(1) 経営方針
当社グループは、コアの技術である精密工作機械製造技術、制御技術、研削加工技術を基盤とし、お客様との直接対話によって開発した独創的な工作機械を、最良の品質と最善のコストでお客様に提供するとともに、コアの技術と製品を継続的に進化させ、お客様の更なる満足に応えることを経営の基本方針に掲げ、特殊研削盤分野でのトップメーカーを目指してまいります。
(2) 経営環境
当社グループは、高精度・高品質・高能率・全自動による硬脆材料(超硬合金、セラミックス、CBN、ダイヤモンド焼結体等)の研削という特殊技術に特化した、特殊研削盤を開発・製造しております。当社グループが所属する工作機械業界全体の市場規模が約1兆円であるのに対し、当社グループの売上高は約70億円程度と小規模でありますが、当社の製造する研削盤は世界でも限られたメーカーしか製造していない、特殊な技術を要する機械であり、ニッチな市場において高いシェアを獲得することで、強固な経営基盤と高い収益力を確保してまいりました。当社の主要な市場は切削工具関連市場と金型関連市場の2つとなっており、それぞれの市場の現状や経営環境は以下のとおりであります。
(切削工具関連市場)
当社の主要な市場の1つは切削工具メーカーをお客様とする切削工具関連市場であり、当社はその市場向けに切削工具関連研削盤を製造・販売しております。お客様である切削工具メーカーは当社の研削盤を用いてスローアウェイチップ(刃先交換工具)等の切削工具を加工・製造し、自動車、航空機、鉄道、建設機械等の各部品メーカーはその切削工具を用いて金属部品を加工・製造しております。
切削工具研削盤のうち、スローアウェイチップの外周加工に用いられる全自動インサート研削盤については、競合メーカーは世界で2社のみ、特殊な刃先形状の加工に用いられる全自動溝入れインサート研削盤については、競合メーカーは世界で1社のみとなっており、競合他社の少ないニッチな市場において、高いシェアを獲得しております。なお、2024年3月期における切削工具関連研削盤の売上高は当社グループの総売上高の58.4%を占めております。
(金型関連研削盤)
当社の主要な市場の1つは精密金型メーカー等をお客様とする金型関連市場であり、当社はその市場向けに金型関連研削盤を製造・販売しております。お客様である精密金型メーカーは当社の研削盤を用いて精密金型を加工・製造し、精密コネクタ等の各部品メーカーはその精密金型を用いて精密部品を加工・製造しております。なお、最終需要先はスマートフォン、タブレット、パソコン、LED等であります。
金型関連研削盤のうち、高精度金型部品や特殊工具等の加工に用いられるプロファイル研削盤については、競合メーカーは世界で1社のみ、精密金型プレート、治具等の穴加工、輪郭形状加工に用いられるジグ研削盤については、競合メーカーは世界で3社のみとなっており、切削工具関連研削盤同様に、競合他社の少ないニッチな市場において、高いシェアを獲得しております。なお、2024年3月期における金型関連研削盤の売上高は当社グループの総売上高の23.3%を占めております。
(3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題及び経営戦略
上記のとおり、当社はニッチ市場において高いシェアを獲得するという経営戦略をとっておりますが、ニッチ市場に特有のものとして、以下の2点を、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題として認識しております。
・市場規模が限定的であるため業容の拡大が制限されること
・販売先が特定の業種に集中しているため景気変動の影響を受けやすいこと
また、当社グループを取り巻く経営環境として、少子高齢化及び人材の流動化に伴う人手不足、原材料や燃料費の高騰、中国やロシア等の政治情勢などのリスク要因が挙げられます。こうした課題に対処し、持続的な成長と安定した収益を確保するため、次のような施策を進めております。
①グローバルニッチトップをめざした海外市場展開
国内市場では既に一定のシェアを確保しておりますが、海外市場においてはシェア拡大の余地が残されています。中国、アジア、欧州、アメリカに設置した各拠点を活用しニッチトップ戦略をグローバルに展開することにより、さらなる成長をめざします。なお、欧州については、子会社であるWAIDA Europe GmbHを拠点に、欧州地域における販売促進や販売後のサポートの強化を図っております。
また、当社グループの生産する製品は大量破壊兵器の開発等に用いられるおそれがある貨物として、貨物及び技術の提供等につき外為法に基づく輸出管理の対象となっております。安全保障輸出管理につきましても、輸出管理専門の部署を設置し、輸出関連法規の遵守に関する内部規定及びマニュアルの厳格な運用に努めることにより、今後も重点課題として厳正に対応してまいります。
②戦略製品の開発と新製品の投入
主要な取引分野である金型関連業界及び切削工具関連業界に対応する戦略製品の開発と新製品の投入により、より一層の需要の開拓と新たな用途・分野への需要拡大をめざします。当連結会計年度においては、新機種であるデジタルプロファイル研削盤「SPG-XV」等の市場投入を進めており、2023年10月開催の展示会MECT2023(メカトロテックジャパン)にSPG-XVを出展し、お客様から高い評価をいただきました。
③新分野への製品展開
特定の業種への集中から脱却し、新たな事業分野へ進出することにより、企業成長の柱を創出することをめざすべく、長年にわたり培ってきたコア技術である高精度、高品質、高生産性をもとに、新分野の製品を開発し積極的に市場参入を試みていきます。
④経営基盤の強化
急激な景気変動や外部環境の変化に対応するため、以下のような施策により経営基盤の強化を図っております。
a.利益体質の強化
機械1台ごとの原価管理、効率化や精度向上のための改善活動、厳格な予算管理による販管費の抑制等により、利益体質の強化を図っております。
b.業務システムの改善
業務のシステム化や、業務システムの改善により業務効率化を図っております。
c.サプライチェーンの確保
仕入先との綿密な調整や、仕入状況の定期的なモニタリングにより、安定的なサプライチェーンの確保に努めております。
d.スキル保有者の雇用継続と次世代への継承
熟練技術者の技術の活用と次世代への技術継承の促進を図っており、2020年4月より定年延長制度の導入を行っております。
特に少子高齢化等による人手不足は深刻なリスク要因となっていることから、雇用条件の改善や地域連携型のインターンシップ等による積極的な人材確保を行っており、2024年1月には従業員の働きがいを高めるため過去最高額となる1万6,700円のベースアップ及び初任給の引き上げを行いました。また、製品品質の向上やアフターサービスの拡充によりお客様の信頼を獲得し、営業基盤を強化することで安定的な収益の確保に努めてまいります。
(4) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標
当社グループは、継続的な進化によりお客様の更なる満足に応えることを経営の基本方針として掲げており、そのために営業基盤の強化による持続的な成長と安定した収益の確保を経営の重要なものと位置付けております。このような理由から、当社グループは「経常利益率」を経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標としております。2025年3月期は国内や中国からの受注は低調となるものの、欧米やアジア市場からは旺盛な需要が見込まれております。そのため、売上高は当連結会計年度と比較して大きな減少はないものの、利益面では、海外展開に伴う費用の増加やシステム投資に伴う償却負担の増加、新製品及び新分野開発の拡大に伴う研究開発費増加により、経常利益率は前年同期と比較して低下すると予想しております。なお、2025年3月期は第2四半期累計で売上高3,469百万円に対し経常利益308百万円(経常利益率8.9%)、通期で売上高7,171百万円に対し、経常利益522百万円(経常利益率7.3%)を見込んでおります。
本項において将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は本有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループにおいて、サステナビリティを巡る課題への対応は、リスクの減少のみならず収益機会にもつながる重要な経営課題であるとの認識を持ち、適確に対処するとともに、中長期的な企業価値の向上の観点から、取締役会において気候変動に関する課題及び人的資本に関する課題等を積極的・能動的に議論し、その対応への検討を深めております。
取締役会等において対応が必要と判断されたサステナビリティを巡る課題については、課題の内容に応じて、内部監査室、総務部及び各担当部門を中心に具体的な対応を実施しております。
ガバナンス及びリスク管理を通して識別された当社グループにおける重要なサステナビリティ項目は「人的資本(人材の多様性)への対応」であります。
「人的資本(人材の多様性)への対応」についての当社グループにおける考え方や取り組みは以下の通りであります。
①戦略
当社グループにおいては、従業員は当社の成長を支える重要な存在であるとの認識に立ち、多様な人材が仕事と家庭を両立し、最大限の能力を発揮できる職場環境や企業風土の醸成に取り組んでおります。また、女性従業員がいきいきと働き、かつ様々なフィールドで継続的に活躍できる職場環境づくりやワーク・ライフ・バランス実現に向けた支援を積極的に推進しております。
当社では、育児・介護と仕事の両立支援に関して、育児休業制度や介護休業制度、小学校に就学するまでの短時間勤務制度に加え、時間単位で取得可能な子の看護休暇・介護休暇等を導入しております。さらに、当該制度の申出・利用に関するハラスメントの禁止条項を規程に定めることにより、より制度を利用しやすい企業風土の醸成・向上を図っております。また、職場復帰プログラム基本計画を定め、休業したものが希望する場合、休業中に職場復帰プログラムの実施を行っており、女性従業員をはじめ多様な人材が活躍できるための意識醸成と職場環境の構築に努めております。
人材育成については、各従業員ごとに設定する目標管理による評価制度や階層別の研修を行うほか、定期的な上司と部下の個別面談の実施等の具体的施策により、従業員のキャリア形成を図っております。
なお、2024年1月には従業員の働きがいを高めるため過去最高額となる1万6,700円のベースアップ及び初任給の引き上げを行いました。
②指標及び目標
当社では男女が公平に採用・登用される雇用環境を整備するため、2026年3月31日までに、採用者に占める女性比率を20%以上とすることを目標値として定めております。目標値の達成のため、妊娠中、産前・産後休業や育児休業復帰後の配慮や処遇に係る制度を応募者等に周知し、性別に関係なく応募しやすい求人体制の整備に取り組んでおります。
育児休業制度については、産後パパ育休の施行に合わせ、男性の育児休業取得を推進した結果、男性従業員の育休取得率は2024年3月期において100%となっております。
また、当社では、年齢、国籍、性別等区別することなく、意欲と能力のある優秀な従業員が平等に管理職登用への機会が得られるような人事評価とキャリアプランを整備しております。そのため、現状では女性、外国人等の区分で管理職の構成割合や人数の目標値を定めておらず、従業員の最大限の能力を発揮できる職場環境や企業風土の醸成に努め、意欲と能力のある従業員を育成し、適性のある人材を管理職として登用していく方針であります。
人数等の目標の設定については、今後、社内外の状況を見ながら、多様な人材活用を推進する上での必要性に応じて検討してまいります。
当社グループの事業展開上、リスク要因となる可能性がある事項について次に記載しております。また、必ずしも事業上のリスクに該当しない事項につきましても、投資者の判断上重要と考えられる事項につきましては、投資者に対する積極的な情報開示の観点から記載しております。なお、本項において将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は本有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、これらリスク発生の可能性を認識したうえで、その回避及び発生した場合の対応に努める所存であります。
<経済や金融市場の動向に関するリスク>
(1)景気循環サイクル(製造業における設備投資動向の変動)
当社グループの所属する工作機械業界は売上の変動が極めて大きい業界の一つであります。当社グループにおいては、工作機械業界の景気循環サイクルの影響による売上高の増減により利益が大きく変動するという側面を持っており、経営成績に大きな影響を及ぼします。
(2)為替レートの変動
当社グループの外貨建取引につきましては、円建決済を取引の原則としておりますが、為替レートの変動は現地通貨での価格競争力に影響を及ぼすことは否めなく、中国を含むアジア市場、ヨーロッパ市場及びアメリカ市場への積極的な販売活動による外貨建取引の増加は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、各海外地域における売上、費用を含む現地通貨建ての各項目は、連結財務諸表及び財務諸表の作成のため円換算されており、換算時の為替レートによりこれらの項目は各地域における景気変動がなかったとしても影響を受ける可能性があります。
当社グループでは、上記の経済や金融市場のリスクに対し、P.10 ④経営基盤の強化に記載したとおり、景気の低迷期等においても利益の確保ができる体質にすべく、利益管理体制の強化を図っております。
<お客様に関するリスク>
(1)金型関連業界及び切削工具関連業界の設備投資動向
当社グループでは、主力製品である金型関連研削盤と切削工具関連研削盤の売上高に占める割合が高く、当連結会計年度においては、81.7%(金型関連研削盤23.3%、切削工具関連研削盤58.4%)となっております。
また、当社グループ製品は、金型関連業界及び切削工具関連業界において高いブランド力を持っていることから、国内における製品の市場占有率も高く、精密金型使用メーカー(電子部品、家電、半導体、IT関連機器、精密機械、自動車製造、金型製造等)及び切削工具の製造・使用メーカー(切削工具製造、自動車製造、自動車部品製造等)の設備投資動向に、当社グループの業績が連動するという側面を有しております。
したがいまして、当社グループの経営成績は、金型関連業界及び切削工具関連業界の設備投資動向に大きな影響を受ける可能性があります。
(2)海外需要の変動
当社グループの当連結会計年度における海外売上高の割合は63.7%となっていることから、各海外地域における景気変動や政情変化が当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、上記のお客様に関するリスクに対し、P.9 ①~③に記載したとおり、販売地域の拡大や既存分野の新製品、新分野の製品の市場投入等に取り組むことで、リスク軽減を図っております。
<製造に関するリスク>
(1)部品調達に関するリスク
当社グループが提供する製品は高い技術を要しており、一部の部品等については安定的な調達が困難であったり、供給が滞った場合の代替の調達先を確保できないリスクがあります。また、調達先において自然災害、事故、経営環境の悪化等により、当社グループに対する部品等の安定的な供給が滞る可能性があります。部品等の確保ができなくなった場合は、製品の提供が遅れ、お客様への納期遅延や機会損失等が発生する場合があります。また、調達部品の価格上昇により、利益率の悪化につながる可能性があります。
当社グループにおきましては、P.10 ④経営基盤の強化に記載したとおり、仕入先との綿密な調整や、仕入状況の定期的なモニタリングにより、サプライチェーンの安定的な確保に努めてまいります。
(2)製品品質に関するリスク
製品の品質確保には十分努めておりますが、製品の不良を完全に防ぐことは困難であることから、製品の不良によるお客様からのクレームや返品が発生する場合があり、それに伴う修理費用、回収費用の発生や販売量の減少が業績に影響を与える可能性があります。当社グループにおきましては、全社的な品質向上に関する会議体を設置し、お客様からのクレームや不具合の発生状況を分析、改善策の検討及び実施を講ずることで、製品品質の向上に努めてまいります。
(3)人材確保、人材育成
当社製品の製造には高い技術を要することから、事業の継続には専門技術をもった人材の確保、人材の育成が重要となります。しかし、スキル保有者の退職や人材不足等により、次世代への技術の継承が滞った場合、長期的視点から、将来の事業展開や業績、成長に大きな影響を及ぼす場合がございます。当社グループにおきましては、P.10 ④経営基盤の強化に記載したとおり、定年延長制度の導入を行うなど、スキル保有者の雇用継続や次世代への継承に対する対応を行っております。
<公的規制等に関するリスク>
(1)工作機械の輸出管理(外為法等規則)
我が国では、武器を輸出しないこと、大量破壊兵器等関連汎用品が大量破壊兵器等の開発、製造、使用、貯蔵に使用されないこと、通常兵器関連汎用品が通常兵器の過剰な蓄積に寄与しないことを目的に、関係法令等の仕組みの中で安全保障輸出を管理しております。当社グループが生産し販売する工作機械は、大量破壊兵器の開発等に用いられるおそれがある貨物として、貨物及び技術の提供等につき外為法に基づく輸出管理対象となる場合があります。当社では輸出管理を統括する専門部署を設置し厳格に輸出管理を行っておりますが、当社グループが工作機械を輸出する場合、または技術を提供する場合において、外為法等に基づく規則を遵守できなかった場合には法的な処分を受け、また、社会的な信用の失墜等を招き、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、国際情勢の変化によりこれらの規制が強化されることとなれば、その内容によっては当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(2)各国・各地域の公的規制、政策動向
当社グループの事業活動はグローバルに展開しているため、各国・各地域の公的規制、政策動向に影響を受けます。これらの政策や規制等の強化や変更は、対応コストの増加や制裁金等の負担により、当社グループへの損益に影響を与える可能性があります。
当社グループにおきましては、上記公的規制等に関するリスクに対し、輸出管理専門の部署を設置し、輸出関連法規の遵守に関する内部規定及びマニュアルの厳格な運用に努めるほか、現地代理店や現地営業所、支店等による情報収集を図り、リスクの軽減に努めてまいります。
<自然災害や突発的事象発生のリスク>
(1)自然災害、感染症等によるリスク
近年、世界的な気候変動により、台風、水害等の大規模災害の発生頻度が高まっており、また、新型インフルエンザ、新型コロナウイルス等の感染症の流行も発生しております。
このような事態が発生した場合、事業所の停止、設備の損壊、交通機関や通信手段の停止、サプライチェーンへの被害等により、当社グループの事業活動の継続に影響を及ぼす可能性があります。また、こうした自然災害や感染症の流行に伴う景気悪化により、当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。
(2)紛争・テロ・政情不安等に関するリスク
当社グループが事業活動を展開する国や地域において、紛争やテロ、デモ、ストライキ、政情不安等発生した場合、当社の事業に大きな影響を与えるリスクがあります。
当社グループにおきましては、上記自然災害や突発的事象発生のリスクに対し、安全衛生に関する会議体を設置し、非常事態発生時のマニュアルの作成、定期的な見直し、社内の点検や訓練の実施等を行うことで、リスクの軽減に努めてまいります。
なお、当社グループの業績に影響を及ぼすリスク要因は、これらに限定されるものではありません。
<リスク管理体制>
当社グループは、毎月開催される経営会議において各種リスクの状況の把握や必要な対応等の検討を行っており、経営に大きな影響を与えうる重大なリスクについては取締役会に報告いたします。これにより、経営層は存在するリスクを重要性に応じて的確に把握した上で、事業の継続や業績に影響を与える様々なリスクをマネジメントし、影響を最小化するための経営判断を行うことができる体制となっております。
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
当連結会計年度における工作機械業界は、受注総額が前年度比14.8%減の1兆4,531億円、うち、内需は前年度比21.3%減の4,575億円、外需は前年度比11.4%減の9,956億円と、内外需ともに減少傾向が続いております。
このような経済環境下、当社は主力製品である「SPG-X」「UJG-35i」「APX-105」やインサート研削盤のハイエンドモデルである「APX-F50」を中心に受注販売活動を行い、特に欧米等の地域においてAPX-F50等の売上が増加いたしました。
製造につきましては、本社工場における生産設備の更新を前期に引き続き当期も継続して実施しており、生産体制の見直しや改善活動と合わせ、さらなる製品品質と生産効率の向上を図っております。研究開発につきましては、金型関連研削盤及び切削工具関連研削盤の新機種等の開発を継続するほか、新分野製品の開発に向けた取り組みを行っております。
海外展開につきましては、引き続き、各地域において今後の需要拡大のための各施策を行っております。米国地域においては、アメリカノースカロライナ支店に当社製品を展示し北米のお客様に向けた受注活動を行っております。欧州地域においては、前期ドイツに設立した連結子会社であるWAIDA Europe GmbHを活用した欧州向けの受注販売活動を進めるほか、アフターサービス担当者を配置し、現地でのアフターサービスの拡充を図っており、当連結会計年度の欧州向けの売り上げ増加に寄与しました。アジア地域においては、台湾の連結子会社である和井田精機股份有限公司を活用した生産販売体制の強化にも引き続き取り組んでおります。
この結果、 当連結会計年度の財政状態及び経営成績は次のとおりとなりました。
(a) 財政状態
(資産)
総資産は、前連結会計年度末に比べ449百万円減少し、12,148百万円となりました。これは、主として現金及び預金が363百万円、契約資産が235百万円、リース資産が102百万円増加し、電子記録債権が290百万円、売掛金が185百万円、仕掛品が126百万円、機械装置及び運搬具が105百万円減少したことなどによります。
(負債)
負債は、前連結会計年度末に比べ195百万円減少し、1,990百万円となりました。これは、主として長期リース債務(1年内返済予定のリース債務を含む)が113百万円増加し、支払手形及び買掛金が134百万円、長期借入金(1年内返済予定の長期借入金を含む)が253百万円減少したことなどによります。
(純資産)
純資産合計は、前連結会計年度末に比べ644百万円増加し、10,157百万円となりました。これは、主として利益剰余金が468百万円増加したことなどによります。
(b) 経営成績
当連結会計年度における売上高は7,538百万円(前年同期比0.6%減)、とほぼ横ばいとなりましたが、設備投資や欧州子会社に係る費用の増加により、営業利益は969百万円(前年同期比16.1%減)、経常利益は1,090百万円(前年同期比9.9%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は727百万円(前年同期比16.2%減)となりました。品目別に業績を示すと、次のとおりであります。
(金型関連研削盤)
アジア地域及び欧米等の地域向けの販売は増加したものの、国内及び中国向けの販売は減少し、売上高は1,757百万円(前年同期比17.5%減)となりました。金型関連研削盤の売上高は当社グル―プの総売上高の23.3%を占めております。
(切削工具関連研削盤)
国内及び中国向けの販売は減少したものの、欧米等の地域向けの販売が大きく増加し、売上高は4,401百万円(前年同期比7.6%増)となりました。切削工具関連研削盤の売上高は当社グループの総売上高の58.4%を占めております。
(その他の機械)
その他の機械については、売上高は270百万円(前年同期比23.5%減)となりました。その他の機械の売上高は、当社グループの総売上高の3.6%を占めております。
(アフターサービス)
アフターサービス(有償修理)及びメンテナンス部品については、売上高は1,108百万円(前年同期比10.4%増)となりました。アフターサービスにおける売上高は、当社グループの総売上高の14.7%を占めております。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ363百万円増加し、3,997百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は、1,135百万円(前年同期は282百万円の支出)となりました。税金等調整前当期純利益1,039百万円を計上したほか、収入の主な内訳は、減価償却費339百万円、売上債権の減少額396百万円等であり、支出の主な内訳は、棚卸資産の増加額108百万円、仕入債務の減少額134百万円、法人税等の支払額353百万円等であります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は、330百万円(前年同期は753百万円の支出)となりました。支出の主な内訳は、有形固定資産の取得による支出169百万円、無形固定資産の取得による支出163百万円等であります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は、513百万円(前年同期は958百万円の支出)となりました。支出の主な内訳は、長期借入金の返済による支出253百万円、配当金の支払額259百万円等であります。
当社グループは工作機械の製造・販売業の単一セグメントでありますので、セグメント情報は記載しておりません。以下は当連結会計年度における品目別の状況を記載しております。
当連結会計年度における生産実績を品目別に示すと、次のとおりであります。
(注) 金額は、販売価格によっております。
当連結会計年度における受注実績を品目別に示すと、次のとおりであります。
(注) 金額は、販売価格によっております。
当連結会計年度における販売実績を品目別に示すと、次のとおりであります。
(注) 1.金額は、販売価格によっております。
2.前連結会計年度及び当連結会計年度において、外部顧客への売上高のうち連結損益計算書の売上高の10%以上を占める相手先がいないため、主な相手先別の売上高及び当該売上高の総売上高に対する割合の記載はありません。
(2) 経営者の視点による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
当連結会計年度の経営者の視点による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析は、次のとおりであります。なお、将来に関する事項については、本有価証券報告書提出日現在において判断したものであり、不確実性を内在しており、あるいはリスクを含んでいるため、将来生じる実際の結果と大きく異なる可能性もあります。
① 財政状態の分析
当連結会計年度末における財政状態は「(業績等の概要) (1) 財政状態及び経営成績の状況」のとおりであります。
当社グループの自己資本比率は当連結会計年度末時点で82.8%となっており、現状、財政状態につきましては大きな懸念はないものと認識しております。来期以降も、企業体質の強化と将来の事業展開のために内部留保の充実を図るとともに、研究開発や設備への投資及び安定的な配当等により、企業価値の向上に努めてまいります。
② 経営成績の分析
当連結会計年度の経営成績は、2023年5月11日に発表した期初計画におきましては、売上高7,681百万円、営業利益972百万円、経常利益979百万円、親会社株主に帰属する当期純利益686百万円の通期業績予想数値を開示していたのに対し、実績は売上高7,538百万円、営業利益は969百万円、経常利益は1,090百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は727百万円と、概ね期初計画通りの結果となりました。売上高については、前年同期と比較して国内や中国向けの販売が減少したものの、主に欧米等の地域向けの販売が増加し、全体としては前年同期比0.6%減とほぼ横ばいとなりました。なお、当連結会計年度における当社の製品売上高(金型関連研削盤、切削工具関連研削盤及びその他の機械 )は6,143百万円であり、連結売上高 7,538百万円の81.5%を占めております。利益面では、設備投資や欧州子会社に係る費用の増加により営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益について前年同期比減となりました。
当社グループは「経常利益率」を経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標としております。当連結会計年度の経常利益率は上記の理由から14.5%と、前連結会計年度の経常利益率16.0%を下回っております。
2025年3月期における当社グループを取り巻く経営環境につきましては、市況に大きな変化はなく、弱含む中で底堅い動きが続いております。今後は、内需においてはAI関連需要及び中国のハイテク投資の増加等を見越した設備投資計画に伴う受注や自動車関連の年後半の回復に向けた動きが現れるものと予想されております。外需においては、中国については引き続き厳しい見方が多いものの、欧米については金利政策やアメリカ大統領選等の状況を注視しつつ、引き続き底堅い受注水準で推移するものと見込まれております。
当社グループにおきましても、上記状況を注視しつつ、グローバル展開の継続、既存製品の品質向上、生産工程の見直し及び新製品の開発等に取り組み、売上高及び利益確保に努めてまいります。なお、次期(2025年3月期)の業績の見通しにつきましては、連結売上高7,171百万円(前年同期比4.9%減)、連結営業利益467百万円(前年同期比51.8%減)、連結経常利益522百万円(前年同期比52.1%減)、親会社株主に帰属する当期純利益367百万円(前年同期比49.5%減)を見込んでおります。
(a) 受注実績
当連結会計年度におきましては、切削工具関連研削盤についての受注は堅調に推移したものの、金型関連研削盤については中国市場が低調であったことなどから、受注が減少いたしました。2025年3月期につきましては、金型関連研削盤については前期に引き続き厳しい低調となると見込まれておりますが、切削工具関連研削盤については海外を中心に引き続き旺盛な需要が継続するものと見込まれております。
当連結会計年度及び前連結会計年度に係る受注実績を品目別に示すと、次のとおりであります。
(注) 金額は、販売価格によっております。
(b) 販売実績
当連結会計年度におきましては、国内及び中国向けの販売は減少しましたが、アジア地域及び欧米等の地域向けの販売は増加致しました。欧米等の地域については、前期設立したWAIDA Europe GmbHを活用した受注販売活動が売上高の増加に寄与いたしました。202年3月期につきましては、国内及び中国については引き続き厳しい市場環境となると見込まれておりますが、新機種の投入等による需要喚起に取り組んでまいります。欧米及びアジア地域については引き続き好調な市場環境となると見込まれておりますが、前期の反動で受注の一服感が見られることから、前年同期比では販売は減少する見通しです。
当連結会計年度及び前連結会計年度に係る販売実績を地域別に示すと、次のとおりであります。
(注) 1 国または地域の区分は、地理的近接度によっております。
2 各区分に属する主な国または地域は以下のとおりです。
中国……………………………中国
アジア地域(中国を除く)……台湾、韓国、東南アジア地域、南アジア地域等
欧米等の地域…………………米国、ヨーロッパ地域、アフリカ地域
③ キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
(a) キャッシュフローの状況の分析
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローは、「(業績等の概要) (2) キャッシュ・フローの状況」のとおりであります。
なお、当連結会計年度は主に本社工場における生産設備の更新や継続中の基幹業務システムの更新として、有形固定資産及び無形固定資産の取得による支出として332百万円の支出を行っておりますが、その資金の調達源は主に自己資金となっております。来期以降も設備投資等を行ってまいりますが、その資金の調達源を自己資金とした場合においても、現状、キャッシュ・フローについて大きな懸念はないものと認識しております。
(b) 資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループは、企業体質の強化と将来の事業展開のために内部留保の充実を図るとともに、当社グループの業績に応じた配当を安定的かつ継続的に行うことを基本方針としております。なお、内部留保金の使途につきましては、将来に向けたコア技術の研究開発、既存分野の新製品開発、生産性向上と納期短縮を目的とした設備投資、販路拡大のための海外市場展開等将来の成長につながる戦略投資や、財務体質の強化等に充当してまいります。
当社グループにおいては、工作機械業界の特性である景気変動リスクに備えた上で、企業価値向上を目的とした戦略的投資を行うために必要な水準の現預金を保有しており、取締役会等において手元現預金の水準について定期的な確認を行っております。また、担当部門において資本コストの算定及び定期的な見直しを行っており、その情報を取締役会で共有しております。各年度の設備投資は自己資金の範囲を考慮し、強固な財務基盤を維持し、必要なキャッシュフローを確保したうえで適切な成長投資を実施してまいります。
なお、当連結会計年度における現金及び現金同等物の期末残高は3,997百万円、営業活動によるキャッシュフローは1,135百万円の収入となっておりますが、来期も景気変動リスクに対応する現預金の水準についての確認を継続的に実施し、その上で、必要に応じた戦略的投資を行い、企業価値の持続的な向上を図ってまいります。また、継続的に株主への還元を行ってまいります。
④ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
当社グループにおきましては、中国において引き続き厳しい市場環境が続くことなど、地域ごとの市場環境を考慮し会計上の見積りを行っております。ただし、繰延税金資産の回収可能性の判断等の会計上の見積りには重要な変更はありません。
なお、当社グループが連結財務諸表の作成において、会計上の見積りに用いた仮定及び基準のうち重要なものは以下のとおりであります。
(a) 貸倒引当金
債権の貸倒れによる損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については個別に回収可能性を検討して回収不能見込額を計上しております。
(b) 役員賞与引当金
役員賞与の支給に備えるため、当連結会計年度末における支給見込額に基づき計上しております。
(c) 製品保証引当金
製品の品質保証に伴う支出に備えるため、過去の実績に基づいて今後必要と見込まれる額を計上しております。
(d) 繰延税金資産
将来の利益計画に基づいて課税所得を見積り、回収可能性があると判断した将来減算一時差異について繰延税金資産を計上しております。なお、当該課税所得を見積るに当たって、前提とした条件や仮定に変更が生じ、これが減少した場合、繰延税金資産が減額され、税金費用が計上される可能性があります。
(e) 固定資産の減損処理
事業用資産については原則として、当社は事業単位ごとに、連結子会社は各社を一つの単位としてグルーピングを行い、遊休資産及び賃貸不動産については個別物件ごとにグルーピングを行った上で、減損の兆候の把握及び減損損失の認識と測定を行っております。
該当事項はありません。
当社グループは、精密工作機械技術、研削加工技術及び制御技術をコアの技術とし、ユーザーの要求や環境の変化に対応しつつ独自性のある製品開発を主体に研究開発活動に取り組んでおります。
新製品の開発に必要な基礎技術及び要素技術の研究については、開発テーマごとに各開発チームが担当し、テーマによりましては、大学、エンドユーザー及び取引業者と、共同で研究開発を行う等、各々鋭意取り組んでおります。
当連結会計年度における研究開発費の金額は、
(1) 金型関連研削盤
・ 次期プロファイル研削盤の開発
(2) 切削工具関連研削盤
・ 次期工具研削盤の開発
(3) その他の機械
・ 当社のコア技術を生かした機械の開発