当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営環境
当社グループを取り巻く環境としましては、各地域において新型コロナウイルス感染症による行動制限等が緩和され社会経済活動が活性化する一方で、社会情勢の変化、原材料価格や燃料価格の上昇、為替の変動による影響等によって、先行きについては不透明な状況が継続すると予想されます。また、当社グループが事業展開する市場においても、市場環境、エンターテインメントに対する人々の価値観の変化がさらに激しくなることが想定されます。さらに、技術の進化や新たなプラットフォーム等の登場により、エンターテインメントに関する選択肢が多様化し、顧客の嗜好やライフスタイルの変化のスピードがますます速くなるとともに、グローバル市場における競争が激化することが予想されます。
(2)経営戦略等
当社グループは、2022年4月よりグループの最上位概念となる「パーパス“Fun for All into the Future”」と新ロゴマークの導入を行うとともに、3カ年の中期計画を推進しております。中期計画においては、「パーパス“Fun for All into the Future”」のもと、バンダイナムコグループが目指す姿に向け、世界中のIPファン、あらゆるパートナー、グループ従業員、そして社会と常に向き合い、広く、深く、複雑につながる存在を目指し「Connect with Fans」を中期ビジョンに掲げ、重点戦略として「IP軸戦略」「人材戦略」「サステナビリティ」を推進しています。重点戦略の推進を通じ、IP(Intellectual Property:キャラクター等の知的財産)の世界観や特性を活かし、最適なタイミングで、最適な商品・サービスとして提供することでIP価値の最大化をはかる「IP軸戦略」をさらに進化させていきます。また、「IP軸戦略」のグローバル展開を強化し、ALL BANDAI NAMCOでの一体感と総合力を高め、持続的な成長を目指してまいります。これらの取組みにより、当社グループの企業価値をさらに高めてまいります。
①「パーパス“Fun for All into the Future”」の制定と新ロゴマークの導入について
2022年4月より、“社会における存在意義”や“なぜその事業や企業活動を行うのか”“私たちがバンダイナムコで働く意味”を表す「パーパス“Fun for All into the Future”」を制定しグループの最上位概念とすることとしました。「パーパス“Fun for All into the Future”」の中で特に重要な要素が“つながる”“ともに創る”で、バンダイナムコとファンが「夢・遊び・感動」を通してつながることで“Fun for All into the Future”を実践していきます。さらに、グループCEOによる“Fun for All into the Future”の実践に向けた想いを「笑顔と幸せあふれる未来をともに創る」という言葉にこめ、パーパスとともに発信していきます。
<Bandai Namco’s Purpose>
2022年4月より、「パーパス“Fun for All into the Future”」にこめた思いを表現した新ロゴマークを導入しました。社名にバンダイナムコを冠する会社は全てこのロゴマークを使用するほか、バンダイナムコを社名に冠する、冠さないにかかわらず、原則的に全ての商品・サービスに新ロゴマークを表記しています。これにより、商品・サービスやレーベルが持つ価値を新ロゴマークに集積するとともに、グループの一体感と総合力を強く訴求し、グローバル市場におけるブランド価値の向上を目指します。
<ロゴマーク>
②「パーパス“Fun for All into the Future”」のもと目指す姿
「パーパス“Fun for All into the Future”」のもと、バンダイナムコグループが目指す姿は、世界中のIPファン、あらゆるパートナー、グループ従業員、そして社会とつながる姿です。新規のファンとはより「広く」つながり、既存のファンとはより「深く」つながります。そして、既存ファンと新規ファン、ファンから生まれたコミュニティ同士が「複雑に」つながり合うというファンとのつながりを目指します。様々なファンと、ファン同士がつながるにあたり、1番重視することは、どのようにつながるかというつながり方の質です。中期計画においても、ファンと広く、深く、複雑につながること、つながり方の質を重視した様々な戦略や取組みを推進します。
③中期ビジョン
「パーパス“Fun for All into the Future”」のもとバンダイナムコグループが目指す姿に向け、中期計画では、世界中のIPファン、あらゆるパートナー、グループ従業員、そして社会と常に向き合い、広く、深く、複雑につながる存在を目指します。
④重点戦略と投資計画
IP軸戦略
バンダイナムコグループでは、中期計画においてもグループ最大の強みであるIP軸戦略を核とします。世界中のファンとより広く、深く、複雑につながるための新たな取組み、IP軸戦略の進化、世界の各地域でALL BANDAI NAMCOで一体となり事業構築に取り組むことで持続的な成長を目指します。
・IP×Fan(IPでファンとつながる) ファンとつながるための新しい仕組み
バンダイナムコがIPを軸に、ファンに寄り添う新しい仕組みとして「IPメタバース」を開発します。この「IPメタバース」は、仮想空間の中で、IPを軸に幅広いエンターテインメントを楽しむことができるほか、フィジカルな商品や場とデジタルが融合するバンダイナムコならではの仕組みを想定しており、ファンやパートナーがつながるための場を提供するオープンなものを目指しています。「IPメタバース」によって、バンダイナムコとファンが、さらにはファン同士がコミュニティやコンテンツを通じて長期にわたって広く、深く、複雑につながる関係を構築し、つながり方の質を追求します。これにより中長期的にIP価値の最大化に取り組みます。
・IP×Value(IPの価値を磨く) IP軸戦略の進化
幅広い商品・サービスの出口、フィジカルとデジタルの双方で連携できる強みを生かし、IPファンやIPそのものにとって最適なIP軸戦略とは何かの再定義を行い、IP軸戦略の進化を目指します。
・IP×World(IPで世界とつながる) ALL BANDAI NAMCOでの事業構築
世界の各地域においてALL BANDAI NAMCOで一体となり戦略を推進するため、組織再編や各事業の拠点集約等を行いました。このALL BANDAI NAMCO体制のもと、各地域において事業の構築に取り組みます。
・IP軸戦略の進化に向けた投資計画
中期計画の3年間でIP軸戦略の進化に向けた戦略投資として合計400億円の投資を行います。
IP価値最大化に向けた戦略投資 250億円
「IPメタバース」開発に向けた投資 150億円
人材戦略 多様な人材の育成
バンダイナムコグループは、「パーパス“Fun for All into the Future”」のもと、様々な才能、個性、価値観を持つ多様な人材が生き生きと活躍することができる「同魂異才」の企業集団でありたいと考えます。新卒・キャリア、性別、年齢、国籍、人種、宗教や性的指向等にこだわらず人材の確保・登用を行うとともに、多様な人材が活躍することができ、心身ともに健康に働くことができる様々な制度や環境の整備にさらに注力します。中期計画においても、従業員のチャレンジを支援する取組み、グローバルでIP軸戦略を推進する人材を育成する取組み等を推進するとともに、多様な働き方や新たな働き方への対応を推進します。また、外部人材との連携や協業も積極的に行ってまいります。
サステナビリティ 笑顔を未来へつなぐ
バンダイナムコグループは、「パーパス“Fun for All into the Future”」及び「バンダイナムコグループサステナビリティ方針」のもと、特に重点的に取り組む必要がある5つのテーマをマテリアリティとして特定し、再生可能エネルギー由来の電力の導入や脱石油由来プラスチックに向けた取組み、またプラモデルのランナー※や空カプセルの回収及びリサイクルの推進といった、事業と連携した様々な具体的なアクションプランを推進しています。さらには、社会が直面している自然環境の問題に対応すべく、エネルギー由来のCO2排出量削減目標とステップの設定を行い、脱炭素に向けた取組みを進めます。
※ランナー…プラモデルの枠の部分
<バンダイナムコグループサステナビリティ方針>
バンダイナムコグループは、IP軸戦略のもと、ファンとともに、バンダイナムコグループが向き合うべき社会的課題に対応したサステナブル活動を推進します。
<特定したバンダイナムコグループのマテリアリティ>
- 地球環境との共生 - 適正な商品・サービスの提供 - 知的財産の適切な活用と保護
- 尊重しあえる職場環境の実現 - コミュニティとの共生
また、2023年11月1日には、バンダイナムコグループの人権尊重に関する方針を明文化した「バンダイナムコグループ人権方針」を制定しました。今後も「パーパス“Fun for All into the Future”」がしめす姿である、エンターテインメントが生み出す心の豊かさで、人と人、人と社会、人と世界がつながる未来を、世界中のすべての人とともに創り続けることを目指し、グループの事業活動に関わるすべてのステークホルダーの人権を尊重する責任を果たしてまいります。
⑤中期計画を推進する体制
・バンダイナムコホールディングスにおけるガバナンス体制強化
バンダイナムコホールディングスは、コーポレート・ガバナンス体制の強化をはかるとともに、スピーディな意思決定と業務執行を行うことで、企業価値のさらなる向上に取り組むことを目的に監査等委員会設置会社へ移行しました。
・ユニット体制の一部変更について
2022年4月より、IPプロデュースユニット内の再編を行うとともに、映像音楽事業とクリエイション事業を統合しIPプロデュース事業に一本化しました。IPプロデュースユニットにおいては、ユニット内で映像事業を展開する会社3社(㈱サンライズ、㈱バンダイナムコアーツの映像事業、㈱バンダイナムコライツマーケティング)を統合した㈱バンダイナムコフィルムワークスが事業統括会社として統括します。
⑥計数目標 株主還元施策(2022年2月時点)
・2025年3月期 計数目標
連結売上高 11,000億円
連結営業利益 1,250億円
ROE(自己資本当期純利益率) 12%以上
今後は、世界中のIPファン、あらゆるパートナー、グループ従業員、そして社会と常に向き合い、広く、深く、複雑につながる存在を目指し、中期計画のもと、全世界で各事業がALL BANDAI NAMCOでこれまで以上に一体となり、重点戦略(IP軸戦略、人材戦略、サステナビリティ)に取り組んでまいります。
バンダイナムコグループは、株主の皆様への利益還元を経営の重要施策と位置づけており、当社グループの競争力を一層強化し、財務面での健全性を維持しながら、継続した配当の実施と企業価値の向上を実現していくことを目指しております。具体的には、長期的に安定した配当を維持するとともに資本コストを意識し、安定的な配当額としてDOE(純資産配当率)2%をベースに、総還元性向50%以上を目標に株主還元を実施することを基本方針としております。
(3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループでは、中長期での持続的な成長に向け取り組むべき様々な課題に対しては、2022年4月より推進している中期計画において、中期ビジョン「Connect with Fans」のもと、重点戦略である「IP軸戦略」「人材戦略」「サステナビリティ」に、グループを横断しALL BANDAI NAMCOで一体となり取り組むことにより対応してまいります。
①グループ横断で取り組むべき課題
企業の社会的責任を果たすために
<「パーパス“Fun for All into the Future”」の実践>
当社グループは、“社会における存在意義”や“なぜその事業や企業活動を行うのか”“私たちがバンダイナムコで働く意味”を表す「パーパス“Fun for All into the Future”」をグループの最上位概念としています。バンダイナムコが世界中のIPファン、あらゆるパートナー、グループ従業員、そして社会等あらゆるステークホルダーと「夢・遊び・感動」を通してつながることで、ともに“Fun for All into the Future”を実践することを目指してまいります。今後も、様々な機会を通じ経営者自身がパーパスについて発信を行うことで、グループ従業員の理解の深化をはかり、事業や行動を通じたパーパスの実践につなげてまいります。
<サステナビリティへの取組み>
当社グループではエンターテインメントを通じた「夢・遊び・感動」を世界中のファンへ提供し続けるため、「バンダイナムコグループサステナビリティ方針」を掲げ、ファンとともに持続可能な社会の実現に向けた活動を推進しております。中期計画においては、重点戦略の1つに「サステナビリティ」を設定し、グループが向き合うべき社会課題として特定したマテリアリティのもと、具体的なアクションプランを推進してまいります。
また、グループ従業員が遵守すべき行動規範となる「バンダイナムコグループコンプライアンス憲章」を制定しております。さらには、事業活動に関わるすべてのステークホルダーの人権を尊重することを企業としての責任と考え、「バンダイナムコグループ人権方針」を定めています。これらのもと、「グループサステナビリティ委員会」とサステナブル活動を推進する「グループサステナビリティ部会」、さらには、コンプライアンスや情報セキュリティ、内部統制の強化を推進する「グループリスクコンプライアンス委員会」、「グループ情報セキュリティ委員会」、「内部統制委員会」を開催するとともに、様々な課題への対応や体制の強化をはかるほか、社内への啓発活動等各種施策に取り組むことで社内意識の向上に継続的に取り組んでまいります。
<安定した収益基盤構築に向けて>
当社グループでは、変化の激しい市場において安定した収益基盤を強固にするため、多様なIPや幅広い事業カテゴリーによるポートフォリオバランスを重視した経営を推進しております。安定した収益基盤を強固にすることで、中長期での成長に向けた投資やチャレンジ等を行い、新たなIPや事業等の創出育成をはかってまいります。
IP軸戦略のさらなる強化に向けて
当社グループでは、流通・メディア環境の変化やネットワークの普及、プラットフォームの多様化や技術進化、グローバル市場での競争激化等の様々な環境変化に対応するため、IP軸戦略のさらなる進化に取り組んでおります。
新規IP創出にあたっては、IPプロデュースユニットにおいて映像・音楽作品やライブイベント発のIP創出とプロデュース力を強化し、また、商品・サービス発の取組み、グループの連携による取組み、全体最適の視点で投資を行う「バンダイナムココンテンツファンド」の活用、外部のパートナー企業やクリエイターとの連携等、あらゆる方向からIP創出を強化してまいります。そしてIP軸戦略において、ファンとより広く、深く、複雑につながるための新たな取組みとして、「IPメタバース」を開発し、バンダイナムコとファンが、さらにはファン同士が長期にわたって広く、深く、複雑につながる関係を構築してまいります。
IP価値最大化に向けては、より長期的な視点であらゆるパートナーとオープンに協業するほか、事業の最大化はもちろんのこと、IPの可能性を拡大するための取組みを推進します。地域や事業を横断して展開するIPにおいては、グループ横断プロジェクトによりIP価値最大化を目指します。中期計画においては、戦略的な投資を行い、IP価値最大化に向けた様々な取組みを推進してまいります。
このほか、IP軸戦略の推進にあたっては、IPを適切に活用・保護するため、社外パートナー企業や行政と連携し、様々な啓発活動や知的財産権侵害対策の推進等の活動を行ってまいります。
グローバル市場での事業拡大に向けて
当社グループが、中長期で持続的な成長を続けるためには、グローバル市場での事業拡大が不可欠と考えております。世界の各地域においてALL BANDAI NAMCOで一体となり戦略を推進するため、組織再編や各地域における事業拠点の集約等を行い、この体制のもと事業の構築に取り組んでおります。特に北米と中国内地を重点地域とし、強力に事業間連動を実施するほか、ワールドワイド展開をはかるIPについてはグループ横断プロジェクトにより取り組んでまいります。また、日本発IPの商品・サービスの海外展開に加え、各地域発のIP展開に取り組む等IPポートフォリオの強化をはかります。さらに、グローバル人材の育成に向けて、多様な人材の採用に加え、地域や事業を横断した人事交流や研修等により育成を推進してまいります。
技術の進化と変化への対応に向けて
技術の進化により、エンターテインメントにおける選択肢が多様化し、顧客の嗜好やライフスタイルの変化のスピードが速くなるとともに、グローバル規模での競争が激化しています。当社グループでは、従来のビジネスモデルにこだわることなく、顧客の嗜好やライフスタイルに対応した新たな価値創造やプラットフォームへの対応、ビジネスモデルの変革に積極的に取り組んでまいります。これらの推進にあたっては、グループに閉じることなく、国内外のパートナー企業やクリエイター等と密接な連携をはかってまいります。
多様な人材が活躍できるグループに向けて
当社グループは、「パーパス“Fun for All into the Future”」のもと、様々な才能、個性、価値観を持つ多様な人材が生き生きと活躍することができる「同魂異才」の企業集団でありたいと考えます。従来より新卒・キャリア、性別、年齢、国籍、人種、宗教や性的指向等にこだわらず多様な人材の確保・登用を行うとともに、多様な人材が活躍することができ、心身ともに健康に働くことができる様々な制度や環境の整備に取り組んでおります。また、外部人材との連携や協業も積極的に行ってまいります。
②各ユニットにおける課題
エンターテインメントユニット
<デジタル事業>
当業界においては、「プラットフォームの多様化」、「ネットワーク等の技術進化」、「顧客ニーズの多様化」、「開発期間の長期化と投資額の上昇」等の課題があります。これらの課題に対応するため、商品・サービスの開発にあたってはクオリティを重視し厳選したタイトルの開発を行うとともに、開発タイトルの審査体制や開発リソースの管理を強化しています。リリース後においてもアップデートや追加コンテンツの提供、イベントの開催等の顧客とつながり続けるための継続的な施策により長期展開をはかっております。また、新たなプラットフォームの登場は顧客獲得の機会と捉え、各プラットフォームの特性にあわせたタイトル提供を行っています。このほか、既存の事業や商品・サービスの枠を超え、顧客ニーズの多様化や技術進化に対応したエンターテインメントやビジネスモデルの創出に取り組んでまいります。さらには、技術進化や環境変化、新たなプラットフォームに迅速に対応するため、社内外スタジオとのネットワーク強化やスタートアップとの協業を目的としたファンドの運営、技術研究をさらに強化してまいります。
<トイホビー事業>
当業界においては、「少子化による国内市場の縮小」、「顧客ニーズの多様化」、「商品生産地域の集中」、「原材料や燃料の価格上昇」等の課題があります。これらの課題に対応するため、国内において圧倒的No.1の地位確立を目指し、ターゲット層の拡大や新規事業の創出に取り組んでおります。海外においては、ハイターゲット層(大人層)向け商品やカード商材等の事業拡大やIPポートフォリオの拡充、販路の拡大、EC販売強化等の取組みを行い、中長期的な成長を目指してまいります。また、開発生産面においては、バリューチェーンの改革により、生産面での効率化をはかるとともに、スピードやクオリティ、価格面でも競争力のある商品展開を進めてまいります。このほか、該当する法規制や業界が定める品質・安全基準等を踏まえた独自の品質基準の設定、品質監査とCOC(Code of Conduct:行動規範)監査を一元化した監査を海外最終梱包工場に対して定期的に実施する等により、品質・安全の徹底及び労働環境の適正化をはかってまいります。さらには、グローバル市場での需要拡大に対応するため、自社の生産拠点の増強をはかっているほか、取引先工場においても品質基準の担保を大前提に生産拠点の分散をはかってまいります。
IPプロデュースユニット
当業界においては、「IP創出における競争激化」、「優秀な人材の育成、確保」等の課題があります。これら課題に対応するため、ユニット内の組織再編により映像・音楽・ライブイベントに関するノウハウや機能を集約し、より多彩でユニット内のみならずグループの各事業や外部パートナーとの協業により相乗効果を発揮できるIP創出機能の強化をはかっております。また、映像制作や制作技術向上のための投資を積極的に行うほか、制作現場の環境や体制の整備、クリエイターの育成、社内外のパートナーやクリエイターとの連携強化に取り組んでまいります。さらには、日本発IPのグローバル市場での人気拡大を受け、グローバル展開を視野に入れたIPの創出や展開地域の拡大をはかっています。このほか、映像・音楽・ライブイベントとデジタル技術を融合させた新しいエンターテインメントの創出に取り組んでまいります。
アミューズメントユニット
当業界においては、「顧客ニーズの多様化」、「環境変化の激化」、「原材料や燃料の価格上昇」等の課題があります。これらの課題に対応するため、施設事業やアミューズメント機器事業において、IPやグループの商品・サービスを活用する等、バンダイナムコならではの展開を行い、グループの各事業とより一体となった展開を推進しております。さらに効率化に取り組むことで、安定して収益をあげることができる安定した基盤の構築を目指してまいります。同ユニットにおいては、IP軸戦略におけるグループの重要な顧客接点として、グループの商品・サービスの販売、IPの訴求や顧客ニーズを収集する役割も果たしてまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
バンダイナムコグループでは、「パーパス“Fun for All into the Future”」をグループにおける最上位概念と位置付け、IP軸戦略のもと、ファンとともに、グループが向きあうべき社会的課題に対応したサステナブル活動を推進すべく「バンダイナムコグループサステナビリティ方針」を策定しています。ファンをはじめ、あらゆるパートナーやグループ従業員、社会とともに、持続可能な社会の実現に向けたサステナブルな活動を推進します。
『バンダイナムコグループサステナビリティ方針』
バンダイナムコグループは、IP軸戦略のもと、ファンとともに、バンダイナムコグループが向き合うべき社会的課題に対応したサステナブル活動を推進します。
2022年4月にスタートした中期計画においては、サステナブル活動は経営戦略上の重要な取組みであるという認識のもと、「サステナビリティ 笑顔を未来へつなぐ」を重点戦略として掲げ、グループが向き合うべき社会課題として特定したマテリアリティのもと、具体的なアクションプランを推進しています。さらに、社会が直面している地球環境の問題に対応すべく、2050年までのエネルギー由来のCO2排出量削減目標とステップの設定を行い、脱炭素に向けた取組みを進めています。なお、当社取締役(監査等委員及び社外取締役を除く)の報酬における変動報酬である業績連動賞与において、サステナビリティ評価を導入しています。
(1)サステナビリティ
①ガバナンス
サステナブル活動の推進にあたっては、当社の常勤取締役及び当社グループの事業統括会社(㈱バンダイナムコエンターテインメント、㈱バンダイ、㈱バンダイナムコフィルムワークス及び㈱バンダイナムコアミューズメント)の代表取締役社長等で構成され、当社代表取締役社長が議長を務めるグループサステナビリティ委員会を設置し、事業と連携した活動に取り組んでいます。具体的には、サステナブル活動の推進は経営戦略上の重要な取組みであるという認識のもと、当社取締役会直轄となるグループサステナビリティ委員会でサステナビリティ戦略に関する協議を行い、各施策を検討、当社取締役会に定期的に報告し、当社取締役会がその審議・監督を行います。また、グループサステナビリティ委員会の下部組織としてグループサステナビリティ部会を設置、バンダイナムコグループサステナビリティ方針及びマテリアリティに沿った活動に取り組んでいます。
②戦略
当社グループは、バンダイナムコグループサステナビリティ方針のもと、「パーパス“Fun for All into the Future”」実現のために、企業として重点的に取り組む必要がある5つのテーマをマテリアリティ(重要課題)として特定しました。サステナブル活動にあたっては、これらマテリアリティに沿った施策を立案し推進しています。
〔マテリアリティ特定の3ステップ〕
■STEP1 社会課題のリストアップ
分析対象とする社会課題項目を「バンダイナムコグループの考え方(パーパス、バンダイナムコグループサステナビリティ方針等)」「国内外の潮流、社会要請」の観点からリストアップし、20項目に整理。
■STEP2 抽出した社会課題のマッピング
「ステークホルダーの皆様にとっての重要性」と「バンダイナムコグループにとっての重要性」の2軸で評価及びマッピング。
■STEP3 妥当性の確認・マテリアリティの特定
特定したマテリアリティの妥当性を確認すべく、社外有識者によるコメントを取得。グループサステナビリティ委員会での協議、当社取締役会での審議を経て、マテリアリティを特定。
※コメントを受領した社外有識者(所属肩書は、2023年2月時点)
・株式会社イースクエア 共同創業者 ピーター・D・ピーダーセン氏
・放送大学 客員教授 関 正雄氏
・CSRアジア 日本代表 赤羽 真紀子氏
〔バンダイナムコグループの5つのマテリアリティと重点項目〕
マテリアリティ |
内容 |
重点項目 |
地球環境との 共生 |
地球環境に配慮した事業を推進することが、社会と企業の持続可能な発展の実現に欠かせないことを認識し、様々なステークホルダーとともに、地球環境との共生を目指します。 |
・気候変動対策の強化 ・資源・原材料の持続可能な利用 ・サプライチェーンマネジメント(環境) |
適正な商品・ サービスの提供 |
お客さまの安心・安全を第一に考え、適正な倫理規範のもと、品質や安全性が確保された商品・サービスをパートナーと一体となって提供し、顧客満足度の向上に努めます。 |
・適切な倫理表現に基づいた商品・サービスの提供 ・商品・サービスの安全・安心 ・顧客満足の向上 ・サプライチェーンマネジメント(品質) |
知的財産の 適切な活用と保護 |
重要な経営資源であるIPを適切に活用・保護することにより、エンターテインメントの持続的な発展に寄与します。 |
・IPの適切な活用・特許の相互活用 ・IPの保護 |
尊重しあえる 職場環境の実現 |
従業員をはじめバンダイナムコグループに関わるあらゆる人々が互いを尊重しあい、生き生きと働くことができる職場環境を実現することで、社会と企業の持続的な発展を目指します。 |
・働き易い職場の実現 ・ワークライフバランスの推進 ・人材育成 ・ダイバーシティ&インクルージョンの推進 ・サプライチェーンマネジメント(労働) |
コミュニティとの 共生 |
バンダイナムコグループが地域やファンから愛され、社会から必要とされる企業であり続けるために、コミュニティとともに生き、発展していくことを目指します。 |
・地域コミュニティとの連携 ・次世代に向けた教育支援 ・ファンコミュニティの活性化 |
〔バンダイナムコグループの5つのマテリアリティのリスクと機会〕
マテリアリティ |
リスク |
機会 |
地球環境との 共生 |
・炭素規制やプラスチック利用規制による原材料や生産・調達コストの上昇 ・新技術の導入や研究開発、設備投資に伴うコストの増加 ・自然災害による財物損壊やサプライチェーンの中断、資源の枯渇 ・外出意欲の低下に伴うライブ、店舗運営事業の売上減少 |
・省エネルギー化による電力コストの削減 ・効率的な生産・輸送プロセスの導入によるコストの削減 ・顧客の嗜好変化による新しい市場の創出 ・環境配慮の取組みによる企業イメージの向上 ・環境配慮に向けた取組みに起因するビジネス機会の創出 ・グループ従業員のエンゲージメント向上 |
適正な商品・ サービスの提供 |
・顧客志向の変化による売上減少 ・新たな技術開発に向けた投資増加 ・商品・サービスの品質面等における不具合発生数の増加 ・不具合に起因するレピュテーションリスク |
・新商品やサービスの開発促進 ・新たな技術への取組み増加 ・従業員教育充実による技能向上 ・顧客満足度の向上に伴うブランド価値向上 |
知的財産の 適切な活用と保護 |
・IP創出における競争激化 ・IP創出、取得、保護に関する投資増加 ・知的財産の侵害等によるIP価値の毀損 |
・IPの適切な活用と保護によるエンターテインメントの持続的発展 ・新規IP創出の可能性拡大 |
尊重しあえる 職場環境の実現 |
・IP軸戦略を推進する人材の確保の競争激化 ・人材の確保、育成にかかる投資増加 ・グループ従業員のエンゲージメント低下、及び流出 ・人材不足による事業への悪影響 ・グローバルで強化される法規制への対応の遅延によるビジネスリスクの増大 ・サプライチェーンにおける人権侵害の発生による生産性の低下 |
・ビジネスパートナーとの良好な関係構築及び生産性の向上 ・グループ従業員のエンゲージメント向上 |
コミュニティとの 共生 |
・社会貢献及び地域活性化の取組み不足に起因するレピュテーションリスク |
・地域社会の活性化に伴う企業価値向上 ・グループ従業員のエンゲージメント向上 |
③リスク管理
当社グループでは、サステナビリティに関するリスクと機会についてグループサステナビリティ委員会で協議、当社グループが取り組むべきマテリアリティを特定し、グループ全体のサステナブル活動を推進しています。推進にあたっては、グループの危機管理体制を統括するグループリスクコンプライアンス委員会と連携しています。グループ各社が事業特性に合わせた施策にマテリアリティに沿って取り組んでおり、その結果は連結会計年度ごとに、グループ全体及び事業セグメントごとに分析し、翌連結会計年度以降の施策の改善につなげています。この分析内容については、グループサステナビリティ委員会にて協議のうえ、取締役会に報告し、必要に応じて取締役会が審議・監督を行っています。
④指標及び目標
以下のとおり、バンダイナムコグループにおいては5つのマテリアリティ毎に目標を設定しています。
〔バンダイナムコグループの5つのマテリアリティの指標及び目標〕
マテリアリティ |
重点項目 |
目標 |
地球環境との 共生 |
・気候変動対策の強化 ・サプライチェーンマネジメント(環境) |
○脱炭素施策に向けた取組み ・Scope1,2におけるCO2排出量削減 2030年まで:2019年度比35% 2050年まで:実質排出量ゼロ ・Scope3対応の推進 |
・資源・原材料の持続的な利用 |
○サーキュラーエコノミーの推進 ・プラスチックリサイクルシステムの構築 ・製品リサイクルの推進 ○環境配慮商品の推進 ・石油由来プラスチックの利用削減 ・環境配慮商品の創出 ○廃棄物削減 ・各拠点における廃棄物のリサイクル化 |
|
適正な商品・ サービスの提供 |
・適正な倫理表現に基づいた商品・サービスの提供 |
○グループ情報共有体制の構築と運用 ○従業員教育の実施 |
・商品・サービスの安全・安心 |
○安全・安心なモノづくりへの取組み ・国内外における製品品質の向上 ・従業員教育の実施 |
|
・顧客満足の向上 |
○不具合発生防止に向けた取組み ○迅速かつ丁寧なお客様サポートの推進 |
|
知的財産の 適切な活用と保護 |
・IPの適切な活用・特許の相互活用 |
○IP・技術の活用による社会的課題の解決に向けた取組みの推進 |
・IPの保護 |
○知的財産保護対応の強化 |
|
尊重しあえる 職場環境の実現 |
・働き易い職場環境の実現 ・ワークライフの推進 |
○育児休業等の取得推進 ○休暇制度の見直し |
・人材育成 |
○IP軸戦略を推進する多様な人材育成 ○パーパスを体現する多様な人材育成 |
|
・ダイバーシティ&インクルージョンの推進 |
○障がい者雇用の推進 ○多様な背景を持つ従業員が活躍できる風土醸成 |
|
・サプライチェーンマネジメント(労働) |
○最適なサプライチェーン構築に向けた取組み ・人権を尊重したサプライチェーンの構築 ・従業員教育の実施 |
|
コミュニティとの 共生 |
・地域コミュニティとの連携 ・ファンコミュニティの活性化 |
○地域に密着した社会活動の実施 |
・次世代に向けた教育支援 |
○子どもたちへの教育支援 |
(2)気候変動
当社グループでは、気候変動への対応が持続可能な社会の実現と事業の継続的な発展に不可欠であるとの認識のもと、2021年4月の「バンダイナムコグループサステナビリティ方針」策定とあわせて、脱炭素化社会に向けた中長期の目標を設定しました。また、同年からTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言に沿った情報開示を開始するとともに、2023年9月にはTCFD提言への賛同を表明しました。TCFDコンソーシアムにも参加しており、気候変動に関する最新情報の収集等に努めています。
引き続き、気候変動が事業に与える影響と、関連するリスクと機会についてシナリオに基づく分析を行い、これらのリスク・機会への対応を強化、脱炭素に向けた取組みを推進してまいります。
①ガバナンス
当社グループは、社会の持続可能性が事業活動において重要であることを認識しており、サステナビリティに関する活動をよりスピーディに決定・実行するため、代表取締役社長が委員長を務めるグループサステナビリティ委員会を設置しています。
本委員会は半期ごと(年2回)の頻度で開催され、重要議題の一つとして気候変動対応について協議を行い、各施策を検討後、グループ各社にて施策を実施。当社取締役会に定期的に結果を報告し、取締役会がその審議・監督を行います。また、本委員会の下部組織であるグループサステナビリティ部会は、バンダイナムコグループサステナビリティ方針及びマテリアリティに沿った活動の推進に取り組んでいます。
②戦略
気候変動によって生じるリスクと機会の影響を把握するために、シナリオ分析を実施しました。
■シナリオ分析方法
気候変動による当社グループ事業への影響を明らかにするために、以下の2つのシナリオを用いて2030年におけるシナリオ分析を実施しました。今回は、積極的な脱炭素政策により気温上昇が抑えられる1.5℃シナリオと、限定的な脱炭素政策により気候上昇が進む4℃シナリオを採用しました。
・災害等の気候変動による物理的な影響の分析:IPCC(気候変動に関する政府間パネル)RCPシナリオ
・炭素税等の脱炭素経済への移行に伴う影響の分析:IEA(国際エネルギー機関)シナリオ
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積極的な気候変動対策が実施され、 気温上昇が抑えられる世界 |
脱炭素政策は限定的であり、 気温上昇/気候変動が進む世界 |
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1.5℃シナリオ |
4℃シナリオ |
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概要 |
気温上昇が19世紀後半から2100年までで1.5℃に抑えられるシナリオ。炭素価格制度の導入等脱炭素社会への移行に伴う影響(移行リスク)が顕著となる。物理リスクの影響は4℃シナリオに比べると比較的小さい。 |
気温上昇が19世紀後半から2100年までで4℃近く上昇するシナリオ。災害等気候変動による物理的な影響(物理リスク)が顕著となる。気候変動に関する規制強化は行われないため、移行リスクの影響は小さい。 |
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参考 シナリオ |
移行 リスク |
IEA Net Zero Emission by 2050(NZE), IEA Announced Pledges Scenario(APS), IEA Sustainable Development Scenario(SDS) |
IEA Stated Polices Scenario(STEPS) |
物理 リスク |
IPCC RCP 2.6 |
IPCC RCP 8.5 |
※1.5℃シナリオの情報がない場合は、2℃シナリオに分類される参考シナリオを使用
■シナリオ分析結果
1.5℃シナリオ
1.5℃シナリオでは、炭素税の導入や化石燃料の使用に関する規制導入等、脱炭素社会への移行に伴う影響が予想されます。当社事業へのリスクとしては、炭素価格(炭素税・排出量取引制度)の導入による操業コストの増加、プラスチック規制に対するトイホビー事業における対応コストの増加、原材料価格の高騰による調達コストの増加等が挙げられました。一方で、機会としては、省エネ技術の向上による生産性の向上や、環境を配慮したコンテンツの提供による新規顧客獲得等が挙げられました。
これらの課題に対応するため、例として太陽光発電等の再生可能エネルギーの導入や、アミューズメント施設やライブ・イベント会場における電力使用量の削減、その他物流部門におけるエコドライブ活動、低公害車導入等に取り組んでいます。プラスチック規制や原材料価格の高騰への対応としては、リサイクル材の使用だけでなく、代替素材の導入、省資源製品(カプセルレスのガシャポン、エコアミューズメント製品、エコメダル認定製品)の開発等、製品設計の工夫によってプラスチック材の使用量を削減する取組みを実施しています。なお各社施策の詳細はバンダイナムコホールディングス公式サイトサステナビリティサイトをご参照ください。
バンダイナムコホールディングス公式サイトサステナビリティサイト(気候変動)
https://www.bandainamco.co.jp/sustainability/climate/index.html
4℃シナリオ
4℃シナリオでは、異常気象の激甚化等の気候変動による物理的な影響が発生することが予想されます。リスクとしては、当社事業所やサプライチェーンでの被災による事業活動の停止が挙げられました。また、猛暑や雨天増加等の気象パターンの変化によって、屋外イベント/サービスの売上減少も想定されました。一方で、機会としては、気象パターンの変化により、自宅や屋内で過ごす時間が増えることで、家庭用ゲームや玩具の売上や、屋内イベント/サービスの売上が増加することが想定されました。
リスク軽減としては、災害対応のためにBCP基本方針の策定や訓練を実施しています。さらに、バーチャルイベントの開催によって、猛暑や雨天に左右されないサービスの開発を進めています。また、この取組みは機会獲得にも貢献すると考えられ、今後はお客様が天候等に左右されずエンターテインメントコンテンツを利用できるように、多様なサービスを開発していきます。
〔移行リスク・機会〕
項目 |
想定される事象 |
影響 評価 |
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リスク機会 |
中分類 |
小分類 |
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リスク |
政策・ 規制 |
炭素価格の導入 |
・炭素価格(炭素税や排出権取引制度)の導入により、GHG排出量に応じた課税やクレジット購入義務等が発生し、操業コストが増加する |
大 |
化石燃料の使用に関する規制 |
・化石燃料の使用に関する規制の強化により、社用車と物流会社の輸送機における化石燃料使用の削減対応コストが発生する |
小 |
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プラスチック・資源リサイクル規制 |
・プラスチック規制の強化により、環境への負荷が少ないバイオプラスチックや再生プラスチックの使用が必須となり、玩具の製造コストが増加する ・リサイクル規制の強化に伴い、玩具・ゲーム機のプラスチックや金属が規制対象になり、製造や廃棄における対応コストが発生する |
大 |
||
再エネ・省エネ政策 |
・再エネ政策の拡充により、再エネ需要が高まり、電力価格が高騰する ・省エネ規制が強化され、規制遵守のための技術投資が必要となる |
大 |
||
情報開示義務 |
・カーボンフットプリントといった情報の開示義務が課されることにより、情報を開示するための対応コストが発生する |
中 |
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市場 |
原材料コストの変化 |
・玩具やゲーム機等で使用されるプラスチックや金属の価格が高騰し、製造コストが増加する |
大 |
|
機会 |
市場 |
顧客行動変化 |
・顧客行動における環境への配慮の有無の重要性が高まることにより、環境への配慮をテーマとしたデジタルコンテンツや玩具(環境教育)を通して、新規顧客の獲得につながる |
大 |
評価 |
投資家評価の変化 |
・環境への配慮が十分であると投資家から判断されることにより、自社の評価が向上し、株価の上昇や資金調達機会の獲得につながる |
大 |
〔物理リスク・機会〕
項目 |
想定される事象 |
影響 評価 |
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リスク機会 |
中分類 |
小分類 |
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リスク |
急性 |
異常気象の激甚化 (台風、豪雨、土砂、高潮等) |
異常気象の激甚化に伴う風水害の増加により以下事項が想定される ・自社拠点における防災コスト/復旧コストが増加する ・原材料の調達や商品の販売が困難となり、事業が中断される ・外出意欲の低下によりライブ・店舗運営事業の売上が減少する ・従業員への人的被害が発生する ・保険料が増加する |
大 |
干ばつ |
・半導体製造量の減少により、玩具や業務用ゲーム機の製造が遅延する ・営業車両の納期遅延 |
中 |
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慢性 |
平均気温の上昇 |
平均気温の上昇に伴う夏季の猛暑により以下事項が想定される ・外出意欲の低下によりライブ・店舗運営事業の売上が減少する ・空調費等の操業コストが増加する ・従業員への健康被害が発生する |
中 |
|
降水・気象パターンの変化 |
・梅雨等気象パターンの変化により、雨天日が増加した場合、屋外サービスの売上が減少する |
中 |
||
平均気温の上昇による原材料生育影響 |
・食玩に使用される小麦粉等原材料が不作になった場合、価格高騰が想定され、調達コストが増加する |
中 |
||
海面上昇 |
・海面上昇の影響により、沿岸部のアミューズメント施設や物流拠点等の事業拠点が浸水し、復旧コストが発生する |
小 |
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感染症の増加 |
・感染症の増加により、外出機会が減少し、ライブ会場やアミューズメント施設への来訪者が減少する |
中 |
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機会 |
慢性 |
平均気温の上昇 |
・平均気温の上昇により、外出機会の減少に伴う自宅におけるデジタルコンテンツの需要が増加する |
中 |
降水・気象パターンの変化 |
・梅雨等気象パターンの変化により、雨天日が増加した場合、屋内サービスの売上が増加する |
中 |
③リスク管理
当社グループでは、サステナビリティに関するリスクと機会についてグループサステナビリティ委員会で協議、当社グループが取り組むべきマテリアリティを特定し、グループ全体のサステナブル活動を推進しています。推進にあたっては、グループの危機管理体制を統括するグループリスクコンプライアンス委員会と連携しています。グループ各社が事業特性に合わせた施策にマテリアリティに沿って取り組んでおり、その結果は連結会計年度ごとに、グループ全体及び事業セグメントごとに分析し、翌連結会計年度以降の施策の改善につなげています。この分析内容については、グループサステナビリティ委員会にて協議のうえ、取締役会に報告し、必要に応じて取締役会が審議・監督を行っています。
④指標及び目標
当社グループは、自社のESG経営の進捗及び気候変動に対する政策リスク等の影響を評価・管理するために、温室効果ガス排出量を指標として設定し、自社拠点におけるエネルギー由来のCO2排出量を2030年までに2019年度比35%削減することを中間目標として掲げています。さらに、2050年までには、自社拠点(社屋、自社工場、直営アミューズメント施設等)におけるエネルギー由来のCO2排出量を実質ゼロにすることを目標としています。今後は、目標達成にむけて、省エネルギー施策のさらなる推進や再生可能エネルギーの導入等を進めていきます。
(単位:t-CO2)
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2019年度 (2020年3月期) |
2020年度 (2021年3月期) |
2021年度 (2022年3月期) |
2022年度 (2023年3月期) |
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Scope1 |
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Scope2 |
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Scope3(注)1 |
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カテゴリー1 |
- |
- |
- |
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576,512 |
カテゴリー2 |
- |
- |
- |
95,884 |
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カテゴリー3 |
- |
- |
- |
5,758 |
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カテゴリー4 |
- |
- |
- |
10,399 |
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カテゴリー5 |
- |
- |
- |
2,669 |
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カテゴリー6 |
- |
- |
- |
5,158 |
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カテゴリー7 |
- |
- |
- |
710 |
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カテゴリー8 |
- |
- |
- |
対象外 |
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カテゴリー9 |
- |
- |
- |
3 |
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カテゴリー10 |
- |
- |
- |
対象外 |
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カテゴリー11 |
- |
- |
- |
21,792 |
||
カテゴリー12 |
- |
- |
- |
372,368 |
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カテゴリー13 |
- |
- |
- |
対象外 |
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カテゴリー14 |
- |
- |
- |
対象外 |
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カテゴリー15 |
- |
- |
- |
対象外 |
(注)1.Scope3の対象は㈱バンダイナムコエンターテインメント、㈱バンダイ、㈱BANDAI SPIRITS、㈱バンダイナムコフィルムワークス、㈱バンダイナムコアミューズメントとなります。
2.環境パフォーマンスデータ集計システム上、太陽光や風力を利用した自家発電設備による電力使用量は計上しておりません。また、2021年度の再生可能エネルギー使用(購入)量は非再生可能エネルギー使用量に合算されております(2022年度以降の実績において反映予定です)。
3.本数値については第三者による限定的保証またはレビューを実施しています。
4.過去の実績値については、集計結果の精査を行い、遡って修正する場合があります。
CO2排出量Scope3算出方法
カテゴリー1:調達額に排出原単位を乗じて算出。(連結会社間取引消去後)
カテゴリー2:設備投資額に排出原単位を乗じて算出。(グループ全体)
カテゴリー3:各エネルギーの消費量に排出原単位を乗じて算出。
カテゴリー4:輸送サービスの購入額に排出原単位を乗じて算出。
カテゴリー5:各廃棄物の発生量に処理方法別の排出原単位を乗じて算出。
カテゴリー6:移動手段別の交通費支給額に排出原単位を乗じて算出。アプリ事業のみ、従業員数に排出原単位を乗じて算出。
カテゴリー7:交通費支給額に対し、すべて"旅客鉄道"を使用した場合の排出原単位を乗じて算出。
カテゴリー9:アミューズメントユニットを対象。輸送距離×輸送重量×トラック輸送排出原単位として算出。
カテゴリー11:電池を使用する製品に対し、2回電池交換をすることを前提に、製品の販売数量、電池使用本数、平均電池寿命から消費電力量を算出し、排出原単位を乗じて算出。
カテゴリー12:販売した製品の重量に排出原単位を乗じて算出(施設運営事業を除く)。ただしトイ事業は部門別売上シェア10%商材の平均重量を使用、映像コンテンツ事業とライブ事業は販売数量トップ10の平均重量を使用。
※カテゴリー8、10、13、14、15は対象外
(3)人権対応
当社グループは、「パーパス“Fun for All into the Future”」がしめす姿である、エンターテインメントが生み出す心の豊かさで、人と人、人と社会、人と世界がつながる未来を、世界中のすべての人とともに創りつづけることを目指し、バンダイナムコグループの事業活動に関わるすべてのステークホルダーの人権を尊重する責任を果たすため、「国連のビジネスにおける指導原則」等の枠組みに沿った「バンダイナムコグループ人権方針」のもと、人権対応に関する活動を推進しています。
①ガバナンス
当社グループは、社会の持続可能性が事業活動において重要であることを認識しており、サステナビリティに関する活動をよりスピーディに決定・実行するため、代表取締役社長が委員長を務めるグループサステナビリティ委員会を設置しています。
本委員会は半期ごと(年2回)の頻度で開催され、重要議題の一つとして人権対応について協議を行い、各施策を検討後、グループ各社にて施策を実施。当社取締役会に定期的に結果を報告し、取締役会がその審議・監督を行います。また、本委員会の下部組織であるグループサステナビリティ部会は、バンダイナムコグループサステナビリティ方針及びマテリアリティに沿った活動の推進に取り組んでいます。
②戦略
当社グループの人権に対する姿勢や取組みをより明確化するため、2023年11月に「バンダイナムコグループ人権方針」を策定しました。企業の事業活動が人権にインパクトを与えることを理解し、バンダイナムコグループの事業活動に関わるすべてのステークホルダーの人権を尊重することを、企業としての責任と考えています。
〔バンダイナムコグループの人権対応におけるリスクと機会〕
リスク |
機会 |
・グローバルで強化される法規制への対応の遅延によるビジネスリスクの増大 ・サプライチェーンにおける人権侵害の発生に伴う生産性の低下 |
・ビジネスパートナーとの良好な関係構築及び生産性の向上 ・グループ従業員のエンゲージメント向上 |
③リスク管理
■人権リスクのマッピング
当社グループは事業活動を通じて関与し得る人権への負の影響について分析し、想定されるリスクについて深刻度・発生可能性の観点から重要度の高いものを特定しております。2024年3月期には当社の事業活動により負の影響が生じるリスクのある人権課題について、マッピングを行いました。以下の項目を当社グループにおいて優先的に対策すべき人権リスクと考え、これらリスクについては人権デューディリジェンスのプロセスに基づき、顕在的に発生している、あるいは潜在的な人権への影響を特定・評価しています。
潜在的なリスクについては低減のための適切な対策を実施、そして実際起こっている人権への影響に対しては、負の影響を取り除く等問題の解決に取り組むとともに、必要に応じて被害者への適切な救済措置を実施します。
なお、本マッピングについては継続的に見直しを行っていく予定です。
■人権デューディリジェンスの取組み状況
バンダイナムコグループは、自らの事業活動が潜在的に人権に影響を及ぼしうることを認識しています。従業員とその家族はもちろん、お取引先様等、すべてのステークホルダーの人権を尊重する責任があるという考えのもと、サプライチェーン全体で人権への理解を促進しています。
従来は事業セグメントごとにリスク管理を実施してきましたが、当社グループとして事業活動に関係する人権への負の影響を特定、予防、軽減するため、人権デューディリジェンスの仕組みをグループ内で構築し、リスクベースアプローチに基づいて継続的な管理を実施していきます。2022年10月には、第三者機関による人権デューディリジェンスを主要事業において実施し、グループの事業の中では、東アジア・東南アジア地域の製造部門における潜在的な人権リスクが高いことを特定。2024年3月期においては国内外全ての事業を対象にリスク分析を実施。今後も人権課題の顕在化の予防と、すでに確認されている課題の解決に向けた取組みを進めていきます。なお各社施策の詳細はバンダイナムコホールディングス公式サイトサステナビリティサイトをご参照ください。
バンダイナムコホールディングス公式サイトサステナビリティサイト(人権)
https://www.bandainamco.co.jp/sustainability/human-rights/index.html
(4)人的資本
バンダイナムコグループは、「パーパス“Fun for All into the Future”」のもと、様々な才能、個性、価値観を持つ多様な人材が生き生きと活躍することができる「同魂異才」の企業集団でありたいと考えます。新卒・キャリア、性別、年齢、国籍、人種、宗教や性的指向等にこだわらず人材の確保・登用を行うとともに、多様な人材が活躍することができ、心身ともに健康に働くことができる様々な制度や環境の整備にさらに注力します。具体的には、従業員のチャレンジを支援する取組み、グローバルでIP軸戦略を推進する人材を育成する取組み等を推進するとともに、多様な働き方や新たな働き方への対応を推進します。また、外部人材との連携や協業も積極的に行ってまいります。
①戦略
[多様性の確保について]
従業員一人ひとりが持つ個性・才能を重視しており、属性については事業の特性に応じて多様化をはかっています。女性活躍の推進においては、実力と経験により公平な評価を実施しており、女性正社員数の増加に応じて女性管理職も増え続けています。また事業のグローバル化に伴い、現地採用の従業員数も年々増加しており、今後も多様性の確保に積極的に取り組みます。
[育成について]
「パーパス“Fun for All into the Future”」のもと、世界中の人々が「夢・遊び・感動」でつながり、IP軸戦略をグローバルで推進するために、地域やユニットの壁を超え、グループが一体となって事業に取り組むALL BANDAI NAMCOによる一体感醸成とグローバルで活躍する人材の育成を重要視しています。
具体的には、グループを牽引する人材の育成については、事業や地域をまたいだグループ横断研修を実施するとともに、事業特性に応じた専門的分野については事業軸で取組みを行う等、グループを横断した取組みと事業軸での取組みの二軸で育成を推進しています。
また、事業統括会社間等の事業を横断したローテーション人事を積極的に行い、グループが展開する各事業に対する理解を含め、グループの核となる人材の育成に取り組んでいます。
[尊重し合える職場環境の実現にむけた取組み]
「パーパス“Fun for All into the Future”」のもと多様な人材が心身ともに健康に働くための環境整備を推進しています。フレックスタイム制、裁量労働制、時短勤務、時差勤務等、グループ各社がその事業形態にあわせて各種制度を整備、運用しています。
それぞれの戦略に関連する指標や具体的な取組みは「
②指標及び目標
※以下実績については㈱バンダイナムコホールディングス、㈱バンダイナムコエンターテインメント、㈱バンダイ、㈱BANDAI SPIRITS、㈱バンダイナムコフィルムワークス、㈱バンダイナムコミュージックライブ、㈱バンダイナムコアミューズメント及び㈱バンダイナムコビジネスアークの原籍従業員を集計対象としており、2024年3月期における従業員カバー率は38.5%です。なお、連結子会社が国内外に多数存在し、現状ではデータ収集自体が困難であるため、当社グループの経営への影響度が特に高い会社8社を記載しております。
多様性の確保について
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■従業員数 2022年3月期 3,803名(うち女性33.8%、1,287名) 2023年3月期 4,029名(うち女性34.6%、1,396名) 2024年3月期 4,299名(うち女性36.1%、1,550名) |
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■中途採用者人数 2023年3月期 150名(うち女性42.0%、63名) 2024年3月期 206名(うち女性48.1%、99名) |
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■新卒採用者人数 2022年3月期 146名(うち女性39.7%、58名) 2023年3月期 140名(うち女性42.9%、60名) 2024年3月期 184名(うち女性44.0%、81名) |
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■ 2022年3月期 21.1% 2023年3月期 22.1% 2024年3月期 |
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育成について |
■グループ合同研修参加者 2022年3月期 290名 2023年3月期 237名 2024年3月期 231名
※上記の他、個社ごとの人材育成プログラムを実施しております。 ※2023年3月期及び2024年3月期については新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け1年目研修を実施していません。 |
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尊重し合える職場環境の実現にむけた取組み |
■ 2022年3月期 29.3% 2023年3月期 30.5% 2024年3月期 ※2022年3月期及び2023年3月期については、育児休業取得率を算出しております。2024年3月期については、育児休業に育児目的休暇も含めた取得率を算出しております。なお2024年3月期における育児休業の取得率は62.4%です。 |
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■ 2022年3月期 100.0% 2023年3月期 98.5% 2024年3月期 |
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■ 2022年3月期 99.6% 2023年3月期 99.9% 2024年3月期 |
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■ 2022年3月期 70.6% 2023年3月期 70.2% 2024年3月期 |
※上記の他、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」の規定による公表をしている連結子会社の従業員の男女の賃金の差異は「
○その他の実績
[多様性の確保について]
・エンゲージメントサーベイの実施
国内外グループ全社で、2023年3月期よりエンゲージメントサーベイを実施し、組織の課題を可視化しています。この結果に基づいてさまざまな取組みを実施しており、一例として男性育児休業のさらなる取得推進に向けた取組みや、職場環境の改善等にも取り組んでいます。
今後もグループ全体で従業員のエンゲージメント向上に取り組み、多様で個性溢れる人材が生き生きと働き活躍できる環境づくりを推進しています。
・パートナーシップ制度の導入
国内グループ会社で2023年4月よりパートナーシップ制度を導入しています。従来婚姻関係を要件としていた就業規則等に定める休暇や各種福利厚生制度等について、パートナーシップ関係にある従業員も利用できるようになりました。
・障がい者雇用の促進
特例子会社㈱バンダイナムコウィルでは、オフィスクリーニング・オフィスアシスタントや玩具・ゲーム開発サポート等、グループ各社のビジネスを様々な面からサポートしています。また、障がい者雇用の知見を活かし、グループ各社で直接雇用している障がい者の定着支援も実施しております。そして、国内グループ各社の障がいへの理解向上のため、障がいを正しく知るサイト「ゆになび」の運営や、主要会社における障がいのある従業員のインターンシップ等も行っております。
[育成について]
・キャリアプランシート
年に1度自身のキャリアの棚卸しと上長との面談にて自律的なキャリア選択を促すキャリアプランシートを導入しています。選択できる異動希望部署は国内外グループ会社を対象としており、5年後、10年後といった中長期スパンでの個々のキャリア形成を促す仕組みを運用しています。
[尊重し合える職場環境の実現にむけた取組み]
・フレックスタイム制、裁量労働制、時短勤務、時差勤務等、事業形態にあわせた各種制度の整備、運用
様々な家庭事情を抱える従業員が働きやすいような社内制度やサポート体制を整え、従業員が安心して働ける環境をつくることで、エンゲージメントの向上をはかっています。
・出産子育て支援金の支給
第一子、第二子誕生時のお祝い金のほか、第三子以降の誕生時に子一人当たり300万円を支給しています。
・ライフサポート制度
様々な家庭事情を抱える従業員にとって働きやすい環境を整備することを目的として導入しています。事由に応じて、30日の休暇取得又は時短勤務・フレックス勤務が可能です。
事由例)①子の不登校 ②不妊治療 ③家族の看護及び介護 ④疫病での通院
なお、それぞれの指標に対する目標については、多様な事業を展開するグループとしての現状の人的資本への取組み状況をふまえ検討中です。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
バンダイナムコグループは「パーパス“Fun for All into the Future”」のもと、中長期的に持続的な成長を続け企業価値の向上を目指すために、環境変化にスピーディに対応し、グループを取り巻くリスクと機会を認識するとともに、それらの対応を検討し実行することで、リスクの低減と機会の最大化をはかることが必要です。また、社会の一員として社会的課題に対応した様々な活動を推進することで持続的社会の実現への貢献を目指します。トップミーティングや各種委員会等において、リスクや機会となり得る情報の認識や分析、共有を行い、対応策を検討し実行することにより、適切なリスクマネジメント体制を確保してまいります。さらには、環境の変化により生じた新たな機会をチャンスととらえ、様々な取組みを行ってまいります。リスクマネジメントにおいては、グループリスクコンプライアンス委員会のもと、グループ全体のリスクマネジメント強化をはかるとともにリスク発生時の対応を行っております。
(1)リスクマネジメント
バンダイナムコグループは、リスクマネジメントにおいては、バンダイナムコホールディングス代表取締役社長を委員長とし、常勤取締役及び事務局で構成されるグループリスクコンプライアンス委員会を設置しています。グループリスクコンプライアンス委員会のもと、グループ全体のリスクマネジメント強化及び危機(クライシス)発生時の対応に関する体制を構築しており、コンプライアンス体制の強化及びコンプライアンス教育やコンプライアンス違反の防止に取り組んでいます。なお、情報セキュリティに関しては、グループ情報セキュリティ委員会のもと、体制の強化を推進しています。
グループリスクコンプライアンス委員会の構成
①危機管理体制(リスク・クライシスマネジメント)
グループ会社の所在地域で発生、または発生の予想される危機(クライシス)への対応のため、バンダイナムコグループリスクコンプライアンス規程に基づき、危機管理対応のための体制を構築しています。この体制のもと、事業統括会社及び海外における地域統括会社が支援を行い、平常時のリスクマネジメントの強化と、危機発生時の収束に向けた対応を担います。また、グループリスクコンプライアンス委員会は、グループ全体の危機管理体制を統括し、グループとして対応すべきと判断した危機については、対処方針の決定及び事態解決に関する意思決定を行います。
②危機発生時の対応
一定レベルを超える危機が発生したときは、国内外グループ会社のコンプライアンス担当者が、専用のシステムにより関係各所及びグループリスクコンプライアンス委員会へ報告・情報共有し、必要な対応を行います。また、グループ全体として対応すべき重要な事案については、グループリスクコンプライアンス委員会が招集され、同委員会が適切に対応を決定、指示します。
③情報セキュリティに関する危機発生時の対応
情報セキュリティに関する緊急事態が発生した場合、グループ情報セキュリティ担当取締役がグループ情報セキュリティ委員会を招集し、直ちに必要な対策を講じるとともに、グループリスクコンプライアンス規程及び運用細則・ガイドラインに則った対応を行います。
(2)グループを横断するリスクと機会
①IP軸戦略推進に伴うもの
主なリスクと機会 |
対応 |
リスク ・市場や顧客の急速な変化、技術の進化 ・特定のIPへの依存 ・IP創出、取得、保護に関する投資増加 ・競争の激化 ・知的財産の侵害等によるIP価値の毀損 ・IP軸戦略を推進する人材の確保と育成
機会 ・地域や事業間の連携促進 ・市場や顧客の急速な変化、技術の進化による新たな市場や事業、ビジネスモデル、新規IPの創出の可能性拡大 ・グローバル市場における日本発IP認知度拡大による市場拡大 ・IPの適切な活用と保護によるエンターテインメントの持続的発展
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「パーパス“Fun for All into the Future”」の浸透によるブランド価値の向上、中期計画における重点戦略の推進に加えて、下記の取組みを実施しております。
・フィジカルとデジタル両面の事業カテゴリー展開による連携等の相乗効果の発揮 ・新たな事業やビジネスモデル、プラットフォームへの取組み ・外部パートナーとの協業強化 ・バランスのとれたIP・事業・地域ポートフォリオの確立 ・品質管理・検査体制の強化、従業員教育・サプライチェーンマネジメントの強化 ・クオリティ重視の開発体制強化 ・戦略的な投資の実施 ・模倣品排除を含む知的財産の適切な活用と保護、社内外向け啓発活動の実施 ・多様な人材が活躍できる制度や仕組みの導入を含む尊重し合える職場環境の実現 ・健全な財務体質基盤の強化 |
②人材活用に関するもの
主なリスクと機会 |
対応 |
リスク ・IP軸戦略をグローバルで推進する人材の確保、育成 ・外部のクリエイター人材や外部パートナー企業との関係構築における競争激化
機会 ・グループ従業員のエンゲージメント向上 |
グループにおける「パーパス“Fun for All into the Future”」の浸透に加え、下記の取組みを実施しております。
・多様な人材が活躍できる制度や仕組みの導入を含む尊重し合える職場環境の実現 ・従業員を対象としたエンゲージメントサーベイの実施 ・グループに閉じないオープンな協業の推進 |
※人材戦略における取組み等につきましては「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (4)人的資本」に記載しております。
③サステナビリティに関する課題
バンダイナムコグループの5つのマテリアリティのリスクと機会、気候変動に関するリスクと機会、人権対応におけるリスクと機会等につきましては「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組」に記載しております。
④情報セキュリティに関するもの
主なリスクと機会 |
対応 |
リスク ・サイバー攻撃等による情報流出や事業システムへの影響 ・技術の進化、法令等の変化 ・社内の情報リテラシー低下 |
・監視の強化や脆弱性対策の強化 ・情報セキュリティ部門の拡充 ・情報セキュリティ教育の強化 ・最新情報の収集、外部専門家との関係強化 ・世界各国の個人情報保護法令に準拠した個人情報管理体制の構築 |
⑤その他の外部要因に伴うもの
主なリスクと機会 |
対応 |
リスク ・天災、事故等の災害 ・政情変化 ・法令、規制等の改正 ・為替の変動 ・感染症等の拡大 |
・BCP、BCMに基づく訓練等の活動推進、継続的な見直し ・リスクマネジメント体制の強化 ・各事業や地域の最新情報の収集と共有体制強化 ・各国・地域の政府・自治体の要請や状況に基づいた取組みの実施 ・衛生管理の徹底 ・支援金の拠出や事業を通じた施策等社会的支援の実施 |
(3)各事業におけるリスク
①全事業を横断するもの
主なリスクと機会 |
対応 |
機会 ・ネットワーク環境の普及・拡大 ・技術の進化 ・デジタル化推進による顧客とのタッチポイント拡大 |
・新技術や新たなプラットフォームへの対応 ・IP認知度向上の取組みやグローバル展開の強化 ・オンラインイベント等のデジタルマーケティングやEC等デジタル対応の強化 |
②エンターテインメントユニット デジタル事業
主なリスクと機会 |
対応 |
リスク ・プラットフォームの多様化 ・技術の進化 ・開発期間の長期化と投資額の上昇 ・タイトル開発における人材の確保、育成
機会 ・技術進化による新たな市場や事業、ビジネスモデル等の可能性拡大 |
・新技術、新プラットフォームへの積極的な対応 ・新たな技術等の研究や情報収集の強化 ・クオリティ重視の開発体制強化、効率化 ・ビジネスモデルに基づいた開発コントロール強化 ・制作環境の整備、人材の獲得、育成の強化 ・タイトルリリース後の継続的なファンコミュニケーション |
③エンターテインメントユニット トイホビー事業
主なリスクと機会 |
対応 |
リスク ・国内における少子化の進行 ・原油価格の上昇 ・脱プラスチックに向けた規制強化 ・物流コスト上昇 ・生産地域の集中と品質管理 |
・ターゲット層や展開地域の拡大 ・開発生産におけるバリューチェーン改革、効率化 ・再資源化への取組み、新素材の研究開発等脱プラスチックへの対応 ・生産拠点の分散、品質管理体制強化 (品質基準の継続的な見直し、COC監査実施等) |
④IPプロデュースユニット
主なリスクと機会 |
対応 |
リスク ・IP創出における競争激化 ・作品制作における人材の確保、育成
機会 ・作品視聴環境の拡大 |
・スタジオ機能とプロデュース機能の集約 ・映像・音楽・ライブイベントのノウハウ集約 ・制作環境の整備、人材の獲得、育成の強化 ・制作技術向上のための投資 ・社内外のあらゆるパートナーとの連携強化 |
⑤アミューズメントユニット
主なリスクと機会 |
対応 |
リスク ・リアルな場を活用したエンターテインメントの多様化 ・燃料価格、人件費の上昇 |
・IPや商品・サービス等グループリソースとの連携強化 ・効率化の推進、事業の安定基盤強化 ・多様な働き方への対応 |
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用関連会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における国内外の経済環境は、新型コロナウイルス感染症による行動制限等が緩和され社会経済活動が活性化する一方で、社会情勢の変化、原材料価格や燃料価格の上昇、為替の変動による影響等によって、先行きについては不透明な状況が継続しました。
このような環境の中、バンダイナムコグループは2022年4月からグループの最上位概念となる「パーパス“Fun for All into the Future”」と新ロゴマークの導入を行うとともに、3カ年の中期計画をスタートしました。中期計画においては、「パーパス“Fun for All into the Future”」のもと、バンダイナムコグループが中長期で目指す姿に向け、世界中のIPファン、あらゆるパートナー、グループ従業員、そして社会と常に向き合い、広く、深く、複雑につながる存在を目指し「Connect with Fans」を中期ビジョンに掲げ、重点戦略として「IP軸戦略」「人材戦略」「サステナビリティ」を推進しています。重点戦略の推進を通じ、IP(Intellectual Property:キャラクター等の知的財産)の世界観や特性を活かし、最適なタイミングで、最適な商品・サービスとして提供することでIP価値の最大化をはかる「IP軸戦略」をさらに進化させていきます。また、「IP軸戦略」のグローバル展開を強化し、ALL BANDAI NAMCOでの一体感と総合力を高め、持続的な成長を目指してまいります。
当連結会計年度につきましては、IP軸戦略を核に各地域や事業を横断・連携しALL BANDAI NAMCOで一体となった取組みを強化しました。グループ全体では事業面においては、ハイターゲット層(大人層)向け商品やカード商材、カプセルトイ等が人気となったトイホビー事業等が業績に貢献しました。デジタル事業においては、家庭用ゲームにおけるプロダクトミックスの違いが業績に影響したほか、オンラインゲームの新作タイトル等に関わる評価損に加え、次期中期計画を見据えタイトル編成の見直しを行ったことによる処分損を計上しました。
また、当第4四半期連結会計期間において、当社が所有する政策保有株式の一部を売却したことに伴う投資有価証券売却益(特別利益)を計上しました。さらには、保有資産の有効活用により資本効率の向上をはかるとともに環境変化に対応し株主還元を含めた機動的な資本政策を実行することを目的に自己株式の取得を行いました。
この結果、当連結会計年度の経営成績は、売上高1,050,210百万円(前期比6.1%増)、営業利益90,682百万円(前期比22.1%減)、経常利益104,164百万円(前期比18.6%減)、親会社株主に帰属する当期純利益101,493百万円(前期比12.3%増)となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
[デジタル事業]
デジタル事業では、ネットワークコンテンツにおいて、「DRAGON BALL」シリーズや「ONE PIECE」等の主力アプリタイトルがユーザーに向けた継続的な施策により国内外で引き続き安定的に推移する一方、オンラインゲームの新作タイトルが計画を大幅に下回りました。家庭用ゲームにおいては、ワールドワイド向けの新作タイトル「ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON」、「鉄拳8」等が人気となりました。家庭用ゲーム全体では、既存タイトルについては「ELDEN RING」のリピート販売が大きく貢献した前年同期とのプロダクトミックスの違いが業績に影響しました。
なお、デジタル事業においては、今期投入したオンラインゲームの新作タイトル等に関わる評価損に加え、次期中期計画を見据えタイトル編成の見直しを行ったことによる処分損を計上しました。今後は、バランスの取れた最適なタイトルポートフォリオの構築、開発体制の強化を行うとともに、クオリティを重視したファンの期待に応えるタイトル開発を強化してまいります。
この結果、デジタル事業における売上高は372,667百万円(前期比3.4%減)、セグメント利益は6,257百万円(前期比87.3%減)となりました。
[トイホビー事業]
トイホビー事業では、原材料価格や燃料価格上昇の影響を受けたものの、好調カテゴリーの商品ラインナップやグローバル展開の拡大、生産体制の強化、リアルイベントや店舗によるタッチポイント拡大等をはかったことにより、引き続き好調に推移しました。具体的には、「ガンダムシリーズ」のプラモデルやコレクターズフィギュア、キャラクターくじ等のハイターゲット層向けの商品が、販売・マーケティングや商品ラインナップの強化等により好調に推移しました。また、「ONE PIECE」のトレーディングカードゲーム等のカード商材、カプセルトイ、菓子・食品等が商品ラインナップやターゲット層、展開地域の拡大に加え、顧客とのタッチポイントの強化等により業績に貢献しました。
この結果、トイホビー事業における売上高は509,880百万円(前期比13.9%増)、セグメント利益は78,655百万円(前期比32.1%増)となりました。
[IPプロデュース事業]
IPプロデュース事業では、映像制作においてTVアニメーションや劇場作品等複数の新作作品の制作及びプロデュースを行いました。「ガンダムシリーズ」では、「機動戦士ガンダム 水星の魔女」は、新規ファン層を獲得し、グループの商品・サービス販売の好調につながりました。また、劇場作品「機動戦士ガンダムSEED FREEDOM」が、幅広いファン層に支持され、ガンダムシリーズ劇場公開作品の中で過去最高記録の興行成績を更新しました。このほか、「ガンダムシリーズ」や「ラブライブ!シリーズ」、「アイドリッシュセブン」、「転生したらスライムだった件」、「ブルーロック」等のライセンスビジネスや映像配信等が安定的に推移したほか、ライブイベント、インバウンド需要を取り込んだ「GUNDAM FACTORY YOKOHAMA」が好調に推移しました。事業全体では、パッケージ商品の前年とのラインナップの違いや、制作原価の上昇等が影響しました。
この結果、IPプロデュース事業における売上高は82,468百万円(前期比0.9%増)、セグメント利益は10,048百万円(前期比5.6%減)となりました。
[アミューズメント事業]
アミューズメント事業では、国内アミューズメント施設の既存店売上高が前年同期比で103.0%となりました。また、「バンダイナムコ Cross Store」や「ガシャポンのデパート」のようなグループの商品・サービスと連携したバンダイナムコならではの施設展開が好調に推移しました。業務用ゲームにおいては、新製品「機動戦士ガンダム エクストリームバーサス2 オーバーブースト」や人気シリーズのアップデートキットの販売が好調に推移しました。また、燃料価格の上昇等の外部環境の変化も踏まえ、引き続き効率化に取り組みました。
この結果、アミューズメント事業における売上高は119,667百万円(前期比14.4%増)、セグメント利益は6,843百万円(前期比13.3%増)となりました。
[その他事業]
その他事業では、グループ各社へ向けた物流事業、その他管理業務等を行っている会社から構成されており、これらのグループサポート関連業務における効率的な運営に取り組んでおります。
その他事業における売上高は32,358百万円(前期比3.3%増)、セグメント利益は988百万円(前期比15.2%減)となりました。
財政状態は、次のとおりであります。
当連結会計年度末の資産につきましては、前連結会計年度末に比べ45,480百万円増加し971,838百万円となりました。これは主に投資有価証券が24,578百万円減少したものの、現金及び預金が41,641百万円、受取手形、売掛金及び契約資産が19,182百万円増加したことによるものです。
負債につきましては、前連結会計年度末に比べ2,209百万円減少し272,014百万円となりました。これは主に未払法人税等が2,830百万円減少したことによるものです。
純資産につきましては、前連結会計年度末に比べ47,689百万円増加し699,823百万円となりました。これは主に自己株式の取得により17,191百万円減少したものの、利益剰余金が55,494百万円、為替換算調整勘定が18,587百万円増加したことによるものです。
この結果、自己資本比率は前連結会計年度末の70.4%から72.0%となりました。
②キャッシュ・フローの状況
|
前連結会計年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
増減額 |
営業活動によるキャッシュ・フロー (百万円) |
95,625 |
88,906 |
△6,718 |
投資活動によるキャッシュ・フロー (百万円) |
△40,878 |
10,136 |
51,014 |
財務活動によるキャッシュ・フロー (百万円) |
△59,524 |
△75,237 |
△15,713 |
現金及び現金同等物の期末残高 (百万円) |
276,288 |
311,264 |
34,975 |
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)の残高は、前連結会計年度末と比べ34,975百万円増加し、311,264百万円となりました。各キャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は88,906百万円(前期比7.0%減)となりました。これは法人税等の支払額44,132百万円(前期は49,464百万円)等の資金の減少要因がありましたが、税金等調整前当期純利益が146,640百万円(前期は126,215百万円)となったことにより、全体としては資金が増加したことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果得られた資金は10,136百万円(前期は40,878百万円の使用)となりました。これは有形・無形固定資産の取得による支出が34,909百万円(前期は33,808百万円)等の資金の減少要因がありましたが、投資有価証券の売却による収入が53,641百万円(前期は2百万円)となったことにより、全体としては資金が増加したことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は75,237百万円(前期比26.4%増)となりました。これは主に配当金の支払額が45,998百万円(前期は47,310百万円)、自己株式の取得による支出が17,240百万円(前期は4百万円)であったことによるものです。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
生産高(百万円) |
前年同期比(%) |
デジタル事業 |
88,929 |
36.7 |
トイホビー事業 |
30,510 |
4.0 |
IPプロデュース事業 |
25,550 |
△16.0 |
アミューズメント事業 |
9,769 |
△15.1 |
合計 |
154,759 |
13.5 |
(注)1.上記金額は製造原価によって表示しております。
2.上記金額には商品化権使用料が含まれております。
3.上記金額はセグメント間取引の相殺消去後の数値であります。
b.受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
受注高(百万円) |
前年同期比(%) |
受注残高(百万円) |
前年同期比(%) |
デジタル事業 |
11,096 |
51.8 |
4,234 |
64.6 |
トイホビー事業 |
48,380 |
11.6 |
18,687 |
6.8 |
IPプロデュース事業 |
1,401 |
2.9 |
3,162 |
115.8 |
アミューズメント事業 |
821 |
85.3 |
303 |
20.6 |
合計 |
61,699 |
17.6 |
26,388 |
21.1 |
(注)上記金額はセグメント間取引の相殺消去後の数値であります。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
販売高(百万円) |
前年同期比(%) |
デジタル事業 |
366,110 |
△3.9 |
トイホビー事業 |
491,204 |
13.5 |
IPプロデュース事業 |
68,407 |
3.2 |
アミューズメント事業 |
118,636 |
15.0 |
その他 (注)2 |
5,853 |
△13.5 |
合計 |
1,050,210 |
6.1 |
(注)1.上記金額はセグメント間取引の相殺消去後の数値であります。
2.「その他」の区分は、報告セグメントに含まれない事業セグメントであります。
3.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先 |
前連結会計年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
||
金額(百万円) |
割合(%) |
金額(百万円) |
割合(%) |
|
Apple Inc. |
113,099 |
11.42 |
108,143 |
10.30 |
(注)販売実績が総販売実績の100分の10未満の相手先については記載を省略しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」をご参照ください。また、経営者の問題認識、今後の方針については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。
中期計画の進捗について
当社グループは、最上位概念である「パーパス“Fun for All into the Future”」のもと、バンダイナムコグループが目指す姿に向け、世界中のIPファン、あらゆるパートナー、グループ従業員、そして社会と常に向き合い、広く、深く、複雑につながる存在を目指し「Connect with Fans」を中期ビジョンに掲げた3カ年の中期計画を2022年4月にスタートしました。中期計画においては、重点戦略として、「IP軸戦略」「人材戦略」「サステナビリティ」を推進しています。「IP軸戦略」においては、グループ最大の強みであるIP軸戦略を核とし、世界中のファンとより広く、深く、複雑につながるための新たな取組み、IP軸戦略の進化に向けた取組み、さらには、世界の各地域でALL BANDAI NAMCOで一体となり事業構築に取り組むことで中長期における持続的な成長を目指しています。
中期計画の2年目となる当連結会計年度においては、環境変化へのスピーディな対応に加え、地域や事業を横断して展開するIPについては、グループ横断IPプロジェクトのもと、中長期でIP価値を最大化することを重視し、メディアとの連携強化や商品・サービスのグローバル展開を推進した結果、「ガンダムシリーズ」等基盤となる複数の定番IPの商品・サービスが力強い存在感を発揮することができました。また、商品・サービスの展開だけでなく、プロモーションやイベント等のマーケティング面においても各地域・各事業が連携しALL BANDAI NAMCOで一体となった取組みをワールドワイドで推進しました。このほか、仮想空間の中でIPを軸にバンダイナムコとファンが、ファン同士がつながるコミュニティの場を目指す「IPメタバース」の開発や、グループ内のファンデータを一元管理し、商品・サービスの満足度向上やファン同士のコミュニティ形成、メタバースの開発につなげるデータ基盤の整備を推進しました。さらに、IP軸戦略の核となるIP創出力強化に向けては、IP創出のための戦略投資を行い、商品・サービスや映像作品発の創出に加え、グループ横断の取組みによる創出、外部パートナーとの取組みによる創出等あらゆる方向からIPの創出・育成や既存IPのイノベーションに取り組みました。このほか、重点戦略である「人材戦略」「サステナビリティ」についても様々な取組みを推進しました(「人材戦略」及び「サステナビリティ」については、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組」をご参照ください)。
2024年3月期の概況について
当連結会計年度につきましては、事業別では、国内外においてハイターゲット層(大人層)向け商品やカード商材、カプセルトイ、菓子・食品等のカテゴリーの好調が継続したトイホビー事業、業務用ゲームの販売やバンダイナムコならではの施設展開が好調だったアミューズメント事業が過去最高業績となりました。IPプロデュース事業については、複数のガンダム新作映像の制作によりファン層を拡大したほか、ライブイベント等リアルなエンターテインメントが好調に推移しました。デジタル事業については、主力アプリタイトルや家庭用ゲームのワールドワイド向けの新作タイトルが好調に推移しましたが、計画未達となった新作オンラインゲームに関わる評価損や、次期中期計画を見据えたタイトル編成の見直しによる処分損を計上しました。同事業においては、開発体制の立て直しをはかり、バンダイナムコの強みを発揮できるバランスの取れたタイトルポートフォリオを確立してまいります(当連結会計年度の各事業別の状況につきましては「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」をご参照ください)。
グループ全体では、多様なIPと幅広いカテゴリーによるポートフォリオ経営効果で、好調な事業が苦戦した事業を一定程度補完し、売上高は初めて1兆円を超え過去最高売上高となりました。利益面では、デジタル事業の評価損や処分損の計上等により、営業利益と経常利益については減益となりました。親会社株主に帰属する当期純利益については、保有する投資有価証券について一部売却を行ったことによる投資有価証券売却益を計上し、1千億円を超え増益となりました。
株主還元について
当社は、株主の皆様への利益還元を経営の重要施策と位置づけており、当社グループの競争力を一層強化し、財務面での健全性を維持しながら、継続した配当の実施と企業価値の向上を実現していくことを目指しております。
当連結会計年度の株主還元につきましては、長期的に安定した配当を維持するとともに資本コストを意識し、安定的な配当額としてDOE(純資産配当率)2%をベースに、総還元性向50%以上を目標に株主還元を実施するという当社の株主還元に関する基本方針に基づき、年間配当金は、ベース配当20円に業績連動配当40円を加え、1株当たり60円となります。
また、保有資産の有効活用により資本効率の向上をはかるとともに、環境変化に対応し株主還元を含めた機動的な資本政策を実行することを目的に、当第4四半期連結会計期間に自己株式の取得を行いました。取得した自己株式の総数は6,000,000株、株式取得価額の総額は17,237百万円となり、配当及び本自己株式取得を踏まえた総還元性向は55.7%となります。なお、当第4四半期連結会計期間に取得した自己株式と同数の自己株式を2024年5月21日付で消却しております。当社グループでは、資本効率の向上と財務体質の強化をはかることが企業価値向上のための重要な経営課題と認識しており、今後も資本効率を常に意識してまいります。
中長期で目指す経営目標について
当社グループは、2005年の㈱バンダイと㈱ナムコの経営統合当時、グループの長期目標として「売上高1兆円、営業利益1,000億円」を掲げました。また、現中期計画の最終年度の計数目標としては、「売上高1兆1千億円 営業利益1,250億円 ROE(自己資本当期純利益率)12%以上」を掲げています。中期計画の2年目となる当連結会計年度は、売上高1,050,210百万円 営業利益90,682百万円 ROE15.0%となり、長期目標及び中期計画最終年度の計数目標が視野に入ってまいりました。
当社グループでは、変化の激しい市場において、中長期で持続的な成長を目指すため、安定した収益基盤を強固にすることを重視しています。従来より、各中期計画において、IP軸戦略の強化や進化、グローバル展開を推進することで収益基盤を強化し、環境変化に対応した新たなチャレンジを行い成長してきました。その結果、各中期計画における営業利益水準は着実に厚みを増しています。今後も、IP軸戦略を通し世界中のファンとつながるとともに、多様なIPや事業カテゴリーによるポートフォリオ経営を推進し、環境変化やヒットの有無に大きく左右されづらい安定基盤をさらに強固なものとしていくことを目指してまいります。
財政状態につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」をご参照ください。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループは、運転資金及び設備資金につきましては、主として内部資金により充当することとしており、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は311,264百万円となっております。
当連結会計年度のキャッシュ・フローの概況につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。
翌連結会計年度のキャッシュ・フローの見通しにつきましては、営業活動で得られるキャッシュ・フローは、当連結会計年度に比べ法人税等の支払いの増加が見込まれるものの、営業利益の増加が見込まれるため、当連結会計年度を上回る見込みであります。また、投資活動によるキャッシュ・フローについては、当連結会計年度に比べ投資有価証券の売却による収入の減少及び設備投資等の資金需要の増加が見込まれるため、使用が収入を上回る見込みであります。一方、財務活動により使用するキャッシュ・フローについては、当連結会計年度に比べ配当金の支払いの減少が見込まれるため、当連結会計年度より下回ることを見込んでおります。翌連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高については、営業活動で得られるキャッシュ・フローが、投資活動及び財務活動により使用するキャッシュ・フローを下回ることが見込まれるため、当連結会計年度末に比べて減少となる見込みであります。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
重要な契約は次のとおりであります。
契約会社名 |
相手先名 |
国名 (地域) |
契約内容 |
契約期間 |
㈱バンダイナムコエンターテインメント |
㈱ソニー・インタラクティブエンタテインメント |
全世界 |
プレイステーション(全機種)対応ソフトの開発、製造、販売の被許諾 |
2014年11月20日から 2019年3月31日まで 以後1年ごとの自動更新 |
㈱バンダイナムコエンターテインメント |
任天堂㈱ |
全世界 |
①「Nintendo Switch」用ソフトの開発、ダウンロード販売の被許諾 |
2016年2月26日から 2019年2月25日まで 以後1年ごとの自動更新 |
日本 |
②「Nintendo Switch」用ソフトのパッケージ版販売被許諾 |
2016年2月26日から 2019年2月25日まで 以後1年ごとの自動更新 |
||
㈱バンダイナムコエンターテインメント |
MICROSOFT LICENSING, GP |
全世界 |
「Xbox One」及び「Xbox Series」用ソフトの開発、製造、販売の被許諾 |
2020年6月1日から |
㈱バンダイナムコエンターテインメント |
Valve Corporation |
全世界 |
STEAMの開発、製造、販売の許諾契約 |
定めなし |
㈱バンダイナムコエンターテインメント |
Apple Inc. |
全世界 |
iOS搭載端末向けアプリケーションの配信及び販売に関する契約 |
1年間 (1年ごとの自動更新) |
㈱バンダイナムコエンターテインメント |
Google Inc. |
全世界 |
Android搭載端末向けアプリケーションの配信及び販売に関する契約 |
定めなし |
当社グループは市場変化に迅速に対応し、より収益性の高い魅力ある製品・サービスを提供するために、積極的な研究開発活動を行っており、デジタル事業、トイホビー事業を中心に、新素材や新技術を取り入れた安全かつ高付加価値・高品質・低コストの製商品開発に取り組んでおります。
具体的には、デジタル事業においては、基礎研究としてはネットワーク分野、ゲームコンテンツ分野等における研究活動を行うとともに、各種技術を用いた製商品の研究開発を行っております。トイホビー事業においては、キャラクターマーチャンダイジングを推進するための新商品開発等に取り組んでおります。
なお、当連結会計年度における研究開発費をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
金額(百万円) |
デジタル事業 |
|
トイホビー事業 |
|
IPプロデュース事業 |
|
アミューズメント事業 |
|
その他 (注)2 |
|
合計 |
|
(注)1.上記金額は、販売費及び一般管理費に含まれる研究開発費のセグメント間取引の相殺消去後の数値であります。
2.「その他」の区分は報告セグメントに含まれない事業セグメントであります。
また、このほかに、主な開発部門で発生した新規ゲームコンテンツの開発等に係る支出額は、デジタル事業が75,335百万円、アミューズメント事業が4,042百万円であります。なお、ゲームコンテンツ制作費の会計処理については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりであります。