当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1)経営方針
120年を超える歴史を刻む当社グループは、地域社会との「共存同栄」と「有限の鉱業から無限の工業へ」という2つを創業の精神として受け継ぎ、時代と産業構造の変化に対応しながら、新たな技術への挑戦と自己変革を重ねて業容を拡大してきました。今後ますます多様化・複雑化するニーズに応え、以下の当社グループのパーパス(存在意義)を全うすべく経営理念と経営方針に基づき、未来につながる新たな価値を創出するための事業活動をグローバルに展開するとともに、ESG(環境・社会・コーポレートガバナンス)への取組みを一層充実し、持続的な成長と企業価値の向上を目指します。また、株主を始め顧客、取引先、従業員や地域社会等のあらゆるステークホルダー、更には地球環境との共生を実践し、これらに貢献する価値創出企業であり続けます。
パーパス(存在意義)
「創業以来の歴史の中で培ってきたモノづくりの技術をベースに、社会に必要とされている価値を、社会が求める安全で環境負荷の少ない方法で創り出し、人々に提供する。人類共通の課題となった地球環境問題の解決に向けて、また人々の生命・健康、そして未来へとつながる豊かな社会に貢献すべく、UBEグループの技術で価値を創出していく。」
経営理念
「技術の探求と革新の心で、未来につながる価値を創出し、社会の発展に貢献します」
経営方針
「倫理」 高い倫理観を保ち、法令及び社会規範を遵守します
「安全と安心」 地球環境保全に努め、安全・安心なものづくりを行います
「品質」 お客様と社会の信頼に応える品質をお届けします
「人」 個性と多様性を尊重し、健康で働きやすい職場をつくります
当社は、2022年4月に「UBE株式会社」という新社名の下、化学事業持株会社へと経営構造を転換し新たなスタートを切りました。今後は、スペシャリティ化学の企業グループとしてグローバルに持続的成長を図るとともに持続可能な社会への貢献に取り組み、機械事業やセメント関連事業については、持株会社としての経営を推進し、UBEグループとしての企業価値の最大化を図ります。
(2)経営戦略等
当社グループは、長期ビジョン「UBE Vision 2030 Transformation」で描いた目指す姿の実現に向け、直近3カ年のアクションプランとして中期経営計画「UBE Vision 2030 Transformation~1st Stage~」(対象期間:2022年度~2024年度)を策定し、以下の基本方針及び数値目標を掲げています。
◆長期ビジョン(2030年)の目指す姿
「地球環境と人々の健康、そして豊かな未来社会に貢献するスペシャリティ化学を中核とする企業グループ」
この目指す姿の実現に向け、「エネルギー負荷の低い」、「市況変動に左右されにくい」、「収益性の高い」スペシャリティ製品を主体とする事業構造への転換を進めます。また、このような事業構造改革と省エネ推進・プロセス改善等の施策により、温室効果ガス(GHG)排出量の削減目標の達成を目指すとともに、環境に貢献する製品や技術の開発と実用化を推進することで、持続可能な社会の実現に貢献します。
◆中期経営計画の基本方針
(ⅰ) スペシャリティ化学を中心としてグローバルな利益成長を追求
(ⅱ) 地球環境問題に対応した事業構造改革
(ⅲ) 持続的成長に向けた人的資本の充実
(iv) DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進による企業価値の向上と顧客価値の創出
(v) ガバナンスの更なる向上
(3)経営環境
当連結会計年度においては、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化、米中対立等により世界経済は不安定さと不透明感を強めました。欧米での物価上昇が続く中、金融引き締めにもかかわらず米国景気が堅調に拡大したことで想定以上の円安が日本の物価をも押し上げました。当社事業においても、エネルギーコストや原材料価格の高騰等に伴う需要減退の影響を受けました。これら地政学的リスクの深刻化、エネルギーコストや原材料価格の高騰、物価上昇や金利上昇に伴う需要減退の懸念等から今後も先行きが見通しづらい状況が続くものと予測されます。
こうした状況に加え、地球温暖化、自然災害の増加、インフラの老朽化等、持続可能な社会創出のための諸課題への対応が企業活動に求められており、更には、DXによる競争優位性の変化、健康や安全・安心についての意識の更なる高まり等、経営環境の変化のスピードも一段と速まっています。
(4)優先的に対処すべき課題等
当連結会計年度は、ポリイミド、分離膜、セラミックス、高機能コーティング、医薬品等スペシャリティ事業の業績は堅調に推移しましたが、ベーシック事業のうちナイロンポリマー・カプロラクタムは厳しい業況が継続しました。次期の業績見通しにおいては、ベーシック事業を取り巻く環境が改善することを想定していますが、中期経営計画策定時に想定した事業環境に比べると、依然として大きく悪化した中で推移することが見込まれるため、中期経営計画の数値目標(「(5)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」を参照)の達成は困難な状況です。
中期経営計画の基本方針に変更はありませんが、当該事業環境を踏まえ、当社グループの業績変動を小さくし安定した成長軌道に乗せるべく、スペシャリティ事業の拡大とベーシック事業の構造改革をより一層加速させます。すべてのステークホルダーに価値を創出し続けていくために、中期経営計画における5つの基本方針の着実な実行を重要な課題として認識しています。
(ⅰ)スペシャリティ化学を中心にグローバルな利益成長を追求
技術力やバリューチェーンにおける強みをベースに付加価値を創出することで高収益を実現できるスペシャリティ事業に経営資源を重点的に投入し、一層の成長・拡大を図ります。現在増産工事中のポリイミド原料モノマー(BPDA)、ポリイミドフィルム、分離膜、セラミックス等の製造設備を順次稼働させていくとともに、2024年2月に決定した米国におけるDMC・EMC製造設備の建設を着実に進め、グローバルでの事業拡大と利益成長を目指します。
他方、ベーシック事業については更なるコスト競争力の強化とともに、損益変動の大きいナイロンポリマー・カプロラクタムは、2024年5月の国内カプロラクタム生産の縮小に続き、一層の構造改革を推進していきます。
(ⅱ)地球環境問題に対応した事業構造改革
石炭を主要なエネルギー源として事業展開してきた当社グループは、エネルギー多消費型の事業構造を変革することが大きな課題であると認識しています。2021年4月に「UBEグループ 2050年カーボンニュートラルへの挑戦」を宣言し、自らの事業活動から排出されるGHGの実質排出量ゼロに挑戦するとともに、環境に貢献する製品・技術に関わる研究開発の推進とイノベーションの実用化により、社会全体のカーボンニュートラルへの貢献を目指します。2030年度までの中期目標として、GHG排出削減率を50%(2013年度比)、環境貢献型製品・技術の連結売上高比率を60%以上にすることを目指しています。
こうした目標の達成に向け、中期経営計画期間においては生産活動における徹底した省エネ推進・プロセス改善に継続的に取り組むとともに、再生可能エネルギーを最大限活用し、GHG排出量の削減に努めます。
(ⅲ)持続的成長に向けた人的資本の充実
ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョンは人的資本充実策の最重要課題と位置づけ、スペシャリティ事業による成長を牽引する多様な人財の育成、従業員のワークエンゲージメントの向上とともに、前例踏襲に陥らず挑戦する社風・イノベーティブな風土の醸成に取り組みます。
(ⅳ)DXの推進による企業価値の向上と顧客価値の創出
新たに設置したDX推進室が主体となり、デジタル人財の育成を推進し、幅広い領域においてDXを推進することで、業務の効率化や新たな顧客価値の創出を加速していきます。
(ⅴ)ガバナンスの更なる向上
化学事業持株会社としての更なる成長を目指す当社は、スペシャリティ化学の企業グループとしてグローバルに持続的成長を図るとともに、機械事業やセメント関連事業については持株会社としての経営を推進し、グループ全体で企業価値の最大化を図っていきます。
<事業ポートフォリオ>
長期ビジョンの目指す姿とともに、今後の市場の成長期待、UBEグループの有する強み、収益性等を踏まえて、化学分野の主要事業・製品の位置づけを明確にするとともに、経営資源投入の判断にも活用します。
(5)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
中期経営計画「UBE Vision 2030 Transformation~1st Stage~」においては、最終年度となる2024年度の数値目標を次のとおり設定していますが、事業環境の変化等もあり、主要項目及び経営指標については、最終年度の数値目標の達成は困難な見通しとなっています。
<主要項目>
|
2024年度目標 |
営業利益 |
400億円 (うちスペシャリティ事業 240億円) |
経常利益 |
470億円 |
<経営指標>
|
2024年度目標 |
売上高営業利益率(ROS) |
8% |
自己資本利益率(ROE) |
8% |
<非財務指標>
|
2024年度目標(国内連結) |
女性社員比率(注) |
18% |
女性管理職比率 |
6% |
(注)これまで数値目標としていた15%を前倒しして達成したことにより、新たな数値目標を設定しています。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1)サステナビリティ全般
①ガバナンス
当社グループのサステナビリティの推進は、企業の経営そのものと捉えています。スペシャリティ化学を中核とする企業グループとしてのパーパスを全うするため、経営資源を効果的に活用し、社会に新たな価値を創出することで持続的成長を図ります。その礎となる持続可能な社会の実現に向けて、「UBEグループサステナビリティ基本指針」をグループ全ての役員・従業員に徹底させるとともに、「成長」「環境」「社会」「経営」それぞれのマテリアリティ(重要課題)を特定し、その解決に積極的に取り組んでいます。
2024年4月より、サステナビリティの個別課題を検討し、対策を立案する各専門委員会を統括・俯瞰する経営会議として、社長を委員長、サステナビリティ推進部担当役員を副委員長とする「サステナビリティ委員会*」を設置し、当社グループのサステナビリティ活動を推進するとともに、取締役会がその活動状況を監督しています。サステナビリティ委員会の委員は、経営会議(一般)メンバーとし、事務局はサステナビリティ推進部が担当し、原則として年に2回開催します。業務執行に関わるサステナビリティ関連のリスク及び機会については、リスク管理委員会と連携して取り組んでおり、「③リスク管理」に記載しています。
*サステナビリティ委員会は、「UBEグループサステナビリティ基本指針」に基づき、グループサステナビリティに関する方針や中長期計画及び年度計画を策定するとともに、全社課題の抽出とマテリアリティの特定を含む対応方針を策定します。サステナビリティの各マテリアリティ(重要課題)を担当する専門委員会は、サステナビリティ委員会の下部委員会として、全社方針に基づき各マテリアリティの解決に向けた諸施策を自ら立案・実施し、取組みを進めています。
②戦略
サステナビリティに関する戦略については、長期ビジョン「UBE Vision 2030 Transformation」に基づき、「UBE Vision 2030 Transformation~1st Stage~」に統合されています。「
③リスク管理
当社では、取締役会決議にて制定した「内部統制システム構築の基本方針」に基づき、リスク管理規程を定め、当社グループ全社を対象にしたリスクマネジメント制度を確立しています。本制度では、当社グループのリスクマネジメントに関する業務を統括・推進するために取締役、執行役員の中から社長が指名するチーフ・リスク・オフィサー(以下CROという)を選任し、CROを補佐しリスクマネジメントの事務局となるリスク管理部を設置しています。
当社グループ全体に影響を及ぼす重要なリスクについては、リスク管理委員会に報告、審議した後、経営会議に付議し、リスクの認定と管理方針や対策の有効性等を審議します。また、取締役会は、その審議内容について、定期的に報告を受けることで監督しています。この重要(重大)なリスクに関しては、戦略リスクとオペレーショナルリスクに分類し、リスクテーマごとに「リスクテーマ役員」を定め、当該役員が全社俯瞰的な観点から当該リスクやその対策の有効性を評価し、対策の実施部署に対して次年度のリスク対策等を指示・指導を行う体制を整備しています。
これらの全社的リスクマネジメントを通じ、当社グループにおけるリスクを低減し、リスクが顕在化したときには、その被害を最小化し、拡大を防止するとともに、経営層がリスクを把握の上、適切な指示や資源投下等の経営判断ができる体制を構築・維持することによって、当社グループの持続的成長と企業価値の向上に取り組んでいます。
2023年度は、グループ会社のリスク管理監査等を通じた管理強化、適切なリスクの選定、変化する社内外の経営環境に応じたリスクの見直し、リスク対策の有効性を評価する基準を新たに導入するなど、リスク管理の質向上を図りました。
④指標及び目標
地球環境問題等の当社グループが抱える諸リスク、メガトレンド、社会の持続的な発展に向けたグローバルなコンセンサス、環境負荷低減に貢献する当社グループの技術力等を総合的に勘案し、当社グループの持続的な成長に重要な影響を与えるマテリアリティ(重要課題)を特定し、重点的に取り組んでいます。また、GHG排出量の多い企業として、最も重要なリスクは「環境」であるとの認識のもと、GHG排出量削減への能動的な取組みと環境貢献型製品・技術を一層拡大することで、環境リスクを低減させるだけでなく、リスクを機会に転じさせることを目指しています。
(2)サステナビリティに関する取組み
①気候変動への取組みとTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)への対応
カーボンニュートラルを含む地球環境問題への対応は当社グループにとって大きな課題であり、中期経営計画「UBE Vision 2030 Transformation~1st Stage~」においても、スペシャリティ化学の成長と地球環境問題への貢献については一体のものとして捉え、当社グループの持続的な成長及び企業価値向上にとって最重要課題であると認識しています。
この地球環境問題の課題解決を機会(チャンス)と捉え、スペシャリティ化学の企業グループとしてグローバルに持続的成長を図っていきます。
(一)ガバナンス
当社グループでは、地球環境問題に関する課題を把握し、対策を講じる地球環境問題対策委員会を設置しています。社長が議長を務める経営会議(サステナビリティ委員会)は、地球環境問題対策委員会から報告を受けるとともに活動計画や重要課題を審議し、統括・指示を行い、継続的に対策の進捗状況を確認しています。また、重要事項については取締役会に定期的に報告され、取締役会が適切に監督しています。
(二)戦略
気候変動対応による低炭素・脱炭素社会への移行を前提に、2030年以降の考えられる姿(シナリオ)を複数検討し、それぞれのシナリオに沿って当社グループのリスク及び機会(チャンス)を分析し、必要とされる戦略を策定しています。
移行シナリオとして2℃シナリオと4℃シナリオの2つ、及び物理シナリオを検討・作成し、それぞれのシナリオにおける当社グループのリスク及び機会を分析しています。その結果、それぞれのシナリオにおいて、顕在化が想定されるリスクによる影響は免れられないものの、同時に顕在化が想定される機会を取り込むことによって、持続的な企業価値の向上が可能であることを確認しました。
シナリオ分析の検討ステップ
・各事業がどのようになるか、自家発電の操業予測を含めてシナリオごとに検討
・各シナリオの検討結果を基に当社グループとしての将来を分析
・2050年を見据えた、2030年におけるレジリエンス(強靭化)を有する長期戦略を策定
上記のシナリオ分析の結果、2030年近傍の財務的影響度の大きいものについてまとめたものが次のとおりです。
(三)リスク管理
当社グループでは、気候変動対応を、リスク情報の一元管理や対策の実施状況等のモニタリングで活用しているリスク管理システムに登録し、管理しています。リスク管理システムに登録されたリスクは、それぞれの影響度に応じて経営リスク、重要リスク、ミドルリスク、マイナーリスクに分類され、経営リスクと重要(重大)リスクは、経営会議で審議された後、具体的な戦略・施策へ反映されます。
気候変動対応は、地球環境問題として経営会議(サステナビリティ委員会)で審議された内容が取締役会に定期的に報告され、取締役会が適切に監督しています。それらの過程で、当社グループ全体の気候変動に関するリスクとして識別・特定され、サステナビリティ推進部担当役員を委員長とした全社的横断組織の地球環境問題対策委員会にて、対策及び取組み方針等が立案・実施されます。
(四)指標及び目標
当社グループは、地球環境問題への取組みに関する2030年度の目標を下記のとおり定めています。
温室効果ガス(GHG)排出量 |
50%削減(2013年度比) |
集計範囲 |
連結対象会社の主要事業所等のScope1&2 |
環境貢献型製品・技術の連結売上高比率 |
60%以上 |
当社グループは、2030年目途に国内のアンモニア生産を停止することを検討するとともに、スペシャリティ化学へ事業転換を図ることによって、上記のGHG排出量削減目標を達成できる見込みです。
なお、2023年度のGHG排出量は、省エネ活動等の取組みにより362万トンとなりました。これはUBE三菱セメント㈱へ移管されたセメント関連事業を除いて集計したものであり、同範囲で集計した2013年度と比較して23%のGHG排出量削減となっています。また、2023年度の環境貢献型製品・技術の連結売上高比率は47%となりました。
(五)カーボンニュートラルに向けたロードマップ
当社グループは2021年4月26日に、「UBEグループ 2050年カーボンニュートラルへの挑戦」を宣言しました。自らの事業活動から排出されるGHGの実質排出ゼロに挑戦するとともに、環境に貢献する製品・技術に関わる研究開発のイノベーションを実用化することにより、社会全体のカーボンニュートラルに貢献していくことを目指します。
(a)GHG排出量の削減
生産活動における徹底した省エネ推進・プロセス改善に継続的に取り組むとともに、再生可能エネルギー利用の最大化や化石資源利用の極小化等を推進します。
更に2050年のカーボンニュートラル達成には革新的な技術開発が不可欠であることから、中長期的な視野で、他社等との協業を含めた原料の非化石化やCO2利活用技術の研究開発・実用化にも取り組みます。
(b)環境貢献型製品・技術の開発
環境貢献型製品・技術の開発を推進し、より多くの取引先に提供することで、当社グループ及び社会全体のカーボンニュートラルへの貢献を目指します。当社グループでは、ISO14001:2015改訂版をもとにガイドラインを策定し、環境貢献型製品・技術を定義しています。
(六)2023年度の取組み実績
(a)SBT*¹認証を取得
2023年11月に当社グループのサプライチェーン全体での2030年度におけるGHG排出量削減目標について、認定機関であるSBTイニシアチブ*²(以下「SBTi」)より、その基準及び推奨事項への適合認定を受け、特に当社グループのScope1&Scope2のGHG排出量削減目標は、地球の気温上昇を産業革命前と比べて1.5℃に抑える取組みに整合することが確認されました。
当社グループでは気候変動を、地球規模の深刻な緊急の課題であると同時に、グループの持続可能な事業運営を脅かすリスクとして捉えています。今回の認定を受け当社グループでは、バリューチェーン全体でのGHG排出量の削減を一層推進していきます。
■目標の概要
企業のGHG排出量削減に関する目標は、SBTiの定量的、定性的基準及び目標検証プロトコルに従って評価され、全ての適用要件に適合するものが認定されます。今回、認定を受けた2件の概要は以下のとおりです。
|
基準年 |
目標年 |
当社グループ 数量目標値 |
SBTi 目標値(下限) |
Scope1&2*³ |
2021年 |
2030年 |
45% |
42% |
Scope3*³ |
2021年 |
2030年 |
25% |
25% |
Scope3の削減対象範囲は、「購入した製品・サービス」、「販売した製品の廃棄」」及び「投資(持分法
適用会社等のScope1&2GHG排出量の出資比率分)」とします。
*¹ SBT(Science-Based Targets):パリ協定が求める水準と整合した、企業が設定するGHG排出量削減目標
*² SBTi(Science-Based Targets Initiative):2030年までの排出量半減及び2050年までのネットゼロ排出量の達成に向けた企業の取組みを加速させることを目標にしており、最新の気候科学に基づいた野心的な排出量削減目標の設定を企業に促す国際的な団体。
*³ Scope1:事業者自らによるGHGの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)
Scope2:他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出
Scope3:事業者自らによる排出を除いた、事業者のバリューチェーンの上流から下流に至る全ての関連する排出
(b)環境製品ブランド「U-BE-INFINITY™」をリリース
当社グループは2024年4月に、環境製品ブランド「U-BE-INFINITY™」を立ち上げました。当社グループが展開する「環境貢献型製品・技術」のうち、特に優れた環境貢献を示す製品・技術に対して当ブランドを付与することで、対象となる製品・技術の付加価値を高めます。
ブランド名には、「当社はステークホルダーと共に無限(INFINITY)な社会発展を実現する」という思いを込めています。また、ロゴマークでは、地球環境問題の解決のため、現状に決して満足せず変化を続けていく決意を様々な色で表現しています。
また「U-BE-INFINITY™」は、GHG排出量の削減によるカーボンニュートラルへの貢献、再生材・バイオマスの利用等による省資源化やリサイクルの簡易化に資する製品及び技術等を対象としたブランドで、以下製品を展開していく予定です。
■対象となる開発品や製品・技術について(予定)
サステナブルカプロラクタム |
ISCC PLUS認証(国際持続可能性カーボン認証)を受けた、サステナブル原料から製造したカプロラクタム |
バイオベースナイロン |
植物由来原料を利用したナイロン |
マテリアルリサイクルナイロン |
マテリアルリサイクル素材(PCR*¹、PIR*²ナイロン/フィラー)を原料として利用するナイロン |
リサイクラブルナイロン |
マルチマテリアルリサイクルに貢献するナイロンベースの相溶化樹脂 |
バイオコンポジット |
CO2排出量を削減する木質由来バイオマスを高配合した石化由来代替材料 |
*¹ PCR(post-consumer recycling):市場で使用済みの製品を再資源化するリサイクル手法
*² PIR(post-industrial recycling):工場から排出される工程端材等を再資源化するリサイクル手法
(c)一次サプライヤーとのエンゲージメント
当社は2023年5月に、主要原材料における主な一次サプライヤー各社とのエンゲージメントの第一歩として、地球環境問題への取組みに関するアンケート調査を実施しました。その結果、一次サプライヤー各社の取組みの実態を把握するとともに今後の課題の抽出を行いました。当社は、今後もこの活動を通じて一次サプライヤーの協力を得つつ、サプライチェーン全体の地球環境問題への貢献に努めていきます。
(d)循環型社会(サーキュラーエコノミー)への貢献
ISCC PLUS認証を取得
ISCC PLUS認証は持続可能なサプライチェーンを実現し担保するための国際認証です。当社グループでは、以下のグループ会社において、バイオマスや再生由来等の原料をマスバランス方式*¹によって割り当てられたISCC PLUS認証製品の製造・販売に取り組んでいます。
・UBE CORPORATION EUROPE S.A.U.
・UBEエラストマー株式会社 本社、千葉工場
・THAI SYNTHETIC RUBBERS COMPANY LIMITED Rayong Factory
・台湾宇部股份有限公司*²
*¹ バイオマス原料や再生由来等の原料と、それ以外の原料が混合される場合に、投入量の割合に応じて製品の一部を「バイオマス原料や再生由来等の原料100%で製造した」とみなす方式で、ISCC PLUSシステムで採用されています。
*² トレーダー認証取得により、ISCC PLUSで認められる全ての製品の取り扱いが可能です。
(e)水資源の重要性についての確認
当社グループの事業にとっての水資源の重要性を再認識した上で、WRI Aqueduct(世界資源研究所が提供する世界の水リスクを評価するツール)等の情報を基に、主要事業拠点における水リスクの状況を把握・分類し、各拠点での事業が高リスクと判断される水源に過度に依拠していることはないということを確認しました。また、タイ及びスペインの拠点においては、2030年以降に水ストレスが上昇する可能性に備えるため、生産量当たりの水使用量の削減率や水リサイクル率の目標を設定し、各種対応を進めています。
(f)生物多様性保全上重要な地域との近接性の確認
IBAT(Integrated Biodiversity Assessment Tool)や主要事業拠点の情報を基に、各拠点の自然保護地域や生物多様性の保全上重要な地域との近接性を確認し、影響を与える可能性とその程度を継続的に確認しています。
・ラムサール条約対象地への隣接はありません。
・宇部地区が接する海水面は、IUCN(国際自然保護連合)の保護地域管理カテゴリー(IUCN management category)のうち、管理カテゴリーⅥに該当します。
・宇部地区が接する海水域は、国の規制から漁業権設定を受けています。
・宇部藤曲地区が隣接する厚東川河口域は、KBA(生物多様性の保全の鍵となる重要な地域、周防灘、厚東側河口域)となっており、環境省が認定する全国の生物多様性の観点から重要性の高い湿地500カ所の一つとなっています(No.400 厚東川・有帆川・厚狭川河口(塩性湿地,河川,干潟,汽水域))。また、環境省は、厚東川河口干潟を、“生物多様性の観点から重要度の高い海域”(No.15805)としています。
なお、当社からこれらの水域への汚染物質の直接排出はありません。
(g)2023年度のその他の取組み
ア)海洋プラスチックごみ問題
・近隣企業と合同で清掃を実施(堺工場)
・ペットボトルの水平リサイクル処理検討(UBEマシナリーグループ)
・修養団宇部市連合会主催 年末街頭清掃への参加(宇部ケミカル工場)
・廃棄物保管場所等のパトロール(3カ月に1回)(宇部ケミカル工場)
・プラスチックリサイクル推進(宇部ケミカル工場)
イ)生物多様性保全
・共生の森 森づくり活動への参加(堺工場)
・工場内環境セミナーの実施(堺工場)
・美祢農林水産事務所主催 水を守る森林づくり体験活動への参加(宇部ケミカル工場)
・アルゼンチンアリ(特定外来生物)の駆除(行政報告)。事業所外への拡散防止対応(駆除)を実施(宇部ケミカル工場)
②人的資本に関する取組み
当社グループは、「ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン」を2030年のあるべき姿の実現に向けた最重要課題と位置づけ、多様な技術・知識・視点を融合させてイノベーションを生み出し、グローバルな事業拡大と新たな価値を創出する原動力とするとともに、グループ全体でワークエンゲージメントの向上に取り組んでいます。
(一)戦略
(a)人財の多様性の確保を含む人財の育成に関する方針
当社は、スペシャリティ化学を中核とする事業構造への転換を図っています。従来の企業風土から脱却し変革を進めるためには、多様な技術・知識・視点を融合させてイノベーションを生み出すことが不可欠と認識し、女性活躍推進をはじめ、専門性の高い人財のキャリア採用、シニア社員制度改定による働きがいの向上、障がい者の職域拡大等の施策を推進しています。
(b)社内環境整備に関する方針
当社は、年齢・性別・国籍を問わず全ての従業員一人ひとりが、働きやすく働きがいのある職場環境であると実感できるよう、独自施策の考案・拡充を進めています。例として、ストレスチェックの結果を活用し、ポジティブメンタルヘルス、心理的安全性の向上といった、社員、組織の両面に働きかける施策を実施、ワークエンゲージメント、組織パフォーマンスの向上を推進しています。
(二)指標及び目標
スペシャリティ化学への変革推進に向け、経営戦略と連動した人財戦略を定め、着実に実行していきます。
重点施策として、以下の4つを推進しています。
|
重点施策( |
進捗状況(2023年度実績) |
人人財財のの育多成様に性関のす確る保方を針含む |
1.女性の活躍推進(国内連結) |
1.女性の活躍推進 女性社員比率 2022年度 15.0% 女性管理職比率 2022年度 4.1% |
2.キャリア採用、外国人採用(国内連結) 複数名 |
2.キャリア採用、外国人採用 キャリア採用比率(総合職) 外国人採用 (総合職) |
|
3.専門職制度、専門性の高いキャリア採用、シニア社員向け施策の充実 |
3.事業戦略に即した専門性の高い即戦力人財のタイムリーな採用実施、シニア社員制度改定(キャリア活用シート・目標管理制度導入) |
|
に社関内す環る境方整針備 |
4.働きやすく働きがいのある職場づくりと従業員満足度の向上 |
4.社内公募制度拡充、社内副業制度検討着手 ライフサポート休暇・キャリア相談室新設 107%(UBE単独) 健康経営 2022年度 優良法人認定8社 |
※これまで数値目標としていた15%を前倒しして達成したことにより、新たな数値目標を設定しています。
推進している具体的な取組みは、以下のとおりです。
(a)人財の多様性の確保を含む人財の育成に関する取組み
ア)女性の活躍推進
当社グループは、女性活躍推進に特に力を入れており、管理職比率・社員比率の目標を設定し、積極的な登用・育成を通じ、あらゆる意思決定の場で活躍できる体制を構築しています。2023年度はグループ各社と当社人事担当役員双方による意見交換・研修会を実施し、働きやすく働きがいのある職場環境のためアクションプランを設定しました。当社グループが一体となって様々な取組みを推進しており、例として、男性育休取得率は当社グループ全体で99%に達し、男性社員が育児に関わる時間が増加することによって、女性の職場での活躍にも寄与しています。また、当社では家族の記念日等のライフイベントや育児、不妊治療、ボランティア活動等のためのライフサポート休暇を設定し、社員の積極的利用を促しています。そのほか社内公募制やキャリア相談室を設置し、更に2023年度には、社内副業制度の設計に着手する等、全ての社員の活躍推進を積極的に支援しています。
イ)専門性の高い人財の採用とシニア社員向け施策の充実
当社グループでは、人々の生命と健康、そして豊かな未来社会に貢献するために、スペシャリティ化学の会社として多様な個性を持つ人財の採用に取り組んでいます。計画的に新卒採用及びキャリア採用を実施し、外国人採用も積極的に進めています。
とりわけ、経営戦略として掲げるスペシャリティ化学の強化実現に向け、事業戦略に即した専門性の高い即戦力人財をタイムリーに獲得すべくキャリア採用を強化しています。
シニア社員向け施策の面では、2023年度にシニア社員制度を改定しました。改定内容は透明性を重視し、期待役割の明確化・認識共有から目標設定をする面談制度・実績重視の評価制度を取り入れています。特に期待役割では、高度な専門能力を発揮するスペシャリストや、若手社員が支援を必要とする中長期的重要案件を担う特命案件等6種を明確化し、シニア社員がもつ個の力を生かす体制とともにリスキリング(自己啓発)支援を通じ、更なる自己実現を目指す仕組みとなっています。
ウ)キャリア開発支援
当社では、「キャリア開発シート」を年に1回作成し、上司との面談を通じて社員一人ひとりが自律的にキャリアプランを考える風土を醸成しています。また、「キャリア相談室」を設置し、キャリア相談員との面談を通じて仕事やキャリアにおける課題の解決を支援する仕組みづくりを行っています。更に、社内公募を定期的に実施することで、業務の垣根を越えた新たな成長の場を提供し、また社内副業制度の検討に着手しました。
今後も、一人ひとりの個性や志向を尊重しながら、社員が自らキャリアを描きその実現に向け成長できる環境を提供し、個人の能力や創造性を活かした組織パフォーマンスの向上に繋げていきます。
(b)社内環境整備に関する取組み
ア)ワークエンゲージメントの向上
当社は、重要なステークホルダーである社員と経営層の対話を積極的に行っています。各種アンケートを通じてエクイティ実現のためのニーズを把握し、フィードバックを行うとともに、スピード感を持って施策に反映しています。また、社員と経営層が直接対話をしてUBEのありたい姿について直接意見を交わし、共感の深化を進めています。2023年度は、ストレスチェックの指標を活用した分析に加え、プレゼンティーズム(何らかの健康問題によって業務効率が落ちている状況)を測定するWFun*¹やK6*²を継続実施し、外部EAP(従業員支援プログラム)と連携した対話型ポジティブメンタルヘルスワークショップを行い、組織パフォーマンスと社員のワークエンゲージメントの向上を推進しました。今後は、社員一人ひとりのモチベーション向上がワークエンゲージメントに直結するよう、若手社員の抜擢・育成強化、キャリア形成の選択肢拡充、自己啓発を通じた学びの機会を提供するといった施策を進めていきます。これら施策の充実は、キャリアオーナーシップの体制構築の基盤となり、2024年度以降のワークエンゲージメント向上の取組みにつながると考えています。
*¹ WFun:健康問題による労働機能障害の程度を測定するための調査票
*² K6 :こころの健康状態を測定するための質問票
イ)健康経営の推進
当社グループは、中長期的企業価値の向上を目指し、疾病管理のみならず健康維持・増進への投資を実施し、健康経営の浸透と定着を図っています。当社では、自律的な健康管理と心身ともに健やかかつ働きやすい職場環境整備のため、健康管理アプリの導入、ヘルスリテラシー向上のためe-ラーニングの実施、3分健康アドバイスの発信、「健康経営宣言」「健康経営スローガン募集」による労使一体活動等を行っています。また、各職場の自発的な健康増進支援のため、職制上司向けに定期的な健康情報提供を行っています。
更に、近年は当社グループ全体の健康経営を積極的に推進しており、2023年度は健康経営度調査に申請した14社全てが優良法人に認定、うち宇部物流サービス㈱と㈱福島製作所の2社がブライト500に認定されました。
ウ)人権の尊重
当社グループは、「人権の尊重」を企業活動の基本に据えています。国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に準拠して「UBEグループ人権指針」を定め、企業としての社会的責任を果たします。
当社グループ全体での人権教育推進体制を整え、継続的に人権教育を実施し、当社グループの全役員・社員が人権について正しい理解と認識を持ち、あらゆる事業活動において一人ひとりが尊重されるよう取り組んでいます。2023年度は人権週間に合わせて当社国内グループ全体でe-ラーニングを実施し、「ビジネスと人権」「人権デューディリジェンスとUBEの取組み」について学びました。
また、人権デューディリジェンスの取組みとして、企業活動による人権に対する負の影響を特定し、それを防止、軽減する活動を進めています。行動計画に基づいて2024年までにPDCAを実施し、2025年以降はそのサイクルを回して継続的に取り組んでいきます。
これまでの取組みにより、働きやすい環境は整いつつあります。今後も「ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン」を推進しながらも働きがいとワークエンゲージメントの向上を重視した取組みを行っていきます。
当社グループの事業その他に関するリスクについて、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項を下記のとおり記載します。
これらの事項は、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を与える可能性がありますが、当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、リスクの回避・分散及び発生した場合の対応、リスクの移転、危機管理対策等に最大限努力する方針です。
下記事項には、将来に関するものが含まれますが、当該事項は当連結会計年度末現在において判断したものであり、また、事業等のリスクはこれらに限られるものではありません。
(1)各事業の経営成績に影響を与える変動要因
当社グループは、化学及び機械の事業分野で様々な製品を製造・販売しており、各事業分野において想定されるリスクは以下のとおりです。
①化学事業
ベーシック事業については、同業他社の生産能力増強により当該製品の供給が大幅に増加した場合やベンゼン、ブタジエン等の主原料価格が国際的な需給バランスや原油等のエネルギー価格の変動により急激に変動した場合には、製品と主原料の価格差(スプレッド)が著しく縮小することで業績に悪影響を与える可能性があります。また、原料の一部については特定の地域や供給元に依存しているため、供給元の事故等により必要な原料を確保できない場合があります。スペシャリティ事業については、情報技術やデジタル家電関連等の短期的な世代交代が起こり得る製品では、顧客要求にタイムリーに応じられないことによる販売量の減少や競争激化に伴う価格低下によって業績に悪影響を与える可能性があります。
以上のようなリスクに対して、(一)原料市況動向の注視と価格高騰時の製品価格への迅速な転嫁による適正スプレッドの確保、(二)工場におけるコストダウンや不採算事業の能力縮小・撤退、(三)経営資源の重点投入によるスペシャリティ事業の成長加速等、収益基盤の強化に積極的に取り組んでいます。
②機械事業
機械事業の主力製品は、ダイカストマシン、射出成形機、運搬機、除塵機、化学機器、粉砕機等であり、内燃エンジン系自動車販売台数の減少や公共事業の減少、原燃料価格高騰による電力会社をはじめとした各社の回復の遅れに加え、脱炭素社会に向けた設備投資や補修予算を控えた場合には、受注や出荷、サービス提供の減少といった影響を受ける可能性があります。また、グローバル化する市場においては、各国の景気の減速、貿易摩擦、競合メーカーの台頭等で販売が減少する可能性があります。
以上のようなリスクに対して(一)他社製品を含めたアフターサービス事業の拡充による収益拡大・安定化、(二)コストダウンの強化、(三)カーボンニュートラル・DXやリサイクル事業等の成長市場における顧客ニーズへの対応力強化等、収益基盤強化に積極的に取り組んでいます。
(2)地球環境問題
気候変動問題については、当社グループはこれまで石炭を有効活用しつつ事業の拡大を図ってきましたが、炭素税や規制等が強化された場合、税負担等が増加することでコストが増加する可能性があります。また、環境意識の高まりが脱炭素社会への移行を早め、ステークホルダーから気候変動問題への対応が遅れている企業と評価されることにより製品の販売が低迷する等、企業価値に悪影響を与える可能性があります。更に、地球環境の変化により自然災害が激甚化・高頻度化する場合、製造拠点の設備被害、物流網の遮断、原材料等の入手困難等により生産活動に悪影響を与える可能性があります。
また、サーキュラーエコノミーやネイチャーポジティブ等の地球環境に関する関心の高まりを背景に、顧客等から当社グループ製品に対する要求が変化する可能性があり、この問題への対応が遅れることにより、製品の販売が低迷する等、企業価値に悪影響を与えることが予測されます。
以上のようなリスクに対して当社グループは、これらの地球環境問題を経営の最重点課題と設定し、エネルギー効率の向上やカーボンニュートラルなバイオマス燃料への置き換え等によりGHGの発生・排出の削減に注力するとともに、当社グループの強みを生かした環境負荷低減に資する製品・技術の開発と普及を推し進めることにより、脱炭素社会への貢献に努めています。また、廃プラスチックのリサイクルはもとより、これまで回収の難しかった複合プラスチックのリサイクル技術の開発等、資源循環につながる取組みについても積極的に行っています。
(3)製品品質・製造物責任
当社グループの製品は、自動車部品やデジタル家電、医薬品、家庭用品等の身近なものから、社会インフラの整備まで多くの分野で使用されます。そのため、品質に瑕疵のある製品が出荷された場合、その波及範囲は広範囲にわたり、安全上や健康上他の問題に至らない場合であっても、当該製品の回収や顧客への損害賠償等、多額の費用が発生し、更に、社会的な信用失墜により事業活動が低迷する可能性があります。
以上のようなリスクに対して当社グループは、工程管理を確実に行うための設備の維持や適切な測定機器の設置、作業マニュアルの整備、従業員の教育等に努め、万一の不良品発生及び流出を防止できる体制を構築するとともに、国内外を対象とした生産物賠償責任保険に加入しています。更に、当社グループでは、過去に判明した品質検査に関わる不適切事案の対策として、品質保証委員会を設置し、毎年の品質大会開催等、ガバナンスの強化、全従業員に対する継続的な教育の実施等、再発防止と風化防止に努めています。
(4)大規模事故(爆発・火災・漏洩事故)
当社グループの製造事業所、特に化学製品の製造工場では、多種、大量の高圧ガスや危険物等の原材料、電気、スチーム等のエネルギーを使用しており、設備故障、人為的ミス、自然災害により大規模な爆発・火災・漏洩が発生する可能性があります。その場合には、従業員・地域住民等の生命・身体・財産並びに環境へ重大な影響を与えることとなり、事故対応や復旧の費用、生産活動の停止による機会損失及び顧客・地域住民に対する補償が生じることで、業績に深刻な影響を与える可能性があります。
以上のようなリスクに対して当社グループは、「安全はすべてに優先する」を環境安全共通の価値観として、基本行動の徹底、関連法令の遵守の徹底、設備の定期点検及び適切な維持補修、教育・経験を積んだ従業員の確保、管理マニュアルの整備、HAZOP(Hazard and Operability Study)等リスクアセスメントの実施、DXを活用したスマートファクトリー化、防災訓練の定期実施、環境安全監査等により、爆発・火災・漏洩等の事故の予防に取り組んでいます。
(5)研究開発
当社グループは、需要家のニーズに合わせた新技術・新製品をタイムリーに上市するために、あるいは次世代の事業の創出のために探索研究を含む研究開発に取り組んでいます。研究開発は長期間にわたることもあり、研究開発テーマが計画どおり進まず、新製品の開発が著しく遅延することや開発を断念した場合、あるいは医薬事業においては新薬の承認見送りや承認取り消しがなされた場合には、事業における競争力が低下し業績に悪影響を与える可能性があります。
以上のようなリスクに対して当社グループは、将来の市場ニーズを見据えた事業ポートフォリオに基づいて重点的に経営資源を投入し研究開発成果の早期実現と精度の向上を図ることにより、スペシャリティ事業の伸長に取り組んでいます。
(6)自然災害
当社グループは、国内外に製造拠点や営業拠点を有しており、これらの施設が、想定を超えた大規模な地震、台風、集中豪雨、津波等の自然災害により甚大な被害を受け、製造拠点における生産停止や営業拠点の活動休止等が発生する可能性があります。その場合には、建物・製造設備の復旧、棚卸資産の廃棄、設備の再稼働や原料調達・製品出荷の遅延等により、多額の費用及び機会損失が発生し業績に悪影響を与える可能性があります。
以上のようなリスクに対して当社グループは、危機対応委員会及び自然災害対策委員会を設置し、災害発生時の対応マニュアル等の整備、建物・製造設備の計画的な改修・強化、定期的な防災訓練、教育、リスクマネジメント制度を活用した個別リスクの抽出と対策等を実施しています。また、早期に事業復旧を図る仕組みとして、自然災害発生時における事業継続計画(BCP)を策定し、定期的な見直しと訓練を行っています。
(7)情報セキュリティ
当社グループは、各種業務システムやプラント制御システムを利用しており、年々高度化しているサイバー攻撃や不測の事態によるシステム停止、重要情報の漏洩や破壊等の被害が発生した場合、生産活動の停止、損害賠償や信用の失墜により、業績に悪影響を与える可能性があります。
以上のようなリスクに対して当社グループは、サイバーセキュリティを重要な経営リスクの一つとして捉え、情報セキュリティ委員会の設置、関連規程の整備と周知、不正侵入探知・防御等の技術的な対策、IT-BCPの整備・訓練、当社グループの全役員・社員に対するセキュリティ教育と訓練等を実施するとともに、CSIRT(Computer Security Incident Response Team)を設置する等のセキュリティインシデント発生時の被害を最小化するための体制を構築しています。また、これら対策状況を定期的に評価、改善を行いリスクの低減に努めています。
(8)法令・規制
当社グループは、国内外に製造拠点や営業拠点を有し、様々な国々・地域に製品を供給していることから、各国・地域における製造・営業活動に関わる法令・規制を遵守する必要があり、これらが改定された場合には、製造設備等の改修や変更、労働環境の整備等で費用が発生する可能性があります。また、法令・規制に違反した場合には、多額の罰金・制裁金・賠償金、従業員の収監等を受けるだけでなく、事業活動の制約や社会的信用に悪影響を与える可能性があります。
以上のようなリスクに対して当社グループは、コンプライアンスの確保・推進及び市場における公正で自由な競争を損なう行為を防止し、企業活動の健全性確保のためコンプライアンス・オフィサーを置き、その諮問機関として顧問弁護士を加えたコンプライアンス推進委員会を設置しています。また、コンプライアンスに関わる問題を迅速に察知・是正するため、職制ルートによらず役員・従業員が直接連絡できる通報窓口(UBE C-Line)を設けています。
事業活動に関わる国内外の主な法規制をリスト化し、当該法令等の主幹部署と関連する部署において法規制の改廃の情報を漏れなく共有する体制を整備するとともに、リスクマネジメント制度において法規制に関わるリスクを洗い出し、各々のリスクに対する対策を実施しています。また、当社グループの全役員・社員を対象にしたe-ラーニング・研修の定期実施等によって法規制の遵守とそれを堅持する企業風土を醸成しています。
加えて、近年、安全保障の観点に立った貿易管理の必要性が高まる中、これに対応すべく、安全保障輸出管理委員会を設置し関連する法令への違反リスクを回避する体制を構築しています。
(9)人的資本・人権
当社グループは、競争の激しい市場において、製品やサービスの提供を継続し企業価値の向上のため、新規性のある製品や市場の創出、付加価値の高いビジネスモデルの構築等が不可欠であり、多様な技術・知識・視点を融合させてイノベーションを生み出せる高い専門性を持つ人財を獲得する必要があります。また、従業員にはOJTや教育訓練の面から、経験豊富な人財並びに業務やプラント運転操作等のノウハウを持った人財の確保も重要になります。こうした優秀な人財の獲得が困難となる場合や、重要な人財の社外流出が生じた場合には、企業活動に悪影響を与える可能性があります。
以上のようなリスクに対して当社グループは、経営方針に「個性と多様性の尊重と働きやすい職場環境の整備」を掲げ、「ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン」を推進しています。女性活躍推進をはじめ、シニア人財の活躍支援や障がい者雇用に取り組み、働きがいのある職場を提供するとともに、賃金を含む待遇改善や、多様な人財一人ひとりが活躍できる柔軟な働き方の整備、労働時間の短縮を推進しています。
一方、当社グループやサプライチェーンにおいては、国際的な「ビジネスと人権」に関する意識の高まりを背景に人権に関する高度な対応が求められており、適切な対応が講じられていない場合、企業価値に悪影響を及ぼす可能性があります。
このようなリスクに対して当社グループは、UBEグループ人権指針のもとに取引先とともにサプライチェーン全体の人権尊重に取り組んでおり、人権デューデリジェンスの体制整備を推進しています。また、社内の人権教育体制を整え、人権教育を実施し、当社グループの全役員・社員が人権について正しい理解と認識を持ち行動できるよう取り組んでいます。
(10)金融市場
当社グループは、金融機関からの借入や社債の発行等による資金調達を行っています。主要金融市場において著しい混乱が発生する場合、あるいは当社に対する信用格付が大幅に引き下げられる等の信用力が著しく低下した場合には、好ましい条件で資金調達ができず、成長投資等のために必要な資金を十分に確保できない可能性があります。
以上のようなリスクに対して当社グループは、キャッシュ・フローを重視した経営を行い健全な財務体質を確保・維持するとともに、現預金、コミットメントライン等において十分な流動性を確保しながら、返済(償還)期限の分散、調達手段の多様化を図ることで、資金調達環境変動の影響を低減するよう取り組んでいます。また、当社グループは、外貨建てによる原材料等の輸入や製品等の輸出に伴い、外国為替相場の変動による影響を受ける可能性がありますが、債権債務を概ね均衡させるとともに、適宜為替予約等を実施することで、その影響の低減に取り組んでいます。
(11)海外事業展開(カントリーリスク)
当社グループは、化学製品並びに機械製品については、海外に生産、開発、サービス拠点を有しており、アジア、北中南米、欧州等にて主に事業活動を展開しています。2023年度の海外売上高は、連結売上高の約50%を占めています。これらの事業活動には、海外の政治・経済情勢の悪化、戦争・紛争・テロ等に伴う社会的混乱、進出先の外資に対する規制強化、経済・通商政策の変更、環境関連の規制強化、労働争議の発生等のリスクが内在しており、これらが顕在化した場合は業績に悪影響を与える可能性があります。
以上のようなリスクに対して当社グループは、海外事業展開における緊急事態に速やかに対処するため、情報の集約や緊急時の対応等のマニュアルを整備し、専門コンサルタントを有効活用するとともに、危機対応委員会が主体となり、必要な情報の収集及び現地の各拠点との適時・適切な情報共有を行える体制を整えています。更に、有事の際には対策本部を設置し、従業員の安全を最優先事項として迅速・的確な対応を図っていきます。
(12)知的財産権
当社グループは、知的財産権が重要な資産であることを認識し、事業競争力の強化を図っていますが、当社グループの重要な技術やノウハウが予期せぬ事態により外部に流出する可能性や当社グループの知的財産権が侵害される可能性があります。他方、将来的に他社との間で知的財産を巡って紛争が生じた際に当社グループに不利な判断がなされる可能性があります。このような場合には、事業における競争力が低下し業績に悪影響を与える可能性があります。
以上のようなリスクに対して当社グループは、国内外において知的財産権の取得・管理、更に、技術ノウハウ等の適正な情報管理等により知的財産の保護を図るとともに、第三者が保有する知的財産権についてもその権利を尊重し、特許クリアランスの確保に万全を期しています。
(13)買収・資本提携
当社グループは、事業拡大、技術獲得、又は競争力強化等を目的として、国内外において企業買収・資本提携等を実施しています。このような買収や資本提携等においては、当初の期待を下回るシナジー効果、コスト改善の失敗、想定外の瑕疵の発覚や債務の拡大、出資先企業の経営成績や財政状態の悪化による企業価値の低下等によって業績に悪影響を与える可能性があります。
以上のようなリスクに対して当社グループは、事前段階の適切な市場調査やデューデリジェンス、慎重な事業評価と契約交渉、十分な社内審議等のプロセスを経ることで、リスクを極力低減させることに努めています。
(14)訴訟
当社グループは、国内外で行う広範な事業活動の中で訴訟、その他の法的手続に関わる場合があります。将来の帰趨を予測することは困難ですが、訴訟等において不利益な決定や判決がなされる場合には、業績に悪影響を与える可能性があります。なお、現在係争中の主な訴訟事件は次のとおりです。
2008年5月以降、建設作業等従事者及びその遺族らが国及びウベボード㈱(当社連結子会社)を含む建材メーカー40社余に対して、建設現場で使用されていた石綿含有建材の石綿粉じんを吸引して石綿関連疾患に罹患したとして、連帯して損害を賠償するように求めて訴えを順次提起していますが、これまでの判決において、ウベボード㈱に対する請求はいずれも棄却されました。現在、全国の裁判所に15件の訴訟が係属中で、その請求額は最大で64億円です。
以上のような訴訟リスクに対しては、業務に関連する法令情報の収集や法令遵守に関する研修等を継続的に実施し、紛争発生を予防するとともに、訴訟の発生後も弁護士等と適切に連携を取りながら訴訟活動を行うことによって、会社業績への影響の低減等に努めています。
(注)上記の請求額は、ウベボード㈱を被告とする訴えの請求額を合計したもので、国及び他の建材メーカーと連帯して請求を受けているものです。
(15)サプライチェーン
当社グループは、国内外から種々の原燃料、資材等を調達し、また、国内外に製品を出荷しています。調達においては、関連企業の倒産、戦争・紛争・テロ、パンデミック、自然災害、地球環境問題、人権問題等により原燃料価格の上昇や調達ルートの寸断等が発生し、また、物流においてはドライバー不足や時間外労働規制強化、燃料費の高騰によりコストの上昇や寸断が発生し、ともに当社グループの業績に悪影響を与える可能性があります。
以上のようなリスクに対して当社グループでは、原燃料及び資材価格の上昇に対しては下請法等の関連法規を遵守した適切な交渉を行うとともに、製品価格への迅速な転嫁や製造コストの削減による当社損益影響の軽減策を実施し、調達ルートの寸断に対しては、原燃料の調達先及び生産拠点の分散、適正な在庫量の確保等、リスクが顕在化した場合には、被害の最小化に努めています。また、物流のコスト上昇や寸断に対しては、国内物流ではモーダルシフトの拡充、海外物流では複数輸送手段の確保等安定した輸送体制の確保、国内ドライバーの負担削減では輸送ロットサイズを拡大することによる小ロット輸送の削減と運行車両数の集約に加え、構内物流会社と連携した荷待ち時間・荷役時間の把握と削減等に努めています。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。
①経営成績の状況
当社グループは、2022年度からスタートした3カ年の中期経営計画「UBE Vision 2030 Transformation~1st Stage~」において、「スペシャリティ化学を中心としてグローバルに利益成長を追求」「地球環境問題に対応した事業構造改革」「持続的成長に向けた人的資本の充実」「DXの推進による企業価値の向上と顧客価値の創出」「ガバナンスの更なる向上」を基本方針とし、事業構造改革と成長の実現に向けた取組みを推進してきました。
当連結会計年度においては、売上高は、2022年12月に医薬品受託製造会社(㈱エーピーアイコーポレーション)を買収した効果があったものの、樹脂・化成品セグメントにおいて中国経済の停滞等の影響もありナイロンポリマー・カプロラクタム等の販売が低調に推移した影響が大きく、前連結会計年度を下回りました。営業利益は、樹脂・化成品セグメントにおいてファインケミカルや工業薬品等の販売が低調に推移したものの、機能品セグメントにおける分離膜の販売、機械セグメントにおけるアフターサービスが堅調に推移し、また医薬事業のロイヤリティ収入も増加したことなどから、前連結会計年度を上回りました。経常利益・親会社株主に帰属する当期純利益は、営業利益の増加に加え、セメント関連事業(持分法適用関連会社であるUBE三菱セメント㈱)において石炭等エネルギー価格高騰を反映させた販売価格への是正等を進めたことにより持分法投資損益が改善し、前連結会計年度を大幅に上回りました。
この結果、当社グループの売上高は前連結会計年度に比べ265億1百万円減の4,682億3千7百万円、営業利益は62億4千6百万円増の224億5千6百万円、経常利益は363億3千3百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は289億8千1百万円となりました。
項 目 |
売上高 |
営業利益 |
経常利益 又は経常損失(△) |
親会社株主に帰属する当期純利益又は親会社株主に帰属する当期純 損失(△) |
当連結会計年度 |
468,237百万円 |
22,456百万円 |
36,333百万円 |
28,981百万円 |
前連結会計年度 |
494,738百万円 |
16,210百万円 |
△8,745百万円 |
△7,034百万円 |
増 減 |
△26,501百万円 |
6,246百万円 |
45,078百万円 |
36,015百万円 |
増 減 率 |
△5.4% |
38.5% |
- |
- |
②生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前年同期比(%) |
機能品 |
60,751 |
△0.9 |
樹脂・化成品 |
262,601 |
△9.2 |
機械 |
90,820 |
△1.7 |
その他 |
34,076 |
21.1 |
合計 |
448,248 |
△4.8 |
(注)金額は平均販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去前の数値によっています。
b.受注実績
当連結会計年度における機械の受注実績を示すと、次のとおりです。
なお、機械を除くセグメントの製品については、受注生産は行っていません。
セグメントの名称 |
受注高(百万円) |
前年同期比(%) |
受注残高(百万円) |
前年同期比(%) |
機械 |
81,931 |
10.2 |
57,267 |
9.6 |
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前年同期比(%) |
機能品 |
63,750 |
2.6 |
樹脂・化成品 |
257,175 |
△12.3 |
機械 |
96,886 |
△0.0 |
その他 |
80,491 |
10.1 |
消去 |
△30,065 |
- |
合計 |
468,237 |
△5.4 |
(注)セグメント間の取引については相殺消去前の数値によっています。
③財政状態
総資産
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ563億5千3百万円(7.7%)増加し、7,890億3千4百万円となりました。
流動資産は、現金及び預金、仕掛品等の棚卸資産が増加したことなどにより125億6千2百万円(4.4%)増加し、2,956億7千8百万円となりました。
固定資産は、有形固定資産や投資有価証券、退職給付に係る資産が増加したことなどにより437億8千5百万円(9.7%)増加し、4,932億1百万円となりました。
繰延資産は、社債発行費が増加したことにより6百万円(4.0%)増加し、1億5千5百万円となりました。
負債
当連結会計年度末の負債は、前連結会計年度末に比べ86億2千9百万円(2.5%)増加し、3,596億7千9百万円となりました。有利子負債は47億1千1百万円(△2.2%)減少し、2,134億3千2百万円となりました。
流動負債は、短期借入金や1年内償還予定の社債、契約負債が増加したことなどにより259億8千9百万円(15.1%)増加し、1,982億2千1百万円となりました。
固定負債は、長期借入金が減少したことなどにより173億6千万円(△9.7%)減少し、1,614億5千8百万円となりました。
純資産
当連結会計年度末の純資産は、前連結会計年度末に比べ477億2千4百万円(12.5%)増加し、4,293億5千5百万円となりました。
株主資本は、利益剰余金が配当により92億2千万円減少したものの、親会社株主に帰属する当期純利益により289億8千1百万円増加したことなどにより185億2千9百万円(5.5%)増加し、3,536億1千6百万円となりました。
その他の包括利益累計額は、為替換算調整勘定が増加したことなどにより285億4千9百万円(107.6%)増加し、550億7千3百万円となりました。
非支配株主持分は、6億5千5百万円(3.3%)増加し、206億4百万円となりました。
この結果、自己資本比率は、前連結会計年度末に比べ2.4ポイント増加し、51.8%となりました。
|
当連結会計年度 |
前連結会計年度 |
増 減 |
総資産 |
789,034百万円 |
732,681百万円 |
56,353百万円 |
負債 |
359,679百万円 |
351,050百万円 |
8,629百万円 |
純資産 |
429,355百万円 |
381,631百万円 |
47,724百万円 |
④キャッシュ・フローの状況
営業活動によるキャッシュ・フロー
営業活動により得られた資金は529億6千万円(前連結会計年度に比べ348億3千3百万円の増加)となりました。これは税金等調整前当期純利益、減価償却費、運転資金の増減等から法人税等の支払額を控除した結果となります。
投資活動によるキャッシュ・フロー
投資活動の結果使用した資金は333億1千6百万円(前連結会計年度に比べ72億9千7百万円の増加)となりました。これは設備投資による支出等によるものです。
財務活動によるキャッシュ・フロー
財務活動の結果使用した資金は157億1千2百万円(前連結会計年度は24億4千3百万円の収入)となりました。これは配当金の支払い、有利子負債の返済等によるものです。
この結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、現金及び現金同等物に係る換算差額を含め、前連結会計年度末に比べ51億5千6百万円(16.8%)増加し、358億5千9百万円となりました。
|
当連結会計年度 |
前連結会計年度 |
増 減 |
営業活動によるキャッシュ・フロー |
52,960百万円 |
18,127百万円 |
34,833百万円 |
投資活動によるキャッシュ・フロー |
△33,316百万円 |
△26,019百万円 |
△7,297百万円 |
財務活動によるキャッシュ・フロー |
△15,712百万円 |
2,443百万円 |
△18,155百万円 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析、検討内容
中期経営計画の2年目に当たる当連結会計年度の業績は、前連結会計年度に比べ、売上高は機能品セグメントとその他セグメントを除き減少しました。2022年12月に医薬品受託製造会社(㈱エーピーアイコーポレーション)を買収した効果があったものの、樹脂・化成品セグメントにおいて中国経済の停滞等の影響もありナイロンポリマー・カプロラクタム等の販売が低調に推移したことが大きく影響したためです。営業利益は樹脂・化成品セグメントにおいてファインケミカルや工業薬品等の販売が低調に推移したものの、機能品セグメントにおける分離膜の販売、機械セグメントにおけるアフターサービスが堅調に推移し、また医薬事業のロイヤリティ収入も増加したこと等により、樹脂・化成品セグメントを除き増加しました。
<売上高>
|
当連結会計年度 |
前連結会計年度 |
増 減 |
増減率 |
機能品 |
63,750百万円 |
62,158百万円 |
1,592百万円 |
2.6% |
樹脂・化成品 |
257,175百万円 |
293,388百万円 |
△36,213百万円 |
△12.3% |
機械 |
96,886百万円 |
96,921百万円 |
△35百万円 |
△0.0% |
その他 |
80,491百万円 |
73,110百万円 |
7,381百万円 |
10.1% |
調整額 |
△30,065百万円 |
△30,839百万円 |
774百万円 |
- |
合計 |
468,237百万円 |
494,738百万円 |
△26,501百万円 |
△5.4% |
<営業利益>
|
当連結会計年度 |
前連結会計年度 |
増 減 |
増減率 |
機能品 |
12,110百万円 |
10,243百万円 |
1,867百万円 |
18.2% |
樹脂・化成品 |
2,427百万円 |
2,592百万円 |
△165百万円 |
△6.4% |
機械 |
7,168百万円 |
5,237百万円 |
1,931百万円 |
36.9% |
その他 |
4,549百万円 |
2,596百万円 |
1,953百万円 |
75.2% |
調整額 |
△3,798百万円 |
△4,458百万円 |
660百万円 |
- |
合計 |
22,456百万円 |
16,210百万円 |
6,246百万円 |
38.5% |
各セグメントの主要製品の状況は次のとおりです。
機能品セグメント
主要な事業内容 |
ポリイミド、分離膜、セラミックス、セパレータ等の製造・販売 |
◆ポリイミド
ポリイミドについては、需要の回復の確実な取り込みと原料(BPDA)及びフィルムの新規製造設備立ち上げによる販売拡大を進めるとともに、革新的な新規ポリイミド製品で新たな需要を創出していきます。
当連結会計年度においては、大型ディスプレイ向けCOFフィルムでは、高いシェアを維持するとともに、フレキシブルOLED基板向けワニスでは、ハイエンドスマートフォンでの標準材としての地位を維持することで、安定した収益の確保を図りました。
足元の事業環境においては、大型ディスプレイ向けCOFフィルムは、中国パネルメーカーの稼働率も徐々に上がっており、在庫調整も一巡したことから回復傾向にあります。
今後については、革新的なポリイミドワニスの開発や、ディスプレイに加えモビリティー・半導体用途での事業拡大を図っていきます。
◆分離膜
分離膜については、生産能力の増強を着実に進め、環境・エネルギー分野を基軸とした事業拡大と商品力強化に取り組んでいます。
当連結会計年度においては、旺盛な需要に応えるべくボトルネック対策による生産能力の増強に努め、また、2025年度上期に稼働予定の分離膜用ポリイミド中空糸膜製造設備及び分離膜モジュール製造設備の建設を進めました。
足元の事業環境では、中期計画を大きく上回って受注量が増加しており、特にバイオメタン製造向けCO2分離膜の旺盛な需要が継続しています。
今後については、バイオメタン製造向けCO2分離膜の旺盛な需要は継続していくと見込んでおり、また、アルコール脱水膜やSAF(持続可能航空燃料)、化学品製造等で必要とされる水素を回収・有効利用するための水素分離膜についても需要の増加が予測されます。従って、更なる新規設備投資の検討や需要急増へ対応可能な柔軟な設備体制の構築や、環境エネルギー分野を中心としたアジア市場へのマーケティング強化を図っていきます。
◆セラミックス
セラミックス(窒化珪素)については、急拡大するxEV向けの需要に応えるために生産能力の増強を着実に進め、成長機会を掴みます。
当連結会計年度においては窒化珪素製造設備の増設を決定しました。本設備の稼働開始は2025年度下期を予定しています。
足元の事業環境は、xEV市場向けの軸受及び基板用の川下顧客の増産計画も進行する中、需要拡大が加速しており、需給バランスが非常にタイトになっています。拡大する需要に対応するために、2025年度下期を予定する新規製造設備の稼働開始を前に、既存設備の生産性向上も図っていきます。
今後についてもxEV市場の成長に伴い旺盛な需要が見込まれる軸受や基板用途向けでの拡販、事業拡大に取り組んでいきます。
◆セパレータ
セパレータについては、xEV向けでの競争力強化による販売拡大に加え、今後の成長が期待される電力貯蔵システム向けをはじめとする非車載用途での成長機会を掴みます。
当連結会計年度においては、HEV向け既存顧客の確実な受注と新規案件獲得による販売拡大に努めるとともに、コスト競争力のある大型生産ラインへの集約と品質の向上を推進しました。
足元の事業環境では、世界的な脱炭素化社会の流れで自動車の電動化及び再生可能エネルギー発電の普及による電力貯蔵システムの需要が拡大しています。また、半導体等の部材不足が解消され、xEV市場は順調に回復しています。
今後については、新規製造設備稼働による生産量アップと更なるコストダウンによる販売拡大、加えて乾式膜の特性を活かした新規製品開発による次世代xEVや非車載市場での用途展開を加速させていきます。
樹脂・化成品セグメント
主要な事業内容 |
コンポジット、ナイロンポリマー、カプロラクタム(ナイロン原料)、硫安、工業薬品、 C1ケミカル、高機能コーティング、エラストマー(合成ゴム)等の製造・販売 |
◆コンポジット
コンポジットについては、新規コンポジット分野開拓によるスペシャリティ強化及びグローバル展開を目指しています。
当連結会計年度においては、タイでコンパウンド4号機の製造設備を導入しました。また、環境貢献型製品へのニーズ増加に対応すべく、リサイクルビジネスへの参入の足掛かりとして、廃漁網回収ベンチャー企業(amu㈱)へ出資しました。
足元の事業環境においては、自動車用途の需要は2023年度上期を底に緩やかに回復しましたが、中国経済の停滞による影響で、プラスチックマグネットや建材用途等は需要の低迷が継続しています。
今後については、グローバル拠点の更なる生産能力増強・開発機能強化によるマーケットインへの体制強化を目指し、タイでの4号機の垂直立ち上げ等による既存付加価値製品のグローバル展開、地産地消化の推進、並びにバイオマス由来ナイロンや廃漁網活用等の環境貢献型製品の開発等を行っていきます。
◆ナイロンポリマー
ナイロンポリマーについては、環境貢献型製品の開発や市場投入、アジア生産体制の最適化を進めていきます。
当連結会計年度においては、タイへの共重合グレード生産移管は計画どおり進捗しました。また、インド、中南米等の需要旺盛な新興国市場で販売拡大しました。
足元の事業環境においては、主力の国内食品包装用フィルム用途の需要は停滞が続いています。グローバルベースで中国品との価格競争は継続しますが、南アジアをはじめとする旺盛な新興国需要が販売量を下支えしています。
今後については、高付加価値グレード及び環境貢献型製品を主軸とする価格競争に晒されないスペシャリティ化の継続を図るべく、欧州市場におけるフィルム分野での端材回収PIR(Post Industrial Recycle)ビジネスの展開や環境貢献型製品(リサイクル・バイオマス原料等)の市場投入を行っていきます。
◆カプロラクタム・硫安
ナイロン原料のカプロラクタム及び硫安については、事業損益変動の最小化に向けた再編の検討及び実行を加速するとともに、大粒硫安等の高付加価値製品の事業拡大に取り組んでいます。
当連結会計年度においては、2024年度の国内カプロラクタム生産量縮小に向けた顧客対応を進めました。また、スペインでの付加価値品硫安増産及び、N2О(亜酸化窒素)排出量低減に向けた検討を本格化しました。
足元の事業環境においては、原料価格の変動や中国を中心とした供給過多、川下需要の低迷により厳しい状況となっています。
今後については、大粒硫安増産による高付加価値製品の事業拡大を目指すとともに、日本・タイでのカプロラクタム生産体制の最適化を検討し、市況変動に対するエクスポージャー(感応度)を低減していきます。
◆工業薬品
工業薬品についても、事業損益変動の最小化に向けた再編の検討及び実行を加速するとともに、高純度硝酸、高純度安水の高付加価値製品の事業拡大に取り組んでいます。
当連結会計年度においては、高純度硝酸工場の生産能力増強を実施した一方、関係事業の再編の一環として汎用製品の硝酸ソーダから事業撤退しました。
足元の事業環境においては、アンモニアは国内顧客で川下製品の需要が低調に推移し、アジアの工業用需要も力強さに欠け、市場価格は軟調です。損益変動を最小化すべく、安定操業に注力し、可能な限り販売数を拡大しています。
今後については、成長する国内半導体需要に対応するため、高純度硝酸・高純度安水を梃に高純度薬液事業を拡大し、スペシャリティ化を推進していきます。また、アンモニア製造設備の停止時期最適化の検討を進めていきます。
◆C1ケミカル
C1ケミカルについては、米国におけるDMC・EMCプラントの建設を決定しました。UBEグループのグローバルな成長を牽引する新拠点となることを目指します。
当連結会計年度においては、米国ルイジアナ州に同国初となるDMC年産10万トン、及びDMCから誘導されるEMC年産4万トンのプラント建設を決定しました。本プラントの設備投資金額は合計約5億ドルであり、2026年7月完工、同年11月稼働を予定しています。
今後については、米国唯一のDMC・EMCサプライヤーとしてのマーケットリーダーの地位を確保することを目指します。加えて、欧州でのDMC5万トン設備の建設を検討しています。顧客の現地生産のニーズに応え、アジア・北米・欧州3拠点での供給体制を確立していきます。
◆高機能コーティング
高機能コーティングについては、市場拡大に併せた生産能力増強や環境対応型製品開発によるマーケティングを推進していきます。
当連結会計年度においては、PCDはタイでの生産能力増強工事を完了し、商業運転を開始しました。PUDでは中国の開発ラボ拠点を活用した捺染インク用途の製品開発や販売拡大をしました。
足元の事業環境については、PCDは、成熟した日本や欧州市場では安定した出荷が継続し、アジア市場は成長が継続しています。また北中南米は今後の開拓市場と考えています。PUDは中国を中心にVOC(揮発性有機化合物)等法規制強化による水系・無溶媒系塗料の需要増等による環境対応シフトは継続し、PUD市場も拡大しています。
今後については、PCDではアジア市場の成長に合わせたタイでの更なる生産能力増強と、北米C1ケミカル事業の拡大に合わせて北米での製造設備の新設も計画しています。PUDについては日本での増産に加え、タイでの製造設備新設も検討していきます。
◆エラストマー(合成ゴム)
エラストマーについては、製・販・技一体での意思決定や施策実行をスピードアップしていきます。
当連結会計年度においては、工場間の連携による最適生産・最適販売を実施しました。
足元の事業環境については、クラッカーの低稼働に伴い原料(ブタジエン)の需給がひっ迫しています。また、ポリブタジエンの主要用途であるタイヤや樹脂の需要は低調となっています。円安・物価高に伴い、各種コストは軒並み上昇しています。
今後については、安全・安定生産を継続していきます。また、コストアップの抑制と採算の確保に努め、合わせてスペシャリティ化を推進していきます。
機械セグメント
主要な事業内容 |
成形機(ダイカストマシン、押出プレス、射出成形機)、産業機械(窯業機、化学機器、粉砕機、運搬機、除塵機、破砕機)、橋梁・鉄構、製鋼品(ビレット、鋳造品)等の製造・販売 |
◆成形機
成形機については、従来の更新需要に加えてxEV化に対応していきます。
当連結会計年度においては、xEV化に追随した生産体制の拡充に着手しました。また、ダイカスト・射出成形機・押出プレス一体のアフターサービス活動を開始しました。
足元の事業環境では、自動車関連市場はxEV化の進展により、xEVに関連する設備投資が増加しています。
今後については、ギガキャスト用超大型マシンの受注・生産能力増強に注力していきます。また、アフターサービスも拡充させていきます。
◆産業機械
産業機械については、環境やエネルギー関連の新市場に参入していきます。
当連結会計年度においては、アンモニア・洋上風力等の環境関連の拡大市場への挑戦を進めるとともに、コストダウンによる利益の上積みをしました。
足元の事業環境では、バイオマス燃料搬送設備の需要は一巡し、代わりにカーボンニュートラルに関する開発や設備投資に向けた検討が本格化しています。
今後については、カーボンニュートラル関連の設備投資に関する需要を取り込んでいくとともに、成形機事業と同様にアフターサービスの更なる拡大を図っていきます。
その他セグメント
主要な事業内容 |
医薬品(原体・中間体)等の製造・販売、電力供給、不動産の売買・賃貸借及び管理等 |
◆医薬
医薬については、CDMO(医薬品受託製造)事業にてより高収益体制を目指し、近年新薬開発が進む核酸原薬の製造技術獲得や、より生産性の高いフロー合成技術の導入等を検討するとともに、創薬研究においても従来の低分子医薬品のみならず抗体薬物複合体(ADC:Antibody-Drug Conjugate)や標的タンパク質分解誘導薬(TPD:Target Protein Degrader)等のより高付加価値な創薬領域への事業拡大を図ります。
当連結会計年度においては、㈱エーピーアイコーポレーションとの製・販・技各分野での協業を深化させました。
足元の事業環境においては、低分子医薬品は緩やかに成長する一方、核酸医薬・遺伝子治療・細胞治療等の新規モダリティ(治療手段)が台頭しています。また、国際政情不安による原燃料価格の高止まりや円安に伴うコストアップも発生しています。
今後については、CDMO事業では第五医薬品工場(少量・高薬理活性原薬製造設備)の収益最大化と、㈱エーピーアイコーポレーションの吸収合併による完全一体化及び事業運営効率化を図るとともに、創薬研究では早期ライセンスアウトモデルを継続し、マイルストンの着実な獲得を目指します。また、ポリイミド多孔質膜技術を基にライフサイエンス分野での新規事業領域への参入に挑戦していきます。
②経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の達成・進捗状況
2022年度を初年度とする中期経営計画において数値目標を以下のとおり掲げていますが、達成は困難な状況となっています。
<主要項目・経営指標>
|
2022年度 実績 |
2022年度 (原計画) |
2023年度 実績 |
2023年度 (原計画) |
2024年度 |
2024年度 (原計画) |
売上高 |
4,947億円 |
5,100億円 |
4,682億円 |
5,200億円 |
5,100億円 |
5,200億円 |
営業利益 |
162億円 |
345億円 |
225億円 |
410億円 |
270億円 |
400億円 |
経常利益 |
△87億円 |
310億円 |
363億円 |
450億円 |
370億円 |
470億円 |
親会社株主に帰属する 当期純利益 |
△70億円 |
210億円 |
290億円 |
320億円 |
295億円 |
330億円 |
売上高営業利益率 |
3.3% |
6.8% |
4.8% |
7.9% |
5.3% |
8% |
自己資本利益率 |
△1.9% |
5.6% |
7.5% |
8.2% |
7.1% |
8% |
③キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に関する情報
(財務の基本方針)
当社グループは、財務構造の健全性維持及び資金の効率的調達・運用を基本方針として財務活動を行っており、取締役会がその活動状況を監督しています。資金調達については、自己資金のほか、金融機関からの借入やコマーシャル・ペーパー、社債の発行等により行っています。資金の流動性については、現金及び現金同等物に加え、緊急時の資金調達手段の確保等を目的として、一部の取引銀行とコミットメントライン契約を締結しています。
(キャッシュ・フロー及び流動性の状況)
現中期経営計画では、スペシャリティ事業の成長に向けて重点的に資金を投下することとしており、必要に応じて投資の前倒しも行っています。高い競争優位性を持つスペシャリティ事業を成長させることにより、キャッシュ・フローの規模と安定性を高め、企業価値向上に繋げていきますが、その一方で、有利子負債はキャッシュ創出力・株主資本に見合う水準にコントロールします。投資の実行と回収等にタイムラグがあることから、一時的に財務的な負荷が高まる局面も想定されますが、中長期における財務指標の推移予測を行うことで、リスクの低減に努めています。
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの概況については、「4.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ④キャッシュ・フローの状況」に記載しています。
資金の使途については、当連結会計年度は設備投資に361億円、M&Aを含む投融資に37億円、研究開発費に103億円と、合計501億円を支出しています。このうち、スペシャリティ事業、ベーシック事業、及びその他への支出は、それぞれ51%、22%、27%となりました。設備投資の主要な案件は、ポリイミドフィルム工場やポリイミド原料モノマー(BPDA)工場、分離膜工場等の増設、米国DMC・EMC工場の建設です。
財務体質を示す指標については、D/Eレシオは0.52倍、自己資本比率は51.8%となり、前連結会計年度と比較して若干改善しました。
(キャッシュ・アロケーション)
現中期経営計画策定では3年間累計の営業キャッシュフロー(研究開発投資前)を1,820億円と想定していましたが、利益の未達によって380億円ほど減少し、現時点では1,440億円に留まる見込みです。他方で、分離膜、セラミックスにおける旺盛な需要に対応するべく前倒し投資を行っていることや、C1ケミカルの北米展開等の要因により、設備投資・投融資が中計原計画に対して300億円増加しています。この差額は、620億円の負債調達等により賄う予定です。また、研究開発投資や株主還元については中計原計画と概ね同額での実施を予定しています。この結果、有利子負債は中計原計画の想定から転じて増加することになりますが、2024年度末のD/Eレシオは0.63倍、自己資本比率は49.9%と予想しており、財務健全性は十分に維持できると見込んでいます。
株主還元については、安定的な配当の継続を基本方針としており、連結総還元性向30%以上、株主資本配当率(DOE)2.5%以上としています。当連結会計年度は連結総還元性向、DOE、それぞれの目標を満たす1株当たり105円の配当となる見込みです。今後、現中期経営計画期間における積極的な成長投資の実施とその成果の刈り取りによって、更なる株主還元の充実を目指します。
(ポートフォリオ別 経営資源投入計画と進捗)
(3)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されています。この連結財務諸表の作成に当たり、決算日における資産・負債の報告数値及び偶発資産・負債の開示、並びに報告年度における収益・費用の数値に影響を与える将来に関する見積り及び仮定が必要であり、過去の実績やその他の様々な要因に基づき、見積り及び判断を行っています。実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りとは異なる場合があります。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。
(1)技術援助契約
契約会社名 |
相手先 |
契約締結年月日 |
契約内容 |
有効期間 |
UBE株式会社 |
松下電工株式会社(現・パナソニックインダストリー株式会社) |
2004年4月21日 |
2層フレキシブル銅張積層板製造技術のライセンス契約 |
終期の定めなし |
SUMaterials Co., Ltd. |
2011年9月23日 |
次世代ディスプレイ基板材料用のポリイミドに関するライセンス契約 |
終期の定めなし |
|
宇部マクセル株式会社 |
2019年1月1日 |
リチウムイオン電池用セパレータに関するライセンス契約 |
終期の定めなし |
|
ハイケム株式会社 |
2012年6月22日 |
DMO(ジメチルオキサレート)及びMEG(モノエチレングリコール)の触媒製造技術に関するライセンス契約 |
実施料支払期間満了まで |
|
黔希煤化工投資有限公司 |
2010年11月10日 |
DMO(ジメチルオキサレート)及びMEG(モノエチレングリコール)の製造技術に関するライセンス契約 |
特許及びノウハウの有効期間満了まで |
|
錫林郭勒蘇尼特碱業有限公司 |
2011年3月4日 |
|||
新疆天業(集団)有限公司(1期) |
2011年5月31日 |
|||
内蒙古开滦化工有限公司 |
2012年4月6日 |
|||
新疆天業(集団)有限公司(2期) |
2013年5月7日 |
|||
内蒙古康乃尔化学工业有限公司 |
2013年6月28日 |
|||
陽煤集団寿陽化工有限責任公司 |
2013年12月11日 |
|||
中盐安徽红四方股份有限公司 |
2015年4月24日 |
|||
新疆生产建设兵团天盈石油化工股份有限公司 |
2015年5月8日 |
|||
陕西渭河彬州化工有限公司 |
2016年4月4日
|
|||
利華益利津煤化有限公司 |
2016年6月17日 |
|||
新疆天業(集団)有限公司(3期) |
2017年7月7日 |
|||
湖北三寧化工股彬有限公司 |
2017年7月18日 |
|||
山西沃能化工科技有限公司 |
2018年2月1日 |
|||
山西松蓝化工科技有限公司 |
2018年4月1日 |
|||
中国大唐集団公司 |
2018年7月16日 |
|||
陕煤集团榆林化学有限責任公司 |
2018年8月18日 |
|||
新疆致本精细化学有 限公司 |
2018年8月26日 |
契約会社名 |
相手先 |
契約締結年月日 |
契約内容 |
有効期間 |
UBE株式会社 |
宁夏鲲鹏清洁能源有限公司 |
2019年3月28日 |
DMO(ジメチルオキサレート)及びMEG(モノエチレングリコール)の製造技術に関するライセンス契約 |
特許及びノウハウの有効期間満了まで |
山西美锦华盛化工新材料有限公司 |
2019年4月9日 |
|||
安徽佑順新材料有限公司 |
2020年2月25日 |
|||
中盐安徽红四方股份有限公司 |
2015年4月25日 |
DMC(ジメチルカーボネート)の製造技術に関するライセンス契約 |
契約発効日から20年間 |
|
中盐安徽红四方宇部新材料科技有限公司 |
2017年9月25日 |
|||
利華益維远化学股份有限公司 |
2020年12月14日 |
|||
利華益維远化学股份有限公司 |
2022年2月8日 |
|||
陕煤集团榆林化学宇高新材料有限責任公司 |
2022年3月8日 |
|||
山西亚鑫煤焦化有限公司 |
2022年3月15日 |
|||
中盐安徽红四方股份有限公司 |
2022年3月20日 |
|||
临涣焦化股份有限公司 |
2022年11月21日 |
|||
江苏索普聚酯科技有限公司 |
2023年2月7日 |
|||
荆门源晗电池材料有限公司 |
2023年10月27日 |
|||
陕煤集团榆林化学宇高新材料有限責任公司 |
2023年4月28日 |
DMC(ジメチルカーボネート)及びEMC(エチルメ チルカーボネート)の製造技術に関するライセンス契約 |
契約発効日から20年間 |
|
ハイケム株式会社 |
2021年1月15日 |
DMC(ジメチルカーボネート)の触媒製造技術に関するライセンス契約 |
両当事者の書面合意まで |
|
江蘇瑞兆科電子材料有限公司 |
2019年11月29日 |
高純度硫酸及び高純度安水の製造技術に関するライセンス契約 |
契約発効日から10年間 |
(2)技術導入契約
契約会社名 |
相手先 |
契約締結年月日 |
契約内容 |
有効期間 |
UBE株式会社 |
Industrial Copolymers, Ltd.(現・Incorez Ltd.) |
2007年8月20日 |
PUD(水系ポリウレタン・ディスパージョン)に関するライセンス契約 |
終期の定めなし |
当社グループの研究開発活動は、既存事業の製造技術の高度化及び周辺や延長分野における事業拡大を図るとともに、新規事業の創出及び長期的な視野に立った基盤技術の強化を志向しています。
研究開発活動は、当社の研究開発本部並びに、生産・技術部門及び各事業部門の開発部門で行っているほか、一部には連結子会社独自で行っているものもあります。当社及び連結子会社における研究開発スタッフは548名にのぼりますが、これは総従業員数の約7%に当たります。
当社では、研究・開発・技術・製造・営業を強固に連携し、事業としての意思統一、責任体制の明確化及び研究開発のスピードアップを図りながら、既存事業関連の研究を各事業部のもとに集約して行っています。また、研究開発本部については環境関連の技術開発及び新規事業創出に向けた研究開発の役割を担っています。
当連結会計年度における研究開発費の総額は
機能品
次世代蓄電池、5G対応フィルム、次世代ディスプレイや電池用途及び有害性の低い材料を使用したワニス、バイオガス用新規CO2分離膜、次世代航空機等の先端技術市場に対応したチラノ繊維、窒化珪素セラミックスの研究開発等に取り組んでいます。
ポリイミド・機能品開発部では、UBE独自のBPDA(ビフェニルテトラカルボン酸ニ無水物)ベースのポリイミドを中心に、粉体・ワニス・フィルム・繊維・膜等の様々な形の製品の特性設計・プロセス設計開発を行っています。開発製品は、フレキシブル回路基板用等の電子情報材料や空気分離等のガス分離装置等に展開されており、お客様と連携して高性能化・高品質化も推進しています。
無機材料開発部では、セラミックス材料を中心として新しい事業・製品・プロセスの工業化に向けた開発を行っています。特に、UBEの化学を活かした特徴ある製造技術・設計技術をベースとして、窒化珪素粉末、炭化珪素繊維、酸化物電池材料、光学樹脂用無機ナノ粒子等の強化に取り組むとともに、素材の特異性や長年培ってきたセラミックス合成技術を駆使することにより、先端無機材料の開発を推進しています。
当セグメントに係る研究開発費は
樹脂・化成品
C1ケミカル、環境型コーティング、廃プラリサイクル、エンジニアリングプラスチックを用いた複合材料、バイオマスプラスチックの研究開発等に取り組んでいます。
大阪研究開発センターでは、各種エンジニアリングプラスチックスを用いたコンポジット材料、新規ナイロン及びそれを用いたフィルムやモノフィラメント用材料の開発、並びに環境貢献型材料への要求の高まりにも対応して、リサイクルやバイオポリマーの開発にも注力しています。材料設計・成形加工・解析技術等の要素技術を駆使して、材料提案や改良、設計支援等のテクニカルサポートを高度かつタイムリーに実行することで、お客様に貢献しています。このほか、UBEのエンプラ事業の中核として、タイ・スペインを含む3生産拠点の開発部門の中心として連携強化に努め、グローバルでの事業拡大を積極的に進めています。
また、ファインケミカル製品、高機能コーティング製品、工業薬品等の品質・技術・プロセスの改良・開発を行うとともに、新規事業・新規製品のマーケティング・製品開発・アプリケーション開発や、自社技術プラットフォームを利用したCO2有効利用や廃プラリサイクル等の地球環境貢献テーマにも取り組んでいます。
当セグメントに係る研究開発費は
機械
機械分野の研究開発は連結子会社のUBEマシナリー㈱で行っています。
ダイカストマシン関連ではギガキャスト向けダイカストマシンの市場展開に向けた開発のほか、EV電装ケース向けハイサイクル機及び鋳造技術の開発を行っています。
射出成形機関連では大型2プラテンサーボ油圧機(1300MMXⅡ)の開発を行っています。
また、カーボンニュートラルに向けた取組みとして、燃料アンモニア産業への対応機器、低温高圧ガス圧縮用途鋳鋼、EVモーター等の高周波ノイズフィルターの開発を行っています。
主な成果としては、大型2プラテンサーボ油圧機(1300MMXⅡ-i120)の上市を実現したことなどが挙げられます。
当セグメントに係る研究開発費は
その他・全社共通
医薬事業分野では、製薬会社等との共同研究開発や独自に進めている創薬研究開発による新規医薬品の創製、受託医薬品原体の製造プロセスの開発等を行っています。
主な成果としては、HiLung㈱と共同開発を行っているリゾホスファチジン酸受容体1選択的アンタゴニストについて、米国FDA(医薬食品庁)より希少疾病用医薬品指定を取得したことや、全世界における独占的ライセンスをNovo Nordisk社に供与したSemicarbazide-Sensitive Amine Oxidase / Vascular Adhesion Protein-1選択的阻害薬の第Ⅰ相臨床試験が開始されましたことなどが挙げられます。
各セグメントに属さない研究開発としては、持続的な成長を可能にする新規事業創出に向けた研究開発の領域として、「サステナビリティ」「エネルギーマネジメント」「ライフサイエンス」を設定し、放熱複合材料、細胞培養技術活用等の研究開発を行っています。
その他セグメント及び全社共通に係る研究開発費は