第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、azbilグループが判断したものであります。

(1)経営方針

 azbilグループは、「人を中心としたオートメーション」のグループ理念のもと、事業を通して持続可能な社会へ「直列」に繋がる貢献を実践することで、社会のwell-beingの実現を通じてグループ社員全員のwell-beingを実現し、あらゆるステークホルダーと信頼関係を構築することにより継続的な企業価値の向上を図り、皆様のご期待にお応えしていきたいと考えております。

 このため、“技術・製品を基盤にソリューション展開で「顧客・社会の長期パートナー」へ”、“地域の拡大と質的な転換で「グローバル展開」”、“体質強化を継続的に実施できる「学習する企業体」を目指す”の3つを基本方針に、事業収益力の強化及びグローバルな事業基盤の整備を進めつつ、これらを基にした事業成長施策を展開しております。具体的には、ビルディングオートメーション(BA)、アドバンスオートメーション(AA)、ライフオートメーション(LA)の3事業において、計測と制御の技術を核に、「人を中心としたオートメーション」の発想に基づく製品・サービスを提供し、お客様のニーズや社会課題の解決に貢献することで、お客様・社会とともに自らの持続的成長を目指しております。

 

(2)経営戦略等

 当社は、人を中心に据え、人と技術が協創するオートメーション世界の実現に注力し、お客様の安全・安心や企業価値の向上、地球環境問題の改善等に貢献する世界トップクラスの企業集団になることを長期目標と設定、段階的に中期経営計画を立案し、この目標達成に向けた取組みを行っております。オートメーションに焦点をあてつつ単一市場への過度な集中を避け、3つの事業分野から成る複合的な事業ポートフォリオの構築を進め、顧客開拓やシナジー等による事業領域の拡大に取り組んでまいりました。

これらの事業領域には、既存の製品・サービスの提供では持続的な成長の実現が厳しくなってきている成熟領域もあれば、IoTやAIといった新たな技術革新に伴い、急激に変化している領域もあります。基盤を確たるものとし、企業としての存続を確かなものとする取組みを継続するとともに、更なる成長を実現するため、国内外の事業機会の変化を的確に捉え、事業創造の視点から「商品と顧客現場の連携」によるソリューション提案力の向上に取り組み、azbilグループならではの価値の提供を実現してまいります。

 長期目標の達成に向け、社会の環境、ニーズが大きく変化するなか、2022年8月にはグループ理念を基に「機会」と「リスク」の両面から、ダブルマテリアリティ(環境・社会が企業に与える財務的な影響と、企業活動が環境・社会に与える影響という2つの軸で重要性を評価する考え方)を取り入れ、当社グループが長期にわたり取り組む重点課題として10のマテリアリティ項目を特定し、2023年度は「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」に記載のとおり、これらを再確認しました。これらのマテリアリティに基づき、事業や企業活動に関する7つの項目については、SDGs(Sustainable Development Goals-持続可能な開発目標)の領域において目標を「azbilグループSDGs目標」として具体的に定めるとともに、企業が社会に存立するうえで果たさなければならない基本的責務である3つの項目については、CSR活動において具体的な目標を定めております。それらの目標の達成に向けて様々な取組みを行うことで、「サステナビリティ経営※1」を推進しております。

 2023年度も、2022年度に引き続き地政学的リスクに端を発したグローバルサプライチェーンの課題に加え、エネルギー・部品価格の高騰並びに、部品等の長納期化やインフレ等が世界経済に大きな影響を与えた年となりました。この厳しい状況下において当社グループとしましては、市場ごとに事業環境は異なるもののお客様の生産性改善ニーズ等による受注を着実に捉え、調達・生産プロセスの改善により売上を拡大するとともに、インフレ等によるコスト上昇に対し、価格転嫁対応を含む収益力強化と業務効率化の展開により過去最高業績を更新しました。

 2023年度に実施してまいりました具体的な活動としましては、研究開発拠点「藤沢テクノセンター」内の新実験棟にてクラウドや人工知能を活用した先進的なシステム・ソリューションや、MEMS※2技術による高機能・高性能デバイスの開発プロジェクトが進展しました。また、あらゆる業務の変革に不可欠なDXの推進も強化しました。最新のデジタル技術を活用した製品・サービスの開発から、「仕事と働き方の創造」の観点での業務の効率化・高付加価値化まで積極的に取り組んでいます。加えて、昨今注目を集めている生成AIについても業務効率の観点で活用に着手しており、安全に利用するための基盤を整備しつつ、DXの促進を加速しています。生産面においても、2022年に竣工した中国大連生産子会社の新工場棟において全面稼働が開始されたことに続き、タイ生産子会社も2024年4月に新工場棟が竣工し、グローバルでの生産基盤の強化が進みました。さらに、成長領域における事業拡大に向け、出資を含む他社協業も継続して実施し、GX(グリーントランスフォーメーション)※3の推進を通じ脱炭素社会の実現に貢献してまいりました。

 

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 ▲タイ生産子会社の新工場棟

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  ▲竣工式の様子

 収益力という観点では、これまで取り組んできた受注時の採算性改善、海外生産・調達の拡大といった収益力強化施策に加え、価格転嫁等を含めたコスト上昇への適切な対応やDXの推進を通じた業務効率化をグローバルに展開することにより、一層の収益力強化を行いました。また、資本コストを意識した経営の観点からは、投下資本利益率(ROIC)を導入したことにより、投下資本からの収益性に基づく経営資源活用の最大効率化及び事業ポートフォリオ管理を強化することで、当社グループ全体の企業価値向上に繋げてまいりました。

 また、経営体制におけるガバナンス強化の観点から、コーポレート・ガバナンスの強化を重要課題とし、取締役会の監督・監査機能強化、経営の透明性や健全性の強化、執行の責任体制の明確化等に取り組んでまいりました。その取組みの一つとして、2022年度に指名委員会等設置会社へ移行した後も、2023年度には中長期的な業績目標の達成及び企業価値向上に向けた動機づけを目的に、インセンティブ報酬としての株式報酬の構成比率を拡大することを決定し、報酬ポリシーを改定しました。今後も取締役・執行役等の企業価値向上への意識及び株主価値の最大化への意欲を一層高め、株主の皆様との価値共有に繋げてまいります。

 2024年度におきましても事業環境の構造的変化が継続することを前提に、顧客・社会の変化を支援できることがオートメーション事業の価値との考えに基づき、アズビルならではの技術・製品・サービスを活かすことのできる「新オートメーション事業」、「環境・エネルギー事業」、「ライフサイクル型事業」という3つの成長事業領域に注力し、新たな課題の解決策を提供することにより、BA、AA、LAの3事業での成長を実現してまいります。

 2024年度はこれまでの変革の実績を起点に、“更なる成長に向けた変革”の年度と位置付けております。2030年度の長期目標を達成するため、持続可能な社会へ「直列」に繋がる貢献による社会のwell-beingの実現を通じて事業を拡大するとともに、社員全員のwell-beingを実現し、その過程において社員一人ひとりが達成感と成長実感を得られるような成長を目指します。具体的には、半導体市場のような技術革新により需要が拡大する市場とカーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーなど社会課題対応として需要が拡大する市場を成長市場と定義し、それらにおける“計測と制御”領域での競争優位性を高めることによる事業成長を目指します。また、継続的に競争優位性を持った商品群を創り出すため、人的資本、製品開発、生産、DXの各分野に継続した投資を実施し、コア技術の強化、人材育成、DXによる技術伝承と業務効率化を図ります。加えて、成長領域としての海外事業では、市場シェアの拡大と商品力の強化を目指します。こうした取組みを通じて、方針に掲げたサステナビリティ経営の推進に向け、ガバナンス体制の強化と企業成長の原動力でもある人的資本への投資にも積極的に取り組むことで中期経営計画の着実な達成に繋げ、各社員のwell-beingを実現します。

 今後も多岐にわたる事業環境において不安定な状況が継続することも想定されることを前提に、持続可能な社会に向けた取組みの強化が一層重要になると認識しております。アズビルの基幹事業であるオートメーション事業は、建物、工場、ライフラインといった領域の“空間の質”を向上させながら、資源・エネルギー使用量を適正に抑制することが可能であり、我々の事業を拡大することが地球環境負荷の低減に繋がります。持続可能な社会の実現のためには、資源・エネルギー使用量を適正に抑制する仕組みを構築する必要があり、当社グループは事業を通じて、持続可能な社会へ「直列」に繋がる貢献を実現してまいります。

※1 2022年8月に特定したマテリアリティと、その目標となるazbilグループSDGs目標の詳細については当社統合報告書(azbilレポート2023のP21、22)をご参照ください。

※2 MEMS(Micro Electro Mechanical Systems):センサ、アクチュエータ、電子回路を一つの基板の上に微細加工技術によって集積した機器。

※3 GX(グリーントランスフォーメーション):カーボンニュートラルの実現に向けた経済社会システムの変革。

 

 

(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループでは、株主価値増大に向けて連結ROE(自己資本当期純利益率)の向上を基本的な目標としており、収益性と資本効率の向上を通して、2030年度をゴールとする長期目標※4として、売上高4,000億円規模、営業利益600億円規模、営業利益率15%程度、ROE13.5%程度を目指しております。また、この長期目標達成に向け、4ヵ年の現中期経営計画(2021~2024年度)※4においては、売上高3,000億円、営業利益360億円、営業利益率12%、ROE12%程度を達成することを目標としてまいりました。最終年度となる2024年度は事業収益力の強化を進め、2021年度に策定した営業利益・率、ROE目標を上回る、売上高3,000億円、営業利益375億円、営業利益率12.5%、ROE12.2%を計画しております。

※4 2021年5月14日、当社グループは長期目標、中期経営計画(2021~2024年度)を策定・公表いたしました。

 

(4)経営環境並びに優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 azbilグループは、「人を中心としたオートメーション」のグループ理念のもと、持続可能な社会へ「直列」に繋がる貢献を事業活動の中心に据えて企業活動を進めています。2024年度においてもサステナビリティ経営の推進を基本に据えながら、研究開発・設備投資を積極的に行い、商品力強化を進めるとともに、これを支える人的資本を強化します。中期経営計画におきましても、経営資源を有効かつ戦略的に配分し、様々な取組みの加速・定着を図ってまいります。その具体的な内容は次のとおりです。

 

① 国内事業

 3事業とも国内では成熟産業に位置しておりますが、それぞれが置かれている環境は事業ごとに大きく異なります。

 ビルディングオートメーション(BA)事業は、中期的には国内の大型建設需要は旺盛になっていますが、このような繁忙な環境下においても、お客様に満足いただけるより高い品質の製品やフィールドサービスを提供し続け、また、カーボンニュートラルやウェルネスを中心とした新しいニーズに対してもazbilグループならではの新規商品の提供や、事業開拓のための他社協業を推進しています。また、堅調な業況を背景に、業務処理体制をより強固なものとし、より効率的な運営を進めるべく社内DXを加速していきます。業界のトップランナーとして蓄えてきた社内のノウハウやデータを集積し、更なる高度化を進めることで、より高い収益性を実現する事業体制を強化してまいります。

 商品としては、従来のモノ売り、フィールドでのエンジニアリングやサービスにとどまらず、クラウドを応用した分野での商品を拡充していきます。具体的には、設備管理者不足対策に貢献するべく、ビル向けクラウドサービスに新アプリケーションとしてクラウドMT(Manager's Tool)を追加し、販売を開始しました。
今後は、クラウドとビルディングオートメーション(BA)システムの連携により、ビル管理者の建物・設備運転業務の自動化による労働力不足への対応、カーボンニュートラルの推進、オフィス空間のウェルネス・快適性向上など様々な社会的課題の解決に貢献するサービスへと進化を続けます。

 

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 ▲ビル向けクラウドサービスの新アプリケーション:

   クラウドMT(Manager's Tool)

 

 アドバンスオートメーション(AA)事業では、景気の循環による変動影響はあるものの、継続したグローバルでの市場拡大が期待されるなか、脱炭素化、サーキュラーエコノミー、生産高度化、安全・安定操業、人手不足対応等の要望に対して、計測・制御分野を中心に貢献できる領域は大きく、更なる事業領域の拡大と事業成長が期待できると考えています。AA事業は「グローバルに競争力のある事業展開を通じ、持続可能な社会へ貢献する高収益な事業体」となることを目指しています。そのために、成長戦略として、社会の環境変化や技術の潮流変化に対応した「azbilグループならではの新しいオートメーション領域」を創出していくとともに、原価低減、販売価格適正化等の各種収益力強化施策をCP事業、IAP事業、SS事業の3つの事業単位でのオペレーションを通じて着実に実行してまいります。

 具体的な新しいオートメーション領域への導入事例としましては、クラウド型バルブ解析診断サービス「Dx Valve Cloud Service」が大手化学会社や大手ガス会社へ順次提供が開始されております。これはバルブの解析診断結果や運転中の稼働データをWebコンテンツで提供するクラウド型サービスで、プラントや工場で稼働するバルブの健全性を診断し、その結果を可視化することによって、生産設備の安定化や保安力強化に貢献し、お客様へ継続的な価値の提案・提供を実行しております。

 

 

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▲Dx Valve Cloud Serviceはバルブの診断結果を3つのコンセプトで提供

 

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▲Web上のダッシュボードで全体感を把握し、バルブ個別の健全性は診断結果詳細画面で確認が可能

 

 ライフオートメーション(LA)事業では、ライフライン分野において、主体であるガス・水道メーターの交換に関する安定した需要へ対応しています。さらに、エネルギー供給市場における事業環境の変化を捉え、従来の製品提供型の事業に加え、IoT等の技術を活用し、各種メーターからデータを活用したサービスプロバイダーとして他社との協業等も推進して新たなエネルギーマネジメント事業を創出し、売上高と利益の拡大を図ります。サービス型事業とスマートメーター事業を融合したSMaaS事業を推進してお客様や社会に新たな価値を提供し、さらにクラウド事業を強化してソリューション提供力の向上を目指します。また、住宅用全館空調システム分野では、新設建物から既設建物や小規模建物まで、幅広く快適性を提供する快適住空間プロバイダーへの事業拡大を推進し、お客様の生活の質を向上する快適さの実現を目指します。

 以上のような3つの事業軸への取組みに加えて、持続可能な社会への貢献に「直列」に繋がる「新オートメーション事業」、「環境・エネルギー事業」の成長領域の目標達成のため、出資を含む他社との協業を実施してまいりました。具体的には2023年度は、外資系データセンターのトータルマネジメントシステムを手掛けるX1Studio株式会社と出資契約及び業務提携契約を締結し、今後市場拡大が見込まれている国内のデータセンター市場における事業機会の拡大を図ります。また、再生可能エネルギー領域でのソリューション拡大に向け、フォレストエナジー株式会社への資本参加を決定し、再エネ活用モデルの構築により、脱炭素化を支援することを目指します。さらには、成長が期待される国内未上場企業を投資対象としているジャフコSV7ファンドに出資し、拡大が見込まれる新たな事業領域の市場情報や革新的な技術情報の入手、投資先企業との関係構築等を行い、新規事業領域の探索に繋げてまいります。

 

② 海外事業

 長期目標達成に向けた成長実現のため、海外事業拡大に関する施策の検討・遂行及びグローバルでの経営基盤の強化を進めています。海外事業における変革をさらに加速させるために、地域特性を活かした事業推進・管理体制を確立し、各国・各地域のお客様に対して日本で培ってきた技術やノウハウを活かしたazbilグループ独自のソリューションをグローバルに展開していきます。具体的には、海外での市場シェア拡大、市場ニーズに合わせた商品の拡大、新規領域ビジネスへの参入を進め、売上高の伸長を目指していきます。

 BA事業では、アジア地域の建物市場を中心に、都市化の進展が継続し、オフィスのグレードアップが進むことが見込まれています。そのため、国内事業モデルでの強みである省エネルギーのアプリケーション技術、エンジニアリング、サービス力を活用した製品・サービスの提供を推進していきます。一例として、タイではバンコク中心部に位置する五つ星ホテルにて、大手総合不動産会社との協業によりESCO※5サービスを開始し、当社ではBEMS※6の導入による空調・換気等の設備機器の運転管理の改善や効率化、各種省エネルギー制御の導入等、ESCO事業の推進をサポートしております。このような活動は、スマートビルディングソリューションの分野においても高く評価され、その結果、「東南アジア スマートビルディングソリューション カンパニー オブ ザ イヤー アワード」をFrost & Sullivan(フロスト・アンド・サリバン)※7から2年連続で受賞しました。

 

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▲ESCO事業を開始したタイバンコク中心部に位置する

  五つ星ホテル

 

 AA事業では、中長期的な視点で循環的な景気変動はあるものの、グローバルでの経済成長の継続、更なる生産性改善の要求、設備老朽化への対応、環境規制の拡大、新技術の活用に対する期待等を背景とした生産設備の自動化投資は引き続き拡大が見込まれています。そのような状況下において、脱炭素社会へ向けた産業構造の転換を見据え、新市場向けの拡張製品開発や異常予兆検知・AI設備診断等、新しいオートメーション領域の開拓を進めていきます。加えて、戦略地域の営業体制強化や営業活動の質の改善を継続することで、顧客のカバレッジ拡大を通じた事業成長を継続し、さらには、価格転嫁を含む収益力強化施策も継続し、高い利益率を引き続き確保してまいります。

 LA事業では、ライフサイエンスエンジニアリング領域で事業展開する欧州のアズビルテルスター有限会社において、欧州におけるこれまでの急速なインフレ進行による費用増加への影響に対応すべく、適切なコスト管理、販売価格適正化等、収益力の強化と装置販売とエンジニアリング、サービスの両輪による事業基盤の強化を継続してまいります。

 以上に加えて、グローバルでの成長を支える経営管理の課題解決のため、①事業ラインと連携した業務運営の標準化・共通化・効率化、②内部統制等のグループ内ガバナンスを効かせた、強固な経営基盤・管理体制への注力、③グローバルでの競争を勝ち抜くために必要な人材育成・人材基盤整備の推進、という3つの切り口からアプローチを図り、各社の堅確な体制構築を進めてまいります。

※5 ESCO(Energy Service Company)事業:工場やビルの省エネルギーに関する包括的なサービスの提供を通じて、そこで得られる効果をサービス提供者が保証する事業。

※6 BEMS (Building Energy Management System):室内環境とエネルギー性能の最適化を図るためのビル管理システム。

※7 Frost & Sullivan (フロスト・アンド・サリバン):国際的な成長戦略コンサルティング・リサーチ会社。

 

③ 生産・開発

 azbilグループの事業拡大に向けて、グループ生産体制を再編し、商品力強化に向けて開発リソースの集約・強化を進めてまいりました。国内ではグローバル生産体制構築の一環として、生産の中核拠点である湘南工場の生産機能と藤沢テクノセンターの研究開発機能との連携を強化し、グループ内のマザー工場としての機能整備を継続して推進中です。また、今後の事業成長の基盤を強化していくために、研究開発の中核拠点である藤沢テクノセンターを中心に、競争力のある商品を創出するための体制と仕組みづくりへの変革を進めています。具体的には、2022年9月に竣工した、新たな実験棟、新たなクリーンルーム・校正室を基盤として研究開発活動の効率化を進め、高度でより先進的な技術開発を推進していきます。海外では、グローバルでの需要拡

大に対応した生産能力の拡大、生産工程の高度化と更なる自動化の推進を目的に、2022年4月の中国大連生産子会社の新工場棟竣工に続き、2024年4月にはタイ生産子会社の新工場棟も竣工し、日本、タイ、中国を3極とした生産体制を強化しました。また、グローバル開発体制の強化に向け、今後成長が期待されるインドにおいては、インド工科大学ルールキー校※8と革新的なデジタルソリューションの共同研究について覚書を締結し、互いに関心の高い分野での共同研究やインターンシッププログラムを実施するなど、商品力の強化、課題解決に向けて様々な外部パートナーとの連携を深めていきます。

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▲当社とインド工科大学ルールキー校のMoU締結式

※8 インド工科大学ルールキー校:engineering, sciences, management, architecture and planning, and humanities and social sciencesの高等教育を提供する機関。1847年の設立以来、同校は国に技術人材とノウハウを提供する重要な役割を果たしている。

 なお、地政学的リスクによるグローバルサプライチェーンの課題、エネルギーや部品価格の高騰、インフレ等は今後も一定の範囲で継続すると想定しております。そのため、生産オペレーションの改善を継続しつつ、緊急事態発生時においてもお客様への影響を最小限にするBCPの取組み範囲の拡大や、グローバルな生産体制や適正な在庫管理を意識した調達体制を整備し、より一層のガバナンス強化を推進してまいります。

 

④ 経営管理

 経営管理面では、リスクマネジメントにおいて、経営に大きな影響を及ぼすリスクを正確に把握し、その影響を最小限に抑えるため、プロセスの大幅な見直しと現場部門と経営層が一体となった取組みにより、不確実性への対策を強化しました。また、国際財務報告基準(IFRS)の任意適用に向けた準備と会計レベルの向上と、それに伴う内部統制の強化も進めてまいります。さらに、全てのステークホルダーの皆様からの信頼に応え、企業価値の持続的向上を進めるため、基盤となるコーポレート・ガバナンスの充実を経営の重要課題と認識し、取締役会の監督・監査機能の強化、経営の透明性・健全性の強化、執行の責任体制明確化等に取り組んでいます。

 なお、azbilグループとして、ESG(環境・社会・ガバナンス)の観点からも積極的な活動・取組みを進めております。E(環境)では、サステナブルな経済社会の実現に寄与するため、日本経済団体連合会の「生物多様性宣言・行動指針」への賛同を表明し、持続可能な社会の実現へ向け、気候変動対策、資源循環対策、生物多様性保全対策等、幅広い社会的な環境活動と、当社グループの事業活動の融合を進めております。気候変動対策では、製品やサービスを通じてお客様のCO削減を支援し、2030年の温室効果ガス削減目標達成に向け省エネ技術を強化し、また、再生可能エネルギーの使用を進めています。なお、2050年のネットゼロ達成に向け、2023年6月にSBTi※9へのコミットメントレターを提出し、サプライチェーン全体のCO削減にも注力しています。資源循環対策では、事業を通じて資源削減とサステナブルな製品設計に努め、2030年までに全新製品を100%リサイクル可能にすることを目標にしています。これにより、製品が適切にリサイクルされるような設計を実現し、天然資源の有効活用と廃棄物削減を目指しています。生物多様性保全対策では、ネイチャーポジティブ※10の視点から事業を通じて生物多様性に貢献し、サプライチェーンや国内外の組織と連携して自然保護の取組みを強化しています。

 S(社会)では、「人権」、「労働」、「環境」、「腐敗防止」に係わる「国連グローバル・コンパクト」に署名し、中期経営計画において人的資本・知的財産への取組みを強化しています。また、社員が活き活きと仕事に取り組んでいけるようにするための総合的な取組みを「健幸経営」と定義し、様々な制度・施策の整備・展開を継続してまいりました。この取組みは経済産業省にも評価され、この度、「健康経営優良法人2024(大規模法人部門(ホワイト500))」※11に3年連続で認定されました。

 G(ガバナンス)では、2022年6月に、監督機能と執行機能の明確な分離、さらに意思決定の迅速さと透明性を高める目的で「指名委員会等設置会社」へ移行しました。また、取締役会の実効性を高めるためにアズビル独自の「取締役執行役連絡会」を設置するなどの工夫に

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▲健康経営優良法人2024(ホワイト500)

より、経営戦略や事業ポートフォリオに関する議論、重要リスクの特定、法定委員会活動等につき従来以上に活発な議論を行っています。

 これらの取組みの結果、環境省が主催する第5回ESGファイナンス・アワード・ジャパン※12環境サステナブル企業部門において、開示充実度が一定基準を満たしている企業として「環境サステナブル企業」に2年連続で選定されました。また、国際環境非営利団体であるCDP※13により、「気候変動」に対する取組みとその情報開示に関して世界的に優秀な企業として評価され、Aリスト(最高評価)に3年連続で選定されました。

 2024年度においても、持続可能な社会の実現に「直列」に繋がり、企業価値の向上を目指してESGにおける各課題を整理し、今後更なる改善への取組みを継続してまいります。

 なお、経営管理面の重要課題である、株主還元等の資本政策につきましては、連結業績を基に、純資産配当率(DOE)を参照し、中期経営計画で目標として掲げる自己資本当期純利益率(ROE)等の水準に加え、成長投資及び健全な財務基盤を確保するための内部留保等を総合的に勘案し、「規律ある資本政策」の方針に照らして、機動的な自社株取得とともに、配当水準の向上に努めつつ安定した配当を維持していきたいと考えております。

※9 SBTi (Science Based Targets Initiative):CDP、国連グローバル・コンパクト、WRI(世界資源研究所)、WWF(世界自然保護基金)が共同で設立した、企業のCO2排出量削減目標が科学的な根拠と整合したものであることを認定する国際的なイニシアチブ。

※10 ネイチャーポジティブ:自然生態系の損失を食い止め、回復させていくことを意味する。

※11 健康経営優良法人認定制度:地域の健康課題に即した取組みや日本健康会議が進める健康増進の取組みを基に、特に優良な健康経営を実践している企業を顕彰する制度で、その中で上位500法人のみが『ホワイト500』に認定される。

※12 ESGファイナンス・アワード・ジャパン:ESG金融又は環境・社会事業に積極的に取り組み、インパクトを与えた機関投資家、金融機関、仲介業者、企業等について、その先進的取組みなどを広く社会で共有し、ESG金融の普及・拡大に繋げることを目的として環境大臣が表彰するもの。環境サステナブル企業部門では、重要な環境課題に関する「リスク・事業機会・戦略」「KPI」「ガバナンス」の開示充実度が一定の基準を満たしている企業を「環境サステナブル企業」として評価・選定する。

※13 CDP:企業や自治体を対象とした世界的な環境情報開示システムを運営する国際環境非営利団体。2000年に英国に設立され、130兆米ドルを超える資産を保有する680以上の投資家と協働し、資本市場と企業の調達活動を介して、企業に環境情報開示、温室効果ガス排出削減、水資源保護、森林保護を働きかけている。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 azbilグループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

 当社グループの基幹事業であるオートメーション事業は、建物、工場、ライフラインといった領域の“空間の質”を向上させながら、資源・エネルギー使用量を適正に抑制することが可能であり、我々の事業を拡大することが地球環境負荷の低減に繋がります。持続可能な社会の実現のためには、資源・エネルギー使用量を適正に抑制する仕組みを構築する必要があり、昨今社会からその役割を一層強く期待されています。これは当社グループが事業を通じて、持続可能な社会へ「直列」に繋がる貢献を実現することが可能であると同時に、持続可能な社会の実現への貢献が当社グループの持続的な成長に繋がることを意味します。

 創業時の精神を引き継ぎ、以下のサステナビリティに関する方針を公表し、地球環境に貢献し、持続可能な社会へ「直列」に貢献するよう引き続き取組みを行ってまいります。

 

azbilグループのサステナビリティの方針

創業時の精神である「人間の苦役からの解放」の考え方を、人間の幸福のために社会に貢献する価値観として受け継ぎ、グループ理念である「人を中心としたオートメーション」の実践を通じて、あらゆるステークホルダーと信頼関係を構築することにより継続的な企業価値の向上を図り「人々の安心、快適、達成感」を実現するとともに、地球環境に貢献し、持続可能な社会へ「直列」に貢献する

 

<マテリアリティの特定>

 気候変動・SDGsへの対応要請、少子高齢化や働き方改革等による環境・社会・事業構造の変化により、解決すべき様々な課題が新たに出現、顕在化しつつあります。一方でこれらの課題解決に対して、自動化・省力化・省エネ・省資源といったオートメーションが持つ多様な機能が果たす役割は大きく、オートメーションの価値及び期待を一層増大させています。この様な変化の中、2022年8月には、当社グループの持続可能な成長に向け、グループ理念を基に「機会」と「リスク」の両面から、ダブルマテリアリティ(環境・社会が企業に与える財務的な影響と、企業活動が環境・社会に与える影響という2つの軸で重要性を評価する考え方)を取り入れ、長期にわたり取り組む重点課題として5分野10項目のマテリアリティを特定しました。2023年度は次に記載するマテリアリティ特定のプロセスを外部有識者の助言も得て再度実施し、その妥当性を再確認しました。

 

 当社グループのマテリアリティ特定プロセスは大きく3つのステップに分けられます。

 

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STEP1:各種ガイドライン(SDGs、GRI スタンダード、SASBスタンダード等)をベースにして社会課題を網羅的に抽出し、マテリアリティ候補としました。

 

STEP2:マテリアリティ候補に対して、各種ステークホルダー・エンゲージメントを通じて得られた複数の重要課題や、外部有識者からの助言も踏まえ、環境・社会から「azbilグループが受ける財務的な影響(azbilグループにとっての重要性)」のみで重要性を検討するのではなく、「azbilグループが事業活動を通じて環境・社会に与える影響(ステークホルダーにとっての重要性)」というダブルマテリアリティの視点で“機会” と“リスク”を識別し、重要度を評価しました。

 

 「azbilグループ」又は「ステークホルダー」にとって重要性がより高い項目から、5分野10項目のマテリアリティを特定しました。(なお、10項目に入らなかったものとして、水資源、生物多様性、環境汚染等の項目が挙げられます。)

 各マテリアリティ及び当社グループの取組みによって「達成を目指す姿」は以下のとおりです。

 

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STEP3:外部有識者との議論・確認を経た後、経営会議及び取締役会を通じて妥当性を確認し、2023年度に当社グループのマテリアリティを再確認しました。

 

(1)サステナビリティ経営の取組み

<ガバナンス>

 azbilグループでは、サステナビリティ全般に関わる担当役員を据え、それぞれに設けた専門組織を事務局とし、「azbilグループCSR推進会議」及び「SDGs推進会議」を開催、これらの会議で確認された進捗状況・課題を取締役会・経営会議に報告しています。以下の図に示すとおり、グループ全体でサステナビリティの取組みを検討・推進する体制を整えております。

 

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<戦略>

 2030年度に向けた長期目標を掲げる当社グループは、持続可能な社会へ「直列」に繋がる貢献とサステナビリティの観点から、2022年8月には、社会の環境、ニーズが大きく変化するなか、グループ理念を基に「機会」と「リスク」の両面から、ダブルマテリアリティの考え方も取り入れ、長期にわたり取り組む重点課題として10のマテリアリティ項目を特定し、2023年度は前述のプロセスにて再確認を実施しました。

 これらのマテリアリティに基づき、事業や企業活動に関する7つの項目については、SDGs(Sustainable Development Goals-持続可能な開発目標)の領域において目標を「azbilグループSDGs目標」として具体的に定めるとともに、企業が社会に存立するうえで果たさなければならない基本的責務である3つの項目については、CSR活動において具体的な目標を定めております。それらの目標の達成に向けて様々な取組みを行うことで、「サステナビリティ経営」を推進しております。

 

<リスク管理>

 当社グループはサステナビリティ経営を達成するために、社会・環境・事業への影響を“機会”と“リスク”の観点から評価し、マテリアリティを特定しました。各マテリアリティにかかる「達成を目指す姿」を実現するため、識別されたリスクへの対応と管理のみならず、長期的な企業価値向上の観点から機会を含む管理体制を整備・運用しております。

 そのリスク管理においては、毎四半期、部門の責任者等をメンバーとして開催される「azbilグループCSR推進会議」において、リスクマネジメントの推進状況について確認・検討を行っております。また、半期に一度、リスク管理担当役員を委員長、経営層をメンバーとして開催する「azbilグループ総合リスク委員会」にて、一連のリスクマネジメント活動に対して経営層による状況確認と方針決定を行います。具体的には「3 事業等のリスク」に記載のとおり評価しております。

 機会管理においては、原則毎月経営層が実施する全社事業検討会において、中期経営計画に基づきマテリアリティを含む幅広いテーマについての状況や課題を共有し、着実な実行に向けて議論等を行うことで、戦略的な事業展開に繋げております。

 また、引き続きステークホルダーの皆様との対話の機会を随時設け、その意見を企業活動にフィードバックすることで、活動の実効性を高めております。

 

<指標及び目標>

 当社グループでは、持続的な向上や改善を目指し続ける事業や企業活動に関する7つのマテリアリティ項目について、次表のようにSDGsの領域において、指標及び目標を「azbilグループSDGs目標」として具体的に定めております。事業として取り組む領域を「環境・エネルギー」、「新オートメーション」の2つ、また企業活動全体で取り組む領域では「サプライチェーン、社会的責任」、「健幸経営、学習する企業体」の2つに区分し、これらを当社グループのサステナビリティの方針の重要な道標と位置付け、様々な活動を進めております。

 他方、企業が社会に存立するうえで果たさなければならない基本的責務である3つのマテリアリティのうち、商品安全・品質、コンプライアンスについては、前掲の「azbilグループCSR推進会議」において、リスク管理に加え各部門で設定したCSR活動計画の策定・進捗確認を行うことで、その維持・向上に取り組んでおります。また、コーポレート・ガバナンスについては、2022年6月に、指名委員会等設置会社へ移行し、社外取締役を過半数とする取締役会及び3つの法定委員会の体制のもと、適切な監督と実効性の向上を図っております。

 

「マテリアリティ」と「azbilグループSDGs目標」

マテリアリティ

 

azbilグループSDGs目標

 

基本目標

ターゲット

環境

気候変動

 

協創による地球環境とエネルギー課題の解決への貢献

環境・エネルギー

エネルギー課題の解決(脱炭素社会に向けて)

お客様の現場におけるCO削減効果340万トン/年

事業活動に伴うGHG※1排出量を55%削減※2

サプライチェーン全体のGHG 排出量を20%削減※3

環境課題への貢献(環境統合型経営※4の実現)

地球環境に配慮した商品・サービスの創出・提供

- 全ての新製品をazbilグループ独自のサステナブルな設計※5とする

- azbilグループの提供するサステナブルなサービス※6を支えるプロフェッショナルスキルを持つ人財※7を、2021年度比で3倍の延べ1,800名※8にする

 

天然資源※9の有効活用と廃棄物発生量の削減

- 全ての新製品を100%リサイクル可能な設計※10とする

資源循環

 

イノベーション

イノベーション

 

新たなオートメーションによる持続可能な生産現場・職場環境、安心・快適な社会の実現

新オートメーション

お客様の持続可能な生産現場・職場環境、さらなる安心・快適・達成感の実現に向け、生産空間・居住空間(ビル建物)・生活空間における「計測の高度化」「データ化」「自律化」などにより、社会が求める時々の課題を解決、付加価値を創出

2030年に延べ8,000事業所※11で事業環境変化に強い状態を実現

2030年に延べ600万人※12にストレスフリー、多様な働き方につながる環境を提供

社会

サプライチェーン

 

サプライチェーンにおける社会的責任の遂行と地域・社会への貢献

サプライチェーン、

社会的責任

お客様、お取引先様と共に社会的責任を果たす(価値共有を目指したアズビルCSR 活動の拡充)

お取引先様と共に、SDGsを共通目的として連携し、サプライチェーンにおけるCSRの価値共有を実現。独自の評価指標で方針・体制・取組み・有効性を評価※13

地域活性への貢献(事業拠点を軸とした社会貢献)

地域に根差した社会貢献活動をすべての事業所※14において実施し、社員一人ひとりが積極的に参加※15

地域社会への貢献

 

人材

人権・安全・健康

 

健幸経営と永続的な学習による社会課題解決の基盤強化

健幸経営、

学習する企業体

健幸経営(働きがい、健康、ダイバーシティ&インクルージョン)の実現(柔軟な働き方と総労働時間削減、社員の心身の健康の維持・増進、多様な人材が能力発揮できる場づくり)

azbilグループで働くことに満足している社員65%以上

2024年までに女性活躍ポイント※16を2倍にする(2017年比)

学習する企業体の発展・強化(グローバルに活躍する人材の継続的育成とステークホルダーと共に学ぶ機会の拡大)

一年間で仕事を通じて成長を実感する社員65%以上

2024年までに研鑽機会ポイント※17を2倍にする(2012年比)

学習と人材育成

 

 

 

 

 

ガバナンス

商品安全・品質

 

 

(企業が社会に存立する上で果たさなければならない基本的責務)

* 商品安全・品質、コンプライアンスについては、「azbilグループCSR推進会議」において、部門毎に業務に直結した指標及び目標をCSR活動計画として設定

* コーポレート・ガバナンスについては、2022年6月、指名委員会等設置会社へ移行し、社外取締役を過半数とする取締役会及び3つの法定委員会の体制のもと、適切な監督と実効性を確保

コーポレート・ガバナンス

 

コンプライアンス

 

※1 温室効果ガス(CO など)  ※2 2017年基準   ※3 2017年基準

※4 脱炭素化・資源循環・生物多様性保全等の幅広い環境活動が統合的に事業に取り込まれた経営

※5 地球規模の環境課題(脱炭素化、資源循環、生物多様性保全)解決に貢献する製品の創出・提供を目指した設計

※6 オートメーション技術による生産性改善や安定操業に寄与することに加え、脱炭素化、資源循環、生物多様性保全の3つの環境重点分野において、顧客や社会の環境課題を解決し、持続可能な社会の実現に貢献できるフィールドエンジニアリングサービス

※7 3つの環境重点分野(脱炭素化、資源循環、環境汚染防止)での課題解決実現に向けて重要な、以下の専門スキル保有者(社内資格制度)を対象とする

● ビル建物向けのリモートメンテナンス、エネルギーマネジメントサービス、クラウドサービスなどのネットワークサービスのライセンス取得者

● プラント・工場向けの高度制御、省エネルギーソリューション技術、バルブメンテナンスのプロフェッショナル認定者

※8 社員一人ひとりがフィールドエンジニアリングサービスの技術革新に合わせ、複数のプロフェッショナルスキルを取得した場合も含んだ資格保有者の総数

※9 天然に存在して、人間の生活や生産活動に利用しうる物資・エネルギーの総称

※10 BAT(Best Available Technology:経済的および技術的に実行可能な最も効果的な技術)の範囲

※11 2022年4月時点で530事業所で稼働。2030年には15倍の8,000事業所を目指す

※12 2022年4月時点で60万人に提供。2030年には10倍の600万人への提供を目指す

※13 FTSEなどの外部ESG評価をベースにした独自の仕組みと評価制度

※14 国内・海外を含む全事業所 ※15 azbilグループ社員数規模の参加を目指す

※16 女性の役員、役職者、管理職など役割に応じたウエイトをつけて独自に集計したポイント

2017年度比としているのは、女性活躍も施策として織り込んだ人事制度が2018年度から改定されているため

※17 社内外のステークホルダーとともに学ぶ機会(回数および参加人員数)を独自に集計したポイント

2012年度比としているのは、教育育成の強化を意図したアズビル・アカデミーが2012年12月発足、2013年度に本格稼働した

ため

 

(2)重要なサステナビリティ項目

 グループ理念である「人を中心としたオートメーション」の実践を通じて、地球環境に貢献し、持続可能な社会へ「直列」に貢献することを目指すazbilグループにおいて、前述のサステナビリティ経営の取組みにおけるガバナンス及びリスク管理を通して識別された、重要なサステナビリティ項目は、以下の「気候変動」であり、またその企業価値の創造の源泉となる「人材」を資本として捉える「人的資本」です。

 「気候変動」に対しては、製品・サービス・ソリューションの提供を通じて、お客様の現場におけるCO削減に取り組むことで、持続可能な社会へ「直列」に繋がる貢献と当社グループの持続的な成長を実現してまいります。また、「気候変動」に対応した3つの成長事業領域をはじめとし、当社グループの価値創造の原動力となる「人的資本」の投資についても強化してまいります。具体的には、事業の成長及びそれを支える全社機能に対して人員計画に基づく着実な採用、適材適所の配置、及び人材育成を積極的に実施することで、サステナビリティ経営の実現を長期的に支えてまいります。

 

①気候変動への対応(TCFD提言への取組み)

 azbilグループは2019年11月、気候変動が事業活動に与える影響を正しく把握し、適切に開示するという気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言内容に賛同いたしました。賛同表明後、気温上昇のシナリオに基づいた各事業の機会とリスクの双方を検討した結果、CO削減に貢献する事業活動の機会がリスクを大きく上回ると認識しております。今後も、TCFDの提言に沿った形で、ガバナンス、戦略、リスク管理、指標及び目標について、継続的に開示を進めてまいります。

 

<ガバナンス>

 気候変動は、グループ理念に基づいて経営を行ううえでの最重要課題の一つと認識し、担当役員を統括責任者としたグループ横断的なタスクフォースを組成、事業影響と財務的影響開示の視点から経営会議で審議し、その内容は取締役会で適切に監督しております。

 

<戦略>

 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)、国際エネルギー機関(IEA)や各種機関からの情報を基に、1.5℃ /2℃シナリオ(脱炭素社会に向けた規制強化や技術革新が促され、気温上昇が持続可能な範囲で収まるシナリオ)と4℃シナリオ(温室効果ガス排出を削減する有効な対策が打ち出されず、気温上昇が継続し、異常気象や自然災害が増大するシナリオ)の2つのシナリオで、2030年までの長期的な当社グループの事業上の機会やリスクを特定しています。なお、1.5℃シナリオについては、2℃シナリオと機会とリスクの傾向は同じで影響の度合いが大きくなると認識しています。

 

 

機会とリスクの開示

種類

シナリオ

ビルディングオートメーション事業

アドバンスオートメーション事業

ライフオートメーション事業

機会

1.5℃ /2℃

世の中のニーズにあわせた省エネルギー・省COソリューションやサービスの需要拡大等

環境影響を軽減する新しい産業・プロセスに向けた、センサ・各種計測器、ソリューション等への需要が増加

IoT技術を活用したガスメーター活用によるSMaaS事業の拡大等

4℃

気象災害に適応した建物に向けた製品・サービス・ソリューションの需要の増加等

異常予知機能を具備した製品・サービス・ソリューションへの需要の増加等

気象災害に適応した製品・サービス・ソリューションへの需要の増加等

移行

リスク

1.5℃ /2℃

・新たな規制にあわせた新製品やサービス開発のコスト増加

・エネルギー価格上昇による製造・調達コストの増加

・炭素税導入などコスト負担増に伴うお客様の従来型設備投資の減退

物理

リスク

4℃

・異常気象による操業停止、製品・サービス・ソリューション提供の休止

・異常気象による事業不安定化に伴う、お客様の投資の大幅な減少

 気温上昇のシナリオに基づいた各事業の機会とリスクの双方を検討した結果、CO削減に貢献する事業活動の機会がリスクを大きく上回ると認識しております。

 リスクを抑制し、機会を拡大するため、当社グループでは、「自らの事業活動における環境負荷低減」を進めるとともに、それらの取組みを通じて得られる技術・ノウハウを活かし、計測と制御の技術を駆使してお客様の環境に関わる課題解決を支援することで「本業を通じた地球環境への貢献」を推進し、持続可能な社会の実現へと繋げてまいります。

(注)当社グループの財務計画等に及ぼす影響と対策の詳細については、ホームページにて掲載を行っている「TCFD ~ 気候変動の影響の把握と開示の取組み(https://www.azbil.com/jp/csr/basic/tcfd.html)」をご覧ください。

 

<リスク管理>

 気候変動に関する主なリスクは、「2(1)サステナビリティ経営の取組み」に記載の<ガバナンス>のサステナビリティ推進体制のもと、経営に重大な影響を与える可能性のあるリスクについて、気候変動を含めて網羅的に管理しています。具体的には、経営層に対するヒアリングによる経営目線でのリスクの抽出・評価を行ったうえ上で、「azbilグループ総合リスク委員会」にて、「azbilグループ重要リスク」及びそれ以外の「部門管理リスク」を決定しています。結果については取締役会に報告します。各リスクに関しては、年度初めに年間のリスク対応計画を策定し、期中と期末に行われる「azbilグループ総合リスク委員会」ほかにて計画の進捗報告を行い、計画の遅延や推進上の課題を都度認識・改善することでPDCAサイクルを回しています。具体的には「3 事業等のリスク」に記載のとおり評価しております。

 

<指標及び目標>

 持続可能な社会へ「直列」に繋がる事業活動により、当社グループのお客様、及び当社グループとサプライチェーン全体を視野に入れた指標及び目標をazbilグループSDGs目標として掲げて、気候変動への取組みを推進しております。このazbilグループSDGs目標の達成に向けて、経営会議で年度ごとの実行目標設定と進捗確認を行い、取締役会で報告を行っております。また、状況変化や課題に対しては経営会議等で対策を適宜検討・立案し、実効性を高めております。

・お客様の現場におけるCO削減効果を2030年度に340万トン※1まで拡大することを目標としております。

・当社グループの事業活動に伴う温室効果ガス(GHG)※2の排出量(スコープ1+2※3)を2050 年に実質ゼロにすることを目指す「2050年 温室効果ガス排出削減長期ビジョン」を策定し、カーボンニュートラルの実現を目指しております。この達成に向けた中間目標として、「2030年 温室効果ガス(GHG)排出削減目標」を定め、サプライチェーン全体での排出量削減に取り組んでおります。なお、すべてのCO排出量(スコープ1+2+3)を対象とした2050年のネットゼロ目標設定に向け、2023年6月、2年以内の申請についてSBTi※4にコミットメントレターを提出いたしました。

 

《2030年 温室効果ガス(GHG)排出削減目標》(Science Based Targets(SBT)※5 認定済)

事業活動に伴うGHG排出量(スコープ1+2) 55%削減(2017年基準)[2021年8月 再認定]

サプライチェーン全体のGHG排出量(スコープ3※3) 20%削減(2017年基準)[2019年5月 認定]

※1 CO削減効果340万トンは、東京都の約1.7倍の広さの森林(36~40年生の杉人工林を想定)による年間CO吸収量に相当

※2 温室効果ガス(GHG=Greenhouse Gas):大気圏にあって、地表から放射された赤外線の一部を吸収することにより、温室効果をもたらす気体の総称

※3 スコープ1:事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)

 スコープ2:他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出

 スコープ3:事業者の活動に関連する他社の排出(スコープ1、スコープ2以外の間接排出)

※4 SBTイニシアチブ(SBTi): 上記の温室効果ガスの排出削減目標(SBT)を達成するために、2015年にCDP(気候変動対策に関する情報開示を推進する機関投資家の連合体)、WRI(世界資源研究所)、WWF(世界自然保護基金)、UNGC((国連グローバル・コンパクト)が共同で設立した団体

※5 Science Based Targets(SBT): 産業革命前と比較して気温上昇を2℃より十分に下回る水準に抑え、また1.5℃未満に抑 えることを目指す水準と整合した、科学的根拠に基づいて設定した温室効果ガスの排出削減目標

 

・2022年度のお客様の現場におけるCO削減効果は年間276万トンCO※6となりました。また、2022年度の事業活動に伴うCO排出量(スコープ1+2)は1.7万トン※7※9で2017年度比36%削減、サプライチェーン全体でのCO排出量(スコープ3)は102万トン※8※9で2017年度比8%削減となりました。なお、2023年度のそれぞれの数値は、確定後、「azbil ESGデータブック2024(https://www.azbil.com/jp/ir/library/esg/index.html)」に公開いたします。

 

※6 CO削減効果の推計手法について、第三者レビューを実施しています

※7 集計範囲:アズビル株式会社、国内連結子会社及び海外主要生産拠点(グループ全体のGHG排出量95%以上に該当)

※8 集計範囲:アズビル株式会社及び連結子会社

※9 CO排出量(スコープ1+2、3)について、第三者検証を受けています

 

・当社グループでは、お客様や社会におけるエネルギー課題の解決に貢献するとともに、「2050年 温室効果ガス排出削減長期ビジョン」に基づき、脱炭素化に向けた方針・計画を策定し取り組んでいます。

 

《脱炭素化へ向けた方針・計画》

 

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②人的資本

 azbilグループでは人材を「資本」として捉えており、「社員は重要な財産であり、新たな企業文化と企業価値の創造の源泉である」という普遍の考え方をベースに、当社グループが常に世の中に価値ある存在として継続的な成長を図り、持続可能な社会の実現に「直列」に貢献できるよう、人的資本を強化しております。今後の技術発展や社会情勢の新たな展開等に誘発される事業構造の変化に対応し、長期目標、中期経営計画の達成に向けて、様々なバックグラウンドに基づく多様な価値観を有する人材を採用し、社員が長期にわたって活躍できるよう人事制度を整えるとともに、「学習する企業体」として変化に柔軟に対応する人材を育成し、適材適所の配置を進めています。10,000人規模の当社グループ社員が、これら人事戦略、人事施策のもとで能力を発揮し、イノベーションを起こし、生産性を一層高めることで、持続的な企業価値向上へと繋げています。

 

<ガバナンス>

 当社グループの人事戦略及び人事施策は経営会議にて議論を行い、その実現に向け、人件費や人的資本強化に関する経費等の予算を含む人的資本への投資計画を取締役会で審議・承認しております。人事戦略及び人事施策並びに人的資本の投資計画に基づき実施される、人的資本強化の主要テーマである健幸経営の取組みや多様性の確保、及び人材育成に関わる進捗状況は毎年経営会議にて確認するとともに、その方向性を取締役会等の場でも活発に議論を行うことで、人的資本価値向上に関わる実行状況を適切に監督しております。

 

(人材育成の推進体制)

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 ※アズビル・アカデミー:「学習する企業体」への変革を目指し2012年に設立された人材育成の専門機関

 

<戦略>

 当社グループは、働き方改革とダイバーシティ推進を両輪とする、多様な社員が健康で活き活きと能力を発揮するための総合的な取組みを「健幸経営」と定義し、社員が働きやすい環境を整備するとともに、人材育成の専門機関であるアズビル・アカデミーを中心に「人材から人財(全ての社員が“財”をもつ人財)」へと育成し、長期目標・中期経営計画達成に向けて、3つの成長事業領域など事業伸長に向けた人材投資を進めることで、人的資本を強化しております。

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a.3つの成長事業領域への人的資本投資

 社会や産業等、様々な環境の変化から生まれた新たなニーズに対応し、社会・お客様とともに成長していくために、当社グループは、「オートメーション技術を共通基盤とした3つの成長事業領域」を柱にビジネスモデルの「変革」を推進していますが、それぞれの成長事業領域を手掛けることができるのは、1世紀余りにわたってオートメーション事業に従事し、社会・お客様の現場で、数多くのデータ、ノウハウを蓄積し、人を中心とした空間の最適化を構想から設計、施工、据付、エンジニアリング、メンテナンスまでを一貫して追求してきた当社グループならではの事業価値といえます。これら当社グループが強みをもつ3つの成長事業領域「新オートメーション事業」「環境・エネルギー事業」「ライフサイクル型事業」を推進するために、さらに必要なリソースとしての人材要件を整理し、年間50名のキャリア採用枠を設け、リファラル採用やアルムナイ採用等の採用手段も含めて活動することで即戦力の強化を図るほか、事業戦略にあわせて人材を育成していくなど、人的資本投資を進めています。

 新たな課題を新製品・サービスで解決する「新オートメーション事業」では国内外に通じた先端技術開発が必要であり、タレントマネジメントシステムを活用した技術者の育成と最適配置、専門人材の採用、大学や研究機関との共同研究・開発、及び共同研究先への派遣等による育成強化を図っています。

 省エネルギー・再生可能エネルギー領域での実績に基づく強みを発揮していく「環境・エネルギー事業」ではカーボンニュートラルを実現するエンジニアの育成が必要であり、エンジニアリング力と再生可能エネルギーに関する知見を一層高めるため、提携企業との人材の相互交流を通じた育成を進めているほか、資格取得奨励制度を通じて公的に技能・知識の認定を受けたエンジニア、社内認定制度をクリアした技術プロフェッショナルやマイスターがエンジニアリング力強化をリードしてまいります。

 顧客資産を長期にわたってサポートしていく「ライフサイクル型事業」においては、ネットワークを活用した高付加価値サービスを提供していくにあたってDXによるエンジニアリング・サービス力の強化、グローバル人材強化が必要であり、生産からエンジニアリング、サービスメンテナンス、それを支えるスタッフ部門など広範にわたり、LMS(Learning Management System)によるDX教育等を通じたリスキリングを進めています。

 

b.人材育成に関する考え方と取組み

 当社グループの持続可能な社会へ「直列」に繋がる事業活動を継続していくために、人材育成の専門機関であるアズビル・アカデミーを中心に「人材育成の基本理念」に沿って、「①仕事のプロとしてチームワークで協働」、「②一流を目指す強い意欲と挑戦」、「③高い志と倫理観、国際感覚」を求める人材像に掲げ、「学習する企業体」としての取組みを進めています。

《人材育成の基本理念》

1.azbilグループ成長の源泉は人材であり、人材の成長なくしてazbilグループの成長はありえない

2.そのため、社員力と組織力の最大化を目指して、

  個人:自己の成長、能力開発に最大の責任を持つ

  上司:職場における部下の能力開発に責任を持つ

  会社:公平な機会提供を通じ個人と組織を支援する

 

 お客様の現場で課題を把握し、最適なソリューションをお届けするには、高い技能・豊富な知識をもったエンジニアが要となります。例えば、IoT・AI時代を見据えた次世代のエンジニアを育成するために、最新の技術動向や実践例を含めた技術者育成プログラムを策定。付加価値の高いソフトウエアや高度なエンジニアリング・サービスの実現に必要な知識と技術力の強化を図っています。

 アズビル・アカデミーではグローバル人材の育成のために、日本を含む世界各地の現地法人の参加者が一堂に会する英語ベースでの学びの場を設けています。また、DX人材の育成のために、アズビルのDX人材定義を行い、スキル習得に向けた各種セミナーの開催や外部eラーニングを活用しています。そのほか、国内外の大学からインターンシップを受け入れることにより学生の学びと社員の異文化理解の機会を提供しています。

 

c.社内環境整備に関する取組み

 「azbilグループ健幸宣言」において、会社とそこで働く社員が協働し、快適で働きやすい職場環境づくり、心身の健康づくりに積極的に取り組むことを宣言しており、多様な人材が各々の社会的、身体的特徴、思想や価値観の違いを認め合い、活躍する機会を尊重しています。

 さらに、当社グループでは、多様な背景を持つ社員一人ひとりが互いに個性を尊重し、能力を発揮することが成長の原動力と考え、2017年度からは「アズビル・ダイバーシティ・ネットワーク」を発足させ、ダイバーシティ&インクルージョンの取組みを積極的に推進しています。このような取組みを通じて、性別や国籍、新卒採用・キャリア採用の違いなどを問わず、多様なバックグラウンドを持った人材が活躍しています。

 

《azbilグループ健幸宣言》

azbilグループは、社員ひとりひとりの健康が企業活動の重要な基盤であるととらえ、会社で働くすべての人々が安心・安全で、快適に、活き活きと、自分らしく健やかに働き、それぞれが持つ多様な能力を発揮し、公私ともに充実した人生を送ることが、生産性や業績の向上、イノベーション、社会への貢献につながると考えています。健幸な「働きの場と人」を創るために、会社とそこで働く社員が協働し、快適で働きやすい職場環境づくり、心身の健康づくりに積極的に取り組むことを宣言します。

 

 社員が活き活きと自分らしく働くことができるようにするためには、快適で働きやすい職場環境が必要との考えから新型コロナウイルス環境下における在宅勤務を起点として「働きの創造」を推進しています。これはハイブリッド勤務(在宅並びに出社やリモート勤務を組み合わせて働くこと)及びDXによる業務改革を推進するなど、新しいオフィス環境を社員に提供すると同時に、社員一人ひとりの繋がりを高めるコミュニケーション施策(社長他経営層が自ら国内外の当社グループ社員と対談を行う機会を設け、自由闊達な双方向でのコミュニケーションを行うとともに、その内容を社内ホームページ等で共有することで繋がりを高めているほか、社内コミュニケーションツールの充実やメンター制度、短期の他部署へのインターン制度等)の様々な取組みを進めることで、社員のwell-beingとエンゲージメント(会社への愛着や仕事のやりがい)の向上に努めています。

 

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 人事制度においても「永続的な人材の育成」「人材の能力発揮の最大化」「社員の生活の充実と人材の確保」をコンセプトとし、年齢、国籍、性別等に関わらず、役割と能力発揮度合いに基づく独自のジョブ型人事制度を通じて公正な評価と処遇・登用を行うことで多様な人材の活躍を支えています。また、育児・介護をはじめとする様々なライフイベントがあっても仕事と両立できるよう、勤務地域限定制度、短時間・短日数勤務等の柔軟な勤務制度、配偶者の海外転勤に伴う帯同休職制度等、生涯を通じて長期にわたりアズビルで活躍できるよう、制度拡充を進めてきました。

 ほかにも、社員一人ひとりが“企業価値向上”を意識して日々の“働き”を創造し、企業理念を実践することにより、会社とともに自己成長、発展していくことを期待し、退職後の生活の一助となることを目的とした社員向け「株式給付制度(J-ESOP)※10」や、同じく会社と社員が一体となって業績向上に努めることで、社員の長期的な資産形成の一助となることを目的とした「社員持株会」及び社員持株会を通じて中長期的な企業価値向上時のメリット付与を行う「信託型従業員持株インセンティブ・プラン(E-Ship®)※11」を導入するなど、福利厚生も含めた環境整備に努めています。なお、今般、当社のサステナビリティ経営の推進において極めて重要である「人的資本への投資強化」の観点から、「株式給付制度(J-ESOP)」を社員に給付する株式に一定の期間の譲渡制限を付す制度(呼称は「J-ESOP-RS」)へ、2025年4月予定にて一部改定することとしました。改定後の制度においては、社員へ給付する株式は退職時までの譲渡制限付きながら在職時からの議決権行使並びに配当金受領が可能になり、これにより社員の処遇と当社の株価や業績との連動性をより高めることで、社員エンゲージメントの強化と持続的な企業価値の向上に繋げることを目的としています。本制度改定に伴う、信託規模や株式取得方法については、別途、社内機関決定を経て、適時に開示させていただく予定です。

※10 J-ESOP:社員に対し個人の貢献度等を勘案して計算されるポイントを付与し、一定の条件により受給権の取得をしたときに当該付与ポイントに相当する当社株式を給付する制度。社員に対し給付する株式は、予め信託設定した金銭により将来分も含め取得(2017年5月に制度開始、信託期間(10年)中で、取得時の価額で約40億円の自社株式を付与予定)している。

※11 E-Ship:予め信託設定した期間(3年)にわたり持株会が取得すると見込まれる数の当社株式を信託が予め取得(2022年5月に制度開始、取得時の価額で約48億円の自社株式を取得)し、その後、信託から持株会に対して継続的に当社株式の売却が行われるとともに、信託終了時点で従持信託内に株式売却益相当額が累積した場合には、当該株式売却益相当額が残余財産として受益者適格要件を満たす者に分配される制度。

 

<リスク管理>

 人的資本に関する機会の評価は、原則毎月開催される全社事業検討会及び年4回開催されるazbilグループ社長会等の場を通じて中長期の人員計画を検討するとともに健幸経営、働きの創造や人材育成など広範にわたる内容についてazbilグループCSR推進会議で社内外の状況確認と議論を行い、各部門、各社取組みの好事例を横展開するなど人的資本強化の機会を捉えた活動へと繋げています。

 また、人的資本に関するリスクは、「3 事業等のリスク」に記載のとおり評価されております。リスク全般に関わる担当役員が議長を務める「azbilグループCSR推進会議」が四半期に1回開催され、対策に関する進捗状況・課題について確認・管理しているとともに、その内容は取締役会・経営会議に報告しています。

 

<指標及び目標>

 人材育成及び社内環境整備については、2030年度に向けたazbilグループSDGs目標として「一年間で仕事を通じて成長を実感する社員の比率65%以上」「azbilグループで働くことに満足している社員の比率65%以上」を掲げております。

 それぞれの状況は、毎年の社員満足度調査を通じて確認することとしており、2023年度に国内当社グループ社員に実施した調査により、「一年間で仕事を通じて成長を実感する」社員は59%、「azbilグループで働くことに満足している」社員は57%であることを確認しています。

 目標達成に向けて、全ての社員が活躍できるようダイバーシティ&インクルージョンの取組みを推進するとともに、働きの創造(働く環境の整備と学習する機会の提供)に取り組んでおり、それぞれazbilグループSDGs目標のターゲットの位置付けで、2024年度に女性活躍ポイント※12を2017年度比で2倍にすること、研鑽機会ポイント※13を2012年度比で2倍にすることを掲げております。2023年度の結果では女性活躍ポイントは2.3倍、研鑽機会ポイントはリアルタイム型(ライブ型)の研鑽機会は1.8倍、eラーニングなどWEB型の研鑽機会は8.1倍、研鑽機会の総計では5.5倍に至っていることを確認しており、2030年度に向け、azbilグループSDGs目標及びターゲットともに社員満足度調査結果を分析することで各部門、年代、職種ごとの課題を把握し、取組み計画に反映するとともに改善を行うことで、更なる人材育成、社員の働きがい向上へと繋げております。

 なお、女性管理職比率、男性育児休業取得率、男女間賃金格差等は、今後も多様な人材を確保していくうえで重要な指標であると認識しており、これらについての実績は、「第1 企業の状況 5 従業員の状況」に記載しております。

※12 女性の役員、役職者、管理職など役割に応じたウエイトをつけて独自に集計したポイント

2017年度比としているのは、女性活躍も施策として織り込んだ人事制度が2018年度から改定されているため

※13 社内外のステークホルダーとともに学ぶ機会(回数及び参加人員数)を独自に集計したポイント

2012年度比としているのは、教育育成の強化を意図したアズビル・アカデミーが2012年12月発足、2013年度に本格稼働したため

・人的資本に関係する2023年度の各数値は、確定後、「azbil ESGデータブック2024(https://www.azbil.com/jp/ir/library/esg/index.html)」に公開します。

 

3【事業等のリスク】

 本書に記載の「第2 事業の状況」、「第5 経理の状況」等に関する事項のうち、経営者がazbilグループの経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1)リスクマネジメント体制

 当社では、スリーラインディフェンスに基づくリスク管理を行っております。azbilグループ全般の活動において、責任を明確にした3つの防衛線を通じて、組織の内部統制・リスク対応機能の向上を図っております。特に第一の防衛線については、確実にリスクを低減するため、リスクごとに担当役員を明確にし、防衛線での自律的管理の強化を図っております。また、リスクマネジメント事務局がリスク管理活動全体の管理と支援を行うなかで、第二の防衛線では、主に各間接管理部門が組織全体で対応すべきリスクに対する対策の展開と管理、支援の責任を果たすことで、リスク管理に対する牽制・支援の役割を担っております。さらに、内部監査部門が第三の防衛線として第一線・第二線によるリスク管理体制の検証・保証を行います。

 

<リスク担当役員の明確化による防衛線の強化>

 

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 当社では、ボトム(現場部門)の情報をトップ(経営層)が十分に把握し、意思決定を行うことが重要だと認識しており、ボトムアップアプローチとトップダウンアプローチを一体としたリスクマネジメントを実施するための体制として、「azbilグループ総合リスク管理部会」、「azbilグループ総合リスク委員会」、「azbilグループCSR推進会議」を設置しております。

 「azbilグループ総合リスク管理部会」は部門の責任者等をメンバーとして実施され、主にリスクの抽出と評価に関して現場側の意見集約を行います。なお、リスクの抽出と評価については経営層の意見も別途ヒアリングを行って集約し、経営層と現場部門の意見を統合するプロセスを構築しております。

 「azbilグループ総合リスク委員会」はリスク管理担当役員を統括責任者、経営層をメンバーとして半期に一度実施され、一連のリスクマネジメント活動に対する経営層による状況確認と方針決定を行います。具体的には、「azbilグループ総合リスク管理部会」や経営層へのヒアリングから得られた情報に基づくリスクの対応優先度の決定(azbilグループが優先して対処すべき「azbilグループ重要リスク」とそれ以外の「部門管理リスク」の選定)、リスク対応計画の進捗確認を行います。なお、「azbilグループ総合リスク委員会」での審議結果は取締役会に報告しております。

 「azbilグループCSR推進会議」は部門の責任者等をメンバーとして四半期に一度実施しており、リスクマネジメントの推進状況について確認・検討を行っております。リスク対応計画の進捗確認をazbilグループ総合リスク委員会よりも高頻度に行うことで、タイムリーな状況変化に対応できるようにしております。

 

(2)リスクマネジメントプロセスの運用

当社では、経営に重大な影響を与える可能性のあるリスクの網羅的な抽出と影響度及び発生可能性の評価を行っております。具体的には、経営層に対するヒアリングによる経営目線でのリスクの抽出・評価と、azbilグループ総合リスク管理部会での審議に基づく現場目線でのリスクの抽出・評価を行い、結果をリスク一覧表(抽出されたリスクの内容と評価結果を一覧化した資料)とリスクマップ(リスクを影響度と発生可能性に基づき5×5のマトリックスに配置した資料)に取りまとめます。なお、リスクの評価にあたってはリスク発生時の影響金額やリスクの発生頻度等に基づく定量的な評価基準を設定し、評価結果を客観的に比較・統合できるようにしております。上記のアウトプットを参照資料として「azbilグループ総合リスク委員会」にて経営層による審議を行い、「azbilグループ重要リスク」及びそれ以外の「部門管理リスク」を決定し、結果については取締役会に報告します。

抽出された各リスクに対しては、期初に年間のリスク対応計画を策定し、期中と期末に行われる「azbilグループ総合リスク委員会」にて計画の進捗報告を行い、計画の遅延や推進上の課題を都度認識・改善することでPDCAサイクルを回しております。「azbilグループ重要リスク」についてはリスクごとに担当役員が直接状況報告を行いますが、「部門管理リスク」については、計画の進捗状況を集約した台帳ベースで確認を行います。また、四半期に一度実施される「azbilグループCSR推進会議」では、より高頻度にリスク対応計画の進捗確認を行っております。

 

<リスクマネジメントプロセス>

 

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<リスクマップ>

 

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影響度と発生可能性でリスクをプロットすることにより、

管理すべき優先順位を視覚的に把握する

 

(3)事業等のリスク

 今回選定されたazbilグループ重要リスクに関する詳細は以下の通りです。

 

①品質に関するリスク

リスク認識

製品の設計・製造品質の確保不足、あるいは量産工程における教育不徹底や意識不足等によるデータの不備や不適合品等が発生した場合、製品不適合によるリコールが必要となり、多額のコストが事業の業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。また、当社の事業上の強みが「高い品質」にあることから、上記の事象が顧客からの評価や信用の低下を引き起こし、影響が重大化もしくは長期化する可能性も考えられます。昨今ではSNSの普及により品質トラブルを含む風評が広まりやすく、当該リスクの影響度及び発生可能性が以前よりも高まっているため、常に経営としてできる限りの備えが必要だと認識しております。

対策

当社グループでは、製品の設計・製造品質を確保するための対策として、開発プロセスや安全設計に関する標準の運用や、生産現場の各工程で不適合品を「①入れない②つくらない③出さない」ための標準手順の策定・運用、安全な製品提供のための審査制度、適正な検査作業工程維持のための生産ラインの管理・改善、グループワイドでの業務プロセス点検といった取組みを行っております。また、法規制の変化に対応するため、製品に含有する化学物質規制や、製品安全関連の法規制・規格等について製品開発時や量産段階における確認プロセスを標準化し、厳格化しております。

製品品質に関わる重大な問題が発生した場合、市場品質情報として即座に品質担当役員と事業責任者へ伝達され、関連部門で共有、必要な対策・情報開示が迅速に行えるようになっております。また、発生した品質問題に対し、原因の解析、対策の実施及び技術・評価基準への反映や設計知識データベースへの登録を行い、再発防止に努めております。なお、製造物責任や製品欠陥に起因する損害賠償につきましては、保険に加入するなど問題発生に際しての備えも強化しております。

品質管理対応に関連する情報は、グループ品質保証担当役員を委員長とした品質保証委員会をはじめとする会議体にて共有・可視化されるように努めております。

②情報セキュリティに関するリスク

リスク認識

当社グループでは、事業上の重要情報及び事業活動の過程で入手した個人情報や顧客、取引先、提携先等の機密情報を保有しておりますが、昨今、国内外ではGDPR(EU一般データ保護規則)等に代表される個人情報を主体とする各種情報の保護に対する法令の制定が進んでおり、遵守とそのためのルール整備や情報システムの強化が求められております。これらに関連するリスクとして、

①メールやFAXの誤送信、パソコンや書類の紛失等により、顧客から受領した機密情報や従業員の個人情報が漏えいするリスク

②クラウドサービス間のAPI等による情報連携において不適切な情報を公開(提供)してしまうリスク

③データサービスにおいて顧客(企業)や個人を特定できる状態でデータを利用、提供してしまうリスク

などが存在しており、その結果として、損害賠償の支払いなど、社会的な信用の低下により業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

また、情報セキュリティに関しては、サイバーセキュリティ室による商品・サービスから業務システムまでの一貫した管理・対策を中心に対応を図っておりますが、新たなサイバー攻撃の手口が絶えない現在の状況において、想定外の攻撃による以下のリスクを完全に防ぐことは難しいと考えております。

①ランサムウェアや標的型攻撃等のサイバー攻撃により顧客及び自社の機密情報が漏えいするリスク

②当社グループが顧客に提供しているクラウドサービス商品がサイバー攻撃を受け、サービス提供不能や顧客の機密情報漏洩を起こしてしまうリスク

その結果として、損害賠償の支払いや顧客・社会からの信用喪失により、当社グループの業績及び財政状態が大きく影響を受ける可能性があります。当社グループでは2020年度に発生したコンピューターウイルス感染の事態を重く受け止め、日々変化する状況に対応して、情報セキュリティ対応の高度化に一層努めてまいります。

対策

事業上の重要情報の機密保持とあわせて、個人情報保護に関しての法令遵守のため、社内規程の整備と運用及び社員への教育を行っております。具体的には、

①PCストレージの暗号化

②メール誤送信防止アドインソフトのインストール

③社内から社外へのインターネットアクセス制限による情報漏洩リスク軽減

④azbilグループ情報セキュリティ教育での啓蒙(誤送信防止の注意ポイント、情報紛失時の対応等)

⑤グループとして緊急事態対応の体制を整備・迅速な対応による影響最小化

の対策をとっております。

また、当社グループでは、激化するコンピューターウイルス等によるサイバー攻撃に対する備えとして、より強固なIT環境の整備や社員の情報リテラシー(情報活用能力)を高めるための定期的な教育等を継続して行うとともに、様々なサイバー攻撃に対して、以下のような対策を行っております。

●システム上の対策

①ネットワーク経路上の監視・防御

②生産設備とオフィス系ネットワークの分離

③システム及び利用PCのマルウェア対策(新たにEDR※1を導入してセキュリティ強化)

●体制・運用

①適切なバックアップによるデータ消失対策

②azbilグループ情報セキュリティ教育での啓蒙・訓練(マルウェア感染が疑われた際の対応等)

③サイバー攻撃対応訓練

④CSIRT※2の設置による初動対応の迅速化

さらに、商品セキュリティに対しては、セキュリティ専門組織によるリリース前のサイバーセキュリティ審査を実施し、セキュリティ事故を未然に防止するようにしております。リリース後も新たな脆弱性情報を収集し、脆弱性が発見された場合は商品への影響調査・対策を実施する運用をしております。

以上のような情報セキュリティに関するリスクへの対応を、azbilグループ情報セキュリティ基本方針のもと遂行してまいります。

 

※1EDR(Endpoint Detection and Response):PCやサーバーなどネットワークに接続されている端末を監視し、不審な挙動を検知するとリアルタイムに通知する製品・サービスの総称

※2CSIRT(Computer Security Incident Response Team):当社のセキュリティ事故対応チーム

③技術・商品開発に関するリスク

リスク認識

近年、メタバース※3やWeb3.0※4、生成AI※5等といったDXの先端的な潮流に代表される技術革新の流れをキャッチアップできないことや、国際標準動向への対応ができないことにより、事業に影響が生じるだけでなく、市場拡大もできない可能性があります。具体的には、商品の陳腐化と顧客離れが進み、市場からの撤退を迫られるリスクや、事業領域が広がらず、縮小均衡に陥ってしまい事業成長できないリスクが想定されます。また、研究開発投資について、現時点では適切なテーマ設定に基づく技術・商品開発プロジェクトへの人的、資金的リソースの投入を行っておりますが、開発テーマを継続的に確保するための対応が不十分な場合、中長期的には開発テーマ不足に至る可能性があり、リニューアル商品、新規商品が不足し、中長期目標の達成が不達になることが考えられます。加えて、製品・技術の研究開発を進めていても、研究開発プロセスの管理不備やリソース不足、開発力自体の低下が生じた場合には、新製品の投入遅延や開発自体の失敗によってマーケットシェアが減少し、業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

※3メタバース:一つの仮想空間内において、様々な領域のサービスやコンテンツが生産者から消費者へ提供される場

※4Web3.0(ウェブスリー):ブロックチェーンによる相互認証、データの唯一性・真正性、改ざんに対する堅牢性を基に、個人がデータを所有・管理し、中央集権不在で個人同士が自由に繋がり交流・取引する世界

※5生成AI:自らの訓練に使用されたデータを基に、テキストや写真、動画、コード、データ、3D画像等の出力を生成又は作成する人工知能アルゴリズム

対策

技術革新に対しては、関連技術動向、競合動向、国際標準動向を各開発組織やマーケティング組織で継続して注視しております。加えて、全社マーケティング・開発横断で実施される技術開発担当役員を議長とした商品力強化会議にて情報の捕捉や課題認識に努め、全社開発検討会では、より具体的なテーマ(AI、クラウド、通信、カスタムIC等の領域)について、取組み状況を確認しております。

技術・商品開発の具体的なテーマの抽出においては、ニーズ・シーズマッチング活動※6等により、マーケティング・開発一体でのテーマ創出活動を強化・推進しております。外部環境変化への対応の必要性も捉えるために、特に海外開発拠点であるアズビル北米R&D株式会社や東南アジア戦略企画推進室による海外の技術開発パートナーとの連携によるエコシステム構築への対応も進めております。また、“現場で価値を創る”ことを目指した商品提案力強化のため、azbilグループシステム・プロダクト事業ポートフォリオ検討タスクを構成して対応を進めております。具体的な施策としては、保有する技術の競争優位性を高めるためにMEMSを主力としたセンシングデバイス領域、アクチュエータ領域、クラウド領域における技術開発本部の組織改定、アクチュエータ開発本部の設立に加えて、プロダクト事業強化として昨年度に設立したスパイラル型事業開拓※7組織においては、対象とする商品領域を拡大しました。システム事業強化としては、クラウドサービスの統制を担う組織に加えて、アプリケーション開発体制強化として2024年度新たにグループクラウド開発部の設立を行い、商品力強化を図ってまいります。

研究開発プロセスの管理不備による開発遅延に対しては、開発プロセス標準の改良(リスク要因の抽出プロセスの設定、リスク検証における管理技術の導入による後戻り防止や遅延リスクの事前検討、伝承すべき技術要素のドキュメント化等)を実施しております。また、技術開発担当役員を委員長とした技術委員会を活用した、更なる全社での開発の連携強化や人材リソース配置の調整によるリソース確保を実施しております。

中長期的な開発力向上については、開発プロジェクト推進の根幹となる開発人材(マネジメント及びスペシャリスト等)の育成が必要であり、開発人材の最適配置と育成、開発人材の流動化に関する企画立案と施策展開として、技術委員会傘下の開発系人材専門部会によるタレントマネジメントシステムの導入・運用等の実行により、強化を進めております。また、イノベーションを起こす風土づくりを推進するため、国内外における外部連携(大学やスタートアップ企業等)の拡大や全社研究開発の中核拠点である藤沢テクノセンターに新たに建設された新実験棟に協創エリアを設置するなど、協創活動をより一層強化しております。

 

※6ニーズ・シーズマッチング活動:ニーズ(消費者が求めている必要性)とシーズ(メーカの持っている特別な技術や材料)のマッチングを推進する活動

※7スパイラル型事業開拓:当社独自の技術を有し、強みを発揮できる領域において、顧客を含む関係者とともに開発を進め、より短いスパンでの市場投入、その後の維持、リニューアルを実現することを目指す事業開拓

④国際情勢変化への対応に関するリスク

リスク認識

グローバル事業の拡大に伴い、進出先における政治経済情勢の変化、現地の法律や規制等の改正、自然災害、テロ、ストライキ、戦争、感染症の蔓延の発生や世界各国における紛争や政治的対立による地政学的リスクの増大等、不測の事態に遭遇する危険性が増しております。そのような中、予期せぬ戦争状態の発生や主要国における経済措置等を原因とした対立の激化、それに対する各国の制裁措置等が発動された場合、当社のグループ企業の従業員の安全性が損なわれる可能性があることに加え、事業、与信管理も含めた業績及び財政状態に一定の影響が出る可能性があります。

また、国際情勢環境の変化に伴い、関連する国内外の輸出管理関連法令等の動向については、当社グループが予期しない突発的な法制、規制や承認手続きなどの変更に直面するリスクがあります。

加えて、急激又は大幅な為替レートの変動は、売上高、原材料・部品の価格、販管費等の経費に影響し、当社グループの業績及び財政状態に一定の影響を及ぼす可能性があります。

対策

当社グループでは、進出先の各国・各地域の地政学的リスクの変化に十分な注意を払い、常に情報の収集に努めております。そのうえで、国ごとにリスクを判断し、必要な場合には人命安全マニュアル等に基づく人命第一の対策を講じております。また、事業継続に対するリスクについては、国際情勢の変化等を踏まえたBCP(Business Continuity Plan-事業継続計画)の整備を進めているほか、特定地域における情報収集、人命安全対策等、当社グループにとって致命的な影響を及ぼすイベントについて重点的な検討を行っております。加えて、既獲得案件については案件単位で状況を把握し、適切に対応しております。

輸出管理関連法令等については、国際情勢及び国内外の関連法規制の変化に十分な注意を払い、常に情報の収集に努めております。法規制の変更があった場合には、輸出取引審査をより慎重にするなど社内の運用体制の見直しなどを実施し、適正な輸出管理を行っております。かかる法規制の変化や運用体制の見直しなどの取組みについては、当社グループ内に周知徹底するとともに、グループ内の各種会議体においても報告や議論を行っております。

為替変動に対しては、適切な財務上の為替ヘッジを行いつつ、海外生産の拡大等によるリスク軽減に取り組んでおります。

⑤自然災害に関するリスク

リスク認識

当社グループのBA事業、AA事業の国内生産拠点(製造子会社を含む)や、マザー工場として生産機能の中核となる湘南工場、海外の生産拠点において、地震・津波、噴火といった自然災害や火災・爆発など不測の事態が発生した場合、建屋や生産設備・機械、出荷前の製品等の損傷に対して復旧費用が必要となる可能性があります。また、自社の生産ラインに加えて社会インフラやサプライヤーにも被害が生じ、工場生産や事業活動が停止することによって業績及び財政状態に影響が生じる可能性があります。

対策

当社グループでは地震等の自然災害の発生時に生じる損害を最小限に抑えるべく、人員や生産設備等に求められる対応準備を進めております。具体的には、工場等の重要施設や建物における耐震化、非常用電源や非常用通信網の整備、災害備蓄品の配備に加え、社員の安否確認システムの導入や各拠点における安全確保のため初動対応ガイドラインの作成、定期的な防災訓練や初期消火訓練といった対策を行っております。

また、事業の中断、阻害に対処するためのBCP策定にも取り組んでおり、実効性を確保できるよう継続的に改善を進めております。災害による事業停止に対しては対応可能な事業継続期間を検証し、そのために必要な資金及び製品や部品の在庫の確保、最優先業務を継続するための代替拠点の設定とその体制を整備しております。具体的には、本社機能として関西の代替拠点の設定、サービス・エンジニアリング機能の拠点間支援体制の整備や生産と研究開発部門の再編、主要生産品目を国内他地域及び中国とタイの海外工場へ移管するなど、生産拠点の分散化を図ることにより、拠点集中リスクの軽減を図ってまいりました。さらに、首都圏の活動制限等のロックダウン相当の事態を想定した生産対応計画を策定しております。

⑥人材の確保・育成に関するリスク

リスク認識

今後の技術発展や社会情勢の新たな展開等に誘発される事業構造の変化に対しては、既存の人事制度にとらわれない柔軟かつ適切な人材配置の必要性が高まる可能性があります。

また、少子高齢化や多様性の進展、働き方改革をはじめとした新労働法制の施行等を受けて労働者の意識や絶対数に変化が生じており、今まで通りの人材採用戦略を継続することによって、中長期的な人材不足が発生し、事業のパフォーマンスが慢性的に低下する可能性があります。

加えて、当社グループの成長においては海外事業及び新規事業の展開・拡大が不可欠であり、目的に合致した人材の確保やスキル教育等が順調に進捗しない場合には、事業成長目標の達成を阻害する要因となる可能性があります。

対策

当社グループは、「社員は重要な財産であり、新たな企業文化と企業価値の創造の源泉である」という普遍の考え方をベースに、「健幸経営」をスローガンに各種人事施策を展開しております。

事業構造の変化に対しては、2012年度以降、人員の再配置及び新しい部署で必要となるスキル・知識のリスキリングを行うことで、環境変化への柔軟な対応力を持つ社員の確保に努めており、2023年度も全社員の10%を超える人員が異動しており、約60%の社員が成長を実感しております。

さらに2018年度からは新たな人事制度として全社員の異動意向調査やオープンチャレンジ制度(希望する部署への異動制度)を導入し、適材適所の人材配置を計画的に進めております。また、特にスキル・知識レベルの高いベテラン社員のスペシャリストに関しては、その技術・ノウハウ継承に向けて、個人ごとに後継者育成計画を立案し遂行しております。

採用環境の変化に対しては、事業側と人事部が一体となった人員計画に基づく採用活動の強化に加えて、DX化による業務改革やアウトソースを活用した適正負荷配分、65歳以上の雇用延長、ベテラン社員のリスキリング、短日数・短時間勤務制度の導入等を通じて生産性を向上しております。

海外事業や新規事業の展開に必要な人材の確保に関しては、従来の新卒採用やキャリア採用に加え、社員紹介や経験者の再雇用といった手法を有効に活用するとともに、新卒採用のうち10%以上は海外出身者を採用するなどの対策を実施しております。また、海外現地法人の採用強化策として、本社における採用方法・ノウハウを各現地法人に順次に展開しており、その一環として、海外大学からのインターンシップ学生の受入れや国内大学から海外現地法人への送出しを積極的に行っております。

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度におけるazbilグループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」といいます。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度における業績につきましては、受注高が2,878億5千1百万円(前連結会計年度は2,969億3千万円)と、前連結会計年度比3.1%の減少となりました。

 売上高につきましては、2,909億3千8百万円(前連結会計年度は2,784億6百万円)と、前連結会計年度比4.5%の増加となりました。

 損益面につきましては、営業利益は、前連結会計年度比17.9%増加の368億4千1百万円(前連結会計年度は312億5千1百万円)となりました。経常利益は、前連結会計年度比21.3%増加の389億9千9百万円(前連結会計年度は321億4千万円)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益につきましては、前連結会計年度比33.6%増加の302億7百万円(前連結会計年度は226億2百万円)となりました。

(単位:百万円)

 

2023年3月期
前連結会計年度

2024年3月期
当連結会計年度

増減

増減率

受注高

296,930

287,851

△9,079

△3.1%

売上高

278,406

290,938

12,532

4.5%

営業利益

(利益率)

31,251

(11.2%)

36,841

(12.7%)

5,589

(1.4pp)

17.9%

 

経常利益

32,140

38,999

6,858

21.3%

親会社株主に帰属する
当期純利益

(利益率)

22,602

(8.1%)

30,207

(10.4%)

7,605

(2.3pp)

33.6%

 

 

 当連結会計年度末の財政状態につきましては、以下のとおりです。

資産の状況

 当連結会計年度末の資産の状況は、前連結会計年度末に比べて168億5千4百万円増加し、資産合計で3,137億2千8百万円となりました。これは主に、棚卸資産が66億1千2百万円増加したことに加え、保有株式の時価の上昇等により投資有価証券が63億8千7百万円増加したことによるものであります。

負債の状況

 当連結会計年度末の負債の状況は、前連結会計年度末に比べて21億5千2百万円減少し、負債合計で888億4千万円となりました。これは主に、契約負債が22億6千6百万円増加したものの、仕入債務が42億3千3百万円減少したことによるものであります。

純資産の状況

 当連結会計年度末の純資産の状況は、前連結会計年度末に比べて190億7百万円増加し、純資産合計で2,248億8千7百万円となりました。これは主に、株主資本が取締役会決議に基づく自己株式の取得により99億9千9百万円、配当金の支払いにより94億7千8百万円それぞれ減少したものの、親会社株主に帰属する当期純利益の計上により302億7百万円増加したことに加え、その他有価証券評価差額金が45億7千7百万円増加したことによるものであります。

 

 以上の結果、自己資本比率は前連結会計年度末の68.3%から70.6%となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

営業活動によるキャッシュ・フロー

 当連結会計年度における営業活動による現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の増加は275億4千万円となり、前連結会計年度に比べて144億2千2百万円の増加となりました。これは主に、前連結会計年度において売上高の増加を背景に売上債権の計上が増加していたことに加え、税金等調整前当期純利益が増加したことによるものであります。

投資活動によるキャッシュ・フロー

 当連結会計年度における投資活動に使用された資金(支出と収入の純額)は23億6千万円となり、前連結会計年度に比べて3億8千3百万円の支出の増加となりました。これは主に、投資有価証券の売却による収入が減少したことによるものであります。

財務活動によるキャッシュ・フロー

 当連結会計年度における財務活動に使用された資金(支出と収入の純額)は224億5千5百万円となり、前連結会計年度に比べて27億6千1百万円の支出の増加となりました。これは主に、配当による支出が増加したことに加え、一部の海外子会社において短期借入れによる収入が減少したことによるものであります。

 

 以上の結果、資金の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度末より43億6千2百万円増加し、755億9千5百万円となりました。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

ビルディングオートメーション事業

43,956

94.6

アドバンスオートメーション事業

35,678

95.5

ライフオートメーション事業

35,681

104.2

報告セグメント計

115,316

97.7

その他

合計

115,316

97.7

 (注)上記金額は、azbilグループにおける製品の製造に係る費用及び工事の施工に係る原価を集計したものであり、商品の仕入及び役務収益に対応する費用は含まれておりません。

 

b.受注実績

 当連結会計年度における受注状況をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高

(百万円)

前期比

(%)

受注残高

(百万円)

前期比

(%)

ビルディングオートメーション事業

136,782

101.1

85,572

103.3

アドバンスオートメーション事業

101,481

89.0

48,579

90.9

ライフオートメーション事業

51,689

104.1

22,176

110.2

報告セグメント計

289,952

97.0

156,327

99.9

その他

57

101.8

消去

(2,159)

(355)

連結

287,851

96.9

155,972

100.0

 

c.販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

ビルディングオートメーション事業

134,655

104.7

アドバンスオートメーション事業

107,052

102.9

ライフオートメーション事業

51,404

107.3

報告セグメント計

293,112

104.5

その他

57

101.9

消去

(2,231)

連結

290,938

104.5

 (注)総販売実績に対する販売割合が10%以上の相手先はありません。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点によるazbilグループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 azbilグループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、見積りが必要となる事項においては合理的な基準に基づき会計上の見積りを行っておりますが、実際の結果は見積りによる不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

 当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりでありますが、特に次の項目が連結財務諸表作成における重要な会計上の見積りの判断に大きな影響を及ぼすと考えております。

 

(請負工事に関する収益認識)

 請負工事契約については、履行義務の充足に係る工事の進捗度を合理的に見積もり、履行義務を充足する一定の期間にわたり収益を認識しております。工事の進捗度の見積りは主に、当連結会計年度末までに実施した工事に関して発生したコストが見積総原価に占める割合に基づく方法(インプット法)によっております。

 なお、収益総額、見積総原価及び決算日における進捗度について、見積り時には予見不能な事象の発生やプロジェクト案件の進捗状況等によって当初の見積りが変更された場合、認識された損益に影響を及ぼす可能性があります。

 

(受注損失引当金)

 受注契約に係る将来の損失に備えるため、当連結会計年度末における受注残案件のうち売上時に損失の発生が見込まれ、かつ、当該損失額を合理的に見積もることが可能な案件について、翌連結会計年度以降に発生が見込まれる損失額を受注損失引当金に計上しております。

 なお、将来発生する可能性のある損失をカバーするだけの十分な引当金残高を有しているかどうかを判断するために、様々な仮定や要素を考慮しておりますが、新技術・新領域の案件等において、見積り時には予見不能な事象の発生やプロジェクト案件の進捗状況等によって損失額が大きく変動する可能性があります。

 

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 azbilグループを取り巻く事業環境認識は次のとおりです。

 国内大型建物向け空調制御機器・システムにつきましては、都市再開発計画に基づく需要が高い水準で継続し、省エネ・CO排出量削減対策を含めた改修案件の需要も堅調に推移しています。生産設備向けの各種機器・システムにつきましては、工場・プラントの脱炭素化やDX推進に向けた需要は継続していますが、ファクトリーオートメーション(FA)市場で需要低迷が継続しました。

 この結果、当連結会計年度における業績につきましては次のとおりとなりました。

 受注高は、アドバンスオートメーション(AA)事業がFA市場における市況の低迷により減少したことを主因に、前連結会計年度比3.1%減少の2,878億5千1百万円(前連結会計年度は2,969億3千万円)となりました。一方、売上高は、前連結会計年度における受注増加及び強化した調達・生産体制を背景に、ビルディングオートメーション(BA)・AA・ライフオートメーション(LA)の3事業全てで増加し、全体として前連結会計年度比4.5%増加の2,909億3千8百万円(前連結会計年度は2,784億6百万円)となりました。

 損益面につきましては、営業利益は、中期経営計画に基づく研究開発費の計上、DX関連費用、人件費やその他経費の増加がありましたが、増収及び価格転嫁も含めた収益力強化施策により前連結会計年度比17.9%増加と大きく改善し、368億4千1百万円(前連結会計年度は312億5千1百万円)となりました。経常利益も、営業利益の増加により前連結会計年度比21.3%増加の389億9千9百万円(前連結会計年度は321億4千万円)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、営業利益の増加に加えて前連結会計年度における製品保証引当金繰入額の特別損失での計上の影響等により、前連結会計年度比33.6%増加の302億7百万円(前連結会計年度は226億2百万円)となりました。

 

 セグメントごとの経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容につきましては次のとおりであります。

 

ビルディングオートメーション(BA)事業

 BA事業を取り巻く環境は、国内市場においては、都市再開発案件におけるオフィスビルや設備投資が続く工場向け空調の需要が高い水準で継続しています。省エネ・CO排出量削減の需要に加えて、新型コロナウイルス感染拡大後の安全や新しい働き方に適応した新たなソリューション対応への関心も継続しています。海外市場では新型コロナウイルス感染拡大後に回復した投資が引き続き堅調です。

 こうした事業環境のもと、採算性に配慮しつつ着実に受注を獲得するとともに、働き方改革への対応も踏まえ、施工・サービスの現場を主体に業務の遂行能力の強化と効率化を進めてまいりました。また、IoTやクラウド等の技術活用を志向する国内外のお客様のニーズに対応するための製品・サービスの拡大も進めてまいりました。

 この結果、BA事業の当連結会計年度の業績は次のとおりとなりました。

 受注高は、複数年サービス契約の更新が少ない時期にあたり、前連結会計年度における大型案件受注の影響や採算性重視の取組みにより新設建物向け分野が減少しましたが、市場環境は堅調であり、主に既設建物向け分野と海外事業が増加したことにより、全体としては前連結会計年度と同水準となる1,367億8千2百万円(前連結会計年度は1,353億1千1百万円)となりました。売上高は、堅調な事業環境を背景に新設建物向け分野が高い水準を維持し、既設建物向け分野、サービス分野、海外事業それぞれが増加したことから、前連結会計年度比4.7%増加の1,346億5千5百万円(前連結会計年度は1,285億6千1百万円)となりました。セグメント利益は、労務費・外注費のほか、DX関連費用やその他経費の増加等がありましたが、増収及び価格転嫁を含む収益力強化の効果により、前連結会計年度比20.5%増加の193億7千3百万円(前連結会計年度は160億7千4百万円)となりました。

 中長期的に、引き続き大型の再開発案件や多数の大型建物の改修が計画されています。BA事業では、納入実績等を基にこれらの需要に確実に応じてまいります。さらに、脱炭素化の動きを受けての省エネ・CO排出量削減に向けたニーズや、新型コロナウイルス感染拡大に起因する安全・安心ニーズ、さらには利便性や快適性を備え、新しい働き方にも適応したウェルネスオフィス・空間づくりの需要に対し、クラウドサービスや新空調システムといったソリューションを提供することで、持続的な成長を目指してまいります。あわせて、DXの推進や事業プロセス変革を含めた取組みを進め、更なる高収益体質を実現してまいります。

 

(単位:百万円)

 

2023年3月期
前連結会計年度

2024年3月期
当連結会計年度

増減

増減率

受注高

135,311

136,782

1,470

1.1%

売上高

128,561

134,655

6,094

4.7%

セグメント利益

(利益率)

16,074

(12.5%)

19,373

(14.4%)

3,299

(1.9pp)

20.5%

 

 

アドバンスオートメーション(AA)事業

 AA事業を取り巻く国内外の市場の動向につきましては、プロセスオートメーション(PA)市場は、中国での市況停滞が継続していますが、全体では保守・改造需要を中心に堅調に推移しています。一方、FA市場では、製造装置市場の市況低迷が継続し、前連結会計年度における先行発注の反動もあって需要が低迷しました。

 このような事業環境のもと、従来から取り組んでいる3つの主要施策である「海外での事業成長」、「新しいオートメーションの創造」、「収益力強化」に継続して取り組むとともに、部品調達難への対応としての調達・生産プロセスの改善に取り組みました。

 この結果、AA事業の当連結会計年度の業績は次のとおりとなりました。

 受注高は、半導体製造装置市場での循環的な需要の落ち込みなどにより大きく減少し、前連結会計年度比11.0%減少の1,014億8千1百万円(前連結会計年度は1,139億6千8百万円)となりました。一方、売上高は、豊富な受注残のもと、調達・生産体制の強化及び部品調達難の緩和により生産が進んだことから売上高が増加し、前連結会計年度比2.9%増加の1,070億5千2百万円(前連結会計年度は1,039億8千8百万円)となりました。セグメント利益は、DX関連費用等の増加や研究開発投資がありましたが、増収及び価格転嫁を含む収益力強化の取組みにより、利益水準が向上し、前連結会計年度比10.6%増加の161億1千8百万円(前連結会計年度は145億7千9百万円)となりました。

 足元ではFA市場の市況低迷が継続していますが、前述の3つの主要施策が着実に進展しており、今後の市況回復期での成長に寄与するものと考えます。また、長期的には工場の脱炭素化、人手不足対応、設備老朽化対応、新しい生産方式の導入等、お客様のオートメーションへのご要求は強く、工業系オートメーション市場はグローバルに拡大していくことが期待できます。引き続き3つの事業単位(CP事業、IAP事業、SS事業)を軸に、先進的なオートメーションの展開を通じて、持続可能な社会へ貢献する高収益な事業体を目指してまいります。

 

 

(単位:百万円)

 

2023年3月期
前連結会計年度

2024年3月期
当連結会計年度

増減

増減率

受注高

113,968

101,481

△12,487

△11.0%

売上高

103,988

107,052

3,064

2.9%

セグメント利益

(利益率)

14,579

(14.0%)

16,118

(15.1%)

1,538

(1.0pp)

10.6%

 

 

※ 3つの事業単位(管理会計上のサブセグメント)

CP事業 :コントロールプロダクト事業(コントローラやセンサ等のファクトリーオートメーション向けプロダクト事業)

IAP事業:インダストリアルオートメーションプロダクト事業(差圧・圧力発信器やコントロールバルブ等のプロセスオートメーション向けプロダクト事業)

SS事業 :ソリューション&サービス事業(制御システム、エンジニアリングサービス、メンテナンスサービス、省エネソリューションサービス等を提供する事業)

 

ライフオートメーション(LA)事業

 LA事業は、ガス・水道等のライフライン、製薬・研究所向けのライフサイエンスエンジニアリング、そして住宅用全館空調システムの生活関連の3つの分野で事業を展開しており、事業環境はそれぞれ異なります。

 売上の大半を占めるライフライン分野は、法定によるメーターの交換需要を主体として一定の需要が継続的に見込まれますが、現在LPガスメーター市場が循環的な不需要期にあります。また、海外で事業展開しているライフサイエンスエンジニアリング分野では、製薬プラント設備への需要は継続していますが、インフレ継続による投資・景気への影響も見られました。こうした事業環境において、LA事業として品質・コスト管理の強化とあわせて価格転嫁を含む収益力強化に取り組みました。

 この結果、LA事業の当連結会計年度の業績は次のとおりとなりました。

 受注高は、ライフライン分野での増加を主体に、ライフサイエンスエンジニアリング、生活関連の分野も増加し、LA事業全体では前連結会計年度比4.1%増加の516億8千9百万円(前連結会計年度は496億4千6百万円)となりました。売上高についても、ライフライン分野を主体に他の分野も増加し、前連結会計年度比7.3%増加の514億4百万円(前連結会計年度は479億1千5百万円)となりました。セグメント利益は、増収及び収益力強化の取組みにより大きく改善し、前連結会計年度比133.6%増加の13億7千5百万円(前連結会計年度は5億8千8百万円)となりました。

 LA事業では、価格転嫁の取組みを継続しつつ、品質管理や抜本的なコスト管理を通じて収益の安定化に取り組んでまいります。なお、これらと並行して、エネルギー供給市場における事業環境の変化を捉え、製品提供型の事業に加え、IoT等の技術を活用し、各種メーターからのデータを活用したサービスプロバイダーとしての新たな事業の創出にも取り組んでまいります。住宅用全館空調システム分野では新設建物から既設建物まで、省エネや空気質も含めて、幅広く空間の快適性を提供する事業を推進してまいります。

 

(単位:百万円)

 

2023年3月期
前連結会計年度

2024年3月期
当連結会計年度

増減

増減率

受注高

49,646

51,689

2,042

4.1%

売上高

47,915

51,404

3,489

7.3%

セグメント利益

(利益率)

588

(1.2%)

1,375

(2.7%)

786

(1.4pp)

133.6%

 

 

2024年度の見通し

 azbilグループは、2030年度をゴールとする長期目標を設定し、この第1ステップとして4ヵ年の中期経営計画(2021~2024年度)を策定、目標達成に向けた取組み、変革を進めています。持続可能な社会の実現に向けて、現在、様々な社会課題やお客様の課題が生まれており、こうした課題への解決策を提供できるオートメーションの役割が拡大、需要の増加が期待されます。中期経営計画では、こうした事業機会を捉え、当社グループならではの技術・製品・サービスを活かした新たな課題の解決策を提供することにより、自らも持続的に成長していくことを目指しています。

 当社グループを取り巻く事業環境は、インフレの拡大による部品や人件費等の様々なコストの上昇、地政学的リスクの高まりによるサプライチェーンやエネルギー価格への影響等、不透明な状況が継続すると思われます。工場・プラント等の生産設備に関する需要につきましても、足元では半導体製造装置等のFA市場の低迷が続いており、中国市況の低迷も懸念されます。一方、大型建物向けの空調制御機器・システムに関する需要は引き続き堅調さが見込まれており、低迷が続いているFA市場についても、在庫調整が進み、生成AI普及に伴う半導体需要等、下期以降は市況回復が期待できます。

 2025年3月期の連結業績予想につきましては、こうした事業環境の不透明さを前提としつつも、改善・強化された生産・調達体制のもと受注残を着実に売上高に転化するとともに、堅調なビル関連事業の伸長に加えて、下期以降に見込まれるFA市場における需要の回復を着実に取り込むことで更なる増収を計画いたします。利益面につきましても、これまで進めてきた価格転嫁を含めた収益力強化施策に加え、研究開発や設備、人的資本等の成長に向けた投資を行う一方で、DX推進を通じた業務効率化等の取組みにより、着実な増益を目指します。

 BA事業では、都市再開発計画や更新計画に基づく大型建物向けの空調制御機器・システムの販売からサービスまで、国内需要が堅調に推移しています。また、海外における需要も堅調です。こうした事業環境を背景に、着実に事業を進めることで、豊富な受注残を売上高へと転化し、前連結会計年度比増収を見込みます。セグメント利益については、外注費等の高騰や、成長に向けた人件費、DX関連費用等の増加を見込むものの、増収並びに受注時採算性の改善や適正な価格転嫁の取組みなどにより前連結会計年度比減少ながら190億円の水準を確保します。

 AA事業では、半導体製造装置市場での循環的な需要の落ち込み等によりFA市場で需要の低迷が続いていますが、在庫調整も進みつつあり、下期からの緩やかな回復を見込んでいます。期首における受注残を基に、改善・強化した生産体制のもと、部品調達・生産を着実に進めるとともに、下期以降のFA市場の需要拡大を捉えることで、増収を見込みます。セグメント利益については、人件費や成長に向けた各種経費の増加を見込みますが、増収並びに価格転嫁を含めた収益力強化施策の効果により引き続き増益を計画します。

 LA事業では、LPガスメーターが循環的な不需要期にあたりますが、都市ガス・水道メーターでの法定による交換需要を着実に取り込むとともに、SMaaS(Smart Metering as a Service)関連市場の開拓を進めてまいります。ライフサイエンスエンジニアリング分野においても、医薬品製造装置市場における堅調な需要を背景に、受注残を着実に売上高へと転化することにより、LA事業全体として増収を見込みます。セグメント利益につきましても価格転嫁を含めた収益力強化施策の効果やプロジェクト管理強化等の施策により引き続き、課題である収益性の改善を見込みます。

 

 当社グループでは、社会・経済環境の変化や各事業における事業環境の変化を捉え、迅速・適切な施策を実施することにより、現中期経営計画最終年度である2025年3月期の連結業績予想の着実な達成を目指してまいります。引き続き、商品力強化、技術開発・設備投資並びに人的資本への投資強化を進め、成長のための変革を加速するとともに、市場環境の異なる事業ポートフォリオ(BA、AA、LA)による持続的な成長に取り組んでまいります。

 

 なお、業績予想等は、当社が現時点で入手可能な情報と合理的であると判断する一定の前提に基づいており、実際の業績は様々な要因により異なる可能性があります。

 

 

 

 

 

(単位:億円)

 

 

2024年3月期

実績

2025年3月期

見通し

増減

増減率

ビルディング
オートメーション事業

売上高

1,346

1,420

73

5.5%

セグメント利益

(利益率)

193

(14.4%)

190

(13.4%)

△3

(△1.0pp)

△1.9%

 

アドバンス

オートメーション事業

売上高

1,070

1,090

19

1.8%

セグメント利益

(利益率)

161

(15.1%)

167

(15.3%)

5

(0.3pp)

3.6%

 

ライフ
オートメーション事業

売上高

514

520

5

1.2%

セグメント利益

(利益率)

13

(2.7%)

18

(3.5%)

4

(0.8pp)

30.8%

 

その他

売上高

0

1

0

72.5%

セグメント利益

(利益率)

△0

(△36.1%)

0

(0.0%)

0

(36.1pp)

 

連結

売上高

2,909

3,000

90

3.1%

営業利益

(利益率)

368

(12.7%)

375

(12.5%)

6

(△0.2pp)

1.8%

 

経常利益

389

375

△14

△3.8%

親会社株主に帰属

する当期純利益

(利益率)

302

(10.4%)

280

(9.3%)

△22

(△1.0pp)

△7.3%

 

 

 

③ 資本の財源及び資金の流動性についての分析

 azbilグループの資本の財源及び資金の流動性につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況、② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおり健全な財務基盤を維持し、必要な運転資金等への十分な流動性も確保しております。加えて、パンデミック、大規模な自然災害の発生等、不測の事態でも事業を継続し、供給責任を果たすことのできる強固な財務基盤を引き続き維持しております。また、安定的な外部資金調達能力の維持向上のため、当社グループは格付投資情報センターより発行体格付「シングルA+(安定的)」を取得して社債発行枠200億円を設定するとともに、コマーシャル・ペーパーについて格付「a-1」を取得して発行枠200億円を設定しております。さらには、複数の金融機関との間で合計100億円のコミットメントラインを設定し、緊急時の流動性を確保しております。あわせて、国内子会社については親会社を通じたキャッシュ・マネジメントにより、資金調達の一元化と資金効率化、流動性の確保を図るとともに、海外の一部地域においても域内でのグループファイナンスを実施しております。

 当社グループの資金需要としましては、営業活動上の運転資金に加えて、設備投資及び研究開発のための資金や配当支払いなどを見込んでおり、主に営業活動によるキャッシュ・フローや内部資金のほか、一部借入による資金調達も行っております。借入による資金調達に関しましては、主に短期借入金で調達しておりますが、当連結会計年度末現在で短期借入金の残高は74億6千8百万円で、前連結会計年度末に比べて13億4千3百万円減少しております。

 他方、営業活動によるキャッシュ・フローや内部留保を含めた資本を活用し、持続的な成長の実現や事業基盤の整備・強化に向けて、国内外生産拠点の再編・拡充をはじめとする設備投資や技術革新に対応した研究開発、サービスの高付加価値化や事業の効率化に必要なDX等への投資を実現しております。当連結会計年度の設備投資の総額は86億5千2百万円、研究開発費の総額は123億2千5百万円となりました。今後につきましても、成長に向けた商品・サービスの拡充、先進的なグローバル生産・開発の構造改革等、事業基盤の強化・拡充に注力するとともに、M&Aといった将来の成長投資を進めてまいります。

 株主還元につきましては、経営の重要課題の一つと位置付けており、連結業績、純資産配当率(DOE)・自己資本当期純利益率(ROE)等の水準に加え、上記の成長投資及び健全な財務基盤の確保のための内部留保等を総合的に勘案し、配当水準の向上に努めつつ安定した配当を維持していきたいと考えております。詳細は「第4 提出会社の状況 3 配当政策」をご確認ください。

 

④ 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループでは、株主価値増大に向けて連結ROE(自己資本当期純利益率)の向上を基本的な目標としており、収益性と資本効率の向上を通して、2030年度をゴールとする長期目標として、売上高4,000億円規模、営業利益600億円規模、営業利益率15%程度、ROE13.5%程度を目指しております。また、この長期目標達成に向け、4ヵ年の現中期経営計画(2021~2024年度)においては、売上高3,000億円、営業利益360億円、営業利益率12%、ROE12%程度を達成することを目標としてまいりました。最終年度となる2024年度は事業収益力の強化を進め、2021年度に策定した営業利益・率、ROE目標を上回る、売上高3,000億円、営業利益375億円、営業利益率12.5%、ROE12.2%を計画しております。

※ 2021年5月14日、当社グループは長期目標、中期経営計画(2021~2024年度)を策定・公表いたしました。

 

5【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

 オートメーション技術を基軸として、オフィス環境の変化、設備・装置の性能向上、カーボンニュートラル実現といった様々な変化を迅速に捉えて、研究開発基盤を強化しております。

 具体的には、システム・クラウド、人工知能(AI)、アクチュエータ、デバイス分野の一層の強化を行っております。

・システム・クラウド

 最新技術を取り入れた生産空間・居住空間・生活空間のデジタル化による制御領域の拡大

・人工知能(AI)

 生成AIを含めた人工知能・データ活用による自律化システムの実現

・アクチュエータ

 全事業で用いられるアクチュエータ技術・商品への蓄積されているノウハウ・知見の活用

・デバイス

 MEMS※1開発力を強化するために新たなクリーンルームを増強※2し、計測の高度化を実現する量の計測から質の計 測への転換

    ※1 MEMS(Micro Electro Mechanical Systems):センサ、アクチュエータ、電子回路を一つの基板の上に微細加工技術によって集積した機器。

  ※2 2022年に竣工した藤沢テクノセンター内に新たなクリーンルームを設置

 

 これらの基盤技術を組み合わせることで、アズビルが取り組む3つの成長事業領域を発展させます。

「新オートメーション」

 従来のオートメーションだけでは解決できない持続可能性を阻害する要因を計測の高度化やデータ化により解決

「環境・エネルギー」

 快適性・ウエルネス・生産性向上と資源・エネルギーの最小化の両立

「ライフサイクル型事業」

 顧客資産のライフサイクルで最適な状態を維持するサービスをクラウドで提供

 

 グローバル開発体制といたしましては、米国のシリコンバレーに設置した研究開発拠点及び欧州グループ会社による、日本、米国、欧州の3極体制で技術・商品開発を行っております。

・米国の開発拠点においては次世代計測技術を実現する技術開発の推進、IoT等の最新の技術動向調査や国際標準活動、及びAIを用いた技術開発の取組みなど、現地大学やスタートアップ企業と連携して共同研究を行っております。

・欧州ではアズビルテルスター有限会社等との協創による製薬関連施設や医療機関等に提供する商品力を強化しております。

 

 技術開発の基盤強化としては、計測の「正しく測る」を確認するために温度・湿度・電気・圧力・真空・微小液体流量・気体流量・時間(周波数分野)で校正を行い、その基準となる計測器や発生器の物理標準を高精度に管理しております。

 また、人が直接見て触る商品のインターフェースや居住空間や生産現場に置かれる機器では、本質的な機能を担保しながらも、働き方や暮らしの変化に応じたデザインへの変革を行っております。

 

 生産技術といたしましては、多品種少量生産に対応するために、ITを活用し適切な生産情報をタイムリーに生産設備に送信して適切な指示を可能にする組み立ての高度化や品質の見える化を行っております。また、IT技術による生産DXや、これまで製品系列別で利用してきた生産管理システムにおいて、製品特性を考慮して基幹システムと連携する全体最適化システムを構築していく生産LX(Legacy Transformation)の取組みも実施しております。

 

 社員向け生成AIサービスを全社員へ展開し、独自に開発した“生成KY(危険予知)”で、サービススタッフの支援をするなど、業務効率化に活用しております。

 

 当連結会計年度の研究開発費の総額は12,325百万円(売上高比4.2%)となりました。

 

 各セグメント別の研究開発費及び主な成果は、次のとおりであります。

セグメントの名称

研究開発費

(百万円)

主な成果(プレスリリースされたもの)

ビルディングオートメーション事業

5,034

ビル向けクラウドサービスにビル管理・運営の効率化に貢献するクラウドMT(Manager’s Tool)を追加― 設備管理者不足対策に貢献 (2023年5月11日)

 

ユーザーの快適・利便性を高める スマートフォンタイプのユーザー操作システムを販売開始― お手持ちのスマートフォンから手軽に空調操作(2024年1月15日)

アドバンスオートメーション事業

6,147

新たに開発した大規模プラント向け技術「TCAS(Time-series Correlation Analysis using Sparse precision matrix)」を搭載したBiG EYES plusTMを販売開始(本開発は関西電力株式会社と共同で実施)(2023年6月20日)

 

制御高度化ソリューション SORTiATM R200シリーズ販売開始― デマンドレスポンス(DR)機能を追加し、脱炭素に貢献(2024年1月30日)

ライフオートメーション事業

1,142

「さいたま版スマートメーター実証プロジェクト」に関する協定をさいたま市水道局及び一般財団法人埼玉水道サービス公社と締結(2023年8月30日)

その他

アズビルとインド工科大学ルールキー校が革新的なデジタルソリューションの共同研究について覚書を締結(2023年5月22日)

 

公益社団法人 計測自動制御学会から、位相型回析格子を用いたラテラルシアリング干渉計測距離技術での「技術賞」、スマートHARTモデム形AZ-1SHM、赤外線アレイセンサシステム、バーナコントローラ形AUR255/455の三製品で「新製品開発賞」を受賞(2023年10月10日)

 

JCSS(Japan Calibration Service System、計量法に基づく校正事業者登録制度)の校正事業者として登録されている当社技術標準部計測標準グループが、流量・流速(微小用流量計)に加えて流量・流速(気体用流量計)についても、新たに登録・認定されたこと、また、圧力(真空計)について、その登録・認定範囲を拡大(2023年10月17日)

合計

12,325