文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
Purpose(私たちの存在意義) :計測技術で社会に貢献
Vision (私たちが目指す姿) :テクニカル商社への転身
Values (私たちの価値観) :お客様に信頼される企業、誠実で高い倫理観をもった企業
みんなが幸せになれる企業、地球を大切にする企業
当社グループは、代表的な経営指標である自己資本利益率(ROE)10%以上を目標としております。
当社を取り巻く経営環境は、新型コロナウイルス禍から経済活動が正常化に向けて進む中、景気は一部に足踏みがみられたものの緩やかに回復しました。しかしながら、物価高や人手不足に加え、我が国及び欧米各国の金融政策、中国や欧州の経済停滞、米中対立激化やウクライナ・中東情勢を背景とする地政学リスクの高まり等、経済の先行きに関しては極めて不透明な状況が続いております。
当社グループが属する電子計測器、電源機器、環境試験機器等の業界におきましては、人手不足を背景とする自動化・省力化を企図した設備投資や成長分野への研究開発投資が底堅く推移する中、当社の主要ユーザーである自動車業界では、世界的な脱炭素化の流れを受け、EVや燃料電池等の次世代自動車に係る開発やADAS・自動運転の技術開発には引き続き積極的な投資が見込まれております。また、電子・電機業界では、様々な分野で電子化・デジタル化の流れが加速しており、5Gに関連する社会インフラの整備や、IoT等の投資の拡大が引き続き期待されております。しかしながら、2023年度は、世界的な景気減速懸念等を背景に設備投資の執行にやや慎重な動きがみられ、当社の受注にも一部に影響が生じました。
このような状況下、当社グループでは、2030年を見据えた成長戦略「INNOVATION2030(2020年6月公表)」の第2期として、新たな中期経営計画「INNOVATION2030 Ver.2.0」を2024年5月に公表しました。直近3年間の中期経営計画「INNOVATION2030 Ver.1.0」で構築した経営基盤を礎に、更なる進化を図ってまいります。
マクロ経済環境は混沌とした状況が続いておりますが、新たな中期経営計画の初年度となる2024年度は、売上高1,100億円、営業利益35億円、経常利益35億円、親会社株主に帰属する当期純利益24億円を計画しています。ただし、世界的に景気・経済環境が大きく変動する可能性があり、当社グループの業績見込みも大きく変化する可能性があります。
マクロ環境は、我が国及び各国の金融政策転換による経済への影響や、中国経済の停滞長期化懸念、緊迫化する中東情勢等に伴う地政学リスクの高まり等、混沌とした状況が続く見通しであります。こうしたリスクが当社に影響を及ぼす懸念がある一方、昨今の賃上げにより景気の回復が見込まれます。また、成長分野への研究開発・設備投資は引き続き堅調に推移する見通しであります。当社が関係する自動車業界においては、脱炭素化に向けたEVや燃料電池等の次世代自動車に係る開発や、ADAS・自動運転の技術開発には引き続き積極的な投資が見込まれております。また電子・電機業界においても、DXの実現に向け電子化・デジタル化の更なる進展が想定され、5G関連やIoT等の分野において引き続き積極的な投資が見込まれております。当社は、幅広い顧客基盤を構築しており、こうした成長分野への投資拡大の動きを捕捉することで、業界環境や顧客ニーズの変化に対応しつつ、受注及び収益力の拡大を図ってまいります。
今後、新たな中期経営計画に基づき、ベース収益となるコアビジネスの安定成長、専門性を必要とする事業領域の拡大、世界的なサプライチェーン変革をビジネスチャンスと捉えたグローバル展開を通じて、中長期的な成長を目指してまいります。また、社員を最大の資産と考える経営方針に基づき、当社の企業理念・経営戦略に資する人材の確保や、社員のスキル向上、モチベーション引き上げに向けた人的資本投資も積極的に行ってまいります。同時に中長期的な企業価値向上を見据え、システム関連投資や効率的な業務運営等にも取り組み、成長を支える経営基盤を強化してまいります。加えて、PBRの改善や資本効率経営の実現に向けて、ROEを経営上の重要指標と位置付け、ROE10%以上の安定的、持続的な確保を目指してまいります。
今後も、成長戦略遂行による収益力増強と経営基盤強化の両立、並びに株価やPBRを意識した経営の実践を通じて、業界のリーディングカンパニーとして中長期的な企業価値の向上を図ってまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) サステナビリティ全般
① サステナビリティに対する考え方
当社グループにとって、サステナビリティとは、事業を通じて社会問題の解決に貢献することと捉えております。「計測技術で社会に貢献」をPurposeに掲げた企業理念に基づき、当社グループの事業活動・成長を通じて、お客様や全てのステークホルダーの発展、ひいては持続可能な社会の実現に貢献していきたいと考えております。
当社では、取締役会は、迅速かつ的確な意思決定機関として、取締役会規程に則り、経営の基本方針や法令で定められた事項、その他経営に関する重要事項を決定しております。毎月1回厳正に開催している他、緊急な意思決定を要する事項については、適宜臨時でも開催しております。また、経営全般に関して迅速な意思決定と柔軟な組織対応を目的に、取締役及び執行役員が出席する経営会議も月1回開催しております。
サステナビリティに関する重要事項(E・S・Gに係る取組)についても、取締役会や経営会議で迅速かつ的確に審議・決議しております。
また、透明性の高い経営の実現と企業価値の継続的な向上に向けて、コーポレートガバナンスの充実を経営上の重要課題と位置付け、取締役会や監査等委員会等から構成されるガバナンス体制を構築しております。詳細については「
当社は、上述した体制に基づき、グループ経営に関する様々なリスクを定期的にモニタリング・評価し、対応策を適時に検討・指示・実行しております。リスク管理の詳細については「
(2) 当社グループの企業理念
当社グループは、2022年8月に企業理念を再定義しました。創業時よりその歴史の中で受け継いできた精神や信念等を示した企業理念を大きく変えるものではなく、今後、長期的なスパンで更に成長・発展していくうえで大切にすべきことを「Purpose(存在意義)、Vision(目指す姿)、Values(価値観)」に整理したものとなります。
当社は、計測技術を主体にお客様の発展に貢献することで成長を遂げてきており、今後も計測技術を更に向上させ、お客様に貢献し続けることを喜びとし、その実現を通じて社会貢献を果たしていく。こうした思いを込め、企業理念の中核要素となるPurposeを「計測技術で社会に貢献」としております。
(3) 人的資本に関わる戦略・取組等
① 人的資本経営の考え方
企業理念の実現に向けて、当社グループは「社員」が最大の資産と考えております。企業理念のValuesに「みんなが幸せになれる企業」を掲げ、お客様や社会への貢献、並びに社員の人間的な成長を最大限サポートすることを、経営の重要課題と位置付けております。
社員が人間的に成長し、お客様への付加価値提供の礎となる幅広い知識・専門性を備えることが、当社グループの企業価値向上の源泉となるという考え方の下、人材を最大の資産とする人的資本経営を実践しております。
② 人材育成・社内環境整備に関する方針と取組状況
当社の企業理念や経営戦略に資する有能な人材を確保・育成することが、人材育成及びそのための環境整備の基本方針・目的となります。
当社では、社員がモチベーションやスキルを継続的に向上させるための企業風土や文化を醸成すると共に、環境を整備し成長機会を提供していくことが重要と考え、その実現を念頭に人的資本投資を積極的に行っております。
具体的には以下のような取組を行っております。
(a) 人事制度の見直し
当社は、2022年に人事制度を見直しました。具体的には、「社員を大切にする」「成果主義をより鮮明にする」「男女・国内外平等を実践する」「モチベーションが上がる仕組みとする」を基本方針に、外部水準を意識した給与水準への是正など処遇の改善に資する給与制度の改定や、ダイバーシティを念頭に女性や外国人社員が多様な働き方とキャリアパスを選択できるような等級制度の再構築を行いました。
また、業績評価や能力評価による適正な評価、評価に見合った処遇を目的に、評価制度も見直しました。キャリア申告制度を導入し、社員が異動等に係る希望を申出できる職群転換の環境も整備しました。今後も制度の改善を図り、社員のモチベーションやエンゲージメントを高める施策を展開してまいります。
(b) 処遇改善
社員の処遇改善に向けては、退職金制度の見直しにより、2023年4月、従来の退職金制度に加えて、確定拠出型年金制度を新たに導入しました。また、2022年の人事制度改定に伴う給与水準の引き上げに加えて、2024年4月にはマクロ環境等を踏まえ賃上げを実施しました。
(c) 採用強化
成長戦略を実践するためには、人材の確保は重要課題であり、新卒の定期採用に加え、多種多様なスキルを持つ中途人材も積極的に採用しております。
新卒採用では、初任給の引き上げを行なったほか、適性な人材を確保するため面接方法も見直しました。また、当社HPの採用ページを刷新すると共に、学生向けに「若手社員の1日密着取材」の動画や「日本電計と計測の世界」という当社を理解しやすいコンテンツを作成し、採用入社後のミスマッチによる離職防止にも努めております。
業績や事業領域の更なる拡大を図るためには、技術や経験を有する人材の確保が不可欠であり、中途採用にも注力しております。適正な処遇やポストを整備し、当社の成長を支える人材として育成してまいります。
こうした取組の結果、2023年度は56名(新卒11名、中途45名)を採用しました。また、2024年4月入社の新卒者は7名となります。今後も採用強化を図ってまいります。
(d) 教育体制充実
新人事制度の等級に合わせて、等級の定義も見直しました。従来から実施している新入社員研修や管理職研修等に加え、各等級で期待されるスキル・能力を、習得、育成するための階層別研修や職種毎の職務別研修等、体系的な研修制度の確立を図っております。2023年度には新たに、役員・部長職等を対象としたマネジメント実践スキルに関する研修等を導入しました。
また企業理念を実践し、環境変化に柔軟に適応できる人材を育成するため、外部機関による研修のほか、内部講師による研修も充実させております。今後も個々人の能力開発を実施することにより、組織力向上を図ってまいります。
以上の取組を通じて、2023年度の社員エンゲージメントサーベイでは、総合満足度3.80(2022年度調査比103.3%)、勤続意向4.03(同103.6%)、と前年対比で向上させることができました。
今後もこうした取組の強化を通じて、社員のモチベーション・スキル向上を図り、社員のエンゲージメントを高め、当社の持続的な成長に繋げてまいります。また、人的資本経営の高度化を念頭に、経営戦略及びその遂行に向けた人材戦略の策定・見直しにも引き続き取り組んでまいります。
社員エンゲージメントサーベイ 調査結果
[実績](2022年度) 総合満足度:3.68点 勤続意向:3.89点
(2023年度) 総合満足度:3.80点 勤続意向:4.03点
[目標](2024年度予定) 総合満足度・勤続意向共に2023年度実績を超える水準
(注)調査は「1~5」の5段階評価(平均3点)
女性管理職比率
[実績](2022年度) 0.5%
(2023年度) 0.7%
[目標](2027年度) 2.0%
参考:人的資本に関する各種指標
(注)上記計数は提出会社の数値(連結と記載する数値を除く)。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは以下のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループの営業収入における重要な部分を占める電子計測器の需要は、当社グループが製品を販売している国または地域経済の影響を受けます。従いまして、当社グループが製品を販売している主要市場である自動車業界や電機業界における景気後退及びそれに伴う需要の縮小は、設備投資計画に影響を与え、当社グループの業績や経営成績に悪影響を与えるリスクがあります。
これらのリスクを回避するため、自動車業界では自動運転に関する技術開発や安全性試験、環境試験関連の設備ニーズ、電機業界では次世代通信5Gに向けての設備ニーズやIoT等新たな技術開発に関するニーズを積極的に取り込む営業活動を展開しております。これらの取り組みにより業績悪化リスクの最小化に取り組んでおります。
当社グループで取り扱う電子計測器や環境試験機等が多く使われる、自動車業界や電機業界では、製品やその部品の生産が世界に分散しており、サプライチェーンは複雑に絡み合っております。中国への製造拠点の集中を避けるため、アセアン地域に製造拠点を新たに設置したり、移設したりする動きも見られます。米中間の貿易摩擦や世界各地での紛争で、サプライチェーンの見直しを迫られ、当社グループの業績や経営成績に影響を与えるリスクがあります。
当社グループでは、主に日系企業の海外進出に対応できるよう、中国、アセアン諸国、インド、アメリカ、ドイツ等に現地法人を設立し、ユーザーの海外生産拠点のシフトにも弾力的に対応できる販売拠点網を構築し、リスクの最小化に努めております。
新型コロナウイルス感染症拡大のようなパンデミックや、当社グループの想定を超える大規模な自然災害等が発生し、事業運営が困難になった場合、当社グループの業績と財政状態に大きな影響を与える可能性があります。
当社グループでは、本部のオフィスの分散化、テレワーク、時差出勤、自家用車通勤等感染防止に向けた諸施策を実施しております。また、従業員の行動履歴の把握、異常事態発生時の対応マニュアル作成等を実施しており、こうしたリスクの回避に努めております。
電子計測器の卸売業界においても、厳しい価格競争は例外ではなく、競争の激化により当社グループが収益性を保つことができなくなる可能性があります。
ユーザーのニーズにスピ―ディーかつ正確に応え、また取扱領域の拡大を図り、付加価値の高いサービスを追求してまいります。加えて、ユーザーの幅広いニーズを踏まえ、粗利益率の比較的高い海外製品の取り扱い拡充や、専門性を必要とするビジネスの強化等に取り組むことで収益性を確保しております。
当社グループは、東アジアでは中国を中心に積極的に拠点を設立している他、アセアン地域では、一国2拠点を目標に駐在所や現地法人を設立し、事業を展開しておりますが、現地の法的規制、慣習、国際情勢の変化等に起因する予測不能な事態が発生したような場合、当社グループの業績と財務状況に影響が及ぶ可能性があります。
現地での税務コンサルタント、監査法人、弁護士事務所からの情報収集に努めており、現地の法的規制、慣習、国際情勢の変化等に起因する予測不能な事態が発生した場合に速やかに対応できる体制の構築に努めております。
当社グループの海外での事業展開に伴い、日本から商品を輸出する取引が中心となります。売掛金や入金が米ドル建てとなる場合が多く、円と米ドルの為替の急激な変動によっては売掛金の評価を含め、為替差損が発生する場合があり、当社グループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
海外との取引における為替リスクを回避するため、基幹システムを為替変動に対応できるように変更したほか、受注と売上時の適用レートの差をできるだけ少なくするため見積書の有効期間の短縮、外貨預金の運用で為替差益を確保するオペレーションの実施等を行っております。
当社グループでは、運転資金として、一定水準の有利子負債を調達しております。ゼロ金利下においては、有利子負債に伴う金利支払いが収益力に及ぼす影響は軽微ですが、今後、国内金融政策の転換等により金利が上昇した場合には、当社グループの財務状況に影響が生じる可能性があります。
当社グループでは、将来的な金利上昇局面を想定し、金融機関からの借入を固定金利とする等の対応を行っております。今後もこうした対応を継続すると共に、運転資金を削減するための対応策も検討してまいります。
当社グループの販売先は、大企業から中小企業まで10,000社程度に達し、また取引上そのほとんどが信用取引であります。景気の悪化等に伴い企業の倒産が増加した場合には、不良債権が発生し当社グループの業績と財務状況に悪影響を与える可能性があります。
販売先の企業情報をベースとして、各社に販売限度となる与信限度を設定し、売掛債権の徹底した管理を行っている他、大口案件については個別に回収条件や取引条件を検討しており、不良債権の発生リスクの低減に努めております。
売上管理、支払管理等をコンピュータ処理しており、1日の取引件数は、平均10,000件程度に達しております。サイバー攻撃等により、コンピュータのダウン等の異常事態が発生した場合に、営業活動を停止せざるを得ないリスクがあります。これらの事態は、当社グループの業績や経営成績に影響を与えるリスクがあります。
社内のサーバによるデータ管理をやめ、大手システムインテグレーターのデータセンターに移行し、地震や洪水等の自然災害からコンピュータシステムの保護を強化するとともに、毎日のデータのバックアップを行っております。このように、停電や突然の障害並びにサイバー攻撃に備えるシステム構築等の対策を講じて、コンピュータ関連の異常事態発生によるリスクの回避、軽減に努めております。
(10) 法的規制等の強化
外国為替令及び輸出貿易管理令等により、輸出管理規制が強化されております。当社グループも取引先の海外進出が積極化するなかで、計測機器類の輸出も増大する傾向にあります。米中貿易摩擦の激しくなる中で、輸出できる製品や相手先が急遽限定されるなど、日本政府による法令も逐次変更される事態が発生しております。法令違反が発生すれば、貿易業務に支障が生じ、当社グループの業績と財務状況に悪影響を与える可能性があります。
外国為替令及び輸出貿易管理令等による輸出管理規制の強化に対応するため、貿易管理室の人員の増加とレベルアップを図っております。また、貿易実務に直接従事する社員の教育にも力を入れており、輸出管理規制に速やかに且つ正確に対応できる体制を構築しております。
(11) 有能な人材の確保及び人材育成
当社グループの将来の成長と成功は、ユーザー企業のエンジニアや購買担当者などキーマンのニーズに的確に対応できる幅広い商品知識と情報収集力を持った営業担当者の確保、育成に依存する部分が大きく、その確保・育成ができなかった場合、当社グループの業績と財務状況及び将来の成長に影響が及ぶ可能性があります。また、優れた営業ノウハウを持った人材を確保することは、採用コストと人件費を増大させる可能性があり、既存従業員の育成では、継続的な研修コストを増大させる可能性があります。そして、これらのコストの増加は、当社グループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
新卒の定期採用に加え、営業所の人材ニーズに適応した多種多彩な人材の中途採用も積極的に進めております。また、女性の営業部門への登用も進めております。ユーザー企業のエンジニアのニーズに対応できる人材を確保することは長期的な成長にとって不可欠であります。また、既存の従業員のスキルアップも重要であり、社内教育の充実を図っております。
また、人材確保のためには処遇も重要であることから、賃金制度、勤務体制等働き方の改革を積極的に進め魅力ある職場づくりに努めております。
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は以下のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における経営環境は、新型コロナウイルス禍から経済活動が正常化に向けて進む中、景気は一部に足踏みがみられたものの緩やかに回復しました。しかしながら、物価高や人手不足に加え、我が国及び欧米各国の金融政策、中国や欧州の経済停滞、米中対立激化やウクライナ・中東情勢を背景とする地政学リスクの高まり等、経済の先行きに関しては極めて不透明な状況が続いております。
当社グループが属する電子計測器、電源機器、環境試験機器等の業界におきましては、人手不足を背景とする自動化・省力化を企図した設備投資や成長分野への研究開発投資が底堅く推移する中、当社の主要ユーザーである自動車業界では、世界的な脱炭素化の流れを受け、EVや燃料電池等の次世代自動車に係る開発やADAS・自動運転の技術開発には引き続き積極的な投資が見込まれております。また、電子・電機業界では、様々な分野で電子化・デジタル化の流れが加速しており、5Gに関連する社会インフラの整備や、IoT等の投資の拡大が引き続き期待されております。しかしながら、世界的な景気減速懸念等を背景に、設備投資の執行にやや慎重な動きがみられ、当社の受注にも一部に影響が生じました。
このような状況下、当社グループは、パーパス「計測技術で社会に貢献」、ビジョン「テクニカル商社への転身」を掲げた企業理念に基づき、中期経営計画の最終年度として、計測機器を主体とするコアビジネスの強化に加え、事業領域の拡大を企図した成長戦略を遂行いたしました。具体的には、次世代自動車市場、ADAS・自動運転市場、IoT市場、次世代通信5G市場を4つの重点市場と捉え、理化学、エンジニアリング、EMC、受託試験、インテグレートという5つの事業を推進すると共に、グローバル展開の強化を図ってまいりました。
この結果、個別では売上高は89,317百万円(前年同期比1.6%増)となり、粗利益率が前年同期比0.5%向上したことから、売上総利益は前年同期比672百万円増加しました。経費面では、人的資本投資や経営基盤強化のためのシステム関連投資等を積極的に行い、またコロナ禍からの営業活動の本格稼働に伴う出張費や広告宣伝費等も増加しましたが、営業利益は3,412百万円(前年同期比261百万円増)となりました。また、円安に伴う為替差益を273百万円計上し(前年同期は248百万円)、経常利益は3,918百万円(前年同期比325百万円増)となりました。
国内子会社では、校正サービスを請負うユウアイ電子株式会社が堅調な業績を確保し、その他の子会社も低水準ながら利益を確保しました。海外子会社では、中国は春以降の景気減速の影響等から受注は弱含みましたが業績は増収増益を確保し、その他地域も全体として増収増益を維持しました。
以上の結果、当連結会計年度の売上高は108,539百万円(前年同期比3.6%増)となりました。営業利益は4,431百万円(前年同期比691百万円増)、経常利益は4,809百万円(前年同期比813百万円増)、親会社株主に帰属する当期純利益は2,947百万円(前年同期比42百万円増)となりました。
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ1,952百万円増加し、66,063百万円となりました。
当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ250百万円減少し、37,864百万円となりました。
当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ2,202百万円増加し、28,198百万円となりました。
セグメントの業績は、セグメント間の内部取引も含めて次のとおりであります。
なお、セグメント利益は営業利益ベースによる金額であります。
日本では、新型コロナウイルス禍から経済活動が正常化に向けて進む中、景気は一部に足踏みがみられたものの緩やかに回復しました。当社グループが属する電子計測器、電源機器、環境試験機器等の業界におきましては、人手不足を背景とする自動化・省力化を企図した設備投資や成長分野への研究開発投資が底堅く推移する中、当社の主要ユーザーである自動車業界では、世界的な脱炭素化の流れを受け、EVや燃料電池等の次世代自動車に係る開発やADAS・自動運転の技術開発には引き続き積極的な投資が見込まれております。また、電子・電機業界では、様々な分野で電子化・デジタル化の流れが加速しており、5Gに関連する社会インフラの整備や、IoT等の投資の拡大が引き続き期待されております。しかしながら、世界的な景気減速懸念等を背景に、設備投資の執行にやや慎重な動きがみられ、当社の受注にも一部に影響が生じました。
このような状況下、当社グループは、中期経営計画の最終年度として、計測機器を主体とするコアビジネスの強化に加え、事業領域の拡大を企図した成長戦略を遂行いたしました。
その結果、売上高は90,253百万円(前年同期比1.4%増)となり、セグメント利益は5,480百万円(前年同期は4,815百万円)となりました。
中国では、販売子会社である電計貿易(上海)有限公司等は、春以降の景気減速等の影響から受注は弱含みましたが、業績は増収増益を確保しました。一方、受託試験場を運営する電計科技研発(上海)股份有限公司の業績は苦戦いたしました。
その結果、売上高は16,272百万円(前年同期比9.3%増)となり、セグメント利益は185百万円(前年同期は171百万円)となりました。
その他地域では、インドの販売子会社の業績は苦戦しましたが、タイ・韓国・台湾・アメリカ等の販売子会社の業績は底堅く推移しました。
その結果、売上高は7,484百万円(前年同期比23.8%増)となり、セグメント利益は632百万円(前年同期は330百万円)となりました。
海外売上高
前連結会計年度(自 2022年4月1日 至 2023年3月31日)
(注) 1 海外売上高における国又は地域は、販売先(市場)を基準としているため、当社及び連結子会社の日本以外の国又は地域における売上高であります。
2 「その他」の区分に属する主な国又は地域
その他・・・タイ、シンガポール、ベトナム、マレーシア、韓国、台湾、インドネシア、フィリピン、
インド、アメリカ
当連結会計年度(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)
(注) 1 海外売上高における国又は地域は、販売先(市場)を基準としているため、当社及び連結子会社の日本以外の国又は地域における売上高であります。
2 「その他」の区分に属する主な国又は地域
その他・・・タイ、シンガポール、ベトナム、マレーシア、韓国、台湾、インドネシア、フィリピン、
インド、アメリカ、ドイツ
当連結会計年度における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べて506百万円減少し、7,611百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは3,604百万円の収入(前年同期は96百万円の支出)となりました。これは主として、売上債権の増加額696百万円、棚卸資産の増加額829百万円を、税金等調整前当期純利益4,867百万円が上回ったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは764百万円の支出(前年同期は1,240百万円の支出)となりました。これは主として、有形固定資産の取得による支出357百万円、出資金の払込による支出266百万円等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは3,542百万円の支出(前年同期は1,450百万円の収入)となりました。これは主として、短期借入金の減少額1,650百万円、長期借入金の返済による支出1,509百万円等によるものであります。
③ 生産、受注及び販売の実績
当連結会計年度における仕入実績をセグメントごとに示すと次のとおりであります。
(注) 金額は、仕入価格によっており、セグメント間の取引については消去前の数値によっております。
当連結会計年度における受注実績は、次のとおりであります。
(注) 金額は、販売価格によっております。
(c) 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと次のとおりであります。
(注) 金額は、販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。
この連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
(資産)
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べて1,952百万円増加し、66,063百万円となりました。
流動資産は、前連結会計年度末に比べて1,511百万円増加し、56,652百万円となりました。現金及び預金が524百万円減少いたしましたが、受取手形及び売掛金が1,051百万円、商品及び製品が783百万円増加したこと等によるものであります。
固定資産は、前連結会計年度末に比べて440百万円増加し、9,410百万円となりました。投資有価証券の増加等により投資その他の資産が合計で524百万円増加したこと等によるものであります。
(負債)
流動負債は、前連結会計年度末に比べて1,430百万円増加し、36,016百万円となりました。支払手形及び買掛金が781百万円、未払法人税等が295百万円増加したこと等によるものであります。
固定負債は、前連結会計年度末に比べて1,680百万円減少し、1,847百万円となりました。繰延税金負債が400百万円増加いたしましたが、長期借入金が2,113百万円減少したこと等によるものであります。
(純資産)
純資産は、前連結会計年度末に比べて2,202百万円増加し、28,198百万円となりました。利益剰余金が配当金の支払により925百万円減少いたしましたが、親会社株主に帰属する当期純利益を2,947百万円計上したことにより2,022百万円増加したこと等によるものであります。
(b) 経営成績の分析
(売上高)
当連結会計年度における売上高は108,539百万円となり、前連結会計年度に比べ3,761百万円増加(前連結会計年度比3.6%増)となりました。
(売上総利益)
当連結会計年度における売上総利益は、売上高の増加や粗利率の増加の効果もあり、15,465百万円となりました。前連結会計年度に比べ1,672百万円増加(前連結会計年度比12.1%増)となりました。
(販売費及び一般管理費、営業利益)
当連結会計年度における販売費及び一般管理費は11,033百万円となり、前連結会計年度に比べて981百万円増加(前連結会計年度比9.8%増)となりました。
この結果、営業利益は4,431百万円(前連結会計年度比18.5%増)となりました。
(営業外収益、営業外費用、経常利益)
当連結会計年度における営業外収益は、491百万円(前連結会計年度は、367百万円)となりました。主な要因は、為替差益等によるものであります。営業外費用は、112百万円(前連結会計年度は、111百万円)となりました。主な要因は、支払利息等によるものであります。
この結果、経常利益は4,809百万円(前連結会計年度比20.4%増)となりました。
(特別利益、特別損失、税金等調整前当期純利益)
当連結会計年度における特別利益は、68百万円(前連結会計年度は、98百万円)となりました。主な要因は、固定資産売却益等によるものであります。特別損失は、11百万円(前連結会計年度は、71百万円)となりました。この要因は、固定資産除却損によるものであります。
この結果、税金等調整前当期純利益は、4,867百万円(前連結会計年度比21.0%増)となりました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
以上の結果、当連結会計年度における税金等調整前当期純利益から法人税、住民税及び事業税、法人税等調整額を差引いた当期純利益は、2,936百万円(前連結会計年度比2.3%増)となり、親会社株主に帰属する当期純利益は、2,947百万円(前連結会計年度比1.5%増)となりました。
キャッシュ・フローの分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社グループの資金需要は、営業費用である債権及び債務に対するものが主なものとなっており、これらの資金需要については、自己資金、金融機関からの借入金により資金を調達しております。
資金の流動性については、現金及び現金同等物に加え、取引銀行との間で当座貸越契約を締結しており、事業活動のために必要な資金の確保と流動性を維持しております。
当社は、株価やPBR(株価純資産倍率)を意識した経営の実践を通じて中長期的な企業価値の向上を目指しており、PBRの改善や資本効率経営の実現を踏まえ、ROE(自己資本当期純利益率)を経営上の重要指標と位置付けております。中期経営計画においてもROE10%以上を目標に掲げて、収益性の向上、資本の効率化、適切な株主還元等により、その向上に取り組んでまいりました。
自己資本利益率を向上させる手段としては、①売上総利益率の向上、②総資産回転率の向上、③財務レバレッジの向上が考えられます。
① 売上総利益率の向上
当事業年度の個別の粗利益率は11.86%となり、前期実績11.34%から0.52%ポイント改善いたしました。粗利率の高い製品の売上に注力したほか、システム提案も引き続き強化し、付加価値を高めてまいりました。なお、連結の当期純利益率は、税効果会計の適用により法人税等調整額393百万円を計上したため、前期比では小幅な低下であります。
② 総資産回転率の向上
当連結会計年度では、成長市場への積極的な取り組み等を進めてきた結果、売上高は108,539百万円、前年同期比3.6%の増加となりました。総資産も増加しましたが、総資産回転率は小幅ながら向上いたしました。
③ 財務レバレッジ(自己資本比率の逆数)の向上
財務レバレッジを向上させるための手段としては、負債を増加させることや株主への配当を増加させることが考えられます。
当連結会計年度では、配当は、中間35円、期末45円、年間配当80円、前期比5円の増配をいたし、引き続き積極的に株主還元を実施しております。また、金利の上昇が見込まれる中、有利子負債を削減し総資産の増加を抑えました。
以上のような具体的な施策を実施したことにより、当連結会計年度のROEは11.2%と、10%以上とする目標を上回る結果となりました。今後も、ROE10%以上の安定的、持続的な確保を目指してまいります。
該当事項はありません。
該当事項はありません。