文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループでは、「世のため、人のため」「お得意さまに学ぶ」という創業のこころを受け継ぎ、事業領域を「健康創造」と定め、医療と健康に関わる分野で、事業を通して世の中のお役に立つことを会社経営の基本方針としております。
当社グループのお得意さまは、医療機関、保険薬局、医薬品メーカーさまだけでなく、医療・介護に従事される方々、患者さま、さらには、地域住民、地域社会にまで広がっており、これまで築き上げてきたお得意さまとの信頼関係を「伝統資産」と位置づけ、「社会課題の解決」と「社会コストの低減」に貢献する新しい価値を創造し続けることが当社グループの存在意義(パーパス)となります。
当社グループは、今を「第3の創業期」と位置づけ、各事業で培ってきた機能や協業企業のサービスを組み合わせ、新たな価値を提供する「機能総体」の発想により、患者さまの「健康創造」に貢献する「健康創造事業体」を実現し、企業価値向上と持続的な成長を目指してまいります。
当社グループは、2024年3月期から2026年3月期までの中期経営計画において、下記の定量目標を掲げております。
<主要財務指標>
※ 長期目標:創立100周年(2033年3月期)までにROE8%以上
<サステナビリティへの取組み>
当社グループは、中期経営計画「For your next heartbeat ~未来に向けた鼓動を創ろう~」を策定し推進しております。
<2024年3月期~2026年3月期 中期経営計画スローガン>
For your next heartbeat
~未来に向けた鼓動を創ろう~
<スズケングループが生み出す3つの“鼓動”>
・Beat1:地域住民の健康を守る
外部企業との連携を拡大し、地域医療・自治体に対するサービスパッケージを確立する
・Beat2:需給調整機能で社会の無駄を削減
効率的かつ安定的な流通機能を構築することで、医薬品ロスを低減し、安定供給を支える
・Beat3:未来価値の創生できる人材を育成
自ら社会に新しいインパクトを提供することができる、創造的なリーダーシップ人材を育成する
<中期経営計画 骨子>
本中計期間では、「既存事業の変革」と「新たな成長事業の準備」を主なテーマと位置づけております。
「既存事業の変革」においては、サステナブルな社会インフラ基盤の確立に向けてヘルスケア流通改革を実践し、生産性を上げることで一層の利益体質へと転換してまいります。
「新たな成長事業の準備」においては、Chapter ZEROでの取組みと上記各Beatを連動させ、日本の新たなヘルスケアエコシステムの創生に向けて、オープンイノベーションによる発想で協業企業とともに新たな価値創造を図ってまいります。
1 サステナブルな社会インフラ基盤の確立
① ヘルスケア流通改革
② アジア(中国・韓国)事業の再構築
2 日本の新たなヘルスケアエコシステムの創生
③ スマートロジスティクス
④ デジタルヘルスケア
⑤ 地域医療介護支援
⑥ ヘルスケア製品開発
※中期経営計画の詳細につきましては、下記当社ホームページをご参照ください。
https://www.suzuken.co.jp/ir/strategy/
また、証券取引所が要請する「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」に関しては、既に対応方針を開示しておりますが、2024年3月末のPBRは0.87であるなか、厳しい環境変化へ適応していくためにも、医薬品卸売事業をコア事業とする事業体から健康創造事業体への転換を早期に実現し、「既存事業の構造改革」と「新規事業の創出(新領域へのチャレンジ)」を両利きで実践することで、安定した収益の確保に加え、新しい利益を獲得できる新規事業をいち早く創出していくことが重要であると考えております。
併せて、政策保有株式の縮減や株主還元の強化、将来的には適切な負債の活用を視野に入れたバランスシート改革も実施していくことでROEの向上を実現し、更には非財務情報の開示充実やIR活動の強化など、PER(株価収益率)向上に向けた取組みの強化を図ることで、PBR1倍超の早期実現へ繋げてまいります。
<資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応方針>
1 PBR改善に向けた目標とする指標
・中期経営計画(2024年3月期~2026年3月期)においては各年度ともROE5%以上(資本コスト以上)
※ 現在の当社資本コストを5%程度と推計
・創立100周年(2033年3月期)までにROE8%以上達成
2 具体的な取組み
※「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応方針」の詳細につきましては、下記当社ホームページを
ご参照ください。
https://www.suzuken.co.jp/ir/strategy/
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営環境
さまざまな社会課題の顕在化やステークホルダーの価値観の多様化により、事業を通じて社会課題の解決に貢献する新たな価値を創造し、持続的な成長を目指すサステナビリティ経営が一層求められております。当社グループは、医薬品流通という社会インフラとしての機能を維持し、健康創造領域における事業や機能、サービスの提供を通して地域社会に貢献し続けることを目指しております。そうした価値創造を支える基盤として、グループ全体でサステナビリティ経営の推進に取り組んでおります。
(2)サステナビリティの基本的な考え方
当社グループは、「すべての人々の笑顔あふれる豊かな生活に貢献し続ける」という経営理念の下、「健康創造」という事業領域において社会インフラとしての使命を果たすとともに、事業を通じて社会課題の解決に貢献する新たな価値を提供することで、グループの企業価値も向上すると考えております。
価値創造にはバリューチェーンにおけるさまざまなステークホルダーとの協働が不可欠であり、ステークホルダーとの信頼関係を育みながら、社会課題を解決する大きな価値を生み出し、持続的な成長を目指してまいります。
(3)サステナビリティマネジメント
① ガバナンス
当社グループは2022年4月、グループ一体でサステナビリティ経営を推進していくため、社長直轄機構の「サステナビリティ委員会」を設置いたしました。当委員会が中心となりグループ各社と連携することで、グループ全体のサステナビリティ活動を推進する体制を構築しております。
サステナビリティ委員会は、人事担当の執行役員(有価証券報告書提出日現在は企画部門の執行役員)を委員長とし、管理部門の本部長および各事業本部の本部長やグループ各社を管轄する主管部署長によって構成され、原則年1回以上開催することとしております。多様な事業を展開する当社グループが対応すべき社会課題や、グループにおけるサステナビリティ活動、ESG重要課題(マテリアリティ)に対応した数値目標について検討し、進捗をモニタリングしております。
なお、委員会の協議内容は取締役会に報告し、取締役会では、当社グループにおけるサステナビリティ課題について意見交換を行い、グループ全体のサステナビリティ活動の実践を監督しております。
サステナビリティ推進体制
② 戦略
当社グループは、2024年3月期から2026年3月期までの3年間の中期経営計画「For your next heartbeat ~未来に向けた鼓動を創ろう~」において、「健康創造事業体」の実現により、変化するヘルスケアエコシステムに新たな「解」と「希望」を送り続ける存在として新たな価値を創出し続け、さらなる企業価値の向上と社会課題の解決に貢献する姿を目指しております。このような姿を目指す当社グループにとって、サステナビリティ活動は事業そのものであると考えております。
「健康創造事業体」の実現を目指す中期経営計画における経営戦略に基づき、患者さまのヘルスケアライフサイクルのすべてに貢献する事業・サービスを通じた当社グループのサステナビリティ活動が、事業機会の拡大とリスクの低減につながり、持続的な成長と患者さまをはじめ、地域社会や従業員等のすべてのステークホルダーの皆さまに還元されることが当社グループの価値創造のプロセスであると考えております。
各分野の事業戦略も踏まえ、2022年度にはマテリアリティの見直しを実施するとともに、対応するKPIおよび数値目標を設定いたしました。
ESG重要課題における考え方・主な取り組みとSDGs
③ リスク管理
当社グループは、ESGを新たな価値創造を支える基盤であると考え、サステナビリティ推進体制の下、当社グループのESGの取り組みを強化していくため、バリューチェーン全体を見渡し、事業に関わる情勢の変化や社会動向を踏まえ、「事業機会の拡大」と「リスクの低減」の観点からESG重要課題(マテリアリティ)を特定しております。また、特定したESG重要課題に関する取り組みは、SASBやGRIなどの国際基準、ESG評価機関の評価項目、ステークホルダーの意見なども参考にし、定期的に見直すこととしております。
ESG重要課題(マテリアリティ)の特定プロセス
④ 指標及び目標
当社は、上記の取り組みを踏まえ、ESG重要課題(マテリアリティ)における指標及び目標を設定しております。指標及び目標を設定することにより、的確な進捗管理を行い、グループ一体でのサステナビリティ活動の展開・浸透につなげるとともに、事業の推進力に変えていくことを目指しております。
サステナビリティ指標及び目標
(4)環境保全への対応
当社グループは、21世紀の最も重要な課題の一つは地球環境保全であると認識し、「地球の健康とすべての人々の健康で笑顔あふれる豊かな生活に貢献するベストパートナー」を目指しております。
事業活動によるCO2の排出は、営業車両におけるガソリン使用と全国の営業拠点における電力使用が大半を占めており、事業活動と環境への負荷は相関関係にあります。そのため、環境に関する法律・規則などを遵守することはもちろん、事業活動を通じ、地域社会と協調しながら環境負荷の低減にも取り組んでおります。
また、日本国内では、医薬品の廃棄ロスや薬の飲み残し(残薬)が大きな課題となっており、当社グループでは、こうした社会的コストを最小限に抑えることを重要な経営テーマと位置付けております。
① ガバナンス
気候変動に関するガバナンスは、サステナビリティマネジメントのガバナンスに組み込まれており、「地球の健康とすべての人々の健康で笑顔あふれる豊かな生活に貢献するベストパートナー」を目指すという方針の下、持続可能な社会の実現に向け、CO2排出量の削減をはじめとする環境保全や社会コストの低減といった重要課題の取り組み、事業活動における気候変動などによるリスク管理を行います。
② 戦略
当社グループは、事業活動に与える影響について、政府間パネル(IPCC)や国際エネルギー機関(IEA)並びに各中央銀行・金融監督当局のネットワーク(NGFS)が公表する複数のシナリオを元に、想定される気候変動リスク・機会について、財務的影響を定性・定量的に評価を行い、分析を行っております。
なお、パリ協定の長期目標である産業革命前からの気温上昇を「2℃未満」及びCO2排出量削減への取組みが不十分な「4℃」の2つのシナリオを想定しております。
a 想定するシナリオ
b リスク・機会の概要、財務への影響
③ リスク管理
当社グループへの気候変動による影響については、サステナビリティ推進体制に基づき、サステナビリティ委員会にて協議を行うとともに、案件に応じて取締役会に検討内容の報告を行います。
また、「安心・安全かつ安定的な医薬品流通」という社会インフラとしての機能の維持はリスク管理における重要課題と位置付け、トータル・トレーサビリティやグローバル基準による品質向上に加え、自然災害などの発生時には、メーカー物流と卸物流の連携による東名阪を基盤とした全国BCPネットワークを構築するなど、有事の際も流通を途絶えさせない対策を推進しております。
④ 指標及び目標
当社グループは、2050年のカーボンニュートラル宣言に賛同し、CO2排出量削減目標についてグループ全体※で Scope1+Scope2 を2030年度40%削減(2020年度比)という目標を掲げております。また、Scope3に対する取組みも重要であると考えており、サプライチェーン全体でCO2排出量の削減に向けた取組みを進めてまいります。
※㈱スズケン、㈱サンキ、㈱アスティス、㈱翔薬、㈱スズケン沖縄薬品、ナカノ薬品㈱、㈱スズケン岩手、㈱エス・ディ・ロジ、㈱三和化学研究所、㈱ユニスマイル、中央運輸㈱、サンキ・ウエルビィ㈱、㈱エスケアメイト、ケンツメディコ㈱、㈱エスマイル
<今後の取組み>
記述の環境保全への対応として以下の取組みを予定しています。
・営業車両におけるガソリン使用によるCO2排出量削減のためのEVの導入
・全国の営業拠点における電力使用によるCO2排出量削減のため、太陽光パネルの追加設置など再生可能エネルギーの有効活用
・営業拠点における照明のLED化、空調設備の入替、医薬品保冷庫の入替など省エネ設備への切替
・データの統合管理による現状分析と見える化による対策の効率化
(5)人的資本・多様性
当社グループにおける「人」は最大の経営資源であり、当社グループを取り巻く環境が想定を超えるスピードで大きく変化する中、当社グループが目指す、患者さまのヘルスケアライフサイクルすべてに貢献する「健康創造事業体」の実現に向けて、変化に対応する多様な発想を持った人材の育成が必要であると考えております。グループだけでなく協業企業とともに多様な人材が集い、「One Team」となって、事業を通じた社会への貢献に取り組み、一人ひとりの成長と、その能力を最大限経営に生かす人的資本経営を進めております。
① 戦略
人材戦略は中期経営計画「For your next heartbeat ~未来に向けた鼓動を創ろう~」の骨子に基づき、「人材の確保」をはじめ、「リスキリング」「ダイバーシティ&インクルージョン」「ウェルビーイング」「エンゲージメント」という5つのアプローチにより、人材の活性化とポートフォリオの充実を推進しております。
また、中期経営計画においては、DXを戦略の柱と位置付け、デジタイゼーションとデジタライゼーションの両面において、実力を発揮する「スズケングループDX人材」の育成を人材戦略の中核としております。
a リスキリングの推進
(ア)求める人材像
社員に求める3つのコンピテンスを定めて、人材育成における基本的な考え方と位置付け、育成施策の立案・推進を図っております。
・Connect ~つなぐ~
お得意さまと「価値」を、デジタルとリアルでつなぎ、なくてはならない存在となる
・Agile ~小さく早く動く~
他より先に考え、勇気を持って早く動く
・Collaborate ~ともに考え・創る~
グループ内外のつながりを構築し、一緒になって考え、新たな価値を創造する
(イ)人材育成
・DX人材の育成
Eラーニングや資格取得等を組み合わせた「ランク別DXリスキリングプログラム」により、一人ひとりの着実な学びを支援しております。
・次世代リーダーの育成
当社グループにおける各事業の将来を担う人材に加え、グループや提携企業を含む外部企業との協業を推進し、「グループ機能総体」の発想で、新たな事業を創発、または育成できる次世代リーダーの育成に向けて、集合ミーティングやグループ内の選抜塾、グループ内外のローテーションなどの「リーダー育成プログラム」を推進しております。
b ダイバーシティ&インクルージョン
(ア)女性活躍の推進
当社グループでは、女性社員を積極的に採用し、新規プロジェクトへの登用を進めるなど、能力を最大限に発揮できる環境整備に努めており、当社及びグループ各社合わせて取締役に6名(社外取締役を含む)、執行役員に4名の女性が就任しております。なお、有価証券報告書提出日現在では、当社及びグループ各社合わせて取締役に7名(社外取締役を含む)、執行役員に3名の女性が就任しております。
女性管理職の状況
また、女性活躍推進法に基づく女性社員の活躍推進により、当社を含めたグループ会社3社が、女性の活躍推進状況が優良な事業主として、厚生労働省から「えるぼし」の認定を受けています。当社と㈱翔薬は、3段階のうち、2段階目の認定を受け、㈱エス・ディ・ロジは3段階目の認定を取得しております。
(イ)障害者雇用の促進
当社では2013年12月に特例子会社の㈱スズケンジョイナスを設立し、障害のある求職者の積極的な採用と一人ひとりの障害の特性を見極め、職務開発に取り組んでいます。2023年6月1日現在の障害者雇用率は2.5%であり、法定雇用率の2.3%を上回っております。
(ウ)シニア世代の活躍推進
定年前後の世代が70歳まで働ける環境を作り、経験、人脈を持っている方にも出来る限り長く活躍できる場を提供してまいります。
(エ)次世代育成支援
当社グループは、ワーク・ライフ・バランスの重要性が高まる中、ライフイベントを経ながらも働き続けることができる仕組みの整備と浸透を図っております。次世代育成支援対策推進法に基づいて育児支援に関する制度の充実を図り、当社を含めたグループ会社7社が子育てサポート企業として厚生労働省から「くるみん」の認定を受けております。今後は「男女を問わず育児ができる社会」を目指した改正育児休業法の趣旨に沿って、男性社員についても育児休業取得を促進してまいります。
男性育児休業取得の状況
(オ)ビヨンド協議会の設置
当社グループで働くすべての社員の実力を余すことなく引き出すために、「ビヨンド協議会」を設置します。ビヨンド協議会では、会社の枠を越えて活躍するための制度・ルール作りや均等な教育機会に関する協議、人材評価の基準作り等のテーマを協議します。様々な事業で活躍できるリーダー人材を見出し、育て、場を提供する協議をグループ横断で行います。
c ウェルビーイング
(ア)健康経営宣言
私たち一人ひとりが、“いきいきと明るく健やかでいること”を目指し、「からだ」と「こころ」の健康を維持・増進していくことが、患者さま、お得意さま、そして株主さまの「笑顔」につながっていくという「健康経営宣言」を行い、従業員と家族のみなさまの健康維持・増進に向けた取り組みを推進しております。
(イ)健康経営優良法人の認定
㈱スズケン、㈱サンキ、㈱アスティス、㈱翔薬、㈱エス・ディ・ロジ、㈱三和化学研究所ならびにスズケン健康保険組合は、優良な「健康経営」を実践している法人を顕彰する「健康経営優良法人2024(大規模法人部門)」と「健康経営優良法人 2024(中小規模法人部門)」にそれぞれ認定を受けております。当社グループでは、すべての人々の健康で豊かな生活に貢献し続けることを使命としており、この使命を果たすためには、従業員と家族の心身の健康を維持・増進していくことが重要と考えており、グループ各社の認定取得に取り組んでまいります。
(ウ)健康推進体制
健康管理の専門組織として、保健師が常駐する「健康相談室」を設置しています。健康相談室は、保健師が主体となって、定期健康診断の結果、再検査が必要な社員を個別にフォローして確実な再受診を促進するとともに、関連部署や産業医、健康保険組合と連携しながら、心身の健康管理・増進に関する取り組みや相談対応を行っております。
d エンゲージメント
(ア)グループコミュニケーションの強化
当社グループでは、グループ合同による研修やミーティングを実施し、グループ間や経営層とのコミュニケーションの場を増やしております。
(イ)グループ提案制度「チエノワ活動」の推進
当社グループ全社員の知恵を集結し、お得意さまのニーズにお応えする新しいグループ文化を醸成する取り組みとして、2022年4月からグループ提案制度「チエノワ」をスタートしました。業務改善や新規事業のアイデア募集をはじめ、社員からの提案をきっかけとしたプロジェクトの組成や、新たなアイデアの提案を募るイベントの実施などを計画しております。また、事業計画立案に向けた研修や勉強会も実施する予定です。「チエノワ」の推進により、「全員経営」の意識醸成と、新しい領域へ果敢にチャレンジする人材の育成・発掘、社内コミュニケーションの活性化を目指します。
② 指標及び目標
人材育成
ダイバーシティ&インクルージョン
有価証券報告書に記載の事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事業リスクを記載しております。
当社グループは、リスク発生の可能性を認識し、発生の回避に努めるとともに発生した場合は迅速かつ適切な対応に努める方針であります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであり、当社グループの事業等に関する全てのリスクを網羅したものではありません。
(1)医薬品卸売業界のリスク
① 法的規制について
<リスク解説>
医薬品卸売事業では、全国に営業拠点を設けて、事業を展開しております。
営業拠点の開設及び医薬品等の販売に際しては、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(医薬品医療機器等法)及び関連法令により規制を受けており、営業拠点の所在地の都道府県知事より必要な許可、登録、指定及び免許を受けた後、事業活動を行っております。これらの許可等の状況により、医薬品卸売事業の業績に影響を与えるリスクがあります。
<リスク対応>
医薬品卸売事業では、各社の薬事担当部署が中心となり、各営業拠点の新規出店の際には、必要な許可等の要件確認や申請手続きを行っております。また、出店後は従業員に対し継続的な教育指導等を実施し、許可業者として法令を遵守した活動を行っております。
② 医療保険制度改革について
<リスク解説>
医薬品卸売事業における主要取扱商品である医療用医薬品は、薬価基準に収載されております。
薬価基準は、「健康保険法の規定による療養に要する費用の額の算定方法」として厚生労働大臣が告示するもので、保険診療で使用できる医薬品の範囲と医療機関が使用した医薬品の請求価格を定めたものであります。薬価基準は医薬品の実勢納入価格を薬価に反映させることを目的に毎年改定され、大半の品目の薬価が引き下げられております。このため、医薬品卸売事業の業績は、薬価改定後の販売価格低下等の影響を受けることがあります。
国民医療費は高齢化の進展等により増加傾向にあります。政府は全世代型の持続可能な社会保障制度の構築に向け、医療保険制度改革等に取り組んでおり、その内容によっては医薬品卸売事業の業績に影響を与えるリスクがあります。
<リスク対応>
頻回改定の影響を受け、メーカーの経営は厳しくなり、アローアンスの縮小が予想されていることから、当社としては卸機能の適正評価を依頼し、固定的なリベートへの移行を依頼しております。また、高利益品目の販売に注力し、収益性の改善にも努めております。
③ 特有の商習慣について
a 価格未決定取引について
<リスク解説>
医薬品卸売事業では、医薬品を価格未決定のまま医療機関等に納入し、その後医薬品卸売業者と医療機関等の間で価格交渉を始めるという特異な取引形態があります。これは、医薬品が生命関連商品であるがゆえ、納入停滞が許されないという事情から生まれた習慣であります。
医薬品卸売事業においては、合理的な見積りによる決定予測価格で売上計上しております。
決定した価格が当初予測していた価格に比べ低下する場合、医薬品卸売事業の業績に影響を与えるリスクがあります。
<リスク対応>
取引価格の決まっていないお得意さまとの価格交渉については、毎月上長がお得意さまとの交渉状況をシステムを通して確認・指導を行う等の対応を実施しております。
また、取引価格の決定に際しては、決定価格をシミュレーションするシステムを利用することにより、適正な売上、利益確保の状況を上長が確認し、価格水準の適正化を図るとともに、価格決裁プロセスについても明確にしております。
b 割戻金及び販売報奨金について
<リスク解説>
当業界では、医薬品メーカーから医薬品卸売業者に割戻金と販売報奨金が支払われます。
割戻金は仕入金額等に対して設定される割戻率によって支払われ、販売報奨金はメーカーと卸間で取り決められた販売数量、納入軒数等の達成によって支払われます。
割戻金及び販売報奨金は、仕入価格の引き下げ効果があり、売上総利益に影響を与えるため、これらの獲得に努めておりますが、メーカーの営業戦略等による割戻金及び販売報奨金の圧縮の進展により、医薬品卸売事業の業績に影響を与えるリスクがあります。
<リスク対応>
厚生労働省により策定された「医療用医薬品の流通改善に向けて流通関係者が遵守すべきガイドライン」を踏まえ、医薬品メーカーと医薬品等の安全かつ安定供給を継続するための流通経費や卸機能の適切な評価に基づいた価格体系の構築に向けて取り組んでおります。
また、当社グループが展開している各事業の経営資源とこれまで提携してきた協業企業とともに、新たな流通チャネル構築等による新しいソリューション開発を加速させることにより、地域医療へ貢献し、医薬品メーカーの課題解決を図るとともに、収益モデルの確立に向けて取り組んでおります。
(2)スズケングループのリスク
① 固定資産の減損について
<リスク解説>
当社グループは、事業用の様々な固定資産を保有しており、これらの資産については、今後の収益性の低下、市場価額の著しい下落により、将来キャッシュ・フローが生み出せない場合は、減損損失の計上が必要になり、各事業の業績に影響を与えるリスクがあります。
<リスク対応>
設備投資にあたっては、投資によって得られるリターン、発生するコストなど投資回収の採算性を評価し投資の意思決定を行っております。
また、設備投資後は、業績進捗について毎期モニタリングを実施するとともに、業績評価を行い、採算性の悪化が見込まれるため今後のキャッシュ・フローの獲得が期待できない場合には、速やかに業績向上に向けた戦略の立案を実施し、その実行に取り組んでおります。
なお、将来の投資効果が見出せないと判断した場合は、撤退も検討します。
② 債権の貸倒について
<リスク解説>
お得意さまに対する債権については、お得意さまの状況に応じて一般債権は貸倒実績率により、貸倒懸念債権は個別に回収可能性を見積り貸倒引当金を計上しております。しかし、外国為替相場の変動、電力・エネルギー価格や原材料価格の高騰による物価高の影響などによるお得意さまの経営状況の変動によっては、実際の貸倒額が見積りを上回った場合、各事業の業績に影響を与えるリスクがあります。
<リスク対応>
各営業拠点に本社組織の管理部門を配置し、新規取引前後におけるお得意さまに関する情報の収集等の与信管理業務、お得意さまからの入金管理等の債権管理業務を行うことにより、営業部門に対するけん制機能を果たしております。
また、本社管理部門は、債権リスク情報等の情報収集を行い、注意喚起を促すアラート機能、信用不安発生時における各営業拠点の管理部門のバックアップ機能等を担っており、グループ会社管理部門も含めた各営業拠点の管理部門と連携した様々な取り組みにより、債権リスクの低減に努めております。
③ 新薬の開発について
<リスク解説>
医薬品製造事業では、新薬候補品の研究開発には多額の費用と長い年月が必要であり、その過程で当初期待した有効性が証明できなかったり、予期せぬ副作用が発現した等の理由により研究開発を断念・遅延する可能性があります。
また、臨床試験で良好な結果が得られても、新薬が実際に上市となるまでには様々な不確実性が存在します。
その様な理由により当初の期待を達成できなかった場合には、医薬品製造事業の業績に影響を与えるリスクがあります。
<リスク対応>
自社創薬のみでなく、開発パイプラインの導出入あるいは他社協業などのアライアンス活動を通じてポートフォリオ管理を図っております。
④ 品質問題について
<リスク解説>
医薬品製造事業において、医療用医薬品、体外診断用医薬品及び医療機器は、医薬品医療機器等法その他の国内外の法規制の下で製造しております。しかし、使用する原材料、製造プロセス等で製品の品質に懸念が発生した場合、製品の回収や販売の停止等により、医薬品製造事業の業績に影響を与えるリスクがあります。
<リスク対応>
製品の品質を確保するため、原材料、製造プロセスの社内監査等を行い品質保証体制の強化に努めております。
⑤ 副作用問題について
<リスク解説>
医薬品製造事業では、医療用医薬品、体外診断用医薬品及び医療機器について、予期せぬ副作用や健康被害等で販売中止、製品回収などの事態に発展する可能性があり、医薬品製造事業の業績に影響を与えるリスクがあります。
<リスク対応>
副作用情報等を収集した場合は、速やかに評価、検討し、必要に応じ行政当局へ報告するとともに、必要な安全対策を速やかに実施いたします。
⑥ 保険薬局事業について
<リスク解説>
保険薬局事業では、処方元の医療機関が発行した処方箋をもとに保険薬局が薬歴管理や服薬指導等を行っています。今後、薬価改定、調剤報酬改定の内容や医療保険制度改革の内容によっては、当社グループの業績に影響を与えるリスクがあります。
また、調剤過誤防止の徹底に努めておりますが、万が一重大な調剤過誤が発生した場合には、社会的信用の失墜、訴訟の提起による損害賠償等により、業績に影響を与えるリスクがあります。
<リスク対応>
「患者のための薬局ビジョン」を実現すべく、在宅医療への対応やジェネリック医薬品の使用促進等、店舗毎に適切な対応方針を策定し実行することにより、調剤報酬改定、医療保険制度改革への対応を行っております。
また、調剤過誤防止については、鑑査機器の整備やインシデント、アクシデントを分析し、対策を店舗間で共有することにより、調剤過誤発生防止に取り組んでおります。加えて、ヒューマンエラーの防止に向けて、高いレベルの薬学的知識により調剤過誤を防止するための徹底した教育を実施し薬剤師の資質向上を図っております。
⑦ システムトラブルについて
<リスク解説>
当社グループは、営業活動、商品管理をはじめ、その事業運営は、コンピュータシステム及びそのネットワークに多くを依拠しております。大規模なシステムトラブルが発生した場合、各事業の業績に影響を与えるリスクがあります。
<リスク対応>
受注から納品業務に関わる基幹系システムの各種障害対応手順に基づき、トラブル時に対応できる体制をとり、迅速な原因究明と影響度の把握により、早期の復旧に努めてまいります。
また、システム安定稼働のため、定期的にシステムの使用状況と業務量を監視し、必要に応じて予防対策を実施するとともに、障害時に備えた想定訓練を実施しております。
さらに、万が一基幹系システムが停止した場合でも、受注から納品に関わる業務が継続できるように、代替できるシステムを稼働させております。
⑧ 個人情報保護について
<リスク解説>
当社グループは、顧客情報等の多数の個人情報を取り扱っております。個人情報保護には特に配慮し、情報セキュリティの強化と社員の情報管理意識の向上に努めておりますが、万が一、個人情報の漏洩等があれば信用を大きく毀損することとなり、当社グループの業績に影響を与えるリスクがあります。
<リスク対応>
個人情報保護規程や情報セキュリティ管理規程に基づいた適切な運用を徹底し、定期的な社員教育や社外へのメール送信時の上長とシステムによるダブルチェック、外部からの不正アクセスから保護する仕組みの導入等により、個人情報の漏洩を防ぎ、適切な個人情報保護に努めております。
(3)その他のリスク
① 自然災害等について
<リスク解説>
当社グループは、大規模な自然災害や事故等により、営業拠点及び物流拠点が深刻な被害を被った場合、当社グループの業績に影響を与えるリスクがあります。
<リスク対応>
大規模自然災害が発生した際には、BCP手順書に基づき速やかに災害対策本部を設置し、社員の安否や営業拠点および物流拠点の被災状況を確認するとともに、事業継続のための適切な対応がとれる体制を構築しております。
また、災害時でも安定した医薬品供給体制を維持するために、免震構造を採用した物流センターの構築や本社および主要拠点への非常用発電機の設置、受注から納品に関わる業務が継続できるように、本社以外の拠点にて代替できるシステムを稼働させております。
加えて、グループ会社を含めた安否確認合同訓練やBCP対応訓練等、定期的な訓練を実施し、BCP対応力の向上に努めております。
(1)経営成績等の状況の概要
( 資 産 )
当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末に比べ825億88百万円増加し1兆2,286億86百万円となりました。主な要因は以下のとおりであります。
流動資産は前連結会計年度末に比べ701億24百万円増加いたしました。これは主に、有価証券が233億95百万円減少したものの、現金及び預金が728億3百万円、受取手形及び売掛金が187億11百万円増加したことによるものであります。
固定資産は前連結会計年度末に比べ124億64百万円増加いたしました。これは主に、有形固定資産が38億68百万円、投資その他の資産が83億22百万円増加したことによるものであります。
( 負 債 )
当連結会計年度末における負債合計は、前連結会計年度末に比べ776億86百万円増加し8,122億57百万円となりました。主な要因は以下のとおりであります。
流動負債は前連結会計年度末に比べ731億43百万円増加いたしました。これは主に、独占禁止法関連損失引当金が67億円減少したものの、支払手形及び買掛金が776億68百万円増加したことによるものであります。
固定負債は前連結会計年度末に比べ45億42百万円増加いたしました。
( 純資産 )
当連結会計年度末における純資産合計は、前連結会計年度末に比べ49億2百万円増加し4,164億28百万円となりました。主な要因は以下のとおりであります。
株主資本は前連結会計年度末に比べ21億33百万円減少いたしました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益を290億16百万円計上したものの、剰余金の配当の支払が62億88百万円、自己株式の取得による減少が250億1百万円あったことによるものであります。なお、当連結会計年度において自己株式247億59百万円を消却しております。
その他の包括利益累計額は前連結会計年度末に比べ72億30百万円増加いたしました。これは主に、その他有価証券評価差額金が65億74百万円増加したことによるものであります。
b 経営成績の状況
当連結会計年度においては、新型コロナウイルス感染症の法的位置付けが5類感染症へ移行するなど、感染防止対策と社会経済活動との両立を図る動きが進められております。一方、依然としてウクライナ情勢の終息時期が見通せないなか、外国為替相場の変動、電力・エネルギー価格や原材料価格の高騰による物価高が一層進展するなど、国内景気や企業収益については先行き不透明な状況が続いております。
そのようななか、当社グループは、当連結会計年度より2026年3月期を最終年度とする新たな中期経営計画を策定しており、本中計の実践を通じて、グループが「One Team」となって健康創造事業体への変革を進め、変化するヘルスケアエコシステムに新たな「解」と「希望」を送り続ける存在として新たな価値を創出し続け、さらなる企業価値の向上と社会課題の解決に貢献してまいります。
2032年の当社創立100周年に向け、本中計期間は「既存事業の変革」と「新たな成長事業の準備」を主なテーマと位置づけて取り組んでおります。
当連結会計年度における、「既存事業の変革」については、売上・シェアに連動する収益構造が変化しており、多様な企業との協業を通じ、希少疾病薬や再生医療等製品を含むスペシャリティ医薬品の流通モデルの強化やMS(※1)の活動による新たな収益モデル構築に取り組んでまいりました。
具体的には、医療流通プラットフォームの構築に向けて、スペシャリティ医薬品トレーサビリティシステムである「キュービックス」を全国の地域中核病院などへ導入し、医薬品の流通品質向上に取り組んでおり、スペシャリティ医薬品流通において、国内への新規参入や新製品の上市を目指す製薬企業のご要望にお応えするとともに、新薬を待ち望む患者さまに確実に医薬品をお届けできる流通基盤の強化に努めてまいりました。また、医薬品流通のリアルタイムの可視化と最適化の取り組みとして、医薬品の出荷調整による医療機関や保険薬局の業務負荷軽減や当社の生産性向上に寄与する仕組みの開発・導入を進め、発注した医薬品の納期や代替品の在庫などをインターネット上で確認できる「納品予定お知らせサービス」ならびに「納品予定アプリ」を2023年5月より導入しており、既に約5.5万軒(2024年3月末時点登録数)を超えるお得意さまにご利用いただいております。加えて、10月より、需要予測による発注サポートを行う「発注提案アプリ」を新たに導入しており、既に約7千軒(2024年3月末時点登録数)のお得意さまにご利用いただいております。
2024年3月には、埼玉県草加市に、最新のロボット技術を駆使した自動化・省人化を実現する卸物流拠点に、製造業務受託・メーカー物流エリアを併設した、業界初のコンセプトを持つ「首都圏物流センター」を構築し、4月より本稼働する体制が整いました。「首都圏物流センター」を通じ、自動化による効率化をはじめ、輸配送コストの低減、GDP基準(※2)に準拠した品質面、CO2排出量の削減などの環境面、災害時におけるBCP対応のより一層の強化など、さまざまな効果の実現を目指してまいります。
今後もスズケングループは、「既存事業の変革」を実現する新たな仕組みを順次導入してまいります。
「新たな成長事業の準備」については、既に提携している企業とともに、新たな流通チャネル構築や、協業によるデジタルヘルス事業の構築を加速させ、革新的なサービスや情報ビジネスを推進し、製薬企業や医療機関、保険薬局、患者さまへの新たな価値の提供に取り組んでまいりました。
具体的には、医療・介護従事者向けのポータルサイトである「コラボポータル」(※3)のサービス提供を開始し、当社グループが保有するさまざまなサービスや情報の発信に加え、お得意さまと当社グループ、製薬企業、さらには多職種・専門スタッフをつなぐ機能、協業企業のデジタルヘルスサービスを統合的にお届けする機能などを搭載し、医療・介護現場へデジタルヘルスサービスを安心・安全にご利用いただける環境づくりに取り組んでおります。2023年4月のサービス開始以降、既に約16万ID(2024年3月末時点登録数)の利用をいただいており、スピードを上げて更なる拡大に取り組んでまいります。
協業に関する取り組みとしては、2023年11月に上場企業2社に対する株式取得等を実施しており、具体的には、2019年に資本業務提携契約を締結した、PHR(Personal Health Record)(※4)サービスを提供するリーディングカンパニーである㈱Welby(証券コード:4438)に対し、双方のデジタルビジネスの加速化を目的とした株式の追加取得を実施し、持分法適用会社といたしました。また、大手保険薬局チェーン事業者であるファーマライズホールディングス㈱(証券コード:2796)と資本業務提携契約を締結し、持分法適用会社といたしました。今後、両社の機能やサービスを機能総体という発想で組み合わせ、より利便性の高いサービスの提供や新しい価値の創出に向けた検討および取り組みを進めてまいります。
今後も、スズケングループは、協業するヘルステック企業をはじめとする外部企業とともに、「健康創造事業体」の構築に向けた取り組みを加速させてまいります。
株主還元方針については、2023年5月に開示した株主還元方針を2023年11月10日に改定・強化し、安定的な配当の継続を基本とし、中期経営計画の最終年度である2026年3月期までの3年間平均において、総還元性向100%以上の株主還元を実施することにより株主還元の充実を図るとともに、既存事業の強化や新規事業の創出に向けた投資を行うことで企業価値と資本効率の向上を目指してまいりました。
上記方針を踏まえ、2023年11月10日開催の取締役会において、会社法第459条第1項の規定による定款の定めに基づき、自己株式の取得を決議し、取得総数:5,124,900株、取得総額:249億99百万円の自己株式を取得した結果、配当金(総額:64億16百万円)と合わせて、2024年3月期の総還元性向は108.3%となりました。
なお、取得した自己株式については、譲渡制限付株式報酬(RS)等への充当を見込む10万株を除いた全数(5,091,032株:消却前の発行済株式総数に対する割合 6.1%)を2024年3月29日に消却しております。
当連結会計年度の業績につきましては、売上高は、医療用医薬品市場が伸長したことに加え、スペシャリティ医薬品等の新薬や新型コロナウイルス感染症治療薬が薬価収載(一般流通)されたことに伴い、売上高計上となったことなどが寄与いたしました。利益面では、増収効果に加えて、引き続き適正利益の獲得に取り組んでまいりました。親会社株主に帰属する当期純利益においては、政策保有株式(投資有価証券)の縮減(8銘柄)を実施し、特別利益として投資有価証券売却益(68億円)を計上したことなどが寄与いたしました。
その結果、売上高は2兆3,864億93百万円(前期比3.1%増)、営業利益は348億75百万円(前期比7.0%増)、経常利益は383億51百万円(前期比5.4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は290億16百万円(前期比42.6%増)となりました。
なお、当社は、2023年11月10日開催の取締役会において、持続的な成長と中長期的な企業価値向上を図るため、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応方針を策定・開示しております。詳細につきましては、2023年11月10日に公表いたしました「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応方針の策定ならびに中期経営計画・株主還元方針の改定に関するお知らせ」をご参照ください。
※1 MS(Marketing Specialist)
:医薬品卸売業の営業担当者のこと。
医療機関・保険薬局等を訪問し、医薬品の紹介、商談、情報の提供や収集を行います。
※2 GDP(Good Distribution Practice)
:医薬品の適正流通基準のこと。
医薬品の市場流通における流通経路の管理保証、医薬品の完全性の保持、更に偽造医薬品が正規流通経路へ流入することの防止を図ることを目的としております。
※3 コラボポータル
:当社グループが保有するさまざまなサービスを提供する「ソリューション機能」をはじめ、当社グループの営業担当者やMRさま、専門スタッフの皆さまなどがチャットや動画などを活用して、遠隔でお得意さまと接点を持つことが可能になる「コミュニケーション機能」、さらにはAmazonビジネスとの連動による「購買機能」などをワンストップで提供するデジタルヘルスサービスの総合ポータルサイトです。SSO(Single Sign On:一度のユーザー認証によって複数のシステムの利用が可能になる仕組み)やデータ連携を採用し、アクセス性を高めることで医療・介護現場の業務効率化にも寄与します。
※4 PHR(Personal Health Record)
:個人によって電子的に管理される自らの健康・医療情報のことを指します。
セグメント別の業績は次のとおりであります。
なお、当連結会計年度より報告セグメントの区分方法の見直しを実施し、従来「医薬品卸売事業」「医薬品製造事業」「保険薬局事業」「医療関連サービス等事業」の4セグメントでありましたが、新たに「医薬品卸売事業」「ヘルスケア製品開発事業」「地域医療介護支援事業」「医療関連サービス等事業」の4セグメントとしております。
このため、前連結会計年度との比較については、セグメント変更後の数値に組み替えて比較を行っております。
セグメント変更の詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(セグメント情報等)」に記載のとおりであります。
(医薬品卸売事業)
医療用医薬品市場は、薬価改定の影響などがあったものの、抗悪性腫瘍剤の市場拡大やスペシャリティ医薬品等の新薬や新型コロナウイルス感染症治療薬が薬価収載(一般流通)されたことに伴い、売上高計上となったことなどが寄与したことにより、伸長したものと推測しております。
そのようななか、売上高は、特定メーカーの取引見直しの影響があったものの、スペシャリティ医薬品をはじめとする新薬や新型コロナウイルス感染症治療薬の販売増加などにより2兆2,991億80百万円(前期比3.2%増)、営業利益は、増収効果に加え、引き続き適正利益の獲得に取り組んだことなどにより304億24百万円(前期比12.5%増)となりました。
(ヘルスケア製品開発事業)
売上高は、医療機器・材料製造事業において、2022年10月に実施したグループ内組織再編に伴い、医薬品卸売事業セグメントから売上高の移動が発生したことや、医薬品製造事業における二次性副甲状腺機能亢進症治療薬ウパシタ静注透析用シリンジや、持続型赤血球造血刺激因子製剤ダルベポエチンアルファBS注の寄与などにより増収となりました。営業利益は、増収効果や、販売費及び一般管理費の抑制に努めたことなどにより増益となりました。
これらの結果、売上高は512億96百万円(前期比8.1%増)、営業利益は15億97百万円(前期比2.4%増)となりました。
(地域医療介護支援事業)
売上高は、主に保険薬局事業において、新型コロナウイルス感染症の法的位置付けが5類感染症へ移行したことに伴う受診抑制の緩和などに伴い処方箋受付枚数が増加したものの、調剤報酬改定などの影響もあり微減収となりました。営業利益は、調剤報酬改定(地域支援体制加算の経過措置終了)や薬価改定の影響などにより、減益となりました。
これらの結果、売上高は974億63百万円(前期比0.5%減)、営業利益は16億90百万円(前期比34.8%減)となりました。
(医療関連サービス等事業)
売上高は、主に、スペシャリティ医薬品流通事業の受託が増加したことなどにより増収となりました。営業利益は、デジタルビジネスの事業化に伴う費用計上などにより減益となりました。
これらの結果、売上高は2,616億4百万円(前期比21.4%増)、営業利益は11億7百万円(前期比1.5%減)となりました。
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度に比べ658億72百万円増加し1,987億45百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果獲得した資金は872億16百万円(前期比499億46百万円増)となりました。
この主な要因は、売上債権の増加190億28百万円、法人税等の支払118億99百万円があったものの、税金等調整前当期純利益427億93百万円、仕入債務の増加780億57百万円があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果獲得した資金は103億50百万円(前期は463億61百万円の支出)となりました。
この主な要因は、有価証券の取得による支出494億37百万円、有形固定資産の取得による支出108億10百万円および無形固定資産の取得による支出48億30百万円があったものの、有価証券の売却及び償還による収入658億50百万円、投資有価証券の売却及び償還による収入116億67百万円があったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果支出した資金は317億16百万円(前期比54億96百万円増)となりました。
この主な要因は、自己株式の取得による支出250億1百万円、配当金の支払62億87百万円があったことによるものであります。
当連結会計年度より報告セグメントの区分を変更しているため、前期比については変更後のセグメント区分の数値と比較しております。報告セグメントの変更の詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表 (1)連結財務諸表 注記事項(セグメント情報等)」に記載のとおりであります。
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 金額は、製造原価によっております。
当連結会計年度における商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 金額は、仕入価額によっております。
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度におきましては、医薬品卸売事業をコア事業とする事業体から健康創造事業体への転換に向け、2026年3月期を最終年度とする新たな中期経営計画「For your next heartbeat ~未来に向けた鼓動を創ろう~」に基づき、「既存事業の構造改革」と「新規事業の創出(新領域へのチャレンジ)」に両利きで取り組んでまいりました。
医薬品卸売事業におきましては、コロナ関連商材の寄与に加え、スペシャリティ医薬品の流通モデルの強化や、利益重視への社員の意識改革、製品価値に基づく価格交渉の徹底により、売上総利益率の改善に繋がったものと考えております。また、2023年5月には「納品予定アプリ」、2023年10月には「発注提案アプリ」を導入するなど、デジタルを活用することで、医療機関や保険薬局の業務負荷軽減や、当社の生産性向上に取り組んでまいりました。
ヘルスケア製品開発事業におきましては、医薬品製造事業にて、「ウパシタ静注透析用シリンジ」の営業を、継続して強化してまいりました。また、2024年1月には、アボットジャパン(同)が展開する持続グルコース測定器「FreeStyleリブレ」とその関連商品について、日本国内におけるコ・プロモーション契約を締結しております。当社グループが展開するSMBG(血統自己測定)製品とアボットジャパン(同)の提供するCGM(持続血糖測定)製品のコ・プロモーションにより、糖尿病患者さまのQOL向上に貢献するとともに、当社グループが展開するSMBG製品と協業企業の㈱Welbyが展開する「Welbyマイカルテ」との連携により、糖尿病市場におけるディジーズマネジメントの支援など、糖尿病市場への新たなアプローチに挑戦してまいりたいと考えております。
地域医療介護支援事業におきましては、保険薬局事業にて、不採算店舗の閉局や譲渡、業務の効率化に努めてまいりました。また、2023年11月には、ファーマライズホールディングス㈱と資本業務提携を行っております。自社グループ薬局との連携により、両社の持つ経営資源やノウハウを組み合わせ、新たな「機能」を構築・展開することで、地域の薬局支援を実現してまいりたいと考えております。
医療関連サービス等事業におきましては、スペシャリティ医薬品流通受託事業にて、国内一社流通受託の更なる獲得に向け、インフラの整備やGDPスペシャリストの育成・配置など、グローバルに対応した品質管理の強化に取り組んでまいりました。また、2024年4月には、卸物流拠点に製造業務受託・メーカー物流エリアを併設した業界初の複合型物流センターとして、首都圏物流センターを稼働しております。スペシャリティ医薬品などの日本市場への新規参入を目指す、製薬企業の製品上市の総合支援を目指してまいります。
新規事業の創出におきましては、デジタルヘルスケアの取組みとして、これまで提携してきた協業企業やお得意さまなどを総合的につなぐ、医療・介護従事者向けポータルサイト「コラボポータル」の普及に注力してまいりました。当社グループが「One Team」となって取組んだことにより、当初、本中計3年間の目標として掲げておりました15万IDの獲得を、初年度で達成することに繋がりました。
また、2023年11月には、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応方針を策定し、連動する中期経営計画の主要財務指標や株主還元方針についても改定を行いました。両利き経営による利益の最大化に加え、財務・資本戦略として、政策保有株式の縮減や、自己株式の取得など株主還元の強化による資本の最適化に取組み、ROEの向上を目指しております。なお、2024年3月期においては、ROEは7.0%まで上昇し、総還元性向は108.3%となりました。
今後も、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(2)目標とする経営指標(3)中長期的な会社の経営戦略」に記載のとおり、「既存事業の構造改革」と「新規事業の創出(新領域へのチャレンジ)」を両利きで実践することで、安定した収益の確保に加え、新しい利益を獲得できる新規事業をいち早く創出するとともに、政策保有株式の縮減や株主還元の強化、将来的には適切な負債の活用を視野に入れたバランスシート改革も実施していくことで、さらなるROEの向上を目指してまいります。
以上を踏まえ、当社グループが「One Team」となって中期経営計画を推進し、「健康創造事業体」への転換を早期に実現することで、変化するヘルスケアエコシステムに新たな「解」と「希望」を送り続ける存在として新たな価値を創出し続け、さらなる企業価値の向上と社会課題の解決に貢献してまいりたいと考えております。
② 当社グループの資本の財源及び資金の流動性について
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、買掛金の支払や販売費及び一般管理費等の営業費用であります。また、投資を目的とした資金需要は、営業・物流・情報基盤の強化および新たな事業領域の拡大等によるものであります。
当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本としております。
運転資金は自己資金を基本としており、投資はフリーキャッシュフローの範囲内を基本としております。ただし、有事における緊急的な措置としてコミットメントラインも保持しております。
なお、当連結会計年度における現金及び現金同等物の残高は1,987億45百万円となっております。
③ 重要な会計上の見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されており、財政状態及び経営成績に関する以下の分析を行っております。
連結財務諸表の作成に際し、決算日における資産・負債の報告数値及び報告期間における収益・費用の報告数値に影響を与える事項について、過去の実績や状況に応じ合理的と考えられる様々な要因に基づき見積り及び判断を行い、それらについて継続して評価を行っております。実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループは、特に以下の重要な会計方針が、当社グループの連結財務諸表の作成において使用される重要な判断と見積りに大きな影響を及ぼすと考えております。
a 収益の認識
当社グループの中心である医薬品卸売事業の売上高については、販売価格が未決定のものが一部含まれており、決定予測価格を合理的に見積り売上計上しておりますが、価格決定時において売上高の修正を行う場合があります。
価格決定の早期化と合理的な予測価格による売上計上に努めておりますが、価格決定までの期間が長期化し、決定価格が予測価格を大幅に下回った場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
b 貸倒引当金
当社グループは、受取手形及び売掛金等の債権の貸倒れに備えるため、一般債権については過去の貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については個別に回収可能性を勘案し回収不能見込額を計上しております。お得意さまの財務状況が悪化し、支払能力が低下した場合、追加引当が必要となる可能性があります。
c 繰延税金資産
当社グループは、繰延税金資産について、回収可能性がないと考えられる金額は、評価性引当額を計上しております。将来の課税所得及び実現可能性の高い継続的なタックスプランニングにより評価性引当額の必要性を検討しております。
過去に計上した繰延税金資産の全部又は一部を将来回収できないと判断した場合、繰延税金資産を取崩しております。一方、計上額を上回る繰延税金資産を今後回収できると判断した場合は、繰延税金資産を計上しております。
d 退職給付
退職給付債務及び退職給付費用の見積りは、退職給付に関する会計基準等に準拠して行っております。また、実際の結果は、見積りによる不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があり、将来認識される退職給付債務及び退職給付費用に影響を及ぼす可能性があります。
e 独占禁止法関連損失引当金
独占禁止法関連損失引当金の見積りについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
(1) 業務提携に関する事項
(2) 技術援助契約
(注)参天製薬㈱との契約期間は、2016年4月12日から参天製薬㈱が販売を終了する日、又は別途契約しているメタファーマ社(加国)との日本における販売権の許諾等の契約が終了する日のいずれか早い日であります。
当社グループにおけるヘルスケア製品開発事業として、㈱三和化学研究所において医療用医薬品の研究開発活動を推進しております。ワンストップソリューションの起点として機能するために、2025年度までに開発テーマ4本以上を獲得し、見過ごされた医療ニーズを満たす治療薬を早く創出することをミッションとして、「開発テーマの着実な推進」、「導入活動の推進による臨床後期開発品の獲得」、「研究テーマの早期開発テーマ化」、「外部連携の推進による創薬パイプラインの充実」の基本方針のもと、研究開発活動を推進しております。
当連結会計年度における研究開発スタッフは144人であり、研究開発費の総額は
(1)先端巨大症および神経内分泌腫瘍治療薬SK-5307(Paltusotine)の開発推進
米国のCrinetics Pharmaceuticals, Inc.(クリネティクス社)が、先端巨大症・神経内分泌腫瘍治療薬として開発中のPaltusotineについて、2022年2月に日本における独占的な開発/商業化権のライセンス契約を締結致しました。2023年6月に第Ⅰ相試験を終了し、2023年10月に先端巨大症および下垂体性巨大症患者を対象とした第Ⅱ/Ⅲ相試験の治験届を提出しました。2024年3月に被験者に対する治験薬投与を開始し、契約上の開発マイルストーンを達成しました。
(2)OSDrC(有核打錠技術)事業の着実な推進
上市済みの4製品について、ロイヤルティー収入を獲得しております。
OSDrC技術を用いた新規受託製造の可能性について、国内外の医療用医薬品メーカーに対して情報提供を行いました。また、医薬品製造受託機関(CMO)との間で共同事業を開始するべく準備を進めています。引き続き、営業活動及び調査活動を継続的に実施しております。