文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
「挑戦する個人・企業を応援し、すべてのステークホルダーと感動体験を共有し、より良い世界を創造する」ことを企業理念に掲げ、‘Stride with Challengers(挑戦者達と共に闊歩する)’というコーポレートスローガンを合言葉に、子会社9社及び関連会社1社から構成される当社グループでは不動産、ホテル、投資の3事業を主軸として、企業活動を展開しております。
不動産事業は「豊かな居住空間の実現」を、ホテル事業は「地方創生・地域活性化」を、投資事業は「アジアの投資家・スタートアップとの連携」を重要テーマに掲げ、また親会社である当社が日本とアジアをつなぐゲートウェイとしての役割を担いながら、これら3つの事業領域のシナジーをより高めてまいります。さらに当社グループでは、事業を通じてスポーツ、アート、日本の伝統文化の発展を支援することで、経済だけでなく社会の活性化にも寄与していく所存であります。
他方で、2030年に向けた「持続可能な開発目標」や、サステナブルな循環型社会への変容に対して、企業として責任ある役割を果たすことが重要になっている現状を踏まえ、不確実で変化が早い時代において、柔軟かつ能動的に適応できる人材の育成や外部人材との連携を強化することで、既存事業のさらなる価値向上と新規事業の創出に努め、今後も上記企業理念を体現できるよう研鑽してまいります。
当社は、これまで投資会社としての立ち位置で投資先企業のバリューアップに取り組んでまいりましたが、不動産、ホテル、投資事業の成長を受け、これら3事業を軸とした事業会社へと、当社グループの再定義を行なう判断をいたしました。これにより、当社では経営の選択と集中を進めつつ、新たな投資先に関しては、既存事業とのシナジーを一つの判断軸としてまいります。
こうした全社戦略を受けて、主軸となる各事業の事業戦略は以下の通りとなります。
不動産事業における主力事業であるレジデンス事業では、これまで「豊かな居住空間の実現」をテーマに、居住用賃貸物件の管理戸数を着実に積み上げ、安定した収益基盤の強化に努めてまいりましたが、サービスラインナップの一層の拡充を図るために家賃保証事業を拡大させていくとともに、不動産賃貸管理のノウハウを最大限活かすために自社保有物件の取得を進めてまいります。一方で、不動産売買事業については、当社グループの強みであるレジデンス事業へ経営資源を集中させるために、今後は注力しない方針であります。
ホテル事業は、「地方創生・地域活性化」の拠点となるような空間づくりを、成田ゲートウェイホテル、倉敷ロイヤルアートホテルの両ホテルにおいて進めておりますが、将来的なグループ化を見据え、ここに第3の拠点として、石川県加賀市にあるホテルアローレへの業務支援をスタートさせました。成田ゲートウェイホテルにおいては自社運営への切り替えによる運営コストの見直しと収益性改善、倉敷ロイヤルアートホテルにおいては倉敷エリアの集客力の向上とアート事業の収益化、ホテルアローレにおいては業務支援とグループ化へ向けたプロセスが、当面の注力すべき課題となっております。
投資事業は、数年間に亘る南・東南アジアへの投資などを通じて、ファンド運営のノウハウの蓄積、海外投資家とのネットワークの構築を積極的に進めてまいりました。現在、南・東南アジアのスタートアップをターゲットとしたファンド設立を準備しておりますが、今後は当事業の収益源を投資リターンからファンド運営による手数料収入へと徐々に転換し、安定的な収益確保を目指します。さらに、国内の不動産、ホテルなどへのインバウンド投資の需要も旺盛ですので、当社グループがそのファシリテートを担い、主力事業である不動産、ホテルとのシナジーを得、ひいては日本の伝統文化の活性化に貢献してまいります。
わが国経済は緩やかに持ち直しつつある一方で、米中関係の悪化などに起因するグローバルサプライチェーンの分断化、ならびにウクライナ情勢に端を発する世界規模での供給面での制約が顕在化し、欧米を中心とした物価上昇と金融引締めが続くなか、海外景気の下振れがわが国の景気を下押しするリスクや、為替相場をはじめとした金融資本市場の変動等による影響に、引き続き十分注意していく必要があるものと想定しております。
こうしたなか、当社グループの不動産事業、とりわけ主力のレジデンス事業については、賃貸管理をメインとしていることから、昨今みられる首都圏におけるマンション価格の高騰といったような急速な環境変化はみられず、市況は引き続き安定的に推移していくものと想定しております。また、当社グループは一都三県を営業基盤としているため、入居者からの需要も比較的高く、家賃や稼働率に関するリスクも、今のところ顕在化しておりません。
ホテル事業については、記録的な円安の進行やコロナ禍の終焉による反動により、インバウンド観光客による訪日需要はコロナ以前にも増して高まりを見せておりますが、インバウンド観光客の消費行動の変化やエリア毎のインバウンド需要の偏在など、ホテルの対処すべき課題はますます複雑化、高度化しております。また、慢性的な人手不足が深刻さを増す中で、ホテルのオペレーションの在り方、従業員のマルチタスク化など、サービス提供者側にもドラスティックな変革が求められているものと認識しております。
また、投資事業については、未だ不透明感が拭い切れてはいないものの、南・東南アジアのベンチャーキャピタル市場は徐々に正常な状態へと戻っているものと考えております。他方で、円安や他国と比較した景気動向等から、日本国内への海外企業・投資家による投資気運は、今後益々高まっていくものと推察しております。
① グループ経営管理の強化
機動的な事業展開を可能にするために、9社の連結子会社より構成されたグループ会社の経営状況の適時な把握に努めるほか、グループの経営管理を強化すべく、事業執行権限の見直しと業務報告体制の整備を実施してまいります。また、グループ間の資金管理を一元化等することで、より効率的な事業基盤を確立してまいります。
② 内部経営資源の有効活用
迅速かつ効果的な経営判断をする為に、グループ情報の共有化や幹部間による情報交換等、グループ間のコミュニケーション体制を確保してまいります。また、社員研修等によるグループ共通人材の育成に注力することにより、グループ間の連携強化とグループシナジーを追求してまいります。
③ 内部統制・コンプライアンス体制の構築
会社法・金融商品取引法を踏まえた内部統制の整備については、グループ各社において、業務プロセスの文書化、可視化によるルール整備を進めております。また、コンプライアンスにつきましても、当社グループの企業行動憲章や社員行動規範等をグループ内で周知徹底するとともに、社員研修等による教育を実施しております。
④ 外部経営資源の積極的な活用
当社グループの発展のために、当社の企業理念等に相応したM&Aやエクイティ投資のほか、幅広く内外の企業との提携等を積極的に実施してまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は次のとおりであり、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社は、2010年に商号を株式会社ストライダーズに変更して以降、投資会社から事業会社へと変遷していく過程で、持続可能な事業を開発し、投資し、運営していくことで、多様性と包摂性に富み、人と社会にとって持続可能でより良い世界を創造することを目指してきました。昨今、投資家が企業に求めるサステナビリティの充実度が年々高まっていることを踏まえ、グループの目指すべき方向をわかりやすく社内外に示すため、以下のとおり、2023年3月にサステナビリティ基本方針を定めました。
ストライダーズ サステナビリティ基本方針
「持続可能でより良い世界を創造するための挑戦を続け、社会課題の解決と経済価値の向上に貢献する」
環境
・既存事業の環境負荷低減に努めるとともに、事業を通じて環境問題の解決に取り組む
・環境視点を重視した事業投資、グリーンファイナンスを推進する
社会
・スポーツや芸術・文化に関わる人々を応援し、豊かな社会づくりに貢献する
・人権や多様性に配慮しながら、ステークホルダーとの連携を深める
・働きがいのある職場づくりを進めることで、社員のウェルビーイングを高め、挑戦の土台を強固にする
ガバナンス
・適切な情報開示を進めるとともに、コーポレート・ガバナンスの強化に向けて取り組みを進める
2023年3月制定
サステナビリティについて、構成要素ごとの具体的な状況は以下のとおりです。
サステナビリティ関連のリスク及び機会を識別・評価するため、まずはIR・サステナビリティチームが情報収集や分析を行い、定例ミーティングで共有するとともに、日常的な部署間の連携を図っています。その中で特に重要なものについてはグループ経営会議において、適切に情報共有を図るとともに、グループ会社については、各社ごとにサステナビリティ推進担当を設置し、IR・サステナビリティチームと連携しながら、グループ全体でのサステナビリティの推進に向けて取り組んでいます。
今後は、こうしたサステナビリティに関する社内の動きを一定期間ごとに総括し、取締役会に報告・議論し、その過程等について見直し・改善を行うなど、サステナビリティに関するガバナンスを強化してまいります。
当社はこれまで各事業セグメントで具体的な案件ごとに、サステナビリティの視点を重視しながら事業活動を展開してまいりました。その一例として、不動産事業ではペーパレス化や社内環境の整備、ホテル事業では環境に配慮したホテル運営や新型コロナウイルス感染症の無症状者・軽症者向け宿泊施設としての貸し出し、投資事業ではインパクト投資の実施、投資先選定時のサステナビリティ基準のチェックや女性起業家の支援などがあります。
2024年3月期の新たな取り組みといたしましては、代表取締役、社外取締役、主要グループ各社から選出した8名のサステナビリティ推進担当、並びにIR・サステナビリティチームのメンバーを構成員として、グループ横断的なサステナビリティ委員会を設置し、サステナビリティミーティングを計4回開催いたしました。
本ミーティングでは、サステナビリティに関するグループ各社の活動実績や推進状況を取りまとめ、各社へ共有することからスタートし、次いで「サステナビリティに関する重要課題の特定」「各事業の課題の特定」に向けて議論を深めてまいりました。これらのプロセスを通じて、ストライダーズグループにとって、人的資本が最重要テーマであることを再認識した上で、周辺課題にフォーカスしつつ、継続して全社・各事業の課題の洗い出しと特定、ターゲットとなる指標の設定を進めてまいります。
コーポレート・ガバナンスの視点からは、ホテル事業を営むグループ会社における取締役会の設置、またホールディングス企業である株式会社ストライダーズの監査等委員会設置会社への移行に係る議案の株主総会への付議など、グループ全体の機関設計の見直しを推し進めております。さらに、機関投資家に向けて決算説明会を初めてオンライン開催するなど、外部へのディスクロージャーも強化しております。
なお、人材の多様性の確保を含む人材の育成及び社内環境整備に関する現況といたしましては、女性、外国人、中途採用者など、多様な人材の採用、起用を積極的かつ継続的に行いつつ、それぞれの特性や能力を最大限活かせる職場環境の整備やマネジメント層の教育などを進めております。
2024年3月末日において、当社連結従業員総数128名のうち女性は40名でその割合は31.3%、当社単体従業員総数8名のうち女性は2名でその割合は25.0%ですが、今後この比率の拡大を目指します。
また、その他の取り組みとしては、資格取得などの費用を補助する自己啓発経費補助規程を設け、従業員の挑戦を支援するほか、コンプライアンス研修や健康をテーマにしたセミナーなども実施し、働きやすい社内環境づくりに取り組んでいます。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループの不動産事業については、当社連結子会社である株式会社トラストアドバイザーズが不動産事業者として、「宅地建物取引業法」及び「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」等に基づく免許を受け、事業展開しており、当該法令の法的規制等を受けております。当社グループではこれらの法的規制等を遵守するよう努めておりますが、法令違反が発生した場合や今後、これらの法令の改廃や新たな法的規制等が設けられる場合には事業活動に制約を受ける可能性があり、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループの不動産事業については、新規参入等により競合他社が他業種と比べ多く存在し、IT技術を不動産分野に応用した新しいサービスが次々に開発されるなど、技術革新も進んでいます。当社連結子会社である株式会社トラストアドバイザーズにおいても、こうした競合環境の中、新しい取り組みを進め、顧客満足を高めるサービスを展開しておりますが、競争激化により、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループの不動産事業では、当社連結子会社である株式会社トラストアドバイザーズが不動産オーナーから借上げた賃貸不動産を入居者へ転貸し、入居者から得られる賃料収入を収入源としております。賃貸不動産に対するニーズは景気の変動に影響を受けやすく、今後、経済情勢の悪化や都心部からの人口流出などにより、入居率が低下した場合、賃料収入が減少し、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループの不動産事業では、当社連結子会社である株式会社トラストアドバイザーズが、賃貸不動産入居者との賃貸借契約において、新規入居時に礼金や敷引金を、契約更新時に更新料を設定し、礼金・敷引金・更新料を受領しています。これは不動産業界の一般的な慣行であり、最高裁判所の判決では一定の条件のもとで更新料の有効性等が認められておりますが、仮に上記金銭を返還しなければならなくなった場合、もしくは将来、これら金銭を受領することができなくなった場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループの不動産事業において、不動産に関連する税制改正や金融機関の融資姿勢の変化など、不動産投資にマイナスの影響が出る事象が発生し、不動産取引が低迷した場合、不動産売買事業における販売額・件数等が減少し、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
近い将来、その発生の切迫性が指摘される大規模地震や、気候変動の影響により猛威を振るう水災害等、我が国における自然災害の発生リスクは年々高まりを見せております。当社グループのホテル事業において、仮に大規模地震や台風等の自然災害が発生した場合、当社グループの所有する建物、施設等に損害を及ぼし、一時的な営業停止による売上減や修復のための費用負担が発生し、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
世界的なサプライチェーンの分断や急激な円安、我が国の物価上昇と歩調を合わせた賃上げ、さらには過重労働の解消に向けた政策的な取り組みが、あらゆる資材・サービス価格、人件費などを急速に押し上げ、ホテル業界に限らず、事業運営を圧迫する状況が続いております。
こうした状況下で、適正なサービス価格への転嫁を実現できない場合には、ホテル事業の採算が悪化し、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
新型コロナウイルス感染症の影響により長期の停滞を余儀なくされた我が国のホテル業界においてはその間、他業界への人材の流出が起こり、正常化後も依然として、人材の空洞化が顕著な状況にあります。こうした適正な人員確保が難しい状況は、インバウンド需要の急速な高まりや旺盛な内需の取り込みを阻害する要因となり、大幅な収益機会のロスにつながる可能性が懸念されます。
世界経済は新型コロナウイルス感染症という未曽有の危機の克服に際し、科学技術は飛躍的進歩を遂げた一方で、気候変動による生態系の変化は、新型コロナウイルス感染症に続く第2、第3のパンデミックを引き起こす危険を常に孕んでおります。こうした新型コロナウイルス感染症に代わる、新たなパンデミックが世界的に流行した場合、再び遠距離移動や団体行動の制限が起きることが十分に予想され、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があると考えられます。
当社グループのホテル事業では、レストラン、宴会場等において食事や飲料を提供しており、衛生管理に係るマニュアルの整備や従業員に対する教育指導の徹底等、衛生管理体制の強化に努めておりますが、万が一、食中毒や食品衛生上の問題が発生した場合、一定期間の営業停止等の処分を受ける可能性がある他、イメージの低下等により顧客離れが起こり、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループの投資事業においては次に掲げる特有のリスクが考えられ、これらの事象が発生した場合には、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
イ.経済情勢や競合他社の活動状況
ロ.予測しえない法律や規則の施行・制定、税制の変更
ハ.戦争、疾病、テロ、デモ等による社会的混乱
ニ.不利な政治的要因の発生
ホ.通貨価値や為替相場の変動
当社グループは、グループ全体の発展のために事業投資を行っており、さまざまな投資形態を採用し、国内外で上場・未上場問わず投資対象を選定しております。そのため、国内外の経済情勢等の影響を受け、当社グループの業績及び財務状態に影響を及ぼす可能性があります。また、投資先企業に対して派遣した当社役職員が損害賠償請求等をされた場合、当社グループに使用者責任及び当該賠償金額を負担する義務が発生し、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループの事業に対して、悪質なデマや誹謗中傷がSNSをはじめとする情報媒体等を介して行なわれた場合、当社グループ全体の健全な事業活動の運営に支障を来たし、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、個人情報保護法により定められた個人情報の漏洩防止に努めるべく、個人情報の管理体制を整備しております。しかしながら、情報化社会における昨今の個人情報を取り巻く環境は年々複雑さを増しており、予期せぬ事態により個人情報が漏洩した場合には、当社グループの社会的信用の低下や当該漏洩事件に対応するために発生する費用等により、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは役員に対し、長期的な企業価値向上に対するインセンティブとして新株予約権を付与しております。新株予約権の権利行使が行われた場合、当社株式が新たに発行され、当社株式価値が希薄化する可能性があります。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
当連結会計年度におけるわが国経済は緩やかに持ち直しつつある一方で、米中関係の悪化などに起因するグローバルサプライチェーンの分断化、ならびにウクライナ情勢に端を発する世界規模での供給面での制約が顕在化し、欧米を中心とした物価上昇と金融引締めが続くなか、海外景気の下振れがわが国の景気を下押しするリスクや、為替相場をはじめとした金融資本市場の変動等による影響に十分注意していく必要があります。
このような経済状況下、当社グループ(当社及び連結子会社)では、こうした足元のマクロ経済環境に注視しつつ、日本とアジアをつなぐゲートウェイとしての役割を担うという経営方針の下、国内外における投資機会の発掘および海外投資家とのアライアンスを強化する一方で、グループ中核事業の再定義やその成長戦略の立案と推進、引き続き経営の効率化などに取り組んでまいりました。その結果、当連結会計年度の業績は売上高7,680百万円(前年同期比4.2%増)、営業利益49百万円(前年同期比65.6%減)、経常利益101百万円(前年同期比56.2%減)、親会社株主に帰属する当期純利益82百万円(前年同期比30.2%減)となりました。
セグメントの業績は、次のとおりであります。
なお、当連結会計年度の期首より、報告セグメントの名称を「海外事業」より「投資事業」に変更しており、当連結会計年度の比較・分析は、変更後の区分に基づいております。
<不動産事業>
不動産事業につきましては、株式会社トラストアドバイザーズにおいてマンションオーナー向けのリーシング及び賃貸管理とマンション建物の受託管理を行うレジデンス事業、ならびにマンションオーナーの購入・売却ニーズに対応する不動産売買事業を、株式会社東京アパートメント保証において家賃保証事業を営んでおります。
レジデンス事業は、前年同期比で管理戸数やサブリース賃貸借契約の賃料水準に大きな変化はありませんでしたが、空室率が低下したことで稼働戸数、ひいては家賃収入が増加し、増収増益となったのに対し、不動産売買事業は、売上高、粗利ともにほぼ前年同期並みに推移いたしました。
また、主力のレジデンス事業に加え、当連結会計年度において家賃保証事業の事業規模が拡大し、不動産事業の収益性の向上に寄与いたしました。
その結果、当連結会計年度の不動産事業の売上高は、レジデンス事業の空室率の低下を主要因として、6,214百万円(前年同期比5.2%増)となり、営業利益は236百万円(前年同期比37.5%増)となりました。
<ホテル事業>
ホテル事業につきましては、現在、成田空港エリアで成田ゲートウェイホテル、倉敷美観地区エリアで倉敷ロイヤルアートホテルを運営しております。成田ゲートウェイホテルは、千葉県からの要請に基づき、2020年4月から新型コロナウイルス感染症の無症状者・軽症者の一時的な療養者施設として、およそ3年間に渡り運営を続けてまいりましたが、国内における新規感染者数の大幅な減少と新型コロナウイルス感染症の「5類」への移行を受けて、2023年5月末をもって施設提供を終了いたしました。ホテル営業を再開した2023年6月以降は、3年間に及ぶホテル営業の休業からの立ち上がり間もなく、段階的に稼働率を高めていく過程にあること、またコロナ前の主要顧客であった、中国からの団体客の戻りが依然として鈍いことから、療養者施設として運営していた前年同期と比して売上高は落ち込み、当連結会計年度においては前年同期比で減収減益となりました。
一方、倉敷ロイヤルアートホテルにおいては、先の新型コロナウイルス感染症の「5類」への移行と、欧米を中心としたインバウンド観光客の回帰を受けて、倉敷美観地区エリアに賑わいが戻るなか、ホテル稼働率が前年同期比で大きく改善するとともに、宴会需要も回復基調に向かったことで、増収増益となりました。
こうした両ホテルの業績を合算した結果、成田ゲートウェイホテルの営業再開後の業績が大きく影響し、セグメント全体では減収減益となり、当連結会計年度のホテル事業の売上高は1,034百万円(前年同期比6.5%減)、営業損失は11百万円(前年同期は営業利益177百万円)となりました。
<投資事業>
当社グループの投資事業につきましては、M&Aグローバル・パートナーズ株式会社において国内投資事業を、STRIDERS GLOBAL INVESTMENT PTE.LTD.において海外投資事業を営んでおります。
当連結会計年度におきましては、各国経済において不透明な投資環境が継続する中、新規の投資に対して慎重な姿勢を取りつつも、日本国内の事業承継やインバウンド投資の案件発掘を進めてまいりました。また国内を始め、南・東南アジア、欧州といった地域のスタートアップ投資、とりわけアグリテック、ヘルステックおよびエンターテイメントといった領域に注目してまいりました。
こうした中、2023年7月末にSTRIDERS GLOBAL INVESTMENT PTE.LTD.の投資先の一つである、スリランカおよびバングラデシュにおいてデジタル・メディアプラットフォームを運営するRoar Media社の株式の一部を売却し、これに伴うキャピタルゲインを得ています。
なお2024年3月末に、南アジアと中東において歯科医院プラットフォームを提供するシンガポール発スタートアップAME Healthcare Pte Ltdへの出資を行なっております。
その結果、当連結会計年度の投資事業の売上高は48百万円(前年同期比635.0%増)となり、営業利益は29百万円(前年同期比864.2%増)となりました。
② 財政状態の状況
当連結会計年度末における流動資産は2,709百万円となり、前連結会計年度末に比べ356百万円減少しました。これは主に現金及び預金が474百万円、棚卸資産が115百万円減少した一方で、営業投資有価証券が191百万円増加したこと等によるものであります。
固定資産は1,920百万円となり、前連結会計年度末に比べ334百万円増加しました。これは主に土地が177百万円、建物及び構築物(純額)が135百万円、長期貸付金100百万円増加した一方で、投資有価証券が145百万円減少したこと等によるものであります。
この結果、総資産は4,629百万円となり、前連結会計年度末に比べ21百万円減少しました。
当連結会計年度末における流動負債は1,102百万円となり、前連結会計年度末に比べ58百万円増加しました。これは主に1年内返済予定の長期借入金が206百万円増加した一方で、1年内償還予定の社債が120百万円減少したこと等によるものであります。
固定負債は986百万円となり、前連結会計年度末に比べ103百万円減少しました。これは主に長期借入金が74百万円、社債が40百万円減少したこと等によるものであります。
この結果、負債合計は2,088百万円となり、前連結会計年度末に比べ45百万円減少しました。
当連結会計年度末における純資産は2,540百万円となり、前連結会計年度末に比べ23百万円増加しました。これは主に親会社株主に帰属する当期純利益82百万円を計上した一方で、剰余金の配当41百万円、自己株式の取得32百万円を実施したこと等によるものであります。
この結果、自己資本比率は、54.3%となりました。
当連結会計年度末の現金及び現金同等物(以下、「資金」という)は1,928百万円となり、前連結会計年度末に比べ473百万円減少しました。
営業活動の結果獲得した資金は164百万円(前年同期は261百万円の獲得)となりました。これは主に法人税等の支払額147百万円により使用された一方で、棚卸資産の減少額112百万円、減価償却費104百万円、税金等調整前当期純利益90百万円により獲得されたこと等によるものであります。
投資活動の結果使用した資金は565百万円(前年同期は62百万円の獲得)となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出426百万円、長期貸付けによる支出100百万円により使用されたこと等によるものであります。
財務活動の結果使用した資金は81百万円(前年同期は331百万円の使用)となりました。これは主に長期借入れによる収入320百万円により獲得された一方で、長期借入金の返済による支出164百万円、社債の償還による支出160百万円により使用されたこと等によるものであります。
その他の一部で生産活動を行っておりますが、金額的重要性が乏しいため記載しておりません。
その他の一部で受注販売活動を行っておりますが、金額的重要性が乏しいため記載しておりません。
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、100分の10未満であるため記載しておりません。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 経営成績及び財政状態の状況に関する分析・検討内容
新型コロナウイルス感染症の「5類」への移行と感染状況に対する一般社会の受けとめ方の変容から始まった当連結会計年度において、当社グループではこうした社会情勢の変化を受けながら、より強固な企業基盤を確立すべく、新たに第二創業期を迎えたとする社内的な共通認識の下、不動産、ホテル、投資の3事業を柱とする中核事業の再定義、および組織再編を伴う経営資源の選択と集中を進めてまいりました。さらに、各々の事業領域の業務執行の実効性を高め、また意思決定の迅速化を図るべく、グループ会社への適切な権限委譲を行なう一方で、コーポレートガバナンスの観点からは、グループ会社の取締役会設置会社への移行など機関設計の見直しに取り組み、グループ管理体制の強化を推し進めてまいりました。
翌連結会計年度におきましては、これらの取り組みをさらに加速させるべく、株主総会における承認を前提に、ホールディングス機能を有する株式会社ストライダーズを、現行の監査役会設置会社から監査等委員会設置会社へ移行させることで、監査等委員以外の取締役への権限移譲による意思決定の迅速化や、監査等委員である取締役により取締役会を監督する体制とすることでコーポレートガバナンスの実効性を高めてまいります。また、株式会社ストライダーズと主力グループ会社の株式会社トラストアドバイザーズのオフィス統合を、先の承認を前提として実施することで、経営陣のコミュニケーションの頻度を意図的に増やすことにより、業務執行の質を高めてまいります。さらに効率経営の推進のため、管理部門の統合も進めてまいります。
不動産セグメントにおいて、主力のレジデンス事業につきましては、コロナ禍においても業績は堅調に推移しておりましたが、当連結会計年度で活況を取り戻す一方、営業努力もあり空室率が低下したことで、当連結会計年度においても前年同期比で増収増益を果たしました。翌連結会計年度におきましても、市況に大きな変化はないとの見通しの下、一層の安定経営を確立するために、引き続き一都三県を含む首都圏全域において管理戸数を積み上げてまいります。
他方で、当連結会計年度に事業規模の拡大した家賃保証事業のほかにも、当社グループの強みである不動産賃貸の周辺分野において、サービスラインナップの拡充に努めてまいります。具体的には、当連結会計年度に当社グループ初となる居住用賃貸物件の取得を行ないましたが、翌連結会計年度においても二棟目、三棟目と自社保有物件の取得を進めていく方針です。
また、業界全体の課題であるデジタルトランスフォーメーションに関しても、顧客の潜在ニーズを取りこぼすことがないよう、引き続き業界を率先して取り組んでまいります。
ホテルセグメントの成田ゲートウェイホテルでは、2023年5月に3年間に亘る療養施設としての運営を終了し、翌月から宿泊施設として再スタートを切りました。コロナ以前の稼働率へと早期に回復させるべく、海外の団体客向けに積極的な営業活動を行ないましたが、政治的な緊張関係を背景に、中国人団体客の戻りが期待通りとはならず、代替策として個人旅行客の獲得に力を入れてまいりました。その結果、稼働率についてはコロナ以前の水準に戻りつつある一方で、団体客から個人客に合ったオペレーションへの切り替えに対応するためのコスト増、ならびに昨今の資材、人件費の高騰などの影響を受けて、前年同期比で減収減益での着地となりました。なお、オペレーションの切り替えは翌連結会計年度に一巡する予定であり、これを契機と捉え収益性の最大化に努めてまいります。
同じくホテルセグメントの倉敷ロイヤルアートホテルでは、当連結会計年度の前半においてコロナ禍から平時の集客へと戻り、また若干遅れをみせながらも、年末シーズンを前に宴会需要が回復基調へと向かったことで、前年同期比で増収増益を達成することができました。また、当ホテルの重要テーマとして掲げる「アートとホテルの融合」「多目的空間としてのホテル活用」「瀬戸内地域の連携と協創」に対する取り組みとして、2023年11月に書家 金澤翔子氏を招き、瀬戸内地域最大級のカンファレンスイベント『BLAST SETOUCHI』の前夜祭を開催し、瀬戸内地域の多くのスタートアップ経営者などにご利用いただきました。今後は、地域のアーティストや学生、企業等とのつながりをより深めていきながら、多様な感性をホテル運営に取り入れてまいりたいと考えております。
当社グループのホテルセグメントはその地域に根差し、その地域に活力を生み、その地域の多様なステークホルダーの協創の場となるような空間の形成を目指しております。こうした取り組みを発展させるために、昨年末に石川県加賀市にあるホテルアローレとの間で、新たに運営支援契約を締結いたしました。今後、これらのホテルが成田、倉敷、加賀といったそれぞれ特色の異なる地域において、それぞれが協創の拠点としての役割を担っていけるよう、取り組みを進めてまいります。
投資セグメントのStriders Global Investment Pte. Ltd.では、当連結会計年度において、2023年7月にデジタル・メディアプラットフォームを運営するRoar Media社株式の一部売却、2024年3月に歯科医院プラットフォームを提供するAME Healthcare Pte Ltdへの出資を行ないました。また2023年11月に、昨年3月に共同投資アライアンス契約を締結したR3i Ventures (Singapore) Pte. Ltd.が運営するアクセラレータープログラム「Planet43」参加企業に対する投資コミットメント契約を締結しております。
こうした取り組みを通じて、当社内にファンド運営のノウハウが一定程度、蓄積したと判断し、翌連結会計年度においては、当社が主体となり、南・東南アジアのスタートアップをターゲットとしたファンドの立ち上げを予定しております。
また、当社が持つ海外投資家ネットワークを活用し、当社グループの事業領域である不動産やホテルなどを対象とした、日本国内へのインバウンド投資のファシリテートにも引き続き注力してまいります。
他方、財政状態の状況につきましては、株式会社トラストアドバイザーズにおける居住用賃貸物件の取得による新規借入をグループ各社による借入金の返済や社債の償還が上回ったことにより、総負債は前連結会計年度末に比べ45百万円減少し、2,088百万円となった一方で、自己株式の取得を行ないつつも本業における利益や円安による為替影響がこれを上回り、純資産は前連結会計年度末に比べ23百万円増加し、2,540百万円となりました。以上から、借入金の返済や社債の償還により現金及び預金は減少したものの、居住用賃貸物件の取得によって有形固定資産が増加し、総資産は前連結会計年度末に比べ21百万円減少とほぼ横ばいの4,629百万円となりました。
経営方針、経営戦略ならびに経営上の目標の達成状況を把握するための客観的な指標等につきましては、当社グループでは事業の規模拡大と収益力の向上のために「売上高」と「営業利益」を採用しております。また、その他の指標等については、以下のとおりとなっております。
当社グループの当連結会計年度末における自己資本比率は54.3%となり、前連結会計年度末の53.5%より、0.8ポイント上昇いたしました。これは、財政状態の状況において先述したとおり、当連結会計年度末における純資産が2,540百万円と、前連結会計年度末に比べ23百万円増加し、また、総資産は4,629百万円となり、前連結会計年度末に比べ21百万円減少したことによります。当社グループとしましては、今後も資本効率に留意しながら、経営環境の変化に応じ、バランスの取れた自己資本の水準を維持してまいります。
当社グループの当連結会計年度末におけるデットエクイティレシオ(有利子負債/自己資本)は0.42倍となり、前連結会計年度末の0.45倍から0.03ポイント低下しております。これは、借入金と社債の返済がより進む中で自己資本が増強された結果であります。今後につきましては、投資環境や金融環境に応じ、資金調達を拡大させる余地は十分に考えられますが、資本効率に留意しつつ慎重に判断をしてまいります。
当社グループの当連結会計年度末における自己資本利益率は3.3%となり、前連結会計年度末の4.8%より1.5ポイント低下いたしました。これは、経営成績の状況において先述したとおり、親会社株主に帰属する当期純利益が82百万円(前年同期比30.2%減)であったことによります。当社グループでは、市場における投資家の期待リターンを踏まえ、自己資本利益率10%を中期的な目標値として、収益性の向上及び資本効率の改善に取り組んでまいります。
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは164百万円の獲得となり、前連結会計年度比で97百万円の収入の減少となりました。これは、成田ゲートウェイホテルの営業活動によるキャッシュ・フローの減少と、成田ゲートウェイホテル及び倉敷ロイヤルアートホテルの助成金収入の減少が主要因であります。
当連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・フローは565百万円の支出となり、前連結会計年度比で627百万円の支出の増加となりました。これは、株式会社トラストアドバイザーズにおける居住用賃貸物件の取得を主要因としております。
当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローは81百万円の使用となり、前連結会計年度比で249百万円の収入の増加となりました。これは、株式会社トラストアドバイザーズにおける居住用賃貸物件の取得のための銀行借入が要因であります。なお、新規借入による収入を借入の返済や社債の償還による支出が上回っているため、財務活動によるキャッシュ・フローは使用のポジションとなっておりますが、取引金融機関とは定期的な情報交換を行ない、変わらぬ信頼関係を維持しておりますので、資金需要に応じた機動的な調達能力を十分に有しているものと判断しております。
こうした結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は1,928百万円となり、前連結会計年度比で473百万円減少しております。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、原則として、当社グループの事業会社における営業活動によるキャッシュ・フローを財源といたしますが、企業買収や各事業における設備投資などの成長投資に係る臨時の資金需要に対しては、必要に応じ、グループ各社において金融機関から資金調達を実施する方針を取っております。前述の通り、取引金融機関とは良好な関係を保持しておりますので、市場金利の動向などが資本コストに及ぼす影響や自己資本比率、デットエクイティレシオといった財務の健全性に配慮しつつ、調達手段の多様化、長期化などを一段と推し進め、今後も盤石な財務基盤を維持してまいりたいと考えております。また、手許資金はその安全性と成長投資の機会を損なわない適切な残高水準を見極めた上で、余剰資金から安定的な株主還元を継続するとともに、中長期的な利益成長による還元率の向上を目指してまいります。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。その作成にあたっては、経営者による会計方針の選択・適用等、開示に影響を与える見積り及び仮定が必要になります。経営者はこれらの見積り及び仮定について、過去の実績等を勘案し、合理的に判断しておりますが、見積り及び仮定に基づく数値には特有の不確実性があるため、実際の結果と異なる場合があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、特に重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
該当事項はありません。
当連結会計年度における研究開発活動について、特記すべき事項はありません。