第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営方針

「Integrity 誠心誠意・真摯であれ」

 当社は、経営理念として「Integrity 誠心誠意・真摯であれ」を掲げ、卓越した独自の技術を組み合わせて新しい機能性材料及び技術ソリューションを開発・提供することでお客さまのニーズや課題に応え、その期待を超える価値を創造し、社会課題を解決することを目指しており、その結果、当社の持続的な事業成長や業績向上が実現し、企業価値の向上につながると考えています。

 

企業ビジョン

「Value Matters 今までなかったものを。世界の価値になるものを。」

 当社は、顧客のニーズや課題に応え、卓越した独自の技術を組み合わせて新しい機能性材料を開発・提供することで顧客の期待を超える価値を創造することを常に目指しており、その結果として当社の事業成長や業績向上が実現し、企業価値の向上につながると考えています。

 この企業ビジョンのもと、「高付加価値製品および技術ソリューションの提供による社会課題の解決を通じて持続的に成長する企業」を目指しています。

 

パーパス

「Empower Evolution. つなごう、テクノロジーの進化を。」

 当社は、社会の効率化を実現するデジタル・テクノロジーの進化に不可欠な技術・材料・デバイス・ソリューションを提供することで、社会課題の解決に貢献することが自社の存在意義であると定義しています。

 

(2)経営戦略

当社は、中期経営計画2023「進化への挑戦」において、様々な施策への取り組みを通じてキャッシュ・フローの

安定的な創出が可能となり、最終年度となる2024年3月期においては、4期連続となる過去最高の営業利益を更新

し、持続的成長の礎を築くことができたと考えていますが、一方で、同計画で取り組んでいた事業ポートフォリオ

拡大はまだ途上であり、地政学リスクの高まり等、ますます複雑化する事業環境において、変化を先取りする速度

で進化を続ける必要があると認識しています。

 こうした状況を踏まえ、2025年3月期から2029年3月期の5ヵ年を、会社としての進化を実現するステージと位

置づけ、中期経営計画2028「進化の実現」(以下、「本計画」)を策定いたしました。事業ポートフォリオ拡大を

さらに推し進め、変化に強い経営基盤の構築に向けて、3つの基本方針に沿った施策に取り組んでまいります。

 そのうえで、持続的成長と株主還元の両立を通じて企業価値の最大化に取り組みます。具体的には、本計画期間

のキャピタル・アロケーションにおいて、持続的成長のための成長投資と高水準の株主還元の両立を実現し、その

計画の下で、投資の性質に応じた資本コスト管理を通じて最適資本構成を実現します。また、株主還元方針におい

ては、安定的な配当と資本効率を念頭に、DOE(株主資本配当率)を導入しております。

 さらに、当社ではROEを持続的な企業価値向上に関わる指標として位置づけており、事業成長と資本効率化を通

じて、高水準のROEの維持に努めてまいります。あわせて、事業ポートフォリオの拡大による持続的な成長と、為

替感応度低減など業績のボラティリティを下げることの両面で株主資本コストの低減を図り、中長期にわたりポジ

   ティブなエクイティスプレッドの維持・拡大を目指します。

 

1.3つの基本方針

 事業ポートフォリオの拡大と環境変化に強い経営基盤づくりに向けて、以下の3つの基本方針に基づき、施策

を展開します。

①成長領域での事業拡大

今後成長が見込まれる「自動車」「フォトニクス」の領域において、これまで培った強みを活かして新たな価

値創造に挑戦し、成長領域事業の売上高構成を2023年度の約20%から2028年度には30%まで引き上げます。

②既存領域における事業の質的強化

収益ドライバーの幹をさらに太くするために、高付加価値製品の拡大を通じて既存事業の深掘と質的強化を図

ります。

③経営基盤の進化

今後も変化が激しく、先行きが見通しづらい事業環境が続く前提のもと、変化に左右されない持続的成長を支

     える、強固な経営基盤を持つ会社に進化する取り組みを進めます。

 

2.経営目標

 前中期経営計画リフレッシュ(アップデート)では、2024年3月期の経営目標として、売上高852億円、営業利益168億円、EBITDA239億円、ROIC15.0%程度、ROE15.0%程度と設定しておりましたが、2022年3月期に2年前倒しで達成しました。最終年度となる2024年3月期においても、売上高1,051億円、営業利益334億円、EBITDA400億円、ROIC22.3%、ROE27.1%となり、4年連続で最高益を更新しました。

2025年3月期を初年度とする中期経営計画では、2029年3月期の経営目標として、売上高1,500億円、事業利益500億円、EBITDAマージン43.0%程度、EPS626円、ROIC14.0%程度、ROE25.0%程度を設定しております。

 

(注意事項)

 中期経営計画に関する上記記述中の将来に関する記述は、当社が現在入手している情報及び合理的であると判断する一定の前提に基づいており、将来に関する記述の正確性・完全性に関する責任を負うものではありません。実際の業績等は様々な要因により異なる可能性があり、当社として将来計画の達成を約束する趣旨のものではありません。なお、実際の結果等にかかわらず、当社は本資料の日付以降において、本資料に記載された内容を随時更新する義務を負うものではなく、かかる方針も有していません。

 これらの記述は投資家の皆様の判断のための参考情報の公開のみを目的としており、投資に関する最終決定はご自身の責任においてご判断ください。これらの記述に全面的に依拠して投資判断を下すことによって生じうるいかなる損失に関しても、当社は責任を負うものではありません。

 

(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社は、持続的な企業価値向上に関わる指標としてROE(株主資本利益率)を位置づけており、EBITDAを当社の稼ぐ力、ROICを投資効率性を測る指標としてそれぞれを用いています。

 

(4)経営環境

 当期(2023年4月1日から2024年3月31日まで)における世界経済は、半導体供給不足を主な要因とするサプラ

イチェーン問題の解消などにより回復の兆候が見られた一方で、ロシア・ウクライナ情勢に加え中東紛争などによ

る地政学リスクの更なる高まりや、世界的な金融引き締めの継続などにより、依然不透明な状況が続いています。

 当社の製品が関わるコンシューマーIT製品市場において、スマートフォンでは欧米で出荷台数の停滞が続いてい

ますが、中国では回復基調となりました。ノートPC・タブレットでは前期から続く在庫調整が完了したものの、最

終需要の戻りは弱く厳しい状況が続きました。

 

(5)事業上及び財務上の対処すべき課題

 当社は、中期経営計画2028「進化の実現」において、基本方針のもと各種施策に取り組み持続的な成長を目指してまいります。現中期経営計画の初年度となる、2025年3月期については、特に以下の課題あるいは施策に重点的に取り組んでいきます。

 

1.成長領域での事業拡大

 コンシューマーIT製品向けの事業で培った技術とビジネスモデルを活かし、成長が見込まれる自動車及び

フォトニクス領域においても、デジタル・テクノロジーの進化を支え、価値創出を推し進めます。自動車領

域では、先進運転支援システム(ADAS)の進化に伴う車載ディスプレイの枚数の増加や面積の拡大が続いて

おり、当社は、新ラインを稼働させて生産能力を増強し、今後も拡大が見込まれる需要を着実に取り込んで

いきます。フォトニクス領域では、生成AIの浸透によるデータセンターの増加に伴い関連デバイスの需要が

拡大しており、当社は、2024年4月にフォトニクス領域での事業をリードするデクセリアルズフォトニクス

ソリューションズ株式会社を発足させ、増産投資を実行して足元の需要拡大に対応するとともに、次世代の

高速通信を見据えた光トランシーバー向け高速PD(フォトダイオード)の開発を加速してまいります。

 

2. 既存領域における事業の質的強化

 当社の強みである、技術トレンドを先回りした開発により生み出す高付加価値製品の拡大を通じて、既存

事業の収益を最大化します。スマートフォンのフレキシブルOLEDディスプレイで既にデファクトスタンダー

ドとなった粒子整列型異方性導電膜(ACF)は、今後も需要拡大が見込まれ、2025年3月期より増産投資を実

行し、中長期にわたる事業成長を目指します。

また、リチウムイオン電池を搭載するアプリケーションに二次保護回路を搭載する流れが世界的に強まっ

ており、当社は、付加価値の高い大電流製品向け表面実装型ヒューズにおいて、電動工具向けや電動バイク

向けに、顧客基盤のグローバルな拡大を通じた事業成長を図ってまいります。

 

3.経営基盤の進化

今後も変化の激しい事業環境が続く前提で、持続的に成長できる組織基盤づくりを進めてまいります。

(a)営業機能強化策としては、当社のビジネスモデルを更に強化するため、海外におけるデザイン・イン、

スペック・インの強化に取り組みます。また、戦略的パートナーシップを通じてディストリビューショ

ン機能の強化とともに、為替変動への対応力の向上、及び運転資本圧縮に取り組みます。

(b)当社にとって最も重要な経営課題(マテリアリティ)である、人と技術の強化を通じ、技術で差異化を

図ることができる会社への進化に継続的に取り組みます。フォトニクス領域を中心に研究開発活動を加

速させるとともに、ジョブ型人事制度のグループ展開による技術人財とグローバル人財の獲得力及びリ

テンション力向上を図ります。

(c)製造機能強化策としては、今後日本において生産年齢人口が減少するという前提のもと、新たに投資を

決めた鹿沼第2工場において、DX化を通じたスマートファクトリーの構築を進め、人的資本の価値を最

大化する戦略を推進いたします。さらに、各拠点におけるBCP機能の強化を図ってまいります。

 

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1)サステナビリティ共通

 

①基本的な考え方

 当社グループは、2024年に私たちの社会的な存在意義(パーパス)「Empower Evolution. つなごう、テクノロジーの進化を。」を策定しました。デジタル・テクノロジーの進化に不可欠な材料・デバイス・ソリューションを提供し、社会課題の解決を通じて事業の拡大と持続可能な社会の実現に貢献をするという、社会における当社の存在意義を定義しています。

 このパーパスを体現し、社会的価値と経済的価値を同期させながら創出し続けることこそが、デクセリアルズのサステナビリティ経営の本質であると考えています。

 

②ガバナンス

 当社グループは、代表取締役社長を最高責任者として、サステナビリティ推進部門担当役員の指揮命令のもと、持続可能な社会実現への貢献に向けた活動をグループ一丸となり推進しています。

 その具体的な活動の展開にあたっては、経営理念、企業ビジョン、パーパス、サステナビリティ関連方針などにもとづき、サステナビリティに関する各テーマの担当部門より構成される「サステナビリティワーキンググループ」を組織し推進しています。このワーキンググループは、取締役会メンバーで議論し、特定された重要課題(マテリアリティ)やESG関連目標にもとづき、テーマごとの課題を特定し、定期的(原則として年2回)にそれらの目標・活動の設定およびモニタリングのほか、外部講師を交えた勉強会を行っています。課題を組織横断的な視点から検討することで、活動の充実および社内の意識醸成を図っています。

 なお、気候関連課題を含むサステナビリティ推進に係る個別の重要な事項については、取締役会、執行役員会にて適宜報告・議論のうえ、経営戦略、事業戦略の立案・遂行にフィードバックされています。

 

[サステナビリティ推進体制]

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③戦略

 当社グループを取り巻く事業環境は、複雑で不確実、曖昧で予測が難しいにも関わらずその変化は加速度を増し、社会課題も次々と顕在化し、持続可能な社会の実現に向けた取り組みが待ったなしで求められています。

これらの社会課題を解決する一つの原動力は社会の非効率さを解消するデジタル・テクノロジーの進化であり、社会全体をビッグデータ化するIoT、ビッグデータをやり取りする高速通信、それらを分析するAIなどが期待されています。当社グループでは、これまで培ってきた強みを活かしつつ、その進化に不可欠な材料・デバイス・ソリューションを生み出すことで、テクノロジーの進化に力を与え、持続可能な社会の実現に貢献したいと考えています。

 そしてこの社会課題解決に貢献する材料・デバイス・ソリューションを具体的に生み出すためのエンジン(ビジネスモデルの柱)が、『デザイン・イン』と『スペック・イン』、すなわち「課題発見力」(顧客の気づいていない課題の発見)と「ソリューション開発・提案力」です。この私たちの強みについて、取締役会メンバーでの議論を通じ、当社グループのビジネスモデルを持続させるうえで欠かせない中長期的な重要課題(マテリアリティ)は、様々な技術や知的財産を掛け合わせて、これまでなかったような価値を生み出す「技術」と、それらの技術を使いこなす「人財」の強化であるとの結論に至りました。技術と人財の強化は、2024年に公表した中期経営計画2028「進化の実現」(5カ年計画)においても、持続的成長を支える強固な経営基盤へ進化していくための重要施策の一つとして位置づけています。

 さらに、企業価値向上に向け取り組むべきESG視点での重点課題についても議論を重ねており、各種ガイドライン、外部のESG評価機関の評価項目や評価ウエイト、お客さまやサプライチェーンで連携して解決すべき課題、社会的価値/経済的価値と課題との相関性など、多角的な視点で検討を進めています。

 パーパスを体現し、企業ビジョンを実現するデクセリアルズらしい考え方のもと、社会的価値と経済的価値を両立させる取り組みに挑戦し、さらなる持続的成長と企業価値向上を目指していきます。

 

④リスク管理

 当社グループでは、リスク管理に関する規定に基づき、リスクマネジメント委員会を設置し、グループ全体の中長期および短期的な事業運営上、財務、外部環境、ESG関連のリスクについて評価を実施し、リスクを回避または軽減するための対策を立て、その進捗を確認しています。例えば「気候変動」については、経営基盤リスクの一つとして位置づけ、取り組みを行っています。リスク管理責任者であるサステナビリティ推進部門担当の執行役員が委員長を担当し、各専門領域の部会で構成され、定期的(必要に応じて臨時)に委員会を開催し、モニタリングしています。特定した重点リスク項目は定期的に執行役員会に報告・議論され、さらに経営上または事業上の重要なリスクに関しては取締役会に報告・議論されています。

 

[リスクマネジメント体制とプロセス]

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⑤指標及び目標

 当社グループでは、戦略や施策を着実に推進し、社会的価値と経済的価値を同期させながら創出し続けるために、サステナビリティに関する活動目標を定め、モニタリングしつつ取り組んでいます。

 なお、気候変動および人的資本に関する指標及び目標の詳細につきましては、「(2)気候変動への対応」および「(3)人的資本」をご参照ください。

 

<2023年度 サステナビリティに関する活動目標(デクセリアルズ統合レポート2023 43ページ CSR目標一部抜粋)>

・事業の活動目標

マテリアリティ

テーマ(注)

達成指標

(KPI)

2023年度

目標

2023年度

実績

新しい価値の
創造・社会課題の解決

高速・大容量通信社会における情報通信機器の変化(小型化・薄型化・高速化・高信頼性化)への対応

製品の上市

(目標見直し)

自動車向け製品の普及促進

自動車向け製品の出荷数量

・反射防止フィルム  540,000㎡

・熱伝導シート     6,000㎡

低温接合タイプの異方性導電膜(ACF)の普及促進

出荷数量 1,910万m/年

鉛フリータイプの表面実装型ヒューズ 新製品の上市継続

新製品上市 1モデル以上

重大品質問題発生件数

ゼロ

×

製品品質事故発生件数

ゼロ

サプライチェーンマネジメント

主要取引先へアンケート調査および改善要請(指導)の実施

(注)2024年3月31日時点

 

(2)気候変動への対応

 

①基本的な考え方

当社グループは2021年9月、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言の趣旨に賛同を表明しました。気候変動に対する経営上のリスクと機会への適時・適切な対応および情報開示を通じて、持続可能な社会の実現に貢献していきます。また、当社独自の製品・技術により新たな価値を提供することで、将来の世代に豊かな環境を残すための取り組みを推進し、ステークホルダーの皆さまとの共生を目指していきます。

 

②戦略(リスクと機会)

 2050年の長期的な時間軸において、気候変動に伴うリスクと機会を特定するため、2つのシナリオ(1.5-2℃シナリオと4℃シナリオ)を考慮したシナリオ分析を実施しています。

 

A.シナリオ分析の対象製品

財務やCO2排出量に大きく影響する当社の主要製品を優先してシナリオ分析を実施しています。2022年度は、「反射防止フィルム」「異方性導電膜(ACF)」「光学弾性樹脂(SVR)」「表面実装型ヒューズ」に加え、子会社のDexerials Precision Components株式会社(注)が製造する「無機光学デバイス(無機波長板、無機偏光板、無機拡散板)」を追加して、シナリオ分析を行いました。

(注)Dexerials Precision Components株式会社および株式会社京都セミコンダクターは、2024年4月1日付で統合し、商号をデクセリアルズフォトニクスソリューションズ株式会社に変更しております。

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※2023年度実績は2024年11月発行予定の『デクセリアルズ統合レポート2024』にて開示予定

 

B.シナリオの設定

リスク、機会の項目に関する客観的な将来情報から当社グループへの影響を考察し、当社グループを取り巻く将来のシナリオを検討しました。

設定

シナリオ

1.5-2℃シナリオ

4℃シナリオ

概要

・脱炭素への取り組みが進展した結果、産業革命前の水準からの平均気温上昇が今世紀末までに2℃未満に抑えられている脱炭素社会、循環型社会の実現に向けた動きが加速する。

・脱炭素への取り組みが進展せず、産業革命前の水準からの平均気温上昇が今世紀末までに2℃を超える。

参照

シナリオ

・IEA World Energy Outlook Sustainable Development Scenario

・IEA World Energy Outlook Net Zero Emissions by 2050

・IPCC AR6 WG1 SSP1-1.9

・IPCC AR6 WG1 SSP1-2.6 など

・IEA World Energy Outlook Stated Policies Scenario

・IPCC AR6 WG1 SSP5-8.5 など

 

 

C.気候関連のリスク・機会と主な取り組み

シナリオ分析の対象製品に対して、気候関連のリスクと機会を特定し、事業に大きな影響を与える可能性のある重要なリスクと機会を抽出し、それらに対する取り組みについて検討を進めています。

社会環境の変化

事業への影響

リスク

機会

主な取り組み

低炭素経済への移行

(1.5-2℃)

炭素価格の上昇

・炭素税の導入に伴う製造
および輸送コストの増加

 

・再生可能エネルギーの利用や低炭素燃料への転換

・省エネの推進

・製造歩留まりの改善

温室効果ガス
排出削減に
関する規制強化

・省エネ、再生可能エネルギーへの対応コストの増加

・環境負荷を低減する製品や
サービスの需要の増大

・環境負荷の少ない製品の開発と普及促進

・政策動向の情報収集

脱炭素社会、
循環型社会関連技術の進展

・低炭素/脱炭素技術や
資源循環への対応の
遅れによる機会損失が発生

 

・リデュース、リユース、リサイクルの検討

・低炭素/脱炭素関連技術の情報収集

バイオ、
リサイクル
原材料への
シフト

・化石由来原材料の調達が
困難、またはコストが増加

・バイオ、リサイクル原材料の
実用化に伴い、バイオ、
リサイクル原材料を
利用しやすくなる

・バイオ、リサイクル原材料の導入検討

・バイオ、リサイクル関連市場と技術の情報収集

省エネ、
省資源化の促進

・省エネ、省資源対応製品の
需要の増大

 

・省エネ、省資源化に対するソリューションの提供

スマート社会の実現

・ディスプレイ、
XRコンテンツ、センサー、
通信機器、バッテリー用途の
デバイスの需要の増大

 

・ディスプレイ、
XRコンテンツ、センサー、通信機器、バッテリー等のデバイス向け製品の
開発促進および市場拡大

次世代
モビリティの
普及および
市場拡大

・車載用のディスプレイ、
センサー、通信機器、
バッテリー用デバイスの
需要の増大

 

物理的変化

(4℃)

気象災害の
甚大化

・修復コストの増加

・サプライチェーンの
寸断による操業停止の増加

 

・事業継続計画(BCP)の強化

・原材料、製品の在庫管理の検討

平均気温の上昇

・気温上昇への対応コストの
増加

 

・空調コスト低減の検討

・省エネの推進

気温上昇、災害の増加、感染症の拡大等に伴い、ライフスタイルが変化

・リモートワーク、在宅ワーク、ステイホームの広がりによるディスプレイ関連の需要の増大

 

・製品ラインナップの拡充

 

 

D.事業インパクト評価

1.5-2℃シナリオでは、温室効果ガス排出量の規制強化により、カーボンプライシング、エネルギー、原材料などのコストが増加しますが、スマート社会への移行によるデジタル化や、自動車のEV化による自動車内装のデジタル化の進展、AR/VRやメタバース市場の成長によりディスプレイの需要が高まることで、「反射防止フィルム」「異方性導電膜(ACF)」「光学弾性樹脂(SVR)」「無機光学デバイス」の売上機会が拡大します。また、家電製品や電動工具などに使用される二次電池の市場の拡大によりリチウムイオンバッテリーの需要増加が見込まれるため、二次保護用の「表面実装型ヒューズ」の売上機会も拡大し、持続的な成長が想定されます。一方、4℃シナリオでは化石燃料への依存が続き、化石燃料の需要増加に伴うエネルギーや原材料のコストの増加やスマート社会への移行の進みが遅くなることにより売上機会の喪失につながり、成長の鈍化が想定されます。今後もシナリオ分析の対象製品を拡大し、財務インパクトの評価を進めていきます。

 

[2030年度の予想財務インパクトのイメージ]

1.5-2℃シナリオ

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4℃シナリオ

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※2025年3月期より、当社グループの連結財務諸表について、国際財務報告基準(IFRS)を任意適用します。

 当社グループでは、事業利益を本業から創出される利益と位置づけ、日本基準の営業利益に相当する利益として設定しています。

 

③指標及び目標

 CO2排出量を気候関連の評価指標と定め、「2030年度までに再生エネルギーの利用で事業由来の電力消費によるCO2排出量ゼロ」の達成を目指しています。さらにシナリオ分析を踏まえ、事業活動におけるCO2排出量の削減などの長期的な気候変動の指標および目標を検討していきます。

 

CO2排出量 Scope1、Scope2

当社グループの全事業所を対象にScope1、Scope2を算定しました。過去5年間の推移を下図に示します。

2022年度は、売上高が 2021年度比で10.9%増加するなか、従来からの省エネなどの活動に加え、再生可能エネルギーの導入を推進することで、CO2排出量は2021年度比14.7%減少となりました。

 

[デクセリアルズグループのCO2排出量の推移(Scope1+Scope2)]

 

2018年度

2019年度

2020年度

2021年度

2022年度

Scope1

8.9 千t-CO2

9.1 千t-CO2

9.3 千t-CO2

9.3 千t-CO2

7.3 千t-CO2

Scope2

38.7 千t-CO2

35.1 千t-CO2

33.7 千t-CO2

31.4 千t-CO2

27.4 千t-CO2

合計(Scope1+2)

47.6 千t-CO2

44.2 千t-CO2

43.0 千t-CO2

40.7 千t-CO2

34.7 千t-CO2

(注)1.海外販売子会社を除く

2.2022年度のみ、株式会社京都セミコンダクターのCO2排出量を含む

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(3)人的資本

 

①戦略

変化が激しく先行き不透明な事業環境下において、当社グループが社会課題を先回りしてビジネスソリューションを提案し続けるためには、経営戦略に沿った事業ポートフォリオの拡大と、それを実現する『技術』と『人財』の強化が不可欠です。そのために、①経営理念・企業ビジョン・パーパスと経営・事業戦略に連動し将来の目指す姿からバックキャストした人材ポートフォリオをグローバルで整えること、②人と組織にまつわるポリシーや制度を最適化して社員一人ひとりの可能性を引き出すこと、③人的資本を最大限に活かしクリエイティビティーの高い組織文化を目指すこと、を重点的に取り組んでいます。

前述の通り、社会課題の解決に貢献する製品・ソリューションを具体的に生み出す『デザイン・イン』と『スペック・イン』を柱とするビジネスモデルは当社グループの強みであり、これを支えるリソース戦略としての人材ポートフォリオに関しては、技術とマーケティングに携わる人材をグローバルで強化していくことを2028年度までの中期経営計画期間の重要課題として進めてまいります。

また、人的資本に関わる戦略を遂行する基盤となる制度として、グローバルでスタンダードなジョブ型人事制度を2023年度から国内の管理職層に導入し、2024年度からは国内一般社員や国内・海外のすべてのグループ会社へ導入・展開を進めています。当社グループは、グローバルな視点から戦略に沿った組織や仕事を設計し、最適な人材を配置すること、またマーケットを意識して仕事の大きさと発揮される成果で報酬が決まる仕組みに転換しています。基盤の制度を変えることで、社員一人ひとりの役割はより明確になり、社員個人も当社で働く目的や意義を自ら問い直しながら成長し続けることを狙いとしています。当社グループは、組織文化や働く環境を進化させながら、持続的な成長と企業価値向上を目指してまいります。

 

人材育成方針と社内環境整備方針

<人財ポリシーとDexerials Way>

当社グループが大切にしている経営理念・企業ビジョン、そして私たちの社会的な存在意義であるパーパスを体現し、社会課題の解決を通じた持続的な成長を目指すために、グローバルで共通の人事制度体系として人的資本を最大活用する「人財ポリシー」と、社員に対する期待行動「Dexerials Way」を設定しています。

人財ポリシーの基本原則においては「1.人材は最大の経営資源であり価値創造の源泉。会社と個人は対等なパートナーであり人材の成長が企業価値を高める」、「2.グローバル基準で優秀かつ意欲的な人材に選ばれる会社になる。社員一人ひとりが価値をつくる人材となる」を定め、人材の可能性を最大限に引き出し、人的資本を最大活用するために積極的に職場環境づくりに取り組み、社員一人ひとりの実践と成長を支援してまいります。

 

[人財ポリシー]                 [Dexerials Way]

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<多様な人材の確保とダイバーシティ推進の考え方>

当社グループが未来に向けて持続的な価値を創造し続けていくためには、多様な人材が持つ様々な知識や経験、文化を融合することが大切であると考えています。前述の人財ポリシーを基本的な考え方として、経営・事業のグローバル化を加速させて持続的な成長を続けるためには、グローバル視点で多様な人材の確保が必要不可欠です。事業戦略に基づく人材ポートフォリオを整えるため、技術とマーケティングをグローバルで強化するとともに、新たな事業の柱となるフォトニクス領域における人材の確保・強化を進めてまいります。また、当社グループの機能・組織に応じた男性/女性・外国人・障がい者等の多様な人材の採用と登用をグローバルで積極的に推進してまいります。多様な人材から選ばれる会社となることを目指し、社員一人ひとりが「個」を大切にしつつ、それぞれの価値観を尊重し、活き活きと能力を最大限に発揮できる環境づくりに取り組んでまいります。

 

<社員の育成>

当社グループは、企業ビジョンである「Value Matters 今までなかったものを。世界の価値になるものを。」の実現に向けて、社員一人ひとりの成長が最も大切であると考えています。社員に対して「自ら学び、自ら考え、自ら行動し、成長し続ける」という自律的な行動を求め、会社がそれを実現するための支援とキャリア形成の環境を整えることで、社員の成長が会社の成長につながるという考え方を明確にしています。社員一人ひとりの「成長したい」という欲求と行動が企業の成長につながり、それが社員のエンゲージメント向上へとつながる人的資本への投資を積極的に進めてまいります。

多様な研修プログラムを通じて社員が自身の能力を最大限に発揮できる環境をつくり、未来を担う人材の育成に取り組んでいます。教育研修体系として、専門性を発揮する上で必要なビジネススキルの獲得や、社員の自律的なキャリア形成につながる自己啓発支援のプログラムを整備しています。また、経営基盤強化に向けた人材育成として、選抜メンバーに対し次世代経営人財育成プログラム「D-BLP(注)」を継続的に実施し、リーダー人材のパイプラインの強化に取り組んでいます。今後も環境の変化に応じて事業戦略の達成に向けた経営人材を育成するための人材開発を充実させてまいります。

   (注)デクセリアルズ・ビジネスリーダーシップ・プログラム

 

[教育研修体系]

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<女性活躍の推進>

 当社グループはダイバーシティ推進の取り組みの一環として、女性活躍の推進に取り組んでいます。国内においては、2021年度からの3年間を期間とする行動計画を定め、女性の職業生活に関する機会提供の拡充をテーマとして、新規採用における女性の比率、管理職における女性の比率を向上させるという2点を目標に掲げて取り組んでまいりました。その結果、2021年度末においては女性管理職の比率は3.7%でありましたが、当年度末には7.2%まで伸長しており18名の女性社員が管理職として活躍しています。これからも女性社員を対象としたキャリア研修やリーダーシップを発揮する機会の創出を通じて、多様な人材が活躍する環境を継続的につくってまいります。

 

<ワークライフバランスへの取り組み>

 当社グループは、社員一人ひとりが最大限のパフォーマンスを発揮できる環境づくりの取り組みとして、ワークライフバランスを意識した制度を導入しています。業務のOnとOffの区分けをしっかりと行うために労働時間の適正化はもちろん、社員のリフレッシュを目的として計画的に年次有給休暇を取得する制度を設けています。また年度内に取得できなかった年次有給休暇を最大20日積み立てられる制度を設けており、傷病、介護、ボランティア活動、子どもの看護、不妊治療等の場合に積み立てた休暇を取得できるようにしています。育児・介護に関する両立支援として、個々の社員のライフスタイルにあった働き方ができるよう、法定を上回る支援制度の整備やリモートワーク推進、時間単位で取得可能な年次有給休暇など、柔軟な働き方を整備し、家族を大切にしながら働く社員を支援する仕組みを拡充しています。当社グループはこれからも多様な人材が活躍する環境を目指し、リモートワーク制度をはじめとした環境整備により、場所や時間に制約されない柔軟な働き方を実現してまいります。

 

<社員エンゲージメント>

当社グループでは、人・組織の状態を定量的に把握し組織力強化につなげることを目的として、2022年に国内・海外グループ会社すべての社員を対象にエンゲージメントサーベイを実施しました。エンゲージメントは社員と会社の関係性を定量的に示す指標であり、各職場においてエンゲージメントの状態を把握するとともに、組織の強みや改善していくべき点を認識し、より働き甲斐のある職場をつくることに活用しています。2023年には、全社員にサーベイ結果のフィードバックを行い全社の課題を共有し、また各部門・職場において討議を重ねることで管理職も一般社員も全員が職場改善に参画する活動を実施しました。これからも、それぞれの国や各職場において社員一人ひとりが経営理念や企業ビジョン、パーパスに理解・共感しエンゲージメントを高めていくことで、よりクリエイティブで強い組織やチームへと進化させ、社会課題に対してより多くの価値を提供し、会社も個人も成長する組織と文化をつくってまいります。

 

<健康経営の取り組み>

 当社グループは、社員が笑顔で前向きに挑戦する活気あふれる職場づくりに取り組み、社員一人ひとりの幸福と会社の成長、その先にある幸福な未来を実現するため、健康経営を推進しています。国内においては2021年より社員が中心となり組織横断による健康経営ワーキンググループの活動をスタートし、当社グループのありたい姿を定義・提案し、そのためにおこなうべき具体的施策(ロードマップ)を策定・推進しています。新たな活動として社員一人ひとりの健康を可視化するシステムを導入し、社員自身が健康の取り組み状況を認識することで「セルフケア」の環境づくりに取り組んでいます。個人やグループで参加できる健康増進活動を実施し、社員一人ひとりが健康を実感でき、職場でのエンゲージメント向上につながる活動を展開しています。

 

②指標及び目標

 当社グループでは、戦略や施策を着実に推進し、人的資本に関する活動目標を定め、モニタリングしつつ取り組んでいます。

 

<2023年度 サステナビリティに関する活動目標(デクセリアルズ統合レポート2023 43ページ CSR目標一部抜粋)

 ・人的資本に関する活動目標

マテリアリティ

テーマ(注)

達成指標

(KPI)

2023年度

目標

2023年度

実績

多様な人財とエンゲージメントの醸成

多様な人財の獲得と活用

次のリーダー・管理職候補の人財プールの運用を開始する(2023年4月~)

リモートワークの活用

リモートワークを前提とした採用の拡大

健康経営の取り組み

就業時間内禁煙の実施

(注)2024年3月31日時点

 

 なお、持続的な成長に向けて「人材ポートフォリオ」「社員のエンゲージメント」「多様な人財の活躍」など、グローバルでの人的資本の強化を推進してまいります。

 

[提出会社における女性管理職の比率 2019年度~2023年度]

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※国内・海外子会社を除く

 

 

3【事業等のリスク】

 本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している事項には、以下のようなものがあります。ただし、以下の事項は当社グループのリスクのうち主要なものを記載しており、当社グループに係る全てのリスクを網羅的に記載したものではなく、記載された事項以外にも予測し難いリスクが存在する可能性があるものと考えております。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経済状況の動向

 当社グループは各国に進出してグローバルな事業展開を積極的に推進しております。このため、世界の経済状況の動向や金融不安が当社グループの製品の需要に大きく影響を与えます。また、当社グループの製品を使用するスマートフォンやタブレットPC等の完成品の市場は、経済環境の変化及び景気変動の影響を受けます。中国その他の新興国を含む重要な経済圏における経済の減速、サプライチェーンの混乱、原油など資源価格の高騰やその他の物価の上昇による経済の混乱、欧州や米国等における金融又は銀行部門における継続的な不安定性、日本及び先進国における政府による景気刺激策や金融政策の失敗、ウクライナや台湾などの地域を含む世界各国の不安定な政治情勢、感染症の世界的な拡大による影響などにより、広範囲かつ長期間に亘る世界経済の低迷が生じる可能性があります。当社グループは急激な需要変化に的確に対応できる生産及び販売管理体制への取り組みを進めておりますが、当社グループの製品に対する需要が減少した場合に、速やかに固定費用を切り下げるなどの調整を行うことが難しく、当社グループの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローに影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)競争の激化

 当社グループが製品を展開している市場では厳しい競争が続いております。当社グループの競合他社は、研究開発、生産能力、資金や人的資源等において、当社グループよりも強い競争力を有する場合があります。また、当社グループはダイバーシティの推進、働き方改革に取り組むことでより働きやすい労働環境の整備を進め、新卒採用や経験者の通年採用など優秀な人材の獲得を積極的に行っておりますが、優秀な研究者やエンジニア等の人材を確保できない場合、重要な人材が当社グループの競合他社に転職する場合、またデジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組みの遅れなどにより事業の効率性向上が十分に進まない場合等には、競合他社対比で当社グループの競争力が相対的に低下する可能性があります。さらにディスプレイメーカー・セットメーカーを始めとする当社グループの製品の顧客は、その市場において激しい競争に直面していることから、品質やコストの改善を図るために、又は当該顧客における再編や戦略の変更等により、仕入先を当社グループから競合他社に切り替える可能性や当社グループへの注文を減少させる可能性があります。当社グループは差異化技術を用いた高付加価値製品の開発など事業の強化を進めておりますが、当社グループが競合他社との競争において優位に立てない場合には、当社グループの市場におけるシェアが減少し、当社グループの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローに影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)事業ポートフォリオの変革の遅れ

 当社グループは、高機能材料メーカーとして光学材料及び電子材料の事業領域で製品を展開しており、売上高に含まれるディスプレイ関連製品は高い競争力を有する反面、ディスプレイメーカーの事業戦略や販売戦略の変更等が当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。加えて、規模の大きいスマートフォン・タブレットPCのセットメーカーの数は限定されており、これらのセットメーカーによる事業戦略や販売戦略の変更、完成品のモデルチェンジの時期及び販売量は、当社グループの顧客であるディスプレイメーカー等から当社グループの製品に対する需要に影響を与えます。当社グループは、事業ポートフォリオ変革の一環として、ディスプレイ以外の分野・製品においても、当社グループ製品の採用拡大に努めておりますが、ディスプレイ以外の分野・製品における新規の需要を創出する取り組みが成功する保証はありません。事業ポートフォリオ転換が遅れ、ディスプレイ製品への依存度の低下が進まない状態において、ディスプレイ業界全体の需要低下や当社グループの製品を使用しているディスプレイ製品に対する需要の減少等の事態が生じた場合は、当社グループの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローに影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)業績の季節的変動等

 当社グループは事業の特性上、スマートフォン・タブレットPC、ノートPC等の最終製品で使用される中小型ディスプレイや電子部品関連業界の動向の影響を受けやすくなっています。よって、当社グループの業績は、短期的には上記の最終製品の新モデル投入時期及びその販売数量、並びにそれらの関連製品に係る主要顧客からの受注の影響を受けやすくなっています。また、クリスマス等の年末休暇や中国の春節等の商戦期に向けて当該最終製品の生産が本格化する第2四半期及び第3四半期に業績が偏重する傾向があります。当社グループは季節的変動が少ない自動車及びフォトニクスを主とした成長領域の売上の拡大に取り組んでいますが、電子部品関連業界の動向の影響を受けやすい製品が当社グループの売上高に占める割合は依然として高く、上記のような最終製品で使用される中小型ディスプレイや電子部品関連業界の動向、及び最終製品の動向が当社グループの製品に対する需要に与える影響により、当社グループの売上は四半期毎又は連結会計年度毎に変動する可能性があります。これらの状況が生じた場合、当社グループの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローに影響を及ぼす可能性があります。

 

(5)製品の販売価格の下落

 当社グループは、常に付加価値の創出及び製品の高品質化に努め、価格水準の維持及び向上を目指し、工程改善、材料歩留りの改善等によるコスト低減に取り組み、製品の販売価格の下落リスクに備えておりますが、顧客からの恒常的な価格圧力、光学材料及び電子材料市場での生産過剰、需要の減少、低価格帯の製品を提供するメーカーによる高性能製品市場への進出、顧客との交渉の結果等により、当社グループでのコスト低減幅以上に当社グループ製品の価格が下落した場合又は利益率の低い製品の販売比率が拡大する場合には、当社グループが十分な利益を確保することが困難となる可能性があります。これらの状況が生じた場合、当社グループの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローに影響を及ぼす可能性があります。

 

(6)海外での事業展開

 当社グループは、日本、中国及び米国に製造拠点を有し、世界各国に進出してグローバルな事業展開を積極的に推進しており、当社グループの売上げの相当程度の部分は、海外顧客向けの製品の販売によるものとなっております。海外事業の展開にあたっては、不安定な政治情勢、不確実な経済環境、当社グループの製品の製造、輸出入や使用等に関する環境や安全等に係る規制を含む法令、労務管理上の問題及び人件費の上昇、高額な関税及び厳格な貿易規制、予期しない法令・税制・政策の新設又は変更や解釈の相違、電力、輸送、通信等の基幹となるサービスの停止・遅延等を起こしうる不安定なインフラ、為替レートの変動、法令、規制、商慣習及び実務上の取扱いの違い、テロ、戦争、経済制裁、貿易摩擦、感染症の世界的な拡大、ボイコットの発生等のリスクが内在しております。当社グループでは政治的・経済的な社会情勢の変化を適時に当社グループ内で共有し、適宜対応に努めておりますが、全ての変化を把握することは困難であり、これらのリスクが顕在化した場合、売上げの減少、費用の増加、業務の混乱等を生じさせ、当社グループの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローに影響を及ぼす可能性があります。

 

(7)買収(M&A)、事業提携及びその他の戦略的投資

 当社グループは、買収(M&A)、事業提携、パートナー企業との協業及びその他の戦略的投資を成長のための経営戦略の1つとして位置付けており、新規市場への参入や新規領域事業の展開等のために買収、事業提携、パートナー企業との協業及びその他の戦略的投資を行い、今後も実施する可能性があります。また、当社グループは2029年3月期を最終年度とする中期経営計画において、自動車及びフォトニクスを中心とした成長領域における事業の拡大を基本方針の1つとして掲げておりますが、成長領域事業の展開は、市場環境の変化等の様々な要素に左右されるため、新規領域事業の展開が計画どおりに進まない可能性があります。買収、事業提携、パートナー企業との協業及びその他の戦略的投資を行う際には、対象企業や新規領域事業等の投資先について詳細な調査を行い、十分にリスクを検討することとしておりますが、事前に把握できなかった問題が判明する可能性や、投資先の企業の業績変動により投資先企業の価値評価が大幅に下落し損失を計上または追加的な支出が発生する可能性があります。また当社グループは、買収、事業提携、パートナー企業との協業及びその他の戦略的投資並びに各事業に係る固定資産の取得及び保有に際しては投資経済性評価を実施し、投資回収とリスクの検討を行っておりますが、市場動向や価格下落などの理由によって事業収益性が低下し、対象となる資産が十分なキャッシュ・フローを創出できないと判断される場合は、減損の認識が必要となる可能性があります。これらの状況が生じた場合、当社グループの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローに影響を及ぼす可能性があります。

 

(8)技術開発等

 当社グループが事業展開する分野は、技術革新とコスト競争力について厳しい要求があり、さらに、競合他社の新技術や新製品開発、当社グループ製品を使用している完成品における新技術や新製品開発、業界における標準や顧客のニーズの変化により、当社グループの製品が予期せぬ陳腐化を起こす可能性があります。また、当社グループの売上げ及び営業利益の相当部分は特定の主力製品の販売によるものとなっており、これらの主力製品に代替する技術が競合他社により開発された場合や競合他社がこれらの主力製品より優れた製品を導入した場合には、当社グループの製品への需要が減少する可能性があります。当社グループは中期の開発戦略のもとに新技術や新製品の開発、新用途・新市場の開拓や生産プロセス改革に必要な研究開発投資や設備投資をしておりますが、市場の変化が激しい業界において変化を予測することは容易ではなく、開発した製品について想定した売上げ等の効果が得られない可能性があります。また、当社グループは顧客が要求する仕様に応じて当社グループ製品を顧客毎にカスタマイズしておりますが、当社グループが常にこの様な顧客の要請に応えられる保証はなく、さらに、顧客が当社グループに求める価格、時期、数量で当社グループ製品を供給できる保証はなく、また、顧客が当社グループに求める高度なアフターサービスを提供できない場合もあります。これらの状況が生じた場合、当社グループの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローに影響を及ぼす可能性があります。

 

(9)原材料の調達

 当社グループは、原材料が適時、適量に調達できることを前提とした生産体制を構築しておりますが、原材料の一部の供給を特定の購入先に依存しております。当社グループは、購入先を複数にするなど主要原材料が確保できなくなるリスクを低減するよう努めておりますが、原材料によっては特定の購入先に依存せざるを得ないものがあり、原材料の購入先が、原材料の供給遅延、供給不足その他の理由により当社グループとの購入契約上の義務を果たせなくなり、また、購入先による原材料の値上げや主要な購入契約が終了した場合には、当社グループは原材料を市場又は他の購入先から調達しなければならず、有利な価格で原材料を調達できる保証はなく、また、これにより当社製品の出荷を予定通り行うことができなくなる可能性があります。また、原材料の価格や燃料価格が上昇する可能性があり、上昇したコストを製品価格に転嫁できない場合や、購入先の自然災害での被災、事故、倒産等により供給が中断し、必要な主要原材料を確保できなくなる場合、および法規制の導入や改正により原材料の使用が制限される場合には、当社グループの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローに影響を及ぼす可能性があります。

 

(10)知的財産

 当社グループは国内外で多くの知的財産権を保有し、維持・管理しております。しかし、当社グループの知的財産権が無効とされる可能性、当社グループの知的財産が特定の国・地域では十分な保護が得られない可能性や模倣される可能性等があり、当社グループの保有する知的財産権の保護が損なわれる可能性があります。また、当社グループは、主要な競合他社を含む第三者から使用許諾を受けて第三者の知的財産権を使用する場合がありますが、今後、必要な使用許諾等を第三者から受けられなくなる可能性や、当社グループにとって不利な条件での使用許諾しか受けられなくなる可能性、競合他社が当社グループより有利な条件で第三者から使用許諾等を受ける可能性があります。さらに、第三者の知的財産権を侵害したことにより、当社グループが当該第三者に対して損害賠償責任を負う可能性や、当社グループの一定の製品の開発・製造をする権利を失う可能性等もあります。加えて、当社が他社との業務提携等を行ったことにより、他社が第三者との間で締結しているライセンス契約上の制約が、当社グループに課せられる可能性もあります。当社グループは他社の知的財産権の調査を行い、これらの問題が発生することの無いように努めておりますが、全ての問題発生の可能性を排除できる保証はなく、これらの状況が生じた場合、当社グループの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローに影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(11)製品の欠陥

 当社グループの事業は、部材の企業間取引が基本となっておりますが、当社グループの製品に欠陥があった場合には、修理や回収等に相当程度の費用が生じ、また、顧客の完成品に生じた欠陥について補償を求められる可能性があります。また、当社グループの製品に欠陥があった場合には、当社グループの顧客との関係や当社グループの信用及び評判に悪影響を与える可能性があり、当社グループの製品の売上げやシェアが低下する可能性があります。さらに、当社グループの顧客又は完成品の消費者に対して製造物賠償責任保険の適用を超える賠償などが発生した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループの製品の欠陥に関して当社グループに訴訟が提起された場合、製造物賠償責任保険の保険料が増額される可能性や製造物賠償責任保険を継続できない可能性があります。特に、車載や医療等の新規分野については、大規模なリコールが発生する可能性や、製造物責任賠償請求がなされることにより当社グループに大きなレピュテーション上のリスクが発生する可能性があります。当社グループは国際的な品質管理システムに従って製品を製造し、品質管理を行っておりますが、これらの状況が生じた場合には、当社グループの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローに影響を及ぼす可能性があります。

 

(12)環境問題

 当社グループは、廃棄物削減、地球温暖化や大気汚染防止、有害物質の処理等に関して様々な環境規制の適用を受けております。事故や自然災害により不測の環境汚染が生じる場合、当社グループが過去又は現在所有する工場用地等において汚染物質が発見された場合や新たな環境規制が施行された場合には多額の費用が発生し、当社グループの活動が制限され、当社グループが環境規制を遵守できない可能性があります。当社グループは、環境保全活動を重要な方針の一つとして掲げ、自主的な削減計画を作成し、実行しておりますが、かかる自主的な削減計画等が当社グループの想定した通りに実行できる保証はなく、これらの状況が生じた場合には、当社グループの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローに影響を及ぼす可能性があります。

 

(13)気候変動等による影響

 当社グループは、気候変動問題は持続可能な社会実現のために人類が解決すべき重要な課題であり、企業にとって気候変動の対応は事業継続の前提条件であると考えています。

 当社グループは、気候変動に関連するリスク、機会及びこれらの影響の評価に取り組む姿勢を明確にするため、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)による提言への賛同を表明し再生可能エネルギーの導入などにより2030年度に事業由来の電力消費によるCO2排出量ゼロ達成を目標に掲げるとともに、顧客の製造工程の省エネルギー化や最終製品のエネルギー効率向上に資する製品の提供を通じて、サプライチェーン全体の環境負荷低減に貢献するべく気候変動への取り組みを進めており、統合報告書や当社ウェブサイトを通じて、推奨される情報を継続的に開示しています。

 当社グループは気候変動への対応をリスクとしてだけでなく機会としても捉え、事業活動を通じて気候変動に関する社会課題の解決を目指しておりますが、これらのリスクが顕在化した場合、費用の増加等を生じさせ、当社グループの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローに影響を及ぼす可能性があります。

 

(14)コンプライアンスと法規制

 当社グループの事業については各国の競争、汚職防止、コーポレート・ガバナンス、労働、消費者保護、電力、租税等に係る各種法令による規制を受けており、当社グループがかかる法規制に違反する場合、また、当社グループが保有する許認可等に付された条件や制約を遵守できない場合には、規制当局からの制裁や罰金、罰則の適用、追加費用の負担や許認可等の剥奪等の可能性があります。また、法規制の強化や大幅な変更がなされた場合にも、当社グループの活動が制限され、当該法規制の遵守のために新たなコストが発生する可能性があります。当社グループは、内部統制システムを構築した上で各国の法規制の遵守に努めておりますが、かかる法規制の遵守の努力が有効である保証はなく、これらの状況が生じた場合には、当社グループの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローに影響を及ぼす可能性があります。

 

(15)訴訟

 当社グループは世界各地において事業活動を展開しており、取引先等との間の訴訟を含む様々な訴訟等が提起される可能性があります。訴訟対応コストがかさむ場合、当社グループに不利益な判決、決定又は判断等がなされる場合、当社グループの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローに影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(16)情報セキュリティ

 当社グループは、情報システムを構築し、研究開発、製造、販売及び営業活動など業務遂行に使用しており、当社グループ及び顧客の技術、各活動に関する機密情報を当社グループの情報システム内や様々な形態で保持及び管理しております。第三者による当社グループの情報システムへの予期せぬサイバー攻撃により、業務活動への影響が生じた場合や当社グループが保持又は管理する情報が流出し、第三者がこれを不正に取得又は使用するような事態が生じ、当社グループに対して損害賠償を求める訴訟が提起される場合など当社グループの評判及び信用に悪影響を与える可能性があります。当社グループは、情報セキュリティの確保においては、外部ITベンダーと連携しサイバー攻撃に強いシステムの導入を行うとともに、全社体制の下でこれらの機密情報を保護するための管理を行っておりますが、かかる管理が将来に亘って常に有効である保証はなく、これらの状況が生じた場合には、当社グループの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローに影響を及ぼす可能性があります。

 

(17)事故・災害等による影響

 当社グループは操業安全と事業継続性の確保を掲げ、災害や事故の未然防止の対策、及びBCPを策定しておりますが、当社グループが事業展開を行っている又は当社グループの取引先が所在する各国における地震や津波、洪水といった大規模な自然災害や感染症の世界的な大流行があった場合、当社グループのみに限定されず、電力・ガスなどのインフラ被害や、原材料の調達・物流・顧客など、広範囲にわたるサプライチェーンへの被害により、事業の中断につながる可能性があります。特に日本では地震が発生する確率が高く、大規模地震が発生した場合、直接的な被害を受ける可能性や、製造工程において火災や化学物質により人的被害が発生する可能性もあり、特に国内事業拠点の集約が進んだ場合にはその影響が相対的に大きくなる可能性があります。さらに、このような自然災害のみならず暴動・労働争議によっても、当社グループの事業が中断する可能性があります。これらの状況が生じた場合には、当社グループの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローに影響を及ぼす可能性があります。

 

(18)為替相場の変動

 当社グループは、日本円以外の外貨建てによる取引も行っており、製品・サービス等のコストや価格、及び外貨建ての資産・負債は為替相場の変動による影響を受けます。当社グループでは、この影響を最小限に抑えるべく、適宜為替予約等によるヘッジを行っておりますが、かかるヘッジにより為替リスクを完全に回避できるわけではなく、当社グループの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローに影響を及ぼす可能性があります。なお、海外関係会社の現地通貨建の資産・負債等は、連結財務諸表作成の際には円換算されるため、当社グループの財政状態は為替相場の変動による影響を受けます。

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度(2023年4月1日から2024年3月31日まで)における世界経済は、半導体供給不足を主な要因とするサプライチェーン問題の解消などにより回復の兆候が見られた一方で、ロシア・ウクライナ情勢に加え中東紛争などによる地政学リスクの更なる高まりや、世界的な金融引き締めの継続などにより、依然不透明な状況が続いています。

 当社の製品が関わるコンシューマーIT製品市場において、スマートフォンでは欧米で出荷台数の停滞が続いていますが、中国では回復基調となりました。ノートPC・タブレットでは前連結会計年度から続く在庫調整が完了したものの、最終需要の戻りは弱く厳しい状況が続きました。

 このような経営環境のなか、中期経営計画に基づき事業環境の変化の影響を受けにくい事業ポートフォリオへの転換に取り組みました。新規領域においては、自動車向け製品の販売を拡大するなど、コンシューマーIT製品以外の事業拡大を進め、フォトニクス領域では次世代高速通信を実現する光トランシーバ向けの新規顧客を開拓し、製品の出荷を開始しました。また、既存領域においても、テクノロジーの進化を先回りした製品の開発・提案に取り組み、精密接合用樹脂や粒子整列型異方性導電膜(ACF)などの高付加価値製品の販売が拡大しました。

 

 以上の結果、当連結会計年度の売上高は105,198百万円(前連結会計年度比0.9%減)となり、営業利益は33,421百万円(前連結会計年度比3.5%増)となりました。

 経常利益は、為替差損の増加などにより、30,028百万円(前連結会計年度比0.5%減)となりました。

 税金等調整前当期純利益は、特別損失の固定資産除却損の減少などにより、29,935百万円(前連結会計年度比1.0%増)となり、親会社株主に帰属する当期純利益は、21,382百万円(前連結会計年度比3.4%増)となりました。

 

 各セグメントの業績、ならびに製品カテゴリー別の売上状況は以下のとおりであります。

 

(光学材料部品事業)

          (単位:百万円)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減率

売上高

55,384

51,453

△7.1%

営業利益

17,969

16,040

△10.7%

             (注)売上高にはセグメント間取引が含まれています。

 

 ・ 売上高は51,453百万円(前連結会計年度比7.1%減)、営業利益は16,040百万円(前連結会計年度比10.7%減)となりました。

 ・ 光学フィルムでは、反射防止フィルムにおいて車載ディスプレイ向け製品が増加したものの、ノートPC用ディスプレイ向け製品が減少したことに加え、蛍光体フィルムの減少により、減収減益となりました。

 ・ 光学樹脂材料では、精密接合用樹脂における大手スマートフォン向け製品の数量増加などにより増収増益となりました。

 

 

(電子材料部品事業)

          (単位:百万円)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減率

売上高

51,495

54,387

5.6%

営業利益

16,106

19,167

19.0%

             (注)売上高にはセグメント間取引が含まれています。

 

 ・ 売上高は54,387百万円(前連結会計年度比5.6%増)、営業利益は19,167百万円(前連結会計年度比19.0%増)となりました。

 ・ 接合関連材料では、ノートPC向け汎用品等の数量が前期並みとなり、収益も前期並みとなりました。

 ・ 異方性導電膜では、主にスマートフォンのハイエンドモデルにおいてディスプレイ向け粒子整列型ACFが堅調に推移したほか、カメラ等の各種センサーモジュール向けの形状加工ACFの販売拡大により、増収増益となりました。

 ・ 表面実装型ヒューズでは、電動工具向けにて顧客の在庫調整に伴う数量減により減収減益となりました。

 ・ マイクロデバイスでは、プロジェクター需要の回復が弱く数量減により減収減益となりました。

 ・ 光半導体では、中国における工場投資および移動体通信事業者の投資の減速により減収減益となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ8,123百万円増加し、当連結会計年度末には37,410百万円となりました。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの主な要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果得られた資金は27,457百万円(前連結会計年度比6,118百万円増)となりました。これは主に法人税等の支払額8,826百万円により資金が減少した一方で、税金等調整前当期純利益29,935百万円、減価償却費4,510百万円により資金が増加したことによるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果使用した資金は10,866百万円(前連結会計年度比1,419百万円増)となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出10,086百万円により資金が減少したことによるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果使用した資金は10,343百万円(前連結会計年度比2,192百万円減)となりました。これは主に長期借入れによる収入7,000百万円により資金が増加した一方で、長期借入金の返済による支出6,976百万円、自己株式の取得による支出6,000百万円及び配当金の支払額4,254百万円により資金が減少したことによるものであります。

 

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

前年同期比(%)

金額(百万円)

光学材料部品

49,992

86.2

電子材料部品

55,662

110.4

合計

105,654

97.4

(注)金額は売価換算値によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。

 

b.受注実績

当社グループは主として見込み生産を行っているため、該当事項はありません。

 

c.販売実績

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

前年同期比(%)

金額(百万円)

光学材料部品

50,975

92.7

電子材料部品

54,222

105.9

合計

105,198

99.1

(注)1.金額はセグメント間の内部振替前の数値によっております。

2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自 2022年4月1日

  至 2023年3月31日)

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

  至 2024年3月31日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

日東電工株式会社

12,245

11.5

10,147

9.6

 

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

   ①財政状態及び経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

1)財政状態

(資産の部)

 当連結会計年度末の資産合計は138,016百万円となり、前連結会計年度末に比べ11,636百万円の増加となりました。
 流動資産は69,063百万円となり、前連結会計年度末に比べ9,825百万円の増加となりました。その主な要因は、原材料及び貯蔵品が696百万円、その他(流動資産)が1,539百万円それぞれ減少した一方で、現金及び預金が8,123百万円、受取手形及び売掛金が4,309百万円それぞれ増加したことであります。
 固定資産は68,952百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,811百万円の増加となりました。その主な要因は、のれんが2,283百万円減少した一方で、土地が1,460百万円、退職給付に係る資産が1,045百万円、建設仮勘定が779百万円それぞれ増加したことであります。


(負債の部)
 当連結会計年度末の負債合計は53,062百万円となり、前連結会計年度末に比べ457百万円の増加となりました。
 流動負債は30,996百万円となり、前連結会計年度末に比べ4,077百万円の減少となりました。その主な要因は、支払手形及び買掛金が2,686百万円、短期借入金が2,000百万円それぞれ増加した一方で、1年内返済予定の長期借入金が4,101百万円、未払金が3,430百万円それぞれ減少したことであります。
 固定負債は22,065百万円となり、前連結会計年度末に比べ4,535百万円の増加となりました。その主な要因は、長期借入金が4,124百万円、その他(固定負債)が360百万円それぞれ増加したことであります。


(純資産の部)
 当連結会計年度末の純資産合計は84,953百万円となり、前連結会計年度末に比べ11,178百万円の増加となりました。その主な要因は、自己株式が10,823百万円、資本剰余金が1,273百万円それぞれ減少した一方で、為替換算調整勘定が1,548百万円増加したことであります。

 

2)経営成績

 当連結会計年度の売上高は105,198百万円(前連結会計年度比0.9%減)、営業利益は33,421百万円(前連結会計年度比3.5%増)、経常利益は30,028百万円(前連結会計年度比0.5%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は21,382百万円(前連結会計年度比3.4%増)となりました。

 

(売上高)

当連結会計年度における売上高は、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」をご参照下さい。

 

(営業利益)

売上原価は47,930百万円と、前連結会計年度と比べ4,066百万円減少し、売上原価率は45.6%と、前連結会計年度と比べ3.4%改善しました。

販売費及び一般管理費は前連結会計年度に比べ1,964百万円増加し、23,846百万円となりました。その主な要因は、業務委託料、開発研究費及び退職給付費用が増加したことであります。

以上により、当連結会計年度の営業利益は33,421百万円と前連結会計年度に比べ3.5%の増益となりました。

 

(経常利益)

営業外収益につきましては、521百万円と前連結会計年度と比べ162百万円の増加となりました。その主な要因は、受取利息が増加したことであります。

営業外費用につきましては、3,914百万円と前連結会計年度と比べ1,441百万円の増加となりました。その主な要因は、為替差損が増加したことであります。

以上により、当連結会計年度の経常利益は30,028百万円と前連結会計年度に比べ0.5%の減益となりました。

 

(親会社株主に帰属する当期純利益)

特別利益につきましては、関係会社株式売却益が112百万円となりました。

特別損失につきましては、固定資産除却損が215百万円となりました。

以上により、税金等調整前当期純利益は29,935百万円と前連結会計年度に比べ1.0%の増益となりました。

法人税等については、法人税、住民税及び事業税が8,635百万円となりました。

非支配株主に帰属する当期純損失については47百万円となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は法人税等及び非支配株主に帰属する当期純損失を差し引き、21,382百万円と前連結会計年度に比べ3.4%の増益となりました。

 

3)経営成績に重要な影響を与える要因について

 当連結会計年度においては、コンシューマーIT製品市場において、スマートフォンでは欧米で出荷台数の停滞が続いていますが、中国では回復基調となりました。ノートPC・タブレットでは前期から続く在庫調整が完了したものの、最終需要の戻りは弱く厳しい状況が続きました。

 世界経済においては、ロシア・ウクライナ情勢に加え中東紛争などによる地政学リスクの更なる高まりや、世界的な金融引き締めの継続などにより、依然不透明な状況が続くものと考えております。

 このような状況の下、当社は、ハイエンドモデルのスマートフォンにおいて、ディスプレイ向けに粒子整列型

ACF、センサーモジュール向けに精密接合用樹脂及び形状加工ACFの販売拡大に注力します。次期につきましては、これら製品が、タブレット及びノートPCのハイエンドモデル向け製品の減収をカバーし増収となる見込みです。利益につきましては、高付加価値製品の伸長により固定費の増加を吸収し、為替影響及び会計基準変更(注)の差異を除くと、増益となる見込みです。次期の前提為替レートは、当期実績144.6円/米ドルに対し、140.0円/米ドルとしています。

 経営成績に重要な影響を与えるその他の要因については、「3 事業等のリスク」に記載のとおりです。

(注)当社は2025年3月期第1四半期から、従来の日本基準に替えて国際財務報告基準(IFRS)を任意適用します。

 

    ②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は37,410百万円となり、前年度末に比べ8,123百万円の増加となりました。当社グループでは、フリー・キャッシュ・フローを営業活動により獲得されたキャッシュ・フローと投資活動により支出されたキャッシュ・フローの合計として定義しており、当連結会計年度末の残高は以下のとおりであります。

 

項目

前連結会計年度

当連結会計年度

増減

営業活動によるキャッシュ・フロー

21,339百万円

27,457百万円

6,118百万円

投資活動によるキャッシュ・フロー

△9,447百万円

△10,866百万円

△1,419百万円

フリー・キャッシュ・フロー

11,892百万円

16,591百万円

4,699百万円

 

 当社グループの主な短期的な資金の需要としては、営業活動上の運転資金に加えて、設備投資及び研究開発のための資金、配当金の支払等を見込んでおります。なお、当社の短期的な資金調達の源泉は、主に営業活動によって獲得した現金であります。資金調達は金融機関からの借入により調達を行っておりますが、当連結会計年度末の有利子負債残高は21,951百万円であり、総資産に対して15.9%と低い依存度となっております。

 

 当社グループでは、円滑な事業活動に必要なレベルの流動性の確保と財務の健全性・安定性を維持することを資金調達の基本としており、国内の主要金融機関との良好な関係に基づき、長期借入れを中心として必要資金を低いコストで調達しております。また、流動性資金の確保の面では、運転資金の効率的な調達を行うため、取引銀行と当座貸越契約及び貸出コミットメントライン契約を締結しており、当連結会計年度末における総額は、16,026百万円(うち借入未実行残高は16,026百万円)であります。

 

 連結子会社が保有する資金は、当連結会計年度末において18,904百万円でありますが、グループ資金は当社での有効活用を前提に、可能な限り配当を実施することを基本方針としており、各連結子会社の配当可能利益をベースに、各社の手元必要流動性資金を考慮の上、当社への資金還流を今後も積極的に進めていく予定であります。

 

 株主還元方針としましては、従来までは総還元性向として調整後親会社株主に帰属する当期純利益の40%を目処

としておりましたが、これからは中期経営計画の5年間累計で純利益の60%を目途とし、うち年間現金配当は長期

安定を基本として、配当性向40%を目安としながら、ROEや資本コスト、最適な資本構成を意識した経営を推進す

る意味も込めて、DOEで7%以上を下限値として設定しております。また自己株式の取得についても財務状況や株

価水準、キャッシュポジションなどを勘案し機動的に実施する予定であります。

 

   ③経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等については、「第2 事業の状況

 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載のとおりであります。

 2024年3月期の達成・進捗状況は下記のとおりであります。

 

指標

2024年3月期(計画)

2024年3月期(実績)

2023年度(計画比)

売上高

100,000百万円

105,198百万円

5,198百万円 ( 5.2%増)

営業利益

25,000百万円

33,421百万円

8,421百万円 (33.7%増)

親会社株主に帰属する当期純利益

18,000百万円

21,382百万円

3,382百万円 (18.8%増)

EBITDA

31,900百万円

40,024百万円

8,124百万円 (25.5%増)

ROIC

16.7%

22.3%

5.6ポイント増

ROE(自己資本利益率)

23.1%

27.1%

    4.0ポイント増

(注)2024年3月期(計画)は2023年5月10日公表値

 

 セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は、「4 経営者による財政状

態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状

況」に記載のとおりであります。

 

   ④重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについて

は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

5【経営上の重要な契約等】

当該事項はありません。

 

6【研究開発活動】

 当社グループのパーパスは「Empower Evolution つなごう、テクノロジーの進化を。」です。

研究開発として当社グループのパーパスの実現のため、技術ポートフォリオの拡大、新領域製品の創出、コア技術の進化の活動に努めております。

技術ポートフォリオの拡大として、光および化合物半導体技術、集積/異種接合技術を中心に技術開発を進め、新領域製品の創出においては、これら技術を使用し光通信 センシングの製品化に努めております。

2024年4月発足した、デクセリアルズフォトニクスソリューションズ株式会社の戦略とも合わせ、技術ポートフォリオの拡大、新領域製品の創出を推進いたします。

また、微細加工、粘接着配合、薄膜成膜、光学といったコア技術を進化させることにより、変化する世の中のニーズを先取りした独自性の高い製品の開発にも努めております。

人材投資とオープンイノベーションとしては、2023年4月1日に活動を開始した「デクセリアルズ×東北大学 光メタセンシング共創研究所」を通し、共同研究、人材交流、大学設備の利用による先端技術の獲得やその先端技術にキャッチアップした人材育成、必修技術や新規技術の獲得を進めております。

 

 当連結会計年度の研究開発費は4,706百万円となりました。その内訳は光学材料部品事業で2,536百万円、電子材料部品事業で2,170百万円となっています。