(1)経営の基本方針
当グループは、「優れた自主技術・製品の開発を通じて社会に貢献する」を企業理念として、顧客に対し、より高い価値をもたらす競争力のある製品・サービスを提供することで、一層の発展を遂げることをめざしています。当グループでは、グループ内の多様な経営資源を最大限に活用するとともに、事業の見直しや再編を図ることで、競争力を強化し、グローバル市場での成長を実現し、顧客、株主、従業員を含むステークホルダーの期待に応えることにより、株主価値の向上を図っていくことを基本方針としています。
(2)経営環境及び対処すべき課題
①当グループの経営環境及び対処すべき課題
現在の世界は、将来の予測が立てにくい時代です。国家間及び地域の紛争や緊張の高まり、気候変動や資源不足、高齢化による人口構造の変化、都市化の問題など様々な変化が生じています。一方で、複雑化する社会課題を解決するためのイノベーションが世界中で起きています。
かかる経営環境において、当グループは、2022年4月に策定した「2024中期経営計画」のもと、データとテクノロジーでサステナブルな社会を実現して人々の幸せを支えることをめざしています。「デジタル」「グリーン」「イノベーション」の3つを成長の柱とし、グループ一体となったOne Hitachiでのグローバルな成長により、めざす社会を実現すべく、以下の施策に注力しています。
i) Lumadaの価値協創サイクルの強化と展開
顧客の経営課題を理解した上で、その解決方法を設計・実装し、運用・保守するとともに次の課題解決に取り組むという、Lumadaにおける顧客との価値協創サイクルを強化しています。DX(デジタルトランスフォーメーション)・GX(グリーントランスフォーメーション)需要の高まりも追い風に、エネルギーや交通、産業など、当グループのあらゆる事業と連携するとともに、生成AIなどの最先端テクノロジーも活用して、Lumadaソリューションの創出・展開に取り組んでいます。
ii) 環境経営の推進と人的資本の強化
当グループは、社会イノベーション事業を通じて、環境課題の解決と人々の生活の質の向上の両立に取り組んでいます。
脱炭素化の取組においては、2030年度までに自社の事業所(ファクトリー・オフィス)での、2050年度までにバリューチェーン全体でのカーボンニュートラル達成という目標を掲げています。日立におけるCO2排出量削減は目標を上回るペースで進捗しており、削減をさらに推進するとともに、環境に配慮した製品によるソリューションを提供して顧客のCO2排出量削減を支援しています。
また、多様な人財の活用を通じ、さらなる成長を実現するため、役員層における女性・外国人比率の増加やデジタル人財などの獲得・育成に努めるとともに、One Hitachiでの成長マインド醸成のための従業員エンゲージメント向上を図っています。
iii) 成長に向けたイノベーションの創生
当グループは、グローバルな事業成長へ向けてイノベーション創生を推進しており、先端研究を含めた研究開発投資に加え、スタートアップ企業との協業のためのコーポレートベンチャリング投資も拡大を図っています。社会や顧客の課題を探索し、その課題解決に向けたイノベーションを創生していくことで、次世代まで続く持続的な成長を実現していきます。
これらにより、先の見通せない不安定な経営環境でも安定してキャッシュを創出できるよう、事業の成長を図るとともに、継続的な事業構造改革による資産効率の改善などにも取り組んでいきます。キャッシュ創出力を高める一方で、成長に必要な投資は、厳選して迅速に実行するとともに、株主還元も安定的に実施していきます。
②注力分野における経営環境及び対処すべき課題
注力分野であるデジタルシステム&サービス、グリーンエナジー&モビリティ及びコネクティブインダストリーズの3セクターにおける経営環境及び対処すべき課題は、以下のとおりです。
デジタルシステム&サービス
不確実な社会・経済情勢において複雑化する経営課題に対して、AI、アナリティクス等のデジタル技術やサービスの活用が一層求められています。また、深刻な社会・環境課題を背景に、デジタル技術で企業経営や社会の変革を図るDXの取組がグローバルで拡大しています。
デジタルシステム&サービスセクターでは、そのようなグローバルDX市場において、GlobalLogic社のデザインやデジタルエンジニアリング力を活用し、日立の「OT×IT×プロダクト」を組み合わせた価値創造による、顧客や社会の課題解決に取り組んでいます。当グループの他セクターと連携し、顧客との協創の深化による継続的な価値提供、高付加価値なソリューションの横展開、顧客やパートナーとのエコシステム構築による新市場創生などを加速していきます。
また、デジタルシステム&サービスセクターは、これらの取組を支えるデジタル人財の育成・拡充など経営基盤の強化にも取り組みながら、社会や国内外の顧客の課題解決パートナーとして継続的に価値を提供し、Lumada事業のサステナブルな成長を実現します。急速に進化する生成AIによるイノベーションの創出に向け、国内外の顧客やパートナーとの多岐にわたる協創活動にも取り組んでいきます。
グリーンエナジー&モビリティ
気候変動や地政学リスクの高まりを背景に、エネルギー転換が急速に進展し、市場が拡大しています。具体的には、バスや鉄道などのモビリティの電動化や、電源構成の多様化・分散化によるマイクログリッドの拡大に加え、従来の社会インフラ事業のサービス化や脱炭素社会実現に向けたGXなどにより、新たな事業機会が世界各地で生まれています。
グリーンエナジー&モビリティセクターでは、グローバルトップレベルの製品群とインテグレーション力でサステナブルな社会インフラの実現に貢献し、地球環境に優しいグリーンなエネルギーとモビリティで世界中の人々の生活の質の向上に貢献していきます。具体的には、パワーグリッド、再生可能エネルギーシステム、原子力発電システム、鉄道システムなどにおいて、「OT×IT×プロダクト」の強みを生かした製品やサービス、ソリューションを提供していきます。エネルギー分野では、日立エナジー社の持つパワーグリッド技術とLumadaを活用したデジタル技術との融合を通じた新たなソリューションの提供やクリーンエネルギー事業の推進により、脱炭素社会の実現に貢献するサービス・ソリューションの提供を拡大していきます。鉄道システム分野では、交通ネットワークをデジタルでつなぎ、データを活用した鉄道運行サービス等の展開を加速させていきます。
これらの取り組みを通じ、グリーンエナジー&モビリティセクターは、2024中期経営計画の3つの成長の柱であるグリーン価値の創出の中核をなす事業として、脱炭素化やエネルギーの安定供給、安全・安心・快適な鉄道システムの提供など、ウェルビーイングの実現に貢献していきます。また、日立エナジー社や、新しく当グループに加わったタレス社の鉄道信号関連事業がグローバルに有するインストールベースを活用し、高収益事業への転換を加速させていきます。
コネクティブインダストリーズ
地政学リスクの高まりや気候変動による自然災害の増加など社会環境の不確実性が急増していることに加え、デジタル技術の急速な進展に伴い、人々の生活様式や企業活動は大きく変容し、新たなDX・GXへのニーズがこれまで以上に高まっています。こうした中、組織や企業間、さらには分野を越えたトータルな「際」の課題解決が求められています。
コネクティブインダストリーズセクターでは、昇降機、家電、計測・分析装置、医療機器、産業機器などの競争力の高いプロダクトを集結させ、それらをデジタルでつなぎ、ソリューションとして提供し、サステナブルな価値を創出していきます。
具体的には、Lumadaの顧客協創フレームワークを活用し、リアル空間とサイバー空間をデジタルでつなぐことで、経営から現場、サプライチェーン、異業種の間に存在する「際」の課題を解決し、全体最適化を実現するトータルシームレスソリューションを、産業分野からアーバン分野、ヘルスケア分野、さらにグリーン領域へ進化・拡大しています。また、コネクテッドプロダクトが創出するデータを活用したアフターサービスや、顧客の新たな課題解決ニーズの深耕により、継続的・循環的に価値を提供するリカーリングビジネスを強化します。
さらに、グローバル成長の加速に向けて、産業分野では、北米において、JR Automation社のロボティクスSI、Flexware Innovation社のMES(製造実行システム)・SCADA(監視制御システム)、Hitachi Global Air Power社の空気圧縮機、Telesis Technologies社のマーキングを中核にトータルシームレスソリューション展開を加速していきます。さらに、半導体製造装置事業では顧客に近い拠点を活用した協創の深化、ヘルスケア分野では北米を中心に分子診断事業と粒子線治療システム事業の強化に注力しています。
コネクティブインダストリーズセクターでは、「つないでいく。データを、価値を、産業を、そして社会を。」をパーパスとして定め、顧客との協創を通じて「サステナブル バリュークリエーター」をめざしていきます。
(3)中期経営計画における経営指標
2024中期経営計画においては、以下の指標を経営上の業績目標としています。
指 標 |
2024中期経営計画目標 |
選定した理由 |
売上収益年成長率(2021年度-2024年度 CAGR)(注)1、2 |
5-7% |
成長性を測る指標として選定 |
Adjusted EBITA率(2024年度) (注)3 |
12% |
収益性を測る指標として選定 |
EPS(2024年度)(注)4 |
600円 |
収益性及び株主価値を測る指標として選定 |
コア・フリー・キャッシュ・フロー (3年間累計)(注)5 |
1.2兆円 |
キャッシュ創出力を測る指標として選定 |
投下資本利益率(ROIC)(注)6 |
10% |
投資効率を測る指標として選定 |
(注)1.CAGR(Compound Annual Growth Rate)は、年平均成長率です。
2.上場子会社を除いて算出しています。
3.Adjusted EBITA(Adjusted Earnings before interest, taxes and amortization)は、売上収益から、調整後営業利益(売上原価並びに販売費及び一般管理費の額を減算して算出した指標)に、企業結合により認識した無形資産等の償却費を足し戻した上で、持分法による投資損益を加算して算出した指標です。Adjusted EBITA率は、Adjusted EBITAを売上収益の額で除して算出した指標です。
4.EPS(Earnings Per Share)は、一株当たり当期利益であり、株式分割(2024年7月1日効力発生予定)前の株式数で計算しています。
5.コア・フリー・キャッシュ・フローは、フリー・キャッシュ・フロー(営業活動に関するキャッシュ・フローと投資活動に関するキャッシュ・フローを合わせたもの)から、M&Aや資産売却他に係るキャッシュ・フローを除いた経常的なキャッシュ・フローです。
6.ROIC(Return on invested capital)は、「(税引後の調整後営業利益+持分法損益)÷投下資本×100」により算出しています。なお、「税引後の調整後営業利益=調整後営業利益×(1-税金負担率)」、「投下資本=有利子負債+資本の部合計」です。
また、上記の経営目標の他、顧客や社会への価値提供と人的資本の充実に向け、以下の項目を中期経営計画の重点項目として取り組んでいきます。
当グループは、地球を守ることと、一人ひとりが快適で活躍できる社会が両立する未来を実現するために、サステナビリティを事業戦略の中核に据えた「サステナブル経営」を実践しています。具体的には、社会課題の解決をめざした社会イノベーション事業を通じて、グローバルな社会・環境課題の解決に貢献し、サステナブルな社会の実現に向けた取組を推進しています。また、社会・環境の変化による事業へのリスク・機会を把握することで、事業継続の強靭性の向上や企業価値の向上に努めています。
当グループのサステナビリティに関する考え方及び具体的な取組は以下のとおりです。
(1)ガバナンス及びリスク管理
当グループは、サステナビリティに関する重要事項を、「成長戦略会議」「リスクマネジメント会議」「人財戦略会議」を含む経営会議にて審議・決定し、必要に応じて取締役会に附議しています。
成長戦略会議では、当グループの成長に必要な経営戦略に係る事項を議論します。
リスクマネジメント会議は、全社的なリスクに係る重要事項の議論・決定を行っています。一元的・横断的にグループ全体のリスクを把握することで、成長戦略と連携しながら経営基盤の強化を図っています。
人財戦略会議は、組織・人財に関して決裁する執行役社長の諮問機関として位置づけ、当グループの成長の観点から、組織・文化の醸成及び人財の確保・育成のために必要な事項を議論しています。
① サステナブル経営のグループ全体への浸透
サステナビリティの推進に関しては、Chief Sustainability Officerのもと、グループ全体で推進しています。Chief Sustainability Officerが議長を務め、各ビジネスユニット(BU)及び主要グループ会社の事業推進部門長クラスや地域統括会社のサステナビリティ責任者をメンバーとするサステナビリティ推進会議を年に1~2回開催し、サステナビリティに関する重要施策の議論と情報共有を図っています。
また、カーボンニュートラルやサーキュラーエコノミー、人権デュー・ディリジェンス(HRDD)、ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DEI)、労働安全衛生、サプライチェーン、品質保証などの個別のサステナビリティテーマについては、各BU及び主要グループ会社等の責任者をメンバーとする会議体を設け、グループ横断での施策の検討や情報共有などを通じて当グループ全体のサステナビリティを推進しています。
② サステナビリティ目標を役員報酬評価に反映
役員報酬を決定する評価基準にも、サステナビリティに関する定量又は定性的な目標に対する成果を導入しています。サステナビリティ戦略については、中長期インセンティブだけでなく、短期インセンティブにおいても、サステナビリティ戦略に基づくマテリアリティ「環境」「誠実な経営」「幸せな生活」に関する具体的指標・目標を設定し、それを評価に組み込むことでその実行を促しています。
当社の役員報酬制度については、「
(2)重要課題に対する取組
サステナビリティ重要課題として、「環境(脱炭素と資源循環への貢献)」「レジリエンス(社会インフラの維持と迅速な回復に寄与)」「安全安心(安全安心な社会づくりに貢献)」「幸せな世界(心身ともに健康で豊かな人生に貢献)」「誠実な経営(企業倫理及び人権尊重の徹底)」「ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DEI)(すべての人が生き生きと活躍できる社会への貢献)」のマテリアリティを特定しました。
当グループでは、下の図のように、2024中期経営計画において、めざす姿として「データとテクノロジーでサステナブルな社会を実現して人々の幸せを支える」ことを新たに掲げ、経営戦略を進めています。プラネタリーバウンダリーの配慮に関しては、環境長期目標「日立環境イノベーション2050」でバリューチェーンを通じて2050年度までのカーボンニュートラル達成を目標に掲げています。ウェルビーイングは、一人ひとりが快適で活躍できる社会をめざし、社内外の取組をもう一段進歩させて人生100年時代に向けたイノベーションの創出を図っています。
①脱炭素・気候変動に関する取組(TCFDに基づく開示)
当社は、2018年6月に金融安定理事会(FSB)「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言に賛同を表明し、同年に公開した日立サステナビリティレポート2018より、TCFD提言に基づく情報開示をしています。本有価証券報告書では、その抜粋を掲載します。
(イ)ガバナンス
当グループは、気候変動を含む環境課題への対応を重要な経営課題の一つと認識し、気候変動に関するガバナンスについても、前項の「
(ロ)戦略
当グループでは、2016年度にパリ協定を踏まえて「環境ビジョン」、環境長期目標「日立環境イノベーション2050」を策定しました。その後のIPCC「1.5℃特別報告書」「第6次報告書」を踏まえた、気温上昇1.5℃以内の実現に向け、当グループの事業所では2030年度まで、バリューチェーンでは2050年度までのカーボンニュートラル達成を目標に掲げ、脱炭素化の取組を推進しています。
気候変動関連のリスク
気候変動に関するリスクについては、「脱炭素経済への移行リスク(主に1.5℃シナリオに至るリスク)」及び、「気候変動の物理的影響に関連したリスク(4℃シナリオに至るリスク)」に分類して分析・管理しています。
・脱炭素経済への移行リスク(主に1.5℃シナリオに至るリスク)
脱炭素社会への移行リスクとして一般的に大きなものとしては、「脱炭素社会が実現した世界では、現状のままで存続できない事業」において存在するリスクです。これは、化石燃料が使えなくなるリスクに該当しますが、現在の当グループの事業では、電気をエネルギー源とするものが多いため、重大なリスクはほとんど見つかりませんでした。
その他、当グループが想定する脱炭素社会への移行リスクとしては、炭素税、燃料・エネルギー費への課税、排出権取引などの導入に伴う事業コスト負担増や、脱炭素社会に向けた製品・サービスの技術開発の遅れによる販売機会の逸失などがあります。このなかで、脱炭素社会に向けた製品開発の遅れのリスクについては、機会と表裏一体であり、脱炭素社会に貢献する事業を進めることで、リスク回避が可能と判断しています。
・気候変動の物理的影響に関連したリスク(主に4℃シナリオに至るリスク)
気候変動に関する物理的リスクに関しては、気候変動の影響と考えられる気象災害、例えば台風や洪水、渇水などの激化(急性リスク)や、海面上昇、長期的な熱波など(慢性リスク)による事業継続のリスクが考えられます。
こうしたリスクの回避としては、工場新設時には洪水被害を念頭に置いて立地条件や設備の配置などを考慮する対策を行っています。
気候変動関連の機会
当グループでは、気候変動に関連する多くの機会が考えられます。
環境長期目標や「2024中期経営計画」に掲げたCO2排出量の削減目標を達成するには、事業所の脱炭素化はもちろん、バリューチェーン全体の排出の多くを占める、販売された製品・サービスの使用に伴うCO2排出の削減が重要です。省エネルギー化等による、CO2削減に貢献する製品・サービスの開発・提供は、顧客ニーズへの対応であり、社会の脱炭素化への貢献になります。また、顧客との協創によるカーボンフリーソリューションやサービスの普及のような脱炭素化に貢献するビジネスの拡大にも機会があります。GX(グリーントランスフォーメーション)への取組は、当グループの経営戦略として推し進めている「社会イノベーション事業」の大きな柱であり、短・中・長期にわたる大きな事業機会になります。
当グループの気候変動関連のリスクと機会について
気候変動関連のリスクと機会の検討の結果から、当グループでは気候変動関連の重大で対応が困難なリスクは現段階では見つからず、気候変動対策への貢献は機会として捉えることができることが分かりました。1.5℃及び4℃いずれのシナリオ下においても、市場の動向を注視し柔軟かつ戦略的に事業を展開することで、当グループは、中・長期観点から、脱炭素社会への移行において高いレジリエンスを有していると考えています。
(ハ)リスク管理
気候変動関連のリスク管理については、BU及びグループ会社ごとに環境負荷などを把握し、評価・査定しています。評価結果は、当社サステナビリティ推進本部が集約し、グループ全体として特に重要なリスクと機会を認識した場合には、経営会議で審議・決定し、必要に応じて取締役会でも審議します。
(ニ)指標と目標
当グループは、環境長期目標「日立環境イノベーション2050」において、以下の目標を掲げています。
「中期目標:ファクトリー・オフィスにおいて2030年度までにカーボンニュートラル達成」
「長期目標:バリューチェーンにおいて2050年度までにカーボンニュートラル達成」
この実現に向けて、中期経営計画の期間(3年間)にあわせて2024年度を最終年度とする「2024環境行動計画」を策定しています。そのなかで指標と目標を設定し、進捗を管理しています。
気候変動の緩和と適応に関する指標のうち、ファクトリー・オフィスにおけるCO2排出量総量削減率に関する目標と実績は以下のとおりです。
指 標 |
目 標 |
2023年度 実績 |
||
2030年度(中期) |
2024年度(短期) |
2023年度(短期) |
||
ファクトリー・オフィスにおけるCO2排出量総量削減率(2010年度比) |
カーボンニュートラル |
50%削減 |
35%削減 |
74%削減 |
(注)1. 本目標は、「2024環境行動計画」です。詳細は後日公開予定の日立サステナビリティレポート2024をご覧ください。
2. 2023年10月16日付で日立Astemo㈱が株式の一部譲渡により当社の連結子会社ではなくなったため、同社の数値は集計に含めていません。2023年度の実績が大幅に向上したのは、同社分の除外及び当グループ全体の削減努力によります。
当グループのGHG排出量(2023年度)
指 標 |
実 績 |
Scope1(注)1、2 |
|
Scope2(注)1、3 |
|
(注)1. 当社は、当社の定める「環境管理区分判定基準」に基づき、当グループ全事業所をA・B・Cの3区分に分類して管理しています。また、当連結会計年度末時点(2024年3月末)において在籍している会社を集計対象としています。上記のScope1及びScope2は、当グループの中で環境負荷が大きいA区分事業所及び発電事業を対象としています。
2. 当グループ内での燃料の使用や工業プロセスによる直接排出
3. 当グループが購入した電気・熱の使用に伴う間接排出
②人的資本・多様性に関する取組
(イ)戦略
日立は、人的資本、すなわち人こそが価値の源泉であると考えており、世界中の従業員の力を結集することで顧客と社会に価値を提供し、サステナブルな社会の実現に貢献することをめざしています。
社会イノベーション事業のグローバルな展開を進めるなか、日立は、多様な人財が国・地域・事業体を超えてOne Teamでプロアクティブに業務を遂行し、変化が絶えない世の中に速やかに適応できる人財・組織を求めています。
日立では、以下の方針のもと人財の確保・育成と社内環境の整備に取り組んでいます。
i) ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DEI)の推進
日立にはすべての人にとって居場所があり、お互いのバックグラウンド、年齢、性別、セクシュアリティ、家族構成、障がい、ニューロダイバーシティ、国籍、人種、民族、宗教や価値観等の多様性を歓迎します。こうした多様性が、市場の理解、優れたアイディアの創出、社会の進展に貢献するイノベーションの推進には不可欠と考えているからです。執行役社長によるトップコミットメントのもと、グローバル推進体制を敷き、当社役員層(執行役・理事)における女性比率及び外国人比率は、2024年度目標がそれぞれ15%であるのに対して、2024年6月1日現在において女性比率11.8%、外国人比率25.0%と、順調に推移しています。当グループのDEIテーマに沿った取組を引き続き進めていきます。
<当グループのDEIテーマとDEI推進に係る取組事例>
DEIテーマ
全社取組
各事業体・地域での取組
ii)グローバル人財マネジメント
社会イノベーション事業を推進するためには、顧客や社会の課題を探索し、これまでになかった新しいソリューションを顧客と協創していくことが重要となります。このため、日立では、2024中期経営計画に基づいた人財マネジメントとしてのMission・Visionを掲げました。具体的には、「社会貢献を志向する人財が集まり、生き生きと活躍する組織となるために、グローバル市場における“Employer of choice(選ばれる会社)”を実現する」というVisionのもと、心身の健康と安全の確保、リスクマネジメントの強化・徹底の2つを「Foundation」とした上で、「People」「Mindset」「Organization」の3つを人財戦略の柱に定め、それぞれ施策を推進しています。
● デジタル人財の確保・育成
デジタル技術を活用した社会イノベーション事業を加速し、日立の成長のドライバーであるLumada事業の成長を実現するために、DX(デジタルトランスフォーメーション)をけん引する人財(デジタル人財)の確保と育成に力を入れています。
Lumada事業の成長に伴い、採用・事業買収を通じたグローバルでのデジタル人財の獲得が進んでいるほか、当グループのコーポレートユニバーシティ(企業内大学)である日立アカデミーを中心に、100コース以上にわたる独自のDX研修体系や実務経験を通じた育成プログラムの拡充、GlobalLogic社のメソドロジーを活用した内部の人財育成の強化に取り組んでいます。
<Lumada事業成長に向けたグローバルタレント強化>
<Lumada事業を推進する人財とそのケイパビリティ(例)>
● 従業員エンゲージメントの向上・グローバルでの日立カルチャーの醸成 |
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毎年、グローバルに従業員サーベイ「Hitachi Insights」を実施し、人財マネジメント施策を企画・推進しています。経営層及び各職場のマネージャーは、自組織のサーベイ結果を各組織のメンバーと共有し、組織としての課題を把握した上で、対策となるアクションを立案・実行してPDCAサイクルを継続的に回しています。 サーベイの結果によるエンゲージメント向上に向けたアクション立案・実行を推進する上で、課題特定手段の一つとして、エンゲージメント・ドライバー(エンゲージメントを高める上で相関性の高い項目)を特定し、取組の改善を実施しています。 |
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なお、2024中期経営計画において、「従業員エンゲージメントスコア(注)」を2024年度までに68.0%とする目標を設定しましたが、2022年度に本目標を前倒しで達成しました。したがって、さらなる高みをめざして、新たな目標値を71.0%に設定し、2023年度は68.6%となりました。この結果を受け、エンゲージメントドライバーなどで特定した課題である、グローバルでの日立カルチャーの醸成やウェルビーイングの促進及び適所適財の推進、経営トップからのコミュニケーション強化などへのアプローチを通じて、当グループ全体で取組を行い、エンゲージメントの向上を図ります。 |
(注)従業員サーベイにおける従業員エンゲージメントの設問に対する肯定的回答率。(「自社で働くことへの誇り」「働き甲斐のある職場であるか」「仕事へのやりがい・達成感」「当面自社で勤務する勤続意欲」の4点から測定)
<従業員エンゲージメントの向上・グローバルでの日立カルチャーの醸成のための取組事例>
全社取組
各事業体・地域での取組
● 経営リーダーの選抜、育成
事業戦略の変化により経営リーダーに求められる能力も変化する中で、日立における経営リーダーとなる人財として、グローバル化、DXに対応できることはもちろん、自身の知識・経験だけでなく、社内外の知見も得ながら最終的に自身の責任で判断・決断し、変革・実行する能力とパーソナリティが求められます。このため、タレントレビューや外部アプレイザル(HLPO (注)1)をグローバルに実施し、実績(“Performance”)だけでなく資質(“Potential”)も踏まえ、国籍・性別等を問わず多様な人財を経営リーダー候補のタレントプールである「GT+(注)2」の選抜と、経営リーダーへの早期登用をめざす優秀層向けのプログラム「Future 50」等を通じて育成に努めています。 |
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Future50と取締役の懇親会の様子 (ストックホルムにて) |
この取組は、経営トップと指名委員会が協働しながら、Global Leadership Development(GLD)プログラムを通じて行います。次期・次々期のCEO、事業部門長など経営リーダー候補の育成にあたり、経営者ポジションを含むタフアサインメント等のOJT(On-the-job Training)及びOff-JT(社外トレーニング・コーチング)、や社外取締役と直接議論する機会の設定などを通じて、集中的な人財育成を行っています。
(注)1. Hitachi Leadership Profile Online
2. Global Talent Plus
<経営リーダーの選抜・育成状況>
● 適所適財の人財配置及び日本におけるジョブ型マネジメントへの転換
グローバルに最適な人財の確保・配置・育成を行うため、グローバル共通の人財マネジメント統合プラットフォームの構築とグローバルでのタレントモビリティを促進しています。人財マネジメント統合プラットフォームの構築においては、その運用範囲をグローバルに拡大すると共に、従業員のスキルやキャリア志向などをクラウドシステムで共有することで、グローバルでの人財検索やチームマネジメント等に活用しています。さらに、今後は自律的に学べる環境の整備に向けてグローバルでの教育プラットフォームを展開していく予定です。
<グループ共通の人財施策を通じて、成長に向けた行動定着を推進>
<日本での取組>
ジョブ型マネジメントへの転換を推進し、従業員一人ひとりの能力や意欲に応じた適所適財の人財配置を実践することで、個人と組織のパフォーマンスの最大化と従業員エンゲージメントの向上につなげ、組織と人財双方の成長の実現をめざしています。これまで「ジョブディスクリプション(職務記述書)」導入などによる職務・人財の見える化や、「学習体験プラットフォーム(LXP)」などの基盤構築を推進し、「社内外副業の試行」「上司-部下のキャリア対話強化」等の行動変容を促進する取組を強化してきました。今後は行動の習慣化に向けた取組と、国内グループ会社へのジョブ型人財マネジメントの拡大を推進していきます。
● 心身の健康と安全の確保
当社は、「安全と健康を守ることは全てに優先する」を基本理念とする「日立グループ安全衛生ポリシー」を世界の全グループ会社と共有しています。そして、コントラクターや調達パートナーを含む関係する全企業と連携しながら、グループ一丸となって、事業活動に関わる全ての人にとって安全・安心・快適で健康な職場づくりに努めています。
当グループは、事故のない安全な職場の構築をめざし、事業に適した労働安全衛生マネジメントシステムの構築・導入、定期的なリスクアセスメントや監査の実施、労働安全衛生に関する教育の展開等にグローバルで取り組んでいます。
(ロ)指標及び目標
具体的な人財施策の実行にあたっては、各施策が経営目標や主な経営戦略にどのように繋がっているかを整理し、それぞれの人財戦略・施策に対してKPIを設け、進捗をモニタリングしています。
上記のうち、特に重要性が高いKPIは以下のとおりです。
指 標 |
目 標 |
実 績 |
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女性比率: |
及び (グローバルDEI目標)(注)1 |
(注)2 |
外国人比率: (2024年6月現在) |
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(注)3 |
(2024年3月末) |
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(注)3、4 |
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年間 |
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2024年度までに2021年度比半減(注)6 |
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(注)1.当社単体の目標及び実績です。役員層は、当社執行役及び理事をいいます。
2.2024年4月1日付人事異動分を含みます。なお、「外国人比率15%以上」の目標は、2022年度に前倒しで達成することができました。今後もさらなる向上を図っていきます。
3.日立Astemoは除きます。
4.従来、「2024年度までに68%」の目標を設定していましたが、2022年度に前倒しで目標を達成したことから、新たな目標を設定しています。
5.Total Recordable Injury Frequency Rate(20万労働時間当たりの死傷者数)
6.2021年度実績:0.27
上表の「役員層における外国人比率」及び「従業員サーベイにおける従業員エンゲージメントの設問に対する肯定的回答率」については、当初目標を2022年度に前倒しで達成することができました。一方で、「死亡災害件数」については、現地工事において協力会社の死亡災害が発生していることを重く受け止め、工事を行う事業体から構成されるワーキンググループを立ち上げ、グループ共通安全強化施策の検討を開始しました。すべての災害は防ぐことができるという強いリーダーシップのもと、災害のない職場作りをめざして、今後も取組を継続します。
(1)リスクマネジメントについて
当グループでは、日々変化する経営環境を把握・分析し、社会的課題や当グループの競争優位性、経営資源などを踏まえ、当グループとして備えるべき様々な「リスク」とさらなる成長「機会」の両面からリスクマネジメントを実施し、リスクをコントロールしながら収益機会の創生に努めています。
当グループは、経営における全社的リスクに係る重要事項の議論・決定の場として「リスクマネジメント会議」を設置するなど、グローバルリスクマネジメントのさらなる強化を図っています。同会議の管下でリスクを一元的・横断的に把握する取組を通じ、成長戦略と連携した盤石な経営基盤の実現をめざしていきます。
(2)リスク要因
当グループは、幅広い事業分野にわたり、世界各地において事業活動を行っています。また、事業を遂行するために高度で専門的な技術を利用しています。そのため、当グループの事業活動は、多岐にわたる要因の影響を受けています。その要因及び各リスク要因に対する対応策の主なものは、次のとおりです。
なお、これらは当有価証券報告書提出日現在において合理的であると判断している一定の前提に基づいています。また、これらの対応策は各リスク要因の影響を完全に排除するものではなく、また、影響を軽減する有効な手段とはならない可能性があります。
①経済環境に係るリスク
経済の動向
当グループの事業活動は、世界経済及び特定の国・地域の経済情勢や地政学的情勢の影響を受けます。各国・地域や日本の景気が減速・後退する場合は、個人消費や設備投資の低下等をもたらします。また、特定の国・地域における紛争や緊張の高まりにより、当該地域での経済活動の制約や停止を余儀なくされることも考えられます。その結果、当グループが提供する製品・システム又はサービスの一部制限や需要の減少などにより、当グループの事業、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
かかるリスクへの対応として、当グループは、様々な事業分野・地域において、多様な特性を持つ社会イノベーション事業を組み合わせる経営をしています。また、リスク評価等を通じて地政学的情勢の変化への迅速な対応を図っています。
為替相場の変動
当グループは、取引先及び取引地域が世界各地にわたっているため、為替相場の変動リスクにさらされています。当グループは、現地通貨建てで製品・サービスの販売・提供及び原材料・部品の購入を行っていることから、為替相場の変動は、円建てでの売上の低下やコストの上昇を招き、円建てで報告される当グループの経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。当グループが、売上の低下を埋め合わせるために現地通貨建ての価格を上げた場合やコストの上昇分を吸収するために円建ての価格を上げた場合、当グループの価格競争力が低下し、それに伴い、経営成績は悪影響を受ける可能性があります。また、当グループは、現地通貨で表示された資産及び負債を保有していることから、為替相場の変動は、円建てで報告される当グループの財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当事業年度末時点における2025年3月31日に終了する連結会計年度の為替感応度(見通しの為替レートから1円変動した場合の業績影響額)の見積りは、以下のとおりです。
通貨 |
見通し |
為替感応度(億円) |
|
売上収益 |
Adjusted EBITA |
||
ドル |
140円/ドル |
120 |
12 |
ユーロ |
150円/ユーロ |
70 |
5 |
かかるリスクへの対応として、当グループでは、先物為替予約契約や通貨スワップ契約等の為替変動リスクのヘッジや製品・サービスの地産地消戦略の推進等を実行しています。
資金調達環境
当グループの主な資金の源泉は、営業活動によるキャッシュ・フロー、銀行等の金融機関からの借入並びにコマーシャル・ペーパー及びその他の債券、株式の発行等による資本市場からの資金調達です。当グループは、事業活動のための費用、負債の元本及び利子並びに株式に対する配当を支払うために、流動資金を必要とします。また、当グループは、設備投資及び研究開発等のために長期的な資金調達を必要としています。当グループは、営業活動によるキャッシュ・フロー、銀行等の金融機関からの借入及び資本市場からの資金調達により、当グループの事業活動やその他の流動資金の需要を充足できると考えていますが、世界経済が悪化した場合、当グループの営業活動によるキャッシュ・フロー、業績及び財政状態に悪影響を及ぼし、これに伴い当社の債券格付けにも悪影響を及ぼす可能性があります。債券格付けが引き下げられた場合、当社が有利と考える条件による追加的な資金調達の実行力に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社は、資金調達を銀行等の金融機関からの借入に依存することにより金利上昇のリスクにさらされています。また、外部の資金源への依存を高めなければならなくなる可能性があります。負債への依存を高めることにより、当社の債券格付けは悪影響を受けることがあり、当社が有利と考える条件による追加的な資金調達の実行力にも影響を及ぼす可能性があります。かかる資金調達ができない場合、当グループの資金調達コストが上昇し、当グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。当グループでは、金利上昇のリスクを軽減するための施策として、主に金利スワップ契約を締結しています。
また、当グループの主要な取引金融機関が倒産した場合又は当該取引金融機関が当グループに対して融資条件の変更や融資の停止を決定した場合、当グループの資金調達に悪影響を及ぼす可能性があります。
株価の下落等
当グループは、他社との事業上の関係等を維持又は促進するため、株式等の有価証券を保有しています。かかる有価証券は、価値の下落リスクにさらされています。株式の市場価格等の価値の下落に伴い、当社及び連結子会社は、保有する株式等の評価損を計上しなければならない可能性があります。さらに、当社及び連結子会社は、契約その他の義務により、株価の下落等にかかわらず、株式等を保有し続けなくてはならない可能性があり、このことにより多額の損失を被る可能性もあります。
当事業年度末時点において、当社が保有している投資株式の銘柄数及び貸借対照表計上額は、以下のとおりです。
|
銘柄数 (銘柄) |
貸借対照表計上額の合計額 (百万円) |
非上場株式 |
122 |
20,445 |
非上場株式以外の株式 |
35 |
45,889 |
かかるリスクへの対応として、当社は、取引や事業上必要である場合を除き、投資株式を取得・保有しないことを基本方針とし、既に保有している株式についても、保有意義や合理性が認められない限り、売却を進めています(保有目的が純投資目的以外の目的である投資株式の保有方針及び保有の合理性の検証について、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (5) 株式の保有状況」参照)。
②サプライチェーンに係るリスク
原材料・部品の調達
当グループの生産活動は、調達パートナーが時宜に適った方法により、合理的な価格で適切な品質及び量の原材料、部品及びサービスを当グループに供給する能力に依存しています。需要過剰の場合、調達パートナーは当グループの全ての要求を満たすための十分な供給能力を有しない可能性があります。原材料、部品及びサービスの不足は、急激な価格の高騰を引き起こす可能性があります。また、米ドルやユーロをはじめとする現地通貨建てで購入を行っている原材料及び部品については、為替相場の変動の影響を受けます。石油、銅、鉄鋼、合成樹脂、レアメタル、レアアース等の市況価格の上昇は当グループの製造コストの上昇要因であり、当グループの経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。一方、原材料及び部品等の商品価格が下落した場合には、棚卸資産の評価損等の損失が発生する可能性があります。さらに、自然災害等により、調達パートナーの事業活動やサプライチェーンが被害を受けた場合、当グループの生産活動に悪影響を及ぼす可能性があります。また、調達パートナーにおいて児童労働や強制労働などの労働者の人権に関する法令違反等が発生した場合、発注元としての当グループの評判の低下や、当該調達パートナーからの安定した原材料・部品の調達に支障が生じ、当グループの事業、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
かかるリスクへの対応として、当グループは、複数の調達パートナーとの緊密な関係構築や製品・サービスの地産地消戦略の推進による各地域における需要変動への適切な対応、国内及び主要海外拠点における事業継続計画(BCP)の策定による事業中断リスクへの対応力強化、グループ全体としての調達機能の活用・強化等を実行しているほか、調達パートナーにおける法令違反等の発生を防ぐため、質問票を用いた自己点検や監査、理解促進の取組を実施しています。
取引先の信用リスク
当グループは、国内外の様々な顧客及び調達パートナーと取引を行っており、売掛金、前渡金などの信用供与を行っています。取引相手の財政状態の悪化や経営破綻等が生じた場合、当グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに悪影響を及ぼす可能性があります。
かかるリスクへの対応として、当グループでは、定期的な信用調査や信用リスクに応じた取引限度額の設定など、信用リスクの管理のための施策を実施しています。
③海外事業における地政学等のリスク
海外における事業活動
当グループは、事業戦略の一環として海外市場における事業の拡大を図っており、これを通じて、売上の増加、コストの削減及び収益性の向上等の実現をめざしています。当グループの海外事業は、事業を行う海外の各国において、以下を含む様々な要因による悪影響を受ける可能性があります。
・投資、輸出、関税、公正な競争、贈賄禁止、消費者及び企業に関する税制、知的財産、外国貿易及び外国為替に関する規制、人権や雇用・労働に関する規制、環境及び資源・エネルギーに関する規制
・取引条件等の商慣習の相違
・労使関係、労働慣行の変化
・対日感情、地域住民感情の悪化、各種団体等による批判やキャンペーン
・国家間や国内における紛争の拡大と頻発
・国家の安全保障や外交政策の変化
・各国の経済安全保障政策の強化
・その他の政治的及び社会的要因、地政学リスク、経済の動向並びに為替相場の変動
これらの要因により、当グループが、海外における成長戦略の目的を達成できる保証はなく、当グループの事業の成長見通し及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
かかるリスクへの対応として、当グループは、グローバルな政治・経済情勢などを定常的に把握して事業に及ぼす影響を分析し、海外リスク資産の移転を行うなど、グループ全体での対応を実行しています。
④環境に係るリスク
気候変動対策に関する規制強化等(脱炭素経済への移行リスク)
当グループは、炭素税、燃料・エネルギー消費への課税、排出権取引などの導入に伴う事業コストの負担増、製品・サービスの技術開発の遅れによる販売機会の逸失、投資家や社会に当グループの気候変動問題への取組姿勢が評価されない場合に、当グループの事業活動、経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
かかるリスクへの対応として、環境長期目標「日立環境イノベーション2050」を掲げ、脱炭素社会の実現に向けた様々な取組を進めており、今後も目標達成に向けた取組をさらに加速していきます。事業所においては2030年度カーボンニュートラルをめざしており、日立インターナルカーボンプライシング導入等による省エネ機器・再生可能エネルギーによる電力の導入の推進、生産・輸送のさらなる効率化、非化石エネルギー由来の電力利用の促進などにより、炭素税等の事業コスト負担増加などの回避・軽減や評価リスクの低減を図っています。バリューチェーンにおいては2050年度のカーボンニュートラルをめざし、CO2排出量削減につながる革新的製品・サービスの開発・拡販、エネルギー削減につながる省エネルギー製品の開発などをめざしています。
⑤人的資本に係るリスク
人財確保
当グループの競争力を維持するためには、事業遂行に必要な優秀な人財を採用し、確保し続ける必要があります。特に、当グループは、現在、グローバルに活躍できる人財や顧客に近いところでニーズをくみ取り、最適なソリューション・サービスを提供することができる人財、デジタルトランスフォーメーションを牽引するデジタル人財等を求めています。しかしながら、優秀な人財は限られており、かかる人財の採用及び確保の競争は激化しています。当グループがこのような優秀な人財を新たに採用し、又は雇用し続けることができる保証はありません。
かかるリスクへの対応として、当グループは、国内外で必要な人財をタイムリーに確保するため、ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョンの推進、多様な人財が働きやすい職場づくりの推進とエンゲージメントの向上、グローバル共通の人事制度、人財プラットフォームの活用、社内教育プログラムの実践による優秀な人財の確保・育成等を図っています。
⑥テクノロジーに係るリスク
情報システムへの依存
当グループの事業活動において、情報システムの利用とその重要性は増大しています。コンピュータウイルスその他の要因によってかかる情報システムの機能に支障が生じた場合、当グループの事業活動、経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。また、リモートワークの拡大は、情報漏洩などの新たなセキュリティリスクを生じさせるおそれがあります。
かかるリスクへの対応として、当グループは、継続的にサイバーセキュリティ対策等を推進しており、また、リモートワークに適用される技術・製品・利用手順などを厳格に定めて運用していますが、従来にないサイバー攻撃を受けた場合や当社管理外のシステムに脆弱性があった場合には有効な手段とはならない可能性があります。
急速な技術革新
当グループの事業分野においては、新しい技術が急速に発展しています。先端技術の開発に加えて、先端技術を継続的に、迅速かつ優れた費用効率で製品・システム・サービスに適用し、これらの製品等のマーケティングを効果的に行うことは、競争力を維持するために不可欠です。例えば、現在、生成AIの活用、デジタル化・ロボット等による自動化、電動化、脱炭素や資源循環等の環境への技術革新への対応等が重要となっています。このような変化の潮流を捉え、顧客に価値を提供し続けるために、グループ内の研究開発及びコーポレートベンチャーファンドを通じたスタートアップへの投資に対して多くの経営資源を投入しています。これらの先端技術の開発が予定どおり進展しなかった場合、当グループの事業、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
かかるリスクへの対応として、当グループは、産官学によるオープンイノベーションやデジタル人財の確保・育成、Lumadaによる協創プロセスを通じた顧客ニーズの把握のほか、これらを通じたイノベーションエコシステムの形成を図っています。
⑦自然災害に係るリスク
大規模災害及び気候変動による物理的影響等(気候変動の物理的影響に関連したリスクを含む)
当グループは、日本国内において、研究開発拠点、製造拠点及び当社の本社部門を含む多くの主要施設を有しています。過去において、日本は、地震、津波、台風等多くの自然災害に見舞われており、今後も、大規模な自然災害により当グループの生産から販売に至る一連の事業活動が大きな影響を受ける可能性があります。また、海外においても、アジア、米国及び欧州等に拠点を有しており、各地の自然災害によって、当グループの事業拠点のほか、サプライチェーンや顧客の事業活動にも被害が生じる可能性があります。さらに、気候変動に起因して、渇水や海面上昇、長期的な熱波や洪水等の大規模な自然災害が、今後より一層深刻化する可能性があります。かかる大規模な自然災害により当グループの施設が直接損傷を受けたり破壊された場合、当グループの事業活動が中断したり、新たな生産や在庫品の出荷が遅延する可能性があるほか、多額の修理費、交換費用、その他の費用が生じる可能性があり、これらの要因により多額の損失が発生する可能性があります。大規模な自然災害により当グループの施設が直接の影響を受けない場合であっても、流通網又は供給網が混乱する可能性があります。また、感染症の流行や、テロ、犯罪、騒乱及び紛争等の各国・地域の不安定な政治的及び社会的状況により、当グループの事業活動が混乱する可能性があり、当グループの従業員が就労不能となったり、当グループの製品に対する消費者需要の低下や販売網及び供給網に混乱が生じたりする可能性があります。さらに、全ての潜在的損失に対して保険が付保されているわけではなく、保険の対象となる損失であってもその全てが対象とはならない可能性があり、また、保険金の支払いが異議の申立て等により遅延する可能性があります。自然災害その他の事象により当グループの事業遂行に直接的又は間接的な混乱が生じた場合、当グループの事業活動、経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
かかるリスクへの対応として、当グループは、BCPの策定による事業中断リスクへの対応力強化等を図っており、また、工場新設時における洪水被害を想定した建設・工場内設備の配置等を行っています。
⑧その他会社経営全般に影響を及ぼすリスク
長期請負契約等に係る見積り、コストの変動及び契約の解除
当グループは、インフラシステムの建設に係る請負契約をはじめ多数の長期契約を締結しており、かかる長期請負契約等に基づく収益を認識するために、当該契約の成果が信頼性をもって見積ることができる場合、工事契約の進捗に応じて収益及び費用を認識しています。収益については、主に、見積原価総額に対する実際発生原価の割合で測定される進捗度に基づいて認識しています。また、当該契約の成果が信頼性をもって見積ることができない場合には、発生した工事契約原価のうち、回収される可能性が高い範囲でのみ収益を認識し、工事契約原価は発生した期間に費用として認識しています。長期請負契約等に基づく収益認識において、見積原価総額、見積収益総額、契約に係るリスクやその他の要因について重要な仮定を用いて見積る必要がありますが、かかる見積りは変動する可能性があります。当グループは、これらの見積りを継続的に見直し、必要と考える場合には調整を行っています。当グループは、価格が確定している契約の予測損失は、その損失が見積られた時点で費用計上していますが、かかる見積りは変動する可能性があります。また、コストの変動は、当グループのコントロールの及ばない様々な理由によって発生する可能性があります。さらに、当グループ又はその取引相手が契約を解除する可能性もあります。このような場合、当グループは、当該契約に関する当初の見積りを見直す必要が生じ、かかる見直しは、当グループの事業、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
かかるリスクへの対応として、当グループは、契約締結前からリスクの把握・管理を行い、契約締結後も継続的に事業部門と財務部門間で管理・共有し、適時に正確な見積りができるよう努めています。
競争の激化
当グループの事業分野においては、大規模な国際的企業からスタートアップを含む専業企業に至るまで、多様な競合相手が存在しています。かかる状況下で競争力を維持するためには、当グループの製品等は、技術、品質及びブランド価値の面においても競争力を有するものでなければなりません。当グループは、かかる製品等を適時に市場に投入する必要がありますが、当グループが提供する製品等が競争力を有する保証はなく、かかる製品等が競争力を有していない場合、当グループの事業、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、先端的な製品・システムやサービス等においても汎用品化や低コストの地域における製造・開発・サービス提供やクラウド化・自動化が進んでおり、価格競争を激化させています。その一方で、原材料価格や人件費等の高騰により、製品の製造・販売やサービスの提供等に係るコストが増加する可能性があります。これらの状況において、当グループが競合相手の価格と対等な価格を設定できない場合、当グループの競争力及び収益性が低下する可能性があり、競合相手の価格と対等な価格を設定した場合、その製品等の販売が損失をもたらす可能性があります。
かかるリスクへの対応として、当グループは、研究開発によるイノベーションの強化やLumada事業の拡大、顧客との協創、製品等の高付加価値化、バリューエンジニアリング等による原価低減、顧客企業との価格転嫁交渉を図っています。
需要の急激な減少
当グループが他社と競合する市場における急激な需要の減少と供給過剰は、販売価格の下落、ひいては売上の減少及び収益性の低下を招く可能性があります。加えて、当グループは、需要と供給のバランスを取るため、過剰在庫や陳腐化した設備の処分又は生産調整を強いられる場合があり、これにより損失が発生する可能性があります。例えば、情報機器、昇降機、半導体、産業用機器等の市場における需要と供給のバランスが崩れ、市況が低迷した場合、当グループの事業、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
かかるリスクへの対応として、当グループは、製品等の競争力の強化に加え、需要予測に基づく製品等の供給・在庫の管理等を図っています。
コスト構造改革への取組
当グループは、事業全体のバリューチェーンにおける各活動について、グループ横断でコスト構造を抜本的に改革する「Hitachi Smart Transformation Project」を実施しています。当グループは、かかる施策により、経営基盤強化による収益性の安定化とキャッシュ・フローの増強をめざしていますが、当グループが現在期待している効果を得られない可能性があります。また、かかる施策によって、当グループが収益性の維持又は向上を実現できる保証はありません。
社会イノベーション事業強化に係る戦略
当グループは、事業戦略として、主に社会イノベーション事業の強化によって、成長性が高く、安定的な収益を得られる事業構造を確立することをめざしています。当グループは、社会イノベーション事業を強化するため、設備投資や研究開発等の経営資源を重点的に配分することを計画しているほか、企業買収・新規プロジェクトへの投資も行っています。また、市場の変化に応じて社会イノベーション事業を効果的に展開するため、適切な事業体制の構築を図っています。かかる戦略を実行するため、当グループは、多額の資金を支出しており、今後も継続する予定です。かかる戦略のための当グループの取組は、成功しない、又は当グループが現在期待している効果を得られない可能性があります。また、かかる取組によって、当グループが収益性の維持又は向上を実現できる保証はありません。
かかるリスクへの対応として、当グループは、各ビジネスユニット(BU)においてフェーズゲート管理を行っています。加えて、市場動向、他社動向、技術動向及び潜在リスクなど様々な視点からの分析・議論についても、投融資戦略委員会、経営会議、取締役会及び監査委員会において実施しています。
企業買収、合弁事業及び戦略的提携
当グループは、各事業分野において、重要な新技術や新製品の設計・開発、製品・システムやサービスの補完・拡充、事業規模拡大による市場競争力の強化及び新たな地域や事業への進出のための拠点や顧客基盤の獲得等のため、他企業の買収、事業の合弁や外部パートナーとの戦略的提携に一定程度依存しています(当グループの経営成績及び財政状態に重大な悪影響を及ぼす可能性がある案件について、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 注5.事業再編等」参照)。このような施策は、事業遂行、技術、製品及び人事上の統合又は投資の回収が容易でないことから、本質的にリスクを伴っています。統合は、時間と費用がかかる複雑な問題を含んでおり、適切な計画のもとで実行されない場合、当グループの事業に悪影響を及ぼす可能性もあります。また、事業提携は、当グループがコントロールできない提携先の決定や能力又は市場の動向によって影響を受ける可能性があります。これらの施策に関連して、統合に関する費用や買収事業の再構築に関する費用など、買収、運営その他に係る多額の費用が当グループに発生する可能性があります。これらの費用のため、大規模な資金調達を行う場合、財政状態の悪化や資金調達能力の低下が発生する可能性があります。また、投資先事業の収益性が低下し、投資額の回収が見込めない場合、のれんの減損など、多額の損失が発生する可能性があります。当連結会計年度末時点で、デジタルシステム&サービスセグメントにおいて1,433,628百万円、グリーンエナジー&モビリティセグメントにおいて690,034百万円、コネクティブインダストリーズセグメントにおいて248,016百万円ののれんを計上しています(セグメント別ののれんの金額について、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 注4.セグメント情報」参照)。これらの施策が当グループの事業及び財政状態に有益なものとなる保証はなく、これらの施策が有益であるとしても、当グループが買収した事業の統合に成功し、又は当該施策の当初の目的の全部又は一部を実現できない可能性があります。
かかるリスクへの対応として、当グループは、各ビジネスユニット(BU)におけるフェーズゲート管理に加え、市場動向、業界動向、戦略、買収価格、PMI(ポスト・マージャー・インテグレーション)プロセス及び潜在リスクなど様々な視点からの分析・議論を、投融資戦略委員会、経営会議、取締役会及び監査委員会において実施しています。
事業再構築
当グループは、以下の事業ポートフォリオ再構築の取組等により、成長性が高く、安定的な収益の得られる事業構造の確立を図っています。
・不採算事業からの撤退
・当社の子会社及び関連会社の売却
・製造拠点及び販売網の再編
・資産の売却
当グループによる事業再構築の取組は、各国政府の規制、雇用問題又は当グループが売却を検討している事業に対するM&A市場における需要不足等により、時宜に適った方法によって実行されないか、又は全く実行されない可能性があります。事業再構築の取組は、顧客又は従業員からの評価の低下等、予期せぬ結果をもたらす可能性もあり、また、過去に事業再構築に関連して有形固定資産や無形資産の減損、在庫の評価減、有形固定資産の処分及び有価証券の売却に関連する損失などが生じましたが、このような多額の費用が将来も発生する可能性があります。現在及び将来における事業再構築の取組は、成功しない、又は当グループが現在期待している効果を得られず、当グループの事業、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
かかるリスクへの対応として、当グループは、市場動向、業界動向、戦略、売却価格、プロセス及び潜在リスクなど様々な視点からの分析・議論を、投融資戦略委員会、経営会議、取締役会及び監査委員会において実施しています。
持分法適用会社の業績の悪化
当社及び連結子会社は、多数の持分法適用会社を有しています。持分法適用会社の損失は、当社及び連結子会社の持分比率に応じて、連結財務諸表に計上されます。また、当社及び連結子会社は、持分法適用会社の回収可能価額が取得原価又は帳簿価額を下回る場合、当該持分法適用会社の株式について減損損失を計上しなければならない可能性もあります。
当連結会計年度末において、持分法で会計処理されている投資は、以下のとおりです。
|
(単位:百万円) |
セグメント |
2024年3月31日 |
デジタルシステム&サービス |
49,496 |
グリーンエナジー&モビリティ |
104,383 |
コネクティブインダストリーズ |
175,255 |
オートモティブシステム(注)1 |
- |
その他 |
4,626 |
小計 |
333,760 |
全社及び消去(注)2 |
482,674 |
合計 |
816,434 |
(注)1.日立Astemo㈱は、株式の一部譲渡により、2023年10月16日付で当社の連結子会社ではなくなり、当社の持分法適用会社となりました。これに伴い、オートモティブシステムセグメントに属する会社はなくなりました。
2.日立Astemo㈱、日立建機㈱及びそれらの子会社に係る持分法で会計処理されている投資については、「全社及び消去」に含まれています。
かかるリスクへの対応として、当グループは、Adjusted EBITA (Adjusted Earnings before interest, taxes and amortizationの略であり、売上収益から、売上原価並びに販売費及び一般管理費の額を減算して算出した指標に、企業結合により認識した無形資産等の償却費を足し戻した上で、持分法による投資損益を加算して算出した指標)及び投下資本利益率(ROIC)を用いた投資収益管理を推進し、収益性・成長性の高い分野へ投資を集中させるとともに、投資した持分法適用会社については投資実行後も事業計画の達成状況や財務状況を把握し、低収益事業や将来の競争力に懸念のある投資先については売却を行うなどの施策を行っています。
訴訟その他の法的手続
当グループは、事業を遂行する上で、訴訟や規制当局による調査及び処分等に関するリスクを有しています。訴訟その他の法的手続により、当グループに対して巨額又は算定困難な金銭支払いの請求又は命令がなされ、また、事業の遂行に対する制限が加えられる可能性があり、これらの内容や規模は長期間にわたって予測し得ない可能性があります。過去、当グループは、一部の製品において、競争法違反の可能性に関する日本、欧州及び北米等の規制当局による調査の対象となり、また、顧客等から損害賠償等の請求を受けています(当グループの経営成績及び財政状態に重大な悪影響を及ぼす可能性がある案件について、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 注29.コミットメント及び偶発事象」参照)。これらの調査や紛争の結果、複数の法域において多額の課徴金や損害賠償金等の支払いが課される可能性があります。かかる重大な法的責任又は規制当局による処分は、当グループの事業、経営成績、財政状態、キャッシュ・フロー、信用及び評判に悪影響を及ぼす可能性があります。また、当グループに対する法的責任が認められず、規制当局による処分や損害賠償金等の支払いが課されなかった場合であっても、当グループの信用及び評判に悪影響を及ぼす可能性があります。
さらに、当グループの事業活動は、当グループが事業を行う国々で様々な政府による規制の対象となります。かかる政府による規制は、投資、輸出、関税、公正な競争、贈賄禁止、消費者及び企業に関する税制、知的財産、外国貿易及び外国為替に関する規制、人権や雇用・労働に関する規制、環境及び資源・エネルギーに関する規制を含みます。これらの規制は、当グループの事業活動を制限し又はコストを増加させ、また、新たな規制又は規制の変更は、当グループの事業活動をさらに制限し又はコストを増加させる可能性もあります。さらに、規制違反に係る罰金又は課徴金など、規制の執行が、当グループの経営成績、財政状態、キャッシュ・フロー、信用及び評判に悪影響を及ぼす可能性があります。また、個人データ保護規制等への対応についても、事業に悪影響を及ぼす可能性があります。
かかるリスクへの対応として、当グループは、規制の適用を受ける業務の特定、リスク評価、リスクに応じた措置の実行及び従業員に対する教育等を実施しています。
製品の品質と責任
当グループの製品・サービスには、高度で複雑な技術を利用したものが増えています。また、部品等を外部の調達パートナーから調達することにより、品質確保へのコントロールが低下します。当グループの製品・サービスに欠陥等が生じた場合又は品質に関する不適切行為があった場合、当グループの製品・サービスの質に対する信頼が悪影響を受け、当該欠陥等から生じた損害について当グループが責任を負う可能性があるとともに、当グループの製品の販売能力に悪影響を及ぼす可能性があり、当グループの経営成績、財政状態及び将来の業績見通しに悪影響を及ぼす可能性があります。
かかるリスクへの対応として、当グループは、事故未然防止活動、技術法令の遵守活動、リスクアセスメントの徹底、品質・信頼性や製品事故発生時の対応に関する教育等を行っています。さらに、過去の当社子会社における品質に関する不適切行為を受け、当グループでは、事業部門内の品質保証部門を設計部門、製造部門から独立させ、顧客の安全と安心を第一に行動できる体制としてきましたが、加えて、事業部門からも品質保証部門を独立させ、より独立性を強化しています。また、事業部門を担当する品質保証部門と本社の品質保証統括本部とのレポートラインを強化し、品質保証部門間で密な情報共有を図る仕組みを構築しています。
機密情報の管理
当グループは、顧客から入手した個人情報並びに当グループ及び顧客の技術、研究開発、製造、販売及び営業活動等に関する機密情報を様々な形態で保持及び管理しています。かかる情報が権限なく開示された場合、当グループが損害賠償を請求され又は訴訟を提起される可能性があり、また、当グループの事業、財政状態、経営成績、信用及び評判に悪影響を及ぼす可能性があります。
かかるリスクへの対応として、当グループは、機密情報管理に関する規則・運用を定め、暗号化や認証基盤の構築によるID管理とアクセス制御等を行うとともに、調達パートナーに対しても情報セキュリティ状況の確認・審査等を行っています。
知的財産
当グループの事業は、製品、製品のデザイン、製造過程及び製品・ソフトウェアを組み合わせてサービスの提供を行うシステム等に関する特許権、意匠権、商標権及びその他の知的財産権を日本及び各国において取得できるか否かに依存する側面があります。当グループがかかる知的財産権を保有しているとしても、競争上優位に立てるという保証はありません。様々な当事者が当グループの特許権、意匠権、商標権及びその他の知的財産権について異議を申し立て、無効とし、又はその使用を避ける可能性があります。また、将来取得する特許権に関する特許請求の範囲が当グループの技術を保護するために十分に広範なものである保証はありません。当グループが事業を行っている国において、特許権、意匠権、著作権及び企業秘密に対する有効な保護手段が整備されていないか、又は不十分である可能性があり、当グループの企業秘密が従業員、契約先等によって開示又は不正流用される可能性があります。
かかるリスクへの対応として、当グループは、出願前に公知例調査を行うことで、権利の成立可能性の向上及び事業に即した権利の取得を図っています。また、知的財産の保護手段が整備されていない、又は、不十分な国においては、従業員や契約先との契約等により、不正利用の抑制を図っています。
当グループの多くの製品には、第三者からライセンスを受けたソフトウェア又はその他の知的財産が含まれています。当グループは、競合他社の保護された技術を使用することができない、又は不利な条件のもとでのみ使用しうることとなる可能性があります。かかる知的財産に関するライセンスを取得したとしても経済的理由等からこれを維持できる保証はなく、また、かかる知的財産が当グループの期待する商業上の優位性をもたらす保証もありません。
かかるリスクへの対応として、当グループは、当該第三者と契約・交渉により良好な関係を維持し、知的財産の実施権の確保を図っています。
当グループは、特許権、意匠権及びその他の知的財産に関して、提訴され、又は権利侵害を主張する旨の通知を受け取ることがあります。これらの請求に正当性があるか否かにかかわらず、応訴するためには多額の費用等が必要となる可能性があり、また、経営陣が当グループの事業運営に専念できない可能性や当グループの評判を損ねる可能性があります。さらに、権利侵害の主張が成功し、侵害の対象となった技術のライセンスを当グループが取得することができない場合、又は他の権利侵害を行っていない代替技術を使用することができない場合、当グループの事業は悪影響を受ける可能性があります。
かかるリスクへの対応として、当グループは、新たな製品の販売やサービスの提供開始前に、当該製品やサービスについて他社特許クリアランスを実施するとともに、必要な場合には製品やサービスの設計変更を行うこと等で、他社との係争の回避を図っています。
退職給付に係る負債
当グループは、数理計算によって算出される多額の退職給付費用を負担しています。この評価には、死亡率、脱退率、退職率、給与の変更及び割引率等の退職給付費用を見積る上で利用される様々な数理計算上の仮定が含まれています。当グループは、人員の状況、市況及び将来の金利の動向等の多くの要素を考慮に入れて、数理計算上の仮定を見積る必要があります。数理計算上の仮定の見積りは、基礎となる要素に基づき、合理的なものであると考えていますが、実際の結果と合致する保証はありません。数理計算上の仮定が実際の結果と異なった場合、その結果として実際の退職給付費用が見積費用から乖離して、当グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。割引率の低下は、数理上の退職給付に係る負債の増加をもたらす可能性があります。また、当グループは、割引率等の数理計算上の仮定を変更する可能性があります。数理計算上の仮定の変更も、当グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
かかるリスクへの対応として、2019年4月1日から日立企業年金基金に加入する当グループの従業員を対象として、リスク分担型企業年金制度への移行を進め、2023年4月1日に全ての日立企業年金基金加入会社についてリスク分担型企業年金制度への移行が完了しました。リスク分担型企業年金への移行を通じ、当社及び日立企業年金基金に加入する連結子会社の掛金負担を固定化することにより、資産運用リスク等を低減し、また退職給付に係る負債の認識を中止することにより財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼすリスクを低減しています。
株式の追加発行に伴う希薄化
当社は、将来、株式の払込金額が時価を大幅に下回らない限り、株主総会決議によらずに、発行可能株式総数のうち未発行の範囲において、株式を追加的に発行する可能性があります。将来における株式の発行は、その時点の時価を下回る価格で行われ、かつ、株式の希薄化を生じさせる可能性があります。
(1)経営計画の進捗
①経営上の目標として掲げた指標の状況
「2024中期経営計画」において、経営上の目標として用いた主な指標の当連結会計年度までにおける状況は次のとおりです。
指 標 |
実 績 |
2024中期経営計画目標 |
売上収益成長 (注)1 |
(2021~2023年度 CAGR) 13% |
(2021~2024年度 CAGR) 5%-7% |
Adjusted EBITA率 (注)1 |
(2023年度) 10.1% |
12% |
投下資本利益率(ROIC) (注)2 |
(2023年度) 8.7% |
10% |
EPS (注)2、3 |
(2023年度) 634.57円 |
(2024年度) 600円 |
コア・フリー・キャッシュ・フロー (注)2 |
(2022年度~2023年度累計) 9,879億円 |
(3年累計) 1.2兆円 |
(注)1.連結合計からオートモティブシステム、日立建機及び日立金属セグメントの合計を差し引いて算出しています。
2.連結合計で算出しています。
3.2024中期経営計画目標については、株式分割(2024年7月1日効力発生予定)前の株式数で計算しています。
②成長に向けた事業強化
当期は「2024中期経営計画」の2年目として、主に以下の取り組みを行い、成長モードへのシフトを加速しています。
・DX(デジタルトランスフォーメーション)・GX(グリーントランスフォーメーション)需要の高まりに応える社会イノベーション事業のさらなる成長
DX・GX需要は引き続きグローバルに高まっており、顧客の経営課題を理解した上で、その解決方法を設計・実装し、運用・保守するとともに次の課題解決に取り組むという、Lumadaにおける顧客との価値協創サイクルの強化にOne Hitachiで取り組んだ結果、Lumada事業売上収益は前期に比べ19%増加して、2兆3,340億円となりました。 国内では、次期中央給電指令所システムを受注し、全国(注)の電力需給調整システムの共有化による電力の安定供給に貢献していきます。海外でも、Hitachi Energy社が、英国Petrofac社とともに、6つの洋上風力発電向け送電システムの包括契約をオランダ TenneT社と締結したほか、鉄道システム事業でも、イタリア Trenitalia社から約1,400億円の高速鉄道車両を受注するなど、好調な受注が続いています。 (注) 沖縄エリアを除きます。
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・Lumada事業のさらなる強化に向けたグローバル組織再編
Lumadaの協創サイクルの強化とOT(制御・運用技術)分野とのシナジー創出の加速のため、グローバルで組織を再編しました。Hitachi Vantara社のデジタルソリューション事業を分社して新たにHitachi Digital Services社を設立し、OT×ITのインテグレーターとして、Hitachi Vantara社やGlobalLogic社に加えて、エネルギー、交通、産業などのOT分野とも連携して、One HitachiでLumada事業のグローバル成長をけん引していきます。また、ストレージなどのデータインフラストラクチャの事業開発・研究開発・生産を担ってきた当社のITプロダクツ事業を分社して日立ヴァンタラ㈱を設立し、Hitachi Vantara社と製造・販売・サービスの一体運営の体制を確立しています。
(2)経営成績の状況の分析
①業績の状況
売上収益は、前年度に比べて11%減少し、9兆7,287億円となりました。為替影響に加え、日立エナジー社や鉄道システム事業が堅調に推移したグリーンエナジー&モビリティセグメント及び堅調な国内外のデジタル需要を取り込みLumada事業が拡大したデジタルシステム&サービスセグメント等の増収要因があったものの、日立Astemo㈱株式及び日立建機㈱株式の一部売却や日立金属㈱(現㈱プロテリアル)株式の売却に伴う減収等により、減収となりました。
売上原価は、前年度に比べて13%減少し、7兆1,466億円となり、売上収益に対する比率は、前年度に比べて2%減少し、73%となりました。売上総利益は、前年度に比べて4%減少し、2兆5,820億円となりました。
販売費及び一般管理費は、前年度に比べて6%減少し、1兆8,262億円となり、売上収益に対する比率は、前年度に比べて1%増加し、19%となりました。
持分法による投資損益は、前年度に比べて224億円増加し、752億円の利益となりました。
これらの結果、Adjusted EBITA(Adjusted Earnings before interest, taxes and amortizationの略であり、売上収益から、売上原価並びに販売費及び一般管理費の額を減算して算出した指標に、企業結合により認識した無形資産等の償却費を足し戻した上で、持分法による投資損益を加算して算出した指標)は、前年度に比べて335億円増加し、9,181億円となりました。
その他の収益は、前年度に比べて1,855億円減少し、1,166億円となり、その他の費用は、前年度に比べて1,478億円減少し、971億円となりました。主な内訳は、以下のとおりです。
・固定資産損益は、前年度に比べて147億円増加し、170億円の利益となりました。
・減損損失は、前年度に急激な金利上昇等による割引率の上昇に伴う日立エナジー社ののれんの減損損失やデジタルシステム&サービスセクターにおいてERPオンプレミス型事業を非注力分野に位置づけたことに伴うのれんの減損損失を計上していたこと等により、前年度に比べて1,002億円減少し、296億円となりました。
・事業再編等損益は、日立Astemo㈱株式の一部売却に伴う売却益を計上したものの、前年度に日立物流㈱株式及び日立金属㈱株式の売却や日立建機㈱株式の一部売却に伴う売却益を計上していたこと等により、前年度に比べて2,003億円減少し、970億円の利益となりました。
・特別退職金は、前年度に比べて101億円増加し、194億円となりました。
金融収益(受取利息を除きます。)は、前年度に比べて95億円増加し、173億円となり、金融費用(支払利息を除きます。)は、前年度に比べて104億円減少し、100億円となりました。
受取利息及び支払利息調整後税引前当期利益は、前年度に比べ123億円増加し、8,579億円となりました。
受取利息は、前年度に比べて131億円増加し、387億円となり、支払利息は、前年度に比べて196億円増加し、709億円となりました。
税引前当期利益は、前年度に比べて58億円増加し、8,258億円となりました。
法人所得税費用は、前年度に比べて829億円増加し、1,990億円となりました。
当期利益は、前年度に比べて771億円減少し、6,267億円となりました。
非支配持分に帰属する当期利益は、前年度に比べて178億円減少し、368億円となりました。
これらの結果、親会社株主に帰属する当期利益は、前年度に比べて592億円減少し、5,898億円となりました。
②セグメントごとの業績の状況
セグメントごとに業績の状況を概観すると次のとおりです。各セグメントの売上収益は、セグメント間内部売上収益を含んでいます。また、当連結会計年度の期首より、報告セグメントの区分を、デジタルシステム&サービス、グリーンエナジー&モビリティ、コネクティブインダストリーズ、オートモティブシステム、その他の5セグメントへ変更しており、比較する前年度の数値も新区分に組み替えています。
なお、前年度においてグリーンエナジー&モビリティセグメントに計上されていた事業マネジメント強化統括本部の売上収益及びAdjusted EBITAは、当連結会計年度の期首よりその他セグメントに計上されています。グリーンエナジー&モビリティセグメントとその他セグメントにおける対前年度の比較は、この変更を前年度に遡及した数値と比較しています。
各表内の内数は、各セグメントの主な事業等の業績を表しており、また、売上収益については当該事業間の内部売上を含んでいるため、それらの合計額は、セグメント全体の業績と一致しない場合があります。
(デジタルシステム&サービス)
(注)1. 括弧内の数値は為替影響を除いた対前年度増減率の概算値を表しています。GlobalLogicは、米ドルベースの対前年度増減率の概算値を表しています。
2.前年度においてITサービスに計上されていた㈱日立コンサルティングの売上収益及びAdjusted EBITAは、当連結会計年度よりサービス&プラットフォームビジネスに計上されています。デジタルシステム&サービスセグメントの対前年度比較は、この変更を前年度に遡及した数値と比較しています。
売上収益は、金融や公共、エネルギー分野などにおける大口システム更新案件への対応やLumada事業が堅調に推移したフロントビジネス、セキュリティやクラウド関連、製造・流通向けサービスなどのLumada事業が堅調に推移したITサービス、GlobalLogic社の成長や国内DX・クラウドサービス案件が増加したサービス&プラットフォームがいずれも増収となったこと等により、セグメント全体で増収となりました。
Adjusted EBITAは、売上収益の増加等により、増益となりました。
(グリーンエナジー&モビリティ)
(注)1. 括弧内の数値は為替影響を除いた対前年度増減率の概算値を表しています。
2. 日立パワーソリューションズは、前年度においてエネルギービジネスに計上されていた事業が独立したものです。グリーンエナジー&モビリティセグメントの対前年度比較は、この変更を前年度に遡及した数値と比較しています。
3. 日立エナジー(スタンド・アローン)、鉄道(関連費用除き)には、関連費用は含まれていません。
4. 関連費用には、事業買収に伴うPMI(Post Merger Integration)に係る費用等が含まれています。
売上収益は、継続的な受注残の増加及び着実な売上転換を実行した日立エナジー社、欧州車両・メンテナンス事業及び北米信号事業等の大口案件が進展した鉄道システム、再生可能エネルギーソリューション等のグリーン事業やサービス事業が堅調に推移した日立パワーソリューションズ社が増収となったこと等により、セグメント全体で増収となりました。
Adjusted EBITAは、パワーグリッド事業買収に伴うPMIに係る費用等を含む関連費用の増加やエネルギー事業での一部プロジェクトにおけるコスト増等があったものの、売上収益の増加や日立エナジー社の生産投資による効率向上、鉄道システムにおける案件構成差改善や原価低減の加速等による収益性の改善等により、増益となりました。
(コネクティブインダストリーズ)
(注) 括弧内の数値は為替影響を除いた対前年度増減率の概算値を表しています。
売上収益は、国内家電需要の減少により減収となった生活・エコシステムや半導体製造装置の売上減少により減収となった計測分析システムの減収要因があったものの、電動化関連事業、配電用変圧器事業等が堅調に推移したインダストリアルプロダクツや、ビルサービス事業が拡大したビルシステム、国内の半導体・電子産業分野向け空調システムが堅調に推移した水・環境が増収となったこと等により、セグメント全体で増収となりました。
Adjusted EBITAは、計測分析システムでの半導体製造装置の売上減少や開発費の増加等による減益要因があったものの、売上収益の増加等により、増益となりました。
(オートモティブシステム)
売上収益は、日立Astemo㈱株式の一部を2023年10月に譲渡したことにより、従来オートモティブシステムセグメントに含めていた日立Astemo㈱が当社の持分法適用会社となったことから、前年度に比べて39%減少し、1兆1,643億円となりました。
Adjusted EBITAは、前年度に比べて227億円減少し、506億円となりました。
(その他)
売上収益は、前年度に比べて2%増加し、5,077億円となりました。
Adjusted EBITAは、前年度に比べて219億円増加し、67億円となりました。
③地域ごとの売上収益の状況
仕向地別に外部顧客向け売上収益の状況を概観すると次のとおりです。
(注) 連結合計の対前年度比は、日立建機と日立金属を含んだ前年度実績との比較です。
国内
国内売上収益は、減収となりました。これは主として、フロントビジネスが堅調に推移したデジタルシステム&サービスセグメントやコネクティブインダストリーズセグメントの増収影響等があったものの、日立Astemo㈱株式の一部売却等により減収となったことによるものです。
海外
海外売上収益は、減収となり、売上収益全体に占める比率は、前年度に比べて1%減少し、61%となりました。各地域の状況は、以下のとおりです。
(北米)
減収となりました。これは主として、グリーンエナジー&モビリティセグメントにおけるパワーグリッド事業の増収影響等があったものの、日立Astemo㈱株式の一部売却等により減収となったことによるものです。
(欧州)
増収となりました。これは主として、日立Astemo㈱株式の一部売却等による減収影響等があったものの、グリーンエナジー&モビリティセグメントにおけるパワーグリッド事業及び鉄道システム事業が増収となったことによるものです。
(アジア)
中国及びASEAN・インド他から成るアジアは、減収となりました。これは主として、グリーンエナジー&モビリティセグメントにおけるパワーグリッド事業の増収影響等があったものの、日立Astemo㈱株式の一部売却等により減収となったことによるものです。
(その他の地域)
減収となりました。これは主として、グリーンエナジー&モビリティセグメントにおけるパワーグリッド事業の増収影響等があったものの、日立Astemo㈱株式の一部売却等により減収となったことによるものです。
(3)財政状態及びキャッシュ・フローの状況の分析
①流動性と資金の源泉
財務活動の基本方針
当社は、現在及び将来の事業活動のための適切な水準の流動性の維持及び機動的・効率的な資金の確保を財務活動の重要な方針としています。当社は、運転資金の効率的な管理を通じて、事業活動における資本効率の最適化を図るとともに、グループ内の資金の管理を当社や海外の金融子会社に集中させることを推進しており、グループ内の資金管理の効率改善に努めています。
当社は、経営管理指標にROICを導入し、資本効率の向上と収益性の高い事業の成長を経営として推進しています。ROICは、事業に投じた資金(投下資本)によって生み出されたリターンを評価する指標で、税引後の事業利益を投下資本で除すことで算出します。リターンを上げるためにはROICが投下資本の調達コストである加重平均資本コスト(WACC)を上回る必要があります。
また、2022年度からは、収益性を図る主要な指標として、これまでの調整後営業利益(売上収益から、売上原価並びに販売費及び一般管理費の額を減算して算出した指標)からAdjusted EBITA(調整後営業利益に、企業結合により認識した無形資産等の償却費を足し戻した上で、持分法による投資損益を加算して算出した指標)へ変更しました。
Adjusted EBITA率12%及びROIC10%をめざすとともに、事業買収における投資判断の基準としてもAdjusted EBITA率及びROICを用いることで、投資判断の規律を徹底し、収益力の強化と事業資産の効率向上をさらに図っていきます。
資金需要の動向
当社の主要な資金使途は、成長に向けたM&A、人財への投資、設備投資や研究開発投資、株主還元等です。コア・フリーキャッシュ・フロー及び資産売却で得た資金を、これらの成長投資や株主還元にバランスよく配分していきます。
主なM&A等の案件については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 注5.事業再編等」に、設備投資の実績及び計画については、「第3 設備の状況」に、株主還元の方針及び実績については、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」に記載しています。
資金の源泉
当社は、営業活動によるキャッシュ・フロー並びに現金及び現金同等物を内部的な資金の主な源泉と考えており、短期投資についても、直ちに利用できる財源となりうると考えています。また、資金需要に応じて、国内及び海外の資本市場における債券の発行及び株式等の資本性証券の発行並びに金融機関からの借入により資金を調達することが可能です。設備投資やM&Aのための資金については、主として内部資金により充当することとしており、必要に応じて社債や株式等の発行により資金を調達することとしています。借入により資金を調達する場合には、D/Eレシオ、有利子負債/EBITDA倍率等の財務規律に照らし、適正な財政状態を維持する方針としています。当社は、機動的な資金調達を可能とするため、3,000億円を上限とする社債の発行登録を行っており、2023年12月に、無担保第18回普通社債の償還に充てた短期資金調達のリファイナンス等に充当するため、総額900億円の無担保普通社債を発行しました。
当社及び一部の子会社は、資金需要に応じた効率的な資金の調達を確保するため、複数の金融機関との間でコミットメントラインを設定しています。当社においては、契約期間1年で期間満了時に更新するコミットメントライン契約と、契約期間3年で2025年7月29日を期限とするコミットメントライン契約を締結しています。2024年3月31日現在における当社のコミットメントライン契約に係る借入未実行残高は5,050億円です。
当社は、ムーディーズ・ジャパン㈱(ムーディーズ)、S&Pグローバル・レーティング・ジャパン㈱(S&P)及び㈱格付投資情報センター(R&I)から債券格付けを取得しています。2024年3月31日現在における格付けの状況は、次のとおりです。
格付会社 |
長期会社格付け |
短期会社格付け |
ムーディーズ |
A3 |
P-2 |
S&P |
A |
A-1 |
R&I |
AA- |
a-1+ |
当社は、現在の格付け水準の下で、引き続き、国内及び海外の資本市場から必要な資金調達が可能であると考えており、格付け水準の維持・向上を図っていきます。
②キャッシュ・フロー
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況は、以下のとおりです。
(営業活動に関するキャッシュ・フロー)
営業活動に関するキャッシュ・フローは、前年度に比べ1,295億円の資金の増加となり、9,566億円の収入となりました。これは、事業再編等損益を除く当期利益の増加や、前受金(契約負債)の獲得による収入の増加等によるものです。
(投資活動に関するキャッシュ・フロー)
投資活動に関するキャッシュ・フローは、前年度に比べて2,826億円の資金の減少となり、1,315億円の支出となりました。これは、当年度においては有価証券の売却による収入や、有形固定資産の取得による支出の減少があったものの、前年度において連結子会社であった日立建機㈱、日立金属㈱、及び持分法適用会社であった㈱日立物流の株式を売却したことによる収入があったこと等によるものです。
(財務活動に関するキャッシュ・フロー)
財務活動に関するキャッシュ・フローは、前年度に比べて1,180億円の資金の増加となり、1兆249億円の支出となりました。これは、短期借入金の純収入額(収入額と支出額の差)が前年度比で減少したものの、自己株式の取得額が前年度比で減少したこと、及び前年度において当社の連結子会社である日立エナジー社の持分追加取得のための非支配持分株主への支出があったこと等によるものです。
フリー・キャッシュ・フロー(営業活動に関するキャッシュ・フローと投資活動に関するキャッシュ・フローを合わせたもの)は、前年度に比べて1,530億円の資金の減少となり、8,250億円の収入となりました。
また、コア・フリー・キャッシュ・フロー(フリー・キャッシュ・フローから、M&Aや資産売却他に係るキャッシュ・フローを除いた経常的なキャッシュ・フロー)は、前年度に比べて1,550億円の資金の増加となり、5,714億円の収入となりました。
これらの結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前年度末に比べて1,279億円減少し、7,053億円となりました。
③資産、負債及び資本
当連結会計年度末の総資産は、為替影響による資産の増加要因があったものの、日立Astemo㈱が当社の持分法適用会社になったこと等により、前年度末に比べて2,801億円減少し、12兆2,212億円となりました。当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前年度末に比べて1,279億円減少し、7,053億円となりました。
当連結会計年度末の有利子負債(短期借入金及び償還期長期債務を含む長期債務の合計)は、前年度末に比べて1兆333億円減少し、1兆1,800億円となりました。金融機関からの借入やコマーシャル・ペーパー等から成る短期借入金は、日立Astemo㈱が当社の持分法適用会社となったことに伴いグループ会社の資金需要が減少したこと等により、前年度末に比べて7,398億円減少し、378億円となりました。償還期長期債務は、前年度末に比べて456億円増加し、1,874億円となりました。社債及び銀行や保険会社からの借入等から成る長期債務(償還期を除きます。)は、日立Astemo㈱が当社の持分法適用会社となったこと等により、前年度末に比べて3,391億円減少し、9,547億円となりました。
当連結会計年度末の親会社株主持分は、前年度末に比べて7,608億円増加し、5兆7,037億円となりました。この結果、当連結会計年度末の親会社株主持分比率は、前年度末の39.5%に対して、46.7%となりました。
当連結会計年度末の非支配持分は、前年度末に比べて2,368億円減少し、1,558億円となりました。
当連結会計年度末の資本合計は、前年度末に比べて5,240億円増加し、5兆8,596億円となり、資本合計に対する有利子負債の比率は、前年度末から0.21ポイント減少し、0.20倍となりました。
(4)生産、受注及び販売の状況
当グループの生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではなく、また、受注生産形態をとらない製品も多く、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額又は数量で示すことはしていません。長期にわたり収益が認識される契約を有する主なセグメントについては、未履行の履行義務残高を、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 注20.売上収益」に記載しています。また、販売の状況については、「(2)経営成績の状況の分析」において各セグメントの業績に関連付けて示しています。
(5)重要な会計方針及び見積り
IFRSに基づく連結財務諸表の作成においては、期末日における資産・負債の報告金額及び偶発的資産・債務の開示並びに報告期間における収益・費用の報告金額に影響するような見積り及び仮定が必要となります。いくつかの会計上の見積りは、次の二つの理由により、連結財務諸表に与える重要性及びその見積りに影響する将来の事象が現在の判断と著しく異なる可能性があり、当グループの財政状態、財政状態の変化又は経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。第一は、会計上の見積りがなされる時点においては、不確実性がきわめて高い事項についての仮定が必要になるため、第二は、当連結会計年度における会計上の見積りに合理的に用いることがありえた別の見積りが存在し、又は時間の経過により会計上の見積りの変化が合理的に起こりうるためです。見積り及び仮定が必要となる重要な会計方針は、次のとおりです。
貸倒引当金
当グループは、売上債権及び契約資産並びにその他の債権に対して、測定した予想信用損失に等しい金額で貸倒引当金を計上しています。予想信用損失は、金融資産に関して契約上支払われるキャッシュ・フロー総額と、受取りが見込まれる将来キャッシュ・フロー総額との差額の割引現在価値を発生確率により加重平均して測定しています。支払遅延の存在、支払期日の延長、外部信用調査機関による否定的評価、債務超過等悪化した財政状況や経営成績の評価を含む、一つ又は複数の事象が発生している場合には、信用減損が生じた金融資産として個別的評価を行い、主に過去の貸倒実績や将来の回収可能額等に基づき予想信用損失を測定しています。信用減損が生じていない金融資産については、主に過去の貸倒実績に必要に応じて現在及び将来の経済状況等を踏まえて調整した引当率等に基づく集合的評価により予想信用損失を測定しています。予想信用損失は最善の見積りと判断により決定していますが、将来の取引先の財務状況の悪化や将来の不確実な経済条件の変動の結果によって影響を受ける可能性があります。
貸倒引当金の算定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 注3 重要性がある会計方針の概要 (4)金融商品」に記載しています。貸倒引当金の増減内容は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 注25 金融商品及び関連する開示 (2)財務上のリスク ③信用リスク」に記載しています。
長期請負契約等に係る見積り、コストの変動及び契約の解除
当グループは、インフラシステムの建設に係る請負契約をはじめ多数の長期契約を締結しており、一定の期間にわたり製品及びサービス等の支配の移転が行われる取引については、顧客に提供する当該製品及びサービス等の性質を考慮し、履行義務の充足に向けての進捗度を発生原価又はサービス提供期間に基づき測定し収益を認識しています。なお、当該進捗度を合理的に測定することができない場合は、発生したコストの範囲で収益を認識しています。長期請負契約等に基づく収益認識において、見積原価総額、見積収益総額、契約に係るリスクやその他の要因について重要な仮定を用いて見積る必要がありますが、かかる見積りは変動する可能性があります。当グループは、これらの見積りを継続的に見直し、必要と考える場合には調整を行っています。当グループは、価格が確定している契約の予測損失は、その損失が見積られた時点で費用計上していますが、かかる見積りは変動する可能性があります。また、コストの変動は、当グループのコントロールの及ばない様々な理由によって発生する可能性があります。さらに、当グループ又はその取引相手が契約を解除する可能性もあります。このような場合、当グループは、当該契約に関する当初の見積りを見直す必要が生じ、かかる見直しは、当グループの事業、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
企業結合
企業結合の会計処理は取得法を用いています。被取得会社の有形資産のほか、技術やブランド、顧客リストといった無形資産も公正価値にて評価を行いますが、かかる評価において、個々の事案に応じた適切な前提条件や将来予測に基づき、見積りを行います。評価は通常、独立した外部専門家が評価プロセスに関与しますが、評価における重要な見積り及び前提には固有の不確実性が含まれます。当グループは、主要な前提条件の見積りは合理的であると考えていますが、実際の結果が異なる可能性があります。
資産の減損
当グループは、保有しかつ使用している資産の帳簿価額について、帳簿価額の回収ができなくなる可能性を示す事象又は状況の変化が生じた場合は、減損の兆候の有無を判定します。この判定において、資産の帳簿価額が減損していると判断された場合は、帳簿価額が回収可能価額を超える金額を減損損失として認識します。各資産及び資金生成単位又は資金生成単位グループごとの回収可能価額は、処分費用控除後の公正価値と使用価値のいずれか高い方で算定しています。
公正価値を算定するために用いる評価技法として、主に当該資産等の使用及び最終処分価値から期待される見積将来キャッシュ・フローに基づくインカム・アプローチ(現在価値法)又は類似する公開企業との比較や当該資産等の時価総額等、市場参加者間の秩序ある取引において成立しうる価格を合理的に見積り算定するマーケット・アプローチを用いています。使用価値は、経営者により承認された事業計画を基礎とした将来キャッシュ・フローの見積額を、加重平均資本コストをもとに算定した割引率で現在価値に割り引いて算定しており、現時点で合理的であると判断される一定の前提に基づいていますが、マーケットに係るリスク、経営環境に係るリスク等により、実際の結果が大きく異なることがありえます。また、使用価値の算定に使用する割引率については、株式市場の動向や金利の変動等により影響を受けます。将来キャッシュ・フロー及び使用価値の見積りは合理的であると考えていますが、将来キャッシュ・フローや使用価値の減少をもたらすような予測不能な事業上の環境の変化に起因する見積りの変化が、資産の評価に不利に影響する可能性があります。当グループは、公正価値及び使用価値算定上の複雑さに応じ、外部専門家を適宜利用しています。
のれんは、事業買収で獲得する市場競争力を基礎とする超過収益力の源泉であり、被取得会社の純資産と、取得の対価の差額の内、無形資産等に計上された額以外をのれんとして計上します。のれんは、IFRSに基づき、償却をせず、減損の兆候の有無にかかわらず、毎年、主に第4四半期において、その資産の属する資金生成単位又は資金生成単位グループごとに回収可能価額を見積り、減損テストを実施しています。また、当初の見積りと直近の見積りを比較するモニタリングを継続し、事業戦略の変更や市場環境等の変化により、その価値が当初の見積りを下回り、帳簿価額が回収不可能であるような兆候がある場合には、その都度、減損テストを実施しています。当該事象や状況の変化には、世界的な経済や金融市場における危機も含まれ、その資産の属する資金生成単位又は資金生成単位グループの帳簿価額が回収可能価額を超える場合には、その超過額を減損損失として認識しています。
減損及びのれんのセグメントごとの内訳は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 注4 セグメント情報」に記載しています。主な内容は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 注9 有形固定資産 及び 注10 のれん及びその他の無形資産」に記載しています。
繰延税金資産
繰延税金資産は、将来の期に回収されることとなる税額であり、実現可能性を評価するにあたり、当グループは、同資産の一部又は全部が実現しない蓋然性の検討を行っています。実現可能性は確定的ではありませんが、実現可能性の評価において、当グループは、繰延税金負債の振り戻しの予定及び予測される将来の課税所得を考慮しています。将来の課税所得の見積りの基礎となる、将来の業績の見通しは、経済の動向、市場における需給動向、製品及びサービスの販売価格、原材料及び部品の調達価格、為替相場の変動、急速な技術革新等予見しえない事象により実際とは異なる結果となり、将来において修正される可能性があります。その結果、認識可能と判断された繰延税金資産の金額に不利な影響を及ぼす可能性があります。繰延税金資産の実現可能性の評価は、各納税地域の各納税単位で行われており、類似の事業を営む場合でも、製品や納税地域の違いにより異なった評価となりえます。同資産が最終的に実現するか否かは、これらの一時差異等が、将来、それぞれの納税地域における納税額の計算上、課税所得の減額あるいは税額控除が可能となる会計期間において、課税所得を計上しうるか否かによります。これらの諸要素に基づき当グループは、2024年3月31日現在で認識可能と判断された繰延税金資産が実現する蓋然性は高いと判断していますが、実際に課税所得が生じる時期及び金額は見積りと異なる可能性があります。
退職給付に係る負債
当グループは、数理計算によって算出される多額の退職給付費用を負担しています。この評価には、死亡率、脱退率、退職率、給与の変更及び割引率等の退職給付費用を見積る上で利用される様々な数理計算上の仮定が含まれています。当グループは、人員の状況、市況及び将来の金利の動向等の多くの要素を考慮に入れて、数理計算上の仮定を見積る必要があります。数理計算上の仮定の見積りは、基礎となる要素に基づき、合理的なものであると考えていますが、実際の結果と合致する保証はありません。数理計算上の仮定が実際の結果と異なった場合、その結果として実際の退職給付費用が見積費用から乖離して、当グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。割引率の低下は、数理上の退職給付に係る負債の増加をもたらす可能性があります。また、当グループは、割引率等の数理計算上の仮定を変更する可能性があります。数理計算上の仮定の変更も、当グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
退職後給付の算定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 注3 重要性がある会計方針の概要 (11)退職後給付」に記載しています。
(6)将来予想に関する記述
「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」、「3 事業等のリスク」及び「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」等は、当社又は当グループの今後の計画、見通し、戦略等の将来予想に関する記述を含んでいます。将来予想に関する記述は、当社又は当グループが当有価証券報告書提出日現在において合理的であると判断する一定の前提に基づいており、実際の業績等の結果は見通しと大きく異なることがありえます。その要因のうち、主なものは以下のとおりです。
・主要市場における経済状況及び需要の急激な変動
・為替相場変動
・資金調達環境
・株式相場変動
・原材料・部品の不足及び価格の変動
・信用供与を行った取引先の財政状態
・主要市場・事業拠点(特に日本、アジア、米国及び欧州)における政治・社会状況及び貿易規制等各種規制
・気候変動対策に関する規制強化等への対応
・情報システムへの依存及び機密情報の管理
・人財の確保
・新技術を用いた製品の開発、タイムリーな市場投入、低コスト生産を実現する当社及び子会社の能力
・地震・津波等の自然災害、気候変動、感染症の流行及びテロ・紛争等による政治的・社会的混乱
・長期請負契約等における見積り、コストの変動及び契約の解除
・価格競争の激化
・製品等の需給の変動
・製品等の需給、為替相場及び原材料価格の変動並びに原材料・部品の不足に対応する当社及び子会社の能力
・コスト構造改革施策の実施
・社会イノベーション事業強化に係る戦略
・企業買収、事業の合弁及び戦略的提携の実施並びにこれらに関連する費用の発生
・事業再構築のための施策の実施
・持分法適用会社への投資に係る損失
・当社、子会社又は持分法適用会社に対する訴訟その他の法的手続
・製品やサービスに関する欠陥・瑕疵等
・自社の知的財産の保護及び他社の知的財産の利用の確保
・退職給付に係る負債の算定における見積り
(1)吸収分割
当社は、ITプロダクツ事業の再編を目的として、2023年10月27日、日本国内においてデータインフラストラクチャに関する事業開発・研究開発・生産を担ってきた当社のITプロダクツ事業部門を吸収分割により、新たに設立する日立ヴァンタラ㈱に承継すること(以下「本吸収分割」といいます。)を決定し、2024年1月26日、日立ヴァンタラ㈱との間で、本吸収分割に係る吸収分割契約を締結しました。
本吸収分割の概要は、以下のとおりです。
①本吸収分割の方法
当社を吸収分割会社とし、日立ヴァンタラ㈱を吸収分割承継会社とする吸収分割です。
②本吸収分割の効力発生日
2024年4月1日
③承継する資産・負債の状況(2024年4月1日見込み)
資産:935億円
負債:496億円
④本吸収分割に係る割当ての内容
日立ヴァンタラ㈱は、本吸収分割に際して普通株式199,000株を発行し、その全てを当社に対して交付します。
⑤本吸収分割に係る割当ての内容の算定根拠
当社が日立ヴァンタラ㈱の発行済株式の全部を有することから、本吸収分割に際して、日立ヴァンタラ㈱が普通株式199,000株を発行し、これを当社に交付することが相当であると判断しました。
⑥本吸収分割後の承継会社の概要
商号 |
日立ヴァンタラ株式会社 |
本店の所在地 |
神奈川県横浜市戸塚区吉田町292番地 |
代表者の氏名 |
代表取締役 取締役社長 島田 朗伸 |
資本金の額 |
100億円 |
事業の内容 |
ストレージを中心としたデータインフラストラクチャ製品、データマネジメントソフトウェア、ハイブリッドクラウド基盤及びそれら関連サービスの設計・開発、日本国内の販売、運用、監視及び保守 |
(2)相互技術援助契約
契約会社名 |
相手方の名称 |
国名 |
契約品目 |
契約内容 |
契約期間 |
株式会社日立製作所 (当社) |
International Business Machines Corp. |
アメリカ |
インフォメーションハンドリングシステム |
特許実施権の交換 |
自 2008年1月1日 至 2028年1月1日 までに出願された 特許の終了日 |
〃 |
HP Inc. Hewlett Packard Enterprise Company |
アメリカ |
全製品・サービス |
特許実施権の交換 |
自 2010年3月31日 至 2014年12月31日 までに出願された 特許の終了日 |
〃 |
EMC Corporation |
アメリカ |
インフォメーションハンドリングシステム |
特許実施権の交換 |
自 2003年1月1日 至 2007年12月31日 までに出願された 特許の終了日 |
日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (連結子会社) |
GE-Hitachi Nuclear Energy Americas LLC |
アメリカ |
原子炉システム |
特許実施権の交換 技術情報の交換 |
自 1991年10月30日 至 2024年6月30日 |
(1)研究の目的及び主要課題
当グループ(当社及び連結子会社)は、「デジタル」「グリーン」「イノベーション」を成長ドライバーとして、社会イノベーション事業のさらなる進化をめざしています。「グローバル事業成長に向けて、デジタル、グリーンによるイノベーション創生」を研究開発のミッションとして掲げ、研究開発資源を、顧客体験を革新するイノベーションや社会の本質課題を捉えたイノベーションの創生に重点的に配分し、顧客と社会の課題解決に努めることで、プラネタリーバウンダリーを越えない社会の維持と一人ひとりのウェルビーイングの実現の両立、そして将来にわたる継続的な事業成長をめざします。
事業活動の競争力強化及び将来の成長に向けた取組として、Lumada成長サイクルの具体化により顧客の成長シナリオを策定し、顧客価値を起点としたDX(デジタルトランスフォーメーション)/GX(グリーントランスフォーメーション)をOne Hitachiで実現するとともに、さらに先を見据えたバックキャスト型のコーポレートR&Dを通じた次のLumadaソリューション創生を、グローバル体制で推進しています。そのために、デジタル技術基盤の拡大と、海外の研究リソースの強化を図っています。また、グループ横断で成長戦略をリードする日立デジタル社、グローバル環境事業本部、環境戦略企画本部、イノベーション成長戦略本部と連携し、当グループ一丸となって社会イノベーション事業のさらなる進化を加速します。
(2)研究開発体制
当グループの研究開発においては、当社及びグループ各社の研究開発部門が相互に緊密な連携をとりながら、研究開発効率の向上に努めています。また、国内外の大学や研究機関との連携に加え、2019年4月には研究開発グループ国分寺サイトに研究開発拠点「協創の森」を開設し、顧客やパートナーとのオープンな協創を加速しています。
さらに、コーポレートベンチャリング室を設立し、これまで組成した3つのファンドを通じて、合計30社以上のスタートアップ企業に出資し、当グループの事業とのコラボレーションを通じて各企業の成長を支援しつつ、顧客に価値を提供することで、DX、脱炭素、ウェルビーイングなどに貢献しています。
社会イノベーション事業によるグローバルな成長の加速に向けて、2022年4月に、研究開発グループの組織を再編しました。これまで、当グループのフロントとともに価値起点でのイノベーション創生を担ってきた「社会イノベーション協創センタ」と、価値創生を支える世界No.1技術の開発を担ってきた「テクノロジーイノベーションセンタ」を一体化して、「デジタルサービス研究統括本部」、「サステナビリティ研究統括本部」に再編し、DX及びGXによる価値創生を強化しました。将来への布石を担う「基礎研究センタ」、北米、欧州、中国、アジア及びインドの海外研究開発拠点とともにグローバル一体となってイノベーション創生を推進しています。
(3)イノベーション投資
当グループのさらなる成長に向けて、グループ全体のイノベーション投資を拡大します。
2023年4月に、コーポレートベンチャリング投資として新たに第3号ファンドを、これまでに設立した第1号、第2号ファンドの2倍に相当する300百万米ドルで組成し、Web3、生成AIをはじめとする最新のデジタルトレンドを牽引するスタートアップ企業への戦略的な投資を行います。また、先端研究については、2024中期経営計画の3年間累積で約1,000億円投資する予定です。これらの投資を通じて、将来の社会課題の解決に向けた破壊的イノベーションの創出、Lumada成長サイクルの実現による当グループの成長への貢献をめざしていきます。
(4)研究開発費
当連結会計年度における当グループの研究開発費は、売上収益の3.0%にあたる2,901億円であり、セグメントごとの研究開発費及び研究開発費の推移は次のとおりです。
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(5)研究成果
当連結会計年度における研究開発活動の主要な成果は、次のとおりです。
①現場データの収集技術や生成AIを活用した「現場拡張メタバース」を開発(デジタルシステム&サービスセグメント、グリーンエナジー&モビリティセグメント、コネクティブインダストリーズセグメント)
エネルギーや交通分野の建設・製造・保全などの現場で、施工・製造などの現場関係者と設計・品証・管理部門などの現場外関係者の情報共有や合意形成を促進し、現場業務を迅速に進めるためのメタバース技術として、産業分野での活用を想定した「現場拡張メタバース」を発表しました。これまでに蓄積した多様な産業分野でのデジタルソリューション開発の知見に基づき、簡便な3Dスキャン技術などによりメタバース空間上に現場を迅速に再現し、これを現場データの蓄積や可視化のためのプラットフォームと位置づけて、デジタル技術に不慣れな顧客でも生成AIを含むAI技術によって、容易にデータを利活用することができます。当グループは、現場作業を効率化することでグローバルな社会インフラの持続可能な運用や管理に貢献していきます。
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メタバースで再現された鉄道車両の内部 |
②気候変動に伴う浸水リスクを高速にシミュレーションする環境省の開発途上国向けWebサービス「FloodS」を構築(デジタルシステム&サービスセグメント)
環境省の請負事業のもと、アジア太平洋地域をはじめとする開発途上国での利用を想定した、浸水予測Webサービス「FloodS」を構築し、2023年11月30日から環境省が無償で提供を開始しました。本サービスは、河川氾濫、降雨、高潮による浸水状況の時間変化を高速にシミュレーションし、Webブラウザーの地図上に予測結果を表示するもので、国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)のジャパン・パビリオン(日立ブース)にて紹介されました。今後も当グループは、デジタル技術を活用した官民連携での国際協力の取組などを通じ、持続可能な開発目標(SDGs)の達成や、気候変動に伴う災害の激甚化・頻発化に対する適応力強化など社会インフラの強靭化を支援していきます。
③新型特急車両N100系SPACIA Xが「iF DESIGN AWARD 2024」及び「2023年度グッドデザイン賞」を受賞(グリーンエナジー&モビリティセグメント)
鉄道車両N100系 SPACIA X(以下、「スペーシアX」といいます。)が「iF International Forum Design GmbH」が主催する「iF DESIGN AWARD 2024」及び公益財団法人 日本デザイン振興会主催の「2023年度グッドデザイン賞」を受賞しました。浅草と日光・鬼怒川エリアをつなぐ新型特急車両として2023年7月15日より運行を開始したスペーシアXは、「Connect & Updatable」をコンセプトに、従来の100系「スペーシア」が築き上げてきた伝統やブランド・イメージを維持・継承しながら、より進化した上質なフラッグシップ特急をめざし製作した車両です。車体色・車内照明に沿線観光地の文化的な色彩や造形を取り入れたデザインを採用しているほか、多様なニーズにお応えするため、コックピットラウンジ・コックピットスイートをはじめ、6種類のシートバリエーションを設えております。今回、こうしたデザインが評価され、受賞に至りました(東武鉄道㈱との共同受賞)。
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スペーシアX 外観 |
コックピットスイート |
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コックピットラウンジ |
スペーシアX ロゴ |
④脱炭素社会の実現に向けた充電インフラ拡充及びEV普及に貢献する大容量マルチポートEVチャージャを製品化(コネクティブインダストリーズセグメント)
㈱日立インダストリアルプロダクツでは、電気自動車(EV)の急速充電を可能にする大容量マルチポートEVチャージャを、2023年10月に製品化しました。このマルチポートEVチャージャには、当グループが開発したEV充電技術が搭載されています。大容量かつマルチポート化により同時に充電できる台数を増加させることで、充電時間の短縮と充電渋滞の解消を実現、充放電制御技術により系統増強工事を必要としない系統混雑の緩和や、再生可能エネルギー電源接続量の増加、電圧制御の安定化が可能となります。加えて高効率電力変換技術によりEVが持つ分散型エネルギーリソースの価値を最大化させるものです。当グループは、グループ全体で連携することで脱炭素社会の実現に貢献していきます。
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マルチポートEVチャージャ |
⑤High-NA EUV世代のデバイス開発と量産におけるニーズに応えた高精度電子線計測システム「GT2000」を発売(コネクティブインダストリーズセグメント)
㈱日立ハイテクでは、2023年12月12日に高精度電子線計測システム「GT2000」を発売することを発表しました。本製品は、同社がトップシェアをもつCD-SEM(注1)の技術やノウハウを適用しながら、High-NA EUV露光(注2)向けに低ダメージ高精度計測及び超高速多点計測機能を、また先端半導体デバイスで適用が進む3Dデバイス構造向けに新規検出系を搭載したほか、量産段階で要求される測長値差のさらなる改善を実現しました。当グループの研究開発では、「GT2000」の最先端の加工ノードに対応した世界トップクラスの計測精度の実現に貢献しました。当グループは、顧客の多様なニーズに応え、最先端のモノづくりに貢献していきます。
(注)1.CD-SEM:ウェーハ上に形成された半導体の微細な回路パターンの線幅や穴径等の寸法を高精度に計測する装置
2.High-NA (Numerical Aperture) EUV (Extreme ultraviolet)リソグラフィー:波長が13.5nmの極端紫外線(extreme ultraviolet)で、従来よりもNA(開口数)を向上させたリソグラフィー用露光装置
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高精度電子線計測システム「GT2000」 |
⑥オープンイノベーションによる社会課題解決とエコシステム構築に向けた取組(全社)
将来の社会課題解決に向けて、オープンイノベーションによる最先端技術開発とエコシステム構築に取り組みました。
(i) シリコン量子コンピューティング
量子コンピュータは,従来のコンピュータでは解けない問題を解くことができる新概念コンピューティング技術として期待されています。当社では、30年以上の歴史がある「日立ケンブリッジラボ」での量子物理基礎研究に加え、2020年からは国立研究開発法人科学技術振興機構のムーンショット型研究開発事業(グラント番号JPMJMS2065)を通してアカデミアと連携し、量子コンピュータの課題である大規模化に優位なシリコン量子コンピュータの研究を推進しています。2023年度は量子ビットを効率良く制御可能な「シャトリング量子ビット方式」を提案し、その効果を確認するとともに、大学共同利用機関法人自然科学研究機構分子科学研究所と量子オペレーティングシステムの共同研究を開始、大規模集積化に向けた研究を加速し、量子コンピュータの早期実用化をめざしています。
(ii) 日立-産総研サーキュラーエコノミー連携研究ラボにてオープンフォーラムを開催
リサイクル・リユースの推進や再生可能エネルギーの導入拡大など、限りある資源の有効活用を通じて持続可能な世界を実現する取組が世界的に広がっているなか、当社と国立研究開発法人産業技術総合研究所は、2022年10月に「日立-産総研サーキュラーエコノミー連携研究ラボ」を設立して以来、循環経済社会の実現に向けた研究を推進してきました。2024年2月に開催された第1回オープンフォーラムでは、循環経済へのトランジションに向けた国内外の情勢や同ラボにおける研究の成果を踏まえ、2050年の循環経済社会の姿とその実現に向けた技術的・制度的課題について議論しました。
(iii) デジタルオブザーバトリ研究推進機構のオープンフォーラムを共同開催
多様な社会・経済活動のデータ観測とその利活用による社会リスクの把握・予兆発見・回避、及びレジリエントな社会の実現を目的として、国立大学法人東京大学(以下、「東京大学」といいます。)に設立された「デジタルオブザーバトリ研究推進機構」では、2023年10月10日に設立記念フォーラムを共同開催しました。本機構において、当社は2つの研究グループを東京大学と共同推進しています。フォーラムでは、2050年を見据えレジリエントな社会の実現に向けて産学官がどのように連携すべきかについて、対談により課題解決に向けた方策などを議論しました。
(iv) 日立東大ラボがインペリアルカレッジロンドンとの合同ワークショップを実施
2023年11月2日に日立東大ラボ及びインペリアルカレッジロンドン(以下、「ICL」といいます。)の代表者がエネルギーシステムの将来及び国際的協力の在り方について議論しました。東京大学とICLは、2023年5月に当社立会いのもとで脱炭素技術やクリーンテック技術の創出に関する戦略的関係の構築に合意する趣意書を締結しており、本ワークショップは、こうした連携強化に関する具体的な取組の第一歩です。パネルディスカッションでは、今後の再生可能エネルギーの導入に対する日英それぞれの立場をもとに制度面や技術面での喫緊の課題、及びカーボンニュートラルへの移行に関する国際的な課題や協力の在り方について議論しました。