文中の将来に関する事項につきましては、当連結会計年度末現在において当社が合理的と判断した一定の前提に基づいたものであります。これらの記載は実際の結果とは異なる可能性があり、確実性を保証するものではありません。
世の中が変化しても変えてはいけない当社グループが大切にする考え方を示すため、基本理念の表現を「価値共創によって人々を幸せにする会社 ~ Sustainable Value Together ~ 」と改めるとともに、新たにサステナブル経営方針を2020年度に定めました。
・Sustainable Product:人々の豊かな生活を実現する新しい価値を創造し提供します
・Sustainable Process:全てのステークホルダーとともに地球環境と共生する循環型プロセスを構築します
・Sustainable People:多様な社員が全員、存在感と達成感を味わいながら成長する「人間中心の経営」を進めます
私たちダイセルの経営方針の最上位にあるのが基本理念です。SDGs実現のために「サステナブル経営方針」を基本理念の直下に位置付けました。またこのサステナブル経営方針をProduct、Process、Peopleの3つの要素で実現します。この経営方針を具現化していくために、当社グループで働くすべての役員、従業員の基本的な行動原則を再確認し、私たち一人ひとりが、あらゆる行動において常に意識し実践していく行動指針として「ダイセルグループ行動指針」、多様化するグローバル社会で存続するための必要条件であり、すべての企業活動領域で普遍的に適用する規範として「ダイセルグループ倫理規範」を定めました。そして、それを実現するための戦略が長期ビジョンと中期戦略になります。
当社グループが変わらず大切にする思いとともに、今後大胆に変えなければならないことを、2020年度を開始年度とする長期ビジョン『DAICEL VISION 4.0』および中期戦略『Accelerate 2025』で明確にいたしました。2023年度には、さまざまな社会的変化の影響や交易条件など経営環境が大きく変化したことに伴い、必要なアップデートを行っております。
注力するドメイン
サステナブル経営方針の具現化に向け、以下の4つのトリガーと注力する市場で価値を提供し、人々の幸せの実現と、当社グループの持続的な成長を目指します。
長期ビジョン実現への道のり
Operation-I(原ダイセル)では自社の現状の事業に加え、注力するドメインを含めた領域で、事業構造の転換とアセットライト化(徹底したコストダウン)を進めます。
Operation-Ⅱ(新ダイセル)では、既存事業の周辺領域でのM&Aや提携による領域拡大、既存事業の再編や合弁会社の抜本的見直しに取り組むとともに、グループ全体でのアセット・スーパーライト化を目指します。
Operation-Ⅲ(新企業集団)では、グループの枠を超えて、まず垂直統合方向のバリューチェーン(サプライチェーン)を強化し、その共通顧客に対する価値創造(共創)に取り組むとともに、同業他社や大学など、水平方向にも共創を拡大することで、より大きな価値の提供を目指します。
基本理念実現に向けて、以下の基本的な戦略に沿った取り組みを推進することで、既存事業の強化・成長による価値の提供と、「循環型社会構築への貢献」を目指します。
クロスバリューチェーン実現に向けた取り組みとしてバリューチェーンの垂直/水平方向との連携を推進し、新企業集団を見据えた、組織変更に対して柔軟に組み替え可能なバーチャルカンパニーの実現を図り、その基盤となるデジタルアーキテクチャの構築を進めます。
また、事業ポートフォリオとして「健康」「安全・安心」「便利・快適」「環境」における価値提供型事業へシフトし、ビジネスユニット(BU)の特性に応じたKPIの設定とその進捗に応じた資源配分により、売上高、営業利益ともに「次世代育成」事業と「成長牽引」事業のシェアを高めてまいります。
[メディカル・ヘルスケア事業]
・新規腸内代謝物ベースの機能性食品素材(ウロリチン他)の展開
・CPI事業の中国、インドでの拡大
・DDS(ドラッグデリバリーシステム)や医療関連材料などメディカル領域の事業育成
[スマート事業]
・半導体市場への材料供給及び関連事業の拡大
・ダイセルビヨンド㈱の活用による高機能フィルムの拡大
・ドライコーティング技術による新事業創出
[セイフティ事業]
・生産地統廃合によるメリット拡大
・インド、ASEAN市場で連携し、リスクヘッジとシェアアップを両立
・中国企業との関係強化
・EV車向けの電流遮断器量産と中国・欧米での拡販
[マテリアル事業]
・アセテート・トウの加熱式たばこ向け販売増、増設なき増産
・カプロラクトン誘導体・エポキシ化合物の高付加価値用途への拡大
・酢酸セルロースの環境素材市場開拓
[エンジニアリングプラスチック事業]
・欧米市場で拡販(ポリアセタール樹脂(POM)・液晶ポリマー(LCP)の 欧米でのシェア10%)
・中国市場でのビジネス強化(中国企業への販売)
・環境ビジネス創出(リサイクル・バイオ原料使用製品の展開)
※発表時点の事業セグメントで記載しております。
また、ポリプラスチックスの完全子会社化に伴うシナジー効果を最大化するために、パフォーマンス・マテリアルズ事業本部を設置しており、さらなるグループ全体の樹脂事業の強化に取り組みます。具体的には、ポリプラスチックスのグローバル展開の加速(将来需要取り込みのための増産投資、欧米市場への拡販)、コストダウンシナジーの実現(ダイセル式生産革新の展開加速、間接部門の効率的運営)、グループシナジーの最大化(ポリプラスチックスのマーケティング力の活用、R&Dリソースの相互活用、触媒効率改善など既存事業の改善および改良)などに取り組み、2025年度までにEBITDAで300億円のシナジー効果を見込んでおります。
事業創出力の向上のため、R(Research:ユーザー目線によるシーズの掘り起こし)とD(Development:事業化力の強化)の自立を図り、Proactive IP(開発、事業化のアンテナ機能)、R、Dの相互作用による事業創出を目指してまいります。
生産(プロダクション)については、安全・品質のあくなき追求、究極のアセットライト、現場活躍の基盤強化を実践し、現場の力を結集してバーチャルカンパニーでパートナーに価値を提供することを目指します。
デジタルトランスフォーメーションについては、権限委譲を進める組織改革やそれに伴う働き方改革をサポートすることを主眼に、あらゆる業務領域へのAI、IoTの活用を進めてまいります。
人事については、多様な社員が存在感と達成感を味わいながら成長できる、変える!変わる!人事を目指してまいります。
中期戦略最終年度となる2025年度に以下の全社業績および経営指標をターゲットとしております。
全社業績:
売上高 6,600億円、営業利益 820億円、親会社株主に帰属する当期純利益 580億円、
EBITDA 1,360億円
経営指標:
営業利益率 12.4%、ROE 17.1%、ROIC 9.3%、ROA 7.7%、CCC 125日
株主還元 中期戦略発表時の1株当たり配当金額(年間32円)を下限、総還元性向 40%以上
※2024年度より、配当をDOE(株主資本配当率)4%以上、総還元性向 40%以上に変更。
また、アセットライト方針に基づき、業容拡大期間においても総資産残高をキープしつつ、自己資本比率45%超、ネットD/Eレシオ 0.5以下を実現し財務安定性強化を図ることにより2026年3月末のバランスシートとして以下をイメージしております。
2026年3月末(ターゲット) (億円)
収益力強化に加え適正在庫化などキャッシュコンバージョンサイクル削減効果で資金創出力向上を図ります。また、政策投資株式売却などにより資金創出力をさらに高め、余裕資金を成長投資や株主還元に活用します。株主還元は総還元性向40%以上とし、自己株式取得も視野に柔軟に対応してまいります。
世界経済は、景気の緩やかな持ち直しの動きが続くことが期待されるものの、世界的な金融引き締めに伴う影響、中国経済の減速、ウクライナ・中東情勢の影響など、先行き不透明な状況のうちに推移しております。
このような環境の中、当社の事業環境も不透明な状況が続いていますが、変化する事業環境、リスクに対応し、業績の向上、中期戦略実現に向けた取り組みを進めています。そして、安全・品質およびコンプライアンスの強化、現場の作業負荷の大幅低減を何よりも優先して推進しています。会社の持続的な成長の原動力である従業員一人一人の声に応えるとともに、投資や要員などの必要な経営資源を投入し、現場の安全確保や作業環境改善、製品の品質向上を図ります。
当社では、サプライチェーンの緊密な連携や、需要に応じた生産体制の構築などにより、販売機会を着実に捉えるとともに、プロセス革新による原燃料コストの抑制や、販売価格の適切な是正にも取り組んでいます。さらに、聖域を設けることなく全社のあらゆる領域において徹底したコストダウンを実践しています。
また、2020年に完全子会社化したポリプラスチックス株式会社とのシナジーによる当社グループ力の更なる強化、事業の選択と集中、投下資本の効率化やメリット実現を追求したROIC重視の経営推進など、収益拡大に向けた取り組みを進めています。
当社は長期ビジョン「DAICEL VISION 4.0」において、「循環型社会構築への貢献」を目指す姿としています。「健康、安全安心、便利快適、環境」の4つの注力事業領域で、成長に寄与する研究テーマを探索、選定し、事業化を加速します。
そして、大学や他社との連携によるバイオマスプロダクトツリーやバイオマスバリューチェーンの構築を進めるとともに、生産革新、プロセス革新、エネルギー革新の組み合わせによるサプライチェーン全体でのエネルギー使用量の削減やエネルギー供給の最適化、CO2還元技術などの技術革新により、エコノミーとエコロジーを両立したカーボンニュートラル/ネガティブの実現を目指します。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1) サステナビリティ全般
当社グループでは社長を委員長とするサステナブル経営委員会(通常3回/年)を設置しています。
当委員会では、サステナビリティ重要課題(マテリアリティ)について経営レベルでの議論を行うとともに管理を行います。
取締役会はマテリアリティに関連するKPI(重要業績評価指標)の進捗状況など、サステナブル経営委員会からの定期的な報告を受けることにより、当社グループのサステナビリティ推進状況を監督します。
2023年度は計3回サステナブル経営委員会を開催し、主に気候変動への対応、循環型社会構築への貢献認定制度、GHG排出量削減の取り組み、CFP(カーボンフットプリント)算定などについて討議し、その内容について取締役会で報告いたしました。
引き続きサステナビリティに関連する課題の解決、取り組みのレベルアップに向けて歩みを進めていきます。
サステナブル経営体制図
当社グループは、価値共創によって人々の幸せを実現するという基本理念のもと、サステナブル経営方針に基づき、事業活動を行っています。中期戦略『Accelerate 2025』の策定にあたり、その実現を促進するマテリアリティを特定しました。今後も、事業活動を通じたサステナブル社会の実現を目指していきます。
・マテリアリティ特定の背景と考え方
サステナブル経営方針の製品(Product)・製造プロセス(Process)・働く人(People)の3つの観点から、社会課題の解決に対して当社グループの強みを生かしてどのような貢献ができるかを考えるとともに、安全・品質・コンプライアンスなどの最重要基盤に関する項目も取り上げました。
・マテリアリティ特定プロセス
ステップ1 社会課題の抽出
国際的なガイドライン、SDGs、国連グローバル・コンパクト原則、業界団体ガイドラインを参照し、当社グループが取り組むべき課題を抽出しました。
ステップ2 優先順位付け
ステップ1で抽出した項目において、「ステークホルダーにとっての重要度」と「当社グループにとっての重要度」の2軸で、優先順位が高い重要テーマを特定しました。
ステップ3 妥当性確認
ステップ1・2で特定した重要テーマの妥当性について検討を行ったうえで、最高責任者(社長など)を含む取締役会/経営会議で報告し、了承されました。
ステップ4 マテリアリティ・KPI策定
1から3のステップを通じて、15項目のマテリアリティ及びKPIを特定しました。定期的な進捗評価を行うことで、CAPDサイクル※を回していきます。
※CAPDサイクル:計画を起点とした活動では重要な事実を見落としてしまうおそれがあると考え、当社では一般的なPDCAではなく、CAPDを改善サイクルとしています。
特定したマテリアリティとそれぞれの戦略と指標・目標は次のとおりです。
〇当社グループの成長と価値共創に向けたマテリアリティ
〇当社グループの存立とガバナンスの基盤に関わるマテリアリティ
(注)1 特に記載がない限り、表中の目標及び実績については、2022年度の情報に基づいて記載しています。
2 当社グループ(連結)を対象に集計しております。
3 日系自動車メーカー向け製品を対象に集計しております。
4 提出会社単体を対象に集計しております。
5 2023年度の目標及び実績を「(2) 人的資本・多様性」に記載しております。
6 提出会社単体及び国内グループ会社を対象に集計しております。
7 顧客苦情への24時間以内の1次回答率は当社の国内製造拠点を対象に集計しております。
8 グループ企業の母数は2023年3月時点の人権デュー・ディリジェンス対象候補の企業数を記載しております。
当社グループは、リスク管理を経営の重要な業務と認識し、企業活動に潜在するリスクへの適切な対応を行うとともに、リスクが顕在化した際の影響の最小化を図っています。
気候変動は、サステナブルな経営における重要なリスクと捉え、当社リスク管理体制の下、リスク評価、対応とその実施状況の確認を行います。重大な課題に対しては、サステナブル経営委員会にて詳細な検討を行います。
(a) 体制
当社は、各組織のリスク管理を統括・推進する組織として、企業倫理室担当役員が委員長を務め、各コーポレートの部門長を委員とするリスク管理委員会を設置しています。リスク管理委員会は、各組織のリスク管理活動報告およびリスク棚卸し結果により、リスク対応策の進捗状況の確認を行い、必要に応じて助言や支援を行います。全社的な対応が必要と判断されるリスクにはプロジェクトなどを立ち上げて対策を進めます。また、当社グループが置かれている事業環境や社会情勢を考慮して、再点検すべきリスクを「重点確認ポイント」として設定し、各組織において再確認および対策の見直しなどを行います。
なお、当該委員会で議論された、重点確認ポイントや当社グループの経営に重大な影響を及ぼすリスクへの対応策の進捗状況、次年度のリスク管理の方針、BCPの整備状況、その他重要事項については、年度末の経営会議および取締役会に報告しています。
(b) リスク管理の方法
当社グループでは、当社の各部門・各グループ企業(以下、各組織)がその本来の業務の一部として適切なリスク管理を行うためのCAPDサイクルをまわしています。各組織において、事業目標の達成に重大な影響を及ぼすリスクを特定(Check)、できる限り顕在化させないための対策や、万が一顕在化してしまったとしても被害を最小限にするための対策の検討および計画立案(Act, Plan)、対策の実施(Do)、そして、一定期間後のリスクの再評価(Check)とそれに伴う対策内容の再検討(Act)を行っています。
②戦略に記載の指標・目標・実績を参照
(2) 人的資本・多様性(人の成長のサポート、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンの推進)
①ガバナンス
(1)に記載のサステナビリティ全般を参照
②戦略
当社グループは、基本理念の下に「サステナブル経営方針」を置いています。その中で、人についてはサステナブルピープル(Sustainable People)を掲げ、多様な社員が全員、存在感と達成感を味わいながら成長する「人間中心の経営」を進めます、と方針を定めています。これが当社グループの人に対する考え方、すなわち人事方針です。
また、「人間中心の経営」は、当社が長年持ち続けている考え方ですが、将来にむけては長期ビジョンおよび中期戦略の実現にむけて、社員があらゆる人たちと様々な方法で挑戦することを共通認識できるよう「DE&I宣言」を制定しました。
今後も、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンの実践を通じて、働きやすい企業文化の醸成など各種取り組みを進めています。
――― 当社グループ人事方針 ―――
ダイセルグループ DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)宣言
当社グループは、基本理念の下に「サステナブル経営方針」を置いています。その中で、人についてはサステナブルピープル(Sustainable People)を掲げ、多様な社員が全員、存在感と達成感を味わいながら成長する「人間中心の経営」を進めます、と方針を定めています。これが当社グループの人に対する考え方、すなわち人事方針です。セルロイドの製造会社として生まれたダイセルグループは、現在では、多種多様な製品を生み出し、あらゆる国や地域にネットワークを持つ事業体に成長しました。
しかし、「人間中心の経営」は最初から確固たるものではありませんでした。ダイセルグループの歴史こそが、「人間中心の経営」とは何かを追求してきた歴史と言っても過言ではありません。これからも「正しき道を行く」とは何かを絶えず考え、ダイセルグループ倫理規範に定める人権の尊重を基盤とし、ダイセルグループの「DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)」をここに定義します。
ダイセルグループにおける「DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)」
■ ダイバーシティ(Diversity、多様性)
ダイバーシティとは、異なる「人間同士」が、共通の理念や目的を実現するために、一人ひとりの個性や違いを尊重しつつ、その強みのみならず、弱みも含めた、全人間力を活かすことです。
「人」は、未知なる可能性を秘めたかけがえのない存在であり、価値共創といった社会貢献に共に取り組むことで、より大きな可能性を得る機会とし、人が成長することでその集団であるダイセルグループも成長していきます。
■ エクイティ(Equity、公平性)
エクイティとは、情熱をもって挑戦する人が、その力を発揮できるよう適切な環境を整え、育む仕組みを整え、発揮した力の結果を正しく評価することです。
ダイセルグループでは、会社の目指す姿を指し示し、その実現にむけて使命感を持って挑戦する人に公平な機会を提供し、その挑戦と貢献を公正に評価します。たとえ挑戦が失敗に終わったとしても、失敗から学び、何度でも挑戦できます。
■ インクルージョン(Inclusion、尊重し、認め合う)
インクルージョンとは、人が存在を認め合い、対話しあい、互いを受け入れることです。
ダイセルグループでは、一人ひとりが誇りを持って「会社の目指す姿」と「自己実現」に挑戦します。
その過程で私たちは、主体的に目標を掲げ、互いの主張を徹底的に議論することを恐れません。本質的に高め合い、刺激を与え合うことで、互いに視野を拡げ、時には新しい道を見つけて進化を遂げながら会社と共に成長します。
ダイセルグループは、社員をはじめ、あらゆる人たちと協働し、企業活動の中で「DE&I」を実践し、PRODUCT、PROCESS、そしてPEOPLE三つのサステナビリティの実現を宣言します。
本宣言は「ダイセルグループ倫理規範(2.②)」に基づく宣言として、2024年1月16日、経営会議において承認のうえ公表しています。
(注) 1 提出会社単体について、2023年度に同社の人事部門が主催した研修を対象に集計しております。
2 一人あたり研修時間は、人事部門が主催した総研修時間と事業年度末時点の在籍正社員数から計算しております。
3 提出会社単体について、2022年度に同社のレスポンシブル・ケア部門に報告された情報を対象に集計しております。
4 提出会社単体について、2023年度を対象に集計しております。
③リスク管理
(1)に記載のサステナビリティ全般を参照
④指標及び目標
上記②戦略における記載を参照
(3) 気候変動
①ガバナンス
(1)に記載のサステナビリティ全般を参照。
ただし、特に気候変動に関しては、当社グループの省エネルギーおよびGHG排出量削減を推進する、社長直轄の「カーボンニュートラル戦略委員会」を設置し、議論を行っています。当委員会は、生産部門を統括する担当役員を委員長に、国内の生産部門・エネルギー部門・コーポレート部門の代表者で構成しており、省エネルギー推進と管理を行うとともに、GHG排出量削減目標達成に向けて、現行生産プロセスにおけるGHG排出量削減、エネルギー部門のGHG排出量削減、革新的技術によるGHG排出量削減の3つの切り口で、当社グループ全体で地球環境と共生する循環型プロセスの構築に取り組みます。なお、中長期目標達成に向けて適切な投資計画を立案・遂行するため、インターナルカーボンプライシングの導入を検討中です。
②戦略
(a)シナリオ分析実施手順
シナリオ分析は以下の手順で実施しています。
ステップ1 シナリオ分析の対象範囲の設定
ステップ2 各事業における気候変動に対するリスクと機会のリスト化
ステップ3 各事業における外部シナリオに従って、事業シナリオを作成、リスクと機会の大きさを再評価
ステップ4 各事業における財務評価
ステップ5 気候変動が当社グループに及ぼす影響とその対策まとめ
(b)シナリオ分析の対象範囲の設定
当社グループの主要事業領域としてエンジニアリングプラスチック(ポリプラスチックス株式会社)事業、酢酸セルロースを中心としたアセチル事業(スマートSBU、マテリアルSBU)、セイフティ事業を評価対象とし、気温上昇1.5℃と4℃、時間軸2030年を想定してシナリオ分析を行いました。
1.5℃と4℃シナリオには、TCFDシナリオ分析で一般的に参照されることが多い国際エネルギー機関(IEA)や気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の資料を参照して検討いたしました。
(c)シナリオ分析の実施結果
気候変動が当社グループに及ぼすリスク、機会、およびその対応策は下表の通りです。
表 シナリオ分析結果(リスク/機会の内容とその影響度及び対応)
(影響度)●●●:百億円以上、●●:数十億円、●:十億円以下、-:ほとんど影響なし
*その他低減活動:GHG排出量50%削減(Scope1、2)のための投資、GHG排出量削減による炭素価格の影響を低減、低GHG原材料への転換、サプライチェーン全体の低減活動等
(d)今後の予定
今回実施したシナリオ分析結果から見出された課題や対応策について着実に取り組むとともに、引き続き戦略の見直しを行います。
③指標と目標
当社グループでは、マテリアリティ15項目の中に、「気候変動への対応」、「環境に貢献する素材や技術の提供」、「循環型社会構築への貢献」を挙げており、それぞれKPIを設定しております。
・気候変動への対応
指標:当社グループのGHG排出量削減率*
目標:スコープ1、2 2030年:50%削減(2018年比)
*2050年 カーボンニュートラル実現(スコープ1、2、3)
2022年度実績:1%増(2018年比)
当社グループの2022年度のGHG排出量は、需要回復に伴う生産量増加や大型新規プラントの試運転により増加したものの、大竹工場の廃タイヤ混焼率向上など継続して省エネルギー化に取り組み、前年度比0.3%減の234万トン-CO₂になりました。
・環境に貢献する素材や技術の提供
指標:製品に含まれる循環型原料の使用率
対象はダイセル、ポリプラスチックス、ダイセルミライズの主要樹脂材料
目標:2030年 30%以上
2022年実績:15.9%
・循環型社会構築への貢献
指標:天然素材を利用した資源循環システムの対外的な提案数
目標:2025年 3件
2022年実績:研究開発中
当社グループは、サステナブル経営方針の中に地球環境と共生する循環型プロセスの構築を掲げています。引き続き低炭素経済に貢献する製品やサービスについて議論を重ね、より良い指標と目標の設定を検討します。
現在、循環型社会構築への貢献の社内認定制度運用について検討を進めており、2024年度中の正式運用を目指します。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。
なお、ここに記載した事項は、当社グループに関する全てのリスクを網羅したものではありません。
また、将来に関する事項につきましては、有価証券報告書提出日(2024年6月24日)現在において判断したものであります。
経済の変調による需要の急激な減少や、他社の大型プラント建設による供給過剰などでの市場環境は様々な要因で影響を受け得る可能性があります。当社グループの対面市場である自動車関連やIC半導体・電子デバイスの分野はマーケット環境の変化が激しく当社製品の販売価格のみならず販売量にも大きな影響を及ぼします。
その対応策として当社グループでは新規用途・市場の開拓とともに、コストダウンの徹底など、販売数量・収益の確保の取組みを強化しております。
② 為替変動に係るリスク
為替相場の変動は、当社グループの輸出入取引に係る交易条件、および海外グループ会社の業績の邦貨換算結果等に対して影響を与えます。
通常、円安は当社グループの業績に好影響を及ぼし、円高は悪影響を及ぼすと考えております。また、海外グループ会社においては、その所在国通貨と異なる外国通貨との為替相場変動により、業績等に影響を及ぼす可能性もあります。
これら為替変動に係るリスクに対して、先物為替予約取引などを用いてヘッジを行っておりますが、当該リスクを完全に回避できるものではなく、経営成績および財政状態に悪影響を与える可能性があります。
当社グループの海外売上高比率は、2024年3月期において65.4%であります。また、当社の試算では米ドル・円レートが1円変動すると、連結売上高で年間約23億円、連結営業利益で年間約9億円の変動をもたらすと算定しております。
当社グループの主力製品の多くのものが直接あるいは間接的にメタノールを原料としており、そのため大量に購入をしております。その購入価格の上昇は業績に多大なる影響を与えるリスクがあります。また、メタノールは化学製品の原料という位置付けのみならず、近年はクリーンエネルギーとしての側面も持っており、世の中の環境問題への関心の高まりなどで、今後、化学業界の動向と関係ないところで価格に大きな影響を受けるリスクがあります。対応策として、長期契約やメタノール製造会社への出資など、比較的安価なメタノールを安定的に購入するための手段を講じております。
当社グループは、常に安価かつ価格の安定した原燃料への転換や、製造方法改善によるコストダウンを図っております。しかしながら、経済全体のインフレ傾向や地政学的リスクの影響もあり原燃料価格の変動は続いており、今後もこの傾向は当面は変わらないと思われます。原燃料の高騰が続く場合には、上記の各種コストダウン施策に加えて、製品販売価格への転嫁等によりできる限りの吸収を図っております。
当社グループは、引き続き積極的に海外事業を拡大しており、それに伴う、予期しえない法律や規制の変更、産業基盤の脆弱性、人財の採用・確保の困難、テロ、戦争等による地政学的なリスクは増大していると考えられます。特に同じ事業を中国・アジア地域・欧米などで広域に展開している例も多く、そのために経済安全保障上の問題により事業展開に支障が生じる、あるいは当社グループ自体が違反に問われるリスクも存在していると考えております。その対策のため、当社グループではサプライチェーンの体制の見直しを実施し、経済安全保障域内で供給体制が完結するようにするなどの取組みを進めております。
② 人財確保に係るリスク
当社グループが事業の継続的な発展を実現するためには、経営戦略やグローバルな組織運営を担えるマネジメント能力に優れた人財の確保や育成、専門技術に精通した多様な人財の確保が重要な課題であると認識しております。
しかし、日本国内での少子高齢化や労働人口の減少、海外拠点での雇用環境の変化によって、必要な人財の確保・育成が計画どおりできなかった場合、長期的観点から当社グループの事業及び業績に大きな影響を与える可能性があります。
その対策として当社グループでは、積極的な新卒採用や経験者の通年採用を展開し、公平な人事評価・処遇制度などの仕組みを構築することで、自律的に活躍する人財の育成、定着を図っております。また、次世代経営人財の教育プログラムでは後継者候補の育成にも取り組んでおります。
③ 物流に係るリスク
日本国内の物流環境は、少子高齢化による労働人口減少に加え、働き方改革関連法における「時間外労働の上限規制」等の影響もあり運送ドライバーや荷役作業員の人手不足の拡大が予想され、物流費の高騰、当社グループの製品の競争力の低下につながるリスクがあると認識しております。
その対策として、従前より当社グループでは系列の物流専門の企業を持ち、グループ全体のガバナンスの中で効率的且つ合理的な輸送体制の実現に注力してまいりました。また2022年よりグループ横断の「物流改革プロジェクト」を設置し、他社連携やグローバル物流強化に向けた戦略の策定に取り組んでおります。2023年からは経産省及び国交省指導による、化学品ワーキンググループにも参画し、共同物流の具現化に向けて取り組んでおります。
当社グループの主力プロダクトである化学製品は、高付加価値の高機能製品に注力しており、その原材料も品質規格が大変厳しく特殊なものが多いため、サプライヤーの数も限られます。一部の原材料については事業継続のため確保が必須でありながら、1社だけのサプライヤーに依存している例もあり、そのため新規調達先の確保や要因変更の対応に迫られるなどの原材料等の調達に係るリスクがあります。
対応策として、原材料を複数のサプライヤーから購入することにより安定調達を図り、生産に必要な原材料が十分に確保されるよう努めております。
当社グループでは、更なる事業成長を目指して、グループのシナジー効果が期待できる企業買収・資本提携等には積極的に取り組んでおります。
これらの投資について予期したとおりの成果が獲得できない場合、また事業環境等の急激な変化により事業計画に大幅な修正が生じた場合には、のれんの減損や投資損失が発生し、当社グループの業績に悪影響を及ぼすおそれがあります。
新型インフルエンザや新型コロナウイルスなどの重大な感染症については、感染拡大予防のために経済活動が制限された、あるいは当社グループや取引先で罹患者が大量に出た場合は、プラントの稼働低下や生産停止、サプライチェーンの分断などが発生し、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
② 自然災害に係るリスク
自然災害により重大な損害を被った場合には、当社グループの業績に悪影響を与える可能性があります。特に当社グループの主要な生産拠点のひとつであるポリプラスチックス㈱富士工場は「東海地震に係る地震防災対策強化地域」内に立地しておりますが、東海地域のみならずどこでも巨大地震が発生し得ること、また想定したレベルをはるかにしのぐ広域災害が発生しうるリスクがあります。
対応策として、耐震強度補強など必要な対応は順次計画どおり実施しており、災害発生に備えた防災訓練や必要な物品の備蓄を適宜進めており、またサプライヤーの被災の影響による原材料供給不可・遅延が発生する可能性も考慮し、常日頃からサプライヤーとの情報交換を密にしております。
環境保全に対する社会要請の高まりにより、環境規制の強化が進んでおります。当社グループの生産活動においてはその規制に関する法令を遵守するための設備投資を行ってまいりました。また、近年は化学製品自体の環境に与える影響も重視されてきており、当社グループでは合成樹脂に関わる事業も多くあることから、環境規制により販売に影響を与え、当社グループの業績に悪影響を与える可能性があります。
対応策として、環境にやさしい海洋での生分解性を飛躍的に向上させた天然素材「酢酸セルロース」の製品の普及に注力しております。世界規模の問題となっている海洋プラスチックごみ問題に対する有効な解決策となりうるものとして、この環境規制が厳しくなる状況「リスク」だけではなくむしろ「機会」としてとらえ取組みを強化しております。
気候変動に伴う異常気象等が当社グループの工場の操業やサプライチェーンに影響を与える物理的リスク、あるいは低炭素社会への移行に対応できずに原燃料価格や電力価格が上昇するリスクは、当社グループの業績に悪影響を与える可能性があります。国内においては、2026年度から排出量取引制度(GX-ETS)の本格導入が公表されるなど、GHG排出に関する費用発生のリスクが高まってきていると考えております。
対応策として、生産プロセスの抜本的な見直しや新技術の導入、グループ全体のエネルギー使用最適化など、省エネルギーに努め、GHG(温室効果ガス)排出量の削減に取り組んでおります。また、バイオマスバリューチェーンの構築などを通じてカーボンニュートラルの実現を目指しております。
当社グループが製造した製品に起因する損害が発生した場合には、当社グループの業績に悪影響を与える可能性があります。特にB to Bのビジネスが主流であり、一般消費者に届くまでには何段階もの付加価値が付与される場合もあり、もし最終製品の回収が行われることになれば、大きな賠償責任を負う可能性もあります。
対応策として、製品の品質保証体制を確立し、製品の安全性確保および不具合品の流出防止に努めております。また、万一に備え、賠償責任保険も付保しております。
当社グループは、化学品を扱う企業であり、火災・爆発等の産業事故災害が発生した場合には、被害は甚大になり、当社グループの業績に悪影響を与える可能性があります。
対応策として、火災・爆発等の発災を想定したクライシスアセスメントの強化や、遠隔消化設備の導入など人的被害を最小限に抑制し発災時の対応を行うインフラ面の強化、保安防災活動への継続的な取り組みを実施しております。
当社グループでは、既存事業の強化および新規事業創出のため積極的に研究開発活動を行っております。しかし、近年ますます技術革新のスピードは速くなっているので、計画どおりに新製品の開発ができなかった場合、事業化につながらなかった場合は、投下した研究開発費を回収できないといったリスクがあります。また、これらの研究開発体制の維持・強化のためには、高度な技術を持った人財の確保が不可欠でありますが、研究開発に限らずあらゆる分野で、人財が確保できないというリスクは顕著であり、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
対応策として、研究テーマの選定や資源配分について経営次元での徹底した議論を行い判断を行うとともに、産学官共同研究、他社との協業などを通じて研究開発の効率を上げ、事業化に結びつけて行くよう取り組んでおります。また、多様な人財の確保やIT技術の活用も含めてグループ全体でリスク低減を図っております。
当社グループは、「当社グループの知的財産を保全するとともに、他者の権利侵害は行いません」とのダイセルグループ倫理規範のもと、知的財産関連情報の調査、知的財産権の取得・管理、適切な契約の締結・管理など戦略的な活動に取り組んでおります。しかしながら、当社グループが第三者の知的財産権を侵害している等の予期せぬ警告や訴えを受ける、あるいは第三者に知的財産権を無断で使用されるおそれがあります。このような事態が発生した場合には当社グループの業績に悪影響を与える可能性があります。
知的財産権に関しては、従前のように単純に模倣した、しないの話ではなく複雑なものになっていると考えており、第三者の知的財産権の事前調査(および尊重)を徹底しても予期せぬ警告や訴訟を受けるリスクは依然存在すると言わざるを得ない状況にあります。
対応策として、知的財産権の取得・管理・適切な契約の締結・管理などの戦略的な活動に積極的に取り組むことでそのリスクの低減を図っており、特に新製品や新技術の開発時に、先々の当社の事業展開を優位に進め、他社からの侵害訴訟をけん制するためにも競合相手の事業を意識した知的財産権の取得が重要と認識し、注力しております。
当社グループは、国内外の法令遵守に努めております。しかしながらグローバル、かつ多様な分野で事業を行う中で、訴訟、係争、その他の法的手続きの対象となるリスクがあり、重要な訴訟等の提起を受ける可能性があります。
また、当社に限らず、訴訟を提起するのは他社だけでなく、自社グループの従業員や元従業員からも増えていることも認識しておく必要があると考えております。
裁判等において不利益な決定や判決がなされた場合には、当社グループの経営成績および財政状態に悪影響を与える可能性があります。
通信ネットワークに生じた障害や、ネットワーク又はコンピュータシステム上のハードウエアもしくはソフトウエアの不具合・欠陥、コンピュータウィルス・マルウェア等外部からの不正な手段によるコンピュータシステム内への侵入等の犯罪行為や使用人もしくは委託業者の過誤等により、これらの情報が流出し、または改ざんされるリスクがあります。
対応策として、管理体制の構築、従業員教育の実施およびIT技術動向の変化に応じたセキュリティソフトの導入・更新などを行っております。また、全社員を対象に「不審メール対応研修」などを実施しております。
近年、人権に係るリスクは大変重要になっており、人権の尊重は当社グループ内で徹底されていればよいのではなく、当社グループ外にも求めていくべきものであると考えております。特に新興国を中心としたサプライチェーンにおける人権確保が重要になっており、人権侵害や児童労働等の事実が確認された場合、原材料調達および生産活動の遅延等に関するリスクが顕在化する可能性があります。
対応策として、当社グループでも「ダイセルグループ人権方針」を定め、また人権に関するデューデリジェンスを定期的に実施するなどして、そのリスク低減を図っております。
当社グループが自ら使用、または第三者に貸与する機械および装置、土地および建物などは、投資計画どおりに収益が得られず、投資額の回収が見込めないなど資産価値の下落に起因する潜在的な減損のリスクにさらされております。当連結会計年度末において、有形固定資産および無形固定資産の帳簿価額の合計は3,197億円であり、想定した事業環境が大きく変わることによる減損のリスクがあります。固定資産の減損損失が発生した場合、当社の経営成績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
投資計画の精度向上について、リスクアセスメントの方法の見直しなどに取り組んでおります。
2022年に、当社グループ会社のダイセルミライズ株式会社が販売する樹脂製品の一部において、米国の第三者安全科学機関である Underwriters Laboratories Limited Liability Company(以下「UL」という。)の認証に関し、不適切な行為が判明しました。
本件不適切行為を受けて、当社の独立社外監査役と当社と利害関係を有しない社外の有識者から構成される調査委員会を設置し、本件不適切行為の事実関係、当社国内子会社でのUL認証に関連する類似案件の有無を調査するとともに、これらの行為の原因分析および再発防止策の提言等を委任し、2022年12月16日に同委員会からの調査報告書を受領しました。本調査報告書につきましては、当社ウェブサイト
(https://www.daicel.com/news/assets/pdf/20230110.pdf)にて公表しております。
同委員会からの再発防止策の提言を受け、改めて「安全」「品質」「コンプライアンス」を当社の「モノづくり」の基盤と位置付けるとともに、新たに、「ダイセルグループ行動指針」、「ダイセルグループ倫理規範」を定めるとともに、再発防止のための体制構築も進め、2023年4月1日付で、安全と品質に関する監査と取組み推進の機能を分離し、それぞれの機能を強化することを目的とした組織変更を実施しました。
有識者調査委員会からは再発防止に向けて受けた10項目の提言については、各々の項目の主管部門を中心に対策を検討・実施しており、その状況は適宜、取締役会にも報告されております。またこのような品質不正に関するリスクについては、グループ全体のリスク管理活動の整理に先立ち、安全と品質を確かなものにする本部が各工場の品質保証部門と連携して、着実なリスク棚卸の仕組みの構築を進めております。
また、調査委員会によるアンケート調査で確認され当社グループにおける品質不適切行為については、安全と品質を確かなものにする本部が中心となって、現時点で本行為が行われていないことおよび確実な再発防止が実施されていることの確認を進めております。
今後も当社グループの役職員全員が、今一度「モノづくり」の基本に立ち返り、信頼回復・再発防止に全力を挙げて取り組んでまいります。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社および持分法適用会社)の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
当連結会計年度の世界経済は、景気の緩やかな持ち直しの動きが続いたものの、世界的な金融引き締めに伴う影響、中国経済の減速、物価上昇、ウクライナ・中東情勢の影響など、先行き不透明な状況のうちに推移しました。
当社グループの主要市場でも一部で需要の回復傾向がみられたものの、その回復が緩やかなものにとどまるなど、厳しい事業環境となりました。このような環境の中、当社グループでは、需要が伸長する製品については販売機会を着実に捉え販売数量を伸ばすとともに、収益改善に向けた取り組みの加速、徹底したコストダウンなどを実施してまいりました。
当連結会計年度の売上高は5,580億56百万円(前年度比3.7%増)、営業利益は623億93百万円(同31.3%増)、経常利益は683億96百万円(同31.4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は558億34百万円(同37.2%増)となりました。
当連結会計年度より、化粧品原料の1,3-ブチレングリコールをメディカル・ヘルスケア事業セグメントからマテリアル事業セグメントへ、新規投与デバイスの研究開発機能をセイフティ事業セグメントからメディカル・ヘルスケア事業セグメントへ移管しています。前年度比較については、前年度の数値を移管後のセグメントに組み替えて比較しております。
ライフサイエンス事業は、キラル関連製品の販売が増加したものの、前年度末に医薬品開発製造受託事業の子会社を売却した影響により、減収となりました。
コスメ・健康食品事業は、インバウンドの増加などにより販売数量が増加し、増収となりました。
当部門の売上高は、139億27百万円(前年度比16.0%減)、営業利益は、マーケティング活動に伴う経費の増加などにより、7億91百万円(同37.2%減)となりました。
液晶表示向けフィルム用の酢酸セルロースや高機能フィルムなどのディスプレイ/オプト事業は、高機能フィルムの販売数量が減少したものの、液晶パネルの在庫調整が進んだことや、海外向けの販売拡大により酢酸セルロースの販売数量が増加し、増収となりました。
電子材料向け溶剤やレジスト材料などのIC/半導体事業は、需要が低迷する中、半導体メーカーによる在庫調整からの回復が下期から始まり、販売数量は前年度並みとなりましたが、レジスト材料の販売製品構成差の影響により、減収となりました。
当部門の売上高は、307億15百万円(前年度比3.8%増)、利益面では、移動平均差の影響などにより、営業損失28億55百万円(前年同期は営業損失6億42百万円)となりました。
自動車エアバッグ用インフレータ(ガス発生装置)などのモビリティ事業は、半導体不足の解消などにより自動車生産が前年度より回復し販売数量が増加したことにより、増収となりました。
当部門の売上高は、955億74百万円(前年度比13.8%増)、営業利益は、販売数量の増加などにより、29億91百万円(同478.5%増)となりました。
アセチル事業の酢酸は、主要誘導品の酢酸ビニルや高純度テレフタル酸の需要減少による販売数量の減少、酢酸市況の軟化により、減収となりました。
酢酸誘導体は、電子材料や液晶ディスプレイ向けなどの需要減少により販売数量が減少し、減収となりました。
アセテート・トウは、加熱式たばこ用の需要増加などによる販売数量の増加、原燃料価格上昇や需要増加を受けた販売価格の是正、為替の影響などにより、増収となりました。
ケミカル事業は、海外での販売拡大などにより1,3-ブチレングリコールの販売数量が増加したものの、カプロラクトン誘導体の中国市場での需要減少などによる販売数量の減少、エポキシ化合物の電子材料や液晶ディスプレイ向けの需要減少による販売数量の減少により、減収となりました。
当部門の売上高は、1,853億41百万円(前年度比15.3%増)、営業利益は、販売価格の是正や為替の影響などにより、427億41百万円(同106.3%増)となりました。
ポリアセタール樹脂、PBT樹脂、液晶ポリマーなどポリプラスチックス株式会社の事業は、前年度からの自動車部品の在庫調整が第2四半期初めまで続いたことや、IT関連産業の需要低迷などにより販売数量が減少し、減収となりました。
ABS樹脂、エンプラアロイ樹脂、包装フィルム、水溶性高分子などダイセルミライズ株式会社の事業は、OA分野での需要減少などにより販売数量が減少し、減収となりました。
当部門の売上高は、2,268億21百万円(前年度比4.7%減)、営業利益は、販売数量の減少などにより、183億1百万円(同27.7%減)となりました。
その他部門は、防衛関連事業からの撤退などにより、減収となりました。
当部門の売上高は、56億76百万円(前年度比37.3%減)、営業利益は、4億22百万円(同21.6%増)となりました。
財政状態は、次のとおりであります。
総資産は、売掛金や有形固定資産等の増加により、前連結会計年度末に比し735億62百万円増加し、8,391億69百万円となりました。
負債は、長期借入金等の増加により、前連結会計年度末に比し91億37百万円増加し、4,643億8百万円となりました。
また純資産は、3,748億61百万円となりました。純資産から非支配株主持分を引いた自己資本は、3,588億96百万円となり自己資本比率は42.8%となりました。
当連結会計年度の現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比し250億84百万円減少し、684億8百万円(前連結会計年度末比26.8%減)となりました。
当連結会計年度における営業活動による資金の増加は、767億29百万円(前年同期は、268億47百万円の増加)となりました。資金増加の主な内容は、税金等調整前当期純利益760億32百万円および減価償却費336億44百万円であり、資金減少の主な内容は、法人税等の支払額169億1百万円および投資有価証券売却損益111億98百万円であります。
当連結会計年度における投資活動による資金の減少は、553億74百万円(前年同期は、440億93百万円の減少)となりました。資金増加の主な内容は、投資有価証券の売却及び償還による収入132億16百万円であり、資金減少の主な内容は、有形固定資産の取得による支出656億18百万円であります。
当連結会計年度における財務活動による資金の減少は、523億73百万円(前年同期は、199億56百万円の増加)となりました。資金増加の主な内容は、長期借入れによる収入294億89百万円であり、資金減少の主な内容は、社債の償還による支出300億0百万円、自己株式の取得による支出150億0百万円、配当金の支払額128億59百万円および長期借入金の返済による支出128億52百万円であります。
(注) 金額は販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。
受注生産を行っているのは「その他」のうちの特機関連部門であり、主として発射薬等で受注状況は次のとおりであります。
(注) セグメント間の取引については相殺消去しております。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2024年6月24日)現在において判断したものであります。
中期戦略『Accelerate 2025』では2025年度に以下の全社業績および経営指標をターゲットとしております。
全社業績:
売上高 6,600億円、営業利益 820億円、親会社株主に帰属する当期純利益 580億円、
EBITDA 1,360億円
経営指標:
営業利益率 12.4%、ROE 17.1%、ROIC 9.3%、ROA 7.7%
株主還元 中期戦略発表時の1株当たり配当金額(年間32円)を下限、総還元性向 40%以上
※2024年度より、配当をDOE(株主資本配当率)4%以上、総還元性向 40%以上に変更。
本中期戦略の4年目である当連結会計年度は、需要の回復による販売機会を着実に捉えるとともに、販売価格の是正、徹底したコストダウンを実施してまいりました。
その結果、当連結会計年度の業績は、売上高は5,580億56百万円(前年度比3.7%増)、営業利益は623億93百万円(同31.3%増)、経常利益は683億96百万円(同31.4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は558億34百万円(同37.2%増)となりました。
経営成績
売上高および営業利益
売上高、営業利益の概況については、「(1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
営業外損益
営業外損益は60億円の収益(純額)となり、前連結会計年度に比し15億円改善いたしました。
主に為替損益の影響などによるものであります。
特別損益
特別利益は114億円を計上いたしました。投資有価証券売却益112億円などによるものであります。
特別損失は37億円を計上いたしました。減損損失17億円などによるものであります。
法人税等
税効果会計適用後法人税の負担率(実効税率)は25.6%と、前連結会計年度に比し1.4ポイント増加いたしました。
非支配株主に帰属する当期純利益
非支配株主に帰属する当期純利益は7億円と、前連結会計年度に比し2億円(25.8%)減少いたしました。
親会社株主に帰属する当期純利益
親会社株主に帰属する当期純利益は558億円と、前連結会計年度に比し152億円(37.2%)の増益となりました。 また、ROEは17.1%となり、前連結会計年度に比し2.7ポイント改善しました。ROICは6.3%、EBITDAは961億円となりました。
財政状態
資産、負債および純資産の状況については、「(1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
なお、有利子負債比率は36.2%となりました。
また、2023年11月2日取締役会決議に基づく自己株式の取得を150億円実施しております。
当社グループの経営成績等に重要な影響を与える要因については、「3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
キャッシュ・フロー
キャッシュ・フローの状況については、「(1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
資金需要
当社グループにおける主な運転資金需要は、製品製造のための原材料の購入、労務費など製造費用と、製品の仕入、販売費及び一般管理費等の支払いであります。
当社グループでは、製造設備の増強および更新などのほか、安全向上対策ならびに現業各設備の合理化・省力化を継続的に行っております。当連結会計年度の設備投資額は前連結会計年度に比し211億円増加し、775億円(前連結会計年度比37.6%増)、減価償却費は前連結会計年度に比し21億円増加し、336億円(前連結会計年度比6.8%増)となりました。
当社グループでは、既存事業の強化拡大および新事業創出のための研究開発に取り組んでおります。当連結会計年度の研究開発費は前連結会計年度に比し15億円増加し、234億円(前連結会計年度比6.9%増)となりました。
財務政策
当社グループは、設備投資計画に照らして、必要な資金を銀行借入や社債発行により調達しております。短期的な運転資金は、キャッシュマネジメントサービスを通じてグループ内で余剰資金を活用しておりますが、地域、通貨、金利動向等を考慮した結果、銀行借入等による調達を行う場合があります。当連結会計年度末における借入金およびリース債務を含む有利子負債の残高は3,041億円であります。
利益配分に関しては、中期戦略『Accelerate 2025』におきましては、収益力強化に加え適正在庫化などキャッシュコンバージョンサイクル削減効果で資金創出力向上を図ります。また、政策投資株式売却などにより資金創出力をさらに高め、余裕資金を成長投資や株主還元に活用します。株主還元は総還元性向40%以上とし、自己株式取得も視野に柔軟に対応してまいります。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
合弁関係
株式会社ダイセル(当社)
ポリプラスチックス株式会社(連結子会社)
(注)※当社の連結子会社であるポリプラスチックス㈱は、Ticona LLCと2023年12月15日付で株式譲渡契約を締結し、当社の連結子会社であるピーティーエム・ホールディングス㈱の発行済株式のうち、Ticona LLCが保有していた全株式を追加取得いたしました。その結果、ポリプラスチックス㈱の2023年12月末現在におけるピーティーエム・ホールディングス㈱に対する出資比率は71%であります。
Daicel (China) Investment Co., Ltd. (連結子会社)
(注) 合弁会社として記載しておりますXi'an Da-An Chemical Industries Co., Ltd.は、Ningbo Da-An Chemical Industries Co., Ltd.の100%出資でありますが、同社が西安北方恵安化学工業有限公司(中国)、陜西中煙投資管理有限公司(中国)およびDaicel(China)Investment Co., Ltd.の合弁会社であることから、Xi'an Da-An Chemical Industries Co., Ltd.につきましては、合弁会社とみなして記載しております。
当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は、
なお、当連結会計年度において、当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。
セグメント別の活動状況は以下の通りです。
当事業に係る研究開発費は
[ヘルスケアSBU]
ヘルスケアSBUは、ヘルスケア分野において特徴ある素材や技術の開発を進めております。
コスメ事業領域では、サステナブルな素材を化粧品市場へ提供するため、天然原料を使用した酢酸セルロースの真球状微粒子「BELLOCEA®」を開発、販売しております。また、ECHA(欧州化学物質庁)の提案するマイクロプラスチック規制に対応可能な高い生分解性と感触を両立する微粒子の開発に力を入れております。
健康食品事業領域では、腸内細菌によって体内で生成される成分(腸内細菌代謝物)に着目した研究開発を行っております。2021年度ザクロに含まれるポリフェノールの代謝物としてウロリチンA含有素材「ウロリッチ®」を上市したのに続き、ホップ由来ポリフェノールの代謝物や、その他腸内代謝物の開発を進めております。ウロリチンAは、当社が世界で初めて発酵法による商業的な生産に成功し、その研究開発成果が令和5年度日本栄養・食糧学会技術賞を受賞いたしました。
[ライフサイエンスSBU]
ファーマテックBUは、キラル事業がターゲットとする低分子合成医薬に加え、成長市場の中・高分子/バイオ医薬市場においてソリューションを提供いたします。光学分割用カラム事業は、新規製品の継続的開発・上市とテクニカルサービスの充実により世界トップシェアを維持しております。新規耐溶剤型キラルカラム第12弾のCHIRALPAK® IN製品を上市いたしました。また、既存汎用カラムと差別化した当社独自のアキラルカラムについて、新規アキラルカラム第4弾のDCpak® PMPC製品を上市いたしました。継続してこれらを用いたペプチド、核酸医薬などの中分子医薬のアプリケーション開発を実施しております。バイオ事業では再生医療分野におけるエクソソーム精製濃縮装置の開発を行っております。社外協業先との検証結果を反映した装置の詳細設計を完了し、試作機1台の作成準備を進めております。
メディカル事業開発部は、「One Time Energy®」というエネルギー制御を基盤とした新規投与デバイス開発では、日米欧において医薬品の臨床試験への移行を目指すプロジェクト、および、複数の国内外の新薬大手メーカーや、ベンチャー企業との当社デバイスを用いた評価実験、共同実験が進んでおります。また、並行して既存薬剤の投与に付加価値をつけた新しい治療用途の開拓も国内外の研究機関と進めております。
当事業に係る研究開発費は
スマートSBUは、快適なスマート社会に必要な技術・製品で、ソリューションを提供いたします。ディスプレイ・オプト分野(偏光板保護フィルム(TAC)の品質改善、視認性・使用感改善の機能性フィルム、ウエハーレベルレンズ)、IC/半導体分野(半導体ならびにフラットパネルディスプレイ製造用フォトレジスト材料、超高純度溶剤、エレクトロニクス用機能性溶剤、半導体向けプロセス材料)をターゲットにした研究開発を進めております。2023年度は、①電子ブック、PC向け表面フィルムの新規上市、②ウエハーレベルレンズの用途拡大検討、③EUV向けフォトレジスト材料のユーザー展開、④高純度溶剤の電子材料製造プロセスへのソリューション提案、⑤NEDO「ポスト 5G 情報通信システム基盤強化研究開発事業」にて半導体実装に関する技術開発を進めました。
当事業に係る研究開発費は
セイフティSBUは、一度だけ瞬時に、安全に、確実に、エネルギーを生み出す自社技術ならびにその技術を活用した製品群「One Time Energy® DAISI®」と自動車安全領域で培ったノウハウを土台に、新たな安全安心を社会に提供いたします。自動車エアバッグ用インフレータ、それに使用するガス発生剤、イニシエータだけでなく、EV化に対応した車載用の電流遮断器などの研究開発を継続しております。また、再生可能エネルギーのインフラ設備などの自動車用途以外へのサンプルワークを開始いたしました。
当事業に係る研究開発費は
マテリアルSBUは、ダイセルの原点である素材事業で培った技術で地球規模のニーズに多様なソリューションを提供いたします。
アセチルBUでは、アセテート・トウなど、セルロース誘導体の品質、生産性の向上に取り組んでおります。また、長年培ったセルロース化学技術を応用し、海洋生分解性を向上させた酢酸セルロースCAFBLO®(キャフブロ、Cellulose Acetate for Blue Ocean)を開発いたしました。汎用プラスチック代替を目指した用途開発を実施しております。
ケミカルBUでは、脂環式エポキシ樹脂とポリカプロラクトンにおいて、市場が拡大する有望アプリを選定し、シェア向上の活動を継続しております。
当事業に係る研究開発費は
[ポリプラスチックス㈱]
世界に認められるエンジニアリングプラスチックNo.1のソリューションプロバイダーに向け、次世代自動車システム、ポスト 5G/6Gの最先端通信など、将来的なエンジニアリングプラスチックの成長が期待される市場をターゲットに、当社の価値提供型ビジネスの更なる高度化を推進いたします。また医療分野、ファインパウダー、3Dプリンター用途での市場開拓、長繊維強化材料、PEK等新事業での市場展開など新たな機能を提案すべく、ダイセルグループ内技術とのシナジー創出による新技術開発を行います。急速に高まるカーボンニュートラル、サーキュラーエコノミーに関するニーズに応えるべく、バイオ原料の活用やエンプラリサイクルチェーンの実現に向けた環境負荷低減技術開発に注力いたします。グローバル市場展開の促進に向け、5拠点の海外テクニカルソリューションセンターとのネットワーク体制を強化し、特に中国市場を中心に新規市場開発案件の創出、ならびにコンセプト提案を進めます。
[ダイセルミライズ㈱]
コンシューマー事業、レジン事業の二つの事業分野にて、社会や顧客の課題を解決する製品開発を進めております。顧客ニーズに即したリチウムイオン電池向けのカルボキシメチルセルロース製品の開発、改良、モノマテリアルを訴求できる食品包装用新規バリアフィルムの開発、リサイクル原料使用など各種環境対応樹脂製品の開発、および海外ネットワーク活用による各種製品のグローバル展開を進めております。
当事業に係る研究開発費は
[ダイセン・メンブレン・システムズ㈱]
分離膜および膜装置システムの開発などを行っております。水処理および医薬分野における新規分離膜の開発に注力しており、特に排水再利用、有価物回収、食品濃縮に適した新規チューブラー膜の開発を進めております。
当社では、新規事業創出のための研究開発や基盤研究をコーポレート部門が行っております。なお、コーポレート部門に係る研究開発費は、全報告セグメントに配賦しております。
[リサーチセンター]
大学や公的研究機関との産学連携を積極的に進め、有識者との共同研究等により、中長期で求める新しい技術、機能、素材の基礎研究を進めております。ワンタイムエナジー利用に関する研究では、共同研究講座を開設していた熊本大学とさらに2023年5月に包括連携協定を締結して、研究対象を「安全・安心」分野に加えて、「健康」、「便利・快適」、「環境」の分野へも拡充して、社内他部門も参画して共同研究に取り組んでおります。モノづくりにおける五感点検の強化に関する研究では、民間企業と共同で、遠隔制御システムと五感認識機能の機械化・判断技術を用いて、製造設備の日常点検・メンテナンス作業の在宅化に向けた検討を継続しております。
[事業創出本部]
コーポレート部門の事業企画と研究開発部門を一体化した事業創出センターと事業創出に必要な評価技術を構築する評価解析センターを設置し、お客様に密着するカスタマーインの取り組みを通じて、事業創出の加速に取り組んでおります。また大学・外部研究機関と共同研究体制を構築し、ナノダイヤモンドなどカーボンニュートラルに寄与する新規素材、新規加工技術、新規生産技術創出の検討を進めております。評価解析技術では、微量有機成分の絶対構造解析技術として「結晶スポンジ法」の獲得、ミクロ・ナノ構造解析技術の強化(電子顕微鏡、X線CT、放射光施設の利活用)を進めております。
[生産本部生産技術センター]
当社グループ横断的な体制で新事業の工業化、既存製品の品質改善、プロセス改善、増産検討、プロセス革新による新規プロセス・技術構築の推進を加速し、地球環境と共生する循環型プロセス構築を図っております。特に酢酸セルロースおよび有機主力製品のプロセス革新による大幅なコストダウンおよび省エネルギー化のための技術の開発を進めております。さらに、カーボンニュートラルへの寄与を目指し、マイクロ流体デバイス技術、新規分離膜の開発を大学・外部研究機関と共同で取り組んでおります。また、シミュレーショングループでは、企画から事業化まで一貫した技術開発を実現し、マーケティング業務、エンジニアリング業務でのデジタルトランスフォーメーションを強化する取り組みを行っております。具体的には、IPランドスケープ活用のためのツール開発、プロセスシミュレーション、流体解析、計算科学、マテリアルズ・インフォマティクス等AI技術の充足を進めております。
[バイオマスイノベーションセンター]
2050年のカーボンニュートラル達成にむけ、地球環境に優しいプロセスで、日本の豊富な森林資源、農業廃棄物などの余剰バイオマスから高機能・高付加価値な製品を創出する技術の確立と、その技術を基に地域での地産地消のモノづくりによる一次産業の活性化の実現に取り組んでおります。2023年度より超穏和溶解技術を基に地域活性化を図るバイオマスラボと新バイオマスプロダクトツリー構築をミッションとするテクニカルサービス&応用開発グループの体制を取り、バイオマス素材の溶解、分子設計技術開発戦略から以下の具体的な実績作りを加速いたしました。
バイオマスラボ:木材の穏和な条件での溶解技術は、家具業界、内装材業界での塗装代替としてのバイオマスフィルムの採用と地域連携による余剰バイオマスの活用を目指しサンプルワークを進めました。
テクニカルサービス&応用開発グループ:木材の穏和な条件でのセルロース抽出技術およびセルロース誘導体合成・加工技術の工業化検討、サンプル提供を開始し、顧客ニーズに基づいて応用研究・開発まで幅広く取り組みました。
[無機複合実装研究所]
スマート社会実現に貢献する新たな素材開発を目的に、今後大きな成長が見込まれる次世代パワーデバイスや次世代通信規格6Gに求められる素材として無機有機複合材料に着目し、探索・基礎研究から顧客ニーズに基づく応用研究・開発まで幅広く取り組みました。
<商標帰属先の表示>
BELLOCEA®、ウロリッチ®、CHIRALPAK®、DCpak®、One Time Energy®、DAISI®、CAFBLO®は、当社の日本およびその他の国における商標または登録商標です。