第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 会社の経営の方針

 当社は2023年1月、創立100周年(2059年)に目指す姿「積水化成品グループ100年ビジョン」について、経営理念の体系化を図るとともに、上位概念の一部であるコーポレートビジョンを改訂しました。

 当社の創業の精神「働く者の幸せのために」や経営理念である「われわれ積水化成品グループは、人間尊重と相互信頼を基本に全員経営を実践し、“新しい幸せ”を目指して常にイノベーションをし続けます」をベースに、このたびコーポレートビジョンである「人と地球を大切に、新たな価値を創造するニューケミカル・ソリューション・カンパニー」を目指します。

 

(2) 中長期的な会社の経営戦略と目標とする経営指標

 当社グループは、2022年4月に開始する新中期経営計画「Spiral-up 2024」を作成しました。

以下に記載の「基本方針」に則り、「重点課題」を中心に全員経営で取り組んでおります。

 

 <基本方針>

 「持続可能社会への貢献」と「持続的な企業価値向上」の実現に向けて、「ESG経営」を土台に強靭な収益基盤を確立する

 

 <重点課題>

① 収益体質の強化

・事業ポートフォリオの再構築

 基盤事業のさらなる安定化と成長事業の創出及び拡大を図るべく、ターゲット事業領域として5重点領域を設定し、経営資源の選択と集中により事業ポートフォリオを再構築する。

※ターゲット事業領域(5重点領域)

基盤領域 : 「食」

注力領域 : 「エレクトロニクス」「モビリティ」

期待領域 : 「医療・健康」「住環境・エネルギー」

・Proseat事業の高収益体質構築

 販売・生産性・調達・労務コストなど全面的な改善を実施。低収益事業の撤退と経営体制変革により、事業構造の改革を図り、高収益体質を構築する。

・生産革新によるコスト競争力の強化

 テクノロジーの活用を含めた生産革新とモノづくり力の強化を継続的に進める。

 「新たな生産技術、新たな設備技術」「生産性向上による競争力強化」「生産現場の効率化・スリム化」「生産現場の安定稼働」「基礎技術力の伝承・強化」

・開発品の早期収益化

 開発品を中長期の成長ドライバーと位置付け、RX(リサーチトランスフォーメーション)の考え方を体現

する。

 

② 環境・社会課題解決型事業への転換

 循環経済(サーキュラーエコノミー)を軸に据えた事業構造転換と2050年カーボンニュートラルを目指す

ことで、環境・社会価値と経済価値の両立を目指す。

・循環型ビジネスによる環境貢献製品の拡大

・カーボンニュートラル実現への挑戦

 

③ 経営基盤の強化

 マテリアリティを特定し、PDCAマネジメントを徹底する。資本効率を意識した取り組みを通じ、ROE向上を目指す。

・マテリアリティ(経営重要課題)の取り組み強化

・財務体質の強化

 

 経営指標としては、売上高、営業利益、親会社株主に帰属する当期純利益を重視し、自己資本当期純利益率(ROE)の向上に努めてまいります。

 

「Spiral-up2024」の定量目標

当社グループが直面している課題に対して市場の将来予測、また、直近の各セグメントの事業状況等を勘案し、2024年度の計画につきましては下表のとおり、一部見直しを致しました。

連結目標

2021年度

(実績)

2022年度

(実績)

2023年度

(実績)

2024年度

(計画)

売上高

(直近公表計画)

1,175億円

1,246億円

1,302億円

1,320億円

(1,350億円)

営業利益

(同上)

   14億円

7億円

12億円

25億円

(40億円)

経常利益

(同上)

   14億円

7億円

   27億円

   22億円

(37億円)

親会社株主に帰属する当期純利益

(同上)

△59億円

4億円

10億円

8億円

(24億円)

ROE

(同上)

0.8%

1.9%

1.5%

(3.0%)

(億円未満は切捨てで表示しております)

 

2025年3月期の連結業績予想(2024年4月1日~2025年3月31日)

 

売上高

営業利益

経常利益

親会社株主に帰属

する当期純利益

1株当たり

当期純利益

 

百万円

百万円

百万円

百万円

円 銭

第2四半期(累計)

66,000

1.5

800

136.5

700

△40.1

200

△56.5

4.41

通期

132,000

1.3

2,500

98.2

2,200

△19.5

850

21.6

18.73

 

(3) 対処すべき課題

 インフレの進行や金融引き締め、不安定な国際情勢などによる景気減速の影響に留意する必要があります。

 当社グループでは、(2)のとおり2022年4月に新3カ年中期経営計画「Spiral-up 2024」を作成し、「『持続可能社会への貢献』と『持続的な企業価値向上』の実現に向けて、『ESG経営』を土台に強靭な収益基盤を確立する」との基本方針に基づき、重点課題に取り組んでいます。

 環境課題解決については、事業活動の中核と位置付けており、水平リサイクルの普及拡大への取組みとして、「エスレンビーズ RNW」(再生原料を使用した発泡ポリスチレンビーズ)の量産化に向けた実証事業が「環境省 令和5年度 脱炭素型循環経済システム構築促進事業(うち、プラスチック等資源循環システム構築実証事業)」に採択されました。また、環境の分野において「先進的、独自的でかつ業界をリードする事業活動」を行っている環境先進企業として、環境省より「エコ・ファースト企業」の認定を受けました。今後も持続可能な社会の実現に向けて循環型社会への貢献に取り組んでまいります。

 『ESG経営』においては、人権尊重の取り組みの推進を目的として、2011年6月に国連人権理事会で採択された「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づき、「積水化成品グループ人権方針」を定めました。引き続き社会・経済・環境の課題解決に取り組み、企業価値向上に努めてまいります。

 

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループは、従来のCSR(企業の社会的責任)をより高次元な形に置き換え、「環境価値・社会価値・経済価値を高め、持続的に発展する」として、環境・社会課題解決型事業への転換を進めています。『わたしたち積水化成品グループは、経営理念の実践を通じて地球環境を含む全てのステークホルダーに対して社会的責任を果たし、グローバルに社会の持続的発展に貢献するとともに、持続的な企業価値向上につとめます。』とのサステナビリティ方針を2023年1月に制定し、サステナビリティの基盤として「環境・安全・品質に配慮したモノづくり」、「コンプライアンスを重視した誠実な経営活動」、「全員経営の実践」という3点を据え、活動を行っております。

 また、国際的な基準やガイドライン、SDGsが掲げるゴールなどから「当社グループにとっての重要性」と「ステークホルダーにとっての重要性」の2軸で評価した環境・社会・ガバナンス視点のマテリアリティ(経営重要課題)を特定し、それぞれに推進項目とKPI(重要成果指標)を定め、持続的な成長に向けて「ESG経営」を強化しております。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

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[サステナビリティ全般に関する取り組み]

<ガバナンス>

 当社グループでは、サステナビリティに関する課題について、常務会とその下部委員会であるサステナビリティ委員会、コンプライアンス・リスク管理委員会において議論の上、取締役会において審議・承認・監督するガバナンス・リスク管理体制をとっております。

 サステナビリティ委員会においては、課題や機会を踏まえた施策について、コンプライアンス・リスク管理委員会においては、各リスクの評価と対処のための取り組みについて、それぞれその分野を管轄する主管部門や主管委員会が起案した内容を審議し、常務会・取締役会に付議することとしております。取締役会で承認された方針や施策の実行はその分野を管轄する主管部門や主管委員会が牽引します。

 

 

サステナビリティに関するガバナンス体制図

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<リスク管理>

 当社グループにおけるサステナビリティに関するリスクは、以下のプロセスを通じて全社的にリスク管理を行う体制をとっています。

・サステナビリティに関する事業への影響は、その分野を管轄する主管部門や主管委員会が各種の分析によって把握し、内容を精査した上で対処すべき具体的なリスクや機会として識別される。

・識別されたリスクや機会については、主管部門や主管委員会がリスク低減の施策あるいは機会に対応するための施策等を検討するとともに各部門やグループ会社での取り組みの支援、施策の実施状況を確認する。

・サステナビリティに関するリスク低減の取り組み状況については各主管部門や主管委員会から「コンプライアンス・リスク管理委員会」に報告され、「コンプライアンス・リスク管理委員会」ではその内容を審議し、結果を常務会、取締役会に報告する。

 

 なお、「戦略」および「指標及び目標」につきましては、サステナビリティの具体的な取り組み内容によって異なることから、以下の[サステナビリティに関する主な具体的な取り組み]の中で記載をしております。

 

[サステナビリティに関する主な具体的取り組み]

1.気候変動に関する事項

  積水化成品グループは2022年5月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同を表明し、TCFD提言に基づき、気候関連のリスクおよび機会に関する「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」について情報開示を行っています。当社グループはTCFD提言に沿った気候変動対応に関する情報開示を行うと共に、事業活動を通じて持続可能社会の実現に貢献し、当社グループの持続的企業価値向上に向けた経営基盤強化を進めていきます。

(1)ガバナンス

 積水化成品グループでは、気候変動の課題について、常務会とその下部委員会であるサステナビリティ委員会、コンプライアンス・リスク管理委員会において議論の上、取締役会において審議・承認・監督するガバナンス・リスク管理体制をとっています。

 サステナビリティ委員会においては、課題認識とそれを踏まえた施策について、コンプライアンス・リスク管理委員会においては、各リスクの評価と対処のための取り組みについて、それぞれ環境委員会が起案した内容を審議し、常務会・取締役会に付議することとしています。環境委員会は取締役会で承認された方針や施策の実行を牽引し、各部門・グループ会社がその方針や施策に基づき、各種の取り組みを行っています。

 

(2)戦略

 積水化成品グループは創立以来、低炭素・循環型社会の実現を目指し、省エネルギーやリサイクルなど、環境と共生するモノづくりを行ってきました。現在は、SKG-5R推進として、これまでも取り組んできた3R(Reduce、Reuse、Recycle)に、グルー プ独自の2R(Replace、Re-create)を加えた5Rを実行し、地球規模の課題解決に貢献していきたいと考えています。 それに関連して、2030年度までに達成する3つの目標「サステナブル・スタープロダクト(環境貢献製品)の創出と事業拡大」「リサイクル・バイオマス原料使用比率50%以上」「CO2排出量削減」を設定し、事業を通じた社会・環境貢献を実行していきます。

 発泡製品は、省資源・省エネルギー・資源循環などの特長があり、これらを活かして幅広い分野で使われています。例えば、自動車に部材として搭載した場合、発泡製品が持つ軽量性を活かして、車体の軽量化を図れます。結果として、ガソリンなどの燃料消費が抑えられ、地球温暖化につながるCO2の排出量が削減されます。また、食品容器は、断熱性(保温/保冷)を活かして、農水産物や食料品などの鮮度保持や長期保存を可能とし、フードロス削減に役立ちます。

 このような発泡製品の特長に着目し、積水化成品グループの基幹となる発泡プラスチック事業を、シナリオ分析実施対象事業に選定し、気候関連のリスクと機会の特定とその対応策の検討を行った後、TCFDのフレームワークに則り、脱炭素経済実現に向けた「移行リスク」および気候変動に伴う「物理リスク」の分析を進めました。分析を進めるにあたっては、環境部門を統括する取締役の下、気候変動など環境課題解決に携わる主要8部門の各部門長と実務担当者が参加するプロジェクトを編制し、実質的な対応策の立案や正確な事業インパクトについて、各部門でのリスク・機会や対応策を議論し、実態に即した分析を行っています。

 

(3)リスク管理

 積水化成品グループでは、気候変動による当社グループの事業への影響について、将来にわたり事業を継続していくためにシナリオ分析を実施し、把握しています。分析によって洗い出されたリスクは、環境管理や保全などに関する戦略を立案する環境委員会での審議・評価を経て、対処すべき具体的なリスクとして識別されます。リスク低減の取り組みは、環境委員会で審議されるとともに、常務会の下部委員会であるコンプライアンス・リスク管理委員会に報告され、経営上のリスクのひとつとして審議・管理されます。

 一方、機会については、環境委員会での審議・評価を経て、サステナビリティ委員会に報告されるとともに、関連する事業部門にも共有され、事業上の戦略に反映されます。また、リスクおよび機会の状況は、常務会に報告後、取締役会にも報告され、そこでの指示事項はリスクと機会の取り組みにフィードバックされています。

 

(4)指標及び目標

 2030年までに達成する3つの目標「サステナブル・スタープロダクト」(環境貢献製品)の創出と「市場拡大」「リサイクル・バイオマス原料使用比率」「CO2排出量削減」を設定しました。

 

・サステナブル・スタープロダクト(環境貢献製品)の創出と市場拡大

 登録件数:100件 売上高比率:50%

・リサイクル・バイオマス原料使用比率

 全ての使用原料の50%を、バージン原料からリサイクルまたは生分解性・バイオマス由来の原料に置き換える。

・CO2排出量削減(Scope1+2)

 2018年度対比 27%削減 (2018年度連結ベースの排出量 143千トン)

 

 

指標及び目標に対する実績

 

2030年度目標

2022年度実績

2023年度概算

サステナブル・スタープロダクト(環境貢献製品)

登録件数

100件

48件

54件

売上高比率

50%

17%

19%

リサイクル・バイオマス原料使用比率

50%

16%

18%

CO2排出量削減

(Scope1+2)

27%削減

(2018年度対比)

23%削減

21%削減

 

 加えて、世界が気候変動への取り組みに注力する中、私たちは、2030年の目標達成を通過点と捉え、2050年カーボンニュートラルを目標に据え、その取り組みを加速させています。

 CO2排出量実績詳細(Scope1、2、3)は、下記をご確認ください。

https://www.sekisuikasei.com/jp/assets/images/ir/ir-library/integrated-report/report_2023.pdf

 

 また、「TCFD提言に基づく情報開示」の詳しい内容は、ホームページをご参照ください。

http://www.sekisuikasei.com/jp/sustainability/esg/environment/climate_change/

 

2.人的資本に関する事項(人材の多様性の確保を含む人材育成方針と社内環境整備方針)

 当社グループは、以下の「人事方針」を定め、人的資本経営を推進しております。

 この「人事方針」は、当社グループにおける人材の多様性を確保し、従業員一人ひとりの成長と育成を支援するとともに、その実現に向けた職場環境整備を推進することを6つの方針をもって明確にしたものです。創業の精神である「働く者の幸せのために」の具現化とグループカルチャーの「全員経営」によって、当社を取り巻くステークホルダーに向けて持続的企業価値向上を目指します。

 

 (人事方針)

 積水化成品グループは、グループ員一人ひとりが持つ可能性をかけがえのない「資本」と捉え、持続的に成長する機会と環境を創出し続ける「人的資本経営」を実践します。これを実現するため、以下の項目を定め、グループ員が行動規範に定める行動を実践し、その力を十分に発揮できる環境を整備します。

 

項目

方針

人材育成

自律的キャリア形成を支援し、人と会社の成長を実現します

健康経営

心身ともに健康でいきいきと働ける職場環境整備に取り組みます

評価・処遇

採用・配置

公正な評価と処遇を行い、適所適材の人員採用・配置を実践します

エンゲージメント

向上

自発的な貢献意欲が持てるように働きがいのある職場と成長機会を提供します

ダイバーシティ

一人ひとりの多様性を尊重し、活躍できる機会と環境を創出します

働き方改革

生産性の高い働き方、柔軟な働き方を追求します

 

 

 

(1)戦略

項目

戦略

人材育成

研修体系を整備し、階層別研修・キャリア強化研修・積水化成品塾(経営層育成)を通じた積水化成品グループとしての自律人材を育成する。

健康経営

健康経営戦略MAPを策定し実践する。また、ストレスチェックの結果集団分析を有効活用し、健康保持・増進する仕組みを策定・実践する。

評価・処遇

採用・配置

従業員のモチベーションアップを図るための評価処遇制度を整え、適正に運用する。また、新卒採用・キャリア採用を併用することで人材を確保し、適切な人員配置を行う。

エンゲージメント

向上

活躍できる働きやすい環境整備を目的としたエンゲージメント調査を定期的に実施し、分析や改善施策を立案し、実践する。

ダイバーシティ

女性、外国人、障害者等多様な人材の積極的な採用を行い、活躍できる機会の創出と職場環境整備(デジタル化、DX化、インフラ整備等)を行う。

働き方改革

在宅勤務制度・フレックスタイム勤務を活用し、総労働時間の削減を行う。また、有給休暇が取りやすい環境整備を行う。

 

(2)指標及び目標

指標

目標

2023年度実績

女性管理職比率

2024年度末 7%以上

5.5%

女性社員比率

2024年度末 18%以上

16.3%

男性育児休業取得率

2024年度末 100%

88.9%

女性採用比率

2024年度末 25%

29.4%

 

※上記、「指標及び目標」に関しては、グループ会社各社での取り組みが未だ不十分であること、地域性や各社の事業特性、又は規模感などから目標設定が困難なため、提出会社単体での数値です。

 

 

3【事業等のリスク】

 以下において、当社グループの事業展開上のリスク要因となる可能性があると考えられ、また投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項を記載しております。当社グループは、これらのリスクの発生可能性を認識した上で、発生の回避、発生した場合の対応に努める方針であり、全般的なリスク管理については、下図のとおり「コンプライアンス・リスク管理委員会」にて評価・審議し、その結果を定期的に常務会、取締役会に報告しております。

 

            当社のリスク管理プロセス図

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 なお、以下の文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。当社グループにおける事業等のリスクは、国内外の経済情勢等により影響を受ける可能性があり、以下に記載した事項に限定されるものではありません。

 

① 安全の確保

当社グループの事業拠点において、労働災害や火災等が発生し、それが原因で近隣地域に影響が及ぶ場合、社会的信用の失墜、対応費用の発生、生産活動の停止による機会損失及び顧客に対する補償等によって、当社グループの業績及び財政状況に大きな影響を与える可能性があります。

そこで当社グループでは「保安委員会」を設置し、グループ全体で保安活動方針を定め、安全パトロール、安全啓発、安全教育及び各種訓練等の活動を企画立案、実行し、事業活動の全般で、無事故、無災害に努めております。

 

② 製品の品質保証

製品に予期しない欠陥や不具合が生じた場合、製品の回収や損害賠償等、当社グループの業績及び財政状況に大きな影響を与える可能性があります。

そこで当社グループでは「品質委員会」を設置し、品質マネジメントシステムの強化をはかるとともに、グループ全体で品質方針を定め、品質監査、品質管理教育、品質会議等の活動を企画立案、提言し、製品の開発と生産における安全性、品質に配慮しております。また、品質に関する国内外の法令や業界団体等の定める規制、規格を遵守して事業活動を進めております。さらに、万一品質問題が発生してしまった場合に備え、製造物責任保険に加入しております。

 

③ 環境マネジメント

製品材料の保管管理や製造過程における、化学物質の漏出、事故の発生等、工場周辺の環境に影響を及ぼすような事象が発生した場合、顧客や地域社会からの信用の失墜、補償その他対策費用の発生、生産停止による機会損失等によって、当社グループの業績及び財政状況に大きな影響を与える可能性があります。さらには、気候変動問題への対応は喫緊に取り組むべき課題と認識しております。

そこで当社グループでは「環境委員会」を設置し、環境方針を定め、「気候変動への対応」、「資源循環」、「生態系保全」、「法令遵守と情報開示」、「教育と啓蒙」の5つの項目で具体的な行動方針を設定し、それぞれの事業所において、環境マネジメントに努めるとともに、各種環境規制法令を遵守して事業活動を進めております。

また、気候変動が当社事業に与える影響について、「気候関連財務情報開示タスクフォース」(TCFD)の提言に沿った気候変動対応に関する情報開示を行っており、2030年に事業活動に伴うCO排出量を2018年対比で27%の削減、2050年にカーボンニュートラル実現に向け、CO排出量削減の活動を加速しております。

 

④ 経済状況、公共事業の動向

当社グループの業績及び財政状況は、景気動向による需要の縮小、他社との競合による需給バランスや価格の変動によって影響を受ける可能性があります。

そこで当社グループでは、このような市場における経済状況、需要家や個人消費の動向に柔軟に対応できるよう販売力、開発力、財務体質の強化をはかるとともに、中期経営計画での施策を着実に推進することで収益減少を最小限に抑えるように努めております。

 

⑤ 国外での事業活動

当社グループは、アジア地域をはじめ、欧州、米国、中米でも生産・販売事業を展開しておりますが、予期しない法律または規制の変更、不利な政治または経済要因、中台関係などの地政学的な問題、感染症の拡大といった社会的混乱等により、当社グループの業績及び財政状況に影響を与える可能性があります。

そこで当社グループでは、リスクを最小限にとどめるため積極的な情報収集に努め、事業環境の変化に即応できる体制を整えております。

 

⑥ 原材料の市況変動

当社グループで使用する主な原材料は、スチレンモノマー、ポリスチレン等ですが、それら原材料の価格変動をタイムリーに製品価格に転嫁できなかった場合や、自然災害の発生や仕入先の供給が不安定な場合、また配送規制強化などによって原材料の当社への納入が大幅に遅延する場合には、当社グループの業績及び財政状況に影響を与える可能性があります。

そこで当社グループでは、原材料、荷造材料、製造設備等の有利購買に注力するとともに、調達先及び使用原料の多元化、物流ルートの安定化等の方策に努めております。また、原材料の価格変動をタイムリーに製品価格に転嫁できるように、適宜顧客との折衝を行っております。

 

⑦ 為替リスク

当社グループの国外事業における外国通貨建て取引は、円換算時の為替レート変動の影響を受けます。これらの取引につきましては、リスクを軽減させる措置を講じておりますが、為替レートの変動が当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。

そこで当社グループでは、取引にかかわる外国通貨のヘッジ等、リスクを抑制するためのさらなる措置を検討してまいります。

 

⑧ 減損・資産価値低下に関するリスク

当社グループは、事業用のさまざまな有形固定資産及び無形資産を計上しております。また、一定の他社株式を保有しております。これらの資産については、業績計画との乖離や市場動向の変化等によって期待するキャッシュ・フローが生み出せない場合、あるいは資産価値の低下が生じた場合、当社グループの業績及び財政状況に影響を与える可能性があります。

そこで当社グループでは、投融資に関して「投融資委員会」を設置し、投融資の是非を綿密に審議しております。また、事後における進捗管理を徹底し、さらに資産価値を適正に把握する体制を整備しております。

 

⑨ 自然災害のリスク

想定を超える大規模な地震、台風その他の自然災害による当社グループの事業拠点の被災やサプライチェーンの障害による事業活動停止が発生した場合、あるいは感染症拡大等による社内外に混乱が発生した場合には当社の業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。

そこで当社グループでは、自然災害による緊急事態が発生した場合の初動対応計画を作成し、即応体制の準備と情報共有方法を整理しております。また、基幹事業については事業継続計画(BCP)の策定に取り組んでおります。

 

⑩ 情報セキュリティ

当社グループは、業務上必要な機密情報や個人情報を有しておりますが、外部からの予期せぬ攻撃や自然災害等で重要なシステムが使用不可能な状態になり当社グループの業務遂行に支障が生じる場合、または内部からの情報漏洩や不正使用が発生し当社グループの信用が低下した場合、当社グループの業績及び財政状況に影響を与える可能性があります。

そこで当社グループでは、これらの情報資産を適切に保護するため、全社のIT施策の管理、推進を行う「IT推進委員会」を設置し、情報セキュリティ実施計画を策定するとともに、情報セキュリティシステムの機能アップや従業員への教育を行っております。また、各部門、各グループ会社に情報セキュリティ責任者を配置し、情報セキュリティ活動を統括して情報資産の適切な管理を行っております。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」といいます。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度は、世界経済におきましては、インフレの進行や金融引き締め、不安定な国際情勢などによる景気減速の懸念などがあり、先行き不透明な状況が続いております。自動車産業においては、自動車生産は地域やメーカーによって生産活動にばらつきはあるものの全般的に回復基調にあります。エレクトロニクス関連においては、テレビ、モニター用途の需要は世界的に底打ち感が見られ、回復の兆しを見せ始めております。一方、日本経済は、社会経済活動の正常化が進み、緩やかな回復傾向がみられるものの、資源価格の高騰や円安の影響などにより、不透明感を払拭できない状況が続いております。また、温室効果ガス排出量削減や気候変動問題など環境課題への対応は、重要性を増しております。

 日本の発泡プラスチックス業界におきましては、食品容器関連の需要は、人流が増加したものの物価上昇などの影響もあり、個人消費の持ち直しに足踏みがみられ、内中食関連向けの需要は落ち着きをみせております。一方、各種部材や搬送資材・梱包材は、需要が回復傾向にあります。このような経営環境のなか、当社グループは、前年度からスタートさせた3カ年中期経営計画「Spiral-up 2024」の3つの重点課題に対してグループ全体で取り組んでおります。

 

ア 財政状態

 当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ12億9千8百万円増加し、1,464億7千3百万円となりました。

 当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ29億4千1百万円増加し、896億5千2百万円となりました。

 当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ16億4千2百万円減少し、568億2千1百万円となりました。

 

イ 経営成績

 当連結会計年度の業績は、売上高が1,302億6千5百万円(前期比4.5%の増加)、営業利益は12億6千1百万円(前期比59.0%の増加)、円安進行に伴う為替差益を含む経常利益は27億3千3百万円(前期比288.1%の増加)でありました。さらに、当連結会計年度において、子会社に関連する固定資産減損等の一時的な損失を含む特別損失3億1千8百万円、投資有価証券の一部売却に伴う特別利益2億8百万円を加・減算し、親会社株主に帰属する当期純利益は10億8千3百万円(前期比139.4%の増加)となりました。

 セグメントごとでは、ヒューマンライフ分野の売上高が491億3百万円(前期比6.7%の減少)、セグメント利益は17億8千7百万円(前期比30.9%の減少)となり、インダストリー分野の売上高が811億6千1百万円(前期比12.6%の増加)、セグメント利益は23億6千3百万円(前期は4億円の損失)となりました。

 「ヒューマンライフ分野」においては、食、住環境・エネルギーを、「インダストリー分野」においては、モビリティ、エレクトロニクス、医療・健康のそれぞれの領域を重点課題領域として設定し、中期計画に掲げた「収益体質の強化」を目指して事業ポートフォリオの再構築を図ってまいります。

 

 

 

② キャッシュ・フローの状況

 現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前期末に比べて2億5百万円減少し、108億6千7百万円となりました。

<営業活動によるキャッシュ・フロー>

 営業利益の増加などにより、前期に比べ42億6千4百万円増加し、73億7千5百万円の収入となりました。

<投資活動によるキャッシュ・フロー>

 投資有価証券の売却による収入の減少などにより、前期に比べ27億8千5百万円減少し、37億7千9百万円の支出となりました。

<財務活動によるキャッシュ・フロー>

 長期借入金による収入が減少したことなどにより、前期に比べ21億1千5百万円減少し、36億5千8百万円の支出となりました。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

ア 生産実績

 当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

前年同期比増減率(%)

ヒューマンライフ分野(百万円)

53,473

△13.0

インダストリー分野

(百万円)

74,933

6.6

合計(百万円)

128,406

△2.6

(注)金額は、販売価格により表示しており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。

 

イ 受注実績

 主として見込生産を行っており、受注生産はほとんど行っておりません。

 

ウ 販売実績

 当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

前年同期比増減率(%)

ヒューマンライフ分野(百万円)

49,103

△6.7

インダストリー分野

(百万円)

81,161

12.6

合計(百万円)

130,265

4.5

(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

株式会社エフピコ

17,381

13.9

17,190

13.2

 

 

(2) 経営成績の分析

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

ア 経営成績等

(ア)財政状態

 

前連結会計年度

(百万円)

当連結会計年度

(百万円)

増減

(百万円)

流動資産残高

66,874

69,110

2,236

固定資産残高

78,301

77,363

△937

負債残高

86,711

89,652

2,941

純資産

58,464

56,821

△1,642

 

(資 産)

 当連結会計年度末における総資産は1,464億7千3百万円(前連結会計年度末比12億9千8百万円の増加)となりました。

 資産の部では、売掛金や電子記録債権の増加などにより流動資産が22億3千6百万円増加しました。投資有価証券の売却により固定資産は9億3千7百万円減少しました。

(負 債)

 負債の部では、支払手形及び買掛金の増加などにより流動負債は48億7千4百万円増加しました。長期借入金の返済などにより、固定負債は19億3千3百万円減少しました。

(純資産)

 純資産の部は16億4千2百万円減少しました。純資産から非支配株主持分を控除した自己資本は560億6千万円となり、自己資本比率は38.3%となりました。

 

(イ)経営成績

 

前連結会計年度

(百万円)

当連結会計年度

(百万円)

増減

(百万円)

売上高

124,683

130,265

5,581

国外売上高

49,448

55,556

6,107

(国外売上高比率)

(39.7%)

(42.6%)

 

営業利益

793

1,261

467

(売上高営業利益率)

(0.6%)

(1.0%)

 

営業外収益

1,025

2,879

1,854

営業外費用

1,114

1,407

292

経常利益

704

2,733

2,029

特別利益

1,632

208

△1,424

特別損失

50

318

268

当期純利益

453

1,105

652

親会社株主に帰属する当期純利益

452

1,083

631

(自己資本利益率)

(0.8%)

(1.9%)

 

 

 

 

 当連結会計年度における、売上高は1,302億6千5百万円(前期比4.5%の増加)、営業利益は12億6千1百万円(前期比59.0%の増加)、円安進行に伴う為替差益を含む経常利益は27億3千3百万円(前期比288.1%の増加)でありました。さらに、当連結会計年度において、子会社に関連する固定資産減損等の一時的な損失を含む、特別損失3億1千8百万円、投資有価証券の一部売却に伴う特別利益2億8百万円を加・減算し、親会社株主に帰属する当期純利益は10億8千3百万円(前期比139.4%の増加)となりました。

 営業外損益における、営業外収益は、為替差益の発生などにより前期比で18億5千4百万円増加し28億7千9百万円となり、営業外費用は支払利息の増加などにより前期比で2億9千2百万円増加し、14億7百万円となりました。

 特別損益では、特別利益は投資有価証券売却益の減少などにより、前期比14億2千4百万円減少し、2億8百万円となり、特別損失は事業整理損の発生や固定資産の減損損失の増加などにより前期比2億6千8百万円増加し、3億1千8百万円となりました。

 

(ウ)キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況については、下記のとおりです。

 

前連結会計年度

(百万円)

当連結会計年度

(百万円)

増減

(百万円)

営業活動によるキャッシュ・フロー

3,110

7,375

4,264

投資活動によるキャッシュ・フロー

△993

△3,779

△2,785

財務活動によるキャッシュ・フロー

△1,542

△3,658

△2,115

現金及び現金同等物期末残高

11,072

10,867

△205

 

<営業活動によるキャッシュ・フロー>

 営業利益の増加などにより、前期に比べ42億6千4百万円増加し、73億7千5百万円の収入となりました。

 

<投資活動によるキャッシュ・フロー>

 投資有価証券の売却による収入の減少などにより、前期に比べ27億8千5百万円減少し、37億7千9百万円の支出となりました。

 

<財務活動によるキャッシュ・フロー>

 長期借入金による収入が減少したことなどにより、前期に比べ21億1千5百万円減少し、36億5千8百万円の支出となりました。

 

<現金及び現金同等物期末残高>

 現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前期末に比べて2億5百万円減少し、108億6千7百万円となりました。

 

イ 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 2023年度の計画達成状況は以下のとおりであります。

 

連結業績

 

2023年度

計画

2023年度

実績

対計画比

増減率

売上高

1,300億円

1,302億円

0.2%

営業利益

20億円

12億円

△37.0%

(売上高営業利益率)

(1.5%)

(1.0%)

経常利益

17億円

27億円

60.8%

親会社株主に帰属する当期純利益

5億円

10億円

97.0%

(自己資本利益率)

(1.0%)

(1.9%)

※ 億円未満は切捨てで表示しております。

 2023年度計画は2023年4月28日公表数値であります。

 

ウ 経営成績の状況等に関する認識及び分析検討内容

 2023年度は、年度初の業績予想計画に対して、売上高はほぼ計画並みとなったものの、営業利益△37.0%、経常利益60.8%となり、親会社株主に帰属する当期純利益97.0%の実績となりました。

 2023年度は、自動車生産台数の回復や液晶パネルメーカーによる在庫調整の解消、円安の進行の影響等により、前期比で増益となりました。セグメントごとの分析状況につきましては、エ に記載のとおりです。

 今後の当社グループの経営に影響を与える主な要因としては、市場動向、資材費動向、海外動向等があります。

 市場動向については、従来からの景気動向に加え、ウクライナ情勢などの地政学リスクやサプライチェーンの混乱、他社との競合による需給バランスや価格の変動によって、当社グループの業績及び財政状況に影響を与える可能性があるため、市場における経済状況、需要家や個人消費の動向に留意した戦略を遂行できるよう販売力、開発力、財務体質の強化に努めております。

 資材費動向については、当社グループで使用する原材料の価格変動をタイムリーに製品価格に転嫁できなかった場合または自然災害の発生や仕入先の供給が不安定な場合、当社グループの業績及び財政状況に影響を与える可能性があるため、原材料、荷造材料、製造設備等の有利購買に注力しております。

 海外動向については、アジア地域をはじめ、欧州、米国、中米でも生産・販売事業を展開しており、予期しない法律または規制の変更、不利な政治または経済要因、戦争や政情不安等の社会的混乱などにより、当社グループの業績及び財政状況に影響を与える可能性があるため、リスクを最小限にとどめるため情報収集に努めております。また、グローバルなEV及び次世代自動車市場動向の重要性を認識し、高機能化や環境負荷を低減する新たな新素材開発を行うなど対応を強化しております。

 これらの点を踏まえ、当社グループは、中期経営計画「Spiral-up 2024」を着実に推進してまいります。

 

エ セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

 

a ヒューマンライフ分野

 

2022年度

実績

2023年度

実績

増減率

売上高

526億円

491億円

△6.7%

経常利益

26億円

18億円

△30.9%

※ 億円未満は四捨五入で表示しております。

 

b インダストリー分野

 

2022年度

実績

2023年度

実績

増減率

売上高

721億円

812億円

12.6%

経常利益又は経常損失(△)

△4億円

24億円

※ 億円未満は四捨五入で表示しております。

 

(ヒューマンライフ分野)

 食領域においては、食品容器用途は食材価格の値上げの影響などを受け需要は伸び悩みました。農産用途は天候の影響による生育不良により出荷が伸びず、水産用途は漁獲量の減少傾向が継続し低調に推移しました。売上高は価格改定による増加はありましたが、全体的には前年を下回る結果となりました。

 住環境・エネルギー領域においては、屋上緑化資材の物件獲得が進みましたが、建材用途の低迷、土木用途での工事物件の進捗遅れなどがあり低調に推移しました。

 主力製品である「エスレンシート」(発泡ポリスチレンシート)の売上数量は、プラスチック使用量の削減を可能にする新たな素材として株式会社エフピコと共同開発した省資源素材「エスレンシート PZシリーズ」が、新規需要を取り込むなど数量を伸ばしました。一方、納豆容器用途は堅調に推移したものの、スーパーなどの生鮮食品容器用途が低調な動きとなり、即席麺用途も需要減退が継続し、全体では前年を下回りました。「エスレンビーズ」(発泡性ポリスチレンビーズ)の売上数量は、水産分野及び農産分野が継続して低調であったこと、クッション用ビーズなどのライフグッズ用途の需要減少、土木用途では工事遅れの影響を受け、全体では前年より減少しました。

 利益面では、原価低減や固定費削減、販売価格への転嫁、また物流費の低減などを図りましたが、売上数量の減少により減益となりました。

 その結果、ヒューマンライフ分野の売上高は491億3百万円(前期比6.7%の減少)、セグメント利益は17億8千7百万円(前期比30.9%の減少)となりました。

 

 

(インダストリー分野)

 モビリティ領域における、「ピオセラン」(ポリスチレン・ポリオレフィン複合樹脂発泡体)の販売は順調に推移しました。用途別では、自動車部材用途では、年度前半の部品不足、年度後半の能登半島地震の震災影響等による自動車の減産影響があったものの、通年では自動車生産台数の回復を背景に順調に推移しました。部品梱包材用途では、前年度大きく伸長した電動部品梱包用途での需要が一巡し前年を大幅に下回りましたが、トヨタ自動車株式会社の電動部品物流用途のリターナブル資材に採用された「ピオセランRNW」の市場投入が進みました。また、トラック、バス向けのFRP(繊維強化プラスチック)部材ならびに関連資材などで新たな需要を取り込み好調に推移しました。欧州のProseatグループでは、欧州自動車市場は緩やかに回復する中、生産量が増加したことに加え、エネルギー価格、人件費の高騰に対しては、生産性改善、固定費削減や自動車メーカーへの価格転嫁を進めたことで、業績は大幅に回復が進んだものの赤字が継続しています。

 エレクトロニクス領域においては、「テクポリマー」(ポリマー微粒子)の液晶パネル等の光拡散の用途では、液晶パネルメーカーの在庫調整が解消され順調に推移しました。液晶パネル搬送資材用途での「ピオセラン」は、台湾で需要回復も、中国では前年を下回りました。

 医療・健康領域においては、「エラスティル」(熱可塑性エラストマー発泡体)は、前年度大きく伸長したプロテクティブスニーカーでの需要が一巡、年度後半にはトレーニングシューズ用の売上が伸長しましたが、通年での売上は前年を下回りました。「テクノゲル(ST-gel)」(機能性 高分子ゲル)は、検診需要の回復に伴い対極板などの医療用途は堅調に推移しましたが、低周波治療器用パッドなどの健康用途は末端での需要が奮わず低調に推移しました。

 利益面では、エレクトロニクス領域での需要回復、モビリティ領域では自動車生産台数が回復していく中で、生産性改善、固定費削減、価格転嫁等に努めた結果、黒字化することができました。

 その結果、インダストリー分野の売上高は811億6千1百万円(前期比12.6%の増加)、セグメント利益は23億6千3百万円(前期は4億円の損失)となりました。

 

オ キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容、資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 当社グループの運転資金需要のうち主なものは、原材料や仕入商品の購入費用のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、設備投資等によるものであります。

 当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。

 短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資や長期運転資金の調達については、金融機関からの長期借入や社債発行を基本としております。また、必要に応じてシンジケート方式によるコミットメントライン契約による調達も行い、資金調達方法の多様化を図りつつ、負債と資本のバランスに配慮しながら必要な資金需要に対応してまいります。

 なお、当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は421億9千6百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は108億6千7百万円となっております。

 当社グループは、設備等の投資にあたっては、調達した資金のコスト(資本コスト、借入コスト等)を十分に勘案し、投資前に投資効果の収益性について十分な精査を行った上で実行しております(設備の状況は、第3[設備の状況]に記載のとおりです。)。

 

(参考)財務関連指標の推移

 

2020年

3月期

2021年

3月期

2022年

3月期

2023年

3月期

2024年

3月期

自己資本比率(%)

44.1

44.2

40.1

39.8

38.3

時価ベースの自己資本比率(%)

17.6

17.7

13.8

13.0

15.7

キャッシュ・フロー対有利子負債比率

5.5

5.8

10.9

13.6

5.7

インタレスト・カバレッジ・レシオ

15.0

17.1

10.7

6.8

7.7

(注)自己資本比率:自己資本/総資産

時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産

キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー

インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い

※ いずれも連結ベースの財務数値により算出しております。

※ 株式時価総額は、自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しております。

※ キャッシュ・フローは、営業キャッシュ・フローを利用しております。

※ 有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。

 

② 重要な会計方針及び見積り

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、当連結会計年度における財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与えるような見積り、予測を必要としております。当社グループは、過去の実績値や状況を踏まえ合理的と判断される前提に基づき、継続的に見積り、予測を行っております。そのため実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

 当社グループとしては、特に以下の重要な会計方針が連結財務諸表の作成において使用される見積りと判断に大きな影響を及ぼすと考えております。

 

ア 固定資産(無形固定資産、投資その他の資産を含む)の評価

 当社グループは、「固定資産の減損に係る会計基準」において対象とされる固定資産(無形固定資産、投資その他の資産を含む)について、その帳簿価額の回収が懸念される企業環境の変化や経済事象が発生した場合には、減損の要否を検討しております。その資産の市場価格及びその資産を使用した営業活動から生じる損益等から減損の兆候があると判定された固定資産については、回収可能価額が帳簿価額を下回る場合、回収可能価額まで減損処理を行っております。

 回収可能価額は、複数年の事業計画から生じる将来キャッシュ・フロー及びその他の見積り及び仮定から合理的に決定しておりますが、事業計画や市場環境の変化により、これらの見積り及び仮定が将来、変更された場合、減損金額の増加及び新たな減損認識の可能性があります。

イ 退職給付債務

 当社グループの退職給付債務及び退職給付費用は、割引率や年金資産の期待運用収益率等の数理計算上で設定される計算基礎を用いて算出されております。割引率の見積りにあたっては、安全性の高い長期の債券利回りを基礎に決定しております。また、期待運用収益率については、保有する年金資産のポートフォリオ、過去の実績、運用方針及び市場の動向等を考慮して決定しております。予想困難な事象による市場動向等が原因で、その見積数値と実績が異なる場合、または見積数値が変更された場合、その影響額は将来にわたって規則的に認識されるため、一般的には、将来において認識される費用及び計上される債務に影響を及ぼします。

 

ウ 有価証券及び投資有価証券の評価

 当社グループでは、「金融商品会計に関する実務指針」を基に長期的な協力関係や取引関係の観点から株式等を所有しており、投資価値の下落が一時的でないと判断した場合に株式等の減損処理を実施することとしております。これは、期末時価が帳簿価額を50%以上下回った場合に、何らかの減損処理を実施するものであります。したがって、将来の株式市場や投資先の業績動向により、これらの有価証券及び投資有価証券の評価に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

エ 税効果会計

 当社グループでは将来の課税所得に対する様々な予測・仮定に基づいて、税効果会計の計算を行っており、実際の結果がこれらの予測・仮定とは異なる可能性があります。将来の課税所得や加減算などのスケジューリングに基づき、回収可能性があると判断した将来減算一時差異について繰延税金資産を計上しておりますが、将来の課税所得の予測・仮定に変更が生じ、繰延税金資産に一部または全部の回収ができないと判断した場合、当社グループの繰延税金資産は減額されて税金費用が計上される可能性があります。

 

5【経営上の重要な契約等】

標章使用許諾に関する重要な契約

契約会社

相手方の名称

契約期間

契約内容

積水化成品工業㈱

(当社)

積水化学工業㈱

1989年10月1日から1993年3月31日までとする。

但し、期間満了後特別の事情のない限り更に3年間継続し、以後この例による。

積水化学工業㈱の所有する一定の標章(商標含む)の使用許諾の取得

 

6【研究開発活動】

 当社では、ヒューマンライフ分野、インダストリー分野において、基礎研究から生産技術に至るまで幅広い研究開発を行っております。研究開発センターでは、コア技術進化から事業成長・新事業創出につながる新製品開発まで一連の役割を担っています。課題設定からテーマを創出し、マーケティングを経て、事業化に至る量産化までの研究開発を一貫して行い、開発サイクルの高速化を図っています。生産革新プロセスや設備の設計開発などをIoTやAIの活用を含めて推進している生産技術センターや、各事業部の技術部門の活動とで、新製品や新規システム開発により、早期事業貢献に努めています。

 なお、当連結会計年度における研究開発費の総額は、2,578百万円であります。また、セグメント別の研究開発を進めており、ヒューマンライフ分野とインダストリー分野それぞれにおいては、重合技術・含浸技術・押出技術・発泡技術・微粒子化技術・ゲル化技術・成形技術を基盤としてニーズに対応した高付加価値素材開発と土木・住環境システム商品に関する技術開発を行っております。

 環境面では、環境貢献製品群を強化すべく、リサイクル原材料を活用した製品カテゴリーの「ReNew+」、生分解性またはバイオマス由来プラスチックスを活用した製品カテゴリーの「BIOCellular」の両カテゴリーブランドを制定し、当社グループが製造するすべての製品を対象に、2030年度までに、使用原料の50%を、リサイクルまたはバイオマス由来のものに置き換えるという目標を掲げ、それら開発を強化しています。両ブランド製品のラインアップ拡充で資源循環型ビジネスを強化し、社会課題解決と持続的成長に貢献していきます。

 当連結会計年度の主な成果は次のとおりであります。

 

(1) ヒューマンライフ分野

 当社のコア技術である押出発泡、発泡シート成形、懸濁重合、含浸発泡、型物成形技術をベースに、多様化するニーズに基づいた製品改良や新たな機能付与を進めています。内中食市場に向けた電子レンジ容器対応の耐熱性発泡シート、食品トレーや納豆容器など広く使用されている一般の発泡ポリスチレンシート、即席麺容器などに使用されているラミネートシートにおいては、最終商品に求められる素材物性や機能性を向上させる開発や軽量化など省資源化に貢献する開発に加え、再生可能資源であるバイオマス由来プラスチックスを活用した製品開発などを進めています。

 特に、当連結会計年度においては、プラスチックの使用量削減に貢献する発泡シート「エスレンシート PZシリーズ」を株式会社エフピコと共同で開発しました。寿司盛合わせなどに用いられる大型の食品トレーには、その素材として非発泡樹脂が用いられてきましたが、発泡素材を大型トレーへ使用する際に課題となる、耐衝撃性、表面平滑性、成形性を改善し、採用に至りました。従来の非発泡樹脂成型品に比べ50~60%の軽量化が図れ、プラスチック使用量を削減する省資源化に貢献しています。

 また、マテリアルリサイクルの拡大に向けて、再生原料を使用した発泡ポリスチレンビーズである「エスレンビーズ RNW」を用いて、「エスレンブロック RNW」を開発しました。「エスレンブロック」は、地中に埋設する軽量盛土材で、軽量性、自立性、施工性などに優れた特性を持つことから、道路建設や護岸工事、軟弱地盤の対策などで広く使用されています。「エスレンブロック RNW」をラインナップに加え、軽量盛土用途の事業強化を進めていきます。

 これらヒューマンライフ分野に係る研究開発費は、314百万円であります。

 

(2) インダストリー分野

 環境貢献製品開発として、リサイクル原料を含有させた「ピオセラン RNW」の開発を継続し進化させています。「ピオセラン」はポリスチレンとポリオレフィンをハイブリッド化した高機能複合樹脂発泡体ですが、省資源かつ軽量であることに加えて、耐衝撃性、耐薬品性、耐摩耗性などの特徴を持ち、自動車部材や部品輸送用梱包資材として幅広く使用されています。「ピオセラン RNW」はバージン原料を使用した従来品と同様の物性を保持し、部品輸送用リターナブル梱包資材への採用を拡大させていますが、回収原料比率アップやグローバルでの適用用途拡大開発を進めています。

 また、ポリマー開発では、PFAS代替材料の研究を進めています。PFASの総称で知られる有機フッ素化合物は、半導体やEVなど多様な分野に幅広い用途で使われてきましたが、健康リスクなどが報告されるようになり、EUを中心に規制される動きが出ています。PFASは、PTFE粒子を液体へ均一に分散させる添加剤として広く活用されていますが、その代替素材としてムール貝の接着現象を応用した分散剤の研究開発を進め、PTFEを水中に分散できる非フッ素系の分散剤の量産化技術を確立しました。社会課題でありますPFAS規制に対応する製品の実用化を加速させ、環境保全に貢献します。

 これらインダストリー分野に係る研究開発費は、2,264百万円であります。