第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

  

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1)会社の経営の基本方針

当社は、以下の経営理念のもと、経営を遂行しております。

① 個人の尊重

当社は、社員一人一人の権利を尊重し、個人が意義のある文化的な人生と、生き甲斐を追求できる企業でありたい。一人一人の向上心を信じ、自立的な活動を援助し、仕事を通して能力が最大限に発揮できる環境を作り、能力や業績に報う企業とする。

② 存在意義のある企業

当社は、存在意義のある、優れた企業として認められることを望む。独創性を発揮し、個性と特徴をもち、経営の基盤を、絶えることのない研究開発活動と品質優先に置く経営を貫く。全ての組織が全力を尽くすことに生き甲斐を感ずる企業とする。

③ 共存共栄

当社は、社員、顧客、株主、材料部品の購入先、協力会社、取引先などの多くの人々に支えられている。当社は、これら関係者の全てに満足してもらえるように魅力ある製品、サービス、報酬、環境、取引関係を作り上げるよう最善の努力を払う。

④ 社会への貢献

当社は、社会の良き一員として企業活動を通じ、広く社会や産業界に貢献して行く。我々が提供する製品やサービスが、直接的間接的に広く社会の向上に役立ち、属する地域社会の環境や質の向上に役立つ企業を目指す。

 

 

 (2)当社グループの事業と製品

当社グループは、トータル・モーション・コントロールを提供する技術・技能集団として、技術者・技能者という人的資源を中核に、トータル・モーション・コントロールを構成するコア技術を高度に応用することによって、お客様が求める“動き”の実現に貢献できる製品を提供しております。
 当社グループでは、ハーモニックドライブ®、アキュドライブ®、ハーモニックプラネタリ®といった高精度減速機に、モーター、センサーなどを組み合わせたアクチュエーター、さらにはその性能を引き出すドライバー、コントローラー、その他システム要素を組み合わせ、他社製品とは差別化された高付加価値製品を提供しております。
 

 

 (3)当社グループの強みや特長

① 波動歯車装置に係る技術・技能の蓄積

当社グループは、波動歯車装置との運命的な出会いを契機に、創業以来50年以上にわたって無限に広がるこの減速装置の可能性を追求してきました。これまでに蓄積した開発技術、生産技術、加工・組立の技能、生産システムは、当社グループのかけがえのない財産であり、最大の強みと考えております。

② 小型・軽量・高精度を提供する製品群

当社グループが製造・販売するメカトロニクス製品と減速装置は、高度なモーション・コントロールや各種装置のコンパクト化・軽量化を求めるお客様にご採用いただいております。なかでも、小型、軽量、高精度を特長とするハーモニックドライブ®は、自動車、デジタル機器、半導体ウェハー、フラットパネルディスプレイなどの製造工程で使われる産業用ロボットの関節部に組み込まれ、世界市場で高いシェアを獲得しています。さらに、工作機械、計測試験装置、人工衛星、先進医療機器、車載などの幅広い用途において、他の機構では実現の難しい差別化された付加価値を提供しています。

③ 「トータル・モーション・コントロール」の提供を可能とするコア技術

当社グループは、減速機のほか、モーター、センサー、ドライバー、コントローラー、その他システム要素に関する研究開発とものづくりを通じて、これらの技術・技能を蓄積してきました。このようにして培ったコア技術に係る有形・無形の技術と技能は、お客様が求める高度なモーション・コントロールを提供するために不可欠なものであり、当社グループの競争力の源泉と考えております。

④ 営業・製造・開発が一体となった事業運営

当社グループは、お客様のニーズをものづくりや製品開発に生かすため、営業部門、製造部門、技術・開発部門が密接な関係をもった事業運営を行っています。例えば、長野県の安曇野市にこれらの主要部門を集中させ、引合いから技術検討、試作、受注、製造、出荷までの業務プロセスを効率的に進める体制を構築しています。お客様のニーズや技術者の発想を素早くものづくりに反映し、新たなモーション・コントロールをタイムリーに提供できる体制も当社グループの強みのひとつと考えております。

⑤ 国際的な事業展開

当社グループは、日本、米国、ドイツ、韓国、中国、台湾に事業拠点を展開し、各地域の特性に合わせた事業戦略を推進するとともに、各拠点が相互に連携しながら世界的に広がるお客様に対し最適な製品・サービスの提供を進めております。

 

 

(4)中長期的な当社グループの経営戦略

 当社グループは、「モーションコントロール技術で社会の技術革新に貢献する」という不変のミッションを遂行しております。当社グループが手掛けるメカトロニクス製品、精密減速装置は、EV化、手術支援ロボットなど、新たな「社会の技術革新」に大きく貢献しており、今後もその需要は拡大していくことが予想されます。また、世界的な人手不足が顕在化するなか、自動化が加速しており、協働ロボットに加え、新たな市場として「ヒト型ロボット」の需要増加が見込まれております。当社グループはこのような成長機会を確実に取り込むための経営基盤をより強固なものにするとともに、新たに策定した新中期経営計画(2024年度~2026年度)に基づき、グループ一体となって持続可能な社会の実現に向け活動を推進してまいります。さらに、ミッション・新長期ビジョンの達成に向け、攻めと守りのバランスを勘案した経営戦略を遂行することにより、中長期的な企業価値向上を図ってまいります。

 

 

■サステナビリティ基本方針

私たちは、「個人の尊重」「存在意義のある企業」「共存共栄」「社会への貢献」という4つの柱で構成された経営理念に基づき、トータル・モーション・コントロールを提供する技術・技能集団として、社会をより良くするための技術革新に貢献することで、持続可能な社会の実現と企業価値の向上を目指します。

 

■当社グループのミッション

モーションコントロール技術で社会の技術革新に貢献する
 

■長期ビジョン

未来と調和するトータル・モーション・コントロールのベストプロバイダー

 

■マテリアリティ

 ・人的資本の価値最大化

 ・お客様の期待値に応えるQCDSの実現

 ・環境の変化に適合した新技術・新技能への挑戦と創出

 ・企業活動を通じて持続可能な社会に貢献する

 ・時代に調和した経営基盤の構築

 

■中期経営計画(2024年度〜2026年度)

 ~「価値創出と変革」への挑戦~

(基本方針)

 ① 収益性を重視した全事業の持続的な成長

  ・新たな成長ドライバーの開拓

  ・顧客期待値に応えるQCDS+Speedの徹底

 

 ② 環境変化に適合できる経営資源(ひと、もの、かね、情報)の強化

  ・個の成長と多様な脳力が発揮され、尊重される組織の実現

  ・資本効率を意識した成長投資

  ・財務基盤及びガバナンス強化

 

 ③ 未来に続く企業価値向上への取り組み

  ・ネットゼロの推進

  ・多様な人財の登用、採用

  ・お客様の環境負荷低減を促進する製品の開発

 

(5)経営環境と対処すべき課題

 国際情勢の不安定化による資源・原材料価格の高止まり、為替相場の変動など、世界経済の一層の不透明感が予想されるなか、2024年度の当社グループの事業環境は、労働人口減少を補うためのロボットをはじめとする自動化投資の拡大、データセンターの拡充及び生成AIに必要な先端半導体の需要拡大に伴う設備投資等により、製品需要が回復していくものと予想されます。それらに伴いお客様や販売店各社における当社製品の在庫調整も進み、期中の受注回復を想定しています。これら事業環境に対応すべく、前中期経営計画(2021年度~2023年度)に実施してまいりました、高い生産能力の維持とサプライチェーン体制の強化による安定した部材調達、ITの積極投資による生産性向上と業務効率の改善をさらに推し進め、さらなる製品力の向上、コスト低減、リードタイム短縮に取り組んでまいります。加えて、営業・開発技術一体によるお客様の課題解決力向上と対応の迅速化を推進し、さらなる競争優位性の拡大に傾注してまいります。

 

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

当社グループは、様々な社会課題を解決し、社会をより良くするための技術革新に事業を通じて貢献していくことを使命としております。この使命を果たすにあたって基盤としているのが、当社の創成期に作られ現在も当社グループの企業文化として受け継がれている経営理念です。当社ではこの経営理念に基づいたサステナビリティ基本方針を策定し、2022年3月25日の取締役会において決議いたしました。当社グループはこの基本方針に則り、戦略的にサステナビリティの推進を図ってまいります。

 

 

サステナビリティ基本方針

私たちは、「個人の尊重」、「存在意義のある企業」、「共存共栄」、「社会への貢献」という4つの柱で構成された〝経営理念″に基づき、トータル・モーション・コントロールを提供する技術・技能集団として、社会をより良くするための技術革新に貢献することで、持続可能な社会の実現と企業価値の向上を目指します。

 

 

 

(1)サステナビリティ全般

 

 1)ガバナンス

 当社グループでは、サステナビリティの取り組みを経営上の重要課題と認識し、サステナビリティ委員会を中心とするガバナンス体制を構築するとともに、取締役会による監督を行っております。

 

① 取締役会による監督体制

 当社グループのサステナビリティに関するリスク及び機会の監督に対する責任と権限は取締役会が有しております。取締役会は、サステナビリティ委員会で協議・決議された重要事項について報告を受け、サステナビリティに関するリスク及び機会への対応方針や実行計画等について審議・監督を行っております。

 

② サステナビリティに係る経営者の役割

 当社グループのサステナビリティに係る経営判断の最終責任は代表取締役社長が有しております。

 

③ サステナビリティ委員会

 当社では、グループ全体のサステナビリティ推進体制を強化するため、グループサステナビリティ全般を推進・統括・管理する組織としてサステナビリティ委員会を2023年4月1日付で設置いたしました。本委員会の委員長は代表取締役社長が務め、メンバーは業務執行取締役で構成されております。

  サステナビリティ委員会の主な役割は以下の通りです。

  ・サステナビリティ関連方針・戦略の策定・改定

  ・サステナビリティに関するマテリアリティの特定

  ・サステナビリティに関する長期目標・KPIの策定・進捗管理

  ・サステナビリティ推進活動の企画・報告

  ・サステナビリティに関するリスクと機会の特定及び管理

  ・取締役会への定期的な報告及び提言・基本方針等の上程 等

 

④ 執行役員会議

当社グループでは、執行の立場からサステナビリティを実現するために、経営企画・IR担当執行役員が、サステナビリティの取り組み状況やサステナビリティ関連の動向等を、取締役・監査役も出席する月次の執行役員会議で都度報告し、様々な視点から議論を行っております。

 

 

⑤ サステナビリティ推進に係る所管部署

 経営企画・IR担当執行役員のもと、経営企画・IR室がサステナビリティ委員会の事務局を務めるとともに、当社グループのサステナビリティ全般に係る推進を担っております。また、サステナビリティに係るマテリアリティやリスクと機会への対応等についてサステナビリティ委員会に提言するとともに、適宜当社各部門並びにグループ会社へ展開し、グループ全体のサステナビリティ活動を推進いたします。

 

 

グループサステナビリティ推進体制図

 


 

 

<サステナビリティに関する主な議論の実績>

 

開催年月日

主な協議内容

取締役会

2022年3月25日

サステナビリティ基本方針の策定

2022年9月21日

サステナブル調達ガイドラインの策定

2023年3月24日

サステナビリティ委員会の設置

2023年11月20日

マテリアリティ(2024年度~)の特定

執行役員会議

2021年7月13日

サステナビリティの取り組みの検討

2021年8月11日

サステナビリティの取り組み内容について

2021年11月11日

お客様要求によるサステナビリティ格付機関への対応について

2021年12月10日

有明工場へのCO2フリー電気導入の検討

2022年1月14日

・PaperLabの導入について(社内リサイクルでコピー用紙の廃棄量削減)

・サステナビリティの取り組み計画について

2022年2月10日

気候変動、水資源、労働と人権、倫理、持続可能な資材調達への対応進捗状況報告

2022年3月10日

サステナビリティ格付機関の評価結果(2021年度分)の報告及び課題について

2022年5月17日

マテリアリティの特定について

2022年8月11日

気候変動対応の課題について、サステナブル調達ガイドラインの検討

2022年9月9日

サステナブル調達方針の検討

2022年12月9日

労働と人権、倫理、環境、持続可能な資材調達への対応状況報告

2023年2月10日

サステナビリティ情報開示義務化について

2023年3月10日

サステナビリティ委員会の設置、ネットゼロ目標の設定について

2023年4月14日

サステナビリティ格付機関の評価結果(2022年度分)の報告及び2023年度の取組計画

2023年5月17日

サステナビリティ対応に対するステークホルダーの要請について

2023年6月9日

統合報告書作成の検討

2023年7月12日

グループサステナビリティ推進体制について

2023年8月10日

サステナビリティ開示規制の動向、気候変動・水セキュリティシナリオ分析

2024年2月14日

当社統合報告書に対する外部評価の報告

サステナビリティ委員会

2023年6月15日

2023年3月期有価証券報告書のサステナビリティ記載内容について

2023年8月17日

サステナビリティ委員会の今後の活動予定

2023年10月17日

マテリアリティ(2024年度~)候補の抽出

2023年11月2日

マテリアリティ(2024年度~)候補項目の重要度評価

2023年11月14日

マテリアリティ(2024年度~)最終案の決定

 

 

 

2)戦略

 

当社グループでは、マテリアリティと価値創造プロセスをサステナビリティ全般の戦略として取り組んでおります。

 

【目指す姿の実現に向けたマテリアリティ】

 当社グループは経営理念をもとに、ミッションである「モーションコントロール技術で社会の技術革新に貢献する」ことで持続可能な社会の実現と事業成長を目指しております。将来の短・中・長期的なリスクに柔軟に対応する持続可能な経営基盤を構築し、社会課題の解決に貢献していくため、当社グループが中長期的な視点で優先的に取り組むべき事項として2022年5月にマテリアリティを特定し、事業戦略に組み込んで2024年3月末まで取り組んでまいりました。また、マテリアリティを特定するにあたっては、経営理念や事業戦略だけでなく、持続可能な開発目標(SDGs)との整合性も重視し、社会の持続可能性と当社グループの持続的成長の両面から評価を行いました。

 

マテリアリティ抽出・特定のプロセス

 

Step1

サステナビリティ課題の抽出

当社グループの事業戦略における課題に加え、バリューチェーン企業を中心とした他社事例調査や、SASBスタンダード等の国際的なフレームワークを参照し、サステナビリティ課題を網羅的に抽出。

Step2

マテリアリティの特定

抽出された課題を「社会の持続可能性に対するインパクト」と「当社グループの持続的成長へのインパクト」の両面から評価し、マテリアリティ・マトリックスを作成。その中からインパクトが特に強い課題項目を選定し、当社グループの事業戦略を踏まえて5つのマテリアリティとして整理・統合。

Step3

妥当性の確認

特定したマテリアリティと中期経営計画との整合性を評価。また、株主・機関投資家とのエンゲージメントを通じてステークホルダーからの期待が反映されていることを確認。

Step4

取締役会による承認

5つのマテリアリティを取締役、監査役、執行役員が参加する会議体で議論し、妥当性を確認。最終的に取締役会における議論・承認を受け、当社WEBサイトにて公表。

 

 

 

マテリアリティ・マトリックス

 


 

 

 2022年5月に特定し2024年3月末までに取り組んできたマテリアリティは、「働きがいのある職場環境」、「お客様の期待値を満足させる製品・サービスの提供」、「安定的な調達・供給体制の確立」、「地球環境への負荷低減」、「時代に適合した経営基盤の構築」の5つです。この中で、社会の持続可能性へのインパクトが大きいマテリアリティは「地球環境への負荷低減」であり、当社グループの持続的成長へのインパクトが大きいマテリアリティは「働きがいのある職場環境の整備」、「お客様の期待値を満足させる製品・サービスの提供」、「安定的な調達・供給体制の確立」、「時代に適合した経営基盤の構築」です。

 「地球環境への負荷低減」に関しては、当社グループのGHG排出量の削減(=再生可能エネルギーの活用など)、水使用量の抑制や廃棄物の削減、地球環境への負荷低減を考慮した製品開発などへの取り組みを進めました。小型・軽量を特長とするハーモニックドライブⓇは、組み込んだ装置も小型化が可能になることから使用段階の省エネ効果が向上するとともに、資源採取から廃棄に至るライフサイクルの環境負荷が低減される製品です。今後はお客様の環境負荷低減をさらに促進する製品の開発に注力してまいります。

 「働きがいのある職場環境の整備」に関しては、経営理念の最重要項目である「個人の尊重」と関連しております。安全・安心な職場環境の整備に加え、従業員の能力開発や多様性を高める人事制度、男性の育児休暇取得を促進する取り組みなど、人的資本の強化とそれに向けた職場環境の整備を図ってまいりました。

 「お客様の期待値を満足させる製品・サービスの提供」と「安定的な調達・供給体制の確立」に関しては、性能と品質を含め、多様化するお客様のニーズに応え続けるために、主力製品であるハーモニックドライブⓇの進化を図るとともに、外部研究機関との共同研究にも注力し、次世代モーションコントロールに向けての要素開発と製品化への取り組みを進め、トータル・モーション・コントロールのさらなる高度化を図ってまいりました。また、お客様の希望納期に対応するため、日本・ドイツ・アメリカの3拠点において、今後の需要増加を見据えた生産能力の増強を実施しました。さらに、当社グループのビジネスは需要変動が激しいことから、先行きを予測する精度を高めるとともに、製造実行システム(MES)を導入することで製造工程のリアルタイム管理を進めております。加えてサプライチェーンの強化にも取り組んでまいりました。

 「時代に適合した経営基盤の構築」に関しては、これらのマテリアリティを実現するためのベースとなるものであり、財務面でのサポートに加え、経営体制の持続可能性を高めるべくガバナンスの強化に取り組んでまいりました。

 

HDSグループのマテリアリティ

 


 

【価値創造プロセス】

 当社グループでは、持続的な成長のために、社会課題や事業環境を的確に把握したうえでリスクと機会を認識し、強みとなるインプットから経営理念に基づいた当社グループ独自の事業活動を経て、企業価値向上につながるアウトカムを生み出すことで、「モーションコントロール技術で社会の技術革新に貢献する」というミッションの達成につなげることを価値創造のプロセスとしております。

 

価値創造プロセス図

 


 

 脱炭素や資源循環などの地球環境課題は世界的な社会課題であり、当社グループの納入先においても情報開示要請を含めて関心が高まっております。これらの対応が遅れると、当社グループの事業機会の減少につながるリスクがあります。一方で、労働人口と熟練技能者の減少は自動化を加速させ、当社グループのお客様であるロボットメーカーなどの需要増加につながります。ロボットメーカーに精密減速機を供給している当社グループにおいても生産体制の強化や持続可能なサプライチェーンの確立が必要になってまいります。

 これらの外部環境及びリスクと機会に対応するため、当社グループは5つのアウトカムと価値創造につながる取り組みを推進しております。

 

① 価値ある製品の開発とサービスの強化によるHD・AD・MT事業の拡大

 競争力強化のための事業拡大には、精密減速機における「真似できない製品の開発」が欠かせません。メカトロニクス製品においてはお客様の“やりたい”を実現し得る「真似したい製品の開発」が必要です。これらを継続的に推進することは財務資本、製造資本、知的資本、社会関係資本の拡大につながると考えております。

 

② 時代の要求に適合した経営基盤の構築

 持続可能な経営の推進には、事業拡大をけん引できる人財の育成、多様性を高める人事制度や働き方の構築を図り、同質的な企業風土からの脱却が必要です。またIT強化戦略、成長を支える財務基盤の確立、資金調達力の強化も重要であり、これらを推進することは財務資本、人的資本、知的資本の拡大につながると考えております。

 

③ 海外のグループ会社・研究機関との連携強化とシナジーの最大化

 地域最適・世界最適による価値の追求には、各拠点の経営資源活用、海外研究機関との積極的な連携、グローバル生産体制の確立が必要です。これを果たすことは製造資本、人的資本、知的資本、社会関係資本の拡大につながると考えております。

 

④ お客様の期待値を満足させるQCDSの実現

 品質(Q)・コスト(C)・納期(D)・サービス(S)に対して、不適合・クレームゼロ(Q)、生産性向上(C)、お客様希望納期に対するコミット(D)、お客様ファースト(S)を果たすことで、お客様満足の実現を図ることは、製造資本、人的資本、社会関係資本の拡大につながると考えております。

 

⑤ 固定観念にとらわれず、次の50年の新常識を創造する

 事業活動から直接アウトカムにつながる取り組みであり、時間軸は長めとなります。当社グループ製品の強みである、小型・軽量・高精度を活かした積極的な挑戦が当社グループの価値拡大には重要であり、これには社会変化に敏感な感覚、非常識を受け入れる風土の醸成が必要です。これらを推進することは、長期的な人的資本、知的資本、自然資本の拡大につながると考えております。

 

※ マテリアリティと価値創造プロセスについては、当社WEBサイトに掲載

(https://www.hds.co.jp/csr/hdsreport/)の統合報告書「HDS REPORT 2023」も併せてご参照ください。

 

3)リスク管理

リスクと機会については、経営方針(課題)を受けて、各部門責任者が検討し、各部門のマネジメントプログラムで具体的な活動に結びつけております。

特に、リスクについては、「危機・リスク管理規程」に則り、サステナビリティに係るリスクを特定・評価・対応する体制を構築しております。リスクを「全社リスク」と「業務プロセスのリスク」に分類し、年に1回リスク評価を実施しております。「全社リスク」については経営企画担当執行役員及び経営企画部門が把握・分析・評価を実施しており、「業務プロセスのリスク」については、各部門がリスクを抽出・特定し、内部統制監査室によって短・中・長期の時間軸で発生頻度と損害規模の観点からリスク評価を、法令と人命の観点から方針を決め、それらを合わせて総合リスク評価し、リスクマネジメントを管掌する人事・総務担当執行役員が評価結果をもとに優先順位付けを行ったうえで、代表取締役社長が承認いたします。

各リスクには、法令遵守と人命優先の観点からそれぞれの方針が策定され、部門責任者がリスク管理目標を設定するとともに、リスク内容に応じて回避、受容、低減、移転等を判断し、各リスクに見合った低減活動を実施いたします。その実施状況については、人事・総務担当執行役員が年に1回進捗をレビューし、代表取締役社長がレビューをもとに次年度の方針を示し、各部門に展開しております。

 

 

(2)気候変動

 当社グループは、気候変動に係る対応を経営上の重要課題と認識し、サステナビリティ委員会を中心に推進しております。

 

 1)ガバナンス

 当社グループの気候変動に関するガバナンスは、サステナビリティ全般のガバナンスに組み込まれております。詳細については、「(1)サステナビリティ全般 1)ガバナンス」を参照ください。

 

 2)戦略

 当社グループの事業に影響を与えると想定される気候変動関連のリスクと機会を特定した上で、国際エネルギー機関(IEA)や気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が公表する複数のシナリオを参照の上、パリ協定の目標である「産業革命前からの気温上昇を1.5℃未満に抑える」ことを想定した政策移行への影響が大きいシナリオ(1.5℃シナリオ)、及び環境規制が強化されず物理リスクが高まるシナリオ(4.0℃シナリオ)それぞれの世界観においてTCFDが提言するシナリオ分析を実施し、顕在化時期の時間軸を短・中・長期として、各リスク・機会の事業への影響度や発生可能性を分析しました。 本シナリオ分析の結果に基づき、機会創出とリスク最小化に向けた取り組みを推進しております。

 ・参照シナリオ:IEA NZE2050(1.5℃シナリオ)、IPCC RCP8.5(4.0℃シナリオ)

 ・時間軸の定義:短期 0~3年・中期 3~10年・長期 10~30年・超長期 31年~

バリューチェーン

シナリオ

リスク/機会

関連する事業活動

リスク/機会の要因

内容

顕在化時期

発生可能性

影響度

上流

4.0℃

リスク

調達/物流

洪水、豪雨等

 自然災害(台風・豪雨等)の激甚化・頻発化により、サプライチェーンの混乱が生じ、原材料の調達遅延や停止が発生

短期

機会

調達/物流

評判

調達先の分散等により自然災害にレジリエントな物流を可能にすることでお客様からの信頼性が高まる

短期

直接

リスク

技術/生産

水不足

降水パターンの変化により水利用可能性が低下、取水制限等が実施されることで操業停止が発生、水価格高騰により生産コストが増加

中長期

リスク

技術/生産

洪水、豪雨等

海面水位上昇による沿岸部事業拠点の浸水被害増加

超長

リスク

技術/生産

洪水、豪雨等

自然災害の激甚化・頻発化により、事業拠点の損壊や操業停止、生産量の減少が発生

リスク

技術/生産

気温上昇

気温上昇により労働生産性が低下

リスク

技術/生産

気温上昇

気温上昇に対応するため、事業拠点の冷房設備の増設・更新費用、空調費用が増加

中期

下流

機会

調達/物流

評判

製造拠点の分散等により自然災害にレジリエントな物流を可能にすることでお客様からの信頼性が高まる

 

 

バリューチェーン

シナリオ

リスク/機会

関連する事業活動

リスク/機会の要因

内容

顕在化時期

発生可能性

影響度

上流

1.5℃

リスク

調達/物流

エネルギー

価格高騰

再生可能エネルギーの導入に伴うエネルギー価格の高騰

リスク

調達/物流

原材料

価格高騰

電化や脱炭素に伴う原材料価格の高騰

(鋼材・アルミ・鋼・レアアース等)

中期

直接

リスク

技術/生産

低炭素技術の開発

 低炭素製品の開発競争が激化し、対応が遅れた場合、製品の競争力が低下

リスク

技術/生産

規制強化

 サステナビリティ関連法規制等の拡大・厳格化に伴う対応負荷の増加、対応を怠ることで取引制限、罰則等に発展する可能性

短期

リスク

技術/生産

省エネ技術の普及

排出削減に向けた設備投資や省エネ化の負担増

短期

リスク

技術/生産

規制強化

カーボンプライシングにより排出に伴う支出(課税)が増加

中期

リスク

技術/生産

低炭素技術の開発

低炭素材料(グリーン材料・リサイクル材料)への切り替えのための技術開発費増加

短中期

機会

技術/生産

省エネ技術の普及

低排出設備への更新の結果、エネルギーコストの削減や炭素税の負担が軽減

中期

機会

技術/生産

低炭素技術の普及

社会の低炭素志向が促進されることによる低炭素製品(EV等)関連への売上増加

中期

機会

技術/生産

低炭素技術の開発

低炭素材料に対する需要拡大

リスク

技術/生産

既存技術の

需要減

石油・天然ガス・紙の需要減少に伴う関連用途向け製品の売上減

リスク

/機会

販売/評判

評判

気候変動対応が不十分と判断されることによるレピュテーションリスク

(社会、消費者、従業員)

 

 

 3)リスク管理

 気候変動に関するリスクと機会については、サステナビリティ全般のリスク管理(「(1)サステナビリティ全般 3)リスク管理」をご参照ください。)に含めて管理するとともに、会社全体で包括的に環境に係るリスクと機会を掌握しております。全社環境目標設定時に気候変動に係るリスクと機会を検討の上、環境マネジメントプログラムで全社へ展開し、各部門責任者は、環境マネジメントプログラムに基づき、各部門で把握した環境側面などから具体的な部門活動に取り組んでおります。

 

 

 4)指標及び目標、実績

 

① 指標及び目標

 当社グループでは、気候変動に関する長期的な指標として「2050年ネットゼロ」を目指しております。短・中期の具体的なGHG削減目標については、当社グループの経営戦略、事業拡大等を踏まえて決定するべく検討中であります。

 

② GHG排出量実績

 2024年3月期のGHG排出量実績は現在算定中のため、2023年3月期の排出量を以下に記載いたします。2024年3月期のGHG排出量実績については、算定出来次第当社WEBサイトのESGデータ集(https://www.hds.co.jp/csr/esg/)に公表いたします。

 

  当社連結グループのスコープ1とスコープ2の排出量                        (単位:t-CO2)

 

2022年3月期

2023年3月期

スコープ1

スコープ2

スコープ1

スコープ2

日本

80

13,394

81

15,418

アジア

16

416

14

264

欧州

197

2,349

103

2,494

米国

205

783

145

474

合計

498

16,942

342

18,650

 

※ スコープ2は、ロケーション基準の排出量です。

 

  当社連結グループのスコープ3の排出量                              (単位:t-CO2)

 

カテゴリー

No.

カテゴリー名

2022年3月期

2023年3月期

購入した商品・サービス

198,899

358,792

資本財

17,054

11,237

スコープ1,2に含まれない燃料及びエネルギー関連活動

899

18,329

上流の物流

3,951

8,466

操業で発生した廃棄物

455

1,322

出張

104

702

従業員の通勤

212

613

上流のリース資産

0

0

上流合計

221,574

399,461

下流の物流

-

3,837

10

販売製品の加工

-

0

11

販売製品の使用

-

6,190,129

12

販売製品の廃棄

-

1,398

13

下流のリース資産

-

23

14

フランチャイズ

-

0

15

投資

-

0

下流合計

-

6,195,386

スコープ3合計

221,574

6,594,846

 

 ※1.2022年3月期のカテゴリー1・4・5・6・7の対象範囲は、当社単体になります。

 ※2.2023年3月期のデータから新たにカテゴリー9・11・12・13を算定しております。

 

(3)人的資本・多様性

 

 1)人財の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略

 当社では、経営理念の筆頭に「個人の尊重」を掲げており、従業員一人一人の権利を尊重し、個人が意義のある文化的な人生と生き甲斐を追求できる企業であること、一人一人の向上心を信じ自立的な活動を援助し、仕事を通して能力が最大限に発揮できる環境を作り、能力や業績に報う企業であることを目指し、人的資本に関する各方針・制度などの環境を整備しております。

経営理念については、12ページの「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題 (1)会社の経営の基本方針」を参照ください。

 

① 人財育成方針

 当社では、「経営理念」を実現できる人財の育成を基本方針としており、以下3段階に分けた人財育成方針に基づき、育成に取り組んでおります。

 

 第一段階:教育・育成段階

  「求める人財像」の基本の徹底

 第二段階:実践段階

主に実務を通して能力向上、専門性の確立を図る中で、個人の取り組みを支援。また、戦略的に将来の幹部候補の育成を行う。

 第三段階:専門性発揮段階

マネジメント力、専門技能技術等これまで培ってきた能力・経験を発揮し、部門運営・後進育成に貢献する。(育成する側となる)

 

② 社内環境整備に関する方針

 当社グループでは、個々人が意欲的に活躍する組織を構築するため、多様な人財が活躍できる職場環境の整備に取り組んでおります。

 

多様性の確保に関する考え方

当社グループは、性別、国籍、年齢、障がい等の有無等に関係なく、全ての従業員が持てる能力を発揮し、活躍できる職場環境の構築を目指しております。女性管理職、女性役員、外国人については目標人数を設定し、多様な人財の確保に取り組んでおります。また、中途採用者も積極的に管理職に登用しており、2024年3月末日時点の当社単体管理職のうち55.4%が中途採用者であります。

 

採用に関する考え方

当社の経営理念を共有でき、当社グループに必要な能力を持った人財を確保するため、新卒を対象とした定期採用に加え、様々な経験、スキル、資格等を有し、即戦力として期待できる中途採用も積極的に実施し、多様性のある組織を目指しております。なお、当社グループでは、従前から新卒採用者、中途採用者の区別なく能力本位で管理職登用を行っており、中途採用者比率及び管理職数については十分な数となっていることから目標値は設定しておりません。2024年3月末日時点の当社単体従業員の59.6%が中途採用者で構成されております。

 

人事制度

当社グループでは、従業員の能力向上や働く意欲の向上が、経営ビジョンや目標達成を可能にするとの考えのもと人事制度を構築しております。

従業員個々の能力開発を目的に実施するジョブローテーション、従業員が将来のキャリアパスや自身の能力開発の希望を直接人事担当役員に申告できる自己申告制度、雇用形態に関係なく利用できる育児・介護休業制度など、他にも様々な制度を整備しております。特に、仕事と育児の両立支援を強化するため、出産・育児における休暇・休職・復帰制度、時短勤務、テレワーク等の諸制度で働きやすい職場環境の整備に取り組んでおります。また、女性活躍及び従業員の働き方改革の一環から、男性従業員による育児休暇制度の利用促進を積極的に推進しており、2024年3月期における当社単体の男性育児休暇取得率は81.8%でした。

 

能力開発制度

当社では、従業員の能力開発にあたり、中長期スパンによる計画的な人財育成計画を立案し、誰もが当社の従業員に求められる能力を効果的・継続的に向上・開発できる制度を構築しております。

能力開発研修には、役割に求められる能力を発揮するために階層ごとに実施する必修の「階層研修」、業務遂行とキャリア開発のために必要な「基礎研修」、業務における専門性を向上し、キャリア開発のための専門能力を習得するための「専門分野研修」、より高度な経済環境や技術水準、国際化の進展等を踏まえ、国内外の大学等高等教育機関におけるMBAやMOTなどの学位取得をはじめ、海外関係会社での海外研修や海外の大学のAEIプログラムによる語学留学など、従業員自身の自己啓発による一層の能力向上を会社として支援する「特別研修」があります。また、当社の中長期的な成長を支える技術者・技能者に対しては、社内資格制度や外部の技能検定試験の取得を積極的に支援しております。

 

健康管理の推進

当社では、従業員の健康を重要な経営資源と捉え、安全衛生と健康管理の取り組みを推進しております。具体的な取り組みは以下の通りです。

 ・ 定期健康診断、ストレスチェック等による従業員の体調とメンタル不調の未然防止

 ・ 健康推進に係る専門部署「健康推進センター」の設置と社内産業保健師によるきめ細かな健康

   相談・指導

 ・ 社内・社外にハラスメント等の通報/相談窓口の設置

 ・ テレワーク環境の提供

 

2)人財の育成及び社内環境整備に対する指標の内容並びに当該指標を用いた目標及び実績

指標

目標

実績

2025年3月期

2022年3月期

2023年3月期

2024年3月期

女性管理職(人数)

5

2名

2名

2

女性執行役員(人数)

1

1名

1名

2

女性取締役(人数)

1

-

-

1

外国人(人数)

6

3名

6名

7

男性の育児休暇取得率

30%

55.6%

56.3%

81.8%

年次有給休暇取得率

70%

74.6%

73.2%

82.0%

 

※1. 上記は、株式会社ハーモニック・ドライブ・システムズ単体の指標及び目標です。

※2. 上記目標(2025年3月期)は2022年3月に、2022年4月1日から2025年3月31日を対象期間として設定したものです。

※3. 連結の指標及び目標については検討中であり、策定次第当社WEBサイトに公表いたします。

※4. 上記以外の人的資本に関するデータは、当社WEBサイトのESGデータ集(https://www.hds.co.jp/csr/esg/)に公表しております。

 

 

 

 

3 【事業等のリスク】

当社グループの経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性のあるリスクには、以下のようなものがあります。

なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2024年6月24日)現在において、当社グループが判断したものです。

 

① 設備投資動向に関するリスク

当社グループの製品は、産業用ロボット、半導体製造装置、フラットパネルディスプレイ製造装置をはじめとする産業用機械の部品として販売されるものが大半でありますので、設備投資動向が当社グループの業績等に悪影響を及ぼす可能性があります。特に、産業用ロボット、半導体製造装置、フラットパネルディスプレイ製造装置業界向けについては、スマートフォンや半導体デバイス並びにパネル市場の市況好転や製造技術の革新などにより大きな成長を遂げることがある反面、需給調整などによる予期せぬ市場の縮小が起こった場合、当社グループの業績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

② 研究開発に関するリスク

当社グループは、モーション・コントロール分野における技術・技能集団として、研究開発部門への重点的な資源配分を実施することで、高付加価値で特長ある製品を開発し、市場投入していきます。しかしながら、研究開発への資源配分及び研究開発のための人材確保の努力を継続する一方、技術革新に追い付きお客様や市場の需要を満たす魅力的な新製品を開発できなかった場合または研究開発の成果である新製品の市場投入もしくは市場浸透が遅れた場合、当社グループの業績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

③ 品質に関するリスク

当社グループは、お客様満足の向上と市場における優位性を高めるために、ISO9001の認証取得をはじめとして、品質保証体制の強化に努めております。しかしながら、予期せぬ製品の不具合が発生することなどにより、当社グループの業績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

④ 外国為替の変動に関するリスク

当社グループは、米国に連結子会社2社、中国に連結子会社1社、韓国に連結子会社1社、欧州に連結子会社9社を有し、事業における積極的な国際化を推進しております。従いまして、為替変動は当社グループの事業活動に悪影響を与えることがあります。また、為替変動は、当社グループの外貨建取引に伴う収益・費用及び資産・負債の円換算額に影響を与え、業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

⑤ 退職給付債務に関するリスク

当社及び一部の連結子会社では、確定給付型の退職年金制度または退職一時金制度を設けておりますが、退職給付債務及び退職給付費用の計算の基礎となる条件の見直しや、年金資産の運用環境悪化等が、当社グループの業績及び財政状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

なお、2016年12月1日より、確定給付企業年金制度の一部を確定拠出年金制度へ移行しております。

⑥ 生産に関するリスク
 当社グループは、生産能力の向上及び増強に努めておりますが、生産能力が計画どおりに向上する保証はありません。また、当社グループは、生産能力を向上させるため、特に国内の工場が位置する地域において生産業務に携わる従業員を雇用する必要がありますが、当社グループがその労働力需要を満たす能力は、多くの外部要因(工場が位置する地域において適切な従業員を確保できる可能性、当該地域の失業率、給与水準及び人口動態等)に左右されます。計画どおりに生産能力が向上したとしても、お客様が求める水準またはスピードを満たすよう生産ができる保証はありません。
 他方で、当社グループの商品に対するお客様の需要が当社グループの予想を下回った場合、当社グループの生産能力が十分に活用されず、投下資本等を回収することができないか、または回収できるとしても想定より長い期間を要する可能性があります。
 これらの場合、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 ⑦ 調達に関するリスク

当社グループは、幅広いサプライヤーから原材料、部品及び生産設備を購入しておりますが、サプライヤーの供給不足、費用増加またはその他の理由により当社グループの利用量が制限される可能性があります。原材料、部品及び生産設備の価格上昇または利用制限があった場合、当社グループの業績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

 ⑧ 人材の確保に関するリスク

当社グループの事業においては、事業及びノウハウに関する深い知識と高い技術を有する研究者その他の技術者を含む熟練した従業員並びに能力の高い役員を確保する必要があり、かかる従業員または役員を確保できなかった場合、当社グループの業績等に悪影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループの人材が競合他社に流出した場合、当該人材を通じて競合他社に当社グループの技術やノウハウが漏れ、当社グループの業績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

 ⑨ 海外事業の展開に関するリスク

当社グループは、グローバルに事業を展開しているため、次のような海外事業展開に関するリスクがあります。
 ・各国の政治情勢及び経済状況の変化及び社会的混乱

・海外市場の関連産業における景気の減速または後退

各国の予期しない法律や規制の変更(移転価格問題、当社の在外子会社及び関連会社による送金その他の支払いにかかる源泉徴収その他の税金の賦課または増税等)

・各国における許認可の取得及び維持の困難性及び不確実性

・取引制限または関税の変更

・テロ、戦争、自然災害、悪天候、感染症その他の制御不能な要因

・当社グループが事業を行っている国もしくは地域と日本との間の、またはかかる国もしくは地域間の政治的、経済的関係の悪化

・各国の政府による投資制限及びその他の規制の実施または増加

・人件費の著しい増加及び賃金上昇

・労働紛争、争議行為、ゼネストまたは労働環境におけるその他の障害

・開発途上のインフラによりもたらされる予期せぬ事故(停電等)

・文化の違いやその他の要因による現地の人材及び事業の管理の困難性

・一部の国における限定的な知的財産権の保護

また、海外における事業の展開に際しては、投下資本の回収が当初の計画どおりに進まない場合があり、収益の増加よりも早く費用の増加が生じることがあります。これにより、当社グループの業績及び財政状態に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。

 ⑩ M&A及び事業提携等に関するリスク

当社グループは、ドイツ子会社ハーモニック・ドライブ・エスイーの買収をはじめ、様々な業務及び資本提携並びに合弁事業を行っており、適切な機会があれば、さらなる買収(M&A)や事業提携等を行う可能性があります。これらを行う際は、利益性及び投資利益率の見込みを慎重に検討しますが、実施時に見込んだ計画どおりに進捗しない可能性、シナジー効果を実現できない可能性、買収した事業を成功裏に経営できない可能性があります。これらの場合、買収や事業提携等にかかるのれんや無形固定資産の減損等を通じ、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 ⑪ 事業戦略の実現に関するリスク

当社グループは、良好な財政基盤を維持しつつ生産能力を増強させることを含め、事業戦略を推進しております。しかしながら、事業戦略の実現や目標の達成は様々な要因(当社グループが事業を行う地域における一般的な経済環境及び市場環境、競争や需要の水準等)に左右されるため、当社グループの事業戦略の実施が意図したとおりの効果をもたらさない可能性、実際の数値が事業計画の前提と異なる可能性、設定した目標が達成されない可能性があります。また、かかる目標が将来的にさらに変更される可能性もあります。

 

 ⑫ 競合に関するリスク

当社グループは、減速装置及びメカトロニクス製品の市場において高い市場占有率を持つ製品を多数保有しております。新規参入者により競争が激化した場合、製品の利益率の悪化や販売の機会損失の発生により、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

⑬ 知的財産に関するリスク
特許及び商標を含む知的財産権並びに企業機密情報を含むノウハウは、当社グループにとって重要な競争力の源泉であり、その保護に努めていますが、当社グループの権利が干渉を受けた場合、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループが事業活動の中で他者の知的財産権を意図せず侵害した場合、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑭ 訴訟その他の法的手続きに関するリスク

当社グループの事業活動において、予期せぬトラブル・問題が生じた場合、当社グループの責任の有無にかかわらずこれらに起因する損害賠償の請求や、訴訟等の提起を受ける可能性があります。かかる訴訟等は、とりわけ製品、環境責任及び特許権侵害の申立て等の知的財産に関する問題に関連して生じる可能性があります。これらの事象が発生した場合は、提訴内容や損害賠償額の状況及びその結果によっては当社グループの社会的信用が低下することに加え、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

⑮ 法令及びコンプライアンスに関するリスク

当社グループの事業活動は、貿易、反トラスト、知的財産、製造物責任、労働関連法令、コーポレート・ガバナンス、個人情報保護、環境法令、政府の許認可、課税、国家間の国家安全保障に関する法令及び国家安全保障のための輸出入の規制を含む、各国における規制の対象となっております。当社グループのリスク管理体制、コンプライアンス体制及び内部統制システムを維持する努力が効果的でないかまたは不十分である場合、当社グループは(従業員または第三者によって行われたかを問わず)不正行為または腐敗行為に関与する可能性があり、また法令を遵守していないとみなされる可能性があります。これらにより、当社グループに制裁または罰金が科せられる可能性があり、また当社グループの事業及びレピュテーションに悪影響を及ぼす可能性があります。さらに、今後、法規制が強化された場合や、事業活動を展開する地域が拡大した場合、法規制への対応に追加費用を要することとなり、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

⑯ 環境法令及び有害物質に関するリスク

当社グループの事業は、特に製造プロセスにおいて、使用、貯蔵、排出及び廃棄に厳しい規制がかかっている化学物質等の使用を伴うため、当社グループが事業を展開している国々において幅広い環境法令及び規制の対象となっております。また、当社グループは、エネルギー及び資源保護、リサイクル、地球温暖化、汚染防止、並びに環境衛生及び安全性について、様々な法令及び工業規格の対象となっております。環境法令は、今後、規制が強化される可能性があります。その場合に当社グループの一部の生産及び一部の活動が制限もしくは禁止されてしまう可能性、または是正措置命令を受け、これの実行に伴う費用、適用された環境法令に準拠するために必要となる設備投資その他の費用が相当な金額になる可能性があります。これらによって、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

⑰ 資金調達に関するリスク

当社グループのコミットメントライン契約等の一部借入金の契約には、財務制限条項が付されているものがあります。今後、当該財務制限条項への抵触があった場合、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、市場金利の急激な上昇等によって借入金に係るコストが増加した場合にも、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

⑱ その他のリスク

当社グループだけでは避けることのできない、経済や政治環境の変化、テロ、戦争、自然災害、悪天候、感染症その他の制御不能な要因などの予期せぬ事象が発生した場合、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

① 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度における世界経済は、国際情勢が一段と不安定化したことによる、強いインフレ圧力、資源価格・原材料価格の高騰、加えて中国経済の成長鈍化など、先行きの不透明感が一段と強まりました。

当社グループの受注環境は、中国における製造業の設備投資の鈍化、最先端半導体の新規設備投資の停滞などの影響を受け、お客様の需要動向懸念により、先々の発注を手控える動きが続き、全般的に厳しい状況となりました。一方、国内では、本格的な回復とは言えない状況下ではありますが、受注の底入れは確認でき、当社製品の在庫が適正化されたお客様からの受注が徐々にではありますが戻りはじめました。結果として、通期の連結受注高は前期比20.9%減少441億4百万円となりました。

また、連結売上高は、特に前期から継続している国内受注の低迷の影響が大きく、前期比22.0%減少557億96百万円となりました。

用途別の売上高の動向につきましては、産業用ロボット向けは、主要市場である中国における設備投資鈍化に加え、EV関係の設備投資も抑制されるなど、大幅に減少しました。半導体製造装置向けは、特に最先端分野において、データセンター用途、生成AI関連用途など新たな投資に向かう姿勢は見られたものの、当期は本格的な動きには至らず、減少しました。一方、先進医療用途(手術支援ロボット関連)は、米国のお客様を中心に堅調に需要が拡大し、売上高が増加しました。車載用途は、半導体不足によるお客様での生産調整は前期下期より徐々に改善され、当期の売上は堅調に推移しました。

損益面につきましては、生産能力増強投資を実施したことにより、減価償却費が増加したことに加え、今期は国内生産工場の稼働率低下の影響により、営業利益は前期比98.8%減1億24百万円となりました。また、連結子会社ハーモニック・ドライブ・エスイーに係る無形固定資産の減損損失を281億59百万円計上したこと等により、親会社株主に帰属する当期純損失は248億6百万円(前期は親会社株主に帰属する当期純利益75億95百万円)となりました。

なお、製品群別の売上高は、減速装置が394億32百万円前期比30.8%減)、メカトロニクス製品が163億63百万円前期比12.6%増)で、売上高比率はそれぞれ70.7%29.3%となりました。

 

報告セグメントの業績は、以下のとおりであります。

 

(日本)

半導体需給の緩和に伴う車両生産の回復により、車載向け用途の売上高は増加しました。一方、中国でのエレクトロニクス関連の設備投資や半導体関連の設備投資に軟調な動きがみられたことに加え、当社グループのお客様や販売店各社における当社製品の在庫調整により、産業用ロボット向け、半導体製造装置向け、フラットパネルディスプレイ製造装置向け、その他一般作業機械向けの需要が減少し、売上高は前期比42.9%減少259億71百万円となりました。また、セグメント利益(経常利益)は、減収の影響により、前期比64.6%減少45億13百万円となりました。

 

(北米)

為替相場が円安に推移したことに加え、先進医療用途(手術支援ロボット関連)向けやアミューズメント機器向けの需要が増加し、売上高は前期比22.3%増加132億84百万円となりました。また、セグメント利益(経常利益)は、増収の影響により、前期比21.4%増加17億7百万円となりました。

 

(欧州)

産業用ロボット向けの需要が減少したものの、為替相場が円安に推移したことに加え、最先端半導体製造装置向けの需要が増加し、売上高は前期比8.7%増加165億40百万円となりました。また、セグメント利益(経常利益)は、ハーモニック・ドライブ・エスイー株式取得時に計上した無形固定資産に係る減価償却費18億98百万円の負担により、前期比65.7%減2億14百万円となりました。

 

当連結会計年度における財政状態は、以下のとおりです。

総資産は、前連結会計年度末と比較して、351億93百万円減少前期比22.8%減)し、1,191億42百万円となりました。これは、その他流動資産が14億36百万円増加(前期比109.9%増)した一方で、売上高の減少に伴い受取手形が43億23百万円減少(前期比58.4%減)、売掛金が14億96百万円減少(前期比14.7%減)したことに加え、ハーモニック・ドライブ・エスイーの子会社化時に認識した無形固定資産(のれん、顧客関係資産及び技術資産)の一部について減損処理を実施したことにより無形固定資産が274億35百万円減少(前期比68.0%減)したこと、保有する有価証券の時価変動により、投資有価証券が22億63百万円減少(前期比20.5%減)したことが主な要因です。

負債は、前連結会計年度末と比較して、106億39百万円減少前期比21.1%減)し、397億40百万円となりました。これは、前述の無形固定資産の減損に伴う取り崩しにより繰延税金負債が41億65百万円減少(前期比41.6%減)したことに加え、借入金の返済に伴い長期借入金が25億65百万円減少(前期比14.4%減)したこと、短期借入金が19億9百万円減少(前期比73.2%減)したことが主な要因です。

純資産は、前連結会計年度末と比較して245億53百万円減少前期比23.6%減)し、794億1百万円となりました。これは、為替変動の影響により為替換算調整勘定が47億81百万円増加(前期比58.7%増)した一方で、前述の無形固定資産の減損の影響及び配当の実施等により利益剰余金が273億73百万円減少(前期比42.2%減)したことが主な要因です。

 この結果、自己資本比率は、前連結会計年度末の67.4%から66.6%になりました。

 

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べて9億80百万円減少し、189億41百万円となりました。
 当連結会計年度に係る区分ごとのキャッシュ・フローの状況は次のとおりです。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における営業活動による収入は127億28百万円となりました。(前連結会計年度は108億50百万円の収入

これは、税金等調整前当期純損失を276億6百万円、法人税等の支払による支出を38億92百万円計上した一方で、減損損失を281億59百万円計上したこと、減価償却費を91億89百万円計上したこと、売上債権が62億34百万円減少したことが主な要因です。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における投資活動による支出は59億50百万円となりました。(前連結会計年度は86億63百万円の支出

これは、定期預金の払戻しによる収入が17億7百万円あった一方で、有形固定資産の取得による支出が49億35百万円、定期預金の預入による支出が21億88百万円あったことが主な要因です。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における財務活動による支出は81億22百万円となりました。(前連結会計年度は15億99百万円の支出

これは、短期借入れによる収入が24億80百万円あった一方で、短期借入金の返済による支出が44億10百万円、長期借入金の返済による支出が26億56百万円、配当金の支払額が25億66百万円あったことが主な要因です。

 

 

 

③ 生産、受注及び販売の状況

a. 生産実績

当連結会計年度における生産実績は次のとおりであります。

 

セグメントの名称

生産高(千円)

前期比(%)

日本

減速装置

25,367,761

△43.8

メカトロニクス製品

6,348,550

△12.3

北米

減速装置

4,542,696

18.3

メカトロニクス製品

5,870,712

32.6

欧州

減速装置

9,538,660

△9.7

メカトロニクス製品

4,874,168

52.9

合 計

56,542,550

△24.0

 

 

(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しております。

2.当社グループの報告セグメントは、所在地別(日本、北米、欧州)に区分しております。

3.当社グループは、製品の種類、性質、製造方法、販売市場等の類似性から判断して、同種・同系列の精密減速機事業を専ら営んでおり、事業の種類別セグメントは単一でありますが、報告セグメントの製品別内訳を区分表示しております。

4.磁気応用機器の開発、製造、販売を営んでいる株式会社ハーモニックウィンベルの生産実績は、メカトロニクス製品に区分、集計し、表示しております。

 

b. 受注実績

当連結会計年度における受注実績は次のとおりであります。

 

セグメントの名称

受注高
(千円)

前期比
(%)

受注残高
(千円)

前期比
(%)

日本

減速装置

19,670,225

△4.7

4,367,658

△41.5

メカトロニクス製品

1,661,663

△61.3

550,970

△68.8

北米

減速装置

4,733,360

△16.3

4,114,616

△18.7

メカトロニクス製品

3,289,557

△54.2

3,378,676

△53.7

欧州

減速装置

9,762,430

△25.7

6,045,652

△12.7

メカトロニクス製品

4,987,642

2.3

2,667,955

△12.6

合 計

44,104,880

△20.9

21,125,530

△33.1

 

 

(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しております。

2.当社グループの報告セグメントは、所在地別(日本、北米、欧州)に区分しております。

3.当社グループは、製品の種類、性質、製造方法、販売市場等の類似性から判断して、同種・同系列の精密減速機事業を専ら営んでおり、事業の種類別セグメントは単一でありますが、報告セグメントの製品別内訳を区分表示しております。

4.磁気応用機器の開発、製造、販売を営んでいる株式会社ハーモニックウィンベルの受注実績は、メカトロニクス製品に区分、集計し、表示しております。

5.受注残高は、当連結会計年度において日本セグメントを中心に発生した703,134千円の受注取り消し額を差し引いております。

 

c. 販売実績

当連結会計年度における販売実績は次のとおりであります。

 

セグメントの名称

販売高(千円)

前期比(%)

日本

減速装置

22,695,240

△44.4

メカトロニクス製品

3,276,318

△29.0

北米

減速装置

5,698,189

12.7

メカトロニクス製品

7,586,662

30.8

欧州

減速装置

11,039,465

△0.6

メカトロニクス製品

5,500,580

33.7

合 計

55,796,455

△22.0

 

 

(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しております。

2.当社グループの報告セグメントは、所在地別(日本、北米、欧州)に区分しております。

3.当社グループは、製品の種類、性質、製造方法、販売市場等の類似性から判断して、同種・同系列の精密減速機事業を専ら営んでおり、事業の種類別セグメントは単一でありますが、報告セグメントの製品別内訳を区分表示しております。

4.磁気応用機器の開発、製造、販売を営んでいる株式会社ハーモニックウィンベルの販売実績は、メカトロニクス製品に区分、集計し、表示しております。

5.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

販売高(千円)

割合(%)

販売高(千円)

割合(%)

株式会社羽根田商会

8,800,059

12.3

日産自動車株式会社

6,547,422

11.7

 

(注) 1. 当連結会計年度における株式会社羽根田商会に対する販売高は、当該販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10に満たないため記載しておりません。

   2. 前連結会計年度における日産自動車株式会社に対する販売高は、当該販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10に満たないため記載しておりません。

 

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2024年6月24日)現在において、当社グループが判断したものであります。

 

① 重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しております。 詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しております。

 

(繰延税金資産)
 当社グループは、繰延税金資産について、将来の利益計画に基づいた課税所得の発生時期及びその金額を合理的に見積もり、回収可能性があると判断した将来減算一時差異について繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、経営者が見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、翌連結会計年度以降の繰延税金資産が減額され税金費用が増加する可能性があります。
 
 (固定資産の減損処理)
 当社グループは、固定資産について減損の兆候の有無に係る判定を行い、認識及び測定のプロセスを経た上で、減損が必要と認められる固定資産については帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定に当たっては、当該資産の耐用年数、将来の使用目処、将来キャッシュ・フロー、割引率の設定などにおいて、経営者の判断や見積もりを用いておりますが、今後の事業計画や市場環境の変化により、当該見積りや判断の前提条件や仮定に変更が生じた場合には減損処理が必要となることがあり、翌連結会計年度以降の財政状態及び経営成績に重要な影響を与える可能性があります。

 

 

 

 

② 当連結会計年度の財政状態及び経営成績の分析

a. 財政状態

 (流動資産)

流動資産は、前連結会計年度末に比べて47億17百万円減少前期比9.0%減)し、474億57百万円となりました。これは、その他流動資産が14億36百万円増加(前期比109.9%増)した一方で、受取手形が43億23百万円減少(前期比58.4%減)したことに加え、売掛金が14億96百万円減少(前期比14.7%減)したことが主な要因です。
 

 (固定資産)

固定資産は、前連結会計年度末に比べて304億76百万円減少前期比29.8%減)し、716億84百万円となりました。これは、ハーモニック・ドライブ・エスイーの子会社化時に認識した無形固定資産(のれん、顧客関係資産及び技術資産)の一部について減損処理を実施したことにより無形固定資産が274億35百万円減少(前期比68.0%減)したこと、保有する有価証券の時価変動により、投資有価証券が22億63百万円減少(前期比20.5%減)したことが主な要因です。

 この結果、総資産は前連結会計年度末に比べて351億93百万円減少前期比22.8%減)し、1,191億42百万円となりました。

 

 (流動負債)

流動負債は、前連結会計年度末に比べて47億47百万円減少前期比28.8%減)し、117億19百万円となりました。これは、借入金の返済に伴い短期借入金が19億9百万円減少(前期比73.2%減)したことが主な要因です。

 

 (固定負債)

固定負債は、前連結会計年度末に比べて58億92百万円減少前期比17.4%減)し、280億20百万円となりました。これは、前述の無形固定資産の減損に伴う取り崩しにより繰延税金負債が41億65百万円減少(前期比41.6%減)したことに加え、借入金の返済に伴い長期借入金が25億65百万円減少(前期比14.4%減)したことが主な要因です。

 この結果、負債合計は前連結会計年度末に比べて106億39百万円減少前期比21.1%減)し、397億40百万円となりました。

 

 (純資産)

純資産合計は、前連結会計年度末に比べて245億53百万円減少前期比23.6%減)し、794億1百万円となりました。これは、為替変動の影響により為替換算調整勘定が47億81百万円増加(前期比58.7%増)した一方で、前述の無形固定資産の減損の影響及び配当の実施等により利益剰余金が273億73百万円減少(前期比42.2%減)したことが主な要因です。

この結果、自己資本比率は、前連結会計年度末の67.4%から66.6%になりました。

 

 

 

b. 流動性および資金の源泉

 (キャッシュ・フロー)

キャッシュ・フローの状況につきましては、「第2 事業の状況 4経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

 (資金需要)

当社グループの運転資金需要のうち主なものは、製品製造のための材料の購入や外注加工費の支払いのほか、製造費、販売費及び一般管理費などの営業費用に係るものです。また、当社グループの研究開発費は研究開発に携わる従業員の人件費が主要な部分を占めております。

設備投資、M&Aなどに係る投資資金需要に対しましては、自己資金の充当を優先した上で、不足する資金については直接金融、間接金融など多面的な調達方法を検討し実行いたします。なお、当連結会計年度における設備投資のうち主なものは、工作機械等の製造装置、各種検査装置、切削工具、治具の取得などでありますが、これらへの投資にあたっては、有形・無形固定資産の購入とする方法と、リース取引による方法とを併用しております。

 

c. 経営成績

 (売上高)

売上高は、前連結会計年度に比べて157億30百万円減少前期比22.0%減)し、557億96百万円となりました。これは、国内受注の底入れが確認でき、当社製品の在庫が適正化されたお客様からの受注が徐々に戻りはじめたなか、前期から継続している受注低迷の影響を受けたことによります。

 

 (営業利益)

営業利益は、前連結会計年度に比べて101億円減少前期比98.8%減)し、1億24百万円となりました。これは、前連結会計年度に実施した生産能力増強投資に伴い、減価償却費が増加したことに加え、国内工場の稼働率が大幅に低下した影響によるものです。

 

 (営業外損益)

営業外収益は、前連結会計年度に比べて1億47百万円減少前期比14.5%減)し、8億69百万円となりました。これは、補助金収入が1億34百万円減少したことなどが主な要因です。

営業外費用は、前連結会計年度に比べて59百万円減少前期比12.4%減)し、4億24百万円となりました。これは、自己株式取得費用が1億16百万円減少したことなどが主な要因です。

 これらの結果、経常利益は前連結会計年度に比べて101億87百万円減少前期比94.7%減)し、5億70百万円となりました。

 

 (特別損益)

特別利益は、前連結会計年度に比べて4百万円増加前期比125.9%増)し、8百万円となりました。特別損失は、前連結会計年度に比べて276億18百万円増加し、281億85百万円となりました。これは、前述の無形固定資産の減損に伴い減損損失を281億59百万円計上したことが主な要因です。

 

 (親会社株主に帰属する当期純利益)

上記の結果、親会社株主に帰属する当期純損失は248億6百万円(前連結会計年度は親会社株主に帰属する当期純利益75億95百万円)となりました。

 

d. 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは、目標とする経営指標を売上高営業利益率:20%以上、自己資本当期純利益率(ROE):10%以上としております。また、2021年度を初年度とする中期経営計画(2021-2023年度)において、2023年度における財務目標を連結売上高 700億円、売上高営業利益率 21.4%、ROE10%以上と掲げておりました。しかしながら、中期経営計画(2021年度-2023年度)の最終年度である当連結会計年度の実績(売上高557億96百万円、売上高営業利益率0.2%)は、事業環境の悪化により大幅な未達となりました。2024年度の当社グループの事業環境は「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、世界経済のさらなる不透明感の高まりが予想される一方で、設備投資等による製品需要が徐々に回復し、お客様や販売店各社における当社製品の在庫調整も進み、次第に受注高が回復するものと想定しています。これらの見通しをもとに新たに策定した新中期経営計画(2024-2026年度)では、最終年度となる2026年度における財務目標を連結売上高 900億円、売上高営業利益率 16.7%、ROE10%以上と掲げました。

なお、連結売上高、売上高営業利益率、ROEの過去5年間の推移は以下のとおりです。

 

2019年度

2020年度

2021年度

2022年度

2023年度

連結売上高

374億87百万円

370億34百万円

570億87百万円

715億27百万円

557億96百万円

売上高営業利益率

△0.5%

2.3%

15.3%

14.3%

0.2%

ROE

△1.1%

0.7%

6.6%

7.5%

△27.1%

 

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

 当社グループは、「モーションコントロール技術で社会の技術革新に貢献する」というミッションを推進し、未来と調和するトータル・モーション・コントロールのベストプロバイダーであり続けることを目指しております。そのために基礎研究の推進による次世代製品の開発とお客様のニーズを製品に反映させる応用開発の両面を追求しております。減速装置分野においては、より小型・軽量・高精度・高トルク容量比となる機構を追求し、メカトロニクス製品分野においては、これら減速装置分野の成果と、独自のモーター、センサー、制御技術等を応用し、各種アクチュエーター及びコントローラーの研究開発に注力しております。当社グループの研究開発はグループ内の独自技術によって行うことを中心にしておりますが、外部研究機関との共同研究にも力を入れ、次世代のモーションコントロールに必要となり得る要素開発と製品化に取り組んでまいりました。その成果として、先進医療(手術ロボット)、ヒト型ロボット、モビリティ、航空・宇宙などの用途への採用が進んでおります。

 当社グループ内において、研究開発の主たる部分は当社が担っております。カタログ標準製品の開発やお客様の要求に基づく開発設計を行う「開発・技術本部」、新しい自由な発想に基づいて現有製品の枠組みを超える新しい原理や機構を追求する「新原理機構研究室」、ハーモニックドライブ®の基礎技術を深耕し、性能向上の可能性を見出す「ハーモニックドライブ研究所」の3本部体制を設けております。米国シリコンバレーには、調査・研究を目的としたオフィスを設け、世界最先端のIT技術やロボット技術が集積する同地における足掛かりを築いております。これにより、様々なお客様の要求に応じるのはもとより、将来を見据えた先行的な研究開発や全ての研究開発の基本となる基礎技術の追求、さらには将来的にお客様に革新的な価値を提供できるような新原理や新機構の研究にも積極的に取り組み、加速する時代の変化にも対応してまいります。また、穂高工場敷地内の研究棟において、超精密な製品を生産・測定するための生産技術及び技能の研究を行っております。

 特に新規開発案件では、最新の軽量化技術と工法開発を適用した提案を行い、お客様の技術革新に貢献しました。また、メカトロニクス製品の分野におきましても、次世代ドライバー(制御機器)の開発に加え、トルクセンサーの開発にも注力し、製品付加価値を向上させるとともに、新たな技術基盤を強化しました。

 なお、当連結会計年度における研究開発要員は146名であり、研究開発費として3,613百万円を投下しております