第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

来期の世界経済を展望しますと、米国や欧州ではこれまでの金融引締めの効果が当面の景気を下押しするものの、物価の騰勢が落着けば利下げに転じると見込まれ、その後の景気は次第に持直していく見通しです。中国では、欧米景気の持直しに伴う輸出の復調が期待されるものの、不動産市場の低迷が内需を抑制し、力強さを欠いた経済状況が続くと予想されます。日本経済は、賃金上昇ペースの加速やインフレ率の低下により個人消費の回復力が強まる他、好調な企業業績等を背景とした設備投資の拡大、輸出の復調も期待できるもとで、景気の回復傾向が続く見込みです。ドル・円相場は、日本の長期金利の緩やかな上昇が続くもとで、一段の円安余地は限られる

見通しです。原油価格(WTIベース/1バレルあたり)は、主要産油国の供給抑制が続く中で、期初の83ドル近辺で底堅く推移すると予想されます。

なお、ロシア・ウクライナ情勢や中東情勢の一段の緊迫化、米国や欧州での利下げ転換の遅れ等から、世界経済が下振れする可能性については注視する必要があります。

 

・経営方針「The Brand-new Deal  ~利は川下にあり~」

 

昨今の激変する世界情勢に鑑み、為替や資源価格等をはじめとした経営環境に大きく左右されうる3ヵ年の計画を前例に従い策定するのではなく、ステークホルダーの皆様に、より有用な情報をお伝えするため、不確実なこの時代において、当社が長期にわたって羅針盤とすべき「経営方針」を定め、かつ目の前の1年間しっかりと自信を持って約束できる利益計画・財務関連指標や株主還元を、併せて公表しました。これまで当社の成長を支えてきた基本的な考え方や経営手法を踏襲する意味を込め、タイトルを「The Brand-new Deal」としております。全社員が「利は川下にあり」の考えに基づいてマーケティング力を磨き、世の中のニーズの変化を先取りするとともに、

祖業である川下分野から川上・川中まで幅広い分野で培った資産・ノウハウを活用し、成長投資を加速させることで事業領域を拡大してまいります。投資を通じた着実な収益成長に加え、企業ブランド価値の向上、株主還元拡大の3本柱で、企業価値の持続的な向上を目指します。

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<投資なくして成長なし>

「業績の向上」に向け、安定した事業基盤を活用した川下起点の投資を加速、事業領域の拡大及び事業基盤の

強化・拡充により更なる成長を目指します。以下を実現することで、より消費者に近い川下ビジネスを開拓・進化させていきます。

・ディビジョンカンパニー間の横連携によるシナジー極大化

・事業の掛け合わせによるビジネス変革・創出

 

<企業ブランド価値の向上>

積重ねてきた先進的な取組により、外部からの高い評価を通じて「企業ブランド」を築き上げ、財務面の成長との相乗効果を生み、企業価値を向上。「マーケットインの発想」のもと、市場・社会・生活者の声に耳を傾け地道な定性面の磨きを継続し、以下の主要施策を通じて、ブランド価値の更なる向上を目指します。

・人的資本の強化

・ステークホルダーとの対話強化

・SDGsへの貢献・取組強化

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1)サステナビリティの考え方

 当社は、創業の精神である企業理念「三方よし(売り手よし、買い手よし、世間よし)」のもと、自社の

利益だけではなく、投資家や株主の皆様、取引先、社員をはじめ、周囲の様々なステークホルダーの期待と

信頼に応えることで、社会課題の解決に貢献することを目指しております。

 2018年4月に環境・社会・ガバナンス(ESG)の視点を取入れ、社会影響と事業影響という2つの観点から7項目のマテリアリティ(サステナビリティ上の重要課題)を特定しました。マテリアリティに対して、

リスクと機会の両方の観点から対応していくことで、当社の中長期的な企業価値向上につながると認識して

おります。詳細は当社「ESGレポート 2023」P.14 マテリアリティの選定・レビュープロセスをご参照くだ

さい。

 当社は、2024年4月に発表した経営方針「The Brand-new Deal~利は川下にあり~」において「業績の

向上」「株主還元」と並んで「企業ブランド価値の向上」を実現することを掲げております。

 当社グループは、160年を超える発展の過程で変化をチャンスと捉えて、川上から川下まで、原料から小売までとその影響範囲を拡大しつつ、時代とともに取扱商品の構成や事業領域を転換しながら発展してきました。そのため、常に既存ビジネスの枠組を超えて新たな価値創造を行うことが、当社グループの企業ブランドを築き上げ、財務面の成長との相乗効果を生んでおります。当社グループは、強みである生活消費分野に

おける消費者接点を活用し、全社員で「マーケットインの発想」のもと、市場・社会・生活者の声に耳を傾けること及び地道な定性面の磨きを継続することで、企業ブランド価値の更なる向上を目指します。

 

(2)サステナビリティの取組

① ガバナンス

 当社のサステナビリティ関連のガバナンス体制図は次のとおりです(2024年6月21日現在)。

 

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(a) 監督機能としての取締役会

 当社グループは、サステナビリティ課題への対応を経営の重要課題の一つと認識し、取締役会にてサステナビリティに関するグループ方針、戦略、関連ビジネス推進の承認をするとともに、サステナビリティ開示情報の適切性を監督しております。

 マテリアリティに関して、リスクと機会への対応方針や具体的アプローチ、成果指標及び進捗度合等の重要

事項のレビューを通し、マテリアリティの妥当性につき取締役会が監督しております。

 

 環境・社会リスクを含むサステナビリティ関連のリスクと機会に対応する事業戦略・投資戦略の執行(戦略の見直し・事業撤退判断を含む)に関して、当社ではすべての新規投資案件に対し、事前のESGリスク評価として「投資等に関わるESGチェックリスト」を使用し、サステナビリティ関連のリスクに関する方針、体制

及び取組状況を把握、分析し、重要事項を協議するHMC(HMCについては、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等」をご参照ください。)にてサステナビリティ関連のリスクを検証して

おります。また、投資実行後は、サステナビリティ関連のリスクの予防を目的とする事業会社のモニター・

レビューや、人権デューデリジェンス、環境汚染等の未然防止を目的とする現地訪問調査等を多面的に実施

しております。バリューチェーン上の管理については、サプライヤーのESG取組状況を確認するサステナビリティ調査を毎年実施しております。また、気候変動や自然資本へのリスクと機会に関する取組は、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)やTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)フレームワークに基づく分析・開示を行っております。これらの審議内容や取組については、定期的にCAO(Chief Administrative Officer)から取締役会に報告され、取締役会が監督しております。

(b) 監督機能における取締役会のスキル・コンピテンシー

 当社CAOはSDGs/ESG分野の専門的経験・知見を有しており、サステナビリティに関する各種施策の

立案・実施を担当するサステナビリティ推進部より月2回程度の頻度で定期報告を受けております。また、

外部有識者を招聘して毎年開催するサステナビリティアドバイザリーボードでの講義、意見交換を通じて、

サステナビリティに関する世の中の動向、当社への期待、対応すべき課題に対する知見を深めております。

 当社の代表取締役であるCAOは、会社の全般的経営方針及び経営に関する重要事項を協議するHMCの

メンバーであると同時に、サステナビリティ委員会の委員長を兼務しており、サステナビリティに関する統括責任者としてサステナビリティ委員会で審議した事項を決定しております。なお、重要事項については、

CAO決定後に、HMCで承認しております。当該決定事項は、CAOからサステナビリティ推進の主たる

活動状況とともに適宜取締役会に報告することで、取締役会の監督にあたってのコンピテンシーを確保していると考えております。

(c) 執行機能としてのサステナビリティ委員会

 サステナビリティ関連事項に対応するための各種施策の立案・実施に関する審議を行うサステナビリティ

委員会は、サステナビリティ関連目標設定、進捗状況、現状のサステナビリティ関連のリスクと機会を識別・評価・管理しております。取締役会は、サステナビリティ関連のリスクと機会に対応する事業戦略・投資戦略の執行(戦略の見直し、事業撤退判断を含む)を監督しております。また、各事業セグメント及び職能部署のマネジメントを執行側のESG責任者と定めております。ESG責任者は、サステナビリティ関連事項について各種施策・取組の進捗を管理し、サステナビリティ委員会に報告しております。

2023年度サステナビリティ関連審議、報告実績

サステナビリティ

関連会議体

開催数

主な承認・審議・報告事項

取締役会

4回

・サステナビリティ委員会での審議内容及びCAO決定事項の報告

・社会貢献活動報告

サステナビリティ

委員会

3回

承認事項

・有価証券報告書サステナビリティ関連開示

 

報告事項

・マテリアリティの確認

・サステナビリティアクションプランレビュー

・外部からのESG評価

・「環境・社会リスク」モニター・レビュー結果

・CSRD推進体制

・気候変動対応

・自然資本(生物多様性)/TNFD開示

・ISO14001環境マネジメントレビュー

・人権デューデリジェンス、サステナビリティ調査報告

・人的資本の開示

 

② 戦略

 当社グループは、企業理念や外的環境の変化を踏まえた「サステナビリティ推進基本方針」を定め、

組織的・体系的にサステナビリティに資する取組を推進しております。当社グループのマテリアリティをサステナビリティアクションプランに落とし込み、経営方針及び経営計画の方針に基づき推進するトレーディングや事業投資を通じて、課題解決につなげていきたいと考えております。

(a) 当社グループ方針

 当社グループの「サステナビリティ推進基本方針」は次のとおりです。

伊藤忠グループ「サステナビリティ推進基本方針」

 

 伊藤忠の創業の精神である企業理念「三方よし」のもと、グローバルに事業を行う伊藤忠グループは、
地球環境や社会課題への対応を経営方針の最重要事項の一つとして捉え、持続可能な社会の実現に貢献

します。本方針は企業行動指針「ひとりの商人、無数の使命」及び企業行動倫理規範に基づいて策定して

います。

 

1.マテリアリティの特定と社会課題の解決に資するビジネスの推進

 国際社会の一員として、自社のみならず社会にとっても持続可能な成長につながるマテリアリティを

 策定し、事業活動を通じて企業価値向上を目指します。

 

2.社会との相互信頼づくり

 正確で明瞭な情報開示及び開示情報の拡充に努め、ステークホルダーとの双方向の対話を通じて、

 社会からの期待や要請を受けとめ、それらを実践していくことで信頼される企業を目指します。

 

3.持続可能なサプライチェーン・事業投資マネジメントの強化

 地球環境の保全や気候変動の緩和と適応、汚染防止と資源循環、生物多様性及び生態系の保護、人権と
 労働における基本的権利に対し、問題の未然防止及び継続的な配慮に努め、持続可能な事業活動を推進

 します。

 事業投資先や取扱商品のサプライチェーン上の資源(大気、水、土地、食糧、鉱物、化石燃料、動植物

 等)の有効利用、人権の尊重、及び労働安全衛生への配慮に努めます。取引先に対しては当社グループ

 のサステナビリティに対する考え方への理解と実践を求め、持続可能なバリューチェーン構築を目指し

 ます。

 各国法制度及び国際規範を尊重し、世界各国・地域の文化、伝統、慣習の理解に努め、公正かつ誠実な

 企業活動を展開します。

 

4.サステナビリティ推進に向けた社員への教育・啓発

 「サステナビリティを推進するのは社員一人ひとり」であることから、社員に対し重要課題に関する
 意識を醸成するための教育・啓発活動を行います。社員一人ひとりが、本方針に基づき各組織のアク

 ションプランを実行します。

 

代表取締役 副社長執行役員 CAO
小林 文彦

 

(b) マテリアリティごとの戦略

 当社のマテリアリティは、全社的な意見を反映したマテリアリティ候補を「事業影響」「社会影響」の面

からマッピングして重要度を判定したのち、外部有識者が参加するサステナビリティアドバイザリーボードで「経営への影響」と「ステークホルダーの意見・期待」の両面から「マテリアリティマトリックス」を作成し、7つに特定しました。マテリアリティについては、毎年、アドバイザリーボード、株主との面談を通じて寄せられる関心事項や、当社の事業範囲とも照らし合わせて見直しており、サステナビリティ委員会で審議、

CAOが決定したのち、取締役会に報告しております。

 マテリアリティに関する事業を通じた取組として、各事業セグメントや職能組織で事業分野ごとのリスクと機会等を抽出したうえで、短期から中長期的な目標達成に向けたサステナビリティアクションプランを定めております。サステナビリティアクションプランでは、取組むべき課題、対象事業分野、具体的アプローチ、

成果指標及び進捗状況を管理しております。毎年成果指標に基づくレビューを8つのカンパニー及び職能組織

ごとに実施し、サステナビリティ委員会に進捗状況を報告します。このようなPDCAサイクルを回し開示することにより、確実な推進を目指しております。

マテリアリティごとのリスクと機会

マテリアリティ

リスク

機会

技術革新による商いの進化

・IoT、AI等、新技術の台頭に伴う

既存ビジネスモデルの陳腐化

・先進国での人手不足や、効率化が

遅れている事業での優秀な人材の

流出 等

・新市場の創出や、革新性のある

サービスの提供

・新技術の活用による人的資源や

物流の最適化、働き方改革推進に

よる競争力強化 等

気候変動への取組み

(脱炭素社会への寄与)

移行リスク

・GHG排出に対する事業規制等による化石燃料需要の減少

物理的リスク

・異常気象(干ばつ、洪水、台風、ハリケーン等)発生増加による

事業被害 等

・気候変動の緩和に寄与する、再生

可能エネルギー等の事業機会の

増加

・異常気象に適応できる供給体制

強化等による顧客維持・獲得 等

働きがいのある職場環境の

整備

・適切な対応を実施しない場合の

労働生産性の低下、優秀な人材の

流出、ビジネスチャンスの逸失、

健康関連費用の増加 等

・働きがいのある職場環境の整備による労働生産性の向上、健康力・モチベーションの向上、優秀な
人材の確保、変化やビジネス

チャンスへの対応力強化 等

人権の尊重・配慮

・広域化する事業活動での人権問題

発生に伴う事業遅延や継続リスク

・提供する社会インフラサービスの

不備による信用力低下 等

・地域社会との共生による事業の

安定化や優秀な人材確保

・サプライチェーン人権への配慮、

労働環境の改善に伴う安全かつ

安定的な商品供給体制の構築 等

健康で豊かな生活への貢献

・消費者やサービス利用者の安全や

健康問題発生時の信用力低下

・政策変更に基づく、市場や社会

保障制度の不安定化による事業

影響 等

・食の安全・安心や健康増進の需要

増加

・個人消費の拡大やインターネット

の普及に伴う情報・金融・物流

サービスの拡大 等

安定的な調達・供給

・環境問題の発生及び地域社会と

関係悪化に伴う反対運動の発生に

よる影響

・主に生活消費分野での低価格化

競争の発生による産業全体の構造

的な疲弊 等

・新興国の人口増及び生活水準向上

による資源需要の増加

・環境に配慮した資源や素材の安定

供給による顧客の信頼獲得や新規

事業創出 等

確固たるガバナンス体制の

堅持

・コーポレート・ガバナンス、内部

統制の機能不全に伴う事業継続

リスク、予期せぬ損失の発生 等

・強固なガバナンス体制の確立に

よる意思決定の透明性の向上、

変化への適切な対応、安定的な

成長基盤の確立 等

 

(c) 具体的アプローチ

 2024年度は、当社を取巻くサステナビリティ関連事項を考慮し、2024年4月3日の取締役会において「The Brand-new Deal~利は川下にあり~」を経営方針と定め、企業ブランド価値の向上を目指して、それまでの

3ヵ年の中期経営計画から引継ぐ「SDGsへの貢献・取組強化」に本業を通じて取組みます。本取締役会決議を踏まえ、2024年5月のサステナビリティ委員会で、各マテリアリティに関する具体的施策及び目標に対する

進捗状況の審議・レビューを行うとともに、2024年度のサステナビリティアクションプランを決定しました。各事業セグメントにおいてこれらの施策を継続的に実行しております。詳細は2024年9月発行予定の当社「ESGレポート 2024」サステナビリティアクションプランをご参照ください。

 

 各事業セグメントにおける、2023年度の具体的成果の一例は次のとおりです。

事業セグメント

2023年度の具体的成果

繊維

繊維由来の再生ポリエステル「RENU」等、サステナブル素材の普及促進

及び繊維製品を再資源化する仕組みを構築

機械

北米における再生可能エネルギー資産を投資対象とするファンドを設立

金属

欧州における世界最大級のグリーン水素バリューチェーンの構築を推進

エネルギー・化学品

大型蓄電池事業への本格参入

食料

Dole Philippines.のバイオガスプラントの稼働によるクリーンエネルギーの活用

住生活

天然ゴム加工事業でトレーサビリティ、サステナビリティが確保された

原料を調達

情報・金融

中古携帯端末における取扱品目の拡大、調達ソース及び流通チャネルの

拡充

第8

ファミリーマート店舗へデジタルサイネージの設置拡大

その他

「ITOCHU SDGs STUDIO」からの発信を強化

 

③ リスク管理

(a) サステナビリティ関連のリスクと機会の識別

 グローバルに事業展開している当社グループでは、各国の環境・社会に関する対策・法制化等の社会情勢や事業環境の変化が事業に与えるリスクを常に監視しております。各事業セグメントにおける経営及び事業活動の統括責任者であるカンパニープレジデントの諮問機関であるDMC(Division Company Management Committee)は、環境・社会等のサステナビリティ関連を含むビジネスのリスクと機会を毎年レビューし、

各種施策、ビジネスの優先順位を定めて計画を策定しております。各事業セグメントの計画は、HMC及び

監督機関である取締役会に上程され、最終的に取締役会がサステナビリティの観点から総合的に分析・審議

したうえで承認されております。

(b) サステナビリティ関連のリスクと機会の評価

 当社グループは、リスク管理を経営の重要課題と認識し、COSO-ERMフレームワークの考え方を参考に、当社グループにおけるリスクマネジメントの基本方針を定め、必要なリスク管理体制及び手法を整備しており

ます。将来の当社グループの財政状態及び業績に重要な影響を及ぼす可能性があるものを重要なリスクと

考え、気候変動、サプライチェーン、人権等のサステナビリティに係る規制等の動向及び世界各地の事業に

与えるサステナビリティ関連のリスクと機会に関する情報収集を定期的に行い、リスクを特定しております。

(c) サステナビリティ関連のリスクと機会の管理

 当社グループでは、迅速な意思決定を実現するため各事業セグメントに権限を委譲し、事業運営に伴う

サステナビリティ関連のリスクと機会の管理を行っております。各事業セグメントのDMCにおいて、経営

方針及び経営に影響を及ぼす投資・融資・保証・事業等が審議され、カンパニープレジデントがそれらを決定しております。なお、当該決定事項は、事業段階ごとの状況に応じて管理しております。

(d) 全社的リスクマネジメントシステムへの統合

 当社グループでは、サステナビリティ関連をはじめとする様々なリスクと機会に対処するため、各種の社内委員会や責任部署を設置するとともに、各種管理規則、投資基準、リスク・取引限度額の設定や報告・監視

体制の整備等、必要なリスク管理体制及び管理手法を整備し、リスクと機会を全社的かつ個別的に管理して

おります。

 各事業セグメントが管理するリスクと機会は、社内の各委員会へ報告され、重要度に応じて各委員会での

審議を経て、HMCまたは取締役会にて承認されます。なお、管理体制の有効性につき毎年内部統制委員会

にてレビューを実施し、取締役会に報告しております。

 詳細は当社「ESGレポート 2023」P.190 リスクマネジメントをご参照ください。

 

④ 指標及び目標

 サステナビリティアクションプランの取組むべき課題、アプローチ、成果指標及び進捗度合の詳細は2024年

9月発行予定の当社「ESGレポート 2024」サステナビリティアクションプランをご参照ください。

 

(3)気候変動対応

 当社グループは気候変動を最も緊急性が高い地球環境問題の一つと認識しております。

 当社は、パリ協定や日本国が決定する貢献(NDC)を支持し、気候変動による事業環境の変化への適応に

努めるとともに、これを更なる成長機会と捉えております。当社グループは、2030年・2040年・2050年までの温室効果ガス(GHG)排出量削減達成のため、バリューチェーン上の関係者と協力し、省エネや再生可能エネルギーの利用、一般炭権益からの撤退をはじめとする資産入替、環境に配慮した形での商品やサービスの提供等により排出量を可能な限り削減し、また社会全体の排出量を削減する削減貢献ビジネスを積極的に推進することで、企業価値向上につなげていきます。

 当社は、気候関連財務情報開示の重要性に応えるべく、2019年5月、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言への賛同を表明して以降、TCFD提言に基づく情報開示に努めております。

 詳細は当社「ESGレポート 2023」P.41 気候変動(TCFD提言に基づく情報開示)をご参照ください。

① ガバナンス

 気候変動に係るリスクと機会への対応方針やGHG排出量の削減目標・取組、気候変動リスクと機会を考慮

した年度予算・事業計画等の重要事項につき、サステナビリティ関連のリスクと機会の一つとして前述の

サステナビリティ全般のガバナンスにおいて統合的に管理・監督しております。

② 戦略

 当社の事業は、気候変動の移行リスク及び物理的リスクの影響を短期・中期・長期の様々な時間軸で受けております。そのため当社は、各事業案件の推進プロセス及び気候変動を含む環境・社会リスクの管理プロセス
の中で、事業や戦略、バリューチェーン等に重大な財務的影響を与える可能性のあるリスクと機会を特定・

評価・管理しております。

(a) 気候変動関連のリスクと機会

気候関連の

リスクと機会

気候関連のリスクと機会が

組織の事業、戦略、

財務計画に及ぼす影響

影響を
受ける
時間軸(注)

影響を受ける
バリューチェーン

影響を受ける

事業・業種の例

移行

リスクと

機会

政策と

法制度

・世界各国のGHG排出計画の厳格化・GHG排出に対する事業規制等による化石燃料

需要の減少

・カーボンプライシング
(炭素税等)や事業規制等

による事業コストの増大

中期

長期

上流・

当社グループ

発電事業、化石燃料
事業、鉄鉱石事業、
自動車事業、化学品

事業

技術革新

気候変動の緩和に寄与する
再生可能エネルギー、蓄電池関連事業、低炭素燃料、
低炭素製鉄原料等の事業機会

の増加

短期

中期

長期

当社グループ

再生可能エネルギー
・蓄電池関連事業、
低炭素燃料事業、
新素材事業、鉄鉱石

事業

市場状況の変化

政策と法的リスク及びクリーンテック等のテクノロジーの影響を受ける製品・サービスの需要の増加と減少

短期

中期

長期

上流・

当社グループ

化石燃料事業、
化学品事業、自動車
事業、再生可能
エネルギー・蓄電池
関連事業、新素材
事業、CCUS・排出権

関連事業

 

 

気候関連の

リスクと機会

気候関連のリスクと機会が

組織の事業、戦略、

財務計画に及ぼす影響

影響を
受ける
時間軸(注)

影響を受ける
バリューチェーン

影響を受ける

事業・業種の例

物理的
リスクと
機会

急性的な物理的

リスク・
機会

異常気象(干ばつ、洪水、
台風、ハリケーン等)発生

増加による事業被害等

短期
中期
長期

上流・

当社グループ・
下流

食料事業、

森林関連事業、鉱業

異常気象に適応できる供給

体制強化等による顧客維持・

獲得等

短期
中期
長期

上流・
当社グループ・
下流

食料事業、

森林関連事業

慢性的な物理的

リスク・機会

気温上昇と気候変動に付随

する干ばつ等が農業・林業の
収穫及びそれらの関連製品の

生産量に与える影響

中期

長期

上流・
当社グループ・
下流

食料事業、

森林関連事業

(注)短期:~1年、中期:~3年、長期:4年~

(b) シナリオ分析

 当社事業を、GHG排出量等気候影響度と財務影響度をもとに分類し、双方の影響度が大きい事業を分析対象としております。その結果、政策と法的リスク等の移行リスク影響の大きい事業として、「発電事業」「エネルギー事業」「石炭事業」「鉄鉱石事業」「自動車事業」「化学品事業」を、また気候変動の物理的リスク

影響の大きい事業として、「Dole事業」「飼料・穀物トレード事業」「パルプ事業」を、シナリオ分析を行う対象事業に選定しました。上記9事業は、TCFDが指定した気候変動の影響を潜在的に大きく受ける4つの

非金融セクター(エネルギー、運輸、材料及び建物、農業・食品・木材製品)に含まれるものです。

(c) 既存戦略への影響と事業の移行計画

 シナリオ分析を行う中で、現状の事業戦略や事業地域の転換といった気候変動対策を取らない場合の財務的な負の影響が大きいリスクを把握し、経営方針「The Brand-new Deal~利は川下にあり~」にて推進する「SDGsへの貢献・取組強化」のもと、具体的な事業の移行計画、財務計画(資産入替を含む)の策定に既に

着手しております。具体的には次のようなビジネスを推進しております。

分野

概要

環境配慮型繊維素材

・サステナブル素材の拡充による循環型経済への貢献

水・廃棄物処理

・有力パートナーとの協業を通じ、欧州・中近東を中心に事業展開
・ドバイにて世界最大級の廃棄物処理発電施設の建設開始

再生可能エネルギー

・北米・欧州・アジア中心に風力・太陽光・地熱等、発電事業を推進
・太陽光発電所向け運転・保守サービスを北米約1,400ヵ所で展開

金属リサイクル

・リサイクル事業者の全国ネットワーク活用や、廃棄物処理の最適管理サービス提供を通じ、金属スクラップ他幅広くリサイクル事業を展開

還元鉄

・鉄鋼業界のグリーン化に貢献する低炭素還元鉄サプライチェーン構築を推進

CCUS(CO2回収・

利用・貯留)

・豪州MCi Carbon Pty Ltdの有するCO2固定化技術の商業化を目指し、国内外の取引先

 企業と協業
・国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業に参加
 し、液化CO2輸送技術の研究開発・実証事業も実施

蓄電池・再生可能

エネルギー

・自社ブランドAI蓄電池と分散型太陽光発電ネットワークを活用した、クリーン電力

 サービス・環境価値取引を推進

・次世代電池開発と車載用電池リユースによる循環型ビジネスを推進

・太陽光・バイオマス・風力等の再生可能エネルギー電源事業を推進

持続可能な航空燃料 ・ディーゼル燃料

・日本初となる航空会社向け持続可能な航空燃料(SAF)及びリニューアブルディー

 ゼルの販売

 

分野

概要

水素・アンモニア

・デンマークEverfuel A/Sと共同でグリーン水素バリューチェーン構築を推進
・クリーンアンモニアのバリューチェーン構築に向け、アンモニア燃料船開発及び

 保有運航モデルの創出、舶用燃料供給(バンカリング)事業、発電燃料代替として

 の利活用、カナダ他での製造販売事業等を推進

プラスチックリサイクル

・リサイクル技術を持つ有力パートナーとプラスチックリサイクル事業展開
・海洋プラスチックごみを原材料に使用した製品開発

サステナブルコー

ヒー豆・植物油

・児童労働・環境破壊を排除したサステナブル製品・第三者認証品の安定供給
・生産・流通・加工過程のサステナビリティが確立された原料サプライチェーンの

 構築

青果物生産・加工

廃棄物削減

・Dole商品の生産・流通・加工工程における格落ち品・残渣の削減

サステナブル天然

ゴム

・持続可能な天然ゴムのための国際コンソーシアム「GPSNR」に設立メンバーとして

 参画

・ブロックチェーンを使ったトレーサブルシステムを開発、バリューチェーン全体を

 巻込んだプロジェクトを展開

中古携帯流通

・新品携帯電話の過剰供給、端末買替による環境負荷増大等の市場動向を捉え、

 中古携帯流通事業へ参入

CVS事業(ファミ

リーマート)

・サプライチェーン改革による業務効率化、食品ロス削減
・脱プラスチック、GHG削減等「ファミマecoビジョン2050」を推進

 

③ リスク管理

 気候変動リスクは、サステナビリティ関連のリスクと機会の一つとして前述サステナビリティ全般のリスク管理において統合的に管理しております。なお、気候変動のリスク管理は、次のとおり、事業の段階ごとの

評価手法に組込まれております。

事業の段階ごとの評価手法

事業の段階

評価手法

事業開始

・新規投資案件の環境リスク評価(1年に80件程度)

・炭素税コスト等をシャドープライシングで算定し、ストレステストを実施

 (インターナルカーボンプライシング)

事業運営

・取扱商品の環境リスク評価(サプライチェーン全体でLCA評価)

・グループ会社の環境実態調査(1年に2、3社)

・サプライチェーン・サステナビリティ調査(当社及び子会社)

・ISO14001に基づく内部環境監査(当社及び対象グループ会社3社)

・Scope1/2/3集計と経年評価

・インターナルカーボンプライシングインパクト評価

 (例:発電事業(米国)の場合205米ドル/t-CO2

事業戦略の見直し

事業戦略、資産入替の検討

 

 各事業段階の評価手法でリスクまたは機会が特定された場合、リスクと機会の事業への影響を評価しております。それにはシナリオ分析・ストレステスト等の定量評価、投資方針・GHG排出量削減目標への準拠性評価のような定性評価が含まれます。定量評価された気候変動のリスクと機会の情報には、気候変動以外のリスクと機会の定量情報が加算され、収益への貢献度合を分析しております。

④ 指標及び目標

 当社グループは、気候変動リスクと機会への対応の一環として、GHG排出量と電力使用量、クリーンテックビジネスに関し、以下の指標及び目標を設定しております。指標及び目標を定める際には、パリ協定や日本国NDC、国際的な信頼性が高く多岐にわたる事業領域をカバーできるIEA(国際エネルギー機関)の資料等を参照しております。

 

<GHG排出量削減目標>

指標(集計範囲):

Scope1/2/3(当社及び子会社)、化石燃料事業・権益(当社及び子会社・関連会社・一般投資)

目標:

・2050年までにGHG排出量「実質ゼロ」を実現。

・2040年までに2018年比75%削減を実現し、GHG排出量削減に貢献するビジネスの積極推進を通じ

「オフセットゼロ(注)」を目指す。

(注)オフセットゼロ:削減貢献量が当社GHG排出量を上回る状態。

・2030年までに2018年比40%削減を実現。

 

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⑤ GHG排出量データ

             (単位:千t-CO2e)

 

2023年3月期

Scope1

1,166

Scope2

600

・千t-CO2e単位で表示している数値については、千t-CO2e未満の端数を四捨五入して表示しております。

・2023年3月期のScope1及びScope2は「ESGレポート 2023」の数値を記載しており、同数値は、第三者保証を受けております。集計範囲、算出方法及び第三者保証の詳細につきましては、当社「ESGレポート 2023」P.93 ESGデータ(環境)にある集計範囲及び気候変動パフォーマンスデータにある注意書き並びに第三者保証報告書をご参照ください。

・2024年3月期のScope1及びScope2については、2024年9月発行予定の当社「ESGレポート 2024」をご参照ください。

(4)人的資本経営・多様性

 当社グループは、企業理念である「三方よし」の精神を継承し、企業行動指針である「ひとりの商人、無数の使命」を体現する人材の確保・育成に努めております。その実現には、人種、性、宗教、国籍、年齢等にかかわらず、従業員一人ひとりの能力を最大限に引出す人材戦略の実行と環境の整備が不可欠であり、当社の

朝型勤務・健康経営等の働き方改革や人事政策の事例を当社グループで共有したうえで、グループ各社のビジネスに合わせた独自の人材戦略を展開しております。また、グループ各社の採用、人材育成、労務管理等における課題に対し、きめ細やかな支援を行う等、当社グループが一体となって企業価値の向上に努めており

ます。

① ガバナンス

 当社グループの企業理念である「三方よし」を実現するため、人材戦略を経営戦略の一つとして位置付けております。また、当社では、経営方針に係る重要な人事政策等の関連事項は、人事・総務部の立案、CAO、CSO(Chief Strategy Officer)、業務部の審査を経て、全般的な経営方針及び経営に関する重要事項を

協議するHMCで決定しております。決定事項は、CAOより取締役会に定期的に報告され、取締役会が監督しております。当社グループは、ガバナンス強化の観点から、当社より適切な人材をグループ各社に派遣しております。また、改訂コーポレートガバナンス・コード等により「人材の多様化」に対する社会的な要請が

一層高まる中、喫緊の課題である「女性の活躍支援」を加速させるため、当社では2021年10月に取締役会の

任意諮問委員会である「女性活躍推進委員会」を新設し、取締役会が重要施策を監督する体制を構築しました。委員長を社外取締役とし、委員総数の半数以上を社外役員で占めております。今後も現場や個々の事情を把握したうえで、「①現場との協議、②女性活躍推進委員会での議論、③取締役会への報告」という一連の

サイクルを継続し、実効性のある施策に落とし込んでいきます。計画的な採用・育成を通じて、取組方針の

一つである役職を担う人材の候補者数の拡大を図っていきます。また、当社グループ各社との人材交流等を

行い、グループ全体での女性活躍を推進していきます。

② 戦略

 当社グループの人材戦略・社内環境整備方針・具体的アプローチは次のとおりです。

<人材戦略(人材育成方針)>

 当社グループ企業理念「三方よし」実現に向け、当社の「経営方針」において、「企業ブランド価値の

向上」を掲げております。その重要施策の一つを「人的資本の強化」とし、取組を進めていきます。「人的

資本の強化」により、労働生産性を引上げ、持続的な企業ブランド価値を向上し、「マーケットインの

発想」のもと、市場・社会・生活者の声に耳を傾け、以下の施策を重点的に実行していきます。

1.採用市場での優位性を活かした優秀な人材の確保

当社は社員数が同業他社と比べて少ない中、より高い成果を出すために、企業理念「三方よし」に共感する

優秀な人材を確保していきます。

 

2.役員登用制度による多様な経営人材の継続的輩出

多様化する生活消費関連の顧客ニーズに基づき、ビジネスを開拓・進化することを目的に、組織や意思決定層を多様化するため女性活躍を推進しております。また、川下起点の投資を加速し、ハンズオンで事業領域拡大や事業基盤の更なる強化・拡充をすべく、社内に「学び続ける文化」を醸成し、経営人材・グローバル人材等の育成に注力していきます。

 

3.従業員の貢献意欲向上・更なる労働生産性の追求

朝型勤務・健康経営等の働き方改革の先進的な取組の積重ねや、成果に応じたメリハリのある評価・報酬、

早期抜擢やチャレンジングな経験の機会を創出しております。全従業員が能力を最大限に発揮できる「厳しくとも働きがいのある会社」の実現を目指していきます。

 

 当社は、1999年度より育成費用を持続的な企業価値の向上のための「人的資本投資」と位置付け、それらを

全社でレビューし、人材育成につなげております。これらの取組を通じ、社会環境の変化や顧客ニーズを捉えた「無数の使命」を果たす「商人」を育成し、当社グループの企業理念である「三方よし」を実現していき

ます。

<社内環境整備方針>

 当社は、「健康力向上」こそが、企業行動指針である「ひとりの商人、無数の使命」を果たす人材力強化の
礎であるという考えに基づき、「伊藤忠健康憲章」の制定、がんと仕事の両立支援等をはじめとした健康・
安全に対する万全な体制を構築しております。また、労働安全衛生に関する情報提供等、当社産業医による
グループ会社支援を行っております。今後も、従業員一人ひとりの健康を第一に、従業員が安心して働くこと

ができる職場環境の実現を当社グループ全体で目指していきます。

③ リスク管理

 当社は、価値創造の原動力である従業員一人ひとりの能力を最大限に引出すための基盤整備に努めており
ます。その一環として、迅速な意思決定を実現するため各事業セグメントに権限を委譲し、事業運営に伴う
人材に関するリスクと機会の管理を行っております。経営戦略に基づいた人材戦略のもと、各カンパニー
プレジデントが人材確保や適材適所等を推進しております。また、定期的にエンゲージメントサーベイを
実施し、結果を各事業セグメントに報告しており、従業員の働きがいをモニタリングする仕組みを構築して
おります。なお、当社グループ各社に対しては、事業セグメントを通じた労務管理リスク・人材リスクの把握

や課題に対するきめ細やかな支援に努めております。

④ 指標及び目標

(a) 人材戦略(人材育成方針)

指標

当事業年度実績

目標/前連結会計年度実績

(注)1

集計対象

労働生産性(注)2

5.2

2023年3月期:  5.2倍

提出会社

女性従業員比率

25

2026年3月末目標: 30

提出会社

女性採用比率

39

2026年3月末目標: 40

提出会社

女性役員比率(注)3

12

2031年3月末目標: 30

提出会社

男性育児休業取得率

53

2026年3月末目標:100

提出会社

研修受講者数(延べ人数)

68,824

2023年3月期: 48,044名

提出会社

20~30代海外駐在・出向経験者率

71

2023年3月期:   72%

提出会社

人材育成投資総額(注)4

22.7億円

 

提出会社

 

 ・グローバル・経営人材育成   (海外研修等)

14.9億円

 

提出会社

 

 ・「伊藤忠らしさ」の伝承    (創業地訪問等)

4.4億円

 

提出会社

 

 ・「学び続ける」支援      (DX研修等)

3.5億円

 

提出会社

一人あたり人材育成投資額

55.5万円

 

提出会社

企業理念「三方よし」を深く理解する ための創業地訪問参加者数(注)5

3,565名

2023年3月期: 3,027名

連結会社

(注)1 目標を設定している非財務指標KPIは、目標/前連結会計年度実績欄に目標を記載しております。

2 働き方改革を開始した2010年度を基準とし、連結純利益を提出会社の従業員数で除した倍数です。

3 女性役員比率は、会社法上の役員及び執行役員を含みます。

4 人材育成を目的とする統合型独身寮に関連する費用を一部含みます。

5 2004年度より導入した創業地訪問の参加者数の直近連結会計年度までの累計です。

 

(b) 社内環境整備方針

指標

当事業年度実績

目標/前連結会計年度実績

集計対象

がん特別検診対象者受診率

94

2023年3月期:  93%

提出会社

労働災害の罹災者数

8

2023年3月期:   3名

提出会社

死亡災害件数

0

2023年3月期:   0件

提出会社

グループコンプライアンス意識調査の  回答率(注)

98%

2023年3月期:  99%

連結会社

(注)独自で調査をしている上場子会社を除く国内外子会社及びその事業会社の従業員56,090名が対象です。

 

3【事業等のリスク】

当社グループは、その広範にわたる事業の性質上、市場リスク・信用リスク・投資リスクをはじめ様々なリスクにさらされております。これらのリスクは、予測不可能な不確実性を含んでおり、将来の当社グループの財政状態及び業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、これらのリスクに対処するため、必要な

リスク管理体制及び管理手法を整備し、リスクの監視及び管理を行っておりますが、これらのすべてのリスクを

完全に回避するものではありません。

以下に記載するリスクについては、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項を、重要性の観点から取上げたもので、すべてのリスクを網羅した訳ではありません。当社グループの事業は、記載されたリスク

以外の、現在は未知のリスク、あるいは現時点では特筆すべき、または重要と見なされていないリスクも存在して

おり、これらのリスク要因のいずれによっても、投資家の判断に影響を及ぼす可能性があります。

将来事項に関する記述につきましては、当連結会計年度末現在において入手可能な情報に基づき、当社が合理的であると判断したものであります。

(1)マクロ経済環境及びビジネスモデルに関するリスク

当社グループは、国内の商品売買・輸出入・海外拠点間の貿易取引に加え、金属資源やエネルギーの

開発等、多様な商取引形態を有し、各事業領域において原料調達から製造・販売に至るまで幅広く事業を

推進しております。

主な事業領域ごとの特性として、プラント・自動車・建設機械等の機械関連取引、金属資源・エネルギー・化学品等のトレード並びに開発投資については世界経済の動向に大きく影響を受ける一方、繊維・食料等の

生活消費分野は相対的に国内景気の影響を受けやすいと言えます。但し、経済のグローバル化の進展に伴い、生活消費分野についても世界経済の動向による影響が大きくなっております。

また、世界経済全般のみならず、海外の特定地域に固有の経済動向に加え、近年の急速な技術革新等による産業構造等の変化、グローバル化に伴う新興成長国との競合激化、更には規制緩和や異業種参入等のビジネス環境の変化が、当社グループの既存のビジネスモデルや競争力、将来の財政状態、業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)市場リスク

当社グループは、為替相場、金利、商品市況及び株価の変動等による市場リスクにさらされております。

そのため、当社グループは、バランス枠設定等による管理体制を構築するとともに、様々なヘッジ取引を利用すること等により、為替相場、金利及び商品市況の変動等によるリスクを最小限に抑える方針であります。

① 為替リスク

当社グループは、輸出入取引が主要事業の一つであり、外貨建の取引において為替変動リスクにさらされております。そのため、先物為替予約等のデリバティブを活用したヘッジ取引により、為替変動リスクの軽減に努めておりますが、完全に回避できるものではありません。

また、当社の海外事業に対する投資については、為替の変動により、為替換算調整額を通じて株主資本が

増減するリスク、期間損益の円貨換算額が増減するリスクが存在します。これらの為替変動リスクは、将来の当社グループの財政状態や業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

なお、詳細については、「第5 経理の状況 連結財務諸表注記 24 金融商品」の「為替リスク管理」の注記内容をご参照ください。

② 金利リスク

当社グループは、投資活動、融資活動及び営業取引に伴う資金の調達や運用において金利変動リスクに

さらされております。そのため、投資有価証券や固定資産等の金利不感応資産のうち、変動金利にて

調達している部分を金利変動リスクにさらされている金利ミスマッチ額として捉え、金利が変動することに

よる損益額の振れを適切にコントロールするために金利変動リスクの定量化に取組んでおります。

また、定期的に金利動向を把握するとともに、「EaR(Earnings at Risk)」を用いて、金利変動による

支払利息への影響額をモニタリングしておりますが、金利動向によっては、将来の当社グループの財政状態や業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 なお、詳細については、「第5 経理の状況 連結財務諸表注記 24 金融商品」の「金利リスク管理」の

注記内容をご参照ください。

 

③ 商品価格リスク

当社グループは、様々な商品の売繋ぎを基本とした実需取引を行っておりますが、相場動向を考慮し買越

及び売越ポジションを持つことで価格変動リスクにさらされる場合があります。そのため、棚卸資産、売買

契約等を把握し、主要な商品についてはディビジョンカンパニーごとにミドル・バックオフィスを設置し、

個別商品ごとに商品バランス枠及び損失限度額の設定、モニタリング管理を行うとともに、定期的な

レビューを実施しております。

また、当社グループは、金属資源・エネルギーの開発事業やその他の製造事業に参画しており、当該事業の

生産物・製品に関しても上記と同様に価格変動リスクにさらされております。

これらの商品価格リスクに対しては商品先物・先渡契約等によるヘッジ取引を行うことでリスクの軽減に

努めておりますが、完全に回避できるものではなく、商品価格の動向によっては、将来の当社グループの財政状態や業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、市場に影響されやすい市況商品取引のリスクを把握、モニタリングするため、

「VaR(Value at Risk)」を用いております。当該手法による数値は過去の一定期間の市場変動データに

基づき、将来のある一定期間のうちに被る可能性のある最大損失額を統計的手法により推定したものです。

なお、詳細については、「第5 経理の状況 連結財務諸表注記 24 金融商品」の「商品価格リスク

管理」の注記内容をご参照ください。

 

④ 株価リスク

 当社グループは、主に顧客・サプライヤー等との関係強化、または投資先への各種提案等を行うこと等に

よる事業収益追求や企業価値向上を図るため、市場性のある様々な株式を保有しております。これらの株式は株価変動のリスクにさらされており、株価の動向によっては、将来の当社グループの財政状態や業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、株価変動に伴う連結株主資本への影響額を定期的に把握、モニタリングするため、

「VaR(Value at Risk)」を用いております。当該手法による数値は過去の一定期間の市場変動データに

基づき、将来のある一定期間のうちに被る可能性のある最大損失額を統計的手法により推定したものです。

なお、詳細については、「第5 経理の状況 連結財務諸表注記 24 金融商品」の「株価リスク管理」の注記内容をご参照ください。

 

(3)投資リスク

 当社グループは、様々な事業に対する投資活動を行っておりますが、このような投資活動においては、経営環境の変化、投資先やパートナーの業績停滞等に伴い期待通りの収益が上げられないリスクや、投資先の業績の停滞等に伴い投資の回収可能性が低下する場合及び株価が一定水準を下回る状態が相当期間にわたり

見込まれる場合には、投資の一部または全部が損失となる、あるいは追加資金拠出が必要となるリスクが

あります。また、パートナーとの経営方針の相違、投資の流動性の低さ等により当社グループが望む時期や

方法での事業撤退や事業再編が行えないリスク、あるいは、投資先から適切な情報を入手できず当社

グループに不利益が発生する等の投資リスクがあります。これらのリスクを軽減するために、新規投資の

実行については投資基準を設けて意思決定をするとともに、既存投資のモニタリングを定期的に行い、

投資効率が低い等保有意義の乏しい投資に対しては、EXIT選定基準を適用することにより資産の入替えを

促進する等の対応に努めております。

 しかしながら、こうした管理を行ったとしても、投資リスクを完全に回避できるものではなく、将来の当社

グループの財政状態や業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)固定資産に関する減損リスク

当社グループが保有または賃貸する不動産、資源開発関連資産、航空機・船舶、のれん及び無形資産等の

固定資産は、減損リスクにさらされております。

 これらの資産について、現時点において必要な減損等の処理は実施しておりますが、店舗・倉庫等の収益性低下により帳簿価額が回収できなくなった場合、石炭・鉄鉱石・原油価格等の資源価格の変動による市況

低迷や研究開発の方針変更等が生じた場合、また、資産価値の下落や計画外の追加的な資金拠出等により

投資の全部または一部が損失となる等の場合において、新たに減損処理を実施することになり、将来の

当社グループの財政状態や業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループにおいては、持続的成長基盤の構築に向けた投資と機動的な資産入替を着実に実行することにより、当社の強みである高効率経営を継続していきます。また、投資の決定においては買収価格の適切性に

関する十分な審議を行い、投資後も定期的なモニタリングを行うことで、適正管理に努めております。

 

(5)信用リスク

 当社グループは、国内外の取引先に対し、営業債権、貸付金、保証その他の形で信用供与を行っており

ます。取引先の信用状況の悪化や経営破綻等により、これらの債権等が回収不能となる、あるいは、商取引が継続できないことにより、取引当事者としての義務を果たせず、契約履行責任を負担することとなる等の信用リスクを有しております。そのため、当社グループでは、信用供与の実施に際して、信用限度額の設定及び

必要な担保・保証等の取得等を通じたリスク管理を行うことでリスクの軽減に努めるとともに、取引先の

信用力、回収状況及び滞留債権の状況等に基づいて予想信用損失を見積り、貸倒引当金を設定しております。

 しかしながら、こうした管理を行ったとしても、信用リスクの顕在化を完全に回避できるものではなく、

将来の当社グループの財政状態や業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 なお、詳細については、「第5 経理の状況 連結財務諸表注記 24 金融商品」の「信用リスク管理」の注記内容をご参照ください。

 

(6)カントリーリスク

 当社グループは、海外の様々な国・地域において取引及び事業活動を行っており、これらの国・地域の

政治・経済・社会情勢等に起因して生じる予期せぬ事態、各種法令・規制の変更等による国家収用・送金

停止等のカントリーリスクを有しております。

 そのため、個別案件ごとに適切なリスク回避策を講じるとともに、当社グループ全体として特定の国・

地域に対する過度なリスク集中を防止する観点から、社内の国格付に基づく国別の国枠を設定し、これらの国々に対する総エクスポージャーを当社グループの経営体力に見合った総枠で管理すること等により、

リスクのコントロールに努めております。

 これらの対策を通じて、リスクの軽減に努めておりますが、完全に回避できるものではなく、ロシア・

ウクライナ情勢のようにリスクが顕在化した場合、状況によっては債権回収や事業遂行の遅延・不能等により損失が発生しかねず、将来の当社グループの財政状態や業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 なお、ロシア・ウクライナ情勢による影響について、当社グループではロシアでの資源関連投資等を行っておりますが、当連結会計年度末の総資産に占める割合は1%未満です。引続き、当社の保有するロシア・

ウクライナ関連資産については直近の情勢を踏まえた適切な会計処理を行っていることから、財政状態及び

経営成績への重要な影響は見込まれておりません。

 

(7)資金調達に関するリスク

 当社グループは、国内外の金融機関等からの借入金及びコマーシャル・ペーパー、社債の発行により、事業に必要な資金を調達しておりますが、当社に対する格付けの大幅な引下げ等により金融市場での信用力が低下した場合、あるいは、主要金融市場の金融システムの混乱が発生した場合等には、金融機関・投資家から当社グループが必要な時期に希望する条件で資金調達ができなくなる可能性や資金調達コストが増大するリスクがあります。そのため、現預金、コミットメントライン等の活用により十分な流動性を確保するとともに、

調達先の分散や調達手段の多様化に努めておりますが、リスクを完全に回避できるものではありません。

このようなリスクが顕在化した場合には、将来の当社グループの財政状態や業績に重要な影響を及ぼす

可能性があります。

なお、詳細については、「第5 経理の状況 連結財務諸表注記 24 金融商品」の「流動性リスク管理」の注記内容をご参照ください。

 

(8)税務に関するリスク

 当社グループは、グループ税務ポリシーを策定したうえで、租税制度の定めや意義・立法趣旨に則り、

誠実な態度で税務業務に取組み、租税回避を企図した取引は行わず、事業活動により稼得した所得に基づき

適切な納税を行うことを基本理念としております。また、適正・公平な課税がなされるよう、適時適切な情報開示によるグループ全体の税の透明性の確保や、各国・地域税務当局に対する誠実な対応による信頼関係の

構築及び建設的な対話を通じた公正な関係維持に努めております。このような対応により、税務当局との

見解の相違に伴う税金費用の増加による企業価値の毀損等のリスクに対処しております。

 しかしながら、タックス・プランニングによる課税所得の見積りの変動及びタックス・プランニングの

変更、あるいは税率変動等を含む税制の変更等があった場合には、将来の当社グループの財政状態や業績に

重要な影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループの連結財政状態計算書において資産側に計上される繰延税金資産は金額上重要性が

あり、繰延税金資産の評価に関する会計上の判断は、当社グループの連結財務諸表に重要な影響を

及ぼします。そのため、当社グループは、将来の課税所得と実行可能なタックス・プランニングを考慮し、

回収可能な繰延税金資産を計上しております。

 

(9)重要な訴訟等に関するリスク

当社グループの財政状態や業績に重要な影響を及ぼすおそれのある訴訟、仲裁その他の法的手続は

現在ありません。しかしながら、当社グループの国内及び海外の事業活動等が今後重要な訴訟等の対象と

なり、将来の当社グループの財政状態や業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(10)法令・規制に関するリスク

当社グループは、国内外で様々な商品及びサービスを取扱う関係上、関連する法令・規制は多岐に

わたります。具体的には、会社法、金融商品取引法、税法、各種業界法、外為法を含む貿易関連諸法、

独禁法、知的財産法、環境に関する法令、贈賄防止に関する法令、海外事業に係る当該国の各種法令・

規制等があり、当社グループでは法令遵守を極めて重要な企業の責務と認識のうえ、コンプライアンス体制を

強化して法令遵守の徹底を図っております。

 しかしながら、こうした対策を行ったとしても、役員及び従業員による個人的な不正行為等を含め

コンプライアンスに関するリスクもしくは社会的に信用が毀損されるリスクを回避できない可能性が

あります。

 また、国内外の行政・司法・規制当局等による予期せぬ法令の制定・改廃が行われる可能性や、社会・経済環境の著しい変化等に伴う各種規制の大幅な変更の可能性も否定できません。

 このような場合には、将来の当社グループの財政状態や業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(11)人材に関するリスク

当社グループは、様々な国において多様な事業活動を行っており、個別事業の発展には事業の企画・遂行や組織の指揮・監督にあたる人材の活躍が重要です。当社グループでは多様な人材を確保し、当社とグループ

会社の連携も含めた継続的な能力開発と、働きがいのある職場環境の整備を通じて、適材適所の配置を

実現しております。

しかしながら、今後、労働市場流動化の更なる進展や、事業モデルの変化に応じて特定分野に高度な知識・経験を持った人材へのニーズが集中する等、人材確保の環境が大きく変化する可能性があります。このため、当社グループでの人材確保・開発の取組強化によっても、事業分野によっては求められる人材が不足し、新規事業創出や事業拡大の機会に十分応えられないリスクを完全に回避できるものではなく、人材の不足の状況に

よっては将来の当社グループの財政状態や業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(12)環境・社会に関するリスク

 当社グループは、環境・社会に関するグローバルな課題の解決を経営上の重要課題の一つとして位置付け、

サステナビリティ推進基本方針を定め、サステナビリティ上の重要課題を特定しました。また、商品取扱・

サービス提供及び事業投資案件の法令抵触リスクを含む環境リスクを未然に防止する環境マネジメント

システム(ISO14001)の構築、サプライチェーンに対する広範囲なサステナビリティ調査の実施、事業での

人権影響評価と特定並びに人権デューデリジェンスプロセスの構築、新規事業投資案件のESGに関するリスク

評価等、リスク管理に積極的に取組んでおります。具体的な運営についてはサステナビリティ委員会を

設置し、サステナビリティに関する方針の策定・見直しや毎年の全社活動のレビューを実施するとともに、

各部署においても環境・社会マネジメント活動を推進しております。

 気候変動に係るリスクに関しては、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に賛同し、気候

変動が事業や業績に与える影響について定期的に1.5℃~4℃のシナリオ分析を行うことで、対応策や

ビジネス機会について検討し、経営に役立てております。また、当社グループのGHG排出量の削減目標の

達成に向け、省エネや再生可能エネルギーの利用、一般炭権益からの撤退をはじめとする資産入替、環境に

配慮した形での商品やサービスの提供等により排出量の削減に可能な限り努めると同時に、社会全体での

排出量の削減に貢献するビジネスを積極的に推進しております。

 自然資本に係るリスクに関しては、上述の従来のリスク管理に加えて、自然関連財務情報開示タスク

フォース(TNFD)の提言に基づき、当社グループの事業における自然資本への依存度・影響度を把握し、

LEAPアプローチを用いた拠点別のリスクと機会の分析を行うことで、持続可能な事業活動に向けた有効な

対策に取組んでおります。

 しかしながら、こうした対策を行ったとしても、当社グループの事業活動により、環境汚染等の環境・

社会に関する問題が生じた場合には、事業の遅滞や停止、対策費用の発生、社会的評価の低下等につながり、

将来の当社グループの財政状態や業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(13)自然災害に関するリスク

 当社グループが事業活動を展開する国や地域において、地震等の自然災害及び感染症が発生した場合には、当社グループの事業活動に影響を与える可能性があります。当社は、大規模災害時及び感染症発生時の

業務継続計画(BCP)の策定、安否確認システムの導入、防災訓練等の対策を講じており、グループ会社に

おいても個々に各種対策を講じております。

 しかしながら、当社グループの事業活動は広範な地域にわたって行っており、自然災害及び感染症の被害

発生時には、その被害を完全に回避できるものではなく、将来の当社グループの財政状態や業績に重要な

影響を及ぼす可能性があります。

 

(14)情報システム及び情報セキュリティに関するリスク

 当社グループは、情報の取扱に関する行動規範を定め、高い情報セキュリティレベルを確保することを重要事項と認識しております。デジタル化/データ活用のための全社情報化戦略の策定、情報共有や業務効率化のための情報システム構築・運用を行うとともに、各種情報セキュリティ対策を講じております。具体的には、

情報セキュリティガイドラインや、サイバーセキュリティリスクを考慮したサイバーセキュリティフレーム

ワークの適用及び遵守状況のモニタリングを実施しております。また、従来のサイバーセキュリティ

対策チームに加え伊藤忠サイバー&インテリジェンス(株)による体制強化等、リスク管理の徹底に継続して

取組んでおります。

 しかしながら、こうした対策を行ったとしても、外部からの予期せぬ不正アクセス、コンピューター

ウイルス侵入等による機密情報・個人情報の漏洩、設備の損壊・通信回線のトラブル等による情報システムの停止等のリスクを完全に回避できるものではなく、被害の規模によっては、将来の当社グループの財政状態や

業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要、これらに関する経営者の視点に

よる認識及び分析・検討結果は、次のとおりです。

 

(1)経済環境

 当連結会計年度における世界経済は、一部で堅調な動きもありましたが、総じて低調に推移しました。米国

では、政策金利が引上げられたものの、良好な雇用環境のもとで個人消費を中心に景気が緩やかに改善しま

した。欧州では、金融引締めの中でも物価の高い伸びが維持され、景気の停滞が続きました。中国でも、不動産市場の低迷や輸出の低調等から回復感を欠く状況が続きました。原油価格(WTIベース/1バレルあたり)は、主要産油国の供給抑制に伴い期初の80ドル台から9月には一時93ドル台まで上昇した後、世界経済の低調から

12月にかけて一時67ドル台まで下落したものの、その後は中東情勢の悪化もあり再び上昇傾向に転じ、期末は

83ドル台で終えました。

 日本経済は、物価の上昇で個人消費が抑制される中、夏から秋にかけて景気が停滞する局面もありましたが、新型コロナウイルス感染症との共生を前提とした経済活動の正常化が進むもとで、賃金上昇やインバウンド需要の拡大等を背景とした回復傾向をたどりました。ドル・円相場は、米国長期金利の上昇・低下に連れて、期初の133円台から11月中旬にかけて151円台まで円安が進んだ後、12月末にかけて一時141円台まで円高に転じるも、再び円安が進み、日銀が3月にマイナス金利政策を解除した中でも期末は151円台で終えました。日経平均

株価は、国内景気の回復傾向や円安に伴う企業業績の好調な推移、米国株価の上昇等を背景に期初の28,000円台から上昇し、3月下旬には一時41,000円台に乗せ、期末も40,000円台で終えました。10年物国債利回りは、

日銀による7月の長期金利目標の上限引上げに伴い期初の0.4%台から11月初めに0.96%まで上昇するも、1月半ばにかけては米国の長期金利低下に連れて0.6%前後まで反落、その後は日銀が3月に長期金利操作を終了

したものの、低金利政策が今後も続くとの見方が広がったことで緩やかな金利上昇にとどまり、期末は0.75%で終えました。

 

(2)定性的成果

 当社グループは、中期経営計画「Brand-new Deal 2023」(2021年度から2023年度までの3ヵ年計画)

において、「『マーケットイン』による事業変革」と「『SDGs』への貢献・取組強化」を基本方針としました。

「Brand-new Deal 2023」最終年度である2023年度の具体的成果は、次のとおりです。

 

① 繊維カンパニー

高級バッグブランド「ゲラルディーニ(GHERARDINI)」の独占的な販売に関する権利取得(日本及び欧米)

 当社は、2023年12月にイタリア・フィレンツェ生まれの高級バッグブランド「ゲラルディーニ」について、

日本及び欧米における独占的な販売に関する権利を取得しました。ゲラルディーニのバッグは、その技術力の

高さ、デザインの上品さ、優雅さによって世界中で愛されています。当社は、日本市場は(株)クイーポ、

イタリア含む欧米市場はPelletteria Fiorentina Montecristo S.R.L.を通じて販売し、創業から130年を超える伝統あるブランドの魅力を発信します。

 今後も長年にわたりブランドビジネスにおいて培ってきた経験と業界を牽引する圧倒的なノウハウを最大限に活用し、更なるブランドビジネスの拡大に取組んでいきます。

 

「FILA」のシューズ・アパレルに関する新会社設立

 当社は、イタリアのスポーツブランド「FILA」のシューズ・アパレルの企画・製造・販売を行うIFJ(株)を

設立しました。FILAは、1911年にイタリアのビエラで生まれ、ファッション感度の高いスポーツブランドとしてZ世代を中心に支持を集めています。また近年では、日本を代表するアスリートへのウェア提供も実施して

います。当社は、2006年にFILAの日本市場におけるマスターライセンス権を取得し、様々なカテゴリーの商品をサブライセンシー各社とともに展開しています。

 今後は、IFJ(株)がシューズとアパレルが一体となったコレクションを企画・製造し、伝統あるブランドの

アイデンティティを明確に発信する直営店を展開する等、FILAブランドの更なる価値向上へ取組を加速して

いきます。

 

② 機械カンパニー

(株)ヤナセにて電気自動車・フェラーリ等の取扱商品を拡充

 当社子会社である(株)ヤナセは、全国240拠点を超える販売・サービス網を有する国内最大の輸入車販売

会社であり、20万人を超える全国のお客様に対して最上質の商品・サービスを提供し、「クルマのある人生」を創っています。

 2023年10月、(株)ヤナセは電気自動車の更なる拡販に向けて、当社東京本社の隣に、メルセデス・ベンツでは都内初となる電気自動車専門ショールーム「メルセデスEQ青山」をオープンしました。また、2024年3月にFerrari Japan(株)とディーラー契約を締結、東京都新宿区にフェラーリ販売店を開設し、取扱ブランドの

拡充を進めています。今後も多様化するお客様のニーズを捉え、充実したサービスを提供していきます。

 

北米における再生可能エネルギーファンドを設立

 当社米国子会社Tyr Energy, Inc.は、2022年に設立した再生可能エネルギー開発会社Tyr Energy Development Renewables, LLCに続き、北米の再生可能エネルギー開発資産を投資対象とするファンドOverland Capital Partners, L.P.を設立しました。本ファンドを通じて20億米ドル程度の再生可能エネルギー事業を行う予定

です。また、世界最大の独立系発電所運転・保守サービス会社である当社米国子会社NAES Corporationは、

再生可能エネルギー分野においても約1,400か所、200万KWの太陽光発電所及び110万KWの風力発電所向けに資産管理・運転保守サービスを提供しています。

 各社の有する機能とノウハウを活用し、日本国内を中心とした機関投資家向けに、成長著しい北米の再生可能エネルギー市場での優良投資機会を提供します。

 

③ 金属カンパニー

北欧での世界最大級のグリーン水素バリューチェーンに参画

 当社は、デンマークにおいてグリーン水素(※)地産地消プロジェクトを進める水素生産の世界最大手であるEverfuel A/Sに、大阪ガス(株)と共同で出資しました。グリーン水素製造プロジェクトとしては世界最大級の

規模となる同社第一号案件の商業運転が2024年中に予定されています。既に実績のある自社水素ステーションも活用し、産業・モビリティ分野への水素販売を行うことで地産地消のバリューチェーンを構築し、将来的には

一大水素消費地になると見込まれるドイツへのパイプラインによる輸送も計画しています。

 当社は、本事業の早期収益化及び日本を含むアジアや欧米への横展開に加え、水素を原料とするアンモニアやe-fuel(合成燃料)等、今後の需要拡大が見込まれる水素派生商品の製造事業への参画により脱炭素社会の

実現に貢献していきます。

 ※ 再生可能エネルギーを利用し、水の電気分解によって生産される、製造時に二酸化炭素を排出しない水素

 

④ エネルギー・化学品カンパニー

大型蓄電池事業への本格参入

 当社は、家庭用蓄電池事業等で培った知見を活かし、大型蓄電池事業に本格参入しました。太陽光や風力等の自然を相手にする再生可能エネルギーは発電タイミングや発電量が安定しないことが課題とされており、

そのソリューションとして期待されるのが需給調整機能を持った大型蓄電池です。2023年6月のカネカソーラー販売(株)との取組を皮切りに、大阪ガス(株)、東京センチュリー(株)及び東急不動産(株)と計3件の蓄電所

事業を立上げ、東京都とも日本初となる系統用蓄電池事業の官民連携ファンドを創設する等、市場をリード

しています。また、電力網から切離された地域で、太陽光発電等の再生可能エネルギーと大型蓄電池を

セットにした脱炭素電源ビジネスを進めるべく、炭鉱エリアで同ビジネスに取組む豪州UON PTY LTDに出資

しました。

 今後も大型蓄電池事業の更なる拡大に注力することで、より効率的な再生可能エネルギーの普及を促進して

いきます。

 

⑤ 食料カンパニー

新ブランドメッセージ「フルーツでスマイルを。」のもとで付加価値戦略を推進

 当社100%子会社である(株)ドール(以下、「ドール」という。)は、フルーツで人々の様々な暮らしを笑顔にしていきたいという思いを込めて、日本オリジナルとなる新ブランドメッセージ「フルーツでスマイルを。」を策定しました。新ブランドメッセージのもと、「おいしさ」、「健康・美容効果」、「エシカル消費」を

軸に、様々な取組を推進しています。おいしさを追求する取組として、パイナップルの選定に光センサーを

導入し、糖度・酸度・熟度の3つで独自の厳しい基準をクリアした「極撰パイナップル」の販売を2023年より

開始しました。また、健康・美容効果に関しては、腸の健康をテーマにバナナ喫食による腸活体験を普及・

啓発する「バナ活®」を、エシカル消費に関しては、フルーツロス削減を目的に規格外バナナを使った商品開発やバナナの量り売り販売を推進しています。

 今後もドールならではの付加価値創造を通じて、笑顔あふれる暮らしとサステナブルな社会の実現を

目指します。

 

⑥ 住生活カンパニー

道路インフラの維持補修事業の推進

 当社は、2023年5月に国内有数の橋梁メーカーであるオリエンタル白石(株)と資本業務提携契約を締結し、

同社の第三者割当増資を引受け、筆頭株主となりました。日本の道路インフラの老朽化が深刻な社会問題と

なる中、近年工事量が増えている高速道路リニューアル工事において、同社は国内トップクラスの橋梁補修受注件数を誇ります。

 当社は、同社との資本業務提携を足掛かりに、社会課題である道路インフラの維持補修需要を当社グループ

としてワンストップで受けられる体制の構築を図るとともに、今後は特に橋梁の維持メンテナンス需要の増加が見込まれる地方自治体との官民連携事業等の推進により、安心・安全な社会基盤の実現を目指します。

 

大建工業(株)の非公開化による収益力強化

 当社は、2023年8月より関連会社であった大建工業(株)に対する公開買付を実施し、同年12月に非公開化を

完了しました。同社は、国内外に主要11工場を有する木質内装建材メーカーで、木質ボード・床材事業では国内シェアNo.1を誇ります。

 国内新築住宅市場が縮小傾向にある中、当社グループのリソースを最大限活用のうえ、大建工業(株)と

一体での経営効率化等により、主力の国内戸建向け事業での業界No.1の地位を更に磐石のものとします。

また、今後の注力市場である国内非戸建事業(商業、公共施設等)での事業領域の拡大や、当社の北米建材関連事業と共同での木質ボードの海外展開等により、同社の更なる収益力強化と持続的な企業価値向上を図ります。

 

⑦ 情報・金融カンパニー

リテール保険事業の取組拡大

 当社子会社で、来店型保険ショップ事業を展開するほけんの窓口グループ(株)(以下、「ほけんの窓口」

という。)は、全国約700の店舗網と、独自の社員教育システムに支えられたコンサルティングサービスを

強みとする業界最大手です。同社は、保険会社による直接販売が主流であった生命保険流通市場の中で、

『お客さまにとって「最優の会社」』を経営理念に掲げ、多数の保険の中から特定の保険会社・保険商品に偏ることなく、お客様と一緒に最適な商品を選ぶことに最も注力しており、高評価をいただいています。加えて、

老後資金に対する不安や資産形成に関するご相談へ対応すべく、2024年1月より、NISAやiDeCoの取扱を

はじめ、オンラインで専門的な相談ができるサービスを開始しました。

 今後もほけんの窓口の経営理念に沿ったサービスを拡大し、更なる事業成長を目指します。

 

伊藤忠テクノソリューションズ(株)の非公開化による成長加速

 当社は、2023年8月より伊藤忠テクノソリューションズ(株)に対する公開買付を実施し、同年12月に

非公開化を完了しました。IT市場は拡大する企業のデジタル化ニーズに応えるべく環境・構造変化が急速に

進んでおり、非公開化により伊藤忠テクノソリューションズ(株)と一体となることで、当社のネットワークや

投資ノウハウ等の経営資源を最大限活用した資本業務提携やM&Aを通じた成長戦略を機動的に実行できる体制としました。現在、顧客企業のIT・デジタル活用支援に必要となるコンサルティングや、データ分析・活用の

機能を強みとする企業群との資本業務提携を進めています。資本業務提携先のコンサルティング事業者の持つ

顧客課題整理力を活用することで、課題の解きほぐしが重要となるシステム開発の上流工程を含む案件の獲得数が拡大する等、既に伊藤忠テクノソリューションズ(株)の利益成長の加速を示す結果が表れてきています。

 今後は、以上に加えシステム開発リソースの拡充等の施策を更に強化することで、伊藤忠テクノソリューションズ(株)の企業価値最大化を目指します。

 

⑧ 第8カンパニー

広告配信事業におけるドン・キホーテとの提携

 当社は、2023年4月にドン・キホーテ等を展開する(株)パン・パシフィック・インターナショナル

ホールディングス(以下、「PPIH社」という。)とリテールメディア事業での協業を開始しました。

(株)ファミリーマート及びデジタル広告配信事業を展開する(株)データ・ワンが有する約2,900万人の会員

データとPPIH社の会員データを連携し、国内最大級となる3,000万人超まで広告配信ユーザー数を拡充しま
した。加えて、PPIH社が持つ10万アイテムもの幅広い商品カテゴリーで購買行動を分析、お客様の興味・

関心に対する理解度を高めることで、より一層個人のニーズに沿った広告・クーポンの配信を行うとともに、

広告主にとっても更に効果的な広告配信を実現するものです。

 今後もPPIH社との提携を核として小売事業者等と更なる提携を推進し、広告配信ユーザー数という「量」と、顧客理解を深めるための購買データの「幅」を拡充し、リテールメディア業界のトップランナーとして展開を

拡大していきます。

 

ファミリーマート店舗へのデジタルサイネージの設置拡大

 (株)ファミリーマート及びメディア事業を展開する(株)ゲート・ワンは、2024年3月までに全国47都道府県のファミリーマート約1万店舗に、広告だけでなく、ニュースやクイズ、ミュージックビデオ、お笑い等の様々なコンテンツを配信するデジタルサイネージ(FamilyMartVision)の設置を完了しました。1週間で約6,400万人が閲覧する国内最大規模のリテールメディアであり、独自コンテンツを目的とした来店につながる等、

ファミリーマート店舗が情報発信の拠点となっています。

 現在配信している「都道府県別」のコンテンツに加え、今後は、オフィス街や学校周辺等の店舗に絞った

「立地別」、特定の属性のお客様が来店される比率の高い店舗に絞った「ターゲット別」のコンテンツ・広告

配信等、広告主の様々なニーズにも対応していきます。また、設置可能なファミリーマート全店へのサイネージ設置を目指しており、来店されるお客様へ今までにない店舗体験を提供していきます。

 

 

(3)業績の状況

① 収益

 当連結会計年度の「収益」は、食料は食品流通関連事業での人流回復及び販売価格上昇による取引拡大に

加え、食糧関連取引での取扱数量増加等により増収、住生活は国内不動産取引やEuropean Tyre Enterprise

Limited(欧州タイヤ関連事業)の堅調な推移に加え、大建工業(株)の子会社化等により増収、機械は自動車

関連事業での販売好調に加え、北米電力関連事業での運転・保守サービス取引増加及び再生可能エネルギー開発

資産売却等により増収となり、一方、エネルギー・化学品はエネルギートレーディング取引、エネルギー関連

事業及び化学品関連取引での市況価格下落の影響により減収となりましたが、全体としては前連結会計年度比843億円(0.6%)増収の14兆299億円となりました。なお、「商品販売等に係る収益」は12兆6,580億円、

「役務提供及びロイヤルティ取引に係る収益」は1兆3,719億円となりました。

 

② 売上総利益

 当連結会計年度の「売上総利益」は、住生活は国内不動産取引やEuropean Tyre Enterprise Limitedの堅調な推移に加え、大建工業(株)の子会社化等により増益、食料はDoleでの物流コスト改善や食品流通関連事業での

人流回復及び販売価格上昇による取引拡大に加え、食糧関連取引での取扱数量増加等により増益、第8は

(株)ファミリーマートでの商品力・販促強化による客数及び客単価の伸長に伴う日商増加等により増益となり、一方、エネルギー・化学品は前連結会計年度好調であったエネルギートレーディング取引の反動等により減益と

なりましたが、全体としては前連結会計年度比1,025億円(4.8%)増益の2兆2,324億円となりました。

 

③ 販売費及び一般管理費

 当連結会計年度の「販売費及び一般管理費」は、前第4四半期連結会計期間にコネクシオ(株)を連結除外

したことによる減少はあったものの、大建工業(株)及び(株)ドームの子会社化、人件費の増加及び円安による

経費増加等により、前連結会計年度比1,026億円(7.2%)増加の1兆5,217億円となりました。

 

④ 貸倒損失

 当連結会計年度の「貸倒損失」は、一般債権に対する貸倒引当金の減少等により、前連結会計年度比11億円

減少の77億円(損失)となりました。

 

⑤ 有価証券損益

当連結会計年度の「有価証券損益」は、リチウムイオン電池事業の再評価に係る利益はあったものの、前連結

会計年度の北米飲料機器メンテナンス事業及びコネクシオ(株)の売却に伴う利益の反動等により、前連結会計

年度比323億円(48.2%)減少の348億円(利益)となりました。

 

⑥ 固定資産に係る損益

 当連結会計年度の「固定資産に係る損益」は、伊藤忠エネクス(株)での固定資産売却に伴う利益及び前連結

会計年度のDoleでの減損損失の反動等により、前連結会計年度比441億円改善の61億円(損失)となりました。

 

⑦ その他の損益

 当連結会計年度の「その他の損益」は、前連結会計年度比19億円減少の132億円(利益)となりました。

 

⑧ 金融収支(「受取利息」、「支払利息」、「受取配当金」の合計額)

 当連結会計年度の金融収支は、前連結会計年度比176億円減少の345億円(利益)となりました。

 このうち「受取利息」及び「支払利息」の合計である金利収支は、米ドル金利上昇に伴う支払利息の

増加等により前連結会計年度比190億円悪化の465億円(費用)となり、「受取配当金」は、LNGプロジェクト

からの配当金の減少はあったものの、石油ガス上流権益からの配当金の増加等により、前連結会計年度比14億円(1.8%)増加の811億円となりました。

 

⑨ 持分法による投資損益

 当連結会計年度の「持分法による投資損益」は、住生活はパルプ市況下落及び販売低調等によるITOCHU FIBRE

LIMITED(欧州パルプ事業)の取込損益悪化に加え、前連結会計年度好調であった海外不動産事業の反動等に

より減少、その他及び修正消去(注)はCITIC Limitedでは総合金融分野は堅調に推移したものの、米ドル金利

上昇に伴う支払利息の増加及び前連結会計年度の証券事業の再評価に係る利益の反動等による取込損益減少に

より減少となり、一方、機械は北米電力関連事業の取込損益増加に加え、前第3四半期連結会計期間における

日立建機(株)の持分法適用開始及び前連結会計年度のリース関連事業でのロシア向け航空機に係る損失の反動等

により増加となりましたが、全体としては前連結会計年度比43億円(1.4%)減少の3,163億円(利益)と

なりました。

 なお、主な持分法適用会社の業績については、後述「(5)主な子会社及び持分法適用会社の業績」をご参照

ください。

 

(注)「その他及び修正消去」は、各事業セグメントに帰属しない損益及びセグメント間の内部取引消去が含ま

   れております。詳細は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 4 セグメント情報」を

   ご参照ください。

 

⑩ 当社株主に帰属する当期純利益

 以上の結果、「税引前利益」は、前連結会計年度比112億円(1.0%)減益の1兆957億円となりました。

「法人所得税費用」は、税引前利益の減少等により、前連結会計年度比184億円(7.0%)減少の2,438億円と

なり、「税引前利益」1兆957億円から「法人所得税費用」2,438億円を控除した「当期純利益」は、前連結

会計年度比72億円(0.9%)増益の8,519億円となりました。このうち、「非支配持分に帰属する当期純利益」

502億円(利益)を控除した「当社株主に帰属する当期純利益」は、前連結会計年度比13億円(0.2%)増益の8,018億円となりました。

 

⑪ 日本の会計慣行に基づく「営業利益」

 当連結会計年度の「営業利益」(「売上総利益」、「販売費及び一般管理費」、「貸倒損失」の合計)は、

食料はDoleでの物流コスト改善や食品流通関連事業での人流回復及び販売価格上昇による取引拡大に加え、食糧関連取引での取扱数量増加等により増益、第8は(株)ファミリーマートでは外部環境変化や今後の事業基盤強化に向けたデジタル施策実行に伴う各種コストの増加はあったものの、商品力・販促強化による客数及び客単価の伸長に伴う日商増加等により増益となり、一方、エネルギー・化学品は前連結会計年度好調であったエネルギートレーディング取引の反動等により減益となりましたが、全体としては前連結会計年度比10億円(0.1%)増益

の7,029億円となりました。

(4)セグメント別業績

 当連結会計年度の、事業セグメント別の業績は次のとおりです。当社は8つのディビジョンカンパニーにより以下の区分にて、事業セグメント別業績を記載しております。

 

① 繊維カンパニー

収益(セグメント間内部収益を除く。以下同様。)は、前第2四半期連結会計期間における(株)ドームの

子会社化により、前連結会計年度比50億円(1.0%)増収の5,352億円となりました。売上総利益は、前第2四半期連結会計期間における(株)ドームの子会社化に加え、新型コロナウイルスの影響軽減等に伴う小売市況回復

によるアパレル関連事業の堅調な推移により、前連結会計年度比115億円(9.9%)増益の1,280億円となりました。当社株主に帰属する当期純利益は、新型コロナウイルスの影響軽減等に伴う小売市況回復によるアパレル

関連事業の堅調な推移により、前連結会計年度の一過性利益の反動はあったものの、前連結会計年度比15億円(6.0%)増益の270億円となりました。セグメント別資産は、新型コロナウイルスの影響軽減に伴う小売市況

回復による営業債権の増加、利益の積上げ及び追加投資による持分法投資の増加に加え、円安の影響等により、前連結会計年度末比284億円(6.2%)増加の4,860億円となりました。

 

② 機械カンパニー

収益は、自動車関連事業での販売好調に加え、北米電力関連事業での運転・保守サービス取引増加及び

再生可能エネルギー開発資産売却等により、前連結会計年度比854億円(6.1%)増収の1兆4,789億円となりました。売上総利益は、自動車関連取引・事業での販売好調及び北米電力関連事業での再生可能エネルギー開発

資産売却等により、前連結会計年度比155億円(6.6%)増益の2,504億円となりました。当社株主に帰属する

当期純利益は、自動車関連取引・事業での販売好調に加え、北米電力関連事業の取込損益増加及び前第3四半期連結会計期間における日立建機(株)の持分法適用開始等により、前連結会計年度比242億円(22.5%)増益の1,316億円となりました。セグメント別資産は、自動車関連事業や航空関連事業の棚卸資産及び建機関連取引等の売上債権の増加並びに利益の積上げによる持分法投資の増加があったことに加え、円安の影響等により、

前連結会計年度末比3,189億円(19.2%)増加の1兆9,835億円となりました。

 

③ 金属カンパニー

収益は、石炭価格の下落等により、前連結会計年度比554億円(4.4%)減収の1兆2,126億円となりました。売上総利益は、上記と同様の理由により、前連結会計年度比261億円(11.8%)減益の1,959億円となりました。当社株主に帰属する当期純利益は、鉄鉱石事業の取込損益増加はあったものの、石炭価格の下落に加え、前連結会計年度好調であった北米鋼管事業の反動による伊藤忠丸紅鉄鋼(株)の取込損益減少等により、前連結会計年度比213億円(8.6%)減益の2,261億円となりました。セグメント別資産は、鉄鉱石関連投資の公正価値上昇及び利益の積上げによる持分法投資の増加や原料炭関連事業への投資に加え、円安の影響等により、前連結会計年度末比1,287億円(10.1%)増加の1兆4,035億円となりました。

 

④ エネルギー・化学品カンパニー

収益は、エネルギートレーディング取引、エネルギー関連事業及び化学品関連取引での市況価格下落の影響

により、前連結会計年度比3,444億円(10.2%)減収の3兆445億円となりました。売上総利益は、前連結会計

年度好調であったエネルギートレーディング取引の反動等により、前連結会計年度比456億円(14.5%)減益の2,697億円となりました。当社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度好調であったエネルギー

トレーディング取引の反動により、リチウムイオン電池事業の再評価に係る利益等はあったものの、前連結会計年度比241億円(20.8%)減益の917億円となりました。セグメント別資産は、化学品関連事業の営業債権及び

蓄電池関連取引の棚卸資産の増加並びにリチウムイオン電池事業の再評価に伴う公正価値上昇に加え、円安の

影響等により、前連結会計年度末比737億円(4.7%)増加の1兆6,263億円となりました。

 

⑤ 食料カンパニー

収益は、食品流通関連事業での人流回復及び販売価格上昇による取引拡大に加え、食糧関連取引での取扱数量増加等により、前連結会計年度比2,367億円(5.1%)増収の4兆8,630億円となりました。売上総利益は、Doleでの物流コスト改善や食品流通関連事業での人流回復及び販売価格上昇による取引拡大に加え、食糧関連取引

での取扱数量増加等により、前連結会計年度比500億円(15.1%)増益の3,809億円となりました。当社株主に

帰属する当期純利益は、Doleでの物流コスト改善や食品流通関連事業での人流回復及び販売価格上昇による取引拡大、食糧関連取引での取扱数量増加並びに北米畜産関連事業の取込損益改善に加え、前連結会計年度の一過性損益の反動等により、前連結会計年度比461億円(228.2%)増益の663億円となりました。セグメント別資産は、食品流通関連事業における期末休日要因による営業債権の増加に加え、円安の影響等により、前連結会計

年度末比2,741億円(12.8%)増加の2兆4,209億円となりました。

 

⑥ 住生活カンパニー

収益は、国内不動産取引やEuropean Tyre Enterprise Limitedの堅調な推移に加え、大建工業(株)の子会社化等により、前連結会計年度比1,173億円(9.3%)増収の1兆3,808億円となりました。売上総利益は、上記と

同様の理由により、前連結会計年度比559億円(24.8%)増益の2,809億円となりました。当社株主に帰属する

当期純利益は、国内不動産取引の堅調な推移や大建工業(株)の取込比率上昇はあったものの、パルプ市況下落

及び販売低調等によるITOCHU FIBRE LIMITEDの取込損益悪化に加え、前連結会計年度好調であった海外不動産

事業の反動等により、前連結会計年度比289億円(30.4%)減益の662億円となりました。セグメント別資産は、大建工業(株)の子会社化に加え、円安の影響等により、前連結会計年度末比2,000億円(16.3%)増加の

1兆4,233億円となりました。

 

⑦ 情報・金融カンパニー

収益は、伊藤忠テクノソリューションズ(株)の取引が堅調に推移したことに加え、ほけんの窓口グループ(株)の代理店手数料増加はあったものの、前第4四半期連結会計期間におけるコネクシオ(株)の連結除外等により、前連結会計年度比109億円(1.2%)減収の8,643億円となりました。売上総利益は、前第4四半期連結会計期間におけるコネクシオ(株)の連結除外はあったものの、伊藤忠テクノソリューションズ(株)の取引が堅調に推移

したことに加え、ほけんの窓口グループ(株)の代理店手数料増加等により、前連結会計年度比100億円(3.5%)増益の2,961億円となりました。当社株主に帰属する当期純利益は、伊藤忠テクノソリューションズ(株)の取引の堅調な推移やほけんの窓口グループ(株)の代理店手数料増加に加え、ファンド保有株式の評価損益改善等

により、(株)オリエントコーポレーションに係る減損損失はあったものの、前連結会計年度比32億円(5.0%)増益の678億円となりました。セグメント別資産は、伊藤忠テクノソリューションズ(株)での営業債権等の増加及び投資有価証券の公正価値上昇に加え、円安の影響等により、前連結会計年度末比1,324億円(10.1%)増加の1兆4,405億円となりました。

 

⑧ 第8カンパニー

収益は、(株)ファミリーマートでの商品力・販促強化による客数及び客単価の伸長に伴う日商増加等により、前連結会計年度比481億円(10.3%)増収の5,152億円となりました。売上総利益は、上記と同様の理由により、

前連結会計年度比408億円(10.6%)増益の4,246億円となりました。当社株主に帰属する当期純利益は、

(株)ファミリーマートでは外部環境変化や今後の事業基盤強化に向けたデジタル施策実行に伴う各種コストの

増加はあったものの、商品力・販促強化による客数及び客単価の伸長に伴う日商増加に加え、関係会社業績及び店舗減損の改善並びに国内事業売却に伴う一過性利益等により、前連結会計年度比192億円(115.8%)増益の358億円となりました。セグメント別資産は、(株)ファミリーマートでの日商増加に伴う営業債権の増加

に加え、固定資産の取得や投資有価証券の公正価値上昇等により、前連結会計年度末比717億円(3.8%)増加の1兆9,783億円となりました。

 

⑨ その他及び修正消去

当社株主に帰属する当期純利益は、CITIC Limitedでは総合金融分野は堅調に推移したものの、前連結会計

年度の証券事業の再評価に係る利益の反動による取込損益減少及び米ドル金利上昇に伴う支払利息の増加等

により、前連結会計年度比187億円(17.3%)減益の894億円となりました。

(5)主な子会社及び持分法適用会社の業績

 

 ① 黒字・赤字会社別損益及び黒字会社比率

 

 

黒字・赤字会社別損益

 

 

 

 

 

 

 

(単位:億円)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減

 

黒字会社

赤字会社

合計

黒字会社

赤字会社

合計

黒字会社

赤字会社

合計

事業会社損益

(海外現地法人含む)

7,716

△779

6,937

7,715

△314

7,401

△1

464

463

 

 黒字会社比率

 

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減

 

 

黒字会社

赤字会社

合計

黒字会社

赤字会社

合計

黒字会社

赤字会社

合計

連結子会社

会社数

177

11

188

177

13

190

0

2

2

比率(%)

94.1

5.9

100.0

93.2

6.8

100.0

△1.0

1.0

 

持分法適用会社

会社数

63

20

83

65

8

73

2

△12

△10

比率(%)

75.9

24.1

100.0

89.0

11.0

100.0

13.1

△13.1

 

合計

会社数

240

31

271

242

21

263

2

△10

△8

比率(%)

88.6

11.4

100.0

92.0

8.0

100.0

3.5

△3.5

 

(注)会社数には、親会社の一部と考えられる投資会社(199社)及び当社もしくは当社の海外現地法人が直接投資している会社を除くその他の会社(504社)を含めておりません。

 

当連結会計年度の事業会社損益は、前連結会計年度比463億円増加の7,401億円の利益となりました。

黒字会社損益は、前連結会計年度のロシア向け航空機に係る損失の反動等があった東京センチュリー(株)の

増益及び日商増加等による(株)ファミリーマートの増益はあったものの、パルプ市況下落及び販売低調等によるITOCHU FIBRE LIMITEDの悪化に加え、前連結会計年度の証券事業の再評価に係る利益の反動によりCITIC Limitedの取込損益が減少したOrchid Alliance Holdings Limitedの減益等により、前連結会計年度比

ほぼ横ばいの7,715億円の利益となりました。また、赤字会社損益は、物流コストの改善及び前連結会計年度の減損損失の反動があったDole International Holdings(株)の好転、前連結会計年度の米国事業での損失の

反動等によるHYLIFE GROUP HOLDINGS LTD.の改善等により、前連結会計年度比464億円改善の314億円の損失と

なりました。

黒字会社比率(連結対象会社数に占める黒字会社数の比率)については、前連結会計年度の88.6%から

3.5ポイント上昇の92.0%となりました。

 

 

 ② 主な関係会社損益

 

 

 

(単位:億円)

 

 

取込

比率(%)

取込損益(注)1

 

 

前連結

会計年度

当連結

会計年度

繊維

㈱ジョイックスコーポレーション

100.0

11

8

㈱レリアン

100.0

7

9

㈱デサント

44.5

41

53

㈱ドーム

69.7

5

4

㈱エドウイン

100.0

6

6

㈱三景

100.0

11

12

ITOCHU Textile Prominent (ASIA) Ltd.

100.0

22

9

伊藤忠繊維貿易(中国)有限公司

100.0

21

21

機械

東京センチュリー㈱

30.0

41

234

I-ENVIRONMENT INVESTMENTS LIMITED

100.0

36

23

伊藤忠プランテック㈱

100.0

19

17

㈱アイメックス

100.0

33

51

㈱ジャムコ

33.4

7

6

日本エアロスペース㈱

100.0

17

23

㈱ヤナセ

82.8

127

128

Auto Investment Inc.

100.0

30

27

シトラスインベストメント合同会社                  (注)2

100.0

36

98

伊藤忠マシンテクノス㈱

100.0

14

17

金属

ITOCHU Minerals & Energy of Australia Pty Ltd

100.0

1,763

1,669

JAPÃO BRASIL MINÉRIO DE FERRO PARTICIPAÇÕES LTDA.

77.3

89

84

伊藤忠丸紅鉄鋼㈱

50.0

478

401

伊藤忠メタルズ㈱

100.0

30

26

エネルギー・化学品

ITOCHU Oil Exploration (Azerbaijan) Inc.

100.0

71

72

ITOCHU PETROLEUM CO., (SINGAPORE) PTE. LTD.

100.0

17

4

伊藤忠エネクス㈱

54.0

75

74

日本南サハ石油㈱

25.0

27

7

伊藤忠ケミカルフロンティア㈱

100.0

76

82

伊藤忠プラスチックス㈱

100.0

53

55

タキロンシーアイ㈱

55.7

14

25

食料

Dole International Holdings㈱

100.0

△364

15

㈱日本アクセス

100.0

175

210

不二製油グループ本社㈱

43.9

31

7

ウェルネオシュガー㈱

37.8

0

21

伊藤忠飼料㈱

100.0

9

16

プリマハム㈱

47.9

14

31

伊藤忠食品㈱

52.2

33

34

HYLIFE GROUP HOLDINGS LTD.

49.9

△131

△39

 

 

 

 

 

(単位:億円)

 

 

取込

比率(%)

取込損益(注)1

 

 

前連結

会計年度

当連結

会計年度

住生活

European Tyre Enterprise Limited

100.0

44

55

ITOCHU FIBRE LIMITED

100.0

217

△31

伊藤忠紙パルプ㈱

100.0

21

23

伊藤忠セラテック㈱

100.0

9

8

伊藤忠ロジスティクス㈱

100.0

63

61

伊藤忠建材㈱

100.0

53

40

大建工業㈱                                        (注)3

100.0

43

52

伊藤忠都市開発㈱

100.0

38

46

伊藤忠アーバンコミュニティ㈱

100.0

15

16

情報・金融

伊藤忠テクノソリューションズ㈱                    (注)4

100.0

209

376

㈱ベルシステム24ホールディングス

40.7

28

20

伊藤忠・フジ・パートナーズ㈱

63.0

22

26

エイツーヘルスケア㈱

100.0

20

20

ほけんの窓口グループ㈱

92.0

28

46

ポケットカード㈱                                  (注)5

78.2

42

45

㈱オリエントコーポレーション                      (注)6

16.5

30

△132

㈱外為どっとコム

40.2

5

12

First Response Finance Ltd.

100.0

31

27

ITOCHU FINANCE (ASIA) LTD.

100.0

38

31

GCT MANAGEMENT (THAILAND) LTD.

100.0

41

47

第8

㈱ファミリーマート                                (注)7

94.7

237

418

その他及び

修正消去

Orchid Alliance Holdings Limited                  (注)8

100.0

1,172

983

C.P. Pokphand Co. Ltd.                            (注)9

23.8

△43

△29

Chia Tai Enterprises International Limited        (注)10

23.8

△24

1

 

 

 

 

 

(参考)

海外現地法人

(注)11

伊藤忠インターナショナル会社

100.0

510

321

伊藤忠欧州会社

100.0

123

42

伊藤忠(中国)集団有限公司

100.0

71

64

伊藤忠香港会社

100.0

69

55

伊藤忠シンガポール会社

100.0

70

61

(注)1 取込損益には、IFRS修正後の数値を記載しておりますので、各社が公表している数値とは異なる場合があり

ます。

2 傘下の日立建機㈱からの取込損益を含んでおりますが、当社の融資に対するパートナーからの受取利息

等は含んでおりません。

3 当第3四半期連結会計期間より、大建工業㈱は当社の子会社となりました。

4 伊藤忠テクノソリューションズ㈱の取込比率は99.95%ですが、小数点第一位未満を四捨五入して表示して

おります。

5 ポケットカード㈱の取込損益には、㈱ファミリーマート経由の取込損益を含んでおります。

6 ㈱オリエントコーポレーションの当連結会計年度の取込損益には、当社が保有する当該会社に対する持分法

投資に係る減損損失等を含んでおります。

7 ㈱ファミリーマートの取込損益には、ポケットカード㈱の取込損益を含んでおります。

8 Orchid Alliance Holdings Limitedの取込損益には、付随する税効果等を含めて表示しております。

9 C.P. Pokphand Co. Ltd.の前連結会計年度の取込損益には、当社が保有する当該会社に対する持分法投資に

係る減損損失等を含んでおります。

10 Chia Tai Enterprises International Limitedの前連結会計年度の取込損益には、当社が保有する当該会社に対する持分法投資に係る減損損失等を含んでおります。

11 各セグメントに含まれている海外現地法人の損益を合算して表示しております。

 

(6)仕入、成約及び販売の状況

① 仕入の状況

 仕入と販売との差異は僅少なため、仕入高の記載は省略しております。

 

② 成約の状況

 成約と販売との差異は僅少なため、成約高の記載は省略しております。

 

③ 販売の状況

 「(4)セグメント別業績」及び「第5 経理の状況 連結財務諸表注記 4 セグメント情報」をご参照

ください。

(7)流動性と資金の源泉

① 資金調達の方針

 当社の資金調達は、金融情勢の変化に対応した機動性の確保と資金コストの低減を目指すとともに、調達の

安定性を高めるために長期性の資金調達に努める等、調達構成のバランスを取りながら、調達先の分散や調達

方法・手段の多様化を図っております。また、国内子会社の資金調達については原則として親会社及び国内

グループ金融統括会社からのグループファイナンスに一元化するとともに、海外子会社の資金調達についても

シンガポール、英国及び米国の海外グループ金融統括会社を拠点にグループファイナンスを行っております。

資金調達を集中することにより、連結ベースでの資金の効率化や資金調達構造の改善に努めております。この

結果、当連結会計年度末時点では、連結有利子負債のうち約75%が親会社、国内及び海外グループ金融統括会社

による調達となっております。

 資金調達手段としては、銀行借入等の間接金融と社債等の直接金融を機動的に活用しております。間接金融については、様々な金融機関と幅広く良好な関係を維持し、必要な資金を安定的に確保しております。直接金融については、国内では、社債発行登録制度に基づき2023年8月から2025年8月までの2年間で3,000億円の新規

社債発行枠の登録を行っております。また、資金効率の向上並びに資金コストの低減を目的に、コマーシャル・

ペーパーによる資金調達も実施しております。海外では、当社とグループ金融統括会社で合わせて

5,000百万米ドルのユーロ・ミディアムタームノート(Euro MTN)プログラムを保有しております。また、

2021年3月にSDGs債フレームワーク(サステナビリティボンド・フレームワーク)を策定し、これに基づき

SDGs債を発行しております。

 当連結会計年度末時点での当社の長期及び短期の信用格付けは次のとおりです。今後も一層の格付け向上を

目指し収益力の強化、財務体質の改善、及びリスクマネジメントの徹底に努めます。

 

長期

短期

日本格付研究所(JCR)

AA+/安定的

J-1+

格付投資情報センター(R&I)

AA/安定的

a-1+

ムーディーズ・インベスターズ・サービス(Moody's)

A2/安定的

P-1

S&Pグローバル・レーティング(S&P)

A/安定的

A-1

 

② 有利子負債

  当連結会計年度末の有利子負債残高は、前連結会計年度末比3,510億円増加の3兆3,576億円となりました。

 現預金控除後のネット有利子負債は、前連結会計年度末比3,504億円増加の2兆7,416億円となりました。

 NET DER(ネット有利子負債対株主資本倍率)は、前連結会計年度末の0.50倍から若干増加の0.51倍と

 なりました。また、有利子負債合計に占める長期有利子負債比率は、前連結会計年度末比横ばいの78%と

 なりました。

  前連結会計年度末及び当連結会計年度末の有利子負債の内訳は、次のとおりです。

 

 

 

(単位:億円)

 

前連結会計年度末

当連結会計年度末

増減

社債及び借入金(短期):

 

 

 

銀行借入金等

6,017

6,780

763

コマーシャル・ペーパー

280

350

70

社債

301

150

△151

短期計

6,597

7,280

683

社債及び借入金(長期):

 

 

 

銀行借入金等

22,257

22,355

98

社債

1,213

3,942

2,729

長期計

23,469

26,296

2,827

有利子負債計

30,066

33,576

3,510

現金及び現金同等物、定期預金

6,155

6,160

5

ネット有利子負債

23,912

27,416

3,504

 

③ 財政状態

 当連結会計年度末の「総資産」は、持分法で会計処理されている投資の増加及び取引増加による営業債権の

増加並びに大建工業(株)の子会社化による増加に加え、円安に伴う為替影響等により、前連結会計年度末比

1兆3,743億円(10.5%)増加の14兆4,897億円となりました。

 「株主資本」は、伊藤忠テクノソリューションズ(株)の追加取得による資本剰余金の減少に加え、配当金の

支払及び自己株式の取得はあったものの、当社株主に帰属する当期純利益の積上げ及び円安に伴う為替影響等

により、前連結会計年度末比6,037億円(12.5%)増加の5兆4,270億円となりました。また、株主資本比率は

前連結会計年度末比0.7ポイント上昇の37.5%となりました。

 「株主資本」に「非支配持分」を加えた「資本」は、前連結会計年度末比5,247億円(9.6%)増加の

5兆9,921億円となりました。

 

④ 流動性準備

  当社グループは、調達環境の悪化等、不測の事態にも対応しうる流動性準備の確保に努めております。

  当連結会計年度末では、短期有利子負債と偶発負債の合計額1兆1,918億円に対し、現金及び現金同等物、

定期預金(合計6,160億円)、コミットメントライン契約の未使用枠(円貨6,700億円、外貨884百万米ドル)を

合計した流動性準備の合計額は1兆4,199億円となっており、十分な流動性準備を確保していると考えて

おります。また、これに加えて、売却可能有価証券等短期間での現金化が可能な資産等を9,796億円保有して

おります。

 

(流動性準備額)

(単位:億円)

 

当連結会計年度末

現金及び現金同等物、定期預金

6,160

コミットメントライン

8,038

合計

14,199

 

(短期有利子負債と偶発負債)

(単位:億円)

 

当連結会計年度末

社債及び借入金(短期)

7,280

社債及び借入金(長期)(注)

3,626

偶発負債(関連会社及びジョイント・ベンチャー、一般取引先に対する金融保証実保証額)

1,012

合計

11,918

   (注)1年以内に期限の到来する社債及び借入金のうち、コミットメントラインに係るものを、連結財政状態

計算書上で「社債及び借入金(長期)」として表示しております。

 

⑤ 資金の源泉

当社グループの主な資金需要には、営業活動上の運転資金に加え、投資及び有形固定資産の取得等が

あります。当社グループの資金の源泉に対する基本的な考え方は、新規投資の資金を、営業取引収入、資産の

売却・回収、及び財務健全性を維持しながら借入金や社債等により調達することで賄うというものです。

なお、当社グループは、経営方針「The Brand-new Deal ~利は川下にあり~」において、成長投資・株主

還元・有利子負債コントロールの3つのバランスに基づいた財務基盤の堅持を財務方針としております。

 

当連結会計年度の「営業活動によるキャッシュ・フロー」は、第8、住生活及び食料での堅調な営業取引収入の推移に加え、機械及び金属での持分法投資からの配当金の受取等により、9,781億円のネット入金と

なりました。

なお、前連結会計年度は、9,381億円のネット入金でした。

当連結会計年度の「投資活動によるキャッシュ・フロー」は、住生活での大建工業(株)の子会社化による支払及び金属での持分法投資の取得に加え、第8、食料及びエネルギー・化学品での固定資産の取得等により、2,060億円のネット支払となりました。

なお、前連結会計年度は、4,538億円のネット支払でした。

当連結会計年度の「財務活動によるキャッシュ・フロー」は、社債及び借入金による調達はあったものの、

伊藤忠テクノソリューションズ(株)の追加取得やリース負債の返済に加え、配当金の支払及び自己株式の取得等により、8,012億円のネット支払となりました。

なお、前連結会計年度は、5,001億円のネット支払でした。

 

「現金及び現金同等物」は、前連結会計年度末比56億円(0.9%)減少の6,004億円となりました。

 

前連結会計年度及び当連結会計年度のキャッシュ・フローの要約は次のとおりです。

 

 

(単位:億円)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

営業活動によるキャッシュ・フロー

9,381

9,781

投資活動によるキャッシュ・フロー

△4,538

△2,060

財務活動によるキャッシュ・フロー

△5,001

△8,012

現金及び現金同等物の増減額

△158

△291

現金及び現金同等物の期首残高

6,117

6,060

為替相場の変動による現金及び現金同等物への影響額

101

235

現金及び現金同等物の期末残高

6,060

6,004

 

(8)重要性のある会計方針

 当社の連結財務諸表は、国際会計基準(IFRS)に基づき作成されております。連結財務諸表の作成にあたっては、各連結会計年度末日の資産、負債、偶発資産、偶発負債の報告金額及び報告期間の収益、費用の報告金額に影響を与える見積り、仮定及び判断を使用することが必要となります。当社の経営陣は、連結財務諸表作成の

基礎となる見積り、仮定及び判断を、過去の実績や状況に応じ合理的と判断される入手可能な情報により継続的に検証し、意思決定を行っております。但し、これらの見積り、仮定及び判断は不確実性を伴うため、実際の

結果と異なる場合があります。この差異は、当社の連結財務諸表及び当社のすべての事業セグメントの業績に

影響を及ぼす可能性があります。

 なお、ロシア・ウクライナ情勢による影響について、当社及び子会社ではロシアでの資源関連投資等を行っておりますが、当連結会計年度末の総資産に占める割合は1%未満です。引続き、当社の保有するロシア・

ウクライナ関連資産については直近の情勢を踏まえた適切な会計処理を行っていることから、財政状態及び

経営成績への重要な影響は見込まれておりません。

 

 当社の経営陣が、将来にわたり、重要な修正を生じさせるリスクを有すると考えている見積り及び仮定は、

主として次のとおりです。なお、下記に掲げる各項目に関連する資産及び負債の当連結会計年度末の残高に

ついては、「第5 経理の状況 連結財務諸表注記」の各項目の注記内容をご参照ください。

 

・非上場の公正価値で測定される資本性金融資産の公正価値測定

 公正価値で測定される資本性金融資産のうち、非上場の銘柄については、投資先と同じ業界に属する上場

銘柄の公表情報を参照したマルチプル法、あるいは投資先からの受取配当に係る将来キャッシュ・フロー見積額を現在価値に割引くことにより公正価値を算定する配当キャッシュ・フロー還元法等により公正価値を測定しております。マルチプル法を適用する場合のマルチプル倍率、あるいは配当キャッシュ・フロー還元法を

適用する場合の将来受取キャッシュ・フローの見積り及び割引率は、将来の不確実な経済条件の変動によって影響を受ける可能性があり、将来にわたり、非上場の公正価値で測定される資本性金融資産の公正価値の

測定額に重要な修正を生じさせるリスクを有しております。

 

・償却原価で測定される金融資産及び負債性のFVTOCI金融資産に係る予想信用損失の見積り

 償却原価で測定される金融資産及び負債性のFVTOCI金融資産に係る予想信用損失は、当該資産に係る契約上のキャッシュ・フローと回収可能なキャッシュ・フロー見込額の差額をもとに見積っております。当該資産に係る回収可能なキャッシュ・フロー見込額は、将来の不確実な経済条件の変動によって影響を受ける可能性があり、将来にわたり、当該資産に係る減損損失額に重要な修正を生じさせるリスクを有しております。

 

・有形固定資産、投資不動産、のれん及び無形資産、関連会社及びジョイント・ベンチャーへの投資に係る

 減損テストにおいて測定される回収可能価額

 有形固定資産、投資不動産、のれん及び無形資産、関連会社及びジョイント・ベンチャーへの投資に係る

減損テストにおいて、資金生成単位を判別したうえで、当該資金生成単位の売却費用控除後の公正価値と使用価値のいずれか高いほうを回収可能価額として測定しております。回収可能価額は、原則として、独立鑑定人の支援を受けて算定した使用価値に基づいております。使用価値は、取締役会が承認した事業計画を基礎

とした将来キャッシュ・フローの見積額を割引くことにより計算しております。事業計画は原則として5年を限度としており、過去の実績を反映させ、外部情報とも整合性を取ったうえで策定しております。事業計画の対象期間を超える将来キャッシュ・フローの成長率は、資金生成単位が属する市場もしくは国の平均成長率を勘案して決定しております。割引率は、各資金生成単位の加重平均資本コスト等を基礎に算定しております。当該売却費用控除後の公正価値算定上の仮定、あるいは使用価値算定の基礎となる資金生成単位の使用期間中及び使用後の処分により見込まれる将来キャッシュ・フロー、割引率等の仮定は、将来の不確実な経済条件の変動によって影響を受ける可能性があり、将来にわたり、有形固定資産、投資不動産、のれん及び無形資産、関連会社及びジョイント・ベンチャーへの投資に係る減損損失額に重要な修正を生じさせるリスクを有して

おります。

 

 

・確定給付型退職後給付制度の確定給付制度債務及び制度資産の公正価値測定

 確定給付型退職後給付制度については、確定給付制度債務と制度資産の公正価値の純額を負債または資産として認識しております。確定給付制度債務は、年金数理計算により算定しており、年金数理計算の前提条件には、割引率、退職率、死亡率、昇給率等の見積りが含まれております。これら前提条件は、金利変動の市場

動向等、入手可能なあらゆる情報を総合的に判断して決定しております。これら年金数理計算の前提条件には将来の不確実な経済環境あるいは社会情勢の変動等によって影響を受ける可能性があり、将来にわたり、確定給付制度債務及び制度資産の公正価値の測定額に重要な修正を生じさせるリスクを有しております。

 

・引当金の測定

 引当金は、将来において債務の決済に要すると見込まれる支出の期末日での最善の見積りに基づいて測定しております。将来において債務の決済に要すると見込まれる支出額は、将来の起こりうる結果を総合的に勘案して算定しております。これら引当金の測定において使用される仮定は、将来の不確実な経済条件の変動に

よって影響を受ける可能性があり、将来にわたり、引当金の測定額に重要な修正を生じさせるリスクを有しております。

 

・法人所得税の見積り

 法人所得税の算定に際しては、税法規定の解釈や過去の税務調査の経緯等、様々な要因について見積り及び判断が必要となります。そのため、各期末において見積った法人所得税と、実際に納付する法人所得税の金額とが異なる可能性があり、その場合、翌年度以降の法人所得税の計上額に重要な影響を与える可能性があります。また、繰延税金資産については、将来減算一時差異等を利用できる課税所得が生じる可能性が高い範囲内で認識しておりますが、当該回収可能性の判断は、当社及び子会社の事業計画に基づいて決定した各将来事業年度の課税所得の見積りを前提としております。当該将来事業年度の課税所得の見積りは、将来の不確実な

経済条件の変動によって影響を受ける可能性があり、将来にわたり、繰延税金資産の計上額に重要な修正を

生じさせるリスクを有しております。

 

 当社の経営陣が、会計方針適用にあたっての判断が、資産、負債、収益及び費用の計上金額に重要な影響を

与えると考えている項目は、主として次のとおりです。なお、下記に掲げる各項目に関連する資産及び負債の

当連結会計年度末の残高については、「第5 経理の状況 連結財務諸表注記」の各項目の注記内容をご参照

ください。

 

・子会社、関連会社及びジョイント・ベンチャーの範囲

 

・デリバティブを除く金融資産の、償却原価で測定される金融資産、FVTOCI金融資産及びFVTPL金融資産

 への分類

 

・貸手リース契約に係る重要なリスクと経済価値の移転に関する判断

 

・償却原価で測定される金融資産及び負債性のFVTOCI金融資産に係る信用リスクが著しく増大しているかの判断

 

・有形固定資産、投資不動産、のれん及び無形資産、関連会社及びジョイント・ベンチャーへの投資に係る

 減損テスト実施にあたっての資金生成単位の判別、減損(あるいは減損戻入)の兆候の有無の評価

 

・引当金の認識に係る過去の事象から発生した現在の義務の有無及び当該義務を決済するための資源流出の

     可能性に関する評価

 

5【経営上の重要な契約等】

 特記すべき事項はありません。

 

6【研究開発活動】

 特記すべき事項はありません。