第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

当社グループは、社会における存在意義、パーパスを「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていくこと」と定めております。パーパス実現に向けて必要不可欠な貢献分野であるマテリアリティを、地球環境問題の解決、デジタル社会の発展、人々のウェルビーイングの向上の3分野に定め、この3分野において、気候変動、情報セキュリティの確保、生活の質の向上に向けた医療ヘルスケアの推進など、重点的に取り組むべき11の課題を設定しました。全社でマテリアリティへの取り組みを推進し、当社グループの企業価値向上と持続可能な世界の実現を目指しております。

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また、2030年に向けて、クロスインダストリーでサステナビリティに貢献するデジタルサービスを提供して、社会・お客様・株主様・社員などのステークホルダーにとってネットポジティブを実現するテクノロジーカンパニーになる、というビジョンを定めております。このネットポジティブとは、社会に存在する富士通が、財務的なリターンの最大化に加え、地球環境問題の解決、デジタル社会の発展、そして人々のウェルビーイングの向上というマテリアリティに取り組み、テクノロジーとイノベーションによって、社会全体へのインパクトをプラスにすること、と定義しております。

財務資本、人的資本といった資本を投入し、重点戦略に沿ってマテリアリティに取り組み、財務・非財務の両面でアウトプットやアウトカムを生み出し、それをまたインプットとして投じる、これを継続することでステークホルダーへの提供価値の向上を図ってまいります。

 

<市場環境>

当社グループをとりまく市場環境については、従来型の基幹システムなどの既存IT市場は、引き続き緩やかに縮小していくと予測されています。一方で、レガシーシステムのモダナイゼーションやクラウド化への投資は今後も堅調に増えると予測されています。さらには、生成型AI(人工知能)に代表されるAIなどのテクノロジーやデータ分析・活用といったデジタル化に向けた投資は、社会や企業の成長・発展へのニーズに加えて、社会システムや産業構造の変化に対するニーズも加わることで、今後も拡大すると想定されています。

 

<2025年度までの中期経営計画について>

このような状況のもと、当社グループは、2023年度から2025年度までの3年間を2030年及びそれ以降の目指す姿の実現に向けて持続的な成長と収益力向上のモデルを構築する期間として位置付けた3か年の中期経営計画を定め、達成に向けた取り組みを進めております。

2025年における当社のあるべき姿と、ステークホルダーへの提供価値の最大化を実現するため、事業モデル・ポートフォリオ戦略、カスタマサクセス戦略/地域戦略、テクノロジー戦略、リソース戦略の4つの重点戦略に沿って施策を推進しております。

 

<2023年度の進捗と2024年度以降の取り組み>

主に3つの取り組みを進めております。1つ目は、事業モデルと事業ポートフォリオの変革です。Fujitsu Uvanceを中心に、従来型のSI(システムインテグレーション)ビジネスから、オンクラウドやビジネスアプリケーション、クロスインダストリーといった事業モデル及び事業ポートフォリオへの変革を進めております。

Fujitsu Uvanceの2023年度の売上収益は、当初計画の3,000億円を大きく上回る3,679億円となり、前期の2,000億円から84%増と大きく伸長しました。2022年度はお客様のDXを支えるためのテクノロジーやソリューションを提供するHorizontal領域の売上収益が中心でしたが、2023年度は市場をクロスインダストリーで捉えるVertical領域のオファリング強化を進めた結果、Vertical領域の売上収益がFujitsu Uvance全体の売上収益の3割を超えてきております。

また、クロスインダストリーの取り組みはデータの連携と活用が重要な要素となりますが、2023年度は、当社のAIプラットフォーム「Fujitsu Kozuchi」をベースに、AI機能を活用したFujitsu Uvanceの高度化にも取り組み、Vertical領域を中心に22のオファリングにFujitsu KozuchiのAIエンジンを実装しました。2024年度は、引き続きオファリングを拡大してまいります。

また、2月に発表した当社の新たなコンサルティング事業モデルである「Uvance Wayfinders」のコンサルティング・リードによるビジネスの拡大や、海外での本格展開を見据えたグローバル共通サービスの拡充を図ってまいります。

2つ目は、お客様のモダナイゼーションの確実なサポートです。モダナイゼーションビジネスは、国内を中心に順調に拡大しております。2023年度は、デマンドに対するリソース要件の可視化や、2022年に設置したモダナイゼーションナレッジセンターによる商談及びプロジェクトの効率化、グローバルで実績のあるツールの展開などを行いました。

2024年度以降も既存システムのモダナイゼーションの需要は継続していくと予想しております。当社グループにおいては、可視化されたリソース要件をベースに、商談状況に応じた機動的なリソースのアサインメントを行い、プロジェクトを確実かつ効率的に遂行してまいります。また、モダナイゼーションに必要なスキルを保有する人材も継続して拡充し、ビジネスの変化に対応しながら、クラウド化やDXを見据えたモダナイゼーションをサポートしてまいります。

3つ目は、海外ビジネスの収益性向上です。2023年度の「サービスソリューション」のサブセグメント、「リージョンズ(海外)」全体の売上収益は6,041億円と前期から微増となりました。調整後営業利益率は1.7%と依然採算性が課題となっておりますが、事業ポートフォリオの変革などの取り組みにより回復を見込んでおります。Americasリージョンは、事業ポートフォリオの変革が順調に進み、サービスビジネスの割合が増加しており、2023年度は調整後営業利益率は改善傾向にあります。2024年度はビジネス規模の拡大と、さらなる収益性の向上に取り組んでまいります。Europeリージョンは、ドイツにおけるプライベートクラウド事業のカーブアウトや、より採算性の高い地域に集中するための低採算地域からの撤退、サービスビジネスとハードウェアビジネスの分離のための法人体系の再編といった構造改革を実行しており、2025年度中に完了予定です。施策の効果により、調整後営業利益率は2023年度の0.5%から2024年度は4.3%まで回復すると見込んでおります。Asia Pacificリージョンでは、競争の激しいインフラビジネスから脱却し、ビジネスアプリケーションといったサービスビジネスへシフトするための構造改革を検討しております。いずれの地域においても、Fujitsu Uvanceを中心とするサービスビジネスへのシフトを進めてまいります。

以上3つの施策に加えて、全社的な取り組みとしてサービスソリューション全体の収益性向上に向けた取り組みを継続して進めております。サービスソリューションにおける売上総利益率改善のため、デリバリーの変革とお客様への提供価値に基づくプライシングの2つを中心に進めております。

グローバル標準でのオフショア開発やサービスデリバリーを行うグローバルデリバリーセンター(GDC)は人員を拡大し、内製化率やオフショア率の改善に取り組んでおります。また、日本固有の商習慣やニーズを踏まえてデリバリーを標準化するジャパングローバルゲートウェイにおいて、全社共通の開発プラットフォームの活用による開発作業の標準化や自動化を進めており、工数削減などの効果が出始めております。

また、従来のコストベースの見積もりから脱却し、提供価値に基づくバリュープライシングへのシフトを進めております。 2023年度からは、SAP、ServiceNowといったサービスにおいて、グローバル共通のレートカードを設定し、全リージョンに展開しており、一定の効果が出ております。これらの取り組みを進めた結果、売上総利益率が年間で2%改善しました。

今後も、競争力のあるサービスやお客様にとって価値の高いサービスの提供に必要な人材育成に投資を行い、当社による提供価値を高め、外部環境の変化によるコスト増も加味しながら適正なプライシングも行い、さらなる収益性と生産性の向上に努めてまいります。

 

<非財務面での取り組み>

当社グループは、非財務の領域においても、環境、お客様、生産性、そして人材の4つの項目において2025年度のKPIを定め、達成に向けて取り組んでおります。環境でのKPIとして温室効果ガス削減量を定めており、2020年度と比較しScope1・2では当社グループで50%削減、Scope3ではサプライチェーンで12.5%の削減を目指しております。お客様については、お客様NPS®において2022年度比で20ポイント上昇を目指してまいります。生産性については、従業員1人当たりの調整後営業利益において、2022年度比40%の上昇を目指しております。人材では、従業員エンゲージメントについて、グローバルでのスコア75の達成を目指しております。また、ダイバーシティリーダーシップの指標として、グローバルでの女性幹部社員比率を2022年度の15%から2025年度で20%に拡大することを目標としております。2024年度は上記2025年度のKPIのいずれも変更はなく、引き続き達成に向けて取り組んでまいります。また、非財務面での取り組みが財務面に対しどのように寄与するかについての定量的な分析も進めており、2023年度は非財務と財務の各項目の相関関係の見える化に取り組みました。2024年度は、さらなる分析を進めてまいります。

当社グループは、引き続きデータを活用して迅速な意思決定を行いながら、デジタルテクノロジーと、これまで培った多様な業種への実績・知見を活かし、安心で安全で豊かな社会づくりに貢献してまいります。

(注)1.お客様NPS®:お客様Net Promoter Scoreの略。顧客体験=カスタマー・エクスペリエンス(CX)の改善度や深化の把握のために、企業、商品やサービスへのお客様の信頼度や愛着度を示す「顧客ロイヤリティ」を測る指標。

2.従業員エンゲージメント:会社の向かっている方向性・パーパスに共感し、自発的、主体的に働き貢献したいと思う意欲や愛着を表す指標。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1)サステナビリティに対する考え方及び対応

当社グループでは、「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていくこと」をパーパスとし、その実現のための2030年に向けたビジョンとして「デジタルサービスによってネットポジティブを実現するテクノロジーカンパニーになること」を掲げています。

また、優先的に取り組むべき重要課題として、「経営におけるマテリアリティ」を2023年に設定しました。このマテリアリティの考え方を、事業戦略に組み込むことを通じて、サステナビリティへの取り組みを一層強く推進してまいります。経営戦略の全体像の詳細については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。

 

<マテリアリティ>

中長期的な視点で2030年を見据え、優先的に取り組むべき重要課題を、「必要不可欠な貢献分野」、「持続的な発展を可能にする土台」の2つのカテゴリーに分類し、具体的には、6つのテーマと18項目を特定しています。

詳細については、下記「②戦略<マテリアリティ>」をご参照ください。

 

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<GRB>

マテリアリティに包含され、特に当社グループの価値創造の源泉に深く関わり、社会的責任を果たすための取り組みを「グローバルレスポンシブルビジネス(Global Responsible Business : GRB)」(以降“GRB“と記載)と呼称しています。

GRBの詳細は下記「② 戦略<GRB>」をご参照ください。

 

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全社レベルでのマテリアリティへの取り組みを推進し、経営における重要なリスクの低減・回避と事業機会の拡大を図り、当社グループの企業価値向上と、地球環境問題、デジタル社会、人々のウェルビーイングにおいてネットポジティブの実現に貢献していきます。

 

①ガバナンス

<取締役会による監督体制>

当社グループはサステナビリティ経営委員会において、サステナビリティに係るリスクと機会の共有、中長期的な課題の検討及び方針の策定を行っています。これらの結果は、経営会議を通じて取締役会に報告されます。

 

サステナビリティ推進体制

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また、当社グループは、全社レベルのリスクマネジメント体制において、取締役会の監督の下、代表取締役社長を委員長としたリスク・コンプライアンス委員会が、サステナビリティ課題を含むグループ全体のリスク分析と対応を行っています。同委員会は、グループ全体のリスクマネジメント及びコンプライアンスに関わる意思決定機関であり、抽出・分析・評価された重要リスクについて、定期的に取締役会に報告しています。詳細については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」をご参照ください。

 

<リスクと機会の評価・管理における経営者の役割>

代表取締役社長は、サステナビリティ経営委員会及びリスク・コンプライアンス委員会の委員長を務め、最高位の意思決定の責任と業務執行の責任を担っています。取締役会は、経営会議及びリスク・コンプライアンス委員会を通じた報告をもとに監督する責任を有します。また、CSSO※はサステナビリティの最高責任者として、取締役会、経営幹部への変革提案とサステナビリティ関連業務の執行を推進しています。 加えて、業務執行取締役の賞与に、ESGに関する第三者評価を評価指標として追加しています。

※CSSO(Chief Sustainability & Supply chain Officer)。サプライチェーン全体でサステナビリティを起点とした重点施策を実行し、より事業との連動を強化することで 環境・社会課題の解決を目指す。

 

②戦略

当社グループでは、持続的な成長と中長期的な企業価値向上に向けて、事業全体でのマテリアリティを特定し、サステナビリティ経営を推進しています。また、マテリアリティの中で、特に当社グループの価値創造の源泉に深く関わり、社会的責任を果たすための取り組みをGRBとして活動を展開しています。

 

<マテリアリティ>

・マテリアリティ 2つのカテゴリー、6つのテーマと18項目

これまで当社グループでは、CSRに限定した重要課題(マテリアリティ)を定めておりましたが、2023年度にビジネスを通じたお客様・社会への価値提供という観点も取り入れ、社内外の様々なステークホルダーの声を反映し、事業活動として優先的に取り組むべき重要課題としてマテリアリティを設定しました。

2030年を見据え、「自社」及び「ステークホルダー」の観点から評価を行い、優先的に取り組むべき重要課題を、「必要不可欠な貢献分野」、「持続的な発展を可能にする土台」の2つのカテゴリーとして特定しました。

必要不可欠な貢献分野については、「地球環境問題の解決」、「デジタル社会の発展」、「人々のウェルビーイングの向上」の3つのテーマに貢献する価値を、Fujitsu Uvanceを中心とした事業を通じて、お客様や社会に提供します。加えて、この3つのテーマで2030年の非財務指標も設定しました。詳細については、「④指標及び目標 <マテリアリティ 2030年非財務指標>」をご参照ください。

また、持続的な発展を可能にする土台については、当社グループの価値創造の源泉であるとして、「テクノロジー」、「経営基盤」、「人材」を強化し、新たなビジネスモデルやイノベーションの創出を支えます。

 

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・マテリアリティの特定プロセス

当社グループでは、ダブル・マテリアリティの原則に基づき、企業と環境・社会の相互影響(環境・社会課題が当社に与える財務的な影響、当社活動による環境・社会に与える影響)を考慮しマテリアリティを特定しました。

 

実施ステップ

実施内容

Step1

社会課題の整理・抽出

・2030年の未来を見据えたメガトレンドを踏まえ、様々な社会課題を整理したロングリストを作成(163課題)

・ロングリストから、類似項目の統合や、事業と関連性の少ない項目を削除し、最終的に40個の社会課題を抽出

Step2

優先順位付け

・抽出された社会課題をもとに、幅広く社内外のステークホルダーに対するアンケートやインタビュー、及びデスクトップ調査を実施。2030年の未来を見据え、各課題をリスク・機会両方の側面で、「当社にとっての重要度(環境・社会課題が当社に与える財務的な影響)」及び「ステークホルダーにとっての重要度(当社活動による環境・社会に与える影響)」の視点から包括的に評価・採点を行い、社会課題の優先順位を示すマテリアリティ・マトリックス案(40課題から25課題に絞り込み)を作成

・個別インタビュー、サステナビリティ経営委員会等を通じて、マテリアリティ・マトリックス案について富士通の独自性(富士通らしさ)といった観点から妥当性に関する評価・討議を実施し(執行役員・業務執行取締役による評価・討議に加え、非執行取締役、監査役によるレビューを含む)、マテリアリティ・マトリックスを最終化(25課題から18課題に集約)

・マテリアリティのコンセプト整理を行い、18課題を2つのカテゴリー、6つのテーマに分類・構造化

 

マテリアリティ・マトリクス

 

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Step3

マテリアリティの決定

・サステナビリティ経営委員会を経て、特定したマテリアリティ及び全社的な取り組み推進の方向性について審議、承認

・マテリアリティを含む中期経営計画を取締役会にて審議、承認

Step4

レビュー、見直し

・定期的にレビュー・討議を実施予定

 

・マテリアリティへのアプローチ

マテリアリティに対するリスク・機会の認識を踏まえ、2025年度に向けたアプローチを検討・整理しました。リスクについては富士通自身の社内における取り組みを中心に施策を実施し、機会についてはFujitsu Uvanceをはじめとしたビジネスを拡大することによって社会課題を解決し、お客様・社会に価値を提供していきます。マテリアリティへのアプローチの推進により、当社事業、社会に対するネガティブなインパクトの縮小、ポジティブなインパクトの拡大を促進し、ネットポジティブの実現に貢献します。

 

マテリアリティ

2025年度に向けたアプローチ

(主な取り組み)※2023年度時点

気候変動
(カーボンニュートラル)

<社内取り組み>

・事業拠点のGHG排出量の削減(省エネルギーの推進と再生可能エネルギー使用量の拡大)

・製品の省電力設計の推進、サプライチェーンにおけるGHG排出量の削減

<お客様・社会への事業展開>

・サプライチェーンのGHG排出量の可視化・削減

・工場等設備のエネルギー使用量の可視化(一次データの収集自動化) 等

資源循環
(サーキュラーエコノミー)

<社内取り組み>

・事業拠点の水使用量削減、サプライチェーン上流における水資源保全意識の強化

・製品の省資源化・資源循環性向上の推進 等

<お客様・社会への事業展開>

・ブロックチェーン活用やリサイクルによるトレーサビリティの強化とロスの削減

・生産品質等の可視化による材料の有効活用の促進 等

自然共生
(生物多様性の保全)

<社内取り組み>

・サプライチェーンを含む自社の企業活動の領域における、生物多様性への負の影響低減、正の影響増加

<お客様・社会への事業展開>

・生物多様性に配慮した事業活動において、事業計画シミュレーションによる環境保全と影響度の可視化

・新たな生産方式の採用・材料開発による水、森林資源の保護・過剰消費の抑制

情報セキュリティ確保

<社内取り組み>

・ガバナンス強化:経営の能動介入及び現場セキュリティ体制強化による施策実行の迅速性・実効性の向上

・サイバー脅威への対策強化:予兆を含むセキュリティリスク可視化・対処、情報管理の強化 等

<お客様・社会への事業展開>

・セキュアなHybrid IT基盤の提供により、顧客システム/事業の信頼性確保

・公共/金融機関などミッションクリティカル領域に対し、レジリエントなHybrid IT基盤の提供と、ITガバナンス、セキュリティガバナンスの強化 等

デジタル格差の解消

<お客様・社会への事業展開>

・先端医療の民主化と、患者に合わせた最適化

・原材料トレーサビリティ・証明に関する課題解決、意思決定の高度化 等

情報・AI倫理の推進

<社内取り組み>

・AI倫理の社内実践の制度化や、従業員やお客様へのAI倫理教育の提供など、AI倫理浸透に向けた活動

・AI開発者やお客様自身によるAI倫理リスクの発見を容易にし、解決案を提示する技術・エコシステムの提供

<お客様・社会への事業展開>

・AI倫理ガイドラインを遵守したAIの提供や、説明可能なAIの提供による、AIへの信頼性・透明性の確保(説明可能なAIを利用した企業の財務・非財務データからの不正リスクの予測による、ビジネスにおける持続的な信頼性の向上)

・AIの適切な使用に関する倫理ルールやガイドライン作成などのコンサルティングの提供

働きやすい環境の推進と労働力不足解消

<お客様・社会への事業展開>

・自動化技術あるいはAR/VR及びリモートコミュニケーション技術を活用した、生産・配送・出荷・販売等の作業の効率化と安全性の両立

・労働環境の変化に応じた、働く人を中心とした働き方の改革・エンゲージメント向上のための業務状況や社員の声の可視化、分析による戦略立案と実行 等

責任あるサプライチェーンの推進

<社内取り組み(サプライチェーンへの働きかけ)>

・サプライチェーンにおける人権リスクの予防・軽減

・サプライチェーンにおけるGHG排出量の削減の推進 等

<お客様・社会への事業展開>

・サプライチェーンのトレーサビリティ向上による管理強化

・災害、パンデミック、国際政治リスクなど、多面的なサプライチェーンリスクの検知 等

QoL(生活の質)向上に向けた医療ヘルスケアの推進

<お客様・社会への事業展開>

・医療機関と外部機関・サービスをつなぎ、生活者・患者の診療情報と生活情報の相互流通の実現

・予防、治療から予後までのEnd-to-endのヘルスケア・ ジャーニーの個別化・最適化(パーソナルヘルスケアの実現)

生涯教育・リスキリングの推進

<お客様・社会への事業展開>

・AIによる個人最適化された教育の提供や時間や場所を選ばないマイクロラーニング環境の実現

・DX実現に向けて求められる人材像の定義、人財戦略・人財開発計画の策定支援、教育・研修プログラムの提供により、戦略的なリスキリングの実現

顧客・生活者体験の向上

<お客様・社会への事業展開>

・マーケティング/プロモーションのパーソナライズ化、新たなオンライン・オフライン購買の実現

・あらゆるブランドチャネルと消費者との接点における、一貫性があり、かつ流動的でパーソナライズされたショッピング体験の実現 等

最先端技術の開発及びイノベーションの創出

<社内取り組み>

・量子:量子HPCハイブリッド技術によるお客様との新アプリケーションの開拓、世界をリードするエラー訂正技術の開発。1000量子ビット機とさらなる大規模化技術の開発

・Computing:Computing Workload Broker技術を強化し、グラフAIを加速するフレームワークを開発、HPCをデジタルツイン等の新領域に拡大 等

ガバナンス・コンプライアンス

<社内取り組み>

・コーポレートガバナンス:コーポレートガバナンスの不断の見直し、株主を含む全てのステークホルダーとの協働に資する会社情報開示の充実、株主との建設的な対話の促進

・コンプライアンス:コンプライアンス意識向上、Global Compliance Programの展開、お取引先へのコンプライアンス教育提供

リスクマネジメント

<社内取り組み>

・GRCツールの活用最大化(潜在リスクマネジメントへのシフト)

・潜在リスクの高度化(データドリブンへの取り組み)

経済安全保障対応

<社内取り組み>

・経済安全保障や地政学上の観点によるビジネス継続リスクの評価と、BCPへの反映等を通じたビジネス・レジリエンスの強化

・重要な先端領域を含む技術の全社横断的な管理強化 等

デジタルトランスフォーメーション(DX)

<社内取り組み>

・OneFujitsuプログラム推進によるデータドリブン経営の実現、及びオペレーショナルエクセレンスの追求:合理的・迅速な意思決定を支えるリアルタイムマネジメント、経営資源のEnd-to-endでのデータ化・可視化、グローバルでのビジネスプロセス標準化

DE&I

<社内取り組み>

・多様性:

■誰もが一体感をもって、自分らしくいられるインクルーシブで公平な組織文化の構築

■リーダーシップにおける女性の参画強化

■グローバルに通用する文化・民族の総合戦略の構築 等

・人権:バリューチェーンにおける人権リスクの予防・軽減(人権教育、有識者ダイアログ)

ウェルビーイング・人材育成

<社内取り組み>

・人材基盤の強化:ジョブ型人材マネジメント、DX人材への進化 等

・ウェルビーイング向上:ウェルビーイング理解・浸透策の展開、データドリブンな可視化と分析 等

 

 

<GRB>

当社グループでは、マテリアリティの中で、特に当社グループの価値創造の源泉に深く関わり、社会的責任を果たすための取り組みをGRBとして掲げ、下表のとおり、6つ(※)の項目ごとにありたい姿と目標を定めています。2022年度末の目標を設定し、2020年度から2022年度までの実績を把握・管理してまいりました。2023年度に、新たに2025年度末に向けた目標を設定し、グローバルに活動を推進しています。

※2023年度に、それまで7つ設定されていたGRBの項目(「人権・多様性(DE&I)」「ウェルビーイング」「安全衛生」「環境」「コンプライアンス」「サプライチェーン」「コミュニティ」)のうち、「安全衛生」の項目を「ウェルビーイング」に統合し、以降は「ウェルビーイング」配下の取り組みとして活動を継続します。

 

項目

ありたい姿と2025年度目標(KPI)

人権・多様性

 

◆人権

<ありたい姿>

実社会/デジタル社会において、「人間の尊厳」への配慮がすべての企業活動に反映され、「人を中心とした価値創造」が恒常的に行われている。

<KPI>

当社バリューチェーン全体における人権リスクを予防・軽減する。

・継続的な人権教育の実施(受講率90%以上を維持)

・有識者ダイアログの実施(毎年)

・パートナー、お客様、NGOと連携し、富士通の知見・テクノロジーで人権尊重の促進と保護へ貢献

◆ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DE&I)

<ありたい姿>

多様性を尊重した責任ある事業活動(レスポンシブルビジネス)に取り組む。誰もが一体感をもって自分らしく活躍できる、公平でインクルーシブな企業文化を醸成する。個人のアイデンティティに関わらず、誰もが違いを認め合い、活躍できるようにする。インクルーシブなデザインやイノベーションを通じて、社会により良いインパクトをもたらすよう努め、エンパワーし合うことで、持続可能な世界の実現を目指す。

<KPI>
年齢、性別、文化、民族、性的指向、アイデンティティ、能力に関係なく、すべての社員がサポートされ、尊敬されていると感じられるようにする。

・従業員エンゲージメント・サーベイの 「個人の尊重」に関する質問に対する回答結果の平均を7ポイント向上(80ポイント)

<KPI>

誰もが一体感をもって、自分らしくいられるインクルーシブで公平な企業文化を構築する。

・従業員エンゲージメント・サーベイの「機会の均等」に関する質問に対する回答結果の平均を4ポイント向上(74ポイント)

<KPI>

リーダーシップの役割にも重点を置き、女性の参画を同等にする。

・リーダーシップレベルの女性比率を20%に向上

<KPI>

文化に配慮した偏見のない職場環境を実現するために、尊敬と寛容を促進し、私たちが働く社会の中で経営者レベルから下位層へと反映する。

・地域やグローバルな取り組みをしつつ、グローバルに通用する文化・民族の総合戦略を構築

<KPI>

LGBTI+を受け入れるベストプラクティスを推進し、富士通のすべての拠点で社員とその家族をサポートする。

・LGBTI+の社員に平等な機会と一体感をもたらすため、FWEI(富士通ワークプレイス平等指数)を導入

<KPI>

すべての社員、お客様、及び社会のステークホルダーが、当社のソリューション、製品、サービス、システムを使用し、 当社のコミュニケーションを理解できるようにする。

・デジタルアクセシビリティをブランドコミュニケーション、顧客エクスペリエンス、ワークプレイスを含む企業戦略の一つとして推進及び提唱

ウェルビーイング

<ありたい姿>

仕事もプライベートも、自分自身が大切にしている価値観に向き合い、自身の未来の幸せに日々向かっている。

<KPI>

社員一人ひとりが自分の「Well-being」を理解し、語ることができる。

・ウェルビーイング

 ■理解浸透に向けて、Globalに「Well-being」に関するメッセージの発信

・「Well-being」に関しての指標開発

 ■安全衛生

 ■重大な災害発生件数:ゼロ

環境

<ありたい姿>

グローバルなSustainability Transformation(以降SX)リーディング企業として社会的責任を果たす。自らのカーボンニュートラル実現に加え、お客様との共創により、革新的なソリューションを提供することで様々な環境課題を解決する。

<KPI>

社会的責任の遂行と環境課題解決への貢献

・自社・サプライチェーンにおけるSBT(Science Based Targets)ネットゼロ※を目指したGHG排出削減
※SBT基準に沿った当社の目標(温室効果ガス排出量ネットゼロ):温室効果ガス排出量を目標年度に基準年度の90%以上を削減し、10%以下となった残存排出量を大気中のCO2を直接回収する技術(DAC)の活用や、植林などによる吸収で除去すること

・事業活動に伴うリスクの回避と環境負荷の最小化

・ビジネスを通じたお客様・社会の環境課題解決への貢献
 (具体的な目標は、第11期環境行動計画で策定)

コンプライアンス

<ありたい姿>

当社グループ内の役職員が高いコンプライアンス意識をもって、事業活動を行うことにより、社会の規範としての役割を果たしつつ、ステークホルダーから投資や取引、就業の対象として選択される、信頼される企業グループである。

<KPI>

コンプライアンスに係るFujitsu Way「行動規範」の組織全体の周知徹底を図るために、グループ全体にGlobal Compliance Program を展開することで、高いコンプライアンス意識を根付かせるとともに、経営陣が先頭に立って、従業員一人ひとりがいかなる不正も許容しない企業風土(ゼロ・トレランス)を醸成する。また富士通のビジネスに携わるすべての人に活動を広げ、理解を求める。

・社長を含めた富士通本社の経営層や各国グループ会社の社長等からコンプライアンス遵守の重要性をメッセージとして毎年発信

・コンプライアンス教育を、取引先100社以上を対象に毎年提供

・贈賄、カルテルを起こさせない

サプライチェーン

<ありたい姿>

当社グループは、人権・安全衛生、環境に配慮し、多様性を確保した責任あるサプライチェーンを実現する。

<KPI>

サプライチェーンにおける、人権リスクを予防・軽減する。

・調達指針の遵守要請と並行して、取引先の可視化・課題の特定を推進し、問題を起こさない仕組みを構築

<KPI>

サプライチェーンにおけるGHG排出削減の推進

・GHG排出削減を取引先とともに推進するため、主要取引先に対して、国際基準に沿った数値の目標設定を要請
(主要取引先において、SBT WB2°※相当の排出削減目標が設定されることを目標とする)

※産業革命前からの気温上昇を2℃未満に抑制することを規定するとともに、1.5℃までへの抑制に向けた努力を継続

<KPI>

サプライチェーンの多様性を確保

・各リージョン・国での社会的要請に基づき、多様性の指標を定め活動

・日本での活動を女性活躍とし、取引先の取組状況を測定する仕組みを構築

コミュニティ

<ありたい姿>

社員一人ひとりが幅広いステークホルダーとの共働・共創を通して社会課題への共感性を高めて活動に取り組み、社会にスケールあるインパクトをもたらすことで、富士通の成長機会を創出し、パーパス実現に貢献している。

<KPI>
コミュニティ活動※に対する社員のマインドセット変革・組織風土醸成、及び社会へのインパクトを創出する。

・コミュニティ活動に参加した社員(従業員数の20%)

※コミュニティ活動とは:重要なステークホルダーの一つである地域社会とグローバルで協力し、社会が抱える課題解決に取り組み価値創造をめざす活動

 

③リスク管理

当社グループでは、サステナビリティ経営委員会において、サステナビリティに係るリスクと機会の共有、中長期的な課題の検討及び方針や目標を策定するとともに、進捗を確認しています。また、リスク・コンプライアンス委員会は、国内外の各部門及び各グループ会社の事業活動と、それに伴う重要リスクの抽出・分析・評価を行い、これらに対する対策状況を確認したうえで、対策の策定や見直しを図っています。また、様々な対策の実行にもかかわらずリスクが顕在化した場合に備え、対応プロセスを整備しています。

そして、2023年に策定したマテリアリティの結果は、全社のリスクマネジメントにも活用しています。マテリアリティ分析から抽出された気候変動や人権、セキュリティなどの課題を、当社グループ全社で行われる潜在リスクアセスメントにおいて重要リスク項目として連動させ、その一部は「事業等のリスク」として公表しています。

事業活動に伴う主なリスクの詳細については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」をご参照ください。

 

④指標及び目標

<マテリアリティ 2030年非財務指標>

2023年度からの中期経営計画の中で、マテリアリティ(必要不可欠な貢献分野)の3つのテーマ(地球環境問題解決、デジタル社会の発展、人々のウェルビーイング)に対応する2030年の非財務指標を掲げました。現在、各非財務指標における具体的な実績のトラッキング等について検討しています。

 

マテリアリティ
(必要不可欠な貢献分野)

非財務指標
(2030年)

地球環境問題の解決

世界のGHG排出量削減への貢献:0.3%
(サービスソリューションによる世界CO2削減インパクト)

デジタル社会の発展

デジタルアクセシビリティ:1.5億人

人々のウェルビーイング向上

ICTスキル、教育提供数:1,200万人以上

 

 

<GRB 2022年度の実績と目標>

当社グループは、GRBの項目ごとに目標/KPIを定めております。この達成に向けて実効力のあるマネジメント体制を構築し、また各国の国内法や労働市場など国・地域ごとの違いを踏まえつつ、グローバルでより高いレベルの活動が実施できるよう、具体的なアクションを定め、目標達成に向けた取り組みを推進しております。なお、2023年度の主な実績について、本有価証券報告書提出日現在においてデータ収集及び一部のデータにおいては、第三者審査機関による審査の過程にあるため、以下では2022年度の主な実績を記載しています。

 

GRB 2022年度の目標と実績

項目

2022年度目標

2022年度実績

人権・

多様性

<人権>

「人権尊重」の社内浸透

 

・グローバルな人権に関する全従業員向け教育の受講率:80%

・グループ全社員を対象とした「ビジネスと人権」に関するeラーニングを16か国語でグローバルに実施
受講率:92%

<ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DE&I)>

インクルーシブな企業文化の醸成

 

・社員意識調査でのDE&I関連設問の肯定回答率向上:
連結66%(2019年度)→69% / 単体59%(2019年度)→63%

 

・社員意識調査でのDE&I関連設問の肯定回答率
連結:73% / 単体:69%

 

・リーダーシップレベルにおける女性比率増:連結8%(2019年度)→10% / 単体6%(2019年度)→9%

・リーダーシップレベルにおける女性比率
連結:10.8% / 単体:9.1%

※従来、リージョン毎にリーダーシップレベルの基準を決めていたが、2023年度からは基準をグローバルで統一しており、新基準における連結の比率は15%

ウェルビーイング

いきいきと働くことができる職場環境の提供

 

社員意識調査「ワークライフバランス」「Well-being」※に対するグローバル共通平均スコア:71
※2022年度より「職場環境」から「Well-being」へ変更

社員意識調査「ワークライフバランス」「Well-being」に対するグローバル共通平均スコア:67

成長の実現と力を発揮できる機会の提供

・社員意識調査「成長の機会」に対するグローバル共通平均スコア:70

・社員意識調査「成長の機会」に対するグローバル共通平均スコア:71

安全衛生

※2023年度より「ウェルビーイング」に統合し活動を継続

富士通グループ会社を含むすべての職場において、安全で働きやすい環境を実現し、心とからだの健康づくりを推進

・重大な災害発生件数:ゼロ

・安全衛生に関するグローバルレベルでのマネジメントレビュー実施:1回/年

・重大な災害発生件数:1

・各国・リージョンにてマネジメントレビューに代わる会議体を設定(中央安全衛生委員会・Europe, GD and Americas OH&S Leadership Forum等)

環境

社会的責任の遂行と環境課題解決への貢献

 

・事業拠点の温室効果ガス(GHG)排出量を基準年比 37.8%以上削減(2013年度実績の毎年4.2%削減)

・事業活動に伴うリスクの回避と環境負荷の最小化

・ビジネスを通じたお客様・社会の環境課題解決への貢献

・GHG排出量の削減

■目標37.8%以上削減、478千トン以下に対し実績47.5%削減、403千トン
(2013年度比 毎年4.2%削減)

■再生可能エネルギー使用率:目標16%以上に対し実績30.0%

・事業活動に伴うリスクの回避と環境負荷の最小化
<事業所>

■データセンターのPUE改善:目標1.54に対し実績1.57

■水の使用量:目標3万m3以上の削減に対し実績8.8万m3削減

■製品の省資源化・資源循環性向上:新製品の資源効率目標10%以上に対し実績11.2%向上(2019 年度比)

<サプライチェーン>

■製品の使用時消費電力によるCO2排出量:目標17%削減に対し実績25%削減(2013年度比)

■サプライチェーン上流におけるCO2排出量削減及び水資源保全:主要取引先への取組依頼を100%完了

・ビジネスを通じたお客様・社会の環境課題解決への貢献

■カーボンニュートラルに関する知見のビジネス部門、事業部門へのスキルトランスファー

■セミナーやワークショップ、eラーニングなどを通じた社内教育の実施による社員の専門スキル向上

・環境課題解決に繋がるお客様提案に向けた支援

コンプライアンス

コンプライアンスに係るFujitsu Way「行動規範」の組織全体への周知徹底をさらに図るために、グループ全体にグローバルコンプライアンスプログラムを展開することで、高いコンプライアンス意識を組織に根付かせるとともに、経営陣が先頭に立って、従業員一人ひとりがいかなる不正も許容しない企業風土(ゼロ・トレランス)を醸成

・社長、部門長またはリージョン長からコンプライアンス遵守の重要性をメッセージとして発信:1回以上/年

・国際腐敗防止デーに合わせたFujitsu Compliance Weekにおいて、社長・各リージョン長・各国グループ会社社長等の経営層から従業員に対し、コンプライアンス遵守徹底のメッセージを発信

サプライチェーン

自社サプライチェーンにおける責任ある調達の実現

 

・当社主要取引先による責任ある調達の国際基準への準拠へ向け、当社主力製品の主要な製造委託先・部品取引先より、下記文書のいずれかを入手する。(目標KPI=100%)

■RBA※工場監査プラチナまたはゴールド判定書

■当社CSR調達指針(=RBA行動指針)への誓約書
※Responsible Business Alliance:
電子機器メーカーや大手サプライヤーなど、約140社が加盟する国際イニシアチブ。行動規範を定め、サプライチェーン上の環境や労働者の人権及び労働条件や、倫理・安全衛生などの改善を進めている。

・下記文書いずれかの入手率:100%
-RBA工場監査プラチナまたはゴールド判定書
-当社CSR調達指針への誓約書
実績:100%取得済み
 

サプライチェーン多様性の推進

・従来の取り組みと並行して、サプライチェーンの多様性確保をResponsible Businessの目標に位置づけ、グローバルに推進

・UK・Americas・Oceaniaにおいて、中小企業(SME)・女性経営・少数民族企業等、多様な属性を持つ企業からの調達KPIを達成
実績:

■各リージョン/国での主目標を達成

■日本における多様性の観点と目標を女性活躍に決定

サプライチェーンにおけるGHG 排出削減

・GHG 排出削減を取引先とともに推進するため、主要物品取引先に対して、国際基準に沿った数値の目標設定を依頼する

・293社あてに目標設定のための説明会への参加を要請
実績:取引先の実態把握、対応要請及び支援を目標通り実施

コミュニティ

企業文化及び社員のマインドセット変革への貢献

・社会課題に関連した社会貢献活動に参加した従業員数の増加率、ニューノーマル下において2019年度比 +10%

・2019年度比+38%

 

  (2)気候変動への対応

気候変動は国・地域を超えて世界に影響を与える問題であり、グローバルに活動する当社にとっても重要な課題であると認識しています。たとえば、気候変動によりもたらされる災害は調達・物流・エネルギー供給網を寸断し、各事業所への部品調達やエネルギー調達を困難にします。また、GHG排出量に関する法規制は、製品・サービスの製造、 開発等に影響を与え、対応への遅れはビジネスチャンスの損失を招く恐れもあります。

当社グループでは、環境行動計画を策定し、環境活動を継続的に拡大してきました。特にGHG排出量の削減を重要課題と捉え、環境行動計画の当初(1993年)から目標に掲げて取り組んでいます。これからも当社グループは時代の変化をとらえ、持続可能で豊かな社会の実現を目指して環境活動を深化・発展させていきます。

現在、第11期富士通グループ環境行動計画(2023年度~2025年度)として、環境・社会課題の解決に向け、「お客様・社会」及び「自社・サプライチェーン」の2つの軸で、世界経済フォーラムのグローバルリスクである「気候変動」、「資源循環」、「自然共生」の3つにおいて8項目の目標を設定しました。そのうち、4項目は気候変動に関するものです。お客様・社会へのデジタル技術貢献に向けた取り組みや、自社の再生可能エネルギー使用率拡大など、当社グループの環境ビジョンの実現に向け足元を固めた取り組みを展開していきます。

詳細については以下のウェブサイトをご参照ください。

https://www.fujitsu.com/jp/about/environment/action-plan/

 

① ガバナンス

当社グループでは、サステナビリティ経営委員会やリスク・コンプライアンス委員会において、気候変動に関するリスクと機会の共有、方針策定、重要リスクに関する特定等を行い、取締役会へ報告しています。詳細については、上記の「(1)サステナビリティに対する考え方及び対応 ①ガバナンス」の項をご参照ください。

 

② 戦略

   <中長期環境ビジョン>

グローバル社会におけるカーボンニュートラルへの取り組みが加速する中、当社グループが果たすべき社会的役割を再検討し、「2050年度に富士通グループ自らが排出するCO2をゼロエミッション」としてきたこれまでのビジョンを20年前倒しして2030年度にゼロエミッション達成を目指すこととしました。さらにバリューチェーン全体の温室効果ガス排出量を2040年度にネットゼロ※とする目標を定めました。

新ビジョンは、「バリューチェーンでのネットゼロ」「緩和:カーボンニュートラル社会への貢献」「適応:気候変動に対する社会の適応策への貢献」という3つの柱で構成されています。先進のDX技術を効果的に活用して当社グループ自らのネットゼロにいち早く取り組むとともに、そこで得られたノウハウを当社グループのソリューションとしてお客様・社会に提供します。それにより、ビジネスを通して気候変動の緩和と適応に貢献することを目指しています。

※ 温室効果ガス排出量ネットゼロ:温室効果ガス排出量を目標年度に基準年度の90%以上を削減し、10%以下となった残存排出量を大気中のCO2を直接回収する技術(DAC)の活用や、植林などによる吸収で除去すること。

   詳細については、以下のウェブサイトをご参照ください。

https://www.fujitsu.com/jp/about/environment/climate-energy-vision/

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   <TCFDに基づいたシナリオ分析>

また、当社グループでは、気候変動戦略のレジリエンスを確保するため、2018年度に「2℃」シナリオ、 2021年度にIPCC、IEA、環境省・気象庁等政府機関、各種民間調査機関の公開情報を参照し、「1.5℃」及び「4℃」の外部シナリオを用いて、気候変動による事業インパクトを分析し、当社グループの気候関連リスク・機会を特定するとともに対応策を検討しました。自社オペレーション、サプライチェーンにネガティブな影響を及ぼす移行・物理リスクに対応するとともに、お客様の気候関連リスクを理解することで価値創造の提案につなげ、ビジネス機会の獲得を目指します。

 

 

   ・シナリオ分析

当社は、ビジネスを加速し、社会課題に挑むソリューション「Fujitsu Uvance」において、クロスインダストリーな重点分野を定めています。そのうち、特に気候変動の影響が大きいと考えられるSustainable Manufacturing(検討領域:石油化学、自動車、食品、電子機器関連ビジネス)、Trusted Society(検討領域:公共、交通、エネルギー関連ビジネス)、Hybrid IT(検討領域:データセンター関連ビジネス)に対し、1.5℃及び 4℃シナリオを用いて2050年までを考慮したシナリオ分析を実施しました。分析は「リスク重要度の評価」、「シナリオ群の定義」、「事業へのインパクト評価」、「対応策の検討」という4つのステップにて行いました。 Sustainable Manufacturing及びTrusted Societyはお客様の気候関連リスクへの対応を支援するなど、当社におけるビジネスの「機会」を中心とした分析を行い、Hybrid ITは、自社事業及びお客様の気候関連リスクへの対応など、「リスク」と「機会」の両面で分析しました。分析結果として、シナリオで分析した機会についてオファリングの検討・開発方向と一致していること、また、リスクについても対応策を整備できていることを確認し、中長期的な観点から当社の事業は戦略のレジリエンスがあると評価しました。現在、顧客のGHG排出量の削減、エネルギー効率向上などをデジタルリハーサルによりお客様のESG経営を支援するオファリングを提供しています。また、サプライチェーン全体の環境変化を可視化し、データドリブンの施策実行によりScope3までを含むGHG排出量削減など環境への影響を最小限に抑え、各企業のESG経営に繋がるサプライチェーンマネジメントの実現に向けた「Dynamic Supply Chain Management」のオファリングを準備しています。

詳細については、以下の当社ウェブサイトに掲載している「TCFDに基づく情報開示」、「Fujitsu Uvance」をご参照ください。
 https://www.fujitsu.com/jp/about/environment/tcfd/

https://activate.fujitsu/ja/uvance

 

   機会

機会分類

対象期間

内容

主な対応策

製品・サービス

短~長期

高エネルギー効率製品・サービスの開発・提供による売上増加

高性能・低消費電力の5G仮想化基地局、高性能・省電力のスーパーコンピュータ等の開発・提供

市場

短~長期

ICT活用により創出される気候変動対策に向けた新規市場機会の獲得

サプライチェーンのCO₂排出量算定・可視化、ゼロエミッションに向けた新材料探索を効率化するシステム等の開発・提供

レジリエンス

短~長期

レジリエンス強化に関する新製品及びサービスを通じた売上の増加

防災情報システム、洪水時の河川水位を予測するAI水管理予測システム等の開発・提供

 

 リスク

リスク分類

対象期間

内容

主な対応策

移行

政策/

規制

短~長期

・温室効果ガス排出やエネルギー使用に関する法規制強化(炭素税、省エネ政策等)に伴い、対応コストが増加

・上記法規制に違反した場合の企業価値低下のリスク

・温室効果ガス排出量の継続的な削減(再生可能エネルギーの積極的な利用拡大、省エネルギーの徹底)

・EMSを通じた法規制遵守の徹底

市場

中~長期

・カーボンニュートラルの推進(電動化などの普及)に伴った電力価格の高騰

・社内基準の策定、革新的な技術開発などによる電力消費量の削減

技術

中~長期

・熾烈な技術開発競争(省エネ性能、低炭素サービス等)で劣勢になり、市場ニーズを満たせなかった場合、ビジネス機会を逸失するリスク

・顧客の気候変動課題解決に対応する製品・サービス開発、イノベーション推進

評判

短~長期

・投資家・顧客等のステークホルダーからの要請へ対応することによるコストの増加

・外部要請への対応遅れによる評価・売上に対するネガティブ影響が発生

・中長期環境ビジョン、環境行動計画の策定・推進

・気候変動戦略の透明性確保に向けた積極的な情報開示

物理

(自然災害等)

慢性、急性

短~長期

・降水・気象パターンの変化、平均気温の上昇、海面上昇、渇水などへの対応コストが増加

・異常気象の激甚化によるサプライチェーンを含む操業停止、復旧コストが増加

・BCP対策強化、お取引先の事業継続体制の調査やマルチソース化などの対策実施

・潜在的水リスクの評価とモニタリングの実施

 

 

③ リスク管理

気候変動を含むリスク管理プロセスは、リスクマネジメント・コンプライアンス体制によるプロセスに組み込まれています。詳細については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」を参照ください。

また、気候変動を含む環境課題に関するマネジメントについては、前述の仕組みに加え、ISO14001に基づく環境マネジメントシステムを構築しています。気候変動対策の方針策定及び進捗管理は、サステナビリティ経営委員会が担当しています。

 

④ 指標及び目標

GHG排出量に関しては基準年に対する排出削減比率、再生可能エネルギー導入比率を指標として管理しています。

カーボンニュートラルに向けた動きを加速するため、自社事業活動における排出量を2030年度に、またバリューチェーン全体の排出量を2040年度にネットゼロとする新たな目標を策定し、2023年6月にSBTi(Science Based Targets Initiative)より「ネットゼロ」の認定を取得しました。

なお、2023年度の主な実績については、本有価証券報告書提出日現在においてデータ収集及び一部のデータにおいては、第三者審査機関による審査の過程にあるため、以下では2022年度の主な実績を記載しております。

 

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   <Scope 1、2及び該当する Scope 3のGHG排出量>

項目

GHG排出量実績(2022年度)

Scope 1

65千トン-CO2

Scope 2(Location-based)

Scope 2(Market-based)

476千トン-CO2

341千トン-CO2

Scope 3(Category 1)

Scope 3(Category 11)

1,361千トン-CO2

3,693千トン-CO2

 

   <目標と実績(2022年度)>

項目

目標

実績

自らのGHG排出量削減(注1)

中期

2030年までに100%削減(注2)

SBTネットゼロ認定

34%削減

バリューチェーンのGHG排出量削減(注3)

長期

2040年度までに90%削減

4%削減

再生可能エネルギー使用率

中期

2030年度までに100%導入

RE100加盟

30%導入

(注)1.2020年度比

2.Scope1+Scope2

3.Scope1+Scope2+Scope3

 

(3)人的資本及び多様性

サステナブルな企業として、社会に価値を提供していくための最大の経営資源、そして顧客価値の源泉は「人」です。「多才な人材が、エンゲージメント高く、一人ひとりのウェルビーイングを実現しながら、社会やお客様の課題を解決するためにパーパスを共有して俊敏に集い、社会のいたるところでイノベーションを創出する企業」となることを目指し、組織風土変革を推進しています。

 

①ガバナンス

当社グループは、事業戦略の実行に連動した最適な人材ポートフォリオを実現するため、当社代表取締役社長、副社長、各ビジネスグループ長、各リージョン長等が参加するGlobal Talent Committeeを年2回程度開催し、グローバルレベルで重要なポジションにおけるサクセッションプランの検討状況の共有や個別アポイントメントの検討、また経営者育成に向けた施策に関する議論を実施しています。加えて、Talent Acquisition(人材獲得), Learning & Development(人材開発), Performance Management(パフォーマンスマネジメント), Engagement(エンゲージメント)等、人事・人材育成に関する具体的な課題や方針、施策に関する検討、議論、決定も行います。人的資本や多様性を含めた人事・人材育成に関わる事項のうち重要なものについては経営会議及び取締役会に報告されます。

これらの活動は、CHRO(最高人事責任者)を責任者として、国内外の人事・人材開発育成責任者と連携して進めています。具体的には、Japanリージョン、Europeリージョン、Americasリージョン、APACリージョンにそれぞれ執行責任者を配置しています。加えて、グローバルHRカンファレンスを年2回開催し、グローバルレベルでの人事戦略、人事施策の検討、各リージョンにおける人事施策の進捗状況や課題の共有等を実施しています。

 

②戦略

 「多才な人材が、エンゲージメント高く、一人ひとりのウェルビーイングを実現しながら、社会やお客様の課題を解決するためにパーパスを共有して俊敏に集い、社会のいたるところでイノベーションを創出する企業」を実現するため、以下3点を人事部門のグローバル戦略テーマとしています。

 “Empowerment”

多様性を享受しオープンかつエンゲージメントの高い、信頼を基にした強固な文化を醸成します。

 “Growth” 常にすべての従業員が魅力ある仕事に挑戦し、学び、成長する機会を提供します。

 “Impact” 国境や組織の枠組みを越えてコラボレーションし、ビジネスと社会に強いインパクトをもたらす多様性あふれる集団を形成します。

 

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 上記を実現するために、2023年度は主に以下の取り組みを進めました。

 

(ⅰ)事業戦略と一体となった人材ポートフォリオの策定

事業戦略を実現するためには、その戦略と一体となった人材ポートフォリオの策定が不可欠です。事業戦略に基づいて将来必要とされる人材のロールやスキルを定義するとともに、人数等の規模感を特定し、現有人材とのギャップ分析を行い、そのギャップを充足する計画の立案が必要です。

現在当社においては、事業と人材ポートフォリオの連動に向け、事業、ロール、地域の3軸での可視化・モニタリングプロセスの検討を開始しています。事業のポートフォリオとアラインしたロール別の人員数をマッピングし、成長領域への戦略的な人材の採用・配置や、リスキリング・アップスキリングを含めた人材育成施策を実行するとともに、効率化や自動化を推進することで生産性の向上を目指す分野を可視化していくことを目指しています。今後は、グローバルに統一されたロールフレームワークを用い、各リージョンや各事業の市場特性、人材マーケットの状況、ならびに現有人材ポートフォリオとのギャップを踏まえ、事業戦略実現に求められるロール別要員計画を地域別に策定してまいります。

 

(ⅱ)人材ポートフォリオの実現に向けた取り組み

・人材獲得(新卒採用、中途採用)の強化と従業員定着率の向上

当社では、2020年より導入しているジョブ型人材マネジメントの考え方に沿って、新卒採用においても、インターンシップの積極展開や、内定時に職種や配属本部を約束する応募コースの拡大により、入社後のミスマッチを防ぐ取り組みを実施しています。

ビジネス戦略実現に向けて、多様な人材をタイムリーに獲得するため、キャリア採用についても引き続き積極的に実施しており、2023年度は1,083名(前年度比約250名増加)を採用しました。

また、2023年度より、グローバル共通のEmployee Value Proposition(EVP)(注1)を展開し、新卒採用と中途採用の訴求力向上に努め、各種オンボーディング施策を実践するなど、採用力強化に加え、新規入社者の定着率向上についても実践しています。

(注)1.当社では、会社が社員に提供できる価値を明文化し、グローバルに統一されたEVPとして5つのPeople Promisesを定めています。①Do the right thing ②Trusted to transform ③Work Your Way ④Global reach, local impact ⑤Achieve together

 

・人材獲得競争力強化に向けた従業員報酬のあり方

当社が導入しているジョブ型人材マネジメントにおいては、人材獲得・定着に向けた競争力強化の観点から、「労働市場」を第一義として報酬水準を決定すること、すなわち、各人の職務・ポジションに対して、マーケットベンチマークに基づき相応しい報酬水準を設定することが基本的な考え方です。

この考え方に基づき、2023 年 4 月にグローバル企業のベンチマーク結果を踏まえ、従業員の報酬水準の引上げを実施しました。年収ベースで平均7%の引上げを実施し、人材獲得競争力の向上につながっています。

また、中長期的な当社のビジネスへの貢献度が極めて高い領域(注2)における人材獲得競争力の強化を目的として、当該領域に非常に高い専門性を有する従業員を対象に報酬のアドオンを行う「高度専門職系人材処遇制度」を実施しています。

(注)2.サイバーセキュリティ、AI、データサイエンティスト、重点オファリング(SAP, Salesforce, ServiceNow(3S))等を適用領域としています。

 

・リスキリング、アップスキリングの強化

事業戦略に沿って、必要となるスキルや専門性を有する人材の育成に向けて、リスキリングやアップスキリングに取り組んでいます。

特に、Fujitsu Uvanceの拡大に向けては、「Business Application」領域のソリューションであるSAP、Salseforce、ServiceNowのスキルを有するエンジニアの育成に注力しており、人材育成投資を当該領域に集中的に実施し、ServiceNow資格取得者数は昨年比213名増、Salesforceに関しても361名増と堅調に推移しています。

 

(ⅲ)ジョブポスティングの拡大とキャリアオーナーシップの実現

当社のジョブ型人材マネジメントにおいては、従業員一人ひとりが自らのキャリアを考え、成長に向けて主体的に行動していく「キャリアオーナーシップ」の考え方を重視しています。

人材配置においては、2020年度より社内公募制度である「ポスティング」を大幅拡大しました。2023年度は7,582名が応募し、2,725名が合格し異動しています。また、2022年度より、応募対象をグローバルに拡大した募集も開始し、2023年度は65名が合格しています。このほか、従業員自身が希望する部署に期間限定で異動し、異なる業務を経験できる、社内インターンシップ制度「Jobチャレ!!」や、所属組織や業務を超えて、スキルや経験を活かして挑戦できる社内副業制度「Assign Me」など、社員が主体的に挑戦できる機会の拡充に取り組んでいます。

人材育成においては、「キャリアオーナーシップ」マインドを醸成し、行動変革を促進するための施策と、自ら主体的に選択して受講できる教育機会の拡充に取り組んでいます。

多様な従業員と互いのキャリアを語り合う「キャリアCafé」は日本で延べ15,551名が参加しています。また、いくつかの質問に答えることで、個人のキャリアオーナーシップの状況を診断できる「キャリアオーナーシップ診断」は2022年度に導入し、既に日本で延べ27,000名の社員が活用しています。

学びの機会の拡充については、教育プラットフォーム「Udemy Business」や 「LinkedIn  Learning」を導入し自律的な学びの文化の醸成を促進しています。

加えて、プログラムの提供だけでなく、職場・社員のキャリア形成を支援する専門家の設置や、所属組織以外の先輩社員とキャリアについて対話できるメンタリングの仕組みも2023年度より全社展開を開始し、一人ひとりのチャレンジを後押しする取り組みも進めています。

 

(ⅳ)グローバル共通の評価制度「Connect」

2021年より順次、当社グループ12万人が自律的に考え、行動を起こしていくためのグローバル共通の人材マネジメントの基盤「Connect」を導入しました。

「Connect」では、当社のパーパスと個人のパーパスを起点にそれらを結び付け、社員一人ひとりの主体的な挑戦を後押しし、組織や個人の成長と社会やお客様に大きなインパクトをもたらすことをねらいとしています。

また、評価制度としては社員一人ひとりがビジョン実現に向けて生み出したインパクトの大きさ(Impact)、Fujitsu Wayの大切にする価値観「挑戦」「信頼」「共感」の体現度(Behaviours)、パーパスやビジョンを基にした自身とチームの成長(Learning&Growth)を評価します。

加えて、評価結果を報酬やアサインメント、スキル向上支援の検討にも活用することで、一貫性のある人材マネジメントを行うことができる仕組みとし、組織と個人の成長を最大化することと、組織や社会、お客様に大きなインパクトをもたらすことに繋げています。

 

(ⅴ)エンゲージメント向上の取り組み

当社グループの持続的な成長を測る1つの指標として、2020年度より従業員エンゲージメントを非財務指標に設定し、2025年度までにグローバル企業と同等の数値(75)に引き上げることを目標に掲げ、様々な取り組みを推進しています。

社員一人ひとりが、パーパス実現に向けて 活き活きと活躍できるよう、年2回のエンゲージメントサーベイを通じて社員の声を集め、組織の風土を「見える化」し、各組織へフィードバックすることで組織活性化に取り組んでいます。

また、2023年度より、サーベイプラットフォームをグローバルで統一し、より一貫した集計の下、組織・チーム内での内省・メンバーと一緒に行動を起こすこと(Action Taking)の実行を積極的に促しています。

社員の主体的なチャレンジや成長支援を促す対話の場として上司と部下による1on1を引き続き推進しています。2023年度は従業員1人あたり、平均11.7回の1on1を実施しました。1on1の見える化と質向上に向けた取り組みとして、1on1支援サービス「みんなの1on1」や、メンバー一人ひとりの成長を促し、高め合う文化を醸成する「フィードバック研修」を展開しています。

2023年度は、エンゲージメントに対する考え方、サーベイに取り組む意義や目的、回答時のポイントなどを体系化した「Engagement Survey Playbook」の社内公開や、エンゲージメントの結果に全社員で向き合う「Engagement Week」を実施し、一人ひとりの理解促進・深化についても推進しています。

 

(ⅵ)DE&Iの実現に向けた取り組み

当社グループが目指すDE&Iの姿は「誰もが一体感をもって自分らしく活躍できる、公平でインクルーシブな企業文化」です。これを基盤に多様性を尊重した責任ある事業活動に取り組み、持続可能な社会に向けたイノベーションの創出を目指しています。

DE&Iにおける5つの重点領域(注3)をグローバルで設定し、持続的な発展を可能にする土台である多様な人材の活躍を支援しています。中でもジェンダーへの取り組みは現在の必須課題と位置づけており、非財務指標のKPIの一つとして、リーダーシップレベルにおける女性比率の目標を2025年度で20%と策定しました。2023年度末時点では16%を達成しています。

さらに、一人ひとり異なる価値観や能力を互いに活かし合える職場環境を醸成するため、全社員の意識やマネジメントスタイルの変革を目的とした「マインド改革(注4)」や、ありたい姿に向けた戦略的な採用・育成・登用等の「ポジティブアクション(注5)」を行うとともに、当社が提唱する「Work Life Shift」の下、多様で柔軟な働き方を実現し、社員のキャリアやライフイベントへのサポートを一層充実していく等、様々な取り組みを推進しています。

(注)3.2022年に「Global DE&I Vision & Inclusion Wheel」を刷新し、その中でジェンダー、世代間、LGBTI+、文化・民族、健康・障がい・アクセシビリティの5つを当社の重点領域として設定

4.マインド改革の例:アンコンシャスバイアス研修、インクルーシブリーダー研修、エンゲージメントサーベイの活用

5.ポジティブアクションの例:コミュニティの充実、メンター制度、キャリア支援

 

(ⅶ)健康経営、労働安全衛生の取り組みについて

当社では、健康に関する最終的な評価指標として「生産性向上」「個人・組織活性化」「人材リテンション強化」に関わる指標を設定し、下記5つの重点施策領域において、それぞれの指標を改善・向上させるためにPDCAサイクルを回しながら取り組んでいます。

 

1.生活習慣病・がん対策 2. メンタルヘルス対策 3.口腔・歯の健康施策

4.ヘルスリテラシー・健康意識向上、生活習慣の改善 5.労働環境の整備

 

また、労働安全衛生基本方針として「全ての事業活動において、心とからだの健康と安全を守ることを最優先とする」と定め、安全・快適に働く環境の整備と職場風土づくりをグループ一体となって推進し、社員の健康・安全の確保を図っています。この基本方針に基づき、各リージョンに労働安全衛生施策を展開しています。

 

(ⅷ)ウェルビーイングの実現に向けた取り組み

当社グループでは、事業活動の源泉である人に焦点を当てたウェルビーイングを、経営における重要課題の1つと位置づけています。

当社ではウェルビーイングの定義を「一人ひとりが、自身の大切にしている価値観に向き合い、仕事と生活を通じて、未来の幸せに日々向かっている」と定めました。一人ひとりのウェルビーイング向上に向けて以下4つのカテゴリにまとめ、各カテゴリごとに方針を定めてグローバルで活動を実践しています。

 

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ウェルビーイングの2025年度目標を、社員が「自身のウェルビーイング実現に向けて、具体的に行動している」とし、その実現に向けてウェルビーイングの理解・浸透策の展開と、データドリブンな可視化・分析の取り組みを重点的に推進しています。

 

(ⅸ)人的資本価値向上モデルとデータドリブンによる効果検証

当社では2022年度より、人的資本経営の実践に向けて他社のCHROと協働する「CHRO Roundtable」(注6)を主催しています。人的資本経営の実践においては、人材に関する取り組みが戦略の実現にどのように関わっているのかを伝える一貫性あるストーリーと、その裏づけとなる自社固有のKPIを特定し、取り組みを進めていくことが重要との認識のもと、2022年度のCHRO Roundtableでは、各社が人的資本経営を検討するにあたっての構想フレーム「人的資本価値向上モデル」を策定し、社外に公開しています。

この「人的資本価値向上モデル」では、人材に関する取り組みを、経営戦略・事業戦略の実現に向けて必要不可欠な「成果を生むための取り組み」と、そうした取り組みを持続的に支える「持続的効果を生むための取り組み」に区分し、施策間のつながりと、それぞれの施策がどのように企業価値の向上につながっているかを図式化しています。各社が人的資本経営を実践するにあたり、自社の施策をこのモデル図に落とし込んで整理していくことで、全体構造を捉えて検討できます。

また、CHRO Roundtableではこの人的資本価値向上モデルを活用し、経営戦略と人材に関する取り組みの関係性を定量的に可視化するデータ分析を実践しています。2023年度のCHRO Roundtableでは、データ分析についての議論を深めました(注7)。

(注)6.2022年度のCHRO Roundtableについては、「CHRO Roundtable  Report」参照(下記リンク先よりダウンロード可)
https://mkt-japan.global.fujitsu.com/fj/gmu-crd/2022/cxo-roundtable_whitepaper/input.html?_gl=1*1910gbp*_ga*NTg2MjYxNT AyLjE2ODgxODIyOTE.*_ga_GSRCSNXHW8*MTcxNDExMTY0OS45 NC4wLjE3MTQxMTE2NTEuMC4wLjA.

7.2023年度の「CHRO Roundtable Report」は、2024年7月頃を予定

 

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   ③ リスク管理

人的資本を含むリスク管理プロセスは、リスクマネジメント・コンプライアンス体制によるプロセスに組み込まれています。詳細については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」を参照ください。

また、CHROを人事部門の最高責任者として、全社経営・事業戦略とアラインした人材戦略を策定して事業への貢献を確実なものとするため、”経営トップが参画し、次世代経営リーダー候補者の選抜・育成を筆頭に人事・人材育成に関する具体的な課題や方針、施策に関する検討、議論、決定を行う場である「Global Talent Committee」”、”グローバルで一気通貫の人事戦略・施策を促進する「グローバルHR カンファレンス」”において人的資本に関する議論のサイクルを定期的に回すことで、優秀人材の離職や人材獲得競争が激化するリスクにスピーディに対応できる体制を構築しております。

 

④ 指標及び目標

指標及び目標 組織・人材の流動化、活性化の観点において重要とされる、新卒/中途採用、従業員エンゲージメントスコア、女性管理職比率について、それぞれ中長期的に目標を定めマネジメントしております。

 

項番

指標

目標

2022年度実績

2023年度実績

(ⅱ)

新卒採用数(注1)

25年度800程度

765名

1,037

(ⅱ)

中途採用数(注1)

24年度2,000以上

818名

1,083

(ⅴ)

従業員エンゲージメントスコア(注5)

25年度12月まで75

22年度12月時点で69

23年度11月時点で69

(ⅵ)

管理職に占める女性労働者の割合(注3)(注4)

25年度まで20.0%

15.0%

16.0%

 

(参考)人事戦略に関する指標

人事戦略の重要なテーマに関する参考指標は、以下のとおりです。

項番

指標

2022年度実績

2023年度実績

(ⅱ)

高度専門人材認定者数(内3S認定)(注1)

78名(57名)

143名(128名)

(ⅱ)

SAP資格取得件数(注1)

848件

452件

(ⅱ)

ServiceNow資格取得件数(注1)

217件

430件

(ⅱ)

Salesforce資格取得件数(注1)

589件

950件

(ⅱ)

新卒入社三年後定着率(注1)

89%

90%

(ⅲ)

社内ポスティング異動人数(注2)

3,419名

2,725名

(ⅲ)

グローバルポスティング異動人数(注3)

98名

65名

(ⅲ)

Jobチャレ!!利用者数(注2)

-

71名

(ⅲ)

キャリアcafé参加者数(注2)

8,296名

7,255名

(ⅲ)

キャリアオーナーシップ診断(注2)

15,187名

11,813名

(ⅲ)

メンタリング参加者数(注2)

-

768名

(ⅲ)

Udemy Business 利用者数(注2)

36,764名

33,320名

(ⅲ)

LinkedIn Learning 利用者数(注3)

-

104,773名

(ⅴ)

1on1平均実施回数(注2)

1人当たり年間

平均9.4回実施

1人当たり年間

平均11.7回実施

(注)1.提出会社のみ

2.日本の連結対象会社のみ

3.当社グループ全体の数値

4.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)又は「育児休業、介護休 業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)における算定方法による算出

5.22年度実績は日本の連結対象会社のみ、23年度実績から当社グループ全体の数値

 

3【事業等のリスク】

  [方針・推進体制]

 当社グループは、事業継続性、企業価値の向上、企業活動の持続的発展を実現することを目標とし、その実現に影響を及ぼす不確実性をリスクと捉え、これらのリスクに対処するために、取締役会が決定した「内部統制体制の整備に関する基本方針」に基づき、取締役会に直属し、グループ全体のリスクマネジメント及びコンプライアンスを統括する「リスク・コンプライアンス委員会」を設置しています。リスク・コンプライアンス委員会は、代表取締役社長を委員長として業務執行取締役等で構成しており、当社グループに損失を与えるリスクを常に評価、検証し、認識された事業遂行上のリスクについて、未然防止策の策定等リスクコントロールを行うとともに(潜在リスクマネジメント)、リスクの顕在化により発生する損失を最小限に留めるため、顕在化したリスクを定期的に分析し、取締役会等へ報告を行い、再発防止に努めております(顕在化したリスクのマネジメント)。

 

  内部統制体制におけるリスク・コンプライアンス委員会の位置づけ

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また、リスク・コンプライアンス委員会は、グローバルな地域に基づく業務執行体制の区分であるリージョンごとに、下部委員会としてリージョンリスク・コンプライアンス委員会を設置し、国内外の部門やグループ会社、リージョンにリスク・コンプライアンス責任者を配置するとともに、これらの組織が相互に連携を図りながら、グループ全体でリスクマネジメント及びコンプライアンスを推進する体制を構築しております。

さらに、グループ全体のリスク管理機能強化のため、事業部門から独立した代表取締役社長直下の組織である全社リスクマネジメント室にリスク・コンプライアンス委員会事務局機能を設置し、CRMO(Chief Risk Management Officer)の下、リスク情報全般の把握と迅速かつ適切な対応を行っております。そして、2023年6月にCQO(Chief Quality Officer)を新たに選任し、情報セキュリティ、システム品質に関する全社的な施策及び対応を迅速に行うとともに、代表取締役社長主導によるリスクマネジメント経営を徹底し、リスク・コンプライアンス委員会を毎月開催することで、施策実行の迅速性と実効性を担保するよう努めております。

 

 

リスクマネジメント・コンプライアンス体制図

 

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  [潜在リスクマネジメントプロセス]

・グループにおける重要リスクの抽出・見直し

当社グループを取り巻く環境変化をふまえて、当社グループにおける重要リスク(16項目)の抽出・見直しを実施。重要リスクごとにリスクシナリオを定義。純粋リスクと経営リスクに区分。

・リスク管理部門の選出

重要リスクごとに所管部門であるリスク管理部門を選出。

・グループにおけるリスク評価

リスク管理部門/部門/グループ会社において、各重要リスクの影響度、発生可能性、対策状況等を評価。

・重要リスクのランキング化・マップ化

グループにおける評価内容をふまえ、重要リスクのランキング化・リスクマップの作成を行い、重要度を可視化。重要度をふまえて重点対策リスクを決定。

・リスク・コンプライアンス委員会報告

グループにおける評価結果をふまえた分析を実施、重要リスクの対策方針等を議論・決定。

・部門・グループ会社への是正指導

グループにおける評価結果をふまえ、部門・グループ会社にフィードバックを実施し、改善を指示。

・部門・グループ会社におけるリスクモニタリング

部門・グループ会社において定常的にリスクモニタリングを実施し、リスク対策の状況確認と低減を実施。

 

リスクマネジメントプロセス

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[重要リスク一覧]

潜在リスクアセスメントの評価結果に加え、実際に発生したリスクである「顕在化したリスク」の状況を踏まえたうえで、当社グループの事業戦略及びビジネス目標達成への影響を鑑み、重点的に取り組むリスクを「重点対策リスク」として選定しております。

昨今の当社及び当社グループ会社の度重なる情報セキュリティインシデントやシステム品質に関する問題により、「重点対策リスク」を以下2つの重要リスクと定め、リスク・コンプライアンス委員会中心に取り組んでおります。

 

・セキュリティに関するリスク

・製品やサービスの欠陥や瑕疵に関するリスク

 

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本項においては、将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は本有価証券報告書提出日(2024年6月24日)現在において当社グループが判断したものです。なお、以下の内容は、当社グループの全てのリスクを網羅するものではありません。また、各リスクにおける対策の実施にもかかわらず、全てのリスクの発生を未然に防止できない可能性があります。

また、当社グループは経営目標の達成に向けて「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載された様々な施策を進めてまいりますが、これらの施策に影響を与える可能性のある主なリスクとその対策を、経営方針・経営戦略との関連性も考慮したうえで、以下に記述しております。

 

[重点対策リスク]

(1)セキュリティに関するリスク

[リスクの概要と影響]

当社グループは、コンピューターウイルスの侵入や不正アクセス等のサイバー攻撃による社内ネットワーク・システムの運用停止や情報漏洩、不正利用等を完全に防げるとは限りません。万一、情報漏洩により個人の権利・利益を侵害した場合やお客様の情報を漏洩した場合には、当社グループの信用は低下するとともに、個人情報保護法やGDPR等の法令違反による罰金や制裁金が科されるおそれがあります。

これらのリスクは当社グループのサプライチェーン上でも発生する可能性があります。委託先におけるセキュリティリスクが顕在化した場合、お客様や当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。

また、敷地・建物・フロアの3層において物理セキュリティ環境を構築していますが、物理的な破壊による業務停止や情報漏洩等を完全に防げるとは限りません。このようなリスクが顕在化した場合、機密情報の漏洩や企業ブランド価値の毀損、ビジネス機会の喪失等、当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

[対策]

お客様、お取引先、または当社グループの機密情報や個人情報の保護については、情報保護マネジメントシステム運用の強化を図り、社内規程の制定、従業員への教育、現場点検、監査、業務委託先も含めた指導等を実施しております。

 当社グループの重要な事業活動基盤の一つである社内ネットワークにつきましては、ゼロトラストを実現するべく、IT基盤の特性に合わせて対策を講じています。標的型攻撃対策として不正アクセス対策やマルウェア対策に加え、デバイス管理、ID管理、データ漏洩対策を組み合わせた認証・認可基盤を構築し、巧妙化・多様化・複雑化するサイバー攻撃への対策を実施しております。また、グローバルに展開しているお客様向けのITシステム及び、社内ITシステムのITアセット管理を一元化し可視化することで、グループ全体のセキュリティリスクの特定と是正を速やかに実施しております。

さらに、委託先におけるセキュリティリスクへの対処として、制度・セキュリティ強化の両面からサプライチェーンのセキュリティ強化施策を進めております。

また、敷地・建物・フロアの3層において「人的警備」と「機械警備」を組み合わせた物理セキュリティ環境を構築しています。さらにより高度な物理セキュリティ環境を構築するために、なりすましを防ぐことが可能な静脈認証装置を組み合わせたセキュリティゲートを社内展開しています。

 

(2)製品やサービスの欠陥や瑕疵に関するリスク

[リスクの概要と影響]

当社グループでは、品質を事業活動の根幹に関わる事項として捉え、快適で安心できるネットワーク社会を支えるために、その維持・向上に日々たゆまず取り組んでおります。

システムの受託開発や製品・サービスの運用・保守業務、製品の設計・開発・製造において、お客様要求の高度化、システムの複雑化が進み、開発難度が高まり、製品の欠陥や瑕疵等が発生する可能性があります。また、競争の激化による価格低下により、納期遅延や不採算プロジェクトが発生する可能性があります。このような製品・サービスの欠陥、瑕疵や納期遅延等が発生した場合、製品回収や補修、システムリカバリー作業や、お客様への補償、機会損失等が当社グループの売上及び損益に影響を及ぼします。

また、万一、欠陥や瑕疵等への対応における判断誤りや組織的な不正があった場合、企業レピュテーションは低下し、当社グループの損益への影響を拡大させる可能性があります。

[対策]

システムの受託開発及びサービスの開発においては、品質管理の全社ルールを定め、ソフトウェアのモジュール化、開発の標準化、セキュリティ監査等による品質向上に努めております。開発プロジェクトの進捗やテスト密度・不具合検出率等、開発現場で発生する品質に関わる情報を共通プラットフォームであるFujitsu Developers Platformに乗せてEVM(Earned Value Management)や品質メトリックスの標準化と合わせて、タイムリーに分析してアラートを上げることにより、品質不良のリスクを早期に把握・対策する仕組みを構築することを目指しています。また、お客様との契約のあり方を見直すとともに、ビジネスプロデューサー・SEのビジネスプロセスの標準化を進め、商談発生時からプロジェクトの進行を通じてリスク管理を行い、納期遅延や不採算プロジェクトの発生を抑制しております。併せて損失の引当ても適時に実施しております。

製品・サービスの運用・保守業務では、安定稼動のため、お客様と協働での点検や品質、契約、ルール等を改善する活動を継続的に行っております。

製品の設計・開発・製造では、品質管理の全社ルールを定め、関連法規の遵守・最新基準への適合、品質の向上及び外部購入品の品質管理を進めております。

そして、パブリックサービスに対する品質統制を厳格化し、商談から運用・保守までの状況の見える化、品質状況の可視化、第三者による設計プロセスの確認、品質成熟度の評価による品質の確保に努めております。

また、重大障害の抑止に向けて、全社的な品質保証体制強化のため、事業部門ごとの品質保証プロセスに加え、社長直轄組織による開発プロセスのエンハンスや各プロセスの有効性の監視や、部門間での知見・ノウハウを共有する横断的な仕組みの導入・改善を進めております。

 

 

[重要リスク]

(3)自然災害や突発的事象発生のリスク

① 自然災害・感染症・火災等に関するリスク

[リスクの概要と影響]

近年、世界的な気候変動により、台風・水害・大雪等の自然災害の発生頻度や影響度は高まっております。また、首都直下・南海トラフ等における巨大地震、感染症のパンデミック、火山噴火等の不測の事態は、被害想定を超えた規模で発生する可能性があります。このような事態が発生した場合、事業所の機能停止、設備の損壊、電力・水・ガス等の供給停止、公共交通機関や通信手段の停止、部材メーカーからの部品供給の不足や遅れ、サプライチェーンへの被害等により、お客様へのサービス提供や製品出荷の停止等、当社グループの事業活動の継続に影響を及ぼす可能性があります。

[対策]

当社グループでは、防災に関する強固な連携体制の構築と事業継続対応能力強化を図るため、全社防災組織を編成し、様々な訓練を実施しております。また、過去の地震における対応を教訓として、事業所における耐震・浸水対策や定期点検の取り組みについても強化しております。さらに、地震や大規模な水害、火山の噴火等の自然災害、新型インフルエンザ等の感染症の流行、火災・爆発等の発生時にも、重要な事業を継続し、企業としての社会的責任を遂行するとともに、お客様が必要とする高性能・高品質な製品・サービスを安定的に供給するために、事業継続マネジメント(BCM:Business Continuity Management)を構築するとともに、事業継続計画(BCP:Business Continuity Plan)の策定や継続的な見直し及び改善を行っております。

また、感染症によるパンデミックの経験をふまえて、お客様、お取引先、従業員とその家族の安全確保を最優先とし、お客様への製品・サービスを継続して提供する体制を構築することにより重要な事業を維持し、社会的責任を遂行できるよう努めております。

② 紛争・テロ・政情不安等に関するリスク

[リスクの概要と影響]

当社グループは、グローバルにビジネスを展開しているため、各国・各地域において、紛争・テロ・デモ・ストライキ・政情不安等が発生した場合、サプライチェーン等の当社グループの事業に大きな影響を与える可能性があります。また、従業員等が巻き込まれ、安全が脅かされる可能性があります。

[対策]

各国・各地域におけるリスク情報の収集や事業の棚卸を行い、関係者間で共有するとともに、調達先におけるBCPの推進や、従業員の緊急連絡体制を構築し従業員の安全管理を行う等、情勢を見極めながら、ビジネスを継続するよう努めております。

 

(4)コンプライアンスに関するリスク

[リスクの概要と影響]

当社グループは、グローバルにビジネスを展開しており、競争法・贈賄禁止法・輸出管理法等国内外の関連法令・規制等を遵守する必要がありますが、これらの関連法令・規制等に抵触する事態が発生した場合、多額の課徴金や損害賠償を請求される可能性があります。また、不正会計等により監査法人から監査報告を受けることができない、または有価証券報告書の提出ができない、もしくは過去に提出した有価証券報告書の訂正をしなければならなくなる事態が発生した場合、株価の下落や、株主からの損害賠償請求に繋がり、当社グループの社会的信用が失墜する可能性があります。

[対策]

当社グループでは、最新の法令をふまえたルール・規程の制定と継続的運用を行うことで、業務上、役員や従業員による法令違反が生じないように統制しています。不正会計等についても、内部統制評価を行い、内部統制監査を受けることで、業務プロセス上で適正な事務処理及び経理処理がされるようにしております。また、経営層からのトップメッセージの発信やe-Learningの定期的な実施、営業部門向け研修を実施し、従業員のコンプライアンス意識の向上に努めるとともに、内部通報制度の整備と運用、発覚後の調査・対策体制を整備しております。

 

(5)財務に関するリスク

[リスクの概要と影響]

当社グループに対して外部の格付け機関が発行する格付け(CSR・サステナビリティ関連の格付けを含む)は、資金調達や企業レピュテーションに大きな影響を及ぼすとともに、お客様やお取引先と取引する際の信用情報として使われることがあります。収益計画の未達や財務状況の悪化等の理由によりこれらの格付けが引き下げられた場合、当社グループの資金調達に影響を及ぼすほか、入札等、取引参加において不利になる可能性があります。また、お取引先の経営悪化や経済情勢の悪化等の信用不安等は売掛債権の回収に影響を及ぼす可能性があります。

[対策]

当社グループでは、資金調達に関する対策として、流動性の確保、資金調達計画の策定、金融市場動向の分析等を行っております。また、与信管理に関する対策として、与信管理関連部門による意見交換、及び外部機関の企業信用調査情報等の関連部門との共有と動向監視、債権保全に関するアドバイス・指示及び注意喚起の実施等を行い、リスクの低減を図っております。

 

 

(6)知的財産に関するリスク

[リスクの概要と影響]

当社グループでは、研究開発活動を通じ、他社の製品やサービスと差別化できる技術やノウハウの創出に努めておりますが、かかる技術やノウハウは、法的・経済的な制約のために知的財産としての十分な保護が受けられない場合があります。そのため、他社が当社グループの技術やノウハウを使って類似した製品やサービス等を製造、販売することを効果的に防止できない可能性があります。また、他社が類似、またはより優れた技術を開発した場合、当社グループの知的財産の価値が低下することがあります。当社グループの知的財産を適切に保護・活用できない場合、当社グループ事業の成長の阻害や、利益の逸失に繋がる可能性があります。

当社グループの製品やサービスおよび活動について、他社の知的財産権を侵害している、あるいはオープンソースソフトウェアを含む第三者のソフトウェアの利用形態が許諾条件に沿わないとされ、使用料支払いや設計変更費用等が発生した場合、当社グループの損益に影響を及ぼす可能性があります。

[対策]

知的財産の保護・活用においては、当社グループの事業戦略や事業環境の変化を踏まえ、より効果的な知財戦略への見直しを行い、推進しております。また、他社の知的財産権を侵害することのないよう、社内規程や体制の整備、ソフトウェア利用の管理体制の強化、製品・サービスの商品化プロセスにおける他社知的財産調査等を行っております。

 

(7)環境・気候変動に関するリスク

[リスクの概要と影響]

当社グループでは、パーパスとして、イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていくことを掲げており、環境を含むサステナビリティ課題への対応を経営の最重要事項の一つと位置付けています。しかし、事業活動を通じて環境汚染等が発生した場合、当社グループの社会的な信用低下や、浄化処理等の対策費用発生等により損益に影響を及ぼす可能性があります。

 また、近年、気候変動等により発生頻度・影響度が増大した自然災害は、調達・物流・エネルギー供給網を寸断し、気温の長期的な変化は空調エネルギー使用量の増加を招き、当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。現在、世界各国が2050年までにカーボンニュートラルを目標に掲げていく中で、機関投資家も気候変動への取り組みを投資基準とする等、社会・経済のカーボンニュートラルへの流れが加速しています。温室効果ガスの排出量の規制強化や炭素税の導入に加え、顧客や社会のカーボンニュートラルへの貢献が求められていますが、これらの規制等に適合できない、あるいは社会が期待する以上の貢献ができない場合、後追いでの規制対応のためのコストの増加、企業レピュテーションの低下によるビジネス機会の損失や、環境ラベル取得などの市場のスタンダードへの適合を条件とする入札に参加できなくなる可能性があります。また、お客様・社会のCO2削減、エネルギー源の電化シフト、エネルギー需給の最適化、再エネ拡大といったカーボンニュートラルな社会システムへの転換や気候変動適応を支援するソリューションに対する需要の急速な高まりにより、省エネ・カーボンニュートラルに貢献するソリューションや、気候変動の適応に貢献するソリューションを提供できない場合、または他社と比べて削減できるエネルギーが少ない場合は、ビジネス機会の損失や市場シェア及び利益率の低下に繋がり、当社グループの売上及び損益に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

[対策]

当社グループでは、法律・条令等に基づき社内規程を整備し環境負荷の低減や環境汚染の発生防止等に努めています。エネルギー使用量においては、環境パフォーマンス管理システムによる事業所のエネルギー使用量の把握を行うとともに、電力においては、社内の調達電力システムを活用し、各社の電力料金の比較・分析を行い、契約電力のコストやCO2排出量等の最適化を図っています。排水・排ガスにおいては、関連法律・条例等の排出基準よりも厳しい自主管理値を設定し、定期的な測定により数値の監視を行っています。また、当社グループ工場跡地では、土壌や地下水の調査及び浄化活動を行っています。

さらに、主要な外部評価の評価基準を分析し、環境経営の評価軸に組み込んだ情報開示、環境パフォーマンス向上を狙いとした改善を図るとともに、グローバルな環境リーディング企業として社会的責任を果たすために、気候変動対策としてSBTiよりネットゼロ認定を取得するとともに、顧客や社会のカーボンニュートラルを戦略的に推進しています。顧客や社会のカーボンニュートラルに貢献するため、環境配慮製品やソリューションの設計・開発を行うとともに、EPEAT等の環境配慮製品ラベルを取得し、また、効率的な環境価値取引のエコシステムの構築を目指す新たなプロジェクトを開始し、企業や国を超えたCO2削減量等の環境価値取引市場に対して、ブロックチェーン技術やカーボンニュートラル関連技術に基づく環境価値流通プラットフォームの市場適用と活性化に向けた取り組み等を行っております。

 

 

(8)調達先・提携等に関するリスク

調達に関するリスク

[リスクの概要と影響]

当社グループが提供する製品・サービスは最先端の技術を使用しており、汎用的ではない部品や希少性の高い原材料等を使用することがあります。そのため、一部の部品・原材料等については、安定的な調達が困難な場合や、代替の調達先を確保できない場合、大量に調達が必要な部品・原材料等について、必要な量を調達できない可能性があります。また、お取引先において、自然災害、感染症の流行、事故、経営状況の悪化等が発生した場合は、当社グループに対する部品・原材料等の安定的な提供が困難になります。さらに、世界中で発生する異常気象やそれに伴う災害、国際情勢の不安定化等、部品・原材料等の安定的な調達に影響を及ぼす事象は増加傾向にあるため、部品・原材料等を十分に確保できない場合、製品・サービスの提供が遅れ、お客様への納期遅延や機会損失等が発生する可能性があります。

当社グループの調達部品等については、為替動向や需給逼迫等により調達価格が当初の見込みを上回り、製品・サービスの利益率の悪化や、値上げによる売上の減少が起きる可能性があります。

また、できる限り品質確保に努めておりますが、購入品の不良を完全に防げない場合には、納期遅延や製品不良が発生し、機会損失、修理回収費用、不良品廃却費用、お客様への賠償責任等が発生する可能性があります。

[対策]

当社グループでは、部品単位での製造拠点・調達先の各対策状況調査や、調達のマルチソース化、お取引先への事業継続マネジメント(BCM:Business Continuity Management)の働きかけ、支援の強化、及び適正な在庫の確保等をすることで、サプライチェーンの維持に努め、リスクの低減を図っております。

提携・アライアンス・技術供与に関するリスク

[リスクの概要と影響]

当社グループは、グローバルなICTビジネス環境における競争力強化のため、業務提携、技術提携、合弁等の形で、多くの会社と共同で活動を行っておりますが、経営、財務、その他の要因により、協力関係を成立、または、継続できない場合や、これらの協力関係から十分な成果を得られない場合があります。当社グループの製品・サービスは、他社の許諾を受けて使用している多くの特許や技術、ソフトウェア、商標等を前提としておりますが、これらの技術等について、今後、当社グループが許容できる条件で、他社からの供与や使用許諾を受けられない場合には、当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。

[対策]

当社グループでは、業務提携、技術提携、合弁等で他社との関係を構築する際、リスクを的確に認識・評価した上で契約条件等への反映を行うとともに、継続的なモニタリングを行うことで、当社グループへの影響を最小限に抑えるよう努めております。

 

 

 

(9)お客様に関するリスク

[リスクの概要と影響]

当社グループのビジネスは、日本政府、自治体、各国政府等の公共機関、情報通信事業、金融業、製造業、流通業、ヘルスケア産業等のお客様との取引割合が高く、また、海外ビジネスにおいては、各国における政府系のプロジェクトが重要な事業となっております。お客様の政策・方針や、業界の経営環境、市況変化、業界再編の動き等は、お客様のICT投資動向の変化につながり、お客様のICT投資計画やその見直し及びお客様の製品・サービスの売れ行き等は、当社グループの製品・サービスの需要や価格に大きな影響があります。また、お客様との信頼関係や、取引または契約関係が継続できない場合、当社グループの売上及び損益に影響を及ぼします。

[対策]

当社グループでは、社会的な課題解決を念頭に置いた事業活動を行うとともに、市場動向、技術動向、お客様の状況の変化を注視しており、ICTのライフサイクルにわたるソリューションを提供し、長期的な信頼関係を築くことを目指しております。当社グループは、お客様を取り巻く環境変化に対して多様な業種への実績、理解とデジタルテクノロジーを活用し、人とデータを中心とした新たな生活様式を築いていく役割を果たしております。

 

(10)競合・業界に関するリスク

[リスクの概要と影響]

市況の変化や競争激化、技術革新等は、製品・サービスの価格下落につながる可能性があります。そのため、想定を上回る価格下落が生じた場合や、調達価格が大幅に変動した場合等には、十分なコストダウンや販売拡大を実現できず、当社グループの売上及び損益に影響を及ぼします。

また、ICT業界では、既存の競合他社に加え、異業種を含めた新規参入者との競争も激しくなっています。現在、競争優位性を持っている分野においても、新規参入業者を含めた競合他社との競争に晒され、将来の事業において優位性を確保できない可能性があります。ICT業界では技術の進歩が大変速く、新製品や新技術であっても急速に陳腐化します。これらの技術開発競争で他社に優位性を奪われた場合、シェアや利益率が低下し、当社グループの売上及び損益に影響を及ぼす可能性があります。

[対策]

当社グループでは、技術の進歩や競争激化等による製品・サービスの低価格化を想定し、社会動向に基づいた課題を洞察するとともにお客様のニーズや他社状況を把握し、競争力のある製品・サービスのラインナップを拡充することで販売拡大に努めるとともに、コストダウンに取り組んでおります。

また、競争力維持のためには、先端技術の研究開発を続けることが必要です。当社グループは適切な研究開発への投資を実行することで、当社グループ事業の強み、競合他社等との差異を明確にし、技術やサービスの優位性を確保するよう、努めております。

 

(11)公的規制・政策・税務に関するリスク

[リスクの概要と影響]

当社グループは、グローバルにビジネスを展開しているため、各国・各地域の数々の公的規制、政策動向、税務法制、運用等の影響を受けます。事業展開する各国・各地域において、政府の政策、事業及び投資の許可、輸出入に関する制限等のさまざまな規制並びに、独占禁止、知的財産権、消費者、環境・リサイクル、労働条件、派遣・下請、租税等に関する法令の適用を受けております。

さらに、昨今の国際情勢は、各国・各地域の政策に影響を及ぼしており、特に、経済安全保障に基づく企業活動への規制が強化される傾向にあります。このような政策の変更や規制の強化は、当社グループが対象としている市場やサプライチェーン等に影響を及ぼし、対応コストの増加や仮に強化された規制等の違反が認定された場合の制裁金等の負担が発生する可能性があります。

 また、当社グループがソリューションを提供する分野には、通信、医療、工事、個人情報の取扱い等、公的規制を受ける領域があるため、これらに関する規制の動向が当社グループの事業へ影響を与える可能性があります。

[対策]

当社グループでは、各省庁や業界団体等から情報収集し分析を行うことで、各国・各地域における規制や政策の動向を注視しております。また、経済安全保障分野においては、今後も規制が厳しくなる方向であると捉えており、国内外の規制動向、さらには政府・企業の動向も注視したうえでグループ内の対応体制を整備しております。

 

 

 

(12)人材に関するリスク

[リスクの概要と影響]

当社グループの成長と利益は、人材に大きく依存するため、経営者、優秀な高度専門技術者等、必要とする人材を採用及び育成するとともに、人材が継続して働くことができる環境を整備することが重要です。人材を採用または育成することができない場合、流出を防止できない場合や重大な労務問題が発生した場合は、当社グループの成長や利益に影響を及ぼす可能性があります。

[対策]

当社グループでは、高度専門技術者に対する個別処遇やジョブ型人事制度等、多様性やチャレンジを尊重する組織風土を醸成するための制度改革を行うとともに、Work Life Shiftの推進により、テレワーク勤務を基本とし、また、フレックスタイム制や裁量労働制等の柔軟な勤務形態を積極的に活用することで、適切な労務管理を実現し優秀な人材を確保し活躍し続けられる環境を整備しております。

 

(13)人権に関するリスク

[リスクの概要と影響]

昨今、欧州において人権に関するデューデリジェンスが義務化される等、人権尊重への取り組みが一層強く求められるように変化しており、当社グループはもとより、サプライチェーン上での労働環境や紛争鉱物等の人権に関するリスクを防止・低減することが求められています。もしこれらに関して人権リスクが発生した場合は、人材の流出やビジネス機会の損失、行政罰等により当社グループの社会的信用の失墜に繋がり、当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。

さらに、急速に普及が進んでいるAI技術を利用したビジネスに関して人権を侵害する事象等が発生した場合も、同様に損害賠償や当社グループの社会的信用の失墜に繋がる可能性があります。

[対策]

当社グループは、Fujitsu Wayにおいて、当社グループの従業員として厳守すべき事項を行動規範(人権の尊重、法令遵守、公正な商取引等)として定めるとともに、これを詳細化して個々の従業員が行動する際のガイドライン(GBS:Global Business Standards)をグループで統一的に運用し、社内ルールの浸透と徹底、規範遵守の企業風土の醸成を図っております。そのための社内体制や仕組みの構築を推進するため、経営層からのトップメッセージの発信や定期的な従業員教育(人権、差別・ハラスメント防止等)の実施を行っております。2022年度においては、人権デューデリジェンスのプロセスである人権影響評価を実施いたしました。最新の国際動向をふまえて、人権に関するリスクを整理し、重要性・事業関連性から優先課題を特定し、この評価を基に、当社グループの人権方針である「富士通グループ人権ステートメント」を改定し、当社グループやサプライヤーへの周知を行っております。AIビジネスに関しては、AI倫理指針である「富士通グループAIコミットメント」に基づき、従業員教育の実施やAIの開発・提供者として自らを律し、お客様から信頼されるビジネスパートナーとなるための実践的なAI倫理ガバナンス体制を構築したほか、全AIビジネスについてAI倫理審査を実施しております。

 

(14)経済や金融市場の動向に関するリスク

① 主要市場における景気動向

[リスクの概要と影響]

当社グループは、日本国内及び世界各国で、政府等の公共機関や企業等に、ICT分野において各種サービスを提供しております。また、事業ブランドであるUvanceビジネスは、グローバル共通の戦略として展開しております。これらの事業の売上及び損益は、景気動向及び各市場における急激な需給バランスの変化に大きく左右されます。特に、主要市場である、日本、欧州、北米、オセアニア、中国を含むアジアにおける景気動向及び急激な需給バランスの変化は、当社グループの事業に影響を与えます。

[対策]

急激な市場の変化に対応するため、グループ全体の戦略や事業ポートフォリオの方針を明確化するとともに継続的な構造改革を行うことで、リスクの低減を図っております。

 

 

② 為替動向と金利変動及び資本市場の動向

[リスクの概要と影響]

当社グループは、グローバルでの事業拡大を進めております。そのため、急激な為替変動は、海外に輸出提供する製品・サービスの価格競争力の低下や、海外からの部材等の輸入に影響を及ぼす可能性があり、海外ビジネスの売上及び損益に大きく影響します。海外に保有する資産・負債等についても、資産等が目減り、または負債等が増大する可能性があります。

さらに、有利子負債の中には金利変動の影響を受けるものが含まれているため、金利上昇により支払利息や調達コストが増加する可能性があります。

また、国内外の株式市場の動向は、保有する他社株式の評価額及び年金資産の運用状況に大きく影響を及ぼし、株式市場が低迷した場合、保有株式の評価減や、年金資産の目減りによる会社負担増大のおそれがあります。

[対策]

為替変動等の金融市場環境に関する情報収集や動向注視、金融機関動向の分析等を行いながら必要に応じて為替予約等のヘッジを実施しております。また、グループ全体に情報共有を行うとともに、影響の最小化を図っております。

 

(15)投資判断・事業再編に関するリスク

[リスクの概要と影響]

ICT業界においては、競争力維持のために多額の研究開発投資、設備投資及び事業買収・売却、事業再編等が必要な場合があります。

当社グループが有望と考えた市場や技術、買収先が想定ほど成長しない場合や、需給悪化や価格下落が予想以上に早く発生した場合には、投資から十分なリターンを得られず、当社グループの経営成績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

[対策]

当社グループでは、投資や事業再編にあたり、市場動向やお客様のニーズ、当社グループの技術の優位性、当社グループの事業ポートフォリオ等を勘案するとともに、投資効率を検証し、評価指標とプロセスを定め、所要変動に応じて投資を複数段階に分けることやお客様等と提携することで、リスクの低減を図っております。

 

(16)当社グループの施設・システムに関するリスク

[リスクの概要と影響]

当社グループでは、国内外に事業所・工場・データセンター等の様々な施設を保有・賃借するとともに、他社ベンダーのクラウドサービスを活用しております。地震、大規模な水害、火災、放射能汚染等の災害や感染症、テロ、デモ、ストライキ、施工品質の不足、運用ミス等が発生した場合、生産ラインの停止や、施設、社内基幹情報システム等の運用停止により、当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。

[対策]

当社グループでは、社内基幹情報システム等においては、24時間365日体制によるシステム監視と運用体制を構築するとともに、事業継続計画書に基づいた対策を実施しています。また、いずれの施設・サービスについても、建築基準その他の規制に準拠した独自の安全基準を設け、リスクの低減を図っております。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要、経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

当連結会計年度における当社及び連結子会社並びに持分法適用会社(以下、当社グループ)の経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況の概要、経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次の通りです。文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末(2024年3月31日)現在において判断したものです

文中において、当連結会計年度は当年度、前連結会計年度は前年度と、省略して記載しています。

 

① 中期経営計画の進捗状況

パーパスの実現に向けて長期かつ安定的な貢献を行うためには、すべてのステークホルダーと信頼関係を築き自らがサステナブルに成長していくことが必要です。そのため、非財務面での指標を事業活動の中核に組み込み、財務目標と合わせて達成に向けた取り組みを推進しています。

 

(ⅰ)財務目標

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*1 連結損益計算書上の営業利益から事業再編、事業構造改革、M&A等に伴う損益並びに制度変更等による一過性の損益(調整項目)を控除した、本業での実質的な利益を示す指標です。

*2 連結キャッシュ・フロー計算書上の営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローの合計額から事業再編、事業構造改革、M&A等に伴う一過性の収支(調整項目)を控除した、経常的なフリー・キャッシュ・フローです。

 

2023年度に開始した新たな中期経営計画では、最終年度となる2025年度に売上収益4.2兆円、調整後営業利益5,000億円、調整後営業利益率12%という財務目標を定めました。Fujitsu Uvanceを成長のドライバーとしてサービスソリューションを中心に収益性の向上を目指します。また、事業成長に加え運転資本効率の改善によりキャッシュ・フロー創出力を強化し、2025年度のコア・フリー・キャッシュ・フロー(コアFCF)は2022年度実績の約2倍となる3,000億円への拡大を図ります。さらに、拡大したキャッシュ・フローを最適配分することで、EPSは2022年度の水準から14~16%の年平均成長率を目指します。

 

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2023年度は、サービスソリューションを成長の柱とする事業ポートフォリオの変革に取り組みました。この結果、2023年度の全社連結の売上収益は3兆7,560億円で前年度比2.2%の伸長、サービスソリューションの売上収益は2兆1,375億円で前年度比9.9%の伸長と順調に推移しています。全社連結の調整後営業利益は前年度から11.6%減少し、2,836億円でした。これはデバイスソリューションやネットワークプロダクトにおける需要の落ち込み、並びに先端研究開発や社内DX投資増加の影響によるものです。サービスソリューションは各施策の効果により、調整後営業利益2,372億円と前年度比で45.5%の大幅な伸長となりました。

また、2023年度のコア・フリー・キャッシュ・フローは1,972億円と、前年度比で401億円の収入増となりました。資本効率を示す指標である調整後EPSの2022年度から2023年度にかけての年平均成長率は19.6%でした。

 

 

(ⅱ)非財務目標

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当社グループは、環境、お客様、生産性、人材の4つのカテゴリにおいてKPIを定めており、2025年度での目標達成に向けていずれも概ね順調に推移しています。

まず「環境」でのKPIとしては、GHG(Green House Gas:温室効果ガス)を、Scope1、2の富士通グループは2020年度比で50%削減、Scope3のサプライチェーンで同12.5%の削減を目標にしています。Scope3は、2025年度の目標であるマイナス12.5%を大きく上回る31%の削減を達成しましたが、これはネットワークプロダクトの販売減少の一時的な影響によるものであり、2025年度目標に変更はありません。

「お客様」では、従来のKPIであるお客様NPS(*)を継続してKPIとし、2022年度比で20ポイント上昇を目標にしています。

「生産性」については、従業員一人当たりの営業利益を2022年度比で40%上昇を目標にしています。2023年度は全社連結の営業利益の減少に伴い生産性も低下しましたが、当社グループの成長領域であるサービスソリューションでは2022年度比で40%を超える伸長になりました。

「人材」面は、従来のKPIである従業員エンゲージメントを継続してKPIとし、前回達成できなかったグローバルでのスコア75の達成を目標にしています。2023年度は2022年度と同じスコアで推移しています。社内サーベイの結果抽出された課題のうち着手できるものから対応し、次の段階としてより複雑な課題に取り組んでおります。また、ダイバーシティリーダーシップの指標として、まずグローバルでの女性幹部社員比率をKPIとして設定し、2022年度の15%から2025年度で20%に拡大することを目標としました。これは、2030年度で30%の達成を目指し、そこからバックキャストして定めております。

* お客様NPS(Net Promoter Score)とは、お客様との信頼関係=顧客ロイヤリティの客観的な評価を可能とする指標です。購入した商品やサービスに対する満足あるいは不満の度合いを示す顧客満足度と異なり、顧客ロイヤリティは、お客様の愛着度合いやリピート購入の見込みを判断できるという特徴があります。

 

 

[2023年度決算ハイライト]

売上収益は3兆7,560億円、営業利益は1,602億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は2,544億円となりました。当期利益は2期連続で過去最高益を更新しました。主にリージョンズ(海外)を中心とした構造改革を拡大し一過性の損失を計上した一方で、欧州の法人体系の再編に伴い繰延税金資産を計上、税金費用が減少した影響によるものです。

事業再編、事業構造改革、M&A等に伴う損益並びに制度変更等による一過性の損益を控除した調整後営業利益は2,836億円でした。このうちサービスソリューションの調整後営業利益は2,372億円、調整後営業利益率は11.1%と前年度比で2.9ポイント改善しました。

 

(ⅰ)コストや費用の効率化の進捗状況

サービスソリューションのグロスマージン率改善のため、デリバリの変革と、提供価値に基づくプライシングの二つの取り組みを進めています。グローバルデリバリーセンター(GDC)では人員の拡充と、内製化率・オフショア率の向上に取り組んでいます。ジャパン・グローバルゲートウェイ(JGG)では、全社共通の開発プラットフォームを活用し、開発作業の標準化と自動化を推進、工数削減の効果が現れています。また、従来のコストプラスの価格設定から脱却し、提供価値に基づくバリューベースプライシングへの移行を進めています。

 

(ⅱ)事業成長投資

事業成長投資は、2,021億円と前年度から814億円増加しました。主な内容は、Fujitsu Uvance・コンサル事業の強化が約650億円、先端研究開発が約350億円、データドリブンをはじめとする経営基盤強化が約750億円、品質・セキュリティ強化、人材育成が約250億円です。

Fujitsu Uvance・コンサル事業の強化には、ドイツGK Software SE社の買収コストが含まれます。先端研究開発は、当社のAIプラットフォームFujitsu Kozuchiや量子コンピュータ関連技術の開発費用です。また、経営基盤強化ではデータドリブン経営の取り組みとして、グループ全体でERP基盤を一つに統合するプロジェクトOneERP+プログラムを推進中です。先行して既に稼働している一部の海外リージョンに続き、日本国内におけるOneERP+の稼働は2024年度を予定しています。

 

 

② 持続的な成長と収益力向上のモデル構築への取り組み

当社グループは2030年に向けた価値創造のビジョンとして、デジタルサービスによってネットポジティブ(*)を実現するテクノロジーカンパニーになることを掲げています。2023年度から2025年度までの中期経営計画を、2030年およびそれ以降に向けて、持続的な成長、収益力向上に向けたモデルを構築する3カ年と位置づけています。目標達成に向けた主な取り組み事項として、事業モデルと事業ポートフォリオの変革、お客様のモダナイゼーションの確実なサポート、海外ビジネスの収益性向上の3つのテーマがあります。

* ネットポジティブとは、財務的なリターンの最大化に加え、地球環境問題の解決やデジタル社会の発展、そして人々のウェルビーイングの向上に取り組み、テクノロジーとイノベーションによって社会全体へのインパクトをプラスにする考え方です。

 

(ⅰ)事業モデルと事業ポートフォリオの変革

従来型のSIから、Fujitsu Uvanceを中心としたオンクラウドやビジネスアプリケーション、クロスインダストリーといった事業モデル・事業ポートフォリオへの変革を進めています。Fujitsu Uvanceの2023年度の売上は3,679億円と2022年度の売上2,000億円から84%増と大きく伸長し、当初計画の3,000億円も上回りました。2022年度はお客様のDXを支えるためのテクノロジーやソリューションを提供するHorizontalの売上が中心でしたが、2023年度はサステナブルなものづくりを支えるSustainable Manufacturingや、新たなコンシューマー体験を提供するConsumer ExperienceといったVerticalのオファリング強化を進めた結果、Fujitsu Uvance全体の売上のうちVerticalの構成比が30%を超えました。また、クロスインダストリーの取り組みは、データの連携と活用が重要な要素となりますが、2023年度はFujitsu Kozuchiを22種のオファリングに実装しました。2024年度は実装範囲をさらに拡大するほか、新たなコンサルティングサービスであるUvance Wayfindersの拡大や、海外での本格展開を見据えグローバル共通サービスの拡充も図ってまいります。

 

(ⅱ)お客様のモダナイゼーションの確実なサポート

モダナイゼーションビジネスは国内を中心に順調に拡大しています。2023年度は、デマンドに対するリソース要件の可視化のほか、モダナイゼーションに欠かせない技術情報やノウハウ、知見を集約するCoEであるモダナイゼーションナレッジセンターによる商談およびプロジェクト推進の効率化、グローバルパートナーとの連携によって実績があるツールの展開を行いました。2024年度以降も既存システムに対するモダナイゼーションの需要は継続するものと予想しています。可視化されたリソース要件をベースに、商談状況に応じて機動的なリソースのアサインメントを行い、プロジェクトを確実かつ効率的に遂行します。また、モダナイゼーションに必要なスキルを保有する人材を継続して育成・拡充し、ビジネスの変化に対応しながらクラウド化やDXを見据えたモダナイゼーションをサポートしてまいります。

 

(ⅲ)海外ビジネスの収益性向上

リージョンズ(海外)の2023年度の売上収益は6,041億円で、2022年度比3.9%の伸長でした。調整後営業利益率は1.7%と依然採算性が課題となっておりますが、事業ポートフォリオの変革などの取り組みにより回復を見込んでいます。Americasリージョンは事業ポートフォリオの変革が順調に進み、サービスビジネスの割合が増加、調整後営業利益率は改善傾向にあります。2024年度はビジネス規模の拡大と更なる収益性の拡大に取り組みます。Europeリージョンはドイツにおけるプライベートクラウド事業の売却、低採算地域からの撤退、サービスビジネスとハードウェアビジネスの分離のための法人体系の再編といった構造改革を実行しており、2025年度内に完了の予定です。Asia Pacificリージョンは競争の激しいインフラビジネスから脱却し、ビジネスアプリケーションなどのサービスビジネスへシフトするための構造改革を検討しています。いずれの地域においてもFujitsu Uvanceを中心とするサービスビジネスへのシフトを進めてまいります。

 

③ 経営成績

    <要約連結損益計算書>

 

 

 

 

 

(億円)

 

    前年度

(自 2022年4月 1日

 至 2023年3月31日)

    当年度

(自 2023年4月 1日

 至 2024年3月31日)

 

前年度比

 

 

増減率

(%)

 

売上収益

37,137

37,560

 

422

1.1

  継続事業

36,750

37,560

 

809

2.2

 事業再編影響

386

 

△386

売上原価

△25,696

△25,912

 

△215

0.8

売上総利益

11,440

11,648

 

207

1.8

販売費及び一般管理費

△8,529

△9,045

 

△516

6.1

その他の損益

445

△999

 

△1,444

営業利益

3,356

1,602

 

△1,753

△52.2

金融損益

82

67

 

△14

△17.6

持分法による投資利益

280

111

 

△168

△60.3

税引前利益

3,718

1,781

 

△1,936

△52.1

法人所得税費用

△1,270

885

 

2,155

当期利益

2,448

2,666

 

218

8.9

  親会社の所有者に帰属

2,151

2,544

 

392

18.3

 非支配持分

296

122

 

△174

△58.9

 

 

 

 

 

 

調整後営業利益および調整後当期利益

 

 

 

 

営業利益

3,356

1,602

 

△1,753

△52.2

調整項目

147

△1,234

 

△1,381

(上記調整項目を控除した)

調整後営業利益

3,208

2,836

 

△371

△11.6

当期利益 (親会社所有者帰属)

2,151

2,544

 

392

18.3

調整項目

110

186

 

76

(上記調整項目を控除した)

調整後当期利益(注1)

2,041

2,358

 

316

15.5

(注1)連結損益計算書上の親会社の所有者に帰属する当期利益から事業再編、事業構造改革、M&A等に伴う損益並

    びに制度変更等による一過性の損益およびこれらに係る税金相当(調整項目)を控除した利益指標

 

(ご参考)財務指標

 

前年度

当年度

 

前年度比

調整後営業利益率

8.6%

7.6%

 

△1.0%

調整後EPS(注2)

105.1円

125.6円

 

19.6%

ROE(注3)

13.5%

15.2%

 

1.7%

(注2)1株当たり調整後当期利益(当社は、2024年4月1日を効力発生日として、普通株式1株につき10株の割合で

    株式分割を実施しました。当該株式分割が前年度の期首に行われたと仮定して、1株当たり調整後当期利

    益を算定しております。)

(注3)親会社の所有者に帰属する当期利益÷{(期首の親会社の所有者に帰属する持分合計(自己資本)+期末の

    親会社の所有者に帰属する持分合計(自己資本))÷2}

 

(ⅰ)売上収益

当年度の売上収益は3兆7,560億円と、前年度比で422億円の増収です。事業再編影響を除く継続事業ベースでは前年度比809億円の増収です。サービスソリューションは国内市場向けのDXやモダナイゼーション商談が牽引し9.9%伸長しました。ハードウェアソリューションのうち、サーバ・ストレージを中心とするシステムプロダクトでは為替変動の影響により増収した一方、ネットワークプロダクトは前年度の高い需要の反動減で、全体では2.2%の減収です。デバイスソリューションは半導体パッケージの需要低迷が継続し25.2%の減収です。

 

(ⅱ)売上原価、販売費及び一般管理費、その他の損益並びに営業利益

当年度の売上原価は2兆5,912億円で、売上総利益は1兆1,648億円、前年度比で207億円増加しました。

販売費及び一般管理費は9,045億円と、前年度比で516億円増加しました。先端研究開発や社内DX投資といった事業成長投資を積極的に増やしています。また、その他の損益は999億円の損失と、前年度比で1,444億円悪化しました。

この結果、営業利益は1,602億円、前年度比で1,753億円減少しました。これには、主に欧州地域における事業構造改善費用をはじめとした営業利益調整項目として、当年度1,234億円の損失、前年度比1,381億円悪化の影響が含まれています。上記営業利益調整項目を控除した調整後営業利益は、前年度が3,208億円、当年度が2,836億円となりました。当社グループが成長の柱と位置付けるサービスソリューションは前年度比742億円の好転でしたが、デバイスソリューションおよびネットワークプロダクトにおける需要の落ち込みのほか、積極的な事業成長投資による費用増もあり、全社連結で371億円の悪化です。

 

(ⅲ)金融損益、持分法による投資利益及び税引前利益

金融収益と金融費用をあわせた金融損益は67億円の利益と、前年度比で14億円の減益となりました。持分法による投資利益は111億円と、前年度比で168億円の減益となりました。

税引前利益は1,781億円と、営業利益の減益などにより前年度比で1,936億円の減益となりました。

 

(ⅳ)法人所得税費用、当期利益及び親会社の所有者に帰属する当期利益

当期利益は2,666億円と、前年度比で218億円の増益となりました。当期利益のうち、親会社の所有者に帰属する当期利益は2,544億円の利益で前年度から392億円の増益となりました。非支配持分に帰属する金額は122億円の利益で前年度から174億円の減少となりました。法人所得税費用は885億円のマイナスと前年度比で2,155億円減少しました。欧州子会社Fujitsu Services Holdings PLCの清算決定に伴い、投資に係る将来減算一時差異について繰延税金資産1,405億円を認識したことにより、法人所得税費用が同額減少しております。

親会社の所有者に帰属する当期利益を親会社の所有者に帰属する持分(自己資本)で除して算定したROEは前年度13.5%から当年度は15.2%となりました。調整後EPSは前年度105.1円から当年度は125.6円に増加し、2022年度から2023年度までの年平均成長率は19.6%と、2025年度目標を上回る水準です。

株主還元を安定的に拡大させる方針のもと、当年度の1株あたり年間配当は26円(注)と、前年度から年間で2円(注)増額、2015年度以降、8期連続で増配しました。また、当年度は自己株式1,031億円を取得しました。インサイダー取引規制により自己株式の取得開始時期がずれ込み、年間の買入額が当初計画の1,500億円から減少しましたが、2023年度から2025年度までの3カ年に、配当および自己株式取得の合計で6,000億円の株主還元を実施する計画に変更はありません。

(注) 当社は2024年4月1日に普通株式1株につき10株の割合で株式分割を行いました。1株当たり配当額は分割後の数字にて再算出しています。

 

(ⅴ)税引後その他の包括利益及び当期包括利益

税引後その他の包括利益は654億円となりました。その他の包括利益を通じて公正価値で測定する金融資産のプラスの影響が350億円、為替が円安に推移したことにより在外子会社等の換算差額が好転した影響が218億円、確定給付制度の再測定の影響が50億円ありました。当期利益と税引後その他の包括利益をあわせた当期包括利益は3,321億円となりました。当期包括利益のうち、親会社の所有者に帰属する当期包括利益は3,178億円、非支配持分に帰属する当期包括利益は142億円となりました。

 

(ⅵ)セグメント情報

当社グループは、経営組織の形態、製品・サービスの特性に基づき、複数の事業セグメントを集約した上で、「サービスソリューション」、「ハードウェアソリューション」、「ユビキタスソリューション」及び「デバイスソリューション」の4つを報告セグメントとしています。「サービスソリューション」については、Fujitsu Uvanceを中心としたグローバル共通の価値提供サービスの創出・提供を行う「グローバルソリューション」、日本市場に向けたサービスの提供・実装を行う「リージョンズ(Japan)」、海外市場に向けたサービスの提供・実装を行う「リージョンズ(海外)」により構成されています。「ハードウェアソリューション」は、ICTの基盤となる、サーバやストレージシステムなどのシステムプロダクトと携帯電話基地局や光伝送システムなどの通信インフラを提供するネットワークプロダクトにより構成されています。「ユビキタスソリューション」は、パソコンなどの「クライアントコンピューティングデバイス」により構成されています。「デバイスソリューション」は、半導体パッケージ、電池をはじめとする「電子部品」により構成されています。

当年度のセグメント別の売上収益(セグメント間の内部売上収益を含む)及び営業利益は以下のとおりです。

 

 

 

 

 

 

 

 

(億円)

 

 

 

 

 

    前年度

(自 2022年4月 1日

 至 2023年3月31日)

    当年度

(自 2023年4月 1日

 至 2024年3月31日)

 

 

 

前年度比

 

 

増減率

(%)

 

サービスソリューション

 

 

 

 

売上収益

19,842

21,375

 

1,533

7.7

 

 

継続事業

19,455

21,375

 

1,920

9.9

 

 

事業再編影響

386

 

△386

調整後営業利益

1,629

2,372

 

742

45.5

(調整後営業利益率)

(8.2%)

(11.1%)

 

(2.9%)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

グローバルソリューション

 

 

 

 

 

 

売上収益

4,072

4,803

 

730

17.9

 

 

調整後営業利益

50

137

 

86

171.7

 

 

(調整後営業利益率)

(1.2%)

(2.9%)

 

(1.7%)

 

 

 

リージョンズ(Japan)

 

 

 

 

 

 

売上収益

11,946

12,621

 

675

5.7

 

 

継続事業

11,559

12,621

 

1,061

9.2

 

 

事業再編影響

386

 

△386

 

 

調整後営業利益

1,477

2,131

 

654

44.3

 

 

(調整後営業利益率)

(12.4%)

(16.9%)

 

(4.5%)

 

 

 

リージョンズ(海外)

 

 

 

 

 

 

 

売上収益

5,817

6,041

 

224

3.9

 

 

調整後営業利益

103

103

 

0

0.1

 

 

(調整後営業利益率)

(1.8%)

(1.7%)

 

(△0.1%)

 

 

 

セグメント内消去

 

 

 

 

 

 

 

売上収益

△1,993

△2,091

 

△97

ハードウェアソリューション

 

 

 

 

売上収益

11,323

11,080

 

△243

△2.2

調整後営業利益

1,126

836

 

△289

△25.7

(調整後営業利益率)

(9.9%)

(7.6%)

 

(△2.3%)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

システムプロダクト

 

 

 

 

 

 

 

売上収益

8,626

9,250

 

623

7.2

 

 

ネットワークプロダクト

 

 

 

 

 

 

売上収益

2,697

1,830

 

△867

△32.2

ユビキタスソリューション

 

 

 

 

 

売上収益

2,860

2,733

 

△126

△4.4

調整後営業利益

86

242

 

155

178.4

(調整後営業利益率)

(3.0%)

(8.9%)

 

(5.9%)

 

デバイスソリューション

 

 

 

 

 

売上収益

3,826

2,863

 

△963

△25.2

調整後営業利益

774

183

 

△590

△76.3

(調整後営業利益率)

(20.2%)

(6.4%)

 

(△13.8%)

 

消去・全社

 

 

 

 

 

売上収益

△715

△491

 

223

調整後営業利益

△409

△797

 

△388

連結

 

 

 

 

 

売上収益

37,137

37,560

 

422

1.1

調整後営業利益

3,208

2,836

 

△371

△11.6

(調整後営業利益率)

(8.6%)

(7.6%)

 

(△1.0%)

 

 

 

a サービスソリューション

0102010_021.png

サービスソリューションの売上収益は2兆1,375億円と、事業再編影響を除いたベースで前年度比1,920億円の増収です。調整後営業利益は2,372億円と、前年度比742億円の増益です。前年度からの主な変動要因は次の三点です。第一に増収効果で602億円の増益となりました。国内を中心に前年度比10%の売上伸長です。第二に採算性改善により353億円の増益となりました。プロジェクトの内製化、オフショア化、開発標準化・自動化適用を進め、特に国内サービスの採算性は着実に向上しています。売上総利益率は35%と前年度から2%改善しました。第三に投資拡大等により214億円の減益となりました。Fujitsu Uvanceのオファリング開発や人材育成、セキュリティ強化など成長に直結する投資について積極的に進めています。

グローバルソリューションの売上収益は4,803億円と、前年度比730億円増、17.9%の増収となりました。調整後営業利益は137億円と、前年度比86億円の増益です。Fujitsu Uvanceを中心に売上伸長、積極的に投資拡大しつつも、増収効果、採算性改善が進み利益水準は大幅に向上しました。

リージョンズ(Japan)の売上収益は12,621億円と、前年度比675億円増、5.7%の増収となりました。調整後営業利益は2,131億円と、前年度比654億円の増益です。DX、モダナイゼーション案件が牽引し、金融・公共・ヘルスケア等幅広い分野で増収増益となりました。

リージョンズ(海外)の売上収益は6,041億円と、Fujitsu Uvanceの売上拡大に加え、為替変動の影響もあり、前年度比224億円増、3.9%の増収となりました。調整後営業利益は103億円と、前年度並みです。

 

0102010_022.png

事業成長とポートフォリオ変革の要と位置付けている、Fujitsu Uvanceの受注および売上収益の進捗状況です。受注は4,493億円で前年度比80%の伸長、売上収益は3,679億円で同84%の伸長です。2023年度はVerticalオファリングのリリースを本格化し、Sustainable Manufacturingを中心に、Healthy LivingやTrusted Societyなどの領域も立ち上がってまいりました。サービスソリューション全体の売上に占める構成比も前年の10%から2023年度は17%に拡大し、ポートフォリオの転換も着実に進んでいます。

 

* Fujitsu Uvanceは7つの重点注力分野を定めています。7つの重点注力分野は、社会課題を解決するサービス群であるVertical Areasと、サービス提供を支える基盤であるHorizontal Areasの2つに区分されます。Vertical Areasは、環境と人に配慮した循環型でトレーサブルなものづくりを実現するSustainable Manufacturing、生活者に多様な体験を届ける決済・小売・流通を可能にするConsumer Experience、あらゆる人々のウェルビーイングな暮らしをサポートするHealthy Living、そして、安心・安全でレジリエントな社会づくりに貢献するTrusted Society の4つの分野からなります。Horizontal Areasは、データドリブンな意思決定やオペレーションと働き方改革を支えるDigital Shifts、クラウドインテグレーションとアプリケーションを提供するBusiness Applications、お客様の基幹システムのクラウド化とセキュリティサービスを提供するHybrid ITの3つの分野からなります。

 

b ハードウェアソリューション

ハードウェアソリューションの売上収益は11,080億円と、前年度比2.2%の減収となりました。調整後営業利益は836億円と、前年度比289億円の減益です。システムプロダクトは、為替変動の影響により増収となりました。一方、ネットワークプロダクトは大型需要一巡による売上収益の減少下において、ネットワークの高速化、大容量化、低電力消費の実現など、次のサイクルに向けた開発投資を拡充しております。

 

c ユビキタスソリューション

ユビキタスソリューションの売上収益は2,733億円と、前年度比4.4%の減収となりました。調整後営業利益は242億円と、前年度比155億円の増益です。為替変動影響を含めた部材価格上昇に対し、追加のコストダウンや価格転嫁が進みました。

 

d デバイスソリューション

デバイスソリューションの売上収益は2,863億円と、前年度比25.2%の減収となりました。半導体パッケージの需要低迷が続いています。

 

(ⅶ)リージョンズ(海外)の損益情報

当社グループは、グローバルでの売上収益の拡大と収益力向上を経営上の重要な課題の1つであると考えており、サービスソリューションに含まれるリージョンズ(海外)の損益情報は当社グループの事業管理において重要な項目であるとともに、株主、投資家の皆様に当社グループの損益概況をご理解頂くための有益な情報であると考えています。

 

 

 

 

 

 

 

 

(億円)

 

 

 

 

 

    前年度

(自 2022年4月 1日

 至 2023年3月31日)

    当年度

(自 2023年4月 1日

 至 2024年3月31日)

 

 

 

前年度比

 

 

増減率

(%)

 

Europe

 

 

 

 

 

 

 

売上収益

 

3,964

4,191

 

226

5.7

 

営業利益

 

11

23

 

12

105.6

 

(営業利益率)

(0.3%)

(0.6%)

 

(0.3%)

 

Americas

 

 

 

 

 

 

 

売上収益

 

526

541

 

15

2.9

 

営業利益

 

29

34

 

4

16.7

 

(営業利益率)

(5.6%)

(6.4%)

 

(0.8%)

 

Asia Pacific

 

 

 

 

 

 

 

売上収益

 

954

1,024

 

69

7.3

 

営業利益

 

46

35

 

△10

△23.2

 

(営業利益率)

(4.8%)

(3.5%)

 

(△1.4%)

 

East Asia

 

 

 

 

 

 

 

売上収益

 

448

390

 

△58

△13.0

 

営業利益

 

15

12

 

△3

△22.9

 

(営業利益率)

(3.5%)

(3.1%)

 

(△0.4%)

 

その他・消去

 

 

 

 

 

 

 

売上収益

 

△77

△105

 

△28

 

営業利益

 

△2

 

△2

リージョンズ(海外)

 

 

 

 

 

 

 

売上収益

 

5,817

6,041

 

224

3.9

 

営業利益

 

103

103

 

0

0.1

 

(営業利益率)

(1.8%)

(1.7%)

 

(△0.1%)

 

 

売上収益は6,041億円と、Fujitsu Uvanceの売上拡大に加え、為替変動の影響もあり、前年度比224億円増と3.9%の増収となりました。調整後営業利益は103億円と、前年度並みです。ドイツにおけるプライベートクラウド事業の売却をはじめとした低採算ビジネスからの撤退、Fujitsu Uvanceを中核とした事業領域への転換を進めております。

 

④ 財政状態

<要約連結財政状態計算書>

 

 

 

 

(億円)

 

前年度末

(2023年3月31日)

当年度末

(2024年3月31日)

 

前年度末比

 

資産

 

 

 

 

流動資産

19,178

18,964

 

△213

非流動資産

13,477

16,183

 

2,706

資産合計

32,655

35,148

 

2,492

負債

 

 

 

 

流動負債

12,764

13,111

 

346

非流動負債

2,523

2,848

 

325

負債合計

15,287

15,959

 

672

資本

 

 

 

 

自己資本

15,868

17,523

 

1,655

非支配持分

1,499

1,664

 

164

資本合計

17,368

19,188

 

1,820

負債及び資本合計

32,655

35,148

 

2,492

 

 

 

 

 

現金及び現金同等物

3,559

3,421

 

△137

有利子負債

2,111

2,456

 

345

ネットキャッシュ

1,447

964

 

△482

(注)自己資本          :親会社の所有者に帰属する持分合計

 有利子負債    :社債、借入金及びリース負債

 ネットキャッシュ :現金及び現金同等物-有利子負債

 

  (ご参考)財務指標

 

前年度末

(2023年3月31日)

当年度末

(2024年3月31日)

 

前年度末比

 

自己資本比率

48.6%

49.9%

 

1.3%

D/Eレシオ

0.13倍

0.14倍

 

0.01倍

(注)自己資本比率             :親会社の所有者に帰属する持分合計(自己資本)÷資産合計

 D/Eレシオ                :有利子負債÷親会社の所有者に帰属する持分合計(自己資本)

 

当年度末の資産合計は3兆5,148億円と、前年度末から2,492億円増加しました。流動資産は1兆8,964億円と、前年度末比で213億円減少しました。棚卸資産が減少したほか、現金及び現金同等物は3,421億円と、前年度末比で137億円減少しました。非流動資産は1兆6,183億円と、前年度末比で2,706億円増加しました。主に、欧州子会社Fujitsu Services Holdings PLCの清算決定に伴い、投資に係る将来減算一時差異について繰延税金資産を認識したほか、M&Aの実行により無形資産やのれんが増加しました。

負債合計は1兆5,959億円と、前年度末比で672億円増加しました。流動負債及び非流動負債の借入金及びリース負債をあわせた有利子負債は2,456億円と、前年度末比で345億円増加しました。この結果、D/Eレシオは0.14倍と、前年度末比で0.01ポイント上昇しました。現金及び現金同等物から有利子負債を控除したネットキャッシュ残高は964億円と、前年度末比で482億円減少しました。

資本合計は1兆9,188億円と、前年度末比で1,820億円増加しました。利益剰余金は1兆4,873億円と、親会社の所有者に帰属する当期利益を計上したことなどにより前年度末比で2,608億円増加しました。その他の資本の構成要素は803億円と、前年度末比で95億円増加しました。また、自己株式は3,808億円のマイナスです。株主還元施策として当年度は自己株式1,031億円を取得しました。これらの結果、自己資本は1兆7,523億円となり、自己資本比率は49.9%と、前年度末比で1.3%上昇しました。

 

確定給付型退職給付制度の状況

 

 

 

 

(億円)

 

前年度末

(2023年3月31日)

当年度末

(2024年3月31日)

 

前年度末比

a.確定給付制度債務

13,202

13,966

 

764

b.年金資産

13,067

14,079

 

1,012

c.積立状況  (b)-(a)

△135

112

 

247

 

国内外の従業員向け確定給付型退職給付制度の退職給付債務は1兆3,966億円と、前年度末比で764億円増加し、年金資産は1兆4,079億円と、前年度末比で1,012億円増加しました。この結果、積立状況(退職給付債務から年金資産を控除した金額)は112億円の超過と、前年度末比で247億円改善しました。割引率の上昇により年金債務が減少したこと及び、株価上昇により年金資産が増加したことなどによります。

 

⑤ キャッシュ・フロー

<要約連結キャッシュ・フロー計算書>

 

 

 

 

(億円)

 

    前年度

(自 2022年4月 1日

 至 2023年3月31日)

    当年度

(自 2023年4月 1日

 至 2024年3月31日)

 

前年度比

 

 

Ⅰ営業活動によるキャッシュ・フロー

2,203

3,092

 

888

Ⅱ投資活動によるキャッシュ・フロー

△428

△1,572

 

△1,144

Ⅰ+Ⅱフリー・キャッシュ・フロー

1,775

1,519

 

△255

   調整項目

204

△452

 

△656

    (上記調整項目を控除した)

   コア・フリー・キャッシュ・フロー

1,571

1,972

 

401

Ⅲ財務活動によるキャッシュ・フロー

△3,135

△1,814

 

1,320

 

 

 

 

 

Ⅳ現金及び現金同等物の期末残高

3,559

3,421

 

△137

 

 

(ご参考)

ベース・キャッシュ・フロー(注)

2,500

3,030

 

530

(注)成長投資前のフリー・キャッシュ・フローにリース料支払を加えたキャッシュ・フロー

 

当年度の営業活動によるキャッシュ・フローは3,092億円と、前年度比で888億円の収入増となりました。前年の増益に伴う法人税の納付増加はありましたが、棚卸資産残高の削減や売掛債権の回収が進み、前年度から好転しました。

投資活動によるキャッシュ・フローは1,572億円のマイナスと、前年度比で1,144億円の支出増となりました。ドイツGK Software SE社の買収による支出やデバイスソリューションにおける設備投資増加がありました。

営業活動及び投資活動によるキャッシュ・フローを合わせたフリー・キャッシュ・フローは1,519億円のプラスと、前年度から255億円の収入減となりました。0102010_023.png

 

ベース・キャッシュ・フローは3,030億円プラスと前年度から530億円の収入増となりました。ベース・キャッシュ・フローは、事業並びに保有資産最適化から生み出されたキャッシュ・フローで、事業成長投資と株主還元への配分原資となるものです。当年度は、Fujitsu Uvance ・コンサル事業の強化、先端研究開発を中心とした事業成長投資に2,021億円、自己株式取得および配当による株主還元に1,515億円を配分しました(ベース・キャッシュ・フローを超過した分については短期借入等で充当)。

 

財務活動によるキャッシュ・フローは1,814億円のマイナスと、前年度比で1,320億円の支出減となりました。インサイダー取引規制により自己株式の取得開始時期がずれ込み、年間の買入額が減少したほか、GK Software SE社の買収など欧州での一過性の支出に伴い借入金が増加しました。

 

当年度末の現金及び現金同等物は3,421億円です。当社グループは、緊急の資金需要に対応するため、月商の数カ月分を目安に十分な手元流動性を確保しています。また、当社は、グローバルに資本市場から資金調達するため、ムーディーズ・インベスターズ・サービス(以下、ムーディーズ)及び株式会社格付投資情報センター(以下、R&I)から債券格付けを取得しています。本有価証券報告書提出日現在における格付けは、ムーディーズ:A3(長期)、R&I :A+(長期)/a-1(短期)です。

 

当社グループは、事業や国・地域毎の特性やリスクを加味し、株主資本コストと借入コストの加重平均として資金調達コストを算定し、これに基づいて各事業における投資意思決定や回収可能性の判断を行っています。当社グループは、今後ますます需要が高まるDXビジネスに経営資源を集中し、中長期的に安定して高い収益性を獲得していくことによって、資金調達コストより高いリターンをあげることができると考えています。

 

⑥ 生産、受注及び販売の実績

サービスソリューションの国内受注については、基幹システム刷新やモダナイゼーションへのデマンドが強いことに加え、お客様のDX変革に向けた価値提案が着実に商談獲得に繋がっており、前年度から16%増加しました。

サービスソリューションの業種別は以下の通りです。まず、エンタープライズビジネス(産業・流通・小売)では前年度比7%増加しました。モダナイゼーション案件を中心に、製造、モビリティ、リテール向けが牽引しました。ファイナンスビジネス(金融・保険)は前年度比15%増加しました。メガバンクや保険業のお客様向けにおいて、基幹システム更新やモダナイゼーション案件を多数獲得することができました。パブリック&ヘルスケア(官公庁・自治体・医療)では前年度比19%増加しました。官公庁のシステム更改案件を複数獲得し、大きく伸長しました。ヘルスケアのお客様につきましても、電子カルテや医療情報システムへの投資が堅調です。そのほか、ナショナルセキュリティの大型商談を複数件獲得し、昨年度の高い水準をさらに上回る伸長となりました。

海外の受注については以下の通りです。Europeでは、前年度の大型商談の反動やドイツにおけるプライベートクラウド事業の売却影響により、前年度から8%減少しました。一方、Americasは民需向けのビジネスアプリケーション商談をはじめとしたサービスビジネスが拡大し27%の増加です。Asia Pacificでも、前年度の公共系大型商談の反動で17%減少です。

 

⑦ 重要性がある会計方針及び見積り

IFRSに準拠した連結財務諸表の作成において、経営陣は、会計方針の適用並びに資産、負債、収益及び費用に影響を与える判断、見積り及び仮定を必要としておりますが、実際の結果と異なる場合があります。また、見積り及びその基礎となる仮定は継続して見直されます。会計上の見積りの見直しによる影響は、その見積りを見直した連結会計期間及び影響を受ける将来の連結会計期間において認識されます。連結財務諸表の金額に重要な影響を与える見積り及び判断については、「第5 経理の状況 連結財務諸表注記 4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」をご参照ください。

 

5【経営上の重要な契約等】

(1) 技術提携契約

相手方

国名

契約製品

契約内容

契約期間

Intel Corporation

米国

半導体装置

特許実施権交換

1998年6月5日から

関係特許の有効期間中

Intel Corporation

米国

半導体装置

特許実施権交換

2008年6月5日から

関係特許の有効期間中

International Business Machines

Corporation

米国

情報処理組織

特許実施権交換

2015年12月18日から

関係特許の有効期間中

Microsoft Corporation

米国

ソフトウェア

特許実施権交換

1997年9月16日から

関係特許の有効期間中

(注)上記の契約は、全て当社を契約会社としたものです。

 

(2) 合弁契約及びその他の契約

 

契約会社名

相手方

国名

契約内容

合弁契約

富士通株式会社

(当社)

Lenovo Group Limited、

Lenovo International Coӧperatief U.A.

中国、

オランダ

2017年11月2日、グローバル市場に向けたPC及びPC関連製品の研究開発、設計、製造及び販売に関する戦略的な提携について、富士通クライアントコンピューティング株式会社を合弁会社とする合弁契約及び株式譲渡契約を締結しました。

その他の

契約

富士通株式会社

(当社)

Oracle America, Inc.

米国

2004年5月31日、Sun Microsystems, Inc.(現 Oracle America, Inc.)との間で、

SPARC/Solarisサーバ製品の開発、製造及び販売に関する協力関係を規定する諸契約を締結しました。

 

(3)重要な契約

 ①新光電気工業株式会社の株式の譲渡にかかる契約

当社は、2023年12月12日開催の取締役会において、株式会社産業革新投資機構の完全子会社であるJICキャピタル株式会社が発行済株式の全てを所有するJICC-04株式会社(以下、公開買付者)との間における、(ⅰ)公開買付者による当社の連結子会社である新光電気工業株式会社(以下、新光電気工業)の普通株式(以下、新光電気工業株式)に対する公開買付け(以下、本公開買付け)への不応募、(ⅱ)公開買付者が本公開買付けにより新光電気工業株式の全て(ただし、当社が所有する新光電気工業株式(以下、当社売却予定株式)及び新光電気工業が所有する自己株式を除く)を取得できなかった場合に、新光電気工業の株主を当社と公開買付者のみとするために新光電気工業が行う株式併合、(ⅲ)新光電気工業が当社売却予定株式の取得を実行するための資金及び分配可能額を確保することを目的とする公開買付者による新光電気工業に対する資金提供及び新光電気工業における資本金、資本準備金及び利益準備金の額の減少、並びに(ⅳ)新光電気工業の自己株式取得に当社が応じることによる当社売却予定株式の譲渡(以下、本株式譲渡)を通じた新光電気工業株式を非公開化することを目的とする一連の取引に関する取引基本契約(以下、本取引基本契約)を承認する決議をし、本取引基本契約を締結しました。

当社は、本取引基本契約に基づき、本公開買付けの成立を条件として、2025年3月期またはそれ以降に本株式譲渡を行う見込みです。

また、本株式譲渡により、新光電気工業は当社の連結子会社から外れる予定です。

なお、本公開買付けは、国外の競争法並びに投資規制法令等に基づく必要な手続き及び対応に一定期間を要することが想定されているため、本公開買付けの開始時期については、公開買付者により、2024年8月下旬が目指されてはいるものの、国外の競争当局及び投資規制法令等を所管する当局における手続き等に要する期間に影響されます。

 

 ②株式会社富士通エフサスとの会社分割(吸収分割)にかかる契約

当社は2023年12月26日開催の取締役会において、2024年4月1日を効力発生日として、当社のサーバ、ストレージ及びエンタープライズネットワークの開発・製造・販売・保守事業、並びに法人向けパソコンの直接販売事業を吸収分割により当社連結子会社である株式会社富士通エフサス(以下、FSAS)へ承継させること、また、FSASのメインフレーム及びUNIX サーバの保守事業、並びにインフラ構築サービス事業を吸収分割により当社が承継すること(以下、本件組織再編)を決議し、各々吸収分割契約を締結しました。本件組織再編の概要は次のとおりです。

 

(ⅰ)本件組織再編の目的

当社は、サーバ及びストレージ等を中心としたハードウェアソリューション事業の基盤強化に向けて、同事業を2024年4月1日付でICTインフラの企画、コンサルティング及び運用保守事業を担うFSASに統合し、開発・製造・販売から保守まで一貫した体制を構築することで、当社グループ各社における経営責任を明確化すると共に、経営判断の迅速化と徹底した効率化を追求します。

これにより当社及びFSASのそれぞれが強みを発揮し、当社グループ全体としてトータルソリューションを提供することで、お客様への提供価値向上へと繋げてまいります。

 

(ⅱ)当社を吸収分割会社とし、FSASを吸収分割承継会社とする吸収分割について

   a.本吸収分割の効力発生日

    2024年4月1日

   b.本吸収分割に係る割り当ての内容

  株式その他の金銭等の割り当てはありません。

  c.吸収分割承継会社が承継する資産、負債の状況

FSAS は、吸収分割契約に定めるところに従い、当社のサーバ、ストレージ及びエンタープライズネットワークの開発・製造・販売・保守事業、並びに法人向けパソコンの直接販売事業(併せて、以下本項において、本件事業)に係る資産(台灣富士通科技股份有限公司の全発行済株式を含む)、負債、その他の権利義務並びに契約上の地位を承継しました。なお、本件事業に係る従業員との雇用契約は承継せず、従業員は本吸収分割の効力発生日をもってFSASに出向しました。また、FSASが承継した債務は免責的債務引受の方法によります。

  d.吸収分割承継会社の概要(2024年3月31日現在)

商号    株式会社富士通エフサス

代表者   代表取締役社長 小林 俊範

資本金   500 百万円

本店所在地 神奈川県川崎市中原区中丸子13番地2

事業の内容 ICTインフラの企画・コンサルティングから運用保守までのトータルサービス提供及びハードウェア・ソフトウェアの販売

(注)2024年4月1日付で株式会社富士通エフサスからエフサステクノロジーズ株式会社への商号変更及び小林 俊範から保田 益男への代表取締役の異動を行いました。

 

(ⅲ)FSASを吸収分割会社とし、当社を吸収分割承継会社とする吸収分割について

   a.本吸収分割の効力発生日

     2024年4月1日

   b.本吸収分割に係る割り当ての内容

   株式その他の金銭等の割り当てはありません。

  c.吸収分割承継会社が承継する資産、負債の状況

当社は、吸収分割契約に定めるところに従い、FSAS のメインフレーム及びUNIXサーバの保守事業並びにインフラ構築サービス事業(併せて、以下本項において、本件事業)に係る資産・負債、その他の権利義務並びに契約上の地位を承継しました。なお、本件事業に係る従業員との雇用契約は承継せず、従業員は本会社分割の効力発生日をもって当社に出向しました。また、当社が承継した債務は、免責的債務引受の方法によります。

  d.吸収分割承継会社の概要(2024年3月31日現在)

商号    富士通株式会社

代表者   代表取締役社長 時田 隆仁

資本金   325,638 百万円

本店所在地 神奈川県川崎市中原区上小田中四丁目1番1号

事業の内容 ソフトウェア、情報処理分野及び通信分野の製品の開発、製造及び販売並びにサービスの提供

 

6【研究開発活動】

当社グループでは、デジタルテクノロジーにより、「人」「企業」「システム」「プロセス」「データ」などが複雑かつ無限につながる社会において、あらゆる局面で求められる信頼「Trust」を確保することを重要な技術戦略に位置付けております。そして、このデジタル時代のTrustの実現と共に、デジタル技術とデータを駆使して革新的なサービスやビジネスプロセスの変革をもたらす、DX(デジタルトランスフォーメーション)企業を目指し、イノベーションが絶えず生まれるために必要な先端テクノロジー開発に取り組んでおります。

当社グループの事業は、「サービスソリューション」、「ハードウェアソリューション」「ユビキタスソリューション」及び「デバイスソリューション」の各セグメントにより構成されており、上記の研究開発方針のもと、それぞれの分野ごとに研究開発活動を行っております。「サービスソリューション」では、Fujitsu Uvanceを中心としたオンクラウドのデジタルサービス等に関する研究開発を行っております。「ハードウェアソリューション」では、次世代のサーバ、ネットワーク等に関する研究開発を行っております。「デバイスソリューション」では、電子部品(半導体パッケージ及び電池)等の各種デバイス製品及び関連技術に関する研究開発を行っております。

 

特に、当社グループの成長領域であるサービスソリューションを牽引するFujitsu Uvanceを含めたビジネスに貢献するため、「Computing」、「AI」、「Network」、「Data&Security」及び「Converging Technologies」の5つの先進テクノロジーを重点領域として、これらのキーテクノロジーを組み合わせて研究開発を推し進めております。

 

当社グループの当年度における主な研究開発活動の成果は、以下のとおりです。また、当年度における研究開発費の総額は、1,233億円となりました。このうち、サービスソリューションに係る研究開発費は191億円、ハードウェアソリューションに係る研究開発費は449億円、デバイスソリューションに係る研究開発費は75億円、全社・消去に係る研究開発費は516億円です。

 

(1) Computing

・理化学研究所との共同研究の成果として64量子ビット超伝導量子コンピュータを、日本企業初となる国産2号機として稼働を開始しました。40量子ビット量子シミュレータと超伝導量子コンピュータがシームレスに連携するハイブリッド量子コンピューティングプラットフォームを開発し、クラウド経由で公開しています。本プラットフォームを様々な分野の共同研究を行う企業などに提供して量子アプリケーションの研究開発を進め、ハードとソフトの両面から量子コンピュータの実用化を加速していきます。

 

・生成AIなどの広がりによってGPUの需要が増え、世界的なGPU不足が課題になっています。GPU不足に対応するために、世界で初めてCPUとGPUの計算処理をリアルタイムに切り替えるアダプティブGPUアロケーター技術を開発しました。複数プログラムの処理において、処理の高速化率を予測してCPUとGPUを使い分け、最短でプログラム処理が完了するように計算リソースを割り振ることが可能になりました。少ないGPU数でAIプログラムの処理スループットが大幅に向上します。

 

(2) AI

・対話型生成AIから出力される回答の信頼性を向上する、2つのAIトラスト技術を開発しました。幻覚(ハルシネーション)を検出する技術は、回答文をAIが意味解析し、間違いそうな固有表現部分を特定して重点的に確認し誤りを検出します。フィッシングURLを検出する技術は、AIを騙す既存の敵対的攻撃を含むフィッシングサイトを高度に検出し、利用者に危険なURLであることを示します。有効性検証を進め、信頼できる生成AIシステムの確立に貢献していきます。

 

・業務課題を自然言語で入力するだけで、顧客業務に特化したAIイノベーションコンポーネントを、従来の1/20の期間で自動生成する技術を開発しました。開発した要件学習技術は、LLM(大規模言語モデル)がユーザーの業務課題から変換するプログラムや数学表現を解釈し、ユーザーの要件を満たす解の集合をグラフ形式に変換し学習することができます。ユーザー自身が要件を入力し、AIイノベーションコンポーネントの試作や修正、調整を素早く繰り返せるので、AIの専門家が介入しなくても必要とするAIモデルの生成が可能になります。

 

(3) Network

・ポスト5G要件である超高速通信、超低遅延、多数同時接続に対応し、従来の5G基地局と比較して30%以上のコスト削減が可能な5G仮想化基地局の高度化技術を開発しました。本技術を、富士通が提供するグローバル標準仕様であるOpen Radio Access Network(Open RAN)に準拠した通信事業者向け仮想化基地局に適用することで超高速通信に加え、超低遅延、多数同時接続を実現し、ポスト5Gの特長を生かした多様なユースケースに対応できる5G仮想化基地局を実現しました。

 

・無線通信やレーダーの長距離化に向けた世界最高出力のX帯パワーアンプを開発しました。X帯と呼ばれる周波数領域の電波送信用パワーアンプにおいて、GaN-HEMT(窒化ガリウム 高電子移動度トランジスタ)保護膜の高品質化に成功しました。熱CVD(Chemical Vapor Deposition)法で成膜した窒化シリコンを適用し、31W/mm(ワットパーミリメートル)という世界トップの出力密度を実現しました。

 

(4) Data & Security

・暮らしのパーソナライズ(個別最適)化や見守りを促進する常時認証技術を開発しました。常時認証技術は、生体認証と行動分析技術を組合せ、エリア内のカメラで撮影された個人を特定して、その人物の位置をリアルタイムに推定します。カメラ映像から外見の特徴を随時抽出して特徴量を更新するため、今まで困難だった複数カメラ間のトラッキングを可能にしました。

 

(5) Converging Technologies

・人、モノ、経済、社会の間の複雑な相互作用をデジタル空間に再現して、社会課題解決とビジネスのトレードオンを実現するソーシャルデジタルツインの研究を進めています。今回、固定された1台のカメラの画像から人や物体の3次元形状と位置を高精度に推定して動的にデジタル空間に再現する技術を開発しました。本技術により、例えば交差点における交通状況を詳細に分析し、事故原因を見出すことで事故防止に役立てるなど、従来の技術では見つけられなかった原因や課題を見出し、その解決を図ることができます。