当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
第97期は前中期経営計画「Grow UP 2023」の最終年度にあたりますが、目標に掲げた最終年度経営指標について、売上高は計画達成も、営業利益、経常利益、ROIC、ROEは未達となりました。
前計画期間では、メタノール、エネルギー資源・環境事業が差異化事業へ移行し、「差異化事業の売上構成比40%超」の目標を達成しました。一方、差異化事業の大型投資計画(エレクトロニクスケミカルズの国内外での新増設、電子材料のタイ増設、メタキシレンジアミンの欧州新設等)を進めたものの、半導体市場の低迷や中国経済の減速等による全般的な販売数量の減少、各種コスト上昇等により、収益性、資本効率は低下しました。また、R&D資源を積極的に投入するも、新規事業の創出は遅れました。不採算事業の見直し・再構築については、ホルマリン系の生産拠点集約に加え、オルソキシレン-フタル酸-可塑剤チェーン撤退等も決定したものの、課題のある事業は依然として残っています。以上の様に、「環境変化に強い収益構造への転換」は道半ばであり、新中期経営計画「Grow UP 2026」で「事業ポートフォリオの強靭化」に取り組んでいきます。
◆新中期経営計画「Grow UP 2026」
第98期からスタートしました中期経営計画「Grow UP 2026」は、前中期経営計画「Grow UP 2023」の後編とし、「2030年ありたい姿」を実現させるための指針と位置づけます。新たな目標として「事業ポートフォリオの強靭化」と「サステナビリティ経営の推進」を掲げ、これらを実現するために、それぞれ3項目からなる施策を進めていきます。
本計画ではこれまでの差異化事業を「Uniqueness & Presence (U&P)事業」と改称し、「伸びる」「勝てる」「サステナブル」(=「事業期待性」「経済的価値」「社会的価値」)の観点で優れ、社会的価値と経済的価値を両立して持続的に成長できる事業と再定義しました。
●目標1 事業ポートフォリオの強靭化
■施策
-「Uniqueness & Presence」へのフォーカス
-イノベーションによる新しい価値の創造
-重点管理事業の再構築
目標1「事業ポートフォリオの強靭化」を実現するための施策1として、「Uniqueness & Presenceへのフォーカス」に取り組みます。ITC3事業である電子材料、無機化学品(EL薬品等)、光学材料を中心としてU&P事業に経営資源を重点配分し、大型投資案件の成果を刈り取ります。また、各種コストの価格転嫁による付加価値の維持や、ROICツリーによる資本効率性に基づいた管理強化も進めていきます。施策2「イノベーションによる新しい価値の創造」については、ICT、モビリティ、医・食の3つのターゲット領域に特に注力するとともに、気候変動課題の解決に資する研究開発も推進していきます。施策3「重点管理事業の再構築」については、対象事業としてPC系とキシレン分離/誘導品を重点管理事業に位置づけ、各種コストの削減、バランスシートのスリム化等を推進します。
●目標2 サステナビリティ経営の推進
■施策
-カーボンニュートラル実現に向けた取り組みの加速
-人的資本経営の充実
-マテリアリティマネジメントの推進
目標2として「サステナビリティ経営の推進」を掲げ、施策の一つとしてカーボンニュートラル実現に向けた取り組みを進めます。具体的には、当社技術を活かした環境循環型メタノール構想や、GHG排出量削減に向けた取り組みを加速し、また、社会の環境負荷を低減する製品群を新たにMGCグループ環境貢献製品『Sharebeing』として認定し、環境貢献に資する製品の拡充を一層推進します。最重要経営資源である「人材」の育成・活用にも引き続き注力し、人的資本経営の充実を図ります。
●目標とする経営指標(Grow UP 2026最終年度)
資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた企業価値向上策を推進し、前中期経営計画目標値を上回る目標を掲げ、達成を目指します。
|
2026年度目標 |
売上高 |
8,500億円 |
営業利益 |
850億円 |
営業利益率 |
10%以上 |
経常利益 |
950億円 |
EBITDA※1 |
1,500億円 |
ROE |
9%以上 |
ROIC※2 |
8%以上 |
※1 EBITDA =経常利益 + 支払利息 + 減価償却費
※2 ROIC = (営業利益-法人税等+持分法損益)/投下資本 (Grow UP 2026より定義を見直し)
<前提条件>為替:135円/US$、原油価格(Dubai):80US$/BBL
また、サステナビリティ経営の推進に向けて、「Sharebeing製品売上高」「GHG排出量の削減」「働きがいを感じる従業員割合」等のマテリアリティKPIを設定し、マテリアリティマネジメントを推進します。
この経営方針、経営環境及び対処すべき課題等に記載されている計画、目標等の将来に関する記述は、当連結会計年度末現在において当社が入手している情報及び合理的であると判断する一定の前提に基づいて判断したものであり、不確実性を内包するものです。実際の業績等は、様々な要因によりこうした将来に関する記述とは大きく異なる可能性があります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)サステナビリティ全般に関する事項
① ガバナンス
サステナビリティに関する重要な事項は、本社管理部門長等が参加する諮問機関「サステナビリティ推進委員会」(2023年度開催回数:4回)での検討を踏まえ、社長を議長とし、社外を含む全取締役を主構成員とし、監査役等も参加する「サステナビリティ推進会議」(2023年度開催回数:3回)で審議、決定されます。
なお、サステナビリティに関する特に重要な事項は、「サステナビリティ推進会議」での審議の後、取締役会にて決議します。
サステナビリティ管理体制については、ホームページ
(https://www.mgc.co.jp/sustainability/management.html#ac03)をご参照ください。
② リスク管理
「
マテリアリティの特定にあたっては、数多の社会課題等を「経済・環境・社会にとっての重要度」と「自社にとっての重要度」の2つの観点で評価し、前述のサステナビリティ推進会議での審議を経て、取締役会にて決議しております。
③ 戦略
「
マテリアリティ毎の「リスク」・「機会」については、ホームページ
(https://www.mgc.co.jp/sustainability/risk.html)をご参照ください。
④ 指標及び目標
当社グループは、マテリアリティ毎にKPIを設定し、マテリアリティマネジメントの進捗管理を実施しています。
マテリアリティ毎の「戦略」・「指標及び目標」については、ホームページ
(https://www.mgc.co.jp/sustainability/materiality.html)をご参照ください。
(2)気候変動への対応(TCFD提言への取り組み)
① ガバナンス
2019年5月に「気候関連財務情報開示タスクフォース」(TCFD)の提言に賛同しており、気候変動が当社グループに及ぼすリスクと機会について、本社管理部門長が参画する諮問機関であるサステナビリティ推進委員会の検討を踏まえ、前述のサステナビリティ推進会議において審議・決定しております。
気候変動への対応は、専門的な提言を行うために全社横断的な「CN推進専門委員会」を組織し、サステナビリティ推進委員会へ報告しています。
② リスク管理
気候変動リスクの定量的な把握を行うため、インターナルカーボンプライシング制度を導入しております。CO2排出量の増減を伴う設備投資計画において、社内炭素価格(1万円/MT-CO2換算)を適用し換算した費用あるいは効果を投資判断における一助として運用し、CO2排出削減を推進し、低炭素社会構築に資する技術・製品の創出を促進します。
気候変動が当社グループに及ぼすリスクと機会を評価し、シナリオ分析を通じてレジリエンスを強化するとともに、ステークホルダーとの健全な対話を推進していきます。
当社グループの基盤事業及び差異化事業であるMXDA、MXナイロン、過酸化水素、ポリカーボネート、光学材料、脱酸素剤、エレクトロニクスケミカル、電子材料事業のシナリオ分析を行い、2つのシナリオに基づき気候変動が事業に及ぼす影響の分析、対応策の検討を行いました。
産業革命前からの気温上昇を+2℃以下に抑えるシナリオにおいては、脱炭素化に向けた炭素税の導入、温室効果ガス(以下「GHG」)排出量規制強化によるコストの増加が、業績に影響を与える可能性があります。このようなリスクに対して、当社グループは、事業ポートフォリオの再構築、省エネルギー、再生可能エネルギーの導入、GHG排出量の少ないLNG発電による電力の活用などにより、影響の抑制を図っていきます。また、脱炭素社会における金属・従来材料の代替によるさらなる軽量化 、再生可能エネルギーのインフラ整備、高付加価値製品市場の拡大は、当社グループの事業拡大の機会であると分析しています。
一方温暖化が十分に防止されず、産業革命前からの気温上昇が+4℃となるシナリオにおいて化石資源の価格高騰、ユーティリティコストの上昇、自然災害の甚大化による工場操業への影響が、業績に影響を与える可能性があります。このようなリスクに対して、当社グループは、化石由来原料からの転換、製品の高付加価値化、BCPの強化などにより、影響の抑制を図っていきます。また、新興国の人口が大きく増加することから、市場開拓を加速いたします。
以上のとおり、気候変動は、当社グループの経営に悪影響を与えることが懸念されるものの、当社グループは化学製品・素材製品から機能製品に至る多様な事業ポートフォリオによりリスク対応が可能であり、当社グループに与える財務影響を低減できる可能性を見出しております。
③ 戦略
当社グループは、GHG排出量の削減目標を定め、着実な削減に取り組んで参ります。本取組みに強みを有する既存事業からの展開や研究開発力を活用、その他の事業や社外との協働も進めます。移行段階では、GHG排出量の少ないLNG発電による電力の活用や、再生可能エネルギーの導入を進めていき、加えて、各種カーボンフリーエネルギーシステム、CCUS(※)、リサイクルシステムの確立や実装等を具体的な施策とし、削減への取組みを進めていきます。
※CCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage):排出した二酸化炭素を回収・貯留する技術、及び貯留した二酸化炭素を化学品原料等に利用する技術
④ 指標及び目標
当社グループ(※)は、2050年カーボンニュートラル達成に向けて、GHG排出量削減の長期目標を設定しております。
※当社単体及びScope1,2を有する連結子会社
2030年目標 |
2050年目標 |
Scope1+2 2013年度比39%削減 |
カーボンニュートラル達成 |
当社グループのGHG排出量推移は、
(3)人的資本への対応
① ガバナンス
人的資本への対応に係るサステナビリティに関する重要な事項は、前述の「サステナビリティ推進委員会」、「サステナビリティ推進会議」で検討・審議・決定し、特に重要な事項については、当該審議の後、取締役会にて決議しております。
② リスク管理
当社グループでは、人的資本の対応に係るマテリアリティとして「働きがいのある企業風土の醸成」と「ダイバー
シティ&インクルージョンの推進」を掲げ、それらに関わるリスクと機会を把握することで、リスク管理を実施しております。
③ 戦略
1.人材育成の考え方
当社グループは、「社会と分かち合える価値の創造」を存在理念とし、経営理念の中で「働きがいのある場を作り、意欲と能力を重んじ、活力ある集団をめざす経営」を掲げ、人材を価値創造の最も重要な資本とした経営を推進しています。その実現に向け、グループ各社において、制度の整備・拡充、教育等に取り組んでいます。
当社では、MGCグループミッション「社会と分かち合える価値の創造」の実現を目指し、従業員一人ひとりがプロフェッショナルとして、個性を磨き、知識と能力を高め、意欲高く高い目標を掲げ、それを達成することを通じて自己を実現する活性化された職場をつくるため、人材育成基本方針を策定しています。本方針では、求められる人材像として「自律的で意欲にみちた従業員」「あたたかい感性豊かな従業員」「仕事を通じて考え、学ぶ従業員」、育成方針として「全ての従業員の特長を活かす育成」を掲げ、多種多様な従業員が各々の個性を生かして活躍できる社内環境の整備に取り組んでいます。
このような当社が培っている企業風土・文化の下、変化に対応し、自律的で長期的に成長できる人材を持続的に輩出することで、特長的な事業を持続的に創出し、中長期的な企業価値向上につなげていきます。
2.具体的な取組み
・働きがいのある企業風土の醸成
当社は、従業員の働きがいや生産性の向上、イノベーション創出に不可欠な取り組みとして、働き方改革を推進しています。長時間労働に頼らない働き方を可能とするため、業務フローの見直しや会議時間の短縮等に取り組んできました。2020年からはスーパーフレックスタイム制(コアタイム無し)、在宅勤務制度も2023年より本制度化し、より柔軟な働き方が可能な環境の整備を進めています。
また、当社の年次有給休暇(年休)取得率は毎年80~85%程度で推移していましたが、ワークライフバランスの観点から年休取得に対する従業員の意識をより深めるため、KPIとして「年次有給休暇取得10日未満者割合:2023年度0%」を掲げておりました。社内広報誌の発行やポスターを掲示し、従業員意識の醸成や職場の雰囲気づくりに注力し、年休取得が少ない層も含め、更に年休が取得しやすい環境整備を推進した結果、2023年度は、年次有給休暇取得10日未満者割合が0%となり目標を達成し、年休取得率も約90%に達しました。
≪年次有給休暇取得率(全社員)推移≫
※当社単体ベース
・ダイバーシティ&インクルージョンの推進
当社は、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)を「全ての従業員が個性を活かして活躍し認め合うこと」と定義し、「多様な価値観・考え方を尊重する意識づくり」「多様な働き方を可能とする環境づくり」「人材の多様化と一人ひとりを活かす組織づくり」「個々の強みを発揮できる人材づくり」「心と体の健康づくり」をD&I推進基本方針として掲げ、多様な人材が個性や能力を発揮して多様に活躍することによる「人と組織のパフォーマンスの
最大化」、多様な価値観・考え方・視点・知識を持つ人材が協働することによる「イノベーション創出」や「意思決定の質の向上」を目指しています。
また、少子高齢化に伴い労働力人口が減少する中、女性の活躍を推進することは、中長期的な企業競争力の維持・向上に不可欠と考えております。女性従業員やその育成を担う管理職向けに各種研修を行うなどして、女性従業員のキャリア開発支援を進めるとともに、KPIとして「女性管理職者数:2026年度60人」の目標を掲げております。さらに、文化・習慣・経験・技能等が異なる外国人キャリア採用者など、新たな視点やアイデアをもたらす多様な人材の採用を、「イノベーション創出」や「意思決定の質の向上」がより進むよう推進しています。
④ 指標及び目標
「
|
実績値 |
目標値 |
||
2021年度 |
2022年度 |
2023年度 |
2023年度 |
|
年次有給休暇取得 10日未満者割合 |
12% |
4% |
|
0% |
※年次有給休暇取得の10日未満者割合の目標値は当社単体でのKPIとしているため、当社単体の目標値及び実績値を記載しています。
|
実績値 |
目標値 |
|||
2021年度 |
2022年度 |
2023年度 |
|
2030年度 |
|
|
26人 |
31人 |
|
|
90人 |
※女性管理職者数の目標値としては当社単体でのKPIとしております。一部の連結子会社の女性管理職者比率については、「
(4)人権の尊重
① ガバナンス
当社グループでは、従来から「MGC企業行動指針」、「MGCグループ行動規範」において人権の尊重等を掲げ、国連グローバル・コンパクトへの署名も行っておりましたが、2023年度には新たに取締役会において「三菱ガス化学グループ人権指針」(2023年12月社外HP公開)を定めるとともに、人権尊重に取り組むため、サステナビリティ推進委員会の諮問機関として、全社横断的な「人権専門委員会」を新たに組織しました。人権を含めたサステナビリティに関する重要課題については、前述のサステナビリティ推進会議で審議・決定し、その中でも特に重要な事項については、取締役会にて決議します。
その他、独自にサプライチェーンに対し「三菱ガス化学CSR調達ガイドライン」等を示して理解と協力を得るなど、人権の保護を含めた責任あるビジネスの実施を推進しています。
② リスク管理
人権に対する意識は先進国を中心にますます高まっており、ビジネス実施におけるサプライチェーンを含めての人権の尊重及び保護の取り組みが国際的に求められています。当社グループにおいて適切な対応がとられなかった場合、法令上の責任のみならず、取引の停止、社会的制裁、信用の失墜などにより、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、経営として取り組むべき最重要課題(マテリアリティ)に「人権の尊重」を掲げ、それに関わるリスクと機会を把握することで、リスク管理を実施しております。
当社グループは、事業活動や製品サービスによって、人権に負の影響を及ぼした、もしくはこれを助長したことが明らかとなった場合、適切な救済措置を講じるよう努めています。
また、人権への負の影響を及ぼす事態(その恐れがある事態を含む)を速やかに把握し、対応するための相談窓口を社内及び社外に設置しています。
③ 戦略
当社グループは、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に則した人権デュー・ディリジェンスの仕組みを構築し、当社グループの企業活動から影響を受ける人々に与える人権への負の影響を特定し、その防止及び軽減を図ります。
④ 指標と目標
当社グループ(※)は、「人権の尊重」のマテリアリティKPIを設定し、進捗管理を実施しながら、人権デュー・ディリジェンスや啓発活動を計画的に進めていきます。
2026年度目標 |
2030年度目標 |
人権デュー・ディリジェンス実施 100% |
人権マネジメントを確立し、全てのステークホルダーが当社の人権指針を支持 |
※当社単体+連結子会社
当社グループでは、「リスク」を、その顕在化により人的被害、物的被害、機会損失、風評被害等が発生し、最終的に会社に経済的損失をもたらす可能性又は危険と捉えており、平時並びに緊急時においてリスクの管理を行う体制を構築しております。具体的には、「内部統制リスク管理基本規程」を定め、リスク管理及びリスク対応に際しての基本方針を定めるとともに、社長直轄の決定機関として、内部統制リスク管理担当役員を委員長とする「内部統制リスク管理委員会」を設置しております。当該委員会は、リスク管理制度等に係る方針、施策、計画に係る事項、事業及び業務に関するリスク管理に係る事項及びこれに付随する指導、指示、監督に係る事項、事業継続計画策定に関する指導、指示、監督に係る事項などを決定します。また、リスク管理に関する状況は定期的に取締役会に報告が行われております。
当社グループの経営成績、株価及び財務状況等に影響を及ぼす可能性のあるリスクとして考えられる主な事項として、後述の①から⑬までのものがあります。これらはいずれも、当連結会計年度末現在において、顕在化の程度、時期、具体的な影響等を見積もることは困難であるものの、起こり得るものとして当社グループが判断したものです(但し、必ずしもあらゆるリスクを網羅したものではありません)。
① 事業特性に関するリスク
[リスクの内容]
当社グループの事業の中心は製造業であり、その製品の多くは顧客の事業活動に用いられる原材料や資材・薬剤であることから、製品販売先の国、地域の経済状況、顧客の事業分野での事業環境などの影響を受けます。とりわけ、メタノール、メタノール誘導品、汎用芳香族製品や汎用ポリカーボネート樹脂等の市況製品では、一般的に、景気後退局面において販売数量の減少、販売価格の下落等が起きやすいと言えますが、特殊品・高付加価値製品においてもシリコンサイクルなど顧客需要の波はあり、需要量の減少は当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
なお、特殊品・高付加価値製品においても価格、品質、機能、納期、カスタマーサービス等の面で競争しており、機能を代替する製品の出現など競争の水準が上がることで、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。例えば、先端半導体等のエレクトロニクス業界を主な顧客としている製品等は、一般的に製品寿命が短く、常に技術革新競争にさらされているため、既存製品の陳腐化や新規製品開発の遅延によって、売上高が減少する可能性があります。また、当社グループの製品の中には、特定の顧客に対してのみ販売しているものがあり、顧客が当該製品の使用を中止することにより、売上高が減少する可能性があります。
当社グループは、原料キシレン等の原材料や電力等を外部から購入しており、販売においては物流その他の外部サービスを利用するほか、製造設備等の保守、新設も常に行っております。必要な原材料、資材、設備、サービス等が調達、利用できなくなると製造活動に支障が出る可能性があるほか、価格が急騰した場合にも当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループの事業は、研究開発、製造、販売、物流、企画、管理等、様々な分野における多様な多数の従業員の働きで成り立っております。人材の流動化や国内における少子高齢化等の影響によって、こうした人材の確保が困難となり又はそれに要する負担が過大となった場合、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
[主な取り組み]
当社グループは、より一層の生産性向上を図るため、新しい製品・製造プロセスの開発や既存製品・製造プロセスの改善・改良を実現すべく基礎研究・応用研究に取り組むとともに、付加価値の高い新たな市場、事業分野の開発にも取り組んでいます。また、開発部門なども含めた顧客との密接な情報交換に努めるとともに、長期供給契約の締結などによりリスクの低減を図るほか、原材料等の購買においても、複数の供給元からの調達や長期購買契約の締結などによりリスクの低減を図り、物流の課題については専門部署において取り組んでおります。
生産性向上は製造活動にとどまるものではなく、事業活動の全般において情報システムその他の新たなテクノロジーを活用すべく取り組んでおります。人材の確保に関しても、多様な個性を持つ社員が互いに尊重し、全員が活躍・成長できる職場環境の実現と、多様な価値観のコラボレーションによる新機軸・技術革新(イノベーション)が次々に生まれる活性化された風土作りを目指し、専門部署を設置するとともに各種の施策に取り組んでおります。
② 海外事業活動に関するリスク
[リスクの内容]
当社グループは、アジア、北米、南米、中東等に現地法人を設立し、又は日本から直接、海外における製造販売、調達等の事業活動を行っていますが、各国内又は地政学的な情勢によっては、自然災害、戦争等、インフラの障害、感染症の拡大、その他予期せぬ事態による政情不安、社会的、経済的混乱等により、事業活動や資金・利益配当の送金等が困難となる可能性もあります。そのほか、法制の違いの問題、外国政府による投資等への制限や資産の国有化・収用の可能性、人事・労務問題等のリスクがあり、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
[主な取り組み]
当社グループは、可能な限り効果的かつ速やかな対応を可能とするべく、最新の世界情勢に目配りをしつつ、現地に派遣している役職員、合弁相手、関係当局その他からの情報収集に努めております。また、現地での安全確保なども含め、各事業の内容・地域等の事情に応じた対応を進めるべく取り組んでおります。
③ 合弁事業に関するリスク
[リスクの内容]
当社グループは、日本国内はもとよりサウジアラビア、ベネズエラ、タイ、中国、韓国、トリニダード・トバゴといった海外においても製造合弁会社を多数有し、メタノール、合成樹脂、その他の各種製品を調達・販売しています。これら合弁相手は当社グループの支配下にあるわけではないため、合弁相手が当社グループや合弁事業にとって最良の意思決定をするという確証は無く、合弁が維持されないなどの事態が生じた場合には、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
[主な取り組み]
当社グループは、これまで築き上げてきた合弁相手先との良好なコミュニケーションの維持・強化を図り、目標・目的の共有や関係維持に努めるとともに、合弁契約その他の事業関連契約等によりリスクの低減を図っております。
④ 製品の品質に関するリスク
[リスクの内容]
前述のとおり、当社グループの製品の多くは顧客の事業活動に用いられる原材料や資材・薬剤であり、顧客と合意した規格に沿った製品を製造しています。また、製品の中には食品等の原材料として用いられるものがあります。万一、品質上瑕疵ある製品が販売された場合、当該製品を用いた顧客や最終製品の使用者等における直接的損害のみならず、機会損失に対する補償の必要が生じたり、当社の社会的信用が損なわれたりするなどして、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
[主な取り組み]
実際には当社グループの製造拠点のほとんどは世界的に認知された品質管理基準に基づき製造活動を行っておりますが、万一のリスクに対処するため、生産物賠償責任保険をはじめとした賠償責任保険を付保するほか、必要に応じ、顧客との契約によって責任範囲を明確化するなどの対応を行っております。
⑤ 自然災害、事故等に関するリスク
[リスクの内容]
当社グループは、国内外に多数の製造拠点を有しており、これら拠点において地震、風水害等の自然災害や戦争、テロ・暴動、ストライキ、通信インフラの障害、感染症の流行やそれに伴うロックダウン等の諸施策、設備のトラブルや人為的ミス、その他予期せぬ事態の影響によって製造活動が停止する可能性があります。当社グループでは危険性を有する化学物質を日常的に取り扱っていることから、爆発、火災、有毒ガスの漏洩等の事故が発生し、製造設備や従業員に被害が生じたり、当該製造拠点周辺や顧客に損害を与えたり、環境汚染等が生じるといった可能性を完全には排除できません。また、当社グループの製造拠点の多くは複数の製造設備を有し、それらが電気、用水、スチーム等のユーティリティー設備を共用していることから、当該設備が停止すると、製造拠点全体の製造活動が停止する可能性があります。このような事態が生じた場合、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
[主な取り組み]
当社グループは、総合的な環境安全管理の手段としてレスポンシブル・ケア活動を推進し、継続的改善を図る中で、リスクアセスメントの強化や安全教育の徹底により保安防災体制構築に最善を尽くしながら製造設備の維持、安定操業に努めることはもちろん、事業継続計画の策定や海外も含めた製造拠点の複数化にも取り組んでおります。加えて、火災保険、利益保険、油濁保険、賠償責任保険といった各種の保険を付保するなどの対応を行っています。
ウェブ会議の全社的な活用等、生産性向上のための施策は感染症対策に資する面もあり、今後もこれらを継続するとともに、事業所ごとに具体的な実務に即した感染症への備えを徹底していきます。
⑥ 情報セキュリティーに関するリスク
[リスクの内容]
当社グループは、事業活動上必要な機密情報及び個人情報を保有するとともに、ビジネスにおけるデジタル化の進展に伴い、各種情報システムを利用して事業活動を行っております。これらの情報の漏洩や情報システムのトラブル、サイバー攻撃や悪意ある第三者による詐欺行為等が発生した場合、当社グループの事業活動及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
[主な取り組み]
当社グループでは、情報セキュリティー体制を整備し、各種ガイドラインに準拠すべく社内規程の整備、従業員に対する教育を行い従業員のリテラシー向上を図るとともに、一定の情報セキュリティーレベルの確保を図るべく、継続的な取り組みを行い、向上に努めています。
⑦ コンプライアンスに関するリスク
[リスクの内容]
当社グループは、事業の特性上、毒劇物、危険物、高圧ガス等の危険性を有する化学物質を取り扱い、製造、保管、流通、販売等の各段階で、国内外を問わず法令等により種々の規制を受けています。また、取引を含めた事業活動全般における法令の遵守はもとより、これに限らない社会的責任の遂行が求められていますが、結果として上述の規制を含めた法令・社会的規範に抵触するものとされた場合、法的責任や是正コストの発生、社会的制裁や信用の失墜などにより、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
[主な取り組み]
当社グループは、環境規制等に対応する専門部署の設置のほか、コンプライアンス全般について、役職員にこれを意識づける各種施策の実施や、内部通報制度をはじめとする体制を構築し、法令等の遵守に努めています。
当社グループでは、「コンプライアンス」を法令遵守にとどまらず、企業としての社会的責任を認識し、社会規範等を遵守するとともに公正で透明・自由な事業活動を行うことと捉え、周知しています。
⑧ 人権に関するリスク
[リスクの内容]
人権に対する意識は先進国を中心にますます高まっており、ビジネス実施におけるサプライチェーンを含めての人権の尊重及び保護の取り組みが国際的に求められています。当社グループにおいて適切な対応がとられなかった場合、法令上の責任のみならず、取引の停止、社会的制裁、信用の失墜などにより、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
[主な取り組み]
当社グループでは従来から「MGC企業行動指針」「MGCグループ行動規範」において人権の尊重等を掲げ、国連グローバル・コンパクトへの署名も行っておりましたが、2023年度には新たに「三菱ガス化学グループ人権指針」を定めるとともに、人権尊重に取り組むため、全社横断的な委員会を組織しました。その他、独自にサプライチェーンに対し「三菱ガス化学CSR調達ガイドライン」等を示して理解と協力を得るなど、人権の保護を含めた責任あるビジネスの実施を推進しています。
⑨ 気候変動に関するリスク
[リスクの内容]
当社グループは、事業活動等に伴い排出される温室効果ガスがもたらす気候変動や、これに関連して自然環境、事業環境等に生じる様々な変化を重要なリスク要因として認識しております。温室効果ガス排出削減への取り組みが不十分な場合、社会的制裁や信用の失墜が生じうるほか、例えば、炭素税の賦課や排出権取引制度といった各種排出規制が導入された際には、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
[主な取り組み]
2019年5月に「気候関連財務情報開示タスクフォース」(TCFD)の提言に賛同しており、気候変動が当社グループに及ぼすリスクと機会について、本社管理部門長が参画する諮問機関での検討を踏まえ、社長を議長とし、社外を含む全取締役を主構成員として、監査役等も参加するサステナビリティ推進会議において審議・決定しております。
また、脱炭素シナリオ・成り行きシナリオによるシナリオ分析を通じて、これらによるリスクを低減するとともに、リスクを事業上の機会とできるようレジリエンスを強化していきます。2023年度のシナリオ分析は、エレクトロニクスケミカルズ事業、電子材料事業について実施し、脱炭素シナリオにおいて性能向上やラインナップ強化等により財務影響を低減できる可能性を見出しております。
カーボンニュートラルへの取り組みに強みを有する当社既存事業からの展開や研究開発力を生かし、その他の当社グループ事業や社外との協働も進めながら、移行段階では温室効果ガス排出の少ないLNG発電による電力の活用や、再生可能エネルギーの導入を進めております。今後、各種カーボンフリーエネルギーシステム、CCUS、リサイクルシステムの確立や実装等を具体的な削減施策とし、2050年の当社グループのカーボンニュートラル達成に向け取り組みを進めていきます。
⑩ 事業投資その他各種投資に係るリスク
[リスクの内容]
当社グループは、事業成長の実現や競争力の強化等のために設備投資や研究開発投資を行い、既存事業の強化や将来の市場ニーズに合致する新規事業の創出に注力しています。また、国内外において、合弁会社を含む新会社の設立や出資等、さらには既存の会社の買収などの事業投資を実施し、今後も実施することがあります。
これらの投資がその額に見合う収益を得られない場合や、保有する有価証券の評価額が大幅に下落した場合などには、固定資産の減損、有価証券評価損、持分法による投資損失等の損失が発生するなど、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
[主な取り組み]
当社グループは、投資に際して社内審査体制を整備・運用しているほか、その内容に応じて事業の状況等を適宜確認し、関係部門が適切な対策を講じるべく努めております。
⑪ 為替変動に関するリスク
[リスクの内容]
輸出入等の外貨建て取引においては、為替の動向によって、売上高の減少や損失の増大が生じるなど、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループの海外現地法人の現地通貨建ての財務諸表項目は、当社連結財務諸表の作成のため円貨換算されており、換算時の為替レートによって、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
[主な取り組み]
当社グループは、外貨建て債権・債務に係る為替変動リスクに対し、社内規程に基づく先物為替予約取引等によって一定程度のリスクヘッジを行っております。
⑫ 資金調達・金利変動に関するリスク
[リスクの内容]
当社グループは、必要な資金の調達に際し、一定程度、金融機関から借り入れ等を行っていますが、金融環境が急変した場合などには、資金調達が困難になったり金利上昇によって支払利息が増加したりするなど、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
[主な取り組み]
当社グループは、負債資本倍率、自己資本比率などを指標に一定の財務健全性を維持するよう努めるとともに、固定金利・変動金利の適宜の組み合わせの実施や、金融機関などとの健全かつ良好な関係の維持に努めるなどしております。
⑬ 訴訟に関するリスク
[リスクの内容]
当社グループの国内外の事業に関連して、将来訴訟その他の法的手続が提起され、不利な結果が生じた場合には、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。例えば、当社グループは、国内外において特許を出願し取得するなど知的財産の保護を図るとともに、他者の権利を侵害しないようにも努めています。しかし、これらに関して訴訟が生じ、当社の主張が認められなかった場合、当社グループの業績や成長に悪影響を及ぼす可能性があります。
[主な取り組み]
当社グループは、事業に関連する各種法令を遵守するのはもちろんのこと、弁護士その他の専門家の協力も得ながら、適切な契約の締結による権利義務の明確化、他者の権利の調査等、紛争の未然防止に努めております。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況(以下、「経営成績等」という。)の概要は以下のとおりであります。
① 経営成績の状況
当連結会計年度の世界経済は、中国経済の低迷が長期化し、その回復ペースは想定以上に遅く、欧米景気も長引くインフレと金融引き締め政策の継続等により減速し、経済活動の鈍化に伴って財需要が低迷するなどの厳しい状況が続きました。またウクライナ危機の長期化に加え、中東地域をめぐる情勢も緊迫の度合いを高め、地政学的な緊張感も増しており、景気の先行きが見通しにくい状況が継続しました。
当社グループにおいては、円安や、電子材料などの半導体関連製品の販売が回復基調であったことなどがプラスに寄与したものの、中国経済低迷の長期化や欧州等の景気減速に伴う製品市況の下落、基礎化学品の需要低迷などの影響が大きく、全体としては厳しい事業環境が続きました。
このような状況下、当社グループは当連結会計年度が最終年度であった中期経営計画「Grow UP 2023」の基本方針である「環境変化に強い収益構造への転換」を図るべく、「競争優位(“差異化”)事業の更なる強化」「新規事業の創出と育成の加速」「不採算事業の見直し・再構築」等の施策による事業ポートフォリオ改革を推進いたしました。
当社グループの売上高は、(株)JSPを第3四半期連結会計期間末をもって連結の範囲から除外したことや、メタノールやアンモニアの市況下落などが減収要因となりましたが、第1四半期連結会計期間より三菱エンジニアリングプラスチックス(株)を連結の範囲に含めたことや、円安の影響などが上回り、増収となりました。
営業利益は、円安に加え、ポリカーボネートの採算改善や電子材料の需要回復などが増益要因となったものの、前期に好調であったポリアセタールの市況下落や、メタキシレンジアミンや芳香族アルデヒドなどの販売数量減少などにより減益となりました。
経常利益は、メタノール市況の下落や、トリニダード・トバゴのメタノール生産会社における減損損失の計上、ベネズエラのメタノール生産会社において前年同期に計上された繰延税金負債の取り崩しによる一過性利益の剥落などにより、持分法損益が悪化したことなどから、減益となりました。
親会社株主に帰属する当期純利益は、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)の連結化に伴う段階取得差益の計上などが増益要因となりましたが、経常利益が減少したことなどから減益となりました。
以上の結果、売上高8,134億円(前期比322億円増(4.1%増))、営業利益473億円(前期比16億円減(3.5%減))、持分法損失56億円(前期比232億円悪化)、経常利益460億円(前期比237億円減(34.0%減))、親会社株主に帰属する当期純利益388億円(前期比102億円減(20.9%減))となりました。
セグメント別の業績は次のとおりであります。
〔基礎化学品事業部門〕
メタノールは、市況が前年同期に比べ下落したことや、持分法損益の悪化などにより減収減益となりました。
メタノール・アンモニア系化学品は、アンモニア等の市況下落などにより減収となりましたが、ホルマリン系事業の構造改革による採算改善などにより増益となりました。
エネルギー資源・環境事業は、発電用LNGの販売数量が減少したことなどが減収要因となりましたが、ヨウ素の販売数量増加及び市況上昇などにより前年同期並みの損益となりました。
ハイパフォーマンスプロダクツは、海外顧客の需要低迷により、メタキシレンジアミンや芳香族アルデヒドの販売数量が減少したことなどから減収減益となりました。
キシレン分離/誘導品は、高純度イソフタル酸(PIA)や無水フタル酸など製品全般の販売価格下落により減収減益となりました。
以上の結果、売上高4,045億円(前期比676億円減(14.3%減))、営業利益177億円(前期比10億円減(5.7%減))、経常利益101億円(前期比204億円減(66.8%減))となりました。
〔機能化学品事業部門〕
無機化学品は、半導体向け薬液において、原燃料価格や輸送費の上昇等を販売価格へ転嫁したことなどにより増収増益となりました。
エンジニアリングプラスチックスは、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)の連結化により増収となったことに加え、高付加価値品の販売増等によりポリカーボネートの採算は改善しましたが、ポリアセタールの市況が下落したことなどから、全体では減益となりました。
光学材料は、光学樹脂ポリマーの主用途であるスマートフォンにおいて、新機種の生産が立ち上がった第2四半期以降、需要の回復基調が続いた結果、増収増益となりました。
電子材料は、主力の半導体パッケージ用BT材料において、スマートフォン向け材料やPC向け材料の需要が回復したことなどから増収増益となりました。
「エージレス®」等の脱酸素剤は、国内食品用途における巣ごもり需要の反動や、原材料価格の上昇等がありましたが、円安による輸出価格改善影響等もあり、前年同期並みの損益となりました。
以上の結果、売上高4,087億円(前期比998億円増(32.3%増))、営業利益330億円(前期比4億円増(1.3%増))、経常利益386億円(前期比0億円減(0.1%減))となりました。
〔その他の事業〕
その他の事業の売上高は1億円、営業利益は0億円、経常利益は1億円となりました。
② 財政状態の状況
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ386億円増加し10,680億円となりました。
流動資産は、201億円減少し4,631億円となりました。減少の要因は、現金及び預金の減少などであります。
固定資産は、587億円増加し6,048億円となりました。増加の要因は、投資有価証券の増加などであります。
負債合計は、251億円増加し3,831億円となりました。流動負債は、支払手形及び買掛金の増加などにより、210億
円増加しました。固定負債は、社債の増加などにより、40億円増加しました。
純資産は、135億円増加し6,848億円となりました。増加の要因は、為替換算調整勘定の増加などであります。
この結果、自己資本比率は61.6%になりました。
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ357億円減少し653億円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度は、前連結会計年度に比べ182億円収入が増加し734億円の収入となりました。増加の要因は、棚卸資産の増減額の減少などであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度は、前連結会計年度に比べ121億円支出が増加し761億円の支出となりました。増加の要因は、固定資産の取得による支出の増加などであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度は、前連結会計年度に比べ486億円支出が増加し406億円の支出となりました。増加の要因は、長期借入れによる収入の減少などであります。
④ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
前年同期比(%) |
基礎化学品事業部門(百万円) |
250,084 |
△13.4 |
機能化学品事業部門(百万円) |
319,745 |
27.9 |
その他の事業(百万円) |
- |
△100.0 |
合計(百万円) |
569,830 |
5.7 |
(注)生産金額は、生産総量から自家消費分を差引いた販売向けの生産量に当連結会計年度の販売単価を乗じて算出しており、セグメント間の内部振替前の数値であります。
b.受注実績
当社グループ(当社及び連結子会社)は原則として見込み生産を行っているため、該当事項はありません。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
前年同期比(%) |
基礎化学品事業部門(百万円) |
404,562 |
△14.3 |
機能化学品事業部門(百万円) |
408,724 |
32.3 |
その他の事業(百万円) |
130 |
△5.9 |
合計(百万円) |
813,417 |
4.1 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
前中期経営計画「Grow UP 2023」最終年度にあたる当連結会計年度の経営成績は以下のとおりであります。目標値に対しては、売上高は計画達成も、営業利益、経常利益、ROIC、ROEは未達となりました。
連結指標 |
2023年度実績 |
2023年度目標 |
差異 |
売上高 |
8,134億円 |
7,300億円 |
834億円 |
営業利益 |
473億円 |
700億円 |
△227億円 |
経常利益 |
460億円 |
800億円 |
△340億円 |
ROIC ※ |
5.4% |
10%以上 |
△4.6% |
ROE |
6.1% |
9%以上 |
△2.9% |
※ ROIC=経常利益/投下資本
計画の未達には、全般的な販売数量の減少のほか、原燃料価格の上昇や、光学材料の需要予測の下振れ、メタノール生産会社での減損損失計上等が影響しております。
中長期的な課題への対処としては、「第2 事業の状況 1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、「Grow UP 2026」において、「事業ポートフォリオの強靭化」と「サステナビリティ経営の推進」の2つの目標を掲げ、成長が期待されるICT分野を中心に「Uniqueness & Presence」(U&P)事業へ2,500億円、3ヵ年の累計で3,000億円の投融資を計画しております。研究開発投資や、人的資本経営の充実に資する投資も継続し、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた企業価値向上策を推進していきます。
セグメントごとの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
[基礎化学品事業部門]
基礎化学品事業部門の経営成績は以下のとおりであります。
連結指標 |
2023年度実績 |
2023年度目標 |
差異 |
売上高 ※ |
4,128億円 |
4,100億円 |
28億円 |
営業利益 |
177億円 |
250億円 |
△73億円 |
経常利益 |
101億円 |
310億円 |
△209億円 |
※ セグメント間の内部売上高又は振替高を含む
エネルギー資源・環境事業は計画を達成したものの、その他の製品での全般的な販売数量の減少や、原燃料価格の上昇、トリニダード・トバゴのメタノール生産会社での減損損失計上などにより、前中期経営計画の利益目標は未達となりました。
今後は、メタキシレンジアミンの欧州製造設備の確実な立ち上げや、環境循環型メタノール構想 CarbopathTM の推進、CCS実用化に向けた取り組みなど、U&P事業の強化を進めてまいります。また、重点管理事業に位置付けるキシレン分離/誘導品については、オルソキシレン系チェーンの撤退を決定いたしました。今後も、各種コストの削減を含め、更なる構造改革に取り組んでまいります。
[機能化学品事業部門]
機能化学品事業部門の経営成績は以下のとおりであります。
連結指標 |
2023年度実績 |
2023年度目標 |
差異 |
売上高 ※ |
4,092億円 |
3,300億円 |
792億円 |
営業利益 |
330億円 |
490億円 |
△160億円 |
経常利益 |
386億円 |
530億円 |
△144億円 |
※ セグメント間の内部売上高又は振替高を含む
ポリアセタール、電子材料は計画を達成したものの、光学材料の需要予測の下振れや、エレクトロニクスケミカルズの販売数量減少、ポリカーボネートの不振などにより、利益目標は未達となりました。
今後は、エレクトロニクスケミカルズの国内外での生産体制の強化、電子材料の海外製造子会社の生産能力増強、レンズモノマープラントの新設など、成長が期待されるICT分野を中心に、U&P事業の成長に向けた各種施策を進めてまいります。また、厳しい市場環境が継続しているポリカーボネート系事業については、重点管理事業に位置付けます。シートフィルム生産拠点の集約化を進めるとともに、ポリカーボネートについては、事業環境に合わせた生産能力の見直しや、差別化できる高付加価値分野へのシフトを加速することで、収益性・資本効率性の改善を図ってまいります。
② 経営成績等に重要な影響を与える要因
当社グループの経営成績等に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
③ 資本の財源及び資金の流動性
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。
投資を目的とした資金需要は設備投資等によるものであります。これらの資金の調達につきましては、自己資金及び金融機関からの借入、社債等を基本としております。
なお、当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
また、当連結会計年度末における有利子負債の残高は1,730億円、現金及び現金同等物の残高は653億円となっております。
④ 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループの経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。事業に対する投資や撤退判断等、経営の意思決定を迅速に行うため、売上規模や利益額に加え、資本効率を分析値に加えております。
⑤ 重要な会計上の見積り及び見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
(1)資本業務提携に関する契約
第3四半期連結会計期間において、(株)JSPが実施した自己株式の公開買付け(以下「本公開買付け」)に当社が応募し、本公開買付けが成立したことにより、(株)JSPは連結の範囲から除外され、持分法適用の範囲に含まれることとなりました。
その結果、当社と(株)JSPが2015年2月4日付で締結していた「資本業務提携に関する基本合意書」(以下「本基本合意書」)は終了し、本基本合意書に基づく資本業務提携は解消されております。
(2)技術供与契約関係
契約会社名 |
契約締結先 |
契約締結年月日 |
契約項目 |
対価 |
契約期間 |
三菱瓦斯化学(株) (当社) |
METANOL DE ORIENTE, (持分法適用関連会社) |
2006.12.19 |
メタノールの製造に関する特許及びノウ・ハウの非独占的実施権 |
一時金 |
終期の定めなし |
三菱瓦斯化学(株) (当社) |
BRUNEI METHANOL (持分法適用関連会社) |
2007.4.12 |
メタノールの製造に関する特許及びノウ・ハウの非独占的実施権 |
一時金 |
終期の定めなし |
三菱瓦斯化学(株) (当社) |
三菱瓦斯化学工程塑料(上海)有限公司 (連結子会社) |
2010.7.30 |
ポリカーボネート樹脂の製造に関する特許技術及び専有技術 |
一時金及び契約製品の売上高に対する一定の実施料 |
2012年4月より14年 |
三菱瓦斯化学(株) (当社) |
CARIBBEAN GAS CHEMICAL LIMITED |
2015.4.10 |
メタノール及びDMEの製造に関する特許及びノウ・ハウの非独占的実施権 |
一時金 |
2015年4月より20年 |
(3)合弁事業契約関係
契約会社名 |
契約締結先 |
設立年月 |
内容 |
合弁会社名 |
三菱瓦斯化学(株) (当社) |
国際協力機構 三井化学㈱ 住友化学㈱ ㈱クラレ 伊藤忠商事㈱ 三菱ケミカル㈱ 日鉄ケミカル&マテリアル㈱ |
1979年11月 |
サウジアラビア王国にてサウジ基礎産業公社(SABIC)と合弁でメタノールの生産・販売を目的とする事業を営むための日本側投資法人への出資 |
日本・サウジアラビアメタノール㈱ (持分法適用関連会社) 当社出資比率 47% |
三菱瓦斯化学(株) (当社) |
CELANESE SERVICES GERMANY GMBH グローバルポリアセタール㈱ |
1987年3月 |
ポリアセタール樹脂の製造・販売に関する合弁事業 |
KOREA ENGINEERING PLASTICS CO., LTD. (持分法適用関連会社) 当社出資比率 40% |
三菱瓦斯化学(株) (当社) |
HANSOL CHEMICAL CO., LTD. |
1989年10月 |
超純過酸化水素の製造・販売に関する合弁事業 |
SAMYOUNG PURE CHEMICALS CO., LTD. (連結子会社) 当社出資比率 51% |
三菱瓦斯化学(株) (当社) |
PETROQUIMICA DE VENEZUELA, S. A. 三菱商事㈱ INTERNATIONAL PETROCHEMICAL HOLDINGS LTD. |
1992年3月 |
メタノールの製造・販売に関する合弁事業 |
METANOL DE ORIENTE, METOR, S. A. (持分法適用関連会社) 当社出資比率 23.75% |
三菱瓦斯化学(株) (当社) |
三菱ケミカル㈱ |
1994年3月 |
エンジニアリングプラスチックスの販売業務に関する合弁事業 |
三菱エンジニアリングプラスチックス㈱ (連結子会社) 当社出資比率 75% |
グローバルポリアセタール(株) (連結子会社) |
TOA DOVECHEM INDUSTRIES CO., LTD. |
1995年7月 |
ポリアセタール樹脂の製造・販売に関する合弁事業 |
THAI POLYACETAL CO., LTD. (連結子会社) |
三菱瓦斯化学(株) (当社) |
伊藤忠商事㈱ MIRKHAS SDN. BHD. |
2006年3月 |
メタノールの製造・販売に関する合弁事業 |
BRUNEI METHANOL COMPANY SDN. BHD. (持分法適用関連会社) 当社出資比率 50% |
三菱瓦斯化学(株) (当社) |
三菱商事㈱ NATIONAL GAS COMPANY OF TRINIDAD AND TOBAGO LIMITED 三菱重工エンジニアリング㈱ MASSY HOLDINGS LTD. |
2013年3月 |
メタノールの製造・販売に関する合弁事業 |
CARIBBEAN GAS CHEMICAL LIMITED
|
(注)当社は、2023年4月3日に合弁会社である三菱エンジニアリングプラスチックス㈱の株式を追加取得いたしました。株式取得後の当社出資比率は75%となり、当社の連結子会社となりました。
なお、三菱エンジニアリングプラスチックス㈱が保有する三菱瓦斯化学工程塑料(上海)有限公司の株式を追加取得したことにより、三菱エンジニアリングプラスチックス㈱を契約締結先とするポリカーボネート樹脂の製造・販売に関する合弁事業契約は終了しております。
前中期経営計画Grow UP 2023の開始に合わせて、R&D組織の統合・組織改定による研究推進体制整備を行いました。当社の総力を挙げてイノベーションを創出する研究集団として、研究統括部と知的基盤センターにて活動しています。この新体制の下、全社的な視点から経営資源を配分し、研究開発を一層加速することで、既存事業の収益力強化と新規事業の創出を推進しました。また、3つの研究所に計算化学やデータ科学の解析を専門に実施するDXチームを配置した結果、多くの研究テーマに対してDX技術が活用され、研究開発の加速に大いに役立っています。また、研究員に対してデータ科学解析ソフトを自社開発すると共にデータ科学の教育を推進する事でDX技術の全社への普及が進んでおります。また、知的基盤センター技術情報グループでは知的財産、市場情報等を組み合わせて研究開発戦略などを提案するIPランドスケープを開始し、全社に浸透しています。
研究統括部(次世代戦略グループ、新規事業開発グループ)は、ベンチャー企業との連携及び出資、公的研究機関との共同研究など、社外との連携による研究開発活動によって新規事業領域での事業創出を継続しました。また、自ら生み出した医療包材や固体電解質などの事業化を推進するとともに、オープン・イノベーションによるアレルギー診断薬や核酸医薬などの新規領域の事業開発に取り組みました。福島県白河市における工場生産野菜事業では、安心・安全な野菜を社会に提供しています。
子会社の研究開発部門も含めた当社グループの研究開発スタッフは、グループ全体で1,078名であり、総従業員数の約14%にあたります。また研究費の総額は
[基礎化学品事業部門]
基礎化学品事業部門内の6つの事業とその周辺に関わるテーマについて研究開発を進めています。
化成品事業部;原料調達から誘導品まで展開する当社メタノール事業のコアとなる製造技術や合成触媒の開発を行っています。循環型社会、カーボンニュートラルへの動きが加速されている中、新潟工場に有するパイロット装置を活用しつつCO2、廃プラ、消化ガス等、多様な原料からのメタノール製造技術の実証試験を進めています。これら多様な資源を活用し製造されるメタノールを「環境循環型メタノール」と定義し、当社の構想・技術・サービス・製品にCarbopathTMとネーミングした上で、その実現に向けてブランディング活動を推進しています。また、DX、自動運転を取り入れたプラントの運用やメタノール改質水素製造の見直しにより更なる市場展開等の計画も進めております。
ハイパフォーマンスプロダクツ事業部;主製品としてメタキシレンジアミン、芳香族アルデヒドなどのケミカル製品と、MXナイロン、特殊ポリエステルやシアネートなどのポリマー材料製品群があります。メタキシレンジアミンは、誘導体を含めて、硬化剤、イソシアネート、ポリアミド向けに好調に推移しており、各種技術開発やコスト改善、国内外の新たな市場開発を進めております。芳香族アルデヒドは、香料や高機能樹脂添加剤向けの販売が堅調であり、増産を達成しています。更なる拡販と高付加価値製品の開発による収益力の強化を努めています。MXナイロン系製品では、新グレードであるバイオベースポリアミドが自動車・電子部品用途等で販売量を拡大させており、食品向けバリア包材用途向け基本グレード含め、更なる拡大に向けてTS、技術改善を行っております。特殊ポリエステルやシアネートも高耐熱樹脂、高機能熱硬化性樹脂原料として新規開発及び市場展開を進めており、それぞれ哺乳瓶用途や複合材料原料としての採用が進んでいます。また、当社としても複合材料市場に参入すべく研究開発を行っており、US/EU/国内での市場開拓を進めております。その他、半導体関連材料向け原体は開発が進みユーザー評価も良好であり、更なる採用拡大が期待されています。また、透明ポリイミド、熱可塑性ポリイミドについても早期の採用拡大を目指し市場開拓検討を進めております。
基礎化学品第一事業部;メチルアミン・アンモニアやMMA系製品を取り扱っています。国内唯一のメチルアミン製造会社であり、誘導体の引合いも多く、増産を検討しています。MMA系製品は安定生産に向けた技術改善を進めるとともに、独自性のある新規誘導品の開発も行っております。
基礎化学品第二事業部;ホルマリン・ポリオール系とキシレン分離・誘導品の2製品群を扱っています。関連会社との協業、キシレン分離・異性化のプロセスコストダウン、特殊ポリオール製品群の競争力強化等を行っています。市況変動等の外部環境変化の影響を低減すべく、川下の特殊化学製品群への展開を進めています。
エネルギー資源・環境事業部;天然ガスの開発・生産、LNG発電や地熱発電、枯渇油ガス田を活用したCCSの検討も手掛けています。この中でも新潟に賦存する水溶性天然ガスは地産地消が可能な資源であり、貴重な輸出資源であるヨウ素も豊富に含まれることから、ヨウ素誘導体関連技術の開発を進めております。また、エネルギー・資源に関わる研究として、メタノール直接型燃料電池の開発・製造・販売も手掛けております。
ライフサイエンス部;これまでに蓄積した発酵・培養・精製技術を活用し、高齢化社会のニーズに即したアンチエイジング素材であるピロロキノリンキノン(PQQ)、栄養成分を豊富に含むS-アデノシルメチオニン(SAMe)含有乾燥酵母、スペルジミン(SPD)含有乾燥酵母等の新規サプリメント原料として開発・販売しています。これら製品の機能を深堀調査するとともに、新規に機能性乳酸菌の開発も進めており、また収益基盤を更に強化すべく、設備増強を計画中です。抗体医薬事業では、合弁会社として設立した株式会社カルティベクスの1000L・2000Lの培養槽にて、複数の治験薬・原薬製造案件の受託製造を行っております。
当該事業部門に係る研究開発費は
[機能化学品事業部門]
機能化学品事業部門では、5つの事業分野とそれらの周辺分野において、情報通信、医・食、モビリティ、インフラ領域をターゲットとし、以下の研究開発活動に取り組んでいます。
無機化学品事業;過酸化水素とその誘導体については、生産技術のブラッシュアップによるコスト競争力強化を継続的に進めています。また、食品・医療向け新製品として過酸化水素誘導体を開発し、拡販に取り組み採用実績を伸ばしています。電子工業向け薬品は、主力の超純過酸化水素をはじめ、機能性薬液(HBC)や化学研磨液を展開しており、とりわけHBCに代表される高機能電子工業用薬品は、海外各拠点の開発体制強化により、最先端半導体デバイス向け新規グレードの開発と市場投入を促進し、採用実績の拡大に努めています。
電子材料事業;電子材料分野では、情報通信技術の高度化や多様性に応える高周波回路用材料やデータ通信の大容量化に対応するメモリおよびロジック半導体パッケージ基板用積層材料、加えて電子部品の低背化と高機能化を実現できる薄葉積層および微細回路形成材料等の開発を推進しています。
合成樹脂事業;ポリカーボネート樹脂については、素材品質向上のための技術開発や熱成形用ハードコートフィルムや新規光学フィルムなどの機能性フィルム、さらに繊維強化熱可塑プラスチック(FRTP)といった高付加価値製品の開発に取り組んでいます。また、カーボンニュートラル、SDG'sに向けた取り組みとして、二酸化炭素を原料とするポリカーボネート中間体および樹脂素材の開発(NEDOグリーンイノベーション基金に採択)を行っており、プロセス開発、スケールアップ検討に取り組んでいます。その他、バイオマスBPAを用いたポリカーボネートの製造検討やグリーンメタノールを用いたポリアセタールの製造検討にも取り組んでいます。
光学材料事業;光学樹脂ポリマーは、スマートフォン向け小型カメラレンズ用材料を中心にAR/VR、センサー分野への展開を図っており、用途に応じた新規グレードの開発と市場投入を進めています。さらに、リサイクル技術の確立にも取り組んでいます。眼鏡用レンズモノマーは、ユーザーニーズに対応した新製品開発と市場投入を進めていますが、この度バイオマス由来のレンズモノマーを新たに開発し、市場投入を計画しています。また、これまでに培った知見を活かし、次世代デバイス向け新規光学材料の開発にも取り組んでいます。
脱酸素剤事業;脱酸素剤は、今日では食品の鮮度保持にとどまらず、医薬品の保存安定性維持や、錆を防ぎたい金属部品、文化財の保護など身近な生活分野にも展開しています。環境に配慮した製品設計を心掛け、プラスチックを減量した小型化製品の開発や、最新の法規制に対応する製品の開発も進めています。また、培ってきた環境(雰囲気)制御技術を応用することで、精肉や青果などのフードロスを削減できるような技術開発を進めています。
上記以外に、新規材料開発として、各分野の周辺材料や基盤技術を他の市場・用途に展開できる製品開発を精力的に進めています。
当該事業部門に係る研究開発費は