当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループは、鉄道事業をはじめとする交通輸送サービスを基軸に、不動産、流通、レジャー・サービス等の生活に密着した事業を幅広く展開し、社会の信頼に応え、その発展に貢献することを通じて、当社グループの企業価値増大をはかることを基本方針としております。
また、当社グループの普遍的なテーマを、以下のとおり「グループ経営方針」及び「サステナビリティ方針」として位置づけております。
<グループ経営方針>
・安全・安心の徹底 鉄道をはじめとしたすべての事業において安全・安心を徹底します ・環境重視 「地球環境保全」を使命として認識、事業において環境に配慮します ・コンプライアンスの徹底 法令遵守、自らの社会的責任を認識、公正で健全な企業活動を行います ・顧客志向の追求 地域に密着した企業として、お客さま目線での行動を徹底します |
<サステナビリティ方針>
沿線エリアを中心に、地域住民・自治体・企業等、さまざまなステークホルダーと共創・協働し、企業理念の実践を通じて、「持続的な企業価値の向上」と「持続可能な社会の実現」の両立をめざします。 |
(2)経営環境
当社グループは、大阪府南部や和歌山県を主たる営業基盤とし、運輸、不動産、流通、レジャー・サービス、建設等の事業を展開しております(当社グループの事業の内容については、「第1 企業の概況 3 事業の内容」 をご覧下さい。)。
新型コロナウイルス感染症に伴う社会構造の変化は、当社グループをとりまく経営環境や将来の事業運営の在り方に変化・変革をもたらすものと認識しております。また、地震・台風等の自然災害の激甚化傾向や人口減少、ITの進化等、今後経営環境の変化は一層激しさを増すと予想しており、これらに対して柔軟に対応していく必要があると考えております。一方、当社グループは、近年、インバウンド旅客の増加による空港関連輸送の活性化やなんば地区を中心とする不動産業の拡充等により大きな成長を遂げてきました。今後も、大阪・関西万博(2025年日本国際博覧会)の開催や大阪・夢洲へのIR(統合型リゾート)の誘致計画といった関西におけるビジネスチャンスの拡大に加え、なにわ筋線開業(2031年春目標)により、沿線のさらなる利便性向上が期待されています。
(3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループにおいては、コロナ禍を契機に人々の生活様式や価値観が大きく変化する中、将来に向けて「先が読み切れない」ことを前提に、変化への耐性の強い経営基盤を構築することが不可欠であります。
このような認識の下、2027年度におけるありたき姿を定めた「南海グループ経営ビジョン2027」に加え、当社グループがこれまで推進してまいりました「持続的な企業価値の向上」と「持続可能な社会の実現」を両立するサステナブル経営の考え方に基づき、当社グループがめざすべき姿として、「沿線への誇りを礎に、関西にダイバーシティを築く事業家集団」という“2050年の企業像”を策定しております(詳細は後記<ご参考>に記載のとおり)。
この“2050年の企業像”の実現をめざし、当社グループでは、コロナ禍を経ての「再構築」と「成長への基礎構築」を行うため、2022年度~2024年度の3年間を対象期間とする中期経営計画「共創140計画」を推進しております。最終年度である2024年度においては、本計画の完遂を下支えし、すべての事業・業務において「イノベーション」に取り組むための人財戦略として、人財の価値を最大化するための投資や活動をさらに強化させていくとともに、次期中期経営計画の策定を見据え、資本コストや資本収益性をより意識したうえで、成長投資、株主還元及び事業ポートフォリオに関する基本的な方針を策定してまいりたいと存じます。また、2025年度に予定される当社と泉北高速鉄道株式会社との経営統合による効果の早期発現に向けた諸準備を精力的に進めるほか、公共交通事業、まちづくり・不動産事業に続く「第3の柱」となる事業の育成に引き続き注力してまいります。
当社グループをとりまく経営環境は、先行き不透明で楽観視できない状況が続くものと予想されますが、鉄道事業をはじめ、「安全の確保」「安心の提供」が当社グループ全事業の根幹であることを肝に銘じつつ、グループ経営の効率改善によるサステナブルな事業推進体制を確立するとともに、未来探索及びサステナブルな未来につなぐ投資をさらに加速させることにより、グループの総力を結集して本計画を完遂し、以て「南海が描く“2050年の企業像”」の実現に着実に近づけてまいりたいと存じます。
中期経営計画「共創140計画」/戦略骨子
(1) 事業戦略
ア、公共交通事業のサステナブルな経営
激甚化する自然災害への対策等、安全・安定輸送を阻害するリスクの低減・解消のため、計画的な設備投資を実行するとともに、デジタルテクノロジーを活用した新しい枠組みの構築とブランド向上施策等により、業務効率化と収益構造の変革をはかる。また、中期的には既存の鉄道事業・バス事業等を発展させ、ラストワンマイルまでの多彩なサービスを提供する「総合モビリティ事業」への進化をめざす。
イ、選ばれる沿線づくりと不動産事業深化・拡大
2031年開業予定のなにわ筋線新難波駅周辺や難波駅周辺の開発を進めるなど、「アジアの“なんば”」をめざし、引き続き“グレーターなんば”の創造に取り組むとともに、泉北ニュータウンにおけるスマートシティ戦略をはじめとするサステナブルなまちづくり等、沿線において自治体等とともに社会課題の解決を通して地域活性化をめざす、「地域共創型まちづくり」を進める。あわせて、すでに遂行している物流施設の高度化を着実に進める。
ウ、未来探索
中長期視点での成長をめざし、公共交通事業、まちづくり・不動産事業に続く新たな柱の創造に注力する。デジタル顧客接点の構築による新価値創造をめざすとともに、eスポーツ事業への本格参入をはじめ、多種多様な人々が幸せに暮らせるまちづくりに向けて、外国人との共生に資するビジネス拡大に挑戦する。さらに、高野山や百舌鳥・古市古墳群等、世界遺産をはじめ沿線の豊富な観光資源を活かしたツーリズム関連事業等、新たな事業の芽の育成に十分な投資枠を確保し、さまざまな挑戦を促進する。
(2) 人事戦略・財務戦略
上記事業戦略を確実に実行するため、人事戦略・財務戦略を連動させる。
ア、人事戦略
生産性向上と人財の確保・育成、多様な活躍の場の提供を通じて、新たな“人財ポートフォリオ”の構築をめざす。
イ、財務戦略
財務健全性の維持を大前提に、必要な投資をタイムリーに実行していくため、私募リートの設立をはじめ、多様な資金調達を実施する。
(3) 数値目標
計画の最終年度にあたる2024年度の数値目標(連結ベース)は、以下のとおりとする。
営業利益(※1) |
280億円 |
純有利子負債残高/EBITDA(※2)倍率 |
7.5倍以下 |
(※1)営業利益+受取配当金
(※2)営業利益+受取配当金+減価償却費
(ご参考)
設備投資額(3か年総額) |
1,600億円 |
CO2排出量削減(2024年度) |
2013年度比32%減 |
<ご参考>南海が描く“2050年の企業像”
(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
「南海グループ経営ビジョン2027」では、営業キャッシュ・フローを成長投資に優先配分し、収益力向上を通じた財務体質の強化をめざすこととしております。当社グループは、本ビジョンにおいて、経営上の目標の達成状況を判断するための経営指標(連結ベース)のうち収益性指標として「営業利益」を、財務健全性指標として「有利子負債残高/EBITDA倍率」を採用しております。
2022年度から2024年度を対象期間とする「共創140計画」においては、収益性指標として「営業利益」を、財務健全性指標として「純有利子負債残高/EBITDA倍率」をそれぞれ採用しております。なお、コロナ禍の影響を受けて、一時的に手元資金を積み増した経緯から、「共創140計画」における財務健全性指標は、有利子負債から現金及び預金を控除した純有利子負債残高をもとに算定することとしております。
また、「共創140計画」においては、以下の2項目を参考指標として設定しております。
同計画で掲げる3つの事業戦略を推進するためには、設備投資の継続的実施が欠かせないことから、「設備投資額」を採用しております。
サステナブル重要テーマ(マテリアリティ)のひとつである「地球環境保全への貢献」に向けて、CO2削減をより促進させるべく、「CO2排出量削減」を採用しております。
上記各指標のうち「営業利益」は、成長戦略として共同出資等のアライアンスを積極的に活用するため、受取配当金を含めた総額としております。
経営指標である「営業利益」の算出方法は、以下のとおりであります。
「営業利益」=営業利益+受取配当金
また、「有利子負債残高/EBITDA倍率」「純有利子負債残高/EBITDA倍率」におけるEBITDAの算出方法は、以下のとおりであります。
EBITDA=営業利益+受取配当金+減価償却費
なお、当連結会計年度の客観的な指標等の進捗状況につきましては、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ② 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の進捗状況」をご覧下さい。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日時点で当社グループが判断したものであります。
(1)サステナビリティに関する考え方
当社グループは、持続的な企業価値の向上と持続可能な社会の実現の両立に向けた姿勢を社内外のステークホルダーに一層明確に示すため、「サステナビリティ方針」を定めております。さらに、同方針の下、長期的に取り組むべき重点施策として、SDGsの視点を取り入れた7つの「サステナブル重要テーマ(マテリアリティ)」を設定しました。その中でも、特に「地球環境保全への貢献」における気候変動への対応や「一人ひとりが能力を発揮できる職場・ひとづくり」における人的資本・多様性に関する取組みは重要課題であると認識しております。
<サステナビリティ方針・サステナブル重要テーマ(マテリアリティ)>
(2)サステナビリティに関する取組み
①ガバナンス
サステナビリティ施策をグループ全社で横断的に推進する組織として、「サステナビリティ推進委員会」(年2回を目途に開催)を設置しております。本委員会が中心となって、事業部門と連携しながら、サステナビリティ施策に関する目標設定や進捗状況のモニタリング、達成度評価(PDCAサイクル)の推進や、リスクの抽出、対応方法について議論を行っております。
なお、サステナビリティ推進委員会の審議事項は、重要な事項については取締役会に年2回報告しております。
②リスク管理
当社グループの事業等のリスクについては、「リスク管理委員会」(委員長:社長兼COO)を設置するなど、グループ全体の総合的・一元的なリスク管理を行うことにより、当社グループの経営に重要な影響を与える可能性のあるリスクの回避または低減に努めております。
リスク管理委員会では、優先的に取り組むべき8つの最重要リスクを決定しており、これらのリスクには「環境」並びに「人事・労務」が含まれております。最重要リスクについては、業務リスクと経営リスクに区分したうえで、リスク対策の推進責任者であるリスクオーナーを選定し、業務リスクについては実行者であるリスクマネージャーを中心にリスク対策計画を実践するとともに、経営リスクについてはリスクの動向をオーナーからリスク管理委員会に報告することで実効性の向上を図っております。
これらリスクオーナー・リスクマネージャー(第1線)、リスク管理委員会(第2線)の取組みを内部監査室(第3線)が監査しており、いわゆる「3つの防衛線」の体制を整えております。
また、「サステナビリティ推進委員会」(委員長:会長兼CEO)では、気候変動や人的資本等についてのリスクの最小化と機会獲得に向けた各種方針・戦略の策定、取組みのモニタリングに関する管理を行う体制となっており、リスク管理委員会と連携しながら、定期的にリスク低減に向けた取組みを実施します。
[気候変動対応に関する取組み]
当社グループでは気候変動への対応を重要課題ととらえ、気候変動による事業への影響を想定し、リスクと機会への対応について事業戦略と一体化していくための取組みを行っております。
また2021年9月にはTCFD(※)への賛同を表明し、その提言に基づいた情報開示を進めております。
※ 世界経済の安定性に向けて、金融安定理事会(FSB)が2015年に設立し、気候変動がもたらすリスク及び機会の財務的影響を把握し開示することを目的とするタスクフォース。
<TCFD提言への対応>
①戦略
当社グループでは、将来の気候変動の進展や経済社会の変化について様々な可能性を想定し、気候変動に関するリスクと機会の特定並びにその分析を行っております。2023年度は、当社、泉北高速鉄道㈱、南海不動産㈱、南海商事㈱の鉄道事業及び不動産・流通事業に加え、軌道事業の阪堺電気軌道㈱、バス事業の南海バス㈱、関西空港交通㈱及び南海ウイングバス㈱、海運業の南海フェリー㈱(以下、「対象範囲」という。)において、気候変動がそれらの事業に及ぼす可能性のあるリスク・機会の特定、及び重要度評価を実施しました。
事業インパクトの大きさ等を考慮し、脱炭素社会への移行に伴うリスク・機会項目として「炭素価格、各国の炭素排出目標・政策」、「製品及びサービスへの規制」、「電気・燃料価格、エネルギーミックスの変化」を、また気候変動がもたらす物理的リスク・機会項目として「異常気象の激甚化」を重要度評価「大」と設定しました。(分析は1.5~2℃シナリオ及び4℃シナリオについて行いました。)
これらのリスク・機会については、各コア事業の部門のリスク管理体制の中で、かねてから対応を進めております。
今後、認識したリスク・機会に対して適切な対応策を講じることで、持続的な企業価値の向上と持続可能な社会の実現の両立を目指します。
イ.移行リスク
リスク項目 |
当社グループにとってのリスク(※1) |
発生時期 (※2) |
評価 |
||
脱炭素社会への 移行に伴うリスク (移行リスク) |
政策/ 規制 |
炭素価格、各国の炭素排出目標・政策 |
[共通]炭素税課税による税負担増加 [共通]CO2削減目標達成のための再エネへの転換に伴う電力費増加 [不動産・流通]経年物件に対する排出権購入コスト増加 |
中~ 長期 |
大 |
製品及びサービスへの規制 |
[バス]EV/FCVバス導入コストの増加 |
中~ 長期 |
|||
業界/ 市場 |
電気・燃料価格、エネルギーミックスの変化 |
[共通]再エネ比率増による運営コスト増加 |
短~ 中期 |
ロ.物理的リスク
リスク項目 |
当社グループにとってのリスク(※1) |
発生時期 (※2) |
評価 |
||
気候変動の物理的 変化に関連する リスク (物理的リスク) |
急性 |
異常気象の激甚化 |
[共通]鉄道路線、保有不動産への洪水・土砂崩れ・橋梁洗掘等の発生による損害増、損害保険料増、資産価値低下 [共通]台風の大型化等に伴う商業施設の営業停止や鉄道及びバスの運休、フェリーの欠航等の発生、ホテル・旅行のキャンセル増加による減収 [共通]サプライチェーン寸断による営業支障 |
短~ 中期 |
大 |
ハ.機会
機会項目 |
当社グループにとっての機会(※1) |
発生時期 (※2) |
評価 |
資源の効率 |
[共通]省エネ投資により、操業コスト減、公的支援や減税可能性向上 |
中~ 長期 |
大 |
製品及びサービス |
[鉄道]炭素税導入による自動車輸送から鉄道輸送への流入 |
中~ 長期 |
|
[バス]EV/FCVバスの普及を促進する政策・補助金制度の実施・強化 |
中~ 長期 |
||
[不動産・流通]高環境性能新築ビルへのニーズが高まることによる賃料上昇、資産価値向上 |
短~ 中期 |
||
[不動産・流通]BCP対応や帰宅困難者対策等、災害に強い施設への入居ニーズに応えることによる、競争力強化や増収 |
短~ 中期 |
||
レジリエンス |
[共通]エネルギーミックスの変化に対応できている場合、事業の強靭性が向上 |
短~ 中期 |
(※1) [共通]は鉄道事業、軌道事業、バス事業、海運業並びに不動産・流通事業で発生するもの
(※2) 短期:1年、中期:2~4年、長期:5~15年
また、特定したリスク・機会の重要度評価において「大」と評価したものの中で、気温上昇のシナリオにおける将来の客観的な予測データが公開されている項目について、2030年の社会での「対象範囲」において事業インパクトを定量的に試算しました。
その想定の前提となるシナリオについては、移行リスク・機会は気候変動に対し社会に積極的な対応が行われる1.5~2℃シナリオにより、また物理的リスクは1.5~2℃シナリオ及び4℃シナリオにより試算しました。
試算の結果、想定される気候変動の影響については、脱炭素社会への移行リスク・機会に起因する事業インパクトが算出されたとともに、物理的リスクの事業インパクトについては、4℃シナリオにおける影響額は、1.5~2℃シナリオと比較し、およそ1.9倍の影響があることがわかりました。
なお、いずれのシナリオとなった場合でも、事業インパクトは限定的であるものの、今後気候変動によるリスクの最小化と機会の最大化を図るために、鉄道車両の更新をはじめとするCO2削減施策の推進等、脱炭素社会の実現に向けた取組みを行うことにより、気候変動に対してレジリエントな組織であり続けたいと考えております。
②指標及び目標
当社グループでは気候変動の緩和と移行リスクへの備えのため、事業活動の脱炭素化に向けた取組みを行っており、スコープ1,2について「CO2排出量を2013年度比46%以上削減(2030年度)」「2050年のCO2排出量実質ゼロ」を目標に掲げております。加えて、鉄道事業部門(当社及び泉北高速鉄道㈱)においては、2030年度には省エネ型車両の導入割合を85.0%まで高めたいと考えております。
当社グループは、鉄道車両の更新・再生可能エネルギーの活用等のCO2排出量の削減に向けた取組みを通じて、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。
※ 昨年度に続き、2022年度実績のエネルギー起源CO2排出量(スコープ1,2)について、「南海グループ エネルギー起源CO2排出量 算定報告書(2022年度)」(PDF)において第三者保証を受けております。
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スコープ1 |
スコープ2 |
スコープ1+2 |
2022年度 エネルギー起源 CO2排出量(t-CO2) |
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[人的資本、多様性に関する取組み]
①戦略
当社グループでは、人財を「資本」として捉え、企業の価値創造の源泉は「人財」という認識のもと、人的資本経営に取り組むため、働く人の‘なんかいいね’を、社会やお客さまの‘なんかいいね’につなげていく「南海グループ人財戦略」を定めております。
当該人財戦略は、「当社グループで働く人の幸せや充実・成長」が必要不可欠であるという考えに基づき、人財確保・育成方針や社内環境整備方針を定めたものです。人財確保・育成の点では、「多様な人財と多様な専門性の向上」と「グループ共通の価値観浸透とスキル向上」に、社内環境整備の点では、「いきいきと健康に働ける環境づくり」と「イノベーションに取り組む環境づくり」に、積極的な投資を行ってまいります。
目指す姿は、担当する事業・業務や役職などに関わらず、全社員が全ての事業・業務で「イノベーション」に取り組む状態です。このような変革を通じて、当社グループが掲げる「サステナブルな社会」や「2050年の企業像」の実現を目指します。
・当社グループにおける「イノベーション」の定義
「社員一人ひとりが、現在取り組んでいる事業・業務を改めて見つめ直し、大小問わず、社会やお客さまが本当に望んでいることを捉えて実現していくこと」を、南海版「イノベーション」と定義します。その成果を以下3つとし、全社員が全ての事業・業務で取り組んでまいります。
[南海版「イノベーション」の定義] 社員一人ひとりが、現在取り組んでいる事業・業務を改めて見つめ直し、大小問わず、社会やお客さまが本当に望んでいることを捉えて実現していくこと ① 事業創造 新規領域/既存事業の周辺領域での、新ビジネス・新サービス等の開発 ② 既存事業のバリューアップ 収益・利益の向上、事業構造の見直し、顧客満足度・認知度・愛着度などの向上 ③ 業務改革 事業活動への貢献・サポート、業務プロセスの抜本的な見直し、時間の有効活用、わかりやすさ・正確さの 向上等 |
・当社グループ全体の人財像の構成及び共通スキル
(人財像の構成)
当社グループは運輸業、不動産業、流通業、レジャー・サービス業、建設業、その他の事業という多様な事業会社で構成されており、今後それぞれの事業において社会やお客さまの変化に対応して事業を変革していくため、経営的視点・スキルを持つ人財(経営人財)と、各事業に精通した専門性の高い人財(専門人財)の双方を確保・育成してまいります。
さらに、専門人財のうち各事業の新たな戦略をリードする人財を「戦略人財」、主に既存事業を担う人財を「基幹人財」と位置付けています。特に戦略人財については確保・育成を強化するため、求めるスキル・経験を「戦略人財像」として定めるとともに、必要人数を設定のうえ確保・育成状況をモニタリングして、事業戦略を実現するための戦力づくりを進めてまいります。
(共通のスキル)
イノベーションに取り組むために全ての社員が身につけるべきスキルを「基礎スキル」とし、今後の事業戦略を推進するためにスキル保有者が増加することが望ましいスキルを「発展スキル」として、それぞれ定めております。
発展スキルのうち「事業創造スキル」と「データ活用・デジタルスキル」をもとに、イノベーションに取り組む能力・スキルを示す指標「イノベーションスキル習熟度」について目標を設定し、社員のスキルアップのための施策を実施してまいります。
②指標及び目標
当社グループでは、「①戦略」において記載した、人財確保・育成方針及び社内環境整備方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は、次のとおりであります。
方針 |
指標 |
目標 |
実績 (当連結会計年度) |
人 財 確 保 ・ 育 成 方 針 |
女性管理職比率 [連結] |
( |
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新規採用者に占める女性比率 [連結] |
( |
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マネジメントコース (※)新卒採用者に占める女性比率[単体] |
( |
|
|
キャリア採用の管理職比率 [単体] |
2021年度時点における水準 ( |
|
|
イノベーションスキル習熟度 [単体] |
目標水準到達者が全体の ( |
|
|
社 内 環 境 整 備 方 針 |
年次有給休暇取得率 [単体] |
( |
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男性労働者の育児休業等と育児目的休暇取得率 [単体] |
( |
|
※マネージャー及び経営人財としての活躍を目指すキャリアコース
当社グループの事業その他に関するリスクにつきましては、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項を記載しております。また、必ずしもそのようなリスク要因に該当しない事項についても、投資家の投資判断上、重要であると考えられる事項については、積極的な情報開示の観点から以下に記載しております。当社グループでは、リスク管理委員会を設置するなど、グループ全体の総合的・一元的なリスク管理を行うことにより、当社グループの経営に重要な影響を与える可能性のあるリスクの回避又は低減に努めております。なお、発生の回避及び発生した場合の対応を一部記載しておりますが、係る対策が必ずしもリスク及びその影響を軽減するものではない可能性があることにご留意下さい。
本項につきましては、将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は当連結会計年度末において判断したものであります。
(1)経済情勢等
少子高齢化、沿線地域における人口、雇用情勢及びインバウンドをはじめとする関西国際空港利用者数の動向等により、鉄道事業をはじめとする運輸業における旅客が減少することや、国内外の景気動向、消費動向及び市場ニーズの変化により、不動産業、流通業、レジャー・サービス業等における売上高について影響を受けることがあります。このほか、為替の変動、原油価格の高騰による電力料金の値上げや資材価格の高騰が、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
さらに、投資有価証券に係る株価変動、保有不動産の地価変動等により株式や低収益物件等の減損処理が必要になる場合、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(2)競合
鉄道事業におきましては、一部路線が他社と競合しております。さらに、自家用車やバイク等の輸送手段への移行が今後も影響を及ぼす可能性があります。
バス事業におきましては、新規路線参入については自由競争下にあるため、競争の激化により当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社の経営拠点であるなんばエリアにおいて経営する商業施設「なんばCITY」及び「なんばパークスShops&Diners」につきましては、大阪市内における他のエリア(梅田、天王寺等)の大型商業施設と競合関係にあります。
(3)法的規制
鉄道事業におきましては、鉄道事業法(昭和61年法律第92号)の定めにより、経営しようとする路線及び鉄道事業の種別ごとに国土交通大臣の許可を受けなければならず(第3条)、さらに旅客運賃及び料金(上限)の設定・変更につき、国土交通大臣の認可を受けなければならない(第16条)こととされております。なお、これらの国土交通大臣の許可及び認可については、期間の定めはありません(一部例外あり)。
また、同法、同法に基づく命令、これらに基づく処分・許可・認可に付した条件への違反等に該当した場合には、国土交通大臣は期間を定めて事業の停止を命じ又は許可を取り消すことができる(第30条)こととされております。鉄道事業の廃止については、廃止日の1年前までに国土交通大臣に届出を行う(第28条の2)こととなっております。
現時点におきまして同法に抵触する事実等は存在せず、鉄道事業の継続に支障を来す要因は発生しておりません。しかしながら、同法に抵触し、国土交通大臣より事業の停止や許可の取消を受けた場合には、事業活動に重大な影響を及ぼす可能性があります。
なお、上記のほか、当社グループが展開する各事業については、さまざまな法令、規則等の適用を受けており、これらの法的規制が強化された場合には、規制遵守のための費用が増加する等、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(4)大規模販売用不動産
大規模販売用不動産につきましては、計画的な分譲を実施することにより、資金回収をはかっておりますが、主に郊外地域における土地価格の下落や住宅需要の都心回帰の傾向がさらに進んだこと等により、郊外型大規模住宅開発には厳しい状況が続いております。今後も計画的な分譲を進めてまいりますが、少子化による住宅需要減や都心回帰の顧客志向がますます強くなることも予想されますので、資金回収の遅れが生じる等の影響が出る可能性があります。
(5)グループ会社に関する事項
当社連結子会社である南海辰村建設株式会社は、グループ会社で唯一の上場会社であり、またグループ内の中核会社であるため、当社ではこれまでに第三者割当増資の引受や支援金の提供等の経営支援を行っておりますが、同社において、想定外の受注環境の悪化等に見舞われた場合には、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(6)投資
鉄道事業における投資につきましては、連続立体交差化工事や安全運行確保のための各種更新投資が長期にわたりかつ多額となるため、その資金調達や金利負担が当社グループの業績及び財務状況に影響を与えております。
(7)M&A
成長戦略としてのM&Aの実行に際しましては、外部専門家等も交え、対象会社の財務内容等に関するデューディリジェンスを綿密に行いますが、当該デューディリジェンスの過程で検知できなかった偶発債務や未認識債務等が顕在化した場合、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、M&A実行後の事業環境の変化に伴い、対象会社の収益力が低下した場合や期待するシナジー効果が実現できない場合、減損損失を認識する必要が生じ、投資の回収が不可能となる等、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(8)退職給付会計
退職給付に係る資産及び退職給付に係る負債につきましては、従業員の退職給付に備えるため、当連結会計年度末における見込額に基づき、退職給付債務から年金資産の額を控除した額を計上しております。数理計算上の差異は、その発生時の従業員の平均残存勤務期間以内の一定の年数(3年から11年)による定額法により翌連結会計年度から費用処理することとしております。債務の計算における前提が変更された場合や、一層の運用利回りの悪化があった場合には、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(9)有利子負債
当社は、その事業の特性上、借入金依存割合が高い状況にあり、設備投資やM&A実行資金を使途に多額の社債発行や銀行借入を行った場合、有利子負債残高がさらに増加することが考えられます。資金調達手段の多様化をはかり、財務健全性の維持に努めますが、金利変動により金利負担が増加した場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、格付機関が当社の格付を引き下げた場合、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(10)自然災害等
南海トラフ地震等の大規模地震やそれに伴う津波の発生、台風等による風水害・地すべりといった自然災害により、当社の設備やインフラが多大な被害を受けた場合には、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。高架橋柱をはじめとする鉄道施設やビル等の耐震補強を計画的に実施するほか、橋梁等の防災・減災のため各種対策を講じております。
なお、(11)、(12)の事故発生等を含め、大規模自然災害が発生した場合の対処として、災害対策規程等の制定や、大規模地震を想定した事業継続計画(BCP)の策定、震災対応型コミットメントラインの導入等、被害を最小限にとどめる管理体制の強化をはかっておりますが、発生の地域、規模、時期、時間等により、被害の範囲が大きくなる可能性があります。また、当社施設に直接の被害がない場合であっても、大規模自然災害に伴う、第3種鉄道事業者の施設被害や電力供給の制限、列車運行に必要な部品の調達困難等により、鉄道輸送に大きな支障が出る可能性があります。
このほか、新型コロナウイルス感染症に伴う社会構造の変化は、当社グループをとりまく経営環境や将来の事業運営の在り方に変化・変革をもたらすものと認識しております。
(11)事故・システム障害等の発生
安全安心な輸送サービスの提供を最大の使命とする運輸業を基軸に事業展開をしている当社グループにおいて、事故や自社設備の火災・爆発等が発生した場合、並びに重大インシデント(事故が発生する恐れがあると認められる事態)が発生した場合には、社会的信用の失墜を招くばかりでなく、その復旧及び損害賠償請求等により業績に多大な影響を生じる可能性があります。
また、人的原因や機器の誤作動等により、システム障害が発生した場合、事業運営に支障を来すとともに、施設の復旧や振替輸送に係る費用の発生等により、当社グループの社会的信用の失墜や業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。事故・システム障害の未然防止のため、保安諸施設や駅務システムの整備、更新や定期的なメンテナンスの実施、従業員教育の徹底等、さらなる対策に取り組んでまいります。
(12)第三者行為やテロ活動等
第三者行為による事故発生やテロ活動及び不正アクセス等につきましても、不審物への警戒や施設内巡回の強化及び情報セキュリティの確保等の対策を行っておりますが、万一、テロ活動等が発生し、その影響を受けた場合には、事業活動に支障が出る可能性があります。
(13)保有資産及び商品等の瑕疵・欠陥
当社グループが保有する資産について、瑕疵や欠陥が発見された場合、又は健康や周辺環境に影響を与える可能性等が指摘された場合、その改善・原状復帰、補償等に要する費用が発生する可能性があります。また、当社グループが販売した商品、売却した不動産、受注した工事、提供したサービス等について、瑕疵や欠陥が発見された場合、その改善及び補償等に要する費用の発生や社会的信用の失墜等により、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(14)気候変動への対応
当社グループでは、気候変動の緩和に向けた脱炭素社会への移行に伴う費用増や、気候変動による激甚化した災害が発生した場合に、業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。その対処として、気候変動による事業への影響を想定し、リスクと機会への対応について事業戦略と一体化していくための取組みを行っています。また2021年9月には、当社は気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に賛同を表明し、その提言に基づいた情報開示を進めております。引き続き、サステナブル重要テーマ(マテリアリティ)である「地球環境保全への貢献」への取組みを通じて、持続可能な社会の実現に寄与してまいりたいと考えております。
(15)人事政策
鉄道、バス等の運輸業におきましては、労働集約型の産業構造であるため、事業運営上必要な人財の安定的な確保が求められます。また、「選ばれる沿線づくり」や「不動産事業の深化・拡大」といった事業戦略を推進していくために多様で専門的な人財の確保・育成に努める必要もあります。これらの政策が環境変化等により遅れた場合、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(16)情報資産の管理
当社グループでは、各事業においてお客さまや従業員の個人情報だけではなく、機密情報をはじめとする重要情報を保有しております。このため、リスクマネジメント強化を目的として、情報セキュリティ基本方針等の社内規程を整備するとともに、従業員に対する教育等に取り組んでおります。しかしながら、何らかの原因により情報が流出した場合には、損害賠償責任が発生する可能性があるほか、当社グループの社会的信用が失墜し、業績に影響を及ぼす可能性があります。
(17)コンプライアンス
当社グループでは、企業倫理の確立をはかり、コンプライアンス経営を維持・推進するために、コンプライアンス遵守に関する教育を定期的に実施する等の啓発活動に努めております。また、法的・倫理的問題を早期に発見し、是正していくための体制として内部通報制度を設けておりますが、重大な不正・不法行為が発生した場合、当社グループの社会的信用の失墜や業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(18)重要な訴訟
現在のところ、特に経営に重大な影響を及ぼすような重要な係争事件はありません。
今後の事業展開におきましても、あらゆる取引において契約内容の真摯な履行に努めてまいりますが、相手方の信義に反する行為に対しやむを得ず訴訟等を提起する場合や、相手方との認識の相違又は相手方悪意により、訴訟等を提起される可能性があります。さらに、訴訟等の結果によっては、当社グループの社会的信用の失墜や業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(1)財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況
当連結会計年度のわが国経済は、新型コロナウイルス感染症による行動制限が緩和されるとともに、雇用・所得環境の改善が進み、景気は緩やかな持ち直しの動きが見られたものの、世界的な金融引締めや、原油・原材料価格の高騰等による下振れリスクを抱えており、先行きは依然として不透明な状況のまま推移いたしました。
このような経済情勢の下におきまして、当社グループでは、2年目に入った中期経営計画「共創140計画」に基づき、引き続き各種施策への取組みを進めてまいりました。
この結果、当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況は次のとおりであります。
① 財政状態
(資産)
当連結会計年度末における資産合計は、9,506億50百万円となり、前連結会計年度末に比べ155億37百万円増加いたしました。これは主に、減価償却の進捗等により有形固定資産が57億24百万円減少した一方、保有上場株式の時価上昇により投資有価証券が159億42百万円増加したことや、現金及び預金が48億77百万円増加したことによるものであります。
(負債)
当連結会計年度末における負債合計は、6,435億48百万円となり、前連結会計年度末に比べ169億78百万円減少いたしました。これは主に、前受金の増加等により流動負債その他が157億73百万円、未払法人税等が59億56百万円、繰延税金負債が50億4百万円増加した一方で、有利子負債残高が435億35百万円減少したことによるものであります。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産合計は、3,071億2百万円となり、前連結会計年度末に比べ325億15百万円増加いたしました。これは主に、剰余金の配当により28億33百万円減少した一方、親会社株主に帰属する当期純利益の計上により239億26百万円増加したことや、保有上場株式の時価上昇によるその他有価証券評価差額金が92億70百万円増加したことによるものであります。
この結果、自己資本比率は30.8%(前連結会計年度末は27.9%)となりました。
② 経営成績
当連結会計年度におきましては、運輸業における輸送人員の増加や不動産業における物件販売収入の増加等により、営業収益は2,415億94百万円(前期比9.2%増)となり、営業利益は、物価の高騰による影響等があったものの、308億20百万円(前期比46.6%増)、経常利益は293億12百万円(前期比54.6%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は239億26百万円(前期比63.6%増)となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
<運輸業>
鉄道事業におきましては、営業面では、昨年10月に南海線において、本年1月には高野線及び泉北高速鉄道線において、それぞれダイヤ修正を実施いたしました。特にインバウンド旅客の回復が著しい空港線におきましては、特急ラピートの運行をコロナ前の本数に戻すなど、空港輸送の強化をはかりました。また、クレジットカードによるタッチ決済の対象ブランドを拡大するとともに、駅窓口混雑緩和に向けて、二次元コードを利用した特急券付きデジタル乗車券をインバウンド旅客向けに発売するなど旅客の利便性向上に努めたほか、多くのお客さまのご要望にお応えし、昨年9月から6000系車両1編成を導入当時のステンレス無塗装に復活させて運行しております。施設・車両面では、中百舌鳥駅リニューアル工事として、上りホームと車両間の段差・隙間の解消やコンコース及び駅舎外壁の美装化をはかるとともに、同駅の安全性向上施策として、本年3月から同駅4番線においてホームドアを稼働させました。また、南海線及び高野線に8300系新造車両14両、泉北高速鉄道線に9300系新造車両16両をそれぞれ投入するとともに、車内セキュリティ向上を目的として、8300系全車両に車内防犯カメラを導入いたしました。なお、8300系及び泉北高速鉄道9300系車両については、木目調の床や2トーンの座席配色等が評価され「2023年度グッドデザイン賞」を受賞いたしました。このほか、デジタル技術の活用施策として、昨年6月、旅客対応を一元化する「駅総合案内センター」を開設するとともに、将来的な労働力不足の社会課題解決等をめざし、かねて準備を進めてまいりました和歌山港線の自動運転走行試験を昨年8月から開始いたしました。このような安全・安定的な輸送基盤の強化や社会からの要請に応える輸送サービスの高度化を今後も推進していくために、昨年10月1日に鉄道線の運賃改定を実施いたしました。
なお、当社及び泉北高速鉄道株式会社は、昨年12月に経営統合に関する基本合意書を締結し、2025年度早期の実施に向けて現在協議を進めております。
バス事業におきましては、南海バス株式会社において、近接エリアにおける地元バス会社の事業撤退を受け、昨年12月、新たな自治体コミュニティバス輸送を受託いたしました。また、いわゆる「2024年問題」に対応するため、各バス会社において、人財採用施策の強化をはかるとともに、働きやすい環境整備に向けた取組みに注力いたしました。
以上のような諸施策を進めました結果、運輸業の営業収益は1,018億17百万円(前期比6.6%増)となり、営業利益は81億26百万円(前期比605.3%増)となりました。
提出会社の運輸成績
区分 |
単位 |
当連結会計年度 |
|||
(2023.4~2024.3) |
対前連結会計年度増減率 |
||||
営業日数 |
日 |
366 |
% 0.3 |
||
営業キロ |
キロ |
154.8 |
0.0 |
||
客車走行キロ |
千キロ |
97,929 |
2.1 |
||
旅客人員 |
定期外 |
千人 |
91,160 |
11.1 |
|
定期 |
千人 |
126,174 |
3.7 |
||
計 |
千人 |
217,334 |
6.7 |
||
運輸収入 |
旅客収入 |
定期外 |
百万円 |
35,140 |
27.8 |
定期 |
百万円 |
20,415 |
7.6 |
||
計 |
百万円 |
55,556 |
19.6 |
||
運輸雑収 |
百万円 |
2,890 |
△4.6 |
||
収入合計 |
百万円 |
58,446 |
18.1 |
||
乗車効率 |
% |
28.7 |
- |
(注) 乗車効率の算出は 延人キロ/(客車走行キロ×平均定員)によります。
営業成績
業種 |
当連結会計年度(2023.4~2024.3) |
|
営業収益 |
対前連結会計年度増減率 |
|
|
百万円 |
% |
鉄道事業 |
65,640 |
16.4 |
軌道事業 |
1,533 |
2.9 |
バス事業 |
23,844 |
17.7 |
海運業 |
2,109 |
12.7 |
貨物運送業 |
11,200 |
△38.0 |
車両整備業 |
4,703 |
8.7 |
調整額 |
△7,215 |
- |
営業収益計 |
101,817 |
6.6 |
<不動産業>
不動産賃貸業におきましては、「グレーターなんばビジョン」の実現に向けて、難波千日前においてオフィスビルの新築工事に着手したほか、阪堺線恵美須町駅前において、シェアスタイル型賃貸マンション「サザンクレストなんば南」を開業するなど、収益物件の拡大に努めました。また、直営3店舗目となるシェアオフィス「Lieffice (リーフィス)堺東」をオープンいたしました。
駅を拠点としたまちづくりとしましては、なんばエリアでは、南側への回遊性向上と新たな機能集積を目的に、開発を進めてまいりました新街区「なんばパークス サウス」を昨年7月にグランドオープンさせましたほか、大阪市及び地域関係者と協働で進めてまいりました「なんば駅周辺における空間再編推進事業」の一環として、昨年11月、供用が開始された難波駅前「なんば広場」において、社会実験をスタートいたしました。泉北エリアにおいては、かねて進めてまいりました「泉ケ丘駅前活性化計画」の駅商業施設一部建替工事につきまして、昨今の急激な物価上昇の影響により工事費が想定を大幅に上回る見込みとなったため、本格着工を延期し、事業計画を見直すことといたしました。一方、当社も参画する「SENBOKU スマートシティコンソーシアム」の活動として、泉北ニュータウン地域における住民の移動課題解決と利便性向上に向けてAIオンデマンドバス実証事業を前期に続いて実施し、デジタル技術を活用したサステナブルなまちづくりの検討をさらに深めました。また、財務健全性を保ちながら開発資金を確保し、「地域共創型まちづくり」の加速や売却後のフィービジネスによる不動産収益の多様化等をはかることを目的として、昨年11月、当社グループが保有する物件を組み入れ、私募リートの運用を開始いたしました。
不動産販売業におきましては、和歌山県橋本市「三石台」において、新築戸建プロジェクト「ヴェリテコート三石台」の分譲を開始したほか、大阪府吹田市等において当社グループの分譲マンションブランド「ヴェリテ」シリーズを展開いたしました。
以上のような諸施策を進めました結果、不動産業の営業収益は531億40百万円(前期比19.1%増)となり、営業利益は147億20百万円(前期比17.1%増)となりました。
営業成績
業種 |
当連結会計年度(2023.4~2024.3) |
|
営業収益 |
対前連結会計年度増減率 |
|
|
百万円 |
% |
不動産賃貸業 |
34,710 |
2.2 |
不動産販売業 |
18,923 |
72.9 |
調整額 |
△492 |
- |
営業収益計 |
53,140 |
19.1 |
<流通業>
ショッピングセンターの経営におきましては、なんばパークスにおいて、五感で自然に触れられる空間づくりに向けて、屋上公園「パークスガーデン」のリニューアルを進めましたほか、高架下商業施設「なんば EKIKAN」をリニューアルし、大阪初進出の大型ライブハウス等4店舗を新たに誘致いたしました。また、「ミナピタポイント」サービスをリニューアルし、新たに「施設・エリア限定ポイント(※)」を設け、沿線エリアでの利用促進をはかりました。
駅ビジネス事業におきましては、中百舌鳥駅リニューアル工事の一環として、日常利用に便利な8店舗からなる商業エリア「N.KLASS(エヌクラス)中百舌鳥」を昨年12月にグランドオープンさせましたほか、一昨年12月から順次進めてまいりました駅構内等のコンビニエンスストアのセブン-イレブンブランドによるフランチャイズ店への転換を昨年5月に完了いたしました。
以上のような諸施策を進めました結果、流通業の営業収益は267億60百万円(前期比13.4%増)となり、営業利益は26億61百万円(前期比55.6%増)となりました。
(※)利用可能な店舗が、堺や泉北等、特定エリア・施設に限定されたポイント
営業成績
業種 |
当連結会計年度(2023.4~2024.3) |
|
営業収益 |
対前連結会計年度増減率 |
|
|
百万円 |
% |
ショッピングセンターの経営 |
14,649 |
4.8 |
駅ビジネス事業 |
13,681 |
24.3 |
その他 |
217 |
△43.8 |
調整額 |
△1,788 |
- |
営業収益計 |
26,760 |
13.4 |
<レジャー・サービス業>
旅行業におきましては、国内・海外ともに旅行需要が回復する中、企業の出張やMICEに際しての手配業務のほか、海外からの訪日旅行を含めた各種旅行需要の獲得に注力いたしました。
ホテル・旅館業におきましては、「碧き島の宿 熊野別邸 中の島」において、和歌山県等と連携し、旅行会社による視察を積極的に受け入れたほか、海外需要の取込みを強化するため、韓国や台湾への営業活動に注力いたしました。
ビル管理メンテナンス業におきましては、既存物件において提供するサービスの品質向上に注力するとともに、複合施設や物流施設等の新規管理物件の受託と設備工事の受注に努めました。
eスポーツ事業におきましては、大阪府泉佐野市や岐阜市等において展開するeスポーツ専門施設の運営に注力するほか、体験・参加型のeスポーツイベントを開催するなど、事業基盤の確立に努めました。
海外IT人財紹介事業(「Japal」事業)におきましては、事業の成長に向けて、金融機関や不動産会社と事業提携を行い、サービス提供先の拡大と紹介した人財の定着に向けた取組みに注力いたしました。
以上のような諸施策を進めました結果、ビル管理メンテナンス業において収入が増加したこと等により、レジャー・サービス業の営業収益は431億4百万円(前期比8.2%増)となりましたが、売上原価や人件費等の増加により、営業利益は34億2百万円(前期比4.2%減)となりました。
営業成績
業種 |
当連結会計年度(2023.4~2024.3) |
|
営業収益 |
対前連結会計年度増減率 |
|
|
百万円 |
% |
旅行業 |
3,896 |
18.0 |
ホテル・旅館業 |
754 |
21.7 |
ボートレース施設賃貸業 |
6,259 |
△1.9 |
ビル管理メンテナンス業 |
25,776 |
8.8 |
葬祭事業 |
3,052 |
4.2 |
その他 |
5,476 |
8.8 |
調整額 |
△2,111 |
- |
営業収益計 |
43,104 |
8.2 |
<建設業>
建設業におきましては、民間住宅工事のほか、物流施設、学校施設等の民間非住宅工事や公共工事の受注活動に注力いたしました。
以上の取組みを進めたものの、完成工事高は減少いたしましたが、保有物件を販売したことにより、建設業の営業収益は447億92百万円(前期比2.6%増)となりました。一方で、建設資材価格高騰等により利益率が低下したこともあり、営業利益は17億94百万円(前期比5.0%減)となりました。
営業成績
業種 |
当連結会計年度(2023.4~2024.3) |
|
営業収益 |
対前連結会計年度増減率 |
|
|
百万円 |
% |
建設業 |
44,808 |
2.6 |
調整額 |
△15 |
- |
営業収益計 |
44,792 |
2.6 |
<その他の事業>
その他の事業におきましては、営業収益は40億89百万円(前期比38.0%増)となり、営業利益は1億79百万円(前期比2.0%増)となりました。
営業成績
業種 |
当連結会計年度(2023.4~2024.3) |
|
営業収益 |
対前連結会計年度増減率 |
|
|
百万円 |
% |
その他 |
4,130 |
37.8 |
調整額 |
△41 |
- |
営業収益計 |
4,089 |
38.0 |
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ48億62百万円増加し、424億2百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は622億23百万円(前期は390億86百万円の獲得)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益337億93百万円のほか、減価償却費274億77百万円等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は105億28百万円(前期は263億5百万円の使用)となりました。これは主に、固定資産の取得による支出303億93百万円のほか、固定資産の売却による収入152億92百万円等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は468億32百万円(前期は113億41百万円の使用)となりました。これは主に、長期借入金の返済による支出511億15百万円のほか、長期借入れによる収入199億80百万円等によるものであります。
④ 生産、受注及び販売の実績
当社グループ(当社及び連結子会社)の受注及び販売品目につきましては多種多様であり、セグメントごとに金額及び数量で示すことはしておりません。
このため生産、受注及び販売の実績につきましては、「② 経営成績」におけるセグメントごとの経営成績に関連付けて示しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 経営成績等に重要な影響を与える要因
経営成績等に重要な影響を与える要因につきましては、「3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
② 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の進捗状況
「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載のとおり、「共創140計画」における経営指標として、「営業利益」及び「純有利子負債残高/EBITDA倍率」をそれぞれ採用しております。
当連結会計年度末における各指標の状況、及び「共創140計画」で掲げる数値目標はそれぞれ以下のとおりであります。
経営指標 |
2023年度 (実績) |
2024年度 (目標) |
営業利益(※1) |
320億円 |
280億円 |
純有利子負債残高/EBITDA(※2)倍率 |
6.5倍 |
7.5倍以下 |
(※1)営業利益+受取配当金
(※2)営業利益+受取配当金+減価償却費
③ 資本の財源及び資金の流動性に係る情報
a.資金調達の方法及び状況
資金調達につきましては、鉄道事業等における設備投資に対する㈱日本政策投資銀行からの借入金のほか、社債及び金融機関からの借入金など、市場の環境や金利の動向等を総合的に勘案したうえで決定しております。
また、資金調達手法の一つとして複数の金融機関との間でコミットメントライン契約を締結しております。
さらに、当社グループの資金効率向上のため、キャッシュマネジメントシステム(CMS)を導入し、極力グループ内資金を有効活用する仕組みを構築しております。
このほか、大規模自然災害等が発生した場合の対処として、震災対応型コミットメントライン契約を締結しております。
b.資金需要の動向
「南海グループ経営ビジョン2027」達成に向けた10年間(2018年度~2027年度)は、特に新型コロナウイルス感染症の影響を受けた期間において、コスト削減を徹底するとともに、安全性・緊急性を判断した上で設備投資の抑制に努めましたが、基本的には営業キャッシュ・フローを成長投資に優先配分し、収益力向上を通じた財務体質の強化をめざすこととしております。なお、当連結会計年度における各セグメントの設備投資等の概要については、「第3 設備の状況」に記載のとおりであります。
配当の基本方針は、長期にわたる安定的な経営基盤の確保と財務体質の強化に努めつつ、収益のさらなる向上をはかることにより安定的な配当を実施することとしております(配当政策については、「第4 提出会社の状況 3.配当政策」をご覧下さい。)。なお、内部留保資金は、鉄道事業の安全対策を中心とする設備投資のほか、当社グループの持続的な成長のための投資、財務体質の強化等に充当する考えであります。
④ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。連結財務諸表の作成にあたり、経営者は、決算日における資産・負債及び報告期間における収入・費用の金額並びに開示に影響を与える見積り及び予測を行わなければなりません。これらの見積りについては、過去の実績や状況等に応じ合理的だと考えられるさまざまな要因に基づき見積り及び判断を行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
なお、当社グループの連結財務諸表で採用されている重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりであります。
当社グループで重要であると考える会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定には、以下のようなものがあります。
a.固定資産の減損損失
当社グループは、管理会計上の区分を基礎に、事業ごと又は物件ごとに資産のグルーピングを行い、収益性が著しく低下した資産グループについて、固定資産の帳簿価額を回収可能価額まで減損し、当該減少額を減損損失として計上することとしております。回収可能価額は、資産グループの事業計画に基づく将来キャッシュ・フロー、割引率、正味売却価額など多くの前提条件に基づいて算出しております(当該見積りに用いた仮定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(連結損益計算書関係)」に記載しております。)。これらの前提条件は長期的な見積りに基づくため、将来の当該資産グループを取り巻く経営環境の変化による収益性の変動や市況の変動により、回収可能価額を著しく低下させる変化が見込まれた場合、減損損失の計上が必要となる可能性があります。
b.退職給付に係る資産・負債
当社グループは、退職給付債務及び費用について、年金資産の長期期待運用収益率や割引率等数理計算上で設定される仮定に基づいて算出しております(当該見積りに用いた仮定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(退職給付関係)」に記載しております。)。これらの仮定と実際の結果との差額は累計され、将来の会計期間にわたって費用化されます。使用した仮定は妥当なものと考えておりますが、実際の結果との差異又は仮定自体の変更が生じた場合には、損益及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
c.繰延税金資産
当社グループは、繰延税金資産について、将来の利益計画に基づいた課税所得が十分に確保でき、回収可能性があると判断した将来減算一時差異等について算出しております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積額の前提条件や仮定に変更が生じた場合には、繰延税金資産が増額又は減額され、損益及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
d.完成工事高及び完成工事原価
工事契約において、一定の期間にわたり充足される履行義務については、期間がごく短い工事を除き、履行義務の充足に係る進捗度を見積り、当該進捗度に基づく収益及び費用を計上しております。計上にあたっては取引価格、工事原価総額及び当連結会計年度末における履行義務の充足に係る進捗度を合理的に見積っております。
取引価格については、当初契約金額及び追加変更契約金額に基づいておりますが、過去に実績のある一部の工事については、自社で合理的な見積りを実施しております。工事原価総額については、図面や仕様書に基づき、詳細な積み上げ計算を行い、状況の変化に応じて見直しを実施しております。
また、当連結会計年度末における履行義務の充足に係る進捗度についてはインプット法を採用し、当連結会計年度末までに発生した工事原価累計額が予想される工事原価総額に占める割合をもって決算日における進捗度とする方法を採用しております。
この見積りが、建設資材及び労務外注の調達遅れや価格高騰、市況の変動等も含め、工事着工後の状況の変化により大きく変動した場合は、当社グループの損益及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
特記すべき事項はありません。
特記すべき事項はありません。