第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(1) 会社の経営の基本方針

当社グループは、遵法に徹し、公正な企業活動を行い、技術と製品による価値を創造し、社会と産業の発展に貢献することを企業理念としております。グローバルな視野をもって、幅広い分野のお客様との信頼関係を築き、多様なご要望に応え、環境にやさしい、生活を豊かにする製品づくりで社会への貢献を目指しております。そのために、基盤技術の向上により、様々なお客様との接点や対話を増やし、関係を深めていくことに努めております。

(2) 目標とする経営指標、中長期的な会社の経営戦略

当社グループは、信越グループの総合力、樹脂加工メーカーとしての技術力とグローバルなニーズへの対応力を更に高め、いかなる経済環境にあっても力強く成長を続ける企業集団として、既存事業の競争力を強化し、売上の拡大と利益の向上を図り、また、新事業の創出に会社一丸となって積極的に挑戦しております。資産効率の向上、財務基盤の更なる強化、企業価値の最大化を推し進め過去最高益更新を目指し、いかなる環境にあっても持続的成長の達成を目指してまいります。2024年3月期を初年度とする5か年の中期経営計画「Shin-Etsu Polymer Global & Growth 2027」を策定いたしました。以下に示す事業戦略と財務・非財務戦略の概要に基づき、外部環境の変化に応じた施策を実施してまいります。
 
<事業戦略>
・成長領域における新規需要の取込み
・基盤領域における販売力強化と生産性向上
・海外売上比率の拡大
 
<財務・非財務戦略>
・成長領域における重点的な投資の実行
・株主還元の強化
・ESGへの取組みを強化
 
<2028年3月期の目指すべき業績等方針>
・売上 1,500億円
・経常利益 200億円 ※
・ROE 10%超
・配当性向 ~50%

※ 経常利益と営業利益は同水準を想定

 

(3) 経営環境及び対処すべき課題

当社グループの企業理念の実現に向け、2023年に開始した中期経営計画「Shin-Etsu Polymer Global & Growth 2027」(略称 SEP G&G 2027)に掲げる各戦略を推進し、成果につなげることが当社グループの課題と認識しております。

 

●SEP G&G 2027の各戦略の進捗状況と取り組み

(事業戦略)

中期経営計画の達成に向けて、引き続き成長領域における新規需要の取り込みと基盤領域における販売力強化に努めてまいります。

成長領域と位置づける半導体関連容器は、生成AIの普及などを背景に半導体の需要が増加しており長く続いた調整局面の好転が見込まれます。当社はかねてより需要増に対応した生産体制を確立すべく、糸魚川工場を拡張し東京工場の新棟建設を進めてまいりました。今後も半導体需要の増加に備えた安定供給体制を整え事業の拡大を目指してまいります。

もう一つの成長領域である自動車関連製品では、足元でEVの普及に減速感が見られますが、将来的には環境対応車への転換や自動運転化に伴う新技術の進展が見込まれます。当社は新規製品である車載デバイス向け熱対策製品の量産開始を目指し準備を進めております。また、導電性ポリマーや高機能フィルムなど機能性材料では車載電子部品向けの新たな技術を確立しつつあります。高い機能性を追求することによりEV関連分野においても事業の拡大を目指してまいります。

また、基盤領域と位置づける入力デバイス、OAローラ、食品包装用ラッピングフィルム、機能性コンパウンドなどの製品は市場シェア拡大や独自製品の市場投入などにより、さらなる販売力強化に努めてまいります。

一方で、最適な経営資源の配分や事業ポートフォリオの再編の取り組みとして、塩ビパイプ等事業を2023年11月に譲渡いたしました。

 

(財務・非財務戦略)

基盤領域の収益向上によって企業収益の土台を構築し、半導体関連容器の能力増強や車載デバイス向け熱対策製品の生産体制確立など成長領域における積極的な設備投資を行います。また、シナジーの見込める領域でのM&Aも検討してまいります。

中期的には、ROE10%超の水準を目指し、配当性向50%以内で業績に応じた中期的に安定的な配当の継続を計画してまいります。なお、2024年3月期の配当水準は、配当性向約43%といたします。

当社グループは、企業理念に基づき、安全、公正を最優先とする経営に徹し、社会とともに成長し続ける企業を目指しております。社会からの要請・期待に応えながら、事業を通じて社会課題の解決を目指し、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。

CO排出量の削減をESGの重点課題の一つに掲げており、2030年に2013年度比46%の削減、2050年のカーボンニュートラル達成の目標を設定いたしました。省エネ設備への切り替え等従来の省エネ活動とともに、一部工場で実施している再生可能エネルギーへの転換を他の工場に拡大してまいります。

 

文中の将来に関する事項は、当有価証券報告書提出日時点において当社グループ(当社及び連結子会社)が判断したものであります。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) ガバナンス

当社グループでは、当社代表取締役社長を委員長としたサステナビリティ委員会を設置し、CO排出量削減目標等、気候変動対応に関する審議や、業務執行部門で行われる各年度の活動報告等を定期的に受けるなど、サステナビリティ経営の更なる強化のために必要な議論を行っております。当委員会で議論された重要な事案に関しては、当社取締役会及び監査役会に報告され、対応状況について監視・監督が行われております。当期は一部の工場にて実施していた電力の再生可能エネルギーへの転換を他の工場にも拡大すべく、中期経営計画で示した事業成長と連動したCO排出量削減のためのロードマップを策定し、2024年4月より実行に移しております。

 

(2) 戦略

当社グループでは、IEA(国際エネルギー機関)やIPCC(気候変動政府間パネル)等が発行する報告書におけるシナリオを参照した以下の2つのシナリオを用いて、気候変動がより顕在化した未来において当社の主要事業で発生が見込まれる気候関連リスク及び機会を特定し、それらの財務上の影響を定性的に評価いたしました。

1.5℃シナリオ

厳しい温暖化対策をとれば、年平均気温が産業革命時期比で 1.5℃未満の上昇に抑えられるシナリオ

4℃シナリオ

現状を上回る温暖化対策をとらなければ、年平均気温が産業革命時期比で3.2~5.4℃上昇することが想定されるシナリオ

 

 

気候関連のリスク

移行リスク(低炭素経済への移行に関連したリスク)

外部環境の変化

影響度

想定

時期

信越ポリマーグループへの影響

対応策

・GHG排出規制の強化

・炭素税の導入

中期

・カーボンニュートラル達成に要する開発・調達コストの増加

・炭素税導入による増税

・省エネ設備導入

・再生可能エネルギーの購入

・太陽光発電設備導入

・カーボンクレジットの購入

・低炭素製品ニーズの拡大

・気候変動に関連した新技術の必要性

中期

・エネルギー関連技術の開発競争激化による研究開発費の増加

・生産増加による設備投資の増加

・低炭素型原材料への転換

・環境配慮製品の拡充

・技術革新の推進

・設備改善による生産性の効率化

・石油由来原材料価格の高騰

・顧客の石油由来原材料の使用量削減

中期

・原材料価格上昇による調達コストの増加

・低炭素型原材料対応設備の導入によるコストの増加

・既存製品の売上げの減少

・低炭素型原材料への転換

・代替原材料の検討

・代替原材料対応設備の導入

 

物理リスク(気候変動の物理的影響に関連したリスク

外部環境の変化

影響度

想定

時期

信越ポリマーグループへの影響

対応策

・異常気象による風水害発生

短期

長期

・工場への浸水・洪水被害による事業活動停止や縮小による売上の減少

・復旧費用、自然災害対策費用、保険料などコストの増加

・被災によるサプライチェーンの寸断による調達コストの増加や販売機会の損失

・被災により流出した化学物質の除去費用等の発生

・BCPマニュアルの更新

・リスクアセスメントの実施・持続可能な調達に向けたサプライチェーンの管理

・原材料調達先の分散化、多様化

・有害化学物質管理の徹底

 

 

気候関連の機会

製品、サービスの機会

外部環境の変化

影響度

想定

時期

信越ポリマーグループへの影響

対応状況

・ガソリン車等からEVへの転換

・デジタルネットワーク社会の拡大

・CO排出量削減ニーズの増加

・低炭素製品ニーズの増加

短期

長期

<電子デバイス> EV向け新製品の開発、市場投入

EV向け熱対策製品の量産化に向けて設備を準備中

<精密成形品> 需要拡大に伴う半導体関連容器の販売拡大

半導体関連容器の生産能力増強のため糸魚川工場の拡張、東京工場の新棟建設が進行中

<住環境・生活資材> 電子部品向け機能性材料の開発、市場投入

パワー半導体の熱対策として耐熱性薄膜フィルムを開発中

 

想定時期   短期:10年以内/中期:10年~50年/長期:50年超

 

また、当社グループにおける人財の多様性の確保を含む人財の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針は、以下のとおりであります。

 

人財の多様性の確保を含む人財の育成に関する方針

 

〈人財の多様性の確保〉

当社グループでは、「従業員同士の多様性を認め、相手に寄り添う気持ちを持ち、協力し合える職場づくり」をスローガンに、ダイバーシティ&インクルージョン方針を策定しました。当社グループは、多様性を活かせる環境を実現し、持続可能な経営を推進することで、ステークホルダーからの期待に応え続けられる企業であるべく、全社を挙げてダイバーシティ&インクルージョンを推進してまいります。

① 性別、年齢、人種や国籍、障がいの有無、性的志向、宗教・信条、価値観などの多様性だけでなく、キャリアや経験、働き方などの多様性を互いに尊重し、認め合い、共に活躍・成長することのできる職場環境・風土づくりに努めます。

② 多様な従業員一人ひとりがいきいきと主体性を持って働き、能力と自分らしさを最大限に活かして活躍できる社内風土を醸成していきます。

③ 自ら組織運営に参画し、チームワーク力を発揮し、従業員のコミュニケーションを活発にすることで、変革(イノベーション)と新たな価値創造を実現します。

④ 仕事と家庭の両立支援、シニア層や障がい者が働きやすい環境整備など、ライフステージに応じたサステナブルな働き方が可能となり、多様な人財が更に活躍できる職場を目指します。

 

〈人財の育成に関する方針〉

当社グループは、人の育成と成長を経営の最重要課題の一つであると考え、高い専門性や能力を発揮できる人財の育成を積極的に進めてまいります。

当社グループは、「創造と変革を推し進める人財」を求めてまいります。その実現に向けて、ストレッチの効いた高い目標への挑戦を後押しする職場風土づくりや、現場での経験学習サイクルを回せるようなOJTを重視した育成PDCAの醸成に取り組んでまいります。また、従業員一人ひとりが主体的に「学びたい」「もっと活躍したい」「キャリアアップしたい」という意識を持てるように、絶えず学び続けられる環境を提供してまいります。

当社グループは、従業員一人ひとりが自分らしく働き、仕事を通じて成長していく環境づくりの観点から、従業員がチャレンジしやすい人事制度の構築に取り組んでおります。一般職及び管理職においてそれぞれ異なるコース別人事制度を採用し、管理職では期待される役割や職種ごとに、一般職では職務と勤務地を考慮した複数のコースを設定しております。また、当社の人事評価においては、実績や業績のみならず、成果を生み出す原動力となる能力や、組織へ貢献するチームワーク等の姿勢にも着目し、公平性と納得性を重視した評価システムを構築し、運用しております。また人事評価を担当する評価者向けにも年に2回研修を実施することで、評価システム全体の質の向上を図り、公正・公平な評価と人財育成の実践につなげてまいります。

 

社内環境整備方針

当社グループは、様々な価値観や違いを尊重し、全ての人々が持てる力を十分に発揮できる企業風土の醸成に取り組んでまいります。

性別や年齢などに関わらず活躍できる環境整備のため、定年後再雇用制度の充実、女性社員の活躍推進、性別に関わらず育児・介護など各々のライフステージにおいて働きやすい制度の充実を進めております。多様な経験と価値観をもつ人財を受け入れ、組織の活性化及び事業発展につなげるため、中長期的な事業戦略を踏まえ必要な人財の中途採用も積極的に行っております。

 

(3) リスク管理

当社グループでは、当社代表取締役社長を委員長とするサステナビリティ委員会が主体となり、気候変動リスク・機会の特定・評価を行っております。事業に与える影響度の高いリスクと評価されたリスクは、当社取締役会及び監査役会に報告しております。また、特定されたリスク・機会については、リスクの最小化、及び、機会の最大化に向けた戦略の策定や目標の設定を行い、それらの取り組み状況を定期的に取締役会及び監査役会へ報告しております。

 

(4) 指標及び目標

当社グループでは、2050年までのグループ会社全体のCO削減目標を設定いたしました。最初に再生可能エネルギーへの電力変換、省エネ設備への切り替えを積極的に推進いたします。また、太陽光発電の導入も検討いたします。

CO排出量(スコープ1+2)の削減目標

2030年目標

46%削減(2013年度比)

2050年目標

カーボンニュートラル達成

 

 


 

 

また、当社グループでは、上記「(2)戦略」において記載した、人財の多様性の確保を含む人財の育成に関する方針及び社内環境整備に関する指標について、当社においては、関連する指標のデータ管理とともに、具体的な取組みが行われているものの、連結グループに属する全ての会社では行われていないため、連結グループにおける記載が困難であります。このため、次の指標に関する目標及び実績は、連結グループにおける主要な事業を営む提出会社のものを記載しております。

 

指標

目標

実績(当事業年度)

管理職に占める女性労働者の割合

2028年3月までに 5以上

4.5

男女平均継続勤務年数の差異

2026年3月まで3以下に縮小

2.20

男性労働者の育児休業取得率

2025年3月期 20以上

100

労働者の男女の賃金の差異(正規)

2028年3月までに 70以上

71.8

 

(注)管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異の実績は、「第1 企業の概況 5 従業員の状況 (4)管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異」に記載しております。

 

 

3 【事業等のリスク】

 

当社グループ(当社及び連結子会社)の経営成績、財務状態など業績に影響を及ぼす可能性のある主なリスクとしては、以下のようなものが考えられます。なお、記載した事項は、当連結会計年度末(2024年3月31日)現在において当社グループが判断したものであり、業績に影響を与えうる要素は、これらに限定されるものではありません。

 

(1) 経済動向について

当社グループの製品の需要は世界に広がっており、当社グループが製品を販売している国又は地域の経済状態の影響を受けます。また、国際社会情勢の急激な変化により、生産、仕入れ及び販売等に支障が生じ、当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。

(2) 為替レートの変動について

当社グループの海外事業では、アジア、北米、欧州等の地域において事業活動を行っておりますが、各地域における売上げ、費用及び資産等の現地通貨建ての項目は連結財務諸表の作成時に円貨に換算されるため、換算時の為替レートにより評価価値が変動し、結果として当社グループの財政状態及び業績に影響する可能性があります。

(3) カントリーリスクについて

当社グループの海外拠点では、それぞれの国に多様なリスクが存在し、これらが顕在化した場合には当社グループの事業活動に支障が生じ、当社グループの業績及び将来計画に影響する可能性があります。

(4) 原材料価格の高騰・供給不足について

当社グループの製品の多くは、その主原料として石油化学製品を使用しておりますが、原油・ナフサなどの市況変動が、原材料価格の高騰に及び、当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。また、それら供給業者に不測の事態が発生した場合や材料・部材に品質問題又は供給不足が発生した場合は、当社グループの生産活動及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

(5) 他社との競合について

当社グループの関連市場において、海外における競合他社とのシェア及び価格面での競争が激化しており、今後これらの状況によっては、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(6) 公的規制について

当社グループが事業活動を行っている国及び地域では、投資に関する許認可や輸出入に関する規制、公正な競争に関する規制、環境保護に関する規制及びその他商取引、労働、知的財産権、租税、通貨管理等にかかる法令諸規則の適用を受けています。これらの法令諸規則又はその運用にかかる変更は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(7) 新製品開発に関連して

当社グループが事業展開する電子機器、半導体関連の事業分野は、技術革新とコスト競争が激しい業界です。提案型・開発型企業として新製品開発や生産技術改革に努めておりますが、業界や市場の変化に的確に対応できなかった場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(8) 知的財産に関連して

当社グループは、事業を遂行する上で、製品や製造工程における知的財産権を保有し維持管理しています。また、必要に応じて第三者の知的財産権を使用するために相手方からライセンスを取得します。それらの権利保護・維持又は取得が適切に行われない場合、相手方による模倣や訴訟を受ける可能性があり、その結果、費用負担などにより経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(9) 自然災害について

当社グループでは、一部の製品を専門工場において集中生産しております。このため地震、風水害等の自然災害が発生した場合、一部の製品の生産に支障が生じ、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(10) 製造物責任について

当社グループでは、原材料をはじめとして、製品設計、製造・出荷など各工程において最適な品質管理に努めておりますが、予期せぬ製品不具合などで製造物責任賠償などが発生した場合は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(11) 感染症の流行について

新型コロナウイルス感染症等、大規模な感染症の流行が発生した場合、一時的な操業停止やサプライチェーンの停滞等、生産・販売活動等の事業活動が支障をきたし、当社グループの業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

(12) 気候変動について

当社グループは、カーボンニュートラル実現に向け、グループ全体の事業活動の中でCO排出量削減等に取り組んでおりますが、気候変動がより顕在化したり、低炭素社会への移行に適切に対応出来ない場合、当社グループの業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 

当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1) 財政状態の状況

当連結会計年度末における総資産は、建設仮勘定が7,029百万円、建物及び構築物(純額)が4,295百万円、商品及び製品が1,542百万円、ソフトウエアが650百万円それぞれ増加し、現金及び預金が4,446百万円、受取手形、売掛金及び契約資産が2,599百万円、原材料及び貯蔵品が582百万円それぞれ減少したことなどにより140,778百万円(前連結会計年度末比5,414百万円増)となりました。

当連結会計年度末における負債は、未払金が912百万円増加し、支払手形及び買掛金が1,732百万円、未払法人税等が830百万円、流動負債のその他が581百万円それぞれ減少したことなどにより27,811百万円(前連結会計年度末比2,424百万円減)となりました。

当連結会計年度末における純資産は、利益剰余金が5,403百万円増加したことに加え、前連結会計年度末と比較して全ての海外連結子会社の記帳通貨において円安となった結果、為替換算調整勘定が2,688百万円増加したことなどにより、112,967百万円(前連結会計年度末比7,838百万円増)となりました。

この結果、自己資本比率は前連結会計年度末から2.6ポイント増加し、80.0%となり、1株当たり純資産額は、前連結会計年度末から100円23銭増加し、1,394円32銭となりました。

 

(2) 経営成績の状況

当連結会計年度における世界経済は、コロナ禍による経済活動への制約が解消されたことにより緩やかに持ち直しつつありますが、長引くインフレと主要国での金利の引き上げにより回復のペースは鈍化しました。米国では個人消費が堅調でしたが、金融の引き締めにより企業の生産活動は振るいませんでした。欧州では高インフレが続いたことから個人消費が低迷し、外需の落込みにより輸出も減少したため景気は停滞しました。中国では世界的な需要の低迷を受け輸出が減少し、雇用情勢の悪化から個人消費が停滞したことにより景気は減速しました。インド及びアセアン地域では内需が堅調に拡大し、高い成長率が続きました。

日本経済は、部材不足の緩和により企業の生産活動が緩やかに回復し、設備投資や個人消費も持ち直しました。

当社グループ関連の事業環境につきましては、自動車関連産業の需要が上向いたものの、半導体産業の需要が低調に推移し、全体として横ばいとなりました。

このような状況のもと、当社グループは国内外において主力製品及び新規事業製品の拡販に注力した営業活動を継続的に展開し、生産・供給体制の拡充を図ってまいりました。

この結果、当連結会計年度の経営成績は、売上高は104,379百万円(前連結会計年度比3.6%減)、営業利益は11,050百万円(前連結会計年度比13.3%減)、経常利益は11,530百万円(前連結会計年度比11.2%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は8,674百万円(前連結会計年度比1.7%増)となりました。

 

セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。

 

① 電子デバイス事業

当事業では、自動車産業の需要回復により、自動車関連入力デバイスなど車載製品は堅調でしたが、電子機器関連製品が低調に推移し、全体として売上げは前年並みとなりました。

入力デバイスは、ノートPC用タッチパッドは落ち込みましたが、車載タッチスイッチが大幅に伸び、車載キースイッチも堅調で、売上げは前年並みとなりました。

ディスプレイ関連デバイスは、視野範囲/光路制御フィルム(VCF)は好調を維持しましたが、液晶接続用コネクターが落ち込み、売上げは低調に推移しました。

コンポーネント関連製品は、車載用シリコーン成形品が大幅に伸び、電子部品検査用コネクターも堅調で、売上げを伸ばしました。

この結果、当事業の売上高は25,506百万円(前連結会計年度比3.3%増)セグメント利益(営業利益)は2,075百万円(前連結会計年度比22.5%増)となりました。

 

② 精密成形品事業

当事業では、半導体関連容器が低調に推移し、全体として売上げは伸び悩みました。

半導体関連容器は、小口径ウエハー容器の低調が続き、300mmウエハー用容器も軟調に推移し、売上げは伸び悩みました。

OA機器用部品は、半導電ローラは低調に推移しましたが、複合機用定着系ローラが大幅に伸びたことで、売上げは前年並みとなりました。

キャリアテープ関連製品は、半導体チップ搬送用の需要低迷が続き、売上げは減少しました。

シリコーンゴム成形品は、メディカル関連製品は前年並みだったものの、一般成形品が低調に推移し、売上げは伸び悩みました。

この結果、当事業の売上高は47,602百万円(前連結会計年度比4.8%減)セグメント利益(営業利益)は7,211百万円(前連結会計年度比26.9%減)となりました。

 

③ 住環境・生活資材事業

当事業では、人流の回復によりラッピングフィルムの需要回復が進みましたが、塩ビ関連製品の市場環境が非常に厳しく、全体として売上げは低調に推移しました。

ラッピングフィルム等包装資材関連製品は、外食産業での需要が回復し、小巻ラップの好調が続き、売上げは堅調でした。

機能性コンパウンドは、車載用途は好調でしたが、産業機械向けケーブル用途やその他用途向けが振るわず、売上げが低調に推移しました。

機能性材料は、自動車用電子部品用途は前年並みでしたが、ディスプレイ用途が伸び、売上げは堅調でした。

外装材関連製品は、波板などの需要減少が続き、全体として売上げは低調に推移しました。

塩ビパイプ関連製品は、事業譲渡により売上げは大幅に減少しました。

この結果、当事業の売上高は24,184百万円(前連結会計年度比7.8%減)セグメント利益(営業利益)は1,374百万円(前連結会計年度比51.2%増)となりました。

 

④ その他

商業施設や公共施設の内装工事の受注が好調でしたが、その他事業が落込み、全体として売上げは低調に推移しました。

この結果、その他の売上高は7,085百万円(前連結会計年度比3.4%減)セグメント利益(営業利益)は389百万円(前連結会計年度比39.7%増)となりました。

 

 

生産、受注及び販売の実績は、次のとおりであります。

 

① 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

生産高(百万円)

前年同期比(%)

電子デバイス

24,450

98.0

精密成形品

48,884

92.7

住環境・生活資材

16,189

87.9

その他

4,235

127.9

合 計

93,759

94.3

 

(注) 金額は、販売価格によっております。

 

② 受注状況

受注生産はその他の一部においてのみ行っております。

当連結会計年度における受注状況は、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

受注高(百万円)

前年同期比(%)

受注残高(百万円)

前年同期比(%)

その他

3,919

122.5

679

89.7

 

 

③ 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

販売高(百万円)

前年同期比(%)

電子デバイス

25,506

103.3

精密成形品

47,602

95.2

住環境・生活資材

24,184

92.2

その他

7,085

96.6

合 計

104,379

96.4

 

(注) 総販売実績に対する割合が10%以上に該当する販売先はありません。

 

 

(3) キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

① 現金及び現金同等物

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、40,672百万円(前連結会計年度末比3,170百万円の減少)となりました。

なお、フリー・キャッシュ・フロー(営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローの合計)は340百万円の減少(前連結会計年度は2,075百万円の減少)となりました。

 

② 営業活動によるキャッシュ・フロー

当連結会計年度における営業活動による資金の増加額は、11,973百万円(前連結会計年度比2,848百万円の収入増)となりました。これは、税金等調整前当期純利益11,778百万円、減価償却費4,593百万円、減損損失380百万円の計上、売上債権の減少3,093百万円などの増加要因のほか、法人税等の支払い3,878百万円、仕入債務の減少2,466百万円などの減少要因によるものであります。

 

③ 投資活動によるキャッシュ・フロー

当連結会計年度における投資活動による資金は、有形固定資産の取得による支出14,573百万円、定期預金の減少による収入1,391百万円、事業譲渡による収入790百万円などにより、12,314百万円の減少(前連結会計年度比1,113百万円の支出増)となりました。

 

④ 財務活動によるキャッシュ・フロー

当連結会計年度における財務活動による資金は、配当金の支払い3,398百万円のほか、自己株式の取得による支出827百万円などにより、4,148百万円の減少(前連結会計年度比1,649百万円の支出増)となりました。

 

⑤ 資本の財源及び資金の流動性

当社グループは、財務体質の健全性確保と、研究開発投資や生産設備投資及びM&Aなどを行うための資金需要に対応してまいります。

当社グループの運転資金及び設備投資資金につきましては、主に内部資金により対応する方針としております。

当社の配当政策としましては、株主の皆様への利益還元を経営上の課題として認識し、業績に応じた中期的に安定的な配当を継続してまいります。

 

(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、資産、負債、収益及び費用の計上額に影響を与える見積り及び仮定の策定について、過去の実績や現状に応じて合理的に判断しておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は見積り特有の不確実性を有しているため、実際の結果とは大きく異なる可能性があります。このうち、当連結会計年度において特に重要なものは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り) 」に記載しております。

その他、当社グループの連結財務諸表作成のための会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。

 

5 【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

当社グループ(当社及び連結子会社)の研究開発の基本は、お客様との密接なコミュニケーションを通して、お客様のニーズを掘り起こし、暮らしや社会に価値ある製品を提供することにあります。

当社グループの技術展開の核となる基盤技術は、シリコーンや各種プラスチック、導電性素材をキーマテリアルとした「材料・配合」、「設計」、「加工プロセス」、「評価・解析」であります。これらの基盤技術を深耕・応用し、幅広い分野でお客様のニーズにお応えしていくことを研究開発の使命と考えております。

研究開発体制といたしましては、開発本部が中心となり、コア技術のブラッシュアップと新技術の確立を目指して、現業開発と新事業開発を開発第一部から第五部、技術開発部がそれぞれ担っております。営業本部、生産本部と三位一体となって、高付加価値製品の開発へ迅速な対応に努めております。

 

セグメントごとの活動概要は下記のとおりであります。

 

① 電子デバイス事業

当事業では、自動車や電子機器の入力部品、ディスプレイ関連部品やコンポーネント関連製品の開発を行っております。高精細印刷技術をベースとした静電容量方式による入力部品やセンサー部品の開発と、シリコーンゴム加工技術をベースとした異種素材との複合化製品の開発を中心に、車載機器、モバイル機器、家電製品などの各市場における新規需要の開拓に取り組んでおります。

② 精密成形品事業

当事業では、半導体ウエハーや電子部品の搬送用資材、OA機器・医療機器部品などの精密成形品の開発を行っております。当社独自の精密加工技術と評価技術をベースに、次世代半導体ウエハー用の搬送容器及び電子部品の微細化や次世代半導体パッケージに対応した搬送テープの開発に取り組んでおります。また、半導電化技術や発泡技術などシリコーンゴム配合技術により、顧客要求に応じたOA機器用部品や自社設計医療機器用部品の製品開発を行っております。

③ 住環境・生活資材事業

当事業では、樹脂波板などの土木建築資材、食品包装資材などの住環境・生活関連製品や自動車部品、電子部品、電線などの機能性材料の開発を行っております。特に、スーパーエンプラを素材とした薄膜フィルム、導電性・耐熱性を付与する導電性ポリマー、インフラメンテナンス市場向けの製品開発と需要開拓に注力しております。

 

当連結会計年度における研究開発費の総額は3,758百万円であり、その主なセグメントごとの内訳は、電子デバイス事業1,151百万円、精密成形品事業1,956百万円及び住環境・生活資材事業650百万円であります。なお、セグメントごとの研究開発費には、各事業に関連する中長期的な研究開発費も含まれております。