第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)会社の経営の基本方針

 当社グループは、『私たちは、情報サービスを通して「価値あるしくみ」を創造することで、社会の発展に貢献します。』という経営理念の下、お客様の経営に役立つ最適な情報システムと高品質なサービスを提供いたします。また、より付加価値の高いビジネスに取り組むとともに、営業力を強化することで収益性を向上し、企業価値を高め、すべてのステークホルダーから信頼され支持される企業となるべく、グループ全役職員が一丸となって取り組んでまいります。

 

(2)目標とする経営指標及び中長期的な会社の経営戦略

 当社グループは、「お客様の価値(業績)を高める経営パートナー」となることを目標に、お客様の企業価値を高める最適なソリューションの提案や高付加価値商品の開発・拡販に努め、お客様との信頼関係をより強いものにしてまいります。

 中期経営計画「CANVAS ONE」(2022年度から2024年度)においては、新たな価値創造に挑戦し、新たなビジネスの種を生み出すM&A、業務提携、新規ビジネス投資, 挑戦する企業文化形成などに取り組んでおります。目標とする経営指標としては、成長性・収益性については売上高、営業利益ならびに営業利益率、資本効率についてはROE(自己資本利益率)、ROIC(投下資本利益率)としております。

 そのため、当社グループのコア市場である中堅市場に経営資源を集中させるとともに、独自のビジネスモデルを創造することで、品質・生産性の向上に努め、収益力の強化を図ってまいります。
 また、これまで培ってきたスキル・ノウハウの活用と共有による組織力強化に加え、最適なソリューションを提案できる人財の育成、あわせて外部パートナーとの協業を今まで以上に積極的に推進してまいります。

 

(3)経営環境および事業戦略

 当社グループの事業基盤の特徴としては以下があげられます。

① 長い歴史の中で構築されたお客様からの信頼

 当社は、設立以来70年に渡りお客様に寄り添い、業務を理解し提案することで深い信頼関係を構築しており、直接取引を中心とした2万社以上のお客様と取引を継続しております。信頼関係の維持ならびに向上に当たっては、毎年実施している顧客満足度アンケートにより、お客様からの評価を分析し具体的な改善活動に繋げております。これらの取り組みにより、既存のお客様からのリピート受注が90%を超えており、お客様の業務理解と信頼関係がさらに深化する好循環を構築しております。

② お客様の業務に精通することによる「コトづくり」の提供

 当社は、富士通株式会社とパートナー契約を締結しており、同社との共創に加え、マルチベンダーの推進により常にお客様ニーズに合わせた最適な商品・サービスを提供しております。加えてソリューションパートナーを始めとした2,800社を超えるパートナー企業と密接なパートナーシップを構築し、互いの強みを融合して強力なソリューションを提供しております。

 これらを統合して、ICTに関するコンサルティングからシステム設計、構築、運用、検証までをワンストップで最適解を提供することで差別化を図っております。

③ 共創から生まれた独自のパッケージソフトによる市場開拓

 当社は、お客様の業務を理解し信頼関係を構築しながら、お客様のニーズに応えたソリューションの提供を継続してまいりましたが、個々のプロジェクトで培ったソリューションを自社パッケージ化し、同様のニーズを持つお客様に提供しております。具体的には、製造業向け個別受注型生産管理システム、間接材調達支援システム、流通専門店向け次世代POSシステム等、お客様との共創による成果として新規のお客様への提供にも寄与しております。

④ 新たなビジネス領域への投資ならびに挑戦

 当社は、上記の既存ビジネス領域に加え中期経営計画「CANVAS ONE」において、新たなビジネス領域への投資ならびに挑戦を推進すべく、投資目標や投資ガバナンスを整備し中長期的な企業価値の向上に取り組んでおります。

 

 今後の見通しにつきましては、企業の設備投資は増加基調が続き、雇用・所得環境の改善などを背景に個人消費も回復する見通しであり、景気は内需主導で緩やかな回復を辿ると思われますが、世界経済においては、欧米で予想される金融政策の転換や、地政学リスクの継続など、引き続き先行き不透明な状況にあります。

 また、テクノロジーの急速な発展に伴うDX化や生成AIの活用、人材不足を背景とした省力化に向けたデジタル投資により、引き続きICTへのニーズは高まっていくものと思われます。

 このような環境のなか、当社グループは、長期ビジョン「CANVAS」で掲げた「新たな価値提供への挑戦を続け、彩りのある企業へ~Be Challenging,Be Colorful~」をグループ共通のテーマとして、これまでの収益構造を変革し、環境変化に強い企業集団として新たな価値提供に努めていくとともに、「五方良し」経営を実践することで持続的な成長と企業価値の向上を図り、すべてのステークホルダーから信頼され支持される企業となるべく、グループ全役職員が一丸となって取り組んでまいります。

 なお、2025年3月期は大型商談やインボイス対応などの需要が一服する中で、中期経営計画「CANVAS ONE」の最終年として、次期中期経営計画に向けた礎を築くため、三つの基本戦略、①「新たな価値創造への『挑戦』」、②「『強み』を活かしたコアビジネスの成長」、③「『強み』×『挑戦』を支える事業基盤の強化」に基づき、シン・ビジネスや重点ソリューション拡大のための開発投資、事業を支える人的資本への投資を進めてまいります。

「CANVAS ONE」の三つの基本戦略に基づく重点施策は以下のとおりです。

① 新規事業創出早期化への取り組み

・社内の各部門や各タスクフォースが連携し、顧客課題の探求を通したマーケットニーズの抽出を行うことで事業創出を推進し、事業化へと引き上げる活動を展開します。

・新たな取り組みとして発表した「D-Ever flex」ビジネスを既存顧客への拡販を通して発展させ、より顧客に適合するソリューションに仕立てた上で、細業種戦略を実行します。

・パートナー企業との連携にて、双方の強みを活かした新たな連携ビジネスの創出を行います。

② 営業利益率5%に向けた取り組み

・KGIである営業利益率5%は既に達成しておりますが、更なる収益性を向上させるために、収益性の高い重点ソリューション拡販に向けた専門組織を配置し、高付加価値提案と拡販力の強化を図ります。

・ストックビジネスにおける当社独自のサービスメニュー、クラウドサービスの更なる販売強化を図ります。

・グループシナジーを発揮して、SEの生産力を強化するとともに、プロジェクトマネジメントスキルを強化することでSEサービスの拡大を図ります。

③ 挑戦する企業文化への取り組み

・従業員エンゲージメントの向上、従業員の行動変革を促す人事制度の見直しを図ります。

・人財開発部を新設し、新たな価値創造の担い手となるDX人財をグループ全体で育成します。

・社内表彰制度である「DAiKO Challenge」を更に拡充し、失敗を恐れない企業文化を成長させます。

 

「CANVAS ONE(キャンバス・ワン)」における目標数値は以下のとおりです。

 

2023年3月期

2024年3月期

2025年3月期

売上高(百万円)

37,000

38,000

40,000

営業利益(百万円)

1,580

1,700

2,000

営業利益率

4.3%

4.5%

5.0%

ROE

(自己資本利益率)

11.2%

11.4%

13.0%

ROIC

(投下資本利益率)

9.3%

9.3%

10.0%

 

(4)コンプライアンスの徹底と有効な内部統制の整備・運用

 当社グループは、今後もグループ全体のコンプライアンスの徹底と有効な内部統制の整備・運用に努めてまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社のサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1)ガバナンス

 当社では、事業継続に最も大切な資産は人財であり、その人財を中心においた企業文化づくりと「五方良し経営」を意識するとともに、お客様と新しい価値を共創するために、当社自身が常に価値創造に挑戦的であり多彩な価値観を取り入れる必要があるため、長期ビジョン「CANVAS2030」(新たな価値提供への挑戦を続け、彩りのある企業へ~Be Challenging, Be Colorful~)を取締役会で決議のうえ公表を行い、定期的にその進捗を取締役会でモニタリングすることとしております。

 

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(2)戦略

  当社グループの最大の財産は「人(人財)」です。お客様に対し「価値あるしくみを創造する存在」であり続けるために、それを実現する「価値創造人財」の育成を基本方針とし、すべての従業員が常に学び、成長を続けることができる教育・育成体制と、その能力と個性を最大限に発揮することができる環境を整備します。従業員が価値創造に主体的に挑戦する企業文化の醸成と、従業員の多様性や様々な価値観を受け入れる風土をつくりあげることで、企業の成長と従業員の成長を実現します。

 

(3)リスク管理

 当社ではサステナビリティに関するリスクについては、主に「コンプライアンス」「知的財産や情報セキュリティ」「環境負荷の低減」「人権と労働」「人的資本」と捉えており、各課題に優先度を定めて取り組んでおります。

 また、1年に一度リスク評価を実施した上で、対応策を決定し、その実施状況を都度執行役員会、経営監理委員会および取締役会等に報告・審議し、モニタリングを行ってまいります。

 

 

(4)指標及び目標

 当社は、サステナビリティや人財育成の基本方針を実現するために、以下の指標について定期的にモニタリングを行い、改善計画の立案や実行を行ってまいります。

 なお、当社グループでは関連する指標を定期的に収集し社内外の利害関係者へ適宜開示するよう努めてはおりますが、当連結会計年度の指標は一部を除き当社の実績であります。

 

① 人財育成指標について

 当社は、お客様に提供する価値や当社自身の価値を最大化し、本質的な意味でのマーケットインを体現していきます。そのためには、「当社の従業員一人ひとりがどの位利益を生み出しているのか」この点に着眼し、単なる「改善」では達成し得ない『改革』目標を掲げて業界の中で後れを取らないことを目指し、人が生み出す生産的能力や資質を高めることを目的とした人的投資を進めてまいります。

人財育成指標    ア.一人当たり生産性(付加価値額/従業員数)

          イ.一人当たり教育投資(全社教育費実績/従業員数)

 

② 流動性指標について

 当社は、お客様にとって、より価値のあるサービスを提供し続けていきます。そのための人財戦略として、採用活動やM&Aにより技術者を中心に将来必要となる人財確保を積極的に進め、当社価値の根幹である人財基盤を強化してまいります。

流動性指標     ア.離職率(年度毎の自己都合退職数/従業員数)×100

          イ.技術者数増減(SE、エンジニアリング職等、技術者数の増減)

 

③ ダイバーシティ指標について

 当社は、アイデアの源泉となる、従業員の多様性や様々な価値観を受け入れ、価値創造人財の育成を図り、企業の成長へとつなげます。

ダイバーシティ指標  ア.女性管理職比率(女性管理職数/管理職数)×100

イ.男女間賃金格差(女性の平均年間賃金/男性の平均年間賃金)×100

ウ.男性育児休業取得率(育休等を取得した男性従業員の数/配偶者が出産した男性従業員の数)

エ.障がい者雇用率

 

④ 健康・安全指標について

 当社の事業継続に最も大切な資産は人財であり、その人財を中心においた企業文化づくりを進めます。そのために人財の健康維持、安全性衛生確保に努めます。

健康・安全指標   ア.健康診断受診率

イ.重大な労災事故件数

 

⑤ コンプライアンス指標について

 当社がビジネスを行う上で最も重要であることは、お客様をはじめ、従業員、お取引先、地域社会ならびに株主などのステークホルダー(五方)の思いを理解し、誠実な対応と高い品質のサービスを提供することにより、ステークホルダーから信頼されることです。

 当社は、ステークホルダーから信頼される企業で有り続けるために従業員が守るべき行動基準を徹底します。

コンプライアンス指標  コンプライアンス研修受講率

 

⑥ 従業員エンゲージメント指標について

 当社は、従業員と会社との信頼関係を前提に、会社に対するエンゲージメントの向上により従業員の意欲的な行動が促進され、中長期の企業価値向上に資するものと考えます。

従業員エンゲージメント指標  従業員アンケート結果(ポジティブ回答率)

※新職業性ストレス簡易調査(80項目の内、エンゲージメントを図る質問回答項目を抽出)の結果統計データ

 

 

 なお、当該指標に関する実績は、次のとおりであります。

 サステナビリティに関する各取り組みの戦略、指標、目標については、重要度に応じて計画を立案し実施しておりますが、当社事業はICTサービスの提供であり、物品の製造など環境負荷の高い事業は行っておりません。現在のところ、気候変動問題が当社事業に重大な影響を及ぼすことは想定されないため、気候変動に関わる個別具体的な戦略、目標は策定しておりません。

 また、当該指標は一部を除き当社の実績であります。

区分

指標

実績(当事業年度)

人財育成

一人当たり生産性

15,950千円

一人当たり教育投資

107千円

流動性

離職率

6.4

技術者数増減(連結)

17

ダイバーシティ

女性管理職比率

6.6

男女間賃金格差(注)

100:77

男性育児休業取得率

70.0

障がい者雇用率

3.5

健康・安全

健康診断受診率

99.4

重大な労災事故件数

0

コンプライアンス

コンプライアンス研修受講率

100.0

エンゲージメント

アンケート結果(ポジティブ回答率)

68.4

(注)男女間賃金格差の要因は、職位や勤続年数等によるものであり、報酬体系による男女間格差はありません。

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)事業環境に関するリスク

① 市場動向リスク

 当社グループの主要顧客である中堅企業向け市場は、景気の影響を受けやすく、これに伴う需要の縮小により当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

② 競合リスク

 当社グループ事業の競合関係は、コンピュータメーカー各社および関連ソフトウェア会社、ソフトウェアパッケージ会社、システムインテグレータ、コンサルティング会社など多くの同業他社と競合関係にあります。現時点においては一定の競争力を有していると考えておりますが、今後、同業他社あるいは新規参入者に対し、取扱い商品・サービス、業務スキル、技術面等での競争結果によっては、業績に影響を及ぼす可能性があります。

③ 技術革新リスク

 当社グループが事業を展開する情報サービス業界においては、急速に技術等が変化しております。これらの技術革新への対応が遅れた場合には、当社グループの提供するサービスの競争力の低下等が生じる可能性があります。

④ 特定取引先への依存リスク

 当社グループの主要な取引先は、富士通株式会社であり、当連結会計年度において当社グループの売上高に占める富士通株式会社の割合は5.1%、仕入高に占める割合は12.9%であります。富士通株式会社とはパートナー契約を締結しております。取引関係は安定的に推移してまいりましたが、このような取引関係が継続困難となった場合や、何らかの理由で支障が生じた場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

⑤ お客様との成約前・導入後作業の未回収リスク

 当社グループは、システム等の導入においては、お客様との成約前に技術者やパートナーによる事前調査や提案作業(プレ作業)を実施する場合があります。また、過去にお客様に導入したシステムの調整等について有償化できない作業(メンテ作業)が発生した場合には費用として計上しております。それらの作業については、予算化し事前の承認を含めた運用基準を策定しモニタリングしておりますが、結果的にお客様との成約に至らない場合やメンテ作業工数が増大した場合には、業績に影響を与える可能性があります。

(2)品質に関するリスク

① プロジェクトリスク

 当社グループは、ソリューションサービスの一環としてシステム構築を行っておりますが、顧客との認識不一致、当社の調達先の技術力不足、システムの不具合から多額の修正費用が発生する可能性があります。また、このような不具合、納期遅延等により、お客様からの重大なクレームや訴訟等を受ける可能性があります。こうしたリスクを回避するために、当社は、不採算プロジェクト発生の事前防止と遂行中プロジェクトの課題の早期発見のために、現場部門における品質管理体制を強化するとともに、品質管理部門を常設し、全社的なプロジェクトの管理・支援を強化することによって、プロジェクトのリスクをコントロールし、損失の極小化を図っております。

② 製品開発リスク

 当社グループは、ソリューションサービスの一環として自社開発のソフトウェア製品を開発、販売しておりますが、製品が陳腐化し市場性が失われたり、想定外の不具合等の発生により、多額の改修費用が発生する可能性があります。

(3)人財の確保・育成に関するリスク

 当社グループの最大の財産は「人財」であり、人財の確保、育成は経営基盤の維持、拡大の上で不可欠であります。人財確保の面では、定期採用・中途採用を行っており、会社説明会、インターネットの活用など幅広い採用活動を積極的に展開しておりますが、将来的に継続して必要な人財を確保することが困難なことも予想されます。当社グループは、人財育成を経営の最重要課題と位置づけており、必要なスキル習得のため教育を積極的に推進しておりますが、専門的知識や、技術・資格等を持つ人財に対する需要は強く、社外流出する可能性もあります。

(4)情報管理に関するリスク

 当社グループは、事業活動を通じ、お客様の機密情報、個人情報を知る機会を有しております。万一、情報が外部に流出した場合、当社グループの社会的信用が失墜するとともに、お客様からの損害賠償請求等の事態が発生する可能性があります。当社グループにとって、情報管理は社会的責務であり、その適切な取扱い、管理の徹底のため、プライバシーマークの取得等情報管理に関する体制を整備しております。

(5)財務リスク

① 退職給付リスク

 当社グループの従業員退職給付費用及び債務は、割引率等数理計算上で設定される前提条件や年金資産の期待

運用収益率に基づいて算出しております。実際の結果が前提条件と異なる場合、または前提条件が変更された場

合、その影響額については、認識した連結会計年度から定額法により5年で費用処理しております。従って、将

来、割引率が低下した場合や運用利回りが悪化した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態は重要な影

響を受ける可能性があります。

② 減損リスク(のれんを含む)

 当社グループは「固定資産の減損に係る会計基準」を適用しており、保有資産の将来キャッシュ・フロー等を算定し、減損の測定等を実施しております。今後、保有資産から得られるキャッシュ・フローの状況等によっては当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

③ 繰延税金資産の回収リスク

 当社グループは「税効果会計に係る会計基準」を適用しており、繰延税金資産について、決算の都度、将来の課税所得の見込みに基づき回収可能性の判断を実施しております。将来の期間にわたる課税所得の試算においては、慎重な判断に基づき、発生の確実性が高いと想定される金額により計算しておりますが、実際の課税所得が当初想定したものと異なる場合があります。これにより当連結会計年度末における繰延税金資産の回収可能見込額に過不足が発生する可能性があります。

④ 資金調達リスク

 当社グループは、金融機関から借入れを行っていますが、金融機関が貸出しを圧縮した場合、あるいは当社の信用引下げ等の事態が生じた場合、借換え又は新規の借入れが困難となり、適時に当社グループが必要とする金額の借入れを行うことができない場合には、当社グループの資金調達に悪影響を及ぼす可能性があります。

⑤ その他会計制度変更等に関するリスク

 当社グループは、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して、連結財務諸表および財務諸表を作成していますが、会計基準等の変更により、会計方針を変更した場合には当社グループの業績と財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

(6)コンプライアンスリスク

 当社グループは、「DAiKOグループの行動基準」を制定し、従業員一人ひとりがこの行動基準を遵守し、法令・規範に則した行動を行うよう、周知徹底に取り組んでおります。また、経営監理委員会を設置し、コンプライアンスの徹底にグループ一体となって取り組んでおります。しかしながら役職員個人による法令違反を含むコンプライアンス上の問題が発生した場合には、当社グループの業績と財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

(7)災害リスク

 地震等の自然災害、伝染病の発生等により、当社グループの事業継続に深刻な支障を来した場合には、当社グループの業績と財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

① 財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度における我が国経済は、経済社会活動が正常化する中、個人消費の回復に加え、高水準の企業業績を背景に設備投資が増加し、景気は緩やかな回復基調にありました。しかしながら、物価上昇が続いていることに加え、日米金利差の拡大などに起因する急激な円安の進行や世界的な金融引き締めが引き続き国内景気を下押しするリスクがあります。

 このような経済状況の中、当情報サービス業界ではDX(デジタルトランスフォーメーション)の進展や生成AIの普及などによるデジタル化が加速する一方、他方では多くの企業で稼働する既存ITシステムの老朽化(「2025年の崖」)や人材不足問題等、喫緊の課題への対応が求められ、IT投資は引き続き底堅く推移いたしました。

 こうした環境の下、当社グループでは長期ビジョン「CANVAS(キャンバス)」に基づく、中期経営計画「CANVAS

ONE(2023年3月期~2025年3月期)」において、「新たな価値提供への挑戦を続け、彩りのある企業へ~Be

Challenging,Be Colorful~」をビジョンに掲げ、人的資本を中心とした価値創造投資を推進すべく、「五方良し」の経営の実践に向け取り組んでまいりました。

 営業活動全般におきましては、ハードウェア、工事資材などの調達懸念が緩和され、お客様のITシステム基盤刷新やインボイス制度対応などのニーズを取り込み、公共分野から民需分野へのシフトも定着いたしました。加えて、前期に引き続き収益性が高いインダストリーソリューション、ICTソリューション、DXソリューションの各分野における重点ソリューションに注力するとともに、お客様の様々なニーズに対応するため、以下の当社固有のソリューション提案と販売にも注力いたしました。

 a.セキュリティソリューション

 戦略商品「AppGuard®」を中心とした、サイバー攻撃やランサムウェアから企業を守る数多くのセキュリティソリューション

 b.HRソリューション

 「WEB給与明細」を基本機能として、スマートフォンやパソコンからの雇用契約や入社手続きを可能とする「WEB雇用契約」、その他年末調整、安否確認などのオプションをラインナップした当社クラウド型ポータル

サービス「i-Compass」

 c.法令改正に対応するペーパーレスソリューション

 電子契約サービス「DD-CONNECT(ディ・ディ・コネクト)」、社内・社外文書の送付と受取の双方向に対応した電子データ交換機能、加えて紙に記載された項目をAIと人を活用してデジタル化するサービスがセットされた統合ペーパーレスサービス「EdiGate DX-Pless」(「EdiGate for INVOICE」は当ソリューションに機能を統合)

 また、コアビジネスの取り組みと併せ、連結子会社である株式会社CAМI&Cо.のIoT事業における技術力やコンサルティング力を活用することで、「CANVAS ONE」に掲げるシン・ビジネス創出を推進し、様々な素材のビジネス化に向けた企画ならびに実行を継続いたしました。

 資本政策におきましては、資本効率の向上を目指した「CANVAS ONE」の基本戦略に基づき、株主の皆さまへの利益還元の充実を図るため、自己株式取得を決議し実施いたしました。

 グループ運営におきましては、M&Aにより連結子会社化した各社の開発リソースの活用や、シン・ビジネス創出を目的とした連携強化に取り組みました。

 社内的には、新たなビジネスの探求、企業文化や人財の変革を推進するため組織を横断するタスクフォース活動に引き続き取り組みました。

 この結果、販売面におきましては、富士通株式会社をはじめとするパートナー企業との連携強化による新規商談および既存顧客からの受注が増加し、当連結会計年度の業績は、受注高427億17百万円(前期比104.4%)となり、新たに連結した子会社を含めて子会社の業績が寄与したことから、売上高につきましては、433億78百万円(前期比115.3%)と増加しました。

 利益面におきましては、収益性が高いソリューションサービスの売上高が堅調であったことに加え、情報通信機器の売上高の大幅な増加に伴う売上総利益の増加により、人的資本投資の一環である従業員の処遇改善、70周年関連行事実施を含む営業活動の活性化による経費増加を吸収したことで、営業利益28億96百万円(前期比154.7%)、経常利益29億73百万円(前期比154.6%)と増加しました。

 また、M&Aにより連結した子会社について、当社グループのIoTに関わるR&D機能を集約化し、シン・ビジネス企画の中核会社と位置づけ今後の事業計画を変更したことから、のれんの減損処理等を行い特別損失1億21百万円を計上いたしました。

 その結果、法人税、住民税及び事業税ならびに法人税等調整額を計上した親会社株主に帰属する当期純利益は、18億38百万円(前期比184.5%)となりました。

 

 事業部門別の連結販売実績は次のとおりであります。

 なお、当社グループは、情報通信分野における機器の販売およびサービスの提供を行う単一の事業活動を営んでいるため、事業部門別に記載しております。

 

情報通信機器部門

 情報通信機器部門におきましては、半導体不足による調達懸念が緩和し、富士通株式会社をはじめとするパートナー企業との連携強化による大型案件の獲得もあり、受注高は118億86百万円(前期比110.1%)、売上高は118億83百万円(前期比122.7%)と伸長いたしました。

ソリューションサービス部門

 ソリューションサービス部門におきましては、受注高は308億31百万円(前期比102.4%)、売上高は314億94百万円(前期比112.8%)となりました。同部門の内訳は以下のとおりです。

 ソフトウェアサービスでは、企業のITシステムの更新需要を取り込むとともに、公共分野から民需分野へのシフトが定着し、インボイス制度対応の案件が積み上がったこと、ストックビジネスの受注も堅調であったことなどから、売上高は214億96百万円(前期比118.5%)と増加しました。

 保守サービスでは、情報通信機器部門の受注高が増加したことに加え、継続してストックビジネスの拡大を図ったことにより、69億1百万円(前期比107.9%)となりました。

 ネットワーク工事では、新規の大型案件が計上されたものの、既存の更新工事のはざまという状況もあり売上高は30億96百万円(前期比91.4%)と減少しました。

 

 当社グループでは、2023年3月期(第70期)から2025年3月期(第72期)までの3ヶ年を対象とした中期経営計画「CANVAS ONE」を策定し公表しております。2年目である当連結会計年度の計画及び実績は下記のとおりです。

 

2024年3月期

(当連結会計年度)

計画差異及び達成率

中期経営計画

実績

計画差異

達成率

売上高(百万円)

38,000

43,378

5,378

114.2%

営業利益(百万円)

1,700

2,896

1,196

170.4%

営業利益率

4.5%

6.7%

2.2%

ROE

(自己資本利益率)

11.4%

17.1%

5.7%

ROIC

(投下資本利益率)

9.3%

14.6%

5.3%

 

② キャッシュ・フローの状況

 営業活動によるキャッシュ・フローは、41億30百万円の収入(前期は5億56百万円の収入)となりました。これ

は主に、税金等調整前当期純利益28億60百万円、減価償却費2億7百万円、売上債権の減少額4億5百万円等の収

入によるものであります。

 投資活動によるキャッシュ・フローは、5億43百万円の支出(前期は3億66百万円の収入)となりました。これ

は主に、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出5億6百万円によるものであります。

 財務活動によるキャッシュ・フローは、8億26百万円の支出(前期は11億12百万円の支出)となりました。これ

は主に、短期借入金の返済による支出2億円、長期借入金の返済による支出37百万円、自己株式の取得による支出

2億10百万円、配当金の支払額2億74百万円によるものであります。

 この結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度の期末残高より27億60百万

円増加し、100億35百万円となりました。

 

 

③ 生産、受注及び販売の実績

 当社グループは、情報通信分野における機器の販売及びサービスの提供を行う単一の事業活動を営んでいるため、事業部門別に記載しております。

 

a.受注実績

当連結会計年度における受注実績を事業部門別に示すと、次のとおりであります。

事業部門別

受注高(千円)

前年同期比(%)

受注残高(千円)

前年同期比(%)

情報通信機器

11,886,388

110.1

3,441,349

100.1

ソリューションサービス

 

 

 

 

ソフトウェアサービス

20,711,605

106.6

6,457,940

89.2

保守サービス

7,157,170

104.5

1,872,122

115.8

ネットワーク工事

2,962,617

77.2

942,789

87.6

小計

30,831,394

102.4

9,272,852

93.3

合計

42,717,782

104.4

12,714,202

95.1

 

b.販売実績

当連結会計年度における販売実績を事業部門別に示すと、次のとおりであります。

事業部門別

販売高(千円)

前年同期比(%)

情報通信機器

11,883,860

122.7

ソリューションサービス

 

 

ソフトウェアサービス

21,496,458

118.5

保守サービス

6,901,540

107.9

ネットワーク工事

3,096,308

91.4

小計

31,494,307

112.8

合計

43,378,167

115.3

 (注) 最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

富士通株式会社

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

1,908,018

5.1

2,188,835

5.0

 

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.売上高および売上原価

 富士通株式会社をはじめとするパートナー企業との連携強化による新規商談および既存顧客からの受注が増加し、売上高は433億78百万円(前期比115.3%)となりました。売上原価は322億64百万円(前期比114.7%)、売上総利益率は25.6%となりました。

 情報通信機器部門におきましては、半導体不足による調達懸念が緩和し、富士通株式会社をはじめとするパートナー企業との連携強化による大型案件の獲得もあり、売上高は118億83百万円(前期比122.7%)と総売上高の27.4%(前期は25.8%)となりました。

 ソフトウェアサービスでは、企業のITシステムの更新需要を取り込むとともに、公共分野から民需分野へのシフトが定着し、インボイス制度対応の案件が積み上がったこと、ストックビジネスの受注も堅調であったことなどから、売上高は214億96百万円(前期比118.5%)となりました。

 保守サービスでは、情報通信機器部門の受注高が増加したことに加え、継続してストックビジネスの拡大を図ったことにより、売上高は69億1百万円(前期比107.9%)となりました。

 ネットワーク工事では、新規の大型案件が計上されたものの、既存の更新工事のはざまという状況もあり、売上高は30億96百万円(前期比91.4%)となりました。

 その結果、ソリューションサービス部門の売上高は、314億94百万円(前期比112.8%)と総売上高の72.6%(前期は74.2%)となりました。

 売上原価は、ハードウェアの販売に係る情報通信機器の原価率は85.1%(前期は83.4%)となりました。ソリューションサービスにおけるソフトウェアサービスの原価率は68.7%(前期は72.4%)、保守サービスの原価率は76.1%(前期は72.9%)、ネットワーク工事の原価率は68.7%(前期は67.0%)となりました。

b.販売費及び一般管理費

 販売費及び一般管理費は82億17百万円(前期比108.0%)となり、売上高に占める割合は18.9%(前期は20.2%)となりました。

c.営業外損益

 営業外収益は1億4百万円(前期比138.9%)、営業外費用は27百万円(前期比110.7%)となりました。これらは経常的に発生するものであり、営業活動上必要のあるものと判断しております。

d.特別利益

 特別利益8百万円は、投資有価証券売却益であります。

e.特別損失

 特別損失1億22百万円は、減損損失1億21百万円等であります。

f.法人税等

 法人税、住民税及び事業税は5億95百万円(前期比233.8%)、法人税等調整額は4億24百万円(前期比135.3%)であります。

g.親会社株主に帰属する当期純利益

 親会社株主に帰属する当期純利益は18億38百万円(前期比184.5%)となりました。その結果、1株当たり当期純利益は139円85銭(前期は75円03銭)となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

a.資金需要

 当社グループの短期的な資金需要の主なものは、当社グループの販売目的である情報通信機器等の仕入、製造費用、及び販売費及び一般管理費等の営業費用であります。また、販売費及び一般管理費の主なものは人件費、賃借料などであります。当社グループの短期的な資金の源泉は、主に営業活動によって獲得した現金となっております。その結果、当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、41億30百万円の収入(前期は5億56百万円の収入)となりました。今後、当社グループの新たな事業の基盤となるビジネス領域の開拓のための投資、人的資本投資による人件費の増加やパートナーとの連携による支出の増加を見込んでおります。

 当社グループは、事業活動に必要な技術者を中心とした人財確保、新たなビジネス領域の拡大を目的とした子会社の追加取得を継続しており、今後も中期経営計画に沿って投資を継続する予定であります。

 株主還元といたしましては、当連結会計年度において、1株当たり年間21円(普通配当16円、記念配当5円)、総額2億77百万円の配当金の支払いを行いました。また、2024年6月21日に開催された当社の定時株主総会において、2024年3月31日現在の株主に対し、1株当たり29円、総額3億77百万円の期末配当を2024年6月24日に実施することが承認されました。

 以上の結果、当連結会計年度の期末日における現預金残高は100億46百万円となり、今後の資金需要には十分対応できる水準と考えております。

b.財務政策

 当社グループは運転資金の安定的かつ機動的な確保を重視した資金調達を基本方針としており、子会社の取得等の多額の資金需要に対しては、必要に応じて外部金融機関から資金調達しております。また、当社グループは、資金の効率的な活用と金融費用の削減を目的として、CMS(キャッシュ・マネジメント・システム)を導入しグループ全体の資金効率化を図っております。当連結会計年度末における借入金は、短期借入金20億70百万円及び長期借入金16百万円であります。

 当社グループは、営業活動によるキャッシュ・フローの創出能力と、金融機関との相対取引により、当社グループの成長を維持するための運転資金の確保・調達が可能であると判断しております。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

5【経営上の重要な契約等】

(1)富士通パートナー契約

 当社は、富士通株式会社(本店、神奈川県川崎市中原区)と同社製品の継続的な販売活動に関する基本契約として、1964年4月1日より通信特約店契約を締結いたしました。その後同契約は1970年10月1日にFACOMディーラー契約、1982年10月1日には富士通ディーラー契約として継承され、またそれと並行してパソコン特約店基本契約等の製品別の個別契約も別途締結されておりましたが、1987年10月1日よりそれらを統一した富士通システム機器ディーラー契約を締結いたしました。その後同契約は、1999年11月26日に、機器、プログラム・プロダクト、保守、サービス、コンサルティングに関する条項等大幅に拡充し、富士通パートナー契約として新たに締結いたしました。なお同契約については、双方から別段の意思表示がない限り同一条件をもって毎期継続するものとされております。

(2)富士通Japanパートナー契約

 当社は、富士通Japan株式会社(本社、東京都港区)と富士通グループの民需ビジネス市場における営業体制の再編に伴い、富士通製品(機器、プログラム・プロダクト、保守、サービス、コンサルティング等)の取扱いに関する契約として2012年4月1日付けでパートナー契約を締結いたしました。契約期間は2012年4月1日から2013年3月31日までであり、以降1年毎に自動更新するものとされております。

 

6【研究開発活動】

 該当事項はありません。