第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものです。

 

(1) 経営方針

当社グループは、2022年12月に創業50周年を迎えるにあたり、49年目の創業記念日である2021年12月2日より、新しい経営理念「『寄り添うチカラ』で人々の感動と笑顔を生み出す」とパーパス(存在意義)「地方創生による社会貢献を通してすべての人や企業にサプライズを提供し、持続可能な未来の発展に貢献します」の適用を開始し、これまで培ってきたシステム(IT)と業務(BPO)のノウハウを通じて広く社会に有益な存在であり続けることを目指して企業活動を推進しています。

 


 


 

当社グループは、過去の慣習にとらわれず、次の、次の未来に向けてITのチカラでイノベーションを創出し続けることで、人や社会に新たな変革をもたらし、さらなる企業価値の向上を目指してまいります。

 

(2) 第3次中期経営計画「「NEXT STAGE 2023 - HENCA SINCA SOZO -」の振り返り

「お客様に寄り添うチカラ」で持続的成長の実現を目指すことを長期的目標とし、「経営基盤の強化」、「収益性の向上」、「ESG経営の進化」を基本方針に、売上高210億円、営業利益32億円を財務目標に掲げた第3次中期経営計画ですが、売上高は売上計上時期ずれによる影響でわずかながら未達となりました(98.3%)。営業利益は2年目で達成したことにより、目標を上方修正(34億円)し、かつそれをさらに上回る結果(37億円)となりました。ROE・ROICは目標の13%を上回り高水準を維持しています。その他、財務目標以外については、ROIC経営導入やサステナビリティ推進委員会の組織化など概ね目標はクリアしていますが、一部課題が残ったものもあります。残った課題については次期中期経営計画でも取り組んでまいります。

 

(3) 経営環境

今後の経営環境につきましては、新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが5類に移行されたことで、コロナ禍からの社会経済活動が正常化に進む中で、GDPが前年度比で微増するなど緩やかな景気回復がみられる一方、為替相場や資源・エネルギー価格の変動による物価上昇による個人消費の減速懸念など、先行きは依然として不透明な状況で推移していくものと思われます。

 

 

(4) 対処すべき事業上および財務上の課題

 

■FY2033構想「HIGH FIVE 2033」

 事業を通じて人々の豊かな時間を創出

 

当社グループは10年後の目指す姿として「HIGH FIVE 2033」という長期ビジョンを掲げ、持続可能な成長のための取り組みを推進してまいります。第3次中期経営計画で確立した「経営基盤の強化」、「収益性の向上」、「ESG経営の進化」をベースに、地域還流型ビジネスを生み出す企業として、今の事業基盤を活用し新しい領域へ展開、そして地域内で経済が回る事業を実現し、その結果として、当社グループは人々の豊かな時間の創出に貢献することを目指します。

 

■第4次中期経営計画(2024年度~2026年度)    

 「FLY ON 2026」

  既存事業を力強く発展させ、新規事業で飛躍的に成長する

 

本年度からはFY2033構想「HIGH FIVE 2033」を実現すべく2024年度から2026年度の3カ年を対象とした、第4次中期経営計画「FLY ON 2026」がスタートします。既存事業を力強く発展させ、新規事業で飛躍的に成長するという思いを、3つの戦略を推進することで実現していきます。

 

① 事業戦略:

「深く」、「大きく」、「新しく」のテーマに基づき、事業ポートフォリオの拡大を図り、売上高280億円、営業利益48億円、ROE・ROIC15%以上を目指します。また、2026年度に新規事業の売上高28億円を達成することを目指します。

② 人財戦略:

人財の確保と育成に重点を置き、多様性を尊重し、従業員の成長と満足度を高める取り組みを行ってまいります。

③ 企業価値向上戦略:

認知度向上と株主還元の高水準維持を図り、成長ストーリーの発信や機関投資家との対話を通じて、企業価値の向上を目指します。また、ROIC経営や株主還元の積極的な推進も重要な要素です。これにより、企業の持続的な成長と株主価値の最大化を目指します。

 

〈キャピタルアロケーション〉

第4次中期経営計画では、キャッシュインが3年総額88億円、キャッシュアウトが手元資金と合わせ3年総額118億6,000万円となる見込みです。株主の皆様への還元施策については、従来の連結配当性向50%、総還元性向70%以上という目標を継続してまいります。その他、新規事業投資、既存事業投資、社内投資、人財投資などのほか、持続的な成長のためにM&AやCVCなども積極的に検討してまいります。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループでは、サステナビリティを巡る課題への対応を重要な経営課題であると認識し、事業を通じて社会課題の解決に努め、持続可能な社会の実現に貢献することが、当社グループの企業価値の向上につながると考えております。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1)アイティフォーグループのサステナビリティ全般

① 基本方針

当社は2021年12月に、「地方創生による社会貢献を通してすべての人や企業にサプライズを提供し、持続可能な未来の発展に貢献します」というパーパスのもと、当社ビジネスの主要基盤でもある「地方」や「地域」にフォーカスしたサステナビリティ方針を策定し、持続可能な地域社会の実現に向けて社会的な責任を果たしていくことを発表しました。


当社のサービスは社会の多くの場所で活用されています。それは、決済端末のように社会の人々の目につきやすい製品だけでなく、当社のサービスであると認識されづらい場面においてもさまざまなサービスが活躍しています。それらは、出生、入園、入学から卒業、就職、結婚、出産、そしてセカンドライフなど、人々のあらゆるライフステージを支えています。当社のサービスが社会の皆様に驚きや感動、笑顔を生み出し、地域社会づくりに貢献することで、地球環境や経済システム、社会の発展に貢献し、持続可能な未来を実現することを目指しています。

 

② ガバナンス

当社は、社会の大きな変化やニーズの変化に対応した迅速かつ柔軟な事業展開を目指し、強固なガバナンスの構築に取り組んでいます。

2021年に発表した第3次中期経営計画の基本方針の1つ「ESG経営の進化」に則り、代表取締役社長自らがサステナビリティ委員長を、そして3名の取締役が副委員長を務める「サステナビリティ委員会」を設置、そして2022年12月からは、重要課題に特化した「地方創生推進委員会」「人財推進委員会」「環境推進委員会」の3つの推進委員会を新たに設置し、3名の取締役を推進委員長に任命、委員会メンバーには、各事業部からさまざまな等級の従業員が参画しているだけでなく、メンバー内の女性比率は約4割と、ダイバーシティにも配慮しながら活動に取り組んでおります。これにより、当社の重要課題に対し迅速かつ企業の総合力を発揮し対応することで、サステナビリティの取り組みを拡大・進化させております。

また当社は、グループ全体でサステナビリティを含めた事業活動に取り組み、企業価値向上を図るため、定期的にグループ会社トップによる「ITFORグループ経営会議」を開催しています。当会議は半期に1度開催し、主要テーマに合わせて各社代表によるディスカッションを実施することでグループガバナンスを強化しグループ経営を進めることでシナジーを生み出し、持続的な企業価値向上に努めています。2023年度は6月と12月の2回開催しました。6月はグループガバナンスについて、12月は統合報告書第1号と中期経営計画を中心に討議しました。2024年6月は、第4次中期経営計画説明、およびグループシナジーを生み出すための取り組み内容を討議しました。

なおサステナビリティ委員会の活動を半期に1度取締役会に報告することで、進捗状況の報告のみならず必要に応じて指示を受けることができ、より継続的、有効かつ円滑な取り組みを実現することを可能にしています。取締役会で受けた指示内容は、サステナビリティ委員会を通して円滑に各本部ほかグループ会社に展開し、シームレスに取り組めるようにしています。

 


 

 <サステナビリティ委員会メンバー構成>

委員長    代表取締役社長

副委員長   代表取締役専務 技術開発本部長

       取締役 事業本部長

       取締役 管理本部長

メンバー   技術開発本部所属社員3名(うち女性2名)

       事業本部所属社員11名(うち女性2名)

       管理本部所属社員4名(うち女性4名)

 

 

③ ESGを考慮したマテリアリティと具体的な取組戦略

当社は、環境(E)・社会(S)・ガバナンス(G)の視点を取り入れさまざまな角度から検討し、サステナビリティ上のマテリアリティ(重要課題)を5つに特定しました。

 

<5つのマテリアリティと具体的な取り組みの説明>

ESG区分

マテリアリティ

説明

取組概要

環境負荷の低減

温室効果ガス排出量削減に関して、自社での取り組みを促進するだけでなく、お客様の取り組みに対しご支援できるソリューションを提供します。

・気候変動リスクに対する活動の推進

「地方創生」による

社会貢献

事業活動を通じたソリューションを含むオープンイノベーションを活用することで、都市部と地方の格差を是正し、地方経済の活性化を目指します。

・オープンイノベーションによる地方活性化

・地方雇用活性化ソリューションの提供

DX推進による生産性向上、付加価値向上

常に新しく進化するITを活用して団体・企業の生産性向上を支援するとともに、やりがいを持って働くことができる環境構築を支援します。

・新技術を活用した社会インフラの構築、提供

・DXによるディーセント・ワーク推進

人財の深化

多様な価値観・バックグラウンドが尊重され、一人ひとりが能力を最大限発揮できるよう、人財の活躍推進と育成に取り組むとともに、働きがいのある未来志向の職場環境を創造します。

・人権の尊重

・多様な人財の活動推進と育成

・働きがいのある職場環境の提供

・労働安全衛生・健康経営の継続的な推進

経営基盤の強化
 (経営基盤の強化、

社内インフラの強化)

コンプライアンス経営やリスクマネジメント体制、コーポレートガバナンス体制の強化などの「経営基盤の強化」と、社内DX化促進などの「社内インフラの強化」を推進します。

・経営基盤の強化

・コンプライアンス経営の強化

・リスクマネジメント体制の強化

・コーポレート・ガバナンスの強化

・社内インフラの強化

・社内DX化の推進

・セキュリティ強化

 

上記のうち「環境負荷の低減」と「人財の深化」は、「気候変動」項目と「人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針および社内環境整備に関する方針」項目に関連して、(2)および(3)に別途詳細を記載しています。

 

④ サステナビリティにおけるリスク管理

当社は、リスク管理全体を統括する組織として、社長を委員長、他の取締役3名を構成員とするコンプライアンス・リスク管理委員会を設置しており、情報セキュリティ、環境、労働衛生、製品品質、安全などのリスクの重要度を評価、分析のうえモニタリングしております。また当社および子会社の有事においては社長を本部長とする緊急対策本部が統括して危機管理にあたることとしています。

その中でサステナビリティにおけるリスク管理については、地方創生・人財・環境の各推進委員会が協議した内容をサステナビリティ委員会に報告します。サステナビリティ委員会はリスクの重要度を評価し、リスクが最小となる対応策を協議します。協議結果はコンプライアンス・リスク管理委員会に報告され、必要に応じて社内の関係部署に対応を指示するとともに、最終的に取締役会に報告します。

 

 

(2)気候変動

① ガバナンス

気候変動に関するガバナンスはアイティフォーのサステナビリティ全般についてのガバナンスに組み込まれています。(1)アイティフォーグループのサステナビリティ全般②ガバナンスをご参照ください。

 

② 戦略

気候変動への対応を中長期的な企業価値に影響を与える重要な課題と認識しております。環境推進委員会は、気候変動に関するリスクと機会の分析を行い、その影響の調査に取り組んでいます。移行リスクのうち政策・法規制リスク、市場リスクおよび物理的リスクのうち急性リスクは2℃未満シナリオと4℃シナリオを用い、2050年までを考慮したシナリオ分析を実施しています。その結果、重大な影響はないと予測いたしました。

 

※IPCC第5次報告書におけるRCP2.6/RCP4.5/RCP8.5を使用

 

③ リスク管理

事業部および環境推進委員会でリスクの列挙と分析、重要度の評価を行っています。今後、事業インパクトの評価、対応の定義を行う態勢を整えます。

 

④ 指標と目標

 現金の「発行」「輸送」「管理」に要するCO2排出量の削減が見込まれる、地方公共団体、地方企業のキャッシュレス化推進など、事業活動からの温室効果ガス排出削減、事業活動を通じた気候変動対応の推進の両面から取り組みを進め、社会的責任を果たすとともに、地域社会との協働の機会を創出することを目指しています。

 

SCOPE1およびSCOPE2排出量

2022年3月期実績 444t-CO2 

SCOPE3は、上流の算出を開始しております。

 

 

(3) 人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針および社内環境整備に関する方針

① 人的資本経営に関する取り組み方針

当社は、「『寄り添うチカラ』で人々の感動と笑顔を生み出す」という経営理念を実現するために、その原動力となる従業員の一人ひとりに寄り添うことで、従業員が活き活きと働き、持てる能力を最大限発揮できる環境づくりを目指しています。

 

② 人財戦略

当社の人的資本経営は、人財の確保や育成に関連する取り組みの一つひとつが、最終的には経営の目指す目標(ROICの向上、第3次中期経営計画最終年度である2023年度は13%に対して実績15%)につながっていくイメージを見える化し、各施策に関係する従業員全員が最終ゴールを意識した活動をすることで、施策の実施効果を最大限上げていくことを狙いとしています。


 

各施策はKPIの設定とモニタリングにより定点観測を行います。KPIについても、企業間比較が可能な指標に当社の独自指標も加え、また、目標を達成するためのマイルストーンとしてのKPIと、当社として常に維持すべき絶対水準を示したモニタリング指標としてのKPIとに分けて管理することにより、目指すべき目標の明確化を図っています。

 

A 社内人財の教育・育成

当社は従業員一人ひとりの成長が企業の成長にもつながるという人財育成方針に基づき、従業員の教育・育成に努めています。従業員が最新の技術や知識を身につけ、高度な専門性を持つこと〔=人材から人財へ〕により、お客様へのより良いサービスの提供が可能になると考えており、階層別・業務別に焦点を絞った研修のほか、対人対応力などのコンピテンシーを高めるための研修にも力を入れています。

近年は新卒採用をを強化しており、新人エンジニア研修には平均して1,000時間以上の学習時間を確保しているほか、社員の就業時間の5%を自己研鑽の時間に充てる施策を展開するなど、従業員のキャリアアップやスキルアップを積極的に支援しています。

当社はこうした教育や育成を通して「自ら学び続ける文化をつくる」ことを目指しており、それが最終的には仕事の高い遂行能力を有する人財の育成につながるとの思いから、KPIでは「納期遅延の極小化」や「見積精度の精緻化」に関連する指標もモニターしております。プロジェクト納期遅延の極小化に関しては、2023年度は大規模案件の受注が増えたことにより、納期が分割されるケースも増え、一部の納期が遅延するケースが若干増えたため納期遅延の割合が0.22ポイント増加しました。今後は納期遅延を防ぐ為、プロジェクト管理におけるモニタリングを強化してまいります。プロジェクトの見積精度に関しては、2023年度の実績において、目標値の85%を3.3ポイント上回る88.3%を達成しました。

また、資格取得者の割合については、PMP取得者数は順調に増えており2023年度は目標値の20%を0.9ポイント上回る20.9%を達成しました。その一方、情報処理技術者国家試験資格取得者は、技術開発本部に所属する従業員数が増えたことにより、取得者数の割合が下がりました。目標値80%を目指すため、資格取得制度や費用補助制度を整備し従業員の資格取得を積極的に支援してまいります。

 

<指標および目標>

KPI項目・目標

(実績・目標は年度ベース)

実績

目標

備考※3

2021年度

2022年度

2023年度

2024年度

PMP取得者数

(対象:技術開発本部)

12.2

17.3

20.9

20.0

[比較可能]

[モニタリング]

情報処理技術者国家試験資格取得者(※1)

(対象:技術開発本部)

72.9

75.3

71.8

80.0

[比較可能]

[モニタリング]

当社都合によるプロジェクト納期遅延の極小化

0.52

0.74

0.50

[独自]

[モニタリング]

プロジェクトの見積精度(※2)

83.5

83.6

88.3

85.0

[独自]

[モニタリング]

 

※1 情報処理推進機構主催のもの。

※2 全プロジェクト件数のうち、見積誤差が10%未満となるISO9001管理対象プロジェクトの割合を85%に保つ。

※3 [比較可能]は企業間比較が可能な指標であり、[独自]は当社の独自の取り組みとして作成した指標。

   [マイルストーン]は年ごとの進捗を迫っていく指標であり、[モニタリング]は維持すべき絶対水準。以下同様。

 

B 経験者採用の積極化

当社は新卒者の採用や育成に力を入れる一方で、ビジネス環境の変化にも迅速に対応するべく、また様々なフィールドで活躍をしてきた経験者の採用は当社内での新たな発想の展開にも寄与するとの観点からも、経験豊かな即戦力人財を積極的に採用しています。

このコンセプトに則り2023年4月から導入した、当社を中途退職した元従業員の再雇用制度である「カムバック・アルムナイ制度(※)」では、既に4名の従業員を再雇用しております。

 

※「カムバック・アルムナイ制度」: 出産、介護や配偶者の転勤などの理由により、または自身のキャリアアップなどのために当社を中途退職した元社員(アルムナイ)の再雇用制度。退職前の当社での勤続期間や離職期間は不問。

 

C 女性活躍推進

当社は女性の積極採用を進めているほか、上記の「カムバック・アルムナイ制度」の導入や時短勤務、テレワークにより、結婚や出産などを契機に一旦は退職をした女性もライフステージに合わせて活躍できるよう職場環境の整備に取り組んでいます。当社の業務は、男女の格差なく平等に活躍の機会があることから、社内のロールモデルとなるような女性従業員の数を更に増やすことにより、将来の管理職候補のすそ野拡大に努めています。2023年度の実績においては、いずれの指標についても前年と比較して順調に伸びており、引き続き、2025年の目標達成を目指します。

 

<指標および目標>

KPI項目・目標

(実績・目標は年度ベース)

実績

目標

備考

2022年度

2023年度

2025年度

女性従業員割合

18.0

20.2

25.0

[比較可能]

[マイルストーン]

女性管理職比率

4.3

6.7

9.0

[比較可能]

[マイルストーン]

採用した労働者に占める女性労働者の割合

26.0

29.8

35.0

[比較可能]

[マイルストーン]

 

 

また当社は、グループ一体となって全国の自治体における税金や国民健康保険などの催告業務の管理効率化を目的とした各種システムを提供しており、またその業務受託(BPO)も大規模に展開しています。こうした自治体向け業務システムの構築からシステムを活用してのBPOサービスにつきましては、当社(システム開発・BPOサービス)、株式会社アイ・シー・アール(BPOサービス・コールセンター運用)、株式会社シー・ヴィ・シー(訪問・調査業務)というグループ会社間の連携によってシナジー効果を高めており、BPOサービスの全国展開に伴って、契約社員やパート社員の方々を含めて、多くの女性が活躍しております。当社グループによるBPOサービス提供により、自治体の職員の方々は本来業務に専念することが可能となり、社会的価値の創造への貢献にも繋がっています。

 

D シニア人材の活躍

当社グループのBPO分野における女性活躍の様子は上記のとおりですが、同分野におけるシニア就業者数も年々増加しており、多様な働き方を実現する場となっています。加えて当社では、更なるシニア世代の活力向上・活用を狙いとして、2024年度中の定年延長制度導入決定を目指し、取り巻く状況や価値観が変わるなか、多様な人が活躍できる環境づくりの取り組みをより一層加速化させていきます。

 

グループ会社を含めた社員ピラミッド(正社員ベースと正社員+非正社員ベース)


 

E 労働環境の改善

当社は2021年、サステナビリティ推進におけるマテリアリティのひとつとして「人財の深化」を掲げており、その具体的な取り組みとして2023年4月には新人事制度を導入、給与改定においては正社員を対象に平均10%の月例賃金の引き上げ、扶養する子ども1人当たりの手当の額を従来の3倍に引き上げるなど、従業員のモチベーションやエンゲージメントの向上策を実施しました。2024年4月においても昨年に引き続き月例賃金約6%の引き上げを実施、また「人財の深化」の柱である新人事制度も、改定による効果を最大限発揮できるよう、新制度のスムーズな定着と運用強化を重点施策として取り組み、より働きがいのある職場環境の実現を目指していきます。

 

また、メリハリのあるワークライフバランス実現のために、有給休暇取得に全社一丸となって取り組んでいます。当社の有休取得率は、2020年度までは毎年60%前後でしたが、有給休暇の取得を促すための諸制度(「アニバーサリー休暇制度」(自分の誕生日や記念日(My誕生日・My記念日)の属する月の有給休暇取得者員への奨励金支給)、「+1(プラスワン)休暇制度」(飛び石連休の谷間の日や土日祝日を含んだ3連休の前後に休暇を取得した従業員への奨励金支給))を活用して、2022年度の有休取得率は83%まで上昇しました。2023年度は新型コロナウィルスの5類移行等の影響および業務量増加も相まって、取得率は81%に留まりましたが、引き続きこの高水準を維持しつつ、新たな施策も講じながら有休取得率85%という目標達成に向けて取り組んでまいります。


同じく、平均残業時間についても、残業時間削減に向けた取り組み(管理者への啓蒙や従業員一人ひとりの意識改革)により、2023年度は前年より3時間削減の14時間となっており、平均残業時間10時間という目標の達成を目指します。

更に、2022年度に施行された出生時育児休業制度(産後パパ育休制度)に関連して、その対象となるすべての男性従業員に宛て、人事部より個別に制度の説明を実施することで育休の取得を促しており、その効果もあり2023年度の実績では、政府の目標である「2025年に50%の取得率」を大きく上回る57.1%の取得率となっています。

これらの成果が評価につながり、「ハタラクエール2024」(※)にて、福利厚生の充実・活用に力を入れている企業「福利厚生推進法人」(愛称「ハタラクエール」法人)として認証されました。

 

※ハタラクエール(福利厚生表彰・認証制度):福利厚生の一層の普及・発展を目的に、優れた福利厚生を実施

 する法人、およびこれから福利厚生の充実を図ろうとする意欲ある法人に対する民間の表彰・認証制度。

 年に1回福利厚生の充実・活用に力を入れる企業・団体・自治体を表彰。

  ・公式サイト:https://fukurikosei-hyosyo.com/

 

<指標および目標>

KPI項目・目標

(実績・目標は年度ベース)

実績

目標

備考

2022年度

2023年度

2024年度

平均残業時間時間

17

14

10

[比較可能]

[モニタリング]

有給休暇取得率

83

81

85

[比較可能]

[モニタリング]

男性の育児休業取得率

44.4

57.1

50.0

[比較可能]

[マイルストーン]

 

 

F 社員の心身および社会的健康の向上

当社は、従業員が毎日働く職場を快適な場とすることで、従業員が活き活きと働くことができ、それが仕事の能率をあげていくことにつながると考えています。その一環として2022年12月、従業員が働きやすく、新たな発想を生み出せる職場環境を目指し、本社入居ビルの最上階(12階)のレイアウトを変更し、フリーアドレスの導入やフリースペースでの打ち合わせなど、従業員一人ひとりが自由に働ける環境を整えました。この他、従業員同士のコミュニケーションの活性化を図る為のカフェスペースを設けるなど、様々な試みを行った結果、日々多くの従業員が12階を活用し、新たなイノベーションを生み出す対話が活発に行われるようになりました。

2023年度は、所沢事業所について太陽光パネルや照明LED化など環境に配慮した改修を行い、現在は本社ビルのコンセプトを水平展開しレイアウト変更を進めております。今後も、本社入居ビルの他のフロアや本社以外の事業所の内装工事や増改築などを通じて、全従業員が働きやすく、新たな発想を生み出せる職場環境を目指します。

こうした職場環境向上への取り組みと並行して、定期的なストレステストや健康診断を従業員全員に実施することで、従業員の心身における変化を見逃さない体制づくりを目指し、ストレステストの受検率ならびに健康診断の受診率100%を目標としています。また、グループ会社の株式会社アイ・シー・アールが今般、健康経営優良法人2023に認定されたことから、健康経営に関する知見を今後グループ内で共有し、従業員の健康を経営的な観点でとらえ、これまで以上に積極的に行動していきます。

 

<指標および目標>

KPI項目・目標

(実績・目標は年度ベース)

実績

目標

備考

2022年度

2023年度

2024年度

ストレステスト受検率

84

91

100

[比較可能]

[モニタリング]

健康診断受診率

89

92

100

[比較可能]

[モニタリング]

 

 

G ダイバーシティ/インクルージョンの強化

当社はITによる新たなイノベーションを起こすためには、多様な人財が多様な働き方をすることにより、従業員同士で刺激を与えあう環境が不可欠だと考えています。そのために、様々な専門性やスキルを持った外部の方の採用活動を積極的に行ってまいります。このほか、導入を予定しておりました従業員に向けた兼業・副業制度やフリーエージェント(FA)制度については、昨年度は2024年度4月の新人事制度の運用を優先させたため、計画を修正して2024年度中に検討を進めてまいります。

また、多様な人財に多様な働き方をしてもらうことを目指す一方で、その両輪の片方であるインクルージョンの強化、会社全体としての一体感や連帯感の醸成も必須であると考えています。これまで、新型コロナウイルスの影響により控えていた社内イベントも再開しています。2023年12月2日の創業記念日には、2024年度新卒採用の内定者を含む従業員と、その家族を本社に招待するfriendship festival 2023というイベントを開催しました。当日は、本社・中部・九州事業所の従業員とそのご家族、内定者とそのご家族の方々が多数参加し、従業員の家族の皆様にも当社を知っていただく良い機会となりました。また、2019年以来4年ぶりに社員旅行を実施しました。国内、海外含む10以上の多彩な旅行先を自由に選択できるプランが大変好評で、400名以上が参加し、従業員同士の交流を深めました。このような活動を通して、継続的に従業員のエンゲージメントを高めていきます。

 


 

H 離職率改善

当社における直近の離職率は6~7%台で推移していましたが、2023年度の実績では4.2%となりました。近年当社では、新卒採用を大きく増やしており、若年層の離職率を増加させないことが課題のひとつであると認識しています。最近は特に若年層の仕事に対する価値観の変化や、終身雇用制度のあり方の変化なども相まって、若年層従業員が同一企業で働く割合は、年々低下傾向にあります。IT業界においても人財の流動化が高まっていることから、当社としては従業員の定着率向上に向け、上記の施策A~Gにしっかり取り組んでいくことが重要と考えます。引き続きこの指標を維持・低減が図れるよう新たな施策も検討しながら愚直に取り組んでまいります。

 

 <指標および目標>

KPI項目・目標

(実績・目標は年度ベース)

実績

目標

備考

2022年度

2023年度

2024年度

自発的な離職率

5.8

4.2

6.0

[比較可能]

[モニタリング]

 

 

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社グループの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは以下のとおりです。

なお、当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクが顕在化した場合に当社グループの経営成績等に与える影響につきまして、合理的に予見することが困難であるため、記載しておりません。

また、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1)事業環境について

全社的な当社を取り巻く環境として、少子高齢化や人口減少に伴う労働者人口減少の時代を迎え、生産性の向上が喫緊の課題となっております。さらに為替相場や資源・エネルギー価格の影響による物価上昇、それによる個人消費の減速懸念など、依然として経済・社会環境の変化に対し柔軟な対応が必要となっております。また、クラウド活用の進展、ハードウェアからソフトウェアへの流れは今後も継続し、当社のビジネスモデルも変革を迫られております。各事業については、フィンテックの進化、キャッシュレス化の進展、働き方改革、法制度の変化、次世代移動通信システムへのサービス移行などが、当社の今後の業績に影響を与えるものと考えられます。

当社グループが強い事業領域と位置付ける地方銀行を中心とする金融機関においては、低金利の長期化や法改正の影響などを受け、地域ビジネスへの参入など事業の多角化による経営基盤の強化を目的としたアライアンスの拡大、また地方百貨店においても地方経済の低迷による厳しい状況が続いており、事業環境は楽観視できない状況が続いております。当社グループでは、業務効率化や事業拡大につながる様々なソリューションの提供により取引先の収益に貢献できるように取り組んでおりますが、厳しい事業環境が継続することで取引先の業績やIT投資計画に大きな影響を及ぼし続ける場合には、当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。戦略商品であるキャッシュレス決済事業の拡大に取り組んでおりますが、マルチ決済端末「iRITSpay決済ターミナル」の導入先となる加盟店の経営状況、半導体市場の動向、競合の激化などの問題により事業拡大が進展しない場合においては、当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。

また、M&A案件に業績面や財務面での問題が生じた場合などに、当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。AIやブロックチェーンなどの新技術を獲得し、それを活用した新商品の販売を目指していきますが、技術開発が十分に進まず、競合他社に先行された場合には、当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。

 

(2)競合について

当社グループは、事業戦略展開分野を金融業界向けシステムや、流通・小売業界向けシステムなどに関連する分野に集中することにより他社と比べ優位なシステムノウハウを蓄積し、その分野で独自のソリューションとネットワークインフラを含むハード・ソフトのトータルサービスを提供しております。しかしながら、既存の大手コンピューター・メーカーや専業システムインテグレーターとの競合が厳しくなっております。また、当社グループは質の高いソリューションを提案することにより売上の拡大を図っておりますが、情報通信機器類の価格の低下に伴い単価の引き下げ圧力が強まっております。このような企業間競争のさらなる激化と販売価格の下落傾向が続いた場合には、当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。

 

(3)為替相場の変動について

当社グループの商品仕入の5割弱が輸入であり、主に米国ドル建ての取引となっております。当社は、為替相場の変動によるリスクを軽減するため、先物為替予約取引を外貨建買掛金等および発注高の範囲内で行っております。先物為替予約取引の契約先は、いずれも信用度の高い国内の銀行であり、相手先の契約不履行による、いわゆる信用リスクはほとんどないと判断しております。

しかしながら、先物為替予約取引により為替相場の変動による影響を緩和することは可能であっても、間接的な影響を含め、すべてのリスクを排除することは不可能であり、大幅な円安が続くとコストアップ要因となることから、為替相場の変動により当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。

 

 

(4)システム(商品)開発、品質管理について

当社グループの取り扱う情報通信機器類のライフサイクルは、年々短くなる傾向にあります。当社グループは、国内外から最新の情報技術および機器類を仕入れ、お客様へ提供しておりますが、技術進歩に後れを取った場合や商品戦略を誤った場合には、当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。また、当社が保有する2年以上経過した在庫品については、売却可能性がない場合は廃棄処分とし、在庫水準の適正化に努めております。

当社グループが独自開発し、高いシェアを確保しております特許権が成立していないシステムなどで、類似品や競合品の出現により、当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。

また、当社グループはニーズに合ったパッケージシステムおよびお客様の要求事項に基づくソフトウェアの開発、製造ならびに保守(ハード、ソフト)サービスなどを行っておりますが、それらの品質管理を徹底し、お客様に対して品質保証を行うとともに顧客満足度の向上に努めております。さらに当社では「ISO9001(2015年版)」の認証を取得し、品質マニュアルおよび品質目標を設定することにより、品質管理の徹底を図っております。また、情報セキュリティマネジメントシステム国内標準規格「ISO27001(2013年版)」の認証を取得し、お客様へのサービス向上に努めております。しかしながら、当社グループの提供するサービス等において品質上のトラブルが発生した場合には、トラブル対応による追加コストの発生や損害賠償により、当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。

 

(5)情報セキュリティについて

当社グループは、お客様の了解を得た上で、個人情報を含む重要情報に接する機会があります。当社では、プライバシーマークの取得に加え、自社開発の「入退室管理システム」やPCの操作ログを見える化する「CATサポーター」を全社に導入し、情報管理を徹底しております。管理体制としては、各事業部長が情報管理責任者となり担当部門内のセキュリティ管理の責任を負うとともに、各部署に情報管理担当者を配置しております。引き続き情報管理には万全の対応を図ってまいりますが、万一、当社から重要情報が流出するような事態が生じた場合には、事業の継続に重大な影響を及ぼす恐れがあります。

 

(6)自然災害等について

当社ではデータセンターを東京と大阪に設置しており、大規模地震等を想定した事業継続計画(BCP)の整備、安否確認システムの導入、耐震対策、防災訓練等の対策を講じておりますが、大地震等により防災管理体制の想定範囲を超えるような災害が発生した場合には、停電・通信回線の障害等の不測の事態により業務の遂行に影響を及ぼす恐れがあります。

 

 

(7)業績の季節変動について

当社グループの属する情報サービス事業においては、お客様への出荷や納期が3月に集中する傾向があります。しかしながら、システム開発における大型案件では、従来の一括受注ではなく開発見積およびスケジュールの精度を高める目的から工程ごとの分割受注が増加しております。また、前連結会計年度におきましては、第3四半期の売上が第4四半期にずれ込んだ影響により、第4四半期に集中しております。今後の傾向につきましては注視してまいります。

前連結会計年度および当連結会計年度の業績変動の状況は以下のとおりです。
 

 

前連結会計年度(自  2022年4月1日  至  2023年3月31日)

第1四半期

第2四半期

第3四半期

第4四半期

連結会計年度計

売上高(千円)

4,522,037

4,437,321

3,542,748

5,820,274

18,322,382

(構成比)

(24.7%)

(24.2%)

(19.3%)

(31.8%)

(100.0%)

営業利益(千円)

733,556

842,280

574,857

1,066,873

3,217,567

(構成比)

(22.8%)

(26.2%)

(17.9%)

(33.1%)

(100.0%)

経常利益(千円)

770,442

850,966

606,298

1,050,515

3,278,222

(構成比)

(23.5%)

(26.0%)

(18.5%)

(32.0%)

(100.0%)

 

(注)アイティフォー単体売上高 2022年9月 1,825,366千円 2023年3月 2,784,899千円

 

 

当連結会計年度(自  2023年4月1日  至  2024年3月31日)

第1四半期

第2四半期

第3四半期

第4四半期

連結会計年度計

売上高(千円)

4,460,260

4,991,850

5,010,512

6,190,170

20,652,793

(構成比)

(21.6%)

(24.2%)

(24.2%)

(30.0%)

(100.0%)

営業利益(千円)

731,597

948,713

1,004,535

1,052,835

3,737,681

(構成比)

(19.6%)

(25.4%)

(26.9%)

(28.1%)

(100.0%)

経常利益(千円)

765,014

957,543

1,048,866

1,075,066

3,846,490

(構成比)

(19.9%)

(24.9%)

(27.3%)

(27.9%)

(100.0%)

 

(注)アイティフォー単体売上高 2023年9月 1,840,495千円 2024年3月 2,711,321千円

 

(8)業務提携等について

当社グループは、今後も当社グループ事業の拡大と安定を図るための業務提携などを積極的に進めていく方針ですが、当社グループが当初想定したシナジー効果が生じない場合や提携・出資先企業の業績によっては、当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。

 

(9)株式価値の希釈化について

当社は、過去に会社法第236条、第238条および第239条の規定に基づく新株予約権を発行しておりますが、権利行使がなされた場合、株式価値の希釈化が起こり、当社株価に影響が出る可能性があります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社および持分法適用会社)の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フロー(以下、経営成績等という)の状況の概要は以下のとおりです。

① 財政状態および経営成績の状況

当連結会計年度(2023年4月1日~2024年3月31日)におけるわが国の経済は、新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが5類に移行され、コロナ禍からの社会経済活動が正常化に進み、GDPが前年度比で微増するなど緩やかな景気回復がみられました。一方、為替相場や資源・エネルギー価格の変動、物価上昇による個人消費の減速懸念など、先行きは依然として不透明な状況で推移しております。

そのような環境において、当社グループは2021年度から2023年度を対象とした中期経営計画を策定し、経営基盤の強化、収益性の向上、ESG経営の進化の3つを柱に、「お客様に寄り添うチカラ」で持続的成長の実現を目指し、計画の達成に向け事業活動を推進しております。

当社グループを取り巻く国内ITサービス業界では、「非接触」や「非対面」を実現するデジタル化のニーズが引き続き高く、AIやブロックチェーンなど、デジタル技術を活用したビジネスプロセスやビジネスモデルの変革を行うDX(デジタルトランスフォーメーション)を中心に企業の投資意欲は引き続き高い状態にあります。

営業活動においては、金融機関を中心に、当社の主力である延滞債権管理システムの安定的な受注に加え、個人ローン業務支援システム「SCOPE」と業務の非対面化を実現するローンWeb受付システム「WELCOME」を組み合わせた販売および機能追加は、マーケットにおいて高い競争力を有しており堅調に推移しました。これらの当社システムは、申込用紙の削減や契約書類も電子化することで環境への配慮を実現しつつ、審査に費やす時間の短縮に貢献しております。また、延滞債権督促業務を無人化した「ロボティックコール」の販売が好調で、利用が広がっています。加えて、公共分野向けBPO(業務受託)サービスの受注が好調に推移した結果、受注高は21,952百万円(前年同期比118.2%)、受注残は16,599百万円(前年同期比108.5%)といずれも前年同期を大きく上回りました。金融機関向けに加え、社会インフラ向け通信システムおよび決済端末の販売増が寄与し売上増加を達成しました。

業績においては、粗利率改善のための取り組みとして、開発内製化による外注加工費の原価低減などが奏功しました。販管費は、2023年4月からの賃金改定による人件費の増加、採用や教育費用の増加などの人財投資に注力した結果、4,015百万円(前年同期比114.2%)と増加しました。一方で、営業活動の強化による受注高・売上高の増加で費用増を吸収する企業努力に取り組みました。

これらの結果、当連結会計年度の業績は、売上高は20,652百万円(前年同期比112.7%)、営業利益は3,737百万円(前年同期比116.2%)、経常利益は3,846百万円(前年同期比117.3%)、親会社株主に帰属する当期純利益は2,770百万円(前年同期比120.9%)と7期連続の増収増益になりました。

なお、報告セグメント別の経営成績は次のとおりです。

 

(システム開発・販売)

基幹事業である個人ローン業務支援システムを中心とする金融機関向けのソフト開発、インフラ設備の更改などの新規取引拡大により販売は堅調に推移しております。また、マルチ決済端末「iRITSpay決済ターミナル」の販売も好調に推移しました。加えて、社会インフラ向け通信システムの販売が増加しております。その結果、受注高は11,927百万円(前年同期比106.8%)、売上高は12,117百万円(前年同期比114.2%)、セグメント利益は1,994百万円(前年同期比112.2%)となりました。

 

(リカーリング)

安定収益源である保守サービスに加え、公共分野向けBPO(業務受託)サービスにおいて政令市・中核市を中心に、既存契約先からの追加受注に加え、新規受託先の売上が計上されるなど引き続き好調に推移しております。その結果、受注高は10,024百万円(前年同期比135.5%)、売上高は8,534百万円(前年同期比110.7%)、セグメント利益は1,743百万円(前年同期比121.1%)となりました。

 

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は11,505百万円となり、前連結会計年度末と比べ709百万円増加いたしました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は以下のとおりです。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動から得られた資金は2,836百万円(前年同期比165.5%)となりました。主な増加要因は税金等調整前当期純利益3,849百万円、減価償却費326百万円、主な減少要因は法人税等の支払額1,056百万円、売上債権の増加額874百万円、仕入債務の減少額174百万円です。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果使用した資金は504百万円(前年同期比66.5%)となりました。主な減少要因は有形固定資産の取得による支出231百万円、無形固定資産の取得による支出172百万円です。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果使用した資金は1,623百万円(前年同期比218.1%)となりました。増加要因は自己株式の処分による収入112百万円、減少要因は自己株式の取得による支出900百万円、配当金の支払額835百万円です。

 

③ 生産、受注および販売の実績

a. 仕入実績

 当連結会計年度における仕入実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりです。

項目

当連結会計年度

(自  2023年4月1日

至  2024年3月31日)

前年同期比(%)

システム開発・販売(千円)

3,958,299

127.0

リカーリング(千円)

合計(千円)

3,958,299

127.0

 

(注) セグメント間取引はありません。

 

b. 受注実績

 当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりです。

項目

当連結会計年度

(自  2023年4月1日

至  2024年3月31日)

受注高(千円)

前年同期比(%)

受注残高(千円)

前年同期比(%)

システム開発・販売

11,927,832

106.8

6,546,486

97.2

リカーリング

10,024,867

135.5

10,053,481

117.4

合計

21,952,699

118.2

16,599,967

108.5

 

(注) セグメント間取引については、相殺消去しております。

 

 

c. 販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりです。

項目

当連結会計年度

(自  2023年4月1日

至  2024年3月31日)

前年同期比(%)

システム開発・販売(千円)

12,117,864

114.2

リカーリング(千円)

8,534,929

110.7

合計(千円)

20,652,793

112.7

 

(注) セグメント間取引については、相殺消去しております。

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は以下のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。

 

① 重要な会計方針および見積り

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。また、財政状態および経営成績の分析は、連結会計年度末現在で行っており、見積りについては見積りを必要とする事象および見積りに与える要因を把握した上で適切な仮定を設定して評価を行っております。

なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しておりますが、重要な会計上の見積りを要する項目は該当がないものと判断しております。

 

② 経営成績の分析

a) 売上高

当連結会計年度における売上高は、全事業領域でおおむね計画通り売上高が伸長した結果、20,652百万円(前年同期は18,322百万円)となりました。2024年3月期を含む直近3年間の年平均成長率は、10%となっております。

報告セグメント別では、システム開発・販売セグメントにおいて、金融機関向けのソフト開発、インフラ設備の更改、延滞債権督促業務を無人化した「ロボティックコール」の導入などにより販売が安定的に推移しました。また、マルチ決済端末「iRITSpay決済ターミナル」は端末の部品調達の遅れが解消したことなどにより、売上高は12,117百万円(前年同期は10,611百万円)となりました。リカーリングセグメントにおいては、システム販売の増加に伴い保守サービスが安定的に増加したことに加え、公共分野向けBPO(業務受託)サービスが政令指定都市・中核市を中心に引き続き堅調に推移した結果、売上高は8,534百万円(前年同期は7,710百万円)となりました。各報告セグメントの外部顧客に対する売上高の連結売上高に占める割合は、システム開発・販売が58.7%、リカーリングが41.3%となりました。

b) 売上総利益

当連結会計年度における売上総利益は、7,753百万円(前年同期は6,734百万円)となりました。売上総利益率は37.5%となり、前年同期に対し0.8ポイント増加しました。これは、半導体不足による資材価格の高騰や円安による輸入仕入コストの上昇があったものの、外注費のコントロールなどにより原価率が改善したことによるものです。

c) 営業利益

当連結会計年度における販売費及び一般管理費は、研究開発および新規事業向け投資、既存事業向け投資、社内DX推進および人財育成投資などにより、4,015百万円(前年同期は3,517百万円)となりました。

以上の結果、当連結会計年度の営業利益は3,737百万円(前年同期は3,217百万円)となりました。

d) 経常利益

当連結会計年度における営業外収益は、受取配当金の増加などにより122百万円(前年同期112百万円)となりました。営業外費用は、支払手数料の計上などにより13百万円(前年同期は51百万円)となりました。以上の結果、経常利益は、3,846百万円(前年同期は3,278百万円)となりました。

e) 親会社株主に帰属する当期純利益

当連結会計年度における特別利益は、新株予約権戻入益として2百万円を計上しました。以上の結果、親会社株主に帰属する当期純利益は、2,770百万円(前年同期は2,291百万円)となりました。

 

 

③ 財政状態の分析

a) 資産

当連結会計年度末の総資産は23,996百万円となり、前連結会計年度末に比べて2,328百万円増加いたしました。流動資産は19,498百万円となり、1,821百万円増加いたしました。主な原因は、受取手形、売掛金及び契約資産が878百万円、現金及び預金が759百万円増加したことなどです。固定資産は4,497百万円となり、507百万円増加いたしました。主な原因は、繰延税金資産が148百万円減少しましたが、投資有価証券が時価評価などにより708百万円増加したことなどです。

b) 負債

当連結会計年度末の負債合計は5,159百万円となり、前連結会計年度末に比べて659百万円増加いたしました。流動負債は4,878百万円となり、635百万円増加いたしました。主な原因は、買掛金が174百万円減少しましたが、契約負債が299百万円、その他が283百万円、未払法人税等が133百万円増加したことなどです。固定負債は280百万円となり、24百万円増加いたしました。

c) 純資産

当連結会計年度末の純資産は18,836百万円となり、前連結会計年度末に比べて1,668百万円増加いたしました。主な原因は、剰余金の配当の支払により835百万円減少しましたが、親会社株主に帰属する当期純利益の計上により2,770百万円増加したことなどです。

この結果、自己資本比率は、前連結会計年度末の79.1%から78.5%となりました。

 

セグメントごとの財政状況および経営成績の状況に関する認識および分析・検討内容は、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態および経営成績の状況」に記載のとおりです。

 

④ キャッシュ・フローの状況の分析

当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、 経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりです。

 

⑤ 資本の財源および資金の流動性に係る情報

当社グループの資本の財源および資金の流動性については、運転資金および設備投資資金は基本的に自己資金でまかなうこととしておりますが、不足時の一時的な運転資金を効率的に調達するため、主要取引銀行とコミットメントライン契約を締結しております。

なお、自己資本比率78.5%、流動比率399.7%などの指標が示すように、健全な財務体質や営業活動によるキャッシュ・フローを生み出す能力によって、当社グループの事業展開に必要な運転資金および設備投資資金を調達することが可能と考えております。

 

5 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

 

6 【研究開発活動】

当連結会計年度の研究開発活動は、既存システムソリューション品質の継続的向上、規格準拠に対応したソリューション製品の研究開発を行ってまいりました。

当連結会計年度における当社グループが支出した研究開発費の総額は248,139千円です。

 

セグメントごとの研究開発活動は以下のとおりです。

 

(1)システム開発・販売

DX推進に寄与する先進的な機能を取り入れつつもスタンダードな次世代型債権管理システム「サービサーTCS Web版」やPaaS(Platform as a Service)型の簡易的な個人ローン審査システムといった既存システムの機能強化に向けた研究開発のほか、新たなプラットフォームの研究開発も進めております。

また、2022年の産学官連携による実証実験に続き、地域密着型デジタルサービス「Degital Safe(デジタル金庫)」の研究開発活動を展開しています。これは「貸金庫」と「終活ノート」を組み合わせたサービスであり、データ改ざん防止を実現するブロックチェーン技術を活用しております。

上記の研究開発活動などの結果、システム開発・販売における研究開発費は54,618千円となりました。

 

(2)リカーリング

カード事業拡大戦略の一環として、さまざまな決済方法や場所に対応するため、マルチ決済端末「iRITSpay決済ターミナル」の次世代版の研究開発を進めるとともに、決済事業者のサービス向上を目指し、キャッシュレス決済プラットフォーム、BPOビジネスの生産性・品質の向上、決済代行事業に関する研究開発活動も行っております。

上記の研究開発活動などの結果、リカーリングにおける研究開発費は193,520千円となりました。