第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

国内経済は、新型コロナウイルス感染症の影響による厳しい状況が続くと見込まれ、さらに下振するリスクがあり、金融資本市場の変動などの影響を注視する必要があります。

国内建設需要は、住宅着工は政府による住宅取得支援策の効果が弱まると見込まれるため、前年度比で減少すると予測されます。非住宅建設市場は新型コロナウイルス感染症の影響による工事遅れが懸念され、先行きは不透明な状況です。

アジア・オセアニア地域の経済は、新型コロナウイルス感染症拡大により経済活動が抑制されており、前年の成長率を下回ると予想されます。また、利益面においては、新興国通貨に対して円高が進行した場合には、収益を圧迫する懸念があります。

当社グループは、このような環境の下、収益確保のため経費節減に努めるとともにセグメント毎に次世代分野へ展開する育成商品の強化に取り組んでまいります。また、海外グループ会社を含めたシナジーの促進とガバナンス体制を構築し経営基盤の強化に努めてまいります。

 

2【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであり、事業等のリスクについてはこれらに限られるものではありません。

 

(1)経済状況の変動

 当社グループの製品に対する需要は、その販売を行っている国または地域の経済状況の影響を受けるため、世界の市場における景気後退及びこれに伴う需要の減少は、当社グループの事業活動、財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

 このような状況に対処するため、統計資料、外部の第三者機関等を通じて経済状況をモニターするとともに、各国、地域における個々のリスクが顕在化する兆候を早期に把握するよう努めております。

 

(2)特定の部門における建設需要及びリフォーム需要の依存度

 当社製品は、最終製品ではなく部材に特化しているとともに、幅広い分野に浸透しているため、当社グループの業績は、特定の市場環境による大きな影響を受けにくくなっております。ただし、当社製品の中で売上構成比の高い建装建材部門の製品は、主に住宅、店舗、病院等の建設及びリフォームにおいて使用されております。また、化成品部門における外装・内装仕上塗材、塗り床材についても住宅建設資材として使用されております。このため、住宅の建設需要及びリフォーム需要のほか、店舗及び病院等の建設需要及びリフォーム需要が減少した場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 このような状況に対処するため、建装建材部門では既存商品の競争力を維持しつつ、壁部位を軸に空間をトータル提案できる商品を育成することで新しい市場、新しい用途を開拓し、建設需要及びリフォーム需要に左右されない体質へと転換していきます。

 また、非建築分野向け事業である機能材料事業への経営資源の投入に注力しております。機能材料事業では、好調な伸びが見込まれる自動車・エレクトロニクスの海外市場をターゲットにPURホットメルト・UV・シリコーンといった育成商品を投入して飛躍的成長を目指しております。

 

(3)主要原材料価格の変動、主要原材料部品の調達

 当社グループは、コストダウンと調達の安定性のバランスを念頭において事業を行っておりますが、原油・ナフサ価格等の高騰、中国を中心とするアジア市場の活況による原材料の需給バランスの不均衡により主要原材料価格の高騰が進んだ場合及び供給メーカーの事情により特定原材料の調達が困難となり生産活動に支障をきたした場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 このような状況に対処するため、複数購買の実施、取引先とのコミュニケーション等を図り、安定的な供給体制の構築に努めております。

 

 

(4)製品の品質、製造物責任

 当社グループは、国際的な品質マネジメントシステム規格であるISO9001に従って各種製品を製造・販売しておりますが、全ての製品について欠陥が無く将来クレームが発生しないという保証はありません。また、製造物責任賠償保険に加入しておりますが、万一、製造物責任賠償保険で充分に填補できない製品の欠陥による損失が発生した場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 このような状況に対処するため、開発・設計段階における社内試験を充実するとともに、必要に応じて外部の第三者機関による試験を行い製品の品質を維持し、欠陥の発生を最小限にする取り組みを進めております。

 

(5)市場ニーズ、顧客ニーズの変化への対応

 当社グループは、オリジナル性の高い技術開発を進め、安全・安心・健康・省エネルギーに配慮し、変動する国内外の市場ニーズや顧客ニーズにマッチした競争力のある新商品開発を推進しております。また、事業戦略である次世代要素技術の蓄積・創出のため、産官学連携を活性化するとともにM&A・提携による技術の共有化と活用、技術営業人材育成による組織としての技術開発力の強化を進め、大型新商品開発力の強化を推進しております。

 

(6)情報セキュリティ

 当社グループは、事業遂行に関連し、多くの個人情報や機密情報を有しております。これら各種情報の取り扱いについては万全の体制を整えておりますが、悪意のある第三者によるサイバー攻撃、ウイルスによる処理機器の事故等により情報の流出・漏洩が発生した場合には、対応に多額の費用負担が生じ、あるいは社会的信用が低下することにより、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 このような状況に対処するため、情報管理規程による社内ルールの徹底、情報セキュリティーの強化、監視システム・ファイアウォールの強化等により情報漏洩対策に努めております。

 

(7)環境保全

 化成品、建装建材各部門の製品を製造する過程で使用される原材料の中には、人の健康や生態系に影響を与える物質も含まれております。当社グループは、環境保全に係る法規制を遵守し、土壌汚染、水質汚染等の環境汚染防止に取り組んでおりますが、万一、当社グループの事業活動に起因する環境汚染が発生した場合には、対応に多額の費用負担が生じ、あるいは社会的信用が低下することにより、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 このような状況に対処するため、ISO14001を基に環境マネジメントシステムを構築し、環境負荷の低減、法規制に対応すべく取り組んでおります。

 

(8)海外での事業展開

 当社グループは、海外市場の開拓と生産・調達のグローバル化を進めるために、積極的に海外での事業拠点の充実を推進しております。そのため、進出国において予期しない法令・税制・規制の変更、社会混乱、政治変動、戦争テロ、天災地変、労務問題など不可避のリスクが内在しており、これらのリスクが発生した場合、海外事業の遂行に問題が生じ、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 これらの状況に対処するために、海外統括会社を通じた現地ガバナンスの強化、ローカル経営人材やローカルパートナーの活用をしております。

 

(9)為替相場の変動

 当社グループは、外貨建の取引における変動リスクについて、海外拠点の事業拡大に伴い外貨建収益・費用が増加してきており、為替相場の変動により外貨建収益・費用の円貨換算額が大きく増減し、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 特に、円高が進み海外グループ会社所在の各国通貨安が進んだ場合には、円貨換算額が目減りし当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 このような状況に対処するため、先物為替予約を締結しリスクを軽減し、単一の通貨による変動影響を可能な限り減らすため、ポートフォリオの最適化に努めております。

 

(10)大規模災害と事故

 当社グループは、大規模災害や事故、感染症の流行等により重要な事業を中断させないこと、また万一、事業活動が中断した場合においても残存する能力で目標復旧時間までに重要な事業を再開させることを目的に、事業継続計画(Business Continuity Plan:BCP)を策定し緊急時の対策を講じておりますが、想定外の大規模災害や事故、感染症の流行等が発生した場合には、事業所の機能停止、製造設備等の損壊、原材料調達の遅延等の被害により事業活動の継続に影響を及ぼし、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 このような状況に対処するため、危機管理規程の運用、BCPの策定により、緊急時への対応を即座に行えるよう準備するとともに、複数購買や生産拠点の複数化、大規模地震に備えた耐震工事、水害に備えた浸水対策工事等を行い出来るだけ影響が少なくなる様に努めております。

 

(注)新型コロナウイルス感染症に関するリスク

新型コロナウイルス感染症に対して、当社では、社長を本部長とする新型コロナウイルス感染症対策本部を設置し、感染症拡大地域における在宅勤務の推進、出張制限、毎日の検温・手洗い・手指消毒の励行、一部海外赴任者の一時帰国、工場見学や販売促進企画等の多くのお客様にお集まりいただくイベントの休止や制限、マスクのグループ会社間の融通等、従業員やお客様の安全と健康を最優先に考えた様々な施策を実行するとともに、BCPにしたがい原材料の安定調達や製品の安定供給体制の維持に努め、新型コロナウイルス感染症の影響の極小化を図っています。

一方で、新型コロナウイルス感染症が拡大した2020年2月以降、抗ウイルス建材「ウイルテクト」シリーズへの引合いが増加しています。この抗ウイルス性能を様々な商品に付与しそのラインナップを拡充することで、新たな生活様式に対応した抗ウイルス建材のニーズを取り込んでまいります。

しかしながら、新型コロナウイルス感染症によって変化した国内外の経済環境から、当社グループの業績も影響を受け、一時的に悪化することを予測しております。2020年は新型コロナウイルス感染症の影響による市況悪化から徐々に回復し、年明けの2021年1月より、その影響からほぼ回復するとの前提で業績見通しの策定をしております。なお、主要な海外グループ会社は決算期が12月のため、2021年1月からの業績は2022年3月期連結決算に3ヶ月ずれで計上されます。

実際の業績は、新型コロナウイルス感染症拡大の収束時期、海外および国内の景気動向、為替動向など様々な要因により大きく変動する可能性があります。今後、今期の業績見通しに関し、開示すべき重要な事象等が生じた場合には速やかに公表いたします。

 

(11)法的規制

 当社グループは、事業展開をする上で各国の法律や税制、許認可など様々な法令・規制の適用を受けており、準拠すべき法規制は多岐にわたります。

 これらの法規制に加えコンプライアンスを順守すべく研修を通じ役職員に徹底を図っておりますが、これらの法令の改変や規制の強化により当社グループの事業活動が制限され、あるいは順守するためのコストが増加することにより、当社グループの業績に影響を与える場合があります。

 また、不正及び誤謬により不適切な会計処理が行われ、誤りを含んだ財務諸表を開示してしまう可能性があります。

 このような状況に対処するため、グループ内研修の実施、第三者機関等による情報収集等を実施し、規制の変更の予兆を早期に捉え対策を行うよう努めております。

 

(12)企業買収

 当社グループは、事業の拡大や収益性向上の有効な手段の一つとして企業買収を積極的に実施しており、企業買収に当たっては買収先企業の財務内容、契約関係等の入念な調査、検討を行った上で決定しています。

 しかしながら、企業買収の実施後に当社グループが認識していない問題が明らかになった場合や、買収先企業を取り巻く事業環境の著しい変化等により期待された利益やシナジー効果が得られない場合には、発生したのれんについて減損損失が計上され、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 このような状況に対処するため、海外統括会社を中心に各企業の業績の報告、分析等の情報の共有化を図り、シナジーの最大化や問題点の早期対処に努めております。

 

(13)納期管理

 当社グループは、販売先からの受注に対して定められた契約に基づいて納品するように対応しております。

 しかしながら、競業企業の生産能力の変化などの影響を受け、供給能力を超えた受注を抱え納期遅延等が発生し、対応に多額の費用負担が生じ、あるいは信用が低下することにより当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 このような状況に対処するため、販売部門、生産部門、物流部門において情報の共有化を図り、納期遅延等が発生しないよう努めております。

 

(14)気候変動

 気候変動にともない、(1)予想を超えるような台風や洪水、猛暑などの気象災害が発生した場合には、事業所の機能停止、製造設備の損壊等の被害により事業活動の継続に影響を及ぼす可能性があります。また、平均気温の上昇、降雨量の変化による水資源への影響などが徐々に進行した場合、当社グループがおかれる事業環境が変化し、運用コストの増加につながる可能性があります。

 一方で、(2)低炭素社会への移行の状況により、ステークホルダーからGHG削減製品の要請が増大し、研究開発費の増大、新規技術導入での設備投資額の増加、原材料価格の上昇が引き起こされる可能性も想定されます。気候変動の緩和に向けた規制が強化され、それに適切に対処できなかった場合、操業規制をうけ、新たな税負担や、再生可能エネルギーへのシフトに伴う費用、生産設備の高効率化に伴う設備投資額の増加等につながる可能性もあります。

 このような変化に対処するため、上記(1)の気候変動に伴い物理的に発生するリスクに対しては、経営企画担当取締役と安全環境担当取締役が主管する「BCP委員会」により、分析・モニタリング・予防対策の推進・取締役会への報告を行っております。また、上記(2)の低炭素社会移行に伴うリスクに対しては、安全環境・生産・技術・営業など関係部署で構成される「気候変動問題対応プロジェクト」が具体的対応策の検討と推進を担い、取締役会直下の「CSR委員会」が進捗のモニタリング・情報開示・事業計画への組み込みを行うことにより、中長期的視点で本リスクへの対策を拡充・推進しております。

 

 

 

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次の通りであります。

①財政状態及び経営成績の状況

<資産>

当連結会計年度末における流動資産は129,148百万円となり、前連結会計年度末に比べ739百万円減少いたしました。これは主に受取手形及び売掛金が1,381百万円、流動資産のその他が1,840百万円増加したことに対し、現金及び預金が4,897百万円減少したことによるものであります。固定資産は74,477百万円となり、前連結会計年度末に比べ13,341百万円増加いたしました。これは主に有形固定資産が8,528百万円、無形固定資産が7,032百万円増加したことによるものであります。

この結果、総資産は、203,626百万円となり、前連結会計年度末に比べ12,601百万円増加いたしました。

 

<負債>

当連結会計年度末における流動負債は51,568百万円となり、前連結会計年度末に比べ3,314百万円増加いたしました。これは主に短期借入金が1,391百万円、流動負債のその他が2,698百万円増加したことに対し、支払手形及び買掛金が1,532百万円減少したことによるものであります。固定負債は7,643百万円となり、前連結会計年度末に比べ988百万円増加いたしました。これは主に長期借入金が482百万円、退職給付に係る負債が179百万円増加したことによるものであります。

この結果、負債合計は、59,212百万円となり、前連結会計年度末に比べ4,302百万円増加いたしました。

 

<純資産>

当連結会計年度末における純資産合計は144,414百万円となり、前連結会計年度末に比べ8,298百万円増加いたしました。これは主に親会社株主に帰属する当期純利益12,732百万円及び剰余金の配当6,855百万円によるものであります。

この結果、自己資本比率は63.9%(前連結会計年度末は66.2%)となりました。

 

<売上高>

当連結会計年度の売上高は191,501百万円となり、前連結会計年度と比べ0.1%増加いたしました。

 

<売上総利益>

経営資源の効率的な活用に一層の努力を続けるとともに、グループ一丸となって業務改革を推進し、生産効率の向上に努めました。この結果、売上総利益は51,936百万円となり、前連結会計年度と比べ4.9%増加いたしました。

 

<販売費及び一般管理費、営業利益>

販売費及び一般管理費は荷造運搬費、給与及び賞与等の増加や新規連結会社により増加したことなどにより、2,413百万円増加し、31,085百万円となりました。この結果、営業利益は20,850百万円となり、前連結会計年度と比べ0.1%増加にとどまりました。

 

<営業外収益、営業外費用、経常利益>

営業外収益は166百万円増加の1,446百万円、営業外費用は99百万円増加の963百万円となりました。この結果、経常利益は21,333百万円となり、前連結会計年度と比べ0.4%増加いたしました。

 

<税金等調整前当期純利益、親会社株主に帰属する当期純利益>

税金等調整前当期純利益は21,355百万円となり、前連結会計年度と比べ0.2%増加いたしました。

しかしながら、法人税、住民税及び事業税が433百万円増加の7,047百万円となったことから、親会社株主に帰属する当期純利益は12,732百万円となり、前連結会計年度と比べ4.4%減少いたしました。

 

②キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度に比べ、4,735百万円減少し、40,644百万円となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるネットキャッシュ・フローは、18,240百万円の資金増加(前連結会計年度は13,275百万円の資金増加)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益が21,355百万円(同21,310百万円)となったこと、減価償却費が4,664百万円(同4,207百万円)となったこと等の増加要因があったことと、仕入債務の3,669百万円の減少(同785百万円の資金増加)及び法人税等の支払額6,167百万円(同7,037百万円)等の減少要因があったことによるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるネットキャッシュ・フローは、16,798百万円の資金減少(同8,147百万円の資金減少)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出5,863百万円(同7,019百万円)、無形固定資産の取得による支出2,304百万円(同571百万円)、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出7,033百万円等の減少要因があったことによるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるネットキャッシュ・フローは、6,210百万円の資金減少(同7,557百万円の資金減少)となりました。これは主に、配当金の支払6,850百万円(同6,328百万円)、非支配株主への配当金の支払879百万円(同822百万円)等の減少要因があったことによるものであります。

 

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2019年4月1日

至 2020年3月31日)

(百万円)

前年同期比(%)

化成品

89,970

96.7

建装建材

52,750

103.1

合計

142,721

99.0

(注)1 金額は売価換算値によっており、セグメント間の内部振替後の数値によっております。

2 上記金額には、消費税等は含まれておりません。

 

b.受注実績

  当社グループは主として見込み生産を行っているため、記載すべき事項はありません。

 

c.販売実績

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2019年4月1日

至 2020年3月31日)

(百万円)

前年同期比(%)

化成品

103,945

95.3

建装建材

87,555

106.4

合計

191,501

100.1

(注)1 セグメント間の取引については相殺消去しております。

2 上記金額には、消費税等は含まれておりません。

 

 

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

 

①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社グループにおける経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標としては、中期経営計画の中で、売上高、経常利益、ROE、海外売上比率を取り上げ、目標を設定しております。

当連結会計年度の実績は以下のとおりであります。

 

 

2018年3月期

実績

2019年3月期

実績

2020年3月期

実績

2021年3月期

予想

 

2021年3月期

(当初)計画

売上高

1,637億円

1,913億円

1,915億円

1,745億円

 

2,000億円

経常利益

196億円

212億円

213億円

147億円

 

220億円

ROE

10.1%

10.7%

9.9%

6.9%

 

10%以上

海外売上比率

33.4%

42.0%

40.7%

40%以上

 

35%以上

 

当連結会計年度の当社グループを取り巻く経営環境は、日本国内においては、雇用・所得環境の改善等を背景に前半は緩やかな回復基調で推移したものの、相次ぐ自然災害の発生や2019年10月の消費増税による消費者マインドの落ち込み、その後発生した新型コロナウイルス感染症の影響により景気の減速傾向が鮮明になりました。また、アジア・オセアニア地域の経済についても、個人消費を中心とした堅調な内需を牽引役に安定した拡大を続けていましたが、新型コロナウイルス感染症の急速な拡大により先行きの不透明感が高まりました。

国内建設市場は低調に推移しました。相続税の節税対策により貸家の着工が減少したことに加えて、2019年10月の消費増税の影響により持家や分譲住宅の着工にも落ち込みがみられ、住宅着工全体が減少しました。非住宅関連は、景気の先行き不透明感から企業の設備投資にやや減速傾向が見られ、人手不足や消費増税対応を背景として店舗・飲食サービス業の新規出店数も減少したことから前年を下回りました。

このような経営環境の下、当社グループは、中期経営計画「C&C2000」の方針に基づき、社会課題の解決に貢献する商品群の拡充、次世代を担う注力分野の育成、アジア・オセアニア地域における接着剤やメラミン化粧板の販売強化などを推進いたしました。

このような結果、当連結会計年度の業績は、売上高191,501百万円(前年同期比0.1%増)、営業利益20,850百万円(同0.1%増)、経常利益21,333百万円(同0.4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益12,732百万円(同4.4%減)となりました。

また、1株当たり当期純利益は195.01円(同8.94円減)、ROEは9.9%(同0.8ポイント減)、海外売上比率は40.7%(同1.3ポイント減)となりました。

なお、財政状態につきましては「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態および経営成績の状況」に記載のとおりであります。

新型コロナウイルス感染症の影響は2021年3月期においても続くと予想され、中期経営計画で掲げた2021年3月期の当初計画には届かない見込みであります。しかしながら、日本の緊急事態宣言の解除ならびにアジア・オセアニア各国における経済活動再開等の動きが見え始めたことから、2020年は新型コロナウイルス感染症の影響による市況悪化から徐々に回復し、年明けの2021年1月より、その影響からほぼ回復すると見込んでおります。

 

セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容については次のとおりであります。なお、セグメント間の内部売上は除いております。

 

(化成品セグメント)

接着剤系商品は、国内においては、集成材用接着剤、産業用フェノール樹脂が低迷しましたが、施工用接着剤や合板用接着剤が好調に推移し、売上を伸ばすことが出来ました。一方、海外においては、環境規制の強化が追い風となった中国や新規連結を組み入れたタイで販売量を伸ばしたものの、原材料価格低下に伴う売価の低下により売上が減少しました。

建設樹脂系商品は、外装・内装仕上塗材「ジョリパット」が前年を上回ったものの、工場・倉庫向けの塗り床材や橋梁・土木用の補修・補強材が低迷し、前年を下回りました。

非建設分野への取り組みとして注力している機能材料事業につきましては、国内会社においては、電子材料用UV樹脂やシリコーン製品が好調に推移しましたが、塗料・繊維用途のアクリル・コンパウンド製品や工業用途の有機微粒子が低迷し、前年を下回りました。前年より連結業績に組み入れたエバモア・ケミカル・インダストリー社については、低採算取引の見直しや原材料価格低下による売価の低下により売上は前年を下回りましたが、利益率の高いビジネスに注力することで利益は大幅に増加しました。

このような結果、売上高は103,945百万円(前年同期比4.7%減)、営業利益(配賦不能営業費用控除前)は8,123百万円(同9.1%増)となりました。

 

建装建材セグメント)

メラミン化粧板は、国内においては非住宅建設着工面積の減少の影響から売上が前年を下回りましたが、海外においては、インドやインドネシアでの販売量が増え、売上を伸ばすことができました。また、第2四半期連結会計期間より連結業績に組み入れた中国の化粧板商社ソイス社が寄与し、全体としては売上を伸ばすことができました。

ボード・フィルム類は、汎用的なポリエステル化粧合板が苦戦し、前年を下回りました。

メラミン不燃化粧材「セラール」は、住宅のキッチンパネル用途、教育施設、医療福祉施設、店舗、オフィス、公共施設等での需要を順調に獲得するとともに、「セラール消臭タイプ」や抗ウイルス建材「セラールウイルテクトタイプ」の採用が拡大したことから前年を上回りました。

不燃建材は、アイカテック建材株式会社とのシナジーにより、アクリル樹脂系塗装けい酸カルシウム板「ルナライト」や押出成形セメント板「メース」がスポーツ施設や教育施設、工場・倉庫、ホテル、商業施設の需要を取り込み、売上を伸ばすことができました。

カウンター・ポストフォーム商品は、旺盛な保育施設の新築・改修需要を取り込んだ人工大理石「コーリアン」製の幼児用手洗いカウンターや、キッチンや洗面カウンターでの需要を取り込んだ高級人造石「フィオレストーン」が好調で、売上を伸ばすことができました。

建具・インテリア建材は、医療福祉施設向け機能建具「U.D.(ユニバーサルデザイン)コンフォートシリーズ」が好調に推移しましたが、市場環境の厳しさから住宅向けの建具シリーズが低迷し、前年を下回りました。

このような結果、売上高は87,555百万円(前年同期比6.4%増)、営業利益(配賦不能営業費用控除前)は15,874百万円(前年同期比1.8%減)となりました。

 

キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当社グループの当連結会計年度末の借入金残高は7,194百万円でありますが、営業活動によるキャッシュ・フローや現金及び現金同等物の残高を考慮すると、将来必要とされる成長資金及び有利子負債の返済に対し、当面充分な流動性を確保しております。

当社グループは中期経営計画「C&C2000」の方針に基づき、持続的成長に向けて、設備投資、M&A、人材育成、研究開発等の戦略投資を今後さらに積極的に加速させると同時に、配当については連結配当性向50%を目処に、業績に連動した株主還元を行う方針としております。

なお、当社グループのこれらの資金需要につきましては、主に営業活動によるキャッシュ・フローによって賄っております。また、事業活動を円滑に行うための資金調達に際しては、事前に充分な検討を加え、低コストで安定的な資金の確保を重視しており、今後において資金需要が発生する場合に備えております。

なお、キャッシュ・フローの状況の分析については、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

 

③重要な会計上の見積りについて

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。連結財務諸表の作成にあたり、会計上の見積りが必要となる事項につきましては、過去の実績や他の合理的な方法により見積りを行っておりますが、見積り特有の不確実性が存在するため、実際の結果はこれら見積りと異なる場合があります。

なお、新型コロナウイルス感染症の影響に伴う会計上の見積りについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (追加情報)」に記載のとおりであります。

当社グループの会計方針のうち、見積り等の重要性の高いものは以下のとおりであります。

 

・のれんの減損

減損の兆候を判断するにあたっては、損益実績及び将来利益計画を用いております。

のれんの減損の兆候がある場合、減損損失を認識するかどうかの判定は、資産グループにのれんを加えた、より大きな単位で行っております。

事業環境の悪化により収益性が当初の想定を下回る場合や保有資産の市場価額等が下落する場合には、回収可能価額が低下し損失が発生する可能性があります。

 

 

4【経営上の重要な契約等】

 特記事項はありません。

 

5【研究開発活動】

当社グループの研究開発活動は、主として有価証券報告書提出会社であるアイカ工業株式会社にて行っております。その内容は、以下のとおりであります。

当社は、オリジナル性の高い技術開発を進め、安全・安心・健康、省エネルギーに配慮しながら、国内外アイカグループの持続的成長に向け、様々な社会課題を解決する製品群の拡充による国内建設分野の成長持続、非建設分野向けの機能材料事業の飛躍的成長や海外事業の展開加速に向けた研究開発活動を推進しています。

当連結会計年度の研究開発費の総額は3,454百万円であり、主な研究開発の概要とその成果は、次のとおりであります。

 

(1)化成品

化成品分野におきましては、「環境」「高機能」「省力化」をキーワードに研究開発を進めております。

接着剤系商品では、高性能(F☆☆☆☆対応、JAIA 4VOC基準適合)水性高分子イソシアネート系接着剤「アイカアイボンAU-8520(W)」を開発しました。針葉樹の接着適正に優れており、低温でも短時間プレス接着が可能、生産性の向上に繋がりました。またメラミンタイル用水性アクリル樹脂系接着剤「RA-11」を開発、水性でもウレタン樹脂系並みの接着強度を有しており、作業効率、品質安定性に優れます。

建設樹脂系商品では、透明かつ高耐候性で強靭なウレアウレタン樹脂を開発し、コンリート片のはく落防止機能を有しながら、コンクリート構造物自体のひび割れ等の異常を近接目視で確認することを可能とする工法「クリアタフレジンクイック1500」を開発しました。また、コンクリートの緊急補修キット「ホールメンテセット コンクリートタイプ」を上市しました。キット化されており手間の掛かる計量や撹拌機が不要、また速乾性で早期に補修箇所が解放可能となります。

断熱材用商品では、硬化性、強度、断熱特性に優れ、ホルムアルデヒドキャッチャー剤を使用させずにF☆☆☆☆を達成したグラスウールバインダー用のフェノール樹脂を開発しました。製品色も従来品同様で、トータルコストに優れた製品です。

自動車用商品では、エンジン部分の吸音材グラスウールのバインダーに使用されるフェノール樹脂の遊離ホルムアルデヒド量を3%→0.5%に減らし、製造工程中のホルムアルデヒド臭気が格段に減り、作業環境に優れた製品を開発しました。また、製品の吸音特性、強度、耐久性も優れております。

電子材料商品では、フォルダブル有機ELディスプレイ向けやスマホ筐体向けなど、高硬度と耐摩耗性を両立した高機能ハードコート剤、高い防水性を有するポッティング材、水蒸気バリア性や段差追従性を有する高耐久性粘接着剤など、紫外線硬化型樹脂「アイカアイトロン」のラインナップを拡充し、スピーディーに市場投入してまいりました。また、同樹脂技術を応用し、硬度と耐薬品性、高成形性を両立した3次元加飾用熱成形フィルム「ルミアートHCシリーズ」を上市しました。従来の水圧転写工法やスプレー塗装工法の代替が可能となり、自動車内装加飾部での使用に適しています。

有機微粒子商品では、環境配慮型商品として、生分解性ポリマーを応用した新規微粒子を化粧品用添加剤として開発し、化粧品メーカー各社へのサンプル供給を開始致しました。

今後も国内外での販売拡大と市場動向にマッチする新商品開発に努めてまいります。

なお、当連結会計年度の研究開発費は2,619百万円であります。

 

(2)建装建材

建装建材分野におきましては、「意匠/デザイン」「機能」「省施工」「加工技術」をキーワードに研究開発を進めております。

メラミン化粧板「アイカウイルテクト」の抗ウイルス技術を不燃メラミン化粧板「セラール」に展開し、「セラールウイルテクト」を開発しました。ハードユースに耐える硬度と強度、耐熱性、耐久性、耐薬品性、不燃性などの「セラール」の特徴をそのままに抗ウイルス性能を付与しております。また、メラミン化粧板「アイカウイルテクト」についてはトイレブースやメラミンポストフォームカウンターへの加工技術を開発し、スピーディに市場に投入してまいりました。「ウイルテクト」シリーズは、医療・介護施設や育児・教育施設に加え、駅や商業施設、飲食店、オフィスなど不特定多数の方が使用する空間や、トイレや洗面所などの清潔感の維持に適しております。

メラミン化粧板については、堅牢さを活かした新たなフロア材の「メラミンタイル」を開発し、床市場への進出も進めました。化成品事業で培ったアクリル樹脂技術を応用し、メラミン化粧板特有の伸び縮みを抑制することで商品化に成功しました。製品表面は、汚れが付きにくく拭き取りやすいため、清掃作業の負担を軽減し、ワックスがけも不要なため施設運営者の費用削減に寄与します。特に、靴のすり跡(ヒールマーク)に強く、汚れが付着した場合も水拭きで簡単に除去できます。さらに、セラミックタイルと比べ重量が約1/3と軽く、カットや貼り付けなどの施工性にも優れており、建築業界における慢性的な施工職人不足問題の解消にも寄与します。

カウンター・ポストフォーム分野については、住宅市場以外の商品にも注力し、上記の「アイカウイルテクト」加工品など化成品分野とも連携した研究開発を進めております。トイレ空間向けの商品として、①洗面カウンター、②洗面下パネル(配管隠しのメラミン化粧部材)、③施工部材をセットにした公共向けトイレ洗面キット「ラバトリーフィット」を開発しました。洗面カウンターの間口サイズに合わせて納品されるため、設計や発注の簡略化や施工時間の短縮に寄与します。また、トイレブースやライニングカウンター、壁面材などのアイカ製品との空間コーディネートも可能です。

ストーン事業では、高級人造石「フィオレストーン」に、世界的なトレンドを意識したマット(低艶)品を開発し、市場投入することで、より選ばれ易く、高級感のあるラインナップとしております。また、2019年3月に発売を開始した磁器質大板セラミックタイル「ラミナム」については加工技術の継続した開発を行い、受注対応できる範囲の拡大を進めました。

今後も引き続き、さまざまな社会課題の解決に寄与できる特徴のある商品の開発に努めてまいります。

なお、当連結会計年度の研究開発費は835百万円であります。