指していることに加え、地域のパートナーの皆さまとともに、デジタルデバイド解消とサステナブルな地域共創の実現を目指しています。

海外においては、国内で培った事業ノウハウを生かし、ミャンマーとモンゴルの個人のお客さま向けに、通信サービス、金融サービス及び映像等のエンターテインメントサービスの提供にも積極的に取り組んでいます。

 

<当期のトピックス>

 

●お客さま一人ひとりのニーズに合った料金を自由にお選びいただけるよう、ブランドスローガンの異なる3つのブランドを5Gにも対応して提供しています。「おもしろいほうの未来へ。」の「au」、「シンプルを、みんなに。」の「UQ mobile」、「君にピッタリの自由へ、一緒に。」の「povo」のマルチブランドで、ブランドごとの特長を生かした取組みを進めています。

auでは、昨年9月に、携帯業界として初めて(※1)、金融サービス利用時の特典が上乗せされるスマートフォン向け料金プラン「auマネ活プラン」の提供を開始しました。また、昨年11月からは、若年層を含む全世代での金融意識の高まり等を受け、全国のau Style(※2)及びオンライン上で、投資に関する知識を手軽に学ぶことができる証券サポートセミナー「auマネ活セミナー」を開催するなど、お客さまが貯蓄や投資でお金やポイントなどの資産を形成する「マネ活」をサポートしています。さらに、本年3月からは、auで提供する一部チャットボットによるお問合せ対応に、国内主要企業で初めて(※3)生成AIを活用するなど、お客さま体験のさらなる向上にも取り組んでいます。引き続き、お客さまがストレスなく迅速にお問い合わせ内容を解決できることを目指します。

UQ mobileでは、昨年6月に、「コミコミプラン」「トクトクプラン」「ミニミニプラン」の3つのプランの提供を開始しました。なかでも、「コミコミプラン」「トクトクプラン」は、特にご好評をいただき、想定を上回る契約者数となりました。また、昨年12月には、18歳以下のお客さまとその家族(※4)を対象に、1年間「コミコミプラン」の月額料金が割引されるとともに、18歳以下のお客さまには月間データ容量が増量となる「UQ親子応援割」を開始しました。

povoでは、お客さまのご利用形態に合わせて選べる通常ラインアップのトッピングに加え、ドーナツやタクシーチケット等の商品をセットにしたトッピングを提供するなど、さらなる展開を進めています。本年3月には、データ通信のみ利用可能な料金プラン「povo2.0 データ専用」の提供を開始し、音声通話も可能な従来のプランと比べて契約手続きが簡略化されたことで、最短3分(※5)で利用を始められるようになりました。旅行やイベント、出張などの外出先で主回線のデータ容量が足りなくなった場合でも、その場で契約とデータトッピング購入を行い、すぐにデータ通信を利用することができます。また、本年2月には、スペイン・バルセロナで開催された展示会「MWC Barcelona 2024」において、povo のSDK(ソフトウェア開発キット)を、外部事業者が自社サービス内に組み込める構想を紹介しており、今後、日本国内で開始したpovoのビジネスモデルの海外展開も目指していきます。

本年1月には、ケーブルテレビ関連事業をJCOM株式会社へ承継しました。ケーブルテレビ業界のさらなる発展と地域社会の共創に貢献し、地域に根差したお客さまサービスの向上を目指していきます。

 

●au Pontaポイントプログラムでは、auスマートパスプレミアムをご利用のお客さまを対象に、au PAYで使える「毎月もらえるクーポン」を引き続き提供するとともに、昨年8月には「三太郎の日」(毎月3日・13日・23日)に提供している特典を、さらにおトクにお買い物いただける内容にリニューアルしています。また、au経済圏の取組みの一つとして、昨年7月にはオンライン特化型の薬局である「au薬局」を開業しました。

 

●金融事業では、本年3月に、au PAYカードの会員数が944万人を突破するなど、順調に推移しています。auじぶん銀行株式会社においては、昨年9月よりJCOM株式会社、昨年11月より中部テレコミュニケーション株式会社の提携サービスとセットで利用することで、住宅ローンの金利が引き下げとなる金利優遇サービスの提供を開始し、本年3月には、住宅ローン融資実行額がインターネット専業銀行として最速(※6)で累計4兆円を突破しました。また、auフィナンシャルパートナー株式会社においては、節約から資産形成まで幅広くお金の相談ができる、「auマネープラン相談」を提供していますが、政府が掲げる「貯蓄から投資へ」の方針や、新NISA開始によるお客さまの家計や資産形成への関心の高まりを受け、本年2月には累計申込件数が10万件を突破しました。さらに、auフィナンシャルサービス株式会社においては、本年3月にHDI-Japan が主催する2023年の「HDI 格付けベンチマーク(依頼格付け調査)」において、5つのお客さまセンター全てで最高ランクの三つ星を獲得しました。今後もauフィナンシャルグループが取り揃えるフルラインアップの金融サービスを通じて、全ての人にとって金融をもっと身近なものにする「つながる金融。」を実現していきます。

 

●エネルギー事業では、昨年4月に、auエネルギーホールディングス株式会社及びauリニューアブルエナジー株式会社が、再生可能エネルギー発電事業の推進強化のため、京セラ株式会社と資本業務提携を締結しました。また昨年6月には、当社とauリニューアブルエナジー株式会社が、群馬県と「GX(グリーントランスフォーメーション)推進による自立分散型社会の実現に向けた連携協定」を締結したほか、昨年12月には、auリニューアブルエナジー株式会社が、埼玉県熊谷市において太陽光発電所の商業運転を開始しました。発電した電力は関東エリアのau基地局に供給されており、今後も当社設備に電力を供給し、継続して太陽光発電所の開設を進めることで、カーボンニュートラル実現を推進していきます。

 

●モンゴルでは、連結子会社であるMobiCom Corporation LLCが、本年2月に株式会社GEOTRAと連携して同国初(※7)の人流シミュレーション・分析サービスの実証を開始しました。同国における渋滞等の社会課題解決を通じて、同国第1位の通信事業者として経済発展と国民生活の充実に寄与していきます。また、ミャンマーでは(※8)、昨年10月に、同国中部のバゴー地域で発生した大規模洪水の被災者へ無料通話やデータボーナスを支援するなど、国民の皆さまに寄り添った活動を継続しています。今後も情勢を注視しつつ、関係者の安全確保を念頭に、生活に不可欠な通信サービスの維持に努めています。

 

※1 2023年8月時点、MMD研究所調べ。4キャリア・MVNO主要20ブランドとの比較(過去10年間)料金プラン加入で銀行の預金利率・証券の投資信託ポイント還元率がアップするというサービス特徴において。

※2 沖縄セルラー直営の「au Style NAHA」および沖縄エリアのau Styleは除く。

※3 2024年2月29日時点。商品やサービスの使用方法や手続などに関するお客さまからのお問い合わせに回答するカスタマーサポート領域における活用として初めて。日経225対象企業のお客さま向けチャットボット提供有無および生成AI搭載の有無をKDDIにて調査。

※4 18歳以下のお客さまと同一の「自宅セット割」グループまたは「家族セット割」グループに加入いただいたご家族が対象です。加入条件などの詳細は各サービスページをご確認ください。

自宅セット割:https://www.uqwimax.jp/mobile/newplan/setwari/jitaku/

家族セット割:https://www.uqwimax.jp/mobile/newplan/kazoku/

※5 自社計測で利用開始までにかかった時間。お客さまの状況によって異なる場合があります。

※6 2024年3月12日時点、auじぶん銀行調べ。「インターネット専業銀行」とは、住信SBIネット銀行、ソニー銀行、PayPay銀行、大和ネクスト銀行、楽天銀行、GMOあおぞらネット銀行、みんなの銀行を指します。

※7 2024年1月、GEOTRA調べ。

※8 連結子会社であるKDDI Summit Global Myanmar Co., Ltd.が、ミャンマー国営郵便・電気通信事業体(MPT)の通信事業運営のサポートを行っています。

 

 

パーソナルセグメントにおける、当期の業績概要等は以下のとおりです。

 

業 績

 

 

(単位:百万円)

 

2023年3月期

自 2022年4月1日

至 2023年3月31日

2024年3月期

自 2023年4月1日

至 2024年3月31日

比較増減

 

増減率

(%)

売上高

4,820,612

4,747,221

△73,392

△1.5

営業利益

878,963

740,360

△138,603

△15.8

 

当期の売上高は、前期と比較し、エネルギー事業収入やモバイル通信料収入(ローミング収入等含む)の減少等により、4,747,221百万円(1.5%減)となりました。

営業利益は、前期と比較し、ミャンマー通信事業リース債権引当、低稼働通信設備の減損・撤去引当の計上やモバイル通信料収入(ローミング収入等含む)の減少等により、740,360百万円(15.8%減)となりました。

 

 

ビジネスセグメント

ビジネスセグメントでは、日本国内及び海外において、幅広い法人のお客さま向けに、スマートフォン等のデバイス、ネットワーク、クラウド等の多様なソリューションに加え、「Telehouse」ブランドでのデータセンターサービス等を提供しています。

引き続き、5G通信を中心にIoTやDXなどを活用したソリューションを、パートナー企業との連携によってグローバルにワンストップで提供し、お客さまのビジネスの発展・拡大をサポートしていきます。

また、日本国内の中小企業のお客さまについては、連結子会社のKDDIまとめてオフィスグループによる地域に密着したサポート体制を全国規模で実現しています。

 

<当期のトピックス>

 

●データを活用した企業のDX支援を強化するため、昨年4月、データエンジニアリング専門のスタートアップである株式会社フライウィールを連結子会社化しました。データ活用による企業のDX推進や企業間データ連携を加速し、社会課題解決やお客さま体験価値の向上支援、産業構造の変革を目指します。

さらに昨年9月、当社の連結子会社である株式会社KDDIエボルバと、三井物産株式会社の持分法適用会社であるりらいあコミュニケーションズ株式会社は経営統合を行い、アルティウスリンク株式会社を発足しました。コンタクトセンター業界における、生成AIを活用した消費者接点のデジタル化等、サービスの高度化を進め、国内外で展開するデジタルBPO(※1)事業によるお客さま企業の成長に貢献していきます。

 

●当社では国内外のスタートアップへの出資と事業支援を通じて、新しい未来を共に創出する取り組みを積極的に進めています。本年3月には、2017年8月に当社グループに参画したスタートアップ企業である株式会社ソラコム(以下「ソラコム」)が「スイングバイIPO(※2)」により東京証券取引所グロース市場へ新規上場しました。創業当初から「つながる社会」実現に向けたグローバルプラットフォームを目指してきたソラコムは、IoTプラットフォーム「SORACOM」を通じて、世界中のエネルギー、製造、金融、コンシューマ製品、ヘルスケア、農業など、2万を超えるさまざまな業界のお客さまに、600万回線(※3)を超える通信サービスを提供しています。本上場により、さらなる事業成長とグローバル展開を加速させていきます。また当社は本年4月にはLLMの社会実装を進める株式会社ELYZAへの出資を行いました。当社は、これからもスタートアップとのパートナーシップにより新たな事業創出を目指していきます。

 

●当社のIoT累計回線数は本年3月に4,197万回線を超え、国内トップシェアとなっています。約20年にわたる豊富な運用実績と保守管理体制を強みに、社会インフラ(コネクティッドカーや、電力・ガスのスマートメーター等)とグローバル領域で大きく伸長しており、中期的には2025年度内に5,400万回線の到達を目指すなど、サステナブルな産業・インフラ環境の実現に貢献しています。

なかでも、コネクティッド事業の拡大を牽引するコネクティッドカーについては、海外自動車メーカーへのコネクティッドカー向け通信サービスの提供や、クルマ以外のさまざまな製品、幅広い産業へのプラットフォームの提供などを行っています。加えて、昨年11月には、コネクティッド事業の一層の拡大を見据え、北米にコネクティッド事業を専業とする新会社「KDDI Spherience(スフィアリエンス), LLC」を設立し、スウェーデンに運用子会社を開設しました。今後も新たな付加価値を生み出すために、さまざまな産業へコネクティッドサービスを提供し、法人のお客さまのDX加速を支援していきます。

 

●世界各国でのコネクティビティデータセンターの旺盛な需要に応えるべく、昨年5月にTelehouseバンコクを開業し、10月にはフランスのTelehouseパリ・マニキャンパスに拡張第4棟を、ドイツにはTelehouseフランクフルトキャンパスに5棟目を、それぞれ開業しました。また、昨年6月にカナダのAllied Properties REITとの間でデータセンター事業の譲渡契約を締結し、本年4月にTelehouseカナダとしての事業を開始しました。なお、欧州やタイのデータセンターは100%再生可能エネルギーを利用した運営を実現しています。当社は30年以上にわたり、世界10カ国以上で「Telehouse」ブランドでデータセンター事業を展開しています。今後も各地域の環境に配慮しながら世界規模で事業を推進・拡大し、「最も相互接続のしやすい高品質なコネクティビティデータセンター」を目指し、法人のお客さまのグローバルビジネスを支援していきます。

 

●当社は、本年2月にスペイン・バルセロナで開催された世界最大のモバイル関連展示会「MWC Barcelona 2024」に、初出展しました。つなぐチカラを進化させ生活体験を革新する「Life Transformation ~Enhancing the power to connect~」を出展テーマに、つながる世界の先にある未来を創る社会のプラットフォーマーとして、モビリティ/デジタルツイン・AI/衛星通信/データセンターなどの取組みを、これらがもたらす人々への体験価値とともに世界に紹介しました。グローバル規模での社会課題解決をさらに推進するとともに、海外展開するパートナーとも協力しながら、幅広い事業展開を目指します。

 

当社は、お客さまのビジネスの発展・拡大に一層貢献し、お客さまから真の事業パートナーとしてお選びいただくことを目指し、事業の拡大に取り組んでいきます。

 

※1 人的なリソースのみで業務受託するのではなく、AI等のデジタル技術を活用し、受託業務の効率化を実現した上で一連業務のアウトソーシングを受託するBPO手法のこと。

※2 スタートアップが大企業のサポートを得て成長し上場すること。「スイングバイ」とは宇宙探査機が惑星の重力を利用して加速することを表現した言葉。

※3 海外法人からの提供を含むSORACOM Airの総回線数。SORACOM Air for セルラー、Sigfox、LoRaWANを含む。

 

 

 

ビジネスセグメントにおける、当期の業績概要等は以下のとおりです。

 

業 績

 

 

 

(単位:百万円)

 

2023年3月期

自 2022年4月1日

至 2023年3月31日

2024年3月期

自 2023年4月1日

至 2024年3月31日

比較増減

 

増減率

(%)

売上高

1,132,180

1,264,739

132,558

11.7

営業利益

191,502

211,912

20,409

10.7

当期の売上高は、前期と比較し、コーポレートDX・ビジネスDX・事業基盤サービスで構成されるNEXTコア事業の成長による収入の増加等により、1,264,739百万円(11.7%増)となりました。

営業利益は、前期と比較し、売上高の増加等により、211,912百万円(10.7%増)となりました。

 

 

c. 財政状態の状況

 

2023年3月期

2024年3月期

比較増減

資産合計(百万円)

11,923,522

14,146,060

2,222,538

負債合計(百万円)

6,252,863

8,348,833

2,095,970

資本合計(百万円)

5,670,659

5,797,226

126,568

親会社の所有者に帰属する持分(百万円)

5,128,288

5,253,362

125,074

親会社所有者帰属持分比率(%)

43.0

37.1

△5.9

1株当たり親会社所有者帰属持分(円)

2,377.38

2,522.92

145.54

有利子負債残高(百万円)

1,651,437

2,394,403

742,966

 

(資産)

資産は、退職給付に係る資産等が減少したものの、金融事業の貸出金、現金及び現金同等物等が増加したことにより、前連結会計年度末と比較し、2,222,538百万円増加し、14,146,060百万円となりました。

 

(負債)

負債は、その他の非流動負債等が減少したものの、金融事業の預金、借入金及び社債等が増加したことにより、前連結会計年度末と比較し、2,095,970百万円増加し、8,348,833百万円となりました。

 

(資本)

資本は、親会社の所有者に帰属する持分の増加等により、5,797,226百万円となりました。

以上の結果、親会社所有者帰属持分比率は、前連結会計年度末の43.0%から37.1%となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

 

 

(単位:百万円)

 

2023年3月期

2024年3月期

比較増減

営業活動によるキャッシュ・フロー

1,078,869

1,706,498

627,629

投資活動によるキャッシュ・フロー

△732,480

△832,433

△99,953

フリー・キャッシュ・フロー ※

346,389

874,065

527,676

財務活動によるキャッシュ・フロー

△669,837

△476,477

193,360

現金及び現金同等物に係る換算差額

7,087

9,367

2,281

現金及び現金同等物の増減額(△は減少)

△316,361

406,955

723,316

現金及び現金同等物の期首残高

796,613

480,252

△316,361

現金及び現金同等物の期末残高

480,252

887,207

406,955

※ フリー・キャッシュ・フローは「営業活動によるキャッシュ・フロー」と「投資活動によるキャッシュ・フロー」の合計であります。

 

営業活動によるキャッシュ・フロー(収入)は、前期と比較し、金融事業の貸出金や割賦債権等の営業債権及びその他の債権の増加幅が大きくなったものの、金融事業の預金の増加幅が大きくなったこと等により、627,629百万円増加し、1,706,498百万円の収入となりました。

投資活動によるキャッシュ・フロー(支出)は、前期と比較し、カナダのデータセンター事業に係る有形固定資産の取得等による支出の増加等により、99,953百万円増加し、832,433百万円の支出となりました。

財務活動によるキャッシュ・フロー(支出)は、前期と比較し、社債発行及び長期借入による収入の増加等により、193,360百万円減少し、476,477百万円の支出となりました。

また、上記キャッシュ・フローに加えて、現金及び現金同等物に係る換算差額により9,367百万円増加した結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末と比較し、406,955百万円増加し、887,207百万円となりました。

 

③ 営業実績

 当連結会計年度における営業実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

パーソナル

4,747,221

△1.5

ビジネス

1,264,739

11.7

その他

141,794

2.2

セグメント間の内部売上高

△399,706

 合計

5,754,047

1.5

(注)金額は外部顧客に対する売上高とセグメント間の内部売上高の合計であります。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」第93条の規定により、国際会計基準に準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成に当たって、必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しております。

なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要性がある会計方針は、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 連結財務諸表注記 3.重要性がある会計方針」に記載しております。また、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定は、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 連結財務諸表注記 2.作成の基礎 (4)見積り及び判断の利用」に記載しております。

 

 

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.経営成績の分析

(売上高)

 前期と比較し、エネルギー事業収入やモバイル通信料収入(ローミング収入等含む)の減少等があったものの、コーポレートDX・ビジネスDX・事業基盤サービスで構成されるNEXTコア事業の成長による収入の増加等により、5,754,047百万円(1.5%増)となりました。内訳につきましては「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 連結財務諸表注記 25.売上高」をご参照ください。

 

(売上原価、販売費及び一般管理費)

前期と比較し、ミャンマー通信事業リース債権引当の計上等により4,827,194百万円(3.4%増)となりました。内訳につきましては「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 連結財務諸表注記 26.費用の性質別内訳」をご参照ください。

 

(その他の収益及びその他の費用)

 補助金収入等16,417百万円の計上等により24,786百万円の利益(63.5%減)となりました。内訳につきましては「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 連結財務諸表注記 27.その他の収益及びその他の費用」をご参照ください。

 

(持分法による投資利益)

 持分法適用関連会社のauカブコム証券株式会社における投資利益の増加等により、9,945百万円(60.1%増)となりました。

 

(営業利益)

 以上の結果、営業利益は961,584百万円(10.7%減)となりました。なお、営業利益率は、16.7%(2.3ポイント減)となりました。

 

(金融収益及び金融費用)

 為替差益12,547百万円、受取配当金4,694百万円、支払利息8,813百万円の計上等により、11,652百万円の利益(668.1%増)となりました。内訳につきましては「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 連結財務諸表注記 28.金融収益及び金融費用」をご参照ください。

 

(その他の営業外損益)

 持分変動損益等9,946百万円の計上等により、19,490百万円の利益となりました。内訳につきましては「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 連結財務諸表注記 29.その他の営業外損益」をご参照ください。

 

(法人所得税費用)

 将来減算一時差異の発生の増加等の影響により336,621百万円(0.8%減)となりました。なお、2024年3月期の法人税等負担率は33.9%となりました。法人所得税費用に関する詳細については「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 連結財務諸表注記 16.繰延税金及び法人所得税」をご参照ください。

 

(非支配持分に帰属する当期利益)

 主にミャンマー通信事業リース債権引当の計上によるKDDI Summit Global Myanmar Co., Ltd.の利益減少等の影響により、18,230百万円(70.1%減)となりました。

 

(親会社の所有者に帰属する当期利益)

 上記の結果、親会社の所有者に帰属する当期利益は637,874百万円(6.1%減)となりました。

 

 なお、報告セグメントの売上と営業利益の概況については、「(1)経営成績等の状況の概要」に記載しております。

 

b.キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析については、「(1)経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。

当社グループは、運転資金及び設備投資については、自己資金及び借入金等により資金調達することとしております。このうち、借入金等による資金調達に関しては、通常の運転資金については短期借入金で、設備投資などの長期資金は固定金利の長期借入金及び社債で調達することを基本としております。また金融事業については、資金調達やリスクアセットの削減を目標として、債権流動化を行っております。

なお、当連結会計年度末における借入金等を含む有利子負債の残高は2,394,403百万円、現金及び現金同等物の残高は887,207百万円となっております。

流動性リスクとその管理方法につきましては、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 連結財務諸表注記32.金融商品」に記載しております。

 

c.経営上の財務目標の達成状況について

当社は、2024年5月、不安定な世界情勢やお客さまニーズの多様化など、事業を取り巻く環境が激しく変化する中、中期経営戦略期間を1年延長(2022-25年度)するとともに、事業戦略を「新サテライトグロース戦略」としてアップデートしました。財務目標において、営業利益については、持続的な成長を目指し、EPSについては、2025年度1.5倍(2018年度比)の実現、株主還元については、安定的な配当を継続し、連結配当性向は40%超を掲げております。

当連結会計年度においては、ミャンマー通信事業におけるリース債権の引当ほか、低稼働通信設備の減損・撤去引当等の影響により、通期では減益となりましたが、それ以外の業績は順調に進捗し、配当性向40%超を達成いたしました。

当社グループは、中期経営戦略で掲げたサステナビリティ経営に一層磨きをかけ、持続的な成長を目指していきます。

 

 

5【経営上の重要な契約等】

 

カナダにおけるデータセンターについて

当社は、2023年6月21日開催の取締役会において、Allied Properties REIT(本社:Toronto,Canada、代表取締役社長:CECILIA WILLIAMS)から、カナダにおける土地・建物・設備等の資産を譲り受けることを決議し、同日付で契約を締結(以下 本締結)いたしました。また、本締結を受け2023年6月26日、カナダにおいてデータセンター事業を営む目的で、新子会社「KDDI Canada, Inc.」を新設しております。

 

当社は、企業価値の向上と社会の持続的成長の循環を目指す「サステナビリティ経営」と、その実行を支える事業戦略として「サテライトグロース戦略」を掲げています。その注力領域の一つであるDXにおいて、中核の一つであるデータセンター事業では、コンテンツプロバイダやクラウド事業者、通信事業者などのお客さま同士がつながり合い、相互に新たな価値を創出する場となるコネクティビティデータセンター(以下コネクティビティDC)を拡大していく戦略を推進しています。

当社は、コネクティビティDCの接続数としては世界トップ(注)である「Telehouse ロンドン」、フランス国内トップ(注)となる「Telehouse パリ」に加え、2023年5月にタイ・バンコクにもデータセンターを新設し、ヨーロッパだけではなく東南アジアも拡大しています。本締結により、カナダ国内トップ(注)のコネクティビティDCを取得し、北米エリアにおけるデータセンター事業を強化することで、世界規模の事業推進を行います。

 

背景・目的

世界的にデータビジネスが加速しており、データセンターのニーズは高まっています。IoT、5Gの普及により、モバイル端末上のアプリやコンテンツを利用するユーザーによるトラフィックが増加しています。それに伴い、コンテンツ事業者やインターネット事業者、ハイパースケーラーなどがデータセンター内で相互につながり合い、価値を創出し合うことが可能なコネクティビティDCは、デジタル社会を実現するためにますます重要になっています。

 

当社は、社会のプラットフォーマーとして、最も相互接続のしやすい高品質なコネクティビティDCを中心として事業を加速し、法人のお客さまのグローバルビジネス拡大とデジタル世界の繁栄に貢献します。

 

(注) データセンターのお客さま相互接続数のこと。2023年6月21日時点。

 

 

株式会社ローソンに対する公開買付け及び資本業務提携契約の締結について

当社は、2024年2月6日付の取締役会(書面決議)において、三菱商事株式会社 (以下、三菱商事)との間で、当社が株式会社ローソン (以下、ローソン)の株券等を金融商品取引法に基づく公開買付けにより取得する旨を定めた基本契約書及びローソングループの共同運営等に関する株主間契約書を締結すること、三菱商事及びローソンとの間で資本業務提携契約書を締結することを決議し、同日付で契約を締結しました。
 今後、三菱商事と当社は、ローソンの議決権を50%ずつ保有し、両社は共同経営パートナーとして、ローソンの企業価値向上に向け3社で取り組んでいくこととなります。

 

資本業務提携に至った経緯

(1)事業環境

今後人口減少や少子高齢化の加速が予想される中、全国に「リアル店舗」を持つコンビニエンスストアの地域インフラとしての役割はますます高まると考えています。一方、労働人口の減少による人手不足や生活者価値の地域格差を補うためには、「デジタル技術」の活用も必然となります。更に、「グリーン」に対する社会的要請の高まり等、これまで以上に生活者の意識変容や外部環境変化の加速が見込まれるものと考えております。

また、近年のリテイル事業分野においては、各社が単一事業に留まらず、業界横断的な事業やサービスを展開し、各々の経済圏を構築しつつあります。このような環境でお客様に選ばれ続ける為には、お客様の嗜好に合った利便性(便利さ)と利得性(お得さ)など、新たな生活者価値を提供することが重要であると考えています。

 

(2)資本業務提携の狙い

コンビニエンスストア業界は食品や日用品を安定的に供給できる社会インフラとして欠かせない存在となっており、新型コロナウイルス感染症の拡大を契機にお客さまの生活スタイルや消費行動、価値観が多様化する中においても、ローソンはニューノーマルへの対応として、店内厨房や冷凍食品、デリバリーの強化等、変化対応に取り組んでまいりました。

一方で、今後も加速する事業環境の変化に対応していくべく、通信関連事業を基盤としたお客様接点と、デジタルを強みに様々なサービスを有する当社との連携を更に強化していくことを狙いとして、資本業務提携の合意に至りました。

 

当社では携帯電話事業を中核に、銀行や保険、旅行、デリバリーといった幅広い領域に進出しております。更にauスマートパスプレミアムという会員数1,300万人以上を誇る、日本最大級のサブスクリプションサービスを展開しております。

ローソンは、「ローソン」をはじめ「ローソンストア100」や「ナチュラルローソン」等、特色あるコンビニエンスストアを全国約14,600店舗で展開する他、スーパーマーケット業態の成城石井事業やチケット販売や映画館運営、旅行業等を行う「ローソンエンタテインメント」、店舗ATMを中心に金融事業を行う「ローソン銀行」などを通じて、幅広いお客様接点を有しています。

これらの特徴の異なる、国内有数の経済圏を持つ企業同士が互いの顧客基盤やサービスを連携することで、ローソン・当社の店舗の相互活用による店舗網の拡大、ローソン店舗における通信、金融、ヘルスケアなどの提供サービスの拡充、ポイント経済圏の拡大など、リアル・デジタル融合型サービスの開発に加え、ローソンが掲げる脱炭素社会実現に向けた長期目標達成のための環境負荷低減施策の推進などに取り組んでいきます。

 

6【研究開発活動】

 当社グループは2024年5月、新サテライトグロース戦略を発表しました。同戦略は5G通信、データドリブン、生成AIをコア領域とし、コアを取り巻くサテライトとして複数のビジネス領域を掲げ、それらの拡大を図ることを目指します。ビジネス領域として、お客さまのライフスタイルを変革するLX(ライフトランスフォーメーション)につながる領域をモビリティ、宇宙、ヘルスケアなどと定めております。これらのコア、LXの各領域に対し、必要となる技術の研究開発を進めてきており、これらの活動を通じて当連結会計年度における研究開発費の総額は、27,721百万円となりました。なお、当社グループにおける研究開発活動は各セグメントに共通するものであり、各セグメントに関連づけて記載しておりません。

 以下、コア、LXの各領域に対する研究開発活動のトピックスをご紹介します。

 

1.コア領域(5G通信、データドリブン、生成AI)

 当社グループでは、5G通信の次の世代に位置づけられるBeyond 5G/6Gについて、その特長を踏まえ、研究開発を続けております。以下に例を示します:

・Beyond 5G/6G時代のネットワークインフラとしてオール光ネットワークが注目されており、光ファイバーの高度化も重要となります。その一環で、2023年10月、住友電気工業株式会社、古河電気工業株式会社およびOFS Laboratories, LLCと共同で、伝送帯域幅115.2テラヘルツの超広帯域伝送実証(従来のC帯に比べて約24倍)に成功しております。同実証は標準と同径の光ファイバーの中に12個の独立したコアを高密度に配置した非結合12コア光ファイバーと広帯域なO帯(※1)光ファイバー増幅器を組み合わせた点が特長です。

・Beyond 5G/6Gでは毎秒100ギガビット超の通信速度を目標に研究開発が進められております。また、Beyond 5G/6G時代には量子コンピューティングの隆盛が予想されています。以上を踏まえ、必要とされる通信速度と同等以上の処理性能をもつ耐量子暗号アルゴリズムが期待されております。これに対し、2023年9月、兵庫県立大学と超高速共通鍵暗号アルゴリズム「Rocca-S」を共同開発しました。同暗号アルゴリズムでは、256ビット鍵長により安全性を確保できるのに加え、前述の通信速度を大幅に超える毎秒2テラビットの処理性能を達成しております。

・2023年5月には、従来の方式を拡張したセルフリー方式(※2)によるエリアを構築し、端末がエリア内のどの場所に移動しても基地局が連携して通信速度を確保し続けることで、お客さまに安定した通信を継続的に提供する実証実験に成功しております。

・当社の電力使用料のうち約98%が携帯電話基地局などで使用する電気に起因しており、その省電力化が重要な課題となっています。そこで、2024年2月より、曲がる太陽電池「ペロブスカイト型」を活用した基地局への電力供給実証を国内で初めて開始しております。電柱型基地局のポールに巻き付けることで、敷地面積が少ない基地局でも太陽光発電が可能になり、再生可能エネルギーの導入が進むことが期待されます。CO2排出量実質ゼロの「サステナブル基地局」の拡大により通信インフラの環境負荷を削減し、地球温暖化の防止に貢献します。

 

 一方、データドリブン、生成AIの領域についても様々な取り組みを進めております。以下に例を示します:

・2024年3月、大規模言語モデルの社会実装を進める株式会社ELYZAを連結子会社化することを発表しました。同社の持つ国内トップクラスの大規模言語モデルの研究開発力と当社グループの計算基盤、ネットワーク資源などのアセットを組み合わせ、生成AIのさらなる研究開発および社会実装を加速させていきます。

・2023年7月には、従来の深層学習モデルで長期間運用する際に課題となる破滅的忘却(※3)を解決し、かつ既存手法の性能を超えることを達成しました。イリノイ大学シカゴ校との共同研究で、継続学習に関する論文「Parameter-Level Soft-Masking for Continual Learning」が、AI分野の最難関国際学術会議である「ICML2023」に採録されました。この内容をもとに、AIが自律的に環境変化に適応して成長する「成長可能AI」の技術確立に向けた取り組みを進めています。

※1 O帯、C帯:

光ファイバーで光通信を行う際に使用される波長帯域の一種。O帯は1260~1360nm、C帯は1530~1565nmの波長範囲を指す。

※2 セルフリー方式:

端末が特定の基地局やセルに依存せず通信を行う方式。

※3 破滅的忘却:

新たな情報を学習した後に、以前覚えていた情報を忘れる現象。

 

2.LX領域(モビリティ、宇宙、ヘルスケア、スポーツ・エンタメ等)

 当社グループでは、LXとして定義した各事業領域の拡大を目指し、必要となる技術の研究開発を進めています。以下に例を示します:

・モビリティ領域では、先進技術を用いたデジタル化と自動化により、様々な分野の社会課題解決に取り組んでいます。

例えば、2024年2月、「つながるモビリティ社会に向けた取り組み説明会」を実施しました。トヨタ自動車株式会社と連携し、安全・安心なモビリティ社会の実現に向けた取り組みとして、人流および車両のビッグデータと、過去の事故情報などのオープンデータをAI分析し危険地点を見える化するソリューション(危険地点スコアリング)の提供開始などについて説明しました。

2024年3月、水空合体ドローンを用いて、遠隔での橋脚水中点検に成功しました。精密な位置情報の取得を可能にする音響測位装置により、衛星利用測位システム(GPS)が使えない水中環境でも安定した操作を実現しております。タブレット1つで、空中・水上・水中カメラの映像・情報を確認できるようになり、少人数で効率的な点検が可能になります。

・宇宙領域では、地上での移動体通信を低軌道-静止軌道衛星間、さらには月面通信に拡張すべく検討を進めております。

例えば、2023年10月、国立大学法人京都大学と共同で、フォトニック結晶レーザー(※4)を使った低軌道-静止軌道衛星間向け光通信方式の実証に成功しました。低軌道―静止軌道衛星間(約3万6,000km)に相当する距離で通信ができるようになります。

また、アルテミス計画(※5)における月面探索活動では、高速大容量な通信環境の構築が求められています。そのような環境を無人で構築するため、2023年12月、GITAI USA Inc.と共同で、ロボットによる基地局アンテナ設置に成功しております。本実証を通じて得た知見を基に月面探査活動を支援してまいります。

・ヘルスケア領域では、スマホやインターネット依存症、ゲーム行動症といった現代社会で増えつつある社会課題解決に取り組んでいます。

具体的には、2023年10月、東京医科歯科大学と共同で「サイバー精神医学講座」を開設しました。本講座では、スマホ・ネット依存やゲーム行動症の実態解明、診断や治療を支援するシステム(プログラム医療機器)の検証を行っており、社会の健康促進に貢献します。

・スポーツ・エンタメ領域では、現実世界の物体や状況をデジタル上にリアルタイムで再現する「デジタルツイン」技術を活用し、コンテンツの魅力化を目指しています。

例えば、2023年10月、モバイル回線で伝送可能なデータ量に圧縮した動的な三次元メッシュデータを、高品質のままスマートフォンでリアルタイムに視聴できる技術を開発しました。スマートフォンでのリアルタイム視聴を可能にする技術は、新たなコンテンツやサービスを生み出す可能性を広げます。

また、力の感覚を支援する小型・薄型の「力触覚提示技術」を開発し、本技術搭載の卓球ラケット型力触覚提示デバイスを2023年10月に公開しました。本デバイスはカメラなどで感知した人物の位置や姿勢、デバイスの状態をリアルタイムに解析し、適切な方向に動かすことで、プレイヤーの腕の動きを支援します。言葉では理解しにくい力加減や動作タイミングなどを直感的に伝えることで、スポーツにおける直感的な情報共有に加え、高齢者や障がい者の生活支援など、人間の動作支援や能力強化に役立てます。

※4 フォトニック結晶レーザー:

フォトニック結晶と呼ばれる人工的な光ナノ構造を平面状に配置した、2次元フォトニック結晶を有する半導体レーザー。通常の半導体レーザーと比較して、大面積で単一モード発振するため、高出力で狭い拡がり角のビームが得られる。

※5 アルテミス計画:

米国が提案している国際宇宙探査計画で、有人月面着陸、および将来的な有人火星着陸を目指すと発表し、日本政府も参画を表明している。