第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

わが国経済は、個人消費や設備投資など内需の回復に加え、輸出やインバウンド需要の増加により緩やかに回復に向かうと見込んでおります。一方で、物価高の影響、海外経済減速や人手不足による供給制約などによっては回復の遅れも考えられ、依然として先行きは不透明な状況が続くと考えております。

このような環境の中、当社グループは3ヵ年中期経営計画「Challenge Now for Change New 2024 変革への挑戦」を経営方針とし、すべての生活空間に快適さを提供するリーディングカンパニーを目指してまいります。

次期連結会計年度は3ヵ年中期経営計画の最終年度となります。「グローバル経営の深化とシナジー」「顧客の期待の先を行く」「新規事業/新製品への挑戦」「環境/社会課題解決への貢献」の4つの戦略の完遂に向け、グループ全社一体となって各種施策に取り組んでまいります。

 

「グローバル経営の深化とシナジー」においては、グローバル企業としての確固たる礎を確立するために、ASEAN を重点地域とし、経営資源の重点投入によりグローバル日系企業・ローカル非日系企業との取引を拡大し、圧倒的なシェア獲得とトップシェア分野の更なる拡大を目指します。また、各本部によるグローバル横串運営の更なる強化を行ってまいります。

「顧客の期待の先を行く」においては、お客様の要望に対して迅速にソリューションを提供する当社の強み/ビジネスモデルを、さらに強化・発展させてまいります。潜在的なお客様のニーズを先回りして予測し具現化していくための体制構築とともに、分析力・提案力を強化してまいります。また、ソリューション提供のスピードアップを実現するために研究開発設備の増強及びDXの推進、MI(マテリアルズインフォマティクス)の活用を行ってまいります。

「新規事業/新製品への挑戦」においては、チャレンジメーカーとしての基本理念に立ち返り、将来の収益の柱となりうる事業の構築に挑戦いたします。既存のコンパウンド技術とフィルム技術の融合を進めるとともに、新規事業開発準備室において産学・産産連携も含めて新規事業/新製品につながるテーマの探求を進めてまいります。

「環境/社会課題解決への貢献」においては、引き続き環境対応製品の開発・普及を通じて、サステナブルな社会の実現に貢献いたします。当社グループは、サステナビリティをめぐる課題への対応が経営の重要課題の一つであると認識し、それらを経営に取り込むことにより、持続可能な社会の実現に貢献するとともに、企業価値の向上を目指してまいります。環境・化学物質に関する諸法規・諸規制を遵守するとともに、環境負荷軽減につながる製品開発と製造方法の改善に全力を挙げて取り組みます。また、カーボンニュートラル、サーキュラーエコノミーを目指し、グループ内で様々な施策を進めてまいります。

 

セグメント別には、「トランスポーテーション」では、ワイヤーハーネス及び自動車用成形部材分野への取り組みを強化し、拡販活動を進めてまいります。

「デイリーライフ&ヘルスケア」では、医療用、ゴム代替及び食品包材分野においてグローバル視点で販売戦略を実行してまいります。

「エレクトロニクス」では、電力・産業用電線、情報通信及び光学フィルム分野への取り組みを強化し、拡販活動を進めてまいります。

「ビルディング&コンストラクション」では、住宅・非住宅市場向け建装用フィルム及び住宅・建築資材分野への取り組みを強化するとともに、海外での拡販を進めてまいります。

コーポレート・ガバナンスにつきましては、経営理念「リケンテクノス ウェイ」を実践するとともに、グループガバナンスをさらに強化し、グループ経営の透明性、公正性を確保してまいります。

また、株主・投資家の皆様との建設的な対話を進め、中長期的な企業価値の向上に努めてまいります。

 

今後、ますますグローバルに競争が激化することが予想されますが、各本部及び国内外の連結子会社が連携して各課題に取り組み、3ヵ年中期経営計画の完遂に向け全社員が一丸となって邁進してまいります。

 

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

リケンテクノスグループ(以下、当社グループ)は、サステナビリティをめぐる課題への対応が経営の重要課題のひとつであると認識し、「環境/社会課題解決への貢献」を中期経営計画の重点戦略として掲げ、持続可能な社会の実現に貢献するとともに、企業価値の向上を目指しています。

 

(1)ガバナンス

当社グループは、企業を取り巻く環境が大きく変化する状況であることを踏まえ、より一層ステークホルダーの皆様からの期待を企業活動に取り入れるべく、現場と経営層をつなぐ機能として、サステナビリティ委員会を設置しています。サステナビリティ委員会は社長執行役員を委員長とし、経営会議のメンバーである全執行役員によって構成され、社外取締役もオブザーバーとして参加しています。経営層が主導することにより、スピードを重視した経営の意思決定と施策の実施が可能となる組織体制を構築しています。

サステナビリティ委員会はサステナビリティに係わる様々な重要課題について審議し、その審議内容を経営会議に答申・報告します。また、経営会議における審議事項は、取締役会に定期的に報告されます。

2023年度はサステナビリティ委員会を6回開催し、取締役会において3回審議を行っています。

また、サステナビリティを含むグループにおけるリスクを一元的に管理する機能としてリスク・コンプライアンス委員会を設置しています。リスク・コンプライアンス委員会は社長執行役員を委員長とし、経営会議のメンバーである全執行役員によって構成され、社外取締役もオブザーバーとして参加しています。

サステナビリティ委員会及びその下部組織である環境委員会は気候変動を含む様々な重要課題(マテリアリティ)について審議し、その審議内容を経営会議に答申・報告します。また、経営会議における気候関連の審議事項は、取締役会に定期的に報告されます。

2023年度は、サステナビリティ委員会において、特定した重要課題(マテリアリティ)のうち、特に当社グループが重要と捉える9つのマテリアリティについて指標・目標(KPI)を定め、取締役会で決定いたしました。目標達成に向けた取り組みを進め、四半期ごとにその進捗を取締役会に報告しています。進捗を管理することで、PDCAサイクルを繰り返し、長期ビジョンの実現に努めています。

 


 

 

(2)戦略

当社グループでは、2023年3月取締役会において、下記項目をマテリアリティとして定め、そのうち特に当社グループが重要と捉える9項目についてKPIを設定し取り組みを推進します。

 


サステナビリティ委員会において、上記マテリアリティの進捗を管理しています。

 

[気候変動への対応(「持続可能な地球環境への貢献」)]

当社グループでは2100年における世界の気温上昇が1.5℃あるいは4℃という2つの世界観で、気候変動に伴う2030年及び2050年のシナリオ分析を実施しました。分析にあたっては、下表に示す政府機関及び研究機関で開示されているシナリオを参照しています。

世界観

分析に用いたシナリオ

1.5℃

World Energy Outlook (WEO), IEA, 2023
Net Zero Emissions by 2050(NZE)
Shared Socio-economic Pathway (SSP1-1.9), IPCC, 2021

4℃

Stated Policy Scenario (STEPS), IEA, 2020
Representative Concentration Pathways (RCP6.0, 8.5), IPCC, 2014

 

 

気候関連の問題及び問題への社会的な対応が、当社グループ及びそのサプライチェーン全体にどのような影響を及ぼしうるかについて、サステナビリティ委員会で審議し、気候関連のリスク及び機会を特定しています。

 

 

<リスク>

■シナリオ分析の結果、炭素税の導入など気候変動対策を進める政策手段の導入や環境に配慮した製品への開発遅れや対応の遅れにより、当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。

リスクの種類

リスクの概要

財務影響

対応策

1.5℃

4℃

移行
リスク

政策及び規制

炭素税の増加により、主要原材料やエネルギーの調達コストが上昇する

・中計戦略「環境/社会課題解決への貢献」の遂行

・再生可能エネルギー由来の電力採用

・重油から天然ガスへ転換

・原材料のGHG排出原単位監視、低炭素型原材料への転換

・生産設備のエネルギー効率の改善

移行
リスク

政策及び規制

炭素税によって従来型原材料から低炭素型原材料への代替が発生し、原材料代替のための開発コストや調達コストが発生あるいは上昇する

・中計戦略「新規事業/新製品への挑戦」「環境/社会課題解決への貢献」の遂行

・原材料の統廃合(調達リスクが高い原材料の代替)

・使用原材料の低炭素型原材料への転換

・複数購買化等

移行
リスク

技術

環境に配慮した製品の開発が遅れ、競合他社の低炭素型製品へ置き換わることで、当社製品・サービスへの需要が減少し、売上が減少する

・中計戦略「新規事業/新製品への挑戦」「環境/社会課題解決への貢献」の遂行

・環境配慮型製品※1開発への経営資源の配分増加

移行
リスク

市場

石油化学由来原材料の価格が高騰し、原材料の調達コストが上昇する

・中計戦略「新規事業/新製品への挑戦」「環境/社会課題解決への貢献」の遂行

・RIKEBIO®シリーズの開発・販売

・バイオマス原料の積極採用、利用促進、転換拡大

移行
リスク

市場

当社顧客の石油由来原材料の使用量削減、脱石油由来原材料等への転換対応に遅れをとった場合、対応が遅れた製品・サービスの需要が減少し、売上が減少する

・中計戦略「顧客の期待の先を行く」の遂行

・顧客製品の高機能化(減容/小型化)に対応した製品開発

・RIKEBIO®シリーズの開発・販売

移行
リスク

評判

環境対応の遅れにより投資家からの評価が低下し、株価が下落する

・中計戦略「環境/社会課題解決への貢献」の遂行

・環境対応の遅れや当社の評価が低下しないよう各委員会でのモニタリング実施

・ステークホルダーへの環境配慮型製品※1や環境対応状況の積極的な開示

物理的
リスク

急性

当社及びサプライチェーンが被災し、復旧までの間、事業活動の停止や縮小により売上が減少する、また復旧及び対策コストが増加する

・中計戦略「グローバル経営の深化とシナジー」の遂行

・グローバルな製造・発注管理

・グローバル拠点含めたBCP体制の強化と代替生産、供給体制の充実

物理的
リスク

慢性

降雨パターン・気象パターンの極端な変動による河川の氾濫、海面の上昇による高潮の発生増加により、海や河川の近隣にある当社建屋への対策コストが増加する

・中計戦略「環境/社会課題解決への貢献」の遂行

・被災リスクの正当な評価と事前対策の実施

 

※1RIKEBIO®を含むサーキュラーエコノミー対応製品など。 RIKEBIO®=バイオマス原料を使用している製品

 

 

<機会>

■シナリオ分析の結果、省エネ貢献商品の開発、低炭素型製品や機能付与した素材の提供などが、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

機会の種類

機会の概要

財務影響

対応策

1.5℃

4℃

エネルギー源

市場における省エネ貢献商品の開発、再生可能エネルギーの発電技術や機器の普及により、関連する当社製品の売上が増加する

・中計戦略「顧客の期待の先を行く」「環境/社会課題解決への貢献」の遂行

・顧客のニーズに合わせた気候変動に対応した製品※2の拡販

製品及び
サービス

低炭素型製品の需要増加に伴い、機能付与した素材、石油由来成分の少ない製品(低炭素型製品)の開発・販売により、当社製品の需要及び売上が増加する

・中計戦略「顧客の期待の先を行く」「環境/社会課題解決への貢献」の遂行

・当社製品のリサイクル推進

・環境配慮型製品※1の開発

・RIKEBIO®シリーズの開発・販売

評判

気候変動対応への積極的な取り組みにより、ステークホルダーの信頼を獲得し、企業価値の向上につながる

・中計戦略「環境/社会課題解決への貢献」の遂行

・当社環境対応に関する開示内容の充実

レジリエンス

当社拠点のグローバル展開により、自然災害が増加する環境下においても顧客へ製品を安定的に供給するレジリエンスが向上し、売上の減少を防ぐと共に顧客の信頼を獲得することで売上の増加につながる

・中計戦略「グローバル経営の深化とシナジー」の遂行

・当社グローバル拠点を活用した原材料調達力、BCP体制の更なる強化

 

※1RIKEBIO®を含むサーキュラーエコノミー対応製品など  RIKEBIO®=バイオマス原料を使用している製品

※2材料の機能が省エネルギーに繋がる製品

 

 

[人材の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略(チャレンジメーカーに相応しい人材の育成)]

当社グループの3ヵ年中期経営計画の4つの戦略のうち、3つの戦略の実行に必要な人材を確保・育成することが最重要と考え、各種施策に取組んでいます。

中期経営計画の戦略

戦略実行に必要な人材

グローバル経営の深化とシナジー

グローバル事業戦略を遂行できる人材

顧客の期待の先を行く

分析能力・戦略視点を持った人材

新規事業/新製品への挑戦

多様な視点を持った人材

 

 

・人材育成方針

社員と会社はともに成長する関係にあり、「人の成長こそ企業の成長」です。

①社員一人ひとりが「リケンテクノス ウェイ」を実践しながら会社の求める人材像に適った人材へと成長し、②個の能力を組織の力として束ねて発揮させることにより、同時に会社も成長していくことを人材育成の方針とします。

 

会社は、社員一人ひとりが会社の「求める力」を発揮できる最適な仕事、環境の「場」を提供すると共に、グローバル競争に打ち克つ人材育成(投資)を積極的に行い、社員の「成長」と「活躍」を応援します。高められた個の能力を対話によって結集しチームで総合力を発揮することで、更なる会社の発展につなげていきます。

 

社内に不足する知識、見識、能力、キャリアがあって育成だけでは補うことができない場合は、中途採用も交えてそれらを補完し、社内の活性化や当社の成長につなげていきます。

社員一人ひとりが経営理念である「リケンテクノス ウェイ」を自発的に実践していくことが全てにおいての基本であると考え、会社はそのための環境の整備に責任を負います。 

 

・社内環境整備方針

グローバル企業を目指す当社として、多様な個性を持つ社員が活き活きと働くことができる体制の整備・雰囲気の醸成を行うことを環境整備上の方針とします。

 

多様な人材がその個性を生かしながらのびのびとエネルギッシュに、持てる力を仕事に全力で投入できる仕組みや雰囲気をつくり、多様な働き方の実現をしていきます。

 

 

(3)リスク管理

リスク管理にあたっては、 リケンテクノスウェイの実践、 企業行動規範の遵守、経営の健全性確保、安定的な事業継続、人命優先、コンプライアンス精神の浸透並びにステークホルダーの利益阻害要素の除去・軽減を図る観点で行うことを基本方針としています。

 

リスク・コンプライアンス委員会においてグループ全体のリスクの洗い出し/評価を行ない、重点対策リスクとして特定した課題を中心にリスク対応策への取り組みを実施しています。

各部門に関する個別のリスク管理は各部門が行ない、リスク・コンプライアンス委員会は連結子会社を含むグループを取り巻くリスクを一元的・統括的に管理しています。また、2024年4月からは、リスク・コンプライアンス委員会において人権デューディリジェンス(人権リスクの特定と対応策の実施など)も開始いたしました。

 

[気候変動への対応(「持続可能な地球環境への貢献」)]

気候変動関連リスクについては、サステナビリティ委員会及びリスク・コンプライアンス委員会を中心にリスクの回避、軽減、コントロールに関する方針の策定や対応策の立案などを実施し、取締役会での決議を経て、グループ全体を通じたリスクマネジメントを行っています。また、対応策の実施状況及びその効果についてモニタリングを実施しています。

 

 

(4)指標及び目標

マテリアリティ及びKPI

マテリアリティ名称

評価の基準(KPI)

中長期目標

2024年度

2030年度

持続可能な地球環境への貢献

・2030年排出量削減目標値の達成(単体)

35,446t

24,139t

(2019年度比46.2%減)

・2050年カーボンニュートラル(グループ)

・総廃棄物量の総生産量比(単体)

3.3以下

3.0%以下

健康経営・労働安全衛生の
推進

・休業労災発生件数(国内)

0

0件

・特定検診実施率(国内)

90

90%

・特定保健指導実施率(国内)

55

60%

チャレンジメーカーに相応しい人材の育成

・一人当たりの育成費用(単体)

117千円

140千円

品質向上と製品安全の確保

・市場回収を伴う重大品質事故(単体)

0

0件

・化学物質の使用に関する法令遵守・
重大法令違反(単体)

0

0件

新規事業・新製品の創出

・特許出願件数(単体)

(累計) 45

(2022~2024年度)

(累計) 210件

(2022~2030年度)

・外部機関との協業件数(単体)

(累計) 10

(2022~2024年度)

(累計) 35件

(2022~2024年度)

生産技術・生産効率の向上

・生産キャパシティ(単体)

(2021年度比)10

(2021年度比)+33%

DXによる事業変革

・MI人材の育成(単体)

9

20人

・全従業員へのDX教育の実施(単体)

受講率100

受講率100%

人権の尊重

・全従業員への人権・コンプライアンス研修の実施(国内)

受講率100

受講率100%

・仕入先への「ESGに関するアンケート」の実施(単体)

1/年

1回/年

ステークホルダーとの対話

・投資家、既存株主との面談実施(単体)

140以上/年

200社以上/年

・顧客、取引先への顧客満足度調査の実施(単体)

1/年

1回/年

 

 

[気候変動への対応(「持続可能な地球環境への貢献」)]

温室効果ガスの排出は、グループ全体の財務におけるリスク要因となるか、あるいは、脱炭素社会に受け入れられる製品を開発することにより、ビジネスチャンスにもつながります。当社ではグループ全体におけるCO2排出量の削減に向けた中長期の排出量削減目標を設定するとともに、削減に向けた具体的な取り組みを計画し、指標も設定して取り組みの進捗を管理しています。

 

2023年度におけるリケンテクノスグループのCO2排出量(Scope1,2,3)

Scope1,2排出量:当社単体 40,859 t、当社グループ 86,520 t(当社単体+関係会社)

Scope3排出量:当社グループ(※) 1,212,634 t

※カテゴリー4および9については当社単体を集計

 


 

リケンテクノスグループの中長期CO2排出量の削減目標

当社単体での2030年の目標値(Scope1,2) 24,139 t (2019年度比46.2%減)

 ※(2019年度 基準値44,868 t )

当社グループ全体で「2050年カーボンニュートラル」を目指してまいります。

 


 

 

3 【事業等のリスク】

(1) 当社のリスクマネジメント体制

当社グループでは、リスクマネジメントの実効性を高めるとともにコンプライアンスの更なる向上を図るため、リスク・コンプライアンス委員会においてグループを取り巻くリスクを一元的に管理しています。リスク・コンプライアンス委員会では、グループ全体のリスクの洗い出しと分析・評価に加え、重要リスクの把握および重点対策リスクの特定、ならびにその対応策の策定を行っています。また、半期ごとにリスク対応策の進捗状況の確認と見直しを行い、必要に応じて関係各部門に対して改善指示を行うなど、グループ全体の総合的なリスク管理を行っています。

 

リスクマネジメント体制


 

(2) 当社のリスクマネジメントの運用状況

  リスクの特定プロセス

当社では、期初に各本部・連結子会社において、前期のリスク対応策の進捗結果を踏まえて、個別に内部統制リスク一覧を策定し、各リスクの発生可能性、影響度、対応状況を評価し、現存リスクの評価をおこなっています。リスク・コンプライアンス委員会がそれらを統合・評価した上で、グループ全体の内部統制リスクの把握と期を通して経営陣が積極的に関与すべき重点対策リスクの特定を実施し、その内容および選定プロセスについて取締役会で決議しています。また、リスク・コンプライアンス委員会では、人権リスクの特定・評価も併せて行っています。

網羅的・横断的にグループ全体のリスクの把握とその対応策実施状況および進捗の確認、リスク対応策の見直し・改善のPDCAサイクルを回し、グループ全体で一貫したリスクマネジメントを実施することで、グループ・ガバナンス(内部統制)を強化しています。

 

 

(3) 事業等のリスク

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

 ① 当社グループにおける重点対策リスクおよび対策

重点対策リスク

リスクの概要

対策の概要

1

自然災害・
感染症の流行

・大規模な自然災害や感染症のまん延等により、事業活動に支障が生じるとともに、本邦・世界経済の大幅な減速により、財務状況に悪影響が生じるリスク

・自然災害・感染症のまん延等のリスク発生時の対応体制の確立

・事業継続マネジメント(BCM)体制の構築

2

システムダウン・情報漏洩

・サイバー攻撃等によるシステムダウンや情報漏洩により社会的信用が失墜するリスク

・グループ全体のITセキュリティレベル調査に基づく改善策立案・実施

・グループ通信ネットワークの見直しによるセキュリティ強化

3

設備故障・設備過剰・遊休設備の発生

・設備故障による生産停止のリスク

・設備過剰・遊休設備の発生により経営資産の効率的な運用が困難になるリスク

・設備保全体制の強化

・生産数量の平準化、稼働率向上

4

化学物質関連法規制への対応不足

・化学物質関連の法規制への対応不足により社会的信用が失墜するリスク

・化学物質管理体制の改善継続

・デザインレビュー(DR)・製品安全調査の強化

5

環境問題への対応遅れ

・環境問題への対応の遅れによる競争優位性低下のリスク

・CO2削減計画の具体化

 

 

 ② 重点対策リスク以外に当社が認識している主要なリスク

a. 技術革新および顧客ニーズへの対応について

当社グループが事業を展開する合成樹脂加工等の市場は、急速な技術変化と技術革新および顧客ニーズの変化に対応する新商品・サービスの提供の必要性を特徴としています。新技術の開発とその製品化および新製品・サービスの提供により、既存の製品・サービスは陳腐化または市場性を失う傾向があります。

当社グループは、常に技術と顧客ニーズの急速な変化を的確に把握し、それに対応した製品・サービスのマーケティングを行っていますが、かかる製品・サービスを常に提供することができるという保証はありません。当社グループがこれら新技術のトレンドの把握、顧客ニーズの予測や対応を誤った場合、当社グループの事業、業績および業務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

b. 資材等の調達について

当社グループの生産活動には、原材料、原反、製造装置等の設備、貯蔵品、その他の供給品のタイムリーな納入が必要です。当社グループの購入する原材料等には特殊なものがあるため、その中には、仕入先や供給品の切り替えが困難なものや、特定の仕入先からしか入手できないものもあります。当社グループは、当社グループが使用する原材料、原反、設備、その他の供給品が現在十分に確保されているものと認識しておりますが、供給の遅延・中断や業界内の需要増加、調達先の統合、倒産、廃業等があった場合、必要不可欠な原材料等の供給不足が生じる場合があります。これらの原因等により、当社グループが供給品を機動的に調達できない場合や、供給品の調達のために極めて多額の資金の支払が必要となる場合には、当社グループの業績が悪化する可能性があります。また、欠陥のある原材料、原反、設備、その他の供給品は、当社グループの製品の信頼性および評判に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

c. 海外市場での事業拡大に伴うリスクについて

当社グループは海外市場での事業拡大を戦略の一つとしています。当社グループの海外における生産および販売活動の大部分は、米国や東南アジアおよび中国市場です。これらの海外における事業活動においては、政治経済情勢の悪化、輸出入および外貨の規制、予期しない法令の変更、テロ・戦争、その他の要因による社会的混乱、疫病の発生、人材および技術の流出など、当社グループの事業活動を阻害するリスクがあり、当社グループの業績、財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

d. 製品の欠陥について

当社グループは、世界的に認められている品質基準に従って製品を製造しています。しかし、全ての製品について全く欠陥がなく、製造物責任を負うこともなく、リコールが発生しないという保証はありません。また、保険によってこれらに起因する費用の全てを賄える保証もありません。大規模なリコールや多額の製造物責任賠償を負担することにより、当社グループの業績、財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

e. 原材料価格の大幅な変動による採算性悪化について

当社グループは、原油から精製されるナフサ由来のエチレン、プロピレン等の石化基礎製品から作られる誘導品を主原材料としているため、その原材料価格は原油価格の変動の影響を大きく受けることになります。原油価格は、全世界的な需給バランスのほか戦争、テロ、投機的な動き等予期せざる様々な原因により、乱高下を繰り返しており、今後もこの傾向は続くことが予想されます。また、植物由来の一部原材料では、地球温暖化等気候変動の影響を受けることが予想されます。原材料価格の変動を適時に製品価格に反映できない場合やコスト削減等により吸収できない場合等には、当社グループの業績、財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

f. 外国為替相場の変動について

当社グループの事業には、海外における製品の生産・販売が含まれています。海外現地法人において、現地通貨で取引されている収支の各項目は、連結財務諸表を作成する際に円に換算されるため、結果として換算する時点での外国為替の変動に影響される可能性があります。また、為替相場の変動は、当社グループが現地で販売する製品の価格や、当社グループの現地生産品の製造・調達コストに影響を及ぼす可能性があり、現地市場の競争力や国内における販売価格にも影響をもたらす可能性があります。

 

g. 方針の不徹底、人材確保について

当社グループの企業理念や会社方針が十分に浸透せず、また、当社グループの事業戦略を遂行できる人材が流出したり確保できない場合、当社グループの競争力・収益力が想定されたように成長せず、当社グループの業績、財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループ各社および関連部門において従業員同士のコミュニケーションに不足が発生した場合、業務遂行に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

h. 労働災害・事故に関するリスクについて

当社グループでは、労働環境の維持・向上が経営戦略に重要な影響を及ぼすと認識し、働きやすい職場環境や職場の安全の維持・向上に努めています。しかしながら、当社グループにおいて重篤な労働災害、火災事故などの不測の事態が発生し、生産活動が停止した場合は、当社グループの業績、財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

i. 法令違反・訴訟に関するリスクについて

当社グループの取締役、執行役員、従業員の法令違反等の有無にかかわらず、将来において予期せぬトラブルや訴訟等が発生する可能性があります。かかる訴訟が発生した場合には、その内容や金額によって、当社グループの業績、財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 

j. 人権問題について

当社グループは、当連結会計年度において、人権尊重の取り組みに関する明確かつ包括的な指針を定めるため、国際連合の「国際人権章典」および「ビジネスと人権に関する指導原則」ならびに国際労働機関の「労働における基本的原則及び権利に関するILO宣言」をはじめとする人権に関する国際規範に基づき、「リケンテクノスグループ人権方針」を策定いたしました。また、2024年4月からは、リスク・コンプライアンス委員会において人権デュー・ディリジェンス(人権リスクの特定と対応策の実施など)も開始いたしました。しかしながら、当社グループの事業活動によって直接または間接的に人権に負の影響を及ぼすリスクを完全には排除できない可能性があり、人権リスクに対し適時適切な対応が出来なかった場合には、社会的信用の低下に加え、生産活動の停滞や遅延、事業活動にかかる追加の対応コストなどが生じることにより、当社グループの業績、財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度におけるわが国経済は、物価高による節約志向の高まりや、コロナ禍明け後の需要回復の一巡により個人消費などで足踏みが見られたものの、継続する雇用・所得環境の改善、企業収益の持ち直しにより、総じて緩やかな回復の動きとなりました。

海外では、世界的な金融引き締めや、中国における不動産市場の停滞による中国経済減速の影響に加え、中東情勢等、先行き不透明な状況が続いているものの、米国経済が底堅い雇用・所得環境に支えられ個人消費や設備投資が堅調に推移したことで、総じて持ち直しの動きとなりました。

産業別では、国内建材市場は住宅着工件数・非住宅着工件数共に前年同期比で減少し、低調に推移しました。グローバル自動車市場は半導体不足を起因とした部品供給問題等による生産制約の解消が進み、前年同期比で生産台数が増加しました。

このような環境の中、当社グループは中期経営計画「Challenge Now for Change New 2024 変革への挑戦」の2年目として、「グローバル経営の深化とシナジー」「顧客の期待の先を行く」「新規事業/新製品への挑戦」「環境/社会課題解決への貢献」の4つの戦略の具体的な取り組みを行ってまいりました。

 

その結果、連結売上高は125,739百万円、前連結会計年度比(以下「前年同期比」)1.8%増加連結営業利益は8,775百万円(前年同期比16.9%増加)、連結経常利益は9,544百万円(前年同期比19.8%増加)、親会社株主に帰属する当期純利益は6,880百万円(前年同期比51.0%増加)となりました。

 

セグメント別の経営成績は次のとおりであります。

 

 <トランスポーテーション>

国内では、自動車市場が回復し、同市場へのエラストマーコンパウンドの販売が増加し、増収となりました。

海外では、中国市場における日系自動車の生産が減少したものの、北米・インド国の日系自動車生産の回復に伴い販売が増加し、増収となりました。

セグメント利益につきましては、中国の日系自動車生産低下に伴う販売の減少、高騰した一部原材料の価格転嫁遅れが影響し、減益となりました。

その結果、売上高は40,004百万円(前年同期比5.0%増)、セグメント利益は3,647百万円(前年同期比5.5%減)となりました。

 

 <デイリーライフ&ヘルスケア>

国内では、生活資材向けエラストマーコンパウンドの販売が減少したものの、小巻ラップ製品の販売が好調に推移し、増収となりました。

海外では、タイ国での生活資材向け塩ビコンパウンドの販売が減少し、減収となりました。

セグメント利益につきましては、製品価格適正化と北米の塩ビコンパウンド及び小巻ラップ製品の販売増加により増益となりました。

その結果、売上高は34,055百万円(前年同期比1.7%増)、セグメント利益は2,735百万円(前年同期比85.1%増)となりました。

 

 

 <エレクトロニクス>

国内では、工作機械電線向けコンパウンドの販売が減少したものの、半導体市場向けダイシングフィルム等の機能性フィルムの拡販が進み、増収となりました。

海外では、インドネシア国での塩ビコンパウンドの販売が増加したものの、中国及び米国市場での塩ビコンパウンドの販売が減少し、減収となりました。

セグメント利益につきましては、インドネシア国の塩ビコンパウンドの販売増加と機能性フィルムの拡販により、増益となりました。

その結果、売上高は25,022百万円(前年同期比1.6%増)、セグメント利益は1,262百万円(前年同期比26.7%増)となりました。

 

 <ビルディング&コンストラクション>

国内では、非住宅市場向けフィルム及び、「住宅省エネキャンペーン」による樹脂サッシ用塩ビコンパウンドの販売増加により、増収となりました。

海外では、米国の建材市場向け塩ビコンパウンドの販売が減少し減収となりました。

セグメント利益につきましては、国内の販売が増加したものの、海外の建材市場向け塩ビコンパウンドの販売が減少し、前年同期並みとなりました。

その結果、売上高は26,601百万円(前年同期比2.2%減)、セグメント利益は1,055百万円(前年同期比0.4%増)となりました。

 

当連結会計年度末における総資産は、投資有価証券等の投資その他の資産が2,137百万円増加、建物及び構築物等の有形固定資産が1,397百万円増加したことにより、前連結会計年度末に比べ3,648百万円増加し、115,650百万円となりました。

負債は、未払法人税等の流動負債が1,556百万円増加、繰延税金負債等の固定負債が239百万円増加したこと等により、前連結会計年度末に比べ1,795百万円増加し、41,633百万円となりました。

純資産は、自己株式消却7,000百万円により利益剰余金等の株主資本が1,886百万円減少、その他有価証券評価差額金、為替換算調整勘定等のその他の包括利益累計額が3,131百万円増加、非支配株主持分が607百万円増加したこと等により、前連結会計年度末に比べ1,852百万円増加し、74,017百万円となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度末に比べ1,602百万円減少し、21,852百万円となりました。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によって得られた資金は、前連結会計年度に比べ2,229百万円増加し、10,753百万円でした。その主な内容は、税金等調整前当期純利益11,300百万円、減価償却費3,777百万円等による資金の増加、売上債権の増加797百万円、法人税等の支払1,970百万円等による資金の減少であります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動による資金の支出は、前連結会計年度に比べ2,286百万円減少し、1,668百万円でした。その主な内容は、有形固定資産の取得による支出4,037百万円、無形固定資産の取得による支出211百万円、投資有価証券の売却による収入2,587百万円であります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動による資金の支出は、前連結会計年度に比べ8,784百万円増加し、11,120百万円でした。その主な内容は、自己株式の取得による支出7,000百万円、長期借入金の返済による支出584百万円、配当金の支払額(非支配株主への配当を含む)3,281百万円等による資金の支払であります。

 

 

③ 生産、受注及び販売の状況

a. 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと次のとおりであります。

 

セグメントの名称

当連結会計年度
(自 2023年4月1日
 至 2024年3月31日)

前年同期比(%)

トランスポーテーション(千円)

40,744,514

110.2

デイリーライフ&ヘルスケア(千円)

35,359,301

102.7

エレクトロニクス(千円)

23,552,442

102.4

ビルディング&コンストラクション(千円)

23,146,179

95.2

 報告セグメント計(千円)

122,802,437

103.4

その他(千円)

13,602

310.0

合計(千円)

122,816,039

103.4

 

(注) 金額は、販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。

 

b. 受注状況

当連結会計年度における受注状況をセグメントごとに示すと次のとおりであります。

 

セグメントの名称

受注高(千円)

前年同期比(%)

受注残高(千円)

前年同期比(%)

トランスポーテーション

39,841,774

104.5

2,568,614

97.1

デイリーライフ&ヘルスケア

33,813,663

99.4

1,770,798

92.3

エレクトロニクス

24,724,505

99.4

2,949,001

91.8

ビルディング&コンストラクション

26,451,054

94.8

2,651,033

95.9

 報告セグメント計

124,830,997

99.9

9,939,448

94.3

その他

70,294

65.0

22,024

288.5

合計

124,901,291

99.9

9,961,472

94.5

 

 

c. 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと次のとおりであります。

 

セグメントの名称

当連結会計年度
(自 2023年4月1日
 至 2024年3月31日)

前年同期比(%)

トランスポーテーション(千円)

40,004,145

105.0

デイリーライフ&ヘルスケア(千円)

34,055,970

101.7

エレクトロニクス(千円)

25,022,093

101.6

ビルディング&コンストラクション(千円)

26,601,003

97.8

 報告セグメント計(千円)

125,683,212

101.9

その他(千円)

55,903

54.6

合計(千円)

125,739,116

101.8

 

(注) セグメント間の取引については相殺消去しております。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

売上高

当連結会計年度の売上高は、125,739百万円、前連結会計年度比2,241百万円(1.8%)の増加となりました。中国を除く国内外での自動車用コンパウンド、国内での樹脂サッシ用塩ビコンパウンド、好調に推移した国内向け小巻ラップ製品の販売がそれぞれ増加したこと及び、円安の影響もあり増収となりました。

 

売上原価、販売費及び一般管理費、営業利益

当連結会計年度の売上原価は、前連結会計年度比710百万円(0.7%)増加し103,856百万円となりました。主な要因は、原材料価格高騰によるものです。また、販売費及び一般管理費は、前連結会計年度比261百万円(2.0%)増加し13,106百万円となりました。主な増加要因は、研究開発費、労務費等の増加によるものです。

その結果、営業利益は、前連結会計年度比1,269百万円(16.9%)増加し8,775百万円となりました。

 

営業外損益

当連結会計年度における営業外収益は、為替差益等により、前連結会計年度比425百万円(62.1%)増加1,111百万円となり、営業外費用は、支払利息等により前連結会計年度比115百万円(50.6%)増加342百万円となりました。

 

経常利益

当連結会計年度における経常利益は、前連結会計年度比1,580百万円(19.8%)増加9,544百万円となりました。

 

特別損益

当連結会計年度における特別利益は、投資有価証券売却益等の増加により、前連結会計年度比1,891百万円増加の1,901百万円となりました。

また、当連結会計年度における特別損失は、減損損失等の増加により、前連結会計年度比132百万円増加の145百万円となりました。

 

税金等調整前当期純利益

税金等調整前当期純利益は、前連結会計年度比3,338百万円(41.9%)増加11,300百万円となりました。

 

親会社株主に帰属する当期純利益

親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度比2,322百万円(51.0%)増加6,880百万円となりました。

 

 当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

 セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、次のとおりであります。

 営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益の増加、棚卸資産の増加額減少により、前連結会計年度比で増加しております。投資活動によるキャッシュ・フローは、主に製造設備への投資となりますが、事業計画に基づいており、その投資額につきましては適切であると認識しております。財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金の増加等により、前連結会計年度比で支出が減少しております。

 当社グループの資本の財源及び資金の流動性についての分析につきましては、次のとおりであります。

 短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資やその他の投資資金の調達につきましては、金融機関からの長期借入を基本としております。

 当社グループは、中長期的に安定した成長のため製造設備への投資が必要となりますが、投資額については適切に管理されており、資金の流動性に問題はないと認識しております。

 なお、当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は10,152百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は21,852百万円となっております。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

 

6 【研究開発活動】

4月から中期経営計画の最終年となります。当社の基盤技術は「処方設計技術」「コンパウンド生産技術」「フィルム製膜・加工技術」です。中期経営計画では、もう一度基本に立ち返り、ものづくりに徹していくことが重要と考え技術本部方針としてこの「基盤技術を強化しイノベーションを創出する」「カスタマーディライト商品のスピード開発」「DXを活用した、開発スタイルに転換」を掲げるとともに、それに対応した組織体制を見直しました。

 

研究テーマは「既存事業から手を伸ばせば届く範囲」で良いこと。それは、既存事業の半歩先、1歩先の領域には、まだ、未来を拓く可能性を秘めた数多くのテーマがあります。そこから更に歩を進め、未来に向けた新たな領域へ向かうことを目指していきます。

 

中期経営計画で策定している研究拠点である研究開発センターの環境整備などハード面の充実を図ってきました。コンパウンド、フィルム技術の更なる深化のため、研究開発センター(東京)1号館、2号館、3号館の本格運用を開始しました。3号館にフィルム試作機を導入し、コンパウンドで開発した材料をフィルム、シート化にしてサンプルワークが出来る体制となります。

 

今期は、2号館に加硫ゴム代替TPVコンパウンド開発のための混練機を含めた新しいTPV生産のためのセミコマーシャルプラントが完成しました。あらゆる加硫ゴムをTPV化していきます。また、開発した加硫ゴム代替コンパウンドをゴムシート代替としてサンプルワークを開始したいと考えています。このセミコマーシャルプラントでしっかり生産技術を磨き将来実機導入ラインの研究に努めたいと考えています。

知財戦略強化、オープンイノベーションの実行については、サステナビリティやESG(環境、社会、ガバナンス)の推進など、昨今の社会変化に対応していくためには、多面的な視点から経営戦略を策定することが不可欠です。そこには、知財情報を活用するIPランドスケープが有効であり、当社の経営課題に対して知財が提言を実践しています。

統合報告書で掲げたマテリアリティのKPI、特許出願件数現中経累計45件の達成に向けて活動し、2023年度は19件の特許出願をしました。

オープンイノベーションについては、統合報告書で掲げたマテリアリティのKPI、外部機関との協業件数を現中経累計10件の達成に向けて活動しています。来期はフィルム案件に注力し、3大学とのテーマ選定も終わり共同開発の準備を進めています。

 

環境対応製品の開発については、省エネルギー素材、CO2排出量が圧倒的に削減できる熱可塑性エラストマーを加硫ゴム代替として普及させることがバイオマス材料RIKEBIOの拡販と共にこれからの大きな課題となります。また、この環境問題は当社にとって単なる「制約条件」だけでなく、攻めに転じることができる「挑戦機会」にもなります。ただ、いくら素材が環境に良くても、選ばれなければ環境負荷を抑えることはできません。多くのひとに選ばれるためには、お客様にとって有用で手が届くものを意識して開発を進めています。

 

加硫ゴム代替については、完成したセミコマーシャルプラントを使用して、加硫ゴム代替TPVのサンプルワーク、少量生産が可能となりました。この加硫ゴム代替TPVは、当社のエラストマー事業の核となるとの認識で研究・開発を進めています。

現在まで加硫ゴム代替TPVについては、MI(マテリアルインフォマティックス)を使って処方の最適化を実施して基本形は完成しました。このコンパウンドを使ったTPVシートなども上市していきたいと考えています。

 

① コストと性能のバランスを重視した当社として新しいゴム素材を使ったゴム代替TPV

自動車、建材用途に開発した当社材オレフレックスN、マルチユースレオストマーの後継材料

② ガスバリア性、制振特性に優れるブチルゴム代替材料TPV

医療、食品、建材、自動車用途に開発し、上記機能を生かした新しいTPV

③ 耐油性、耐薬品性など優れるNBR、HNBR代替TPV

当社材アクティマーKの後継材料(性能向上)

④ 汎用ゴムEPDM代替TPV

当社材 オレフレックスN、アクティマーGの後継材料(性能向上)

他にACM(アクリルゴム)代替TPV、BR(ブタジエンゴム)代替TPVなど開発を進めています。

 

研究開発のDXについては100年企業を目指し「持続的成長」のため新技術開発、新事業創造をしていく必要があります。それには環境整備が重要でそのなかでもデジタル環境は今後ますます重要となります。

目標(ありたい姿)は、従来の業務を効率化省力化し、人は新しいこと、人にしかできないことに特化したい。しかし、現状は目の前の顧客の対応に追われて、人や組織が変わると技術が途絶える(情報の属人化、新人など情報格差による非効率)暗黙知を形式知化することが重要になってきます。まずは、当社技術の業務フローの見直しを進めていきます。

 

① 試験業務を包括的にデジタルで管理

試験業務、試験機器、試験データを包括的にデジタルで管理、試験に関するあらゆることをシステム化。試験業務を個人作業から、衆知による価値創造プロセスに転換します。

② MI(マテリアルインフォマティックス)と連動させて得られたデータを活用し実験精度が向上します。

新たな試験に取り組む際にも過去の試験は参考になります。過去データの活用は、試験のダブりを防止し作業を効率化するとともに、試験精度の向上にも役立ちます。

③ 試験データを分析し新たな知見を獲得

試験データを分析することで、新たな知見獲得の可能性があります。そのためにも、試験データの蓄積は重要です。データサイエンスを活用し製品開発力を向上させます。

④ エクセルからの脱却

エクセルで管理している様々なデータを統合し、未来に活かせる情報としてストックします。エクセルライクな操作性はそのままに、コンカレントな業務遂行(相乗効果をもちながら作用する)を促進します。同時編集、リアルタイム集計、バージョン管理などを実現して生産性の向上を図りたいと考えています。

⑤ デジタル人材の育成

プログラミング経験がなくても、直感的な操作でアプリケーションをスピーディーに構築できるようにしてシステムの内製化の取り組みを通じてデータ活用術を習得。業務部門自らが能動的にデジタル変革を実行する組織に転換します。

 

当連結会計年度の成果として、

 

コンパウンド関係

 1.「リケガード」の拡充(抗菌・抗ウイルス・防虫)に新シリーズ消臭、アレル物質低減コンパウンドの上市

 2.完全架橋エラストマーである「アクティマーG」の自動車部品への販売拡大

 3.高耐熱・柔軟EV車用充電ケーブルの販売拡大

 4.バイオマス材料である「RIKEBIO」、「Natural RIKEBIO」上市

 5.自動車用グラスランチャンネル部材の全日系車への採用拡大

 6.人肌に馴染む柔軟素材「LEOSTOMER FT」の上市

 7.非Pb非Sn系射出用硬質PVC材料の上市

 8.ACSの脱Sn材料の上市

 9.医療用TPE材の採用拡大

 10.加硫ゴム代替TPVセミコマーシャルプラント完成

 11.リサイクル硬質塩ビ用マスターバッチの上市

等で開発が進み、一部流動することができました。研究開発費は、1,196百万円であります。

 

フィルム関係

 1.「リケガード」(抗菌・抗ウイルス・防虫)フィルムの採用拡大

 2.各種塗装代替フィルムの開発

 3.建装材用意匠性フィルムの流動

 4.高耐湿・高耐熱性FFC用フィルムの流動

 5.遮熱ウィンドウ用フィルム「ICE-μ」の採用拡大

 6.バイオマスフィルムである「RIKEBIO」フィルムの開発

等で開発が進み、一部の製品を流動できました。研究開発費は、565百万円であります。

 

食品包材関係

 1.自動包装機メーカー向け純正ノンストレッチPVCラップフィルムの販売拡大

 2.食品包材の海外拡販検討

 3.食品スーパーマーケット・バックヤード向け小型包装機用PVCラップフィルムの開発と採用

 4.業界団体とのコラボレーションによるPVCラップフィルムの広報活動

 5.製膜加工機における混練技術の基礎研究

 6.バイオマスラップ ボタニカルラップ販売開始

 7.鮮度保持フィルムの開発

等の活動に要した研究開発費は、131百万円であります。