第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において、Santenグループが判断したものです。

 

(1)会社の経営の基本方針

Santenグループは、眼科領域に特化したスペシャリティ・カンパニーとして、世界中の患者さんや生活者、医療関係者の皆さまへの価値ある製品やサービスの提供を通じ、人々の「Happiness with Vision」の実現に貢献することを目指しています。創業以来、「天機に参与する」という基本理念の下、130年以上にわたり人々の目の健康維持・増進を追求してきました。現在、眼科領域における医薬品の研究開発、製造、販売・マーケティング活動をグローバルに展開し、世界60以上の国・地域で約5,000万人の人々の目の健康をサポートしています。私たちのミッションは、眼科領域における専門性と患者さん視点から創出される製品やサービスを通じて、目の病気の予防や診断、治療において今まで提供されていない重要な価値を患者さんや社会に提供し続けることです。一人でも多くの患者さんが幸せで豊かな人生を過ごすことができる未来を創り出すため、世界中の人々が「見る」を通じた幸せを実感できる社会の実現に向けて全力を尽くしてまいります。

 

(2)中期経営計画(2023~2025年度)及び目標とする経営指標

2023~2025年度中期経営計画においては、強みである医療用医薬品事業の最大化にあらためて注力しています。収益性の改善、医療用医薬品事業とそれに直結する取り組みにリソースを集約することで生活者・患者さんへの貢献価値の最大化、これらを支える組織の運用体制や仕組みの強化に取り組んでいます。収益性に関連するKPIについては後述のとおり2023年度に前倒しで実現しました。2026年度以降の大型パイプラインによる価値貢献の最大化につなげていきます。

なお、大型パイプラインの開発は順調に進んでいる一方、日本における長期収載品の選定療養の適用等の環境変化にも直面しています。これらの状況を踏まえ、新たな中期経営計画の策定を予定しています。

 

1.成長に向けた基本方針

2025年度までは地域事業の売上最大化と構造改革の推進の2軸で収益最大化を図っています。地域事業の売上最大化は明確な地域戦略に基づく売上拡大を図り、かつ、グローバルにコマーシャル・エクセレンスを強化しています。また、各地域事業の売上拡大に資する事業開発及び、医療用医薬品事業へのシナジーが得られる新規事業に取り組んでいます。2026年度以降は、強化した組織力を梃子に、近視や眼瞼下垂など大型のパイプライン製品による生活者・患者さんへの新しい価値貢献機会の創出を図り、さらなる成長局面へと発展させていきます。

構造改革については2023年度において次のように対処し、完了しました。

米州においては、医療用医薬品事業に係る製品の資産譲渡に伴う人員の最小化、及びオフィス等を含む拠点オペレーションの見直しによる合理化を実施するとともに、全社組織及び人員体制の再構築を行いました。グローバルでのコスト最適化の取り組みも実施し、継続しています。この結果、2025年度に想定していた150億円規模の収益改善を前倒しで実現しました。

また、戦略立案・実行を担うリーダーシップチームの強化に加え、オペレーションモデルとそれを支える経営管理・人材育成の仕組みを変革しています。

加えて、中長期成長を支えるパイプラインについても、2023年度においてはSTN1012700(近視)の日本での製造販売承認の申請や、STN1013800(眼瞼下垂)の日本での第Ⅲ相試験において主要評価項目を達成するなど、順調に進展しています。

 

 

2.2025年度 全社数値目標・KPI(重要業績評価指標)

海外一人当たり売上高の成長を含めて収益性の確実な改善と資本効率の向上を掲げており、2023年度において前倒しで指標を実現しました。

 

KPI(重要業績評価指標)

2023年度実績

2025年度目標

売上高

3,020億円

2,800億円

コア営業利益額

628億円

560億円

コア営業利益率

21%

20%

海外一人当たり売上高成長率

33%

(対前年度増減率)

7%以上の成長

(2022年度~2025年度の年平均成長率)

コアROE(親会社所有者帰属持分当期利益率)

16%

13%

コアEPS(1株当たり当期利益)の成長率

54%

(対前年度増減率)

10%以上

(2022年度~2025年度の年平均成長率)

 

3.資本配分・株主還元

財務戦略は眼科領域で競争優位を構築することで収益性を高め、キャッシュ創出力、ひいては株主価値の最大化を追求することを基本としています。

中期経営計画(2023~2025年度)においては収益性の拡大、効率性の追求、健全性の確保を柱にしROE(親会社所有者帰属持分利益率)の向上に取組んでまいります。その中でも資本コストに対する超過収益力を最大化することによりROE上昇を図ります。

特に、収益改善と同時にキャッシュの創出力を高め、その原資を将来の成長への投資として資本コストを上回るリターンが見込める設備、研究開発、事業開発に優先的に投下いたします。一方で、有望な投資機会が無ければ、株価の状況を鑑みながら自社株買いによる利益還元を実施します。

また、配当については累進配当に基づき現行水準(半期17円)を下限値として、中期的な利益成長に合わせて増配を検討してまいります。2023年度は33円/年(中間:16円、期末:17円)、2024年度は34円/年(中間:17円、期末:17円)の配当を予定しています。

 

4.ESG(環境、社会、ガバナンス)の取り組み

眼科に特化したスペシャリティ・カンパニーとして、事業を通じて、患者さんや社会への貢献を追求してまいります。

 

■13のマテリアリティ

(1)社会的意義のある製品・サービスの開発・安定的供給

①社会的意義のある製品の市場浸透

②サプライチェーンの評価・管理

③品質・安全性の確保と適切な供給体制の確立

④製品・サービスに関する適切な情報提供

(2)価値創造を促進する組織風土の醸成

⑤ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンの推進

⑥高付加価値で生産性の高い職場環境の構築

⑦人材の育成・登用

(3)ガバナンス強化・公正公平な社会実現への貢献

⑧コーポレート・ガバナンス

⑨コンプライアンス

⑩リスクマネジメント

⑪人権の尊重

 

(4)地球環境保全

⑫気候変動対策

⑬環境負荷低減

 

上記のマテリアリティのうち、特に本中期経営計画の実現とその先の持続的な成長につながっていく「①社会的意義のある製品の市場浸透」と、事業成長を支え牽引していくための「⑦人材の育成・登用」を最重要課題と定義し、取り組みを強化してまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において、Santenグループが判断したものです。

 

(1)ガバナンス

Santenグループは、社会の持続的な発展に貢献するとともに、中長期的な企業価値向上を目指しています。

サステナビリティに関する体制としては、CEOを委員長とし関連部門の執行役員で構成されるサステナビリティ委員会を設置しています。基本理念やサステナビリティ方針、グループの戦略、社会課題などを踏まえ、サステナビリティ推進活動に関するグループ全体の方針・目標を設定するとともに、活動推進状況をモニタリングしています。特に重要な案件については適宜取締役会に上程し、審議・報告を行います。

サステナビリティの取り組みとして、2020年に経営の重要課題であるマテリアリティを特定し、目標を設定してそれぞれの活動を推進しています。

2023年4月に発表した2023-2025年の中期経営計画の策定に合わせ、13の経営課題(マテリアリティ)について、その内容を再整理し、優先順位を検討しました。Santenグループにとっての重要性と社会にとっての重要性の2軸で分析を行った結果について取締役会で議論し、特に重要な課題として「社会的意義のある製品の市場浸透」と「人材の育成・登用」の二つを特定しています。マテリアリティについては継続的に取締役会で議論を行い、今後も適宜見直しを行うとともに、活動を推進していきます。

また2021年に部門横断のTCFD(※)プロジェクトを立ち上げ、気候変動に関するリスクと機会の特定や財務影響の評価、リスク・機会への対応方針について検討を重ねました。検討内容については、サステナビリティ委員会で協議のうえ、取締役会へ報告・審議し、2022年6月に開示しました。またその内容についても適宜見直しを行っています。

※ Task Force on Climate-related Financial Disclosures:気候関連財務情報開示タスクフォース

 

(2)戦略

①社会的意義のある製品の市場浸透

眼科領域における製品・サービスのイノベーションによる未充足ニーズへの対応と、コマーシャル・エクセレンス追求による患者さんへの貢献は、成長戦略の要であり、Santenグループの存在意義そのものです。中期経営計画に基づき、価値ある製品の市場浸透を図っていきます。

 

<リスク>

■以下の取り組みについて、Santenグループが後手に回り競合他社が先行した場合、当該市場での競争力低下によりシェアが獲得できなければ、利益損失規模は大きい

・疾患の早期発見や診断、治療継続が十分にできていないことによる患者さんへのアプロ―チ

・中長期的には、途上国など保健医療体制の未整備などが原因で、医療にアクセスできていない患者さんに対する市場浸透活動

■中国などでSantenグループ主力品が集中購買の製品から外れるなど、国の政策による市場環境の激変も影響大

 

<機会>

■短期的には、既存市場でのコマーシャル・エクセレンスの活動を強化し、診療プロセスへの価値ある情報提供、さらなる製品浸透と治療

■中期的には、コマーシャル・エクセレンスの継続的追求に加え、近視や眼瞼下垂などの未充足な疾患領域への製品提供

■長期的には、さらなる地理的展開及び新たな製品等の開発・提供を図り、より多くの患者さんに貢献

 

 

<対応策>

■既存市場では、緑内障やドライアイなどの慢性疾患の治療継続率の改善に取り組む

■アンメットニーズを解消する新製品の上市、近視や眼瞼下垂など従来取り扱っていなかった疾患についても、自由診療領域への展開や販路拡大を目指す

■未治療患者さんが多い疾患・地域では、受診から治療継続のボトルネック解消により、より多くの患者さんにアクセス

 

<外部へのインパクト>

目の疾患や不具合に起因する世界中の人々の社会的・経済的な機会損失を削減し、年間4,107億ドル(※)と言われる視力障がいによる経済損失を少しでも削減させる。

■短期的には、既存市場でより多くの患者さんの治療に貢献

■中長期的には、近視や眼瞼下垂など未充足な疾患領域や、これまで提供できていなかった国や地域の患者さんの治療にも貢献

※ 出典The Lancet Global Health Commission on Global Eye Health: vision beyond 2020

 

②人材の育成・登用

基本理念や戦略を理解し、世界中の人々の「見る」を通じた幸せな人生の実現を目指す人材こそが、Santenグループの最も大切な資産であり、そうした人材の育成・登用が肝要です。

生活者・患者さんを中心に考え、持続的な企業成長に貢献できる社員をグローバルで育成し、多様性を踏まえながら適時・適所に最適人材を登用できるよう、計画的な育成と登用を進めていきます。

 

<リスク>

■即戦力の外部からの登用だけでなく、社内での育成・リスキリング・登用が戦略的・計画的になされなければ、社員のモチベーションや会社の成長への大きな障害となる

■人材の戦略的なポートフォリオが必須であり、適時・適所に最適人材を登用できないことによる事業の失敗は多額の損失につながる恐れがある

■退職者の増加などによる人的な損失が起これば、組織機能不全につながる可能性がある

 

<機会>

■戦略的・体系的な育成体制が整えられれば、エンゲージメントの向上や人材の惹きつけにつながり、大きな利益貢献になるとともに、外部からの人材調達コストの低減にも貢献

■業務生産性が向上することで収益にプラスの影響

 

<対応策>

■Santenグループの基本理念やビジョン、強みを深く理解し、戦略をグローバルに実行する人材の育成

■戦略の立案や実行、変革に向け、重要ポジションを担うマネジメント層を対象に、リーダーシップ能力を向上させる人材マネジメント教育を実施

■重要ポジション(※)の後継者の明確化と、計画的確保・育成・配置の具体的な実践

■多様性の活用においては、特に日本国内の女性の管理職登用に向けた推進

※ 経営戦略の立案と実行においてキーとなるポジション、各機能や地域における主要な役割

 

<外部へのインパクト>

人材流動による社会への貢献

■人材育成により、高い能力を身に付けた人材の流動性が高まれば、社会にプラスの影響

 

人材育成方針及び社内環境整備方針は以下に開示しています。

https://www.santen.com/ja/about/policy

 

 

③気候変動(TCFD)

1.5℃シナリオ及び4℃シナリオ(※1)を用いて分析・評価した結果、Santenグループが特定した気候変動に関するリスク・機会とその財務影響、並びに検討した対応策は次の表のとおりです。

 

気候変動に関するリスク・機会と財務影響

シナリオ

リスク・

機会

外部環境

の変化

(現在から

2050年頃)

Santenの

リスク・機会

影響を受ける期間(※2)

財務影響

(※3)

影響の評価方法

1.5℃

シナリオ

移行

リスク

低炭素エネルギーへの移行の加速

低炭素エネルギーへの転換に伴う投資額・費用額の増加

短期

技術に対する一定の不確実性を考慮して保守的に算出

中長期

バイオプラスチック・バイオマスプラスチックへの移行の義務化・規制化

容器包材調達費用の増加

中長期

現状の売上成長予測を上回る野心的な売上高成長率を前提とし、費用の増額分を算出して評価

生物由来原料の供給量減少による価格高騰

生物由来原料調達費用の増加

中長期

原材料の調達金額に占める割合が大きい生物由来原料はいずれも特定の動植物に依存せず、容易に調達可能であるため、価格上昇リスクは高くないと判断

4℃

シナリオ

物理的

リスク

降雨パターンの変動による浸水・渇水の発生

浸水や取水制限で工場・研究所の稼働が困難となり、製品供給が遅延・停止

中長期

各工場・研究所所在地付近の河川の有無や、水リスク評価ツールAqueduct(※4)を用いた各所在地の渇水リスクの評価結果、生産工程での水使用量などを考慮して判断

機会

厳しい気候で屋内活動が増加することによる近視患者の増加

近視薬などの新規製剤の生産供給量を増やすことで、増加する近視の治療に貢献

中長期

現時点で財務影響の把握は困難

・公表されている気候変動による眼疾患への影響に関する研究結果を参照し、事業への影響を評価

・近視が増加傾向にある(※5)ものの、増加要因における気候変動の影響部分を特定することが困難であり、当該影響額の算定は困難と判断

気候変動による花粉などのアレルゲンや病原生物の増加・活性化

アレルギー治療薬や感染症治療薬などの既存薬剤の生産供給量を増やすことで、眼に関連するアレルギーや感染症の治療に貢献

中長期

現時点で財務影響の把握は困難

・公表されている気候変動による眼疾患への影響に関する研究結果を参照し、事業への影響を評価

・平均気温の上昇に伴い感染症やアレルギーなどの眼疾患が増加することが予測されているものの、増加要因における気候変動の影響部分を特定することが困難であり、当該影響額の算定は困難と判断

※1 1.5℃シナリオ:IPCCの第6次報告書(AR6)のSSP1-1.9やIEAのNet Zero Emissions(NZE)などの情報を用いて策定した、Santenグループにとっての気候変動に関する移行リスクが最大になると設定したシナリオ。4℃シナリオ:IPCCの第5次報告書(AR5)のRCP8.5などの情報を用いて策定した、Santenグループにとっての気候変動に関する物理リスクが最大になると設定したシナリオ

※2 短期:3年以下、中期:3年超-10年以下、長期:10年超を想定

※3 財務影響:収益、費用額は単年度影響額、投資金額については投資総額で判断し、「大」:30億円以上、「小」:30億円未満とする

※4 Aqueduct:世界資源研究所(WRI)が公表する水リスク評価ツール

※5 近視が増加傾向:「Ophthalmology, 123; 1036-1042, 2016」では、近視は2050年までに2000年の約3倍の50億人程度と推計

 

TCFD提言に基づく情報開示の詳細は以下に開示しています。

https://www.santen.com/ja/sustainability/tcfd

 

(3)リスク管理

Santenグループは、経営の重要課題であるマテリアリティを特定し、リスクと機会を評価しています。評価されたリスクや機会は、サステナビリティ委員会において定期的に報告・協議を行います。特に重要なリスクについては、全社のリスク評価結果とともに、危機管理担当役員のもとでリスク管理部署が対策主管部署を決定して、予防対策の実施及び事業継続計画を策定し、事業継続計画が危機発生時に有効に機能しうる状態にあることを確認し、必要な見直しを推進しています。

 

(4)指標及び目標

マテリアリティ/テーマ

2025年度までの目標

進捗(2023年度実績)

社会的意義のある製品の市場浸透

患者貢献数:延べ5,000万人以上

2022年度の貢献患者数:5,000万人以上

人材の育成・登用

①2023年度に人材育成プログラムの再構築を完了、2025年度までに全社員が教育プログラムを受講完了

②重要ポジションを担うマネジメント層に対し、2025年度までにアセスメントとコーチングを実施

③2023年度に重要ポジションの後継者の明確化完了、2025年度までに計画的確保・育成・配置の具体的実践

①人材育成プログラムの再構築への取り組みを継続中。

全従業員を対象にスキルアセスメントや幅広い学習・研修の機会を2024年度よりグローバルで導入することを決定。

②グローバルプログラムの参考となるアジア・シニアリーダー開発プログラムとコーチングを先行トライアルとして実施。

2024年度より対象となる地域と職位を拡大し、リーダー育成及びコーチングを実施することを決定。

③執行役員の後継者計画の作成に着手。

グローバル統一の計画形式とタイミングにて2024年度内に方向付けを行う。

人的資本

従業員エンゲージメント調査:

・グローバルで毎年定期的にエンゲージメントサーベイを実施

・「コミュニケーション」のスコア改善

・11月に時期と形式を統一し、グローバルでエンゲージメントサーベイを実施

(回答率93%、スコア64%)

・「コミュニケーション」のスコアは横ばい。

CEO及び執行役員が、企業の方向性を共有し、従業員とのオープンな対話を図るため、対面でのタウンホールを実施。

多様性

女性管理職比率の向上:

・国内グループ:20以上

19.0

 

サステナビリティに関する取り組みについて、詳細は当社ウェブサイト及び統合報告書(アニュアルレポート)において随時開示します。

https://www.santen.com/ja/sustainability

https://www.santen.com/ja/ir/document/annual.jsp

 

3【事業等のリスク】

[リスク管理体制]

Santenグループでは、従来より、危機管理に係る規程に基づき、事業活動遂行上想定される主要な損失の危険に適確に対処するため、各地域、部門ごとにリスクの抽出、評価、モニタリングを行い、平時から損失の危険の回避・最小化に努めてまいりましたが、リスクマネジメントの高度化に向け、2022年度より「内部要因に起因するリスク」と「外部要因に起因するリスク」に分け、それぞれのリスクファクターを一元的に把握・整理し、全社的な共有を図ることにより効果的なリスクマネジメント体制の整備を行っております。

グローバルに事業が拡大する中、高い水準で各種規制を遵守することが求められています。また、製品の安定供給や品質管理、ITセキュリティの確保、コンプライアンス遵守等に対して適切な対応を行うとともに、パンデミック、自然災害、紛争等に対するリスクマネジメントが求められています。

特に経営に影響を及ぼす可能性がある多様なリスクに対応するため、危機管理担当役員の下、主要リスクを明確にし、予防策を策定、協議するリスク管理活動の強化を継続的に図ってまいります。

 

[体制図]

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重大な危機に発展する可能性のある事象が発生又は報告された場合には、Santenの代表取締役社長兼CEOを委員長とする「危機管理委員会」を設置し、対応と事態の収拾に努めるとともに再発防止策を実施します。

また、内部監査室は、その独立した立場において、業務監査を通じてリスク管理状況を検証しています。

 

[個別リスク]

当連結会計年度末現在において判断した将来の業績又は財政状態に影響を与えうるリスクや不確実性には、以下のようなものがあります。ただし、将来の業績又は財政状態に影響を与えうるリスクや不確実性は、これらに限定されるものではありません。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、Santenグループが判断したものです。

 

 

(主要リスク)

(1)サプライチェーン

Santenグループでは、品目により生産を一箇所に集中している製品、生産を外部に委託している製品、また、原薬や容器等原材料の供給を特定の取引先に依存している製品があります。これらについて、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染再拡大等のパンデミック、自然災害、火災等により特定の工場や外部委託先の機能又は取引先からの原材料の供給が停止し、生産活動の停滞・遅延が起こった場合には、Santenグループの業績又は財政状態に影響を与える可能性があります。

Santenグループでは、従前よりグローバルな製品供給体制の強化を重要な戦略の一つとして掲げています。具体的には、展開国の拡大や点眼剤以外の多様な製品の増加に対応する体制の構築に取り組んでおり、安定供給を確実なものとするプロセス及びシステム等の仕組みを構築するとともに、計画と実行のモニタリングやリスク評価等により、継続的な実態把握と課題への対応を行っています。また、物流関連の規制が厳しい欧州にも対応した製品の生産・供給体制の構築や、生産計画を含む在庫管理の可視化・グローバルでの一元管理にも取り組んでいます。

また、製品の安定供給を最優先課題と位置付け、製品に関する在庫水準の維持、工場における安全確保、工場内勤者がテレワーク環境下で業務遂行できる環境の整備を実施しています。

 

(2)コンプライアンス

社会規範や法令等に違反する事態が発生した場合、Santenグループの社会的信用やブランドイメージの低下、株価下落による企業価値の損失、売上収益の減少や損害賠償の支払い等により、Santenグループの業績悪化や事業継続が困難になる等、企業経営に大きな影響を及ぼす可能性があります。

Santenグループは「天機に参与する」という基本理念のもと、基本理念を社員が遵守すべき基準として具体化した「参天企業倫理綱領」及び「グローバル・コンプライアンス・ポリシー」を制定し、チーフコンプライアンスオフィサーの下、グローバルでのコンプライアンス推進体制を強化するとともに、法令や規制が厳しくなるヘルスケア業界において全従業員へのグローバルでの体系的な教育プログラムを導入し、実施しています。毎年、企業倫理綱領周知月間を設定し、グローバルで共通テーマでのコンプライアンスE-ラーニングの実施や、CEO、地域トップからのコンプライアンスメッセージを発信する等、コンプライアンス意識の醸成及び法令遵守の強化にも努めています。

また、コンプライアンスだけではなく組織を横断するリスクを的確に把握し、課題の発見及び適切なフォローを確実に実施することを目的として、24時間365日利用可能なグローバル通報システムとして「Santenスピークアップ・ポータル」を導入し、グローバルで統一したリスク管理体制の整備も進めています。

 

(3)ITセキュリティ及び情報管理

Santenグループでは、各種ITシステムを利用しているため、システムの不備、サイバー攻撃やコンピュータウィルスの感染等により、業績に影響を与える可能性があります。また、個人情報等の機微情報を有しているため、万一の事故等によりその情報が社外流出した場合、信用を大きく失うことで業績に影響を与える可能性があります。

Santenグループでは、情報セキュリティをグローバル社会の進化にとって不可欠な要素と考え、戦略的優先事項と捉えており、日々の業務や規制の継続性維持、及び戦略的な競争優位性の維持に必要な情報の機密性、完全性及び可用性を保証するため、ISO/IEC27001に基づく情報セキュリティマネジメントシステムの実装と維持に取り組んでいます。

また、サイバーセキュリティリスクへの対応として、グローバル個人情報保護規程、情報セキュリティ規程、文書管理規程等の社内規程を整備するとともに、セキュリティ研修・訓練を中心とした人的対策、組織対策としてのセキュリティガバナンス強化、並びに技術的対策を行っています。加えて、Santenグループのみならず、サプライチェーンやビジネスパートナーを含めたリスク管理を実施しています。

今後も外部環境の変化を捉え、事業継続性の強化、サイバーセキュリティの高度化、データ保護の強化等の施策を継続的に進めていきます。

 

(4)自然災害

大規模地震、津波、台風等の自然災害、火災などの要因により生産活動の停滞・遅延・サプライチェーンの寸断等が起こった場合、Santenグループの業績又は財政状態に影響を与える可能性があります。また、品目によっては、生産を一箇所に集中しているものや、生産を外部に委託しているものがあり、特定の工場や外部委託先の機能が停止した場合、製品供給が滞る可能性があります。

Santenグループではこれらのリスクに備え、事業継続計画(BCP)の策定・緊急時の応急対策訓練の実施、安定在庫の確保、製造ラインのバックアップ計画策定、損害保険への加入など、従業員の安全確保及び製品の安定供給が継続できる体制を整備し、リスクの低減に努めています。

 

(5)感染症拡大

新たな感染症の拡大等により、治験や試験などの研究開発活動に支障を及ぼす可能性、工場の操業や物流などサプライチェーンに影響が生じて製品の安定供給に支障をきたす可能性、医療関係者への適時適切な情報収集・提供ができなくなり販売活動に支障をきたす可能性があります。

Santenグループではこれらのリスクに備え、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)へのこれまでの対策・知見を基に従業員の安全確保と製品の安定供給が継続できる体制を整備し、リスクの低減に努めています。

 

(6)地政学リスク

国際情勢の急激な変化や国家間紛争の発生によって、関連する地域において、事業活動への影響やサプライチェーンの寸断等による製品供給等の遅滞等の影響が生じる可能性があります。

Santenグループでは、これらのリスクに対し、外部情報の入手や国内及び海外での事業への影響を分析し、有事に備えた安全管理体制の整備、製品供給確保のためのバックアップ体制の構築など、事業継続体制整備を進めています。

 

(7)環境規制・気候変動

環境汚染等の環境保全上に問題が発生した場合や関連法令の改正等により、法的措置や損害賠償責任、対策費用等が発生した場合には、業績に重大な影響を与える可能性があります。また、今後の低炭素エネルギー社会への移行により、エネルギー転換に伴う投資額・費用額が増加するリスク等も想定しています。

Santenグループは、グローバルで環境保全を推進しており、2050年の環境ビジョン「Santen Vision for the Earth 2050」の策定と、CO2排出量削減など2030年環境目標を設定し、気候変動対策と環境負荷低減に取り組んでいます。

 

(その他リスク)

(1)投資に関わるリスク

Santenグループでは、医薬品の安定供給やグローバルな事業基盤拡大に必要な設備投資を継続して実施しています。また、眼科領域におけるグローバルでの持続的な成長を目指し、パイプラインの強化、グローバルでの事業展開の加速、新規医療技術・イノベーションの拡充のために、有望な事業開発機会と認められる場合には、他社とのアライアンス・M&A(製品・技術導入、買収及び合弁事業等)を積極的に行っています。これらについては、投資判断を行った時点に想定をしていた水準を超える外部環境の悪化等により、当初想定した効果や利益が実現されない可能性があります。また、このような場合には、投資に伴い計上した有形固定資産や無形資産の減損処理により、Santenグループの業績に影響を与える可能性があります。Santenグループでは、これらの投資について、経営戦略との整合性等定性的な観点に加え、収益性の観点から、資本コストを上回るハードルレートを基礎とした社内の評価基準に基づき投資の判断を行っています。これらの投資判断を含めた意思決定プロセスの透明性・客観性を向上させるため、重要な戦略課題について審議する戦略審議委員会を設置し、中長期戦略及び事業・開発ポートフォリオ議論と取締役会に付議される個別議案の有機的な連携を図ると共に、個別案件の全体戦略における位置づけの明確化、論点整理に取り組んでいます。また、取締役会で決議した案件を着実に成果につなげるためのモニタリングを定期的且つ継続的に行う仕組みを導入し、コーポレート・ガバナンスの充実・強化に取り組んでいます。

 

(2)グローバルな事業展開に関わるリスク

Santenグループでは、医薬品の販売や研究開発活動を世界各国で行っています。

このような世界各国における事業活動は、法令や規則の変更、政情不安、経済動向の不確実性、商習慣の相違その他のリスクに直面する可能性があり、その結果、当初想定した効果や利益が実現されない可能性があります。

 

(3)販売中止、製品回収等

Santenグループの製品の一部が、製品品質の欠陥、予期せぬ副作用、第三者による異物混入等により、販売中止又は製品回収等の事態となった場合、業績に影響を与える可能性があります。

 

(4)医薬品行政の動向

医療用医薬品事業については、日本並びにその他各国政府による医療保険制度や薬価に関する規制の影響を受けます。

日本国内の薬価改定については、現在予測可能な範囲に限り、その影響を業績予想等の見通しに織り込んでいます。予測可能な範囲を超えた薬価改定や、その他の医療保険制度の改定があった場合は、業績又は財政状態に対して中長期的に影響を与える可能性があります。

海外においても、同様に医療用医薬品の価格等に関する様々な規制があり、政府による価格低下の圧力は継続する傾向にあります。

また、国内外における政府当局や医薬保険制度の後発品使用促進策及びそれを背景にした他社による後発品販売は、Santenグループの業績に影響を与える可能性があります。

 

(5)為替

Santenグループは世界各国で事業を展開しているため、為替の変動がSantenグループの業績又は財政状態に影響を与えます。当連結会計年度の海外売上収益は、連結売上収益の約42%でした。

 

(6)主力製品への依存

Santenグループにおける売上収益の上位2製品である「アイリーア硝子体内注射液」及び「アレジオン点眼液(アレジオンLX点眼液を含む)」の連結売上収益に対する比率は、当連結会計年度で34%です。これらの製品が万一、製品の欠陥、予期せぬ副作用等の要因により販売中止となったり、売上収益が大幅に減少した場合、業績又は財政状態に大きな影響を与える可能性があります。

 

 

(7)ライセンス製品への依存

Santenグループの製品には、他社から製造販売権、並びに販売権を供与されているものが多くあります。眼科薬における独占的製造販売権の供与を受けている品目には、「クラビット点眼液」、「タプロス点眼液」、「アレジオン点眼液(アレジオンLX点眼液を含む、2023年11月に契約を終了)」等があります。国内独占的販売権の供与を受けている品目には、「アイリーア硝子体内注射液」があります。契約期間満了、契約条件の変更や販売提携の解消等が起こった場合、業績に影響を与える可能性があります。

 

(8)新薬開発の不確実性

新製品の創製・開発並びに追加効能・剤形等の開発は将来の成長に必要不可欠であり、Santenグループは毎年多額の研究開発投資を行っていますが、研究開発から承認・発売までは非常に長期間を要し、開発中止、承認申請後の不許可等の不確実性を多く含みます。Santenグループが開発中の新薬あるいは追加効能・剤形等について、販売・製造の許可がおりるかどうか、あるいはいつ承認を得ることができるかを確実に予測することはできません。また、将来、研究開発投資に見合う新薬の売上収益を実現できない可能性があります。

 

(9)知的財産権

Santenグループの事業は、物質・製法等に関する様々な特許によって保護されています。Santenグループでは、これらの特許権を含む知的財産権を適切に管理し、第三者からの侵害にも注意を払っていますが、第三者からの侵害を受けた場合には、Santenグループの業績に影響を与える可能性があります。また、Santenグループの事業が第三者の知的財産権を侵害しないようにも注意を払っていますが、万一、第三者の知的財産権を侵害した場合、損害賠償を請求される等、業績に影響を与える可能性があります。

 

(10)訴訟

医療用医薬品の製造・販売を主たる事業とするSantenグループでは、将来、特許、製造物責任(PL)法、独占禁止法、消費者、環境等に関わる訴訟を提起される可能性があり、訴訟が発生した場合、それらの訴訟等の動向は、Santenグループの業績又は財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(11)内部統制の整備等

内部統制が有効に機能せず、あるいは予期せぬ内部統制上の問題により、多大な損失が発生した場合、業績に影響を及ぼします。

Santenグループは、会社法及び会社法施行規則に基づき、業務の適正を確保するための体制を整備する旨(内部統制基本方針)の決議を行っています。執行部門はその整備・運用状況について取締役会に対して定期的な報告を行い、取締役会は適宜指示、軌道修正を行うことで、当該整備・運用の質的向上並びに対象範囲の拡大を図っており、グループ各社における内部統制の構築・浸透に取り組んでいます。また、金融商品取引法に基づく財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに実施基準に準拠して、財務報告に係る内部統制を整備及び運用しています。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度におけるSantenグループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりです。

 

①財政状態及び経営成績の状況

(ア)財政状態

当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ145億円増加し、4,357億円となりました。

当連結会計年度末の資本合計は、前連結会計年度末に比べ121億円増加し、3,054億円となりました。

当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ24億円増加し、1,303億円となりました。

 

(イ)経営成績

当連結会計年度の経営成績は、IFRS(フル)ベースでは、売上収益3,020億円(前年同期比8.2%増)、営業利益385億円(前連結会計年度は31億円の営業損失)、親会社の所有者に帰属する当期利益266億円(前連結会計年度は149億円の親会社の所有者に帰属する当期損失)となりました。

コアベースでは、売上収益3,020億円(前年同期比8.2%増)、コア営業利益628億円(同41.9%増)、親会社の所有者に帰属するコア当期利益485億円(同45.7%増)となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における現金及び現金同等物は、有形固定資産の取得による支出、自己株式の取得による支出、配当金の支払いなどの一方、営業活動の結果得た資金が726億円あったことなどにより、前連結会計年度末と比べ367億円増加し、946億円となりました。

 

 

③生産、受注及び販売の実績

Santenグループは単一セグメントであり、当連結会計年度における実績は次のとおりです。

 

(ア)生産実績及び商品仕入実績

 

金額(百万円)

対前年度増減率(%)

生産実績

197,737

15.2

商品仕入実績

70,083

4.1

 (注)1 生産実績の金額は販売価格によっています。

    2 商品仕入実績の金額は仕入価格によっています。

 

(イ)受注実績

Santenグループは販売計画、在庫状況を基礎として生産計画を立案し、これによって生産を行っていますので受注生産は行っていません。

 

(ウ)販売実績

 

金額(百万円)

対前年度増減率(%)

販売実績

301,965

8.2

(注)最近2連結会計年度における、主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりです。

 

前連結会計年度

当連結会計年度

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

株式会社スズケン

51,706

18.5

50,115

16.6

株式会社メディセオ

35,671

12.8

34,653

11.5

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点によるSantenグループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。

 

①当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

(ア)経営成績等

ⅰ 財政状態

(単位:億円)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減額

資産

4,212

4,357

145

資本

2,933

3,054

121

負債

1,279

1,303

24

親会社所有者帰属持分比率

69.8%

70.2%

0.4ポイント

当連結会計年度の資産は、4,357億円となりました。営業債権及びその他の債権の流動化等による減少及び無形資産の減少などがあった一方、現金の増加、繰延税金資産の増加及び蘇州新工場建設に伴う有形固定資産の増加などにより前連結会計年度末と比べ145億円増加しました。

資本は、3,054億円となりました。自己株式の取得による資本圧縮効果の一方、利益剰余金及びその他の資本の構成要素の増加などにより前連結会計年度末と比べ121億円増加しました。なお、2024年3月29日に154億円(12,000千株)の自己株式の消却を実施しました。

負債は、1,303億円となりました。前連結会計年度に計上した事業構造改革に伴う引当金の減少などがあった一方、預り金の増加に伴うその他の流動負債の増加などにより前連結会計年度末と比べ24億円増加しました。

以上の結果、親会社所有者帰属持分比率は、前連結会計年度末と比べ0.4ポイント増加し、70.2%となりました。

なお、SantenグループではROE(親会社所有者帰属持分利益率)を最重要指標に、キャッシュ・フローの最大化と資本コストの低減の両面から株主価値最大化に取り組んでいます。キャッシュの源泉としては営業活動から得られるインフローを基本としつつ、キャッシュ・コンバージョン・サイクル管理により運転資本の効率を高めることでキャッシュ創出力の最大化に取り組みます。この取り組みの一環として、当連結会計年度より営業債権の流動化を新たに開始し、ROIC(投下資本収益率)の改善を実現しました。

 

ⅱ 経営成績

イ.コアベース ※1

(単位:億円)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

対前年度増減率

売上収益

2,790

3,020

8.2%

コア営業利益

442

628

41.9%

コア当期利益

332

485

46.0%

親会社の所有者に帰属する

コア当期利益

333

485

45.7%

 

[売上収益]

前連結会計年度と比べ8.2%増加し、3,020億円となりました。

医療用医薬品事業は、日本では薬価改定の影響等があったものの主力製品の拡大に注力、中国では前年の新型コロナウイルス感染症の再拡大からの市場の回復、アジア・EMEAでも主力製品が堅調に推移し、前連結会計年度と比べ8.0%増加し、2,810億円となりました。

売上収益の内訳は次のとおりです。

 

 

上段:金額

 

 

 

 

 

 

下段:対前年度増減率、( )は為替影響を除いた対前年度増減率

 

(単位:億円)

 

日本

中国

アジア

EMEA

米州

合計

医療用医薬品

1,602

294

277

614

24

2,810

 

△1.6%

39.0%

19.1%

22.5%

△19.6%

8.0%

 

(-)

(35.4%)

(12.1%)

(11.3%)

(△24.0%)

(4.9%)

一般用医薬品

101

3

8

112

 

5.2%

18.5%

8.4%

5.8%

医療機器

36

1

1

33

7

78

 

9.8%

1.0%

640.6%

40.7%

29.5%

24.1%

その他

18

1

1

19

 

1.3%

6.5%

△12.1%

0.7%

合計

1,756

299

287

648

31

3,020

 

△1.0%

38.6%

18.9%

23.3%

△11.8%

8.2%

 

(-)

(35.1%)

(11.9%)

(12.1%)

(△16.5%)

(5.2%)

(注)外部顧客に対する売上収益を表しています。

 

 

   顧客の所在地をもとに国又は地域に分類しています。なお、アジアには中国を含んでいません。

   EMEAは、欧州、中東及びアフリカです。

 

<医療用医薬品>

◇日本

2%台前半の薬価改定の影響はありましたが、ジクアスLX点眼液やアレジオンLX点眼液等主力製品の拡大に注力した結果、前連結会計年度と比べ1.6%減少し、1,602億円となりました。主力製品の売上は次のとおりです。

 

・緑内障・高眼圧症治療剤領域

「タプロス点眼液」

59億円

(対前年増減率 △ 23.5%)

「タプコム配合点眼液」

22億円

(対前年増減率 △ 17.3%)

「コソプト配合点眼液」

40億円

(対前年増減率 △ 15.4%)

「エイベリス点眼液」

43億円

(対前年増減率 + 11.3%)

・角結膜疾患治療剤領域

「ジクアス点眼液※3

201億円

(対前年増減率 + 23.5%)

・抗アレルギー点眼剤領域

「アレジオン点眼液※2

293億円

(対前年増減率 △ 12.3%)

・網膜疾患治療剤領域

「アイリーア硝子体内注射液※4

727億円

(対前年増減率 +  2.0%)

 

◇中国

市場は前年の新型コロナウイルス感染症の再拡大から回復し、主力製品が好調に推移した結果、円換算ベースで前連結会計年度と比べ39.0%増加し(為替影響を除いた成長率は+35.4%)、294億円となりました。主力製品の売上は次のとおりです。

 

・緑内障・高眼圧症治療剤領域

「タプロス点眼液」

18億円

(対前年増減率 + 69.7%)

・角結膜疾患治療剤領域

「ジクアス点眼液」

33億円

(対前年増減率 + 19.6%)

「ヒアレイン点眼液」

88億円

(対前年増減率 + 36.9%)

・眼感染症治療剤領域

「クラビット点眼液」

88億円

(対前年増減率 + 40.1%)

 

◇アジア(中国除く)

韓国等主要国で下記主要製品が堅調に推移し、円換算ベースで前連結会計年度と比べ19.1%増加し(為替影響を除いた成長率は+12.1%)、277億円となりました。

 

・緑内障・高眼圧症治療剤領域

「タプロス点眼液」

24億円

(対前年増減率 +  4.8%)

「タプコム配合点眼液」

13億円

(対前年増減率 + 26.8%)

「コソプト配合点眼液」

69億円

(対前年増減率 + 12.6%)

・角結膜疾患治療剤領域

「ジクアス点眼液」

25億円

(対前年増減率 + 25.9%)

「Ikervis(アイケルビス)」

19億円

(対前年増減率 + 24.8%)

・眼感染症治療剤領域

「クラビット点眼液」

32億円

(対前年増減率 + 36.2%)

 

◇EMEA

現地での領域別市場シェア一位の緑内障製品を中心に伸長し、当連結会計年度にIkervis(アイケルビス)の保険償還の精算額の見直しを行った影響もあり、円換算ベースで前連結会計年度と比べ22.5%増加し(為替影響を除いた成長率は+11.3%)、614億円となりました。主力製品の売上は次のとおりです。

 

・緑内障・高眼圧症治療剤領域

「タプロス点眼液」

84億円

(対前年増減率 + 10.0%)

「タプコム配合点眼液」

57億円

(対前年増減率 + 26.8%)

「コソプト配合点眼液」

148億円

(対前年増減率 + 14.4%)

「トルソプト点眼液」

36億円

(対前年増減率 +  4.6%)

・角結膜疾患治療剤領域

「Ikervis(アイケルビス)」

102億円

(対前年増減率 + 92.3%)

「Cationorm(カチオノーム)」

29億円

(対前年増減率 + 11.3%)

・抗アレルギー点眼剤領域

「Verkazia(ベルカジア)」

12億円

(対前年増減率 + 57.9%)

 

◇米州

販売・マーケティング活動の合理化を推進しており、円換算ベースで前連結会計年度と比べ19.6%減少し(為替影響を除いた成長率は△24.0%)、24億円となりました。

 

 

<一般用医薬品>

前連結会計年度と比べ5.8%増加し、112億円となりました。

「サンテメディカルシリーズ」「サンテボーティエシリーズ」「ソフトサンティアシリーズ」などの高価格帯品に加え、スイッチOTC製品「ヒアレインS」、「サンテFXシリーズ」に注力しています。

 

<医療機器>

日本では下記レンティス コンフォート等の眼内レンズ、及び、EMEAではプリザーフロ マイクロシャントの販売が堅調に推移し、前連結会計年度と比べ24.1%増加し、78億円となりました。主力製品の売上は次のとおりです。

「レンティス コンフォート」

13億円

(対前年増減率 △  5.2%)

「プリザーフロ マイクロシャント」

41億円

(対前年増減率 + 70.6%)

 

<その他>

その他の売上収益は19億円となりました。サプリメント製品の販売、株式会社クレール(連結子会社)での無塵・無菌服のクリーニング業によるものです。

 

[コア営業利益]

売上総利益について、前連結会計年度と比べ7.7%増加し、1,789億円となりました。

販売費及び一般管理費は、前連結会計年度と比べ2.9%減少し、(為替影響を除いた対前年増減率は△6.9%)、908億円となりました。

研究開発費は、前連結会計年度と比べ10.7%減少し(為替影響を除いた対前年増減率は△14.5%)、253億円となりました。

 

以上により、コアベースでの営業利益は、前連結会計年度と比べ41.9%増加し、(為替影響を除いた対前年増減率は+39.9%)628億円となりました。

 

※1 Santenグループでは2015年3月期のIFRS適用を機に、IFRSによる業績(「IFRS(フル)ベース」)から一部の収益及び費用を控除した「コアベース」での財務情報を事業活動自体の収益性を示す指標として開示しています。IFRS(フル)ベースによる業績からコアベースでの業績への調整において控除する以下の収益及び費用とそれらに係る法人所得税費用を調整し、コアベースを算出しています。

 

・製品に係る無形資産償却費

・その他の収益

・その他の費用

・金融収益

・金融費用

・持分法による投資損益

・企業買収に係る費用、並びに再成長のための生産性向上及び合理化等に係る費用

 

※2 アレジオンLX点眼液を含みます。

 

※3 ジクアスLX点眼液を含みます。

 

※4 製造販売元であるバイエル薬品株式会社とのコ・プロモーション製品です。

 

ロ.IFRS(フル)ベース

(単位:億円)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

対前年度増減率

売上収益

2,790

3,020

8.2%

営業利益(△は損失)

△31

385

-%

当期利益(△は損失)

△150

267

-%

親会社の所有者に帰属する

当期利益(△は損失)

△149

266

-%

 

[売上収益]

コアベースからの調整はありません。

 

[営業利益]

コアベースからの調整内容として、米州の合理化に関する費用が、売上原価に2億円、販売費及び一般管理費に7億円、研究開発費に2億円それぞれ発生しました。

 

製品に係る無形資産償却費は、前連結会計年度と比べ0.5%減少し(為替影響を除いた対前年増減率は△3.6%)、95億円となりました。これは主に、2014年にMerck & Co., Inc.(米国)から譲り受けた眼科製品及び2016年のInnFocus, Inc.(米国)買収に伴い取得したプリザーフロ マイクロシャントに関する無形資産、並びに2015年より欧州で販売を開始した「Ikervis(アイケルビス)」及び2023年より欧州で販売を開始した「Rhopressa / Rocklatan」に関する無形資産の償却によるものです。

 

その他の収益は、15億円となりました。これは主に、米州における医療用医薬品事業に係る一部製品の資産譲渡によるものです。

その他の費用は、153億円となりました。これは主に、網膜前駆細胞を主成分とする細胞治療製剤の製品に係る無形資産について事業計画の見直し等の影響により減損損失を計上したこと、並びに日本における早期退職特別支援プログラムに伴う退職特別加算金及び米州における医薬品販売事業の最大限合理化等によるものです。

 

これらにより、IFRS(フル)ベースの営業利益は385億円(前連結会計年度は31億円の営業損失)となりました。

 

[当期利益]

金融収益は、16億円となりました。

金融費用は、27億円となりました。

持分法による投資損失は、76億円となりました。これは持分法を適用しているTwenty Twenty Therapeutics LLC(米国)とPlano Pte. Ltd. (シンガポール)の損益のうち当社の持分に帰属する金額、及び両社の持分法による投資について減損損失を計上したものです。

法人所得税費用は、前連結会計年度より60億円減少し、32億円となりました。これは主に、上述のIFRS(フル)ベースの営業利益の増加に伴う税引前当期利益が増加した一方で、在外子会社の事業環境及び今後の業績動向等を勘案し、繰延税金資産を認識したことによるものです。

 

これらにより、当期利益は267億円(前連結会計年度は150億円の当期損失)となりました。

 

[親会社の所有者に帰属する当期利益]

親会社の所有者に帰属する当期利益は266億円(前連結会計年度は149億円の親会社の所有者に帰属する当期損失)となりました。売上収益に対するその比率は8.8%となりました。

 

また、Santenグループの経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりです。

 

(イ)キャッシュ・フローの状況及び資本の財源及び資金の流動性についての分析

ⅰ 財務戦略

財務戦略は眼科領域で競争優位を構築することで収益性を高め、キャッシュ創出力、ひいては株主価値の最大化を追求することを基本としています。

中期経営計画(2023~2025年度)においては収益性の拡大、効率性の追求、健全性の確保を柱にしROE(親会社所有者帰属持分利益率)の向上に取組んでまいります。その中でも資本コストに対する超過収益力を最大化することによりROE上昇を図ります。

特に、収益改善と同時にキャッシュの創出力を高め、その原資を将来の成長への投資として資本コストを上回るリターンが見込める設備、研究開発、事業開発に優先的に投下いたします。一方で、有望な投資機会が無ければ、株価の状況を鑑みながら自社株買いによる利益還元を実施します。

また、配当については累進配当に基づき現行水準(半期17円)を下限値として、中期的な利益成長に合わせて増配を検討してまいります。

当連結会計年度は、業績及び財務状況などを総合的に勘案した結果、中間配当は1株につき16円、期末配当は1株につき17円としました。

 

ⅱ キャッシュ・フロー

(単位:億円)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減額

営業活動による

キャッシュ・フロー

371

726

355

投資活動による

キャッシュ・フロー

△268

△61

206

財務活動による

キャッシュ・フロー

△372

△340

32

現金及び現金同等物の

期末残高

579

946

367

 

当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末と比べ367億円増加、946億円となりました。

当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、726億円の収入(前連結会計年度は、371億円の収入)となりました。当期利益267億円減価償却費及び償却費182億円営業債権及びその他の債権の流動化等による減少184億円並びに法人所得税の支払額121億円などによるものです。

投資活動によるキャッシュ・フローは、61億円の支出(前連結会計年度は、268億円の支出)となりました。有形固定資産の取得による支出93億円などによるものです。また政策保有株式の見直しを継続して実施しており、当連結会計年度は4銘柄の投資の売却による収入が41億円ありました。

財務活動によるキャッシュ・フローは、340億円の支出(前連結会計年度は、372億円の支出)となりました。自己株式の取得による支出170億円及び配当金の支払額119億円などによるものです。

当連結会計年度の設備投資額は、102億円となりました。製造設備及び研究開発用機器の更新に加え、拡大を続ける需要に対し、安定供給のための生産能力確保を目的として、中国の現地法人「参天製薬(中国)有限公司」の新工場に係る投資を継続しています。今後、見込まれる市場成長に対し、キャパシティを構築することで、グローバルでの競争優位を確立し、さらなる事業の成長に繋げていきます。また、事業のグローバル展開を支え、業務標準化と抜本的な生産性向上を目的として、次世代ERPへの投資等を継続しています。

 

 

(ウ)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的指標

2023~2025年度中期経営計画においては、強みである医療用医薬品事業の最大化にあらためて注力しています。収益性の改善、医療用医薬品事業とそれに直結する取り組みにリソースを集約することで生活者・患者さんへの貢献価値の最大化、これらを支える組織の運用体制や仕組みの強化に取り組んでいます。収益性に関連するKPIについては後述のとおり2023年度に前倒しで実現しました。2026年度以降の大型パイプラインによる価値貢献の最大化につなげていきます。

なお、大型パイプラインの開発は順調に進んでいる一方、日本における長期収載品の選定療養の適用等の環境変化にも直面しています。これらの状況を踏まえ、新たな中期経営計画の策定を予定しています。

 

2025年度 全社数値目標・KPI(重要業績評価指標)

KPI(重要業績評価指標)

2023年度実績

2025年度目標

売上高

3,020億円

2,800億円

コア営業利益額

628億円

560億円

コア営業利益率

21%

20%

海外一人当たり売上高成長率

33%

(対前年度増減率)

7%以上の成長

(2022年度~2025年度の年平均成長率)

コアROE(親会社所有者帰属持分当期利益率)

16%

13%

コアEPS(1株当たり当期利益)の成長率

54%

(対前年度増減率)

10%以上

(2022年度~2025年度の年平均成長率)

 

②重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

Santenグループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」第93条の規定によりIFRSに準拠して作成しています。この連結財務諸表の作成に当たって、必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しています。

Santenグループの連結財務諸表で採用する重要性がある会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要性がある会計方針」に記載しています。

Santenグループの連結財務諸表の作成において、経営者は会計方針の適用並びに資産、負債、収益及び費用に関する報告金額に影響を及ぼす判断、見積り及び仮定の設定を行っています。

Santenグループの財政状態又は経営成績に対して特に重大な影響を与え得る会計上の見積り及び判断が必要となる項目は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 4.重要な会計上の判断、見積り及び仮定」に記載しています。

 

5【経営上の重要な契約等】

(1)技術契約(導入)

相手方の名称

国名

契約品目

契約内容

契約期間

対価の支払

第一三共

株式会社

日本

オフロキサシン

(合成抗菌剤)

眼科薬における独占的製造販売権

1986年8月~2001年9月

(以後3年毎の自動更新)

販売高に応じた一定料率のロイヤルティ

第一三共

株式会社

日本

レボフロキサシン

(合成抗菌剤)

眼科薬における独占的製造販売権

1994年5月~発売日から10年間、又は、特許権の存続期間の満了日の長い方

(以後3年毎の自動更新)

契約一時金及び販売高に応じた一定料率のロイヤルティ

エーザイ

株式会社

日本

ブナゾシン塩酸塩

(緑内障治療剤)

眼科薬における独占的製造販売権

1994年12月~発売日から8年間、又は、特許権の存続期間の満了日の長い方

(以後1年毎の自動更新)

契約一時金及び販売高に応じた一定料率のロイヤルティ

AGC

株式会社

日本

タフルプロスト

(緑内障・高眼圧症治療剤)

眼科薬における独占的製造販売権

2005年12月~発売日から10年間、又は、特許権の存続期間の満了日の長い方

契約一時金及び販売高に応じた一定料率のロイヤルティ

日本ベーリン

ガーインゲル

ハイム株式会社

(注)1

日本

エピナスチン塩酸塩

(抗アレルギー点眼剤)

眼科薬における独占的製造販売権

2011年2月~発売日から10年間

契約一時金及び販売高に応じた一定料率のロイヤルティ

UBE

株式会社

日本

オミデネパグ イソプロピル

(緑内障・高眼圧症治療剤)

眼科薬における独占的製造販売権

2011年2月~発売日から10年間、又は、特許権の存続期間の満了日の長い方

契約一時金、マイルストン及び販売高に応じた一定料率のロイヤルティ

Teleon社

オランダ

レンティス コンフォート

(眼内レンズ)

独占的製造販売権

2016年3月~特許権の存続期間の満了日の長い方

契約一時金、マイルストン及び販売高に応じた一定料率のロイヤルティ

jCyte社

米国

jCell

(網膜前駆細胞を主成分とする細胞治療製剤)

日本、欧州、アジアの独占的開発・販売権

2020年5月~国毎に実施料支払終了まで(最初の製品販売から15年)

契約一時金、マイルストン及び販売高に応じた一定料率のロイヤルティ

RVL社

米国

RVL-1201

(後天性眼瞼下垂治療剤)

日本、中国、その他アジア諸国、EMEA諸国の独占的開発・承認申請・商業化の権利

2020年7月~国毎にロイヤルティ支払期間満了まで

契約一時金、マイルストン及び販売高に応じた一定料率のロイヤルティ

Alcon社

スイス

Rhopressa®

Rocklatan®

(緑内障・高眼圧症治療剤)

日本、欧州、中国、アジア諸国その他における独占的開発・販売権

2020年10月~国・製品毎に実施料支払終了まで

契約一時金、マイルストン及び販売高に応じた一定料率のロイヤルティ

Sydnexis社

米国

SYD-101

(小児における進行性近視の新しい治療薬)

欧州、中東、アフリカ地域(EMEA)における独占的販売

2021年8月~国毎にロイヤルティ支払期間満了まで

契約一時金、マイルストン及び販売高に応じた一定料率のロイヤルティ

(注)1 2023年11月に契約を終了しました。

 

(2)技術契約(導出)

相手方の名称

国名

契約品目

契約内容

契約期間

対価の受取

Bausch & Lomb社

米国

エタニティー

(眼内レンズ)

独占的製造販売権

2009年2月~発売日から10年間、又は、特許権の存続期間の満了日の長い方

契約一時金、マイルストン及び販売高に応じた一定料率のロイヤルティ

Thea社

米国

タフルプロスト

(緑内障・高眼圧症治療剤)

独占的製造販売権

2014年4月~

2029年5月

マイルストン及び販売高に応じた一定料率のロイヤルティ

Glaukos社

米国

STN2000100(DE-128、PRESERFLO MicroShunt(プリザーフロ マイクロシャント))

米州(北米、中南米)、オーストラリア及びニュージーランドにおける開発・販売提携

2021年5月~対象地域の当該国におけるライセンス製品を対象とする有効期間満了日、又は、対象地域の当該国におけるライセンス製品の最初の発売日から15年間の長い方

マイルストン及び販売高に応じた一定料率のロイヤルティ受取

Visiox社

米国

OMLONTI®

(緑内障・高眼圧症治療剤)

米国における製造販売権

2023年7月~ロイヤルティ期間の満了日

マイルストン及び販売高に応じた一定料率のロイヤルティ受取

Harrow Health社

米国

Verkazia®

(春季カタル治療薬)

米国・カナダにおける製造販売権

2023年7月~ロイヤルティ期間の満了日

契約一時金、マイルストン及び販売高に応じた一定料率のロイヤルティ受取

Harrow Health社

米国

Cationorm® Plus

(人工涙液)

カナダにおける製造販売権

2023年7月~ロイヤルティ期間の満了日

契約一時金、マイルストン及び販売高に応じた一定料率のロイヤルティ受取

 

(3)販売契約

相手方の名称

国名

契約品目

契約内容

契約期間

対価の支払

ヤンセン

ファーマ

株式会社

(注)2

日本

レボカバスチン塩酸塩

(抗アレルギー剤)

国内販売権

2000年9月~

発売日から10年後の12月

(以後1年毎の自動更新)

契約一時金支払

バイエル薬品

株式会社

日本

アフリベルセプト硝子体内注射液

(眼科用VEGF阻害剤)

国内独占的販売権

2012年5月~2027年12月

田辺三菱製薬

株式会社

(注)4

日本

抗アレルギー点眼剤「アレジオン点眼液」及び「アレジオンLX点眼液」

共同販売促進

2019年9月~2024年5月

販売高に応じた固定額対価及び変動額対価支払

(注)2 2023年4月に契約を終了しました。

3 2024年4月に田辺三菱製薬株式会社と持続性・経眼瞼アレルギー性結膜炎治療剤「アレジオン®眼瞼クリーム0.5%」について、日本における共同販売促進契約を締結しました。

4 2024年5月に契約を終了しました。

 

(4)企業結合による条件付対価

 当社は米国時間の2016年8月19日にInnFocus, Inc.(米国)を買収しました。当社は、条件付対価契約に基づき、STN2000100(DE-128、PRESERFLO MicroShunt(プリザーフロ マイクロシャント))の開発の進捗及び販売実績に応じたマイルストンを支払う定めがあります。

 

(5)合弁契約

相手方の名称

国名

契約内容

契約締結日

重慶科瑞製薬

(集団)有限公司

中国

中国の患者さんに適切な価格で高品質の医療用眼科薬を提供することを目的に2016年8月に合弁会社(重慶参天科瑞製薬有限公司)を設立

2016年3月22日

Verily社

米国

独創的な眼科デバイスの開発・商業化を目指し2020年8月に合弁会社(Twenty Twenty Therapeutics LLC)を設立

2020年2月3日

 

(6)その他

相手方の名称

国名

契約内容

契約期間又は

契約締結日

International

Telecommunication

Union(注)5

スイス

International Telecommunication Union及びWorld Health Organizationが実施しているデジタルヘルスの取り組みである眼科領域におけるBe He@lthy, Be Mobileに対するサポート

2020年1月~

2023年12月

Orbis International

(注)6

米国

眼科医療従事者のスキル向上を継続的に支援するデジタルトレーニングツールの開発を目的とした提携

2020年10月~

2030年12月

今後ますます増加が予想される眼疾患について、低・中所得国(とりわけアジア)における負担軽減に向けた10年間の長期パートナーシップ

Plano Pte. Ltd.

シンガポール

世界の近視患者さんが抱える負担に対処するための戦略的提携

2020年6月22日

Airdoc社

中国

AI活用による中国における眼疾患の診断率向上に向けての提携

2021年6月~

2024年6月

Singapore National Eye Centre

シンガポール

アジアにおける眼科医療エコシステム発展を目指した革新的教育プログラムの開発・国際展開に関する戦略的パートナーシップ

2020年12月~

2025年12月

アクチュアライズ株式会社

日本

フックス角膜内皮ジストロフィを対象としたシロリムス点眼液のグローバル開発に向けた第Ⅱ相臨床試験(PhaseⅡa/POC試験)の共同開発

2021年11月~本試験の後に行う米国薬事当局又は欧州薬事当局に対する相談のうち、いずれか遅い当局相談の終了後30日が経過する日

(注)5 2023年12月に契約を終了しました。

6 2023年12月に契約を終了しました。

 

6【研究開発活動】

 私たちSantenグループは、患者さんニーズに応えるため、世界中の患者さんの声に耳を傾け、インサイトを基に得られた情報から取り組むべき疾患を特定し、戦略を構築しています。そのため、事業方針やプロセスはいつも患者さん視点で策定し、研究・開発を進めています。

 

(疾患領域)

 Santenグループはいつも患者さん視点にたち、取り組むべき疾患を特定し、疾患戦略を構築しています。加齢黄斑変性、アレルギー、ドライアイ、緑内障を基盤事業とし、疾患に応じた様々な製品開発を通じて基盤の価値最大化に取り組んでいます。また長期ビジョンの実現に向け、新規領域である近視、眼瞼下垂のソリューション開発も進めています。

 

(イノベーション & エグゼキューション)

 Santenグループの製品開発では、コンセプトの実証、作用機序(Mechanism of Action: MoA)の初期理解、製品化など、一連のプロセスを可能な限り早く前進させることに尽力しています。患者さんの声や市場ニーズを考慮し、MoAへの理解を深め、R&D戦略に反映しています。また、市場ニーズは規制環境あるいは商業環境にもなりうるので、すべてを包括してはじめて開発戦略が固まるものと考えます。さらにSantenグループは、ライフサイクルマネジメントによる製品価値最大化を目指し、継続的な製品開発能力向上に努めています。点眼容器の改善だけではなく、これまで検討してこなかった他の眼科疾患領域にも目を向けています。Santenグループは患者さんに最大の価値を提供するために努力しています。

 

(開発パイプラインの状況)

<緑内障・高眼圧症領域>

プロスタグランジンF₂α誘導体及びβ遮断剤の配合剤STN1011101(DE-111A、一般名:タフルプロスト/チモロールマレイン酸塩)は、中国で2022年12月に販売承認を申請しました。

FP/EP3受容体デュアル作動薬STN1012600(DE-126、一般名:セペタプロスト)は、米国で2021年12月に追加の第Ⅱ相試験を終了しました。日本では2023年6月に第Ⅲ相試験を終了しました。欧州では第Ⅱ相試験(探索的試験)を終了しました。

プロスタグランジンF₂α誘導体の乳化点眼剤STN1013001(DE-130A、一般名:ラタノプロスト)は、アジアで2022年3月に第Ⅲ相試験を終了しました。欧州では2023年11月に販売承認を取得しました。

ROCK阻害剤STN1013900(AR-13324、一般名:ネタルスジルメシル酸塩)は、日本で2020年11月から第Ⅲ相試験を実施しています。欧州では販売承認を取得しており、2023年2月以降スウェーデンなどで販売しています。アジアでは順次販売承認を申請しており、2023年1月以降タイなどで販売承認を取得しています。

ROCK阻害剤及びプロスタグランジンF₂α誘導体の配合剤STN1014000(PG-324、一般名:ネタルスジルメシル酸塩/ラタノプロスト)は、欧州で販売承認を取得しており、2023年1月以降ドイツなどで販売しています。アジアでは順次販売承認を申請しており、2023年1月以降タイなどで販売承認を取得しています。

 

<角結膜疾患(ドライアイを含む)領域>

春季カタルを対象とするSTN1007603(DE-076C、一般名:シクロスポリン)は、既に承認・販売されている欧州、アジア、カナダなどに続き、中国で2022年4月に販売承認を取得し、米国で2022年5月に発売しました。2023年7月に米国・カナダにおける製造・商業化の独占的権利をHarrow Health, Inc.(米国)へ供与しました。

ドライアイを対象とするSTN1008903(DE-089C、一般名:ジクアホソルナトリウム)は、日本で2022年11月に発売しました。アジアでは、2024年3月に韓国で販売承認を取得しました。

ドライアイを対象とするSTN1014100(一般名:オロダテロール塩酸塩)は、日本で2024年3月に第Ⅰ相/前期第Ⅱ相試験を終了しました。

フックス角膜内皮ジストロフィを対象としてアクチュアライズ株式会社と共同開発契約を締結しているSTN1010904*(一般名:シロリムス)は、米国、フランス、インドで2022年5月から前期第Ⅱ相試験を実施しています。(*開発コード(STN1010904)は、第Ⅱ相試験終了時に当社が独占的実施権を獲得した後に附番予定のコードです。)

 

マイボーム腺機能不全を対象とするSTN1010905(一般名:シロリムス)は、日本で2022年8月に前期第Ⅱ相試験を終了し、追加の前期第Ⅱ相試験を実施する予定です。

アレルギー性結膜炎を対象とする眼瞼クリーム製剤STN1011402(一般名:エピナスチン塩酸塩)は、日本で2024年3月に製造販売承認を取得し、2024年5月に発売しました。

アレルギー性結膜炎を対象とする1日2回点眼の高用量製剤STN1011403(一般名:エピナスチン塩酸塩)は、中国で2024年3月に第Ⅲ相試験を開始しました。

 

<屈折異常領域>

小児における近視を対象とするSTN1012700(DE-127、一般名:アトロピン硫酸塩)は、日本で2024年2月に製造販売承認を申請しました。中国では2022年6月から第Ⅱ/Ⅲ相試験を実施しています。アジアでは2020年4月に第Ⅱ相試験を終了しました。

小児における近視を対象とするSTN1012701(SYD-101、一般名:アトロピン硫酸塩)は、導入元であるSydnexis Inc.(米国)により欧州及び米国で第Ⅲ相試験が実施されています。当社は、欧州、中東及びアフリカ地域における独占ライセンス権を保有しています。

近視を対象とするSTN1013400(化合物名:AFDX0250BS)は、日本で2023年5月から前期第Ⅱ相試験を実施しています。中国では2024年3月に第Ⅰ相試験を終了しました。

老視を対象とするSTN1013600(一般名:ウルソデオキシコール酸)は、前期第Ⅱ相試験のデータ解析の結果、開発を中止しました。

 

<その他の領域>

眼瞼下垂を対象とするSTN1013800(一般名:オキシメタゾリン塩酸塩)は、日本で2024年3月に第Ⅲ相試験を終了しました。

 

 

※開発コードの附番方法変更に伴い、新開発コード(STNXXXXXXX)及び既存開発コード(DE-XXX)を併記しています。なお、AR-13324及びPG-324はAlcon Inc.(スイス)、SYD-101はSydnexis Inc.(米国)での開発コードです。

※STN1011700(DE-117、一般名:オミデネパグ イソプロピル)は、日本、アジアで製品名エイベリスとして販売しています。米国では製品名OMLONTIとして販売承認を取得しており、2023年7月に米国における製造・商業化の独占的権利についてVisiox Pharmaceuticals, Inc.(米国)へ供与しました。

 

 なお、当連結会計年度の研究開発費の総額は、254億円です。