第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループ(当社および連結子会社)の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 当社は長期ビジョン「ESPEC Vision 2025」の実現に向けて、4カ年ごとの中期経営計画(StageⅠ~Ⅲ)を実行しており、2022年度より最終ステージである中期経営計画「プログレッシブ プラン2025」を推進しております。長期ビジョンでは、環境創造技術をかなめとする事業により世界の先端技術の安全・安心に貢献する企業を目指しております。また、創造性や活力ある多様な社員の活躍によって成長を続ける企業を目指しております。

 当社は、企業理念「THE ESPEC MIND」の実践と長期ビジョン「ESPEC Vision 2025」の実現に向けた事業活動により「経済的価値」「社会的価値」の創出と向上を図り、持続的成長を目指すサステナビリティ経営を推進しております。当社が社会と共に成長し中長期の価値向上を果たすために、中期経営計画「プログレッシブ プラン2025」の策定と併せて優先的に取り組む重要課題(マテリアリティ)を特定しております。具体的には、グローバルな事業を通じた社会課題解決、責任ある製品サービスの提供、環境への配慮、従業員の成長と働きがいの創出、透明・公正な経営の5つを重要課題としております。これらの課題を、中期経営計画「プログレッシブ プラン2025」の各戦略に反映させ、取り組みを進めております。なお、重要課題(マテリアリティ)は、社会の変化に合わせて柔軟に見直しを行ってまいります。

 中期経営計画「プログレッシブ プラン2025」では、基本方針「個と職場の慣性と惰性を打破し、先端技術の実用化に貢献する」を掲げ、長期ビジョンの実現に取り組んでおります。国際情勢の悪化など先行き不透明な状況ではありますが、クリエイティビティとバイタリティにあふれる組織、自律的な社員が活躍する組織へと改革に取り組み、IoTや次世代自動車など先端技術分野における課題解決に貢献してまいります。

 

(1)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループの経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標は、売上高、営業利益、営業利益率、ROE(自己資本利益率)です。中期経営計画「プログレッシブ プラン2025」(計画実施期間2022~2025年度)では、2025年度連結業績目標を売上高550億円、営業利益70億円、営業利益率12.7%、ROE(自己資本利益率)10%としておりましたが、EV・バッテリー関連の投資拡大及び円安進行により当初目標を上回る見通しとなったことから、2024年5月、目標値を上方修正いたしました。売上高650億円、営業利益75億円、営業利益率11.5%、ROE(自己資本利益率)10%以上を目指してまいります。

 2023年度につきましては、売上高621億円、営業利益65.8億円(営業利益率10.6%)と過去最高業績を更新し、ROE(自己資本利益率)は10.0%となりましたが、2024年度目標のROE(自己資本利益率)は9.6%としており、安定的に10%以上のROE(自己資本利益率)を確保することが重要と認識しております。中期経営計画の目標達成に向けて、EV・IoT分野をターゲットとした成長戦略を実行し、収益力を強化してまいります。

 中期経営計画「プログレッシブ プラン2025」の基本方針や中期経営戦略につきましては(2)②、2024年度の連結業績目標や重点戦略につきましては(2)③に記載しております。

 

(2)長期ビジョン及び中期経営計画

①長期ビジョン「ESPEC Vision 2025」

<エスペックの姿>

・グローバルに〈環境〉をインテグレートするエスペック

・先端技術の安全・安心に貢献する企業

・クリエイティビティとバイタリティにあふれる成長企業

 

②中期経営計画「プログレッシブ プラン2025」(計画実施期間2022~2025年度)

 (1)のとおり、2025年度連結業績目標を、売上高550億円、営業利益70億円、営業利益率12.7%、ROE(自己資本利益率)10%から、売上高650億円、営業利益75億円、営業利益率11.5%、ROE(自己資本利益率)10%以上に修正いたしました。

 

<基本方針>

個と職場の慣性と惰性を打破し、先端技術の実用化に貢献する

・IoT・次世代自動車市場に貢献する商品・サービス提供に向けた積極的な成長投資

・ビジネスチャンスと不測の事態に対する変化対応力を高める

 

 

<中期経営戦略>

a.環境試験事業戦略

装置事業セグメント

(ⅰ)重点先端技術分野(IoT、次世代自動車)の製品ラインアップの拡充

(ⅱ)カスタム製品のグローバルでの競争力強化と新市場開拓

(ⅲ)オープンイノベーションの推進による新環境因子技術の拡充

サービス事業セグメント

(ⅰ)お客さまの悩みを解決するトータルテクニカルサポート業への転換

(ⅱ)先端技術分野向け試験の拡充と試験技術の高度化

b.グローバル戦略

 中国、欧州、韓国におけるマーケティングの強化

c.新規事業戦略

 新規事業の基盤確立と新たな分野へのチャレンジ

d.モノづくり改革とDX戦略

(ⅰ)デジタル技術による先進的カスタマイズモノづくり

(ⅱ)データ活用による顧客接点強化と社内情報蓄積・共有

(ⅲ)デジタル技術によるビジネススタイルの刷新

e.組織開発・人材開発戦略

(ⅰ)企業理念の浸透と自律的な社員が育つ組織づくり

(ⅱ)リーダーシップ改革と学び直しの推進

(ⅲ)DX、グローバル人材育成と多様な社員の活躍推進

f.経営基盤強化戦略

(ⅰ)安定調達と品質システムのレベルアップ

(ⅱ)持続的で健全な成長を支えるコーポレートガバナンス

(ⅲ)第8次環境中期計画の達成

 

<主な取り組み>

a.環境試験事業戦略

装置事業セグメントにおきましては、先端技術分野の試験ニーズに応える製品ラインアップの拡充及びマーケティングの強化に取り組んでまいりました。また、部材確保及び生産対応強化により受注残高の消化に注力してまいりました。サービス事業セグメントにおきましては、受託試験事業においてバッテリー安全認証センター(栃木県宇都宮市)の試験設備を増強するとともに、愛知県常滑市にて新試験所"次世代モビリティテストラボ(仮称)"の建設に着手いたしました。なお、部材価格や電気代などの高騰に対応するため、製品・サービスの値上げを実施いたしました。

b.グローバル戦略

中国、欧州、韓国及び米国において自動車・バッテリーやIoT市場の顧客開拓に取り組んでまいりました。

c.新規事業戦略

サーマルソリューション事業では、半導体の実装基板の熱による影響を可視化するシステムを開発するとともに、食品機械事業において市場浸透に向けた取り組みを強化してまいりました。

d.モノづくり改革とDX戦略

不安定な部品調達状況が継続するなか、過去最高の受注高に対応するため、部材及びリソースの確保に全社を挙げ、生産量を拡大してまいりました。また、Webを活用したプロモーションを強化いたしました。

e.組織開発・人材開発戦略

新しい企業理念を発表し、理解を深めるための研修会や、経営層が事業所を訪問し社員と対話する活動を推進いたしました。また、上司と部下が定期的に面談を行う1on1ミーティングや新しい評価システム、オンライン教育を導入いたしました。

f.経営基盤強化戦略

取締役会における審議の充実化と監督機能のさらなる強化を図ることを目的として、2022年6月に監査等委員会設置会社に移行し、建設的な議論を行ってまいりました。また、子会社のコーポレートガバナンスの強化に努めてまいりました。

 

 

③2024年度の経営方針・連結業績目標・重点戦略

<経営方針>

a.生産能力増強及び新たな価値の創造

b.社員の活躍による活力づくり

 

<連結業績目標>

売上高650億円、営業利益70億円、営業利益率10.8%、ROE(自己資本利益率)9.6%

 

<重点戦略>

a.国内の生産能力の増強

特に受注残高が積み上がっている国内において、生産能力を増強いたします。要員の増加、生産スペースの拡大、外注活用により、生産負荷の平準化と受注残高の早期消化に取り組んでまいります。

b.新たな価値の創造

装置事業セグメントでは商品ラインアップの拡充に取り組んでまいります。サービス事業セグメントでは、受託試験事業において新試験所"次世代モビリティテストラボ(仮称)"を愛知県常滑市に開設いたします。また、新規事業開発に取り組んでまいります。

c.社員の活躍による活力づくり

人的資本の最大化に向けて、執行役員および管理職のマネジメントスタイルのアップデートや人事評価制度および教育制度の改革を進めてまいります。また、コミュニケーションの活性化に取り組み、社員のエンゲージメント向上に努めてまいります。

 

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

(1)サステナビリティ全般に関する考え方及び取組

 企業理念THE ESPEC MINDには二つの重要な考え方があります。一つは「企業は公器」であることです。私たちは事業や企業活動を通じて社会に貢献する企業でありたいと考えています。二つ目は、エスペックは「ステークホルダーとの価値交換性の向上を目指す」ということです。これは、ステークホルダーのみなさまとの間で、お互いにとってより良い関係を築いていきたいということです。当社のサステナビリティ経営はTHE ESPEC MINDの実践であり、ESPEC Vision 2025の達成に向けた取り組みそのものです。当社は、こうした企業理念の実践と長期ビジョンの実現に向けた事業活動により「経済的価値」と「社会的価値」の創出と向上を図り、持続的成長を目指してまいります。

 

ESPEC Vision 2025/将来像

■エスペックの姿

・グローバルに〈環境〉をインテグレートするエスペック

・先端技術の安全・安心に貢献する企業

・クリエイティビティとバイタリティにあふれる成長企業

■エスペックの事業

・世界の先端技術にとって不可欠な存在となっている

・新ニーズへの一番乗りとなっている

・世界の市場における強力な販売・サービス体制を持っている

■エスペックの文化

・冒険心にあふれた構成員の活動によって、より「プログレッシブ」な文化が実現している

 

エスペックの「サステナビリティ経営」

企業理念の実践と長期ビジョンの実現に向けた事業活動により「経済的価値」「社会的価値」の創出と向上を図り、持続的成長を目指してまいります。

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サステナビリティ方針

・企業理念「THE ESPEC MIND」の実践により、「経済的価値」と「社会的価値」の創出と向上を図ります

・ステークホルダーとのより良い価値交換により持続的成長を目指します

・ESPEC Vision 2025のもと、「環境創造技術」をかなめとした事業活動を通じて地球環境や社会課題の解決に貢献します

・サステナビリティに関する情報開示を積極的に行います

 

エスペックのステークホルダー・エンゲージメント

私たちは社会に貢献する企業であり続けるためにステークホルダーとのエンゲージメントを大切にしています。そのため、エスペックが2025年までに果たしたい「約束」をステークホルダーごとに設定しました。これをもとに、各ステークホルダーとの対話を重視し、日常のさまざまな機会や仕組みを通じてコミュニケーションの活性化に取り組んでいます。私たちはステークホルダーとの価値交換性を高めるために重要なことは何かを常に考えながら活動し、お互いにとってより良い関係を築いてまいります。

 

 

ESPEC Vision 2025/ステークホルダーとの約束

■エスペックと従業員

・貢献に応じた明瞭な分配と待遇

・意欲と能力ある人材への多彩な「成長支援」と「活躍機会の提供」

・多様なワークスタイルに対応する環境の整備

■エスペックと顧客

・どこよりも最適な機能のひと足早い提供

・常に進化し続けるパートナー

■エスペックと株主

・成長機会の永続的探求

・現在と将来の的確な発信

・「説明できる経営」の堅持

■エスペックと取引先

・フェアな取引

・提案・意見の歓迎

■エスペックと地域社会

・地域社会の文化と伝統の尊重

・能動的かつ良質なコミュニケーション

※ステークホルダー・エンゲージメントの主な取り組み(ステークホルダーごとの主な対話の方法・機会)に関する詳細は、サステナビリティレポート2023をご参照ください。

 

①ガバナンス

 サステナビリティ推進本部を設置し、サステナビリティの推進やSDGsの達成に貢献する取り組みを強化しております。2022年6月には、サステナビリティ推進本部長に取締役が就任いたしました。サステナビリティ推進本部は、サステナビリティ方針やマテリアリティ(重要課題)の策定・見直し、中期経営計画および環境中期計画への反映、サステナビリティ情報開示の役割の中心を担っており、サステナビリティの取り組みに関する進捗と課題について取締役会または執行役員会にて報告を行っています。2023年度は、内部統制システムの強化を目的とした行動憲章・行動規範の改定や、環境や社会的なリスク低減を目的としたサステナブル調達ガイドラインの策定について報告を行いました。取締役会はサステナビリティ推進本部の報告を受け、サステナビリティの取り組みについて議論・監督を行っております。また、サステナビリティ推進本部は、情報開示委員会、内部統制システム委員会、リスク管理委員会、情報セキュリティ委員会、全社環境管理委員会と連携し、全社におけるサステナビリティ経営を推進しております。

②戦略

 当社は、社会と共に成長し中長期の価値向上を果たすために、優先的に取り組む重要課題(マテリアリティ)を特定しております。マテリアリティ(重要課題)の特定にあたっては、まず、GRIスタンダードやSDGs(持続可能な開発目標)、外部調査などを参照し社会課題を抽出しました。次に、抽出した課題について、THE ESPEC MINDやESPEC Vision 2025との整合性などの観点から、持続的成長を図るために取り組むべき課題の選定を行いました。これらの選定した課題について執行役員会で協議・決定し、当社のマテリアリティとして特定しました。

 なお、当社は長期ビジョンESPEC Vision 2025の達成に向けて、2022年度から最終ステージである中期経営計画「プログレッシブ プラン2025」を推進しています。「プログレッシブ プラン2025」の策定にあたっては、当社が特定したマテリアリティを各経営戦略に反映しており、社会課題の解決に貢献する事業の強化と、E(環境)S(社会)G(ガバナンス)に視点をおいた経営基盤の強化に取り組んでおります。

 

 

マテリアリティとKPI項目

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③リスク管理

 当社は、サステナビリティに関連するリスクを識別・評価するためリスク管理委員会を設置し、内部統制システム委員会と一体で運用し、サステナビリティ推進本部と連携することでリスク管理の徹底を図っております。リスク管理委員会はリスクについて影響の高さと対策状況に応じて4つの象限に分類し評価を行っております。また、象限ごとに対応方針を決定し、主管部門の活動に反映しております。

 主要なリスクの詳細につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」をご参照ください。

 

(2)地球環境に関する考え方及び取組

 当社は2022年度より第8次環境中期計画(計画実施期間2022~2025年度)を推進しており、特に地球温暖化対策と生物多様性保全活動を中心に取り組んでおります。

 

<地球温暖化対策>

 環境負荷低減に向けた技術を開発されるお客さまへの製品・サービスの提供を通じて、温室効果ガス排出量の低減に貢献しております。また、低GWP(地球温暖化係数)冷媒の搭載や省エネなど環境配慮型製品の開発を進めるとともに、取引先に対し、2025年までにSCOPE1・2排出量を20%削減することを要請するなど取引先と一体となった活動を強化しております。さらに、当社は2020年より再生可能エネルギーの事業所への導入を進めており、2021年度に国内拠点への導入を完了しております。引き続き自家発電比率の向上や海外拠点への再生可能エネルギーの導入を進めてまいります。

 当社は、2030年度までの温室効果ガス排出量削減目標を掲げており、当社の目標は国際的なSBTイニシアチブより「SBT(Science Based Targets)」認定を取得しています。また、当社は2021年12月に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言への賛同を表明し、気候変動に関する情報を開示しております。国際的な非営利団体CDPが公表した「CDP気候変動レポート」では、4年連続で8段階中上位から3番目のBスコアに認定されました。さらに「サプライヤーエンゲージメント評価」において最高評価のAスコアとなり2年連続で「サプライヤー・エンゲージメント・リーダー」に選定されました。

<生物多様性保全活動>

 森づくりや水辺づくりなど環境保全事業を通じて生物多様性保全に取り組む企業の活動を支援しております。また、当社の生物多様性保全活動の拠点である神戸R&Dセンターでは、社員と家族が在来苗木を植栽し育てた森やビオトープ、地元六甲北部の植物で構成した屋上草地を設置しており、環境省「自然共生サイト」の認定や、第三者認証「ABINC(いきもの共生事業所)認証」の取得、緑化優良工場等表彰制度(通称:全国みどりの工場大賞)「近畿経済産業局長賞」の受賞など社外より高い評価をいただいております。

 2022年11月には、創業75周年事業として、林野庁「法人の森林制度」を活用した新しい生物多様性保全活動「エスペック50年の森」をスタートしております。2024年4月までに植樹祭を3回開催し、計12,000本を植樹いたしました。苗木を育成し、生物多様性豊かな森を育むことで環境への貢献を目指すとともに環境教育の場としても活用してまいります。なお、2022年8月には、兵庫県立大学と「SDGs推進」に関する協定を締結しており、「エスペック50年の森」においても学術的な効果検証を行うなど連携しております。

 

■気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)への対応

 当社は2021年12月に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言への賛同を表明いたしました。TCFDの提言に基づき積極的に情報開示を行ってまいります。

①ガバナンス

代表取締役執行役員社長を委員長とする全社環境管理委員会において、四半期ごとに環境課題に対する実行計画の策定と進捗管理を実施しております。取締役会は本委員会の報告を受け、環境課題への対応方針などについて議論・監督を行っております。代表取締役執行役員社長は執行役員会の議長を担うと同時に、諮問委員会である全社環境管理委員会の委員長を担っており、環境課題に係る経営判断の最終責任を負っております。

②戦略

2℃未満および4℃シナリオにおける気候関連のリスク(移行リスク・物理的リスク)と機会について、短期・中期・長期の視点で事業影響や財務影響を評価しております。この評価をふまえ当社戦略のレジリエンスを検証しております。

 

 

気候関連リスク・機会に対する事業インパクト(財務影響と事業リスク)評価と当社の対応

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影響時期:短期10年以内、中期10年~30年、長期30年超

財務影響度:★1億円以内、★★1億円~10億円、★★★10億円超

 

③リスク管理

リスク管理委員会と全社環境管理委員会および環境マネジメントシステム(ISO14001)において、リスクの識別・評価を実施し、発生頻度やインパクトから優先順位付けしたうえで対策を決定し、進捗を管理しております。重要リスクについては取締役会に報告し、取締役会による監督体制のもと当社戦略に反映しております。

④指標・目標

当社は、2019年度からグループ全体の温室効果ガス排出量の算定に取り組んでおり、気候関連リスク・機会を管理するための指標として、SCOPE1・2およびSCOPE3温室効果ガス排出量の2つの指標を定めています。また、2022年度に当社は2030年度までの温室効果ガス排出量削減目標を設定いたしました。この目標は、国際的なSBTイニシアチブよりSBT(Science Based Targets)認定を取得しており、4カ年ごとに設定する環境中期計画に展開し、実現を目指しております。なお、当社は2019年度から、温室効果ガス排出量の第三者保証を取得しており、2023年度の温室効果ガス排出量についても第三者保証を取得し、2024年7月にサステナビリティサイトにて開示予定です。

 

2030年度温室効果ガス排出量削減目標

・SCOPE1+2  2030年度までに60%削減、2025年度までに55%削減(2019年度比)

・SCOPE3   2030年度までに30%削減、2025年度までに10%削減(2019年度比)

 

 

第8次環境中期計画(計画実施期間2022~2025年度)の温室効果ガス排出量

区分

2022年度実績

2023年度実績

排出量

2019年度比

排出量

Scope1

3,576t-CO2e

+4.2%

2024年7月開示予定

Scope2

マーケットベース

3,717t-CO2e

-65.0%

ロケーションベース

11,541t-CO2e

-5.7%

Scope3

1,091,612t-CO2e

+36.6%

合計(Scope1+2+3)

1,098,905t-CO2e

+35.1%

 

※TCFDに基づく情報開示に関する詳細は、サステナビリティサイトをご参照ください。

https://www.espec.co.jp/sustainability/env/climate/tcfd.html

 

(3)人的資本・多様性に関する考え方及び取組

人権の尊重

 当社は企業理念THE ESPEC MINDの「宣言」において、人権の尊重を表明しております。また、2023年度には、エスペックに所属する全ての役員・社員に適用する「エスペック行動憲章・行動規範」を時代に対応した内容に改定し、「基本的人権を尊重し、社内外において、性別、年齢、国籍、人種、民族、肌の色、宗教、信条、社会的地位、婚姻の有無、性的指向や性自認、病歴、ウイルス等への感染の有無、障がい等による差別的取り扱い、言動は一切行わない」旨を定め、毎年の社内教育を通じて周知徹底を図っております。

 

人事方針

 会社の盛衰は「人」で決まります。会社にとって「人」が中心であり「人」重視の経営こそが会社発展の原動力です。「社員が主役の会社でありたい」というのが基本的な考え方です。また、高いモチベーションと品格を兼ね備え、チャレンジ精神に富む良質な人材の開発・育成に取り組むことで「社員能力・活力の最大化」を目指しております。

 

従業員の成長と働きがいの創出

 当社は「従業員の成長と働きがいの創出」をサステナビリティにおけるマテリアリティ(重要課題)の一つとして特定しており、人的資本の最大化に向けて、企業文化の良質化/組織マネジメント、個の成長支援、経営戦略と連動した人材育成、ダイバーシティ&インクルージョンおよび社員の健康と安全の確保に取り組んでおります。ダイバーシティ&インクルージョンでは、女性およびシニア社員の活躍推進や障がい者雇用率の向上などに取り組んでおります。

 

 

人的資本の強化(中期経営計画での取り組み)

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①戦略

多様性の確保に向けた人材育成方針と社内環境整備方針は以下のとおりです。

 

人材育成方針

意欲と能力ある人材への多彩な「成長支援」と「活躍機会の提供」

 自身の成長は自分の意志と意欲に大きく左右されます。まさに成長は自分自身のテーマといえます。当社は成長意欲や能力のある従業員に対して、多彩な成長支援やチャレンジできる機会を提供します。

 

社内環境整備方針

多様なワークスタイルに対応する環境の整備

 従業員が、安心して思う存分能力を発揮できる環境を会社が整えることは重要であると考えます。人々が望むワークスタイルは時代とともに変化します。当社は適切な範囲の中で、時代の要請する多様なワークスタイルに対応する先進的な職場環境の整備に努めてまいります。

 

女性の活躍推進については、目指す姿を明確にし、3つの施策に取り組んでおります。

 

女性活躍推進の目指す姿

1.管理職となる女性社員、高い専門性を持つ女性社員が多数活躍している

2.女性社員が幅広い職種で活躍している

3.全社的にワークライフバランスが浸透し、社員にとって働きやすい職場環境になっている

・多様性に富んだ創造性と活力ある会社になっている

・様々な働き方ができる会社になっている

・優秀な人材が集まる会社になっている

 

女性活躍推進に向けた施策

1.女性自身の意識改革

女性社員のキャリア形成支援を目的としたキャリアデザイン研修や、女性リーダー育成研修などを通じて、女性社員自身の意識改革に取り組んでまいります。

2.女性のキャリアを支援する制度の拡充

短時間勤務制度の利用期間拡大など、女性のキャリアを支援する制度の拡充に取り組んでまいります。

3.働きやすい職場づくり

管理職を対象とした女性活躍推進セミナーの開催や、残業時間の抑制に向けた取り組みなどにより、働きやすい職場づくりを進めてまいります。

 

 ②リスク管理

 人的資本に関するリスク管理につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」ご参照ください。

 

③指標及び目標

女性活躍推進に関する行動計画および次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画を以下のとおり策定しております。

 

女性活躍推進に関する行動計画

計画期間:2021年1月1日~2025年12月31日までの5年間

 

目標1:新卒採用者に占める女性割合30%以上を確保する。

取り組み:新卒採用の女性を積極的に採用する。

 

目標2:女性管理職比率について、10%以上を確保する。

取り組み:管理職候補となる女性社員の発掘と育成。

 

目標3:一人あたりの平均残業時間を15時間(/月)以下にする。

取り組み:平均残業時間と、長時間残業が常態化している社員の残業時間の抑制。

 

目標と実績

指標

2025年度目標

2023年度実績

女性新卒採用率※

30以上

39

女性管理職比率※

10以上

9.5

一人あたり平均残業時間

15時間/月以下

20.1時間/月

※ 女性新卒採用率および女性管理職比率は、2024年4月1日現在のものであります。

 

次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画

計画期間:2021年4月1日から2026年3月31日までの5年間

 

1.育児休業取得率

 計画期間中に、男性の育児休業取得率を7%以上にするとともに、女性の育児休業取得率を100%にする。

2.キャリア構築できる環境・風土づくり

 従業員が仕事と育児を両立しながら、キャリアの構築を実現できる環境・風土づくりを行う。

3.年次有給休暇の取得率向上

 年次有給休暇の取得率を、全社平均65%以上にする。

 

目標と実績

指標

2025年度目標

2023年度実績

育児休業取得率(男性)

7以上

52.9

育児休業取得率(女性)

100

100

年次有給休暇取得率

全社平均65以上

74.3

 

※ダイバーシティの推進に関する詳細は、サステナビリティサイトをご参照ください。

https://www.espec.co.jp/sustainability/social/employee/diversity.html

 

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

3【事業等のリスク】

 当社は、リスク管理委員会を設置し、内部統制システム委員会と一体で運用し、サステナビリティ推進本部と連携することでリスク管理の徹底を図っております。リスク管理委員会はリスクについて影響の高さと対策状況に応じて4つの象限に分類し評価を行っております。また、象限ごとに対応方針を決定し、主管部門の活動に反映しております。有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、当社の業績および財務状況に影響を及ぼす可能性のある主要なリスクは、以下のとおりであります。また、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。なお、当社におけるマテリアリティ(重要課題)につきましては、「第2 事業の状況 2サステナビリティに関する考え方及び取組(1)サステナビリティ全般に関する考え方及び取組 ②戦略」に記載のとおりであります。

(1)業績変動のリスク

 当社は、電子部品・電子機器および自動車関連メーカーを主要顧客としており、当社の業績は、これらの業界の業績や設備投資動向の影響を強く受けます。景気変動の影響等により主要顧客の設備投資が低調に推移した場合は、当社の業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。また当社は、国内市場において高い市場シェアを持っておりますが、国内市場は成熟市場であるため当社の成長は、海外市場での業績に左右されます。高い市場シェアを持つ欧米の環境試験器メーカーや低価格を武器に市場参入を図る中国、台湾メーカーとの競争が当社の業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。当社におきましては、これらの業績変動リスクの緩和と次代の成長を図るため、海外市場のさらなる拡大と中期経営計画に基づき新たな収益基盤となる新規事業開発を推進しております。

 

(2)災害、感染症、戦争等に係るリスク

 当社の2023年度における連結売上高に占める海外売上高比率は53.1%と高く、今後もこの比率はさらに高まると考えております。事業を展開する国や地域において、大規模な自然災害、重大な感染症の流行、戦争、テロ、政情不安等の予見困難な社会的混乱が発生する事態になった場合、当社の業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。また、当社の主要な製造拠点、研究開発拠点は国内にあり、これらの主要な施設が地震や台風等の自然災害により甚大な損害を被った場合は事業運営が困難になるだけでなく、施設の修復または建て直しのために巨額の費用が発生する可能性があります。当社が直接被害を被らない場合でも、電力等のインフラの供給が制限されたり、サプライヤーから必要な部品、素材等の供給が受けられないなどの二次的被害を被ることで、事業活動に大きな支障が生じる可能性があります。当社におきましては、非常事態が発生した場合または発生が予想される場合には、危機対応規定に基づき、当社および関係者が被る損失を最小限にとどめるよう迅速な情報伝達と適切な対処、誠意ある対応を行っております。

 

(3)輸出規制に伴うリスク

 当社商品の輸出および技術の提供に関しては、外国為替及び外国貿易法、米国輸出管理規則(EAR)など、国内外の輸出管理関連法令の影響下にあります。また、最終需要者等を通じて、懸念国や懸念需要者に大量破壊兵器または通常兵器等の開発用として転用される可能性もあります。これらのことにより、当社の商品、技術が予期せぬ第三者、用途で使用され、結果として当社の業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。当社におきましては、最新の法規制を遵守すべく、輸出管理本部を主体として、商品の仕様、仕向地、最終需要者、用途、取引経路等を把握しております。

 

(4)サプライヤーへの依存、原材料の調達および価格高騰に伴うリスク

 当社は、多種の部品や素材を複数のサプライヤーから購入しております。また、生産量の変化への対応と多様な生産技術を効率よく獲得するため、複数の外注加工業者を活用しております。サプライヤー、外注加工業者の倒産や事業撤退等により供給が停止した場合は生産に問題が生じる可能性があります。また、サプライヤーの責により、欠陥の内在する部品が混入した場合、生産の大幅な遅れや、最悪の場合には納品後の製品に対する対応等のために多額の費用が必要になる可能性があります。また、当社製品の原材料は、主にステンレス、鉄、銅、アルミニウム等であり、それらの仕入価格は国際市況の影響を受けます。世界的な半導体、電子部品等の不足による調達遅延や、原材料価格が高騰した場合、当社の業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。当社におきましては、サプライヤーおよび外注加工業者に対し、厳重な取引先管理を実施し、品質保証、生産管理、環境管理体制、安定調達を目指したサプライチェーンの評価や指導を行い、相互の信頼関係の醸成に努めております。

 

 

(5)業務提携、企業買収等に伴うリスク

 当社は、事業領域の拡大のため、業務、資本提携や企業買収等を実施することがあります。事前調査で把握できなかった問題が生じた場合や、事業環境の変化等により当初想定した効果が得られない場合、のれんの減損処理等によって当社の業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。当社におきましては、これらの意思決定に際しては、対象となる企業の事業内容や財務内容、取引関係等について詳細な事前審査を実施し、十分にリスクを検討しております。

 

(6)情報セキュリティ事故に伴うリスク

 当社は、業務を遂行するうえで個人情報や機密情報を取り扱うことがあります。情報漏洩等の情報セキュリティ事故が発生した場合、当社の社会的信用やブランドイメージの低下等によって当社の業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。当社におきましては、情報セキュリティマネジメントシステムの国際認証規格「ISO27001」に基づき情報資産の管理を徹底しております。

 

(7)環境規制に伴うリスク

当社の主力製品である環境試験器は、使用時のエネルギー消費に起因して温室効果ガスを排出するほか、冷凍機の冷媒としてフロンを使用しています。脱炭素社会への移行に伴い、省エネルギー規制や温室効果を有する冷媒ガスの使用・排出規制などの環境規制がさらに強化される場合、規制に適合するためにコストが増加する可能性があります。また、これらの規制に対応ができない場合や遅れが生じる場合には、製品の販売に支障が出るなど当社の業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。当社におきましては、「地球温暖化対策」をマテリアリティ(重要課題)の一つと位置づけ、省エネ製品や低GWP(地球温暖化係数)のフロン冷媒を搭載した製品の開発・提供や、100%再生可能エネルギーによる受託試験サービスの提供などに取り組んでおります。

 

(8)人材の確保・育成に係るリスク

当社が企業競争力を維持・強化していくためには、事業運営に必要な有能な人材を確保・育成する必要があります。労働市場の流動化や国内における労働人口の減少が進むなか、人材の獲得競争は激化しています。当社が有能な人材を確保・育成できない場合や、人材流出を防止できない場合には、事業運営への影響、技術・ノウハウの社外流出など、当社の業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。当社におきましては、多様な人材の獲得に向けた採用活動を積極的に行うとともに、従業員エンゲージメントの向上に向けて、企業文化の良質化や、多彩な「成長支援」と「活躍機会の提供」、多様なワークスタイルに対応する環境の整備などに取り組んでおります。

 

(9)グループガバナンスおよびコンプライアンスに係るリスク

当社は、国内外に複数の子会社を有し、グローバルにビジネスを展開しております。グループでの統治が十分に機能せず、役員や従業員によるコンプライアンス違反や倫理違反等が発生した場合、社会的信用やブランドイメージの低下、損害賠償請求等によって当社の業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。当社におきましては、グループでの内部統制を整備するとともに、エスペックグループに所属するすべての役員・従業員が遵守する「エスペック行動憲章・行動規範」の教育・徹底に取り組んでおります。また、各種コンプライアンス研修の実施や、コンプライアンス通報窓口(社内・社外)の設置・運用など、継続的にコンプライアンスの強化を図っております。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①経営成績の状況

 当連結会計年度の当社グループの事業環境につきましては、社会のデジタル化や脱炭素化を背景にエレクトロニクス及び自動車関連の投資が堅調に推移し、主に電気自動車(EV)シフトによる需要が継続いたしました。生産面につきましては、一部の部品調達は長納期が継続しておりますが、戦略的在庫の積み増しなどにより生産量を拡大いたしました。

 当連結会計年度の経営成績につきましては、受注高は特に国内市場において電気自動車(EV)・バッテリー分野が好調に推移し、前連結会計年度比で4.7%増加の62,290百万円となり、3期連続で過去最高を更新いたしました。売上高につきましては前連結会計年度比で17.5%増加し、2期連続で過去最高となる62,126百万円となりました。利益面につきましては、販管費が増加いたしましたが、増収及び製品・サービスの値上げ効果により営業利益は前連結会計年度比で50.8%増加し、6,585百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は49.2%増加し、4,969百万円となり、いずれも過去最高を更新いたしました。なお、ROE(自己資本利益率)は10.0%となりました。

 

 

前連結会計年度

(第70期)(百万円)

当連結会計年度

(第71期)(百万円)

対前期増減率(%)

受注高

59,521

62,290

4.7

売上高

52,892

62,126

17.5

営業利益

4,366

6,585

50.8

経常利益

4,664

6,919

48.3

親会社株主に帰属する当期純利益

3,330

4,969

49.2

 

 

 セグメント別の状況につきましては、次のとおりであります。

 

当連結会計年度のセグメント別業績

 

受注高

(百万円)

売上高

(百万円)

営業利益

(百万円)

装置事業

53,565

53,518

5,848

サービス事業

7,634

7,536

681

その他事業

1,453

1,455

51

連結消去

△363

△383

3

62,290

62,126

6,585

 

 

 

装置事業

 

 

前連結会計年度

(第70期)(百万円)

当連結会計年度

(第71期)(百万円)

対前期増減率(%)

受注高

51,446

53,565

4.1

売上高

45,031

53,518

18.8

営業利益

3,919

5,848

49.2

 

 

サービス事業

 

前連結会計年度

(第70期)(百万円)

当連結会計年度

(第71期)(百万円)

対前期増減率(%)

受注高

6,963

7,634

9.6

売上高

6,788

7,536

11.0

営業利益

428

681

59.3

 

その他事業

 

前連結会計年度

(第70期)(百万円)

当連結会計年度

(第71期)(百万円)

対前期増減率(%)

受注高

1,469

1,453

△1.1

売上高

1,404

1,455

3.7

営業利益

16

51

211.0

 

 

②財政状態の状況

 当連結会計年度末における総資産は78,235百万円となり、前連結会計年度末と比べ11,059百万円の増加となりました。

 負債は25,519百万円で前連結会計年度末と比べ5,515百万円の増加となりました。

 純資産は52,715百万円で前連結会計年度末と比べ5,543百万円の増加となりました。

 これらの結果、自己資本比率は67.4%と前連結会計年度末と比べ2.5ポイントの減少となりました。

 

③キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、営業活動によるキャッシュ・フローの増加2,738百万円、投資活動によるキャッシュ・フローの減少3,778百万円、財務活動によるキャッシュ・フローの増加2,798百万円、現金及び現金同等物に係る換算差額の増加736百万円などにより、期首時点に比べ2,495百万円増加し、当連結会計年度末には16,793百万円となりました。

 

 

④生産、受注及び販売の実績

 当連結会計年度における生産実績、受注実績及び販売実績は、次のとおりであります。

a.生産実績

セグメントの名称

生産高(百万円)

対前期増減率(%)

装置事業

50,083

16.4

サービス事業

58

30.7

その他事業

合計

50,142

16.5

(注) 上記金額は販売価格によっております。

 

 

b.受注実績

セグメントの名称

受注高(百万円)

対前期増減率

(%)

受注残高(百万円)

対前期増減率

(%)

装置事業

53,565

4.1

25,663

0.2

サービス事業

7,634

9.6

1,656

6.3

その他事業

1,453

△1.1

230

△0.8

62,653

4.6

27,550

0.5

消去

△363

1.3

△28

△41.5

合計

62,290

4.7

27,521

0.6

 

 

 

c.販売実績

セグメントの名称

販売高(百万円)

対前期増減率(%)

装置事業

53,518

18.8

サービス事業

7,536

11.0

その他事業

1,455

3.7

62,510

17.4

消去

△383

16.1

合計

62,126

17.5

 

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末日現在において判断したものであります。

 

①経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.経営成績

 当連結会計年度の事業環境といたしましては、主に国内の電気自動車(EV)・バッテリー分野の投資がけん引し、受注が好調に推移いたしました。当社グループの取り組みといたしましては、装置事業では、戦略的在庫の積み増しなどによる部材確保や生産対応強化により生産量を拡大するとともに、先端技術分野の試験ニーズに応える製品ラインアップの拡充に取り組んでまいりました。サービス事業では、車載用バッテリーの受託試験需要の拡大に対応するため、試験設備の増強や新試験所"次世代モビリティテストラボ(仮称)"の建設を進めてまいりました。

 当連結会計年度の経営成績といたしましては、装置事業の環境試験器及びエナジーデバイス装置、サービス事業の受託試験が好調に推移し、受注高は前連結会計年度比で4.7%増加し62,290百万円となりました。売上高につきましては、装置事業の環境試験器が大幅に増加し、62,126百万円(前連結会計年度比17.5%の増加)となりました。売上原価につきましては、増収により前連結会計年度比で14.9%増加し40,132百万円となりましたが、製品・サービスの値上げ効果により、原価率は64.6%と前連結会計年度比で1.4ポイント改善いたしました。販売費及び一般管理費につきましては、受注拡大に伴う人件費や活動経費の増加などにより15,408百万円(前連結会計年度比1,817百万円の増加)となりました。これらの結果、利益面につきましては、前連結会計年度比で営業利益は50.8%増加し6,585百万円、経常利益は48.3%増加し6,919百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は49.2%増加し4,969百万円となりました。

 

b.セグメントごとの経営成績

<装置事業>

 環境試験器につきましては、国内市場の受注高は、汎用性の高い標準製品は前連結会計年度並みとなったものの、カスタム製品は電気自動車(EV)・バッテリーを中心に大幅に増加いたしました。売上高につきましては、カスタム製品への要員シフトなど生産対応を強化し、標準製品・カスタム製品ともに増加いたしました。海外市場におきましては、受注高は中国及び欧州が減少し、前連結会計年度を下回りました。売上高につきましては、北米、欧州、韓国、台湾、東南アジアが増加し、前連結会計年度を上回りました。

 エナジーデバイス装置につきましては、電気自動車(EV)・バッテリー向けの投資拡大により、主に国内において充放電試験用チャンバーが好調に推移し、受注高は前連結会計年度比で大幅に増加いたしました。売上高につきましては、生産体制を整備し、大幅に増加いたしました。

 半導体関連装置につきましては、主にメモリ関連の投資抑制の影響を受け、受注高・売上高ともに前連結会計年度比で減少いたしました。

 こうした結果、装置事業全体では、前連結会計年度比で受注高は4.1%増加し53,565百万円となり、売上高は18.8%増加し53,518百万円となりました。利益面につきましては、販管費が増加したものの売上高の増加及び製品の値上げ効果により、営業利益は前連結会計年度比で49.2%増加し5,848百万円となりました。

 

<サービス事業>

 アフターサービス・エンジニアリングにつきましては、予防保全サービス・修理サービスともに堅調に推移し、受注高・売上高ともに前連結会計年度比で増加いたしました。

 受託試験・レンタルにつきましては、車載用バッテリーを中心に受託試験が好調に推移し、前連結会計年度比で受注高・売上高ともに増加いたしました。

 こうした結果、サービス事業全体では、前連結会計年度比で受注高は9.6%増加し7,634百万円、売上高は11.0%増加し7,536百万円となりました。利益面につきましては、売上高の増加及びサービスの値上げ効果により、営業利益は前連結会計年度比で59.3%増加し681百万円となりました。

 

<その他事業>

 環境保全事業及び植物育成装置事業を中心とするその他事業では、新たに手掛けている植物の水耕栽培と陸上養殖を組み合わせたアクアポニックスなどの受注を獲得いたしましたが、森づくりや植物研究用装置が減少し、受注高は1,453百万円と前連結会計年度並みとなりました。売上高につきましては、水辺づくりや野菜の販売が堅調に推移し前連結会計年度比で3.7%増加の1,455百万円となり、営業利益は211.0%増加し51百万円となりました。

 

②財政状態の状況に関する認識及び分析・検討内容

 当連結会計年度末における総資産は78,235百万円となり、前連結会計年度末と比べ11,059百万円の増加となりました。これは主に現金及び預金の増加2,496百万円、売上債権(受取手形、売掛金及び契約資産並びに電子記録債権)の増加2,200百万円、売上高の増加に伴う仕掛品、原材料及び貯蔵品などの棚卸資産の増加1,933百万円、保有株式の時価上昇による投資有価証券の増加や、繰延税金資産の増加等による投資その他の資産の増加1,727百万円、連結子会社による事業譲受に伴うのれんの計上等による増加1,020百万円、取得等による土地の増加563百万円等によるものであります。

 負債は25,519百万円で前連結会計年度末と比べ5,515百万円の増加となりました。これは主に、短期借入金の増加5,000百万円、仕入債務(支払手形及び買掛金並びに電子記録債務)の減少647百万円、未払法人税等の増加450百万円等によるものであります。

 純資産は52,715百万円で前連結会計年度末と比べ5,543百万円の増加となりました。これは主に、当連結会計年度において親会社株主に帰属する当期純利益が4,969百万円計上された一方、配当金として1,545百万円が利益処分されたこと等による利益剰余金の増加3,418百万円、円安進行に伴う為替換算調整勘定の増加1,580百万円、その他有価証券評価差額金の増加750百万円等によるものであります。

 これらの結果、自己資本比率は67.4%と前連結会計年度末と比べ2.5ポイントの減少となりました。

 

③キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果得られた資金は2,738百万円(前年同期は、1,916百万円の資金の収入)となりました。これは主に税金等調整前当期純利益6,916百万円の計上による資金の収入、売上高の増加に伴う棚卸資産の増加による資金の支出1,624百万円、減価償却費の計上1,520百万円、売上高の増加に伴う売上債権の増加による資金の支出1,492百万円、法人税等の支払による資金の減少1,400百万円、仕入債務の減少による資金の支出1,140百万円等によるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果使用した資金は3,778百万円(前年同期は、1,061百万円の資金の支出)となりました。これは主に有形及び無形固定資産の取得による支出2,240百万円、子会社における事業譲受による支出1,800百万円等によるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果得られた資金は2,798百万円(前年同期は、2,898百万円の資金の支出)となりました。これは主に短期借入による収入5,000百万円、配当金の支払額1,539百万円、連結範囲の変更を伴わない子会社株式の取得による支出333百万円等によるものであります。

 

 当社グループの資本の財源及び資金の流動性について、運転資金および設備資金を自己資金で賄うことを基礎としておりますが、必要に応じて銀行借入により資金調達しております。

 また、運転資金の効率的な調達を行うため、当連結会計年度末において複数の機関との間で合計3,000百万円のコミットメントライン契約を締結しております(借入実行残高-百万円、借入未実行残高3,000百万円)。

 事業活動における運転資金需要の主なものは、当社製品の製造に係る原材料費、労務費、外注加工費等の製造費用、各事業についての販売費及び一般管理費等があります。また、設備資金需要としては、製造用設備やレンタル用設備、受託試験用設備への投資に加え、情報処理のためのソフトウエアへの投資等があります。

 

④重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表作成にあたって適用した重要な見積りの方法につきましては、「第5 経理の状況  1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりであります。

 

5【経営上の重要な契約等】

 当社は、2023年8月9日開催の取締役会において、日立ジョンソンコントロールズ空調株式会社と事業譲渡契約書の締結について決議し、2023年9月30日付で同社の環境試験装置事業を当社子会社であるコスモピアハイテック株式会社が譲受いたしました。詳細は、「第4 経理の状況 1 四半期連結財務諸表 注記事項(企業結合等関係)」に記載のとおりであります。

 

6【研究開発活動】

当社グループでは研究開発活動としてコア技術である環境創造技術の深耕とネットワークシステム技術や電子デバイス計測制御技術との組み合わせにより、自動車や5G・IoTに関連する市場に向けた各種試験装置の製品開発を行いました。また、新たな事業領域である食品機械市場、医療、マテリアル市場に向けた製品開発や、省エネルギー・地球温暖化対策といった環境負荷低減技術の研究開発を行ってまいりました。

当連結会計年度における研究開発費は1,239百万円であり、事業セグメント別の研究開発費は装置事業1,177百万円、サービス事業61百万円であります。

装置事業及びサービス事業の研究開発活動の成果は次のとおりであります。

 

(1)装置事業

①地球温暖化係数(GWP:Global Warming Potential)の低い新冷媒R-473Aを搭載した恒温恒湿器の各モデルの開発を進めております。冷媒R-23よりGWP値が88%削減された新冷媒を採用するとともに、独自技術により性能確保をしながら省エネを実現し、製品ライフサイクル全体の温室効果ガス排出量低減に貢献してまいります。

②温度環境下における半導体パッケージや実装基板の反り変形を可視化する熱変形計測システムを開発し、熱変形計測システムの販売ならびに計測サービスを開始しました。本製品・サービスにより、半導体パッケージや実装基板をはじめとする電子部品や電子機器の信頼性確保に貢献してまいります。

③半導体デバイスやメモリなどの高発熱負荷に対応できる検査用途のバーンインチャンバーを拡充しました。これにより、最先端半導体の検査時間を短縮し、IoTや自動車分野で活用が進む最先端半導体の品質確保に貢献してまいります。

④昨年度ラインアップした5G通信機器の温度特性試験に対応した電波暗箱型恒温器について、6Gでの100GHzに対応できる製品を新たに1機種追加し、ラインアップを拡充しました。

⑤スポット冷却加熱装置をマイナーチェンジするとともに、新タイプの装置(先端ヒータータイプ)の発売を開始しました。スポット加熱冷却装置は、ホースを通じて-40℃~+180℃に温度調節した空気を噴射し、試料を冷却・加熱するチャンバーレスシステムです。先端ヒータータイプでは、100℃/分(空気温度)の温度変化速度で、大幅な試験時間の短縮が可能になりました。半導体・電子部品や先端材料における研究開発に貢献してまいります。

⑥神戸R&Dセンターに設置されている全天候型試験ラボを活用し、新たな試験方法の開発を進め、学術講演会等において情報発信を行っております。全天候型試験ラボでは、温度、湿度、雪、雨、霧、太陽光、風のような地球上のさまざまな気象環境を動的に再現することができます。社外への情報発信を進め、お客さまの最先端ニーズに応えてまいります。

 

(2)サービス事業

①車載用電池パック圧壊シミュレーションシステムを共同開発しました。実試験に即した高精度な数値シミュレーシ ョンにより、試験にかかるコスト削減と環境負荷低減に貢献してまいります。

②大型バッテリーセルやパックの安全性試験専用「圧壊・釘刺し試験装置」を開発し、バッテリー安全認証センターに導入いたしました。高エネルギー密度や高容量バッテリーセルやパックの安全性試験を安全な環境下で実施できるようになりました。

③集中管理システム「エスペックオンラインコア」について、新機能を追加しました。APIを新規実装し、お客さまの上位システムとの連携を可能としました。今後もお客さまからのDX化のニーズに応えてまいります。