第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

国内経済は、新型コロナウイルス感染症の影響による景気の後退から持ち直しの動きも見られましたが、感染の再拡大により再び経済活動が一部制限されるなど、先行き不透明な状況が続いており、金融資本市場の変動などの影響を注視する必要があります。

国内建設需要は、雇用・所得環境に対する先行き懸念もあり、住宅着工全体は減少しましたが、下半期において持家に回復の動きが見られました。非住宅関連では、景気の先行き不透明感から、店舗、工場、ホテル、医療・福祉施設などの着工面積が減少し、先行きは不透明な状況です。

アジア・オセアニア地域の経済は、新型コロナウイルス感染症の影響から持ち直した中国やベトナムは緩やかな回復基調で推移したものの、インドネシアやタイでは依然として厳しい状況が継続しています。また、利益面においては、新興国通貨に対して円高が進行した場合には、収益を圧迫する懸念があります。

当社グループは、このような環境の下、収益確保のため経費節減に努めるとともにセグメント毎に次世代分野へ展開する育成商品の強化に取り組んでまいります。また、海外グループ会社を含めたシナジーの促進とガバナンス体制を構築し経営基盤の強化に努めてまいります。

 

2【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであり、事業等のリスクについてはこれらに限られるものではありません。

 

(1)経済状況の変動

 当社グループの製品に対する需要は、その販売を行っている国または地域の経済状況の影響を受けるため、世界の市場における景気後退及びこれに伴う需要の減少は、当社グループの事業活動、財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

 このような状況に対処するため、統計資料、外部の第三者機関等を通じて経済状況をモニターするとともに、各国、地域における個々のリスクが顕在化する兆候を早期に把握するよう努めております。

 

(2)特定の部門における建設需要及びリフォーム需要の依存度

 当社製品は、最終製品ではなく部材に特化しているとともに、幅広い分野に浸透しているため、当社グループの業績は、特定の市場環境による大きな影響を受けにくくなっております。ただし、当社製品の中で売上構成比の高い建装建材部門の製品は、主に住宅、店舗、病院等の建設及びリフォームにおいて使用されております。また、化成品部門における外装・内装仕上塗材、塗り床材についても住宅建設資材として使用されております。このため、住宅の建設需要及びリフォーム需要のほか、店舗及び病院等の建設需要及びリフォーム需要が減少した場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 このような状況に対処するため、建装建材部門では既存商品の競争力を維持しつつ、壁部位を軸に空間をトータル提案できる商品を育成することで新しい市場、新しい用途を開拓し、建設需要及びリフォーム需要に左右されない体質へと転換していきます。

 また、非建築分野向け事業である機能材料事業への経営資源の投入に注力しております。機能材料事業では、好調な伸びが見込まれる自動車・エレクトロニクスの海外市場をターゲットにPURホットメルト・UV・シリコーンといった育成商品を投入して飛躍的成長を目指しております。

 

(3)主要原材料価格の変動、主要原材料部品の調達

 当社グループは、コストダウンと調達の安定性のバランスを念頭において事業を行っておりますが、原油・ナフサ価格等の高騰、中国を中心とするアジア市場の活況による原材料の需給バランスの不均衡により主要原材料価格の高騰が進んだ場合及び供給メーカーの事情により特定原材料の調達が困難となり生産活動に支障をきたした場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 このような状況に対処するため、複数購買の実施、取引先とのコミュニケーション等を図り、安定的な供給体制の構築に努めております。

 

 

(4)製品の品質、製造物責任

 当社グループは、国際的な品質マネジメントシステム規格であるISO9001に従って各種製品を製造・販売しておりますが、全ての製品について欠陥が無く将来クレームが発生しないという保証はありません。また、製造物責任賠償保険に加入しておりますが、万一、製造物責任賠償保険で充分に填補できない製品の欠陥による損失が発生した場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 このような状況に対処するため、開発・設計段階における社内試験を充実するとともに、必要に応じて外部の第三者機関による試験を行い製品の品質を維持し、欠陥の発生を最小限にする取り組みを進めております。

 

(5)市場ニーズ、顧客ニーズの変化への対応

 当社グループは、オリジナル性の高い技術開発を進め、安全・安心・健康・省エネルギーに配慮し、変動する国内外の市場ニーズや顧客ニーズにマッチした競争力のある新商品開発を推進しております。また、事業戦略である次世代要素技術の蓄積・創出のため、産官学連携を活性化するとともにM&A・提携による技術の共有化と活用、技術営業人材育成による組織としての技術開発力の強化を進め、大型新商品開発力の強化を推進しております。

 

(6)情報セキュリティ

 当社グループは、事業遂行に関連し、多くの個人情報や機密情報を有しております。これら各種情報の取り扱いについては万全の体制を整えておりますが、悪意のある第三者によるサイバー攻撃、ウイルスによる処理機器の事故等により情報の流出・漏洩が発生した場合には、対応に多額の費用負担が生じ、あるいは社会的信用が低下することにより、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 このような状況に対処するため、情報管理規程による社内ルールの徹底、情報セキュリティーの強化、監視システム・ファイアウォールの強化等により情報漏洩対策に努めております。

 

(7)環境保全

 化成品、建装建材各部門の製品を製造する過程で使用される原材料の中には、人の健康や生態系に影響を与える物質も含まれております。当社グループは、環境保全に係る法規制を遵守し、土壌汚染、水質汚染等の環境汚染防止に取り組んでおりますが、万一、当社グループの事業活動に起因する環境汚染が発生した場合には、対応に多額の費用負担が生じ、あるいは社会的信用が低下することにより、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 このような状況に対処するため、ISO14001を基に環境マネジメントシステムを構築し、環境負荷の低減、法規制に対応すべく取り組んでおります。

 

(8)海外での事業展開

 当社グループは、海外市場の開拓と生産・調達のグローバル化を進めるために、積極的に海外での事業拠点の充実を推進しております。そのため、進出国において予期しない法令・税制・規制の変更、社会混乱、政治変動、戦争テロ、天災地変、労務問題など不可避のリスクが内在しており、これらのリスクが発生した場合、海外事業の遂行に問題が生じ、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 これらの状況に対処するために、海外統括会社を通じた現地ガバナンスの強化、ローカル経営人材やローカルパートナーの活用をしております。

 

(9)為替相場の変動

 当社グループは、外貨建の取引における変動リスクについて、海外拠点の事業拡大に伴い外貨建収益・費用が増加してきており、為替相場の変動により外貨建収益・費用の円貨換算額が大きく増減し、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 特に、円高が進み海外グループ会社所在の各国通貨安が進んだ場合には、円貨換算額が目減りし当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 このような状況に対処するため、先物為替予約を締結しリスクを軽減し、単一の通貨による変動影響を可能な限り減らすため、ポートフォリオの最適化に努めております。

 

(10)大規模災害と事故

 当社グループは、大規模災害や事故、感染症の流行等により重要な事業を中断させないこと、また万一、事業活動が中断した場合においても残存する能力で目標復旧時間までに重要な事業を再開させることを目的に、事業継続計画(Business Continuity Plan:BCP)を策定し緊急時の対策を講じておりますが、想定外の大規模災害や事故、感染症の流行等が発生した場合には、事業所の機能停止、製造設備等の損壊、原材料調達の遅延等の被害により事業活動の継続に影響を及ぼし、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 このような状況に対処するため、危機管理規程の運用、BCPの策定により、緊急時への対応を即座に行えるよう準備するとともに、複数購買や生産拠点の複数化、大規模地震に備えた耐震工事、水害に備えた浸水対策工事等を行い出来るだけ影響が少なくなる様に努めております。

 

注)新型コロナウイルス感染症に関するリスク

新型コロナウイルス感染症に対して、当社では、感染症拡大地域における在宅勤務の推進、出張制限、毎日の検温・手洗い・手指消毒の励行、一部海外赴任者の一時帰国、工場見学や販売促進企画等の多くのお客様にお集まりいただくイベントの休止や制限、マスクのグループ会社間の融通等、従業員やお客様の安全と健康を最優先に考えた様々な施策を実行するとともに、BCPにしたがい原材料の安定調達や製品の安定供給体制の維持に努め、新型コロナウイルス感染症の影響の極小化を図っています。

一方で、新型コロナウイルス感染症が拡大した2020年2月以降、抗ウイルス建材「ウイルテクト」シリーズへの引合いが増加しています。この抗ウイルス性能を様々な商品に付与しそのラインナップを拡充することで、新たな生活様式に対応した抗ウイルス建材のニーズを取り込んでまいります。

当社においては、2021年1月より新型コロナウイルス感染症の影響からは徐々に回復しているとの認識をしておりますが、変異型ウイルスの流行や海外各国においては未だロックダウン等の措置が取られている状況に柔軟な対応を今後も迫られることを認識しており、その場合、実際の業績は、新型コロナウイルス感染症拡大の収束時期、海外および国内の景気動向、為替動向など様々な要因により大きく変動する可能性があります。今後、今期の業績見通しに関し、開示すべき重要な事象等が生じた場合には速やかに公表いたします。

 

(11)法的規制

 当社グループは、事業展開をする上で各国の法律や税制、許認可など様々な法令・規制の適用を受けており、準拠すべき法規制は多岐にわたります。

 これらの法規制に加えコンプライアンスを順守すべく研修を通じ役職員に徹底を図っておりますが、これらの法令の改変や規制の強化により当社グループの事業活動が制限され、あるいは順守するためのコストが増加することにより、当社グループの業績に影響を与える場合があります。

 また、不正及び誤謬により不適切な会計処理が行われ、誤りを含んだ財務諸表を開示してしまう可能性があります。

 このような状況に対処するため、グループ内研修の実施、第三者機関等による情報収集等を実施し、規制の変更の予兆を早期に捉え対策を行うよう努めております。

 

(12)企業買収

 当社グループは、事業の拡大や収益性向上の有効な手段の一つとして企業買収を積極的に実施しており、企業買収に当たっては買収先企業の財務内容、契約関係等の入念な調査、検討を行った上で決定しています。

 しかしながら、企業買収の実施後に当社グループが認識していない問題が明らかになった場合や、買収先企業を取り巻く事業環境の著しい変化等により期待された利益やシナジー効果が得られない場合には、発生したのれんについて減損損失が計上され、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 このような状況に対処するため、海外統括会社を中心に各企業の業績の報告、分析等の情報の共有化を図り、シナジーの最大化や問題点の早期対処に努めております。

 

(13)納期管理

 当社グループは、販売先からの受注に対して定められた契約に基づいて納品するように対応しております。

 しかしながら、競業企業の生産能力の変化などの影響を受け、供給能力を超えた受注を抱え納期遅延等が発生し、対応に多額の費用負担が生じ、あるいは信用が低下することにより当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 このような状況に対処するため、販売部門、生産部門、物流部門において情報の共有化を図り、納期遅延等が発生しないよう努めております。

 

(14)気候変動

 気候変動にともない、(1)予想を超えるような台風や洪水、猛暑などの気象災害が発生した場合には、事業所の機能停止、製造設備の損壊等の被害により事業活動の継続に影響を及ぼす可能性があります。また、平均気温の上昇、降雨量の変化による水資源への影響などが徐々に進行した場合、当社グループがおかれる事業環境が変化し、運用コストの増加につながる可能性があります。

 一方で、(2)低炭素社会への移行の状況により、ステークホルダーからGHG削減製品の要請が増大し、研究開発費の増大、新規技術導入での設備投資額の増加、原材料価格の上昇が引き起こされる可能性も想定されます。気候変動の緩和に向けた規制が強化され、それに適切に対処できなかった場合、操業規制をうけ、新たな税負担や、再生可能エネルギーへのシフトに伴う費用、生産設備の高効率化に伴う設備投資額の増加等につながる可能性もあります。

 このような変化に対処するため、上記(1)の気候変動に伴い物理的に発生するリスクに対しては、「BCP委員会」により、分析・モニタリング・予防対策の推進・取締役会への報告を行っております。また、上記(2)の低炭素社会移行に伴うリスクに対しては、安全環境・生産・技術・営業など関係部署で構成される「気候変動問題対応プロジェクト」が具体的対応策の検討と推進を担い、取締役会直下の「サステナビリティ推進委員会」が進捗のモニタリング・情報開示・事業計画への組み込みを行うことにより、中長期的視点で本リスクへの対策を拡充・推進しております。

 

 

 

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

①財政状態及び経営成績の状況

<資産>

当連結会計年度末における流動資産は126,468百万円となり、前連結会計年度末に比べ2,679百万円減少いたしました。これは主に現金及び預金が1,730百万円、流動資産のその他が579百万円増加したことに対し、受取手形及び売掛金が3,799百万円減少したことによるものであります。固定資産は80,894百万円となり、前連結会計年度末に比べ3,603百万円増加いたしました。これは主に投資有価証券が3,108百万円増加したことによるものであります。

この結果、総資産は、207,363百万円となり、前連結会計年度末に比べ924百万円増加いたしました。

 

<負債>

当連結会計年度末における流動負債は47,524百万円となり、前連結会計年度末に比べ4,044百万円減少いたしました。これは主に支払手形及び買掛金が1,330百万円、流動負債のその他が2,638百万円減少したことによるものであります。固定負債は9,333百万円となり、前連結会計年度末に比べ684百万円増加いたしました。

この結果、負債合計は、56,858百万円となり、前連結会計年度末に比べ3,360百万円減少いたしました。

 

<純資産>

当連結会計年度末における純資産合計は150,505百万円となり、前連結会計年度末に比べ4,284百万円増加いたしました。これは主に親会社株主に帰属する当期純利益10,759百万円及び剰余金の配当6,921百万円によるものであります。

この結果、自己資本比率は65.0%(前連結会計年度末は63.1%)となりました。

 

<売上高>

当連結会計年度の売上高は174,628百万円となり、前連結会計年度と比べ8.8%減少いたしました。

 

<売上総利益>

経営資源の効率的な活用に一層の努力を続けるとともに、グループ一丸となって業務改革を推進し、生産効率の向上に努めましたが、新型コロナウイルス感染症による売上減の影響により売上総利益は49,532百万円となり、前連結会計年度と比べ4.6%減少いたしました。

 

<販売費及び一般管理費、営業利益>

販売費及び一般管理費は、売上減少に伴う物流費の減少等があったものの、新規連結会社により増加したことなどにより、455百万円増加し、31,541百万円となりました。この結果、営業利益は17,991百万円となり、前連結会計年度と比べ13.7%減少いたしました。

 

<営業外収益、営業外費用、経常利益>

営業外収益は578百万円増加の2,024百万円、営業外費用は613百万円増加の1,576百万円となりました。この結果、経常利益は18,438百万円となり、前連結会計年度と比べ13.6%減少いたしました。

 

<税金等調整前当期純利益、親会社株主に帰属する当期純利益>

税金等調整前当期純利益は18,159百万円となり、前連結会計年度と比べ15.0%減少いたしました。

また、法人税、住民税及び事業税が579百万円減少の6,467百万円となったことから、親会社株主に帰属する当期純利益は10,759百万円となり、前連結会計年度と比べ15.5%減少いたしました。

 

②キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度に比べ、541百万円増加し、41,185百万円となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるネットキャッシュ・フローは、19,713百万円の資金増加(前連結会計年度は18,240百万円の資金増加)となりました。これは主に、減価償却費が5,773百万円(同4,664百万円)となったこと、売上債権の3,857百万円の減少(同178百万円)等の増加要因があったことに対し、法人税等の支払額6,577百万円(同6,167百万円)等の減少要因があったことによるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるネットキャッシュ・フローは、9,756百万円の資金減少(同16,798百万円の資金減少)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出5,560百万円(同5,863百万円)、無形固定資産の取得による支出1,306百万円(同2,304百万円)、投資有価証券の取得による支出1,492百万円(同612百万円)等の減少要因があったことによるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるネットキャッシュ・フローは、9,179百万円の資金減少(同6,210百万円の資金減少)となりました。これは主に、配当金の支払6,921百万円(同6,850百万円)、非支配株主への配当金の支払1,067百万円(同879百万円)、連結の範囲の変更を伴わない子会社株式の取得による支出1,253百万円(同264百万円)等の減少要因があったことによるものであります。

 

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2020年4月1日

至 2021年3月31日)

(百万円)

前年同期比(%)

化成品

74,165

82.4

建装建材

52,213

99.0

合計

126,379

88.5

(注)1 金額は売価換算値によっており、セグメント間の内部振替後の数値によっております。

2 上記金額には、消費税等は含まれておりません。

 

b.受注実績

  当社グループは主として見込み生産を行っているため、記載すべき事項はありません。

 

c.販売実績

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2020年4月1日

至 2021年3月31日)

(百万円)

前年同期比(%)

化成品

90,446

87.0

建装建材

84,182

96.1

合計

174,628

91.2

(注)1 セグメント間の取引については相殺消去しております。

2 上記金額には、消費税等は含まれておりません。

 

 

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

 

①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社グループにおける経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標としては、中期経営計画の中で、売上高、経常利益、ROE、海外売上比率を取り上げ、目標を設定しております。

当連結会計年度の実績及び中期経営計画は以下のとおりであります。

 

 

2018年3月期

実績

2019年3月期

実績

2020年3月期

実績

2021年3月期

実績

 

 

 

 

2024年3月期

中期経営計画

売上高

1,637億円

1,913億円

1,915億円

1,746億円

 

 

2,400億円

経常利益

196億円

212億円

213億円

184億円

 

 

240億円

ROE

10.1%

10.7%

9.9%

8.1%

 

 

10.0%

海外売上比率

33.4%

42.0%

40.7%

42.7%

 

 

47.9%

 

連結会計年度の当社グループを取り巻く経営環境は、日本国内においては、新型コロナウイルス感染症の影響による景気の後退から持ち直しの動きも見られましたが、感染の再拡大により再び経済活動が一部制限されるなど、先行き不透明な状況が続いております。また、アジア・オセアニア地域の経済につきましては、新型コロナウイルス感染症の影響から持ち直した中国やベトナムは緩やかな回復基調で推移したものの、インドネシアやタイでは依然として厳しい状況が継続しています。

国内建設市場は、雇用・所得環境に対する先行き懸念もあり、住宅着工全体は減少しましたが、下半期において持家に回復の動きが見られました。非住宅関連では、景気の先行き不透明感から、店舗、工場、ホテル、医療・福祉施設などの着工面積が減少し、全体としても前年を下回りました。

このような経営環境の下、当社グループは、中期経営計画「C&C2000」の方針に基づき、社会課題の解決に貢献する商品群の拡充、次世代を担う注力分野の育成、アジア・オセアニア地域における接着剤やメラミン化粧板の販売強化などを推進いたしました。また、グループ一丸となって業務改革を推進し、生産効率の向上、各種コスト削減などに努め、下半期においては利益改善効果が現れました。

この結果、当連結会計年度の業績は、売上高174,628百万円(前年同期比8.8%減)、営業利益17,991百万円(同13.7%減)、経常利益18,438百万円(同13.6%減)、親会社株主に帰属する当期純利益10,759百万円(同15.5%減)となりました。

また、1株当たり当期純利益は164.79円(同30.22円減)、ROEは8.1%(同1.8ポイント減)、海外売上比率は42.7%(同2.0ポイント増)となりました。

なお、財政状態につきましては「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態および経営成績の状況」に記載のとおりであります。

 

セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容については次のとおりであります。なお、セグメント間の内部売上は除いております。

 

(化成品セグメント)

接着剤系商品は、国内においては、木工・家具向け汎用接着剤、施工用接着剤、集成材用接着剤などが低調で売上が前年を下回りました。海外においては、中国やベトナムなどでは新型コロナウイルスの影響から持ち直しましたが、インドネシアでは影響が長期化しており、売上が減少しました。

建設樹脂系商品は、外装・内装仕上塗材「ジョリパット」が前年を上回り、橋梁・土木用の補修・補強材が好調に推移したものの、工場・倉庫向けの塗り床材が低迷し、売上が減少しました。

非建設分野への取り組みとして注力している機能材料事業につきましては、国内会社においては、電子機器関連用途のUV樹脂は前年を上回りましたが、自動車用ホットメルトや紙・粘着剤・繊維用途のアクリル・コンパウンド製品、化粧品用の有機微粒子が低迷し、前年を下回りました。エバモア・ケミカル・インダストリー社につきましては、主力製品のシューズおよびスポーツウエア向けのウレタン樹脂や家具等の塗料向け架橋剤が低迷し、前年を下回りました。

このような結果、売上高は90,446百万円(前年同期比13.0%減)、営業利益(配賦不能営業費用控除前)は7,109百万円(前年同期比12.5%減)となりました。

 

建装建材セグメント)

メラミン化粧板は、国内においては、抗ウイルスメラミン化粧板「アイカウイルテクト」が好調でしたが、大都市圏を中心とした店舗需要の低迷などが影響し、前年を下回りました。海外においては、インドやインドネシアで売上が低迷しましたが、当連結会計年度より連結業績に組み入れたウィルソナート各社やアイカHPLトレーディング社が寄与し伸長しました。全体としても売上を伸ばすことができました。

ボード・フィルム類は、汎用的なポリエステル化粧合板が低迷し、前年を下回りました。

メラミン不燃化粧板「セラール」は、教育施設での需要を順調に獲得するとともに、抗ウイルスメラミン不燃化粧板「セラールウイルテクト」が売上を大幅に伸ばしましたが、首都圏需要低迷の影響を受けて、全体としては売上が前年を下回りました。

不燃建材は、多機能建材「モイス」が耐力面材用途の好調により、アクリル樹脂系塗装けい酸カルシウム板「ルナライト」が医療・福祉施設や教育施設の好調により、それぞれ伸長しましたが、押出成型セメント板「メース」が低迷し、前年を下回りました。

カウンター・ポストフォーム商品は、学校や公共施設向けで好調なポストフォームカウンターや天然石の代替品としてキッチン・洗面カウンター需要を獲得した高級人造石「フィオレストーン」が伸長しましたが、戸建て住宅や集合住宅向けのキッチン対面カウンター「バリューエッジカウンター」が低調で、全体として売上が前年を下回りました。

建具・インテリア建材は、住宅向けの洗面化粧台「スマートサニタリー」が好調で売上を伸ばしましたが、住宅向けの建具が低調で、前年を下回りました。

このような結果、売上高は84,182百万円(前年同期比3.9%減)、営業利益(配賦不能営業費用控除前)は13,751百万円(前年同期比13.4%減)となりました。

 

キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当社グループの当連結会計年度末の借入金残高は7,671百万円でありますが、営業活動によるキャッシュ・フローや現金及び現金同等物の残高を考慮すると、将来必要とされる成長資金及び有利子負債の返済に対し、当面充分な流動性を確保しております。

当社グループは新中期経営計画「Change&Grow2400」の方針に基づき、持続的成長に向けて、設備投資、M&A、人材育成、研究開発等の戦略投資を今後さらに積極的に加速させると同時に、配当については連結配当性向50%を目処に、安定的な株主還元を行う方針としております。

なお、当社グループのこれらの資金需要につきましては、主に営業活動によるキャッシュ・フローによって賄っております。また、事業活動を円滑に行うための資金調達に際しては、事前に充分な検討を加え、低コストで安定的な資金の確保を重視しており、今後において資金需要が発生する場合に備えております。

なお、キャッシュ・フローの状況の分析については、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。連結財務諸表の作成にあたり用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

・のれん及び無形固定資産(顧客関連資産)の減損

 減損の兆候を判断するにあたっては、損益実績及び将来利益計画を用いております。

 のれんの減損の兆候がある場合、減損損失を認識するかどうかの判定は、資産グループにのれんを加えた、より大きな単位で行っております。

 事業環境の悪化により収益性が当初の想定を下回る場合や保有資産の市場価額等が下落する場合には、回収可能価額が低下し損失が発生する可能性があります。

 

 

4【経営上の重要な契約等】

 特記事項はありません。

 

5【研究開発活動】

当社グループの研究開発活動は、主として有価証券報告書提出会社であるアイカ工業株式会社にて行っております。その内容は、以下のとおりであります。

当社は、オリジナル性の高い技術開発を進め、安全・安心・健康、省エネルギーに配慮しながら、国内外アイカグループの持続的成長に向け、様々な社会課題を解決する製品群の拡充による国内建設分野の成長持続、非建設分野向けの機能材料事業の飛躍的成長や海外事業の展開加速に向けた研究開発活動を推進しています。

当連結会計年度の研究開発費の総額は3,327百万円であり、主な研究開発の概要とその成果は、次のとおりであります。

 

(1)化成品

化成品分野におきましては、「環境」「高機能」「省力化」をキーワードに研究開発を進めております。

接着剤系商品では、ウレタンフォーム用(F☆☆☆☆対応、JAIA 4VOC基準適合)ゴム系ラテックス接着剤「アイカアイボンRAX-53KM」を開発しました。従来品よりも初期強度に優れ、短時間で接着が可能です。また皮膜が柔らかくウレタンフォーム用接着剤として風合いに優れます。

建設樹脂系商品では、耐熱水性等の従来の耐久性を有しながら、紫外線による変色を抑えた高耐候性水性硬質ウレタン樹脂系塗り床材「アイカピュール ピュール耐熱AH工法」を発売しました。耐候性の向上に加え、従来の工法では剥離防止のため必要不可欠であったカット目地の処理を不要としており、施工効率の向上と工期短縮に寄与します。また、工場や倉庫などコンクリート構造物の誘発目地に充填する目地シール材「ジョリエース目地シールドU」を市場投入しました。ポリウレア樹脂製の速硬化タイプで、早期解放が可能で工期短縮が図れます。専用カートリッジガンを用いることで攪拌(混合)が不要となり、ユーザーの利便性が向上します。

砥石用のバインダーとして硬化時にガスが発生しないベンゾオキサジン樹脂(BOZ樹脂)を開発しました。従来は硬化剤のヘキサミンを用いたフェノール樹脂が使用されており、硬化時にアンモニアガスが発生します。BOZ樹脂はヘキサミンを使用せずに硬化します。硬化性が遅い欠点を改良し従来フェノール樹脂と同等な硬化性が得られ、作業環境、研削性能、耐久性に優れております。

電子材料商品では、フォルダブル有機ELディスプレイ向けで繰り返しの屈曲耐久性と高硬度・耐摩耗性を両立した高機能ハードコート剤、各種ガスや水蒸気バリア性に優れたコート剤、段差追従性と耐久性を両立した光学用透明粘接着剤など、紫外線硬化型樹脂「アイカアイトロン」のラインナップを拡充し、スピーディーに市場投入してまいりました。また、同樹脂技術を応用し、抗ウイルス性能を付与したハードコートフィルム「ルミアート抗菌・抗ウイルスフィルム」を上市しました。透明性が高く傷つきにも強いクリアタイプ、蛍光灯などの映り込みを防止するマット調の防眩タイプ、フェイスシールドに最適な防曇タイプとラインナップを拡充、貼り付けた表面を容易に抗ウイルス仕様にできることから、スマートフォン、デジタルサイネージなどの各種タッチパネル・ディスプレイなど、幅広い分野でご採用頂いております。

自動車分野向けには、解体性や低VOC化など機能を付与したホットメルト接着剤「アイカメルト」のラインナップを拡充、ヘッドランプやフィルター向けへの展開を進めています。

有機微粒子商品では、熱硬化型樹脂向け応力緩和剤「スタフィロイド」のラインナップを拡充、電子材料関連のエポキシ樹脂向けや、環境配慮型商品となる粉体塗料向けに、新商品のワークを開始しました。

今後も国内外での販売拡大と市場動向にマッチする新商品開発に努めてまいります。

なお、当連結会計年度の研究開発費は2,456百万円であります。

 

(2)建装建材

建装建材分野におきましては、「意匠/デザイン」「高機能」「省施工」「加工技術」をキーワードに研究開発を進めております。

高機能では、抗ウイルス剤練込メラミン化粧板「ウイルテクト」のラインナップの拡充を進めてまいりました。化粧板では、簡易施工性可能な粘着剤付メラミンシート「メラタック」に抗ウイルス性能を付与した粘着剤付抗ウイルスメラミンシート「メラタックウイルテクト」を開発しました。カッターやハサミでカット・加工することができ、粘着剤付きのため接着剤を塗布することなく簡単に貼り付けることができます。改修の短工期化にも寄与し、ウイルス・細菌対策が急務となっている店舗や教育施設での改修に貢献します。また、高機能な加工品の開発にも注力し、住宅分野では、「ウイルテクト」を使用することで玄関周りへの設置に特化したスリムな洗面化粧台「スマートサニタリーエントランスタイプ」を開発しました。withコロナ時代の家づくりでは、ウイルスの侵入を玄関で食い止めるべく、玄関に洗面台を設置したいというニーズに対応します。また、老人ホームや保育園・幼稚園向けの建具「気くばりUDドアウイルテクト」やトイレブース「メラフロントブースウイルテクト」など非住宅向けの製品のラインナップの拡充も進めました。

高意匠では、表面に施した独自開発のグロス&マット加工により、柄と艶を同調させることで素材の奥行き感を表現したメラミン不燃化粧板「セラールセレント」を開発しました。メラミン不燃化粧板「アイカセラール」特有の優れた物性、施工性はそのままに、ダイナミックな流れ模様の大理石柄、アンティークな風合いを表現した錆柄、繊細な導管表現が美しい木目柄など、従来のセラールとは一線を画す高意匠性が特徴です。ホテル、オフィス、商業施設、マンションエントランスの壁面など、ラグジュアリーな空間演出が求められる部位へのさらなる用途拡大を図ります。

また、ストーン事業では、高級人造石「フィオレストーン」に世界的なトレンドを意識した大胆な石目模様を有した新柄を開発し、市場投入することで、より選ばれ易く、高級感のあるラインナップとしております。また、人工大理石のラバトリーボウルに海外のホテルや住宅で人気のベッセルデザインを新たに開発しました。立体的で存在感のあるデザインでホテルライクなイメージの提案が可能です。

今後も引き続き、さまざまな社会課題の解決に寄与できる特徴のある商品の開発に努めてまいります

なお、当連結会計年度の研究開発費は871百万円であります。