当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであ
ります。
(1)企業理念
|
存在意義「人と技術をつなぎ、未来をひらく」に込めた思い 「人」は、社員だけでなく、すべてのステークホルダーの皆さまを広く包含しています。「技術」は、これまで培ってきた独自の技術を中心に、他社技術とも積極的に融合し進化を続けてきたSCREENグループの技術の全体を指しています。また、蓄積してきたノウハウも技術の一つと捉えています。これら人と人、技術と技術、さらには人と技術を接続し新たな価値を創造するとともに、創業以来積み重ねてきた有形・無形の財産を未来へと伝承することも「つなぐ」に込めています。「未来をひらく」には、社会課題の解決を通じて、持続可能な未来への扉を開くことと、社会の発展へ挑み、未来への道を切り拓くという2つの意味を込めています。 創業の精神である「思考展開」は、SCREENグループの創業155年歴史の中で人と技術を育み続ける礎、精神的支えとなった言葉として、将来にわたってもグループの存在意義の重要なベースを成します。 |
(2)経営大綱
経営大綱は、10年後のありたい姿とSCREEN Value(企業価値)を高めるための基本指針として2014年に策定し、中期経営計画ごとに改定を行ってきました。また2023年には、新中期経営計画策定に向け、改定を行っています。
今回の経営大綱は、企業理念をもとに10年後のありたい姿を「Be a Solution Creator -共に歩む人たちと、世界が求める存在に-」と定め、その実現に向けマテリアリティの解決とSCREEN Value(企業価値)を高めるための方針と戦略を策定したものです。
(3)経営方針、経営環境及び対処すべき課題
当社グループは「ソリューションクリエーター*」として事業を通じて社会課題を解決し、社会的価値と経済的価値を共に実現する共通価値(CSV)を創出することで、「SCREEN Value(企業価値)」をさらに高め、持続的な利益創出や株主還元などを推進してまいります。
*「ソリューションクリエーター」とは、経営大綱で定められた10年後のありたい姿として、ひたむきな探求心と柔軟な発想を持って社会課題に立ち向かい、社会の持続的な発展に寄与する技術、製品、サービスなどの「新しい価値(CSV)」を事業を通じて世界中のお客さまに提供する企業体および人を指します。
Ⅰ.中期経営計画「Value Up 2023」の達成状況
中期経営計画「Value Up 2023」(2021年3月期〜2024年3月期)の内容、および最終年度の達成状況は、次のとおりであります。
1.基本コンセプト
「ソリューションクリエーターとしての業界でのプレゼンス確立」
2.主たる取り組み成果
①イノベーションの創出と持続的成長サイクルによる企業価値向上
半導体市場の需要の増加に伴い、積極的に生産キャパシティの増強に取り組むなど、成長投資(設備投資、研究開発投資)は目標の1,506億円を上回る1,873億円を実施しました。その結果、グループ連結の売上高が大幅に拡大、ROICも良化し、企業価値は大きく向上しました。
その一方で、既存事業における新技術・新製品や新規事業の本格的な創出には課題を残しており、次期中期経営計画にて重点的に取り組んでまいります。
②収益性と効率性を追求し、利益に見合うキャッシュを創出
売上高が拡大したことで収益性が大幅に改善するとともに、効率性を追求し、ROIC経営を推し進めました。その結果、ゲンバKPI*の導入・浸透効果もあり、各事業において収益性・効率性が向上しました。また、ROICをベースに事業ポートフォリオの観点から主に事業構造改革を進めました。これにより4年間累計営業利益2,563億円に対して、4年間累計営業キャッシュ・フロー3,091億円と利益に見合うキャッシュを創出しました。
また、株式会社日本格付研究所の当社「長期発行体格付」についても、中期経営計画開始時点(2020年4月)のBBB+(見通し:安定的)から、2023年3月17日付でA(見通し:安定的)へ格上げとなり、2024年3月末時点においてもA(見通し:安定的)を維持しております。
*ゲンバKPI:ROICを分解し現場で管理できる形にした指標
③サステナブル企業に向けたESGの取り組み
持続可能な社会の実現と社会的価値の向上を目指す中期計画「Sustainable Value2023」を推進
E(環境) :気候変動に対する取り組みと環境経営の実現
S(社会) :働きがいのある職場の実現と社会的価値の創造
G(ガバナンス) :リスクに強いガバナンス体制と組織づくり
3.経済的価値の目標と実績
中期経営計画「Value Up 2023」における経済的価値の目標と2024年3月期実績は、以下のとおりとなります。
|
目標 (計画当初) |
目標 (2022年7月上方修正後) |
実績 (2024年3月期) |
売上高 |
最終年度4,000億円以上 |
最終年度5,000億円以上 |
5,049億円 |
営業利益率 |
最終年度15%以上 |
最終年度17%以上 |
18.6% |
ROE |
最終年度15%以上 |
最終年度20%以上 |
21.0% |
営業キャッ シュ・フロー |
4年間で累計1,200億円以上 |
4年間で累計2,400億円以上 |
962億円 (4年間で累計3,091億円) |
株主還元 |
2022年3月期以降 連結総還元性向30%以上 |
2022年3月期以降 連結総還元性向30%以上 |
連結総還元性向30.6% |
*上記5項目の数値目標はオーガニック・グロースを前提としております。
4.社会的価値向上への取り組み実績
2024年3月期は、2030年3月期の温室効果ガス(GHG)排出量の削減目標について、「1.5℃水準」に整合的な削減目標として「Science Based Targets イニシアチブ(SBTi)」からの認定を更新しました。
また、働き方改革や人財力強化、サプライチェーンを含めた安全で健康な職場作り、それらを維持・向上させる体制整備が評価され、「健康経営銘柄2024」に初選定されました。
詳細につきましては、「ESGに重点をおいたサステナブル経営の推進」(p.17)をご覧ください。
Ⅱ.中期経営計画「Value Up Further 2026」
次期中期経営計画「Value Up Further 2026」(2025年3月期〜2027年3月期)の内容は、次のとおりであります。
1.基本コンセプト
「ソリューションクリエーターとして一人ひとりの成長と競争力の強化によりさらなるプレゼンス向上」
2.全体概要
次期中期経営計画「Value Up Further 2026」は、中期経営計画「Value Up 2023」で高めた成長性と収益性を維持しつつ、将来を見据えた成長投資を強化する「長期の成長を支える経営基盤を構築する3年間」と位置づけ、「事業成長戦略」と「経営基盤強化戦略」の両面から、「SCREEN Value」のさらなる向上を目指してまいります。
①基本戦略
a.事業成長戦略
・ポートフォリオ戦略:事業ポートフォリオ/製品ポートフォリオによるポートフォリオマネジメントの実施
・事業の成長戦略:業界でのプレゼンスを高め、企業価値向上を目指す
・イノベーションマネジメント:新技術・新製品の上市と100億円規模の新事業立ち上げ
・知的財産戦略:事業戦略・技術戦略に基づく知財ポートフォリオの構築
b.経営基盤強化戦略
・人財戦略:組織の活性化と個の成長を目指す
・財務戦略:事業成長を支える、リスク耐性のある財務基盤の構築
・情報戦略:情報セキュリティ強化、DX推進による生産性向上
・ファシリティ戦略:事業成長や研究開発を支えるファシリティの充実
c.共通戦略
・サステナビリティ戦略:バリューチェーン全体でのESG(環境・社会・企業統治)活動を展開
・ブランド戦略:グローバルブランドとしてのプレゼンス確立
3.財務/非財務目標
①財務目標
・売上高 |
: |
3カ年累計 1.8兆円以上 |
・営業利益率 |
: |
通算 19%以上 |
・ROIC |
: |
15%以上 |
・株主還元方針 |
: |
連結配当性向 30%以上 |
※成長投資の進捗度合いに応じて、機動的に自社株買いを実施
* 上記4項目の数値目標はオーガニック・グロースを前提としております。
②非財務目標
a.従業員エンゲージメントスコア* : 好意的回答率 70%以上
*「企業が目指す姿や方向性を、従業員が理解・共感し、その達成に向けて自発的に貢献しようという意識」についての従業員サーベイ
b.GHG(温室効果ガス)排出削減:
・事業活動によるGHG排出(Scope1&2) |
: |
70%以上削減(2019年3月期比) |
|
|
※排出総量 |
・販売製品によるGHG排出(Scope3) |
: |
48%以上削減(2019年3月期比) |
|
|
※売上総利益原単位 |
(4)セグメント別の取り組み
中期経営計画「Value Up Further 2026」(2025年3月期~2027年3月期)の目標達成に向けた、セグメント別の取り組みは次のとおりです。
(半導体製造装置事業:SPE)
①セグメント戦略
・洗浄装置マーケットシェアの向上
・生産キャパシティの拡大
・事業基盤の強化
②3カ年累計目標
売上高 |
1兆5,000億円以上 |
営業利益率 |
23~25% |
市場前提 |
WFE市場 年平均成長率+5.8%(2023年~2026年) |
(注)上記項目の数値目標はオーガニック・グロースを前提
当社を取り巻く事業環境としては、2023年の半導体前工程製造装置市場(WFE)はパソコン、スマートフォンを中心とした消費財の需要減速や、データセンター向け投資の減少を受け、マイナス成長となりました。一方、2024年は緩やかに成長する見通しであり、特に2024年後半よりDRAM投資の回復が牽引すると想定しております。ファウンドリーやロジックメーカーでは、最先端向けの量産投資が始まり、加えてレガシー(成熟)ノードへの投資も中国を中心に活発に行われることが見込まれております。
このような環境の中、自動化工場S³-3と2023年1月に稼働したS³-4に、2024年1月より新工場S³-5を連結し、生産開始から出荷まで従来に増して効率の良い生産フローを実現いたしました。
今後も、工程短縮や自動化による生産性の向上を推進するとともに、開発体制の拡充によるマーケットシェアの向上に取り組み、2025年3月期におきましても、過去最高の売上達成を目指してまいります。
(グラフィックアーツ機器事業:GA)
①セグメント戦略
・POD装置販売の拡大
・リカーリングビジネスの拡大
・パッケージ印刷ビジネスの確立
②3カ年累計目標
売上高 |
1,500億円以上 |
営業利益率 |
6~9% |
市場前提 |
デジタル印刷機市場 年平均成長率+3.3%(2023年~2026年) |
(注)上記項目の数値目標はオーガニック・グロースを前提
事業環境としては、米国を中心に多品種小ロットタイプのインクジェットデジタル印刷機であるPOD装置の需要が堅調であります。
このような環境下、PODを中核事業と置き、商業印刷およびパッケージ印刷へリソースの集中を図り、新製品をリリースするなど、POD装置の販売拡大に取り組んでおります。
今後も、POD装置群の拡充・拡販に注力するとともに、インク販売を中心とするリカーリングビジネスの一層の拡大により、安定的な利益を生み出してまいります。
(ディスプレー製造装置および成膜装置事業:FT)
①セグメント戦略
・ディスプレービジネスの収益性向上
・“塗工”技術強化と応用分野拡大
・製品製造の受託事業の拡大
②3カ年累計目標
売上高 |
1,000億円以上 |
営業利益率 |
3~5% |
市場前提 |
FPD製造装置市場 年平均成長率+21%(2023年~2026年) |
(注)上記項目の数値目標はオーガニック・グロースを前提
事業環境としては、ディスプレー需要が回復しつつあり、2025年3月期はLCD向け売上を中心に通期黒字化が達成できる見込みであります。また、足元では、OLED向けの受注が上向いており、2026年3月期の売上に貢献する見込みであります。
今後も、ディスプレービジネスの収益性向上に注力するとともに、塗工技術強化と応用分野拡大の取り組みを強化してまいります。
(プリント基板関連機器事業:PE)
①セグメント戦略
・直接描画露光装置の業界プレゼンス向上
・直接描画アプリケーションの拡大探索
②3カ年累計目標
売上高 |
500億円以上 |
営業利益率 |
12~15% |
市場前提 |
基板向け直接描画装置市場 年平均成長率+0.6%(2023年~2026年) |
(注)上記項目の数値目標はオーガニック・グロースを前提
事業環境としては、プリント基板関連機器の需要が停滞しており、パッケージ基板向けの投資回復は2025年3月期後半以降を見込んでおります。
このような環境下、パッケージ基板やモジュール基板などの高精度基板に対応する直接描画装置「Ledia 8F」や、高精細なパッケージ基板向け直接描画装置「Ledia Qs(キューズ)」をリリースし、直接描画装置の業界プレゼンス向上を目指しております。
今後も、直接描画アプリケーションの拡大探索による直接描画装置の拡販に注力するとともに、堅調なポストセールス売上を維持しつつ、安定的な収益性の確保に取り組んでまいります。
上記における将来数値は、当社が現在入手している情報および合理的であると判断する一定の前提に基づいており、その達成を当社として約束する趣旨のものではありません。また、実際の業績などは様々な要因により大きく異なる可能性があります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方および取組は、次のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであ
ります。
(1) サステナビリティ全般のガバナンスおよびリスク管理
2023年4月に経営大綱を改定し、マテリアリティの解決とSCREEN Value (企業価値)を高める戦略を掲げました。その中でESG分野において、これら戦略に資する活動を「サステナビリティ戦略」として活動を展開しております。
改定された経営大綱に基づき、新中期経営計画では、「サステナビリティ戦略」として、ESGの各分野において活動を展開し、社会の持続的な発展に貢献してまいります。
<ガバナンス>
SCREENグループは、ESG課題への取り組みについて実効性を持って進めるため、「グループリスク委員会」「CSR委員会」「グループEHS委員会」という3つのグループ委員会、および特定の課題や問題点について専門的に取り扱う傘下の分科会を通じて、中期経営計画を推進しております。グループ委員会には、対象となるSCREENグループ各社の責任者が参加し、情報共有と連携を図り、グループ横断的な取り組みを行っております。
<リスク管理>
SCREENグループの企業価値にマイナスの影響を及ぼす恐れのあるリスクを軽減するため、当社代表取締役 取締役社長を最高責任者とし、各グループ会社の社長等を各社のリスクマネジメント責任者とする全社横断的なリスクマネジメント体制としてグループリスク委員会を設置し、原則年2回開催しております。この委員会で議論されたリスク管理状況と必要な対策については、取締役会に報告しております。
リスク管理の詳細は、「
(2) 気候変動
当社グループは、気候変動・環境対応として、提供する技術・製品・サービスの開発・製造・販売など全ての事業活動および販売先での環境負荷を低減し持続的な社会の発展に貢献することを目指し、GHG排出削減の取り組みを進めております。また、GHG削減目標に関して「Science Based Targets イニシアチブ(SBTi)」より1.5℃水準に整合的な目標としての認定を得ております。2021年12月には「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」による提言への賛同を表明しました。TCFD 提言に準じた情報開示を積極的に進め、2050年のカーボンニュートラル社会の実現を見据えた気候変動への取り組みを一層推進していきます。
気候変動関連の情報開示に際し、当社グループでは外部専門家を交えたTCFDプロジェクトを立ち上げ、2024年3月期は、プリント基板関連機器事業を対象に、気候関連の移行リスク・物理リスクを評価し、重要なリスクの特定とシナリオ分析を実施しました。また、気候関連の事業機会についても特定しております。これにより、過去に実施した半導体製造装置事業、ディスプレー製造装置および成膜装置事業 、グラフィックアーツ機器事業と合わせて、当社グループの主要4事業における評価が一巡しました。引き続き、プロジェクト活動を通じて、ISSB(国際サステナビリティ基準審議会)基準などによる要請への対応を含め、気候関連情報の開示充実を進めていきます。
(https://www.screen.co.jp/sustainability/environment/tcfd)
<ガバナンス>
気候関連のリスクと機会については、当社代表取締役 取締役社長を最高責任者とする「グループリスク委員会」および「CSR委員会」で、リスク管理の方向性の策定や取り組みの進捗管理などを行っております。それぞれの委員会は半期に1回以上開催され、その場での決議内容は取締役会に報告されます。
2024年3月期、気候変動関連では「気候関連開示プロジェクト」や「事業活動における脱炭素戦略」などを、経営会議および取締役会に報告しました。
<戦略>
気候関連の移行リスク・物理リスクを評価し、重要なリスクを特定するにあたり、地球温暖化対策が進まない現状維持のシナリオである3℃シナリオと、地球温暖化対策が進む1.5℃シナリオを使用して、シナリオ分析を実施しました。気候関連の事業機会についても特定しております。
中核事業である半導体製造装置事業においては、気候変動への意識の高まりから、製品稼働に伴う消費電力やGHG排出量などに顧客の関心が集まっており、環境インパクトがより少ない半導体製造装置への要求が、今後ますます高まることが想定されます。また、特に地球温暖化対策が進む場合には、デジタル化社会とグリーン社会への投資ニーズから、関連する製品やサービスの需要が増加することが想定されます。
このような想定のもと、当社グループでは、事業所のGHG排出量の削減に加え、製品稼働時のGHG排出量削減に取り組んでおり、エネルギー消費、水および薬液消費量のより少ない半導体製造装置や、省エネ化に貢献する先端半導体の製造を実現する半導体製造装置のニーズに応えるべく、研究開発に注力しております。当社グループ単独での取り組みに加えて、環境対応開発を一層加速させるため、業界他社や業界団体とも協働しております。
<リスク管理>
バリューチェーンにおける気候関連のリスクと機会を網羅的に抽出しました。各々のリスクと機会について、影響の大きさと発生可能性のマトリックスで評価し、事業にとって重要な気候関連のリスクと機会を特定するとともに、各事業における評価を基に、当社グループにおける重要な気候関連のリスクと機会も特定しました。
重要と評価された気候関連のリスクと機会については、全社横断的なリスクマネジメント体制である「グループリスク委員会」でリスク管理を行い、取締役会による監督体制の下、当社グループにおける企業リスクの一つとして戦略に反映し対応します。
<指標及び目標>
当社グループは、GHG排出削減を行い、事業を通じて脱炭素社会の実現に貢献することが、気候関連リスクの低減と機会の増大につながると考えます。事業活動によるGHG排出量(Scope1+Scope2)に加え、特に排出量が大きく顧客の関心も高い、販売した製品の使用によるGHG排出量(Scope3 Cat.11)の削減に取り組んでおります。
当社グループのGHG排出量の削減目標と実績、および削減に向けた取り組みの詳細は、ウェブサイトを参照ください。
(https://www.screen.co.jp/sustainability/environment/climate_change)
(3)人的資本
企業理念のもと10年後のありたい姿とSCREEN Value(企業価値)を高めるための経営基本方針として「経営大綱」を定めており、10年後のありたい姿を実現する上で経営が取り組むべき重要課題(マテリアリティ)の解決に向けた経営基盤強化戦略の1つとして、人財戦略を定めました。また、SCREENグループでは、製品や技術開発などの事業を通じて社会課題の解決を図りながら、社会の持続的発展の一翼を担う企業体および人を目指しております。これを実現するため、中期経営計画「Value Up 2023」においては、「Sustainable Value(社会的価値)」と「経済的価値」の両輪から成る「SCREEN Value(企業価値)」の向上に努めてきました。デジタル化の進展・脱炭素化・働き方の変化・生産労働人口の減少などの環境変化に対応し、当社が「SCREEN Value(企業価値)」を発揮するためには、企業体・社員個人の双方が「ソリューションクリエーター」となることが必要です。経営戦略と連動した人事戦略を策定・実行していく中で、「ソリューションクリエーター」の形成を当社の重要施策と置き、人的資本の強化を進めていきます。
<戦略>
企業の持続的成長を支える人財戦略
持続的な企業の成長には、組織の活性化と個人の成長を図り、「挑戦する企業風土」を醸成することが重要と考えております。そのために、人財戦略では、経営戦略を実現するための人財ポートフォリオを、「獲得」「育成」「リテンション」の3つのサイクルで充足することを基本方針としております。
①人財ポートフォリオ
生産年齢人口の減少に加え、特に半導体業界全体での人材不足が予想される中、企業の中長期的な成長と価値向上には、多様な人財によるイノベーションの創出が不可欠です。2024年3月期には、経営戦略の実現に必要な人財の量と質のギャップを明らかにするため、人財ポートフォリオを策定いたしました。人財戦略の3つのサイクルにおける指針として活用していきます。
②獲得
SCREENグループでは、イノベーション創出のための多様性の確保の一つとして、女性の活躍を推進しております。
持株会社(提出会社)・事業会社・機能会社の7社における目標は以下の通りです。(7社:
2031年3月期に管理職に占める女性の割合を6%以上に、全社員に占める女性の割合を15%以上にすることを目指しております。新卒採用者に占める女性の割合を20%以上とすることを目標とし、グループの中核を担う女性の採用に注力していきます。2024年3月期は、女性技術者をターゲットにした座談会や女性向けの会社紹介パンフレットの発行を行い、新卒採用者に占める女性の割合が17.9%となりました。
また、高度専門人財*について、2024年3月期に各事業戦略の実現に必要なスキルを明確にしたディスクリプションを策定し、全社員に公開しております。新たに昨年度の3倍となる27名を任用し、人財ポートフォリオにおける量の充足および多様性の確保に向け、新たに価値創造を後押しする環境を整備しております。
*「高度専門人財」とは、特定領域を突き詰め専門能力で会社に貢献する人財を指します。
③育成
企業体の価値を向上させるには、企業体・個人の双方が成長と挑戦をし続けることにより、組織(「企業体」)の活性・利益の創出と、「個人」の成長・成果の創出という、有機的循環を生み出すことが必要と考えております。そのためにソリューションクリエーターレベルを指標に「個人」の成長に取り組んでおります。
「個人」の成長・成果の創出
企業理念浸透活動を通して、社員一人ひとりがソリューションクリエーターを目指すことへの理解・共感を得ることができました。SCREENグループでは、理解・共感から、日々の「行動」が変化し、成果に結びつけることが重要と考え、ソリューションクリエーターに求められる行動基準を策定しました。社員参加型の車座を実施し、策定プロセスからSCREENグループが大切にしたい行動を意識させる取り組みを行いました。
また、ソリューションクリエーターレベルを設定し、社長メッセージとして発信するなど、社員一人ひとりの行動につなげる基盤づくりに取り組んでおります。
ソリューションクリエーターレベルを向上させるための成長支援として、策定された行動基準をもとに、研修内容の見直しおよび拡充を実施しております。クリティカルシンキングやビジネス定量分析研修などソリューションクリエーターに必要な研修を新設する他、ソリューションクリエーターレベルをあげるため、各人のレベルに合わせた研修提案を行い、社員一人ひとりが自律的に能力開発できる環境を整備しております。
ソリューションクリエーターレベル
④リテンション
ソリューションクリエーターとして社会課題を解決するには、個人への成長支援だけでなく、組織の活性化を図り、多様な価値観を持った社員一人ひとりが同じベクトルを向き、やりがいを持って働くことが重要と考えております。エンゲージメントサーベイを通じて、社員の声から経営課題を特定し、各種施策につなぐ活動を行い、エンゲージメントの向上、ひいては人財のリテンションにつなげます。
組織の活性化
エンゲージメントサーベイから特定された課題が、経営課題であることの共通認識を持つため、各社経営陣を集め、サーベイ結果の読み解きワークショップを開催しました。また、社員一人ひとりが持つ多様で多彩な個性や能力を、年齢にかかわらず最大限発揮できる環境を整備するには、経営層だけでなく、現場を統括する管理職が常に企業理念・CSVを意識したマネジメントを実施することが重要と考え、管理職に対してもワークショップを開催し、自組織の課題を特定しております。その他、企業理念・CSVと自組織目標を連動させ、組織全体が瞬時に判断しながら動く球体のようなマネジメントを行うためのマネジメント研修など、部下の成長支援と組織成果の最大化を実現できる開発支援を行っております。
⑤国内・海外グループへの展開
2025年3月期には、国内・海外グループ会社においても企業理念浸透活動を実施し、経営陣と社員との対話を行います。多様性確保の一環として進める女性活躍の推進については、国内グループ会社における年度目標を設定し、各社の状況に応じた育成支援を行う等、グループをあげて推進を強化していきます。また、グローバルでの課題発見のため、まずはエンゲージメントサーベイの対象を国内グループまで拡大し、課題発見のみならず解決に向けた取り組みを整備していきます。
<人財育成に関する指標>
教育・研修費用および受講実績
項目 |
2022年3月期 実績 |
2023年3月期 実績 |
2024年3月期 実績 |
|
1.6億円 |
2.5億円 |
|
|
75,000円 |
115,000円 |
|
|
- |
- |
|
※1 持株会社(提出会社)・事業会社・機能会社の7社の合計を記載しております。
事業会社:
株式会社SCREENセミコンダクターソリューションズ
株式会社SCREENグラフィックソリューションズ
株式会社SCREENファインテックソリューションズ
株式会社SCREEN PE ソリューションズ
株式会社SCREENアドバンストシステムソリューションズ
機能会社:
株式会社SCREEN IP ソリューションズ
※2 国内連結子会社(17社)の合計を記載しております。なお、国内連結子会社については2024年3月期から集計を開始いたしました。
※3 今後エンゲージメントに関する指標を目標化し、施策を進める予定です。
※4 2031年3月期には7社の管理職に占める女性の割合6%を目指し、女性の管理職登用を推進していきます。管理職に占める女性労働者の割合の実績については、「
※5 集計範囲の見直し(「海外赴任に伴う語学学習補助」などを追加集計)に伴い、2022年3月期及び2023年度3月期の数値を変更しております。
<人財戦略に関する目標>
持株会社(提出会社)・事業会社・機能会社の7社における目標
項目 |
指標 |
実績(2024年3月期) |
目標 |
|
エンゲージメント サーベイ |
|
好意的回答
|
好意的回答
|
|
人財ポートフォリオ |
|
|
|
|
ソリューションクリエーターレベル2以上 (質の充足率※1) |
|
|
||
多様性の確保 |
性別 |
|
|
|
|
|
|
||
|
|
|
||
高度専門人財 |
|
|
|
※1 事業が求める職種別人数に対する実人員数
※2
※3
当社グループでは、「SCREENグループリスクマネジメント要綱」および関連規定にもとづいて、ビジネスリスクの洗い出しとその軽減に向けた取り組みを行うとともに、持株会社(HD)がグループ全体のリスクマネジメント状況を把握する仕組みを運用しております。
<リスクマネジメント推進体制>
SCREENグループの企業価値にマイナスの影響を及ぼす恐れのあるリスクを軽減するため、当社代表取締役 取締役社長を最高責任者とし、各グループ会社の社長等を各社のリスクマネジメント責任者とする全社横断的なリスクマネジメント体制を確立しております。
その中核に「グループリスク委員会」をおき、リスクマネジメントの運営および方針を策定し、企業価値毀損の未然防止•最小化の視点から、グループ全体に内在するリスクとその状態を把握しております。また、年度ごとの経営環境の変化に応じたグループ重要リスクの特定により、リスク管理の方向性を定め、顕在化の予防に取り組んでおります。
なお、グループ重要リスクは、グループリスクリストをもとに、委員会での協議により重要と考えられるリスクを当期のグループ重要リスクとして選定し、HDの取締役会の決議を得て決定しております。さらに、3つのディフェンスライン*の考え方で、個々のリスク管理の担当と役割を定め、現場と経営層がリスク情報を共有するガバナンス体制を構築しております。
(*第1ディフェンスライン:事業会社系グループ会社等、第2ディフェンスライン:HD管理部門・機能会社、第3ディフェンスライン:内部監査部門)
<事業等のリスク>
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社グループの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。ただし、これらは当社グループに関するすべてのリスクを網羅したものではありません。
なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)外部要因に関するリスク
①政治状況に関するリスク
当社グループは、現時点では米中貿易摩擦による業績への影響は大きくないものの、今後米中間の関係悪化が更に進み、輸出入に関する諸規制の強化等により、中国への製品の出荷が制約を受ける場合には、当社グループの売上減少により利益等に悪影響をもたらす可能性があります。
また、ロシア・ウクライナ情勢や中東情勢に起因した地政学リスクの高まりや長期化による世界的な景気の後退、およびそれに伴う需要の縮小が生じた場合には、当社グループによる当該地域向けの取引は僅少なものの、間接的な影響による当社グループの売上減少により利益等に悪影響をもたらす可能性があります。
②為替・金利変動に関するリスク
当社グループは、海外売上高比率が高いため、輸出売上については為替リスクを回避するために積極的に円建て取引を行っておりますが、外貨建てによる取引も存在しております。当社グループは為替予約などによりリスクヘッジを行うことで、為替変動による業績への影響を小さくするよう努力しておりますが、急激な為替変動が起こった場合には、当社グループの利益等に悪影響をもたらす可能性があります。
また、当連結会計年度末における有利子負債残高はすべて金利を固定しており、金利変動リスクに晒されておりませんが、新たな調達資金については、金利変動の影響を受け、当社グループの利益等に悪影響をもたらす可能性があります。
(2)業界動向に関するリスク
①半導体・ディスプレー市場の動向に関するリスク
半導体・ディスプレー市場は、急速な技術革新により大幅に成長する反面、需給バランスの悪化から市況が低迷するという好不況の波に晒されてきました。このような市場環境の中、当社グループは市況の下降局面においても確実に利益を生み出せるよう、ROIC経営を推進しており、その中で損益分岐点売上高比率の改善に取り組んでいますが、予想を上回って市況が悪化した場合には、当社グループの売上減少により利益等に悪影響をもたらす可能性があります。
②技術・製品に関するリスク
当社グループは、各事業戦略に沿った開発テーマの絞り込みや保有技術のグループ内での共有化、外部の技術資源の効率的活用などにより、開発力の強化・活性化に取り組んでおり、最新の技術を取り入れた製品をタイムリーに市場投入しシェアの拡大を図ることで収益体制の強化を目指しております。しかしながら、開発期間が長期化することにより新製品のリリースに遅れが生じた場合には、当社グループの売上減少により利益等に悪影響をもたらす可能性があります。
③特定顧客への取引集中に関するリスク
当社グループは、国内外の主要な半導体メーカーに製造装置を納入しておりますが、この業界では生産能力増強ならびに微細化対応に巨額の投資を必要とすることから一部の大手メーカーへの集約が進んできており、当社グループの売上も特定の顧客に集中する傾向にあります。したがって、これら特定顧客の設備投資動向や特定顧客からの受注動向によっては、当社グループの売上が減少し利益等に悪影響をもたらす可能性があります。
当社グループでは、次世代デバイスの生産プロセス確立に寄与する競争優位性のある装置を開発・製造し、進化を続ける半導体業界に最適なソリューションを提供し続けることを目指してまいります。
④サプライチェーンに関するリスク
当社グループは、大規模災害やサプライチェーンの障害事例から、国内・海外の生産拠点、部品の調達先を統括した生産補完体制を確立し、事業が大きなダメージを受けないためのシステム構築を推進しております。一方で、サプライヤーからの主要部材の調達等において、需給が逼迫し、適時に供給が得られなくなった場合や、部材、製造委託先の確保に障害が発生した場合には、当社グループの生産活動の中断や材料費の高騰などにより、当社グループの売上、利益等に悪影響をもたらす可能性があります。
(3)公正な取引順守に関するリスク
当社グループは、企業理念に基づく行動原則、グループの全役員・従業員が心掛けるべき行動規範を定めた「SCREENグループCSR憲章・行動規範」の下、各国の法令や社会規範を順守し、公明正大に良識ある企業活動を展開しています。また、コンプライアンス担当役員を任命し、全グループのコンプライアンス意識の向上や浸透に取り組むとともに、法務・知的財産室およびコンプライアンス室が中心となり、国際的なルールや各国法令・規則の順守の推進、そのための各種教育に取り組んでいます。しかしながら、当社グループの事業活動に関連し、法令等への違反や訴訟、権利侵害に伴う知財紛争等が発生した場合には、当社グループの利益等に悪影響をもたらす可能性があります。
(4)事業継続に関するリスク
①大規模自然災害・パンデミック等に関するリスク
当社グループの国内生産拠点は京滋地区に集中しており、この地区において大規模な地震等の自然災害が発生した場合、生産設備等に大きな損害を受ける可能性があります。また、感染症によるパンデミックの発生により、営業・生産・調達・物流等の事業活動に悪影響を与える可能性があります。当社グループでは耐震補強等、災害発生時の損失を最小限にとどめる対策を講じるとともに、事業の継続または早期再開を図るため、ISO22301に基づく事業継続マネジメントシステム(BCMS)を推進しておりますが、災害等により生産拠点の操業が停止するなどの不測の事態が生じた場合、当社グループの事業継続に悪影響をもたらす可能性があります。
②資金調達に関するリスク
当社グループの借入金に係る契約のうち一部の契約には、各年度の末日の連結純資産および各年度の連結経常損益に関する財務制限条項が付されております。これに抵触し、借入先金融機関の請求があった場合、当該借入金について期限の利益を喪失する可能性があります。この場合、当社グループの社債およびその他の借入金についても連動して期限の利益を喪失する可能性があります。当社グループが借入金等について期限の利益を喪失し、一括返済の義務を負った場合には、当社グループの事業継続に悪影響をもたらす可能性があります。なお、現在、財務制限条項が付されている契約に基づく借入金の残高はありません。
③情報セキュリティに関するリスク
当社グループは、事業遂行に関連して、多数の個人情報や顧客情報、技術情報を有しております。当社グループでは、「SCREENグループIT管理規定」を定め、社内情報システムのセキュリティ強化を図るとともに、グループの全役員・従業員が心がけるべき行動規範を定めた「SCREENグループCSR憲章・行動規範」を制定するとともに、営業秘密管理規定を整備し、情報管理体制を強化しております。しかしながら、昨今の頻発・巧妙化・高度化するサイバー攻撃を当社およびサプライチェーンが受けた際には、予期せぬ被害によって情報流出や関連する情報システムに大規模な障害等の発生と影響が想定されます。この場合、社会的信用の低下や長期の事業停止等により、当社グループの事業継続にも悪影響をもたらす可能性があります。
(5)製品の品質と安全に関するリスク
当社グループでは、品質マネジメントシステムの規格(ISO9001)に基づく品質管理体制を構築し、製品・サービスの品質および安全性の向上に取り組んでいますが、万一、大規模なリコールや製造物賠償責任につながるような製品の欠陥が発生し顧客に損失をもたらした場合、多額の追加費用の発生や信頼低下により、当社グループの売上、利益等に悪影響をもたらす可能性があります。
(6)人材に関するリスク
企業の中長期的な成長と価値向上には、多様な人材によるイノベーションの創出が不可欠です。当社グループでは、社員が目指すべき姿を自律型人材「ソリューションクリエーター」と定義し、ソリューションクリエーターの獲得・育成・リテンションを軸とした取り組みを推進しております。中でも、各事業戦略に応じた人員数の拡充を図るとともに、高度専門人材、女性、外国人などの多様性の確保、次世代の経営人材の育成に努めております。一方で、優秀な人材の確保における競争は激しく、必要な人材を継続的に採用・維持できない場合や、後継者育成計画が滞り、ソリューションクリエーターの資質を持つ人材が不足した場合、当社グループの事業、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(7)環境負荷低減・気候変動への対応に関するリスク
当社グループは、低環境負荷製品へのニーズの高まりや国際的な化学物質規制、環境関連規制の強化などを受け、地球環境に配慮した製品を提供するために、「製品によるGHG排出抑制の貢献」「環境適合認定製品の拡大」「法規制への対応」に取り組んでおります。また、気候変動対応に関しては、「Science Based Targets (SBT)イニシアチブ」の認定を取得し、気温上昇を1.5℃以下に抑制するペースでGHG排出量の削減に取り組むとともに、TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)提言へ賛同し、積極的な情報開示に努めております。事業活動を通して地球環境への負荷を軽減し、脱炭素社会・循環型社会・自然共生社会の構築と持続的な発展に貢献すべく、2050年のカーボンニュートラル実現を目指して活動を推進しております。しかしながら、取り組みに遅れが生じ、製品が環境規制等に対応できない場合、当社グループの売上、利益等に悪影響をもたらす可能性があります。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における世界経済は、地政学リスクの高まりなど不透明な状況が続いたものの、米国を中心に緩やかな回復が見られました。一方、物価上昇やインフレ圧力の高まりに伴う世界的な金融引き締めの影響、中国における不動産市場の停滞に伴う影響などから、欧州や中国など一部の地域において景気回復に足踏みが見られました。
当社グループを取り巻く事業環境は、エレクトロニクス業界では、リモート需要の恩恵を受けてきたパソコン、スマ―トフォンなどの消費財の需要縮小に伴い、メモリーメーカーなどでは投資抑制が続いたものの、脱炭素化への取り組み、生成AIの活用拡大、DXの進展等により微細化やパワー半導体、実装技術分野への投資は底堅く推移しました。また、米中貿易摩擦などを背景とした世界のブロック経済化の影響により、半導体が戦略物資と認識され、各地域でサプライチェーンの再構築に向けた動きが見られました。中国では成熟ノード向けに活発な投資が行われたほか、米国や国内においても大型のプロジェクトが実施されました。一方、ディスプレーメーカーにおいては、TV用パネル需給好転の動きが見られるものの、厳しい状況が続きました。
このような状況の中、当連結会計年度の財政状態および経営成績は次のとおりとなりました。
a. 財政状態
当連結会計年度末の資産合計は、棚卸資産、有価証券(譲渡性預金)が増加したことに加え、生産能力増強に向け新工場建設等、有形固定資産を取得したことなどから、前連結会計年度末に比べ、1,139億9千2百万円(20.3%)増加し6,768億8百万円となりました。
負債合計は、仕入債務が減少したほか、転換社債型新株予約権付社債が転換により減少した一方、契約負債が増加したことなどにより、前連結会計年度末に比べ、420億7百万円(16.0%)増加し3,048億9千7百万円となりました。
純資産合計は、配当金の支払いの一方で、親会社株主に帰属する当期純利益の計上のほか、転換社債型新株予約権付社債の転換による資本剰余金の増加および自己株式の減少などにより、前連結会計年度末に比べ、719億8千4百万円(24.0%)増加し3,719億1千1百万円となりました。
以上の結果、当連結会計年度末の自己資本比率は、54.9%となりました。
b. 経営成績
当連結会計年度における当社グループの業績につきましては、売上高は5,049億1千6百万円と前期に比べ、440億8千2百万円(9.6%)増加しました。利益面につきましては、固定費の増加の一方で、売上の増加や採算性の改善などにより、前期に比べ、営業利益は177億1千2百万円(23.2%)増加の941億6千4百万円となりました。また、経常利益は168億8千5百万円(21.8%)増加の942億7千9百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は130億8千8百万円(22.8%)増加の705億7千9百万円となりました。
セグメント別の経営成績は、次のとおりであります。
(半導体製造装置事業:SPE)
半導体製造装置事業では、前期に比べ、メモリー向けの売上は減少したものの、ファウンドリー向けが増加しました。地域別では、台湾や欧州向けの売上は減少しましたが、中国や北米向けの売上が増加しました。その結果、当セグメントの売上高は4,176億7千7百万円(前期比12.6%増)となりました。営業利益は、固定費の増加の一方で、売上の増加や採算性の改善などにより、970億4千8百万円(前期比26.1%増)となりました。
(グラフィックアーツ機器事業:GA)
グラフィックアーツ機器事業では、装置売上やインクを中心とするリカーリングビジネスの売上が円安の効果もあり増加したことから、当セグメントの売上高は、477億3千9百万円(前期比4.7%増)となりました。営業利益は、売上の増加などにより、42億9千5百万円(前期比26.4%増)となりました。
(ディスプレー製造装置および成膜装置事業:FT)
ディスプレー製造装置および成膜装置事業では、顧客の設備投資低迷を受けディスプレー製造装置の売上が減少したことから、当セグメントの売上高は232億4千7百万円(前期比11.2%減)となりました。利益面では、固定費の抑制に努めたものの、売上の減少などにより、4億2千5百万円の営業損失(前期は18億4千万円の営業損失)となりました。
(プリント基板関連機器事業:PE)
プリント基板関連機器事業では、円安の効果はあったものの直接描画装置の売上が減少したことから、当セグメントの売上高は146億7千2百万円(前期比12.8%減)となりました。営業利益は、売上の減少や固定費の増加などにより、18億6千1百万円(前期比44.6%減)となりました。
(その他事業)
その他事業の外部顧客への売上高は27億6千8百万円となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、現金及び現金同等物に係る換算差額を含め、前連結会計年度末に比べ217億6千2百万円増加し1,954億2千3百万円となりました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益、契約負債の増加などの収入項目が、棚卸資産の増加、法人税等の支払い、仕入債務の減少などの支出項目を上回ったことから、962億5千5百万円の収入(前期は739億6百万円の収入)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、新工場建設に伴う支払いや研究開発設備等の有形固定資産を取得したことなどにより、434億5千6百万円の支出(前期は125億1千4百万円の支出)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払いや長期借入金の返済などにより、351億4千2百万円の支出(前期は209億6千1百万円の支出)となりました。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
生産実績は、販売実績と傾向が類似しているため、記載を省略しております。
b.受注実績
受注実績は、短期での変動が大きく、中長期の市場動向や当社グループの事業の状況を表すための指標として適切ではないため記載しておりません。
c.販売実績
販売実績は、「①財政状態及び経営成績の状況」におけるセグメント別の経営成績に関連付けて説明しております。
なお、主な相手先別の販売実績および当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
前連結会計年度(自 2022年4月1日 至 2023年3月31日)
相手先 |
金額(百万円) |
割合(%) |
Taiwan Semiconductor Manufacturing Company, Ltd. |
100,786 |
21.9 |
当連結会計年度(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)
相手先 |
金額(百万円) |
割合(%) |
SiEn (QingDao) Integrated Circuits Co.,Ltd. |
52,064 |
10.3 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
a. 経営成績
(売上高)
当連結会計年度における当社グループの売上高は、主に半導体製造装置事業(SPE)の伸長により、前連結会計年度に比べ、440億8千2百万円(9.6%)増加の5,049億1千6百万円となりました。
(営業利益)
成長に向け研究開発費や人件費など固定費が増加したものの、売上の増加、採算性の改善などにより、営業利益は前連結会計年度に比べ、177億1千2百万円(23.2%)増加の941億6千4百万円となりました。
(経常利益)
営業外損益は、営業外収益において固定資産売却益や受取利息が増加したものの、営業外費用において為替差損や持分法による投資損失が増加したことなどにより、前連結会計年度に比べ8億2千6百万円悪化しました。
以上の結果、経常利益は168億8千5百万円(21.8%)増加の942億7千9百万円となりました。
(税金等調整前当期純利益)
特別損益は、特別損失において減損損失が減少したものの、特別利益において関係会社株式売却益が減少したことなどにより、前連結会計年度に比べ12億4千3百万円悪化しました。
以上の結果、税金等調整前当期純利益は156億4千2百万円(19.9%)増加の941億5千8百万円となりました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
法人税等合計は、税金等調整前当期純利益が増加したことなどから、前連結会計年度より25億1千5百万円増加し、235億7千4百万円となりました。
以上の結果、親会社株主に帰属する当期純利益は、130億8千8百万円(22.8%)増加の705億7千9百万円となりました。
セグメント別の経営成績の状況に関する認識および分析・検討内容については、「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」および「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4)セグメント別の取り組み」に記載のとおりであります。
b. 財政状態
財政状態の分析は「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
c. 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、2021年3月期~2024年3月期におきまして、中期経営計画「Value Up 2023」に取り組みました。また、2025年3月期~2027年3月期におきまして、新中期経営計画「Value Up Further 2026」に取り組んでおります。なお、中期経営計画の進捗状況および指標の達成状況ならびに新中期経営計画の指標につきましては、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)経営方針、経営環境及び対処すべき課題」に記載のとおりであります。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況は「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当連結会計年度の所要資金は、自己資金で賄いました。なお、将来の資金安定確保を目的として、総額600億円のコミットメントライン契約を複数の金融機関との間で締結しております。
主な資金使途としまして、設備投資計画につきましては「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画」、配当政策につきましては「第4 提出会社の状況 3 配当政策」に記載のとおりであります。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成において採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。
また、連結財務諸表の作成にあたって、会計上の見積りを必要とする項目については、過去の実績や当該事象の状況を勘案して、合理的と考えられる方法に基づき見積りおよび判断をしております。ただし、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果は異なる場合があります。
連結財務諸表の作成に当たって用いた重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、翌連結会計年度の連結財務諸表に重要な影響を及ぼすリスクがあるものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
その他の重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定は以下のとおりであります。
a. 固定資産の減損について
減損会計の適用にあたり、当社グループは原則、各社を1グループ単位としてグルーピングを行っております。また、賃貸用資産および遊休資産については、個別物件単位でグルーピングを行っております。各資産グループの回収可能価額は、将来キャッシュ・フロー、割引率、正味売却価額などの前提条件に基づいて測定しておりますが、今後の地価の動向や事業の将来の業績によっては、翌年度以降に減損損失が発生する可能性があります。
b. 退職給付債務について
当社グループの退職給付費用および債務は、割引率など数理計算上で設定される前提条件や年金資産の期待運用収益率に基づいて算出されております。この前提条件や年金資産の長期期待運用収益率が実際の結果と異なる場合、または変更された場合、翌年度以降において認識する退職給付費用および債務に重要な影響を及ぼす可能性があります。
なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
該当事項はありません。
当社グループでは、株式会社SCREENホールディングスとグループ会社が密接に連携し、表面処理技術、直接描画技術、画像処理技術のコア技術を融合・展開させることで、基礎研究から商品開発に至るまで積極的な研究開発活動に取り組んでおります。
当連結会計年度は、半導体製造装置事業を中心とした既存事業の拡大・強化に向けた開発投資を行うとともに、エネルギー、ライフサイエンス、AI等の各分野においても研究開発活動を積極的に推進し、270億2千5百万円の研究開発費を投入いたしました。
なお、当社グループの主な研究開発成果は次のとおりであります。
半導体製造装置事業では、高生産性と省フットプリントの両立を実現した、次世代パワーデバイス向けコーターデベロッパー「RF-200EX」、「RF-300EX」を開発いたしました。その他、先端デバイス分野やIoT関連分野においても、洗浄、乾燥、塗布、熱処理をはじめとした各領域で顧客に更なる付加価値を提供すべく、技術開発を進めております。また、環境負荷低減への取り組みとして、これまで進めてきたCO2排出量の可視化に加え、水管理の可視化を実現する「水管理アプリケーション(WMA)」を導入するなど、サステナブルな社会の実現に向けた技術開発を加速しています。海外研究機関との共同研究につきましては、それぞれの分野で最先端プロセスに関連した研究を継続しています。
グラフィックアーツ機器事業では、インクジェット印刷技術を発展させ、商業印刷・DM印刷・出版印刷市場向けに、用紙幅560mmに対応した高速連帳デジタルインクジェット印刷機「Truepress JET 560HDX」を開発いたしました。パッケージ印刷向けには、軟包装インクジェット印刷機「Truepress PAC 830F」および紙包装インクジェット印刷機「Truepress PAC 520P」の開発を完了し、製品出荷の準備を進めております。インクジェット印刷機の累積出荷台数は2,000台を超え、印刷工程の変革による環境負荷低減に貢献しています。
ディスプレー製造装置および成膜装置事業では、塗布、成膜、乾燥などの技術を活用し、5G/ポスト5G関連や、IoTインフラ、データセンターを中心に拡大が続くFOPLP基板やガラスコア・サブストレートに対応した、半導体パッケージ専用の塗布乾燥装置「Lemotia(レモーティア)」を開発いたしました。
プリント基板関連機器事業では、5G通信関連やIoTインフラ、生成AIなどを中心に、需要が急速に拡大しているパッケージ基板やモジュール基板などの高精度基板に対応する、直接描画装置「Ledia 8F」を開発いたしました。
上記セグメント以外では、基礎研究や新規事業領域の研究開発を継続しています。ライフサイエンス分野では、産学連携の取り組みとして、京都大学や京ダイアグノスティクス株式会社と革新的な「がん個別化医療」の実現に向けた共同研究を行い、患者さまの細胞を用いて体外で高精度に治療効果を予測する個別化医療システムの研究開発を実施しております。また、総務省の外部委託研究である「衛星光通信用次世代補償光学デバイスの研究開発」に採択され、衛星光通信の障害となる大気ゆらぎを補正するための補償光学デバイス技術を開発しております。
当連結会計年度におけるセグメントごとの研究開発費は次のとおりであります。
セグメントの名称 |
金額(百万円) |
SPE |
|
GA |
|
FT |
|
PE |
|
上記セグメント以外 |
7,382 |
合計 |
|