文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 経営の基本方針
①三機工業グループ経営理念
当社グループは、「三機工業グループ経営理念」を掲げ、社会における当社グループの存在意義と役員・従業員のあるべき姿を総合的に表現しております。当社グループではこれを「三機スタンダード」と呼んで社内外への浸透を図っております。
この経営理念のもと、当社グループは創立100周年となる2025年度を最終年度として、10年間の長期ビジョン“Century 2025”を策定し、以下の3つの中期経営計画期間を通じて全てのステークホルダーから「選ばれる」会社を目指しております。
・“Century 2025”Phase1(2016~2018年度):「質」を高める3年間
・“Century 2025”Phase2(2019~2021年度):「信頼」を高める3年間
・“Century 2025”Phase3(2022~2025年度):「選ばれる」4年間
②2050年の姿(超長期ビジョン)
当社グループは、“Century 2025”Phase3の立案にあわせ、超長期ビジョンとして2050年のあるべき姿を定め、サステナビリティに関する基本的な方針や当社グループのカーボンニュートラル宣言を決定しました。
また、様々な視点から抽出した課題を「環境・社会価値の向上」と「企業価値の向上」の面から評価し、優先順位の高いものをグループ化して次の5つをマテリアリティとして特定しました。今後、サステナビリティ経営を推進するために優先的に取り組む課題になります。
当社グループの強みは、幅広い技術と豊富な実績はもとより、日本経済やインフラを支える数多くの大切なお客さまと長きにわたって培ってきた信頼関係であると捉えており、長期ビジョンの実現によってこれらをさらに拡大・強化したいと考えております。
また、サステナビリティの向上、コーポレートガバナンス・内部統制の一層の強化、技術力の伝承・向上、CSRの推進及びリスク管理の徹底などを経営課題として捉え、企業価値の向上に取り組んでまいります。
企業活動の大前提であるコンプライアンスについては、「三機工業グループコンプライアンス宣言」、「三機工業グループ行動規範・行動指針」及び「三機工業グループ行動基準」に基づき、法令遵守をはじめとしたコンプライアンス意識の向上に努めております。
(2) 経営環境及び対処すべき課題等
経営環境については脱炭素化の動き、少子高齢化、働き方改革、DXの急速な進展等、大きく環境が変化していると認識しております。これらの環境変化に対応すべく、「省エネルギー・創エネルギー事業」、「自動化・省人化事業」を推進し、また、長時間労働の解消など働きやすい環境づくりを目的とした当社独自の働き方改革である「スマイル・プロジェクト」を実施してまいります。
東京証券取引所からの「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」の要請につきましては、中期経営計画“Century 2025”Phase3に掲げたROE(自己資本当期純利益率)の目標値8%以上に対して、2023年度は9.2%と目標を達成しており、当社が認識している株主資本コスト(6~7%)を上回っております。PBR(株価純資産倍率)も2023年度は1倍超となりました。
また、政策保有株式については、資本効率向上の観点から連結純資産の20%未満とすることを目標としており、早期の目標達成に向け、縮減を進めてまいります。なお、政策保有株式の売却時期及び売却によるキャッシュの配分につきましては、成長投資や株主還元等、中長期的な企業価値の向上に向け、引き続き、取締役会での協議を重ね、経営資源の適切な配分を意識した取り組みを推進してまいります。
①“Century 2025” Phase3の概要
2022年度~2025年度は長期ビジョンに掲げる「選ばれる」会社の実現に向けた総仕上げの局面となります。
a.基本方針
Phase1の重点テーマ「技術と人の質を向上する」及びPhase2の重点テーマ「信頼を高める」ための施策を成熟・進化させつつ、新たな取り組みにより「選ばれる」企業グループを実現するとともに次なる時代に向けた布石を打つ
b.重点施策
・Phase1の継続
○コア事業の強化 ○成長戦略の推進 ○三機ブランドの向上
・Phase2の継続
○財務・資本政策の開示 ○情報発信力の強化
・新たな取り組み
○社会のサステナビリティへの貢献 ○働き方改革の加速 ○次世代に向けた投資
c.経営目標
・Phase3最終年度業績の目標
(注)各利益項目の率は、売上高に対する利益率を表しております。
・Phase3期間中の目標
※計画期間中の累計
②当連結会計年度の主な取り組みと今後の課題
a.グループ全体
(E)事業活動を通じた地球環境課題解決
・脱炭素社会実現に向けた技術開発や省エネルギーに貢献する製品の拡販
・当社独自の寄付制度「SANKI YOUエコ貢献ポイント」強化
・環境省「生物多様性のための30by30アライアンス」の継続参加
・CDP「気候変動Aリスト(最高評価)」に2年連続で選定
・自社施設における自己託送を用いた太陽光発電PPA事業の運用開始
・旧ユニフォームをタオルにリサイクル
・SBT(※)認定の申請スタート
※国際イニシアチブSBTiが認定する「パリ協定の水準(世界の気温上昇を産業革命前比1.5℃に
抑える水準)を満たす温室効果ガス削減目標」
(S)働き方改革、コミュニケーション向上、文化・スポーツ支援の積極実施
・当社独自の働き方改革「スマイル・プロジェクト」の継続
・新卒社員の初任給ならびに従業員の給与水準引き上げ
・デジタル改革推進本部を設置し、SANKI DXビジョンを策定 ~全グループ社員が「つながる」組織への変革~
・経済産業省「DX認定事業者」に認定
・「健康経営優良法人2024(大規模法人部門)」に2年連続認定
・次世代育成と地域社会貢献として、小学生向けに身近な化学や環境保全に関する出前授業の実施
・6言語版安全衛生手帳で多様な人材に対応した安全衛生教育を推進
(G)三機工業コーポレートガバナンス・ガイドラインに基づく取り組み継続
・東証プライム市場に求められる一段高いガバナンス水準に到達・維持
・国内子会社5社でBCMS(※)の運用開始(当社では2022年度より運用開始)
※BCMS:事業継続マネジメントシステム
b.事業別
・建築設備事業
大都市圏での大型再開発事業や、半導体やEV電池製造施設など産業空調分野とデータセンターでの民間投資が活発で、市場は堅調に推移したことから前年を上回る繰越受注を確保しました。その一方で、機器類納期の長期化は改善傾向にあるものの、依然として資機材価格と労務費の上昇、技術者不足は継続しております。また、案件の大型化が進んでおりますが、工程が長期間にわたる大型工事に関しては、工程変更により要員確保が困難となることや労務費・資機材価格高騰等のリスクもあり、これらの影響をいかにコントロールするかが課題となります。
・機械システム事業
2024年問題などの人手不足を背景とした自動化・省人化ニーズは製造業・非製造業ともに底堅く、これを取り込むべく将来の成長が見込める二次電池、医療・医薬、物流分野に注力しました。昨年投入しました物流分野をターゲットとした新製品を展示会等にて拡販に努めてまいります。
・環境システム事業
社会インフラとしての水処理施設、ごみ処理施設への公共投資は前年並みの水準で推移していますが、脱炭素社会に向けた省エネルギーニーズが高いことから、省エネルギー性能の高い製品の拡販、並びにDBO(※)方式による温室効果ガス排出量削減を主体とした事業提案を行っております。また、海外市場でも販売好調な製品があり、国内外で設備投資を行い事業を拡大してまいります。グループ会社については、それぞれの専門性を高めるための事業再編を行うとともに、三機化工建設株式会社は三機グリーンテック株式会社に、三機環境サービス株式会社は三機アクアテック株式会社に商号変更を行い、より効率的かつ競争力のある企業として成長してまいります。
※DBO(Design Build Operate):設計・建設と運営・維持管理を民間事業者に一括発注する手法
当社グループは、長期ビジョンを実現し「選ばれる」会社となるため、引き続き環境変化に柔軟に対応できる企業体制を構築しつつ、新技術の開発、コーポレートガバナンスの一層の強化に取り組み、コンプライアンスの徹底を土台として、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に向け鋭意努力を重ねてまいります。
当社グループのサステナビリティ全般に関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) サステナビリティ全般に関する考え方
当社グループは、サステナビリティ経営を推進し、環境・社会への貢献と収益確保を両立させて、長期にわたり持続可能な発展を続けていくため、経営理念をもとにしたサステナビリティ方針を定めております。
また、当社グループのサステナビリティを実現するための重要課題であるマテリアリティを特定しております。
様々な視点から抽出した課題を「環境・社会価値の向上」と「企業価値の向上」の両面から評価し、優先順位の高いものをグループ化して5つのマテリアリティとしております。このマテリアリティをもとに各施策を立案し、取り組みを進めております。
(ⅰ)ガバナンス
当社グループは、気候変動をはじめとするサステナビリティ課題全般について対応するため、代表取締役社長を委員長とし常勤取締役をメンバーとするサステナビリティ委員会を設置しております。
サステナビリティ委員会では、サステナビリティ経営を実現するための重要課題・施策を審議・決定しております。委員会の審議・決定内容については、経営会議、取締役会に報告され、監督を受けております。また、事業・経営戦略への影響が大きい課題については、重要性に応じて経営会議、取締役会へ付議され、決定・承認されております。
委員会の下部組織として設けた各部門の実務担当者からなるサステナビリティ推進会議では、委員会の審議・決定事項のグループ全体への周知や具体的なサステナビリティ推進活動の討議・推進や進捗確認を行っております。
<サステナビリティ推進体制>
(ⅱ)リスク管理
当社グループは、グループ全体の正常な事業運営を阻むリスクを統合的に把握し、リスクの顕在化を未然に防止するとともに、顕在化した場合の損失を極小化することを目的に、「リスク管理委員会」を開催しております。委員会において当社グループの事業に関わるリスクを洗い出し分類したうえで、所管する分科会、コントロールの内容などを定め、影響度や頻度等を可能な限り計量化して評価し、それらの優先順位や対応方針を策定・実施し、定期的に見直しを行っております。
策定された施策に関しては、重要性に応じてサステナビリティ委員会、経営会議、取締役会に上程し、決定・承認され、グループ全部門へ展開されております。また、中期経営計画の施策として取り上げられたものは、各部門の執行計画に組み込み、進捗を管理しております。
(2) 重要なサステナビリティ項目
① 気候変動関連
当社グループは、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に賛同し、提言に基づく気候関連情報の開示を実施しております。
(ⅰ)戦略
当社グループは、特定したマテリアリティの中でも「脱炭素社会への貢献」を最優先課題と位置づけ、リスクと機会の両面から気候変動問題に取り組んでおります。
気候変動が事業に与える中・長期的なインパクトを把握するためにシナリオ分析を実施し、抽出したリスクと機会については、2022年度からの中期経営計画「“Century 2025”Phase3」に盛り込み、経営計画と一体化させて取り組みを進めております。
<シナリオ分析>
分析においては、2100年時点において産業革命時に比べ世界の平均気温上昇が1.5℃に抑制されることを想定した1.5℃シナリオと、4℃程度上昇する4℃シナリオを採用し、各シナリオにおいて政策や市場動向の変化による移行リスクと、災害などによる物理リスクを推測しました。
各シナリオに対して、当社グループに対するリスク・機会を特定し、財務インパクトを評価して、その影響度を大・中・小の3段階で表現しております。
※1国際エネルギー機関(International Energy Agency)の略称。エネルギー安全保障の確保を目標に掲げるOECD(経済協力開発機構)の下部の国際機関であり、エネルギー政策全般をカバーしている。
※2気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change)の略称で、気候変化、影響、適応及び緩和方策に関し、包括的な評価を行うことを目的として、1988年に世界気象機関(WMO)と国連環境計画(UNEP)により設立された組織。
<リスクと機会>
(ⅱ)指標と目標
当社グループは、温室効果ガス排出量を最も重要な気候変動関連指標としております。「SANKIカーボンニュートラル宣言」にあるとおり、Scope1,2においては2030年、Scope1,2,3においては2050年のカーボンニュートラル達成を長期目標としております。また、中期経営計画「“Century 2025”Phase3」においては、2025年にScope1,2の40%削減(2020年度比)とScope3の10%削減(2020年度比)を掲げて「脱炭素社会への貢献」を推進しております。
<三機工業グループ温室効果ガス排出量>
※建設現場における集計対象範囲の見直しに伴い、基準年度(2020年)・前年度(2021年)の排出量を再計算しています。
② 人的資本関連
(ⅰ)戦略
[人財育成方針]
当社グループは技術(スキル)を有する従業員が事業競争力や企業価値の源泉であり、最大の財産と考えています。当社は、経営理念「エンジニアリングをつうじて快適環境を創造し広く社会の発展に貢献する」を実現させるための「人財育成方針」と「求める人財像」を定め、従業員が切磋琢磨し、社会人としての成長も実感できる教育・研修体系を整備してまいります。
従業員一人ひとりのキャリア形成においては個性や特性を十分に考慮しつつ、各自が最大限に能力を発揮できるよう適正配置を行い、業務経験を通じて成長の機会を得られるようにしております。
[社内環境整備方針]
マテリアリティの一つである「働く仲間の幸福の追求」を目指し、従業員一人ひとりが働きがいを持ち、働き続けることができる環境を整備しております。
従業員の期待度と満足度を測る指標として、2022年度までは従業員満足度調査における「今後も当社グループで働き続けたい」の回答率90%以上を目標としていましたが、新たな人的資本KPIとして、「エンゲージメントスコア」を設定いたしました。本指標は、株式会社リンクアンドモチベーションのモチベーションクラウドを利用し、会社の目指す姿や方向性に対する、従業員の理解・共感の度合いを偏差値(標準スコア50.0)で算出したものです。
2023年度に実施した「エンゲージメントサーベイ」により、当社の強みと課題点が明らかになりましたので、強みは積極的に伸ばしていき、課題点に対しては背景を分析し対策を講じてまいります。
(ⅱ)指標と目標
当社グループでは、上記「(ⅰ)戦略」については内閣官房が示す「人的資本可視化指針(7分野19項目)」の項目を用いております。
本来、この7分野19項目全てに目標及び実績を開示するべきですが、優先順位を付け、順次目標及び実績を開示してまいります。
なお、開示する目標及び実績は原則定量的な数値といたしますが、数値化できない項目については定性的な目標といたします。
当社グループでは、上記「(ⅰ)戦略」において記載した、人財育成方針及び社内環境整備に関する方針に係る指標については、当社においては、関連する指標のデータ管理とともに、具体的な取り組みが行われているものの、連結グループに属する全ての会社では行われていないため、連結グループにおける記載が困難であります。このため、各指標に関する目標及び実績は、連結グループにおける主要な事業を営む提出会社のものを記載しております。
a.人財育成方針
〇リーダーシップ
管理職のリーダーシップ醸成に向け、その発揮を期待する部長・課長を対象に就任時及び定期的な教育・研修を対面・オンライン・動画配信等の方法で行っております。
〇スキル・経験
今後、「人財育成方針」で定めた人財像に求められるスキルの特定を行いスキルマップの作成及びタレントマネジメントシステムを用いた保有スキルの可視化を行ってまいります。
〇若手の積極登用
管理職層においては「早期登用制度」を整備し次世代を担う若い世代の積極的な登用を行っております。
具体的な指標は次のとおりです。
〇採用
採用市場を踏まえたうえで、長期ビジョン"Century 2025"に基づいた要員計画を作成し、積極的な採用活動を行っております。
新卒採用においては当社で活躍している従業員の特性分析を行い、「採用要件」を定め、優秀な学生の確保に努めております。
また、キャリア採用においてはキャリア採用希望者からの応募に加え、ダイレクトスカウティングの導入や、「高度人財登用制度」を整備し即戦力となる人財の確保に努めております。
(単位:人)
*新卒採用は翌4月入社の人数を示しております。
〇維持
建設業界においては短期的・中長期的な視点においても人手不足が顕著であり、当社においても重要な経営課題と考えております。
積極的な採用活動を行っている一方、人財の流出を防止するため従業員の処遇改善(ベースアップ、各種手当の増額)や当社を退職した従業員が他社で経験を積んだ後に復帰できる「キャリアリターン制度」を設けました。
また、高年齢者の就業の機会を確保するために、定年年齢を60歳から65歳に引き上げ、再雇用制度を見直し、最長70歳まで就業可能な制度を整備しました。これにより、知識や経験豊富な従業員から若手従業員への技術継承を円滑に行っていくとともに、人手不足の解消を図ってまいります。
[2023年度離職率(自己都合退職に限る)]
男性・女性別の離職率
職種別の離職率
新卒3年以内離職率(入社年度別)
〇ダイバーシティ推進
2022年に当社グループのマテリアリティの1つに「働く仲間の幸福の追求」と定め、その具体策としてダイバーシティの推進を行っております。
ダイバーシティの推進にあたっては年齢、性別、国籍、宗教、障がいの有無等によらず、多様な人財が互いを認め合い尊重し、違いを活かして最大限能力を発揮できる職場環境を目指しております。
(注) 女性管理職比率につきましては、「
b.社内環境整備方針
〇エンゲージメント
サステナビリティ経営のマテリアリティに掲げている「働く仲間の幸福の追求」を測る指標として2023年度にエンゲージメントサーベイを実施し、エンゲージメントスコアは「51.3」でした。当社における同スコアは、2023年度時点で標準値「50.0」をクリアしておりますが、今後はさらに高い水準を目指し、2025年度までにエンゲージメントスコアを「55.0」とすることを目標としております。この目標を達成するため、会社と従業員のコミュニケーションを密に図るなどの取り組みを継続的に実施し、「従業員から選ばれ続ける会社」を目指してまいります。
なお、2022年度まで指標としておりました従業員満足度調査結果につきましては、2023年度も引き続き目標を達成しております。
〇育児休業
育児と仕事の両立支援の様々な施策を展開しています。従業員がライフイベントに合わせて柔軟な働き方ができるよう、一部には法律を上回る制度を整備(育児特別休暇)し、啓発活動を行っております。
※2022年度は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(2015年法律第64号)に基づく育児休業取得率のみを公表していましたが、2023年度からは「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(1991年法律第76号)に基づく、会社独自の休暇を含めた数値もあわせて公表しております。
※2022年度の有価証券報告書において、2025年度までを期日とした男性の育児休業取得率の目標数値は50%でしたが、2023年度に目標数値を達成したため、新たな目標数値を100%といたします。
(注) 男性の育児休業取得率につきましては、「
グループ全体の正常な事業運営を阻むリスクを統合的に把握し、リスクの顕在化を未然に防止するとともに、顕在化した場合の損失を極小化することを目的に、「リスク管理委員会」を開催しています。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。記載にあたっては、事業運営上のリスク、財務上のリスク、その他のリスクに区分したうえで影響の大きなものから順に、その具体的な内容と対策を記載しております。
なお、下記項目の中には、将来の予想に関する事項も含まれておりますが、当該事項は当連結会計年度末現在において判断したものであります。
◎事業運営上のリスク
(1)設備工事事業共通(建築設備事業、機械システム事業、環境システム事業)
(2) 建築設備事業
(3)機械システム事業
(4)環境システム事業
※ライフサイクルエンジニアリング(Life Cycle Engineering)事業の略称。新築、保守・メンテナンス、リニューアル、建替えといった建築物のライフサイクル全体を通じてサービスを提供する当社グループの事業コンセプト
(5) 不動産事業
◎財務上のリスク
◎その他のリスク
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度は、2025年4月に創立100周年を迎えるにあたり、長期ビジョン“Century 2025”の目標「選ばれ続ける企業」を目指し、Phase1の「質」を高める取り組み及びPhase2の「信頼」を高める取り組みを継続しつつ、Phase3の社会のサステナビリティへの貢献や働き方改革、次世代に向けた投資など新たな施策を実施してまいりました。
その結果、当連結会計年度における当社グループの財政状態及び経営成績は次のとおりとなりました。
(財政状態)
(経営成績)
(注)各利益項目の率は、売上高に対する利益率を表しております。
<主要セグメント別経営成績>
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末におけるキャッシュ・フロー(C/F)の状況は次のとおりであります。
③ 生産、受注及び販売の実績
当社グループが営んでいる事業の大部分を占める設備工事事業では生産実績を定義することが困難であり、また請負形態をとっているため販売実績という定義は実態にそぐいません。
また、当社グループにおいては設備工事事業以外では受注生産形態をとっておりません。
よって受注及び販売の状況については、可能な限り「① 財政状態及び経営成績の状況」において報告セグメントの種類に関連付けて記載しております。
なお、参考のため提出会社個別の事業の状況は次のとおりであります。
受注高及び売上高の状況
a.受注高、売上高及び繰越高
(注) 1 前事業年度以前に受注した工事で、契約の変更により請負金額の増減がある場合は、当期受注高にその増減額を含んでおります。したがって、当期売上高にもかかる増減額が含まれております。
2 次期繰越高は(前期繰越高+当期受注高-当期売上高)に一致しております。
受注方法は、特命と競争に大別されます。これを受注金額比で示すと次のとおりであります。
(注) 1 完成工事のうち主なものは、次のとおりであります。
前事業年度完成工事のうち請負金額10億円以上の主なもの
当事業年度完成工事のうち請負金額10億円以上の主なもの
2 前事業年度及び当事業年度ともに完成工事高総額に対する割合が100分の10以上の相手先はありません。
次期繰越工事のうち請負金額10億円以上の主なものは、次のとおりであります。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
(財政状態)
前連結会計年度との主な増減要因については「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
なお、当社グループは次項「(経営成績)」に記載のとおり、中期経営計画“Century2025” Phase3で策定、開示した財務・資本政策に則り、資本効率の向上に取り組んでまいりました。
当連結会計年度においては、自己株式の取得や、積極的な株主還元(増配)など資本効率の向上に努めてまいりました。
(経営成績)
前連結会計年度との主な増減要因については「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
(注)各利益項目の率は、売上高に対する利益率を表しております。
当期は次の施策を実施してまいりました。
○セグメント別の施策
<建築設備事業>
・将来のレガシーとなる半導体やEV電池製造施設向け案件に注力
・DXを活用した現場業務の効率化による時間外労働削減への取り組み
・半導体やEV電池製造施設向け次世代クリーンルームの開発
・設計本部を設置し、物件の大型化と特殊物件に対応
・ファシリティシステム事業では、以下の施策を実施
コンサルティングサービスメニューの拡充
ICTのトータルインテグレーション事業の強化
構内情報通信インフラ事業の拡大
スタートアップ企業と連携し、オフィスデザイン業務の生産性改善
<機械システム事業>
・AI、IoTやロボットを活用し、自動・省力化市場を開拓
・物流市場向け仕分けシステム「Brancd Ball(ブランチ ボール)」の開発、展示会への出展
・スタートアップ企業と連携し、業容拡大に向けた新サービス開発中
・大和プロダクトセンターにクリーンルームを構築し、高付加価値製品の開発・製造を開始
<環境システム事業>
・東京都下水道局と国内最大の水再生センター「森ヶ崎水再生センター消化ガス発電事業」に関する基本協定
ならびに基本契約を締結
・グループ会社の事業再編を実施
専門性を高め、より効率的かつ競争力のある企業を目指すため、三機化工建設株式会社で営んでいる民間用水
排水事業、化工機事業および汚泥再生事業を三機環境サービス株式会社へ事業移管を行うとともに、それぞれ
以下のとおり商号を変更
三機化工建設株式会社 → 三機グリーンテック株式会社
三機環境サービス株式会社 → 三機アクアテック株式会社
上記施策のほか、次の全社的な施策を実施いたしました。
・原価管理の徹底(内部統制プロセスの徹底)
・協力会社との関係強化
三機スーパーマイスター制度の実施
三機ベストパートナー制度の実施
また、“Century2025”Phase3の目標及び当連結会計年度の実績は以下のとおりであります。
Phase3最終年度(2025年度)の目標
(注)各利益項目の率は、売上高に対する利益率を表しております。
Phase3期間中の目標と結果
※1 ROE=自己資本当期純利益率
※2 計画期間中の累計
2023年度の成果
・Phase3最終年度の目標である経常利益120億円を上回り、経常利益率の目標値を達成
また、ROEも増益により9.2%となり、目標値を達成
・年間配当金は、中期経営計画目標値70円以上に対して85円に増配
・自己株式は、計画値の58%を取得
・成長投資は、人的投資、IT投資、省エネ設備投資等に59億円を実施
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローは、「(1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、資金需要のうち主なものは、工事費や人件費等の販売費及び一般管理費等の支払によるものであります。運転資金等の必要資金については、内部資金又は借入により資金調達することとしております。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。
この連結財務諸表の作成に際し、決算日における資産・負債の報告数値及び報告期間における収益・費用の報告数値に影響を与える見積りを行わなければなりません。すなわち、貸倒引当金、完成工事補償引当金等各種引当金及び法人税等、並びに履行義務を充足するにつれて一定期間にわたり収益を認識する方法を適用した工事の予定利益率等に関する見積り及び判断に対して、継続して評価を行っております。
当社グループは建設業を営んでおり、収益計上の殆どを履行義務を充足するにつれて一定期間にわたり収益を認識する方法により計上しております。そのため、同方法に基づき適正に計上することは当社グループにとって重要なプロセスであると認識しております。当社グループでは、同方法に基づき個々の工事契約について契約の締結状況、予定原価の見直し、工事進捗に応じた原価計上がされているかを精査のうえ、会計処理を行っております。これら手続きは標準的なプロセスとして整備・運用し、当連結会計年度においても適正な手続きを経て連結財務諸表に反映しております。
なお、見積り及び判断・評価については、過去の実績や状況に応じて合理的と考えられる要因等に基づき行っておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果は異なる場合があります。
当社で行っている研究開発は、建築設備(空調・換気・給排水衛生・電気・情報)としての居住環境・生産環境・高度情報処理システム並びにプラント設備としての環境保全に関する上下水処理・ごみ処理、産業設備に関する搬送システム・機器などの事業領域を基盤とし、快適環境の創造やサステナビリティ、脱炭素を中心とした新技術の研究開発、保有技術の改良、DXを用いた技術革新に関する開発を推進しております。
また、子会社においては、特記すべき重要な研究開発活動は行われておりません。
当連結会計年度における研究開発費は
主な研究開発成果は以下のとおりであります。
(建築設備事業)
建築設備工事向け自律走行型風量測定ロボットの開発
事務所ビルなどの試運転調整時に、従来は人の手により行われてきた風量測定から帳票作成までの作業をロボットにより自動化しました。測定箇所が1,000ヵ所以上に及ぶ超高層ビルでも、他の工事関係者がいない室内で夜間に測定を行うことができます。このロボットを導入することにより、これまでの人の手による風量測定作業に比べて約75%もの工数が削減されました。担当者を単調で膨大な作業から解放し、多数の測定を一定の方法で正確に繰り返すことにより、施工現場の生産性と品質の向上を実現しています。
自律走行型と同時に開発した『手押し台車式』は、壁近傍の吹出口や比較的小さな居室の測定に使用します。測定結果は自律走行型と併せて一つの報告書とすることができます。
(機械システム事業)
3方向仕分け装置「Branch Ball(ブランチ ボール)」の開発
2024年問題などの人手不足を背景とした自動化、省力化ニーズに対応するため、3方向仕分け装置「Branch Ball(ブランチ ボール)」を開発しました。
搬送面に千鳥配置したボールを3点で支え、そのうち2点が駆動軸に接する事で、軸の回転制御によりボールを任意の方向に回転させ搬送物を搬送します。駆動軸を同じ方向に回転させると、直進方向に搬送、隣り合う駆動軸を逆方向に回転させると分岐方向に搬送します。搬送面にベルトがなく安全な構造です。段ボール箱だけでなく、封筒などの薄物、小物やアパレルなどの袋物も安定的に搬送できます。また、高性能磁石モータの採用で省エネに貢献します。
(環境システム事業)
下水汚泥の有効利用技術の開発
下水処理から発生する汚泥は、主に大都市においては焼却処理後に建設資材としての利用にとどまり、地方都市においては多くが下水汚泥のまま埋め立て処分されています。
下水汚泥処理設備のメーカとして下水汚泥を取り扱う知見を活かし、大都市向けに下水汚泥焼却灰の肥料化技術の研究を秋田県、東京都とともに、国土交通省の下水道革新的技術実証事業のFS調査(事業化調査)を実施しました。また、下水汚泥の資源化に着目し、食品廃棄物や下水汚泥といったバイオマス資源を昆虫により処理して飼料や肥料にする技術を保有しているBioAlchemy株式会社と国土交通省の下水道応用研究を実施しました。
今後もさらに開発を進め、普及展開に努めてまいります。
(不動産事業)
研究開発活動は特段行われておりません。