第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 本資料に記載されている当社グループの業績予想、目標、計画、予想その他の将来情報については、当連結会計年度末現在において入手可能な情報に基づき作成した当該時点における当社の判断又は考えに過ぎず、実際の当社グループの業績、財政状態その他の結果は、国内外の政治、経済、金融情勢の変動や、意図する施策の状況その他の本資料の作成時点で不確実な要素等により、本資料の内容又は本資料から推測される内容と大きく異なる場合があります。

 

 当社グループは、メガトレンドや昨今の経営環境の変化に対し、グループの持つ強みを生かし、社会的価値と株主価値を極大化していくため、不動産事業を核とした成長戦略からなる「西武グループ長期戦略2035」(以下、「長期戦略」)を新たに策定いたしました。2035年のありたい姿(アウトカム)を「Resilience & Sustainability」とし、「安全・安心とともに、かけがえのない空間と時間を創造する」企業グループを目指してまいります。

 そのため、以下4点の取り組みに加え、「人財戦略」「デジタル経営」「グリーン経営」の3点を実行し、株価や資本コストを重視した経営をおこない、今後とも持続的かつ健全な成長を目指してまいります。

 

<長期戦略及び中期経営計画の取り組み>

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①不動産事業を核として持続的な成長を実現

(1)資本効率性を追求し、保有前提のビジネスモデルからキャピタルリサイクル※と両輪で成長させるビジネスモデルへ転換
※流動化とその資金を活用した再投資を持続的におこなうことで成長していくビジネスモデル

(2)東京ガーデンテラス紀尾井町をはじめとして聖域なき流動化を実施するとともに、キャピタルリサイクルにより、事業ポートフォリオの最適化を実現

A)流動化による含み益の顕在化

 2023年5月に公表のとおり、不動産回転型ビジネスを開始いたします。キャピタルリサイクルの最大の原動力として東京ガーデンテラス紀尾井町を流動化いたします。さらに、本社のダイヤゲート池袋など含め、当社グループが保有するすべての物件を流動化の検討対象とし、含み益の顕在化を進めてまいります。

 

B)流動化により得られた資金を再投資に振り向け、不動産価値を最大化(NAV成長)

 上記の不動産回転型ビジネスにともなう流動化により得た資金を活用し、都心エリア(高輪・品川・芝公園)、西武鉄道沿線(西武新宿・高田馬場)の再開発、リゾート開発(軽井沢・箱根・富良野・日光等)、物件の新規取得をおこない、社会の発展に寄与しながら、不動産価値を最大化、NAV(ネットアセットバリュー)を成長させてまいります。

C)資本効率性の判断材料として、西武ROICを導入

 企業価値を向上させるべく西武ROICを導入し、各事業の資本効率性を高めてまいります。

D)キャピタルリサイクルを回すためのアセットマネジメント機能を整備

 2025年4月を目途に、アセットマネジメント機能を持つ資産運用会社を設立いたします。不動産事業の機能分化によりアセットマネジメント機能を整備し、資産価値・競争力の向上をはかってまいります。

 

②インバウンド需要の取り込み、値上げの継続、国内外250ホテル体制の構築(MC拡大)によるホテル・レジャー事業の収益性向上

 ホテル・レジャー事業において、“日本をオリジンとしたグローバルホテルチェーン”を目指してまいります。パフォーマンスの向上を企図し、ロイヤルティプログラムやパーソナライズされたホスピタリティの提供等によって競争優位性を確立することで、インバウンド需要を取り込み、付加価値をともなった値上げの継続をしてまいります。また、MC(マネジメントコントラクト)を中心として2035年度に国内外で250ホテル体制の実現に努め、ネットワークの拡大、収益性向上をはかってまいります。

 

③企業価値向上につながる成長投資を優先しつつ、株主還元の安定性および継続的な強化

 配当方針につきましては、2025年3月期の1株当たり配当金予想を30円とし、今回計画以降、DOE2.0%を下限とする累進配当を導入することで、安定的な配当とあわせ、収益向上を通じた増配を実現してまいります。また、自己株式取得につきましては、バランスシートの状況を踏まえ、機動的に実施してまいります。

 

④新たな長期戦略・中期経営計画を実行するための基盤となるコーポレート・ガバナンスを強化

 コーポレート・ガバナンスの強化につきましては、取締役に必要なスキルを有する取締役会構成とし、取締役会の実効性を高めることを目的に、スキルの再検証をおこなっております。これらに基づき、取締役のスキルセットや社外取締役比率、委員会の構成を見直しております。2024年6月開催の定時株主総会後の取締役候補者は、それぞれの有するスキルが相互補完し合うように、バランスのとれた陣容としております。

 指名諮問委員会、報酬諮問委員会については、2024年3月より構成員から社内取締役を除外し、全ての構成員を独立社外取締役に変更しております。

 また、コーポレート・ガバナンスの向上の観点から、筆頭株主である株式会社NWコーポレーションとの関係の在り方についても見直しをおこない、同社が当社に対して議決権を行使できる状態を解消しました。引き続き、当社グループによる同社株式保有も含め、その関係の在り方を検討してまいります。

 

「人財戦略」

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 国内において少子高齢化や人手不足などが問題となっておりますが、2035年度までの当社グループ成長戦略達成のために、「はたらく人を、ほほえむ人へ。」のスローガンのもと、経営戦略と連動した「西武グループ人財戦略」を策定しております。グループ各社において、「人財スキル・人員数の確保」、「働きがいのある組織」に向けた取り組みを実行し、「個人の成長」を促進してまいります。その上で「個人×個人が最大限活躍できる組織」づくりを推進することで、グループ一丸となって「プロフェッショナル集団」を目指してまいります。

 

 

「デジタル経営」

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 世界的にデジタル化が加速しておりますが、当社では、経営層を含めた全社員がDX人財となるための「体制強化・人財育成」を土台とし、デジタル化による省力化・無人化を進める「守りのDX」から生じたリソースを当社の「攻めのDX」に回すことで顧客接点を強化してまいります。基本的な考え方としては、デジタルよりもトランスフォーメーションにより重きを置き、当社グループ全体の変革(コーポレートトランスフォーメーション)を実現してまいります。加えて、データ分析・利活用を高度におこなえる人財の育成や、すべてのグループ社員があらゆるデータの利用を可能とすることで、データを活用した効果的な施策を実施、迅速な意思決定をおこなえる体制を構築してまいります。これらにより、これまでにない“新しい体験価値”を創出してまいります。

 

「グリーン経営」

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 サステナビリティに関して国内外で様々な議論がされておりますが、特段環境に関する分野は、気候変動への対応や生物多様性保全等の観点を踏まえたリスクと機会を適切に把握し、いかに戦略と融合して「西武らしさ」を体現する強みへつなげていくかが課題と認識しております。当社グループではこのような背景を踏まえ、マテリアリティ(重要テーマ)の1つとして「脱炭素・資源有効活用」を設定し、車両や設備の省エネ化、再生可能エネルギーの導入・活用、保有森林の有効活用、食品ロスの削減と食品残渣の有効活用といった具体的施策を進めてまいります。

 また、TCFDのシナリオ分析に沿い、気候変動による当社事業への影響とその対応策の洗い出しをおこない、戦略へ反映するとともに、そのリスクと機会を開示しております。今後はTNFD分析も実施し、幅広い観点から事業へのリスクと機会を把握するとともに、戦略への折り込みと適切な情報開示に努めてまいります。

 

<重視する経営指標>

 2035年度当社グループの営業利益1,000億円以上の達成に向けて、不動産事業を核とした成長戦略からなる「西武グループ長期戦略2035」を実行してまいります。下記4つの資本効率や最適資本構成を示す経営指標等について、「財務KPI」を設定いたしました。

 ・ROE      恒常的に8%を達成(2035年度に10%以上を目指す)

 ・ROA      2.7%以上

 ・自己資本比率   25~30%

 ・格付け機関の評価でA格を維持

 今後、これらの重視する経営指標の水準に到達できるよう努めてまいります。

 

 当社グループは、これまでもこれからも「でかける人を、ほほえむ人へ。」を変わらぬスローガンとして掲げ、お客さま、地域社会とともに成長していく企業として、お客さまの行動と感動を創造し、豊かで持続可能な社会を実現してまいります。また、「Resilience & Sustainability -安全・安心とともに、かけがえのない空間と時間を創造する-」ことを目指し、社会的価値と株主価値の極大化に向けて企業運営をおこなってまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において合理的であると判断する一定の前提に基づいて当社グループが判断したものであり、種々の要因により実際の結果とは異なる可能性があります。

 

(1) サステナビリティ全般についての考え方及び取組

 当社グループは、西武グループ長期戦略2035において、2035年のありたい姿 (アウトカム) を「Resilience & Sustainability」とし、「安全・安心とともに、かけがえのない空間と時間を創造する」企業グループを目指すこととしております。このアウトカムを実現するためには、社会課題のみではなく時流に応じた様々なニーズと、当社グループにとってのリスク・機会を的確に把握し、しなやかに対応していくことが必要です。当社グループでは、持続可能な社会の実現と当社グループの持続的かつ力強い成長を目指すための取組を「サステナビリティアクション」と呼び、当連結会計年度まで、特に取組むべき4つの領域 (「安全」・「環境」・「社会」・「会社文化」) と12のアジェンダ (重要テーマ) を設定しておりましたが、より長期目線での経済性・成長性と社会性の両立を目指すために、これらを6つのマテリアリティ (重要テーマ) へ変更いたしました。

 加えて、長期戦略や中期経営計画、グループの全施策でマテリアリティを意識するよう、戦略体系図での位置付けを明確にいたしました。これにより、アウトカム実現に向けた取組を強く推進してまいります。

〈グループの戦略体系図〉

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 以下では、当社グループのサステナビリティ全般に関するガバナンス体制、戦略、リスク管理ならびに指標及び目標について記載し、後記「(2) 気候変動への対応」では該当項目に係るガバナンス体制、戦略、リスク管理ならびに指標及び目標について、また、「(3) 人的資本・多様性」では、該当項目に係るガバナンス体制、戦略ならびに指標及び目標について特に記載しております。

 

(ガバナンス体制)

 サステナビリティアクションを持続的・積極的かつ体系的に進めるため、「西武グループサステナビリティアクション推進体制規程」を制定しております。本規程に基づき、当社CEOを委員長・議長とし、当社社長執行役員兼COO、当社経営戦略部担当執行役員、主要事業会社社長により構成される当社CEOの諮問機関である「西武グループサステナビリティ委員会」を設置し、原則年2回開催しております。本委員会では、当社グループのサステナビリティアクションへの取組方やグループ各社におけるサステナビリティアクションの推進状況、気候変動リスク、人的資本等に関連する対応、その他グループ横断的事項について報告・ディスカッションをおこなっております。その内容は、当社取締役会に報告しております。また、本委員会での議論により実効性を持たせるため、当社経営戦略部長を議長とし、主要事業会社に設置しているサステナビリティアクション推進部署の代表者により構成される「西武グループサステナビリティアクション推進者会議」において情報共有をおこなっております。

 

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(戦略)

 当社グループはすべての活動の出発点であり、変わることのない基本姿勢である「グループビジョン」に基づき、すべての事業・サービスを展開しております。当社の事業・サービスを取り巻く環境は刻一刻と変化しておりますが、サステナビリティアクションの推進により将来想定されるリスクを低減しながらビジネスチャンスを創出することで、当社グループの持続的かつ力強い成長につなげていくことができると考えております。

 サステナビリティアクションでは、社会課題や当社にとってのリスク・機会を踏まえて、特に取組むべき6つのマテリアリティを特定し、目指す姿を定めた上でマテリアリティに沿った対応をおこなっております。なお、マテリアリティの特定は以下のプロセスで実施いたしました。

 

〈マテリアリティ特定のプロセス〉

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〈マテリアリティの目指す姿と経営計画での取組〉

 

マテリアリティ

目指す姿

経営計画での取組

成長

脱炭素・資源有効活用

常に自然環境、地球環境へ配慮し、脱炭素社会や資源循環型社会の実現に貢献します。

●設備の省エネ化、再生可能エネルギーの導入促進

●森林維持・保全、森林活用、CO₂吸収量維持

●取水量・廃棄物等の資源利用の適正化

●食品ロスの削減、資源循環サイクルの構築

住みたいまち・

訪れたいまちづくり

様々な暮らしの1シーンを彩り、住みたくなるまちづくりをおこないます。多様な人々を惹きつける、訪れたいまちづくりを推進します。

●沿線価値向上に向けた沿線開発

●グループの強みを生かした都心再開発・リゾート

 開発

 ・地域等と連携した施策

 ・訪れたい商業施設の提供

 ・来訪目的地の魅力向上・発信

五感を揺さぶる体験創造

楽しみ、感動、興奮、生きがいを提供し、人々がほほえむ特別な時を創造します。

●西武グループならではの体験価値の創造

 ・ホテル利用者の満足度向上、キラー体験

  (絶景) 開発・実施

 ・すべての人が楽しめる球場・ライオンズ

  コンテンツ提供、熱く熱狂できるチームづくり

 ・公園等でのイベントやアウトドア体験提供

基盤強化

安全・安心なサービス

提供

常に安全を基本にすべての

事業・サービスを推進し、

すべての人に安心な日常を提供します。

●安全確保、災害防止、バリアフリー化に向けた

 設備投資

●自治体等と連携した各種訓練、協定等による災害

 対策

●HACCPに対応した食の安全管理

●情報管理・セキュリティに関する教育

多様な人財の育成・活躍

個人がスキルを高め、働きがいのある組織づくりにより、

はたらく人のほほえみを創出

します。はたらく人の専門性を高め、プロフェッショナルな

人財を育成します。

●戦略的な配置や公募型制度、自己研鑽のための

 コンテンツ拡充など、個人主体の自律的な成長

 促進による人財スキルの向上

●インナーコミュニケーション強化や人事制度

 改革、施設環境改善、健康経営などによる従業員

 の働きがい向上

●多様性を尊重し、一人ひとりが最大限活躍できる

 組織づくり

コンプライアンスと協働

コンプライアンスを徹底し、

経営の健全性・透明性を確保

します。ステークホルダーとの対話を重視し、適切な協働に

努めます。

●コーポレートガバナンス・コードを踏まえた環境

 整備、経営高度化

●コンプライアンス教育の継続実施

●投資家や協力企業など多様なステークホルダー

 との対話

●人権デュー・ディリジェンスの実施

 

サステナビリティアクションの具体的な対応策や進捗は、当社WEBサイトをご覧ください。

当社WEBサイト

https://www.seibuholdings.co.jp/sustainability/

当該サイトは、年1回夏頃に各種取組の更新をおこなっております。

 

(リスク管理)

 当社では、サステナビリティや人的資本・多様性に関するリスクを含むあらゆる事業等のリスクについて抽出し、分析・評価するために、年2回リスクマネジメント会議を開催しております。詳細は、「3 事業等のリスク」をご覧ください。

 また、特に気候変動に関するリスクは西武グループサステナビリティ委員会においても抽出し、分析・評価しております。当該委員会において、気候変動がもたらすリスク及び機会が当社グループに及ぼす影響を、外部のパラメーターや定量評価の手法によって推計することで、影響の大きさを大・中・小で評価し、その対応策を検討しております。

 

(指標及び目標)
 当社グループでは、マテリアリティを達成するために、非財務KPIを設定し、達成に向けて各施策を推進しております。

 

マテリアリティ

主な非財務KPI

目標値

脱炭素・資源有効活用

CO₂排出量

長期目標:2050年度にネットゼロ

中期目標:2030年度までに2018年度比46%削減

短期目標:毎年度 前年度比5%削減

再生可能エネルギー導入率

長期目標:2050年度100%

中期目標:2030年度50%

安全・安心なサービス

提供

責任事故、インシデント、

鉄道運転事故

毎年度0件 (鉄道)

死亡事故、

車外・車内人身重傷事故

毎年度0件 (バス)

食中毒事故

毎年度0件

(注) 非財務KPIの一部を抜粋して掲載しております。

  人的資本及び多様性に関する指標及び目標は、「(3) 人的資本・多様性 (指標及び目標) 」をご覧ください。

 

 また、CO₂排出量の実績をはじめとした各種非財務データについては、当社がWEBサイト等で公表している統合報告書、又は非財務データブックをご覧ください。なお、どちらの開示資料も、例年、夏頃から秋頃にかけて最新版を公表しております。

 サステナビリティアクションの推進によって持続的な社会の実現と当社の力強い成長を目指すため、 非財務KPIを今後も追加してまいります。

 

(2) 気候変動への対応

 当社ではTCFD (気候関連財務情報開示タスクフォース) 提言に賛同し、下記「戦略」に記載のとおり、気候変動が事業に与えるリスクと機会について、気候変動による平均気温上昇を1.5℃未満に抑制したシナリオと平均気温が4℃上昇したシナリオの複数シナリオについて検証を実施しております。

 

(ガバナンス体制)

 上記のとおり、気候変動への対応を含むサステナビリティ全般のガバナンスは、西武グループサステナビリティ委員会にておこなっております。同委員会では地球温暖化の主要因であるCO₂排出削減に向けた取組のモニタリングや気候変動リスクの抽出、対応方法などについて議論するなど、TCFD提言に基づく取組についてモニタリング及び方向性の決定をおこなっております。

 同委員会の構成員等は、「(1) サステナビリティ全般についての考え方及び取組 (ガバナンス体制)」をご覧ください。

 

 

(戦略)

 以下の表は、TCFD提言などで示されているリスク・機会の項目を中心に、当社における気候変動にともなうリスク・機会を抽出したものです。低炭素社会への移行に関する移行リスクと、気候変動による物理的変化に関する物理的リスク及び低炭素社会への移行等にともない発生する機会について分類し、気候変動による平均気温上昇を1.5℃未満に抑制したシナリオ (IEA NZE シナリオ) と平均気温が4℃上昇したシナリオ (IPCC RCP8.5 シナリオ) を設定し、当社グループへの影響評価をおこなっております。

 

リスク

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機会

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(期間欄 短期:1~3年 中期:4~10年 長期:10年以上)

(影響度欄 小:5億円未満 中:5~10億円 大:10億円以上)

 

 抽出されたリスクに対しては適切なマネジメントを、機会に関してはビジネスチャンスに変えるべく、グループ各社では取組を進めるとともに、西武グループサステナビリティ委員会などでその状況をモニタリングしています。

(リスク管理)

 気候変動に関するリスクについては西武グループサステナビリティ委員会にて抽出し、分析・評価されたリスク・機会については「サステナビリティアクション推進体制」において対応するサステナビリティアクション及び「リスクマネジメント体制」において対応するリスクマネジメントにて、適切に対応してまいります。また、気候変動に関するリスクについては「西武グループリスクマネジメント規程」 に基づき毎年策定している「リスクマネジメント計画」において特に重要なリスクとして設定しており、全社的なリスクマネジメントに統合し、管理をおこなっております。リスクマネジメント体制等は、「3 事業等のリスク」をご覧ください。

 

(指標及び目標)

 気候変動への対応として環境負荷削減目標を設定しております。詳細は、「(1) サステナビリティ全般についての考え方及び取組 (指標及び目標)」をご覧ください。

 

(3) 人的資本・多様性

当社グループでは、「はたらく人を、ほほえむ人へ。」をスローガンとして、経営計画と連動した「西武グループ人財戦略」を策定しております。「西武グループ人財戦略」は、経営戦略を実現するために、戦略上取組優先度の高いスキルと必要人数の確保を目指し、「人財スキル・人員数の確保」を実行するとともに、「働きがいのある組織」に向けた取組を実行し、「個人の成長」を促進していきます。そのうえで「一人ひとりが最大限活躍できる組織づくり」をおこなうことで、プロフェッショナル集団を目指してまいります。

 

(ガバナンス体制)

 人的資本・多様性に係るガバナンスの体制については、上記「(1) サステナビリティ全般についての考え方及び取組 (ガバナンス体制)」に記載の内容に加えて、人的資本・多様性への取組の一環として、「西武グループ人財戦略」に関する課題や取組に対し、経営会議などを通じて経営層が実態を把握し、PDCAを回すことでグループとして人財戦略を力強く推進する体制を構築しております。

また健康経営に関しても、グループとして健康経営促進体制を整備することを目的として、当社及び主要事業会社人事担当部長と西武健康保険組合常任理事により構成される「西武グループ健康経営推進会議」(事務局:当社人財戦略部) を原則年1回開催しております。本会議では、グループにおける重点健康テーマや定量目標の設定、グループ各社の健康課題や取組の報告をおこなっております。本会議での報告・ディスカッションの内容は西武グループサステナビリティ委員会及び当社取締役会に報告しております。

 

(戦略)

「西武グループ人財戦略」における「人財スキル・人員数の確保」については、既存社員の自律的な育成支援に加え、新規やキャリア採用などを通じて実現します。特に取組優先度の高いスキルを「強化人財」として設定しました。「デジタル経営」のより一層の推進を企図し、グループ共通の強化人財として、2026年度までに「DXリーダー」を300人確保していきます。また、株式会社西武ホールディングスでは「経営企画人財」、西武鉄道株式会社では「鉄道計画人財」及び「沿線活性化人財」、株式会社西武・プリンスホテルズワールドワイドでは「GM人財(総支配人候補)」、株式会社西武リアルティソリューションズでは、「AM人財」や「開発人財」を確保していきます。そして「強化人財」をはじめとする従業員の人財育成に際し、個人主体の自律的な成長を促進していくためのツールとして「SEIBU ACADEMY」(セイブアカデミー)を積極的に展開します。「SEIBU ACADEMY」では、グループ従業員向けの「教育・育成カリキュラム提供」として、公開講座や通信講座などの自己啓発プログラムの提供に加え、オンライン学習サービスや社内講師、経営者レクチャーなどを提供していきます。また、「バッジ制度に基づくスキル獲得促進」として、「SEIBU Smile バッジ」を導入し、あらかじめ設定した要件を満たした従業員に対し、スキル認証バッジを進呈するなどして、グループ従業員のスキル獲得意欲を高めていきます。上記のほか、キャリアパスについては、年齢、勤続、性別等に関わらず、能力や成果に基づいた昇進を実現するとともに、若手や女性などを積極的に登用し、本人の希望と会社からの期待を一致させ、それぞれの成長につながるよう適所適材な人財配置をおこなってまいります。これらの取組を推進しながら、人財確保を図ってまいります。

 

また同時にスキルが最大限発揮される「働きがいのある組織」をつくっていくため、働きがい(エンゲージメント)調査を実施し、その結果や従業員の声などを参考にしながら働きがい向上のための課題を明確化し、「エンゲージメント優先指標」を定め、それに基づく様々なアクションプランを実行していきます。例えば、事業に応じて柔軟な働き方を推進するとともに、生涯にわたり健康で幸福度の高い生活が送れるような環境を整備してまいります。

その上で、組織として最大限の成長と成果を実現するため、一人ひとりが最大限活躍できる組織づくりを進めていきます。イノベーションを創出できる組織を将来的なありたい姿として描きながら、「組織の成長」にむけて取り組んでまいります。

 

(指標及び目標)

 人的資本及び多様性に関する指標及び目標を設定しております。(下記、管理職比率については該当年度末時点。下記取得率については該当年度中)

 

 

2025年度

(参考:2023年度)

女性管理職比率

15

6.1

年次有給休暇取得率

80

77.5

男性育児休業取得率

100

73.5

外国人管理職比率

現状以上

0.1

経験者採用者管理職比率

現状以上

16.3

※上記の対象会社:株式会社西武ホールディングス、西武鉄道株式会社、株式会社西武・プリンスホテルズワールドワイド、株式会社西武リアルティソリューションズ

 

 

3【事業等のリスク】

 (1) 当社グループのリスクマネジメント体制

 当社グループは、事業活動に関わるあらゆるリスクを的確に把握し、リスクの発生頻度や経営への影響を低減していくため、当社の経営戦略部を当社及び西武グループ全体のリスクマネジメント統括部署とし、同部担当の業務執行担当役員を、グループ全体のリスクマネジメントの実施及び運用の責任と権限を有するリスクマネジメント総括責任者とするとともに、当社において、当該リスクマネジメント総括責任者を議長とし、当社の各部長・室長を構成員とするリスクマネジメント会議を開催しております。

 また、グループ内子会社のうち、主要7社各社に、当該各社及びそれぞれの会社がガバナンスの観点から監督すべき系列の会社(以下、「ガバナンス系列の会社」といいます。)におけるリスクマネジメントに関する社内体制を統括する部署としてリスクマネジメント統括部署を設置しています。さらに、当該主要7社各社のリスクマネジメント統括部署を担当する業務執行役員を、当該各社及びそれぞれの会社に属するガバナンス系列の会社におけるリスクマネジメントの実施及び運用の責任を有するリスクマネジメント責任者としています。

 各社リスクマネジメント統括部署は、リスクマネジメントの状況を取りまとめ、各社のリスクマネジメント総括責任者又はリスクマネジメント責任者に報告します。かかる報告を受けたリスクマネジメント責任者は、当該報告を取りまとめ、各社の取締役会及び内部監査部門、ならびに当社のリスクマネジメント総括責任者に報告しております。さらに、リスクマネジメント総括責任者は、これらの報告を取りまとめ当社の取締役会及び監査・内部統制部に報告しております。

 

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 (2) 当社グループのリスクマネジメントの運用

 当社グループにおけるリスクマネジメントは、毎事業年度におこなうリスクマネジメント計画の策定と当該計画に基づく継続的なモニタリングにより運用しております。

 リスクマネジメント計画は、①リスクの洗い出し(抽出)、②リスクの大きさ算定(分析)と優先順位付け(評価)、③リスク対策(行動計画)の決定、というプロセスを経て、策定しております。

 また、計画開始後のモニタリングは、外部環境の変化にともなうリスクの変動及びリスク対策の進捗等を踏まえた残余リスク(リスクコントロールの実施後に残るリスク)に着目して実施しております。

 当社グループは、当社グループが策定した「西武グループ長期戦略2035」(以下、「新・長期戦略」といいます。)及び「中期経営計画(2024~2026年度)」(以下、「新・中期経営計画」といいます。)と有機的一体となった運用により、当社グループの戦略目標達成を支える質の高いリスクマネジメントをおこなってまいります。

 以下では、当社グループのリスクマネジメント計画の策定プロセスの具体的内容について記載いたします。

 

  ①リスクの抽出

 リスクの抽出は、次のとおり、当社グループ内においてトップダウン及びボトムアップの双方向のアプローチに基づくプロセスを経ております。

 当社は、当社のリスクマネジメント会議での議論及び当社の社外取締役との意見交換も経ながら、当社グループ全体の目標達成を阻害する可能性のあるリスク要因を抽出しております。並行して、主要7社各社も、主要7社各社及び各社のガバナンス系列の会社の目標達成を阻害する可能性のあるリスク要因を抽出しており、双方で抽出したリスク要因をあわせることで、リスクの網羅的な抽出をおこなっております。

 当事業年度末時点においては、新・長期戦略及び新・中期経営計画の内容を踏まえ、上記のプロセスを経てリスク要因を抽出し、最終的に14項目の主要なリスクカテゴリーに分類・整理いたしました。

 

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  ②リスクの分析・評価

 当社グループでは、発生可能性及び影響度の観点からリスク分析をおこなっております。具体的には、主要7社各社が、発生可能性ならびに主要7社各社及び各社のガバナンス系列の会社の目標達成に対する影響度を分析し、当社は、主要7社各社の分析結果も踏まえ、当社グループ全体としての発生可能性及び目標達成に対する影響度を分析、評価しております。

 当事業年度末時点においては、上記分析に基づき、当社は、14項目の主要なリスクカテゴリーのうち、特に重要なリスクカテゴリーとして8項目を決定いたしました(リスク評価)。

 当該分析及び評価の結果は次のとおりです。

 

 

発生可能性

・安全・安心

・情報システム・

 情報管理

・自然災害・感染症・

 地政学的リスク等

・旅行・観光消費動向

・収支構造・金利

・不動産領域

・人財確保

・少子高齢化

・技術革新・価値変容

・法的規制・

 コンプライアンス等

・ブランド・風評

・経済情勢

・気候変動

 

・協力企業との取引・共創

 

 

  ③リスク対策

 当社グループは、リスクマネジメント計画策定時に、残余リスクとして残存したとしても経営上許容し得るリスクの程度について議論をおこない、かかる議論を踏まえて具体的なリスク対策を決定しております。

 主要なリスクカテゴリーに対するリスク対策の概要については、後掲(3) 及び(4) に記載いたします。なお、後掲(3) 及び(4) に記載する事項には将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は原則として当事業年度末現在において判断したものであります。

 

(3) 特に重要なリスクの内容及びリスク対策の概要

 

①不動産領域に関するリスク

発生可能性:高

影響度:大

●リスクの内容

 当社グループの新・長期戦略においては、都市交通・沿線事業やホテル・レジャー事業は、不動産事業とともに成長していくものであり、不動産事業が当社グループの成長の核となります。そのため、不動産領域に存在するリスクは、当社グループの長期的な成長に大きな影響を与える可能性があります。具体的には、2022年4月に株式会社プリンスホテルが株式会社西武プロパティーズを吸収合併して組成された株式会社西武リアルティソリューションズ(以下、「SRS」といいます。)が総合不動産会社へと飛躍していくうえで、(ア)投資判断上の課題、(イ)開発用地・不動産の取得、(ウ)不動産開発・建替、(エ)不動産価値の低下、及び(オ)不動産の管理といったあらゆるリスクに対処する必要があります。特に、(ウ)不動産開発には長い開発期間と巨額の投資が必要となり、当社グループではコントロールできない多くの外部要因により、影響を受ける可能性があること、及び、(エ)不動産市況の変化や老朽化によって不動産価値が減少し、又は工事費をはじめとする各種コストの高騰により売却利益の減少や損失が発生する可能性があること、について注視する必要があります。

 新・長期戦略では、東京ガーデンテラス紀尾井町について2024年度内の流動化を目指していることをはじめとして不動産回転型ビジネスを本格的に展開していくこととしていますが、上記のリスクのうち特に(エ)不動産市況の変化による不動産価値の低下等に起因する売却利益の減少や損失の発生等のリスクに留意する必要があります。

●リスク対策

 専門人財の登用やM&A、組織再編等をおこないながら、総合不動産会社として求められる体制・機能を早期に充足することに尽力し、リスク顕在化による影響を低減いたします。

 (ウ)不動産開発に関するリスク等、当社でコントロールできないリスクについては一定のリスクの発生を織り込んだうえで投資判断・事業をおこない、また、遅延や異常が発生した場合には、速やかな社内報告、対策の検討及び実施ができるガバナンス体制を構築することでリスク顕在化による影響を低減いたします。

 (エ)不動産価値の低下リスクについては、貸借対照表の適正なコントロールや最適なポートフォリオの構築を通じて、リスク耐性のある事業基盤を構築するとともに、資本効率性を意識した商品企画・サービスの向上及びバリューアッドを通じた市場競争力の強化によって、リスクの発生可能性及び顕在化による影響を低減いたします。

 

 

 

②人財確保に関するリスク

発生可能性:高

影響度:大

●リスクの内容

 日本全体の少子高齢化・人口減少はメガトレンドとして避けられず、働き手が慢性的に不足し、採用市場は売り手市場が続くことが予想されます。当社グループにおいても、想定どおりの採用が実施できなかった場合や、キーパーソンや若手社員が働きがいを感じられず人財の外部流出が進む場合など、人員が不足した結果、事業機会を逸失、事業戦略の実行力低下を招く、といったリスクが想定されます。特に成長戦略の核を担うSRSでは、不動産回転型ビジネスや都心・リゾート再開発等を担う専門人財の確保が遅れる場合、これらのビジネスが停滞し、損失を招くリスクが想定されます。

●リスク対策

 当社グループは、新・長期戦略におけるマテリアリティ(重要テーマ)の一つとして「多様な人財の育成・活躍」を位置づけ、その一環として「西武グループ人財戦略」を策定いたしました。当社グループの各社が「人財スキル・人員数の確保」「働きがいのある組織」に向けた取組みをおこなうことにより「個人の成長」を促進し、「個人×個人が最大限活躍できる組織」をつくっていくことで本社・現場全員が一丸となって「プロフェッショナル集団」を目指します。全社的に、従来の新卒定期採用に加え、キャリア採用や副業等の市場に着目し、人財確保につなげるとともに、確保した人財や既存従業員に当社グループで活躍いただけるように、働きがいを向上させます。働きがいに関する調査結果を踏まえ、人事施策をブラッシュアップしていくことにより、従業員が会社の目指す姿に共感し、一体となって挑戦している組織の状態を築くとともに、社内外に開けたオープンマインドや高い心理的安全性を前提としたダイバーシティやインクルージョンを実践してまいります。これらの施策を着実に実行することでリスクを回避いたします。

 

 

③少子高齢化に関するリスク

発生可能性:高

影響度:大

●リスクの内容

 日本全体の少子高齢化・人口減少はメガトレンドとして避けられず、当社グループの事業においては、具体的には、(ア)鉄道沿線の人口減少による運輸収入や沿線での各種事業(西武ライオンズ等も含みます。)の収入減、観光客の減少によるホテル・レジャー事業等の収入減、(イ)お客さまの高齢化にともなうニーズの変化に適応できなかった場合のお客さま満足度低下、収入減、及び(ウ)不動産需要の低下、市況の悪化による地価等の下落、等のリスクが想定されます。

●リスク対策

 不動産事業を核とする成長戦略を実行し、キャピタルリサイクルによりグループの成長に寄与するキャッシュ・フローを生み出す方向性へ事業ポートフォリオ変革を進めていくこと、また、グループ外のスタートアップ企業等と連携しながら、新規事業創出にも挑戦し続け、長期的目線での事業ポートフォリオマネジメントもおこなうことを通じて、リスク顕在化による影響を低減いたします。

 また、不動産事業のうちリゾート開発において付加価値の高い国際的リゾートを創造していくこと、ホテル・レジャー事業において富裕層をターゲットとするラグジュアリーブランドの出店にも注力し、ホテル展開を加速させていくこと、グループマーケティング基盤上のデータを利活用しながら、お客さまのニーズをタイムリーに把握しサービス変革を果たすこと、及び、あらゆる年代のお客さまにとって快適なサービスの形を追求し(施設、接遇等)、当社グループ独自の体験価値を提供すること、を通じて市場での競争力を強化し、リスク顕在化による影響を低減いたします。

 さらに、西武鉄道株式会社(以下、「SR」といいます。)の沿線地域の土地が強固な地盤であることも強みに、SRとSRSが連携してSR沿線エリアの街づくりに取り組んでいくこと等を通じて、SR沿線地域の少子高齢化・人口減少を抑制し、リスクの発生可能性も低減いたします。

 

 

④技術革新・価値変容に関するリスク

発生可能性:高

影響度:大

●リスクの内容

 新型コロナウイルス感染症の蔓延を契機とした人々の生活様式の変化によって、人々の価値観にも変容が生じ、複雑化・多様化しております。また、ディープラーニングの発展を背景としたAIの急激な進歩等、技術革新(デジタルディスラプションを含みます。)が目まぐるしく生じ、当該技術を活用した新たな価値(新たなサービス)が次々と世に生み出されております。これに対して当社グループの商品・サービス(例えば、オフィス・商業施設・賃貸住宅等の賃貸用不動産や開発した分譲住宅等の販売不動産)が、お客さまのニーズの変化に適応したものとなっていない場合、賃貸稼働率の低下や賃料の減少、販売売上の減少等によって経営成績及び財務状況に悪影響を及ぼす、等のリスクが想定されます。

●リスク対策

 当社グループのデジタルトランスフォーメーション(DX)は、デジタルよりもトランスフォーメーションに重きを置き、企業全体の変革を実現するものとしています。デジタル技術、データの利活用は不可欠であるとの認識に基づき、(ア)当社グループの従業員にデジタルスキルの習得機会を提供し、データの分析及び利活用を高度におこなうことのできる人財を育成していくこと、ならびに、(イ)特定の専門家、分析担当者だけでなく、あらゆる従業員がデータを理解したうえで効果的な施策を実行できるようにしていくこと(データの民主化)、の両軸で、お客さまに対して、これまでにない「新しい体験価値」を創出していくことで、リスクの発生可能性を低減いたします。また、データに基づく経営判断をおこない、お客さまのニーズに見合ったサービス変革を継続的に実行するとともに、業務プロセスも効率化することにより、当社グループらしい不動産開発、生活者に選ばれる沿線、お客さま・オーナーさまに選ばれるホテル、など競争優位性の高い状態を実現することで、リスクの発生可能性を低減いたします。

 

 

 

⑤気候変動に関するリスク

発生可能性:高

影響度:中

●リスクの内容

(移行リスク)

 地球環境バランスの崩壊と、世界的な資源循環の要請がメガトレンドとして存在しているところ、事業者にとっては、社会や投資者等のステークホルダーから、温室効果ガスの削減を含む環境への取組みが要請され、その取組みが重視・評価される時代となっております。そのため、例えば、(ア)気候変動を考慮した企業ニーズや消費動向の変化(例:不動産需要の変化等)をとらえきれず、お客さま満足度を低下させ、事業機会を逸失する、(イ)当社グループによる取組み不足により、当社グループのイメージが低下し、当社グループ各社による事業機会を逸失する、等のリスクが想定されます。

(物理的リスク)

 また、(ウ)豪雨・土砂災害等の異常気象の激甚化による運休・休業により売上が減少し、又は、建物・設備等の改修コストが増加する等の要因により当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす、(エ)夏期の気温上昇による出控えや、冬期の降雪量の減少等によるスキー客の減少等を要因として売上が減少し、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす、等のリスクも想定されます。

●リスク対策

 当社グループは、新・長期戦略におけるマテリアリティ(重要テーマ)として「脱炭素・資源有効活用」を設定し、環境負荷低減目標及び資産・ブランド価値向上指標を非財務KPIとして設定しております。具体的には、CO₂排出量を2050年度ネットゼロにする、延床面積30,000㎡以上のオフィスビルにおける環境認証(CASBEE、DBJ等)の取得率100%、等の目標を掲げ、例えば、省エネ車両や設備の導入による使用エネルギーの削減、太陽光発電等再生可能エネルギーの導入、等の具体的施策を検討・実施しております。これらの取組みにより、移行リスクの発生可能性を低減いたします。

 また、建物・設備等の改修及び浸水・防止対策その他各種メンテナンスの徹底、ならびに総合復旧訓練等の異常時訓練の実施を通じた対応力の強化により、物理的リスクによってお客さまの安全が脅かされることのないよう、最大限の努力をおこなっております。さらに、売上の減少や改修コストの増加が業績に大きな悪影響を及ぼすことがないよう事業ポートフォリオマネジメント等を通じて、物理的リスクの顕在化による影響を低減いたします。

 

 

⑥自然災害・感染症・地政学的リスク等に関するリスク

発生可能性:中

影響度:大

●リスクの内容

 当社グループの事業においては、地震、津波及び台風等の自然災害、新型インフルエンザ等の感染症、ならびに戦争及びテロ等の地政学的リスク等を要因として、(ア)生活者、観光利用者の動きに影響が生じ、都市交通・沿線事業やホテル・レジャー事業等において売上高が減少する、(イ)事業拠点が1か所(主に首都圏)に集中することで、自然災害又は地政学的リスク等が発生した際に甚大な影響を受け全社的に事業継続が困難となる可能性がある、等のリスクが想定されます。

●リスク対策

 前・中期経営計画において実施したグループ再編以降、株式会社西武・プリンスホテルズワールドワイド(SPW)はホテル出店においてはマネジメントコントラクト(以下、「MC」といいます。)受託によることを基本とすることでリスク顕在化による影響を低減しております。

 また、不動産回転型ビジネスの展開により、安定利益(開発・賃貸業)と売却利益(投資運用業)のバランスをとることにより、リスク顕在化による影響を低減いたします。さらに、運輸安全マネジメント体制をはじめとする都市交通・沿線事業においては、沿線自治体とも連携し、防災体制を強化しております。

 気候変動に対するリスクマネジメントとの連動・一体性も意識しながら、リスクが顕在化した場合であっても、お客さまや従業員の安全性が保たれるとともに、事業への影響が極小化できている状態を目指します。

 

 

⑦旅行・観光消費動向に関するリスク

発生可能性:中

影響度:大

●リスクの内容

(国内情勢の変化)

 国内景気の悪化による旅行・観光消費の冷え込みによって、日本国内における旅行・観光客の減少が生じ、売上(ホテル・レジャー事業、都市交通・沿線事業の定期外収入等)が減少する可能性があります。

(海外情勢の変化)

 海外進出先での政治的混乱や、外交的問題による日本との関係悪化により、現地での事業継続への支障もしくは事業の中断・停止、又は、日本への送客数の減少や送客の停止等が生じ、特にホテル・レジャー事業において業績への悪影響やホテル数拡大の遅延が生じる可能性があります。

●リスク対策

 ホテルのグローバル展開など単一市場に依存しないマーケティングや旅客誘致プロモーション活動の強化、国内施設・海外施設間の相互送客、リスクを機とした新たな商品開発、及びグループ共通の会員サービスやマーケティング活動の強化等に加え、前・中期経営計画期間ではアセットライトをテーマとしたビジネスモデルの変革により企業体質を進化させるなど、リスク顕在化による影響を低減しております。

 さらに、当社グループのマテリアリティ(重要テーマ)である「五感を揺さぶる体験創造」に従い、あらゆる場面で楽しみと感動を体験できる設計やMICE・リゾート等の独自の強みの発揮を通じて、「日本をオリジンとしたグローバルホテルチェーン」として差別化をはかり、グループのロイヤルカスタマーを育成し、リスク顕在化による影響を低減いたします。

 

 

⑧収支構造・金利に関するリスク

発生可能性:中

影響度:大

●リスクの内容

(収支構造)

 当社グループの事業においては、営業コストの相当部分が、人件費、減価償却費等の固定費で構成されているため、営業収益の比較的小幅な減少であっても、営業利益に大きな影響を及ぼすリスクがあります。特に、社会全体として賃上げ気運が高まっており、当社グループにおいても人件費は今後も上昇トレンドとなることが予想されます。

(金利・有利子負債)

 当社グループは、鉄道業をはじめ、継続して多額の設備投資を必要とする事業をおこなっており、市場金利の上昇は、既存の有利子負債の残高に係る支払利息及び新規の資金調達に係る調達コストの増加のほか、不動産購入需要の停滞による分譲収益減少や不動産価値の低下を招くおそれもあります。

●リスク対策

 損益分岐点が高い収支構造の問題については、前掲のホテルのМC受託によることを基本とするネットワーク拡大や不動産回転型ビジネスの展開による資産効率性の向上に加え、当社グループのシェアードサービス会社である株式会社西武プロセスイノベーションも活用したコーポレート業務のスマート化を進めるとともに、各事業のオペレーションにおいてもデジタルを活用した効率化を進めることで、リスクの発生可能性を低減いたします。

 また、市場金利の上昇に対しては、大規模開発や新規物件の取得など一定程度のレバレッジをかけつつも流動化の実施及び設備投資の厳選等、ならびに資金調達先・手法の多様化を通じてBSマネジメントを強化しリスク顕在化による影響を低減(分散)するほか、不動産取引市場におけるキャップレートの変動を注視して事業計画の立案やスケジュール策定を実施することで、リスク顕在化による影響を低減いたします。

 

(4) その他の主要なリスクの内容及びリスク対策の概要

 

⑨経済情勢に関するリスク

発生可能性:中

影響度:中

●リスクの内容

(燃料費、原材料費等の不足、高騰)

 気候変動や自然災害に起因する原材料の不足(原材料費の高騰)や、原油価格高騰に起因する燃料費の増加等の外部的な要因により燃料費、原材料費等が増加することにより、業績に悪影響を及ぼし、又は、事業活動の継続が困難となる可能性があります。

(為替変動)

 為替価格が当初予定されていた価格と相違することにより、日本円表示している連結財務諸表や、外貨建て資産・負債に損失が発生し、業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

(株式市場の変動)

 株式市場の変動によって、当社グループが保有する投資有価証券の価値が変動し、損失を被ることで、業績への打撃、株価下落をもたらす可能性があります。

(退職給付費用・退職給付債務)

 当社グループの従業員の退職給付費用及び債務は、割引率や年金資産の長期期待運用収益率等の数理計算で設定される前提条件に基づいて算出されております。実際の結果が前提条件と相違した場合又は前提条件が変更された場合は、当社グループの経営成績及び財務状況に影響を与える可能性があります。

●リスク対策

 経済情勢・市況を常時把握し、大幅な情勢の変化の際には、迅速なグループ方針の決定と正確なグループ展開に努めるとともに、効率的な事業運営体制を構築することでリスク顕在化による影響を低減しております。今後も、経済情勢をあらかじめ踏まえたうえでの計画策定や、変化をとらえた機動的な対応等により、リスクコントロールをおこなってまいります。

 

 

⑩安全・安心に関するリスク

発生可能性:低

影響度:大

●リスクの内容

(事業用資産等の管理、サービスの品質管理、安全・事故防止活動)

 事業用資産等もしくはサービスの安全面・品質面等の管理プロセス、又は安全・事故防止プロセスの不備・欠陥等により、事故等が未然に防止できず、お客さま、従業員等に重大な損失を被らせ、又は行政機関から業務停止命令や改善命令を受けること等を通じて、社会的信用の失墜、イメージダウン、損害賠償義務の発生等を招く可能性があります。

(食の安全・安心の不備)

 食中毒の発生、異物の混入、表示と異なる食材の提供、アレルギー食材の提供、宗教上の理由により食べられない食材の提供等により、お客さまの心身に悪影響・損失を生じさせ、社会的信用の失墜やインバウンド含む既存のお客さま及び未来のお客さまの逸失を招く可能性があります。

●リスク対策

 当社グループは「安全で快適なサービス」の提供をグループ理念に掲げ、常に、「安全」を基本にすべての事業・サービスを推進することを宣言しております。

 当社グループの事業においては、「安全・安心」を最重要課題と認識し、運輸安全マネジメント体制をはじめとする都市交通・沿線事業における安全性向上の取組みや運輸マネジメント体制の整備・運用、ホテル・レジャー事業における食の安全確保の施策の実行、施設の安全対策の実施等安全管理には万全の注意を払っております。このような日頃のマネジメントにより、お客さまの生命・身体に重大な影響を与える事故等を決して起こさない決意をもって、引き続き安全管理体制の整備、安全監査及び安全教育・訓練等の各種プロセスを着実に遂行することで、継続的にリスクの発生可能性及びリスク顕在化による影響を低減いたします。

 

 

⑪情報システム・情報管理に関するリスク

発生可能性:低

影響度:大

●リスクの内容

(物理的要因による情報漏洩・改竄)

 万一、個人情報の流出等の問題が発生した場合、当社グループへの損害賠償請求や当社グループの信用の低下により当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。

(情報システム・ネットワークダウン、データの損傷・消失)

 事故・災害、人為的ミス等により情報システム機能に重大な障害が発生した場合、又は、他の鉄道事業者、鉄道関連サービス提供業者等他社のシステム障害による影響を受けた場合、当社グループの業務運営に影響を与え、営業収益の減少又は対策費用の発生により、当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。

●リスク対策

 当社グループでは、事業上のあらゆる場面において、情報システムが不可欠なものになってきたことを強く認識しており、障害(攻撃)対応・復旧への訓練の実施、高可用なシステム導入を実現するプロジェクト管理及び権限棚卸、ならびに協力企業の安全性確認等の対策をおこなっております。また、(ア)個人情報を含む情報管理の適正に向けた各社内規程に基づく体制整備と運用の確保、(イ)情報システムへのアクセスを適切に管理することによる情報への不正アクセスの防止、及び、故意による情報の持出しを防ぐための情報記憶媒体の利用制限やアプリケーション・システムのログ監視等の技術的な対応、ならびに、(ウ)eラーニング等による研修等を通じた従業員の意識醸成にも努めており、これらの対策を通じて外的要因によるリスク及び内的要因によるリスク双方の発生可能性を低減しております。今後はこれらの取組みに加え、協力企業と連携したオペレーションの改善や人財マネジメント、さらには情報システムの最適化をはかっていくことにより、技術革新が目覚ましい社会に適応する形でリスクコントロールをおこなってまいります。

 

 

⑫協力企業との取引・共創に関するリスク

発生可能性:中

影響度:小

●リスクの内容

(与信管理・債権管理の不備、賃貸収入の減少)

 協力企業の資金繰りの悪化等により代金の回収等に支障を来した場合等、当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。

(特定の協力企業への依存)

 特定の協力企業へ取引が集中していることにより、当該協力企業への依存度が高い場合、協力企業における何らかの障害(倒産・災害等)や協力企業の意向に当社グループの事業活動が左右され、追加費用の発生、事業活動、業績及び財務状況に悪影響を与える可能性があります。

(協力企業における人権、コンプライアンス上の問題等の発生)

 協力企業が人権、コンプライアンス等において社会からの要請を果たすことができなかった場合等は、当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。

(協力企業の選定基準の不備)

 当社グループが新・長期戦略に基づき力強く成長していくにあたっては、どの事業においてもオープンマインドを持ち、協力企業との新たな価値の共創やM&Aによる当社グループにない企業文化の取込み・多様化等に取り組んでまいりたいと考えております。その中で、協力企業(事業提携のパートナー、購買先、外部委託先等)の選定上の基準、取引内容及び取引の正当性を評価する基準が存在せず、又は不適切な基準である場合、協力企業との価値共創や企業文化の取込み・多様化が困難となり、ひいては当社グループの事業機会の逸失や当社グループのイメージダウンを招くおそれがあります。

●リスク対策

 協力企業への管理・監督、業務委託管理体制の整備や「西武グループ人権方針」の開示をおこない理解を求めることにより、協力企業が当社又はお客さまへ提供するサービスがコンプライアンスを遵守し、確実に高い基準を満たしたものになるように努め、リスクの発生可能性及びリスク顕在化による影響を低減しております。また、特定の協力企業に依存することなく、様々な協力企業と多面的な協力を実施していくとともに、協力企業の選定やモニタリングにあたっては、与信管理、債権管理といった基本的な管理のみならず、良好なリレーションから取得される情報等も考慮した深度ある検証を多面的な観点から実施することで、リスクの発生可能性及びリスク顕在化による影響を低減いたします。

 

 

⑬法的規制・コンプライアンス等に関するリスク

発生可能性:低

影響度:中

●リスクの内容

(法的規制・環境規制)

 当社グループの事業活動に関係する法的規制は業法、環境規制、会計基準、税制等をはじめとして多岐にわたるところ、これらの各法的規制への違反が生じると、刑事罰、入札の指名停止等の行政上の措置、損害賠償義務の負担、及びイメージダウン等を招く可能性があります。

 また、現在の規制に重要な変更がおこなわれた場合や新たな規制が設けられた場合には、規制を遵守するために必要な費用が増加する可能性があり、規制に対応できなかった場合は、当社グループの活動が制限される等、当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。

(重要な訴訟等)

 通常の業務過程において、契約を巡る紛争、損害賠償、労働紛争、環境汚染等に関連して第三者から訴訟その他の法的手段を提起されたり、政府から調査を受けたりする可能性があります。法的手続対応の負担に加え、仮に当社グループに不利に判決、決定等が下された場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。

●リスク対策

 契約締結時におけるリーガルチェックの徹底や、講習会の実施等による法務知識の向上、顧問弁護士と連携した適切な対応をおこなっております。今後も、各法的規制を遵守するために、法規制の遵守体制を徹底し、また、法令改正や各種規制に関する情報収集及び社内教育の実施をおこなうように努めることで、リスクの発生可能性及び顕在化による影響を低減いたします。

 

 

⑭ブランド・風評に関するリスク

発生可能性:低

影響度:中

●リスクの内容

(第三者による西武ブランドの使用)

 当社グループのブランドと同一又は類似のブランドを使用する第三者も存在するため、これらのブランドイメージを損なうような第三者の行為・言動等が間接的に当社グループの評判を損なう可能性があります。

(風評)

 上記いずれかの当社における主要なリスクが現実となった場合を含め、当社グループのブランドイメージが損なわれた場合には、当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。

●リスク対策

 ブランドマネジメントの実行、適切な情報管理、開示体制の整備、及びCS・ES向上施策の実行等により、リスクの発生可能性及びリスク顕在化による影響を低減しております。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 業績

 当連結会計年度におけるわが国経済は、雇用・所得環境が改善する下で、各種政策の効果もあって、緩やかな回復が続くことが期待されます。ただし、世界的な金融引締めにともなう影響や中国経済の先行き懸念など、海外景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスクとなっております。また、物価上昇、金融資本市場の変動等の影響に十分注意が必要な状況であります。

 このような状況の中、当社グループは、当連結会計年度において、3ヵ年目となる「西武グループ中期経営計画(2021~2023年度)」のもと、「「アフターコロナの社会における目指す姿」を見据え、コロナショックを乗り越え、飛躍への道筋をつける。」をテーマに、「経営改革」「デジタル経営」「サステナビリティ」の3点を骨子とした取り組みを進めてまいりました。

 「経営改革」については「アセットライトな事業運営」「損益分岐点の引き下げ」「ニューノーマルに合わせたサービス変革」というテーマに加え、「都市交通・沿線事業の経営改革」に取り組んでまいりました。中でも「都市交通・沿線事業の経営改革」については、2023年4月1日に西武鉄道株式会社が、中核事業である鉄道業、ならびに沿線価値創造機能に特化するため、西武園ゆうえんちなど鉄道業以外の不動産を当社連結子会社である株式会社西武リアルティソリューションズへ移管いたしました。また、不動産回転型ビジネスを活用し、資本効率性を意識し、既存保有資産の再開発資金への対応及び新規開発機会への投資もおこなっていくにあたり、みずほフィナンシャルグループを協業パートナーに決定いたしました。

 「デジタル経営」については、「グループマーケティング基盤」の利活用を開始し、グループ顧客の拡充に向けたサービス構築に取り組み、2024年1月より西武グループ共通ID「SEIBU Smile ID」の運用を開始いたしました。また、管理系基幹システムのグループ共通システム化などを進め、業務改革、働き方改革を実現し、固定費削減に努めました。

 「サステナビリティ」については、引き続き安全、環境、社会、会社文化の4領域12項目のアジェンダにおいて持続可能な社会実現のため「サステナビリティアクション」に取り組んでまいりました。環境領域において、西武バス株式会社では2023年4月より100%再生エネルギーで走る大型電気路線バスの導入を開始し、箱根湯の花プリンスホテルにおいては、2023年6月より神奈川県で初となるバイナリー発電設備を導入いたしました。また、西武鉄道株式会社においては、2024年1月より西武鉄道全線で使用する全ての電力を100%再生可能エネルギー由来の電力とし、実質CO₂排出ゼロでの運行を開始しております。

 

 当連結会計年度における経営成績の概況は、新型コロナウイルス感染症の5類移行にともなう需要の増加を着実に取り込み、加えて値上げの取り組みにより、営業収益は、4,775億98百万円と前期に比べ491億10百万円の増加(前期比11.5%増)となりました。営業利益は、増収により、477億11百万円と前期に比べ255億56百万円の増加(同115.4%増)となり、償却前営業利益は、1,018億68百万円と前期に比べ246億20百万円の増加(同31.9%増)となりました。

 経常利益は、430億円と前期に比べ228億66百万円の増加(同113.6%増)となり、親会社株主に帰属する当期純利益は、政策保有株式の売却(前期4銘柄、今期7銘柄)や、前期に計上したザ・プリンス パークタワー東京などの譲渡にともなう反動減などにより、269億90百万円と前期に比べ297億62百万円の減少(同52.4%減)となりました。

 

 各セグメントにおける業績は以下のとおりであります。

 なお、当連結会計年度よりセグメントの区分を変更しております。

(単位:百万円)

 

 

営業収益

 

 

営業利益

 

償却前営業利益

セグメントの名称

当連結

会計年度

前期比

増減

前期比

増減率 (%)

当連結

会計年度

前期比

増減

前期比

増減率 (%)

当連結

会計年度

前期比

増減

前期比

増減率 (%)

 都市交通・沿線事業

148,826

9,625

6.9

13,292

7,762

140.4

34,646

8,621

33.1

 ホテル・レジャー事業

229,265

34,423

17.7

19,477

17,064

707.1

35,082

15,331

77.6

 不動産事業

79,079

3,407

4.5

12,716

865

7.3

24,235

723

3.1

 その他

43,718

4,506

11.5

1,440

850

143.9

5,649

1,033

22.4

 合計

500,890

51,962

11.6

46,927

26,541

130.2

99,614

25,709

34.8

 調整額

△23,291

△2,852

783

△985

△55.7

2,253

△1,089

△32.6

 連結数値

477,598

49,110

11.5

47,711

25,556

115.4

101,868

24,620

31.9

(注)1 調整額については、主に連結会社間取引消去等であります。

2 償却前営業利益は、営業利益に減価償却費及びのれん償却額を加えて算定しております。

3 当連結会計年度より、以下3点につき、グループ内の専門性強化の観点からセグメント区分を変更しており、前期比較については、前期の数値を変更後のセグメント区分に組み替えて比較しております。

・都市交通・沿線事業に含んでいた西武園ゆうえんち等について、ホテル・レジャー事業へ移管。

・都市交通・沿線事業に含んでいたとしまえん跡地賃貸等について、不動産事業へ移管。

・不動産事業に含んでいた一部ゴルフ場等運営管理について、ホテル・レジャー事業へ移管。

 

①都市交通・沿線事業

 都市交通・沿線事業の内訳は鉄道業、バス業、沿線生活サービス業、スポーツ業、その他であり、それぞれの営業収益は以下のとおりであります。

(単位:百万円)

 

 

 

2023年3月期

2024年3月期

増減額

 

営業収益

139,200

148,826

9,625

 

 鉄道業

90,805

100,739

9,933

 

 バス業

22,119

23,894

1,775

 

 沿線生活サービス業

19,352

18,190

△1,161

 

 スポーツ業

3,203

2,291

△912

 

 その他

3,719

3,710

△9

(注) 当連結会計年度より、「都市交通・沿線事業の経営改革」にともない、都市交通・沿線事業の内訳を変更しております。前期比較については、前期の数値を変更後のセグメント区分に組み替えて比較しております。

 

 鉄道業では、としまえん跡地に開業した「ワーナー ブラザース スタジオツアー東京 - メイキング・オブ・ハリー・ポッター」と連携し、池袋駅と豊島園駅のリニューアルやフルラッピング電車「スタジオツアー東京 エクスプレス」の運行を実施し、豊島園駅周辺エリアの活性化に取り組みました。

 バス業では、高速バスの一部減便はあるものの、需要の回復に合わせて運行ダイヤを順次戻し、着実に需要の取り込みができるよう努めました。

 

 都市交通・沿線事業の営業収益は、リモートワークの定着などにより定期利用の回復は限定的であるものの、新型コロナウイルス感染症の5類移行にともなう需要の増加を着実に取り込み、定期外利用やレジャー施設の利用が進み、1,488億26百万円と前期に比べ96億25百万円の増加(同6.9%増)となりました。なお、鉄道業の旅客輸送人員は前期比5.1%増(うち定期3.9%増、定期外7.0%増)、旅客運輸収入は、前期比11.7%増(うち定期9.6%増、定期外13.2%増)となりました。営業利益は、132億92百万円と前期に比べ77億62百万円の増加(同140.4%増)となり、償却前営業利益は、346億46百万円と前期に比べ86億21百万円の増加(同33.1%増)となりました。

 

 都市交通・沿線事業の主要な会社である西武鉄道株式会社の鉄道業の運輸成績は以下のとおりであります。

 

(西武鉄道株式会社の鉄道業の運輸成績)

種別

単位

2023年3月期

2024年3月期

 営業日数

365

366

 営業キロ

キロ

176.6

176.6

 客車走行キロ

千キロ

169,269

169,850

 輸送人員

 定期

千人

335,521

348,589

 定期外

千人

223,539

239,127

千人

559,060

587,716

 旅客運輸収入

 定期

百万円

36,091

39,574

 定期外

百万円

49,121

55,604

百万円

85,212

95,178

 運輸雑収

百万円

3,743

3,528

 収入合計

百万円

88,956

98,706

 一日平均収入

百万円

233

260

 乗車効率

33.7

35.4

(注)1 乗車効率は 延人キロ/(客車走行キロ×平均定員)×100 により、算出しております。

2 千キロ未満、千人未満及び百万円未満を切り捨てて表示しております。

3 運輸雑収は鉄道業以外の収入を含んでおります。

 

②ホテル・レジャー事業

 ホテル・レジャー事業の内訳は国内ホテル業(保有・リース)、国内ホテル業(MC・FC)、海外ホテル業(保有・リース)、海外ホテル業(MC・FC)、スポーツ業(保有・リース)、スポーツ業(MC・FC)、その他であり、それぞれの営業収益は以下のとおりであります。

(単位:百万円)

 

 

 

2023年3月期

2024年3月期

増減額

 

営業収益

194,841

229,265

34,423

 

 国内ホテル業(保有・リース)

119,439

136,446

17,006

 

 国内ホテル業(MC・FC)

4,981

11,598

6,617

 

 海外ホテル業(保有・リース)

30,050

36,964

6,913

 

 海外ホテル業(MC・FC)

260

457

197

 

 スポーツ業(保有・リース)

16,772

14,695

△2,077

 

 スポーツ業(MC・FC)

738

2,276

1,538

 

 その他

22,597

26,825

4,228

(注) 当連結会計年度より、「都市交通・沿線事業の経営改革」にともない、ホテル・レジャー事業の内訳を変更しております。前期比較については、前期の数値を変更後のセグメント区分に組み替えて比較しております。

 

 国内ホテル業では、ホテルオペレーターである株式会社西武・プリンスホテルズワールドワイドが運営をおこなう、G7広島サミットの主会場となったグランドプリンスホテル広島、外相会合の会場となった軽井沢プリンスホテル、気候・エネルギー・環境大臣会合の会場となった札幌プリンスホテルの3ホテルで、観光品質認証制度「サクラクオリティ」及びSDGsを実践する宿泊施設の国際認証「Sakura Quality An ESG Practice(通称:サクラクオリティグリーン)」を同時取得するなどお客さまに安全・安心を追求したサービスを引き続き提供できるよう努めてまいりました。サービスの向上に合わせ、レベニューマネジメントを強化し、値上げに取り組んでおります。引き続き新規出店も進めており、「グランドプリンスホテル大阪ベイ」を2023年7月1日にリブランドオープン、「プリンス スマート イン 宮崎」を2024年2月20日に開業いたしました。

 海外ホテル業では、株式会社西武・プリンスホテルズワールドワイドが北野合同建物株式会社の米国法人Kitano Arms Corporationと、ニューヨークのホテル「ザ・プリンス キタノ ニューヨーク(旧:ザ・キタノホテル ニューヨーク)」を2023年12月1日にリブランドオープンいたしました。また、Seibu Prince Hotels Worldwide Asia Pacific Pty Ltd(2024年4月よりステイウェル ホールディングス Pty Ltdから商号変更)がライフスタイル型ブランド「Park Proxi」でオーストラリア初出店となる「Park Proxi Gibraltar Bowral」を2023年9月6日にリブランドオープン、新ブランド「Park Regis by Prince」の1号店となる「Park Regis by Prince Dubai Islands」を2024年2月20日に開業いたしました。

 そのほか、2023年4月1日より株式会社横浜八景島が「西武園ゆうえんち」の運営を受託し、新体制による営業をおこなっております。

 

 ホテル・レジャー事業の営業収益は、国内ホテルにおいて回復に向かう需要に加え、インバウンド需要の着実な取り込みや値上げの取り組みなどにより、2,292億65百万円と前期に比べ344億23百万円の増加(同17.7%増)となりました。なお、国内ホテル業のRevPAR(注)については、13,548円と前期に比べ4,760円増となりました。営業利益は、増収により、194億77百万円と前期に比べ170億64百万円の増加(同707.1%増)となり、償却前営業利益は、350億82百万円と前期に比べ153億31百万円の増加(同77.6%増)となりました。

 

 (注)RevPARとは、Revenue Per Available Roomの略であり、宿泊に係る収入を客室総数で除したものであります。

 

 ホテル・レジャー事業の国内ホテル業(保有・リース)、国内ホテル業(MC・FC)、海外ホテル業(保有・リース)、海外ホテル業(MC・FC)の定量的な指標は以下のとおりであります。

 

(国内ホテル業の運営形態別施設概要)

 

施設数

(か所)

客室数

(室)

宴会場数

(室)

宴会場面積

(㎡)

 国内ホテル業

59

20,182

320

78,372

  保有・リース

43

13,690

241

51,665

  MC・FC

16

6,492

79

26,707

 

(国内ホテル業のエリア別施設概要)

 

施設数

(か所)

客室数

(室)

宴会場数

(室)

宴会場面積

(㎡)

 首都圏・中日本

26

10,953

223

48,095

  高輪・品川エリア

4

5,138

103

20,322

 東日本

19

5,614

38

14,252

  軽井沢エリア

3

687

11

3,670

 西日本

14

3,615

59

16,025

 

(注)1  面積1,000㎡以上の宴会場は21室であります。

2  首都圏・中日本の代表例として高輪・品川エリア、東日本の代表例として軽井沢エリアを記載しております。

3 高輪・品川エリアに含まれるホテルはザ・プリンス さくらタワー東京、グランドプリンスホテル高輪、グランドプリンスホテル新高輪、品川プリンスホテルであります。

4 軽井沢エリアに含まれるホテルはザ・プリンス 軽井沢、ザ・プリンス ヴィラ軽井沢、軽井沢プリンスホテルであります。

 

(海外ホテル業の施設概要)

 

施設数

(か所)

客室数

(室)

宴会場数

(室)

宴会場面積

(㎡)

 海外ホテル業

28

4,904

94

14,304

  保有・リース

12

1,518

34

5,185

   ハワイエリア

3

1,064

22

4,090

   The Prince Akatoki

1

82

2

115

  MC・FC

16

3,386

60

9,119

(注)1 海外ホテル業(保有・リース)の代表例としてハワイエリア、ラグジュアリーブランドであるThe Prince Akatokiを記載しております。

   2 ハワイエリアに含まれるホテルはプリンス ワイキキ、マウナ ケア ビーチ ホテル、ウェスティン ハプナ ビーチ リゾートの3ホテルであります。

 

(国内ホテル業の運営形態別営業指標)

 

2023年3月期

2024年3月期

RevPAR(円)

 保有・リース

8,634

14,327

 MC・FC

9,729

11,694

宿泊部門全体

8,788

13,548

 

平均販売室料(円)

 保有・リース

16,417

20,454

 MC・FC

17,985

19,225

宿泊部門全体

16,643

20,126

 

客室稼働率(%)

 保有・リース

52.6

70.0

 MC・FC

54.1

60.8

宿泊部門全体

52.8

67.3

(注)1 国内ホテル業のRevPAR及び客室稼働率の算出に用いる客室総数には、行政機関へのホテル客室全室貸出にともない一時営業休止しているホテルの客室を含んでおります。

   2 当連結会計年度より、「都市交通・沿線事業の経営改革」にともない、「掬水亭」は国内ホテル業に区分を変更し、保有・リースに含めております。前期比較については、前期の数値を変更後の区分に組み替えて比較しております。

 

(国内ホテル業のエリア別営業指標)

 

2023年3月期

2024年3月期

RevPAR(円)

 首都圏・中日本

8,604

15,094

  高輪・品川エリア

6,842

14,095

 東日本

9,551

11,441

  軽井沢エリア

22,882

25,779

 西日本

8,418

10,927

宿泊部門全体

8,788

13,548

 

平均販売室料(円)

 首都圏・中日本

16,579

21,257

  高輪・品川エリア

14,980

19,271

 東日本

17,373

19,844

  軽井沢エリア

32,614

38,628

 西日本

15,769

16,432

宿泊部門全体

16,643

20,126

 

客室稼働率(%)

 首都圏・中日本

51.9

71.0

  高輪・品川エリア

45.7

73.1

 東日本

55.0

57.7

  軽井沢エリア

70.2

66.7

 西日本

53.4

66.5

宿泊部門全体

52.8

67.3

(注)1  首都圏・中日本の代表例として高輪・品川エリア、東日本の代表例として軽井沢エリアを記載しております。

2  高輪・品川エリアに含まれるホテルはザ・プリンス さくらタワー東京、グランドプリンスホテル高輪、グランドプリンスホテル新高輪、品川プリンスホテルであります。

3  軽井沢エリアに含まれるホテルはザ・プリンス 軽井沢、ザ・プリンス ヴィラ軽井沢、軽井沢プリンスホテルであります。

4  国内ホテル業のRevPAR及び客室稼働率の算出に用いる客室総数には、行政機関へのホテル客室全室貸出にともない一時営業休止しているホテルの客室を含んでおります。

5  当連結会計年度より、「都市交通・沿線事業の経営改革」にともない、「掬水亭」は国内ホテル業に区分を変更し、首都圏・中日本に含めております。前期比較については、前期の数値を変更後の区分に組み替えて比較しております。

 

(海外ホテル業の営業指標)

・ハワイエリアの営業指標

 

2023年3月期

2024年3月期

 RevPAR (円)

38,112

44,909

 RevPAR (米ドル)

352.89

345.45

 平均販売室料 (円)

46,414

54,591

 平均販売室料 (米ドル)

429.76

419.93

 客室稼働率 (%)

82.1

82.3

 

 

   ・The Prince Akatoki Londonの営業指標

 

2023年3月期

2024年3月期

 RevPAR (円)

28,141

42,546

 RevPAR (ポンド)

200.38

254.10

 平均販売室料 (円)

50,520

58,000

 平均販売室料 (ポンド)

359.74

346.40

 客室稼働率 (%)

55.7

73.4

     (注)1  海外ホテル業の代表例としてハワイエリア、ラグジュアリーブランドであるThe Prince Akatokiのうち、直営のThe Prince Akatoki Londonを記載しております。

2  ハワイエリアに含まれるホテルはプリンス ワイキキ、マウナ ケア ビーチ ホテル、ウェスティン ハプナ ビーチ リゾートの3ホテルであります。

 

(国内ホテル業における宿泊客の内訳)

(単位:名、%)

 

2023年3月期

邦人客

外国人客

 

比率

 

比率

 

比率

宿泊客

3,779,780

89.9

426,683

10.1

4,206,463

100.0

 保有・リース

3,225,252

 

347,720

 

3,572,972

 

 MC・FC

554,528

 

78,963

 

633,491

 

 

 

 

2024年3月期

邦人客

外国人客

 

比率

 

比率

 

比率

宿泊客

3,460,328

71.8

1,361,566

28.2

4,821,894

100.0

 保有・リース

2,361,307

 

1,007,702

 

3,369,009

 

 MC・FC

1,099,021

 

353,864

 

1,452,885

 

 

③不動産事業

 不動産事業の内訳は不動産賃貸業、その他であり、それぞれの営業収益は以下のとおりであります。

(単位:百万円)

 

 

 

2023年3月期

2024年3月期

増減額

 

営業収益

75,672

79,079

3,407

 

 不動産賃貸業

42,247

43,698

1,450

 

 その他

33,424

35,381

1,957

(注) 当連結会計年度より、「都市交通・沿線事業の経営改革」にともない、不動産事業の内訳を変更しております。前期比較については、前期の数値を変更後のセグメント区分に組み替えて比較しております。

 

 不動産賃貸業では、西武鉄道沿線の遊休地を活用した賃貸ガレージハウスのプロジェクト第2号物件となる「エミベース 小手指」が2024年2月末に竣工し、3月下旬より入居を開始しております。そのほか、働き方の変化や住まいの新たなニーズの受け皿として提供する賃貸ユニットハウスの第4号物件となる「エミキューブ桜台Ⅱ」が3月下旬に竣工し、4月より入居を開始しております。

 また、PM、BM業務の内製化など、固定費削減策に取り組みました。

 不動産事業の営業収益は、西武造園株式会社における工事出来高の増加や東京ガーデンテラス紀尾井町におけるテナント入居の影響などにより790億79百万円と前期に比べ34億7百万円の増加(同4.5%増)となり、営業利益は、127億16百万円と前期に比べ8億65百万円の増加(同7.3%増)となり、償却前営業利益は、242億35百万円と前期に比べ7億23百万円の増加(同3.1%増)となりました。

 

 不動産事業の定量的な指標は以下のとおりであります。

 

(建物賃貸物件の営業状況)

 

期末貸付面積 (千㎡)

期末空室率 (%)

 

2023年3月期

2024年3月期

2023年3月期

2024年3月期

 商業施設

242

256

2.9

1.9

 オフィス・住宅

205

203

2.8

1.6

(注)土地の賃貸は含んでおりません。

 

④その他

 スポーツ事業においては、ベルーナドームを最大限活用したサービスや演出、イベント開催などにより、楽しんでいただけるスポーツ・エンターテインメント体験の提供に努めてまいりました。伊豆箱根事業ではバス事業を中心に回復に向かう観光需要の取り込みに努めたほか、近江事業においては、2024年4月より鉄道事業の公有民営方式による上下分離に移行し、運営を開始しております。

 営業収益は、埼玉西武ライオンズの観客動員数の増加や、グッズ販売の好調などにより、437億18百万円と前期に比べ45億6百万円の増加(同11.5%増)となり、営業利益は、14億40百万円と前期に比べ8億50百万円の増加(同143.9%増)となり、償却前営業利益は、56億49百万円と前期に比べ10億33百万円の増加(同22.4%増)となりました。

 

 また、都市交通・沿線事業及びホテル・レジャー事業におけるスポーツ業、ならびにその他に含まれるスポーツ事業の営業収益の合計は、405億77百万円であり、前期に比べ5億62百万円の増加(同1.4%増)となりました。

 

(2) 生産、受注及び販売の実績

 当社グループは役務提供を中心とした事業展開をおこなっており、生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。このため生産、受注及び販売の実績については、「(1)業績」におけるセグメントの業績に関連付けて示しております。

 

(3) 財政状態、経営成績の分析

 文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 重要な会計上の見積り」に記載されているとおりであります。

 

② 財政状態の分析

1 資産

 流動資産は、1,012億63百万円と前連結会計年度末に比べ68億89百万円増加いたしました。その主たる要因は、現金及び預金の増加(70億7百万円)であります。

 固定資産は、1兆5,337億56百万円と前連結会計年度末に比べ402億95百万円増加いたしました。その主たる要因は、投資有価証券の増加(250億93百万円)であります。

 以上の結果、総資産は1兆6,350億19百万円と前連結会計年度末に比べ471億84百万円増加いたしました。

 

2 負債

 流動負債は、3,851億6百万円と前連結会計年度末に比べ172億38百万円増加いたしました。その主たる要因は、前受金の増加(155億60百万円)であります。

 固定負債は、8,177億78百万円と前連結会計年度末に比べ245億54百万円減少いたしました。その主たる要因は、長期借入金の減少(328億65百万円)であります。

 以上の結果、負債合計は1兆2,028億85百万円と前連結会計年度末に比べ73億15百万円減少いたしました。

 

3 純資産

 純資産は、4,321億33百万円と前連結会計年度末に比べ545億円増加いたしました。その主たる要因は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上(269億90百万円)であります。

 なお、自己資本比率は前連結会計年度末に比べ2.6ポイント上昇し26.1%となっております。

 

③ 経営成績の分析

1 営業収益及び営業利益

 営業収益は、新型コロナウイルス感染症の5類移行にともなう需要の増加を着実に取り込むとともに、値上げの取り組みにより、4,775億98百万円(前期比11.5%増)となり、営業利益は増収による増益により、477億11百万円(同115.4%増)となりました。

 なお、各セグメントにおける業績につきましては、「(1) 業績」をご覧ください。

 

2 営業外損益及び経常利益

 営業外収益は、感染拡大防止協力金受入額の減少(14億12百万円)などにより、44億94百万円(同35.6%減)となり、営業外費用は、92億5百万円(同2.3%増)となりました。

 以上の結果、経常利益は430億円(同113.6%増)となりました。

 

3 特別損益及び親会社株主に帰属する当期純利益

 特別利益は、固定資産売却益の減少(730億57百万円)などにより、233億98百万円(同71.9%減)となりました。

 特別損失は、減損損失の減少(197億87百万円)などにより、227億56百万円(同45.0%減)となりました。

 以上の結果、税金等調整前当期純利益は436億42百万円(同29.6%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は269億90百万円(同52.4%減)となりました。

 

(4) キャッシュ・フローの分析

 当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ60億89百万円増加し、当連結会計年度末には318億30百万円となりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益436億42百万円に、減価償却費や法人税等の支払額などを調整した結果、919億75百万円の資金収入となり、前連結会計年度に比べ248億8百万円の資金収入の増加となりました。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動によるキャッシュ・フローは、有形及び無形固定資産の売却による収入の減少などにより、439億33百万円の資金支出(前連結会計年度は、878億54百万円の資金収入)となりました。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動によるキャッシュ・フローは、424億38百万円の資金支出となり、前連結会計年度に比べ1,747億82百万円の資金支出の減少となりました。その主たる要因は、借入金の返済の減少であります。

 

(5) 資本の財源及び資金の流動性について

(キャピタルリサイクルの実施)

 「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載の「西武グループ長期戦略2035」のとおり、当社グループは不動産事業を核として持続的な成長を実現するため、資本効率性を追求し、保有前提のビジネスモデルから、保有とキャピタルリサイクルの両輪で成長させるビジネスモデルへ転換してまいります。東京ガーデンテラス紀尾井町をはじめとして聖域なき流動化の検討、キャピタルリサイクルの実施により得られた資金を再投資に振り向け、不動産価値を最大化してまいります。

 

(資金調達〈キャッシュイン〉)

 金融機関からの借入や社債の発行など、市場環境や金利動向などを総合的に勘案しながら決定しており、加えて、鉄道業・ホテル業を中心とした日々の収入金により必要な資金を確保しております。

 今後については、既存事業に加え、MC(マネジメントコントラクト)を中心とした国内外250ホテル体制の実現や、開発済み物件・新規取得物件の流動化により、営業キャッシュ・フローを最大化してまいります。また、東京ガーデンテラス紀尾井町の流動化をはじめとした不動産回転型ビジネスで得た資金を積極的に活用し、借入を極力抑制してまいります。

 

(資金使途〈キャッシュアウト〉)

 当連結会計年度は総額613億9百万円の設備投資を実施いたしました。鉄道業においては、アフターコロナを見据え、より一層の安全・安定輸送の実現、環境負荷の削減を目指すとともに、おでかけしたくなる駅・まちづくり、及び次世代に向けた技術革新に充当しております。加えて、それら事業の根本にある職場環境の改善や、従業員の満足度向上を企図して設備投資を実施してまいりました。不動産事業においてもエミテラス所沢(所沢駅西口開発計画)などへの沿線価値向上を目指した設備投資を継続的におこなっております。

 なお、当事業年度の配当金につきましては、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」に記載のとおり、1株当たりの普通配当を25円としております。

 今後については、営業キャッシュ・フローで得た資金を活用し、不動産事業での都心再開発や西武鉄道沿線の再開発、リゾート開発、ホテル・レジャー事業でのホテル改装、海外ホテルのM&A、都市交通・沿線事業の沿線価値向上施策、デジタル化などに積極的に投資してまいります。また、株主還元として2025年3月期の配当予想を1株当たり配当金30円とし、DOE2.0%を下限とする累進配当を導入することで、安定的な配当とあわせ、収益向上を通じた増配を実現してまいります。自己株式の取得については、バランスシートの状況を踏まえ機動的に実施してまいります。

 

(資金の流動性)

 鉄道業・ホテル業を中心とした日々の収入金により必要な流動性資金を確保するとともに、キャッシュマネジメントシステム(CMS)などによりグループ内余剰資金の有効活用に努めております。

 

 

 

(6) 経営者の問題意識と今後の方針について

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 西武グループは2014年4月23日の東証一部への株式上場後、2016年の東京ガーデンテラス紀尾井町開業、2017年のステイウェル社(2024年4月よりSeibu Prince Hotels Worldwide Asia Pacific Pty Ltdに商号変更しております。)の子会社化、2019年の新型特急車両「Laview」の運行開始など、様々な施策を展開し、収益基盤を拡大しながら着実に成長を遂げてまいりました。しかしながら、新型コロナウイルス感染症の影響もあり、当社グループを取り巻く事業環境はここ数年で大きく変化しております。そうした中で、私たちはスピード感を持って2023年度を最終年度とする「西武グループ中期経営計画(2021~2023年度)」で掲げた、「経営改革」「デジタル経営」「サステナビリティ」の3点を骨子とした取り組みを推進してまいりました。特に「経営改革」における組織再編、事業

構造の転換を土台として、将来へ向けた次なる成長、発展の準備を進めてまいりました。

 有価証券報告書提出日現在、コロナ禍で生じた価値変容・行動変容の定着に加え、地政学リスク、技術革新や日本国内の少子高齢化の加速、SDGs(持続可能な開発目標)・カーボンニュートラル(脱炭素社会)への意識の高まり、低PBRの是正など、社会経済環境や事業環境は急速に変化し、将来予想が非常に困難な時代、いわゆる「VUCAの時代」に突入しております。

 その中で、概ね10年後の2035年度を見据え、西武グループのありたい姿(アウトカム)として「Resilience & Sustainability -安全・安心とともに、かけがえのない空間と時間を創造する-」を設定いたしました。あらゆる状況下においても対応できる力「Resilience(レジリエンス)」と、それをもとに持続的に成長できる力「Sustainability(サステナビリティ)」を兼ね備えた企業グループを目指してまいります。

 様々な社会課題が待ち受ける中、その変化に打ち勝ち、持続的な成長を遂げるべく、所有する優良な沿線地盤、所有土地を活かした「まちづくり」を通じて、沿線価値、事業エリア(都心、リゾート)の価値向上をはかることが今後の成長の鍵となります。こうした背景から我々は、不動産事業を核とした成長戦略からなる「西武グループ長期戦略2035」を策定いたしました。具体的には、資本効率性を追求し、保有前提のビジネスモデルから脱却し、保有とキャピタルリサイクルの両輪で成長させるビジネスモデルへ転換いたします。また、東京ガーデンテラス紀尾井町をはじめとして聖域なき流動化の検討をするとともに、キャピタルリサイクル実施により、事業ポートフォリオの最適化を実現してまいります。

 また、不動産事業をはじめとした各事業の成長のためには、企業の成長の源泉である「人の力」、社員一人一人の成長による組織の成長が欠かせないと考えております。そのために「はたらく人を、ほほえむ人へ。」のスローガンのもと「西武グループ人財戦略」を策定いたしました。社員一人一人の「スキルの向上」を目指すとともに、働きがい(エンゲージメント)がある組織で「やる気の向上」を実現してまいります。これらを通じて、社員一人一人の成長を後押しし、当社グループの成長に繋げてまいります。

 当社グループは、グループの基盤の強化をはかるため、これまで「安全・安心なサービス提供」「多様な人財育成・活用」「コンプライアンスと協働」といった3テーマに重点を置いてきましたが、これらのテーマに加え、今回は「脱炭素・資源有効活用」、「住みたいまち・訪れたいまちづくり」、「五感を揺さぶる体験創造」という3つの成長に資するテーマを新たに加えマテリアリティとして設定いたしました。

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 「脱炭素・資源有効活用」においては、社会課題である温暖化を筆頭とした環境問題に対し、森林活用等、グループの強みを活かし、積極的に対応を進めてまいります。「住みたいまち・訪れたいまちづくり」というテーマでは、西武鉄道沿線に加え、都心や日本を代表する観光地において所有する豊富なアセットの価値を開発によって高め、多くの人たちにとってかけがえのない空間を創造してまいります。「五感を揺さぶる体験創造」では、インバウンドの増加、充実感の追求など、求められる価値の多様化に対応すべく、プリンスホテルは「日本をオリジンとしたグローバルホテルチェーン」として体験価値を提供し、埼玉西武ライオンズはコンテンツを通じ、多くのファンを惹きつけ、お客さまにかけがえのない時間を創造してまいります。

 これらマテリアリティに取り組むことで「西武グループらしさ」を創出し、お客さまに西武グループを選んでいただける、その源になり、それが価値創造につながると考えております。

 

 当社グループは、事業を通じて人々の生活に夢と希望を提供し、社会の発展に貢献し続けることで、株主さまをはじめとしてすべてのステークホルダーの期待に応え、社会的価値と株主価値の極大化に努めてまいります。

 

5【経営上の重要な契約等】

 当社は2023年10月31日、当社の連結子会社である西武鉄道株式会社が固定資産を東京都に譲渡する契約を締結することを決定し、同日に当該固定資産を譲渡いたしました。

 当該契約の主な内容は、以下のとおりです。

 

(1) 譲渡の理由

 東京都市計画公園第5・5・10号練馬城址公園事業に協力するため。

 前連結会計年度の第18期有価証券報告書「5 経営上の重要な契約等 (2) 東京都への固定資産の譲渡」に記載した固定資産の譲渡に続き、旧としまえん用地の一部区画を譲渡するもの。

 

(2) 譲渡資産の内容等

資産の名称及び所在地

資産の内容

譲渡契約締結日

譲渡資産引渡日

旧としまえんの一部

東京都練馬区向山三丁目

1564番8外10筆

土地

30,334.33㎡

2023年10月31日

2023年10月31日

 

(3) 譲渡先の概要

 譲渡先は東京都です。

 なお、当該譲渡先と当社の間には特筆すべき資本関係、人的関係はなく、また当社の関連当事者には該当いたしません。

 

6【研究開発活動】

 該当事項はありません。