第2 【事業の状況】

 

(注)1 本報告書においては、第155期(2022年4月1日から2023年3月31日まで)を「前期」、第156期(2023年4月1日から2024年3月31日まで)を「当期」と記載しております。

(注)2 当有価証券報告書には、当社の中期経営計画等に関する様々な経営目標及び予測、並びにその他の将来に関する情報が開示されています。これらの経営目標及び将来予測、並びにその他の将来に関する情報は、将来の事象についての現時点における仮定及び予想、並びに当社が現時点で入手している情報や一定の前提に基づいているため、今後の四囲の状況等により変化を余儀なくされるものであり、これらの目標や予想の達成及び将来の業績を保証するものではありません。したがって、これらの情報に全面的に依拠されることは控えられ、また、当社がこれらの情報を逐次改訂する義務を負うものではないことをご認識いただくようお願い申し上げます。

 

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

●当社が目指すもの

当社は、当社グループのコーポレートメッセージ「Enriching lives and the world」に込めた「世界を、社会を、人々の暮らしを、より豊かにする」という想いと共に、社会課題の解決を通じて社会と共に持続的に成長する企業グループを目指しております。

 

●中期経営計画「SHIFT 2023」(対象:2021年度~2023年度)の総括

当社は、2021年度から2023年度までの3か年を対象とする「SHIFT 2023」において「事業ポートフォリオのシフト」、「仕組みのシフト」、「経営基盤のシフト」の3つのシフトを着実に実行し、当社事業ポートフォリオの強化に向けて総力をあげて取り組みました。

 

 (1) 定量計画の成果

    当社の利益水準は前中期経営計画期間と比べて大きく向上し、「SHIFT 2023」開始時に計画値として 

   掲げた水準を超える結果となりました。ROEは2021年度・2022年度ともに16.2%を記録しましたが、2023

   年度は一過性損失もあったことから9.4%となりました。

  3年合計キャッシュ・フローは、一株当たりの配当額の増加や自己株式取得などによって株主還元を充 

 実させつつも、株主還元後フリーキャッシュ・フローの黒字を確保し、財務健全性を維持しました。

 


 

 (2) 「SHIFT 2023」における主な取組の総括

「SHIFT 2023」においては、構造改革の遂行により、下方耐性を強化しつつ、収益力を一段レベルア 

 ップさせました。

また、気候変動や人権など社会課題に対する中期目標に基づき各Strategic Business Unit(SBU)が戦 

略的に取り組むとともに、カーボンニュートラル社会の実現に向けたポートフォリオシフトや人権デュ

ーデリジェンスの実施等、サステナビリティ経営を推進しました。

  新中期経営計画においては、事業ポートフォリオ変革をより一層加速させます。そのために資産入替

 を含めた新陳代謝を高め、成長を牽引する収益の柱の構築にこれまで以上に重点的に取り組みます。


 

●マテリアリティの更新

「中期経営計画2026」で新たな成長ステージに移るにあたり、社会課題の解決に資する価値創造が当社グループの持続的な成長に繋がるとの観点から、マテリアリティを更新しました。気候変動や生物多様性の喪失など社会課題の一層の深刻化等の外部環境の変化や当社グループの強み、ステークホルダーからの期待も踏まえ、当社グループが取り組むべき重要な社会課題とその解決に向けた一層のコミットメントを示すものであります。

 



 

マテリアリティ毎に設定した長期・中期目標に対してアクションプランを策定・実行し進捗レビューを行うPDCAサイクルを継続することで、社会課題の解決を通じた持続的な成長を実現してまいります。例えば、世界全体で取り組むべき喫緊の課題である気候変動問題に関しては、サプライチェーン全体を俯瞰した取組を通じ、社会のカーボンニュートラル化の実現に向けてより一層貢献してまいります。

 

 

●中期経営計画2026

新しい成長ステージに入る「中期経営計画2026」のテーマは「No.1事業群」であります。競争優位を磨き、社会課題解決を通じた飛躍的な成長を実現すべく、「事業ポートフォリオ変革」を加速させます。そのために、「強みを核とした成長」及び「成長の原動力の強化」に重点的に取り組みます。

 


 

 (1) 事業ポートフォリオ変革

    以下の取組を通じて事業ポートフォリオの新陳代謝を加速させることで、成長を実現します。

 ・魅力ある市場で強みや競争優位性を発揮できる事業への経営資源(資金・人材)の重点配分

 ・資産入替による経営資源の回収を含む、打ち手と時間軸を定めた低成長事業の再構築

 ・4つの事業戦略分類や事業別の資本コスト対比での事業戦略管理の継続活用

 


 

 (2) 強みを核とした成長

  ① 競争優位のある事業をより強く

    ・成長事業において長年にわたり蓄積してきた事業経営ノウハウやネットワーク、強固なポジショ 

    ニング等の強みの磨き上げ

   ・新しい営業グループとして結集したSBU間での連携強化による、成長事業を起点とした産業の枠組

    を超えた新たな価値創造

 

  ② デジタルとグリーントランスフォーメーション(GX)で加速する新たな成長

   デジタルで加速する新たな成長

   ・デジタルによる、当社事業の強み・競争優位のさらなる強化、及び新たな強みの育成による成長  

    の加速

   ・デジタルによる、経営基盤・業務の変革、及び当社事業の収益拡大と事業創出・変革を実現する

    ことでの稼ぐ力の強化

 

   GXで加速する新たな成長

   ・GXによる当社事業の強み・競争優位のさらなる強化

   ・様々な産業分野における、脱炭素・低炭素エネルギー源への転換などに関する、市場形成を含め

    た収益化までの時間軸も考慮した取組

   ・GXの基盤となるサステナビリティ経営の更なる推進(サプライチェーン全体での温室効果ガス排出

    量の可視化、人権・自然資本への影響等も統合的に勘案した課題解決の実践)

 

 (3) 成長の原動力の強化

  ① 戦略軸の組織体制への移行・見直し

     経営会議及び営業組織の体制を以下のとおり見直し、全社最適の視点と営業グループの視点を組    

    み合わせ、強い組織力と総合力を追求していきます。

   ・意思決定の高度化とスピード化のための経営会議の構成メンバー及び決議方法の見直し

   ・戦略に応じた組織構成の最適化及び機動力向上のため、20の営業本部を戦略単位毎に44のSBUに再 

    編し、SBUを束ねる組織として営業グループを設置

   ・営業グループにコーポレート機能の一部を組み込み、より自律性を高める組織運営体制を構築

   ・当社グローバル拠点が一体となって行う、世界各地域におけるSBU戦略遂行や収益向上の取組

 

  ② 人・組織のエンパワーメント

    新たな組織体制で価値創造の原動力である人材の力を引き出し、戦略の実行力を強化していきま 

   す。具体的には、「事業構想力」、「リーダーシップ」、「スピード」を3つの優先事項として、以

   下のような様々な施策を実施していきます。

   ・求める人材要件の明確化を起点としたタレントマネジメント

   ・権限委譲を伴うラインマネージャーエンパワーメント

   ・リーダーが率先するオープンでフラットなコミュニケーション

 

 (4) 定量計画

   ① 経営環境

      当社は、2024年4月1日付で、「事業部門」・「エネルギーイノベーション・イニシアチブ」及び 

     「本部」・「部」を廃止し、戦略事業単位である「Strategic Business Unit」(SBU)をベースとした 

     組織運営を行っております。SBUを束ねる組織として、新たに「鉄鋼」「自動車」「輸送機・建機」 

     「都市総合開発」「メディア・デジタル」「ライフスタイル」「資源」「化学品・エレクトロニク 

     ス・農業」「エネルギートランスフォーメーション」の9グループを設置しております。

 

   全般

    世界経済は、緩やかな景気回復基調が継続する見通しであります。しかし、これまでの物価上昇や 

   金融引き締めが個人消費や設備投資の重しとなっております。

   先進国経済のうち、米国は緩やかな景気回復基調が続くと見込まれます。ユーロ圏経済は足踏みが 

  続いてきましたが、今後は緩やかな持ち直しの動きに転じると見込まれます。日本は、一部で足踏み 

  となっておりますが、総じて見れば緩やかな景気回復基調が続いております。新興国経済のうち、中   

  国では不動産部門の不振が景気の重しとなり、成長ペースの鈍化が継続する一方で、他の多くの新 

  興・途上国では緩やかな景気回復が続くと見込まれます。

   今後のリスクとしては、ロシア・ウクライナ情勢やイスラエル・パレスチナ情勢の更なる緊迫化、 

  物価上昇の再加速やそれに伴う金融引き締め政策の強化、新興国の債務問題、北東アジア、中東・北 

  アフリカなどの地政学的リスクの高まりなどが挙げられます。

 

   鉄鋼グループ

   当グループは、鋼管・鋼材などの鉄鋼製品を幅広く取り扱っております。

  鋼管分野では、米国では鋼管価格が足元低調に推移しているものの、鋼管需要の回復に伴い、鋼管価 

  格も緩やかに上昇する見通しであります。非米向けは、引き続き需要好調の見通しであります。ま

  た、世界各国でエネルギー安定供給の重要性から石油・ガス開発は維持され、加えて脱炭素に向けた

  エナジートランジションの動きも継続するものとみられます。

   鋼材分野では、物価上昇の影響を受けた買い控えにより、自動車、家電、建築土木において需要が

  弱含みとなりました。とりわけ中国では不動産部門の不振により内需が振るわない状況が継続する

  中、中国国外への輸出量を含め、今後のグローバル市場全体における鉄鋼の需給動向を注視していき

  ます。

   このような環境を踏まえ、当グループとしては既存事業を堅持しつつ、当グループが強みを有する

  事業・地域に経営資本を傾注し、収益力を強化してまいります。また、DXを通じた新たな価値提供、 

  再生可能エネルギー・CCSなどカーボンニュートラル化に資する鉄鋼製品・サービスの供給による産

  業のGX実現への貢献にも取り組んでいきます。

 

   自動車グループ

    当グループは、自動車業界のバリューチェーンを俯瞰し、自動車、タイヤ、及びその他関連商品の

   製造、販売、リースならびにこれらの関連サービス・周辺事業を行っております。

    当グループを取り巻く環境では、各国の経済発展、人・モノの移動の増加を支える自動車ニーズの 

   伸長、所有から利活用(リース・レンタル・サブスクリプション等)へのシフト、カーボンニュートラ

   ル実現へ向けた環境車の普及、循環型経済の構築へ向けた再利用・リサイクル促進へのニーズが高ま 

   っております。一方で、地政学リスクがもたらすサプライチェーンに与える影響、原材料コスト・人

   件費・金利等の上昇による経済の成長鈍化懸念があり、動向を注視しております。

    このような環境を踏まえ、自動車流通販売事業における商品や販売・サービス網の拡充による成長 

   促進、部品製造事業・販売金融事業・タイヤ販売事業のバリューアップによる収益規模拡大、自動車

   リース事業を軸とするモビリティサービス領域におけるサービス拡大と新たな事業機会の取り込み、 

   Beyond Mobility(移動から発生する、移動を越えた領域)の新規事業の創出・育成に取り組んでいき

   ます。

 

   輸送機・建機グループ

   当グループは、リース・ファイナンス事業、グローバルにバリューチェーンを展開する航空機・船 

  舶海洋・建設機械事業、高い専門性を持つ防衛宇宙・安全保障ビジネスを中心に、各種取引及び事業

  投資を行っております。

   当グループを取り巻く事業環境は、金融政策の影響や金利高止まりによる景気減速懸念はあります

  が、足元では航空需要は2019年の水準まで回復し、海上貨物輸送やインフラ建設・更新の需要は堅調

  で、いずれも引き続き成長が見込まれます。同時に、脱炭素社会や循環経済の実現に向けた社会的な

  要請が一層高まっております。

   こうした環境を踏まえ、当グループは強みを持つ事業の収益性向上と基盤拡大に注力します。リー

  ス・ファイナンス事業では優良資産の積み上げと資産効率の向上を図り、建設機械事業では事業基盤 

  の拡大と商品・サービスの多様化を進めます。

   また、航空機事業における退役機の部品販売を始めとするアフターマーケット事業、船舶海洋事業

  における洋上風力で使用される構造物の製造など、社会的な課題やニーズに応える事業を積極的に進

  め、成長を加速していきます。

 

   都市総合開発グループ

   当グループは、不動産・工業団地・サステナブルシティ・基幹インフラの開発・運営・アセットマ 

  ネジメント事業、建設資材の製造・販売及び産業機器の販売事業、物流・保険関連事業を展開してお

  ります。

   不動産分野では米国のオフィスビル賃貸市況の低迷等により海外不動産事業は低調に推移しました

  が、国内不動産事業は堅調に推移しました。また国内の建設資機材及び機械設備のトレード事業もコ 

  ロナ後の国内設備投資の回復により堅調を維持しました。マクロ環境としては引き続き、自然環境や

  次世代生活環境への危機意識の高まり、地政学リスクへ対応するための市場ニーズやビジネスモデル

  の変化が挙げられますが、日米を中心とした政策金利動向やコスト上昇に伴う不動産等の市況の変化

  には注視が必要であります。

   このような環境を踏まえ、自然環境に配慮した安心安全で災害に強いインフラ開発や街づくりの需 

  要や、地政学リスクや環境問題に対応するためのグローバルな製造・流通網の変革ニーズを商機と捉 

  え、機構改正により融合した当グループの不動産とインフラのビジネス推進力でグローバルに都市総 

  合開発事業を展開していきます。

 

   メディア・デジタルグループ

   当グループは、デジタルソリューション事業、情報通信インフラ事業、モバイル付加価値サービス  

  事業、第5世代移動通信システム(5G)事業、ケーブルテレビ事業、テレビ通販事業、グローバルCVC

  事業(ベンチャー投資)を行っております。

   取り巻く環境として、デジタル関連事業ではデジタル技術による社会課題解決やビジネス変革の機

  会が拡大し、DXソリューションのニーズが高まっております。情報通信インフラ事業ではミャンマー 

  及びエチオピアの地域の発展に伴うニーズ拡大が見込まれます。5G関連では高速・大容量通信の需要

  拡大により、携帯キャリアの基地局整備が進んでおります。メディア関連事業では、視聴形態の多様

  化や新たなサービスのニーズが見込まれます。

   このような環境を踏まえ、デジタル関連事業では提案力と事業基盤を強化・拡大し、コンサル・DX 

  事業に取り組みます。情報通信インフラ事業では長年の通信事業経験を活かした通信キャリア向けサ

  ービスの開発・展開に取り組みます。5G関連では基地局シェアリング事業拡大に取り組みます。メデ

  ィア関連事業ではJCOM社の企業価値最大化と従来のテレビ通販事業からテレビとECを融合したビジネ

  スモデルへの変革に取り組みます。

 

 

   ライフスタイルグループ

   当グループは、食品スーパー・ブランドなどのリテイル事業、食品・食品原料や青果などの食料事 

  業、ドラッグストア・調剤薬局及びマネージドケア・クリニックなどのヘルスケア事業を展開してお

  ります。

   リテイル及び食料分野では、消費者の価値観やライフスタイルの多様化・ニーズの細分化、食と健

  康に関する消費者意識の高まりが見込まれます。ヘルスケア分野においては、高齢化加速に伴う医療 

  費適正化ニーズが加速する見通しであります。また、全般的に気候変動や地政学リスクの継続や人件

  費・燃料費の高止まりの懸念があり、動向を注視していきますが、生活を支える事業としての社会的 

  重要性は引き続き高いものになっていくものと見ております。

   このような環境を踏まえ、リテイル事業を中心に圧倒的な顧客へのアクセスを持つ強みを生かし、

  データ活用によるマーケティング及びDX推進によるオペレーションの高度化や新規事業拡大に取り組

  みます。また、国内外の医療費高騰の解決に向け、プライマリケア・地域包括ケア関連事業の拡大に 

  努めます。食料分野では、食料・食品の調達・加工・販売のノウハウとネットワークを生かした収益

  基盤の拡大と成長が見込まれる分野への事業展開を図ります。

 

   資源グループ

   当グループは、金属資源等の開発・操業・生産、製品の製造・販売を展開し、トレード分野でも当 

  社事業とのシナジー発揮や、商品デリバティブの活用等、多様な機能を提供しております。

   資源価格は、2022年度から全般的に落ち着きを見せ、足元は軟化傾向にありますが、中長期の市況 

  変動サイクル、業界におけるプレイヤー・地域の偏在性、経済安全保障・技術革新を含むバリューチ

  ェーンや需給バランスの環境変化、資源案件開発の高難度化等の諸環境を踏まえ、当社ならではの経 

  験・強みを発揮し、競争優位を磨き、社会課題解決を通じた成長を図る事業ポートフォリオ、基盤の 

  改善・強化を進めております。

   下振れ耐性の強化と収益基盤の拡充の観点から、足元では、マダガスカルのニッケル事業の再構

  築、既存権益の安定操業の維持・拡大、将来的に需要増が見込まれる金属資源等の優良資産の積み増 

  しに向けた取り組みの他、環境負荷の低減に資する投資や機能提供の促進、気候変動緩和に寄与する

  バリューチェーンの構築を推進しております。当グループは、これらの取り組みを通じて、日本及び

  世界の産業発展と持続可能な社会の実現に貢献し、人々の豊かな未来を創造することを目指します。

 

   化学品・エレクトロニクス・農業グループ

   当グループは、基礎化学品、農業資材、医薬、化粧品、動物薬、エレクトロニクス材料・製品の開

  発、製造、販売事業を展開しております。

   2023年度は、農業資材分野においては市況悪化及び天候要因により、エレクトロニクス材料・製品 

  分野においては半導体需要低迷により、低調な推移となりましたが、2024年度は、農業資材分野にお

  ける事業環境の改善や半導体の需要回復、基礎化学品分野の堅調な推移などを見込んでおります。

   このような環境を踏まえ、農業資材分野では、販売事業の地理的拡大及び機能の拡充に注力し、イ

  ノベーション分野のビジネスを推進します。2023年度に米国硫酸事業を買収した基礎化学品分野で

  は、強みである顧客・仕入先、製造事業、物流アセット等の事業基盤を活かした機能の拡充により、

  収益力及び下振れ耐性を更に強化します。グリーンケミカル分野では、カーボンニュートラル及び循

  環経済に資する取り組みや、経済安全保障のニーズの高まりを踏まえた新規事業の開発に注力してい

  きます。また、ライフサイエンス分野やエレクトロニクス分野においても、変化を先取りし、新たな

  ビジネスを創出していきます。

 

 

   エネルギートランスフォーメーショングループ

   当グループは、国内外における発電事業、国内電力小売事業、天然ガス・LNGなどのエネルギー権 

  益開発・生産及び販売事業、海洋インフラ・船舶燃料供給事業、カーボンニュートラル社会実現に資

  する次世代エネルギー分野での事業開発を行っております。

   電力EPCプロジェクトでは複数案件で完工を達成し、発電事業も堅調に推移しております。国内電

  力小売事業においては、顧客との契約更改を含む市況リスクマネジメント強化の結果及び電力調達価

  格が年度を通じて安定的に推移したことにより収益改善を果たしております。

   エネルギー分野においては、一部トレード事業において前年度好調の反動があったものの、市況の

  高止まりや価格変動を上手く収益化したことにより、エネルギートレードビジネスは好業績で推移し

  ました。このような環境を踏まえ、当グループでは世界的な地政学リスクの高まりに備えるためにも

  市況変動リスク管理を一層強化いたします。

   また2050年のカーボンニュートラルを達成すべく、当社発電ポートフォリオの低炭素化を促進する 

  新たな電力・エネルギーサービスの事業化を進め、次世代エネルギー関連事業の開発にも引き続き取

  り組んでいきます。

   不可逆的なGX潮流を事業機会と捉え、脱炭素・循環型エネルギーシステムの構築やサステナブルな

  カーボンサイクル実現を通じて、住友商事グループ全体のエネルギートランスフォーメーション事業

  を牽引していきます。

 

   ② 定量計画

   ・利益計画

     「中期経営計画2026」の期間においては、ROE12%以上を維持しつつ、競争優位を発揮する成

   長事業を伸ばすことで、2024年度は5,300億円、2026年度は6,500億円の当期利益の実現を目指し

   ます。

 


 

    2024年度業績見通しの内訳は以下のとおりです。

    資源ビジネスは、前期好調だったガストレード事業の反動、及び石炭価格下落の影響により減 

   益となりますが、非資源ビジネスは、鋼管事業、建設機械事業、不動産事業、アグリ事業などを 

   中心に着実な利益成長を見込んでいます。

 


 


 

   ・キャッシュ・フロー計画

    資産入替とキャッシュ・フロー収益力向上により2.8兆円のキャッシュを創出し、財務健全性を 

   維持しながら、創出したキャッシュを成長投資と株主還元に適切に配分してROEの向上を図りま

   す。

 


 

 (5) 株主還元方針

  「中期経営計画2026」以降の株主還元方針については、「SHIFT 2023」を通じて実現した基礎的な収

  益力の向上、継続的な財務基盤の強化、持続的成長のための投資資金の確保などの要素を総合的に勘案

  し、以下のとおりとしました。

  ・総還元性向を40%以上として、配当及び柔軟かつ機動的な自己株式取得を実施

  ・累進配当(注)により、配当の更なる安定性向上及び利益成長に応じた増配を目指す

 

 (注)1株当たり年間配当金の前期実績に対して、配当維持又は増配を行うことを指します。

 

  詳細については、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」を参照願います。

 

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は以下のとおりであります。

 

● サステナビリティに関する考え方

当社グループでは、「Enriching lives and the world」をコーポレートメッセージとして掲げ、持続可能な社会の実現と豊かな暮らしづくりをめざし、世界各国で事業を展開しております。このメッセージの背景には、「自利利他公私一如」という住友グループの事業精神を伝える言葉があり、「住友の事業は、住友自身を利するとともに、国家を利し、かつ社会を利するほどの事業でなければならない」という想いが込められているものです。この考えは、当社グループのサステナビリティ経営の源泉であり、社会課題をめぐる長期的な事業環境変化を見通して戦略的に経営資源を配分し、当社の強みを活かしながら社会が真に必要とする価値を創造し続けること、それこそが持続可能な社会と住友商事の持続的な成長を実現するとの信念で、サステナビリティ経営を進めております。

 

● サステナビリティに関する取組

サステナビリティ経営の全体像、及び、気候変動、人権尊重、人的資本のそれぞれの項目に分けて、当社の取組を以下に記載します。なお、各項目それぞれにおいて、①ガバナンス、②戦略、③リスク管理、④指標と目標の4段構成で当社の取組を説明します。

 

(1) サステナビリティ経営の全体像

① ガバナンス

(a) サステナビリティ経営の監督

取締役会は、当社グループの幅広い事業活動において、サステナビリティ関連の多様な機会とリスクを踏まえて、重要な経営事項を決定するとともに、経営会議及び執行役員が行う意思決定及び業務執行を監督しております。

重要な経営事項の意思決定については、取締役会が、経営会議やその諮問機関である全社投融資委員会、サステナビリティ推進委員会、全社経営戦略推進サポート委員会等での検討を経て取締役会に付議された、サステナビリティ関連方針の策定・改訂、サステナビリティ推進に係る重要な取組、重要な個別案件の実施の是非等についての審議・決定を行っております。

また、取締役会は、各事業分野の戦略とその進捗状況、並びに事業ポートフォリオ全体のリスクの状況について定期的に報告を受けております。具体的には、重要社会課題(2024年度以降はマテリアリティ)に基づく中長期目標の進捗状況のレビューやサステナビリティ関連方針の遵守状況に関するレビューなどの全社的な施策・テーマに関する報告を年に複数回受けており、取締役会として業務執行側の取組状況を監督しております。

 

なお、取締役を含む当社役員がサステナビリティ経営へのコミットメントをより強く意識できるよう、非財務指標「気候変動問題対応」、「女性活躍推進」、「従業員エンゲージメント」の評価結果を役員の報酬に反映しております。詳細は、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (4) 役員の報酬等」を参照ください。

 

(b) サステナビリティ経営の業務執行

当社グループのサステナビリティ関連の重要な経営事項の意思決定及び業務執行は、経営会議及び執行役員が行っております。経営会議はサステナビリティ関連の多様なリスク及び機会を評価・管理し、効果的な意思決定を行うため、サステナビリティ推進委員会等に諮問した上で、総合的な意思決定を行っております。

また、サステナビリティ関連の取組やリスクと機会への対応については、サステナビリティを推進する施策の企画や社内浸透を担当する専門組織であるサステナビリティ推進部と、当社の経営計画全体や重要施策の企画を行う経営企画部等の関連コーポレート組織、各営業グループ、海外地域組織のサステナビリティ推進担当者が連携し、グループ内の調査機関や各営業組織、海外拠点等からもたらされる情報等を基に、全社的企画や施策の立案や推進を行っております。

加えて、ESGに関する社外有識者で構成される「サステナビリティ・アドバイザリーボード」を設置し、当社のサステナビリティ経営全般について助言・提言を得て取り進めております。

 


 

② 戦略

当社グループは、これまで長年にわたって確立してきた事業基盤の上に、各SBU、各事業会社がステークホルダーと向き合いサステナビリティへの取組を継続することで、さまざまな事業機会の獲得及び当社グループの持続的な成長・発展につながると考えて、事業活動を行っております。

一方で、各SBU、各事業会社がサステナビリティの重要性を認識した事業活動を怠れば、ステークホルダーからの信頼を喪失し、長期的には顧客喪失や事業運営に必要な人材確保に影響が生じる等により、企業価値を棄損するリスクもあります。

当社グループとしては、今後も引き続き持続可能な成長・発展につながる事業活動を推進すべく、当社グループ内のみならず、バリューチェーン上の多くの関係者と協力し、バリューチェーン全体でサステナビリティ関連のリスクと機会を特定し、対応していく必要があると認識して、以下のような取組を行っております。

 

(a) 重要社会課題の特定と中長期目標の設定・実践

サステナビリティ経営を実践するため、2020年に、“気候変動緩和”、“循環経済”、“人権尊重”、“地域社会・経済の発展”、“生活水準の向上”、“良質な教育”という当社グループが取組むべき「6つの重要社会課題」と、それに基づく当社グループとしての長期目標・中期目標を定めました。SBUは、それぞれの戦略に応じて長期目標・中期目標達成のために具体的なアクションプランを策定・実践しております。SBUの取組の進捗については、サステナビリティ推進委員会でのレビューを踏まえ、経営会議・取締役会に報告され、グループ全体としてのサステナビリティに関する取組が評価されております。

 

2024年度には、気候変動や生物多様性の喪失など社会課題の一層の深刻化や、当社グループの強みやステークホルダーからの期待も踏まえ、「マテリアリティ」と「6つの重要社会課題」の統合及び更新を行い、“安心で豊かな暮らしを実現する”、“気候変動問題を克服する”、“自然資本を保全・再生する”、“人権を尊重する”、“ガバナンスの維持・強化を図る”、“人材育成とDE&Iを推進する”を新たな「マテリアリティ」として定めました。これに即した目標設定とアクション実施、進捗レビューというPDCAサイクルを継続的に回し、社会課題解決を通じて持続的な成長を実現していきます。詳細は後述の「④ 指標及び目標」を参照ください。

 

 

(b) サステナビリティ関連の方針策定

当社グループは、国際行動規範を尊重し、持続可能な社会の実現に向けて取引先や事業パートナーとともに社会的責任を果たすべく、「気候変動問題に対する方針」、「人権方針」並びに「森林経営方針」や「林産物調達方針」等、持続可能な調達を要する主要な天然資源に関する個別の方針を策定・周知し、事業活動に取組んでおります。

 

③ リスク管理

当社グループの活動は広範な分野、地域に分散した事業から成り立ち、様々な社会課題と関わりを持っております。当社は、常にそれらの社会課題を考慮に入れるため、グループ全体の事業活動から生じる社会・環境への影響を適切に管理し対処するための方針を設定し、グループ内で周知・徹底を図っております。また、事業を開始する際の審査や定期的なモニタリングなどの全社的なフレームワークを整えております。具体的には、新規事業に係るデューデリジェンスの際には、事業の性格やリスクを踏まえ、環境コンサルタントによる環境評価や、法律事務所等による人権・労働問題の評価によって、事業が健全に経営されているか、環境や地域社会、従業員等のステークホルダーに深刻な影響を与えていないかを確認しております。加えて、事業実施に関する審査過程において、サステナビリティ関連のリスクに関する評価シートをSBUが作成し、サステナビリティ推進部が関連する外部情報を参照の上レビューしております。さらには全社投融資委員会において、特定・評価したサステナビリティ関連のリスクや機会を踏まえ、対象事業の価値創造及び価値棄損に関する重要な対応策の検討・確認を行っております。

既存事業に関しても、当社は各事業における社会・環境関連を含むリスクの全般的な管理状況を定期的に確認しております。具体的には、事業会社との対話を通じた定期的なモニタリングや、内部監査等のプロセスを通じ、社会・環境関連リスク管理状況を確認し、課題がある場合は、その事業の特性に応じて改善を進めます。当社グループの事業活動の影響について、地域住民やNGO等、ステークホルダーから問題の指摘を受けた場合は、実態を踏まえて、対話・協議を行い、改善に努めております。

 


 

また、個別事業に関するリスク管理に加え、当社グループ全体が抱えるサステナビリティ関連のリスクの状況を把握し、経営の戦略的判断への活用を可能にする体制を整えております。具体的には、上述の長期目標・中期目標に基づくアクションの進捗状況のモニタリングを行い取締役会まで報告するほか、中期経営計画に基づく当社グループ全体の経営状況の定期レビューにおいて、サステナビリティ関連及び他の種類のリスクの全社的な状況を整理し、今後の管理・対応方針につき経営会議や取締役会にて議論し、中期経営計画における具体的な施策の検討等に反映しております。

当社グループ全体でのサステナビリティ関連のリスク・機会の分析の中でも、気候変動についてはシナリオ分析を行っております。詳細は、「(2) 気候変動問題に関する取組 ② 気候変動問題に対する戦略」を参照ください。

 

 

④ 指標及び目標

特定した6つの重要社会課題(2024年度以降はマテリアリティ)に関して、課題毎に長期及び中期目標を下表のとおり設定し取組んでおります。中期目標に対する取組の進捗状況は、サステナビリティ推進委員会でのモニタリングを経て、経営会議や取締役会に報告され、そこで議論がされております。それら含む長期目標・中期目標に対する取組の2023年度末時点の進捗は2024年9月に当社HPのサステナビリティ関連ページに掲載予定です。

 

重要社会課題に対する長期目標・中期目標


(*1) 2020年時点:石炭50%、ガス30%、再エネ20%

(*2) 他者のエネルギー資源使用に伴う間接排出量

(*3) 個別事業で目標を設定し削減に注力

(*4) 2020年時点:1.5GW(1GW = 10億W)

(*5) サプライチェーンを含む事業活動全体に関し、人権侵害等に関する、従業員・地域住民等ステークホルダーからの訴えを受け付け、問題解決につなげる仕組み

(*6) 住友商事グループの社員参加型の社会貢献活動プログラム

 

 

2024年度に新たに策定したマテリアリティに関する長期目標・中期目標は、以下のとおりです。取組の進捗については、当社HP等で開示してまいります。

 

マテリアリティに対する長期目標・中期目標


(*1) 住友商事グループの社員参加型の社会貢献活動プログラム

(*2) 他者のエネルギー資源使用に伴う間接排出量

(*3) 個別事業で目標を設定し削減に注力

(*4) サプライチェーンを含む事業活動全体に関し、人権侵害等に関する従業員・地域住民等ステークホルダーからの訴えを受け付け、問題解決につなげる仕組み

 

 

(2) 気候変動問題に対する取組

当社は、パリ協定における世界的合意を重視し、同協定に掲げられた社会のカーボンニュートラル化目標の達成により積極的な役割を果たすため、「気候変動問題に対する方針」を掲げ、事業活動を行っております。

なお、昨今の気候変動対策やエネルギー安全保障といった各種外部環境の変化を受けて、当社グループの気候関連目標のうち、持分発電容量ベースの比率目標の更新を行いました。また、一般炭鉱山から生じる間接的CO2排出量を2020年代後半までにゼロとする旨、及び、天然ガスについては社会のエネルギー・トランジションに資する案件に限り取組む旨を追記しました。

 

気候変動問題に対する方針 (2024年5月改訂)

基本方針

・2050年に住友商事グループのカーボンニュートラル化を目指す(※1)。

社会全体のCO2排出量削減・Negative Emission化(※2)による、持続可能なエネルギーサイクル実現のための技術・ビジネスモデルを開拓する。

・当社事業のCO2排出の削減・吸収に加え、ビジネスパートナーや公共機関などと協力した取り組みや提言などを通じて、社会のカーボンニュートラル化に貢献する。

 

事業における方針

・社会全体のCO2排出削減に資する再生可能エネルギー化やエネルギー活用の効率化、及び燃料転換を促進する。

また、再生可能エネルギーを主体とした新たなエネルギーマネジメントやモビリティサービスなどの提供や、水素社会の実現に取り組む。

・発電事業については、地域社会における経済や産業の発展に不可欠なエネルギーを安定的に供給するとともに、経営資源を、より環境負荷の低い発電ポートフォリオに継続的にシフトする。

・火力発電、化石エネルギー権益の開発については、2050年のカーボンニュートラル化を前提として取り組む。

石炭火力については、新規の発電事業・建設工事請負には取り組まない。また、石炭火力発電事業については、2035年までにCO2排出量を60%以上削減(2019年比)し、2040年代後半には全ての事業を終え石炭火力発電事業から撤退する。

一般炭鉱山開発事業については、今後新規の権益取得は行わず、持分生産量を2020年代後半にゼロにする。天然ガス開発事業は、社会のエネルギー・トランジションに資する案件に限り取り組む。

 

※1 カーボンニュートラル化の対象となる事業の範囲は以下の通り。

[Scope1・2] 住友商事単体及び子会社の直接的CO2排出と、各社の使用するエネルギーの生成に伴う間接的CO2排出。(ただし、発電事業については持分法適用関連会社の排出も対象に含める)

[Scope3] 住友商事単体及び子会社、持分法適用関連会社の化石エネルギー権益事業で生産されたエネルギー資源の、他者の使用に伴う間接的CO2排出。

尚、カーボンニュートラル化とは、当社グループの事業によるCO2排出と、CO2排出削減への貢献を合わせたネットCO2排出量をゼロとすることを指す。

※2 Negative Emission化とは、過去に排出され、大気中に蓄積したCO2を吸収・回収・除去することを指す。

 

 

 

■ TCFD提言に基づく情報開示

当社は、気候変動がもたらすリスク及び機会を把握し、事業活動に活かすべく、2019年3月に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に賛同し、以降TCFDのフレームワークに基づいた開示を行ってきました。2022年度の開示内容は当社HPのサステナビリティ関連ページを参照ください。また、2023年度の取組進捗については、当社HPのサステナビリティ関連ページに掲載予定です。

 

 

① ガバナンス

(a) 監督

当社グループの気候変動関連のリスク及び機会を踏まえた重要な経営事項の決定と、業務執行の監督については、取締役会が行っております。詳細は、「(1) サステナビリティ経営の全体像 ① ガバナンス (a) サステナビリティ経営の監督」を参照ください。

気候変動関連の重要な経営事項の意思決定については、取締役会が、経営会議等での検討を経て取締役会に付議された、気候変動関連の方針の策定・改訂や重要な個別案件の実施の是非等について、審議・決定を行っております。

取締役会は、気候変動問題に対する取組として、マクロ環境の分析及びその対応状況等の報告を年に複数回受けており、業務執行側の取組状況を監督しております。

なお、当社取締役報酬に関する気候関連のパフォーマンス指標については、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (4) 役員の報酬等」を参照ください。

 

(b) 業務執行

気候関連のリスク及び機会の評価、管理、それらを踏まえた重要な経営事項の意思決定及び業務執行は、経営会議及び執行役員が行っております。詳細は、「(1) サステナビリティ経営の全体像 ① ガバナンス (b) サステナビリティ経営の業務執行」を参照ください。

 

② 戦略

当社は、以下のとおり、TCFD提言に沿った形でシナリオ分析を実施しております。2023年度においては、「エネルギー」「資源」「輸送」「素材」「不動産」「その他(森林)」等の当社ビジネス・モデルへの影響を分析しました。

事業環境が大きく変化した際に、新たなビジネス機会及び事業の耐性を客観的に評価する観点から、主にIEA及びPRI等のシナリオを用いて、主に2050年までのビジネス・モデルに対する移行リスク及び機会の影響を分析しております。リスク及び機会の影響が及び得る時間軸として、中期:2030年、長期:2050年を設定の上、分析を行っております。

なお、これらのシナリオは、世界的な気候変動緩和の長期的な動向について、複数のシナリオを想定した場合に、各セクターにおいて起こりうる事業環境変化の一例として参照したものであり、当社の経営方針や事業戦略の前提を示すものではありません。

 


 

 

<特定した当社グループのビジネス・モデル>

ビジネス・モデル(セクター)類型

各セクターの事業類型

1. エネルギー

石炭火力発電、ガス火力発電、再生可能エネルギー、次世代エネルギー(水素・アンモニア・合成燃料、エネルギーマネジメント・蓄電池、CCUS)

2. 資源

一般炭、原料炭、鉄鉱石、天然ガス・LNG、ニッケル、銅

3. 輸送

車、船舶、航空機

4. 素材

鉄鋼(鋼材/鋼管)、セメント、化学品、アルミニウム

5. 不動産

オフィスビル/集合住宅販売

6. その他

森林

 

 

<特定した気候関連のリスク及び機会>

大分類

特定したリスク及び機会

ビジネス・モデルとの関連性

移行リスク・機会

 
リスク

将来的に低炭素・脱炭素化のための規制が導入され、長期的には、国際的な議論の進展や各国の温室効果ガス削減計画の見直し、幅広い産業分野での技術、市場の変化等が、当社グループの事業環境に影響することが想定される。

 

機会

低炭素・脱炭素化のための規制や消費者選好の変化等により低炭素あるいは高効率の商品・サービスの需要増加や新規市場の創出等が進み、当社グループの事業環境に影響することが想定される。

当該リスクが与える影響が相対的に大きいと考えられる分野として、発電事業やエネルギー・資源関連事業、自動車・航空機・船舶関連事業、鉄鋼・化学品・セメント・アルミ製錬事業、不動産事業等があります。これらの分野では事業活動に影響を及ぼすようなリスクが存在すると想定され、定期的なシナリオ分析を通じてリスク影響の大きさを認識し、適切な対応策を講じることで、業績への負の影響を最小限にとどめるよう努めております。

同時に当該機会の獲得に向けて、次世代エネルギーを始めとする将来的に需要増が予測される分野における事業の育成や、効率改善等による既存事業の価値向上等、市場形成を含めた収益化までの時間も考慮しながら戦略を策定し、カーボンニュートラル社会の実現に資する取組を強化しております。

物理的リスク

 
慢性リスク

平均気温の上昇、降水パターンの変化、海面の上昇等が発生し、当社グループの事業活動に継続的・慢性的な影響を与えることが想定される。

 

急性リスク

暴風雨・洪水・干ばつ・森林火災等の異常気象の激甚化等が発生し、当社グループの事業活動に突発的な影響を与えることが想定される。

 

一般に当該リスクが与える影響が相対的に大きいと考えられる分野のうち、屋外に大きな事業拠点を持つ、または、操業に大量の天然資源を要する等の観点から、物理的リスクの影響を受けやすいと考えられる当社事業として、再生可能エネルギーを含む発電事業、資源・エネルギー権益事業、不動産事業、農業、森林事業に焦点を当て分析を行っています。地域の天候や地理的要因等による事業への影響に関する投資時の確認、事業参画後の継続的なアセスメント、契約上の責任範囲の明確化、損害保険契約等により、リスクを管理しております。

 

 

 

③ リスク管理

当社グループの活動は広範な分野、地域に分散した事業から成り立ち、様々な社会課題と関わりを持っております。当社は、常にそれらの社会課題を考慮に入れるため、グループ全体の事業活動から生じる社会・環境への影響を適切にコントロールするための方針を設定し、グループ内で周知・徹底を図っております。具体的には、当社では新規事業を検討・実施する際の審査過程において、社会・環境に関するリスクの評価や対応策の確認を行っております。特に気候変動問題については、多様な気候変動影響や社会の気候変動対応に起因する事業環境の変化によって発生し得る、事業の持続可能性が妨げられるリスク及び機会について、以下の点を確認しております。

 

・気候の変動あるいは自然災害・異常気象の頻発による影響

・規制の導入による影響

・技術の変化等による影響

・気候変動緩和や気候変動への適応の進展による事業の拡大や業績の改善余地

 

既存事業に関しても、当社は各事業における社会・環境関連を含むリスクの全般的な管理状況を定期的にモニタリングしており、個別事業に関するリスク管理に加え、当社全体が抱える社会・環境関連リスクの状況を把握し、経営の戦略的判断への活用を可能にする体制を整えております。また、気候変動問題に係るリスクへの対応については、各営業グループにおいて、関連する事業分野における規制の導入や市場変化を把握した上で事業展開を行うことに加えて、全社ポートフォリオ管理の一環として、サステナビリティ推進部が気候変動問題に対する世界的取組や各種規制の動向を踏まえた、当社グループの主要なリスクの状況を収集・分析し、定期的に経営会議、取締役会に報告しております。その上で、ポートフォリオ全体の確認を行い、許容できないリスクがあれば、関連コーポレート部署と共同でエクスポージャーの削減を含む対応を検討する体制となっております。

 

④ 指標及び目標

(a) 温室効果ガス排出量及びその他気候関連の指標

■ カーボンニュートラル化対象 CO2排出量

当社グループは、2019年に「気候変動問題に対する方針」を制定しており、2050年にカーボンニュートラル化することを目指しております。同方針の下、カーボンニュートラル化の対象範囲には、提出会社及び子会社のScope1・2に加え、発電事業および化石エネルギー権益事業も含めております。うち発電事業については、基準年も含めて、建設中の案件であっても完工・稼働後に見込まれる推計値も含めております。

 

住友商事グループカーボンニュートラル化対象CO2排出量についての速報値は以下のとおりです。なお、確定値については2024年9月に当社HPに掲載予定です。

 

<住友商事グループ カーボンニュートラル化対象 CO2排出量> (集計対象範囲※)

(単位:千t-CO2e)

 

2019年度

(基準年)

2022年度

2023年度

削減率

(基準年比)

発電事業以外

1,005

757

782

△22.2%

発電事業

43,126

42,613

39,632

△8.1%

化石エネルギー権益事業

15,808

9,203

11,192

△29.2%

 (うち一般炭鉱山開発事業)

(12,538)

(8,035)

(10,164)

(△18.9%)

合計

59,939

52,572

51,606

△13.9%

 

 

 

(※) 具体的な集計対象範囲は、以下のとおりです。

<Scope1・2>

提出会社及び子会社の直接的CO2排出と、各社の使用するエネルギーの生成に伴う間接的CO2排出。

(ただし、発電事業については持分法適用関連会社の排出も対象に含む)

 

<Scope3>

提出会社及び子会社、持分法適用関連会社の化石エネルギー権益事業で生産されたエネルギー資源の、他者の使用に伴う間接的CO2排出。

 

尚、カーボンニュートラル化とは、当社グループの事業によるCO2排出と、CO2排出削減への貢献を合わせたネットCO2排出量をゼロとすることを指す。

 

■ 温室効果ガス排出量(GHGプロトコルに基づいた算出実績)

温室効果ガス(GHG)排出量の実績(速報値)は以下の通りです。なお、確定値については2024年9月に当社HPのサステナビリティ関連ページに掲載予定です。

GHG排出量は、GHGプロトコルを参考に策定した会社方針に基づき算定しております。

排出原単位は、環境省が公表する温室効果ガス排出量算定・報告公表制度の排出係数を使用しているほか、IEAが発行する「Emissions Factors 2023」に掲載された2021年の国別の排出係数等を使用しております。

Scope1(エネルギー起源CO2以外のGHG排出量)の集計基準については、2022年度までは温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度を踏まえ、ガス毎の排出量合計がCO2換算で3,000tを超える排出のあった事業会社を対象としておりましたが、2023年度より3,000tの基準は廃止し、軽微な排出を除き全件対象としております。

 

<GHG排出量(Scope1/2)> (集計対象範囲※)

(単位:千t-CO2e)

 

2022年度実績

2023年度実績

増減

Scope1(エネルギー起源CO2)

1,268

4,485

3,217

Scope1(エネルギー起源CO2以外のGHG排出量)

260

45

△215

Scope2

553

572

19

合計

2,081

5,102

3,021

 

 

(※) 提出会社及び子会社

集計対象範囲の決定においては、2023年度よりGHGプロトコルの経営支配力基準を適用しております。これにより、2022年度は、共同支配事業について当該事業における環境データの報告期間の3月末時点における出資比率相当を算入しておりましたが、2023年度より経営支配力を持つ場合のみ、当該事業における排出総量を算入しております。2022年度実績と同じ基準にて算定した場合、2023年度のScope1は5,169千tCO2、Scope2は588千tCO2となります。

 

■ 内部炭素価格

2023年4月より、当社内で内部炭素価格制度(ICP)を運用し炭素排出コスト、環境価値に加えて、削減貢献量を算出しております。カーボンニュートラル社会の実現に資する新たな事業機会創出に向けた全社の施策検討や投資判断時の将来事業への影響等の確認に活用しております。

当社ICPにおいては、IEAが発行するWorld Energy Outlook 2023のNet Zero Emission Scenario(NZEシナリオ)の炭素価格の見通しを使用しております。

 

 

<当社ICPにおける炭素価格>

(単位:$/t-CO2)

 

2030年

2035年(※)

2040年

2050年

ネットゼロ公約済み先進国

140

172.5

205

250

ネットゼロ公約済み新興国・発展途上国

90

125

160

200

ネットゼロ未公約の特定の新興国・発展途上国

25

55

85

180

その他の新興国・発展途上国

15

25

35

55

 

 

(※) 2035年の炭素価格は、World Energy OutlookのNZEシナリオにおける2030年及び2040年の炭素価格の見通しの平均値を使用しております。

 

(b) 気候関連の目標

当社グループとして、2050年度にカーボンニュートラル化を目指す目標を設定しており、中間目標としてグループのCO2排出量の総量を、基準年の2019年度比で2035年度までに、原則として50%以上削減する目標を設定しております。当該目標は、当社グループとして、パリ協定及び関連する世界的な合意を重視し、同協定に掲げられた社会のカーボンニュートラル化目標の達成に、より積極的な役割を果たすことを目的としております。

 

2050年カーボンニュートラル化目標の対象範囲は、当社単体及び子会社の直接的CO2排出と各社の使用するエネルギーの生成に伴う間接的CO2排出(ただし、発電事業については持分法適用関連会社の排出も対象に含める。)及び当社単体及び子会社、持分法適用関連会社の化石エネルギー権益事業で生産されたエネルギー資源の、他者の使用に伴う間接的CO2排出となっております。

 

■ 気候変動関連の目標のレビュー及びモニタリング

当社グループの気候変動関連目標のレビューは、経営会議を経た上で、取締役会にて行っております。詳細は「(1) サステナビリティ経営の全体像 ① ガバナンス」の項目を参照ください。

当社グループの気候変動関連目標の進捗モニタリング指標としては、Scope1、Scope2排出量の推移のほか、2035年度目標のモニタリング指標として、火力発電事業のCO2排出量、再生可能エネルギー発電事業の発電容量、化石エネルギー権益事業のうち、一般炭鉱山から生じる間接的CO2排出量を設定しております。

 

 

(3) 人権尊重に関する開示

当社は、従来、人間尊重を経営姿勢の基本とすることを経営理念の中で掲げておりますが、改めて住友商事グループ人権方針を制定し、人権を尊重する責任を果たすことを明確に示しております。取組に当たっては、「国際人権章典」及び国際労働機関(ILO)の「労働における基本的原則及び権利に関する宣言」が定める人権を尊重し、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に則って活動しております。

 

住友商事グループ人権方針 (2020年5月制定)

住友商事は、広く社会に貢献するグローバルな企業グループを目指し、人間尊重を経営姿勢の基本とすることを経営理念の中で掲げています。私たちは、企業に求められる社会的責任として人権を尊重し、社会とともに持続的に成長することを目指します。

住友商事は、2009年に経営理念と共通の価値観を提唱するものとして、人権や労働の分野を含む「国連グローバル・コンパクト10原則」に署名しています。また、「国際人権章典」および国際労働機関(ILO)の「労働における基本的原則及び権利に関する宣言」が定める人権を尊重し、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に則って活動します。

1. 適用の範囲

住友商事は、グループ全体のすべての役職員が人権尊重の責任を果たすよう努めます。また、住友商事は、サプライヤーを始めとする取引先や事業パートナーに対し、本方針への賛同と理解、実践を求め、関与するバリューチェーンにおいて、ともに人権尊重を含む社会的責任を果たすよう働きかけていきます。

2. 人権デューデリジェンス

住友商事は、人権デューデリジェンスの取り組みを通じて人権への負の影響を特定し、その防止、または軽減を図るよう努めます。当社グループの活動が人権に負の影響を引き起こしたこと、または助長したことが明らかになった場合、適切な措置を講じることでその救済に努めます。

3. 適用法令の遵守

住友商事は、グループ全体の事業活動において、関連する国・地域の法令を遵守します。国際的に認められた人権と各国法の間に矛盾がある場合においては、国際的な人権規範を尊重するための方法を追求します。

4. ステークホルダーとの対話・協議

住友商事は、関連するステークホルダーとの対話と協議を行うことにより、人権尊重の取組みの向上と改善に努めます。

5. 社内啓発

住友商事は、本人権方針が理解され、効果的に実施されるよう、住友商事グループの役職員に対し、適切な啓発活動を推進します。

6. 情報開示

住友商事は、人権尊重の取り組みについて、適切な情報開示を行います。

 

 

 

① ガバナンス

当社グループの人権に関するガバナンスは、サステナビリティ経営全般のガバナンスに組込まれております。詳細は、「(1) サステナビリティ経営の全体像 ① ガバナンス」を参照ください。

 

 

② 戦略

(a) 人権尊重意識の徹底と理解の浸透

当社グループは、幅広い国・地域、産業分野で事業活動を展開しており、その事業活動において人権の尊重を実現するためには、当社グループの役職員がビジネスと人権の考えを理解し、サプライヤーをはじめとする取引先や事業パートナーに働きかけることで、サプライチェーン全体で人権の尊重に努める必要があります。それらサプライチェーンにおける関係者がビジネスと人権に関する理解が進まない場合には、関連する従業員や地域コミュニティ等ライツホルダーへの負の影響が見落とされ、事業活動によってその負の影響のさらなる悪化につながり、結果的に製品やサービス供給の停滞による企業業績の悪化や、レピュテーションの悪化により企業価値が棄損するリスクがあります。逆に当社グループ内、さらにはサプライチェーンに働きかけることで、サプライチェーンのレジリエンス強化やレピュテーション向上による人材の獲得及びリテンションなどの効果が期待されます。

当社グループでは、上述の「住友商事グループ人権方針」や「住友商事グループのサプライチェーンCSR行動指針」を策定し、当社従業員への周知・徹底を図るとともに、当社グループ会社や取引先へ理解・賛同を求めるよう努めております。

また、特に持続可能な調達を要する主要な天然資源については個別の方針を制定して取組んでおり、2022年3月に持続可能な森林経営、及び林産物の調達に関して、「森林経営方針」、「林産物調達方針」を策定しました。これら方針に基づき、森林事業を行う事業会社、林産物調達を行うサプライヤーに対して、人権を含めた調達方針に定めるコミットメントにつき確認しております。

 

(b) 人権デューデリジェンス

当社は、当社グループの事業活動が与える人権へのリスクを特定・防止・是正するために、2020年より人権デューデリジェンスを開始しております。2020年度は、その最初のステップとして、グループ全体の人権への影響・リスクを評価するために、優先的に対応すべき顕著な人権課題の特定に取組みました。2021年度より中期目標「2025年までにサプライチェーンを含む全事業を対象に人権リスクを評価し、リスク低減策を実施すること」に沿って対象を全事業に拡大し、部門別の人権デューデリジェンスを実施し、これまでに6部門を対象に人権リスクの特定と評価を行いました。本取組により人権リスクの特定・評価に加えて、従業員へのビジネスと人権に関する理解の浸透にもつながっております。

 

人権デューデリジェンスの結果については、当社HPを参照ください。

また、上述の方針や部門別人権デューデリジェンスの結果等を含む、サプライチェーン全体での人権尊重への取組の必要性や事業活動を行う上で注意を要する人権問題に関するe-learningを当社単体の全従業員に展開しております。今後、海外地域組織や事業会社への展開も予定しております。

 

(c) グリーバンスメカニズム(社外ステークホルダー向け通報窓口)の設置

人権尊重に関する意識の徹底や人権デューデリジェンス等の取組を通じて、事業活動に伴う人権リスクの特定や負の影響の防止・軽減を図っておりますが、すべての人権リスクを回避することは難しく、発生した負の影響につき速やかに是正することが重要と認識しております。

当社は、従業員を対象にした内部通報窓口のほか、一般の方やお客様を含む社外ステークホルダーの方々からのご意見やお問合せを受付け対応しております。

2024年度からは、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に準拠して苦情処理プラットフォームを提供する一般社団法人ビジネスと人権対話救済機構(JaCER)に正会員企業として加盟し、JaCERが提供する苦情処理プラットフォームでステークホルダーの方々から人権に関する様々な意見を受付けております。専門性を有する第三者を介して意見を受付け、公平性・透明性を向上し、受付けた事案については、サステナビリティ・DE&I推進グループ長を含む経営陣やサステナビリティ推進委員会に報告のうえ、適時・適切に是正、再発防止を徹底しております。

 

 

③ リスク管理

(a) 新規投資に係るリスク評価

新規投資に係るデューデリジェンスの際には、事業の性格やリスクを踏まえ、環境コンサルタントによる環境評価や、法律事務所等による人権・労働問題の評価によって、事業が健全に経営されているか、事業活動により地球環境や地域社会、従業員等のステークホルダーに深刻な影響を与えていないかを確認しております。2020年4月には、リスク管理の実効性をさらに高めるため、投資申請時に、社会・環境関連リスクの評価シートを作成し、各事業の内容・地域特性等から想定される機会・リスクを洗い出すとともに、サステナビリティ推進部が全社投融資委員会での審議に参加するなど、社会・環境への影響を踏まえた意思決定を行うプロセスを整えております。

 

(b) 既存事業に係るリスク評価

上述のとおり、2020年より人権デューデリジェンスを開始しております。

 

<部門別の人権デューデリジェンスのプロセス>

外部専門家を起用し、部門に属する全てのSBUに対してインタビューを実施し、それぞれの事業におけるサプライチェーンや事業活動に関連する地域住民等、ステークホルダーへの影響を含めたビジネスの実態や顕在化事例を確認するとともに、想定される潜在的リスクについても特定し、それらに対する対応状況もヒアリングしました。ヒアリング結果を踏まえて、人権リスクの発生可能性と発生した場合に生じる深刻度の観点から、優先してリスク低減に取り組むべきSBU、あるいはSBU内の個別事業を特定しました。サステナビリティ推進部と対象SBU・対象事業会社が協力し、特定された人権リスクに対する具体的な防止・軽減策の検討・実行を進めます。

人権リスクへの対応については、そのリスクの深刻度や事業への関与度合い等、さまざまな要因によって対応方法や時間軸が異なることから、各SBUや事業会社が主体となり実施する必要があります。当社の部門別の人権デューデリジェンスで特定・評価したリスクについては、その重要性に基づき、各SBU・事業会社が優先順位付けをした上で、具体的なアクションプランに落とし込みPDCAサイクルを回していきます。その進捗については、住友商事グループの重要社会課題の長期目標・中期目標達成に向けた具体的な取組の進捗状況フォローに統合して継続的に確認し、定期的にサステナビリティ推進委員会から経営会議や取締役会へ報告し、議論しております。


 

 

(c) 受付けた事案への対応

当社のグリーバンスメカニズムやグループ会社を通じて、社内外のステークホルダーの方々から受け付けた人権事案については、サステナビリティ推進部や関連する営業部署よりサステナビリティ・DE&I推進グループ長を含む経営陣やサステナビリティ推進委員会に直ちに事態が報告され、事実把握と最善の対応を速やかに実施しております。その進捗状況や対応策については、重要性に応じて、サステナビリティ推進委員会から経営会議や取締役会等へ報告、議論しております。

 

④ 指標及び目標

2020年には、当社が取り組むべき6つの重要社会課題として「人権尊重」を掲げ、長期目標・中期目標を設定、それぞれのSBUで具体的目標とアクションプランを定めて取組を推進してきました。詳細は「(1) サステナビリティ経営の全体像 ② 戦略 (a) 重要社会課題の特定と中長期目標の設定・実践」を参照ください。

 

また、6つの重要社会課題は、2024年度に新たに定めたマテリアリティ「人権を尊重する」に統合され、以下のとおり長期目標・中期目標を設定しております。

マテリアリティ

長期目標

中期目標

人権を尊重する

・全事業・サプライチェーンにおけるすべてのステークホルダーの人権の尊重

・国連「ビジネスと人権に関する指導原則」、「住友商事グループ人権方針」に則った人権尊重の浸透・徹底

・安全な職場環境の確保

 

 

なお、人権に関する2022年度の取組進捗の詳細は、当社HPのサステナビリティ関連ページを参照ください。また、2023年度の取組進捗については、2024年9月に当社HPのサステナビリティ関連ページに掲載予定です。

 

(4) 人的資本に関する開示

① ガバナンス

当社では、重要な人材マネジメントに関する方針・戦略・施策は、経営会議で議論し、取締役会で重要な方向性の決定と監督・モニタリングを実施しております。

 

② 戦略

人材の多様性の確保を含む人材育成方針及び社内環境整備方針

当社グループは、2020年9月に制定した「グローバル人材マネジメントポリシー」を通じて、グローバルベースでの人材マネジメントに関するビジョンを示し、全ての人事施策の拠り所とすることで、新たな価値創造に向けた人材マネジメントを実現します。

このポリシーで掲げる目指す個と組織の姿はそれぞれ以下のとおりであります。

目指す個の姿(Top Tier Professionalism)

ループの理念やビジョンに共感し、高い志を持ち、自律的な成長を続け、進取の精神で、グローバルフィールドで新たな価値創造に挑戦する人材集団

目指す組織の姿(Great Place to Work)

個々人がイキイキと、新たな価値を生み出し続けるGreat Place to Workをグローバルに築き上げ、世界に人材を輩出する「挑戦の場」として選ばれ続ける組織

 

 

 

当社グループには、性別や国籍の違いだけでなく、様々なライフスタイル、多様な価値観を持つ社員が在籍していることから、このポリシーでは、Diversity, Equity & Inclusionを「価値創造、イノベーション、競争力の源泉」と位置づけており、その推進を妨げるあらゆるバリアを撤廃し、多様な人材の「知」のミックスを活かして、ビジョンの実現を追求します。

 

中期経営計画「SHIFT 2023」においては、以下4つの方針を掲げ、各施策を推進してきました。

・「グローバル人材マネジメントポリシー」を具現化する人材マネジメント改革

・Diversity, Equity & Inclusionの推進

・グローバル適所適材の推進

・健康経営と働き方改革

 

<「グローバル人材マネジメントポリシー」を具現化する人材マネジメント改革>

当社において2021年度に導入した新人事制度を軸に、人材の確保・育成、配置・登用等の各局面で個々人が最大限に力を発揮できる環境整備に取組み、管理職層には職務等級制度を導入し、キャリア採用の拡充や海外拠点における幹部ポジションへの現地採用社員の積極登用を含め、個々人の属性に捉われず、専門性やスキルを重視した、ベストタレントの最適配置を通じた組織パフォーマンスの最大化を目指しております。なお、重要な経営資本である人材の育成に関しては、「グローバル人材マネジメントポリシー」において、「人材育成の精神を大切にし、アンテナ高く学び続けながら、主体的に成長していく個人をサポートする」と掲げているとおり、年齢・ポジションに関わらず学び続けることを大切にし、多様な分野で活躍する個々人が、それぞれのグローバルフィールドで必要とされる知識・スキルを主体的に学べる環境を構築しております。具体的には、当社においては、それぞれのプロフェッショナリズムを徹底的に高め、発揮するための「キャリア開発研修」や、組織と個人の成長につなげていくために、部下一人ひとりと向き合い、動機付け、多様多彩な人材を束ねる「ピープルマネジメント力」を強化する研修を実施しております。さらには、事業経営に必要な知識・スキルを習得する機会として、長期・選抜プログラムを継続実施しており、多くの人材が当社グループの価値向上に向けて、それぞれのフィールドで活躍できるよう、人材育成の強化に努めております。

 

<Diversity, Equity & Inclusionの推進>

当社は、Diversity, Equity & Inclusionを「価値創造、イノベーション、競争力の源泉」と位置づけ、国籍、性別、年齢、性的指向、性自認など、属性や従来の価値観にとらわれず、多様な個々人がそれぞれの力を最大限に発揮し、新たな価値や革新を生み出し続ける環境づくりに取組み、競争優位性を持つための必要不可欠な経営戦略として推進しています。

Diversity, Equity & Inclusionを組織に定着させるための継続的な社内啓発の一環としては、2021年度から、Diversity, Equity & Inclusion関連プログラムを集中的に展開する期間(Diversity Weeks)を設け、経営陣によるメッセージ発信や各種研修、社員座談会、特例子会社とのコラボイベントやフェムテック展示会などを実施しております。なお、当社では、女性の活躍推進をDiversity, Equity & Inclusionの重要な柱と捉えております。ライフイベントとキャリア形成の両立支援の観点から、法定を上回る水準での各種制度の整備などの「ハード面」の取組に加え、長時間労働の是正や有給休暇取得の促進、社員の意識改革など、「ソフト面」の取組を同時に推進しています。このような取組が評価され、当社は、「プラチナくるみん」、2つ星の「えるぼし」企業、2023年度には「Nextなでしこ共働き・共育て支援企業」として認定されました。

(具体的な取組事例)

・子のみを帯同する海外駐在員への支援制度

・仕事と育児・介護の両立支援ハンドブック

・育児コンサルタントサービス、介護の専門家による個別相談会

・保育施設との提携

・アンコンシャスバイアス等に関する各種研修の実施

・LGBTQ+への取組(同性パートナーに福利厚生・人事制度を適用可、ユニバーサルトイレの設置等)

 

 

<健康経営と働き方改革>

社員一人ひとりが最大限に力を発揮するためには、心身の「健康」が最重要であり、これを基盤としてこそ、新たな価値創造を続けていくことができるという考えのもと、「イキイキワクワク健康経営宣言」を策定しております。

加えて、高い付加価値を生み出すアウトプット志向の働き方を実践していくため、テレワーク制度とコアタイムの無いスーパーフレックス制度を導入しており、多様な個々人が最大限の力を発揮するとともに組織としてのアウトプットを最大化できる働き方を追求しております。このような制度の定着と意識改革等における全社レベルの取組が評価され、当社は、2019年に総務省が選定する「テレワーク先駆者100選」、2020年には「厚生労働大臣表彰(輝くテレワーク賞)」に選出されました。

2022年度には、従業員意識調査(3年に一回)をエンゲージメントサーベイ(年一回)に置き換え、個と組織のつながりや社員の自発的貢献意欲を調査するとともに、社員による全社横断ワーキンググループを立ち上げ、改善が必要な分野の特定と対応に着手しております。

 

こうした取組によって、多様な人材の力を競争力の源泉として活かし、当社グループとして、新たな価値の創造に挑戦し、さらなる成長ならびに企業価値の向上を図っていきます。

 

 

③ リスク管理

当社グループが事業を展開する地域・分野及びビジネスモデルは劇的に多様化しており、環境は非連続かつ相当なスピードで変化しています。ビジネスを展開するにあたって、特定分野に高度な専門性及び経験を持った人材が必要となる可能性は常にあります。当社では、社内外のTop Tierプロフェッショナル人材を確保するために、通年採用、健康経営・働き方改革の推進、「Diversity, Equity & Inclusion」すなわち多様な価値観やアイデアを受け容れ、活かす文化・意識の醸成等、より魅力的な職場環境の整備に取組んでいます。

 

④ 指標及び目標

指標

目標

1. 社員エンゲージメント指数
及び 社員を活かす環境指数

前年度比向上

2. 女性管理職比率、女性部長級比率
及び 女性取締役・監査役比率

2030年度での達成目標>

女性管理職比率20以上

女性部長級比率10以上

女性取締役・監査役比率(※)30以上

 

(※)日本経済団体連合会が2021年3月に公表した「2030年30%へのチャレンジ」に賛同し、設定したもの。

 

(a) 社員エンゲージメント指数 及び 社員を活かす環境指数

上記の人材育成方針及び社内環境整備方針に基づき施策を実行することで、グローバル人材マネジメントポリシー に掲げる「目指す個の姿(Top Tier Professionalism)」「目指す組織の姿(Great Place to Work)」が実現するものと考えております。その過程で、エンゲージメントサーベイ(年一回)で計測する「社員エンゲージメント指数」「社員を活かす環境指数」が向上していくと考えており、当社における目標を上表のとおり設定しております。なお、エンゲージメントサーベイは、2022年度は当社のみで実施し、2023年度からは、当社の国内海外拠点を含めたグローバルベースで実施しました。当社のみの実績として、「社員エンゲージメント指数」「社員を活かす環境指数」ともに、2022年度比で向上しました。

 

 

(b) 女性管理職比率、女性部長級比率 及び 女性取締役・監査役比率

グローバルベースで様々な領域でプロフェッショナルとして活躍する女性を継続的に育成していくため、足下での状況を踏まえつつ、2030年度達成に向けた当社における目標を上表のとおり設定しております。実績は以下のとおりであります。

 

2023年4月時点

2024年4月時点

女性管理職比率

8.4%

9.6

女性部長級比率

1.4%

2.4

女性取締役・監査役比率

18.8%

18.8

 

 

 

3 【事業等のリスク】

当社の事業その他に関するリスクとして投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる事項には以下のようなものがあります。

なお、文中における将来に関する情報は、別段の記載がない限り、当連結会計年度末日(2024年3月31日)現在における当社の判断、目標、一定の前提または仮定に基づく予測等であり、多くの要因によって実現しない可能性があり、また、予測等に基づき策定した中期経営計画を修正する可能性や達成できない可能性もあります。

 

(1) 当社グループにおけるリスクマネジメントの基本方針・体制

当社においては、「リスク」を「あらかじめ予測し若しくは予測していない事態の発生により損失を被る可能性」及び「事業活動から得られるリターンが予想から外れる可能性」と定義し、以下3点をリスクマネジメントの目的としております。

 

① 「業績安定」
② 「体質強化」
③ 「信用維持」

 

当社は、営業活動を投資と商取引に大別の上、それぞれに固有のリスクファクター及び双方に共通するリスクファクターを特定し、その発生する蓋然性及び発生した時の影響を分析・評価しております。

 


 

 

(2) 事業投資に係るリスク

① 全般

当連結会計年度末現在、当社は633社の連結子会社及び251社の持分法適用会社を有しています。当社では連結子会社及び持分法適用会社への投資に関しては、技術革新等を含む事業環境の変化や、主要顧客の喪失、原料価格の上昇等により、計画した利益が獲得できず、投下資金の回収不能や撤退時における追加の資金負担といったリスクが考えられます。当社ではこれらリスクを管理するため、新規投資実行時及び実行後のモニタリングに大別して様々な制度を導入しています。

(a) 新規投資実行時

取り組みの初期段階から「投資テーマ」を明確にし、デューデリジェンスによって重点的に検証しています。加えて、当該事業リスクに応じた割引率を適用することにより、投資対象の「適正な価格」を算定するとともに、2021年には、過去の大型投資案件の計画未達・損失発生等の要因を網羅的に分析し、新たに投資規範を設定、新規投資検討の際には常にこの規範に照らして議論するなど、定性・定量の両面から評価を実施しています。また、投資案件の意思決定に際しては、案件の規模や重要性に応じて、検討・実行の各段階において、各事業部門の投融資委員会乃至全社投融資委員会を開催し、個別案件の戦略上の位置付け、案件選定の背景・理由、並びに投資後のバリューアップ施策の前提とその確からしさなど、投資の成否を左右する諸条件について早い段階から課題の特定、議論の深掘りを行うとともに、その対応策も踏まえた案件実行可否につき審議しています。

 

(b) 投資実行後

投資後の支援にあたっては、投資の意思決定時点において課題を明確にし、投資後もスムーズに課題解決に取り組める体制を整えています。特に重要な案件については、統合支援機能として「100日プラン(注)実行支援制度」があるほか、全社投融資委員会のもとで業績改善策の立案や実行をフォローする「重点フォローアップ制度」を設けています。更には、投資ポートフォリオの質の向上を目的としたモニタリング制度「フルポテンシャルプラン」を2018年度に導入しました。資本コスト(WACC)を上回るリターン(ROIC)を達成しているかどうかを測る、ROIC/WACCなど複数の定量指標に基づくスコアリングによって、投資先を「健全先」、「健全化ロードマップ策定先」、「撤退候補先」の三つに分類、「健全化ロードマップ策定先」、「撤退候補先」を対象として、四半期ごとに業績やロードマップの進捗状況乃至撤退の取り組み状況をモニタリングしています。また、ロードマップの実現確度が十分ではないと判断される場合は、ロードマップの見直し、それでも健全化が困難と判断される場合は、撤退方針先に変更するなど、明確な時間軸に基づく投資ポートフォリオのバリューアップ施策を通じ、高い収益性と強い下方耐性を有する事業ポートフォリオの構築に取り組んでいます。

また、ガバナンスの高度化を目的とし、投資先の事業に則したKAI、KPI設定を通じた経営の可視化、最適なマネジメントチームの組成、及び事業価値向上を促進するマネジメントの報酬設計等を通じ、事業会社における業務品質の向上を図っています。

さらに、価値向上実現へのコミットメントを高めるべく、投資パフォーマンスに連動した報酬制度を導入しました。

(注) 投資実行直後の早い段階で、投資先のマネジメントと目標とすべき経営指標や財務指標を含めた事業価値最大化を図る中期計画の策定に向けた経営インフラ構築・整備活動。

 


 

② 鉱物資源、ガス開発・生産事業に係るリスク

当社は、鉱物資源、ガス等の開発事業を各国で展開しており、以下に例示するようなリスクを負っています。これらが顕在化することにより、当社の業績及び財政状態が悪影響を受ける可能性があることから、当社では、マーケット情報の収集や分析に取り組み、当該事業のプロジェクトマネジメントの強化に努めています。

(a) 開発事業において、計画を超えた開発費用の増加や工期の遅延が起こること

(b) 事業参画前には専門家を起用して十分な地質調査を実施しますが、それにもかかわらず事業開始後に埋蔵量が変動すること

(c) 操業にかかわる技術的問題等に起因して、生産量が計画を下回り、あるいは生産コストが上昇すること

(d) 許認可の取得・更新の遅延、税制の変更、事業資産の接収や権利の侵害等、事業所在国の政府にかかわる事由に起因して計画が実現しないこと

 

 

(3) タイプ別リスク

① 信用リスク

当社は取引先に対し、売掛債権、前渡金、貸付金、保証その他の形で信用供与を行っており、信用リスクを負っています。また、当社は、主としてヘッジを目的とするデリバティブ取引を活用しており、当該取引にも契約相手先の信用リスクが存在します。

当社では、内部格付制度に基づく取引先等の信用力チェックや担保・保証等の取得、取引先の分散等により、かかるリスクの管理に努めており、また、上記の信用リスクが顕在化した場合に備えるため、取引先の信用力、担保価値その他一定の前提、見積り及び評価に基づいて貸倒引当金を設定していますが、予期せぬ要因等によりこれら取引先、契約相手先が、支払不能、契約不履行等に陥る場合、当社の業績及び財政状態が悪影響を受ける可能性があります。

 

② 商品市況の変動に係るリスク

当社グループは金属・エネルギーを始めとする各種商品の売買を行っており、当該商品の価格変動リスクを負っています。

当社は、商品ごとの枠設定による管理体制の構築や、ヘッジ取引等によりリスクの軽減に努めており、主要な商品については、ポジション枠及び損失限度枠の設定、ミドル・バックオフィスの設置により職務分離を確保しています。

また、当社グループは直接・間接的に鉱物・原油及びガス資源権益を保有しており、生産物の価格変動リスクを負っています。これら事業については、ヘッジポリシーを定め、ヘッジが必要と判断される場合は、デリバティブ取引等を用いてヘッジを実施することにより業績の下振れリスクを抑制しています。

 

③ カントリーリスク

当社は、日本を含む60ヶ国以上において商取引及び事業活動を行っており、関係各国の政治・経済・社会情勢等の事業環境の変化に起因して生じる事業遅延・停止等が当社の業績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。

当社は、案件ごとに保険を付保するなどのリスク回避策を講じるとともに、社内国格付に応じたエクスポージャーの上限目安額を設定し、国ごとのエクスポージャー管理を実施することにより事業ポートフォリオが適切な分散を保つよう管理しています。

ロシア及びウクライナ関連ビジネスにおいては、住友商事グループの役職員とその家族、取引先をはじめとする、すべてのステークホルダーの安心と安全を最優先事項として掲げています。また、取引先を含む事業パートナーやステークホルダーとの協議を踏まえ、社長を議長とする経営会議の管理の下で、住友商事の危機対応方針に即し対処しています。

 

④ 金利・為替の変動に係るリスク

当社は、事業資金を金融機関からの借入または社債・コマーシャルペーパーの発行等により調達しています。また、当社は取引先に対し、売掛債権、前渡金、貸付金、保証その他の形で信用を供与する場合があります。これらの取引により生ずる収益・費用及び資産・負債の公正価値は、金利変動の影響を受ける場合があります。

また、当社が行う外貨建投資並びに外貨建取引により生ずる収益・費用及び外貨建債権・債務の円貨換算額、並びに外貨建で作成されている海外連結対象会社の財務諸表の円貨換算額は、外国為替レートの変動の影響を受ける場合があります。

当社ではこれら金利変動、外国為替レートの変動によるリスクを回避するため、デリバティブ等を活用していますが、これらによりリスクが十分に回避できる保証はありません。

 

⑤ 株式市場の変動に係るリスク

当社が保有する市場性のある有価証券は、日本企業が発行する株式への投資が大きな割合を占めており、日本の株式市場が今後低迷した場合には、有価証券の公正価値の変動によって、当社の業績及び財政状態が悪影響を受ける可能性があります。また、当社の企業年金では、年金資産の一部を市場性のある株式により運用しています。よって、株価の下落は年金資産を目減りさせるリスクがあります。

 

⑥ 不動産等、固定資産の価値下落に係るリスク

当社は、日本及び海外において、オフィスビルや商業用施設、居住用不動産の開発、賃貸、保守・管理事業等の不動産事業を行っており、不動産市況が悪化した場合には、業績及び財政状態が悪影響を受ける可能性があります。

また、地価及び賃貸価格の下落が生じた場合には、当社が保有する賃貸用の土地及び建物、並びに開発用の土地及びその他の不動産の評価額について、減損処理を行う必要が生ずる可能性があります。

不動産のほか、当社が所有する他の固定資産についても減損のリスクに晒されており、当社の業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

⑦ 情報セキュリティに係るリスク

当社は、情報セキュリティの重要性を認識しており、関連規程の整備や役職員への啓発、情報セキュリティを確保するための技術的な対策等を施し、情報資産を管理することに努めています。また、テレワーク環境等、情報システム利用環境の多様化に応じた情報セキュリティの強化も図っています。さらに、当社は事業活動の多くを情報システムの機能に依存していることから、情報システム運営の上でも安全性の確保に努めています。しかしながら、サイバー攻撃が年々巧妙化する中、予期せぬ外部からのサイバー攻撃や不正アクセス、ウィルスやマルウェアの侵入、情報システムの機能不全等により、情報の漏洩・滅失・毀損、事業活動の一時的停止等、当社の事業活動が重大な悪影響を受ける可能性があります。

これらのリスクに適切に対応するため、チーフ・インフォメーション・オフィサーを委員長とするIT戦略委員会を中心に、2017年10月制定の「情報セキュリティ基本方針」に沿って、情報資産の適切な管理に努めています。また、外部からのサイバー攻撃や不正アクセス等に対してはシステム上の対策に加え、外部専門機関とも連携の上、最新情報を入手し、適切かつ迅速に対応できるように努めています。

 

⑧ リーガル・コンプライアンスリスク

当社は、日本及び海外において、多種多様な事業活動を手掛けているため、広範な法律及び規制に服しています。これらの法律及び規制は、事業及び投資認可、輸出入活動(国家安全保障上の規制を含む)、競争法制、汚職・腐敗行為防止、為替管理、金融商品取引、個人情報・データ保護、人権保護、環境保護、消費者保護、関税及びその他の租税等の分野にわたることに加え、国によっては追加的または将来制定され得る関係の法律及び規制に新たに服する可能性があります。また、新興国においては、法令の欠如、法令の予期し得ない変更、並びに司法機関及び行政機関等による規制実務の変更によって、法令遵守のための当社における負担がより増加する可能性があります。

これらの法律及び規制の遵守を徹底するため、当社は、コンプライアンスに関する最高責任者としてチーフ・コンプライアンス・オフィサーを置いており、チーフ・コンプライアンス・オフィサーは、コンプライアンス施策の企画、立案及びその実施につきコンプライアンス委員会から助言を受け、コンプライアンスに関する適切な施策を策定・実行しています。また、コンプライアンスの基本方針を住友商事グループ全体に明確に示すために、当社は、「住友商事グループ・コンプライアンスポリシー」を制定し、セミナー等の継続的な啓発活動を通じて、グループ全体への「コンプライアンス最優先」及び、万一、コンプライアンス上の問題が発生したときは直ちに上司あるいは関係部署に対して事態を報告し、最善の措置をとること、すなわち「即一報」の意識の浸透・徹底を図っており、コンプライアンス問題の発生防止に努めています。

しかしながら、このような取り組みをもってしても、当社または当社グループに属する役職員が、現在または将来の法律及び規制を遵守できなかった場合には、罰金等のペナルティの対象になるとともに、事業が制約され、信用の低下を被る可能性があるため、当社の事業展開、業績、財政状態及び社会的信用に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 

⑨ 訴訟等に関するリスク

当社は、日本及び海外において訴訟等の係争案件に関わっています。また、事業遂行上、偶発的に発生する訴訟等やそれに至らない請求等を受ける可能性があります。

訴訟等に固有の不確実性を考慮すると、現時点において、当社の関わる訴訟等の結果を予測することはできません。また、これらの訴訟等で当社が勝訴するという保証や、将来において当社の社会的信用や当社の業績及び財務状況がそれらの訴訟等による悪影響を受けないという保証はありません。

 

⑩ 社会・環境リスク

当社グループは、世界中の異なる国・地域で、複数の分野に跨り事業を展開しており、その事業活動は、地球環境や地域社会、顧客、役職員等のステークホルダーにさまざまな影響をもたらします。そのため、当社グループの事業活動が、人々の人権や地球環境に負の影響を与えた場合には、その影響の解消・緩和や損害の賠償等による追加的費用の発生や事業の停止等によって、財政状態の悪化、信用の毀損等の影響を受ける可能性があります。

当社は、社会・環境に配慮し、社会とともに持続的に成長することを目指し、「環境方針」「人権方針」「サプライチェーンCSR行動指針」を制定して、社会・環境問題に関する考え方を明確にしています。持続可能な調達を要する主要な天然資源についても、個別の方針を制定して取り組んでいます。事業活動が与える社会・環境面への影響を適切に管理するために、新規投資の際には、各事業の社会・環境への関わりや影響、それらの管理の状況を確認し、投資実行後も、定期的なモニタリングを行うなど、社会・環境リスク管理の全社的なフレームワークを整えています。

世界的な重要課題である気候変動に関しては、事業を通じて、社会の持続可能な発展に必要な気候変動問題の解決、カーボンニュートラルな社会の実現に貢献する方針を掲げ、発電事業における再生可能エネルギーへのシフトなど、より環境負荷の低い事業ポートフォリオへの継続的なシフト等の取り組みを進めています。

また、人権の尊重に関しては、当社グループの全事業とサプライチェーンにおいて人権が尊重されるよう努めることを目標に掲げ、当社の全事業・サプライチェーンを対象にした人権デューデリジェンスの取り組みを継続しています。この取り組みを通じて人権リスクを特定した上で、その低減・防止に努めます。

 

⑪ 自然災害等に関するリスク

当社が事業活動を展開する国や地域において地震、津波、大雨、洪水等の自然災害、または新型インフルエンザ等の感染症が発生した場合に、当社の事業に悪影響を与える可能性があります。当社では地震災害等に備え、災害対策マニュアルや事業継続計画(BCP)の作成、社員の安否確認システムの構築、災害用物資の備蓄、防災訓練、建物・システムの耐震化及びデータのバック・アップ等の対策を講じていますが、これによって災害による被害を十分に回避できる保証はありません。

 

⑫ オペレーショナルリスク

当社は、事業部門、国内外の地域組織及び全世界のグループ会社を通じて、幅広い分野でビジネスを展開しており、それぞれの組織において内部統制を適切に構築する必要があります。しかしながら、当社が内部統制を適切に構築したとしても、役職員の事務処理ミスや不正行為等のオペレーショナルリスクを、完全に防止することができる保証はありません。事務処理ミスや不正行為が発生した場合、当社は財政状態の悪化、信用の毀損等の悪影響を受ける可能性があります。これらのリスクをできる限り抑えるために、内部統制に関する基本規程を定め、適正な内部統制の構築・運用・評価・改善を通じて、グループガバナンスの向上及びグループ全体の業務品質向上に取り組んでいます。

 

 

⑬ 資金の流動性に関するリスク

当社は、事業資金を金融機関からの借入または社債・コマーシャルペーパーの発行等により調達しています。金融市場の混乱や、金融機関が貸出を圧縮した場合、また、格付会社による当社の信用格付の大幅な引下げ等の事態が生じた場合、当社は、必要な資金を必要な時期に、希望する条件で調達できない等、資金調達が制約されるとともに、調達コストが増加する可能性があり、当社の業績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。

そのため、現預金、コミットメントライン等の活用により十分な流動性を確保するとともに、調達先の分散や調達手段の多様化に努めており、これにより、財務健全性の維持・向上を図ります。

 

⑭ 繰延税金資産に関するリスク

当社及び連結子会社は繰延税金資産の回収可能性の評価を、有税償却に関する無税化の実現可能性やその時期、当社及び連結子会社の課税所得の予想など、現状入手可能なすべての将来情報を用いて判断しています。当社及び連結子会社は、回収可能性を見込めると判断した部分について繰延税金資産を計上していますが、将来における課税所得の見積もりの変更や法定税率の変更を含む税制改正等により回収可能額が変動する可能性があります。

また、経営環境悪化に伴う事業計画の目標未達等により、将来の課税所得の見込みが、現在のタックス・プランニング上の見込みよりも低下した場合、繰延税金資産の回収可能額が減少し、繰延税金資産を減額することになり、当社及び連結子会社の業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

⑮ 人的資本に関するリスク

当社グループが事業を展開する地域・分野及びビジネスモデルは劇的に多様化しており、環境は非連続かつ相当なスピードで変化しています。ビジネスを展開するにあたって、特定分野に高度な専門性及び経験を持った人材が必要となる可能性は常にあります。当社では、社内外のTop Tierプロフェッショナル人材を確保するために、通年採用、健康経営・働き方改革の推進、「Diversity, Equity & Inclusion」すなわち多様な価値観やアイデアを受け容れ、活かす文化・意識の醸成等、より魅力的な職場環境の整備に取り組んでいます。

しかしながら、ビジネスモデルの急激な変化により特定の専門人材に対する需要が急増する、あるいは当該専門人材に対する労働市場が成熟しておらず、加えて当社の人材確保・育成の取り組みをもっても十分な対応が想定通りに進まない場合、当社の事業が悪影響を受ける可能性があります。

 

(4) 集中リスク

当社グループの商取引及び投資活動において、特定の国、分野、または取引先に対するエクスポージャーが集中するリスクがあります。事業環境の悪化等により当社が期待するリターンが得られない、もしくは損失を被る場合は、当社の業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

当社は、特定の国・地域に対するリスクエクスポージャーの過度な集中を防ぐために、カントリーリスク管理制度を設けています。また、特定分野への過度な集中を避け、バランスの取れた事業ポートフォリオを構築するために、戦略会議や大型・重要案件の審議機関である投融資委員会において、事業部門やビジネスラインへ配分する投下資本額について十分なディスカッションを行っています。また、当社グループとして成約残及び債権残が高額になる取引先については定期的に状況をモニターしています。具体的な取り組みは以下のとおりです。

・当社が抱えるエクスポージャーが大きい特定の国については、前述のカントリーリスク管理制度に則りきめ細かく管理しています。

・資源・エネルギー上流案件については、定期的なプロジェクト価値のモニタリングを実施しています。

・定期的に大口債権残・成約残のある先との取引状況や当該取引先の経営状況等の情報を把握し、管理しています。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 

 当期よりIAS第12号「法人所得税」 (2021年5月改訂)を適用しており、前期については遡及適用後の数値を表示しております。会計方針の変更の詳細は、「第5 経理の状況 連結財務諸表注記 2 作成の基礎」に記載のとおりであります。

 

(1) 企業環境

当期の世界経済は、総じて緩やかな持ち直しの動きが続きましたが、経済成長のペースは国や地域によってばらつきが見られました。米国は、金融引締め政策が採られたにもかかわらず好調な内需に支えられ、雇用や物価が安定し、経済活動は概ね堅調に推移しました。一方、欧州では物価の騰勢は沈静化したものの、景気は減速局面を迎えました。中国は、不動産問題が依然として景気回復の重しとなり、特に物価は欧米などとは対照的に下落し、デフレが警戒される状況に転じました。

国際情勢は、ロシア・ウクライナ情勢の解決の兆しが見えない状況下で発生したイスラエルとハマスの戦闘により、一段と不確実性が高まりました。この影響で紅海付近を航行する船舶が過激派の攻撃に遭うなど航行の安全が脅かされ、折からのパナマ運河の通行制限と相俟って、海上輸送の一部が大幅な迂回を余儀なくされるなど、混乱が続いています。

国際商品市況は、エネルギー関連商品では、世界的な暖冬傾向により需給が緩和したことで天然ガスの価格が低位に安定しました。石油では、需要の回復に遅れが見られ、産油国による協調減産の効果が限定的なものに留まったため、価格は安定的に推移しました。一方、中国経済の回復の遅れなどの影響を受け、金属では一服感が強まりました。

国内経済は、一進一退の動きとなりました。緩やかな景気回復が続いてきましたが物価上昇の影響で内需には弱含みの動きも見られました。また一部製造業での生産停止に加え、2024年1月に発生した能登半島地震は経済活動の下押し要因となりました。他方、世界の潮流となっているGX(グリーントランスフォーメーション)実現に向けて、国内でも法整備や財政政策、また資金調達に向けた移行債の発行など環境整備が進展したため、企業の設備投資や研究開発投資を中心とした中長期的な取組が活発になり、経済活動の下支えとなりました。

為替レートは我が国の金融政策が総じて緩和的であったことや米国金融政策の緩和期待が後退したことから再び円安圧力が強まり1ドル=150円を超えて約34年振りとなる円安になりました。 また、緩和的な金融政策や好調な企業業績を背景に平均株価も最高値を更新し、4万円を超える水準まで上昇しました。

 

(2) 業績

 

(単位:億円)

前期

(自2022年4月1日

至2023年3月31日)

当期

(自2023年4月1日

至2024年3月31日)

 

増減額

主な増減要因

収益

68,179

69,103

 

+924

 

売上総利益

12,348

13,425

 

+1,077

・自動車流通販売事業 好調

・建設機械事業 北米を中心に好調

・国内電力小売事業 契約更改及び

  電力調達価格の安定的推移により好調

・資源・エネルギー価格下落

・ボリビア銀・亜鉛・鉛事業の売却

 (2023年2月)による影響

販売費及び一般管理費

△8,117

△9,276

 

△1,159

・人件費上昇の影響

固定資産損益

133

△307

 

△440

・前期 不動産事業大口案件の引渡しあり

・北欧駐車場事業 減損損失

その他の損益

△32

△300

 

△268

 

利息収支

△115

△163

 

△49

 

受取配当金

201

137

 

△64

 

有価証券損益

291

37

 

△253

・前期 北海油田英領事業売却益あり

持分法による投資損益

2,524

1,724

 

△800

・マダガスカルニッケル事業 減損損失

・ミャンマー通信事業 貸倒引当金計上

・資源価格下落の影響

・航空機リース事業 保険金受領

税引前利益

7,231

5,276

 

△1,955

 

法人所得税費用

△1,239

△1,015

 

+223

 

当期利益

5,992

4,261

 

△1,731

 

当期利益

(親会社の所有者に帰属)

5,653

3,864

 

△1,790

 

 

 

(注)1 固定資産損益=固定資産評価損益及び固定資産売却損益の合計

    2 利息収支=受取利息及び支払利息の合計

 

 

 

(3) 事業セグメント

当社は、6つの業種に基づくセグメント(事業部門)により事業活動を行っております。

6つのセグメントは金属事業部門、輸送機・建機事業部門、インフラ事業部門、メディア・デジタル事業部門、生活・不動産事業部門、資源・化学品事業部門から構成されております。2023年4月1日付で、メディア・デジタル事業部門傘下にあったDX推進支援機能を全社組織傘下の組織に移管しました。これに伴い、前期のセグメント情報は組替えております。

前期及び当期の売上総利益、当期利益(親会社の所有者に帰属)の事業セグメント別実績は以下のとおりであります。

 

事業セグメント別売上総利益の内訳

 

 

前期

(自2022年4月1日

2023年3月31日)

(億円)

当期

(自2023年4月1日

2024年3月31日)

(億円)

増減額

(億円)

増減率

(%)

金属

2,204

1,914

△291

△13.2

輸送機・建機

2,610

3,408

+798

30.6

インフラ

598

1,207

+609

101.8

メディア・デジタル

1,239

1,336

+97

7.8

生活・不動産

2,428

2,955

+527

21.7

資源・化学品

3,297

2,677

△620

△18.8

12,376

13,496

+1,120

9.0

消去又は全社

△29

△71

△43

△149.3

連結

12,348

13,425

+1,077

8.7

 

 

 

 

事業セグメント別当期利益(親会社の所有者に帰属)の内訳

 

 

前期

(自2022年4月1日

2023年3月31日)

(億円)

当期

(自2023年4月1日

2024年3月31日)

(億円)

増減額

(億円)

増減率

(%)

主な増減要因

金属

1,104

692

△412

△37.3

・海外スチールサービスセンター事業 前期

北米好調の反動あり

・鋼管事業 前期 市況好調の反動あり

・前期 鋼管事業 一過性利益あり

輸送機・建機

920

1,480

+560

60.9

・自動車流通販売事業 好調

・建設機械事業 好調

・リース事業 堅調

・当期 航空機リース事業及び

米国タイヤ販売事業における一過性利益

・当期 北欧駐車場事業 減損損失

インフラ

208

487

+279

134.1

・国内電力小売事業 契約更改及び

電力調達価格の安定的推移により好調

・当期 バーレーン発電・造水事業及び

英国水事業における一過性損失

メディア・

デジタル

136

△6

△142

・国内主要事業 堅調

・エチオピア通信事業 立ち上げコスト増

・当期 メディア関連 一過性利益

・当期 ミャンマー通信事業 貸倒引当金計上

生活・不動産

590

485

△105

△17.7

・不動産事業 前期大口案件の引渡しあり

・欧米州青果事業 メロン事業は不調も、

バナナ事業好調

・当期 グローバル青果事業 減損損失

資源・化学品

2,669

524

△2,145

△80.4

・資源・エネルギー価格下落

・資源・エネルギートレード 前期好調の反動

・アグリ事業 前期高需要の反動及び

天候不順による販売減

・当期 マダガスカルニッケル事業 減損損失 等

5,626

3,662

△1,964

△34.9

 

消去又は全社

27

202

+175

646.2

・金利上昇に伴う営業部門からの社内受取金利

増加

連結

5,653

3,864

△1,790

△31.7

 

 

 

 

 

(4) 仕入、成約及び販売の実績

① 仕入の状況

  仕入は販売と概ね連動しているため、記載は省略しております。

 

② 成約の状況

  成約は販売と概ね連動しているため、記載は省略しております。

 

③ 販売の状況

当期において、特記事項はありません。上記「(2) 業績」及び「第5 経理の状況 連結財務諸表注記 4 セグメント情報」をご参照ください。

 

(5) 連結包括利益計算書における主要な項目

以下は、連結包括利益計算書における主要な項目についての説明であります。

 

収益

当社では、収益を、商品販売に係る収益とサービス及びその他の販売に係る収益に区分して表示しております。

商品販売に係る収益としては、以下の取引に関連して発生する収益が含まれております。

・卸売、小売、製造・加工を通じた商品の販売

・不動産の開発販売

・長期請負工事契約に係る収益

 

サービス及びその他の販売に係る収益としては、以下の取引に関連して発生する収益が含まれております。

・ソフトウェアの開発に関連するサービス

・賃貸用不動産、船舶などの貸付金、ファイナンス・リース及びオペレーティング・リース

 

売上総利益

売上総利益は、以下により構成されております。

・当社が主たる契約当事者として関与する取引における総利益

・当社が代理人等として関与する取引における手数料

収益が総額で計上される場合、販売に直接寄与する第三者への費用または手数料は、商品販売に係る原価として計上され、売上総利益は、収益の総額から販売に係る原価を差引いた金額となります。当社はサービス及びその他の販売に係る収益の一部として手数料を計上しますが、この手数料は純額表示されるため、結果としてサービス及びその他の販売が売上総利益に占める比率は、収益合計に占める比率よりも大きくなっております。当期、サービス及びその他の販売が収益合計に占める比率は9.9%ですが、売上総利益に占める比率は25.9%となっております。

 

固定資産評価損益

棚卸資産、繰延税金資産及び生物資産を除く当社の非金融資産の帳簿価額については、期末日ごとに減損の兆候の有無を判断しております。減損の兆候が存在する場合は、当該資産の回収可能価額を見積り、のれん及び耐用年数を確定できない、または未だ使用可能ではない無形資産については、回収可能価額を毎年同じ時期に見積った上で、資産または資金生成単位の帳簿価額が回収可能価額を超過する場合には、減損損失を認識しております。また、減損損失の戻し入れを行った場合は当該戻し入れ金額も含めております。

 

固定資産売却損益

当社は、資産のポートフォリオの戦略的かつ積極的な入替えを図っております。その結果、不動産の含み益を実現するために売却する場合や、価格の下落した不動産を売却する場合、売却損益を計上することになります。

 

 

受取配当金

受取配当金には、当社の子会社及び持分法適用会社以外で、当社が株式を保有している会社からの配当金が計上されております。

 

有価証券損益

当社は事業活動の一環として相応の規模の投資を行っております。これらの投資対象のうち、公正価値で測定し、その変動を当期利益で認識する金融資産(以下、FVTPLの金融資産)は公正価値で当初認識しております。当初認識後は公正価値の変動を当期利益で認識しております。また、償却原価で測定される金融資産は、公正価値(直接帰属する取引費用も含む)で当初認識しております。当初認識後、償却原価で測定される金融資産の帳簿価額については実効金利法を用いて算定し、帳簿価額の変動について、必要な場合には減損損失を認識しております。償却原価で測定される金融資産並びに子会社及び持分法適用会社への投資等を売却する際に、売却損益を認識しております。

 

持分法による投資損益

投資戦略やビジネスチャンスの拡大に関連して、当社は、各セグメントで状況に応じ、新規または既存の会社の買収や出資、他の企業とのジョイント・ベンチャーの結成、または同業他社とのビジネス・アライアンスの組成を行っております。一般的に、当社は、出資比率が20%以上50%以下である会社の投資に対し、その持分利益や損失を計上しております。

 

FVTOCIの金融資産

公正価値で測定し、その変動をその他の包括利益で認識する金融資産(以下、FVTOCIの金融資産)は、公正価値(直接帰属する取引費用も含む)で当初認識しております。当初認識後は公正価値で測定し、公正価値の変動をその他の包括利益で認識しております。

 

確定給付制度の再測定

当社は、確定給付負債(資産)の純額の再測定を、その他の包括利益で認識しております。

 

在外営業活動体の換算差額

在外営業活動体の資産・負債(取得により発生したのれん及び公正価値の調整を含む)については期末日の為替レート、収益及び費用については期中平均レートを用いて日本円に換算しており、在外営業活動体の財務諸表の換算から生じる為替換算差額はその他の包括利益で認識しております。当社のIFRS移行日以降、当該差額はその他の資本の構成要素である「在外営業活動体の換算差額」として表示しております。

 

キャッシュ・フロー・ヘッジ

デリバティブを、認識済み資産・負債、または当期利益に影響を与え得る発生可能性の非常に高い予定取引に関連する特定のリスクに起因するキャッシュ・フローの変動をヘッジするためのヘッジ手段として指定した場合、デリバティブの公正価値の変動のうちヘッジ有効部分は、その他の包括利益で認識しております。

 

(6) 重要性がある会計方針及び見積り

IFRSに基づく連結財務諸表の作成にあたり、期末時点の資産・負債の計上や偶発資産及び偶発債務の開示、並びに期中の収益費用の適正な計上を行うため、マネジメントによる見積りや前提が必要とされます。当社は、過去の実績、または、各状況下で最も合理的と判断される前提に基づき、一貫した見積りを実施しております。資産・負債及び収益費用を計上する上で客観的な判断材料が十分でない場合は、このような見積りが当社における判断の基礎となっております。従って、異なる前提条件の下においては、結果が異なる場合があります。以下、当社の財政状態や経営成績にとって重要であり、かつ相当程度の経営判断や見積りを必要とする重要性がある会計方針につき説明します。なお、当社の主な会計方針は、「第5 経理の状況 連結財務諸表注記 3 重要性がある会計方針」を参照願います。

 

 

金融資産の減損

当社は、償却原価で測定する金融資産、リース債権、契約資産及びその他の包括利益を通じて公正価値で測定する負債性金融資産に係る減損については、当該金融資産に係る予想信用損失に対して損失評価引当金を認識しております。

当社は、信用リスクの変動及び予想信用損失の算定にあたっては、主に当社独自の信用格付けである Sumisho Credit Rating(SCR)を用いております。これには、債務者の過去の貸倒実績、現在の財務状態及び合理的に利用可能な将来予測情報等が含まれております。

 

公正価値で測定する金融資産

当社は、有価証券やその他の投資等の金融資産を保有しており、FVTOCIの金融資産と、FVTPLの金融資産とに分類しております。当社は、投資先企業との取引関係の維持・強化による中長期的な収益の拡大などを目的として保有しており、公正価値の変動を業績評価指標としていない金融資産をFVTOCIの金融資産として分類し、公正価値の変動を獲得するために保有し、業績評価指標としている金融資産をFVTPLの金融資産として分類しております。当該金融資産の公正価値は、市場価格、割引将来キャッシュ・フローや純資産に基づく評価モデル等の評価方法により算定しております。

 

非流動資産の回収可能性

当社は、様々な非流動資産を保有しており、持分法で会計処理されている投資や無形資産などの非流動資産について、帳簿価額の回収可能性を損なうと考えられる企業環境の変化や経済事象が発生した場合には、減損テストを行っております。実際に減損の兆候があるかどうかの判定に際しては、様々な見積りや前提が必要となります。例えば、キャッシュ・フローが直接的に減損の懸念がある資産に関係して発生しているのかどうか、資産の残存耐用年数がキャッシュ・フローを生み出す期間として適切かどうか、生み出すキャッシュ・フローの額が適切かどうか、及び、残存価額が適切かどうか、などを考慮しなければなりません。また、のれん及び耐用年数を確定できない無形資産について、少なくとも年1回、更に減損の発生が予測される場合は、その都度、減損テストを実施しております。減損テスト時には、資産の回収可能価額を見積っております。資産または資金生成単位の回収可能価額は使用価値と処分費用控除後の公正価値のうち、いずれか高い金額としております。使用価値の算定において、見積将来キャッシュ・フローは、貨幣の時間的価値及び当該資産の固有のリスクを反映した税引前の割引率を用いて現在価値に割引いております。当社では、過去の経験や社内の事業計画、及び適切な割引率を基礎として将来キャッシュ・フローを見積っております。これらの見積りは、事業戦略の変更や、市場環境の変化により、重要な影響を受ける可能性があります。なお、非流動資産の回収可能性に関連する会計上の見積りのうち、重要なものは以下になります。詳細については、「第5 経理の状況 連結財務諸表注記 11 持分法適用会社に対する投資、注記 13 無形資産」を参照願います。

 

① マダガスカルニッケル事業

Ambatovy Minerals S.A.及びDynatec Madagascar S.A.(以下、プロジェクト会社)の固定資産に減損の兆候が認められ、かつ、減損テストの結果、回収可能価額が固定資産の帳簿価額を下回った場合には、当社において持分相当額を持分法投資損失として認識いたします。認識した持分法投資損失がプロジェクト会社の株式に対する持分法投資額を超える場合、実質的に純投資と考えられる貸付金等の長期持分に対して配分します。プロジェクト会社における固定資産の回収可能価額を算定する場合は、使用価値と処分コスト控除後の公正価値のいずれか高い方が採用され、その見積りには、プロジェクト会社の生産数量、将来の資源価格(主にニッケル及びコバルト等の中・長期予想価格)、可採埋蔵量、割引率といった重要な仮定が使用されております。

当期において、プラント設備の不具合等、足元の操業状況を踏まえて生産量の見通しを下方修正し、今般事業計画の見直しを実施しました。プロジェクト会社が保有する固定資産につき見直し後の事業計画に基づいて回収可能価額まで減損損失を認識した結果、プロジェクト会社の株式に対する持分法投資額の全額及び長期持分として保有する貸付金の全額の合計額につき、75,462百万円の減損損失を計上しております。

なお、本事業においては上記の減損損失に加えて、「第5 経理の状況 連結財務諸表注記 27 金融商品及び関連する開示」に記載の通り、当社の100%子会社であるSummit Ambatovy Mineral Resources Investment B.V.がプロジェクト会社に対して保有する貸付金への引当13,258百万円を計上しております。

 

② 欧米州青果事業

欧米州青果事業において、のれん及び耐用年数を確定できない無形資産の減損テストは、複数の資金生成単位グループに分けて実施しており、回収可能価額は使用価値に基づき算定しております。使用価値は、取得価額の前提とした事業計画に対して、直近の事業環境を反映させた将来キャッシュ・フローの現在価値を用いて、独立した鑑定人の支援を受け、評価しております。使用価値に大きく影響を及ぼす仮定は、バナナ&パイン事業における販売数量・マージン・割引率等であります。

 

③ 北欧駐車場事業

北欧駐車場事業において、のれん及び耐用年数を確定できない無形資産の減損テストは、事業全体を一つの資金生成単位グループとして実施しており、回収可能価額は使用価値に基づき算定しております。使用価値の見積りにおいては、取得価額の前提とした事業計画に対して、直近の事業環境を反映させた将来キャッシュ・フローの現在価値を用いて、独立した鑑定人の支援を受け、評価しております。使用価値に大きく影響を及ぼす仮定は、駐車場事業の収益、割引率等であります。

当期において、新型コロナウイルスの流行を経た行動様式の変容や高水準のインフレ継続等に伴う事業環境の変化を踏まえ、事業計画を見直した結果、同事業に係るのれんにつき、12,249百万円の減損損失を計上しております。

 

繰延税金資産の回収可能性

当社は、繰延税金資産の全部または一部について、回収が不確実となった場合に、マネジメントの判断により、減額しております。繰延税金資産の回収可能性の評価にあたっては、繰延税金資産計上の根拠となっている将来の一時差異の解消が見込まれる期間内、または、繰越欠損金の繰越可能期間内に、納税地において将来十分な課税所得を生み出せるかどうかを評価しなければなりません。当社では、有利・不利に関わらず、入手可能なすべての根拠・確証を用いてこの評価を実施しております。繰延税金資産の評価は、見積りと判断に基づいております。納税地での将来の課税所得に影響を与える当社の収益力に変化があった場合、現状の繰延税金資産の回収可能性の評価も変わる場合があります。

 

引当金の測定

引当金は、過去の事象の結果として、当社が、現在の法的または推定的債務を負っており、当該債務を決済するために経済的資源の流出が生じる可能性が高く、その債務の金額が合理的に見積り可能である場合に認識しております。引当金は、見積将来キャッシュ・フローを貨幣の時間的価値及び当該負債に特有のリスクを反映した税引前の利率を用いて現在価値に割引いております。

 

確定給付債務の測定

確定給付型年金制度は、確定拠出型年金制度以外の退職後給付制度であります。確定給付型年金制度に関連する当社の純債務は、制度ごとに区別して、従業員が過年度及び当年度において提供したサービスの対価として獲得した将来給付額を見積り、当該金額を現在価値に割引き、制度資産の公正価値を差し引くことによって算定しております。割引率は、当社の債務と概ね同じ満期日を有するもので、期末日において信用格付AAの債券の利回りであります。この計算は、毎年、年金数理人によって予測単位積増方式を用いて行っております。

 

 

(7) 資産及び負債・資本

(単位:億円)

前期

(2023年3月期末)

当期

(2024年3月期末)

 

増減

主な増減要因

資産合計

101,054

110,326

 

+9,272

・円安の影響による増加

株主資本

37,787

44,455

 

+6,668

・円安の影響による増加

・当期利益の計上

・配当金の支払、自己株式の取得

ネット有利子負債

24,844

25,234

 

+390

 

 

ネットDER

0.7

0.6

 

△0.1pt

 

 

 

 

(注)1 株主資本=資本の内、「親会社の所有者に帰属する持分合計」

(注)2 ネット有利子負債=社債及び借入金(流動・非流動)の合計から現預金を差し引いたもの。

 (リース負債は含まれておりません)

(注)3 ネットDER=有利子負債(ネット)/株主資本

 

 

(8) キャッシュ・フロー

(単位:億円)

前期

(自2022年4月1日

至2023年3月31日)

当期

(自2023年4月1日

至2024年3月31日)

当期実績の概要

営業活動によるキャッシュ・フロー

2,328

6,089

・コアビジネスが着実にキャッシュを創出

  基礎収益キャッシュ・フロー

5,093

5,109

投資活動によるキャッシュ・フロー

△915

△2,192

投融資米国建設機材レンタル会社の

資産買収

北ハノイサステナブルシティへの増資

米国硫酸事業の買収

  国内外不動産案件の取得 等

資産入替米国タイヤ販売事業 直営小

売事業売却に伴う資金回収

インドネシア自動車金融事業

資本再編に伴う資金回収 等

フリーキャッシュ・フロー

1,413

3,896

 

財務活動によるキャッシュ・フロー

△2,505

△4,155

・配当金の支払、自己株式の取得

 

 

 

 

 

前期

(2023年3月期末)

当期

(2024年3月期末)

 

現金及び現金同等物の期末残高

6,569

6,679

 

 

 

(注)4 基礎収益キャッシュ・フロー=

 

(売上総利益+販売費及び一般管理費(除く貸倒引当金繰入額)

+利息収支+受取配当金)×(1-税率)+持分法投資先からの配当

 

 

 

(9) 資金調達と流動性

当社の財務運営は財務健全性の維持・向上を基本方針とし、低利かつ中長期にわたり、安定的な資金調達を行うこと、及び十分な流動性の保持を図ることとしております。当社グループ内での資金管理については、グループファイナンスを整備し、資金調達を当社及び金融子会社、海外現地法人に集中した上で、キャッシュ・マネジメント・システムを通じて、当社グループ内で資金を効率的に活用する体制を整えております。

当社は総額3兆2,017億円の社債及び借入金を有しており、このうち短期の借入金は、前期比554億円減少の2,860億円で、内訳は短期借入金(主として銀行借入金)2,128億円、コマーシャルペーパー732億円となっております。

一年以内に期限の到来する社債及び長期借入金4,592億円を含めた当期の社債及び長期借入金は、前期比1,051億円増加の2兆9,158億円となっております。このうち、銀行及び保険会社からの長期借入残高は、前期比644億円増加の2兆3,820億円、社債残高は前期比406億円増加の5,337億円となっております。

当社の銀行からの借入の多くは、日本の商慣行上の規定に基づいております。当社は、このような規定が当社の営業活動や財務活動の柔軟性を制限しないと確信しておりますが、いくつかの借入契約においては、特定の財務比率及び純資産の一定水準の維持が求められております。さらに、主に政府系金融機関との契約においては、当社が株式及び社債の発行等により資金を調達した際に、当該金融機関から、当該借入金の期限前返済を求められる可能性があり、また、一部の契約では当社の剰余金の配当等について当該金融機関の事前承認を請求される可能性があります。当社は、このような請求を受けたことはなく、今後も受けることはないと判断しております。

詳細は、「3 事業等のリスク (3) タイプ別リスク ⑬ 資金の流動性に関するリスク」を参照願います。

資金調達については、各金融機関との良好な関係に基づく銀行借入等の間接金融を中心に、コマーシャルペーパーや社債等の直接金融との適切なバランスに留意し、調達期間の長期化を通じた償還期日の分散等による安定的な調達構造を構築しております。外貨建ての資金調達については、銀行借入や外貨建て社債発行、通貨スワップの他、金融子会社、海外現地法人におけるコマーシャルペーパー、ユーロMTN等の活用によって資金調達ソースの多様化に取り組んでおります。また、2022年3月にグリーンファイナンス・フレームワークを策定し、本フレームワークに基づきグリーンボンドを発行しております。2024年2月には、本フレームワークの対象事業の拡大及びソーシャル対象事業の追加を行い、サステナブルファイナンス・フレームワークとして改定しております。

なお、当社は、資本市場での直接調達を目的として、以下の資金調達プログラムを設定しており、当期末時点での当社の長期及び短期の信用格付は、ムーディーズでBaa1(見通し安定的)/P-2、スタンダード&プアーズでA-(見通し安定的)/A-2、格付投資情報センターでAA-(見通し安定的)/a-1+となっております。

 

・3,000億円の国内及び海外公募普通社債発行登録枠

・国内における5,000億円のコマーシャルペーパー発行枠

・米州住友商事により設定された、1,500百万米ドルのコマーシャルペーパープログラム

・当社、英国のSumitomo Corporation Capital Europe(以下、「SCCE」という。) 及び米州住友商事が共同で設定した3,000百万米ドルのユーロMTNプログラム

・SCCEが設定した1,500百万米ドルのユーロコマーシャルペーパープログラム

 

保有流動性については、金融市場の混乱等、複数の有事シナリオを想定し、当期末時点で現預金と国内外の主要な金融機関との総額1,210百万米ドル、及び2,850億円を上限とする以下の長期コミットメントラインを中心に、当社及び当社子会社における資金需要や一年以内に期日が到来する借入や社債の償還資金等を補完する十分な流動性を確保しております。なお、当有価証券報告書の提出日までに、これらのコミットメントラインに基づく借入はありません。また、これらのコミットメントラインには、借入の実行を制限する重大なコベナンツ、格付トリガー条項などは付されておりません。なお、これらのコミットメントラインのほかに、当社は、コミットメントベースでない借入枠を有しております。

・米国及び欧州の大手銀行によるシンジケート団との間で締結した、1,060百万米ドルのマルチ・カレンシー(円・米ドル・ユーロ建)/マルチ・ボロワー(住友商事及び英国、米国、シンガポールにおける当社子会社への融資)型長期コミットメントライン

・大手米銀との間に締結した、米州住友商事への100百万米ドルの長期コミットメントライン

・大手欧銀との間に締結した、SCCEへの50百万米ドルのマルチ・カレンシー(円・米ドル・ユーロ・ポンド建)型長期コミットメントライン

・大手邦銀のシンジケート団による1,500億円の長期コミットメントライン(内、790億円はマルチ・カレンシー型)

・有力地方銀行のシンジケート団による1,350億円の長期コミットメントライン

 

資金調達の内訳

 

前期

(2023年3月31日)

(億円)

当期

(2024年3月31日)

(億円)

短期

3,414

2,860

 

借入金(主に銀行より調達)

2,489

2,128

 

コマーシャルペーパー

925

732

長期(一年以内期限到来分を含む)

28,107

29,158

 

担保付

 

 

 

 

借入金

2,279

2,843

 

無担保

 

 

 

 

借入金

20,897

20,977

 

 

社債

4,931

5,337

有利子負債合計(グロス)

31,521

32,017

現金及び現金同等物並びに定期預金

6,677

6,783

有利子負債合計(ネット)

24,844

25,234

資産合計

101,054

110,326

親会社の所有者に帰属する持分合計

37,787

44,455

親会社所有者帰属持分合計比率(%)

37.4

40.3

 

デット・エクイティ・レシオ(グロス)(倍)

0.8

0.7

デット・エクイティ・レシオ(ネット)(倍)

0.7

0.6

 

 

当期末時点での当社の期限別の支払債務は、以下のとおりであります。

期限別内訳

 

社債及び借入金

(億円)

リース負債

(億円)

2024年度

7,452

777

2025年度

3,104

664

2026年度

4,358

444

2027年度

3,505

412

2028年度

3,095

348

2029年度以降

10,503

2,406

合計

32,017

5,051

 

 

 

当社は、資金供与に関する契約(貸付契約、出資契約)及び設備使用契約等を締結しており、当期末における契約残高は、9,376億円です。

当期末時点では、資本的支出に対する重要な契約はありません。

上述の契約に加えて、当社のビジネスに関連して、当社は、顧客の債務に対する保証などの様々な偶発債務を負っています。また、当社は、訴訟による偶発債務の影響を受ける可能性があります。これらの偶発債務に関する詳細は、「(10) 偶発債務」及び「(11) 訴訟等」を参照願います。当社は、現状においては、それらの偶発債務がもたらす資金需要が重大なものとはならないと判断しておりますが、仮に予想に反して、当社が保証を行っている債務に重大な不履行が生じた場合、また、訴訟の結果が、当社に大きく不利なものであった場合には、新たに、大きな資金調達が必要となる可能性があります。

当社は、主に、ワーキング・キャピタル、新規や既存ビジネスへの投資や債務の返済のために、将来にわたり継続的な資金調達を行う必要があります。当社は、成長戦略として買収、株式取得または貸付による投資を行っており、当期は、有形固定資産及び投資不動産の取得に1,217億円、また、その他の投資の取得に2,382億円の投資を行いました。当社は、現在、全てのセグメントにおいて、既存のコア・ビジネス及び周辺分野を中心に追加投資を検討しております。

しかしながら、これらの投資は、現在、予備調査段階のものや、今後の様々な条件により、その実施が左右されるものであり、結果的に実現されない可能性もあります。また当社は、手許の現金、現在の借入枠や営業活動によるキャッシュ・インで当面必要とされる資金需要を十分に満たせると考えておりますが、それは保証されている訳ではありません。当社の営業活動によるキャッシュ・インが想定より少なかった場合、当社は、追加借入の実施、他の資金調達手段の検討、または投資計画の修正を行う可能性があります。

 

(10) 偶発債務

当社の取引に関連して、顧客の債務に対する保証履行のような偶発債務を負うことがあります。当社は、世界各国のサプライヤーや顧客と多種多様な営業活動を行うことにより、営業債権及び保証等に係る信用リスクを分散させており、これらに関し重大な追加損失は発生しないものと見込んでおります。

当社の当期末における保証に対する偶発債務の残高(最長期限2049年)は2,222億円で、このうち持分法適用会社の債務に対する保証が1,354億円、第三者の債務に対する保証が868億円です。これらの保証は主に持分法適用会社、サプライヤー、及び顧客の信用を補完するために行っているものであります。

 

(11) 訴訟等

当社は、事業遂行上偶発的に発生する訴訟や訴訟に至らない請求等を受けておりますが、当社の経営上、重要な影響を及ぼすものはありません。

 

 

(12) 未適用の新たな基準書及び解釈指針

連結財務諸表の承認日までに公表されている主な基準書及び解釈指針の新設または改訂は次のとおりであり、2024年3月31日現在において当社はこれらを適用しておりません。適用による当社への影響は検討中であり、現時点で見積ることはできません。

 

基準書

基準名

強制適用時期

(以降開始年度)

当社適用年度

新設・改訂の概要

IAS第7号

キャッシュ・フロー計算書

2024年1月1日

2025年3月期

サプライヤー・ファイナンス契約に関する情報の開示を要求

IFRS第7号

金融商品:開示

IFRS第18号

財務諸表における表示及び開示

2027年1月1日

2028年3月期

企業の財務業績の報告を改善し、企業分析及び比較のためのより良い基礎を投資者に提供する新たな要求事項を導入

 

 

(13) 市場リスクに関する定量的・定性的情報

当社のビジネスは、金利、外国為替レート、商品価格、株価の変動リスクを伴い、これらのリスクマネジメントを行うため、為替予約取引、通貨スワップ・オプション取引、金利スワップ・先物・オプション取引、商品先物・先渡・スワップ・オプション取引等のデリバティブを利用しております。また、後述のリスク管理体制の下、予め決められたポジション限度・損失限度枠内で、トレーディング目的のデリバティブ取引も限定的に実施しております。

 

金利変動リスク

当社は、事業活動の中で様々な金利変動リスクに晒されております。コーポレートグループの財務・経理・リスクマネジメントグループ長が管掌する部署では、当社のビジネスに伴う金利変動リスクをモニタリングしております。特に、金利の変動は借入コストに影響を与えます。これは、当社の借入金には変動金利で借り入れているものがあり、また、都度借換えを行う短期借入金があるためです。

しかしながら、金利変動が借入コストに与える影響は、金利変動の影響を受ける資産からの収益により相殺されます。また、当社は、金利変動リスクをミニマイズするために資産・負債の金利を調整・マッチングさせるよう、金利スワップ等のデリバティブ取引を利用しております。

 

為替変動リスク

当社は、グローバルなビジネス活動を行っており、各拠点の外貨建による売買取引、ファイナンス及び投資によって、為替変動リスクに晒されている場合があります。これらのうち、永続性の高い投資等を除いた取引については、為替変動リスクを軽減するために、各拠点において外貨借入・外貨預金等に加えて、第三者との間で、為替予約取引・通貨スワップ取引・通貨オプション取引等のデリバティブ取引を必要に応じ行っております。

 

 

商品市況変動リスク

当社は、貴金属、非鉄金属、燃料、及び農産物等の現物取引、並びに鉱物、石油、及びガス開発プロジェクトへの投資を行っており、関連する商品価格の変動リスクに晒されております。当社は、商品の売り繋ぎや売り買い数量・時期等のマッチング、デリバティブ等の活用によって、商品価格の変動によるリスクを減少させるよう努めております。また、予め決められたポジション限度・損失限度枠内で、トレーディング目的のデリバティブ取引も限定的に実施しております。

 

株価変動リスク

当社は、戦略的な目的で金融機関や顧客・サプライヤーが発行する株式等への投資を行っておりますが、これらの株式投資には株価変動リスクが伴います。これらの株式投資に関しては、継続的なヘッジ手段を講じておりません。当社が保有する市場性のある株式の当期末における公正価値は、3,129億円であります。

 

リスク管理体制

デリバティブや市場リスクを伴う取引を行う営業部は、取引規模に応じてマネジメントの承認を事前に取得しなければなりません。マネジメントは、場合によってはデリバティブについて専門的知識を有するスタッフのサポートを得て、案件の要否を判断し、当該申請における、取引の目的、利用市場、取引相手先、与信限度、取引限度、損失限度を明確にします。

財務・経理・リスクマネジメントグループ長が管掌する部署は、取引の実施・モニタリングに際して、以下の機能を提供しております。

・金融商品及び市況商品のデリバティブに関する口座開設、取引確認、代金決済と引渡し、帳簿記録の保管等のバックオフィス業務

・ポジション残高の照合

・ポジションのモニタリングと全社ベースでの関連取引のリスク分析・計測、シニアマネジメントへの定期的な報告

当社の子会社が市況商品取引を行う際には、上記のリスク管理体制に沿うことを要求しております。

 

5 【経営上の重要な契約等】

特記事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

特記事項はありません。