(1)会社の経営の基本方針
「経営理念」と「事業領域」
当社グループの経営理念は、次のとおりであります。
私たちキッコーマングループは、 1.「消費者本位」を基本理念とする 2.食文化の国際交流をすすめる 3.地球社会にとって存在意義のある企業をめざす |
企業の存続と繁栄は、消費者の皆様にご満足いただいて初めて実現するものと考えております。この認識のもとに当社グループは、消費者の皆様の声に耳を傾けるとともに、市場を洞察し、消費者の皆様にとって価値のある商品・サービスの提案を行ってまいります。
また、食品企業としての基本的使命は、安全で高品質の商品を適正な価格で安定的に供給することであると考えており、こうした基本の実践を着実に積み重ねてまいります。
当社グループの事業領域は、次のとおりであります。
1.食品の製造と販売 2.「食と健康」に関わる商品とサービスの提供 をグローバルに展開する |
(2)中長期的な経営戦略
当社グループでは、グループの将来ビジョン「グローバルビジョン2030」を策定しております。これは、2030年に向けて、キッコーマングループが「新しい価値創造への挑戦」を行うための、「目指す姿」と「2030年への挑戦」を定めたものです。
[目指す姿] 1.キッコーマンしょうゆをグローバル・スタンダードの調味料にする 2.世界中で新しいおいしさを創造し、より豊かで健康的な食生活に貢献する 3.キッコーマンらしい活動を通じて、地球社会における存在意義をさらに高めていく
[2030年への挑戦] 1.No.1バリューの提供 ・グローバルNo.1戦略 ・エリアNo.1戦略 ・新たな事業の創出 2.経営資源の活用 ・発酵・醸造技術 ・人材・情報・キャッシュ・フロー |
※ 詳細は、次のURLからご覧いただくことができます。
https://www.kikkoman.com/jp/corporate/management/vision2030.html
(3)目標とする経営指標
当社グループは、2022年度を初年度とし、2024年度を最終年度とする中期経営計画を定めております。
<連結業績目標>
・売上成長率(為替差除き)年平均5%以上
・事業利益率 10%以上
・ROE 11%以上
<キッコーマングループ中期経営計画 重点課題>
・環境変化に対応し、成長の継続と収益力向上
・事業活動を通じ、社会課題解決に貢献
※ 詳細は、次のURLからご覧いただくことができます。
https://www.kikkoman.com/jp/ir/lib/managementplan.html
(4)当面の対処すべき課題の内容及び対処方針等
海外については、しょうゆ部門は引き続き、主要市場の深耕と新規市場の開拓を進め、さらなる成長を果たしてまいります。
北米では、今後もキッコーマンしょうゆの価値を訴求していき、安定成長を続けてまいります。欧州では、市場の拡大を目指し、中長期的な需要拡大に向けて取り組んでまいります。アジアでは、国や地域に合ったマーケティング施策を展開し、より一層の浸透と拡売により、アセアンにおいては2桁成長の軌道に乗せてまいります。さらに、南米市場やインド、アフリカ地域の開拓を進めてまいります。
東洋食品卸売事業では、これまで市場環境の変化に適切に対応することで順調に成長してきましたが、今後も、業務用市場と家庭用市場とのバランスの良い事業構造への転換や販売体制の強化を進めて収益力を向上させ、事業の推進力を高めてまいります。
国内については、収益力向上に取り組んでまいります。ITやデジタルなどの技術も活用することにより、お客様への提供価値を高め、高付加価値化や生産性向上を図ってまいります。しょうゆやつゆ類、たれ類、うちのごはんなどのしょうゆ関連調味料を合わせたカテゴリーのNo.1ブランドとして、市場に存在感を示してまいります。豆乳においては、No.1ブランドとして需要を創造し市場をけん引するとともに、生産効率および収益力を向上させてまいります。
財務上では、営業キャッシュ・フローを活用し、成長分野への投資を中心に、生産性向上・効率化、新規事業・商品開発、社会課題の解決など、企業価値向上のための投資とともに株主還元も行ってまいります。また、利益率の改善を第一に、資産効率、資本効率をあげることで、ROE向上に取り組んでまいります。
当社グループは、事業活動を通じて社会課題の解決に貢献するとともに、社会課題を解決する中で事業機会を見つけていくことにより企業の社会的責任を果たしていきたいと考えております。そのために「地球環境」「食と健康」「人と社会」の3つを重要分野と定め、取り組みを進めております。
(1)ガバナンス
キッコーマングループは、CEOが委員長を務めるサステナビリティ委員会(※)を設置しています。サステナビリティ委員会では、サステナビリティに関する全社的な取り組み方針を定め、リスクや機会の把握と対応を行うとともに、重要課題に関する具体的な施策の検討や社内への浸透および社外への発信を統括しています。また、サステナビリティ委員会はこれらの取り組みについて、適宜当社取締役会へ報告を行っています。取締役会はサステナビリティに関する当社グループの重要方針や進捗状況を決定、監督し、当社グループ経営戦略に反映させています。
(※)2024年4月に企業の社会的責任推進委員会から改称。
当社グループでは、気候課題の緩和と適応を推進するため、当社常務執行役員(統括環境管理責任者)が委員長を務める環境保全統括委員会を設置しています。環境保全統括委員会では、各グループ会社・拠点への目標・方針の具体的な展開を行い、グループ全体の環境関連ノウハウと技術の蓄積、変化への対応力の向上などに取り組んでいます。また、グループ主要拠点の環境管理責任者を中心とするメンバーで構成する環境保全推進委員会を環境保全統括委員会の下に設け、詳細なデータや事例の共有化をすすめています。
(2)戦略
当社グループは、当社グループ経営理念に基づき、当社グループの目指す姿と基本戦略を定めた長期ビジョン グローバルビジョン2030を2018年に策定しました。グローバルビジョン2030は、2030年に向けて「新しい価値創造への挑戦」をテーマに、当社グループの目指す姿を定めたものです。
[目指す姿]
1.キッコーマンしょうゆをグローバル・スタンダードの調味料にする
北米市場において「キッコーマンしょうゆ」が日常生活に浸透しているような姿を、世界中で展開し、各国の食文化との融合を実現していく
2.世界中で新しいおいしさを創造し、より豊かで健康的な食生活に貢献する
常に革新と差異化に挑戦することで、世界中の人々のおいしさや健康につながる価値ある商品・サービスを提供していく
3.キッコーマンらしい活動を通じて、地球社会における存在意義をさらに高めていく
地球社会が抱える課題の解決に寄与することにより、世界中の人々からキッコーマンがあってよかったと思われる企業になる
グローバルビジョン2030/体系図
地球社会には多くの社会課題があると当社グループは認識しています。そうした社会課題の中から、当社グループが優先的に取り組むべき重要な社会課題についての検討を行いました。検討にあたっては、[社会にとっての重要な社会課題]と[キッコーマンにとっての重要な社会課題]のふたつの視点で分析を行い、キッコーマン㈱CEOおよび執行役員による討議を重ね、「地球環境」「食と健康」「人と社会」の重要な社会課題3分野を特定しました。
当社グループは「地球環境」「食と健康」「人と社会」の重要な社会課題3分野の取り組みを通じて社会課題の解決に貢献することは事業機会につながると考えています。社会の持続可能な発展と当社グループの成長を両立させることで、グローバルビジョン2030を実現するとともに経営理念の実践につなげることをめざして取り組んでいきます。
当社グループは、中期経営計画2022-2024年度(中期経営計画)を策定し、グローバルビジョン2030の実現に向けて、2022年度を初年度とし、2024年度を最終年度として取り組む計画を示しました。中期経営計画では「環境変化に対応し、成長の継続と収益力向上」と「事業活動を通じ、社会課題解決に貢献」というふたつの重点課題を定めました。
[中期経営計画重点課題]
1.環境変化に対応し、成長の継続と収益力向上
「環境変化に対応し、成長の継続と収益力向上」を実現するため、海外事業と国内事業でそれぞれの取り組みを実施します。
海外事業
海外しょうゆ事業は、長期的な目線で新市場の開拓、そして事業のステージに合わせた成長戦略を推進します。海外卸売事業は、業務用だけでなく家庭用市場のさらなる拡大を図り、拠点の整備・拡大をすすめるとともに、調達力の強化にも取り組みます。
国内事業
国内事業では、高付加価値化や一層の効率化をすすめることで収益力の向上をめざします。
2.事業活動を通じ、社会課題解決に貢献
グローバルビジョン2030で定めた重要な社会課題3分野に基づいて方針やテーマを定めました。これらを着実に実行することで、事業活動を通じた持続可能な社会の実現に取り組みます。
(3)リスク管理
当社グループでは、事業の安定的な発展を実現し、ステークホルダーへの責任を果たすため、当社グループの活動を取り巻くリスクに備えた取り組みをすすめています。また、当社グループが多数の事業をグローバルに展開していることを踏まえ、さまざまに異なるリスクと機会を把握・管理するため、担当する子会社および部門を執行役員および執行役員待遇(※)が指揮し、リスク顕在化の未然防止に努めています。
(※)執行役員待遇は、当社子会社等の重要役職者で、 当社執行役員と同等の役位に相当する者をいいます。
2010年10月、当社グループを取り巻くさまざまなリスクに対する的確な管理と実践を目的に、リスクマネジメントに関する基本的事項を定めた「キッコーマングループ リスクマネジメント規程(リスクマネジメント規程)」を制定しました。リスクマネジメント規程ではリスクを「経営における一切の不確実性」と定義し、以下のものを含むとしています。また、リスクの定義を自然災害や事故だけに限定せず、気候変動を含むサステナビリティに関する内容も含んだものとして認識しています。
① キッコーマングループに直接または間接に経済的損失をもたらす可能性
② キッコーマングループの事業継続を中断・停止させる可能性
③ キッコーマングループの信用を毀損し、ブランドイメージを失墜させる可能性
当社グループは、中長期的なサステナビリティに関するリスクを評価・管理し、適切に対応するために外部組織やステークホルダーとの対話を通じて確認しており、必要に応じて当社の取り組みに反映させています。また、当社グループの事業に関わるリスクを網羅的に毎年評価しており、サステナビリティはそのリスクのひとつとして取り組んでいます。そのうえで、事業に影響するリスク事案を特定するとともに影響度合いを分析し、取締役会への報告を行なっています。
(4)指標及び目標
キッコーマングループが持つ強みや価値観についての議論を行い、そのうえでステークホルダーが持つキッコーマングループへの期待を調査するとともに、社会が今後どのようになるのかという将来像を外部レポートなどから分析し、中期経営計画 社会課題目標を策定しました。
社会課題 取り組み・目標
キッコーマングループの気候変動への対応
近年、世界各地で高温や熱波による健康被害、深刻な干ばつによる水不足、豪雨による洪水などが多発し、その被害が大きくなってきています。こうした異常気象には気候変動が大きく関わっており、地球規模で、生命、財産、経済活動を脅かす社会課題となっています。このような背景から、当社グループでは2030年度までに2018年度比でCO₂排出量を50%以上削減することで、気候変動対策に取り組みます。この目標の達成をめざして、プロセス改善、エネルギー効率の高い設備の導入、再生可能エネルギーの活用や技術革新などの施策を推進します。当社グループは、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)への賛同を表明し、気候変動による当社グループへの中長期的な影響や定量的なリスクの把握のためにTCFD提言の内容に準じて当社グループの事業領域における想定しうるリスクを複数のシナリオをもとに分析しました。
CO₂排出量中長期削減目標、CO₂排出量実績、TCFD提言にもとづく開示等については下記URLで公開しています。
https://www.kikkoman.com/jp/csr/environment/climate-change.html
当社グループは、2030年度に向けた当社グループの温室効果ガス削減目標が、産業革命前からの気温上昇を1.5℃に抑えるための科学的根拠に基づいた目標であるとして、国際的な共同団体であるSBT (Science Based Targets) イニシアチブ(※1)の認定を2024年2月に取得しました。認定を取得したキッコーマングループの温室効果ガス削減目標は、次の通りです。
・Scope1+2 (※2):2030年度までに温室効果ガス排出量を2018年度比で50.4%以上削減
・Scope3 (※3):2030年度までに温室効果ガス排出量を2018年度比で30%以上削減
(※1)SBTイニシアチブ:企業の温室効果ガス排出削減目標が、パリ協定が定める水準と整合していることを認定する国際的イニシアチブ
(※2)Scope1:事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)
Scope2:他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出
(※3)Scope3:Scope1、Scope2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出)
(5)人的資本
人的資本への対応
キッコーマングループを取り巻く環境が大きく変化する中、社会へ向けて価値を創造し、当社グループが持続的な成長を続けるためには、人財が重要だと考えています。当社グループのこうした姿勢はグローバルビジョン2030や2022-2024中期経営計画でも示されています。
人権尊重の考えを基本として、積極的に人的資本向上へ取り組み、人財価値を高めることで持続的成長・企業価値向上を実現します。
① 戦略
1) 目指す姿
「多様な人財一人ひとりの活躍」と「社員が能力発揮できる組織」によって、地球社会における存在意義のある企業を目指します。「多様な人財一人ひとりの活躍」を実現するには、会社組織のビジョンに共感し、社員のエンゲージメントが高まり、成長意欲を持って主体的に行動することが重要です。そして、「社員が能力発揮できる組織」を実現するために多様性を認め挑戦できる組織風土と社員が健康で生産性を向上し、働くことができる環境整備に取り組んでいます。
2)人財育成方針及びその取り組み
仕事における高度な能力をもち、能力を発揮して自律的に行動することで社内外のニーズを満たし、市場に価値を与えることが出来る「プロ人財」を育成します。
グローバルビジョン2030では、「No.1バリューの提供」に向けて、環境変化を先取りし、人的資本を含む経営資源を活用する方針を示しました。一人ひとりのプロ人財が活躍し、グローバルビジョン2030を実現するために、人財に関するあるべき姿と現状のギャップを埋めること、すなわち人財戦略を推進します。具体的には、国内・海外グループ会社を対象に経営戦略・事業戦略を主導する重要ポジション(約90ポスト)を特定し、サクセッションプラン・人財プールの構築、計画的な人財育成などの人財マネジメントを行い、グローバル視点で適所適材配置を横断的にすすめます。
グローバルビジョン2030に掲げる「グローバルNo.1戦略」を牽引するグローバルで活躍できる人財の更なる拡大を目指し、海外グループ会社での研修や2023年度より開始した国内に居ながら海外プロジェクトに参画するプログラムなどを通じ海外業務体験の機会提供に努めました。
また、専門性人財の確保としては、IT技術の進化によりいかなる部門においてもデジタル活用が企業競争力の向上につながると考え、全社的にデジタル人財を育成するため、国内外グループ従業員のデジタルリテラシー研修を2022年度から実施しており、2023年度は新たに215名が受講しました。研修において提案された1,900件以上のアイデアから優先度の高い案件を選定し、各職場で取り組みを進めています。
そして、一人ひとりが活躍するためにはキャリア支援が重要であり、所属長が部下のキャリアにこれまで以上に寄り添うため、キャリア面談の進め方に関するE-ラーニングを導入し、2023年度は224名が受講しました。
3)社内環境整備方針及びその取り組み
人を大切にする企業文化を育み、社会の持続可能な発展に貢献するため、人権を尊重し事業活動を行います。また、多様性を認め合い生産的に働くことができ、社員が失敗を恐れず挑戦できる組織風土をつくります。このような環境整備により、一人ひとりが自己実現するとともに活き活きと課題に取り組むやりがいのある組織を目指します。
[人権]
世界中のキッコーマングループ社員一人ひとりが、すべてのステークホルダーの人権を尊重した事業活動を行うため、継続的な意識醸成を行っています。2023年度は国内グループ会社の管理職層(約900名)を対象に「ビジネスと人権」の基本的な考え方や事例の理解を深める研修を実施し、2024年度には海外グループ会社の管理職にも対象を拡大します。また、日本を除く国や地域に特有の人権課題を把握し、自分事と捉えるため、外部の専門家を招き海外グループ会社を対象にワークショップを開催し、海外27拠点から代表者が参加しました。
[エンゲージメント]
一人ひとりが活き活きと課題に取り組むやりがいある職場を実現するため、昨年度に続き、第2回目となるエンゲージメント調査を国内グループ会社対象に実施しました。CEOの社員一人ひとりが想いを持ち能力を高め、活躍できる職場を作るというメッセージの下、各職場で改善アクションプランを作成し、浸透させています。さらに、第1回目の調査後、重点組織においては経営トップとともに職場風土改善活動に取り組んできました。これらの効果が現れ、最重要テーマとしている「心理的安全性」や「エンゲージメント」などに改善が見られました。さらなる向上のため、今後も改善活動を継続してまいります。
[DE&I]
当社グループは、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンを推進することは、すべての社員にとって働きがいのある職場を実現し、お互いの価値観を認め、共有し合うことで、新たな価値を創出し企業価値を向上すると認識しています。当社グループではダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンに関する基本方針を定め、取り組みの強化を推進してきました。
「ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン基本方針」
私たちキッコーマングループは、性別、年齢、国籍、人種、性的指向や障がいといった多様性を認め、様々なキャリアや働き方を尊重します。その能力を最大限に発揮できる職場づくりを推進し、いつも従業員同士が切磋琢磨している挑戦的な企業を目指しています。 そして、多様性を活かすことにより、世界の食文化との出会いの中で時代や文化にあった新しいおいしさや価値を創造し、地球社会にとって存在意義のある企業を目指します。 |
[健康経営]
一人ひとりが、いきいきと働き、新しい価値創造に挑戦し、より豊かで健康的な食生活に貢献するためには、こころとからだが健康であることが不可欠です。そのため、2022-2024中期経営計画では「こころとからだの健康支援」を掲げ、2023年度は特に基盤づくりを進めました。
1.こころの健康支援:保健師や精神科専門医との連携を強化し、支援体制を構築した。
2.からだの健康支援:従業員の健康リテラシー向上や要リスク対応者への再検査受診勧奨のため、健診結果管理システムを導入した。
なお、キッコーマン総合病院やキッコーマン健康保険組合と連携し、2018年より連続して「健康経営優良法人」の認証※を受けています。
※対象企業は、キッコーマン㈱、キッコーマン食品㈱、キッコーマンビジネスサービス㈱
② 指標及び目標
社員の活躍には一人ひとりが能力発揮できる組織風土が重要であるため、社内環境整備方針に示した「多様性を認め合い生産的に働くこと」を測る指標として、女性管理職比率、障がい者雇用率、男性育児休業取得率、年次有給休暇取得率の目標を掲げました。これらの目標の達成に向けた取り組みをすすめます。また、人財育成方針に基づいた能力開発やキャリア開発に取り組んでおります。なお、各国の法制度や労働慣行の違いにより、連結ベースでの一律の目標設定が適さないため、対象は国内グループ会社としています。
<目標に対する実績>
2024年3月31日現在
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2023年度実績 |
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※対象会社は当社及び国内グループ会社です。
ただし、障がい者雇用率は上記の内、雇用義務対象会社に限ります。
当社グループでは、リスクマネジメントに関する基本方針や管理体制を定める「キッコーマングループリスクマネジメント規程」に基づき、グループ全体のリスクマネジメントを推進しております。CEOが議長を務めるグループ経営会議でグループのリスクについて分析・検討を定期的に行っており、リスクの評価と選定については、社内外の経営環境に及ぼす変化を幅広く捉え今後リスクと成り得る事案を洗い出し、影響度と発生可能性の2つの視点から重要度を評価することで、優先順位をつけ、リスクへの対応を図っております。
また、食品企業としての基本機能である、商品の安定供給と安全性の確保に関するリスクに対しては、それぞれ委員会を設けております。商品の安定供給については、危機管理委員会を設置し、事故・災害等のグループに影響を及ぼす危機発生時に適切かつ迅速に対処を行っております。商品の安全性については、キッコーマングループ品質方針を定め、グループ主要製造会社に品質保証担当部門を設置するとともに、グループ横断の委員で構成される品質保証委員会を開催し、安全性、法令の順守、社会的公正性の確保を図っております。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。これらのうち、本年度において、影響度と発生可能性を勘案して重要度「大」と評価したリスクは、(1) 「社会経済環境」に関するリスクについては、「自然災害等」、「原材料市況の変動」、(2) 「事業環境」に関するリスクについては、「競争環境の変化」、「企業の社会的責任」、(3)「事業運営」に関するリスクについては、「情報システム及び情報セキュリティ」、「人材」であります。
なお、本項に記載の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2024年6月25日)現在において当社グループが判断したものであります。
(1)「社会経済環境」に関するリスク
①自然災害等
当社グループは、日本を始め、米州、欧州、アジアにおいて、現地生産を基本に生産拠点を各地に設置しております。不測の事態に備えた事業継続計画(BCP)を策定しており、適宜、訓練及び見直しを行っております。しかしながら、地震、ハリケーン、干ばつ、集中豪雨等の自然災害、大規模な事故等で、生産停止、またはサプライチェーンの分断等の予想を超えた事態が発生した場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
②原材料市況の変動
当社グループは、主力製品のしょうゆや豆乳等に使用される大豆、小麦等の国際商品市況、及び原油価格の変動等の影響を予算立案の際におりこみ、月次単位で影響額の把握・対応を行っております。中期経営計画についても、原材料やユーティリティの高騰の影響を検討し、計画を策定しております。しかしながら、地政学リスク等の影響により、それらの前提を越えた価格の高騰や、異常気象、冷夏、暖冬等の気候変動による生産量不足等が生じた場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
③社会的・経済的混乱
当社グループは、長期ビジョンである「グローバルビジョン2030」に基づき、日本を始め、米州、欧州、アジア等、グローバルな事業展開を行っており、地域経済の変動に対するリスクの分散を図っております。しかしながら、疫病の世界的な流行や展開地域に政変、テロ、軍事的衝突等が発生し、急激な市場環境の変化、あるいは社会や経済に大きな混乱が生じた場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(2)「事業環境」に関するリスク
①競争環境の変化
当社グループは、社会、消費者、競合等の動向を捉えた上で、中長期の経営計画を策定しております。また、研究開発体制の整備および全社的なDXの取り組みを進めるなど、技術革新に努めております。しかしながら、中期的な消費者の価値観や嗜好の変化、新たな競争相手の出現、競合品の飛躍的な品質の向上、情報技術の革新等による急激な環境変化が起こった場合、当社グループの提供する商品及びサービスに対する需要が低下し、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
②企業の社会的責任
当社グループは、事業活動を通じて社会課題の解決に貢献するとともに、社会課題を解決する中で事業機会を見つけていくことにより企業の社会的責任を果たしていきたいと考えております。そのために「地球環境」「食と健康」「人と社会」の3つを重要分野と定め、「サステナビリティ委員会」が全体を統括し、取り組みを進めております。
「地球環境」については、長期環境ビジョンに基づき、環境課題への対応を行っています。CO₂排出量及び水使用原単位の削減や、環境配慮型容器の展開を進めることによるプラスチックの削減を進めます。また、当社グループは、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)への賛同を表明しております。TCFD提言に基づき、気候変動が事業に与えるリスクおよび機会を評価し、ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標について開示を進めてまいります。
気候変動 | https://www.kikkoman.com/jp/csr/environment/climate-change.html
「食と健康」については、「こころをこめたおいしさで、地球を食のよろこびで満たします。」という「キッコーマンの約束」に込めた想いを実践してまいります。
キッコーマンの約束 | https://www.kikkoman.com/jp/corporate/brand/promise.html
「人と社会」については、「キッコーマングループ人権方針」に基づき、人権デューデリジェンスを推進するとともに、社内教育の充実も図ってまいります。
人権の尊重 | https://www.kikkoman.com/jp/csr/management/humanrights.html
また、当社グループにおける「地球環境」「食と健康」「人と社会」の3つの重要分野に関する取り組みは、コーポレートレポートに開示しております。
https://www.kikkoman.com/jp/csr/report/
しかしながら、社会課題への国際的な関心が高まる中で、これらの課題への対応が十分でなかった場合には、企業活動への制約が生じる、または、社会的信頼を喪失することにより、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(3)「事業運営」に関するリスク
①コンプライアンス
a.コンプライアンス
当社グループは、国内において食品衛生法、製造物責任法、独占禁止法等の法的規制を受けております。また、事業を展開する各国において、当該国の法的規制を受けております。当社グループは、行動規範を定め、法令順守のための研修等による周知・徹底を図るとともに、各業務のプロセスにおける内部統制の整備・運用を行っております。しかしながら、法規制の変更、強化等により、従来の取引形態、製品規格などの継続が難しくなった場合、あるいは法令等の違反や社会的要請に反した行動が発生した場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
b.知的財産権・著作権侵害
当社グループは、グループ内で開発した技術については、必要に応じて、特許権、実用新案権、商標権等の産業財産権を取得しております。これらは経営上多くのメリットがある重要な経営資源と考えており、製品の製造法に関して他社の特許に抵触しないかの確認を含め、専門部門による管理を徹底しております。しかしながら、他社が類似するもの、若しくは当社グループより優れた技術を開発した場合や、他社との間で知的財産権侵害に関する紛争等が生じた場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
②情報システム及び情報セキュリティ
当社グループは、開発・生産・物流・販売等の業務を担うシステムや、グループ経営及び法人・個人に関する重要情報を保持しており、保守・保全の対策を講じるとともに、情報管理体制の徹底に努めております。しかしながら、停電、災害、ソフトウェアや機器の欠陥、コンピュータウイルスの感染、不正アクセス等予想の範囲を超える出来事により、システム障害や情報漏洩、改ざん等の被害が発生した場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
③食の安全性
当社グループでは、安全で高品質の商品を安定的に供給することを基本的な使命と考え、品質方針を定め、品質保証体制および品質管理体制を強化し取り組んでおります。しかしながら、偶発的な事由によるものを含めて製品事故が発生し、当社グループの取り組みの範囲を超えた事象が発生した場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
④人材
当社グループでは、設備投資や業務効率化等により労働生産性向上を図るとともに、各国及び各職種において高度な専門性を有した人材の確保・育成に努めております。しかしながら、労働人口の減少や人件費の高騰により、必要とする人材の確保ができない場合には、業務の遂行及び事業展開に支障をきたし、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑤財務
a.為替変動
当社グループは、為替変動等のリスクを織り込み中期計画、予算、及び業績予想を作成しております。しかしながら、予想の範囲を超える為替変動により外貨建てで調達している原材料及び商品の急激な高騰や、海外子会社の経営成績の円換算額の表面上の減少等が生じた場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
b.減損会計
当社グループは、意思決定ガイドラインを定め、新規事業、設備投資、M&A等のうち一定水準以上の投資を行う場合は、投資対効果等の検討を踏まえた上で取締役会決議としております。しかしながら、当該案件の意思決定時に期待していた収益や効果が実現できない場合には、減損会計の適用を受けることになり、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、IFRSを適用しており、事業の恒常的な業績や将来の見通しを把握する利益指標として「事業利益」を導入しております。当該「事業利益」は、売上収益から売上原価並びに販売費及び一般管理費を控除した段階利益です。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当期における世界経済は、一部の地域において弱さがみられるものの、全体的には持ち直しております。
そのような状況の中で、当社グループの売上は、国内については、しょうゆ、食品が堅調に推移し、国内全体で前年同期の売上を上回りました。海外については、食料品製造・販売及び食料品卸売事業ともに全体として好調に推移し、前年同期の売上を上回りました。
この結果、当連結会計年度の連結グループの売上収益は6,608億3千5百万円(前年同期比106.8%)、事業利益は734億2百万円(前年同期比124.9%)、営業利益は667億3千3百万円(前年同期比120.5%)、税引前利益は756億5百万円(前年同期比124.4%)、親会社の所有者に帰属する当期利益は564億4千1百万円(前年同期比129.1%)となりました。
a.財政状態
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ1,014億9千1百万円増加し、6,678億7千7百万円となりました。
当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ202億5百万円増加し、1,696億2千1百万円となりました。
当連結会計年度末の資本合計は、前連結会計年度末に比べ812億8千6百万円増加し、4,982億5千5百万円となりました。
b.経営成績
<セグメントの業績の概要>
セグメントの業績の概要は次のとおりであります。
国内における売上の概要は次のとおりであります。
(国内 食料品製造・販売事業)
当事業は、しょうゆ部門、つゆ・たれ・デルモンテ調味料等の食品部門、豆乳飲料・デルモンテ飲料等の飲料部門、みりん・ワイン等の酒類部門からなり、国内において当該商品の製造・販売を手がけております。各部門の売上の概要は次のとおりであります。
■しょうゆ部門
しょうゆは、家庭用分野では、テレビ宣伝を中心とした商品の付加価値を伝えるマーケティング施策等を継続することにより、「いつでも新鮮」シリーズが前年同期を上回りましたが、「特選 丸大豆しょうゆ」などのペットボトル品が前年同期を下回り、家庭用分野全体として前年同期を下回りました。加工・業務用分野は、外食店を中心に需要が回復し、前年同期を上回りました。また、家庭用しょうゆは2023年4月、加工・業務用しょうゆは2023年8月に原材料価格高騰等を背景とした価格改定を行いました。この結果、部門全体としては前年同期の売上を上回りました。
■食品部門
つゆ類は、「濃いだし本つゆ」などが前年同期を下回り、全体として前年同期を下回りました。たれ類は、業務用分野が伸びました。また、「超焼肉のたれ」が順調に伸長したため、前年同期を上回りました。「うちのごはん」は、前年同期を下回りました。デルモンテ調味料は、前年同期を上回りました。また、ぽんず類は2023年4月、つゆ類は2023年4月及び2023年8月、たれ類及び「うちのごはん」は2023年8月に原材料価格高騰等を背景とした価格改定を行いました。この結果、部門全体としては前年同期の売上を上回りました。
■飲料部門
豆乳飲料は、1L容器の売上が前年同期を下回り、全体として前年同期を下回りました。また、豆乳飲料は2023年4月に原材料価格高騰等を背景とした価格改定を行いました。デルモンテ飲料は、トマトジュースが堅調に推移し、全体として前年同期を上回りました。この結果、部門全体としては前年同期の売上を下回りました。
■酒類部門
本みりんは、家庭用分野では、「濃厚熟成本みりん」や高付加価値商品の「米麹こだわり仕込み本みりん」などが堅調に推移し、加工・業務用分野も外食店を中心に需要が回復したため、前年同期を上回りました。ワインは前年同期を下回りました。また、本みりんは2023年8月に原材料価格高騰等を背景とした価格改定、ワインは2023年10月に酒税の税率改正と原材料価格高騰等を背景とした価格改定を行いました。この結果、部門全体としては前年同期の売上を上回りました。
以上の結果、国内 食料品製造・販売事業の売上収益は1,479億6千9百万円(前年同期比102.1%)、事業利益は94億7千4百万円(前年同期比126.8%)と増収増益となりました。
(国内 その他事業)
当事業は、臨床診断用酵素・衛生検査薬、ヒアルロン酸等の製造・販売、不動産賃貸及び運送事業、グループ会社内への間接業務の提供等を行っております。
臨床診断用酵素、ヒアルロン酸は前年同期の売上を下回りました。運送事業は前年同期の売上を下回りました。この結果、部門全体としては前年同期の売上を下回りました。
この結果、国内 その他事業の売上収益は212億2千万円(前年同期比96.9%)、事業利益は9億1千9百万円(前年同期比51.0%)と、減収減益となりました。
海外における売上の概要は次のとおりであります。
(海外 食料品製造・販売事業)
当事業は、しょうゆ部門、デルモンテ部門、海外における健康食品等のその他食料品部門からなり、海外において当該商品の製造・販売を手がけております。各部門の売上の概要は次のとおりであります。
■しょうゆ部門
北米市場においては、家庭用分野では、主力商品であるしょうゆに加え、しょうゆをベースとした調味料などの拡充に引き続き力を入れており、当社のブランド力を活かした事業展開を行ってまいりました。また、加工・業務用分野では顧客のニーズに合わせたきめ細かな対応をし、事業の拡大を図りました。この結果、前年同期の売上を上回りました。
欧州市場においては、主要市場であるドイツ、オランダなどで前年を上回り、全体では前年同期の売上を上回りました。
アジア・オセアニア市場においては、インドネシア、フィリピンなどで売上を伸ばし、全体では前年同期の売上を上回りました。
この結果、部門全体では前年同期の売上を上回りました。
■デルモンテ部門
当部門は、アジア・オセアニア地域で、フルーツ缶詰・コーン製品、トマトケチャップ等を製造・販売しております。
部門全体で前年同期の売上を上回りました。
■その他食料品部門
当部門は、主に北米地域において、健康食品を製造・販売しておりましたが、2023年6月30日にALLERGY RESEARCH GROUP LLCの出資持分の全部を譲渡し、2023年7月31日に、COUNTRY LIFE, LLCの出資持分の全部を譲渡いたしました。
部門全体では出資持分譲渡の影響もあり、前年同期の売上を下回りました。
以上の結果、海外 食料品製造・販売事業の売上収益は1,542億5千9百万円(前年同期比107.3%)、事業利益は354億6千8百万円(前年同期比130.2%)と、増収増益となりました。
(海外 食料品卸売事業)
当事業は、国内外において、東洋食品等を仕入れ、販売しております。
北米、欧州、アジア・オセアニアとも順調に売上を伸ばしました。
この結果、卸売事業全体では、前年同期の売上を上回りました。
この結果、海外 食料品卸売事業の売上収益は3,750億2千2百万円(前年同期比109.2%)、事業利益は300億8千7百万円(前年同期比122.3%)と、増収増益となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ198億1千1百万円増加し、1,191億5千9百万円となりました。
当連結会計年度における活動ごとのキャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、808億7百万円の収入となり、前連結会計年度に比べ216億1千万円収入増でありました。これは主に、税引前利益が増加したことに加え、棚卸資産の増加額が減少したことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、429億9千4百万円の支出となりました。これは主に、有価証券の売却による収入があったものの、定期預金の預入による支出、有形固定資産の取得による支出があったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、314億1千8百万円の支出となりました。これは主に、長期借入れによる収入があったものの、配当金の支払、長期借入金の返済による支出、自己株式の取得による支出があったことによるものであります。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前年同期比(%) |
国内 食料品製造・販売 |
157,255 |
99.6 |
国内 その他 |
6,374 |
104.3 |
海外 食料品製造・販売 |
141,961 |
109.1 |
合計 |
305,591 |
103.9 |
(注)金額は販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。
b.受注実績
当社グループ(当社及び連結子会社)は見込み生産を行っているため、該当事項はありません。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前年同期比(%) |
国内 食料品製造・販売 |
144,585 |
101.9 |
国内 その他 |
7,809 |
96.1 |
海外 食料品製造・販売 |
133,538 |
106.4 |
海外 食料品卸売 |
374,902 |
109.2 |
合計 |
660,835 |
106.8 |
(注)セグメント間の取引については相殺消去しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、IFRSに基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たりまして、見積りが必要となる事項につきましては、合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っております。
詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要性がある会計方針 4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載のとおりであります。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
1)経営成績等
(a)経営成績の分析
(業績概要)
当連結会計年度の当社グループの業績は、国内においては、しょうゆ、食品、酒類が堅調に推移し、飲料は前年に及ばなかったものの、増収となりました。利益面では、原材料等の高騰の影響があったものの、しょうゆ、食品の増収による増益効果により、増益となりました。海外においては、食料品製造・販売及び食料品卸売事業がともに好調に推移したことにより、増収増益となりました。この結果、売上収益は前年同期に比べ41,935百万円増収の660,835百万円(前年同期比106.8%)、事業利益は前年同期に比べ14,624百万円増益の73,402百万円(前年同期比124.9%)、営業利益は前年同期に比べ11,362百万円増益の66,733百万円(前年同期比120.5%)、親会社の所有者に帰属する当期利益は、前年同期に比べ12,708百万円増益の56,441百万円(前年同期比129.1%)となりました。
(売上収益)
当連結会計年度の当社グループの売上収益は、前年同期に比べ41,935百万円増収の660,835百万円(前年同期比106.8%)となりました。
ⅰ.国内 食料品製造・販売事業
しょうゆ部門は、家庭用分野では、テレビ宣伝を中心とした商品の付加価値を伝えるマーケティング施策等を継続することにより、「いつでも新鮮」シリーズが前年同期を上回りましたが、「特選 丸大豆しょうゆ」などのペットボトル品が前年同期を下回り、家庭用分野全体として前年同期を下回りました。加工・業務用分野は、外食店を中心に需要が回復し、前年同期を上回りました。また、家庭用しょうゆは2023年4月、加工・業務用しょうゆは2023年8月に原材料価格高騰等を背景とした価格改定を行いました。この結果、部門全体としては前年同期の売上を上回りました。一方、食品部門は、つゆ類は、「濃いだし本つゆ」などが前年同期を下回り、全体として前年同期を下回りました。たれ類は、業務用分野が伸びました。また、「超焼肉のたれ」が順調に伸長したため、前年同期を上回りました。「うちのごはん」は、前年同期を下回りました。デルモンテ調味料は、前年同期を上回りました。また、ぽんず類は2023年4月、つゆ類は2023年4月及び2023年8月、たれ類及び「うちのごはん」は2023年8月に原材料価格高騰等を背景とした価格改定を行いました。この結果、部門全体としては前年同期の売上を上回りました。飲料部門では、豆乳飲料は、1L容器の売上が前年同期を下回り、全体として前年同期を下回りました。また、豆乳飲料は2023年4月に原材料価格高騰等を背景とした価格改定を行いました。デルモンテ飲料は、トマトジュースが堅調に推移し、全体として前年同期を上回りました。この結果、部門全体としては前年同期の売上を下回りました。酒類部門では、本みりんは、家庭用分野では、「濃厚熟成本みりん」や高付加価値商品の「米麹こだわり仕込み本みりん」などが堅調に推移し、加工・業務用分野も外食店を中心に需要が回復したため、前年同期を上回りました。ワインは前年同期を下回りました。また、本みりんは2023年8月に原材料価格高騰等を背景とした価格改定、ワインは2023年10月に酒税の税率改正と原材料価格高騰等を背景とした価格改定を行いました。この結果、部門全体としては前年同期の売上を上回りました。この結果、前年同期に比べ3,009百万円増収の147,969百万円(前年同期比102.1%)となりました。
ⅱ.国内 その他事業
臨床診断用酵素、ヒアルロン酸は前年同期の売上を下回りました。運送事業は前年同期の売上を下回りました。この結果、部門全体としては前年同期の売上を下回りました。この結果、前年同期に比べ672百万円減収の21,220百万円(前年同期比96.9%)となりました。
ⅲ.海外 食料品製造・販売事業
しょうゆ部門は、北米市場においては、家庭用分野では、主力商品であるしょうゆに加え、しょうゆをベースとした調味料などの拡充に引き続き力を入れており、当社のブランド力を活かした事業展開を行ってまいりました。また、加工・業務用分野では顧客のニーズに合わせたきめ細かな対応をし、事業の拡大を図りました。この結果、前年同期の売上を上回りました。欧州市場においては、主要市場であるドイツ、オランダなどで前年を上回り、全体では前年同期の売上を上回りました。アジア・オセアニア市場においては、インドネシア、フィリピンなどで売上を伸ばし、全体では前年同期の売上を上回りました。この結果、部門全体では前年同期の売上を上回りました。
デルモンテ部門は、部門全体で前年同期の売上を上回りました。その他食料品部門は、部門全体では出資持分譲渡の影響もあり、前年同期の売上を下回りました。この結果、前年同期に比べ10,523百万円増収の154,259百万円(前年同期比107.3%)となりました。
ⅳ.海外 食料品卸売事業
北米、欧州、アジア・オセアニアとも順調に売上を伸ばしました。この結果、卸売事業全体では、前年同期の売上を上回りました。この結果、前年同期に比べ31,514百万円増収の375,022百万円(前年同期比109.2%)となりました。
(事業利益)
当連結会計年度の当社グループの事業利益は、前年同期に比べ14,624百万円増益の73,402百万円(前年同期比124.9%)となりました。
ⅰ.国内 食料品製造・販売事業
酒類部門は前年同期を下回ったものの、しょうゆ部門、食品部門、飲料部門が前年同期を上回りました。この結果、国内 食料品製造・販売事業の事業利益は、前年同期に比べ2,003百万円増益の9,474百万円(前年同期比126.8%)となりました。
ⅱ.国内 その他事業
国内 その他事業の事業利益は、前年同期に比べ882百万円減益の919百万円(前年同期比51.0%)となりました。
ⅲ.海外 食料品製造・販売事業
しょうゆ部門は、北米、欧州、アジア・オセアニア市場において堅調に推移しました。デルモンテ部門は前年同期を上回りました。その他食品部門は出資持分譲渡の影響もあり、前年同期を下回りました。この結果、海外 食料品製造・販売事業の事業利益は、前年同期に比べ8,228百万円増益の35,468百万円(前年同期比130.2%)となりました。
ⅳ.海外 食料品卸売事業
北米、欧州市場において堅調に推移し、前年同期を上回りました。アジア・オセアニア市場は前年同期を下回りました。この結果、海外 食料品卸売事業の事業利益は、前年同期に比べ5,488百万円増益の30,087百万円(前年同期比122.3%)となりました。
(営業利益)
当連結会計年度のその他の収益及びその他の費用は、前年同期に比べ3,262百万円 の減収となりました。この結果、当連結会計年度の営業利益は、前年同期に比べ11,362百万円増益の66,733百万円(前年同期比120.5%)となりました。
(親会社の所有者に帰属する当期利益)
当連結会計年度の金融収益及び金融費用は、公正価値評価益の増加等により前年同期に比べ3,436百万円の増収となりました。この結果、税引前利益は、前年同期に比べ14,807百万円増益の75,605百万円(前年同期比124.4%)となりました。親会社の所有者に帰属する当期利益は、前年同期に比べ12,708百万円増益の56,441百万円(前年同期比129.1%)となりました。また、基本的1株当たり当期利益は、前年同期に比べ13.52円増加の59.19円となりました。なお、2024年4月1日付で普通株式1株につき5株の株式分割を行っており、基本的1株当たり当期利益は、当該株式分割後の株数にて算定しております。
(b)財政状態の分析
(資産)
当連結会計年度末における流動資産は、前連結会計年度末に比べ61,271百万円増加しております。その他の金融資産(流動)、現金及び現金同等物が増加したことによるものであります。非流動資産は、前連結会計年度末に比べ40,219百万円増加しました。これは主に、有形固定資産、使用権資産、その他の金融資産(非流動)が増加したことによるものであります。この結果、当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ101,491百万円増加の667,877百万円となりました。
(負債)
当連結会計年度末における流動負債は、前連結会計年度末に比べ3,684百万円減少しております。これは主に、営業債務及びその他の債務、その他の流動負債が増加したものの、借入金(流動)が減少したことによるものであります。非流動負債は、前連結会計年度末に比べ23,889百万円増加しました。これは主に、借入金(非流動)、リース負債が増加したことによるものであります。この結果、負債合計は、前連結会計年度末に比べ20,205百万円増加の169,621百万円となりました。
(資本)
当連結会計年度末における資本は、前連結会計年度末に比べ81,286百万円増加しております。これは主に、利益剰余金及び円安の進行に伴う在外営業活動体の換算差額が増加したことによるものであります。この結果、資本合計は498,255百万円となり、親会社所有者帰属持分比率は、前期に比べ1.1%増加の73.6%となりました。
(c)キャッシュ・フローの分析
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
2)経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの経営に影響を与える大きな要因としては、市場環境の変化、原材料市況の変動、為替レートの変動、食の安全性に関わる問題等があります。
市場環境の変化については、景気動向の悪化や消費者の嗜好・価値観の変化、新たな競争相手の出現等によって、当社グループの提供する商品及びサービスに対する需要が低下した場合には、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。こうした中、当社グループは、グローバル企業である強みを生かし、事業及び展開地域を多様化することによって、特定地域及び特定事業の変動が全体に及ぼす影響を限定的にできるような体制を強化しております。また、当社グループ各社の業績を月次で把握しており、業績に大きな変化があった場合には原因を分析し、迅速に対応ができるような体制も構築しております。
原材料市況の変動については、主力製品のしょうゆに使用される大豆、小麦等は国際商品市況の影響を受け、また原油価格の変動は包装資材であるペットボトル等や商品の製造経費、運送費に影響を与えることから、原材料市況の変動が経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。こうした中、当社グループは、業績の把握及び予算の立案時等において、原材料費変動の影響についての分析及び検討を行い、必要な対応策を講じる体制を構築しております。また、大豆、小麦に関しては、グループ会社間で情報交換を行い、相場変動による影響を低減しております。
為替レートの変動については、当社グループは連結財務諸表作成のために在外子会社等の財務諸表を円貨に換算しており、また商品・サービスの提供及び原材料・仕入商品の調達を外貨建てで行っていることなどから、為替レートの変動が経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。こうした中、当社グループは、業績の把握及び予算立案時等において、為替レートの分析及び検討を行い、必要な対応策を講じる体制を構築しております。また、特に影響の大きい主要原材料等については、為替予約を利用してリスクヘッジすることにより、その影響を低減するための対策を講じております。
食の安全性に関わる問題については、当社グループでは、安全で高品質の商品を安定的に供給することを基本的な使命と考え、品質保証体制及び品質管理体制の強化に取り組んでおりますが、偶発的な事由によるものを含めて製品事故が発生した場合や当社グループの取り組みの範囲を超えた事象が発生した場合には、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。こうした中、当社グループでは、キッコーマングループ品質方針を定め、グループ主要製造会社に品質保証担当部門を設置するとともに、グループ横断の委員で構成される品質保証委員会を開催し、国内外の安全性、法令の順守、社会的公平性の確保を図る体制を構築しております。
3)資本の財源及び資金の流動性
(a)資金需要
当社グループの資金需要の主なものは、事業活動における運転資金及び設備資金等であります。運転資金需要のうち主なものは、製品の生産に必要な原材料等の仕入や商品の仕入のほか、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。また設備資金需要としては、生産設備への投資に加え、情報処理の為の無形資産投資等があります。
(b)財政政策
当社グループの事業活動の維持拡大に必要な資金を安定的に確保するため、内部資金の活用及び金融機関からの借入と社債の発行により資金調達を行っており、運転資金及び設備資金につきましては、国内、主要な海外子会社のものを含め当社において一元管理し、当社グループ全体の有利子負債の削減を図っております。また、当社グループは国内1社の格付機関から格付を取得し、本報告書提出時点において、格付投資情報センター:「AA-」となっており、また金融機関には十分な借入枠を所有していることから、当社グループの事業の維持拡大、運営に必要な運転資金、設備資金の調達は今後も可能であると考えております。
4)経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。
5)経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
6)経営者の問題認識と今後の方針について
経営者の問題認識と今後の方針につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。
(1)商標権の使用許諾を受けている契約
契約会社名 |
契約締結先 |
国名 |
契約内容 |
契約期間 |
対価 |
キッコーマン㈱(当社) |
Del Monte Corporation |
米国 |
日本及びアジア・太平洋地域(除くフィリピン)におけるデルモンテ商標の加工食品及び非アルコール飲料分野での製造・販売等にかかわる永久専用使用権の取得 |
1990年1月9日から 永久 |
109,650千米ドル取得時一括払 以後無償 |
(2)技術援助等を与えている契約
契約会社名 |
契約締結先 |
国名 |
契約内容 |
契約期間 |
対価 |
キッコーマン㈱(当社) |
Lotte Chilsung Beverage Co.,Ltd. |
韓国 |
韓国におけるデルモンテ飲料に対する技術援助とデルモンテ商標の使用許諾 |
1993年1月1日から 5年間 以後5年毎に更新 |
販売高の一定率 |
(3)受託販売契約
契約会社名 |
契約締結先 |
契約内容 |
契約期間 |
対価 |
キッコーマン㈱(当社) |
ヒゲタ醤油㈱ |
ヒゲタ印製品の販売業務の受託 |
1966年8月から毎年 更新 |
販売高の一定率 |
キッコーマン食品㈱ (連結子会社) |
同上 |
同上 |
2009年10月から毎年 更新 |
同上 |
当社グループにおいて、事業展開及び安全性に関わる基盤研究・技術開発は、キッコーマン㈱研究開発本部を中心に行っております。当社グループの事業領域である「食と健康」を主な研究対象領域とし、しょうゆ醸造のほか、食品、バイオの研究体制を整備しています。国内外の研究機関との連携を図りつつ、将来の商品開発の軸となる基礎研究をはじめとする幅広い研究開発を行っています。またアジア・欧州・米国においても研究開発を行っています。各事業会社においては、主にそれぞれの会社の事業に関わる商品開発を行っており、しょうゆ製造に関わる技術開発、「食と健康」の分野で消費者のニーズに応える独創的な新商品の開発、容器の開発、品質向上をめざした加工技術の開発等を鋭意進めております。
当社グループの当連結会計年度の研究開発費は、国内及び海外食料品製造・販売事業と国内その他事業のバイオケミカル分野の研究開発に関わるものであり、各セグメント別の研究開発活動は次のとおりであります。また、本事業年度の研究開発に係る費用の総額は
(国内及び海外 食料品製造・販売事業)
しょうゆ部門では、「いつでも新鮮 こく旨リッチ 特選 丸大豆しょうゆ」620mL、450mL、ならびに加工業務用で新商品開発を行ってまいりました。あわせて、しょうゆの品質向上と製造における効率化をめざして、醸造工程に関わる技術開発を進めてまいりました。
食品部門では、焼肉のたれ、具入りめんつゆ「具麺」シリーズ、「うちのごはん」シリーズ、加工業務用調味料などで新商品開発を行ってまいりました。デルモンテ調味料では、ケチャップ等のトマト調味料、海外輸入紙パック製品、加工業務用向けケチャップ、ソースなどの新商品開発を行ってまいりました。
飲料部門では、機能性表示食品「カラダの豆乳+MCT」の開発を行ってまいりました。また、当社グループの豆乳類の強みであるフレーバー展開で新たに7品の開発を行ってまいりました。デルモンテ飲料では、パウチ型フルーツによる「そのまま食べるすりおろし」を実現した「ピュレフルーツ」を開発しました。また、「リッチ」シリーズなどの新商品開発を行ってまいりました。
酒類部門では、みりんやワインなどの製造工程に関わる技術開発に加え、付加価値の高い新商品の開発を行ってまいりました。
(国内 その他事業)
国内その他事業では、バイオケミカル分野において、臨床診断用酵素、衛生検査用キット、医薬用ヒアルロン酸など、「食と健康」に関係する産業で使用する製品の開発などを引き続き行ってまいりました。また、衛生検査キット「ルシパック」シリーズに使用するプラスチックをマスバランス方式で100%バイオマス原料に紐づくものに変更するなど、地球環境負荷低減を考慮した開発を行ってまいりました。