第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

下記の事項には、将来に関するものが含まれておりますが、当該事項は当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1)経営の基本方針

当社グループ(当社および連結子会社)は、「-共に未来を生きる- 私たちは革新的なモノづくりを通じて、世界中のお客様と社会のために、安らぎに満ちた、今日にない明日を届けます。」という企業理念の下、お客様と社会に寄り添い、新しい価値の提供により、快適・安心・安全な社会の実現に貢献することを目指しております。

 

(2)経営環境および対処すべき課題

当社グループ(当社および連結子会社)の主力事業であるヒートポンプ技術を活用した空調機は、世界各国・地域においてクリーンかつ省エネ性・快適性・安全性に優れた必需品であるだけでなく、暖房や給湯用途で化石燃料機器の代替製品として気候変動の抑制に貢献すると期待されており、中長期的な市場拡大が見込まれます。

また、情報通信・電子デバイスも、災害対応力強化への社会的要請や電子機器の小型化・省エネ化へのニーズを背景に、今後の事業拡大が期待できます。

一方、消費行動の変化や各市場における競争激化に加え、ウクライナや中東地域での紛争のほか、世界的なインフレ進行、各国の金融政策、為替動向など、世界情勢や経済状況は一層不透明感を増しております。また、喫緊の経営課題として、サプライチェーンの混乱や市場環境の急激な変化など、今後も起こりうる外部環境変化への対応力強化がより一層求められます。

このような状況において当社グループは、企業理念の実践を通じた持続可能な社会実現への貢献を目指し、「サステナブル経営」を成長戦略の中核に据え、予測困難な状況下での事業継続とリスク耐性を確保しつつ、中長期的な事業の成長・発展を図るべく、以下の施策を推進しています。

 

〔重点テーマ〕

1.空調機ビジネス成長軌道への再挑戦

①成長戦略

-欧州、北米、インド、日本を重点市場と位置付け、リソースの最適配分・効果的投入による事業拡大および収益改善を図る。

-競争力のある製品の開発・販売の強化に加え、空調システムのライフサイクル全般にわたるソリューションの展開拡大を目指す。

 

<重点市場の施策>

・欧州:ATWを中心とした協業ビジネスの深化、コマーシャルビジネスの拡大

・北米:サービス・ソリューション分野のビジネス強化、販売体制再構築

・インド:現地生産の加速、空調エンジニアリング子会社との連携強化

・日本:住設ルートの販売拡大、空調ライフサイクルにおけるソリューション提供

 

②開発力強化と生産拠点展開

-開発生産性の向上(モジュラーデザインの本格導入、PLM・CAE活用)

-ソリューションビジネス本格展開のためのクラウドソフトウェア開発促進

-将来の環境規制を見据えた対応(冷媒転換、省エネ規制等)

-グローバル生産体制の強化

 

③損益構造改革(営業活動の効率化・最適化、製品原価率の低減、内製化拡大、各部門でのオペレーション改革)

 

2.情報通信システム・電子デバイスのビジネス基盤の強化

①情報通信システム

-公共向け(消防/防災システム):「緊急防災・減災事業債」を活用した自治体の防災・減災インフラ整備に伴う商談案件数増加への対応強化

-民需向け(流通・医療):各分野における人材・BPOビジネスとの融合

②電子デバイス

パワーモジュールを中心とした事業への転換、コストダウンの取り組み強化

 

〔サステナブル経営〕

中長期的な事業の成長・発展を通じた持続可能な社会実現への貢献を目指す「サステナブル経営」をすべての事業活動の基本に据え、以下の三つを柱とした各施策の取り組みのさらなる進化・発展を図る。

 

1.地球との共存(Planet)

・気候変動対応(カーボンニュートラルへの取り組み)

・資源の効率的利用

・サーキュラーエコノミーへの挑戦

 

2.社会への貢献(Society)

・新価値創造(サステナブル・プロダクト)の推進

・サステナブル調達の推進(人権問題への対応)

・地域社会との共存

 

3.社員との共感(Our People)

・社員の「Well-being」の実現

・自発的な学びの機会の提供

・DE&Iの促進

 

これらの取り組みにより、経営基盤ならびにお客様や社会からの信頼をより一層強固なものとし、当社グループの継続的な成長を目指して常に自己革新を追求してまいります。

 

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループは、企業理念「-共に未来を生きる-」を実現するために、「サステナブル経営」を事業活動の中心と位置づけて推進しており、主な取り組みは以下のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において判断したものであります。

 

ガバナンス

当社グループでは、サステナビリティ推進統括部が全社横断的に関与して「サステナブル経営」を推進しています。

2021年4月には、取締役会での議論を経て、サステナブル経営の基本方針および重点テーマを策定・公表しました。

また、経営に関する重要事項については、原則、上席常務以上の経営執行役で構成される経営会議(原則として毎月2回開催)において協議するとともに、毎月1回定期的または必要に応じて臨時に開催される取締役会において審議・決定しています。

業務執行については、全経営執行役で構成される執行会議(原則として毎月3回開催)において業務執行上の具体的重要事項を審議・決定し、特に重要な事項については取締役会に付議しています。

サステナブル経営については、経営執行役を中心に構成されるサステナビリティ推進委員会(原則として年4回開催)において重要事項を審議・決定し、特に重要な事項については取締役会に付議しています。

なお、当社のサステナブル経営の達成を役員の責務とし、実践・推進することを目的として、当社取締役会が予め設定したサステナブル経営の評価指標達成を譲渡制限解除の条件とする「サステナブル経営指標要件型」の譲渡制限付株式報酬を導入しています。

 

<気候変動におけるガバナンス>

サステナビリティ推進委員会におけるWG(ワーキンググループ)として、環境推進WGを設けており、カーボンニュートラル達成のほか、第10期環境行動計画の対応方針・施策等についての進捗や成果を確認、さらなる改善や新たな取り組みを図っています。

また、当社グループは、環境に関する国際規格であるISO14001に基づく環境マネジメントシステムを構築して、環境経営を推進しています。当社グループ内では、日本国内が第三者による統一認証を取得するとともに、海外生産会社は各工場単位で環境マネジメントシステムを構築しており、それぞれが第三者認証を取得して環境経営を推進しています。

戦略

当社グループは、中長期的な事業の成長・発展を通じた持続可能な社会実現への貢献を目指す「サステナブル経営」をすべての事業活動の基本に据えており、当社グループの成長・発展、事業基盤強化を図ることに加え、「地球との共存(Planet)」「社会への貢献(Society)」「社員との共感(Our People)」を三つの柱として取り組んでいます。

 

<気候変動における戦略>

①カーボンニュートラルの実現

2050年度までにバリューチェーン全体における温室効果ガス排出量(Scope1,2,3)実質ゼロを掲げており、中期目標として2035年度に2021年度比で温室効果ガス排出量55%削減を目指しております。なお、事業活動において自らが使用する電力について、2022年4月より再生可能エネルギー比率100%転換を実現しました。

 ②サステナブル・プロダクトの販売推進

社会課題を解決し、持続可能な社会への貢献が期待できる戦略的製品およびサービスを「サステナブル・プロダクト」として認定し、売上拡大を図っていきます。空調機部門で培ったヒートポンプ技術を活かした製品を開発・販売し、化石燃料を使用する暖房機器との置き換えが図られることにより、使用時における温室効果ガス排出量の大幅な削減が期待できます。今後も、新規商品・サービスの開発や市場開拓などを進め、2030年度に連結売上高の30%以上の売上を目指しています。

戦略

<人的資本における戦略(人材育成方針および社内環境整備方針)>

企業理念「-共に未来を生きる-」を実践するために「あるべき人材像」を以下のとおり定め、社員一人ひとりが気力を保ち、成長し続けること、変革に立ち向かう組織を作ること、その結果、当社グループを持続的に成長させることを目指しています。

 

あるべき人材像

 ・自発的に挑戦し、成長し続ける人材

 ・多様な文化・価値観を受入れ活かせる人材

 ・誠実さを大切にし、利他の心を持つ人材

 

■自発的なキャリア形成と学びの支援

当社グループを持続的に成長させるために、人材育成・教育が果たすべき役割は非常に大きいと考えています。「各階層が担う役割」を明確化するとともに、その役割を果たすためには社員が自発的に挑戦することを求めています。そのため、社員一人ひとりが自分のありたい姿を主体的に考え、先行き不透明で競争の激しい時代に活躍できるよう、社員の「自発的なキャリア形成」と「学び」を支援する環境整備を進めています。

 

■ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)の推進

ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンの推進を「持続的成長を支えるための経営戦略」の一つと位置付け、多様な人材が活躍できる環境を作りあげること、また、それらの人材の育成と活用による競争力の向上を目指して取り組んでいます。

 

■健康経営の推進

当社グループは、社員が健康でいきいきと働く職場があってこそ、自発的に取り組む人材が育成できると考え、健康経営を推進しています。

「社員の健康は経営の貴重な財産である」ことを明確にし、「働きやすい、働きがいがある職場」「社員全体の意欲・総合力の向上」に向けて、“健康でいきいきした職場づくり”に取り組んでいます。

 なお、当社は社員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組む法人として、経済産業省と日本健康会議より、「健康経営優良法人2024(大規模法人部門)」に認定されました。

リスク管理

当社グループは、事業をグローバルに展開するなかで影響を受ける可能性のあるリスクを迅速に把握し、タイムリーに施策を講じていくため、コンプライアンス、危機管理、人事・労務・安全衛生管理、環境、ITセキュリティ、情報管理などに関するリスクのアセスメントを実施し、「コンプライアンス/リスク・マネジメント委員会」での審議を通じて、優先的に取り組むべき「重要テーマ」を選定し、リスクの低減を図る活動を推進しています。また、委員会の年間活動状況は、取締役会に報告されています。

 

<気候変動におけるリスク管理>

当社グループは、気候変動に伴うさまざまな外部環境の変化について、TCFD提言が例示する「移行リスク」と「物理的リスク」に分類のうえ、財務的影響および発生可能性を3段階で評価し、重要なリスクと機会を特定しています。

 

■気候関連リスク・機会の特定、対応策検討、実施管理プロセス

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リスク管理

①主に2℃シナリオの途上に起こる「低炭素経済への移行に関連したリスク」と、②世界のCO2排出量削減未達により4℃シナリオに至った場合に発生する「気候変動に伴う物理的影響に関連したリスク」の二つのシナリオに関し、TCFDの分類に沿って検討しました。

また、事業の機会についても検討し、リスクへ備え機会につなげるための戦略的取り組みをまとめています。

 

■リスク:事業への影響度と発生可能性

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■機会

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指標と目標

<気候変動における指標と目標>

中長期的に達成すべき目標を全社員が共有し、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に貢献しながら、環境負荷低減と企業価値向上の両立を目指します。

 

■指標と目標

項目

指標

中期目標

長期目標

カーボンニュートラルの実現

温室効果ガス排出量(Scope1,2,3の合計)

2035年度に2021年度比で55%削減

2050年度までにゼロ

サステナブル・プロダクト(注)の販売推進

サステナブル・プロダクトの売上高構成比

2030年度に連結売上高の30%以上

(注)温室効果ガスの排出量削減や社会課題解決に大きく貢献する製品やサービスとして当社が  認定する製品

 

■進捗状況

指標

2021年度

2022年度

2023年度

温室効果ガス排出量

Scope1

(注)1 30,651/t-CO2e

(注)1   20,895/t-CO2e

(注)4 -

Scope2

(注)1 12,536/t-CO2e

(注)1、3    0/t-CO2e

(注)4 -

Scope3

31,763,593/t-CO2e

(注)2  40,504,255/t-CO2e

(注)4 -

合計

31,806,781/t-CO2e

40,525,150/t-CO2e

(注)4 -

サステナブル・プロダクトの

売上高構成比

13.9%(約394億円)

15.5%(約576億円)

12.3%(約388億円)

(注)1.KPMGあずさサステナビリティ株式会社による第三者検証を受け、保証書を取得しております。

   2.Scope3 カテゴリ11(販売した製品の使用:39,577,537/t-CO2e)について、(注)1と同様に保証書を取得しております。

   3.2022年4月に、事業活動において自らが使用する電力の再生可能エネルギー比率100%転換を達成しました。

   4.2023年度の実績については、当社ウェブサイトに掲載予定です。

<人的資本における指標と目標>

ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン推進の一環として、性別に関わらず活躍できる組織風土づくりに取り組んでおり、女性活躍にも注力しています。

また、仕事と育児の両立を支援することで、性別に関わらず育児事情を抱える社員がその能力を十分に発揮できるよう、取り組みを進めており、以下のような目標を掲げております。

 

項目

指標

目標(注)

実績

女性活躍推進

新任管理職、リーダー層(L等級)への女性従業員の新規昇格者数

2021年度から2026年度まで15以上

2021年度から2023年度累計:11

男性育児休職取得推進

男性従業員(正規雇用)の育児休職または配偶者出産休暇の取得率

2025年度まで100%

2023年度:79.4

男性従業員(正規雇用)の育児休職取得率

2025年度まで70%以上

2023年度:55.9

男性従業員(正規雇用)の育児休職の平均取得期間

2025年度まで42以上

2023年度:50

(注)提出会社の目標値となります。

 

 

3【事業等のリスク】

当社グループ(当社および連結子会社)の事業等に関するリスクについて、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項は、下記の通りであります。

下記の事項には、将来に関するものが含まれておりますが、当該事項は当連結会計年度末現在において判断したものであり、事業等のリスクはこれらに限られるものではありません。

 

(1)製品の需要変動

当社グループは、空調機を中心としてワールドワイドに事業を展開しており、製品の需要は、製品を販売している様々な国や地域における経済状況等の影響を受けます。従いまして、天候不順や景気後退等に伴う大幅な需要変動が生じた場合、当社グループの業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)為替レートおよび金利の変動

当社グループは、為替変動および金利リスクの影響を軽減するために、ヘッジ等を通じてこれらのリスクによる影響を最小限にとどめる措置を講じております。特に、為替については、当社グループの海外売上高比率が約74%あり、かつ、主力の空調機セグメントは主に中国・タイの工場で製品を製造しているため、外部および関係会社間の外貨建取引の割合が高くなっていることから、為替レートの変動が急激な場合、当社グループの業績および財務状況に多大な影響を及ぼします。この影響を軽減させるため、グループ各社の仕入通貨と販売通貨をマッチングさせるなど、為替リスクの軽減を図っております。また、外貨建債権債務に対しては、為替予約等によりリスクヘッジを行っております。さらに、グループ各社の為替ポジションを当社財務経理部門で把握しており、為替レートの変動に対して適宜対応できる体制をとっております。これらの取り組みにより影響を最小限にとどめるよう努めておりますが、急激な為替および金利の変動は、当社グループの業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)部材の調達および市況変動

当社グループは、戦略的提携等を通じて基幹部品の供給確保に努める一方で、素材および部品の調達を外部の取引先に依存しているため、急激な需要変動や調達先における自然災害・事故の発生等によりコンプレッサーや電子部品などの調達部材の供給環境が著しく悪化した場合や、銅およびアルミなどの市況が急激に変動した場合には、生産・販売計画の見直しや大幅なコスト増などにより、当社グループの業績および財務状況に多大な影響を及ぼします。この影響を軽減させるため、銅については価格のヘッジ等を行うとともに、部材のマルチソース拡大、設計の標準化、内製化の拡大、調達先との関係強化等によるコスト削減と安定調達に努めておりますが、調達部材の供給環境が著しく悪化した場合や、市況変動に伴い調達部材の価格が急激に高騰した場合には、当社グループの業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)商品開発力

当社グループが継続して成長していくためには、独創的かつ魅力ある商品をタイムリーに提供していく必要がありますが、当社グループの製品・サービスの価値を相対的に著しく低下させるような、画期的な新商品、新技術等が他社によって開発された場合には、当社グループの将来の成長、業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5)海外での事業活動

当社グループは、エアコンの生産を海外で行っており、また販売活動についても世界各国において展開しております。海外での事業活動には、地政学リスクの高まり、予期しない政策や法規制の変更、産業基盤の脆弱性、雇用・労働問題、政情不安、海運輸送の需給逼迫・海上運賃高騰など、各国・地域における政治・経済面での不確定要因が存在する場合があり、当社グループの業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6)他社との提携等

当社グループは、事業強化を目的として合弁や技術提携・協業等の形で他社と共同で事業活動を行っているほか、空調機事業においては、販売代理店制度を採用している地域があります。既存の提携先や代理店等の経営方針、経営環境の変化や財政状態の悪化等の影響を受けた場合や、提携・M&A等において期待した成果が得られない場合には、当社グループの業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

(7)法的規制等の影響

当社グループは、国内外において環境関連規制や知的財産に係わる紛争等の影響を受け、事業活動が制限される恐れがあるほか、各国の税法・競争法等に違反したと判断された場合には、刑事処分、課徴金等の行政処分または損害賠償請求を受ける可能性があります。また、ビジネスと人権に関する国内外の関心が高まるなか、サプライチェーンを含め人権問題が発生した場合、事業活動が制限される恐れや当社グループの社会的信用が毀損される可能性があります。当社グループとしては、コンプライアンス体制の強化および法的手続きによる権利の保全に万全を期しておりますが、コンプライアンス上のリスクを完全に排除することはできない可能性があり、国内外の関連法令や規則等に抵触する事態が発生した場合には、当社グループの業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8)製品等の品質

当社グループは、製品・システムおよびその施工・サービスに関する品質保証について万全を期しておりますが、製品の欠陥やシステム・工事の瑕疵が全く発生しないという保証はありません。予期せぬ事態に備え賠償保険に加入しておりますが、この保険が最終的に負担する賠償額を十分にカバーできるという保証はありません。万一リコール等に発展する品質問題が発生した場合には、当社グループの業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(9)人材の確保

当社グループが継続して成長していくためには、必要とする人材の確保・育成が不可欠であります。しかし、人材の獲得競争が激しさを増すなか、人材の採用・育成が計画どおり進まなかった場合には、当社グループの将来の成長、業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10)情報管理

当社グループは、グループ各社が保有する個人情報や機密情報の保護・管理について、社内規程の策定、従業員教育、情報セキュリティの強化等を通じ、情報流出の防止に細心の注意を払っておりますが、情報の流出・漏洩のリスクを完全に排除することはできない可能性があり、サイバー攻撃等による情報流出、重要データの破壊・改ざん、システム停止等が発生した場合や国内外の情報管理に関する関連法令・規則等に抵触する事態が発生した場合には、その対応に要する多額の費用負担や当社グループの社会的信用の低下等により、当社グループの業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(11)自然災害その他

当社グループは、国内および世界各国で事業を展開しております。不測の事態に備え、調達先の分散や生産拠点の相互補完等を含めたBCM(事業継続マネジメント)の強化を図っておりますが、世界的な気候変動、地震・洪水等の自然災害や火災等の事故災害、新たな感染症の流行、テロや戦争、その他の要因により社会的混乱や社会・経済活動の制限等が発生した場合、事業活動の停止や機会損失、復旧のための多額の費用負担等により、当社グループの業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。また、当社は気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)による提言に賛同しており、気候変動が及ぼすリスクと機会について、継続的に影響評価およびその情報開示に取り組んでいきます。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

①経営成績の状況

当連結会計年度(2023年4月1日から2024年3月31日まで)におきましては、国内向け空調機および情報通信システムの売上は増加しましたが、海外向け空調機の減収が大きく、連結売上高は3,164億7千6百万円(前年度比14.7%減)となりました。

損益につきましては、コストダウンの進展や素材価格などコスト環境の好転はあったものの、流通在庫圧縮を目的とした海外向け空調機の出荷抑制に伴う減収影響が大きく、営業利益は57億4千7百万円(同61.9%減)となりました。経常利益は、円安の進行など為替変動に伴う為替差益の計上により143億7千5百万円(同17.5%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は、特別損失として独禁法関連損失等を計上したことなどから、30億6千7百万円(同64.7%減)となりました。

 

セグメントの業績は、次のとおりであります。

 

<空調機部門>

空調機部門では、前年度に上海市都市封鎖の影響を大きく受けた国内向けの売上は前年度を上回ったものの、海外向けでは、中東、北米向けの前年度の出荷が高水準であったことに加え、消費行動の変化や世界的なインフレの進行などに伴う各地域での需要停滞による流通在庫の増加や、商品供給不安解消に伴う追加受注の鈍化などにより、売上高は2,805億3千9百万円(同17.1%減)となりました。営業利益は、コストダウンの進展や素材価格などコスト環境の好転はあったものの、流通在庫圧縮を目的とした海外向けの出荷抑制に伴う減収影響が大きく、7億3千万円(同93.9%減)となりました。

 

〔海外向け〕

売上高は、2,314億4千8百万円(同21.2%減)となりました。

中東、北米向けの前年度の出荷が高水準であった影響が大きいことに加え、欧州向けATW(ヒートポンプ式温水暖房システム)の販売減もあり、前年度比で減収となりました。

また、サプライチェーン正常化に伴い、供給が遅れていた受注残の出荷が前年度に大きく進展したものの、商品供給不安解消に伴い販売代理店等からの追加受注が鈍化したほか、各地域での需要停滞などにより、流通在庫が高水準となり、北米等において当初の想定より現地在庫削減に時間を要しました。こうしたなか、出荷を抑制し現地販売促進に最優先で取り組みました。なお、地域別の状況は以下のとおりです。

 

米州では、北米において、一昨年度からの販売ずれ込みにより前年度の出荷が高水準であったことに加え、販売代理店等における在庫削減に注力し出荷を抑制したことから、売上が減少しました。なお、米国の環境規制への対応を見据えた新機種開発を前倒しで進めるとともに、サービス・ソリューション分野での連携を含めた販路開拓や現地の販売体制強化など、今後の事業拡大に向けた取り組みを進めております。

 

欧州では、ルームエアコンの販売が前年度を下回ったほか、ATWにおいて、サプライチェーン混乱下でも市場拡大期待に応えて優先的に生産・出荷し、現地在庫の積み増しが進んでいたところ、補助金制度の変更をはじめとした一時的な市場環境変化の影響を受け、売上が減少しました。なお、ATWの流通在庫削減に向け、販売促進策を強化し消化促進に努めております。また、今後の需要拡大が期待される施工性に優れたATWの新機種をはじめ、ルームエアコン、VRF(ビル用マルチエアコン)においても商品ラインアップ強化を進めております。

 

中東・アフリカでは、一昨年度からの販売ずれ込みにより前年度の出荷が高水準であったことなどから、大幅減収となりましたが、流通在庫の削減は着実に進展しております。

 

オセアニアでは、ルームエアコンの売上は前年度並みにとどまりましたが、サービスメンテナンス業務が堅調に推移したことから、売上は前年度を上回りました。

 

アジアでは、主力市場のインドにおいて、第1四半期は天候不順の影響を受けたものの、第2四半期以降ルームエアコンの販売が回復するとともに、VRFの販売も伸長したほか、タイの空調機用コンプレッサー製造会社の連結化効果もあり、売上が増加しました。なお、インドでの現地生産をさらに進め、商品ラインアップの拡充とともに、コストダウンにも取り組んでまいります。

 

中華圏では、中国において、不動産市況の低迷などにより、VRFの販売が停滞したほか、台湾向けの販売が減少したことなどから、売上が減少しました。

 

〔国内向け〕

売上高は、490億9千万円(同10.0%増)となりました。

ルームエアコン市場は、夏期に記録的な猛暑となったものの、業界出荷台数は、高水準であった前年度の反動に加え、物価上昇や消費行動の変化の影響などにより、前年度を下回りました。当社は、上海市都市封鎖の影響による大幅な出荷減があった前年度に対し、今年度は出荷が正常化していることから、省エネ性の高い機種を中心に、主に住宅設備ルート向けの販売が回復するとともに、売価改善にも取り組み、売上が増加しました。

 

<情報通信・電子デバイス部門>

情報通信・電子デバイス部門では、情報通信システムの販売増により、売上高は332億6百万円(同10.9%増)、営業利益は44億3千3百万円(同145.3%増)となりました。

 

〔情報通信システム〕

売上高は、209億5千1百万円(同54.9%増)となりました。

公共システムにおいて、消防の広域化・共同運用事業の本格化や、防災・減災対応のインフラ整備事業に対する補助政策を背景に、消防指令システムおよび消防無線システムを中心に商談案件数が増加しているなか、受注済みシステムの納入が順調に進展するとともに、民需システムの販売増もあり、売上が増加しました。なお、来年度の納入に向けた受注も順調に推移しております。

 

〔電子デバイス〕

売上高は、122億5千4百万円(同25.3%減)となりました。

自動車生産の回復に伴い車載カメラの販売は前年度を上回ったものの、産業用ロボット向け電子部品・ユニット製造において、中国における設備投資の停滞で販売が減少したことから、売上が減少しました。

 

<その他部門>

売上高は27億3千1百万円(同3.4%増)、営業利益は5億8千3百万円(同56.5%減)となりました。

 

②財政状態の状況

Ⅰ 資産、負債および純資産の概況

当連結会計年度末の総資産につきましては、開発・生産設備、基幹システム刷新等のⅠT関連への投資およびノルウェー、ギリシャにおける販売代理店の連結子会社化に伴うのれんの計上などによる増加はありましたが、棚卸資産の圧縮ならびに売上減少に伴う受取手形、売掛金及び契約資産の減少に加え、タイにおける空調機用コンプレッサー工場の持分法適用関連会社からの連結子会社化などに伴う投資有価証券の減少により、前連結会計年度末比227億5千5百万円減少し、2,756億3千4百万円となりました。

負債につきましては、支払手形及び買掛金ならびに短期借入金の減少などにより、前連結会計年度末比297億6千4百万円減少し、1,290億5千4百万円となりました。

純資産につきましては、親会社株主に帰属する当期純利益の計上があったものの配当金の支払に伴い利益剰余金は減少しましたが、為替換算調整勘定などの増加により、前連結会計年度末比70億8百万円増加し、1,465億7千9百万円となりました。なお、昨年8月に譲渡制限付株式報酬としての新株式を発行したことにより、資本金および資本剰余金がそれぞれ47百万円増加しております。

この結果、当連結会計年度末の自己資本比率は5.6%増加し、50.3%(前連結会計年度末は44.7%)となりました。

 

Ⅱ キャッシュ・フローの概況

当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローにつきましては、棚卸資産の圧縮などによる運転資本の改善ならびに税金等調整前当期純利益および減価償却費の計上などにより、426億2千4百万円の収入(前連結会計年度は80億4千3百万円の支出)となりました。

投資活動によるキャッシュ・フローにつきましては、開発・生産設備、基幹システム刷新等のⅠT関連への投資およびノルウェー、ギリシャにおける販売代理店ならびにタイにおける空調機用コンプレッサー工場の連結子会社化に伴う株式取得などにより、164億2千9百万円の支出(同84億2千3百万円の支出)となりました。この結果、当連結会計年度のフリー・キャッシュ・フローは261億9千5百万円の収入(同164億6千6百万円の支出)となりました。

財務活動によるキャッシュ・フローにつきましては、金融機関への借入金返済および配当金の支払を行ったことなどにより、250億7千7百万円の支出(同193億1千6百万円の収入)となりました。

この結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物残高は、前連結会計年度末比23億2千4百万円増加し、197億1千5百万円となりました。

 

③生産、受注および販売の実績

Ⅰ 生産実績

当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

 至 2024年3月31日)

前年同期比(%)

空調機(百万円)

204,850

△31.5

情報通信・電子デバイス(百万円)

29,051

11.3

合計(百万円)

233,901

△28.1

 (注)金額は販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。

 

Ⅱ 受注実績

当社グループ(当社および連結子会社)の製品は、需要予測による見込生産が主体のため、受注実績を記載しておりません。

Ⅲ 販売実績

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

 至 2024年3月31日)

前年同期比(%)

空調機(百万円)

280,539

△17.1

情報通信・電子デバイス(百万円)

33,206

10.9

報告セグメント計(百万円)

313,745

△14.8

その他(百万円)

2,731

3.4

合計(百万円)

316,476

△14.7

 (注) 1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

    2.総販売実績に対する割合の10%以上を占める相手先はありません。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①財政状態および経営成績の状況に関する認識および分析・検討内容

当連結会計年度は、販売面では、国内向け空調機および情報通信システムの売上は増加しましたが、海外向け空調機の減収が大きく、為替を除く売上高は前連結会計年度比18%減となりました。損益面では、コストダウンの進展や素材価格などコスト環境の好転はあったものの、流通在庫圧縮を目的とした海外向け空調機の出荷抑制などの減収影響が大きく、営業利益は57億円と前連結会計年度比94億円(前連結会計年度比62%減)の減益となりました。経常利益は144億円(同18%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は31億円(同65%減)となりました。

なお、当連結会計年度の素材価格および主要通貨の為替レートは記載のとおりであります。

 

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Ⅰ 売上高

当連結会計年度の売上高は3,165億円と前連結会計年度比545億円(同15%減)の減少となりました。

このうち空調機部門では、前連結会計年度に上海市都市封鎖の影響を大きく受けた国内向けの販売は増加しましたが、流通在庫の増加や追加受注の鈍化などにより、海外向けの販売が減少し、売上高は2,806億円と前連結会計年度比578億円(同17%減)の減少となりました。

情報通信・電子デバイス部門では、情報通信システムの販売増により、売上高は332億円と前連結会計年度比32億円(同11%増)の増加となりました。

その他部門の売上高は、27億円と前連結会計年度比1億円(同3%増)の増加となりました。

 

 

Ⅱ 営業利益

当連結会計年度の営業利益は57億円と前連結会計年度比94億円(同62%減)の減益となりました。

空調機部門においては7億円と前連結会計年度比113億円(同94%減)の減益となりました。変動要因は、海外向けの販売物量減少により229億円減益、素材・部品価格や海上運賃の好転の影響で110億円増益、為替影響で18億円増益、事業強化に向けた先行投資費用の増加などにより12億円減益となっております。

情報通信・電子デバイス部門においては情報通信システムの増収影響により、44億円と前連結会計年度比26億円(同145%増)の増益となりました。

その他部門においては6億円と前連結会計年度比7億円(同57%減)の減益となりました。

 

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Ⅲ 経常利益

当連結会計年度の経常利益は144億円と前連結会計年度比30億円(同18%減)の減益となりました。営業外損益では純額で87億円(益)となり、前連結会計年度比64億円良化いたしました。この主な要因は、円安進行に伴い為替差益が増加したことなどによるものであります。

 

Ⅳ 親会社株主に帰属する当期純利益

当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は、経常利益の144億円に対して、特別利益として段階取得に係る差益を計上しましたが、特別損失として独禁法関連損失、関係会社清算損、減損損失を計上したことに加え、税金費用ならびに非支配株主に帰属する当期純利益を控除したことから、31億円と前連結会計年度比56億円(同65%減)の減益となりました。

この結果、1株当たり当期純利益は29.29円となり、前連結会計年度比53.75円減少いたしました。

 

Ⅴ 経営成績に重要な影響を与える要因

当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因は、「3 事業等のリスク」に記載しております。そのなかでも、為替レート、素材・部品価格の市況変動が経営成績に与える影響は直接的であり、かつ、重大なものと認識しております。

為替については、当社グループの海外売上高比率が約74%あり、かつ、主力の空調機セグメントは主に中国・タイの工場で製品を製造しているため、外部および関係会社間の外貨建取引の割合が高くなっていることから、為替レートの変動が急激な場合、当社グループの業績および財務状況に多大な影響を及ぼします。この影響を軽減させるため、グループ各社の仕入通貨と販売通貨をマッチングさせるなど、為替リスクの軽減を図っております。また、外貨建債権債務に対しては、為替予約等によりリスクヘッジを行っております。さらに、グループ各社の為替ポジションを当社財務経理部門で把握しており、為替レートの変動に対して適宜対応できる体制をとっております。

素材・部品については、戦略的提携等を通じて基幹部品の供給確保に努める一方で、調達を外部の取引先に依存しているため、コンプレッサーや電子部品などの調達部材の供給環境が著しく悪化した場合や、銅およびアルミなどの市況が急激に変動した場合には、当社グループの業績および財務状況に多大な影響を及ぼします。この影響を軽減させるため、銅については価格のヘッジ等を行うとともに、部材のマルチソース拡大、設計の標準化、内製化の拡大、調達先との関係強化等によるコスト削減と安定調達に努めております。

上記に加え当社グループは、トータルコストダウンの推進や商品構成の改善などにより、為替レート、素材・部品価格の市況変動に伴う損益影響を極力低減すべく、たゆまぬ努力を重ねてまいります。

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討並びに資本の財源および資金の流動性に係る情報

当連結会計年度のキャッシュ・フローにつきましては、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②財政状態の状況 Ⅱ キャッシュ・フローの概況」に記載のとおりであります。

当社グループにおいては、事業上必要な運転資金および設備投資資金は、利益と資金効率で生み出したキャッシュで賄うことを基本方針としております。その上で、成長投資のための多額のキャッシュが必要となった場合は、銀行借入や社債等の調達手段のなかから、適宜、最適と判断する手段にて調達する方針としております。

当社グループは、CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)を資金効率の指標とし、売上債権の圧縮、棚卸資産および買掛債務の適正化を図ることで、自己資金を生み出す力の強化を図っております。

なお、当連結会計年度末における借入金残高は13,573百万円、リース債務を含む有利子負債残高は14,336百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物残高は19,715百万円となっております。

 

③重要な会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成にあたって、連結貸借対照表上の資産および負債の計上額、ならびに連結損益計算書上の収益および費用の計上額には、過去の情報および将来の予測等をもとに行った合理的な見積りおよびその基礎となる仮定が含まれており、実際の結果は異なる場合があります。

当社グループが連結財務諸表に適用している重要な会計方針等は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しておりますが、連結財務諸表に重要な影響を与える可能性のある見積りを含む会計方針は以下のとおりであります。

 

Ⅰ 貸倒引当金

売上債権、貸付金等の債権の貸倒れによる損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については個別に回収可能性を検討し、回収不能見込額を計上しております。将来、顧客の財務状況の変化などにより回収不能見込額が変動した場合には、引当金の追加計上または取崩しが必要となる可能性があります。

 

Ⅱ 製品保証引当金

販売した製品の無償アフターサービス費用に備えるため、経験率および個別見積りに基づき計上しております。経験率の見直しなどにより、引当金の追加計上または取崩しが必要となる可能性があります。

 

Ⅲ 海外事業等再編引当金

空調機事業強化に向けた各地域の販売体制強化・再構築に係る費用等を合理的に算定し計上しております。海外事業動向の変化および為替レートの変動などにより、引当金の追加計上または取崩しが必要となる可能性があります。

 

Ⅳ 独禁法関連引当金

独占禁止法に基づく排除措置命令及び課徴金納付命令に関連して将来発生の可能性が高い支払いに備えるため、損失見込額を合理的に算定し計上しております。本件につきましては、今後の状況変化などにより、引当金の追加計上または取崩しが必要となる可能性があります。

 

Ⅴ 退職給付費用および債務

従業員の退職給付に備えるため、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出しております。これらの前提条件には、割引率、昇給率、年金資産の長期期待運用収益率などが含まれており、実際の給付が前提条件と異なる場合または前提条件が変更された場合、将来期間において認識される費用および債務に影響を与える可能性があります。

 

Ⅵ 繰延税金資産

将来の課税所得の十分性およびタックスプランニングをもとに、回収可能性があると判断した金額を計上しております。経済環境および経営状況などの変化により、回収可能性の評価時に使用した将来の利益計画およびタックスプランニングを変更する必要が生じた場合、繰延税金資産の金額が増減する可能性があります。

 

Ⅶ のれんの評価

各連結会計年度において、減損の兆候の有無を把握し、減損の兆候があると判断したのれんについては、経営者が承認した将来事業計画の割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回った場合に減損損失を認識しております。

減損損失の測定に使用する回収可能価額は、同様に経営者が承認した将来事業計画を基礎とした将来見積キャッシュ・フロー等に基づき算定しております。

これらに使用する事業計画等の仮定は、使用する時点において入手可能な情報に基づく最善の見積りと判断により策定しておりますが、将来の事業環境の変化等の影響により見直しが必要となった場合には、減損損失が発生し、翌連結会計年度の連結財務諸表に重要な影響を与える可能性があります。

 

5【経営上の重要な契約等】

当連結会計年度において、経営上の重要な契約等の決定または締結等はありません。

 

6【研究開発活動】

当社グループ(当社および連結子会社)は、空調機部門および情報通信・電子デバイス部門の両事業分野において、基礎的な研究開発から応用開発まで一貫した活動に取り組み、さらなる高機能・高性能・高信頼性を追求するとともに、省エネルギー化やリサイクル設計など環境負荷低減や循環型社会形成に寄与する製品設計をはじめ、社会課題を解決し、持続可能な社会実現に貢献する研究開発活動を進めております。

研究開発体制としては、子会社を含めた技術開発部門と生産・調達部門および営業部門等が緊密に連携することで、開発力の充実を図っております。また、子会社の株式会社富士通ゼネラル研究所が全社的な将来技術の研究開発を行うとともに、大学、研究機関等と共同で研究を進めております。なお、当連結会計年度における研究開発費は15,269百万円であります。

空調機部門では、川崎本社の技術開発部門と株式会社富士通ゼネラル研究所が基礎的な研究開発に取り組み、川崎本社、タイ、中国の各開発拠点が新商品開発や量産設計等を行い、欧州と北米のR&Dセンターが現地協業先との共同開発等を進める体制の下、開発キャパシティ拡大と開発効率の向上を推進しております。当連結会計年度は、地域ごとのニーズや環境規制といった市場からの要求に応えるため、商品ラインアップを拡充するとともに、設計の標準化等を進めました。また、コストダウンの推進に向け、銅からアルミへの転換や省資材設計等を進めております。海外向けでは、現地ニーズに適合したインド向けの冷房専用VRF(ビル用マルチエアコン)をはじめ、北米および欧州向け新機種を中心に環境負荷の低い冷媒の採用を進めるなど、各地域の製品ラインアップの刷新・拡充に加え、クラウドを基盤とする業務用空調機器のコントローラーや運用管理システムの開発等を行いました。また、他社との協業により、設置性に優れたATW(ヒートポンプ式温水暖房システム)の新機種の開発等を行いました。なお、インドにおいて現地生産の機種を拡充するなど地産地消に向けた対応を進めました。国内向けでは、暖房機能や清潔機能を強化した新型「ノクリア」Xシリーズ・Zシリーズの開発等を行いました。なお、当部門の研究開発費は12,533百万円であります。

情報通信・電子デバイス部門では、情報通信システムにおいて、消防システム、防災システムの性能・機能向上などの商品力強化に加え、次期消防デジタル無線システムの開発を進めました。電子デバイスでは、産業用ユニット製品などで顧客企業の課題に応えるソリューションを提案するとともに、エレクトロニクス製品の小型化・高効率化を実現するパワーモジュールについて、次世代製品の開発も進めております。なお、当部門の研究開発費は2,736百万円であります。