当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは「SOFT(技術)・HARD(機械)・HEART(心)を創ります。人と地球に優しい製品を開発し社会に貢献します」の経営理念のもと、生産性の向上に役立つ切削工具等の開発・製造・販売に携わってまいりました。また、ブランドステートメントとして“「つくる」の先をつくる”を掲げ、お客様や社会のニーズに応える高付加価値製品を生み出し、モノづくりの夢と可能性を切り拓くことを経営の基本方針といたしております。
また、当社グループは、社会との共存と自社の持続可能性を同期させた「サステナビリティ基本方針」を策定しております。自社グループの中長期的課題と向き合い、社会と共生しつつ企業としての持続的成長を維持継続するため、超硬小径エンドミルを中心に「人と地球にやさしい高付加価値製品を、最小限の資源でつくり、環境負荷の低減に努める」ことで、精密・微細加工用工具分野で圧倒的な№1企業を目指します。
(2)中長期的な会社の経営戦略
当社グループの持続的成長と社会との共存を実現するため、当社の各部門とグループ企業体が互いに連携し、製品開発サイクルの好循環をつくり出すことで、高付加価値製品の継続的な創造、提供の実現を図ります。
上記目的達成のため、開発・生産・販売の各部門においては、下記戦略を実施してまいります。
① 開発部門
新製品開発では、当社グループの強みである既存製品群の更なる品揃えの充実を図るとともに、他社との「違い」を意識したユニークな製品の開発を目指します。新たな素材を使った工具の開発や、新たな工具の加工方法やコーティング技術の改良を推進するとともに、WebやSNSを活用して社内外における製品開発に関わる情報の収集と共有化を図り、販売店やユーザー様に支持される製品を開発してまいります。また、生産技術開発では、次世代加工技術への取り組みによる既存技術の革新を基本方針として、自社開発工具研削盤の更なる機能向上や画像処理技術による自動測定の範囲拡大を図ります。
② 生産部門
仙台工場で策定した「ものづくり行動指針」を生産活動の基本としつつ、自社開発機による自動化ラインの増強、自動化範囲の拡大等により無人化・省力化を引き続き推進し、高性能(高精度、高能率、多機能、長寿命)でバラツキのない、かつ価格競争力のある高付加価値製品を安定的に供給できる体制を深化させてゆきます。また、品質改善のための小集団改善活動「オレンジFC活動」(FCはFuture Challenge)を一段と強化してまいります。また、子会社工場での生産による小径エンドミル生産体制のリスク分散推進や、効率的かつ環境に配慮した生産活動を推進するため電力使用量の削減等を引き続き進めてまいります。
③ 販売部門
国内販売は、製品の拡販を図るための仕組みづくりに再度注力し、ユーザー様に、タイムリーかつ効率的に全製品をお届けするための販売網の整備や在庫の充実を図りつつ、販売店に配慮した施策の展開を行うほか、ユーザー様に対してはフリーダイヤルやオンラインを通じた技術サポートサービスの強化に加え、デジタル技術を活用し、リリース済のWEBサービス「NS Connect」や情報サイト「オウンドメディア」等を活用した製品情報の提供や、データ分析を進めてまいります。また、海外では地域別戦略に基づき、地域特性に合わせたアプローチにより精密・微細加工市場の開拓、拡大を目指し活動してまいります。
(3)経営環境について
当社グループの主力製品である超硬エンドミルは、切削工具の一種で、工作機械に取り付け、主に金型や各種部品の製作といった金属等の加工に使用されます。それらの金型や部品は様々な工業製品に用いられることから、当社グループの業績はそれら工業製品の生産動向に大きく影響されます。当社は刃径6mm以下の小径エンドミルに特化しており、自動車、半導体、電子部品、光学機器、日用品、医療機器等、多くの産業に製品を供給しております。
当社グループを取り巻く現在の経営環境としましては、経済活動の正常化がさらに進む一方で、円安傾向の継続やエネルギー価格の高止まり、中東やウクライナをめぐる不安定な世界情勢、中国経済の減速等、景気への影響が懸念されます。また、原材料や人件費、電力費など様々なコストの上昇も引き続き不安材料とされております。
このような環境の中、主要需要先の動向といたしましては、自動車関連は、供給制約の解消により生産台数の回復が本格化すると見込まれます。補助金の削減等により世界的な電気自動車(EV)シフトの急速な高まりは一段落する一方で、ハイブリッド自動車(HV)や燃料電池自動車(FCV)の需要増加が予想されます。新モデルの開発等による金型や部品向けの精密・微細加工へのニーズは今後も底堅く推移していくものと期待されます。半導体や電子部品関連は、スマートフォンやPCの需要減退により低迷していましたが、在庫調整が一巡し、徐々に回復していくと見込まれます。生成AIを中心に、デジタルトランスフォーメーション(DX)は着実に拡大しており、通信や情報、演算処理等はますます高度化が進むとみられます。将来的にはスマートフォンから波及した新たなデバイスの開発も期待されることから、精密・微細加工への工具需要は今後も中期的に成長していくと想定されます。
(4)優先的に対処すべき事業上および財務上の課題
我が国のモノづくりが圧倒的な強みを発揮する精密・微細加工分野を、小径工具を使った切削加工技術の面から支え続けてゆくことが、当社グループの使命であると認識しております。その使命を果たすため、ユーザー様が安心して新たな加工にチャレンジできる、高性能で品質の安定した高付加価値製品を、販売店を通じ妥当な価格で安定的に供給していくことが当社グループにとって最も大切であると考えております。
当社グループが対処すべき事業上の課題としましては、上記使命を踏まえ、内外の代理店、販売店を通じた販売網の一段の充実を図りつつ、小径工具の分野で、他社との「違い」を意識したユニークな新製品を供給する一方、標準品の圧倒的な品揃えと豊富な在庫を確保することで、小径工具市場でのプレゼンスを再度確立することに重点を置いて業務を推進してまいります。
当社グループが対処すべき財務上の課題としましては、ここ数年成長が鈍化し設備投資が伸び悩んだことから、総資産に占める現預金の割合が増加し資産効率の悪化を招いており、これに対処するため足元は株主還元を強化しておりますが、早期に成長軌道へ復帰することで増産や生産効率改善のための新規設備投資へ現預金を振り向けることにより、資産効率を改善してまいる所存です。
(5)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、売上よりも利益を優先する経営を実行し、売上高経常利益率20%の確保を中長期的な目標としております。当期の売上高経常利益率は21.1%、前期比1.0ポイント減ながら、目標は達成いたしました。2022年11月に原価上昇の一部を転嫁すべく主力製品の値上げを実施し、当期はこの値上げ効果がフルに寄与し売上高総利益率は前期比1.7ポイント改善しましたが、人件費や販売費の更なる増加による経費率の上昇がこれを上回る結果となりました。次期につきましては、景気やインフレ動向の不透明感から販売や原価低減の見通しが困難な一方、引き続き人件費上昇等による原価、費用の着実な値上がりが見込まれることから、売上高経常利益率は当期を2.6ポイント下回る18.5%を予想しております。また、株主資本を効率的に活用する観点から自己資本利益率(ROE)10%の確保も経営指標として重視しておりますが、当期は7.7%に止まっております。厳しい経営環境が続く中、中期的な経営戦略と施策の推進により、高付加価値の創造と提供による利益成長機会を確保し、中期的に両指標の達成を目指します。
(6)経営戦略の現状と見通し
「中長期的な会社の経営戦略」に記載の通り、製品開発では「違い」を意識した製品として5軸MC用の専用工具、アルミ用ラジアスエンドミルやレンズ形状エンドミル等の開発を進めており、生産現場では自社製研削盤の改善や測定技術の向上を図るとともに、自動化を推進してコストの低減を進め、販売部門ではユーザー様向けに「5軸精密・微細加工セミナー」を複数回開催する等、内外での販売機会を最大限に捉え、多様な製品を滞りなくユーザー様にお届けする仕組みの充実を図っており、製品の安定供給につきましては、仙台在庫センター、東京本社、香港子会社、米国子会社の4拠点から製品を供給する体制となっております。
今後の見通しにつきましては、情報通信技術の発展とともに精密・微細加工市場の着実な拡大が見込まれることから、引き続き小径工具の製造販売に特化し、他社との「違い」を追求しつつ、市場と共に成長してゆくための施策を、中期戦略に基づき策定し実行することで、持続的な利益成長を実現してまいります。
(7)その他、会社の経営上重要な事項
① 内部管理体制の整備・運用状況
当社グループでは、社内規程や稟議制度を整備し、ルールに基づいた業務運営を実施しております。また、内部統制報告制度への対応につきましては、常務取締役を委員長とする「内部統制委員会」を設置し、内部統制の整備・運用の推進及びその評価、また監査法人により実施される内部統制監査への対応を行っております。
② 指名・報酬委員会の設置
当社グループでは、ガバナンス強化の観点から任意の指名・報酬委員会を設置しております。指名・報酬委員会は独立社外取締役が過半を構成し、委員長は独立社外取締役から選任される諮問委員会であり、取締役等の候補者の指名(監査等委員である取締役を除きます)や、取締役等の報酬(監査等委員である取締役を除きます)について取締役会より諮問を受け、審議内容を答申することで、取締役会の独立性を高めるものであります。
③ 資本コストや株価を意識した経営の実現に向けての対応
当社グループでは従前より自社の連結資本コストを8.6%程度と想定し、これを上回る資本効率を達成するため自己資本利益率(ROE)10%を経営目標としております。また、このROE目標達成のため、売上高経常利益率20%を維持することをもう一つの経営目標として事業に取り組んでおります。
当期のROEは7.7%、売上高経常利益率は21.1%であり、次期業績予想では指標悪化が見込まれます。会社の中期的課題については従前より総括し対策を行っておりますが、次の持続的成長に向け、再度課題を整理し全社一丸でこれに取り組むべく対応してゆく予定であります。
④ その他
その他の取組みといたしましては、監査等委員による各部門長へのヒアリングの実施、内部監査部門による各部門への内部監査の実施等を行っております。なお、内部監査につきましては、社長及び取締役会の両方へ報告、答申等を行うデュアルレポーティング制度を採用しております。コンプライアンスにつきましては、コンプライアンス担当役員を中心に推進を図っており、全社教育のテーマの一つとして従業員研修会や社内業務連絡で取り上げることにより、社内での周知に努めております。また「コンプライアンス相談窓口」を設け、内部通報制度の窓口といたしております。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、その実現を保証するものではありません。
(1)サステナビリティ基本方針とマテリアリティ
当社グループでは、社会と共存しつつ自社の持続的成長を目指す観点から、2021年11月に「サステナビリティ基本方針」を策定し、併せて当社グループの持続的成長に不可欠な構成要素(マテリアリティ)と共に公表しております。生産、開発、販売、管理の各部門が「サステナビリティ基本方針」に基づき「マテリアリティ」を取り込んだKPIを設定し、高付加価値製品の創造、提供のための好循環サイクルの確立を目指しております。
<サステナビリティ基本方針>
日進工具は、経営理念である「SOFT(技術)・HARD(機械)・HEART(心)を創ります。人と地球に優しい製品を開発し、社会に貢献します。」を実践し、精密な小径エンドミルを全世界に向けて提供することにより、企業や技術者のイノベーションを支えております。また、2004年にISO14000を認証取得し、環境配慮の重要性を自覚して様々な取り組みを実践してまいりました。これからも日進工具グループは、人と社会と環境が調和した持続可能な社会の発展に貢献してまいります。
サステナビリティ方針
小径エンドミルのリーディングカンパニーとして、
これまでにない高付加価値製品を提供することにより、
社会と共生し、持続的成長を目指します。
マテリアリティ
1.環境問題への対応 |
人と地球にやさしい製品を、最小限の資源でつくり、環境負荷の低減に努めます。 |
2.人権の尊重 |
企業活動において、人権を尊重し、行動します。 |
3.地域・社会への貢献 |
小径エンドミルの事業を通じて、地域・社会における公益的な活動を実践します。 |
4.従業員の働きがい |
すべての従業員に働きがいのある職場環境を提供します。 |
5.取引先とのパートナーシップ |
取引先との相互理解を深め、公正な事業活動を通じて持続社会を目指します。 |
6.災害等の危機管理 |
いかなる状況でも安定した製品供給が可能な体制を構築します。 |
(2)サステナビリティ推進体制
① ガバナンス
当社グループでは、経営の実務的戦略を検討する会議体として、執行役員と部長、子会社社長から成る部門長会議を設置し、この分科会としてサステナビリティ委員会を設置しております。サステナビリティ委員会は、気候変動、人的資本を含むサステナビリティ全般について年2回以上検討を実施して取締役会へ報告し、取締役会は報告内容を審議することでサステナビリティ体制の推進を図ります。サステナビリティに関する方針や決議内容の有効性評価やその実施状況の監視は、内部統制委員会が行っております。また、人的資本への対応では、管理職の人財評価を行う人事委員会や人事制度の見直しを行う人事制度構築委員会より、取締役会からの諮問に対し答申を行い、公正な人事評価と人財育成、人財多様性の確保等に努めております。
② 戦略
当社グループのサステナビリティ戦略は、自社の持続的成長と社会との共存に不可欠な要素として選定した6つの「マテリアリティ」(環境、人権、地域・社会、従業員、取引先、災害等)の各項目を踏まえ、ISO規格(品質及び環境マネジメントシステム)と連動した顧客アンケート(VOC)分析や自社グループのSWOT分析からグループ全体の課題を抽出し、これを各部門や子会社毎の課題に分解し「マテリアリティKPI※」として具体的な目標に落とし込んで策定しております。
※KPI=Key Performance Indicator スケジュール化、数値化された重要な事業目標
③ リスク管理
当社グループのサステナビリティ推進管理は、基本的に各部門におけるISOマネジメントシステムとリンクしており、各部門、子会社が自身のKPI(「マテリアリティKPI」を含む)についてPDCAを行い、これをISO事務局が取り纏めて毎月取締役会に報告を行っております。KPIの進捗状況については半年毎にISO事務局が総括を行い、これを取締役会に報告しております。また主要KPIの進捗状況についてはサステナビリティ委員会でも適宜モニタリングを行っております。
④ 指標及び目標
主要な「マテリアリティKPI」と当期の進捗達成状況は以下の通りであります。
(3)環境問題(TCFDを含む)への対応状況
① TCFDを含む環境問題のガバナンス、戦略、リスク管理
② 指標について
当社グループではGHGプロトコルスタンダードに基づいて、サプライチェーンを通じたスコープ1・2・3の温室効果ガス排出量を算定しております。当社グループ全体での前期(2023年3月期)のスコープ1・2排出量の合計は電力総使用量を前年同期比削減したにも拘わらず、排出係数の増加により前年同期比30トン増加し、4,813トンとなりました。当社グループでは従前より電力使用量の削減目標を設定して省エネに取り組んでおり、引き続きスコープ1・2の排出量削減に取り組んでまいります。
(4)人的資本に対する取り組み
① 人的資本に関するガバナンス、戦略、リスク管理について
当社グループは、持続的な成長実現のため、社是である「明るく、楽しく、創造をしよう」を主体的に実践できる多様な人財の育成を経営上の重要課題と認識し、これを実現する体制として、社外取締役が加わった人事委員会が管理職の人財評価を実施し、人事制度構築委員会によるレビューに基づき取締役会が人事制度の見直しを行い、部門長会議(サステナビリティ委員会)が部門間の人財交流等について提言を行う仕組みを構築しております。
人的資本充実のための戦略として、マテリアリティ「4.従業員の働きがい」を採択し、これに基づき「人財育成方針」と「社内環境整備方針」を策定し、これに伴い「一般事業主行動計画」の見直しも実施致しました。これらの基本方針に基づき、各部門で「従業員の働きがい」実現のため、「石川塾」による新入社員への長期基礎研修の実施、中堅社員への技術研修の実施、多能工教育の推進等、具体的なプログラムが実施されているほか、本社主導による外部コンサルタントを使った全従業員へのCSP集合研修や、管理職を対象としたコーチング研修、個別面談の実施を進めております。
② 目標とする指標等について
マテリアリティKPIとして掲げている「くるみん」認定取得を目指すほか、「一般事業主行動計画」に掲げた目標として、①従業員個人単位の年次有給休暇取得率を30%以上とする、②子の看護・育児に使用できる休暇制度を拡充する、③女性社員の比率を1%向上させる、が目標とする指標等であります。また、開示項目である④女性管理職比率、⑤男性育休取得率、⑥男女間賃金格差、についても社内で一定の目標水準を設定しております。女性管理職比率につきましては、管理職補佐を含めた管理監督者の女性比率は着実に上昇しており、引き続き多様性を重視した人財登用を進めてまいります。
「有価証券報告書」に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を及ぼす可能性があると認識している、当社グループの事業展開上のリスク要因となる可能性のある主な事項と当社の取組状況について以下に記載しております。なお、本文中における将来に関する事項は、「有価証券報告書」提出日(2024年6月24日)現在において当社グループが判断したものであります。
(1)災害や新型感染症等の影響について
大規模な災害や新型感染症等の発生により、事業所や工場へのアクセスが制限されたり、従業員の出社が困難となった場合には、製品在庫の出荷が出来ず市場への製品供給が停滞する可能性や、生産体制に影響が出る可能性があります。
当社グループでは、かかる事態への対応として、社内規程を整備しチーム分けによる分散勤務体制や在宅勤務体制を可能としているほか、製品在庫を仙台・東京・海外現法2社にて分散保有し、また新潟工場の生産能力増強により、仙台工場との分散生産体制を推進するなど、複合的な対策を講じております。
(2)生産・開発拠点の集中について
当社グループは、生産・開発拠点を宮城県の仙台北部中核工業団地内に集約することで、効率的な生産・開発体制を構築し、製品の品質、精度、価格競争力等を高める一方、生産・開発拠点における震災対策の強化・徹底にも注力してまいりました。また、前述の通り在庫の複数拠点での保有や新潟工場での生産拡充など、リスク分散のための対策も並行して行ってまいりました。しかしながら、当該地域にて大地震等の災害が発生した場合には当社グループの生産・開発体制全体が影響を受ける可能性があるほか、場合によっては市場への製品供給が滞る可能性があります。
当社グループでは特に仙台工場での地震対策に重点を置いて取り組んでおり、現場における日頃の対策の一段の工夫、徹底に加えて、新開発センターで採用した「オールラウンド免震」機構など、新たな技術を取り込むことで、より高度な地震対策が可能となっております。この結果、2021年2月、2022年3月に東北地方で発生した震度6強の地震に際しては、いずれも1両日で完全に生産復旧できており、一定の成果を生んでいると考えております。引き続き仙台地区での地震対策の充実と、在庫、生産拠点の分散による複合的な取り組みを推進してまいります。
(3)小径エンドミルへの集中について
当社グループは超硬小径エンドミルの製造販売に経営資源を集中しております。超硬小径エンドミルは、主に電子機器、民生機器、自動車部品等の精密金型製作や部品の精密・微細加工に広く使用されており、今後も様々な分野で精密・微細加工技術を使った部材や金型の需要が大きく増加すると考えております。精密・微細加工の方法としては、超硬小径エンドミルを使った切削加工が一般的ですが、将来は他の素材を使った製品や新たな加工方法に代替される可能性があり、この場合当社の事業に影響が出ることが予想されます。
素材につきましては、現時点で超硬素材に全面的に取って代わる素材の出現の可能性は低いと考えておりますが、今後他の素材に代替される可能性はございます。
当社グループでは以前より、CBN(立方晶窒化ホウ素)やPCD(多結晶ダイヤモンド)といった超硬合金以外の素材を使用した製品の開発・製造等も行っており、他の素材についても鋭意研究を進めております。
加工方法につきましては、ここ数年3Dプリンターの普及が進み、金属を積層焼結成形する加工機も出てきており、またレーザー加工等、技術革新によりエンドミルを全く使用しない新たな精密・微細加工技術が開発される可能性もございます。
当社グループでは、高性能(高精度、高能率、多機能、長寿命)でバラツキのない、環境にやさしい小径エンドミルを合理的な価格で提供していくことにより、エンドミルを使った精密・微細加工の優位性をアピールしてまいります。
(4)競合について
当社グループが事業展開している小径エンドミル市場では、国内大手の工具メーカーや超硬メーカーがその成長性に着目して生産・販売体制を強化しており、また中国市場などでも、中国国内で製造された製品が徐々に出回ってきていることから、今後ますます競争が激化していくものと考えられます。
当社グループでは、小径エンドミルに経営資源を集中し、専用加工機の自社開発をはじめ、小径エンドミルに特化した開発・生産・販売体制を強化、充実することにより、高付加価値製品を低コストで創造、提供する事業モデルを構築できていると考えており、一段の体制強化を図ってまいります。
(5)原材料の調達及び資源価格の上昇について
当社グループの主要製品である超硬エンドミルの主要素材は超硬合金であり、その主要成分となるタングステンは国際市況商品で、供給量の8割強を中国が占めていることから、その価格は世界的な需給関係や産出国の思惑等によって大きく影響を受けます。また超硬合金で結合剤として使用されるコバルトはスマートフォンや電気自動車(EV)の電池にも使用されており、その需要拡大により需給逼迫が懸念されております。加えてタングステン、コバルトとも「紛争鉱物」として、以前より一部の生産地域において、その採掘過程での若年者労働や過酷労働による人権蹂躙が問題となっている経緯があります。
当社グループにおきましては、まず原材料のトレーサビリティーを徹底し、調達先から証明書の提出や原料調達方法の説明を受けるなどの方法により紛争鉱物の混入を排除しつつ、長期安定調達が可能な取引先を選んで材料の調達を行っております。また昨今の資源価格上昇に伴う材料価格や電気代、運賃等の上昇に関しましては、生産工程の効率化追求や製造経費の削減等、原価低減活動によりある程度までは自社でコスト上昇を吸収してまいりましたが、諸般の状況を考慮し、2022年11月に超硬製品の価格改定を実施しております。
(6)特定の仕入先・協力会社への依存について
当社グループは、超硬エンドミルの主要素材である超硬合金の大半を特定の仕入先より仕入れております。また、超硬エンドミル生産の主要工程の一つであるコーティングにおきましては、内製化を進めているものの一部を特定の協力会社に委託しております。これは、増産時の対応又は万が一のためのリスク対応等を狙いとするものであります。
当社グループと当該仕入先・協力会社とは、長年にわたり極めて緊密な関係にあり、今後ともこれまでの取引関係を維持発展していく方針でありますが、災害や不測の事態によるサプライチェーンの混乱等に備えるため、安全在庫の積み増しや、設備の増強による内製化比率の引き上げ等、製品の安定供給の観点から対策を講じております。
(7)製品の品質確保について
当社グループは、製造工程に自社開発専用機を投入し、独自の製造プロセスを創りあげることにより、当社特有の生産体制を構築し、この結果高性能でバラツキのない高付加価値製品を安定生産しておりますが、製造ラインが自社独自のものであり、市販の製造設備等での代替ができません。従って、製品の品質維持・確保のためには外部に頼らず自社のみで対応する必要があります。
当社グループは、ISO9001及び14001等の世界的に認められている品質管理及び環境管理のマネジメント基準に従って製品を製造することに加え、当社独自の「ものづくり行動指針」に基づき、社員自らが社内で不断に自社開発機や製造プロセスの見直しと改善を行うことで、高い品質確保のため盤石の体制を維持、発展させてまいります。
(8)環境問題について
当社グループでは、ISOの環境管理基準や「サステナビリティ基本方針」に従って、「人と地球にやさしい製品を、最小限の資源でつくり、環境負荷の低減に努めます」を目標に掲げ活動しております。一方で、環境に対する配慮を求める社会の要請は日々高まっており、GHGの排出削減、資源の3Rや再生可能エネルギーの利用など、販売先、仕入先や株主等の様々なステークホルダーから、より高い目線での対応が求められております。ステークホルダーからの様々な要請、期待に応えられない場合、企業としての社会的信用や事業の成長に影響が出る可能性があります。
当社グループでは、2021年にサステナビリティ委員会を設置して当社グループの環境問題について定期的に討議して報告を作成し、これを取締役会で審議しております。また、各部門のKPIを「サステナビリティ基本方針」に基づき策定することで、環境についても経営目標に織り込んで対応することとしております。気候変動への対応につきましては、TCFDに基づく情報開示を開始しております。
(1)経営成績等の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 経営成績の状況
当連結会計年度における我が国経済は、経済活動の正常化が進み、回復基調が続きましたが、エネルギー価格の高止まりや、地政学的な問題の継続、中国経済の減速等による影響を受け、回復の動きは緩やかなものとなりました。
当社グループ製品の主要需要先の状況といたしましては、自動車関連は半導体や部品不足の解消により、下期にかけて生産台数の持ち直しがみられましたが、認証不正問題の影響もあり、金型向けを中心に工具需要の回復には遅れが見られました。また、半導体や電子・デバイス関連も、在庫調整により全体的に低調に推移しました。海外向けでは、特に中華圏向けが低迷しました。
このような環境の中、当社グループでは、営業面では、国内での「INTERMOLD2023」や「MECT2023」、ドイツでの「EMO Hannover2023」などの展示会に出展し、新製品の発表やユーザーニーズに合わせた工具提案を行うことにより、新たな需要開拓を図りました。また、10月と2月に開発センターにてユーザー様向けに「精密微細5軸セミナー」を開催し、5軸加工に関する技術情報の発信と交換を行いました。
製品面では、1月に高能率レンズ形3枚刃エンドミル「MLFH330」とアルミ用高能率ラジアスエンドミル3枚刃3倍刃長「AL3D-345R」を発売しました。また、PCDボールエンドミル「PCDRB」や高硬度鋼加工用スクエアエンドミル「MHDSH445」「MHDSH645」の規格追加を行いました。
生産面では、原材料費や電力費等の上昇分を補うため、生産効率化とコスト削減に継続して取り組む一方で、多品種適量生産により幅広い製品の在庫拡充を図りました。
これらの結果、当連結会計年度における売上高は9,040百万円(前期比6.4%減)、営業利益は1,867百万円(同11.4%減)、経常利益は1,908百万円(同10.5%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は1,320百万円(同10.5%減)となりました。
なお、売上高経常利益率は前期比1.0ポイント減の21.1%となりましたが、KPIとしている20%の目標は達成いたしました。2022年11月に行った主力製品の値上げ効果が寄与する一方、賃上げによる人件費や営業活動の再開等により販売費が増加したため、売上高経常利益率が若干低下いたしました。もう一つの目標であるROE10%につきましては、親会社株主に帰属する当期純利益が前期比10.5%減となったこと等から7.7%に止まり、目標を下回る結果となりました。
製品区分別の売上高では、「エンドミル(6mm以下)」が7,153百万円(前期比4.4%減)、「エンドミル(6mm超)」が785百万円(同11.9%減)、「エンドミル(その他)」が438百万円(同18.2%減)、「その他」が662百万円(同11.1%減)となりました。
(注)報告セグメントが1つでありますので、製品区分別に記載しております。なお「その他」の事業セグメントは、製品区分別の「その他」に含めております。
② 財政状態の状況
当連結会計年度末における財政状態は、資産合計が19,241百万円(前期末比383百万円増)、負債合計が1,512百万円(同144百万円減)、純資産合計が17,729百万円(同528百万円増)となりました。各資産・負債の増減要因は以下のとおりであります。
<流動資産>
当連結会計年度末における流動資産の残高は12,719百万円で、前期比421百万円、3.4%の増加となりました。これは主に、設備投資額の減少に伴う現金及び預金の増加等によるものであります。
<固定資産>
当連結会計年度末における固定資産の残高は6,521百万円で、前期比37百万円、0.6%の減少となりました。これは主に、減価償却費が設備投資額を上回ったことによるものであります。
<資産合計>
上記により、資産合計は前期に比べ383百万円、2.0%増加し19,241百万円となりました。
<負債合計>
当連結会計年度末における負債の残高は、1,512百万円と前期に比べ144百万円、8.7%の減少となりました。これは主に、買掛金及び未払法人税等の減少等によるものであります。
<純資産合計>
当連結会計年度末における純資産の残高は17,729百万円と前期に比べ528百万円、3.1%の増加となりました。これは親会社株主に帰属する当期純利益の計上による利益剰余金の増加等によるものであります。
③ キャッシュ・フローの状況
当社は足元の業績に左右されず、今後の成長に必要な投資を継続的に行うこととしており、毎期5%程度の売上高の増加に対応できる設備投資を基本としております。具体的には、工具研削盤等の機械設備を中心に実施いたしておりますが、その計画において設置スペースのキャパシティーが不足すると判断された場合に、工場建設等大がかりな投資を行っております。資金の調達につきましては、無借金を前提としておりますことから、基本的には自己資金の範囲内とし、通常は営業活動により得られた資金を上回ることはありません。この数年、市場の成長鈍化に伴い生産活動に係る設備投資額が伸び悩んだことから一時的に手元資金が増加しましたが、今後の事業成長機会に向け準備を進めており、上記基本方針に変更はございません。
また運転資本につきましては、販売、仕入れともに原則翌月決済とさせていただいており、当連結会計年度における売上債権回転期間は1.8ヶ月となっております。
手許資金につきましては、不測の事態に陥った場合でも当面の期間に亘り雇用や設備を維持し、企業活動を継続できる資金を余裕をもって蓄えておく必要があると考えており、その額は現時点で80億円程度と想定しております。
株主還元につきましては、安定的な経営基盤の確保並びに事業展開のための内部留保を勘案しながら、業績に応じた利益還元策を実施していくことを基本方針としておりますが、資本市場からの要請も考慮し、資本効率を意識した運営を行ってまいります。配当につきましては、安定性・継続性にも配慮しつつ、業績動向、資本効率、配当性向等を総合的に勘案したうえで、手元流動性を中期的な事業遂行に必要な水準に維持する事を前提に成長に応じた分配を意識し決定してまいります。
なお、当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。連結ベースでの現金及び現金同等物(以下(資金)という)は、前連結会計年度末に比較し、396百万円増加し、8,793百万円(前期比4.7%増)となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は1,834百万円(前期比13.6%増)となりました。これは主に税金等調整前当期純利益1,906百万円による資金の増加と、減価償却費による資金の増加や仕入債務の減少並びに法人税等の支払いによる資金の流出などを反映したものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は575百万円(同49.4%減)となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出を反映したものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は883百万円(同57.6%増)となりました。これは主に配当金の支払や自己株式の取得によるものです。
④ 生産、受注及び販売の実績
当社グループは、報告セグメントが1つでありますので、製品区分別に記載しております。なお「その他」の事業セグメントは、製品区分の「その他」に含めております。
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績を製品別に示すと、次のとおりであります。
製品別の名称 |
生産高(千円) |
前年同期比(%) |
エンドミル(6mm以下) |
7,395,427 |
△11.3 |
エンドミル(6mm超) |
803,978 |
△17.4 |
エンドミル(その他) |
244,824 |
△24.3 |
その他 |
477,235 |
△13.3 |
合計 |
8,921,466 |
△12.4 |
(注)金額は販売価格によっております。
b.受注実績
当連結会計年度における受注実績を製品別に示すと、次のとおりであります。
製品別の名称 |
受注高(千円) |
前年同期比(%) |
受注残高(千円) |
前年同期比(%) |
エンドミル(6mm以下) |
6,948,683 |
△6.4 |
252,469 |
△44.8 |
エンドミル(6mm超) |
750,681 |
△11.2 |
25,810 |
△57.6 |
エンドミル(その他) |
411,117 |
△20.8 |
114,672 |
△19.4 |
その他 |
640,101 |
△18.9 |
56,847 |
△28.1 |
合計 |
8,750,582 |
△8.6 |
449,799 |
△39.2 |
(注)金額は販売価格によっております。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績を製品別に示すと、次のとおりであります。
製品別の名称 |
販売高(千円) |
前年同期比(%) |
エンドミル(6mm以下) |
7,153,601 |
△4.4 |
エンドミル(6mm超) |
785,736 |
△11.9 |
エンドミル(その他) |
438,737 |
△18.2 |
その他 |
662,273 |
△11.1 |
合計 |
9,040,349 |
△6.4 |
(注)最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先 |
前連結会計年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
||
金額(千円) |
割合(%) |
金額(千円) |
割合(%) |
|
株式会社サカイ |
1,417,247 |
14.7 |
1,387,592 |
15.3 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討の内容
当社グループに関する財政状態及び経営成績の分析・検討内容は、原則として連結財務諸表に基づいて分析した内容であります。本項においては、将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
●経営成績等
当社グループの当連結会計年度の経営成績等は、売上高が前期比6.4%減少の9,040百万円、営業利益は同11.4%減少の1,867百万円となりました。
経済活動の正常化が進み、回復基調が続きましたが、エネルギー価格の高止まりや、地政学的な問題の継続、中国経済の減速等による影響を受け、回復の動きは緩やかなものとなりました。
当社グループ製品の主要需要先の状況といたしましては、自動車関連は半導体や部品不足の解消により、下期にかけて生産台数の持ち直しがみられましたが、認証不正問題の影響もあり、金型向けを中心に工具需要の回復には遅れが見られました。また、半導体や電子・デバイス関連も、在庫調整により全体的に低調に推移しました。海外向けでは、特に中華圏向けが低迷しました。
●重要な影響を与える要因
当社グループの製品はそれ自体が人々の暮らしを支えるものではなく、人々の暮らしを支える様々な工業製品を作る際に必要となるものです。従いまして、その需要動向は精密・微細加工を必要とする製品群にリンクしています。例えば、スマートフォンのようにこれまでになかった新たな製品が登場し、それを世界中の非常に多くの人が持つようになると、大きな需要が生まれます。また景気が上向き、人々の所得が増えると自動車が売れるようになったり、より高い機能を持った高級品が売れるようになったりすることによって需要が膨らみます。このように当社の製品需要は世界の景気動向や新たな製品の登場等によって大きく影響を受けています。
当連結会計年度における状況は、第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(3)に記載のとおりでありますが、経済の先行きについては不透明感が増しており、当社グループを取り巻く経営環境は依然厳しいものになると予想されます。
当社グループの主要需要先においては、自動車関連は供給制約の解消により生産台数の回復が本格化すると見込まれます。補助金の削減等により世界的な電気自動車(EV)シフトの急速な高まりは一段落する一方で、ハイブリッド自動車(HV)や燃料電池自動車(FCV)の需要増加が予想されます。新モデルの開発等による金型や部品向けの精密・微細加工へのニーズは今後も底堅く推移していくものと期待されます。半導体・電子部品関連は、スマートフォンやPCの需要減退により低迷していましたが、在庫調整が一巡し、徐々に回復していくと見込まれます。当社グループでは、それらの需要をいかにして取りこぼすことなく対応できるかが重要であると考えており、引き続き高精度、高能率、多機能、長寿命を実現する高機能・高付加価値製品の普及を図るとともに、CBNやPCDを用いた製品など、ユーザー様の多様なニーズに応え得る製品をご提供できるよう努めてまいります。
●資本の財源及び資金の流動性
当社グループでは、運転資金及び設備資金につきましては、原則内部留保で賄うこととしております。運転資金につきましては、売上に係る決済を原則締め日の翌月応当日とさせていただいており、当連結会計年度における売上債権回転期間は1.8ヶ月となっています。また、在庫拡充を目的に棚卸資産が61百万円増加し、棚卸資産回転期間は6.9ヶ月となりました。当社グループにおいては、標準品の販売比率が高く欠品するとユーザー様にご迷惑をおかけしてしまうほか、失注に結び付く可能性もあるため、一定水準の製品在庫を揃えておく必要があります。設備資金につきましては、機械設備の継続的な投資を行いつつ、必要に応じて工場建設等の大きな投資を行っており、通常は営業活動により得られる資金を上回ることはありません。なお、当連結会計年度における設備投資は、生産設備を中心に563百万円と、前期に比べ123百万円減少いたしました。
●経営上の目標の達成状況
当社グループは、売上よりも利益を優先する経営を実行し、連結売上高経常利益率20%の確保を中長期的な目標としております。当期の連結売上高経常利益率は21.1%、前期比1.0ポイント減ながら、目標は達成いたしました。2022年11月に行った主力製品の値上げ効果が寄与する一方、賃上げによる人件費や営業活動の再開等により販売費が増加したため、売上高経常利益率が若干低下いたしました。
次期につきましては、経済活動の正常化がさらに進むと予想されますが、円安傾向の継続やエネルギー価格の高止まり、中東やウクライナをめぐる不安定な世界情勢、中国経済の減速等、景気への影響が懸念されます。原材料や人件費、電力費など様々なコストの上昇が引き続き見込まれることから、連結売上高経常利益率は当期を2.7ポイント下回る18.4%を予想しております。
また、株主資本を効率的に活用する観点から連結自己資本利益率(ROE)10%の確保も経営指標として重視しておりますが、当期は7.7%に止まっております。厳しい経営環境が続く中、高付加価値の創造と提供による利益成長機会を確保し、中期的に両指標の達成を目指します。
② 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている企業会計の基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たって、当社経営陣は資産、負債及び収益・費用の各報告数値に影響を与える見積りの仮定を過去の実績や状況に応じて合理的に設定し、算定しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りとは異なる場合があります。
当社グループは、円安傾向の継続やエネルギー価格の高止まり、中東やウクライナをめぐる不安定な世界情勢、中国経済の減速等、景気への影響が懸念される中、今後の見通しを含め、重要な会計方針及び見積りが連結財務諸表に重要な影響を及ぼす事項であるかを検討いたしましたが、合理的な見積り及びその影響額等を勘案した結果、連結財務諸表に重要な影響を及ぼす事項は無いと判断いたしました。
(1)販売代理店契約
相手方の名称 |
契約内容 |
契約期間 |
株式会社サカイ |
売買基本契約 |
2023年9月1日から 2025年8月31日まで |
株式会社東京山勝 |
売買基本契約 |
2023年9月1日から 2025年8月31日まで |
株式会社山勝商会 |
売買基本契約 |
2023年9月1日から 2025年8月31日まで |
(注)上記契約については、契約当事者双方から期間満了の3ヶ月前までに契約終了の申出がない場合、当初の契約期間が更に2年間延長され、以後も同様であります。
(2)仕入契約
相手方の名称 |
契約内容 |
契約期間 |
MMCリョウテック株式会社 |
商品売買基本契約 |
2023年4月1日から 2024年3月31日まで |
(注)上記契約については、契約当事者双方から期間満了の6ヶ月前までに契約終了の申出がない場合、当初の契約期間が更に1年間延長され、以後も同様であります。
当連結会計年度における研究開発活動は、(1)他社にできない競争力のある高付加価値製品の開発、(2)小径工具を中心とした豊富な製品バリエーションの確保、(3)既存生産技術の革新を目的とした生産設備の自動化や機能向上を主な活動目標として、工具素材やコーティング、工具形状等の研究、自社工具研削盤の改良及び検査装置の自動化を進めるとともに、Webを活用した情報提供等に継続して取り組みました。
主な活動としましては、2枚刃となったことで従来品よりも工具寿命が格段に向上した「SMB200」、新形状と3枚刃の採用により加工能率の向上を実現した高能率レンズ形3枚刃エンドミル「MLFH330」やアルミ加工用の3枚刃3倍刃長のラジアスエンドミル「AL3D-345R」といった新製品を順次発売し、既存製品においては「MRBH230」「MRBSH230SF」「MHRH430R」「MHDSH445」「MHDSH645」「PCDRB」といった主力製品について、270を超えるサイズを追加するなど工具需要の本格回復を見据え製品ラインアップの一段の強化、充実に努めました。
なお、「SMB200」は「超モノづくり部品大賞(主催:モノづくり日本会議/日刊工業新聞社)奨励賞」を受賞いたしました。
また、ユーザーの技術者の皆様と個別に意見交換を行う場として、Webによる「技術交流会」を継続して実施するとともに、2023年10月と2024年2月に「精密微細5軸セミナー」を開催し、5軸制御マシニングセンタを用いた小径工具の活用事例などを紹介しました。ユーザー様の抱える課題やニーズの深掘りに加え、今後の製品開発につながるヒントを得る貴重な機会となりました。
当連結会計年度における研究開発費は