第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

<「中期ASV経営2030ロードマップ」初年度の振り返り>

 味の素グループでは、従来型の3ヵ年中期経営計画を廃止し、長期視点のありたい姿から挑戦的な「ASV指標(*1)」を掲げ、バックキャスト(*2)して2030年までのありたい姿への道筋である「中期ASV経営 2030ロードマップ」を発表し、2023年3月から取組みを開始しました。

 

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 *1 味の素グループが事業を通じて得た財務パフォーマンスを示す経済価値指標と、提供・共創したい価値に基づく社会価値指標から成る、更なる成長やチャレンジを後押しする指標。

 *2 未来を起点に現在を振り返り、今何をすべきか考える未来起点の発想法。

 

<改訂した「志」(パーパス)の自分ごと化プログラムの開始>

 「中期ASV経営 2030ロードマップ」策定時に進化させた味の素グループの「志(パーパス)」である「アミノサイエンス®(*3)で人・社会・地球のWell-beingに貢献する」の従業員への理解促進を目的として、「パーパス自分ごと化」プログラムを、2023年度は全社展開へ先立ち、経営メンバー(執行役、執行理事・理事)から開始しました。

 *3 創業以来、アミノ酸のはたらきに徹底的にこだわった研究プロセスや実装化プロセスから得られる多様な素材・機能・技術・サービスを総称したもの。また、それらを社会課題の解決や“Well-being”への貢献につなげる、味の素グループ独自の科学的アプローチ。

 

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<味の素グループにとっての重要な事項(マテリアリティ)>

 多様な関係者の皆様とも対話を重ね、社外有識者を中心としたサステナビリティ諮問会議からの答申を基に2023年に設定した価値創造のフレームワーク(考え方)を活用して、2024年は、味の素グループがマルチステークホルダーから期待されていること、社会に対して提供していく価値の視点から、現在の味の素グループが取り組む「重要テーマ」を次の6項目に整理しました。

①「持続可能な地球環境の実現」②「食を通じたウェルビーイングの実現」③「先端医療・予防への貢献」④「スマートソサエティ(*4)の進化への貢献」⑤「多様な価値観・人権の尊重」⑥「経営基盤の強化」

*4 企業・行政・生活者等がネットワークでつながり、社会課題を解決していく社会のこと。

 

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(1)中期ASV経営へのマネジメント変革

 「中期ASV経営 2030ロードマップ」の1つ目のポイントは「中期ASV経営」へのマネジメント変革(計画中心から継続的に実行力を磨き込む経営に進化させること)です。「2030年のありたい姿」に向けて掲げた挑戦的な目標である「ASV指標」とのギャップ(課題)を明らかにし、そのギャップを埋めるために、自組織の枠を超えて新たな価値や事業モデル変革を追求し続ける取組みを開始しました。

 一方で、事業環境の変化を機敏に捉え柔軟に打ち手を講じていくフォーキャスティング(*5)の重要性も実感しており、バックキャストとフォーキャストを上手く組み合わせながら、実行力を磨き込んでいきます。また従業員一人ひとりが、高い目標に対し挑戦することを称える企業風土を醸成して、それらも原動力に企業価値を飛躍的・継続的に向上させていきます。

 *5 現在の延長線上で未来を予測する発想法。

 

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(2)ポートフォリオマネジメントの進化

 2つ目のポイントは最適な資産配分を検討するポートフォリオマネジメントの進化です。事業・機能・地域等の各種ポートフォリオ(組み合わせ)について、効率性向上やアセットライト(有形資産を軽くする取組み)は継続しつつ、より中長期の成長性を意識した検討を進めています。新たなポートフォリオの考え方では縦軸は中長期の成長性とし、横軸は競争優位性の構築や持続可能性として、成長分野に経営資源を集中させ、高収益な事業構造への転換を図っています。同時に、将来を見据えた種蒔きを続け、機敏な撤退判断も行いながら、①集める、②変える、③始める、④止める、によって常に新しく進化する当社らしいポートフォリオの「型」の構築を目指しています。2023年はフォージ・バイオロジクス社の買収により、遺伝子治療CDMO(*6)の事業基盤と独自の差別化技術を獲得し、さらにシナジーによる事業強化・創出や、細胞治療分野への展開の足掛かりを得ました。

 *6 製造受託とともに、製造方法の開発を受託・代行する事業・会社(Contract Development &  Manufacturing Organization)

 

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(3)無形資産への重点投資

 最後のポイントは、無形資産への投資です。当社における競争優位の源泉は技術資産・人財資産・顧客資産・組織資産といった無形資産にあると考えています。

 2023年度は無形資産強化によるASV経営の進化へのつながりを、グローバルにおけるうま味調味料事業のバリューチェーンを通じた価値創出の事例で可視化しました。生活者視点での取組みにより、経済・社会価値が創出され、長期的な経済価値につながり、さらなる無形資産が蓄積されるという好循環につながっています。

 

うま味調味料事業 ASVの実現と無形資産の循環

 

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<リスクマネジメント体制の強化>

 近時、事業環境の変化は激しく、これまで以上に包括的なリスクマネジメントが重要であると認識しています。これまでは、サステナビリティ委員会の下部機構であるリスククライシス小委員会がリスクマネジメントを担う体制としていましたが、新型コロナウイルスのパンデミックや、最近の地政学的な紛争を踏まえ、リスク管理を強化しレジリエントな経営体制を構築するため、2023年4月、経営リスク委員会を設置しました。サステナビリティ委員会と経営リスク委員会は連携して味の素グループにとっての重要な事項(マテリアリティ)に基づくリスクと機会の選定、抽出を行います。その上で、環境課題やサプライチェーンにおける人権課題等はサステナビリティ委員会で、経営がイニシアチブをもって対処すべきリスク(パンデミック、地政学リスク、情報セキュリティリスク等)は経営リスク委員会で対策の立案と進捗管理を行うことで、味の素グループのリスクを適切に管理しています。

 

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

<味の素グループのサステナビリティに対する考え方>

 味の素グループは、アミノサイエンス®で人・社会・地球のWell-beingに貢献することを目指しています。そのためには、2030年までに「環境負荷を50%削減」と「10億人の健康寿命を延伸」のアウトカムを両立して実現することが必要と考えています。

 味の素グループの事業は、健全なフードシステム(*1)、つまり安定した食資源と、それを支える豊かな地球環境の上に成り立っています。一方で、事業を通じて環境に大きな負荷もかけています。地球環境が限界を迎えつつある現在、その再生に向けた対策は当社グループの事業にとって喫緊の課題です。気候変動対応、食資源の持続可能性の確保、生物多様性の保全といった「環境負荷削減」によって初めて「健康寿命の延伸」に向けた健康でより豊かな暮らしへの取組みが持続的に実現できると考えています。

 味の素グループは事業を通じて、おいしくて栄養バランスの良い食生活に役立つ製品・サービスを提供するとともに、温室効果ガス、プラスチック廃棄物、フードロス等による環境負荷の削減をより一層推進し、また、資源循環型アミノ酸発酵生産の仕組み(バイオサイクル)を活用することで、レジリエントかつ持続可能なフードシステムと地球環境の再生に貢献していきます。

 そして、環境負荷などのネガティブインパクト(負の影響)を着実に低減しながら、味の素グループの強みであるアミノサイエンス®を最大限に活用して、社会へよりポジティブなインパクト(良い影響)を創出していくことを目指しています。

 *1 食料の生産、加工、輸送及び消費に関わる一連の活動

 

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(1)ガバナンス

 味の素グループでは、グループ各社及びその役員・従業員が順守すべき考え方と行動の在り方を示した味の素グループポリシー(AGP)を誠実に守り、内部統制システムの整備とその適正な運用に継続して取り組むとともに、サステナビリティを積極的なリスクテイクと捉える体制を強化し、持続的に企業価値を高めています。

 持続可能性の観点から企業価値を継続的に向上させるため、サステナビリティ推進体制を強化しており、その概要は提出日現在で以下のとおりです。

 

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 取締役会は、サステナビリティ諮問会議を設置する等、サステナビリティとESGに係る当社グループの在り方を提言する体制を構築し、ASV経営の指針となる味の素グループにとっての重要な事項(マテリアリティ)を決定するとともに、サステナビリティに関する取組み等の執行を監督しています。

 経営会議は、下部機構としてサステナビリティ委員会と経営リスク委員会を設置し、味の素グループにとっての重要な事項(マテリアリティ)に基づくリスクと機会をその影響度合いの評価とともに特定し、対策の立案、進捗管理を行う体制を構築しています。なお、2023年度はサステナビリティ委員会から2回の活動報告を受けています。

 サステナビリティ諮問会議は、2023年4月より第二期サステナビリティ諮問会議として、引き続きサステナビリティの観点で味の素グループの企業価値向上を追求するため、その活動を継続しています。第二期サステナビリティ諮問会議は、主として投資家・金融市場の専門家からなる社外有識者4名で構成され、議長は社外有識者が務めています。取締役会からの諮問に基づき、マテリアリティの実装、その進捗についての開示及び対話、それらを通じてステークホルダーとの関係構築を行っていくことについて、取締役会のモニタリングを強化する視点で検討を行い、取締役会に答申します。第二期サステナビリティ諮問会議は1年に2回以上開催され、審議の内容及び結果を取締役会に報告します。

 サステナビリティ委員会は、中期ASV経営を推進するため、経営リスク委員会と連携して味の素グループへの影響評価とともにマテリアリティに基づくリスクと機会の選定、抽出を行い、経営会議へ提案します。そして、対策を立案し、サステナビリティ施策の進捗管理を行います。また、味の素グループ全体のサステナビリティ戦略策定、戦略に基づく取組みテーマ(栄養、環境、社会)の推進、事業計画へのサステナビリティ視点での提言と支援、ESGに関する社内情報の取りまとめを行います。

 経営リスク委員会は、特に経営がイニシアチブをもって対処すべきリスク(パンデミック、地政学リスク、情報セキュリティリスク等)について、サステナビリティ委員会と連携して味の素グループへの影響評価とともにマテリアリティに基づくリスクと機会の選定、抽出を行い、経営会議へ提案します。そして、リスクマネジメントのための諸方策を立案、進捗管理を行うことで、リスクおよび危機に迅速かつ的確に対応できる強固な企業体質を実現します。

 

(2)戦略

 味の素グループは、食品事業について調味料・食品から冷凍食品まで幅広い商品領域を持ち、またヘルスケア等の分野にも事業を展開していることから、当社事業は、農、畜、水産資源や遺伝子資源、水や土壌、昆虫等による花粉媒介などのさまざまな自然の恵み、つまり生態系サービスに大きく依存しています。これら自然の恵みは、多様な生物とそれらのつながりによって形作られる健やかな生物多様性によって提供されています。生物多様性に関する問題と気候変動、水資源の減少、資源廃棄物、水質・大気・土壌汚染などの環境問題は相互に密接にかかわり合っており、分けて考えることはできません。この相互の関係性を考慮しながら、生物多様性の保全や生物資源の持続可能な利用と、温室効果ガスの排出抑制や資源の有効活用、廃棄物の削減などの他の環境負荷低減の取組みを進めていきます。

 また、味の素グループでは人財資産を全ての無形資産の源泉と考え、従業員のエンゲージメントが企業価値を高める重要な要素と位置付けています。志を持った多様な人財が、生活者・顧客に深くより添い、イノベーションの共創に挑戦できるよう、人財への投資を強化していきます。

 

(3)リスク管理

 2つのアウトカムを含む「中期ASV経営 2030ロードマップ」を実現する上で、的確にリスクを把握し、これに迅速かつ適切に対応することが極めて重要です。サステナビリティ委員会と経営リスク委員会は両委員会の間に取り残されるリスクがないよう緊密に連携して、味の素グループにとっての重要な事項(マテリアリティ)に基づくリスクと機会の選定・抽出を行い、経営会議へ提案します。そして、その対策立案と定期的な進捗管理について、社会、環境、栄養などサステナビリティに関する事項はサステナビリティ委員会で行い、経営がイニシアチブをもって対処すべきリスク(パンデミック、地政学リスク、情報セキュリティリスク等)は経営リスク委員会で行います。

 なお、国内外の各現場では、個別の事業戦略や現地の政治・経済・社会情勢を考慮してリスクを特定し、対応策を策定するリスクプロセスを回しています。経営リスク委員会は、リスクプロセスを継続的に改善するとともに、各現場が特定したリスクを取りまとめ、経営がイニシアチブをもって対処すべきものに対応します。また、各事業・法人においては、有事に備え、事業継続計画(BCP)を策定し、経営リスク委員会は、その有効性を常に検証するための体制を整備し、リスクへの対応状況を定期的に監視・管理しています。サステナビリティ委員会、経営リスク委員会に常勤監査委員が出席し、リスク管理の取組みをモニタリングしています。

 

(4)指標及び目標

 2030年に環境負荷50%削減のアウトカム実現、さらには2050年ネットゼロの達成に向けて引き続き取り組みます。2030年に向けては、これまでの主要なテーマである温室効果ガス、プラスチック廃棄物、フードロスの削減、持続可能な調達の実現といった目標を継続し、これらの取組みを推進します。

 スコープ1・2における温室効果ガス(GHG)削減、フードロスの削減については計画を上回る進捗となっています。スコープ3におけるGHG削減については、タイで2022年度に開始したMSG原料サプライヤーとの協業に向けた対話は、2024年度に削減取組みを実行に移す段階に入ります。また、この活動を他のエリアにも横展開していきます。プラスチック廃棄物削減については、リデュース・リサイクル可能な包材への転換とリサイクルの社会実装への貢献を進めています。サステナブル調達については、重点原料での取組みを進めるとともに、2023年度は生物多様性への取組みも進めました。

 また、ASV指標の実現を支える無形資産強化として、従業員エンゲージメントスコアの向上を推進します。

 

ASV指標

 2030年の環境負荷50%削減、そして2050年のネットゼロ達成に向け取組みを進めます。

 また、従業員エンゲージメントスコアについては80%(FY25)、85%(FY30)への向上を目指します。

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 *2 測定方法を、「ASV自分ごと化」の1設問から、より実態を把握できる「ASV実現プロセス」の9設問の平均値へと2023年度スコアから変更しました。

 

<味の素グループの気候変動に対する考え方>

(1)ガバナンス

 気候変動課題に対する当社のガバナンスは、<味の素グループのサステナビリティに対する考え方>に記載のとおりです。

 

(2)戦略

 当社グループは、食品事業について調味料・食品から冷凍食品まで幅広い商品領域を持ち、またヘルスケア等の分野にも事業を展開しています。気候変動は、大規模な自然災害による事業活動の停止、農作物や燃料などの原材料調達への影響、製品の消費の変化など、さまざまな形でグループの事業に影響を与えます。

 

①シナリオ分析の前提

 2023年度は、2100年に地球の平均気温が産業革命後より1.5℃又は4℃上昇するというシナリオで(*3)、グローバルのうま味調味料、及び国内・海外の主要な製品に加えてその他の加工食品に関する2030年時点と2050年時点の気候変動による影響に関するシナリオ分析を実施しました。

 中長期における生産に関する事項として、気候変動の影響のうち、渇水、洪水、海面上昇、原料の収量変化等を物理的リスクとして、カーボンプライシングやその他の法規制の強化及びエネルギー単価の上昇、消費者嗜好の変化等を移行リスクとして捉え分析しました。

 1.5℃と4℃シナリオにおける2030年時点の平均気温差は0.2℃程度であり物理的リスクに大きな差が見られないと考え、平均気温差が1℃程度予想され物理的リスクに差があると考えられる2050年時点のシナリオ分析のリスクと機会を②・③の表において示しています。

 なお、これまでに当社が実施したシナリオ分析に係る前提の推移を要約すると以下のとおりです。2023年度の分析において、売上高基準カバレッジおよびカーボンプライシングが上昇したため潜在的財務影響が増えています。

 

 

2020年度(*4)

2021年度

2022年度

2023年度

事業

うま味調味料(グローバル)、国内の主要な製品

うま味調味料(グローバル)、国内の主要な製品

うま味調味料(グローバル)、国内・海外の主要な製品

うま味調味料(グローバル)、国内・海外の主要な製品に加えて、その他の加工食品など

発現の時期

2030年

2030年/2050年

2030年/2050年

2030年/2050年

シナリオ

2℃/4℃

2℃/4℃

1.5℃/4℃

1.5℃/4℃

売上高基準

カバレッジ

24%

24%

55%

65%

 *3 国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によるSSP1-1.9(1.5℃シナリオ)、SSP5-8.5(4℃シナリオ)及び国際エネルギー機関(IEA)によるシナリオ等を参照しています。

 *4 過年度に実施したシナリオ分析の結果については、過年度に発行したサステナビリティデータブックをご参照ください。https://www.ajinomoto.co.jp/company/jp/ir/library/databook.html

 

 

②シナリオ分析:リスク

1.5℃シナリオ(2050年):GHG排出量削減に向けた一定の政策的対応が行われ、化石燃料の消費が減少する場合

リスク

平均気温上昇

洪水・渇水の重大性と頻度の上昇

製品に対する命令及び規制

消費者嗜好の移り変わり

右の対象は当社グループ全体

カーボンプライシングメカニズム

リスクの分類

移行リスク

物理的リスク

移行リスク

移行リスク

移行リスク

事業インパクト

カーボンプライシングによる原料調達のコストアップ(コーヒー豆ほか)

創業時より実施している供給継続対策

使用する原料に関する法規制の強化によるコストアップ

(想定:原料のトレーサビリティやリサイクル使用の法規制)

気温上昇による需要減

(想定:みそ汁、スープ類、ホットコーヒー、加熱調理からレンジ調理へのシフト)

カーボンプライシングにより、使用する燃料のコストアップ

潜在的財務影響

2億円/年

僅少

2030年:180億円/年(*5)

2050年:430億円/年(*5)

対応策

・原料産地の支援

・別製法で作られた原料の検討

・調達地域の多様化

・代替原料の研究開発

・サプライチェーン上下流の包括的な協力体制構築

・ASV訴求活動(栄養価値)を通じた喫食の習慣化を図るコミュニケーション

・アイス飲用に適したマーケティング活動

・レンジ調理メニューの探索・提案

・内部カーボンプライシングによる財務影響の見える化

・燃料転換

・再生可能エネルギー利用

・環境配慮型の製法開発

 

 

 

4℃シナリオ(2050年):GHG排出量削減に向けた政策的対応を行わない、成り行きの場合

リスク

平均気温上昇

洪水・渇水の重大性と頻度の上昇

消費者嗜好の移り変わり

燃料のコスト増加

リスクの分類

物理的リスク

物理的リスク

移行リスク

移行リスク

事業インパクト

農畜水産物の生産性低下によるコストアップ

(想定1:養殖の生育環境悪化、

想定2:家畜の増体率や生産性の低下、

想定3:乳牛の乳量低下、

想定4:家畜の感染症流行、

想定5:農産物の生育不良や病害虫流行)

原料調達のコストアップ、操業停止、納期遅延による売上高の減少

(想定1:タイの洪水、

想定2:タイの渇水、

想定3:日本の局地豪雨による冠水)

 

気温上昇による需要減

(想定:みそ汁、スープ類、ホットコーヒー、加熱調理からレンジ調理へのシフト)

化石系の燃料や電力の価格上昇

潜在的財務影響

90億円/年

1億円/年

50億円/年

対応策

・調達地域の多様化

・サプライヤー・農家との連携強化

・エキス削減レシピの開発

・代替原料の研究開発

・高温耐性品種の導入

・販売価格への反映

・調達地域の多様化

・代替原料の研究開発

・節水生産の継続・改善

・供給体制・物流体制の整備

・ASV訴求活動(栄養価値)を通じた喫食の習慣化を図るコミュニケーション

・手軽な加熱調理コミュニケーションへの改善

・アイス飲用に適したマーケティング活動

・レンジ調理メニューの探索・提案

・燃料転換

・再生可能エネルギー利用

・環境配慮型の製法開発

 *5 SBT(Science Based Targets)イニシアチブに認定された当社グループの2018年度の基準GHG排出量に、IEA:International Energy Agency(国際エネルギー機関)の1.5℃シナリオに相当する2030年CO2価格の予測:新興国=25$/t-CO2、ブラジル・中国・インド・インドネシア=90$/t-CO2、先進国=140$/t-CO2、2050年CO2価格の予測:新興国=180$/t-CO2、ブラジル・中国・インド・インドネシア=200$/t-CO2、先進国=250$/t-CO2を乗じて算出。4℃シナリオは現状の成り行きでありCO2価格の上昇は想定しておりません。

 

 

③シナリオ分析:機会

1.5℃シナリオ(2050年):GHG排出量削減に向けた一定の政策的対応が行われ、化石燃料の消費が減少する場合

機会

低排出量商品及びサービス

消費者嗜好の移り変わり

機会の分類

製品及びサービス

製品及びサービス

事業インパクト

生活者や顧客のエシカル志向の拡大により環境負荷が低い製品として売上増加

・健康志向によるニーズ拡大=売上増加

・気温上昇による飲料などのニーズ拡大=売上増加

対応策

・環境配慮型の製法や製品の開発

・ESGの好評価を取得する取組み推進

・低環境負荷を証明するエビデンス強化

・中大容量品へ顧客嗜好をシフトする推進策

・栄養価値が向上する製品開発

・栄養価値訴求を通じた喫食の習慣化を図るコミュニケーション

・環境配慮型の製法や製品の開発

 

4℃シナリオ(2050年):GHG排出量削減に向けた政策的対応を行わない、成り行きの場合

機会

低排出量商品及びサービス

消費者嗜好の移り変わり

機会の分類

製品及びサービス

製品及びサービス

事業インパクト

生活者や顧客のエシカル志向の拡大により環境負荷が低い製品として売上増加

・健康志向によるニーズ拡大=売上増加

・気温上昇による飲料などのニーズ拡大=売上増加

対応策

・環境配慮型の製法や製品の開発

・低環境負荷を証明するエビデンス強化

・中大容量品へ顧客嗜好をシフトする推進策

・栄養価値が向上する製品開発

・栄養価値訴求を通じた喫食の習慣化を図るコミュニケーション

・環境配慮型の製法や製品の開発

 

④シナリオ分析結果の戦略への反映

(ⅰ)事業戦略への反映

 シナリオ分析における事業への影響を踏まえ、今後一層のGHG排出量削減に向け、燃料転換・再生可能エネルギー利用・環境配慮型の製法に関する投資を計画していきます。また、サステナビリティに対する取組みが製品の付加価値向上につながる「ASV」の実現に向けて、新たな事業戦略の策定に取り組んでまいります。

 また、2023年度以降のシナリオ分析においては、リスク・機会の深掘りをしていきます。

 

(ⅱ)資金調達戦略への反映

 当社は、各種取組みに対して必要な資金については、サステナブルファイナンスを基本としております。2021年10月のサステナビリティボンド発行を第一弾に、2022年1月のポジティブ・インパクト・ファイナンスによるコミットメントライン契約、2022年12月のサステナビリティ・リンク・ローンによるコミットメントライン契約、2023年6月にサステナビリティ・リンク・ボンド発行と継続的にサステナブルファイナンスによる調達を実行しています(*6)。また、直近では2024年3月および4月に新たなサステナビリティ・リンク・ローンを2件契約しました。

 これら資金調達により、当社グループが掲げる2030年までの2つのアウトカムのうちの1つ「環境負荷を50%削減」の実現、及び持続可能な社会の実現に向けた取組みをより一層加速させていきます。

 *6 これらの詳細に関しては、以下の「サステナブルファイナンス」サイトをご参照ください。

https://www.ajinomoto.co.jp/company/jp/activity/csr/finance/index.html

 

(3)リスク管理

 気候変動課題に対する当社のリスク管理は、<味の素グループのサステナビリティに対する考え方>に記載のとおりです。

 

(4)指標及び目標

 当社グループは、SBT(Science Based Targets)イニシアチブによるネットゼロを含む新たなGHG排出削減目標への適合を宣言するコミットメントレターを提出しました。これにより、当社グループはSBTイニシアチブより認定を受けている気温上昇を1.5℃に抑えるGHG排出削減目標の取組みをさらに加速させるため、ネットゼロ基準に沿って目標と戦略の見直しを行っています。

 

①目標

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 スコープ1・2合計のGHG排出量については、SBTイニシアチブの認定を受け2030年度に2018年度比で50%削減を目標(総量目標)としています。

 同じくSBTイニシアチブの認定を受けたスコープ3(カテゴリー11除く)の生産量1トンあたりのGHG排出量(GHG排出原単位)については、2030年度に2018年度比で24%削減としている目標(原単位目標)の見直しを行っています(2024年6月1日時点)。

 

②2023年度実績

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 スコープ1・2のGHG排出量では、前年度比およそ300,000t-CO2e減と大幅削減となりました。石炭を使用していたインドネシア味の素社およびタイ味の素社の事業所がバイオマスに燃料転換し、当社・九州事業所が再エネ証書を調達したことが大幅削減につながりました。また、SBTイニシアチブの認定を受けた2030年度のGHG排出量目標(2018年比△50%)に対しては、現時点での計画によりおよそ8割の達成目途が見えていますが、一層の排出量削減に向け、更なる削減活動を検討してまいります。

 スコープ3のGHG排出原単位(全カテゴリー対象)では、前年度比およそ1%増加し、基準年である2018年度に対し(当社グループ会社の遡及なし)およそ1%減少となりました。当社グループ全体の総生産量が減少したことが主な原因です。2024年度は、スコープ3の原料サプライヤーとの協働を行います。サプライヤーを含めた外部との連携を今後加速し、GHG排出量の削減に向けて取組みを進めてまいります。

 

③目標達成に向けた取組み

 スコープ1・2の目標を達成するための施策として、省エネルギー活動やGHG発生の少ない燃料への転換、バイオマスや太陽光等の再生可能エネルギー利用、エネルギー使用量を削減するプロセスの導入を進めています(化石燃料からバイオマス燃料への転換、中国及び当社・九州事業所における再エネ証書の調達など)。

 スコープ3については、製品ライフサイクル全体のGHG総排出量の約60%を原材料が占めていることから、原料サプライヤーへのGHG削減の働きかけや、アンモニアのオンサイト生産等の新技術導入に向けた検討を進めています。

 

<味の素グループの生物多様性に対する考え方>

(1)ガバナンス

 生物多様性に対する当社のガバナンスは、<味の素グループのサステナビリティに対する考え方>に記載のとおりです。

 

(2)戦略

 当社グループは、食品事業について調味料・食品から冷凍食品まで幅広い商品領域を持ち、またヘルスケア等の分野にも事業を展開していることから、当社事業は、農、畜、水産資源や遺伝子資源、水や土壌、昆虫等による花粉媒介などのさまざまな自然の恵み、つまり生態系サービスに大きく依存しています。これら自然の恵みは、多様な生物とそれらのつながりによって形作られる健やかな生物多様性によって提供されています。

 しかし、生物多様性は現在、過去に類を見ない速度で失われており、生物多様性の保全が世界的に喫緊の課題となっています。味の素グループは事業を継続させながら生物多様性への影響を低減し、そして地球環境を守っていくことの重要性を認識しており、2023年7月に生物多様性ガイドラインを制定しました。生物多様性に関する課題は、気候変動、水や土壌、廃棄物、人権等の環境や社会課題とも密接に関わっているため、相互が効果的になるように課題解決に向けた取組みを進めていきます。

 

①LEAPアプローチ

 2023年度は、TNFDガイダンスのLEAPアプローチに沿って味の素グループの調味料・食品、冷凍食品およびヘルスケア等一部において調達原料のうち評価対象として選定した原料に関して、依存・影響の分析に基づいてリスク・機会評価を実施しました。LEAPアプローチは、TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)が提唱するガイダンスで、企業および金融機関内の自然関連のリスクと機会を科学的根拠に基づいて体系的に評価をするためのプロセスを示しています。

 

(ⅰ)対象原料の選定

 売上高カバレッジ8割となる原料を対象に、Science Based Target Network(SBTN)により作成されたガイダンスであるSBTs for Natureが提供するHigh Impact Commodity List(HICL)に該当かつ調達量が多い12の原料を選定しました。選定原料は、サトウキビ、キャッサバ、トウモロコシ、生乳、大豆、菜種、米、牛、コーヒー、パーム、銅、原油です。なお、HICLに該当しているが包装資材である紙については対象外としました。

 

(ⅱ)分析結果

原料、製造、販売、消費の4工程について、LEAの3ステップを分析。

 

Locate(発見)

Evaluate(診断)

Assess(評価)

分析概要

対象事業について、当社グループ事業のサプライチェーンにおける、生物多様性損失の危機が大きい地域を把握した。

当社グループ事業のサプライチェーンにおける自然への依存と影響の因子を特定した。それら因子に対する指標と閾値を設定して依存・影響の将来状態(2050年)を定量的に診断した。

将来状態で劣化が進む依存と影響の因子に関して、シナリオにてリスクを特定した。それらの結果に対して、当社グループの対応状況を踏まえた財務影響を試算し、リスク・機会の大きさを評価した。

ツール

以下のツールを各ステップで組み合わせて分析した。

(ENCORE、SBT’s High Impact Commodity List、SBTN Materiality Screening Tool、Geographic Information System、World Database Protected Area、IUCN Red List、GLOBIO、Aqueduct、Aqueduct Water Atlas、Nature Map Explore、Aqueduct Global Maps、Past and future trends in grey water footprints of anthropogenic nitrogen and phosphorus inputs to major world rivers、International Institute for Applied Systems Analysis、What a Waste)

 

結果

対象原料について、25km-50kmの格子単位での当社グループ事業のサプライチェーンにおける自然との接点を特定・評価し、自然劣化を踏まえて詳細分析すべき格子を特定した。全対象2.4万格子のうちLocateでは、生物多様性の重要性エリア・急速劣化エリア・棄損可能性エリア・高い水ストレスのエリア・先住民居住エリアのいずれかに該当する格子は2万格子と特定した。

Locateで特定した2万格子において、当社グループ事業のサプライチェーンにおける各段階(原材料、生産、消費など)での自然への依存と影響の因子について、2050年時点での自然劣化状態を想定して特定した。それら因子に対する指標と閾値を設定して依存・影響度を分析した。自然毎に劣化傾向は異なり、森・大気は全世界で劣化するが、水・土は特定地域に偏重することを確認した。特にサトウキビ・トウモロコシ・菜種の調達国では、それらの生産地で土質が劣化する可能性があることを確認した。

Evaluateでは、2050年時点で一定程度劣化する可能性があると特定した自然に関して、自然保全と経済発展が両立されるシナリオ(SSP1(*7))と自然劣化・経済停滞となるシナリオ(SSP3(*7))の二つのシナリオにおいて、どのようなリスクが発生しうるか予想した。共に自然の劣化により多種リスクが生じ得るが、特に財務面の影響が大きいと確認したものは、慢性的な物理リスクによる原料調達価格の高騰であった。調達額の高騰が大きい原料は、トウモロコシ・サトウキビであった。サトウキビはタイ、トウモロコシはアメリカでの土壌の劣化が原因であった。

*7 国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)議長に呼応して新シナリオ作成を目的として立ち上げられたコミュニティである統合評価モデルコンソーシアムが開発した共通社会経済経路(SSP:Shared Socioeconomic Pathways)。SSP1:自然保全と経済発展が両立されるシナリオ。SSP3:自然劣化・経済停滞となるシナリオ。

 

②分析結果の戦略への反映

(ⅰ)事業戦略への反映

 2024年度は、原料に関してその原産国ではなく可能な限り地域に絞り込んで分析精度を向上させます。それを踏まえた生物多様性に関する課題は、気候変動、水や土壌、廃棄物、人権等の環境や社会課題とも密接に関わっているため、相互が効果的になるように課題解決に向けた取組みを進めていきます。また、サステナビリティに対する取組みが製品の付加価値向上につながる「ASV」の実現に向けて、新たな事業戦略の策定に取り組んでまいります。

 

(ⅱ)資金調達戦略への反映

 当社は、各種取組みに対して必要な資金については、<味の素グループの気候変動に対する考え方>

(ⅱ)資金調達戦略への反映に記載している内容と同様に進めてまいります。

 

(3)リスク管理

 生物多様性に対する当社のリスク管理は、<味の素グループのサステナビリティに対する考え方>に記載のとおりです。

 

(4)指標及び目標

 分析精度を向上させた生物多様性に関する課題および、それと密接に関わっている気候変動、水や土壌、廃棄物、人権等の環境や社会課題それぞれが、効果的になるように課題解決に向けた取組みが進められる指標と目標を設定していきます。

 

<味の素グループの人的資本に対する考え方>

(1)ガバナンス

 当社グループは各国・地域の多様な人財を横断的に育成・登用し、人財の適所適財を実現するための基盤として、グローバル人財マネジメントシステムを導入しています。本システムは基幹ポストと基幹人財を可視化する仕組み(ポジションマネジメント×タレントマネジメント)から構成されています。また、グローバル人財マネジメントシステムや人財資産の強化に係る各種施策等の円滑な運営を目的に、経営会議の下部機構として、最高経営責任者を委員長とし、経営会議メンバーで構成される人財委員会を設置し、2023年度実績で分科会等も含めて全12回の議論を行っています。特に人財パイプラインの構築という観点では、指名委員会との連動も踏まえたグローバルでの重要ポジションのサクセッションプラン作成、さらに先を見据えた次世代リーダー層の人財プール等を形成、戦略的な育成や登用を強化しています。

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(2)人財戦略

 当社グループは4つの無形資産(技術・人財・顧客・組織)の更なる蓄積と成長が課題と考えています。特に技術資産と顧客資産をマッチングさせ、イノベーションを生み出す人財資産は重要であり、人財領域における取組みを加速しています。人財領域における主たる課題は下記のとおりであり、解決に向けて“つなげる”というコンセプトの下、グローバルで“志”、“多様性”、“挑戦”の観点で施策を展開することでイノベーションの共創を図り、人財資産を強化します(人財投資額(*8):2023年度約100億円/23-30年累計1,000億円以上)。また、従業員の“Well-being”は人財資産の強化を支える基盤と考え、健康増進や資産形成等、広い観点で従業員のWell-being向上にも取り組みます。これらの取組み結果は人財資産の強化のみならず、組織資産としても蓄積され、技術資産および顧客資産を支える大きな土台となり、4つの無形資産の全体の更なる強化にもつながると考えています。

*8 機会投資含む金額

 

[人財領域における主たる課題や更に強化すべき点]

・味の素グループ全体で共有する価値観や志の更なる浸透

・食品とバイオ&ファインケミカル、地域、ジェンダー、キャリア等を融合するダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンの考え方の下、クロスセクショナルチームで取り組み、イノベーションを共創する力の強化

・創業以来、大切にしている価値観の一つである開拓者精神(新しい事業、新市場の開拓に常に挑戦し続ける精神)の再活性化

・全ての基盤としての従業員の健康的な身体と精神の更なる促進

 

[4つの“つなげる”戦略]

我々は会社の志に共感した社内外の仲間が集い、各人が知と経験を活かして挑戦に臨める環境があることがASV創出に必要と考えています。最重要基盤として、多様な人財が同じ方向を向けるよう、ASVマネジメントサイクルを更に加速し、会社と人財を志で“つなげる”ことを目指します。

多様性

我々はASV実現に向けたイノベーションを共創するには積極的に多様な人財を社内外から求め、その多様性(属性・知・経験等)を公平に受け入れ、活用することが必要と考えています。グローバルで点在する多様な人財を戦略的に“つなげる”ことを目指します。

挑戦

我々はASV実現には特定の従業員のみならず、従業員一人ひとりのちょっとした挑戦も積み上げることが重要と考えています。挑戦を支える各種制度構築と共に失敗から学ぶ文化の醸成を図り、事業戦略と従業員を挑戦で“つなげる”ことを目指します。

Well-being

我々は各個人や家族の健康、精神・財務的な面等での豊かさは全ての生活の基盤であり、ASV実現を支える上で必要不可欠と考えています。働き方、職場環境、健康経営、資産形成支援等の更なる施策の拡充や改善を通じ、Well-beingと従業員を“つなげる”ことを目指します。

 

4つの無形資産

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人財戦略の基本コンセプト

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 ASV実現に向けた最重要基盤となる会社と人財の“志”をつなげる施策においては「アミノサイエンス®で人・社会・地球のWell-beingに貢献する」という志(パーパス)の実現に向けたマネジメントサイクルを構築しています。そして、各取組みの結果として現れる従業員エンゲージメントは企業価値を高める重要な要素と位置付けて従業員エンゲージメントスコア(ASV実現プロセスのスコア(*9))の向上を推進しています(実績:2023年度76%、目標:2025年度80%/2030年度85%)。また、毎年「エンゲージメントサーベイ」の結果と業績との相関分析を実施しています。過去5回の結果より、「志への共感」「顧客志向」「生産性向上」が一人当たりの売上高・事業利益に相関することを確認しています。

 

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*9 ASV実現プロセスとは:個人によるASVの「自分ごと化」から、組織として成果を創出するまでの一連のプロセスと連動するエンゲージメントサーベイの9設問で構成(「志への共感」「顧客志向」「ASVの自分ごと化」「チャレンジの推奨」「インクルージョンによる共創(2問)」「生産性向上」「イノベーション創出」「社会・経済価値の創出」)

 

 また、多様性(性別・国籍・キャリア採用・グループ企業所属籍)を高めるための取組みも進めます。日本での女性管理職比率向上に向けた施策のみならず、人財委員会でのサクセッションプランの作成を通じたグローバルでの人財プールの充実化と見える化の加速、グローバル人財育成プログラム「味の素グループアカデミー」での能力開発、地域間異動なども含めた適所適財の登用を推進、グループ全体で多様性向上を進めていきます。一例ですが、外国籍の法人社長を増やしており、現在12名(*10)が就任しています。日本とそれ以外の国の法人間の異動のみならずブラジルからタイ等、日本以外の国の法人間での人財交流も積極的に進めていきます。

*10 財務報告に係る内部統制報告制度(J-SOX)に基づき、内部統制の評価の範囲に含まれる法人を対象に算出

 

(3)リスク管理

 人財に関わるリスク管理においては特に日本等の先進国を中心とした少子高齢化に伴う生産労働人口の減少、デジタル化の加速による既存スキルの陳腐化等といった外部環境変化に加え、既存領域における事業拡大と成長4領域の促進による事業変革を見据え、中途採用の拡大やDX人財育成の更なる加速に取り組みます。また、従業員の心身の健康は働く上での基盤と捉え、従業員のWell-being向上を通じて潜在的なリスク管理にも取り組んでいます。

 

(4)指標及び目標

 当社は人財戦略の実効性を管理するために以下のとおり、人的資本に関する指標を設定しています。また、2024年度からは挑戦を測る指標の追加を予定しております。

 なお、一部の指標、実績、目標に関連する取組みは連結グループ全体で行われている活動ではないため、連結グループでの開示は困難です。そのため、一部の指標、実績、目標については連結グループの主たる法人である味の素㈱を対象としています。

人的資本に関する主たる指標

対象

2023年度

実績

目標値

達成

時期

従業員エンゲージメントスコア

(ASV実現プロセスの9設問の平均値)

グローバル

76

80

2025

 

 

 

85%

2030

 

持続可能なエンゲージメントスコア

グローバル

85

90

多様性

リーダーシップ層の多様化

グローバル

21

30

 

女性管理職比率

グローバル

29

40

 

 

味の素㈱

14%

30%

 

1年間で入社する従業員の内、キャリア採用で入社する従業員の比率

味の素㈱

48%

50%以上

(2024年~)

 

全従業員の内、キャリア採用で入社した従業員の構成比

味の素㈱

18%

30%

挑戦

手挙げでの異動比率

味の素㈱

5%

(検討中)

 

自身にとって挑戦と思えることを

1つでも達成できたと答えた人の割合

味の素㈱

(2024年:

集計開始)

(検討中)

従業員

Well-beingに関する

エンゲージメントスコア

グローバル

83

90

Well-

being

プレゼンティーズム

(仕事の生産性)の改善

味の素㈱

74%

75%以上

 

アブセンティーズム

(病欠)の低減

味の素㈱

2.4日

1.8日

 

 

(5)人的資本経営に関係する外部機関等からの評価

健康経営優良法人2024

令和5年度「なでしこ銘柄」

PRIDE指標2023(ゴールド)

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認定歴:健康経営銘柄:通算6度目/健康経営優良法人:2017~2024年まで8年連続認定

選定歴:2016年、2017年、2021年、2022年、2023年(2019年、2020年「準なでしこ」に選定)

認定歴:2020~2023年 連続認定

 

 

3【事業等のリスク】

(1)味の素グループにとっての重要な事項(マテリアリティ)に関わるリスクと機会

 当社グループは、マクロの環境変化や、発生の蓋然性(高・中・低)、影響度(高・中・低)などを総合的に勘案して、組織横断的な管理が必要なグループ全体のリスクと機会を特定しており、その内容は以下のとおりです。

 当社グループではこのような経営及び事業リスクを最小化するとともに、これらを機会として活かすための様々な対応及び仕組み作りを行っておりますが、以下はすべてのリスクを網羅したものではなく、現時点では予見出来ない又は重要と見なされていないリスクの影響を将来的に受ける可能性があります。

 また、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。なお、以下の表においては、●をリスク、〇を機会として記載しております。

 なお、昨年度は「財務に関わるリスクと機会」と「味の素グループにとっての重要な事項(マテリアリティ)に関わるリスクと機会」を分けて開示していましたが、今年度から双方を統合し、当社グループにとっての事業上のリスクと機会として開示します。

 

主要なリスクと機会

総合

評価

分類

具体的内容

#1

アミノサイエンス®

〇モダリティの進化を先取りし、味の素グループの強みであるアミノサイエンス®を活かすことにより事業が成長する機会

●アミノサイエンス®の進化や拡大が停滞したり、エコシステムや共創にアミノサイエンス®を活用し切れずにその価値がスケールせず、事業の競争優位性や成長が鈍化するリスク

極めて重要

#2

ITセキュリティ、知的財産

〇知的財産戦略と事業・R&D戦略が連動することにより知財ポートフォリオが構築され、知的財産を事業に積極的に活用することで、競争優位性と事業成長に繋がる機会

〇ITセキュリティ強化により、コミュニケーションや意思決定が効率的、スピーディーかつ安全に行われ、顧客の信用を得て取引拡大につながる機会

●技術ノウハウや事業上の営業秘密が競合会社に漏洩し、技術的、事業的な競争力に影響が及ぶリスク

●AI技術の悪用やランサムウェア攻撃など、サイバー攻撃がさらに高度化するリスク

●個人情報の流出が発生して、行政処分を受ける、ステークホルダーの信用を失うリスク

極めて重要

#3

ブランド

〇社会・地球のWell-beingに配慮した経営、サステナビリティに関する任意要請への先行対応、地域に根付く強いブランド力の活用により、サステナビリティ先進企業としての地位を維持・向上する機会

●様々なステークホルダーの価値観が多様化する中で、事業活動への共感が得られず、ブランドが棄損されるリスク

●MSGや甘味料に関するネガティブ情報が拡散され、コーポレートブランドが棄損されるリスク

●AI技術の悪用により、フェイク情報生成・拡散が容易化、また模倣品や当社もしくはグループ個社を騙るWebサイト・SNSアカウント等が巧妙化し、ブランドが棄損されるリスク

極めて重要

#4

技術革新

〇DXによる様々な事業活動の自動化・加速・効率化、新たな事業モデルや顧客接点の創出、先端技術によるモダリティの進化の先取りなど、生産性向上や事業・技術革新、新たな事業やバリューチェーンを跨ぐ価値創造に繋がる機会

〇GX(グリーン・トランスフォーメーション)が進み、サーキュラー・エコノミー、精密発酵、再生農業など地球持続性や生物多様性に関する技術革新・規制緩和・市場創出および資金調達などの拡大により、農業・食料分野におけるソリューションが進展する機会

●イノベーション進化への対応の遅れにより、新しい価値の創造や事業機会を逃すリスク

●AI技術の利活用が遅れることで事業機会を逃すリスク、またはAI技術の利活用が拙速に推進されることで、法規制の違反、倫理上の問題、AI判断の正確性などの問題が顕在化するリスク

極めて重要

#5

人的資本・人権

〇“多様性”と“挑戦”にフォーカスした積極的な人財投資や働き方の多様化により、共創価値をスケールする機会

●人権尊重に関する法令や情報開示基準の整備が進む中で対応の遅れにより企業価値損失につながるリスク

●労働市場における人財不足により、イノベーションや事業活動に必要な人財が確保できないリスク

極めて重要

#6

気候変動、自然資本・生物多様性、資源枯渇

〇環境・食料課題へのホリスティック(包括的)なアプローチの一般化、他企業・機関とのサステナブルなソリューション共創の機運の高まりにより、レジリエントなフードシステムの実現が容易になる機会

〇気候変動対策資金および農家支援に向けた政策支援の拡充により、環境負荷が低くレジリエントなフードシステムの構築が後押しされる機会

〇自然資本・生物多様性への注目の高まりにより、再生農業や持続可能な畜産業に資する製品・ソリューションの需要が拡大する機会

●気候変動、自然資本の毀損、水不足、動物資源枯渇課題(タンパク質クライシス、家畜の伝染病等)の顕在化により地球全体のサステナビリティが確保できなくなることで、原材料の調達・生活者への食の提供が困難になるリスク

●国内外で制定・厳格化が進む法規制(脱炭素、自然資本・生物多様性、包装材、水分野、グリーンウォッシュ)や、再生可能エネルギーの調達要請により、対応コストが発生・増加するリスク

極めて重要

#7

紛争・戦争、テロ、暴動、社会不安

○代替原材料の検討により、より良い原材料の安定的調達に結びつく機会

●輸出規制・関税措置・金融制裁・武力行使等により原材料調達(家畜用飼料の原料を含む)、その他物資の供給、国をまたぐ情報共有、資金移動が制限され、全社および事業戦略の浸透や開発、製造が滞るリスク

●敵対国グループの企業と見なされ、著しく製品需要が落ち込むリスク

●現地幹部・駐在員の安全が脅かされる又は拘束されるリスク、特定国の事業活動が妨害を受けて継続できなくなるリスク

●紛争・インフレなどによる社会不安の高まり、表現・集会への弾圧強化や女性の権利の侵害により、一部の国における事業活動が困難となるリスク

●インフレーション進行に起因する、原燃料コスト上昇による収益の悪化

●収用リスクや、戦争や紛争などの発生による財務上のカントリーリスク

極めて重要

#8

財務・会計・税務

〇●租税制度・繰延税金資産/負債の変動による、税負担増加のリスク、あるいは税負担軽減の機会

●買収した子会社等の事業計画未達、資本コストや金利の急激な上昇による減損リスク

●金融危機による資金の枯渇、主に新興国における流通量低下等によるUSD等主要通貨の調達難、格付けの低下による資金調達リスク

●海外を含めた予期せぬ得意先の経営破綻リスク

●為替・金利の急激な変動による事業収益への影響リスク(海外での事業活動の停滞、海外子会社業績の円貨への換算影響、利息費用の増加)

極めて重要

#9

非財務データ活用

〇技術革新により、従来測定・分析できなかった非財務データの収集や定量化手法開発およびスタンダード作り・展開が後押しされ、環境・社会価値を財務価値に転換しやすくなる機会

〇自然資本分野における技術の進歩により、レジリエントなフードシステムの構築に必要なデータが得やすくなる機会

●社会価値や人権リスクの評価・測定の水準(社会要請)の高まりに対応が遅れ、事業機会を逃すリスク

重要

#10

パンデミック、自然災害

○パンデミックや自然災害以外の危機発生時にも対応可能な、オールハザード対応BCPへの進化により、レジリエントかつ柔軟な組織体制構築に結びつく機会

●パンデミックや大規模/広域自然災害等に伴う物資の不足や人財へのダメージによりイノベーションの推進や事業活動が困難となるリスク

重要

#11

消費者嗜好・価値観

〇サステナビリティ意識の高まりやこころの豊かさの重視など消費者の価値観の変化に対応することで、事業が拡大する機会

●消費者の社会・環境意識の高まりやパーソナライズド・ヘルスケアの志向に対応した事業、サービス、商品展開が遅れ、生活者や社会の受容性に遅れが生じて事業機会を逃すリスク

重要

#12

人口増加、高齢化、途上国への資本流入

〇世界人口増加や公的機関による途上国への資本の流入により健康・栄養課題の解決に資するソリューションの需要が高まる、またヘルスケア市場が大きく拡大する機会

●日本・欧州における人口増加が望みにくい中、一部の途上国・エリアでの事業展開が遅れ、事業機会を逃すリスク

重要

#13

ガバナンス・コンプライアンス

〇ガバナンス強化により、当社らしい安全・品質・環境マネジメント活動の継続によりステークホルダーからの信頼が蓄積されることで生まれる機会

〇従業員へのAGP浸透、ポリシーや規程類の正しい理解と実践などのガバナンス強化により、より良い企業風土が醸成され、ビジネスの持続可能性を高める機会

●コンプライアンス(宗教対応規制、動物保護規制等を含む)違反や品質・安全管理の不備等(想定しない成分の混入等)により刑事処分・行政処分を受ける、ステークホルダーの信用を失うリスク

重要

#14

経済安全保障(半導体)

〇日本政府による経済安全保障としての半導体の国内生産回帰により、国内における技術開発が容易になる機会

●各国政府による半導体を用いた経済安全保障の影響を受け、サプライチェーンの混乱や市場競争の激化のあおりを受けるリスク

重要

 

 

 

(2) 味の素グループにとっての重要な事項(マテリアリティ)に関わるリスクと機会に基づく、取組みと目標・KPI

 「第2 事業の状況 1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」の「味の素グループにとっての重要な事項(マテリアリティ)」に記載のとおり、現在の味の素グループが取り組む6つの「重要テーマ」①「持続可能な地球環境の実現」②「食を通じたウェルビーイングの実現」③「先端医療・予防への貢献」④「スマートソサエティの進化への貢献」⑤「多様な価値観・人権の尊重」⑥「経営基盤の強化」に対して、取組みおよび目標・KPIは以下になります。リスク・機会は前述の主要なリスクと機会を簡潔にまとめたものであり、カッコ内の番号は前述のリスクと機会の該当する分類番号を示しています。

 

 重要テーマに関わる主なリスク・機会と、取組み、目標・KPI

 (リスク・機会のカッコ内の番号は、前述の主要なリスクと機会の分類番号を示す)

重要

テーマ

リスク・機会

(カッコ内はリスク・機会の番号)

取組み

目標・KPI

持続可能な地球環境の実現

〇技術革新、規制緩和・政策支援拡大、資金流入および他企業等との共創機運高まりによる地球にやさしくレジリエントなフードシステム構築の後押し、および関連製品・サービスの需要拡大


●気候変動・自然資本毀損・動物資源枯渇による原材料調達の困難化および関連法規制や社会要請の厳格化、また培養肉や包装材リサイクル・AIなど先端技術の活用の遅れ・拙速な導入による事業機会の損失
(#1,#4,#6)

① ネットゼロへの挑戦

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

② 100億人を支えるレジリエントなフードシステム変革への貢献


・GHG排出削減(対2018年)

 2030年:スコープ1、2で50%、スコープ3は24%削減

 2050年:ネットゼロ、電力再生可能エネルギー化100%

・生物多様性への対応推進

 (LEAPアプローチ(※)対象として選定した原料における、リスク機会評価および気候変動等との相互解決を含む取組み推進)

 ※LEAPアプローチ:TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)が提唱するガイダンスで、自然関連のリスクと機会を科学的根拠に基づいて評価するためのプロセス。

・プラスチック廃棄物

 2030年:ゼロ化

・フードロス削減(対2018年)

 2025年:50%削減(原料受け入れからお客様納品)

 2050年:50%削減(製品ライフサイクル全体)

・フードロス削減、プラスチックリサイクルなど社会実装における各地域での協働

・水使用量削減(対2005年)

 2030年:水使用量削減率80%削減

・持続可能な原材料調達

 2030年:重点原材料の持続可能な調達比率100% アニマルウェルフェア向上の推進



・バイオサイクル拡大による資源循環社会実現への貢献

・バイオスティミュラント製品を通じた持続可能な農業への貢献

 (単位面積当たり収量増、環境ストレスへの耐性増などにより、気候変動緩和・適応へ貢献)

・アミノ酸を用い持続可能な方法で飼育された乳牛、肉牛由来製品の提供。乳業・食肉メーカーとの連携によるエコシステム構築

・環境負荷の少ないアンモニアのオンサイト生産の実用化推進

食を通じたウェルビーイングの実現

〇各地域の消費者の嗜好、またサステナビリティや健康への意識の高まりなどに対応した製品・サービスの提供による事業拡大、および社会・地球のWell-beingに配慮した経営によるブランドの向上


●価値観の変化・多様化やAI等先端技術の不適切な利用がみられる中、消費者の価値観の変化への対応が遅れる、また製品・事業活動に対する理解が得られないことによる事業機会の損失・ブランドの棄損
(#1,#3,#9,#11)

③ 食文化を尊重し、地球にも人にも健康で、おいしい食を選択できる環境を作り、多くの人に価値を提供する


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

④ 調理の楽しさ・共食による人のつながりの提供を通じて、こころの豊かさへ貢献する

 

⑤ 一人ひとりに寄り添った製品・サービスの提供を通じて「自己実現」へ貢献する


・業務用(BtoB)顧客向けソリューションの提供拡大

・食と健康の課題解決に向けた各地域での協業者との協働

・味の素グループ栄養プロファイリングシステム(ANPS)等の栄養評価技術に基づく、栄養バランスのよい製品・サービスの提供、生活者の健康的な食行動支援

・栄養コミットメントを通じた健康的な製品提供

 -栄養価値を高めた製品の割合 60%(2030年)

 -「おいしい減塩」「たんぱく質摂取」に役立つ製品提供 年間4億人(2030年)

 -アミノ酸の生理機能や栄養機能を活用した製品の利用機会 対2020年2倍(2030年)

・環境負荷の低い食品素材や製法で作られた食品・素材の提供(培養肉・プラントベース食品など)

 


・調理、共食のWell-beingへの貢献の可視化(関係性の解明)と貢献度の高い製品の拡大

 


・顧客理解の深化を通じたパーソナライズ化された体験価値開発の加速(日本)

 KPI①:POND※顧客数(共通ID数) 1,000万人(2030年)

 KPI②:年間二桁億円以上の新製品数:年間2-3製品(2030年)

     ※POND:自社で保有する全社顧客基盤

・冷食コア事業カテゴリー(GYOZA及び周辺Dumpling製品)での提供価値進化

先端医療・予防への貢献

〇継続的なモダリティの進化の先取りや、DX活用により先端医療を顧客に届けることによる新しい価値の提供

 

●医療分野の技術発展への対応が遅れる、またアミノサイエンス®の進化や拡大が停滞したり、エコシステムや共創を活用しきれずに価値がスケールしないことによる、事業や企業価値増大の抑制
(#1,#4)

⑥ 先端医療モダリティの実現に貢献する


・治療や予防の進化、健康寿命の延伸につながるソリューションの提供拡大

・バイオ医薬製造サービスの強化および領域拡大

・培地や先端医療素材のサービスソリューション提供型ビジネスへの進化

・メディカルフード領域の強化

スマートソサエティの進化への貢献

〇経済安全保障政策の影響で半導体生産の国内回帰が進むことによる、国内における半導体関連技術の開発の進展

 

●各国政府が経済安全保障の一環として半導体関連製品の貿易を規制することによるバリューチェーンの混乱、および貿易摩擦相手国による関連製品の国産化による競争の激化
(#1,#14)

⑦ サステナブルかつ快適なICT社会の実現をめざし、継続したイノベーションによる先端材料の開発と提供拡大、サステナブルなビジネスモデルの共創


・半導体バリューチェーンにおける共創エコシステムの強化、半導体の進化に貢献するイノベーション創造のスピードアップと先端材料の提供拡大

・光電融合分野などの先端半導体分野における技術および材料の開発の実現

多様な価値観・人権の尊重

〇技術革新で人権等の非財務データの収集が可能になることによる長期目線かつ財務・非財務両面からの経営判断促進、および自社の環境・社会価値を活かした競争優位性に繋がる各種スタンダード作りへの関与


●人権等非財務データの評価・測定の要請への対応が遅れることによる、事業機会および企業価値の損失
(#5,#9)

⑧ バリューチェーンにおける人権の取組みの推進・マルチステークホルダーの共感醸成


・国際基準に則った人権・環境デュー・ディリジェンスの着実な推進。ステークホルダーとの対話を通じ、以下両面から取り組む。

(深掘性)国別人権リスク評価(1回/4年)結果に基づく人権影響評価の実施、および予防・是正措置、モニタリング

(網羅性)「サプライヤー取引に関するグループポリシーガイドライン」に基づくサプライヤーの実態把握および改善に向けた伴走、モニタリング (2024年 国内一次サプライヤー完了予定、2025年 海外一次サプライヤー着手予定)

経営基盤の強化

〇経営における無形資産の重要性が高まる中、人財の多様化と挑戦の促進による創造的活動の活発化、および知的財産やITシステムの強化、財務戦略強化による競争優位性の強化


●人口動態変化、紛争、パンデミック、人財の需給ギャップ、法規制の厳格化、ITセキュリティへの脅威等の激しい事業環境変化による経営基盤への多面的な脅威の拡大
(#1,#2,#5,#7,#8,#10,#12,#13)

⑨ 地域社会の手本となるDE&Iの取組みや挑戦を促す人財投資等による従業員well-beingの向上、イノベーション創出。そして、すべての従業員が働きがいを感じられる会社の実現へ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

⑩ 事業環境変化に対するレジリエンス強化


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

⑪ 従業員のリテラシー向上


・ASV実現プロセス エンゲージメントサーベイスコア(グローバル)

 80%(2025年) ⇒ 85%(2030年)

・リーダーシップ層の多様化(グローバル)

 20%(2025年度) ⇒ 30%(2030年度)

・女性管理職比率(グローバル)

 35%(2025年) ⇒ 40%(2030年)

・全従業員の内、キャリア採用で入社した従業員の構成比(味の素㈱単体)

 20%(2025年) ⇒ 30%(2030年)

 ※毎年、味の素㈱に入社する従業員の内、キャリア採用者の構成比は50%以上を目標とする。

・挑戦する人財を促す「ASVアワード」(グローバル)や「公募異動や横断プロジェクト参加」(味の素㈱単体)の推進



・グローバルな、品質保証システム、戦略的知財ポートフォリオ構築によるレジリエンス強化

・コンプライアンス意識向上のための継続的な施策

・安全衛生に関するアセスメント・監査・点検の継続実施

・経営リスクの特定、対応策検討(毎年)

・未来予測、機会の特定、ポートフォリオ戦略(適宜)

・減損や為替・金利変動リスクの極小化、グループ内資金の有効活用や柔軟な資金調達によるリスクの軽減

 


・環境、人権、DXなどのリテラシー向上施策の展開

・栄養教育を受けた従業員数 10万人(2025年)

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

業績等の概要

 当社グループは、IFRSの適用に当たり、投資家、取締役会及び経営会議が各事業の恒常的な業績や将来の見通しを把握すること、取締役会及び経営会議が継続的に事業ポートフォリオを評価することを目的として、「事業利益」という段階利益を導入しております。当該「事業利益」は、「売上高」から「売上原価」、「販売費」、「研究開発費」及び「一般管理費」を控除し、「持分法による損益」を加えたものであり、「その他の営業収益」及び「その他の営業費用」を含まない段階利益です。

 

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。

 

(1) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 2023年度は、「成長性」と「効率性」の両立を図るべく、現在の事業の効率化や差別化等のための設備投資を行うとともに、今後の医療モダリティ成長や社会的貢献が見込まれる遺伝子治療CDMO領域への投資を実施しました。これらの投資に加えて、「効率性」を志向した900億円の自己株式取得や約380億円の配当など、過去最高となった営業キャッシュ・フローのおおよそ1.5倍の投資および株主還元を行いました。

 2024年度以降も成長4領域への差別化等のための積極投資による「成長性」と資本等の「効率性」を一層追求するため、ネットD/Eレシオのレンジを0.4~0.6倍に引き上げます。同時に、さらなるキャッシュ・フロー創出のための運転資金改善プログラムの強化、EBITDAマージン改善のグループベースでの取り組みや政策保有株の売却も、引き続き行っていきます。

 

ユニークで強靭な高収益構造へシフトするための資本戦略の3つの実行

1.各事業部のパフォーマンスをコーポレートとして支える型化や仕組みの実行

2.競争優位性視点で事業ポートフォリオの変化を実現

3.投資家の支持を得るためのエンゲージメント強化

 

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①事業のパフォーマンスを支える型化や仕組みの組織開発と実行

 国内外グループ会社の知見を結集して、企業価値のさらなる向上のため、会社の発展段階(新規設立or取得or成長or成熟)や事業形態に応じて、将来の事業成長を見据えた多面的な構造解析で改善方法等の「型」の「学びあい」の場を設けています。たとえば、以下が「型」の例です。

 (ⅰ)月次ローリング・フォーキャストの実施による経営品質の向上活動

 (ⅱ)クロス・ファンクショナルな購買活動の新たな視点でのキャッシュ・フロー改善

 (ⅲ)与信管理枠定期見直しにおける自動化プログラム

 (ⅳ)SKUごとの物流費まで含めた多面的で徹底的な採算管理

 これは、管理会計の基本の「型」を重視する取り組みで、FP&A人財が、財務・経理・税務部門の出身者だけではなく、事業部、地域本部、他のコーポレート部門、製造部門や研究開発部門等、相互に交流するなかで、基本の徹底を学ぶ重要な取り組みと考えています。

 

<グローバル標準の型化と展開>

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②競争優位性視点で事業ポートフォリオの変化を実現

 事業ポートフォリオについては、持続的成長をもたらし、志(パーパス)を追求し続けるための当社グループらしい「型」を創ります。既存事業と4つの成長領域(新規領域)の融合による事業モデル変革(BMX)によって、提供価値起点の事業ポートフォリオへと進化していきます。

 事業ポートフォリオの進化に向けては、既存事業の成長性と収益性を把握しつつ、各組織の中期的ロードマップにおけるキー戦略を4つのアクション(①集める、②変える、③始める、④止める)で整理し、成長への資源配分の優先順位を定めます。長期軸ではイノベーション戦略と連動し、未来構想の仮説抽出を行う仕組みを構築します。

 そして、事業のステージ、事業領域ごとの成長メカニズムや事業特性に応じ、成長加速のための資源配分を行っていきます。

 

<キャッシュ・アロケーションの考え方>

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<ポートフォリオ再設計の検討>

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③投資家の支持を得るためのエンゲージメント強化

 中期ASV経営の推進による2030ロードマップ実現に向けて、株主・投資家の皆様からご期待をいただくとともに、エンゲージメントを通じて多くの示唆をいただいています。さらなる進化を実現するためのアミノサイエンス®を通じた価値創造、強みの源泉である人財をはじめとした無形資産の強みなど、株主・投資家の皆様のご理解を深めていただくために株主総会や各種説明会、年間700社を超える個別対話を積極的に展開しています。

 短期業績の着実な成長とともに、株主・投資家の皆様から中長期目線での成長に対するご期待をいただけるよう取り組んでいます。サステナビリティへの取り組みを通じネガティブインパクトの低減だけでなく、イノベーションによるポジティブインパクトの創出にチャレンジしていくことを積極的に情報開示し、企業価値評価モデルの持続的な成長性や資本コスト低減も推進しています。

 持続的な企業価値向上の実現を目指すとともに、資本効率性の追求にも積極的に取り組み、2030年までに2022年比でEPS3倍の実現を目指します。

 まだまだ味の素グループをご存じではない機関投資家や個人投資家がたくさんいらっしゃいます。中期ASV経営を支えていただく株主資本構成の実現に向け、2024年度には新たにIR室を設置し、株主・投資家の皆様との接点を拡充するとともに、さらなる企業価値向上につなげていきます。

 

<様々なステークホルダーとの継続的な対話>

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(2) 生産、受注及び販売の実績

 当社グループの生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その形態、単位等は必ずしも一様ではなく、また製品のグループ内使用(製品を他のセグメントの原材料として使用)や、受注生産形態をとる製品が少ないため、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。

 このため生産、受注及び販売の実績は、「(4) 当連結会計年度の経営成績の分析」における各セグメント業績に関連付けて示しております。

 

(3) 重要性がある会計方針及び見積り

 当社グループの連結財務諸表は、IFRSに基づき作成されております。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表」に記載しております。この連結財務諸表の作成に当たって必要な見積りは、合理的な基準に基づいて実施しております。

 なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要性がある会計方針、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要性がある会計方針」及び同「5.重要な会計上の判断、見積り及び仮定」に記載しております。

 

(4) 当連結会計年度の経営成績の分析

 当連結会計年度の売上高は、ファンクショナルマテリアルズ(電子材料等)の販売減の影響等によりヘルスケア等セグメントが減収となったものの、販売単価の上昇や換算為替の影響等により調味料・食品セグメント及び冷凍食品セグメントが増収となった結果、前期を801億円上回る1兆4,392億円(前期比105.9%)となりました。

 事業利益は、ヘルスケア等セグメントの減収等の影響を受けたものの、調味料・食品セグメント及び冷凍食品セグメントの増収効果等により、前期を123億円上回る1,476億円(前期比109.1%)となりました。

 営業利益は、その他の営業収益で前期に当期を大幅に上回る固定資産の売却益の計上等があったため、前期を22億円下回る1,466億円(前期比98.5%)となりました。

 親会社の所有者に帰属する当期利益は、前期を69億円下回る871億円(前期比92.6%)となりました。

 

当連結会計年度のセグメント別の概況

 セグメントごとの業績は、次のとおりです。

 

対前期実績

売上高(億円)

事業利益(億円)

第146期

前期増減

前期比

第146期

前期増減

前期比

調味料・食品

8,469

719

109.3

1,115

267

131.5

冷凍食品

2,818

146

105.5

95

75

475.7

ヘルスケア等

2,945

△51

98.3

243

△242

50.1

その他

158

△13

92.1

21

22

 

合計

14,392

801

105.9

1,476

123

109.1

(注)各セグメントの主要製品につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 7.セグメント情報 (1) 報告セグメントの概要」をご参照ください。

 

① 調味料・食品セグメント

 調味料・食品セグメントの売上高は、販売増や換算為替の影響等により、前期を719億円上回る8,469億円(前期比109.3%)となりました。事業利益は、増収効果等により、前期を267億円上回る1,115億円(前期比131.5%)となりました。

 

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<主要な変動要因>

・調味料は、全体で増収。
日本は、主に単価上昇により増収。
海外は、販売増や為替影響等により増収。

・栄養・加工食品は、全体で増収。
日本は、主に単価上昇により増収。
海外は、為替影響や販売増等により増収。

・ソリューション&イングリディエンツは、日本における外食向け製品の販売増や、海外における為替影響等により増収。

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<主要な変動要因>

・調味料は、全体で大幅増益。
日本は原材料等のコストや戦略的費用の増加を単価上昇により吸収し、前年並み。
海外は、増収効果等により大幅増益。

・栄養・加工食品は、全体で増益。
日本は増収も、原材料等のコスト増影響により減益。
海外は、増収効果等により大幅増益。

・ソリューション&イングリディエンツは、主に日本における外食向け製品や、加工用うま味調味料が増益となり、全体で大幅増益。

 

② 冷凍食品セグメント

 冷凍食品セグメントの売上高は、販売単価の上昇や換算為替の影響等により、前期を146億円上回る2,818億円(前期比105.5%)となりました。事業利益は、増収効果や構造改革効果等により、前期を75億円上回る95億円(前期比475.7%)となりました。

 

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<主要な変動要因>

・冷凍食品は、全体で増収。
日本は、単価上昇効果あるも、数量減により減収。
海外は、単価上昇、為替影響等により増収。

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<主要な変動要因>

・冷凍食品は、全体で大幅増益。
日本は減収も、単価上昇やコスト改善効果等により増益。
海外は、増収効果や構造改革効果等により大幅増益。

 

③ ヘルスケア等セグメント

 ヘルスケア等セグメントの売上高は、ファンクショナルマテリアルズ(電子材料等)の販売減の影響等により、前期を51億円下回る2,945億円(前期比98.3%)となりました。事業利益は、ファンクショナルマテリアルズ(電子材料等)、バイオファーマサービス&イングリディエンツいずれも減益となり、前期を242億円下回る243億円(前期比50.1%)となりました。

 

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<主要な変動要因>

・バイオファーマサービス&イングリディエンツは、主に為替影響により、全体で増収。

・ファンクショナルマテリアルズ(電子材料等)は、電子材料の販売減により減収。

・その他は、全体で増収。

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<主要な変動要因>

・バイオファーマサービス&イングリディエンツは、医薬用・食品用アミノ酸、バイオファーマサービス(CDMO)ともに大幅減益。

・ファンクショナルマテリアルズ(電子材料等)は、減収に伴い大幅減益。

・その他は、増収に伴い増益。

 

④ その他

 その他の事業の売上高は、前期を13億円下回る158億円(前期比92.1%)となり、事業利益は、前期を22億円上回る21億円となりました。

 

当連結会計年度の連結損益計算書の段階ごとの概況

① 売上高

 売上高は前期を801億円上回る1兆4,392億円(前期比105.9%)となりました。地域別に見ますと、日本では、前期を1億円上回る5,101億円(前期比100.0%)となりました。海外では、前期を800億円上回る9,291億円(前期比109.4%)となりました。海外の地域別では、アジア、米州及び欧州でそれぞれ3,992億円(前期比113.4%)、3,789億円(前期比107.1%)及び1,508億円(前期比105.4%)となりました。売上高海外比率は64.6%(前期は62.5%)となりました。なお売上高は販売元の所在地を基礎とし国又は地域に分類しております

 

② 売上原価、販売費、研究開発費及び一般管理費、持分法による損益

 売上原価は、売上高の増加に伴い、前期から390億円増加し、9,277億円(前期比104.4%)となりました。売上原価の売上高に対する比率は、0.9ポイント改善し、64.5%となりました。販売費は、主として広告費の増加や為替影響等により、前期から151億円増加し、2,016億円(前期比108.1%)となりました。研究開発費は、前期から28億円増加し、287億円(前期比111.2%)となりました。一般管理費は、主として従業員給付費用の増加や為替影響等により、前期から110億円増加し、1,380億円(前期比108.7%)となりました。持分法による損益は、47億円の利益(前期は43億円の利益)となりました。

 

③ 事業利益

 事業利益は、前期を123億円上回る1,476億円(前期比109.1%)となりました。地域別に見ますと、日本では609億円(前期比108.8%)、海外では867億円(前期比109.4%)となりました。海外の地域別では、アジア、米州及び欧州でそれぞれ683億円(前期比132.8%)、107億円(前期比58.8%)及び76億円(前期比80.2%)となりました。事業利益海外比率は58.7%(前期は58.6%)となりました。なお事業利益は販売元の所在地を基礎とし国又は地域に分類しております

 セグメント別の事業利益の詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記7.セグメント情報」をご参照ください。

 

④ その他の営業収益(費用)

 その他の営業収益は、前期に当期を大幅に上回る固定資産の売却益の計上等があったことにより、前期から204億円減少し、204億円(前期比50.0%)となりました。その他の営業費用は、前期に味の素フーズ・ノースアメリカ社に係るのれんについて減損損失の計上等があったことにより、前期から59億円減少し、214億円(前期比78.4%)となりました。

 

⑤ 営業利益

 営業利益は、前期を22億円下回る1,466億円(前期比98.5%)となりました。

 

⑥ 金融収益(費用)

 金融収益は、前期から16億円増加し、77億円(前期比127.5%)となりました。金融費用は、前期から25億円減少し、124億円(前期比82.8%)となりました。

 

⑦ 親会社の所有者に帰属する当期利益

 親会社の所有者に帰属する当期利益は前期を69億円下回る871億円(前期比92.6%)となり、1株当たり当期利益は167円44銭(前期は175円97銭)となりました。

 

(5) 当連結会計年度の連結財政状態の分析

 当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末の1兆5,117億円に対して2,627億円増加し、1兆7,744億円となりました。これは主として、Forge Biologics Holdings, LLC(以下、Forge社)の全持分取得に伴うのれん等の増加に加え、換算為替の影響による各資産残高の増加によるものです。

 負債合計は、前連結会計年度末の6,887億円に対して2,016億円増加し、8,904億円となりました。これは主として、有利子負債の増加によるものです。有利子負債残高は、短期借入金の増加及びコマーシャル・ペーパーやサステナビリティ・リンク・ボンドの発行等により、前連結会計年度末に対して1,551億円増加し、4,916億円となりました。

 資本合計は、自己株式の取得により減少した一方、主に円安の進行に伴う在外営業活動体の換算差額の増加により、前連結会計年度末に対して610億円増加しました。資本合計から非支配持分を引いた親会社の所有者に帰属する持分は、8,146億円となり、親会社所有者帰属持分比率は45.9%となりました。

 

セグメントごとの概況は、次のとおりです。

① 調味料・食品セグメント

 当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末の6,003億円に対して466億円増加し、6,469億円となりました。

② 冷凍食品セグメント

 当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末の2,003億円に対して95億円増加し、2,099億円となりました。

③ ヘルスケア等セグメント

 当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末の3,373億円に対して1,320億円増加し、4,694億円となりました。これは主として、Forge社の全持分取得に伴うのれん等の増加によるものです。

 

(6) キャッシュ・フローの分析

当連結会計年度の連結キャッシュ・フローの状況

 

 

 

(億円)

 

2023年3月期

2024年3月期

差額

営業活動によるキャッシュ・フロー

1,176

1,680

504

投資活動によるキャッシュ・フロー

△300

△1,324

△1,023

財務活動によるキャッシュ・フロー

△1,110

△67

1,043

現金及び現金同等物に係る換算差額

48

98

50

現金及び現金同等物の増減額

△186

387

574

現金及び現金同等物の期末残高

1,327

1,715

387

 

 営業活動によるキャッシュ・フローは、1,680億円の収入(前期は1,176億円の収入)となりました。税引前当期利益が1,420億円であり、減価償却費及び償却費782億円、法人所得税の支払額545億円があったこと等によるものです。

 投資活動によるキャッシュ・フローは、1,324億円の支出(前期は300億円の支出)となりました。連結の範囲の変

更を伴う子会社株式の取得による支出743億円、有形固定資産の取得による支出657億円があったこと等によるものです。

 財務活動によるキャッシュ・フローは、67億円の支出(前期は1,110億円の支出)となりました。短期借入金の増加738億円やコマーシャル・ペーパーの増加530億円があったものの、自己株式の取得による支出913億円や配当金の支払額384億円があったこと等によるものです。

 以上の結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、1,715億円となりました。

 

(7) 当連結会計年度の資金の流動性及び資金の調達、使途

① 資金の流動性について

 当連結会計年度は短期流動性に関し、コミットメントライン、当座貸越枠、コマーシャル・ペーパー発行枠等の調達手段によって十分な手元流動性を確保しております。

 また、十分な手元流動性比率の維持に加え、主要取引銀行と締結しているコミットメントラインにより資金の安全性を確保しており、当連結会計年度末のコミットメントラインの未使用額は円貨で1,700億円、外貨で100百万米ドルです。さらに、資金流動性リスク等が発生する可能性のある海外連結子会社に対して、当社が緊急貸付枠を設定し、一時的な資金繰りの支援体制を整備しております。

② 資金の調達

 当連結会計年度の資金調達は、調達コストとリスク分散の観点による直接金融と間接金融のバランス及び長期と短期の資金調達のバランスを勘案し、事業資金及びForge社の持分取得に関し、金融機関からの借入、コマーシャル・ペーパー発行等による資金調達活動を行いました。また、サステナビリティ・リンク・ファイナンス・フレームワークを策定し、これに基づき2023年6月にサステナビリティ・リンク・ボンドを発行しております。

③ 資金の使途

 当連結会計年度の資金の使途は、主として事業資金及びForge社の全持分取得であります。

 

(8) 経営上の目標の達成状況について

 経営上の目標の達成状況につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております。

 

 

5【経営上の重要な契約等】

技術援助を与える契約等

契約会社名

契約締結先

国名

契約内容

対価

契約期間

味の素㈱

ササ・インティ社

インドネシア

グルタミン酸ナトリウム及びその関連製品のインドネシア国内における非独占的製造権(技術援助を伴う)及び販売権の許諾

左記製品販売高等の一定率

2015年7月1日から10年間。以降10年毎自動更新

 

技術援助を受ける契約等

契約会社名

契約締結先

国名

契約内容

対価

契約期間

味の素㈱

味の素食品㈱

コノプコ社

アメリカ

日本国内におけるスープ、ブイヨンその他の食品に係る独占的商標使用権の許諾

左記製品販売高の一定率

対象商標が日本で有効に登録されている限り

 

Forge Biologics Holdings, LLCとの合併契約

 

 当社は、2023年11月13日開催の取締役会決議に基づき当社の連結子会社である味の素北米ホールディングス社(以下「ANH社」)を通じて、米国遺伝子治療薬CDMOのForge Biologics Holdings, LLC(以下「Forge社」)の全持分を取得し連結子会社化する(以下「本買収」)ため、合併契約を締結いたしました。

 

(1)本買収の理由

 当社は、中期ASV経営2030ロードマップにおいて、アミノサイエンス®の強みを活かした4つの成長領域を掲げており、ヘルスケア領域はその1つとなります。本買収により、当社はヘルスケア領域の戦略の方向性に合致する一気通貫型の遺伝子治療薬製造ケイパビリティを新たに獲得し、サプライチェーンの最適化や、当社の特許技術に基づく最適化培地の開発・提供による生産性や品質の向上を含め、アミノサイエンス®を活かした当社独自の技術を融合させること、さらに、Forge社の遺伝子治療薬製造ノウハウの展開による細胞治療領域への参入など、強固な先端医療分野のプラットフォームが構築可能となります。これにより、2030ロードマップの早期実現を目指し、更に2050年を見据えて、これまで培った技術・顧客を基盤として、次世代の事業領域に進出することで、付加価値の高い事業モデルへの転換を進め、ヘルスケア領域の成長加速と高収益化を推進するとともに、人類の健康な生活に貢献してまいります。

 

(2)本買収の方法等

 本買収は、米国デラウェア州法の規定に従い、Forge社を存続会社、特別目的会社(設立新会社)を消滅会社とする、現金を対価とした「逆三角合併」の方法により行いました。当該合併により、ANH社が保有する特別目的会社の全持分が存続会社Forge社の持分に転換されると同時に、Forge社の全持分は消滅し、Forge社の持分保有者は、ANH社より合併対価として現金を受け取ります。これにより、ANH社は、合併後の存続会社Forge社の発行済み持分の100%を取得し、存続会社Forge社はANH社の完全子会社となります。

 

(3)取得価額

 547百万米ドル(78,567百万円)

 (注)1.1米ドル=143.48円(株式取得時レート)

 (注)2.持分取得後における価格調整が完了し、取得対価は確定しております。

 

(4)当社グループが承継する権利義務

 当社グループは本合併契約の内容に従って本買収対象事業に関する資産負債契約その他の権利義務を承継いたしました

 

(5)本買収対象事業に関する資産・負債の金額

(2024年3月31日現在)

資産

帳簿価額

負債

帳簿価額

流動資産

8,429百万円

流動負債

15,433百万円

非流動資産

48,949百万円

非流動負債

8,475百万円

合計

57,379百万円

合計

23,909百万円

 

(6)異動する子会社(Forge社)の概要

(2023年9月30日現在)

名称

Forge Biologics Holdings, LLC

所在地

アメリカ合衆国オハイオ州グローブシティ市

代表者の役職・氏名

社長兼CEO Timothy J. Miller

資本金の額

244百万米ドル

設立年

2020年

事業内容

遺伝子治療薬CDMO

遺伝子治療薬の開発

 

(7)持分を取得する連結子会社(ANH社)の概要

(2023年9月30日現在)

名称

味の素北米ホールディングス社

(英名:Ajinomoto North America Holdings, Inc.)

所在地

アメリカ合衆国カリフォルニア州オンタリオ市

代表者の役職・氏名

社長 坂本 次郎

事業内容

持株会社

資本金の額

(なお、払込等の額は資本金ではなく資本剰余金にて、1,267百万米ドル計上されております)

大株主及び持株比率

味の素株式会社 100%

 

(8)日程

契約締結日

2023年11月13日

本買収実行日

2023年12月21日(米国現地時間)

 

6【研究開発活動】

 当社グループは2030年に向け、「アミノサイエンス®で人・社会・地球のWell-beingに貢献する」企業になることを目指します。ここでアミノサイエンス®とは、創業以来、アミノ酸のはたらきに徹底的にこだわった研究プロセスや実装化プロセスから得られる多様な素材・機能・技術・サービスを総称したものであり、また、それらを社会課題の解決やWell-beingの貢献につなげる、当社グループ独自の科学的アプローチであり、他企業が容易には真似できない当社グループの競争優位の源泉のひとつとなります。2030年に向け、フードシステムで繋がる健康栄養課題の解決と環境への貢献をセットで取り組み、「環境負荷を50%削減」と「10億人の健康寿命を延伸」の2つのアウトカムを実現していきます。また、当社グループの成長戦略では、中長期の成長が期待される市場において、当社グループならではの強みであるアミノサイエンス®を活かし、持続的に社会価値を提供できる、4つの成長領域(ヘルスケア、フード&ウェルネス、ICT、グリーン)にフォーカスし、既存事業の確実な成長と、事業モデル変革(BMX)による成長ドライブにより、2030年に向けて飛躍的な成長を目指します。

 

 当連結会計年度における当社グループの研究開発費は28,766百万円です。

 また、当社グループが保有している特許は国内外合わせて約4,100件です。

 当連結会計年度の各事業区分における研究開発活動の概要とその成果は次のとおりです。

 

(1) 調味料・食品セグメント

 味の素㈱食品研究所が中心となり、味の素AGF㈱、味の素冷凍食品㈱、上海味の素食品研究開発センター社(中国)をはじめとする国内外のグループ会社の研究開発部門とも密接に連携し、味、香り・風味、食感など、「おいしさを構成するすべての要素」を俯瞰した技術開発、製品開発、及びそのアプリケーション開発を行っています。

 また、日本国内の少子化・高齢化、世帯人数の減少、健康志向といった課題に対し、「おいしさ」、「食へのアクセス(あらゆる人に栄養を届ける)」、「地域や個人の食生活」の3つを妥協しない基本姿勢とし、課題解決先進国の日本で磨いたモデルをグローバルに展開しています。グローバルな製品開発体制のもと、マーケティング力、ブランド力を強みに、各国生活者の嗜好とニーズに適応した調味料、加工食品の開発に継続して取り組んでいます。

 

<調味料(日本)>

 2023年度の調味料事業商品は、本格中華のご飯ものメニューが手軽に楽しめるメニュー用調味料として、麻(マー)・辣(ラー)を極め、中華調味料・香辛料等にこだわり絶妙なバランスで配合した、本格麻辣麻婆豆腐の素である「Cook Do®」<極(プレミアム)麻辣麻婆豆腐用>を発売しました。また、肉と野菜の栄養バランスの良いメイン和風おかず用調味料「Cook Do® きょうの大皿®」<豚バラほうれん草用>や<白菜とひき肉の帆立だし塩あんかけ用>を発売し、独自技術(特許出願中)によりフライパンで調理したような「Cook Do®」シリーズ初のレンジ調理用品種「Cook Do®」<レンジでつくる四川式麻婆豆腐用>も発売しました。

 フライパンひとつで簡単に具たっぷりのおいしい手作りパスタを楽しめる、日本初のキューブタイプのパスタ用調味料「パスタキューブTM」を発売しました。また、特別感のあるだし素材をたっぷり使った、いつものメニューがちょっと上質に仕上がり、料理が楽しくなるだし調味料「休日だし。TM」<えびだし><きのこだし><ほたて貝柱だし>を発売しました。さらに、「鍋キューブ®」では<鶏だしコク醤油>や<簡単おでん あごだし醤油>を、「スチーミー®」では<鶏ときのこのデミグラス煮込み用>や<鶏と玉ねぎのガーリックオニオン味>を、「Bistro Do®」では<鶏の濃厚チーズクリーム用>を開発し、それぞれラインアップを拡充・発売しました。

 人や社会・環境に配慮したエシカル消費が注目される中、アニマルウェルフェア(動物福祉)に対する意識が高まっており、それに対応した製品を選びたいという生活者のニーズも拡大しており、このような背景と多様化する生活者ニーズに対応することを目的に、大自然に囲まれた農場でのびのび育ったにわとりのたまごを使用した「平飼いたまごのマヨネーズ」を発売しました。

 

<調味料(海外)>

 事業展開している各国・地域の健康志向やライフスタイルの変化に対応した高付加価値製品のラインアップ拡充、統計解析技術を活用した生活者意識・行動解析による商品開発の高度化を推進しています。都市化やライフスタイルの変化が進む中、簡便で加工度の高い製品や健康価値を有する製品への需要も増加しています。当社グループの減塩技術、新規独自素材の導入により、メニュー用調味料製品(ペルー「Aji-no-mix®」)では、塩分値を従来製品より下げながらおいしさを向上させる製品を開発しています。

 今後も当社グループの独自素材の活用や独自技術に裏打ちされたおいしさの追求とともに健康価値領域での製品開発を継続強化し、現地の生活者の嗜好に合うおいしさや栄養改善に貢献していきます。

 

<栄養・加工食品(日本)>

 2023年度の栄養・加工食品事業商品として、独自開発のコーンパウダーを新たに採用し、蒸したてのコーンの複雑味のあるコクと風味を強化し、さらに独自開発の乳原料によりミルクのコク・うま味の強化を実現した「クノール® カップスープ」<コーンクリーム><つぶたっぷりコーンクリーム>をリニューアルしました。また、「クノール® カップスープ」ブランドから14年ぶりとなる野菜素材の新品種として、味わいの異なる3種の豆(白いんげん豆・ひよこ豆・大豆)の豆本来の甘さと複雑味のあるコク・風味が楽しめる「クノール® カップスープ」<豆のポタージュ>を発売しました。また、袋のまま電子レンジで温めるだけで、豆と野菜を上質なスープでおいしく食べられ、カラダにとって重要なたんぱく質や食物繊維等の栄養が摂れる、具だくさんレトルトスープ「クノール® ポタージュで食べる豆と野菜」<クラムチャウダー>も発売しました。

 Z世代向けカップお粥「粥粥好日®」を本格的に販売開始しました。本開発にあたっては、Z世代の食へのインサイト・不満に着目し、SNSのデータからAI予兆分析・コンセプト開発を行い製品化しており、公益社団法人日本マーケティング協会が開催する「第15回日本マーケティング大賞」の「準グランプリ」を受賞しています。また、女性にとって不足が気になる鉄などが含まれる、日本初の女性のための完全栄養食(1食で必要な栄養素がバランスよく摂れる食品)として「One ALL」を発売しました。

 

<栄養・加工食品(海外)>

 加工食品では、事業を展開する各ローカル市場の慣習や食の嗜好、資源、原料、ステークホルダーを尊重し、アミノ酸のはたらきを活かして、おいしく減塩したり、たんぱく質等の栄養素を摂取したりできる製品を提供し、子供から大人まで、食とライフスタイルに起因する健康課題の解決に向けた取組みを進めています。

 今後も当社グループの独自素材の活用や独自技術に裏打ちされたおいしさの追求とともに健康価値領域での製品開発を継続強化し、現地の生活者の嗜好に合うおいしさや栄養改善に貢献していきます。

 

<コーヒー類>

 スティックコーヒー市場では、《「ブレンディ®カフェラトリー®」スティック》から、濃厚シリーズ<濃厚ミルクティラテ>、及び、スイーツシリーズ3品種を発売し、《「ブレンディ®」マイボトルスティック》シリーズで6品種を発売しました。また、「ちょっと贅沢な珈琲店®」ブランドから、4つの産地のコーヒーを使用した《「ちょっと贅沢な珈琲店®」EVERBLACK®》を発売しました。機能性表示食品《「ブレンディ®」毎日の腸活コーヒー》シリーズからは、一袋で腸活が実践できるサイズの《「ブレンディ®」毎日の腸活コーヒー》袋80gを販売しました。

 

<ソリューション&イングリディエンツ>

 製品を水に溶かし肉や魚を10分つけ込むだけで、自然な食感とおいしさを保持したまま、しっとり食べやすいやわらかさにする調理料(食感改良剤)である業務用「やわらかしっとり調理料(速効タイプ)」を全国の高齢者施設給食・病院給食を中心としたユーザー向けに発売しました。

 

 調味料・食品セグメントに係わる研究開発費は、7,674百万円です。

 

(2) 冷凍食品セグメント

 味の素冷凍食品㈱研究開発センターと海外グループ会社の開発部門を中心に、現地の嗜好とニーズに適応した商品開発に取り組んでいます。さらに味の素㈱食品研究所との連携により、減塩等の健康価値の向上に取り組んでいます。

 

<冷凍食品(日本)>

 生活者のライフスタイルの多様化や喫食シーンの変化に応じて、食卓カテゴリーを中心としたラインアップを展開するとともに、メニュー提案や店頭訴求、体験型イベントの開催等の取組みを通じて、冷凍食品の提供価値向上に取り組んできました。2023年の製品として、「冷凍餃子フライパンチャレンジ」プロジェクトの成果として、フライパンへ張りつきにくく、簡単に羽根つきギョーザが焼けるようにした「ギョーザ」と、中具の増量でジューシーさと食べ応えがアップした「レンジでギョーザ」をリニューアルしました。この「冷凍餃子フライパンチャレンジ」はアジア最大級の広告祭「ADFEST 2024」にて最優秀賞を受賞しています。「米粉でつくったギョーザ」は一般社団法人日本子育て支援協会主催の「第4回日本子育て支援大賞2023」を受賞しました。また、Amazon社との共同企画で、Amazon社のプライベートブランドとして、高たんぱくと肉汁がジューシーなおいしさを兼ね備えた「SOLIMO PROTEIN ギョーザ 1kg袋」と、市販用商品「ギョーザ」の大容量(1kg)パック「SOLIMO ギョーザ 1kg袋」を、Amazon社で発売しました。

 

 直火焼豚と卵、白葱といったシンプルな具材と塩・胡椒や醤油をベースとした正統派な味つけで、さらに、独自の減塩技術により塩分を40%カットした「白チャーハン」を発売しました。また、おいしさに妥協することなく、塩分を40%カットした「おいしく塩分配慮ギョーザ」と「おいしく塩分配慮エビピラフ」も発売しました。㈱モスフードサービスが展開するモスバーガー監修で生活協同組合(生協)宅配向け製品として「レンジでテリヤキハンバーグ」を発売しました。また、醤油味をしみこませた若鶏の一枚肉を、備長炭でこんがり焼き上げた「若鶏もも焼き」を発売しました。

 味の素冷凍食品㈱は一般財団法人食品産業センター及び公益財団法人食品等流通合理化促進機構が共催する「第45回食品産業優良企業等表彰」のCSR部門及び食品産業部門<経営革新タイプ>の2部門で農林水産大臣賞を受賞しました。CSR部門では、停電、被災時の冷凍ギョーザの活用によるフードロス削減の取組みと、災害時の冷凍食品活用に関する情報発信の取組みが評価され、食品産業部門<経営革新タイプ>では、おいしさと減塩を実現した商品及び、高たんぱくの餃子の開発・発売の取組みが評価されました。また、九州工場でのヒートポンプ導入によるボイラー給水加温の実現やヒートポンプシステム内に熱交換器を入れたことによるメンテナンス簡素化の工夫が評価され、一般財団法人ヒートポンプ・蓄熱センターが主催する「第20回ヒートポンプ・蓄熱シンポジウム」の令和5年度「ヒートポンプ・蓄熱システム運転管理等の改善事例」部門にて優秀賞を受賞しました。冷凍米飯専用工場である千葉工場では新しく導入された低炭素型炊飯ラインの本格稼働を開始しました。この低炭素型炊飯ラインはきめ細やかな炊飯管理が可能であるとともにエネルギー効率が従来比で約2倍となり、CO2排出量の削減に貢献します。

 

<冷凍食品(海外)>

 北米や欧州では、日本食人気の高まりやコロナ後の新しい生活様式により、特にリテール製品におけるアジアン冷凍食品市場が成長しています。今後も日本で培われた生産技術で簡便な調理、かつおいしさを提供していくとともに、健康機能を付与した製品を市場投入する等、製品の付加価値を常に向上させながら、更なる事業拡大に貢献していきます。

 

 冷凍食品セグメントに係わる研究開発費は、1,796百万円です。

 

(3) ヘルスケア等セグメント

 味の素㈱バイオ・ファイン研究所、食品研究所、味の素バイオファーマサービス社(米国、ベルギー)、味の素-ジェネチカ・リサーチ・インスティチュート社(ロシア)、味の素ファインテクノ㈱等の国内外の各グループ会社及びその技術開発部門とも連携し、世界中の人々の健康や生活に貢献するための商品及びソリューションを提供しております。

 

<医薬用・食品用アミノ酸>

 医薬用・食品用アミノ酸市場の伸びに対応するために、生産性の向上とコスト競争力の強化を目的とした発酵・精製プロセス開発と導入を継続して進めています。また、動物細胞培養用の培地事業は味の素ジェネクシン社(以下AGX社、現:味の素CELLiST Korea社)をプラットフォームとし、国内外のバイオ医薬品メーカーとの開発を継続、拡大しています。2023年6月、AGX社の株式25%をバイオ医薬品企業のGenexine社(韓国)より取得することに合意(当社グループのAGX社の保有株式は100%)、バイオ医薬用培地事業の中核となる開発・製造拠点として独資化することにより、当社グループの培地開発・製造のグローバル体制をさらに強化します。

 

<バイオファーマサービス(CDMO)>

 製薬メーカーからの原薬受託製造について、低分子医薬品原薬、高活性原薬(HAPI)、ペプチド/オリゴ核酸、タンパク医薬、抗体薬物複合体(Antibody Drug Conjugate:ADC)などの幅広い開発・供給体制の充実を図り、継続的な案件の受注に繋げています。

 低分子医薬品原薬製造においては、バイオ技術との融合による効率的かつ環境配慮型のプロセスの研究を進めています。タンパク質発現技術(「CORYNEX®」技術)においては、味の素アルテア社と連携して、グローバル大手製薬企業とバイオ医薬品の開発・製造支援事業「CORYNEX®」を推進しています。オリゴ核酸の受託製造においては、㈱ジーンデザインと連携して固相合成を活用した少量多品種製造から「AJIPHASE®」の液相合成技術による大量製造までの開発体制を構築し、味の素アルテア社、味の素オムニケム社との連携も深めながら、味の素バイオファーマサービス(CDMO)事業全体としてオリゴ核酸製造受託事業を推進しています。

 

 さらに、2023年度、米国の遺伝子治療薬CDMOのForge Biologics Holdings, LLC(以下「Forge社」という。)の全持分を約547百万米ドル(785億円)で取得し完全子会社化しました。遺伝子治療領域の中でも、安全性の高い、アデノ随伴ウイルス(Adeno-Associated Virus、以下「AAV」という。)を用いた治療方法は、米国を中心に100件以上の臨床試験が行われるとともに7つの新規医薬品が承認されており、今後の臨床試験数の増加とそれに伴う承認薬の増加によって、遺伝子治療薬CDMO市場の拡大が見込まれています。Forge社は、遺伝子治療薬製造バリューチェーン上の2つの要所であるAAV製造とプラスミドDNAの製造能力を有する遺伝子治療薬CDMOであり、また、高純度・高収率のAAVベクター生産技術を有しています。これにより、多数のバイオテック企業の初期臨床向けにGMP生産を行い、製造実績を確実に積み上げることで、ここ数年で急成長・急拡大を遂げており、今後も継続的に成長する見込みです。本買収により、次世代の事業領域に進出することで付加価値の高い事業モデルへの転換を進め、ヘルスケア領域の成長加速と高収益化を推進します。

 

<ファンクショナルマテリアルズ(電子材料等)>

 電子材料につきましては、味の素ファインテクノ㈱と共同で、次世代PC、データセンター向けサーバー、5G通信ネットワーク用途向けに「味の素ビルドアップフィルム®(ABF)」の開発を推進しています。また、国内外の主要ICT関連企業が設立したIOWN(Innovative Optical and Wireless Network)Global Forumに参画し、未来の高速大容量通信社会の実現を目指し研究開発に取り組んでいます。

 

<その他>

-機能性栄養食品-

 スポーツ栄養科学研究に基づき、アミノ酸の独自配合によるスポーツサプリメントの開発に取り組んでいます。エネルギーの源となるクエン酸(現行品+1,200mg)と運動時に大切なアミノ酸(現行品+500mg)を増量し、当社独自のおいしさ設計技術®により飲みやすい味とした「アミノバイタル®クエン酸チャージ」<ウォーター>を発売しました。

 

-健康基盤食品-

 腰、膝、筋力のケアを内側から行う機能性表示食品「STRETCH+」®(ストレッチプラス)<腰>、「STRETCH+」®(ストレッチプラス)<膝>、「STRETCH+」®(ストレッチプラス)<筋>の3品種を発売しました。「STRETCH+」®(ストレッチプラス)<腰>は、当社独自の特許配合でセリンとEPAによる腰の違和感を緩和する日本初の機能性表示食品です。「STRETCH+」®(ストレッチプラス)<膝>は、膝の違和感を軽減し、膝関節の動きをサポートするカツオ由来エラスチンペプチドを主成分とした製品です。「STRETCH+」®(ストレッチプラス)<筋>は、運動との併用で日常生活に必要な筋力の維持に役立つHMB(β‐ヒドロキシ‐β‐メチル酪酸)とカルシウムを主成分とした製品です。

 

-パーソナルケア素材-

 アミノ酸由来の洗浄剤、湿潤剤、メークアップ素材を中心に研究開発を行っています。一般的なコラーゲンの約1,000分の1の分子量で消化・吸収されやすい超低分子コラーゲンを主成分とする、香粧品ブランド「ジーノ」で史上初となる美容ドリンク「ジーノ コラーゲンTM」を発売しました。

 

-飼料用アミノ酸-

 乳牛用アミノ酸製剤「AjiPro®-L」などスペシャリティ事業にフォーカスした研究開発を推進しています。

 

 ヘルスケア等セグメントに係わる研究開発費は、10,115百万円です。

 

(4) その他

 その他セグメントに係わる研究開発費は、355百万円です。

 

 

(5) 全社

 当社が想定する2030~50年の未来図からバックキャストし、グループの将来を担うと期待される領域での事業展開を見据え、関係する研究テーマを全社研究とし、資源を集中的に投資し、開発を進めています。

 全社研究では、味の素㈱食品研究所、バイオ・ファイン研究所が中心となり、国内外の研究機関と連携して進めている先端研究・技術を活用し、グループ内の各研究所とともに様々な事業に向けた新技術・独自素材の開発や、各事業分野に共通した基盤技術の強化に取り組んでいます。

 無形資産への投資も増強していきます。まず技術資産には、おいしさ設計技術®や先端バイオ・ファイン技術に代表されるアミノサイエンス®が挙げられます。今後、より一層顧客に寄り添うためにはデジタルのケイパビリティが欠かせないと考えています。顧客と技術をマッチングさせイノベーションを生み出す人財資産、顧客資産、それらの基盤となる組織資産への投資も増強していきます。

 

<オープンイノベーション>

 当社は、オープンイノベーションを積極的に推進しており、国内外の企業や研究機関等とリンクし、これまでにない新しい価値を創造することを重要と位置付けています。スタートアップとのパートナリング戦略構築や先端イノベーション情報収集をグローバルに推進するため、2024年1月に米国・シリコンバレー(カリフォルニア州パロアルト市)に拠点を新設しました。米国拠点設立は、次世代事業創出を通じた成長戦略の実現に向け、世界の先端イノベーション情報・活動に直接アクセスし、出資・協業・M&Aなどをスピーディに検討・判断するインテリジェンス機能(Search, Access&Partnering)を集中化させたイノベーション戦略チームのグローバル展開の一環となります。

 

 2023年度の主なオープンイノベーションは下記のとおりとなります。

 

-ヘルスケア領域-

 上述のとおり、米国遺伝子治療薬CDMOのForge社を完全子会社化しました。本買収により、次世代の事業領域に進出することで付加価値の高い事業モデルへの転換を進め、ヘルスケア領域の成長加速と高収益化を推進します。

 また、2018年から東京工業大学と共同研究を進めており、再生医療素材や抗体(バイオ医薬用)等に応用可能なたんぱく質を高分泌生産する微生物を短期間で取得するスクリーニング法の開発に成功しました。今後、東京工業大学が独自に開発したバイオセンサー技術「Quenchbody(Q-body)」と、当社の先端バイオ技術を組み合わせた手法の研究開発を推進することにより、有用なたんぱく質の高効率生産を図ります。

 当社は、摂食に関する困りごとに対応したAI搭載の献立支援サイト「ReTabell」(リタベル)を開設し、「ReTabell」サイト展開の一環として、医療関係者や介助者向けの食と栄養に関するサービスを創出するべく、第一三共㈱と協業基本合意書を締結しました。両社は、当社の「ReTabell」サイトと第一三共㈱の「Healthcare as a Service」を連携させることで、食と栄養のDXを推進します。

 

-フード&ウェルネス領域-

 当社は、まぜご飯の上におかずを詰めた一食完結型の宅配冷凍弁当「あえて、」を開発し、小売業特化型のDXソリューションプロバイダー企業である㈱イングリウッドとの協業により、サブスクリプションサービスによりおいしくて栄養バランスの良い宅配冷凍弁当の提供を開始しました。“食と健康のソリューションサービス”の実現を目指すことで、生活者のWell-being向上に貢献していきます。

 また、パーソナライズされた食体験を通じたWell-beingの実現を目指してレシピ動画メディア「DELISH KITCHEN」の運営やリテールDX支援サービスの提供を行う㈱エブリーに出資をしました。今後、当社グループが保有するおいしさ設計技術®やアミノ酸研究による健康と栄養の知見、生活者の洞察から得られた食のインサイトを生かして展開してきた当社のレシピや献立の提案サービスに、㈱エブリーが持つレシピ動画メディアを通じた生活者接点、食品スーパー向けのデジタルソリューションを組み合わせることで、食と健康・栄養を軸としてパーソナライズされた新たな食体験サービスの構築を進めます。

 テクノロジーによる持続可能な食インフラの創造に取り組むスタートアップ企業のTechMagic㈱と資本業務提携に関する契約を締結しました。今回の資本業務提携に基づき、両社はフードテックにおける最先端技術や知見を活用し、フードサービス業界(外食・中食産業)における人手不足解消や生産性を改善する新しいソリューションを共創していきます。

 

 また、デバイス開発やデジタルツインコンピューティング、行動変容などのIOWN関連技術を有する日本電信電話㈱と、当社の食と健康を科学するアミノサイエンス®等を組み合わせた、食習慣や身体の状況を示す種々のデータ活用による、生活者のWell-beingの向上と健康寿命の延伸を実現させる仕組み作りに向け協業すべく、日本電信電話㈱と基本合意書を締結しました。食行動と生活習慣病リスク低減との関連性をパーソナル要因から見える化するための実証を開始し、その後、その関連に基づくレコメンドによる個々人のWell-beingと健康効果を最大化するための実証を進め、本取組みで得られた知見をデジタルツインコンピューティングなどに組み込み、サービスプラットフォームとして社会実装していくことを目指していきます。

 その他、東京大学と共同して、東京大学大学院医学系研究科に「人々の健康寿命の延伸とウェルビーイングの実現への貢献」に取り組む東京大学社会連携講座「栄養疫学・行動栄養学講座」を開設しました。今後、当社は東京大学とともに、栄養疫学、行動栄養学に基づく緻密な調査とデータ解析により、生活者が持つ健康への課題・理想を理解し、行動変化へのキーファクターを解明、これを当社の健康ソリューション開発に組み入れ、科学的根拠に基づく独自な課題解決方法を提供し、社会貢献を図っていきます。

 

-ICT領域-

 当社は、世界初の低炭素プリント基板を開発・製造するエレファンテック㈱への出資を行いました。エレファンテック㈱は、プリント基板製造における水・資源・エネルギー・CO2排出を大幅に削減する革新的な技術を開発するスタートアップ企業です。同社への出資をICT領域におけるCVC投資の1号案件として、中長期的な協業機会の検討を進めていきます。また、IT関連のスタートアップ企業向けに投資を行うベンチャーキャピタルのTranslink Capital社(米国)が設立したファンドへ出資を行いました。同社は、米国やアジア諸国に拠点を持ち、スタートアップ企業とアジアの大手事業会社との業務提携支援にも力を入れており、モビリティ・AI・ロボティクス・ヘルスケア・サステナビリティ・半導体などの幅広い分野に対する、事業開発と一体化した独自の投資手法により、スタートアップ企業の発掘や成長支援で高い実績を上げています。

 

-グリーン領域-

 独自のゲノム大規模構築技術を持つ東京工業大学発スタートアップ企業である㈱Logomixと、当社のアミノ酸生産に関する技術や知見との相互作用を通じて、カーボンニュートラルの実現に貢献するサステナブルなアミノ酸製法の共同開発を開始しました。

 また、二酸化炭素を栄養源とした微生物たんぱく質「Solein®」を開発し、シンガポールでの販売許可を取得したフィンランドのフードテック企業であるSolar Foods社と、戦略的提携に関する基本合意書を締結しました。Solar Foods社は、同社初となる「Solein®」の生産工場をフィンランドに建設中であり、「Solein®」の商業生産を開始する2024年の工場完工以降、販売許可を取得しているシンガポールでの商品開発及び市場性検証を行います。

 プラントベースフードの普及を推進するスタートアップ企業である㈱TWOより、当社ロイシン高配合必須アミノ酸全9種「Amino L40」をミックスした次世代型プラントベースプロテイン「2Protein」を発売しました。サステナブルなのにおいしくてヘルシーな新しい食のカタチ、”with Earth”フードを提唱し、プラントベース with ニュートリションの価値提供を強化していきます。

 

<DX関連>

 経済産業省と東京証券取引所が共同で選定する「デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)2023」に選定されました。経済産業省と東京証券取引所は、2015年より、経営革新、収益水準・生産性の向上をもたらす積極的なIT利活用に取り組んでいる企業を「攻めのIT経営銘柄」として選定しており、2020年からは、デジタルでビジネスモデルを変革し新たな成長・競争力強化につなぐDXに取り組む企業を「DX銘柄」として選定しています。2023年度は32社が選ばれ、当社は2022年度に続き2年連続の選定となりました。

 

 

<サステナビリティ>

 フードロス削減に関して、当社は、”\日本全国ご当地対抗!フードロス削減/「捨てたもんじゃない!TM」グルメグランプリ”において、全国47都道府県の自治体と連携し、ご当地食材を無駄なく活用する47レシピを開発しました。「食べてみたい」「応援したい」などを基準にした一般投票を募集し、全体で252,634票のうち72,022票を獲得した岩手の「わかめナムルおにぎり」がグランプリ(1位)となりました。フードロス削減につながるレシピの認知を高め、家庭で実践いただくことを目指す活動となります。

 また、当社は国際的な環境非営利団体であるCDP(旧カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)より、2023年度の「気候変動Aリスト」に選定されました。これは、当社の気候変動に関する開示の包括性や先駆的な取組みなどが評価されたもので、当社のAリストへの選定は4年連続となります。CDPは、環境問題に高い関心を持つ世界の機関投資家や大手購買企業の要請に基づき、企業や自治体に対して、気候変動、水資源保護、森林保全等の環境問題への取組みの促進と情報開示を求める活動を行う非営利団体です。同団体は、世界の主要企業の環境活動に関する情報を収集・分析・評価しており、2023年には、136兆米ドル以上の資産を持つ740社以上の署名金融機関がCDPのプラットフォームを通じて環境への影響、リスク、機会に関するデータの開示を要請し、過去最多の約23,000社の企業がこれに応じました。今年度、気候変動に関する取組みと情報開示において最も優れた企業を選定する「気候変動Aリスト」に、対象となった約21,000社の企業より346社(うち日本企業109社)が選定されています。

 

 当社東海事業所では、2022年度のすべての購入電力の非化石証書を調達することで、同事業所における100%再生可能エネルギーへの切り替えが完了しました。今回の取組みにより、同事業所の年間購入電力量約25,000,000kWhがすべて再生可能エネルギーとなり、年間約10,000t相当の温室効果ガス削減効果を見込みます。また、当社九州事業所でも佐賀市の「グリーン電力証書」購入に合わせて、2023年度より当社九州事業所の購入電力量の全てを非化石化する取組みを開始しています。さらに佐賀市とは実質的な温室効果ガス排出量(スコープ1)削減にも取り組んでおり、当社九州事業所の廃水処理設備由来の液状バイオマスを、佐賀市下水浄化センターでのバイオマス発電資源として活用する事業を2023年度より開始しています。

 当社は、2030年度に温室効果ガス排出量(スコープ1・2の合計)を2018年度比で50%削減することに取り組んでいます。さらに2050年度までに温室効果ガス排出量を正味ゼロ(ネットゼロ)とするカーボンニュートラルを目標として設定しています。

 

 全社に係わる研究開発費は、8,823百万円です。