(1)当社グループの対処すべき課題
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
国内経済は、雇用・所得環境の改善を背景に緩やかな回復が続くことが期待される一方で、2019年10月に予定されている消費増税の影響、海外経済の不確実性、為替の変動、原材料価格の上昇の影響に留意する必要があります。
国内建設需要は、住宅着工は消費増税後の反動減により前年度比で減少すると見込まれるものの、政府による住宅取得支援策等の効果もあり、減少幅の緩和が予測されます。非住宅建設市場はほぼ横ばいで推移する見通しですが、技術労働者不足や建築資材不足による工事遅れも懸念され、先行きは不透明な状況です。
一方、アジア・オセアニア地域の経済は、緩やかな減速が続くことが予測されるものの、日本国内市場と比較すると高い成長率が期待できます。また、利益面においては、原材料価格が上昇した場合や、米ドルや円に対して新興国通貨安が進行した場合には、収益を圧迫する懸念があります。
当社グループは、このような経営環境を十分認識し、社会的な課題の解決に貢献する商品群の拡充、次世代を担う注力分野として機能材料事業の強化、アジア・オセアニア地域における接着剤やメラミン化粧板の販売強化などを推進してまいります。
また、当社グループは、コンプライアンス(法令順守)とCSR(企業の社会的責任)を重点方策に掲げ、社会から一層信頼される企業を目指し邁進してまいります。
(2)株式会社の支配に関する基本方針
1.当社の財務および事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針
当社は、当社の財務および事業の方針の決定を支配する者として、当社の企業価値ひいては株主共同の利益の確保・向上に資する者が望ましいと考えております。当社は、株式を上場して市場での自由な取引に委ねているため、会社を支配する者の在り方は、最終的には株主の皆様の全体の意思に基づき決定されるべきであり、会社の支配権の移転を伴う買付提案に応じるかどうかの判断も、最終的には株主全体の意思に基づき行われるべきものと考えます。
しかしながら、当社株式の大規模な買付行為や買付提案の中には、株主に株式の売却を事実上強要するおそれがあるもの、株主が買付の条件等について検討したり、当社の取締役会が代替案を提案するための十分な時間や情報を提供しないもの、買付者の提示した条件よりも有利な条件をもたらすために買付者との交渉を必要とするもの等、当社の企業価値および株主共同の利益を毀損するものもありえます。
このような大規模な買付行為や買付提案を行う者は、例外的に当社の財務および事業の方針の決定を支配する者として適当でないと判断します。
2.基本方針の実現に資する取り組み
<中長期的な会社の経営方針>
アイカグループは、「挑戦と創造」を社是に掲げ、「共生の理念のもと、たえざる革新により新しい価値を創造し、社会に貢献してまいります」との経営理念のもと、以下の項目を経営方針と定め経営を進めています。
[経営方針]
①化学とデザイン
化学とデザインの力で独創性のある商品をつくり、豊かな社会の実現に貢献します。
②グループシナジー
技術・素材連携やチャネル活用を追求し、グループシナジーを創出します。
③No.1
事業分野や地域におけるNo.1商品を拡充します。
④グローバル
海外における生産・販売拠点と人材の充実を図り、グローバル市場で持続的な成長を目指します。
⑤人材と組織
人材を最も重要な経営資源と捉え、相互理解と成長を通じ、活力あふれる人材・組織を形成します。
⑥コンプライアンス経営
法令や社会秩序を守り、公正で透明性の高いコンプライアンス経営を実践します。
⑦安心・安全への約束
ステークホルダーとのコミュニケーションを重視し、「信頼される品質の確保」や「環境に配慮した事業活動」を推進します。
以上の経営方針のもと、2017年4月から新たに中期4ヵ年計画をスタートさせました。連結売上高2,000億円、連結経常利益220億円、ROE10%以上、海外売上比率35%以上という目標を達成するために、①AS商品(※1)群の拡充による国内基幹事業の成長持続、②次世代を担う注力分野の育成・投資、③ジャパンテクノロジーの海外展開、に注力いたします。また、C&C活動(※2)を通じた社員一人ひとりの成長、QEOマネジメント(※3)とIT基盤刷新によるCS・ES(※4)向上、コンプライアンス遵守、を重点方針に掲げ、成長を支える経営基盤を強化し、株主・顧客などのステークホルダーから絶大の信頼を得られるよう取り組んでまいります。
※1 AS商品
AICA Solution商品の略。様々な社会課題(インフラ老朽化・高齢化・環境・安全・人手不足など)を解決する商品
※2 C&C活動
挑戦と創造(Challenge & Creation)の精神のもと、製品・サービス・仕事などの質の管理・改善を行う小集団活動。1977年から行っている
※3 QEOマネジメント
品質(Quality)・環境(Environment)・労働安全衛生(Occupation health and safety)、三位一体のマネジメントシステム
※4 CS・ES
CSは顧客満足度、ESは従業員満足度を表す
<コーポレート・ガバナンス(企業統治)の推進>
当社は「コーポレート・ガバナンス(企業統治)の強化」を通じて、グループ会社とともに企業価値および株主共同の利益の確保・向上を実現させていきたいと考えています。
①基本規程として「行動規範」を策定し、企業理念の精神を具体化した役員および社員の「行動指針」として定めています。更に、全社横断組織として「企業倫理委員会」を設置するなど企業統治に関する組織、規程を充実させ、企業の透明性、効率性、健全性を向上すべく推進しています。
②経営の体制として、業務執行と監督機能区分を明確化するため、執行役員制度を導入しております。取締役会は、経営の透明性・客観性を確保するため社外取締役を含む取締役にて構成しております。監査役会は、監査役監査の透明性、公平性を確保するため社外監査役を含む監査役にて構成しております。また、任意の諮問委員会として、社外役員を主な構成員とする「ガバナンス委員会」を設置し、企業の持続的な成長と統治機能の更なる充実を目指しています。
当社では多数の投資家の皆様に長期的に当社に投資を継続していただくため、当社の企業価値、ひいては株主共同の利益を向上させるための取り組みとして、以上のような施策を実施しております。
3.基本方針に照らして不適切な者によって当社の財務および事業の方針の決定が支配されることを防止するための取り組み
基本方針に照らして不適切な者によって当社の財務および事業の方針の決定が支配されることを防止するための取り組みとして、当社は「大規模買付ルール」を設定し、また当社の企業価値・株主共同の利益を著しく損なうような大規模買付行為への対抗措置(買収防衛策)を導入いたしました。
当社が設定する大規模買付ルールとは、①事前に大規模買付者に取締役会に対する必要かつ十分な情報の提供を求め、②取締役会による一定の評価期間が経過した後にはじめて大規模買付行為が開始される、というものです。
大規模買付者が大規模買付ルールを遵守した場合には、取締役会は、仮に当該大規模買付行為に反対であったとしても、原則として、当該買付提案についての反対意見の表明あるいは代替案の提示により株主の皆様を説得するに留め、当該大規模買付行為に対する対抗措置はとりません。大規模買付者の買付提案に応じるか否かは、株主の皆様において、当該買付提案および当社が提示する当該買付提案に対する意見、代替案等をご考慮の上、ご判断いただくことになります。
(1)大規模買付者が大規模買付ルールを遵守した場合
大規模買付ルールが遵守されている場合であっても、当該大規模買付行為が以下①~⑤のいずれかに該当し、その結果として当該大規模買付行為が会社に回復し難い損害をもたらすなど当社の企業価値・株主共同の利益を著しく損なうと当社取締役会が判断する場合には、第三者委員会の勧告を十分に尊重したうえで、例外的に当該大規模買付行為に対する対抗措置をとることがあります。
①真に当社の経営に参加する意思がないにもかかわらず、ただ株価をつり上げて高値で株式を会社関係者に引き取らせる目的の大規模買付行為(いわゆるグリーンメーラーである場合)
②当社の経営を一時的に支配して当社の事業経営上必要な知的財産権・ノウハウ・企業秘密情報・主要取引先や顧客等を当該大規模買付者やそのグループ会社等に移譲させるなど、いわゆる焦土化経営を行う目的の大規模買付行為
③当社の経営を支配した後に、当社の資産を当該大規模買付者やそのグループ会社等の債務の担保や弁済原資として流用する予定の大規模買付行為
④当社の経営を一時的に支配して当社の事業に当面関係していない不動産、有価証券など高額資産等を売却処分させ、その処分利益をもって一時的な高配当をさせるかあるいは一時的な高配当による株価の急上昇の機会を狙って株式の高値売り抜けをする目的の大規模買付行為
⑤大規模買付者の提案する当社株式の買付方法が、いわゆる強圧的二段階買収(最初の買付条件よりも二段階目の買付条件を不利に設定し、あるいは二段階目の買付条件を明確にしないで、公開買付等の株式の買付を行うことをいいます)等の、株主の判断の機会または自由を制約し、事実上、株主に当社の株式の売却を強要するおそれがある大規模買付行為
(2)大規模買付者が大規模買付ルールを遵守しない場合
大規模買付者が意向表明書を提出しない場合、大規模買付者が取締役会評価期間の経過前に大規模買付行為を開始する場合、大規模買付者が大規模買付ルールに従った十分な情報提供を行わない場合、またはその他大規模買付者が大規模買付ルールを遵守しない場合には、具体的な買付方法の如何にかかわらず、取締役会は、当社の企業価値・株主共同の利益を守ることを目的として、第三者委員会の勧告を十分に尊重した上で、当該大規模買付行為に対する対抗措置をとる場合があります。
4.上記2および3の取り組みが会社支配に関する基本方針に沿うものであり、株主共同の利益を損なうものではないこと、会社役員の地位の維持を目的とするものでないことおよびその理由
当社株式に対する大規模買付行為がなされた場合に、当該大規模買付に応じるか否かを株主の皆様がご判断し、あるいは当社取締役会が代替案を提示するために必要な情報や期間を確保し、株主の皆様のために大規模買付者と交渉を行うこと等を可能とすることにより、当社の企業価値および株主共同の利益の確保・向上を目的として、買収防衛策を導入するものであり、上記1に述べた会社支配に関する基本方針に沿うものです。
また、取締役会によって恣意的な判断がなされることを防止し、その判断の客観性および公正性を担保するための仕組みとして、第三者委員会を設置しています。
第三者委員会は、当社の業務執行を行う経営陣から独立している社外取締役、社外監査役および社外有識者の中から選任される委員3名以上により構成されます。
また、第三者委員会の判断の概要については、適時適切に株主および投資家の皆様に情報開示を行うこととし、当社の企業価値および株主共同の利益に適うように透明な運営が行われる仕組みが確保されています。
(注)当社株式の大規模買付行為に関する対応方針(買収防衛策)の非継続(廃止)について
当社は、当社の企業価値ひいては株主共同の利益の確保・向上の観点から、「当社の財務および事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針」(以下「基本方針」といいます)を定めるとともに、基本方針に照らして不適切な者による支配を防止するための取り組みとして、本プランを導入してまいりました。
また、本プランの導入以降においても、「アイカ10年ビジョン」と中期経営計画「C&C2000」の策定やその着実な実行による企業価値の向上、増配などの株主還元の充実、コーポレートガバナンスの強化に積極的に取り組んでまいりました。
さらに、経営環境の変化、買収防衛策をめぐる最近の動向、株主の皆様のご意見等を踏まえ、ガバナンス委員会や取締役会で本プランの継続の必要性を慎重に検討してまいりました。
その結果、本プランを継続する必要性が相対的に低下してきているものと判断し、2018年12月4日開催の取締役会において、本プランを継続せず、有効期間が満了する2019年6月開催の第119回定時株主総会終結の時をもって廃止することを決議いたしました。
なお、当社は、本プラン廃止後も引き続き、当社の企業価値ひいては株主共同の利益の確保・向上に取り組むとともに、当社株式の大規模買付を行おうとする者に対しては、株主の皆様が大規模買付行為の是非を適切に判断するために必要かつ十分な情報の提供を求め、あわせて取締役会の意見等を開示し、株主の皆様の検討のための時間の確保に努め、金融商品取引法、会社法その他関連法令に基づき、適切な措置を講じてまいります。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであり、事業等のリスクについてはこれらに限られるものではありません。
(1)特定の部門における建設需要及びリフォーム需要の依存度
当社製品は、最終製品ではなく部材に特化しているとともに、幅広い分野に浸透しているため、当社グループの業績は、特定の市場環境による大きな影響を受けにくくなっております。ただし、当社製品の中で売上構成比の高い建装建材部門の製品は、主に住宅、店舗、病院等の建設及びリフォームにおいて使用されております。また、化成品部門における外装・内装仕上塗材、塗り床材についても住宅建設資材として使用されております。このため、住宅の建設需要及びリフォーム需要のほか、店舗及び病院等の建設需要及びリフォーム需要が減少した場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(2)主要原材料価格の変動、主要原材料部品の調達
当社グループは、コストダウンと調達の安定性のバランスを念頭において事業を行っておりますが、原油・ナフサ価格等の高騰、中国を中心とするアジア市場の活況による原材料の需給バランスの不均衡により主要原材料価格の高騰が進んだ場合、及び供給メーカーの事情により特定原材料の調達が困難となり生産活動に支障をきたした場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(3)製品の品質、製造物責任
当社グループは、国際的な品質マネジメントシステム規格であるISO9001に従って各種製品を製造・販売しておりますが、全ての製品について欠陥が無く将来クレームが発生しないという保証はありません。また、製造物責任賠償保険に加入しておりますが、万一、製造物責任賠償保険で充分に填補できない製品の欠陥による損失が発生した場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(4)市場ニーズ、顧客ニーズの変化への対応
当社グループは、オリジナル性の高い技術開発を進め、安全・安心・健康・省エネルギーに配慮し、変動する国内外の市場ニーズや顧客ニーズにマッチした競争力のある新商品開発を推進しております。しかしながら、市場ニーズや顧客ニーズの変化に適切に対応できない場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(5)情報セキュリティ
当社グループは、事業遂行に関連し、多くの個人情報や機密情報を有しております。これら各種情報の取り扱いについては万全の体制を整えておりますが、不測の事態により情報の流出・漏洩が発生した場合には、対応に多額の費用負担が生じたり社会的信用が低下することにより、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(6)環境保全
化成品、建装建材の製造の過程で使用される原材料の中には、人の健康や生態系に影響を与える物質も含まれております。当社グループは、環境保全に係る法規制を遵守し、土壌汚染、水質汚染等の環境汚染防止に取り組んでおりますが、万一、当社グループの事業活動に起因する環境汚染が発生した場合には、対応に多額の費用負担が生じたり社会的信用が低下することにより、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(7)海外での事業展開
当社グループは、海外生産拠点の充実と資材調達のグローバル化を進め、積極的に海外での事業展開を推進しております。そのため、予期しない法令・税制・規制の変更、輸送遅延や電力停止などの社会インフラ未整備による社会混乱、政治変動、戦争テロ、天災地変など不可避のリスクが内在しており、これらのリスクが発生した場合、事業の遂行に問題が生じ、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(8)為替相場の変動
当社グループは、外貨建の取引における変動リスクに対しては先物為替予約を締結しリスクの軽減に努めておりますが、海外拠点の事業拡大に伴い外貨建収益・費用が増加してきており、為替相場の変動により外貨建収益・費用の円貨換算額が大きく増減し、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(9)大規模災害と事故
当社グループは、大規模災害や事故により重要な事業を中断させないこと、また万一、事業活動が中断した場合においても残存する能力で目標復旧時間までに重要な事業を再開させることを目的に、事業継続計画(Business Continuity Plan:BCP)を策定し緊急時の対策を講じておりますが、想定外の大規模災害や事故等が発生した場合には、事業所の機能停止、製造設備等の損壊等の被害により事業活動の継続に影響を及ぼし、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(10)法的規制
当社グループは、事業展開をする上で会社法、金融商品取引法、建築基準法、個人情報保護法のほか、税制など様々な法令・規制の適用を受けており、準拠すべき法規制は多岐にわたります。
これらの法規制に加え、コンプライアンスを順守すべく研修を通じ役職員に徹底を図っておりますが、これらの法令の改変や規制の強化により当社グループの事業活動が制限され、あるいは順守するためのコストが増加することにより、当社グループの業績に影響を与える場合があります。
(11)企業買収
当社グループは事業の拡大や収益性向上の有効な手段の一つとして企業買収を積極的に実施しております。
企業買収に当たっては、買収先企業の財務内容、契約関係等の入念な調査・検討を行いますが、当社グループ及び買収先企業を取り巻く事業環境の著しい変化等により、期待された利益やシナジー効果が得られない場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次の通りであります。
①財政状態及び経営成績の状況
<資産>
当連結会計年度末における流動資産は129,888百万円となり、前連結会計年度末に比べ311百万円減少いたしました。これは主に受取手形及び売掛金が1,049百万円、商品及び製品が1,241百万円増加したことに対し、現金及び預金が3,933百万円減少したことによるものであります。固定資産は61,136百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,709百万円増加いたしました。これは主に有形固定資産が2,485百万円増加したことによるものであります。
この結果、総資産は、191,025百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,398百万円増加いたしました。
<負債>
当連結会計年度末における流動負債は48,254百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,325百万円減少いたしました。これは主に未払法人税等が797百万円、未払消費税等が263百万円減少したことによるものであります。固定負債は6,655百万円となり、前連結会計年度末に比べ775百万円減少いたしました。これは主に長期借入金が345百万円、繰延税金負債が252百万円減少したことによるものであります。
この結果、負債合計は、54,909百万円となり、前連結会計年度末に比べ2,101百万円減少いたしました。
<純資産>
当連結会計年度末における純資産合計は136,116百万円となり、前連結会計年度末に比べ3,499百万円増加いたしました。これは主に親会社株主に帰属する当期純利益13,316百万円及び剰余金の配当6,333百万円によるものであります。
この結果、自己資本比率は66.2%(前連結会計年度末は64.7%)となりました。
<売上高>
当連結会計年度の売上高は191,363百万円となり、前連結会計年度と比べ16.9%増加いたしました。
<売上総利益>
経営資源の効率的な活用に一層の努力を続けるとともに、グループ一丸となって業務改革を推進し、生産効率の向上に努めましたが、原材料価格高騰の影響等を受け、売上総利益は49,506百万円となり、前連結会計年度と比べ4.0%増加にとどまりました。
<販売費及び一般管理費、営業利益>
販売費及び一般管理費は荷造運搬費、給与及び賞与等の増加や新規連結会社により増加しましたが、コスト削減やのれん償却額の減少などにより、150百万円増加にとどまり、28,672百万円となりました。この結果、営業利益は20,834百万円となり、前連結会計年度と比べ9.1%増加いたしました。
<営業外収益、営業外費用、経常利益>
営業外収益は147百万円減少の1,279百万円、営業外費用は55百万円減少の864百万円となりました。この結果、経常利益は21,249百万円となり、前連結会計年度と比べ8.4%増加いたしました。
<税金等調整前当期純利益、親会社株主に帰属する当期純利益>
税金等調整前当期純利益は21,310百万円となり、前連結会計年度と比べ8.7%増加いたしました。
また、親会社株主に帰属する当期純利益は13,316百万円となり、前連結会計年度と比べ11.0%増加いたしました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度に比べ、3,516百
万円減少し、45,379百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるネットキャッシュ・フローは、13,275百万円の資金増加(前連結会計年度は16,436百万円の資金増加)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益が21,310百万円(同19,600百万円)となったこと、減価償却費が4,207百万円(同3,638百万円)となったこと、仕入債務の785百万円増加(同3,587百万円)等の増加要因があったことと、たな卸資産の2,710百万円増加(同1,072百万円)、売上債権の1,742百万円増加(同3,630百万円)、その他の流動負債の1,714百万円減少(同118百万円の資金増加)及び法人税等の支払額7,037百万円(同6,547百万円)等の減少要因があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるネットキャッシュ・フローは、8,147百万円の資金減少(同7,950百万円の資金減少)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出7,019百万円(同4,088百万円)、無形固定資産の取得による支出571百万円(同225百万円)等の減少要因があったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるネットキャッシュ・フローは、7,557百万円の資金減少(同7,406百万円の資金減少)となりました。これは主に、配当金の支払6,328百万円(同5,805百万円)、非支配株主への配当金の支払822百万円(同594百万円)等の減少要因があったことによるものであります。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2018年4月1日 至 2019年3月31日) (百万円) |
前年同期比(%) |
化成品 |
93,068 |
143.8 |
建装建材 |
51,147 |
109.1 |
合計 |
144,215 |
129.2 |
(注)1 金額は売価換算値によっており、セグメント間の内部振替後の数値によっております。
2 上記金額には、消費税等は含まれておりません。
b.受注実績
当社グループは主として見込み生産を行っているため、記載すべき事項はありません。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2018年4月1日 至 2019年3月31日) (百万円) |
前年同期比(%) |
化成品 |
109,062 |
131.5 |
建装建材 |
82,300 |
101.8 |
合計 |
191,363 |
116.9 |
(注)1 セグメント間の取引については相殺消去しております。
2 上記金額には、消費税等は含まれておりません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しております。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.当連結会計年度の経営成績の分析
当連結会計年度の当社グループを取り巻く経営環境は、日本国内においては、相次ぐ自然災害の影響により一時的に足踏み状態となりましたが、堅調な企業収益や雇用・所得環境の改善を背景に緩やかな回復基調が持続しました。また、アジア・オセアニア地域の経済は、全体としては個人消費を中心とした内需に牽引され堅調に推移しましたが、中国では一部に弱い動きも見られ、底堅さは維持しているものの、通商問題の動向及び影響、過剰債務問題を含む金融市場の動向等に留意が必要な状況が続きました。
国内建設市場においては、賃貸住宅の供給過剰感から貸家の着工が一服しましたが、分譲住宅が持ち直したことにより、住宅着工はほぼ横ばいで推移しました。非住宅関連は、企業の設備投資やインバウンド効果による工場、ホテルの新築・改修需要が増加しましたが、医療福祉施設や商業施設、オフィス等は落ち込み、着工面積は減少しました。
このような経営環境の下、当社グループは、中期経営計画「C&C2000」の方針に基づき、社会課題の解決に貢献する商品群の拡充、次世代を担う注力分野の育成、アジア・オセアニア地域における接着剤やメラミン化粧板の販売強化などを推進いたしました。
この結果、当連結会計年度の業績は、売上高191,363百万円(前年同期比16.9%増)、営業利益20,834百万円(同9.1%増)、経常利益21,249百万円(同8.4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益13,316百万円(同11.0%増)となりました。
また、1株当たり当期純利益は203.95円(同20.19円増)、ROEは10.7%(同0.6ポイント増)、海外売上比率は42.0%となりました。
セグメントの業績については次のとおりであります。なお、セグメント間の内部売上は除いております。
(化成品セグメント)
接着剤系商品は、国内においては集成材用接着剤が低迷しましたが、施工用接着剤や産業用フェノール樹脂が好調に推移し、売上を伸ばすことが出来ました。海外においてはアジア・オセアニア地域における接着剤・産業用樹脂の需要を取り込むことができたことに加えて、第2四半期連結会計期間より連結業績に組み入れたタイ・ケミカル・コーポレーション社も寄与し、売上を伸ばすことができました。
建設樹脂系商品は、新築住宅向けの外装・内装仕上塗材「ジョリパット」やベランダ用防水材、土木用の補修・補強材が低迷しましたが、高耐久塗り床材「アイカピュール」を中心とした工場・倉庫向けの塗り床材や、外壁タイルの剥落防止工法である「タフレジンクリアガード工法」が好調に推移し、売上を伸ばすことができました。
非建設分野への取り組みとして注力している機能材料事業につきましては、電子材料用UV樹脂や太陽電池用ホットメルトが低迷しましたが、自動車用や衛生材用のホットメルト、化粧品用の有機微粒子などが伸長し、また第1四半期連結会計期間より連結業績に組み入れたエバモア・ケミカル・インダストリー社が寄与し、売上を伸ばすことができました。
このような結果、売上高は109,062百万円(前年同期比31.5%増)となりました。営業利益(配賦不能営業費用控除前)は、原材料価格高騰の影響をうけましたが、アイカ・アジア・パシフィック・ホールディング社ののれん償却減の効果もあり、7,444百万円(前年同期比13.9%増)となりました。
(建装建材セグメント)
メラミン化粧板は、国内においては汎用の単色化粧板が好調であったことに加えて、高い意匠性と指紋などの汚れが目立ちにくい特性をもつメラミン化粧板「セルサス」や、不燃性や耐スクラッチ性などの機能を付与した高付加価値品がホテルや商業施設の新築・改修需要を取り込み、売上を伸ばすことができました。また、海外においても、インドネシアやシンガポール、ベトナムを中心に売上を伸ばすことができました。
ボード・フィルム類は、加工品を拡充した粘着剤付化粧フィルム「オルティノ」関連商品は好調でしたが、汎用的なポリエステル化粧合板が苦戦し、前年を下回りました。
メラミン不燃化粧材「セラール」は、着工減の影響をうけた医療福祉施設向けが減少しましたが、待機児童問題から増設が進む育児施設、五輪関連で活況なスポーツ施設やホテルなどの新築・改修需要を獲得するとともに、駅や学校などのトイレでは「セラール消臭タイプ」の採用が拡大し、売上を伸ばすことができました。
不燃建材は、アクリル樹脂系塗装けい酸カルシウム板「ルナライト」がスポーツ施設やホテル、工場・倉庫、教育施設用途で伸長し、多機能建材「モイス」が住宅から育児施設、公共施設まで幅広い用途で採用されるなど、アイカテック建材株式会社とのシナジー商品を中心に売上を伸ばすことができました。
カウンター・ポストフォーム商品は、人工大理石「コーリアン」製の幼児用手洗いカウンターとそれに付随する収納キャビネットが、育児施設の新築・改修向けに好調に推移しました。また、高価格帯のキッチンカウンター向けに売上を伸ばしてきた高級人造石「フィオレストーン」がホテルなどの非住宅施設へも販路を広げ、売上を伸ばすことができました。
建具・インテリア建材は、メラミン化粧板の特性を活かした「メラフュージョンシリーズ」は好調でしたが、普及グレードの建具シリーズや医療福祉施設向け機能引戸「U.D.(ユニバーサルデザイン)コンフォートシリーズ」が低調で、売上が前年を下回りました。
このような結果、売上高は82,300百万円(前年同期比1.8%増)、営業利益(配賦不能営業費用控除前)は16,169百万円(前年同期比3.5%増)となりました。
b.当連結会計年度の資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社グループの当連結会計年度末の借入金残高は5,298百万円でありますが、営業活動によるキャッシュ・フローや現金及び現金同等物の残高を考慮すると、将来必要とされる成長資金及び有利子負債の返済に対し、当面充分な流動性を確保しております。
当社グループは中期経営計画「C&C2000」の方針に基づき、持続的成長に向けて、設備投資、M&A、人材育成、研究開発等の戦略投資を今後さらに積極的に加速させると同時に、配当については連結配当性向50%を目処に、業績に連動した株主還元を行う方針としております。
なお、当社グループのこれらの資金需要につきましては、主に営業活動によるキャッシュ・フローによって賄っております。また、事業活動を円滑に行うための資金調達に際しては、事前に充分な検討を加え、低コストで安定的な資金の確保を重視しており、今後において資金需要が発生する場合に備えております。
なお、キャッシュ・フローの状況の分析については、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
c.経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
<中期経営計画の進捗>
|
2018年3月期実績 |
2019年3月期実績 |
2020年3月期計画 |
|
2021年3月期 (当初)計画 |
売上高 |
1,637億円 |
1,913億円 |
2,000億円 |
|
2,000億円 |
経常利益 |
196億円 |
212億円 |
220億円 |
|
220億円 |
ROE |
10.1% |
10.7% |
10.6% |
|
10%以上 |
海外売上比率 |
33.4% |
42.0% |
42%以上 |
|
35%以上 |
当社グループにおける経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標としては、中期経営計画の中で、売上高、経常利益、ROE、海外売上比率を取り上げ、目標を設定しております。
当連結会計年度において、売上高1,913億円、経常利益212億円、ROE10.7%、海外売上比率42.0%となり、一部の目標については既に達成しており、他の項目についても目標達成に向け順調に推移しております。
特記事項はありません。
当社グループの研究開発活動は、主として有価証券報告書提出会社であるアイカ工業株式会社にて行っております。その内容は、以下のとおりであります。
当社は、オリジナル性の高い技術開発を進め、安全・安心・健康、省エネルギーに配慮しながら、様々な社会課題を解決するとともに、変動する国内外の市場ニーズにマッチした競争力のある新商品開発を推進しております。また、スマートフォン、有機ELディスプレイ関連材料やLED関連材料などの機能材料事業を強化し育成するとともに海外事業の拡大に注力しております。当連結会計年度の研究開発費の総額は
(1)化成品
化成品分野におきましては、「環境」「改修」「簡易作業」をキーワードに研究開発を進めております。
接着剤系商品では、環境対応型(F☆☆☆☆対応、JAIA 4VOC基準適合)酢酸ビニル樹脂エマルション系の高周波プレス用接着剤「アイカアイボンAX-623L」を開発しました。高周波適性に優れ、従来の高周波プレス用接着剤よりプレス時間の短縮が可能となり、高周波プレス機の電力削減に繋がりました。
建設樹脂系商品は、アスファルト路面の緊急補修キット「ホールメンテセット」を上市しました。キット化されており手間の掛かる計量や撹拌機が不要、また速乾性で早期に補修箇所の開放が可能となります。塗り床用途では「ピュールハードAH工法」を上市、業界初、カット目地が不要の工法で、省施工化に繋がります。今後も建築・土木分野で画期的な商品開発に努めてまいります。
電子材料商品では、有機ELディスプレイや高速光通信5G対応機器用に優れたバリア性を有する高機能紫外線硬化型接着剤・封止剤「アイカアイトロン」のラインナップを拡充し、スピーディーに市場投入してまいりました。
有機微粒子商品では、環境配慮型商品として、成長著しい粉体塗料などに代表される熱硬化型樹脂に使用される応力緩和剤「スタフィロイド」のラインナップを拡充、積極的に市場投入してまいりました。今後も国内外での販売拡大と最新市場動向にマッチする新商品開発に努めてまいります。
なお、当連結会計年度の研究開発費は
(2)建装建材
建装材分野におきましては、「意匠/デザイン」「機能」「省施工」をキーワードに、差別化を図ることができる商品の研究開発を進めております。
建装材の主力商品のメラミン化粧板では抗ウイルス機能を付与した「アイカウイルテクト」を開発しました。感染対策をより強化することができ、一般メラミン化粧板同様、耐熱性・耐薬品性に優れているため、熱湯や薬品による減菌・消毒が頻繁に行われる医療・福祉施設での使用に適しています。
市場シェアを伸ばしている粘着剤付化粧フィルム「オルティノ」に、天然の木肌のような手触りのインパクトマットとなめらかな手触りのスムースマットを追加しました。昨今、照明のLED化に伴い、光の反射を抑えたマットな化粧板がトレンドとなっており、シックで洗練された空間演出が可能となります。また、耐擦り傷仕様の「オルティノHD」も開発、擦り傷や引っかき傷に強く、美観を維持することができるため、エレベーターやトイレブースなどに適しています。
当社の有機系技術とアイカテック建材株式会社の無機系技術とのシナジーによる不燃化粧板「ルナライト・カラー」に耐金属汚れ性能を付与した「ルナライトHD」を追加投入しました。表面の汚れや金属工具類による傷付きを低減し、壁面の美観を長期的に維持できます。今後も引き続き、有機樹脂合成技術、成形技術、デザイン力に無機技術、不燃化技術を融合させた特徴のある商品の開発に努めてまいります。
住器建材分野におきましては、住宅市場以外の商品にも注力し、「加工技術」を建装材分野とも連携した研究開発を進めております。
育児施設向けとして発売した、園児向け手洗い「キッズ洗面セット」は販売が増加しており、その関連商品として、乳幼児用安全柵「ベビーゲート」、指詰め防止機能付建具「気くばりUDドア キッズ仕様」を発売し、デザインを追加いたしました。また、キッズ向けトイレブース「まなブース」は、「セーフエッジ仕様」、「塗装エッジ仕様」の2仕様を上市し、存在感のある商品体系化を図りました。
石材事業では、高級人造石「フィオレストーン」に、トレンドを意識した2柄追加投入し、更なる市場定着化を計るとともに、新たに大板セラミックタイル「ラミナム」の12ミリ品の加工品の販売を開始いたします。
住宅市場向けとしては、造作型洗面ユニット「スマートサニタリーシリーズ」の機能追加・改定を行い、コンセプトプランブックを発刊し選び易い商品としています。
今後も引き続き、素材をいかした加工技術で、特徴のある商品の開発に努めてまいります。
なお、当連結会計年度の研究開発費は