当行グループ(当行及び連結子会社等)の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、次のとおりであります。
なお、以下の記載における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当行グループが判断したものであります。
(1) 企業理念
・地域社会の発展を常に考え行動すること、これが私たちの事業です。
・お客さまとの創造的な関係を深めること、これが私たちの仕事の原点です。
・よき企業人であるためによき市民であること、これが私たちの活動の基本です。
・一人ひとりの顔が見える表情豊かな組織であること、これが私たちの大切にする企業風土です。
(2) パーパス
当行は、企業理念をもとに、当行グループが何のために存在し、独自の強みを活かして社会にどんなことを働きかけられるかという観点から、パーパスを2021年11月に制定しました。パーパスの『「つなぐ」力』は、お金(金融)だけでなく、地域・企業・人々を「つなぐ」ことや、当行グループが持つサービスや情報などの資源を地域・企業・人々に「つなぐ」ことを通して、さまざまな価値と価値をつないだり、新たな価値を生み出したりすることを表現しています。また、「地域の未来をつむぐ」は、地域(当行が本店を置く群馬県だけでなく当行のネットワークが及ぶ地域や企業・人々といったステークホルダー全般)の豊かな未来をつむいでいく存在でありたいという思いを表しています。
(3) 中期経営計画
2022年4月からスタートした中期経営計画「Innovation for“Purpose”」では、過去3年間の中期経営計画「Innovation 新次元」における成果と課題に基づき、現在の取組みをさらに深掘りしていくとともに、当行が2021年11月に定めたパーパス「私たちは『つなぐ』力で 地域の未来をつむぎます」を実現していくために、めざす未来を起点として社会やお客さまの課題解決に対して積極的に取り組んでまいります。
<基本方針>
<戦略テーマ>
[5つの改革]
[5つの視点「地域」「企業」「個人」「グループ」「当行」]
<中期経営計画 骨子>
<2024年3月期の取組み>
当行グループの「めざす未来」の実現に向けて
当行は、パーパスにもとづくめざす未来を「地域社会と当行グループの持続的な発展」と定め、その実現に向けた経営に取り組んでいます。
2022年4月にスタートした中期経営計画「Innovation for "Purpose"」は、現在の深掘り(フォアキャスティング)と、めざす未来からの逆算(バックキャスティング)により策定したもので、デジタル技術の活用を基盤とし、5つの改革による「つなぐ」力の強化と「つなぐ」力の発揮により未来を「つむぐ」ことを基本方針として掲げています。
中期経営計画の2年目となる2024年3月期は、この基本方針に基づき、主に以下の施策に取り組みました。
5つの改革による「つなぐ」力の強化
当行では「つなぐ」力の強化にむけて、過程や自律性を重視した営業プロセス改革や、生産性向上に資する業務プロセス改革、お客さまとの接点拡充に向けたチャネル改革、創造力の発揮に向けた人材改革、アライアンスなど外部連携改革に取り組んでいます。
営業プロセス改革について、当行では2022年10月から、「つなぐプロセス」を通じたゴールベース・ニーズベースの営業活動を展開しており、お客さまのめざす姿(ゴール)の実現に向けて、経営課題の把握を起点としたソリューション提案を実践しています。
業務プロセス改革の一環として、2024年3月、全店に「店頭タブレット」を導入しました。「店頭タブレット」では、お客さま自身の操作により、預金口座の開設などの手続きが完結するため、利便性の向上はもとより、行内の業務効率化につながっています。
チャネル改革として、2023年7月には、事業者向けのポータルサイト「ぐんぎんビジネスポータル」を導入し、同年9月には「ぐんぎんアプリ」の利便性向上に向けた、投信取引サービスを追加しました。
人材改革の一環として、2023年6月には人的資本の充実を目的とし、新たに「人材育成方針」を策定しました。この「人材育成方針」に基づき、行員一人ひとりの個人パーパスを起点とした、自律的なキャリア形成と挑戦を支援しています。
外部連携改革について、TSUBASAアライアンスを通じて、協調融資などトップライン向上や、API基盤の共同化等によるコスト削減に取り組んでいます。また、群馬・第四北越アライアンスでは、2024年1月、建替えにより新たに完成した「群馬銀行池袋ビル」に、当行の池袋支店と第四北越銀行の池袋支店がそれぞれ入居し営業を開始しました。両行が同じビルに入居し営業活動を行うことで、連携の強化に取り組んでいます。
足利銀行とのりょうもう地域活性化パートナーシップでは、自動車産業に対する本業支援や、お客さまへの金融支援を通じて、両毛地区の活性化に向けて取り組んでいます。
「つなぐ」力の発揮により未来を「つむぐ」
当行では未来を「つむぐ」活動として、地域のサステナビリティへの積極的な関与や、お客さまへの金融・本業支援、グループ総合力の発揮に向けた取組みを行っています。
地域の脱炭素化に向けた取組みとして、2023年5月、東京電力グループが運営する尾瀬片品発電所のネーミングライツを取得するとともに、2024年1月からは、同発電所由来の再生可能エネルギーの調達を開始しています。また、ファイナンスを通じてお客さまのESG課題の解決を支援していくため、2023年7月、サステナブルファイナンスのラインアップを拡充しました。
お客さまの本業支援に向けた取組みとして、子会社のぐんぎんコンサルティング株式会社では、株式会社きらぼしコンサルティング、綺羅商務諮詢(上海)有限公司、KIRABOSHI BUSINESS CONSULTING VIETNAM COMPANY LIMITEDの3社との提携により、2023年10月から新たに、海外事業コンサルティングを開始しました。また、同社では、地域商社事業として新たにクラウドファンディングサイトやECサイトを開設し、お客さまの商品・サービスの認知度向上や、販路拡大に向けた支援を行っています。
グループ総合力の発揮について、子会社の株式会社群銀カードとの共同により、2024年1月よりVisa/JCBブランドのデビットカードの取扱いを開始しました。群馬県に本店を置く金融機関では初めての取組みであり、群馬県を始めとする当行の営業エリアのキャッシュレス化を促進し、お客さまの利便性向上や地域経済の発展に努めていきます。
[主な取組実績]
(4) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
2022年中期経営計画「Innovation for“Purpose”」において目標とする2025年3月期の経営指標「連結計数計画」及びパーパスの実現につながる主要計数「つなぐKPI」は、以下のとおりであります。
<連結計数計画>
<つなぐKPI>
※ つなぐKPIは、「つなぐ」力を発揮することで、社会的価値(社会課題の解決や地域の持続的成長)と経済的価値(当行グループの持続的成長)の両方に資する計数として設定しております。
(注)持続可能な社会の実現に向けた取組みをより一層進めていくため、2023年9月に2025年3月期目標を5,000億円から8,000億円に引き上げました。
(5) 金融経済環境
当期のわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の5類感染症への移行により、経済社会活動の正常化が進み、緩やかに回復しました。個人消費は、物価上昇の影響を受けたものの、緩やかに持ち直しました。輸出は、持ち直しの動きに足踏みがみられました。設備投資は、持ち直しの動きがみられました。生産は、底堅く推移しましたが、一部自動車メーカーの生産・出荷停止の影響で下押しされました。
県内経済は、資源高の影響は残るものの、持ち直しました。個人消費は、緩やかな増加が続きました。生産は、年明けから回復しました。設備投資は、上下動はあるものの、おおむね横ばい圏の推移となりました。公共投資は、底堅く推移しました。住宅投資は弱い動きとなりました。
金融面では、2月に日経平均株価はバブル期の最高値を34年ぶりに更新しました。また、日本銀行は3月の金融政策決定会合で金融緩和政策を見直し、マイナス金利を解除、長短金利操作を撤廃しました。日本の長期金利の指標である10年国債利回りは、秋以降、おおむね低下基調で推移しましたが、3月に入りマイナス金利解除の思惑から0.8%近辺まで上昇しました。しかし、金融政策決定会合では、マイナス金利が解除される一方、緩和的な金融環境が継続するとの考えが示されたことから、10年国債利回りは低下に転じました。
(6) 経営環境及び対処すべき課題
足元では、日本銀行によるマイナス金利政策の解除に伴い、銀行にとっては預貸金利ざやの改善等が期待される一方で、地域の情勢をみると、人口減少や高齢化、基盤産業の強化など様々な課題に直面しています。
また、個人のお客さまにとっては、原油高・円安による物価上昇の影響、事業者のお客さまにとっては、後継者不足への対応や賃金コスト上昇分の適切な価格転嫁の必要性など、これまで前提としてきた環境が大きく変わりつつあります。
当行では、こうした状況を踏まえ、お客さまや地域の持続的な成長を支援するため、群馬銀行グループが一体となり、以下の取組みを行っています。
「お客さまの資産形成に向けた取組み」
住宅の取得や教育資金の準備、将来に向けた資産形成など、個人のお客さまのライフステージに応じた適切な商品・サービスの提供により、当行ではお客さまの豊かな未来のサポートに取り組んでいます。投資信託など運用商品の提案にあたっては、新NISA制度の活用や、子会社のぐんぎん証券株式会社との連携を通じて、長期的な視点からお客さまの資産形成をサポートしています。
「お客さまの本業支援に向けた取組み」
事業者のお客さまが抱えている、後継者難や人手不足への対応として、当行では事業承継支援やM&Aのほか、子会社のぐんぎんコンサルティング株式会社を通じて、人材ソリューション事業を展開しています。また、お客さまの事業拡大や設備投資にあたっては、融資だけでなく、事業計画の策定支援や投資専門子会社による出資検討、補助金の紹介や仕入・販売先とのマッチングなど、初期段階から深く関与し、お客さまの事業活動をトータルでサポートしています。
「地域の活性化に向けた取組み」
地域活性化の取組みの一例として、当行では2024年1月、伊香保温泉街の活性化に向けて子会社のぐんま地域共創パートナーズ株式会社が運営するファンドを通じて、地域事業者との共同により、まちづくり会社の石楽株式会社を設立しました。このまちづくり会社では、取得した旅館をリノベーションすることで、飲食店などを誘致し、街のにぎわいを創出するほか、自治体など地域のステークホルダーと連携し、温泉街の活性化に取り組んでいます。
中期経営計画の最終年度となる2025年3月期においても、こうした取組みを継続し、お客さまや地域の持続的な成長を促進するとともに、その結果として、当行も持続的に成長していくことで、パーパスの実現をめざしてまいります。
パーパスに基づく営業活動の定着により、資金利益や非金利業務利益をさらに伸ばすことでROEの向上を図り、併せて資本コストも適切にコントロールしていくことで、さらなる企業価値の向上に努めてまいります。
当行グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、以下の記載における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当行グループが判断したものであります。
(1) サステナビリティに関する取組み
当行グループは、2019年2月に「群馬銀行グループSDGs宣言」を策定し、2022年4月には同宣言を改定しております。当行グループの事業内容や営業エリアから、特に貢献が可能なSDGs「10目標」を中心に4つの重点課題を定め、事業活動を通じた社会・環境課題等への取組みを進めております。また、当行グループは、パーパス「私たちは『つなぐ』力で 地域の未来をつむぎます」の実現に取り組んでいくことが、SDGs達成への貢献及び持続可能な社会の実現と経済的価値の創造につながっていくと考えております。
<群馬銀行グループSDGs宣言>
当行は、2009年5月に制定・公表した「群馬銀行環境方針・環境行動基準」に基づき、自ら環境負荷の低減に取り組むとともに、公益財団法人ぐんぎん財団を通じて環境保全活動の支援や環境保全教育にも取り組み、事業活動を通じて環境保護に貢献できる金融商品の販売を行うなど、環境保全に関する積極的な取組みを続けております。
① ガバナンス
<ガバナンス体制>
当行グループでは、気候変動への対応を含むSDGsやESG、人的資本・多様性への取組み等のサステナビリティに関する取組みを経営の重要事項として捉え、ガバナンス体制を構築しております。
サステナビリティへの取組みをさらに強化し、中長期的な視点による経営戦略の構築と各施策の実効性を図るため、頭取を委員長としたサステナビリティ委員会を設置しております。
サステナビリティ委員会は、原則として年4回開催し、サステナビリティに関する取組方針の策定や計画の進捗状況報告等を主な協議・検討事項としております。
サステナビリティ委員会での協議・検討事項は、委員会開催の都度、頭取の諮問機関であり業務上の重要な事項に関し協議を行う常務会に付議/報告することとしております。また、取締役会には原則として年4回報告を行うことで、取締役会が監督を行う態勢としております。なお、サステナビリティに関する重要事項については、取締役会に付議し、取締役会が意思決定を行っております。
当事業年度においてサステナビリティ委員会を4回開催しており、主な議題は以下のとおりです。
[サステナビリティ委員会における主な議題]
・TCFD提言に基づく取組み状況および開示
・サステナブルファイナンス目標の上方修正および目標達成に向けた取組み
・取引先および地域のサステナビリティ向上に向けた取組み
・温室効果ガス排出量削減に向けた取組み
・TNFDへの対応
・人的資本の充実について
<業績連動型株式報酬>
社内取締役に対する業績連動型株式報酬の評価指標のうち、非財務指標について、「当行の温室効果ガス排出量の削減率」や「サステナブルファイナンス累計実行額」等、気候変動への対応を含むSDGs達成への貢献を測る指標を採用しております。
② 戦略
当行グループは、パーパスにもとづく「めざす未来」である「地域社会と当行グループの持続的な発展」に向けて、以下の重点課題に取り組んでいます。
〇 地域経済の持続的発展
〇 地域環境の保全と創造
〇 多様な人材の活躍推進
〇 パートナーシップの推進
また、中期経営計画である「Innovation for "Purpose"」では、地域社会との当行グループの持続的な発展に向けて諸施策を展開しております。2024年3月期の取組みについては、「
③ リスク管理
当行グループは、多様化・複雑化するさまざまな経営上のリスクを特定することで、ビジネス機会の創出や管理の強化につなげております。
事業全体に関する主要なリスクについては、「
④ 指標及び目標
当行グループは、中期経営計画「Innovation for "Purpose"」において、パーパス実現に向けて「つなぐKPI」を設定しております。つなぐKPIは「つなぐ」力を発揮することで、社会的価値(社会課題の解決や地域の持続的成長)と経済的価値(当行グループの持続的成長)の両方に資する計数としております。つなぐKPIについては、「
また、当行は、サステナビリティに関する指標及び目標も設定しております。気候変動への対応及び人的資本・多様性に関する指標・目標については、以下の「(2)気候変動への対応(TCFD提言への取組み)」、「(3)人的資本、多様性への取組み」をご参照ください。
(2) 気候変動への対応(TCFD提言への取組み)
当行は、「群馬銀行グループSDGs宣言」の重点課題の1つである「地球環境の保全と創造」に向けた取組みとして、2020年7月にTCFD提言への賛同を表明し、気候変動が当行の経営にもたらす影響等の分析を行うとともに、当行の温室効果ガス排出量削減や脱炭素化に取り組むお客さまへの支援に取り組んでおります。
地域の基幹産業である自動車セクターについては、電動化等の急速な進展により取り巻く環境が大きく変化していることから、移行リスクの対象セクターとしてシナリオ分析を行っております。また、地域の自動車サプライヤーに対する個社別のエンゲージメントを通じて、各サプライヤーに応じた中長期的な伴走支援に取り組んでおります。
気候変動への取組みを強化することで、地域の未来をつむいでいきたいと考えております。
① ガバナンス
当行の気候変動への対応に関するガバナンスは、上記の「(1) サステナビリティに関する取組み ① ガバナンス」をご参照ください。
② 戦略
A 気候変動関連のリスク・機会の特定
気候変動に伴うリスク(物理的リスク・移行リスク)と機会については、短期(3年)、中期(10年)、長期(30年)の時間軸で、定性的な分析を行っております。
B 機会
脱炭素社会への移行に伴い、資金需要への対応や新たな金融商品やサービスの提供など、お客さまの気候変動への対応を積極的に支援することで、お客さまの事業基盤が強化され、結果として当行の収益機会の拡大、持続的な成長につながるものと考えております。
こうした考えのもと、2022年10月より導入した新たな事業性評価「つなぐプロセス」などによる、お客さまとの対話、ゴール・ニーズの共有、サステナブルファイナンスなどのソリューションの提供に取組んでいます。
C シナリオ分析
物理的リスク及び移行リスクについて、複数の温度帯シナリオを用いて、各シナリオ下における当行の与信費用の増加額を推計しました。以下のとおり、いずれの分析においても、当行財務への影響は限定的であるとの結果となりました。
<物理的リスク>
物理的リスクについては、気候変動に起因する自然災害の大半を占め、国内で発生確率の高い水害による影響を分析しました。分析にあたっては、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の8.5シナリオ(4℃シナリオ)を前提に、ハザードマップを利用して推計した「当行が保有する担保不動産の価値毀損額」及び「浸水に起因するお客さまの事業停滞日数」から、2050年までの当行の与信費用の増加額を試算いたしました。
分析の結果、2050年までの与信費用の増加額は最大で43億円となりました。
<移行リスク>
TCFD提言で気候関連の財務影響を受けやすいとされるセクターのうち、気候変動への影響度と当行のエクスポージャーという観点から、分析対象セクターを選定しております。
今年度より、「自動車」及び「エネルギー(電力、石油・ガス)」セクターに加え、新たに「陸運」セクターを分析対象として選定いたしました。
2℃以下シナリオを基に、シナリオの予測データやセクターごとに設定したモデル企業の公開情報等を活用して、脱炭素社会への移行に伴うお客さまの財務悪化による与信費用の増加額を試算いたしました。
なお、地域の基幹産業のひとつである「自動車」セクターの分析においては、モデル企業以外の取引先についても、取扱製品等の影響度に応じた売上予想に基づいて与信費用増加額を試算するなど、分析結果の精緻化に取り組んでおります。
分析の結果、2050年までの与信費用の増加額は累計で154億円となりました。
D 炭素関連資産の状況
当行の与信残高に占める炭素関連資産の割合は、約24.6%となっております。
(「エネルギー」「運輸」「素材・建築物」「農業・食料・林業製品」セクター向けエクスポージャー。2024年3月末の貸出金、支払承諾、外国為替、私募債等の合計。ただし、水道事業、再生可能エネルギー発電事業を除く)
<自動車セクターへの取組み>
[取組みの背景]
群馬県は、製造品出荷額の約4割を自動車などの輸送機器が占めていることなどから、自動車産業は、地域経済の中核を担っております。
また、自動車産業を取り巻く環境は、電動化の急速な発展など大きく変化しており、地域のサプライヤーも取扱製品の電動化対応や、製造過程における温室効果ガス排出量削減、さらには部品点数減少に伴う新分野への進出、業態転換など、さまざまな対応を迫られつつあります。
このような背景から、当行においても自動車セクターを重要なセクターのひとつとして捉えております。
[自動車セクターへのサポート態勢の拡充とエンゲージメントの実施]
自動車関連産業の持続可能性の向上に向け、自動車メーカーOBの招聘などによるサポート態勢の拡充や県内サプライヤーのデータベースの構築、SUBARU系サプライヤーを中心とした、各社の保有技術・設備や特性などの個社別ヒアリングを実施いたしました。ヒアリング結果をもとに個社別データシートを作成、ポジショニングマップにまとめ、お客さまのサポートに活用しております。
また、個社別ヒアリングを行った各社の経営層に対し、外部環境についての情報提供やヒアリング結果の還元、課題の共有、課題に対するサポートなどのエンゲージメントを実施しております。
エンゲージメントの開始にあたっては、環境省が実施した「令和4年度ESG地域金融促進事業」の支援先金融機関に採択され、お客さまへの還元資料作成等の支援を受けました。
今後も、外部機関との連携を強化し、お客さまの脱炭素化や電動化への対応など、中長期的な伴走支援に、外部機関とも連携して取り組んでまいります。
なお、構築したデータベースやヒアリング結果は、自動車セクターにおける、移行リスクのシナリオ分析に活用するなど、分析の高度化にも取り組んでおります。
[取組みの概要]
③リスク管理
当行は気候変動に起因する物理的リスクや移行リスクが当行の事業運営や戦略・財務計画に大きな影響を与える重要なリスクと認識しております。シナリオ分析等により把握した各種リスクについて、「信用リスク」「オペレーショナル・ リスク」などリスクカテゴリーごとに影響を把握し、既存の枠組みの中で管理する態勢を整備してまいります。
シナリオ分析の結果等を踏まえ、気候変動への対応や脱炭素社会への移行に向け、お客さまとの対話(エンゲージメント)を強化しております。お客さまごとの課題やニーズを深く理解しソリューションを提供することで、ビジネス機会の創出や管理の強化につなげてまいります。
また、2021年6月に「環境・社会に配慮した投融資方針」を制定し、新設の石炭火力発電所を資金使途とする投融資は原則として行わないなど、気候変動リスクへの影響が大きいセクター向け与信の取組姿勢を明文化しております。
<環境・社会に配慮した投融資方針>
群馬銀行は、事業活動を通じて持続可能な社会の実現を目指すため、環境及び社会課題解決に向けたお客さまの取組みを積極的に支援してまいります。
一方、環境への負荷や人権問題など社会への影響の大きい事業等に対する投融資に関しては、以下のとおり慎重に判断し、環境や社会への負の影響を低減・回避するよう努めます。
[石炭火力発電事業]
新設の石炭火力発電所を資金使途とする投融資は原則として行いません。但し、石炭火力に頼らざるを得ない当該国・地域の電力・資源事情等を踏まえ、例外的に取組みを検討する場合には、OECD公的輸出信用アレンジメント等の国際ガイドラインや発電効率性能、環境への影響等を勘案したうえで、慎重に検討を行います。
[兵器等製造]
戦争等に使用される、殺戮・破壊を目的としたクラスター弾などの非人道的な兵器を製造している企業への投融資は行いません。
[パーム油農園開発事業]
環境保全や人権保護の観点から、パーム油農園開発事業への投融資については、国際認証(RSPO ※1)の取得状況や環境への配慮や人権侵害の有無など、地域社会とのトラブル発生状況に十分注意のうえ、投融資判断を行います。
※1 Roundtable on Sustainable Palm Oil(持続可能なパーム油のための円卓会議)
パーム油に関連する7セクター(パーム油生産業、搾油・貿易業、消費者製品製造業、小売業、銀行・投資会社、環境NGO、社会・開発系NGO)で運営する非営利組織。「原則と基準」に基づき農園やサプライチェーンを認証。
[森林伐採事業]
森林伐採事業向け投融資を検討する際には、国際認証(FSC ※2、PEFC ※3)の取得状況や環境への配慮など、地域社会とのトラブル発生状況に十分注意のうえ、投融資判断を行います。
※2 Forest Stewardship Council(森林管理協議会)
「適切な森林管理」を認証する国際的な組織。
※3 Programme for the Endorsement of Forest Certification(森林認証プログラム)
持続可能な森林管理のために策定された国際基準(政府間プロセス基準)に則って林業が実施されていることを第三者認証する「森林管理認証」。
④ 指標及び目標
A 温室効果ガス排出量
<スコープ1、スコープ2>
脱炭素社会の実現や社会の持続的発展に貢献していくため、当行における温室効果ガス排出量削減目標を設定しております。
ネーミングライツを取得した「ぐんぎん尾瀬片品発電所」由来の再生可能エネルギーへの切り替えなどにより、2023年度の温室効果ガス排出量は4,817t-CO2、2013年度比57.0%の削減となり、2024年度目標を1年前倒しで達成いたしました。
今後も『ZEB※』認証の取得などによる環境に配慮した店舗づくりや電気自動車の導入等、「2030年度ネットゼロ」達成に向け、取組みを強化してまいります。
※ Net Zero Energy Building(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の略称で、快適な室内環境を実現
しながら、省エネルギー設備や創エネルギー設備の導入により、年間に消費する一次エネルギー
の収支をゼロにすることをめざした建物のこと。
<スコープ3>
当行では、温室効果ガス排出量の計測範囲の拡大に取組み、今年度より、該当する全カテゴリの算定を行いました。
なお、計測範囲の拡大に伴い、昨年度から計測方法を変更しております。
(単位:t-CO2)
※ カテゴリ8~14については、事業の性質上該当なし。
[計測方法]
カテゴリ1 : 購入した製品やサービスの金額について、各排出原単位を乗じております。なお、算定にあたっては、当行で利用している経費管理システム等から得られるデータを利用し、勘定科目や摘要コードなどを基に算定要否や使用する排出原単位を判定しております。
カテゴリ2 : 各年度において取得した有形固定資産・無形固定資産の金額に排出原単位を乗じております。
カテゴリ3 : 電気の使用量に排出原単位を乗じております。ガソリン、都市ガス、プロパンガス、重油、蒸気(冷水を含む)の使用量については、「LCIデータベースIDEAv2(サプライチェーン温室効果ガス排出量算定用)」の排出原単位を乗じております。
カテゴリ4 : 郵便料に排出原単位を乗じております。
カテゴリ5 : 廃棄物の収集・処理にかかる支出額に排出原単位を乗じております。
カテゴリ6、7 : 各交通手段別の交通費支給額に各排出原単位を乗じております。
※計測にあたっては、環境省・経済産業省「サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドライン(ver.2.6)」及び、環境省「サプライチェーンを通じた組織の温室効果ガス排出等の算定のための排出原単位データベース(ver.3.4)」を使用。
<スコープ3カテゴリ15について>
金融機関にとって、スコープ3カテゴリ15(投融資先の温室効果ガス排出量)は、気候変動におけるリスクと機会を捉えていく重要なものと考えられることから、PCAF※スタンダードの計測手法に基づき、2024年3月末時点における国内の事業性融資先法人に対する投融資を対象にカテゴリ15の試算を行いました。
今年度より新たにデータクオリティスコアを計測しております。今後も、計測範囲の拡大や高度化に向けた検討を進めてまいります。
※ Partnership for Carbon Accounting Financials。投融資先の温室効果ガス排出量の計測・開示を
標準化するための基準を開発する国際的なイニシアティブ。
[業種別排出量(TCFD炭素関連セクター18業種)]
[排出量の算定式]
投融資先の温室効果ガス排出量(ファイナンスド・エミッション)は、投融資先の資金調達総額に占める当行の投融資額の割合(アトリビューション・ファクター)に投融資先の温室効果ガス排出量※を掛け合わせて計算しております。
※ 上場企業で開示情報の取得ができた場合は開示情報、それ以外の企業については推計値を使用
[業種別炭素強度の算定式]
業種別炭素強度は、業種毎に下記の算定式で導出しております。
[データクオリティスコア]
利用可能なデータの内容を基に、5段階のスコアを付与しております。スコア1が最もデータの質が高く、スコア5が最も低い質となります。
※ 投融資先の温室効果ガス排出量の開示拡大や炭素強度データの更新、算定手法の高度化等により、算定結果が変わる可能性があります。
B サステナブルファイナンス
サステナブルファイナンスは、環境課題(再生可能エネルギーや省エネ設備等)や社会課題(創業、事業承継、医療等)の解決に資するファイナンスを対象としております。地域のサステナビリティ実現に向け、環境・社会課題等への取組みをさらに進めていくため、2022年度から2030年度までの中長期的なファイナンス目標を設定しております。また、持続可能な社会の実現に向けた取組みをより一層進めていくため、2023年9月にサステナブルファイナンス目標を引き上げました。サステナブルファイナンスに積極的に取り組むことで、地域のESG課題の掘り起しや解決につなげてまいります。
また、地域の脱炭素化への取組みとして、再生可能エネルギー開発支援に向けた総額500億円の投融資枠(ファンド)「GBグリーンファンド」を2021年10月に設定しておりますが、2023年6月には、500億円の投融資枠を達成いたしました。今後も、サステナブルファイナンス目標達成に向け取り組んでまいります。
<ファイナンスによる地域の脱炭素化への貢献>
持続可能な社会の実現に向け、当行では、サステナビリティ・リンク・ローンやぐんぎんSLL、グリーンローンなどのサステナブルファイナンスに積極的に取組んでおります。
当行が取扱った再生可能エネルギー事業向けの融資により、6,433,821MWhの再生可能エネルギーが創出され、サステナビリティ・リンク・ローンやぐんぎんSLLなどのサステナブルファイナンス商品を利用したお客さまの温室効果ガス排出量の削減量は、1,360,293t-CO2となっております。
また、当行では、2019年11月にグリーンボンド、2021年10月にサステナビリティボンドを地方銀行で初めて発行しました。グリーンボンド、サステナビリティボンド発行による資金調達額300億円のうち、200億円をグリーンプロジェクトに充当しております。今後も、脱炭素化に積極的に取り組むお客さまを資金面でサポートすることで、地域の脱炭素化に貢献してまいります。
[サステナブルファイナンスによる環境改善効果(2022年4月~2024年3月)]
・サステナブルファイナンス(環境分野)のうち、定量的な効果が算出可能な案件を抽出し、当行の基準に基づき算出。
※1 環境省「令和4年度家庭部門のCO2排出実態統計調査結果の概要(確報値)」をもとに、1世帯あたりの年間温室効果ガス排出量(電気)より算出。
※2 出所:群馬県「令和5年群馬県移動人口調査結果(年報)」
(3) 人的資本、多様性への取組み
当行は、パーパス『私たちは「つなぐ」力で地域の未来をつむぎます』の実現に向けて、人材戦略「創造力発揮に向けた人材改革」を掲げるとともに、中期経営計画「Innovation for“Purpose”」では、当行の強みである人材力を磨くことで「つなぐ」力を強化し、多様化する地域の課題・お客さまのニーズへの対応、デジタルへの対応及び新たな事業への対応に努めております。
また、当行は人材戦略に基づく人材育成方針・社内環境整備方針及び非財務KPIを定め、諸施策に取り組んでおります。なお、本方針及び非財務KPIは以下の「②戦略」「④指標及び目標」にそれぞれ記載しております。
① ガバナンス
当行グループの人的資本、多様性への取組みに関するガバナンスは、上記の「(1)サステナビリティに関する取組み ①ガバナンス」をご参照ください。
② 戦略
<人材育成方針>
<社内環境整備方針>
<2024年3月期における主な取組み>
〇 人事制度の改定(ジョブ型人事制度の導入)
自律的で活力ある組織への転換を目指し、2024年6月1日付で人事制度を改定しジョブ型人事制度を導入することを決定しました。本人事制度は、職能資格制度を色濃く反映し、年功色が強い従来の人事制度における課題を解決し、行員が主体的にキャリア形成を図ることにより、適材適所の人材登用を実現することで、行員のエンゲージメントの向上と組織全体の活性化を企図しております。
[人事制度改定のコンセプト]
・未来志向 : 過去の実績や慣習にとらわれない
・シンプル・フェア: 平等から公平な制度に発想を転換する
・個人意思尊重 : 自ら律し挑戦し続ける者に報いる
・職務主義 : 職務レベルに応じた適所適材の処遇を実現
・経営環境志向 : 環境の変化に柔軟に対応する
[人事制度改定の概要]
〇 キャリア形成支援
全行員がキャリアを考える必要性を理解し、キャリアビジョンを描けるようになるための支援として、年代別のキャリアデザイン研修や希望する分野の業務を体験できるジョブインターン等を実施しております。
また、自律的なキャリア形成と挑戦を支援し、日々の業務のやりがいや成長意欲の向上に繋げていくため、年代や役職を問わずキャリアの相談ができる窓口の設置や、自己啓発として専門資格取得を目指す行員に対し費用補助等の支援を行っております。
〇 キャリア継続支援休職制度
当行では、2023年10月より学び直しや不妊治療、配偶者の転居を伴う転勤への同行を希望する行員が、自律的なキャリア形成やWell-being実現のために一定期間休職し、休職後に復職して当行でのキャリアを継続したいというニーズに対応するための制度として、キャリア継続支援休職制度を導入しております。働き方やキャリア形成に対する考え方およびライフプランが多様化するなか、多様な人材が安心して長い期間働き続けられる環境を整備することによってパーパス実現に向けた人的資本の充実を図っております。
③ リスク管理
当行は、人的リスク(不適切な就労状況・職場・安全環境、人材の流出・喪失、士気の低下、不十分な人材育成等により損失を被るリスク)について、オペレーショナル・リスクの一つに区分しており、オペレーショナル・リスクに関する基本規定等に基づいて管理しております。
また、人事運営上の諸問題の発生(報酬・手当・解雇等の問題、ハラスメント等)や、役職員の法令違反行為等に起因する不祥事件、訴訟等の発生についても、リスクの顕在化が想定される主な要因として認識しており、コンプライアンス体制の構築とその実践に努めております。
④ 指標及び目標
(注) 1 非財務KPI(目標・実績)は、当行グループにおいて主要な事業を営む銀行単体の計数としております。
2 目標を設定していない非財務KPIは、2024年度目標欄に計数を記載しておりません。
3 専門資格は、中小企業診断士、FP1級、証券アナリスト、公認AMLスペシャリスト、高度情報処理技術者・情報処理安全確保支援士としております。
4 一人あたりの人材投資額は、「研修に係る費用(資格取得費用、研修派遣者の人件費、研修所経費等)÷業務職の年度平均在籍者数」にて算出しております。なお、2023年度の人材投資に関する総額は368百万円です。
5 スキルチェックにおけるスキル分野には、預かり金融資産、審査、法人営業、個人融資、事務(営業コース)、事務(融資・外為コース)があります。
6 2024年度目標を2025年4月における人数、2023年度実績を2024年4月における人数としております。
7 男性育休等平均取得期間は、前々年度に出生した子の1歳までの平均育児休業等取得日数としております。
8 個人パーパスの実践度合いは、理解・共感・行動の3つの尺度において、個人パーパスに関する5段階評価の設問を用意し、その回答結果を基に平均を算出しております。
9 従業員のエンゲージメントを可視化し調査結果を分析するツール「wevox」のエンゲージメントスコアにおけるベンチマークは、金融業(1,001~5,000人規模)の平均としております。
10 以下に掲げる指標については、中長期的な指標として、2027年度目標を新たに設定いたしました。
女性管理職比率:30% 女性部店長比率:15%(2023年度実績:6.8%) 中途採用比率:30%
専門資格保有者数:330名
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、次のとおりであります。
なお、以下の記載における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当行グループが判断したものであります。
<主要なリスク>
当行が直面しているリスクには、大きく分けて信用リスク、市場リスク、流動性リスク、オペレーショナル・リスクがあります。
これらのリスクは様々な要因により顕在化しますが、当行では、損失を最小限に抑えるために想定される要因について継続的なモニタリングを行い、早期に察知し対応することに努めるとともに、自己資本比率による管理や統合的リスク管理などにより、大きなストレス下においても、損失が自己資本の範囲内に収まるよう管理しております。
なお、当行のリスク管理体制については、「第4 提出会社の状況」4 コーポレート・ガバナンスの状況等の (1) コーポレート・ガバナンスの概要 ④ 企業統治に関するその他の事項をご参照ください。
<リスクの顕在化が想定される主な要因>
1 財務面に関する要因
2 業務面に関する要因
3 その他の要因
当連結会計年度における当行グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当行グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、以下の記載における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当行グループが判断したものであります。
(1) 財政状態
当連結会計年度末の財政状態は、以下のとおりとなりました。
総資産は期中1,559億円増加し10兆8,182億円となり、負債は期中986億円増加し10兆2,451億円となりました。また、純資産は期中572億円増加し5,730億円となりました。
グループの中心である当行の当事業年度末における主要勘定の状況は以下のとおりとなりました。
預金は、個人預金及び法人預金がともに安定的に増加したことから、期中2,624億円増加(前期末比+3.2%)し期末残高は8兆3,162億円となりました。
貸出金は、リテール貸出やクロスボーダーローン・ストラクチャードファイナンス、大企業など全般的に増加したことにより、期中4,181億円増加(前期末比+6.9%)し期末残高は6兆4,678億円となりました。
また、セグメントごとの状況は以下のとおりとなりました。
(銀行業)
資産は前連結会計年度比1,529億円増加し10兆7,970億円、負債は前連結会計年度比984億円増加し10兆2,581億円となりました。
(リース業)
資産は前連結会計年度比44億円増加し875億円、負債は前連結会計年度比38億円増加し710億円となりました。
(その他)
報告セグメントに含まれない「その他」の資産は前連結会計年度比67億円増加し523億円、負債は前連結会計年度比46億円増加し231億円となりました。
(2) 経営成績
当連結会計年度の経営成績は、以下のとおりとなりました。
経常収益は、資金運用収益や役務取引等収益が増加したことなどから前連結会計年度比237億66百万円増加し2,003億56百万円となりました。経常費用は、資金調達費用が増加したことなどから前連結会計年度比182億94百万円増加し1,565億67百万円となりました。
これらの結果、経常利益は、前連結会計年度比54億72百万円増加し437億88百万円となりました。また、親会社株主に帰属する当期純利益は、法人税等調整額の減少を主因に前連結会計年度比31億92百万円増加し311億25百万円となりました。
グループの中心である当行の当事業年度における損益状況は以下のとおりとなりました。
コア業務純益は、貸出金増加に伴う貸出金利息の増加やパーパスに基づく営業活動を通じて非金利業務利益が増加したものの、投資信託解約損益が減少したことなどから、前事業年度比24億55百万円減少し332億9百万円となりました。
経常利益は、有価証券関係損益の増加や与信費用が減少したことなどから前事業年度比56億18百万円増加し391億86百万円となりました。また、当期純利益は、法人税等調整額が減少したことなどから前事業年度比35億31百万円増加し281億53百万円となりました。
また、セグメントごとの損益状況は以下のとおりとなりました。
(銀行業)
経常収益は前連結会計年度比234億16百万円増加し1,669億2百万円、セグメント利益は前連結会計年度比55億38百万円増加し393億48百万円となりました。
(リース業)
経常収益は前連結会計年度比97百万円減少し296億48百万円、セグメント利益は前連結会計年度比4億22百万円減少し12億26百万円となりました。
(その他)
報告セグメントに含まれない「その他」の経常収益は前連結会計年度比7億7百万円増加し67億11百万円、セグメント利益は前連結会計年度比3億54百万円増加し32億75百万円となりました。
(3) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
当行は、2022年4月から2025年3月までの3年間を計画期間とする中期経営計画「Innovation for“Purpose”」に基づき、社会的価値(社会課題の解決や地域の持続的成長)と経済的価値(当行グループの持続的成長)の両立に向けて諸施策を展開しております。
経営上の目標達成状況を判断するための指標に照らした当連結会計年度の経営成績等は、次のとおりであります。
○ 経営成績及び経営指標(連結)
(単位:百万円)
① コア業務純益(除く投資信託解約損益)
コア業務純益(除く投資信託解約損益)は、前連結会計年度比55億93百万円増加し454億98百万円となりました。資金利益は、海外金利の上昇に伴う資金調達費用の増加を主因に前連結会計年度比54億26百万円減少し660億28百万円となりました。一方、非金利業務利益は、法人役務収入及び預かり金融資産等収入ともに増加したことなどから、前連結会計年度比31億91百万円増加し242億14百万円となりました。また、経費は人員構成の変化などにより人件費が減少したことなどから、前連結会計年度比23百万円減少し521億91百万円となりました。
金利環境の変化を踏まえた資金利益の増強に取り組むとともに、コンサルティング分野の深掘りやデジタル戦略の強化等に取り組み、引続きコア業務純益の増加に努めてまいります。
② 非金利業務利益
非金利業務利益は、前連結会計年度比31億91百万円増加し242億14百万円となりました。法人役務収入は、シンジケートローン関連手数料やM&A手数料の増加などから、前連結会計年度比15億62百万円増加し75億71百万円となりました。また、預かり金融資産等収入は、投資信託取扱手数料や保険販売手数料の増加などから、前連結会計年度比7億73百万円増加し76億24百万円となりました。
法人役務収入では、2022年10月より導入した新たな事業性評価(「つなぐプロセス」)を展開し、お客さまのニーズや経営課題把握を起点としたソリューション提案を実施するとともに、アライアンス行との連携も含めたM&A、ビジネスマッチングにも引続き注力してまいります。また、預かり金融資産等収入では、資産管理型営業の実践や銀証連携の強化による多様なお客さまニーズへの対応に努めてまいります。
法人のお客さまへの金融・本業・事業承継支援と個人のお客さま一人ひとりに寄り添ったコンサルティングを実践していくことで非金利業務利益の増強に取り組んでまいります。
③ 親会社株主に帰属する当期純利益及びグループ会社最終利益
親会社株主に帰属する当期純利益は、コア業務純益は減少しているものの、有価証券関係損益の増加や与信費用の減少を主因に、前連結会計年度比31億92百万円増加し311億25百万円となりました。また、グループ会社最終利益は、ぐんぎん証券株式会社の当期純利益が増加したものの、ぐんぎんリース株式会社の当期純利益が減少したことなどから、前連結会計年度比3億38百万円減少し29億72百万円となりました。
グループ一体でパーパスに基づく営業活動を実践することにより、お客さまのニーズをフルスペックで満たす提案を実践していくことでグループ会社最終利益の増加につなげてまいります。引続き、当行グループの総合力強化やアライアンスの活用等に注力し、親会社株主に帰属する当期純利益の増加に努めてまいります。
④ RORA
RORAは、リスクアセットが54億92百万円増加したものの、親会社株主に帰属する当期純利益が31億92百万円増加した結果、前連結会計年度比0.09ポイント上昇し0.81%となりました。今後も、収益・リスク・資本の一体的管理・運営に取り組んでまいります。
⑤ OHR(除く投資信託解約損益)
OHR(除く投資信託解約損益)は、コア業務純益(除く投資信託解約損益)が55億93百万円増加したことや、経費が23百万円減少した結果、前連結会計年度比3.2ポイント改善し53.4%となりました。今後も、コア業務純益の増強と経費削減の両面から、効率的な経営を進めてまいります。
⑥ ROE
ROEは、前連結会計年度比0.4ポイント上昇し5.7%となりました。引続き、最適資本構成の構築に向けた取組みやパーパスに基づく営業活動による収益力の強化を図り、ROEの向上に努めてまいります。
⑦ 総自己資本比率
総自己資本比率は、有価証券評価差額金の改善等による総自己資本の増加などから、前連結会計年度末比1.04ポイント上昇し14.86%となりました。引続き、適切なリスクテイクによる利益の蓄積等により財務基盤の強化を図り健全な経営の確立に努めてまいります。
(4) キャッシュ・フローの状況の分析
当行グループの主要なセグメントは銀行業であり、資金調達手段は主に預金であり、資金運用手段は主に貸出金、有価証券であります。また、株主還元方針については、「第4 提出会社の状況」の「3 配当政策」に記載のとおりであります。
なお、重要な設備投資につきましては、「第3 設備の状況」の「3 設備の新設、除却等の計画」に記載のとおり、自己資金で対応しております。
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況は以下のとおりであります。
営業活動によるキャッシュ・フローは、債券貸借取引受入担保金の減少や貸出金の増加などから期中3,945億円のマイナス(前連結会計年度は期中6,561億円のマイナス)となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有価証券の売却による収入などから期中4,110億円のプラス(前連結会計年度は期中1,533億円のマイナス)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払や自己株式取得による支出などから期中159億円のマイナス(前連結会計年度は期中80億円のマイナス)となりました。
以上の結果、現金及び現金同等物の期末残高は、期中5億円増加し1兆8,305億円(前連結会計年度末残高は1兆8,299億円)となりました。
(5) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当行グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況」「1 連結財務諸表等の (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
(参考)
(1) 国内・海外別収支
資金運用収支は、前連結会計年度比54億26百万円減少し660億28百万円となりました。また、役務取引等収支は、前連結会計年度比47億4百万円増加し191億9百万円となりました。
なお、各収支合計は、国内が前連結会計年度比18億48百万円増加し648億71百万円、海外が前連結会計年度比1億48百万円増加し8億4百万円、国内及び海外の合計(相殺消去後)が前連結会計年度比19億96百万円増加し656億76百万円となりました。
(注) 1 「国内」とは、当行(海外店を除く)及び連結子会社であります。
「海外」とは、当行の海外店であります。
2 資金調達費用は、金銭の信託運用見合費用(前連結会計年度0百万円、当連結会計年度0百万円)を控除して表示しております。
3 相殺消去額は、「国内」と「海外」間の取引に関する相殺額を記載しております。
(2) 国内・海外別資金運用/調達の状況
資金運用勘定の平均残高は、前連結会計年度比243億円減少し8兆5,917億円となりました。この要因は、預け金が前連結会計年度比2,695億円減少したことなどによります。
一方、資金調達勘定の平均残高は、前連結会計年度比3,730億円増加し10兆2,159億円となりました。この要因は、預金が前連結会計年度比1,733億円増加したことやコールマネー及び売渡手形が前連結会計年度比1,222億円増加したことなどによります。
資金運用勘定の利回りは、貸出金や有価証券の利回りが上昇したことなどから、前連結会計年度比0.22%上昇し1.23%となりました。また、資金調達勘定の利回りは、売現先勘定や債券貸借取引受入担保金の利回りが上昇したことなどから、前連結会計年度比0.23%上昇し0.38%となりました。
① 国内
(注) 1 平均残高は、原則として日々の残高の平均に基づいて算出しておりますが、金融業以外の連結子会社については、半年毎の残高に基づく平均残高を利用しております。
2 「国内」とは、当行(海外店を除く)及び連結子会社であります。
3 資金運用勘定は無利息預け金の平均残高(前連結会計年度1,545,040百万円、当連結会計年度1,965,178百万円)を、資金調達勘定は金銭の信託運用見合額の平均残高(前連結会計年度3,368百万円、当連結会計年度3,354百万円)及び利息(前連結会計年度0百万円、当連結会計年度0百万円)を、それぞれ控除して表示しております。
② 海外
(注) 1 「海外」とは、当行の海外店であります。
2 資金運用勘定は、無利息預け金の平均残高(前連結会計年度1,273百万円、当連結会計年度1,272百万円)を控除して表示しております。
③ 合計
(注) 1 資金運用勘定は無利息預け金の平均残高(前連結会計年度1,546,314百万円、当連結会計年度1,966,450百万円)を、資金調達勘定は金銭の信託運用見合額の平均残高(前連結会計年度3,368百万円、当連結会計年度
3,354百万円)及び利息(前連結会計年度0百万円、当連結会計年度0百万円)を、それぞれ控除して表示しております。
2 相殺消去額は、「国内」と「海外」間の取引に関する相殺額を記載しております。
(3) 国内・海外別役務取引の状況
役務取引等収益は、前連結会計年度比54億76百万円増加し282億39百万円となりました。また、役務取引等費用は、前連結会計年度比7億72百万円増加し91億29百万円となりました。
この結果、役務取引等収支は、前連結会計年度比47億4百万円増加し191億9百万円となりました。
(注) 1 「国内」とは、当行(海外店を除く)及び連結子会社であります。
「海外」とは、当行の海外店であります。
2 相殺消去額は、「国内」と「海外」間の取引に関する相殺額を記載しております。
(4) 国内・海外別預金残高の状況
○ 預金の種類別残高(末残)
(注) 1 「国内」とは、当行(海外店を除く)及び連結子会社であります。
「海外」とは、当行の海外店であります。
2 流動性預金=当座預金+普通預金+貯蓄預金+通知預金
3 定期性預金=定期預金+定期積金
4 相殺消去額は、「国内」と「海外」間の取引に関する相殺額を記載しております。
(5) 国内・海外別貸出金残高の状況
① 業種別貸出状況(末残・構成比)
(注) 「国内」とは、当行(海外店を除く)及び連結子会社であります。
「海外」とは、当行の海外店であります。
② 外国政府等向け債権残高(国別)
「外国政府等」とは、外国政府、中央銀行、政府関係機関又は国営企業及びこれらの所在する国の民間企業等であり、日本公認会計士協会銀行等監査特別委員会報告第4号に規定する特定海外債権引当勘定を計上している国の外国政府等の債権残高を掲げることとしておりますが、前連結会計年度及び当連結会計年度の外国政府等向け債権残高はありません。
(6) 国内・海外別有価証券の状況
○ 有価証券残高(末残)
(注) 1 「国内」とは、当行(海外店を除く)及び連結子会社であります。
「海外」とは、当行の海外店であります。
2 「その他の証券」には、外国債券及び外国株式を含んでおります。
3 相殺消去額は、「国内」と「海外」間の取引に関する相殺額を記載しております。
(7) 「金融機関の信託業務の兼営等に関する法律」に基づく信託業務の状況
連結会社のうち、「金融機関の信託業務の兼営等に関する法律」に基づき信託業務を営む会社は提出会社1社です。
信託財産の運用/受入状況(信託財産残高表/連結)
(注) 共同信託他社管理財産については、取扱残高はありません。
元本補填契約のある信託の運用/受入状況(末残)
(自己資本比率等の状況)
(参考)
当行は、銀行法第14条の2の規定に基づき、銀行がその保有する資産等に照らし自己資本の充実の状況が適当であるかどうかを判断するための基準(2006年金融庁告示第19号)に定められた算式に基づき、連結ベースと単体ベースの双方について国際統一基準を適用した自己資本比率を算出しております。
なお、当行は、2023年3月末より新たな自己資本比率規制(バーゼルⅢ最終化)を適用しており、信用リスク・アセットの額の算出については基礎的内部格付手法、オペレーショナル・リスク相当額に係る額の算出については標準的計測手法を採用しております。
また、自己資本比率の補完的指標であるレバレッジ比率は、銀行法第14条の2の規定に基づき、銀行がその保有する資産等に照らし自己資本の充実の状況が適当であるかどうかを判断するための基準の補完的指標として定めるレバレッジに係る健全性を判断するための基準(2019年金融庁告示第11号)に定められた算式に基づき、連結ベースと単体ベースの双方について算出しております。
連結自己資本比率(国際統一基準)
連結レバレッジ比率(国際統一基準)
単体自己資本比率(国際統一基準)
単体レバレッジ比率(国際統一基準)
(資産の査定)
(参考)
資産の査定は、「金融機能の再生のための緊急措置に関する法律」(1998年法律第132号)第6条に基づき、当行の貸借対照表の社債(当該社債を有する金融機関がその元本の償還及び利息の支払の全部又は一部について保証しているものであって、当該社債の発行が金融商品取引法(1948年法律第25号)第2条第3項に規定する有価証券の私募によるものに限る。)、貸出金、外国為替、その他資産中の未収利息及び仮払金、支払承諾見返の各勘定に計上されるもの並びに貸借対照表に注記することとされている有価証券の貸付けを行っている場合のその有価証券(使用貸借又は賃貸借契約によるものに限る。)について債務者の財政状態及び経営成績等を基礎として次のとおり区分するものであります。
1 破産更生債権及びこれらに準ずる債権
破産更生債権及びこれらに準ずる債権とは、破産手続開始、更生手続開始、再生手続開始の申立て等の事由により経営破綻に陥っている債務者に対する債権及びこれらに準ずる債権をいう。
2 危険債権
危険債権とは、債務者が経営破綻の状態には至っていないが、財政状態及び経営成績が悪化し、契約に従った債権の元本の回収及び利息の受取りができない可能性の高い債権をいう。
3 要管理債権
要管理債権とは、三月以上延滞債権及び貸出条件緩和債権をいう。
4 正常債権
正常債権とは、債務者の財政状態及び経営成績に特に問題がないものとして、上記1から3までに掲げる債権以外のものに区分される債権をいう。
資産の査定の額
(注) 金額については、億円未満を四捨五入して表示しております。
該当事項はありません。
該当事項はありません。