文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
国内経済は、新型コロナウイルス感染症の影響から回復し、経済社会活動が正常化に向かう中で、景気が持ち直していくことが期待されます。ただし、ウクライナ情勢等による不透明感がみられる中で、原材料価格やエネルギーコストの上昇及び金融市場の変動等による下振れリスクに留意する必要があります。
国内建設需要は、住宅着工は需要回復の勢いが一服し、前年同期比で微減と予測されます。非住宅建設市場は引き続き堅調に推移する見通しですが、原油高やサプライチェーンの混乱等の影響が懸念され、先行きは不透明な状況です。
アジア・オセアニア地域の経済は、感染抑制に伴う活動制限の緩和等により持ち直しを維持し、日本国内市場と比較すると高い成長率が期待できますが、ウクライナ情勢や中国等における感染再拡大等、しばらくは不透明な状況が続くと予想されます。なお、利益面においては、原材料価格が上昇した場合や過度な為替変動が生じた場合には、利益を圧迫する懸念があります。
当社グループは、このような経営環境の下、引き続き中期経営計画「Change & Grow2400」の方針に基づき、非建設分野向け事業及び海外事業の強化、社会課題の解決に貢献する製品群の拡充、利益基盤及び経営基盤の強化等を推進してまいります。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであり、事業等のリスクについてはこれらに限られるものではありません。
(1)世界経済の変動に関するリスク
当社グループは、グローバルに事業を展開しており、連結ベースでの海外売上高比率は約5割に達しております。また、生産・調達のグローバル化も進んでおります。そのため、事業活動を行っている、または原材料を調達している各国、各地域において、景気、物価等の経済状況の変動や、予期しない法令・税制・規制の変更、天変地異や労務問題、戦争、政変、テロ、経済摩擦等の地政学リスクに伴う需要の減少や事業活動の停止等が生じ、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
このような状況に対処するため、外部の第三者機関等を通じて経済状況、各国の政治状況等をモニタリングするとともに、本社と各海外統括会社が連携、支援し、各国、各地域のリスク関連情報や各国法規制動向の把握及び分析を行い、各国、各地域における個々のリスクが顕在化する兆候を早期に把握するよう努めております。また、海外統括会社を通じた現地ガバナンスの強化、ローカル経営人材やローカルパートナーの活用をしております。
(2)市場ニーズ・顧客ニーズの変化に関するリスク
当社グループが事業展開を行う、化成品、建装建材の各セグメントや各国、各地域においては、多数の競合会社が存在しております。また、市場ニーズ及び顧客ニーズが多様化しており、求められる製品は常に変化し続けています。この競争の激化やニーズの変化への対応の遅れにより、販売シェアの低下や販売価格の低下、滞留在庫の増加等が生じ、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
このような状況に対処するため、オリジナル性の高い技術開発を進め、安全・安心・健康・省エネルギー・環境等に配慮し、市場ニーズや顧客ニーズにマッチした競争力のある新製品の開発を推進しております。また、依存市場の分散化を図るべく、コア技術の応用やM&A等を活用して、他用途への展開、他地域への進出等に注力しております。更に、次世代要素技術の蓄積・創出のために産官学連携を活性化するとともに、M&A・提携による技術の共有化と活用、ステークホルダーとの関係強化による技術・営業人材の育成、組織としての技術開発力の強化を通じて、大型新製品開発を推進しております。
(3)特定の部門における建設需要への依存度に関するリスク
当社製品は、最終製品ではなく部材に特化しているとともに、幅広い分野に浸透しているため、当社グループの業績は、特定の市場環境による大きな影響を受けにくくなっております。ただし、当社製品の中で売上構成比の高い建装建材部門の製品は、主に日本国内の住宅、店舗、公共施設等の建設及び改修において使用されております。また、化成品部門における外装・内装仕上塗材、塗り床材についても国内の建設資材として使用されております。このため、日本国内の住宅、店舗、公共施設等の建設需要及び改修需要が減少した場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
このような状況に対処するため、建装建材部門では既存製品の競争力を維持しつつ、主力である木工・家具にとどまらず、壁・床・天井など空間をトータル提案できる製品を育成することで新しい市場、新しい用途を開拓し、持続的な成長を目指しています。また、非建築分野向け事業である機能材料事業への経営資源の投入に注力し、建設需要及びリフォーム・改修需要に左右されない体質へと転換していきます。機能材料事業では、好調な伸びが見込まれる自動車・エレクトロニクス・日用品の市場をターゲットに、ホットメルト・UV樹脂・ウレタン樹脂・高機能フィルムといった育成製品を投入して飛躍的成長を目指しております。
(4)企業買収等の資本提携に関するリスク
当社グループは、事業の拡大や収益性向上の有効な手段の一つとして企業買収等の資本提携を積極的に実施しております。企業買収等の資本提携の実施後に当社グループが認識していない問題が明らかになった場合や、買収先企業や提携先企業を取り巻く事業環境が著しく変化し期待された利益やシナジー効果が得られなかった場合には、発生したのれんについて減損損失が計上される可能性があります。その結果、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
このような状況に対処するため、買収対象企業や提携先企業に対する入念な調査や価値評価、取締役会での十分な審議、契約の締結等を実施しております。また、外部の専門家を適宜起用するとともに、案件執行能力を備えた社内の人材育成にも努めております。投資後は、各企業の業績等を分析し、情報の共有化を図り、シナジーの最大化や問題点の早期対処に努めております。
(5)主要原材料の価格変動、供給不足に関するリスク
当社グループは、コストダウンと調達の安定性のバランスを念頭において事業を行っておりますが、原油・ナフサ価格等の高騰、世界情勢の変化による原材料の需給バランスの不均衡等により主要原材料価格や燃料価格の高騰が進んだ場合、及び供給メーカーの方針転換やプラントトラブル、被災等により特定原材料の調達が困難となり生産活動に支障をきたした場合には、当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。
このような状況に対処するため、複数購買の実施、取引先とのコミュニケーション、グループ間の連携等を図り、安定的な供給体制の構築に努めております。
(6)製品の品質、製造物責任に関するリスク
当社グループは、国際的な品質マネジメントシステム規格であるISO9001に従って各種製品を製造・出荷しておりますが、全ての製品について欠陥が無く将来クレームが発生しないという保証はありません。また、製造物責任賠償保険に加入しておりますが、万一、製造物責任賠償保険で充分に填補できない製品の欠陥による損失が発生した場合には、当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。
このような状況に対処するため、開発・設計段階における社内試験を充実することに加え、必要に応じて外部の第三者機関による試験を行い、製品の品質を維持し、欠陥の発生を最小限にするとともに、不具合のある製品の流出防止策を講じております。
(7)設備の改廃、用地の制限に関するリスク
当社グループの事業運営においては、多種多様な工場用地・機械・設備・ユーティリティを使用しております。突然の設備故障により生産停止等が発生した場合、また、借地使用の延長契約が進まない事態になった場合、生産量の減少や修繕コスト・移転コストの増加等で、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
このような状況に対処するため、日頃から設備メンテナンスに注力し、不意の故障を予防し、借地に関する交渉窓口との円滑なコミニュケーションを図り、また、必要な投資を行い、生産活動に支障をきたすことのないよう取り組んでおります。
(8)知的財産の流出、他社権利の侵害に関するリスク
当社グループが保有する知的財産が外部へ流出した場合や不正に利用された場合、または見解の相違等により意図せず他社の知的財産を侵害したと判断された場合、当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。
このような状況に対処するため、知的財産の情報管理を徹底するとともに、当社技術の適切な特許登録を実施し、流出や不正利用防止を図っています。また、製品開発においては事前の調査を徹底し、他社の特許を侵害しないよう対策を講じております。
(9)物流網の能力不足、物流費の高騰に関するリスク
日本国内においては、ドライバーの労働環境の改善や労働人口の減少に伴う人手不足の深刻化により物流需給がひっ迫しています。また、世界においても、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を契機とした人々のライフスタイルの変容による物流量の増加、コンテナ不足、エッセンシャルワーカーのストライキ、予期しない法令・税制・規制の変更、天変地異、事故、経済摩擦等により物流網が混乱するケースが頻発しています。このような背景から、当社グループの原材料や製品の輸送手段が不足する、あるいは物流コストが大幅に上昇するなどし、当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。
このような状況に対処するため、国内においては、協力企業の拡充、ITシステムの活用、物流拠点の拡充等を行い、輸送業務の最適化を図っております。また、代理店システムが構築されており、市中在庫が各代理店に分散して存在し、リスク分散機能を担っています。海外においては、グループ各社での情報共有、原材料の確保協力等を行っております。効率的な輸送方法と在庫の最適化を追求し物流コストを抑制するとともに、多様な輸送手段を確保し製品供給責任を果たしてまいります。
(10)納期管理に関するリスク
当社グループは、販売先からの受注に対して定められた契約に基づいて納品するように対応しております。しかしながら、競業企業の生産能力の変化等の影響を受け、供給能力を超えた受注を抱え、納期遅延等が発生した場合には、対応に多額の費用負担が生じる、あるいは社会的信用が低下することにより、当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。
このような状況に対処するため、販売部門、生産部門、物流部門において適切な生産管理と情報の共有化を図り、納期遅延等が発生しないよう努めております。
(11)取引先の信用に関するリスク
当社グループは国内外の様々な企業と取引をしております。取引先の財政状態の悪化や経営破綻、後継者問題による廃業等が発生した場合、予期せぬ貸し倒れ損失の発生、販売機会の損失等が生じ、当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。
このような状況に対処するため、信用リスクに応じた取引限度額の設定、担保や保証の取り付け、引当金の設定等の対策を実施しております。また、取引条件は定期的な信用調査を基にリスクを勘案して設定するよう努めております。更に、当社グループの売上は国内外多数の顧客に分散しておりますが、更なる分散化を図るべく、コア技術の応用やM&A等を活用して、他用途への展開、他地域への進出等に注力しております。
(12)財務・税務に関するリスク
当社グループは、事業展開を行っている各国の税法に準拠し適正な納税を行っておりますが、税務申告における税務当局との見解の相違等により、追加での税負担が生じる可能性があります。また、グループ会社間の取引価格に関しては、各国の移転価格税制や関税法の観点から適切な取引価格となるように注意を払っておりますが、税務当局または税関当局との見解の相違等により、取引価格が不適切であるとの指摘を受け追加の税負担が生じる可能性があります。これらの税務上の指摘が発生した場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
このような状況に対処するため、外部専門家の助言による移転価格文書の整備を行い、各拠点と情報交換し各国の税制改正の情報を事前に把握し影響を見極め、問題の発生を回避することに努めております。
(13)為替相場の変動に関するリスク
当社グループが行っている製品の販売及び投資活動等のうち、外国通貨建ての取引については、外国為替の変動による影響を受けることがあります。こうした外国為替のリスクを一定程度まで低減するよう為替予約等によるヘッジ策を講じておりますが、必ずしも完全に回避できるものではありません。また、当社は海外に多くのグループ会社が存在しており、各社の財務諸表を円貨に換算する際に、為替変動により、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
このような状況に対処するため、先物為替予約を締結しリスクを軽減し、単一の通貨による変動影響を可能な限り減らすため、ポートフォリオの最適化に努めております。
(14)大規模災害や事故の発生に関するリスク
想定外の大規模災害や事故、感染症の流行等が発生した場合、事業所の機能停止、原材料調達の遅延、製造設備の損壊等の被害が、事業活動の継続に影響を及ぼし、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
このような状況に対処するため、危機管理規程に基づき、大規模災害や事故、感染症の流行等により重要な事業を中断させないこと、また万一、事業活動が中断した場合においても残存する能力で目標復旧時間までに重要な事業を再開させることを目的に、事業継続計画(Business Continuity Plan:BCP)を策定し、緊急時の対応を即座に行えるよう準備・訓練するとともに、複数購買や生産拠点の複数化、大規模地震に備えた耐震工事、水害に備えた浸水対策工事等を行いできるだけ影響が少なくなるように努めております。
(15)環境保全に関するリスク
化成品、建装建材各セグメントの製品を製造する過程で使用される原材料の中には、人の健康や生態系に影響を与える物質も含まれております。また、処理委託した産業廃棄物が適正に処理されないことも想定されます。万一、当社グループの事業活動に起因する環境汚染が発生した場合には、対応に多額の費用負担が生じる、あるいは社会的信用が低下することにより、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
このような状況に対処するため、環境保全に係る法規制を遵守し、ISO14001を基に環境マネジメントシステムを構築し、環境負荷の低減に取り組むとともに、土壌汚染、水質汚染等の環境汚染防止に取り組んでおります。
(16)気候変動に関するリスク
気候変動にともない、(1)予想を超えるような台風や洪水、猛暑等の気象災害が発生した場合には、事業所の機能停止、製造設備の損壊等の被害により事業活動の継続に影響を及ぼす可能性があります。また、平均気温の上昇、降雨量の変化による水資源への影響等が徐々に進行した場合、当社グループがおかれる事業環境が変化し、運用コストの増加につながる可能性があります。一方で、(2)低炭素社会への移行の状況により、ステークホルダーから温室効果ガス削減製品の要請が増大し、研究開発費の増大、新規技術導入での設備投資額の増加、原材料価格の上昇が引き起こされる可能性も想定されます。気候変動の緩和に向けた規制が強化され、それに適切に対処できなかった場合、操業規制を受け、新たな税負担や、再生可能エネルギーへのシフトに伴う費用、生産設備の高効率化に伴う設備投資額の増加等につながる可能性もあります。それらは、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
このような状況に対処するため、上記(1)の気候変動に伴い物理的に発生するリスクに対しては、「BCP委員会」により、分析・モニタリング・予防対策の推進・取締役会への報告を行っております。また、上記(2)の低炭素社会移行に伴うリスクに対しては、サステナブル推進・生産・開発・経営企画等の関係部門で構成される「気候変動問題対応部会」が具体的対応策の検討と推進を担い、取締役会直下の「サステナビリティ推進委員会」が進捗のモニタリング・情報開示・事業計画への組み込みを行うことにより、中長期的視点で本リスクへの対策を拡充・推進しております。
(17)人的資本に関するリスク
<人材確保・育成に係るリスク>
当社グループが持続的に事業を発展させるためには、製造、販売、開発、経営、IT等、それぞれの分野で専門知識に精通した人材やマネジメント能力に優れた多様な人材を確保し、継続的に育成していくことが必要となります。また、海外事業を更に展開していくうえでは、優秀な現地人材を確保し、日本と海外とを結ぶグローバル人材を確保・育成する必要があります。しかしながら、特に日本国内においては少子高齢化に伴う労働人口の減少等もあり、必要な人材を継続的に獲得するための競争は厳しく、人材獲得や育成が計画通りに進まないことにより当社グループの事業活動が制限される場合があります。また、経済発展が著しい海外においては、人材獲得市場における競争が高まっています。それら人材確保・育成に係る状況は、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
このような状況に対処するため、日本においては新卒採用や経験者の中途採用を積極的に進めるとともに、人事・教育制度を充実させ、多様な社員が活躍できる環境づくりに努めています。海外においては、ローカル人材を積極的に登用するとともに、各国の労働慣行を尊重し、権限と義務を明確にすることで高いモチベーションが維持できる環境づくりに努めています。
<人体に影響を及ぼすリスク>
当社グループで、設備やオペレーションに起因した労働災害が発生したり、労務環境が悪化し健康被害が発生した場合には、社員の心身の健康に影響を及ぼし、労働生産性の低下や人材流出につながり、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
このような状況に対処するため、従業員の安全と健康を最優先に考え、労働安全衛生活動や健康経営に継続的に取り組んでいます。
(18)情報セキュリティ・ITインフラに関するリスク
当社グループは、事業遂行に関連し、多くの個人情報や機密情報を有しているほか、様々なシステムやネットワークを利用しています。悪意のある第三者によるサイバー攻撃、ウイルスによる処理機器の事故が発生した場合、情報の流出・漏洩・改ざん、ランサムウェアのような悪意のあるプログラムの侵入が発生する可能性があります。また、天災等によるシステムインフラの停止等が発生した場合、重要な業務の停止や遅延が発生する可能性があります。このような事態が発生した場合、対応に多額の費用負担が生じ、あるいは社会的信用が低下することにより、当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。
このような状況に対処するため、「アイカグループ情報セキュリティ基本原則」の遵守、情報管理規程による社内ルールの徹底、システムの冗長化等により、情報漏洩対策及び重要な業務の停止リスクの低減に努めております。
(19)コンプライアンスに関するリスク
当社グループは、事業展開をするうえで各国の法律、許認可等さまざまな法的規制の適用を受けています。これら法令等の改正や規制の強化により、当社グループの事業活動が制限される、あるいは遵守するためのコストが増加する場合があります。また、法令等に違反した場合や社会的要請に反した行動等により、法令による処罰・訴訟の提起・社会的制裁を受け、またはこれらに加え社会的信用が低下することで、当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。
このような状況に対処するため、当社グループは 「アイカグループ行動規範」において、各国・各地域の法令・社会規範・規制を遵守し、高い倫理観にもとづく行動を徹底することを定め、予期せぬ損失や信用の低下を防止すべく、役員・従業員に対する研修を通じコンプライアンス意識の向上を図り、法令違反や社会規範に反した行為等の発生可能性を低減するよう努めています。また、贈収賄防止を図り、不当な金銭・贈答・接待及びその他の利益の提供又は受領を禁じています。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
<資産>
当連結会計年度末における流動資産は151,706百万円となり、前連結会計年度末に比べ25,237百万円増加いたしました。これは主に流動資産のその他が1,320百万円減少した一方で、売上債権が11,580百万円、現金及び預金が4,758百万円、棚卸資産が10,364百万円増加したことによるものであります。固定資産は88,682百万円となり、前連結会計年度末に比べ7,787百万円増加いたしました。これは主に有形固定資産が6,340百万円、無形固定資産が1,720百万円増加したことによるものであります。
この結果、総資産は、240,388百万円となり、前連結会計年度末に比べ33,025百万円増加いたしました。
<負債>
当連結会計年度末における流動負債は66,327百万円となり、前連結会計年度末に比べ18,802百万円増加いたしました。これは主に短期借入金が8,447百万円、支払手形及び買掛金が7,982百万円増加したことによるものであります。固定負債は11,326百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,992百万円増加いたしました。
この結果、負債合計は、77,654百万円となり、前連結会計年度末に比べ20,795百万円増加いたしました。
<純資産>
当連結会計年度末における純資産合計は162,734百万円となり、前連結会計年度末に比べ12,229百万円増加いたしました。これは主に親会社株主に帰属する当期純利益13,117百万円及び剰余金の配当7,054百万円によるものであります。
この結果、自己資本比率は60.4%(前連結会計年度末は65.0%)となりました。
<売上高>
当連結会計年度の売上高は214,514百万円となり、前連結会計年度と比べ22.8%増加いたしました。
<売上総利益>
経営資源の効率的な活用に一層の努力を続けるとともに、グループ一丸となって業務改革を推進し、生産効率の向上に努めました。この結果、売上総利益は54,084百万円となり、前連結会計年度と比べ9.2%増加いたしました。
<販売費及び一般管理費、営業利益>
販売費及び一般管理費は、売り上げ増加に伴う物流費の増加、新規連結会社により増加したことなどにより、2,194百万円増加し、33,736百万円となりました。この結果、営業利益は20,348百万円となり、前連結会計年度と比べ13.1%増加いたしました。
<営業外収益、営業外費用、経常利益>
営業外収益は151百万円増加の2,175百万円、営業外費用は894百万円減少の682百万円となりました。この結果、経常利益は21,840百万円となり、前連結会計年度と比べ18.5%増加いたしました。
<税金等調整前当期純利益、親会社株主に帰属する当期純利益>
税金等調整前当期純利益は21,616百万円となり、前連結会計年度と比べ19.0%増加いたしました。
また、法人税、住民税及び事業税が439百万円増加の6,906百万円となったことから、親会社株主に帰属する当期純利益は13,117百万円となり、前連結会計年度と比べ21.9%増加いたしました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度に比べ、3,812百万円増加し、44,997百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるネットキャッシュ・フローは、11,685百万円の資金増加(前連結会計年度は19,713百万円の資金増加)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益が21,616百万円(同18,159百万円)、減価償却費が6,487百万円(同5,773百万円)となったこと、仕入債務の7,193百万円の増加(同1,813百万円の減少)等の増加要因があった一方で、売上債権の9,391百万円の増加(同3,857百万円の減少)、法人税等の支払額7,160百万円(同6,577百万円)等の減少要因があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるネットキャッシュ・フローは、8,342百万円の資金減少(同9,756百万円の資金減少)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出6,695百万円(同5,560百万円)、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出2,945百万円(同294百万円)等の減少要因があったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるネットキャッシュ・フローは、1,114百万円の資金減少(同9,179百万円の資金減少)となりました。これは主に、短期借入金7,536百万円の増加(同141百万円の減少)があった一方で、配当金の支払7,056百万円(同6,921百万円)、連結の範囲の変更を伴わない子会社株式の取得による支出1,099百万円(同1,253百万円)等の減少要因があったことによるものであります。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) (百万円) |
前年同期比(%) |
化成品 |
107,049 |
144.34 |
建装建材 |
61,675 |
118.12 |
合計 |
168,724 |
133.51 |
(注) 金額は売価換算値によっており、セグメント間の内部振替後の数値によっております。
b.受注実績
当社グループは主として見込み生産を行っているため、記載すべき事項はありません。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) (百万円) |
前年同期比(%) |
化成品 |
122,323 |
135.24 |
建装建材 |
92,191 |
109.51 |
合計 |
214,514 |
122.84 |
(注) セグメント間の取引については相殺消去しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループにおける経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標としては、中期経営計画の中で、ROE、海外+機能材料売上高、AS商品売上高、経常利益、売上高を取り上げ、目標を設定しております。
当連結会計年度の実績及び中期経営計画は以下のとおりであります。
項目 |
前中期計画 |
|
1年目 |
2年目 |
3年目 |
2021年3月期 |
|
2022年3月期 実績 |
2023年3月期 計画 |
2024年3月期 策提時計画 |
|
ROE |
8.1% |
|
9.4% |
9%以上 |
10%を目途 |
海外+機能材料 売上高 ※1 |
812億円 |
|
1,147億円 |
1,250億円 |
1,150億円 |
AS商品売上高 ※2 |
155億円 |
|
169億円 |
180億円 |
210億円 |
経常利益 |
184億円 |
|
218億円 |
220億円 |
240億円 |
売上高 |
1,746億円 |
|
2,145億円 |
2,250億円 |
2,400億円 |
※1 連結消去前単純合算売上高
※2 AICA Solution 商品の略。様々な社会課題を解決する商品
当連結会計年度の当社グループを取り巻く経営環境は、日本国内においては、ワクチン接種の普及もあり新型コロナウイルス・デルタ株による感染者数が減少に転じ、景気の後退から持ち直しの動きが見られました。また、アジア・オセアニア地域の経済につきましては、一部の国と地域で持ち直しの動きが見られました。しかしながら、オミクロン株の感染再拡大、原材料価格の高騰、ウクライナ情勢の緊迫化などにより、国内外ともに先行きは不透明な状況で推移しております。
国内建設市場においては、住宅着工は、持家や貸家および一戸建ての着工が増加し、前年を上回りました。非住宅関連においても、事務所、店舗、工場、倉庫などの着工面積が増加し、コロナ禍前の水準まで回復しました。
このような経営環境の下、当社グループは、中期経営計画「Change & Grow 2400」の方針に基づき、非建設分野向け事業および海外事業の強化、社会課題の解決に貢献する商品群の拡充、利益基盤および経営基盤の強化などを推進いたしました。
この結果、当連結会計年度の業績は、売上高214,514百万円(前年同期比22.8%増)、営業利益20,348百万円(同13.1%増)、経常利益21,840百万円(同18.5%増)、親会社株主に帰属する当期純利益13,117百万円(同21.9%増)となりました。
また、1株当たり当期純利益は200.90円(同36.11円増)、ROEは9.4%(同1.3ポイント増)、海外売上比率は49.2%(同6.5ポイント増)となりました。
なお、財政状態につきましては「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態および経営成績の状況」に記載のとおりであります。
セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容については次のとおりであります。なお、セグメント間の内部売上は除いております。
(化成品セグメント)
接着剤系商品は、国内においては、産業用フェノール樹脂などが好調で売上が前年を上回りました。海外においては、中国、タイ、インドネシア、ベトナムを中心に販売量が伸長し、第2四半期連結会計期間より連結業績に組み入れたアイカアドテック社も寄与し、売上を伸ばすことができました。
建設樹脂系商品は、橋梁・土木用の補修・補強材の売上が前年を下回りましたが、外装・内装仕上塗材「ジョリパット」と工場・倉庫向けの塗り床材が好調に推移し、売上を伸ばすことができました。
非建設分野への取り組みとして注力している機能材料事業につきましては、国内においては、電子機器関連用途のUV樹脂、工業用の有機微粒子などが好調で、売上を伸ばすことができました。海外においては、テキスタイル用途やスポーツシューズ用途のウレタン樹脂などが伸長し、第3四半期連結会計期間にコベストロレジン社から譲り受けた大園工場も寄与し、売上を伸ばすことができました。
このような結果、売上高は122,323百万円(前年同期比35.2%増)、営業利益(配賦不能営業費用控除前)は7,376百万円(前年同期比3.8%増)となりました。
(建装建材セグメント)
メラミン化粧板は、国内においては、店舗や事務所などの需要を獲得し、抗ウイルスメラミン化粧板「アイカウイルテクト」など特長のある商品が好調で、売上が前年を上回りました。また、海外においては、中国、インド、タイ、ベトナム、インドネシアを中心に売上を伸ばすことができました。
ボード・フィルム類は、汎用的なポリエステル化粧合板や、粘着剤付化粧フィルム「オルティノ」などが好調で、売上が前年を上回りました。
メラミン不燃化粧板「セラール」は、住宅のキッチンパネル用途、店舗などの需要を獲得するとともに、抗ウイルスメラミン不燃化粧板「セラールウイルテクト」の採用が拡大し、売上が前年を上回りました。
不燃建材は、非住宅向けの不燃ボード「マーレス不燃」などが低調で、売上が前年を下回りました。
カウンター・ポストフォーム商品は、キッチン・洗面カウンター需要を獲得した高級人造石「フィオレストーン」や住宅・公共施設用途のポストフォームカウンターが好調で、売上が前年を上回りました。
建具・インテリア建材は、住宅向け洗面化粧台「スマートサニタリー」が好調で売上を伸ばしましたが、不採算事業の見直しにより、売上が前年を下回りました。
このような結果、売上高は92,191百万円(前年同期比9.5%増)、営業利益(配賦不能営業費用控除前)は16,379百万円(前年同期比19.1%増)となりました。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの当連結会計年度末の借入金残高は17,059百万円でありますが、営業活動によるキャッシュ・フローや現金及び現金同等物の残高を考慮すると、将来必要とされる成長資金及び有利子負債の返済に対し、当面充分な流動性を確保しております。また、2022年4月において2027年満期ユーロ円建て転換社債型新株予約権付社債を発行しております。
当社グループは新中期経営計画「Change & Grow 2400」の方針に基づき、持続的成長に向けて、設備投資、M&A、人材育成、研究開発等の戦略投資を今後さらに積極的に加速させると同時に、配当については連結配当性向50%を目処に、安定的な株主還元を行う方針としております。
なお、当社グループのこれらの資金需要につきましては、主に営業活動によるキャッシュ・フローによって賄っております。また、事業活動を円滑に行うための資金調達に際しては、事前に充分な検討を加え、低コストで安定的な資金の確保を重視しており、今後において資金需要が発生する場合に備えております。
なお、キャッシュ・フローの状況の分析については、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。連結財務諸表の作成にあたり用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
・のれん及び無形資産(顧客関連資産等)の減損
減損の兆候を判断するにあたっては、損益実績及び将来利益計画を用いております。
のれんの減損の兆候がある場合、減損損失を認識するかどうかの判定は、資産グループにのれんを加えた、より大きな単位で行っております。
事業環境の悪化により収益性が当初の想定を下回る場合や保有資産の市場価額等が下落する場合には、回収可能価額が低下し損失が発生する可能性があります。
特記事項はありません。
当社グループの研究開発活動は、主として有価証券報告書提出会社であるアイカ工業株式会社にて行っております。その内容は、以下のとおりであります。
当社は、オリジナル性の高い技術開発を進め、安全・安心・健康、省エネルギーに配慮しながら、国内外アイカグループの持続的成長に向け、様々な社会課題を解決する製品群の拡充による国内建設分野の成長持続、非建設分野向けの機能材料事業の飛躍的成長や海外事業の展開加速に向けた研究開発活動を推進しています。
当連結会計年度の研究開発費の総額は
(1)化成品
化成品分野におきましては、「高機能商品」「省力化」「意匠」をキーワードに研究開発を進めております。
接着剤系商品では、アルミやステンレスなどの金属密着に優れる(F☆☆☆☆対応、JAIA 4VOC基準適合)2液変成シリコーン系接着剤「アイカアイボンSE-89」を開発しました。弾性に富む接着剤であり、異種材料の接着、長期耐久性に優れます。またホットプレスでの短時間接着が可能で省力化に繋がります。
建設樹脂系商品では、外壁タイルの意匠性を活かしながら劣化対策を行うことが可能な「ダイナミックレジン タフレジン クリアガードWP工法」を市場投入しました。遮水性が高く、経年劣化で外壁にクラックが生じた際も追従する伸縮性を有するため、高い防水効果を発揮します。加えて、透明度と耐候性が高いため、外壁タイルの意匠性を活かしながら劣化対策を行うことができ、建築物の長寿命化につながる補修・補強製品のラインナップが広がりました。また、変色抑制・収縮抑制・帯電防止の3つの特性を兼ね備えた水性硬質ウレタン樹脂系塗り床材「アイカピュール ピュールハードドーデンAH工法」を発売しました。耐衝撃性や帯電防止性に加え耐候性にも優れた塗り床材として、さらなる用途拡大と拡販を図ります。
高意匠では「クライマテリア」に、重厚感で奥行きがあるコンクリートを表現した「マニッシュアート」を追加しました。コンクリート打ち放しに比べ少ない工程で簡単に再現でき、コンクリートを打設することが困難な内装や既存壁の上に施工することも可能です。
フェノール樹脂商品では昨年DIC株式会社より譲渡を受けた固形、粉末樹脂の製品移管にめどが立ちました。砥石、摩擦材分野の樹脂ラインナップが拡充されますので、同分野へのさらなる展開を図るとともに、その他の分野への応用展開も進めてまいります。
電子材料商品では、自動車内装ディスプレイ向けに「ルミアート3次元加飾ハードコートフィルム」が大手自動車メーカーに初めて採用され、昨今の複雑形状化する自動車内装加飾部品の傷付き防止フィルムとして売上貢献致しました。また他社に先駆けて自然由来原料を用いたハードコート剤を開発し、市場投入しております。当社の得意とする高機能化を進めていき、フォルダブル有機ELディスプレイに適した屈曲耐久性や硬度・摩耗性に優れたタイプなどラインアップ拡充を図ってまいります。接着剤では、株式会社アサヒペンと共同で紫外線硬化補修接着剤を開発し上市致しました。一般消費者向けに日用品の補修接着用として好評を博しております。
自動車分野向けには、易解体性などの機能を付与したホットメルト接着剤「アイカメルト」のラインナップを拡充し、海外展開を推進しております。
有機微粒子商品では、熱硬化型樹脂向け応力緩和剤「スタフィロイド」のラインナップを拡充、電子材料関連で使用される樹脂への分散性を高めた製品を開発しました。また、環境配慮型微粒子の開発を進めラインナップを拡充、化粧品向けに新商品のワークを開始しました。
今後も国内外での販売拡大と市場動向にマッチする新商品開発に努めてまいります。
なお、当連結会計年度の研究開発費は
(2)建装建材
建装建材分野におきましては、「高機能」「意匠/デザイン」「省施工」「加工技術」、「SDGsに資する技術」をキーワードに研究開発を進めております。
高機能では、抗ウイルス建材「ウイルテクト」に消臭機能を付与したメラミン化粧板「アイカウイルテクトPLUS」、メラミン不燃化粧板「セラールウイルテクトPLUS」を開発しました。2014年に発売した消臭性能を持つ壁面材「セラール消臭タイプ」は、特に学校、駅、公共施設などのトイレや、医療・福祉施設で採用を伸ばしていましたが、コロナ禍においては、抗ウイルス性能を優先して消臭機能は諦め、ウイルテクトを選定するケースが見られました。抗ウイルス・抗菌・消臭の3つの機能を併せ持つことでより快適な空間づくりに貢献します。
住宅分野においては、アイカオリジナルのラバトリーボウルの防汚仕様を開発しました。ラバトリーボウルはアイカのカウンター製品とセットでお使いいただくことができる洗面ボウルです。カウンターとボウルを自由に組み合わせることで、用途・イメージに合った洗面カウンターをデザインできることから、幅広い層のお客さまからご好評をいただいております。洗面ボウルは、その使用方法の特性上、強い汚れが水で流れ切らずボウルにたまってしまうことがあります。墨汁、絵具、インク、その他調味料等の汚れを落としやすくした防汚仕様を追加し、清掃性が高くお手入れがカンタンな洗面ボウルとして幅広く提案してまいります。
高意匠では、好評をいただいているメラミン不燃化粧板「セラールセレント」に新アイテムを追加しました。グロス&マット加工により、柄と艶を同調させることで素材の奥行き感を表現し、ダイナミックな流れ模様の大理石柄、リアルな質感のメタル柄、使いやすい配色を取りそろえたコンクリート柄など、トレンド感と使い勝手のバランスがとれたデザインにより洗練された空間演出に寄与します。また、セラール(壁面)と一体感のある納まりを実現するメラミン化粧板を使用した室内ドア「メラウォールド」を開発しました。壁・枠・扉の境界(縦のライン)を少なくし、丁番やハンドルなどの露出を抑え、壁との一体感によりシンプルでミニマルな空間デザインを可能とします。
ストーン事業では、高級人造石「フィオレストーン」を活用した玄関部材「フィオレストーン框」を発売しました。エントランス空間は、マイホームの顔である一方、雨に濡れた靴や傘が持ち込まれたり、スーツケースやベビーカーが取り回されたりします。フィオレストーンの繊細な「美しさ」と「強さ」を活かして玄関框に加工をすることで、“家の顔”としての框を提案してまいります。
SDGsに資する環境対応技術としては、メラミン化粧板の樹脂原料の一部に植物由来のフェノール樹脂であるリグニンフェノール樹脂を使用する技術を確立しました。これによりバイオマス度は60%となり、石化原料を従来のメラミン化粧板より20%削減しています。また、製品廃棄時のCO2排出量も、従来のメラミン化粧板に対して20%削減となります。リグニンフェノールに切り替え可能な全製品に展開すると約1,300t/年のCO2削減が見込め、これを杉の木で換算すると約9万本が1年間で吸収するCO2に相当します。今後、サンプルワークを行いながら、量産化に向けたスケールアップを行っていきます。
今後も引き続き、さまざまな社会課題の解決に寄与できる特徴のある商品の開発に努めてまいります。
なお、当連結会計年度の研究開発費は