第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 会社の経営の基本方針

当社グループは持株会社体制のもと、社会に貢献できる可能性をあらゆる角度から検討し、傘下の事業会社のそれぞれの特性と機能を活かし、活力と調和のとれたグループ経営を推し進めるとともに、世界市場をターゲットとした事業を展開してまいります。

また、当社グループでは、2019年に創立75周年を迎えたことを機に、これまでの伝統を踏まえつつ、これからの当社グループの方針・理念をより明確にするため、あらたに下記のとおりMission, Vision, Yamato SPIRITを制定いたしました。

 


 

鉄鋼事業・軌道事業ともに日本国内市場は成熟していることから、当社グループとしてこれからも更に発展していくために、需要が堅実な市場や今後インフラ投資の伸びが期待出来る新興国などに拠点を持ち、その国の成長に寄与していくと同時に成長の果実として収益を取り込んでいく所存です。このMission, Vision, Yamato SPIRITのもと、当社グループの成長の源泉が、海外事業にあることを改めて発信し、今後も海外事業を更に安定・発展・拡大させてまいります。そのためにも、モノづくり企業として技術、経営のベースである国内姫路の工場を当社の海外展開を支えるグループのマザー工場として位置付け、更なる基盤強化を推し進めるとともに、コスト競争力の強化、品質の安定と向上、デリバリーを含む顧客サービスの向上に不断の努力を続けてまいります。また、人材教育・育成にもより一層力を入れ、更なる事業の発展に努めてまいります。

 

(2) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標

当社は、世界的な経済構造の激しい変革に対応できる経営方針として、事業の一極化をさけ、主に海外に事業投資を行い、投資の分散化を進めてまいりました。健全な財務体質を維持しつつ、将来の成長分野へ投資する方針であり、キャッシュ・フローを重視した経営を行ってまいります。なお、当社グループの業績は、製品販売価格と原材料価格の変動に大きく影響され、各々の市場価格は、国内外の経済情勢をはじめ外部環境に大きく影響を受けることから、中長期の収益計画は作成しておりません。

短期的な業績の見通しにつきましては、米国経済は底堅さを保っているものの、中国経済の長期停滞やウクライナ問題の長期化及び中東情勢の緊迫化など世界経済は不安要素が多く、先行き不透明感は強まっております。当社グループの主要製品であるH形鋼等の土木・建築用鋼材の需要も全体的に盛り上がりに欠ける状況が続いており、また、中国の鋼材輸出量は増加傾向にあるなど、経営環境は悪化しております。各拠点において、中国材への対抗策を図り、引続き販売数量の確保、鋼材マージンの維持及びコスト低減等に努めてまいります。

 

以上を踏まえ、次期の業績予想につきましては、売上高は182,000百万円、営業利益は11,000百万円、経常利益は77,000百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は55,000百万円を予想しております。

 

なお、現時点での各国・地域の事業状況の前提は以下のとおりとしております。

 

 

日本

大型建築案件向けや土木関連需要は底堅いものの、中小建築案件向けは引続き低調であり、建設業の2024年問題による工期の遅れから需要の鈍化が懸念されます。
 鉄スクラップ価格は円安も相俟って高値圏で推移し、電力料金や物流費は大幅に上昇する見込みであります。また、第1四半期には圧延設備の矯正機更新に伴い1ヵ月強の生産停止を予定しており、償却負担増も含め、収益低下要因となります。業績につきましては、短納期対応等による販売数量確保及びコスト高を反映した販売価格の浸透に努めてまいりますが、前期比で減益を予想しております。

 

タイ

タイ経済は中国景気の影響を受けやすく、回復ペースは鈍化傾向にあります。民間プロジェクトや公共投資計画の後ろ倒しも見られ、国内形鋼需要に力強さを欠くなか、安価な中国材との競争が激しさを増しております。また、ASEAN市場においても中国メーカー等との厳しい競争環境が続く見通しです。業績につきましては、販売価格の下落によるマージン低下により、前期比で減益を予想しております。

 

米国

 インフレは緩やかに減速する見通しであり、大幅な景気後退リスクは低下しております。流通顧客が在庫積み上げ局面に入るにはまだ時間を要する見込みであり、中国以外の輸入材も増加傾向にありますが、半導体工場などの米国回帰に向けた工場建設や政府主導のインフラ投資等により、大型サイズのH形鋼及び鋼矢板は安定的な受注が見込まれます。業績につきましては、引続き高収益を確保する見込みであるものの、形鋼市況は軟化傾向にあり、前期比で減益を予想しております。

 

中東

世界経済に減速感が見られるなか、石油減産政策により油価は高値圏で推移しているものの、域内の景気は鈍化傾向にあります。サウジアラビアを中心に建設プロジェクト等の形鋼需要は底堅いものの、安価な中国材流入による市況軟化や中東情勢の緊迫化など先行き不安が続いております。業績につきましては、連続黒字を継続し、安定した収益を確保する見込みであるものの、前期比で減益を予想しております。

 

ベトナム

ベトナム経済は、不動産業界が持ち直しつつあり、回復局面にあるものの、中国経済への依存度も高く、形鋼需要の本格的な回復には時間を要する見込みです。また、中国製鋼板を加工した建築材との競合も厳しさを増しており、市況軟化の要因になっております。業績につきましては、販売数量増により前期比で増益を予想しております。

 

韓国

金融引き締めの影響による不動産市場の低迷及び資材コスト高等による建設業界不況が深刻化しており、鉄筋需要は先行き更に減少する見込みです。また、鉄筋市況は下落基調が続くなど、経営環境の厳しさが増しております。業績につきましては、一定の収益を確保する見通しながらも、前期比で大幅な減益を予想しております。

 

インドネシア

2023年8月8日付「特定子会社の異動を伴うインドネシア法人の株式取得に関するお知らせ」にて公表いたしましたPT Nusantara Baja Profil社の株式取得を、2024年5月31日付「特定子会社の異動を伴うインドネシア法人の株式取得完了及び商号変更のお知らせ」にて公表の通り完了いたしました。また、同社は同日付で商号をPT Garuda Yamato Steel社(以下、GYS社)へ変更しております。12月決算であるGYS社の2025年3月期連結業績への反映につきましては、みなし取得日を2024年3月31日として、第1四半期連結会計期間末に連結を開始し、損益計算書の連結は、第2四半期連結累計期間から開始することを想定し、GYS社の9ヵ月間の業績(連結決算上の「のれんの償却」含む)を織り込んでおります。なお、本件に係るのれんの金額は、現時点の概算額で約100百万米ドルと想定しており、その償却期間は13年を見込んでおります。
 業績につきましては、一定の収益を確保し、連結業績に貢献する見通しです。

 

 

(3) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当社グループは、グローバルな鉄事業を通して、国際社会の発展や豊かな地域社会の実現に貢献することをミッションとして、これからもサステナブルな社会の実現に向けた取り組みを継続して参ります。

また、更なる事業の成長に向け、当社グループは、「2030年ありたい姿」に掲げた重点戦略を進めていく所存です。カーボンニュートラル・循環型社会実現に向け、「コア事業である形鋼事業の強靭化」において、アジア等の成長地域での販売拡大、高度な操業ノウハウと最先端技術の導入による各拠点の収益力維持・向上を推し進めると共に、「新たな鉄・インフラ・グリーン事業領域への進出」において、国内外での積極的なM&Aなどを通じた製品群の拡充やバリューチェーンの強化、技術獲得に挑戦し、それらを支えるプロフェッショナル人材の育成と充実に一層注力して参ります。

 


 

国内におきましては、グループのマザー工場であるヤマトスチールにおいて、最新の技術・設備を導入し、安全性の向上、コスト競争力の強化、品質の安定と向上に取り組み、国内事業の基盤強化を推し進めるだけでなく、そこで培ったノウハウをグループ展開して参ります。この取り組みの一環として、圧延ライン更新などの戦略的設備投資をここ数年掛けて実施して参ります。

海外におきましては、2024年5月31日に、タイ、ベトナムに続くASEAN域内第3の拠点として、域内最大の人口を誇るインドネシアでの拠点を獲得いたしました。これは、インドネシア大手鉄鋼メーカーであるPTグヌン・ラジャ・パクシ社が営む形鋼事業並びにPTグヌン・ガルーダ社が保有する事業用不動産を承継した新設会社の80%の株式を取得(約352百万米ドル)したものであります。

これにより、当社グループの重要戦略である「ASEAN 300万トン体制」の事業基盤が整うことになるため、その果実として収益を最大化するための施策を着実に実行して参ります。

まずは、経済成長・人口増加・首都移転などによって伸びゆくインドネシアマーケットにおいて、市場シェアおよび利益の拡大に注力して参ります。さらに、ASEAN地域での地位を確立するために、ASEAN地域のマザー工場であるタイのサイアム・ヤマト・スチールカンパニーリミテッドを核に、タイ・インドネシア・ベトナムの3拠点で製造・販売・調達のそれぞれの分野でシナジー最大化を図り、域内で過半のシェア獲得を目指して参ります。

なお、当社グループにおきましては従来から鉄鋼製品製造会社間で技術会議を定期的に開催し、技術情報の交換と技術向上に努めておりますが、人材育成面や更なる技術交流の機会を創出していくためにも、海外の関係会社と姫路のヤマトスチールとの間でエンジニアの交流等を一層活発化させることでグループの技術情報の共有及び人材の底上げを図り、競争力の強化にも努めていく所存です。

当社グループはサステナビリティへの取り組みを重要な経営課題と位置づけ、事業活動を通じて各国・各地域の発展と人々の未来を支え、持続可能な社会の実現に寄与して参ります。2025年度をターゲットとした「サステナビリティ中期計画」を策定しており、中期的な視点から当社グループのサステナビリティへの取り組みを具体的に推進し、持続的な成長を支えるためのリスクと機会への対応について積極的に進めて参ります。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) サステナビリティ基本方針

大和工業グループは、「鉄で未来を 未来の鉄を」をミッションに掲げ、鉄事業で新たな価値を創造し豊かな社会の実現に貢献することを目指しています。この理念の下、当社はサステナビリティへの取り組みを重要な経営課題と位置づけ、事業活動を通じて各国・各地域の発展と人々の未来を支え、持続可能な社会の実現に寄与していきます。

◆ マテリアリティの特定と取り組み推進

当社は、サステナブルな社会の実現と、当社グループの持続的成長・企業価値の向上を両立するサステナビリティ経営を実現するために、当社グループ及びステークホルダーにとって重要度が高いと考えるテーマをマテリアリティとして特定しています。マテリアリティは中・長期的にリスクまたは機会となる優先的に取り組むべき課題であることから、これらを当社の経営戦略やサステナビリティ中期計画の中に組み込み、事業活動を通じて本方針を実践します。

◆ 当社のサステナビリティ経営

当社は、サステナビリティ経営を「事業基盤である環境・社会を維持しながら企業が持続的に成長すること」と定義し、以下の各点に取り組んでまいります。

1 長期に亘り市場から求め続けられること

市場・経営環境を十分に見極め、将来予測に基づき迅速かつ適切に対応し、競争力の維持・向上とサステナブルな社会の実現に取り組みます。

2 供給(原材料・人材・知財)を長期的に維持すること

鉄スクラップを資源として活用し新たな鉄鋼製品として蘇らせるリサイクル事業を通じて、サーキュラーエコノミー(循環型経済)を実践します。

多様なプロフェッショナル人材が国籍、性別、年齢を超えてチームワークを発揮し、持続的に高付加価値な製品・サービスを創出できるよう人材育成に取り組みます。

鉄・軌道のプロフェッショナルとして、鉄鋼事業・軌道用品事業におけるモノづくりの技術を一層進化させ、社会・環境課題の解決と経済価値の創造を両立します。

3 社会から信頼されること

世界基準の製品・サービスを徹底した安全のもと提供します。

高い倫理観を持ち、公正・誠実に判断・行動します。

 

 

(2) サステナビリティ推進体制(ガバナンス)

当社グループは2020年8月、社長を委員長とし、独立社外取締役を含む取締役がサステナビリティ委員として構成する「CSR委員会(現・サステナビリティ委員会)」を設置しました。

サステナビリティ委員会のもと、環境・社会・ガバナンスの各部会において、サステナビリティ中期計画で定めたテーマを中心に当社グループのサステナビリティへの取り組みを具体的に推進し、持続的な成長を支えるためのリスクと機会への対応について積極的に進めてまいります。また、サステナビリティ委員会運営規則を制定し審議決裁に係る整備を実施、事務局も設置してサステナビリティ活動状況の管理体制も確保しています。

2023年度のサステナビリティ委員会は3回開催されました。

 


 

(3) リスク管理

当社グループは、定期的に開催されるサステナビリティ委員会において審議されたサステナビリティに関する事項を、大和工業株式会社の取締役会または経営会議に報告し、取締役会・経営会議は事業計画や年度予算などを検討する際、サステナビリティ課題が経営に与えるリスク、機会といった影響を考慮し判断しています。

当社グループは、自社のサステナビリティへの取り組みの現状から短期と中長期の時間軸で把握した課題を「ステークホルダーにとっての重要度」と、リスク・機会の観点による「大和工業グループにとっての重要度」の2軸で総合的に評価し、さらに有識者(2名)に妥当性を確認いただき、サステナビリティ課題のリスク・機会を評価しています。ステークホルダー・当社グループ両者にとって重要度が高いテーマをマテリアリティとして特定し、サステナビリティ委員会で審議した上で承認されました。特定したマテリアリティについて、中期的な目標と、それを実現するための短期的な年度目標を設定したサステナビリティ中期計画を策定し、リスク・機会への対応を進めております。

 

 

(4) マテリアリティの特定

① マテリアリティ特定プロセス

グループ各社のそれぞれの担当部署にてサステナビリティ課題を抽出し、対応してきましたが、グループとして優先的に取り組むべき課題の特定が重要であると考え、以下のとおり、マテリアリティ(最重要テーマ)を定めました。

 


 

② 特定したマテリアリティ

上記のプロセスを経て、環境(Environment)、社会(Society)において、以下のとおりマテリアリティを特定しました。ガバナンス(Governance)は企業経営の基盤と位置付けています。

 


 

 

(5) 戦略・指標及び目標

サステナビリティ中期計画

特定したマテリアリティについて、2025年度をターゲットとした中期的な目標と、それを実現するための短期的な年度目標を設定しました。これに基づき、PDCAを回し、推進していくとともに、サステナビリティ委員会での検討を経て深化させていきます。

2025年度をターゲットとした中期的な目標及び2024年度の年度目標は以下の通りです。

 

 

マテリアリティ

項目

対応する
SDGs

自社のリスク/機会

目指す姿

2025年度

2024年度

中期目標※1

年度目標※1


環境

気候
変動

気候変動リスクへの対応

 




<機会>

・CO2排出量が税や価格等に反映されるようになった場合、高炉製品と比較して製造段階におけるCO2排出量が少ない電炉製品に競争優位性が生じる

<リスク>

・原材料、電力等エネルギー、水等のコストが上昇、または供給が不安定になる可能性がある

・カーボンプライシングなどに伴い燃料価格が高騰し、コストが上昇する可能性がある

2050年のカーボンニュートラルな社会を見据え、革新的な脱炭素技術の導入や、省エネルギー施策を促進し、可能なセクターでは再生可能エネルギーを活用する

・2025年度までに、気候変動に伴う移行リスク、物理的リスクによる財務的影響を開示する

・TCFD提言に基づきカーボンプライシングが導入された場合の潜在的影響額の算定およびリスク対応費用の開示を継続する

温室効果ガス
の排出削減

・CO2排出量を38%削減する(2013年度比)※2※3

・CO2フリー燃料(水素・アンモニア等)を使った次世代工業炉開発の状況やCO2フリー燃料のサプライチェーン拡充の状況を捕捉する為に、引き続き専門業者や大学の研究機関との連携を実施する

・Scope1及びScope2は、国内連結子会社全てのGHG排出量を開示する

・Scope1及びScope2は、海外連結子会社のSYSは全てのGHG排出量を開示し、新たな拠点であるインドネシアは全てのGHG排出量算定の仕組み作りを整備する

・Scope3は、ヤマトスチール単体を対象に算定・開示を実施する

エネルギー
利用効率化

・CO2排出原単位を20%削減する(2013年度比)※2※3

・同上

再生可能
エネルギー
の活用

・2025年度までに、再生可能エネルギーを一部の事業部門に導入する

・太陽光発電設備及びシステム導入後の運用体制を整備する

資源
循環

資源の
循環利用

 



<機会>

・電炉は鉄スクラップを原材料として鉄を作っていることから、リサイクルや資源の循環利用を社会に対し訴求することができ、競争優位につながる

・廃棄物再利用率の向上により、より高い資源循環を実現することができる

<リスク>

・廃棄物の販売先減少により廃棄物の再利用ができなくなった場合、リサイクル率が低下する

鉄スクラップの高度な循環利用を促進するエコシステムの拡大によりサーキュラーエコノミーを実践し、サステナブルな社会の実現に貢献する

・一般廃棄物のゼロエミッションへ挑戦する

・産業廃棄物のリサイクル率を5%向上させる

・廃棄物・リサイクルに関する環境教育の実施を継続すると共に、一般廃棄物の減少に向けプラスチック等の資源リサイクル燃料の活用の拡大を進める

・有価物販売先の模索およびニーズに応じた加工処理方法を継続して検討し、更なる廃棄物の削減を進める

環境
配慮

商品

環境配慮型
製品・
サービスの
開発

 




<機会>

・CO2排出量が税や価格等に反映されるようになった場合、競争優位性となる(施主がCO2排出量が少なく、低価格な電炉製品を選択するようになる)

社会全体のCO2排出量削減、環境負荷低減に寄与する製品・技術を開発する

・環境認証製品の普及促進により、CO2排出量の少ない製品を供給することで社会全体のCO2排出量削減に貢献する

・他業種との廃棄物の有価物活用の可能性を継続して検討する

・環境認証(※4)の認知度向上のためのPR活動を継続して実施する

・最適なバイオコークス製造プロセスを確立するための体制を整備する

・環境負荷低減に寄与する製品の開発を継続して検討する


社会

製品
責任

製品品質の
確保

 




<リスク>

・商品にトラブルが発生した場合、大きな影響が出る

・外注業者における納期遅延、品質問題が発生した場合、レピュテーションリスクにつながる懸念がある

鉄鋼・重工・軌道用品事業を通じ社会インフラを支える責任を自覚し安全・安心で高品質・高付加価値な製品・サービスの提供を何よりも優先する

・クレーム件数を25%改善する (2020年度比)

・鉄道・船舶輸送の一翼を担う企業として品質管理を徹底し、重大有責事故ゼロを継続する

・高炉の生産縮小に伴い大型製品の物件向け販売比率の更なる増加が見込まれるため、大型製品の品質向上に注力し、厳格な品質管理水準の維持に取り組む

顧客への情報開示/コミュニケーション強化

<機会>

・顧客満足度を高めることで当社製品を選んでもらえる可能性が高くなる

<リスク>

・必要に応じ顧客に対する情報開示を実施しているが、広く社会に認識されていないことにより機会損失やレピュテーションリスクが発生する懸念がある

お客様、そして社会の声を聴き、新しい価値の提案や継続的改善を行う

・利害関係者からのニーズと期待を明確にし、顧客満足度向上を図る

・大型製品の品質維持に向け、品質保証体制の厳格化および、現場指導・社員教育の強化を図る

・お客様とのコミュニケーションの充実を図り、製販一体で顧客満足度向上に取り組む

人材
育成

人材育成

 



<機会>

・多様なプロフェッショナル人材を起用することにより、高付加価値な製品・サービスを創出することができる

<リスク>

・事業拡大に伴い人員不足に陥る懸念がある

・優秀な人材の獲得競争が激化する

サステナビリティに取り組むことで社員のロイヤルティーを高め、企業理念(Mission, Vision, Yamato SPIRIT)の実践に不可欠な最先端の技術力や柔軟な企画力などを備えた多様なプロフェッショナル人材がグループ全体で循環し、グローバルに活躍できる企業となる

・グループ間の人材交流に加え、グループを横断しての配置転換やキャリアパスにより、グローバル人材の育成を促進する

・最先端設備の導入や操業経験で培った鉄づくりの技術をグローバルに展開し、グループ全体の技術力向上・DX推進を図る

<制度整備・導入>

・新人事制度、各種制度の定着、充実化、適宜の見直し

・人的資本経営に関わる具体施策の実行

・エンゲージメントサーベイの継続実施、施策への反映

<組織力向上>

・グループ横断のジョブローテーションの実施

・新卒・キャリア採用をさらに強化し人員の充実化

・海外JVとの連携による海外出張研修の実施

 

 

 

マテリアリティ

項目

対応する
SDGs

自社のリスク/機会

目指す姿

2025年度

2024年度

中期目標※1

年度目標※1

G ガバナンス

企業
経営

基盤

ガバナンス

 


<機会>

・コーポレート・ガバナンスの改善に継続的に取り組むことで、柔軟かつ強靱な経営基盤を構築することができる

・企業理念(Mission, Vision, YamatoSPIRIT)を浸透させることがガバナンス意識を醸成し、エンゲージメントやパフォーマンス向上につながる

<リスク>

・ガバナンス意識の欠如や違反により社会や取引先から信用を失う懸念がある

社会に信頼される企業であり続けるとともに、コーポレート・ガバナンスを強化し、気候変動等の大きな環境変化に対して柔軟かつ強靱(レジリエント)に対応できるサステナブルな企業を目指す

・コーポレート・ガバナンス改革を継続的に実行する

・企業理念をグループ全体に浸透させる

・グループ全体のサステナビリティ経営体制を構築する

・取締役会実効性評価の結果から抽出される課題への対応計画の立案と実行をする

・社員エンゲージメント向上に向けた具体的施策の実行ならびに全社員サーベイ結果を踏まえた新たな施策の企画を立案する

・投資家・市場関係者とのIR面談等におけるご意見の経営会議への報告と経営への反映施策を継続して検討する

・国内外グループ各社の実状に応じたリスクマネジメント活動のPDCA確立及び運用細則を策定する

コンプライアンス

<リスク>

・グローバルな事業展開に伴い、法令遵守はもとより、倫理的な問題への対応如何によって、操業停止やブランドなどを大きく毀損する懸念がある

・コンプライアンス意識の欠如や違反により社会や取引先から信用を失う懸念がある

・重大な法令違反の発生無し

グループ会社のコンプライアンス強化に向けて以下テーマに注力する

・インサイダー取引防止

・サプライチェーン上の人権

・人権デューデリジェンス

・贈収賄および腐敗防止

 

※1 特段の記載が無い限り、大和工業グループにとって最も影響の大きい鉄鋼事業を対象とした記載となります。

※2 日本政府の削減目標に従い2013年度を基準年としています。

※3 Scope1・2合計を対象。電炉は事業の特性上、大量の電力を使用することから、電力会社の電源割合の変動による影響を大きく受けます。

※4 エコリーフ及びカーボンフットプリント認証

 

その他、サステナブルな社会の実現に向けた取り組みについては、当社ホームページをご参照ください。

(https://www.yamatokogyo.co.jp/sustainability/)

 

また、2023年度の年度目標及び2023年度の取り組みと実績は以下の通りです。

 

 

マテリアリティ

項目

対応する
SDGs

2023年度

年度目標 ※1

2023年度

取り組みと実績 ※1


環境

気候
変動

気候変動リスクへの対応

 




TCFD提言に基づきカーボンプライシングが導入された場合の潜在的影響額の算定およびリスク対応費用の開示を検討する

<TCFD提言に基づく開示>

・カーボンプライシングが導入された場合の潜在的影響額、気候関連リスク・機会に対応するための設備投資費用をCDPに開示

温室効果ガス

の排出削減

・CO2フリー燃料(水素・アンモニア等)を使った次世代工業炉開発の状況やCO2フリー燃料のサプライチェーン拡充の状況を捕捉する為に専門業者との連携を実施する

・海外拠点を含む連結対象範囲のCO2排出量把握・開示の連携体制を強化する

<CO2フリー燃料に関する連携>

・大阪大学と共同でアンモニア燃焼による材料影響の調査に着手

・CO2フリー燃料を用いた燃焼バーナーの開発状況の情報を収集

<連結対象範囲のCO2排出量把握>

・Scope1及びScope2は、海外拠点を含む連結子会社のCO2排出量を開示済み

 

エネルギー
利用効率化

・同上

・同上

再生可能
エネルギー
の活用

・事務所・倉庫等への再生可能エネルギー導入の検討を継続する

<再生可能エネルギーの導入検討>

・SVC(電圧フリッカ対策等に用いる静止型無効電力補償装置)を設置

・3MW規模の太陽光発電設備及びシステム導入を決定

資源
循環

資源の
循環利用

 



・廃棄物・リサイクルに関する環境教育の実施を継続すると共に、一般廃棄物の減少に向けた具体的アクションを検討する

・継続して有価物販売先の模索および加工処理能力の効率化を検討し、更なる廃棄物の削減を進める

<環境教育>

・環境月間では、各部門の管理者に加え協力会社の責任者を含め、廃棄物・リサイクルに関する教育をサステナビリティ経営推進室、環境管理課にて実施。グループとして取り組むべき課題であることの認識強化

<一般廃棄物のゼロエミッション>

・大和工業グループの新入社員およびキャリア入社社員を対象に環境教育を環境管理課にて実施し、廃棄物・リサイクルに関する内容を充実させ意識を定着化

・一般廃棄物分類の推進とプラスチック等の資源リサイクル燃料の活用

<産業廃棄物の削減>

・産業廃棄物の中間処理を実施し、リサイクル可能な製品へと転換することで廃棄物の削減を促進 (2020年度比4.3%改善)

環境
配慮

商品

環境配慮型
製品・
サービスの
開発

 




・他業種との廃棄物の有価物活用の可能性の検討を継続する 

・環境認証(※2)の認知度向上のための営業活動の実施を継続する
 

<廃棄物の有価物活用可能性の検討>

・公共事業への供給を見据え官公庁や民間各種業界へのPR活動を実施

<環境認証の認知度向上>

・社外セミナーでの講師等により環境認証の認知度向上への取り組みを実施

・ゼネコン、デベロッパーを中心に当社取り組み事項のPR活動を実施

<社会全体のCO2排出量削減に寄与する技術開発>

・石炭コークスの代替材とするバイオコークスの製造設備投資を決定 (産学連携コンソーシアムによる取り組み)

<環境配慮型製品の開発>

・クレジットと再エネ証書を活用した環境負荷低減に寄与する製品の開発

 

 

 

 

マテリアリティ

項目

対応する
SDGs

2023年度

年度目標 ※1

2023年度

取り組みと実績 ※1


社会

製品
責任

製品品質の
確保

 




・高炉の生産縮小に伴い大型製品の物件向け販売比率の更なる増加が見込まれるため、大型製品の品質向上に注力し品質管理水準の維持に取り組む

 

<クレーム件数>

・クレーム件数 26%改善(2020年度比)
製造難易度の高い大型製品の販売比率が増加したものの、製造工程に起因するクレームは減少

<重大有責事故>

・鉄道・船舶輸送の重大有責事故ゼロを継続

顧客への情報開示/コミュニケーション強化

・ISO9001に基づく品質マネジメントシステムをベースに、品質改善及び品質保証体制・指導・教育を強化し、顧客満足度向上に引き続き取り組む

<顧客満足度向上>

・品質管理課にて顧客満足度調査を実施し、品質改善及び品質保証体制・指導・教育を強化したことで品質項目の顧客満足度は昨年度より向上

 

人材
育成

人材育成

 



・実効性のある人材戦略の構築・人材育成の実行に向け、社員へのヒアリングも実施し、新人事制度、賃金制度、評価制度、教育制度の定着、浸透、整備を行う

・グローバル人材育成プログラムの拡充とキャリア人材採用の拡大により、事業のグローバル展開加速に対応する組織強化を目指す

・海外拠点との人材交流・技術研修の強化及び国内での最先端設備導入・DX推進プロジェクトへの参画により若手社員の教育機会を創出し育成する

 

<制度整備・導入>

・新人事制度の導入・運用・見直し

・新人事制度・エンゲージメントサーベイの実施及び施策への反映

・フレックスタイム制・服装自由化など働き方に関する諸制度の企画・導入決定

・カフェテリアプラン制度等の福利厚生諸施策の企画・導入決定

<組織強化>

・大和工業グループ2023年度キャリア採用48名、新卒採用9名

(前年度キャリア採用22名、新卒採用21名)

<教育機会創出>

・階層別教育、目的別教育、語学学習等の教育諸制度の拡充と実施

・製造部門の設備更新・DX推進のプロジェクトへの若手社員の参画

G ガバナンス

企業
経営

基盤

ガバナンス

 


・取締役会実効性評価の結果から抽出される課題への対応計画を立案・実行する

・新人事制度の定着と浸透に向けた施策の実行

・リスクマネジメント専門組織を新たに設置し、リスクマネジメントの高度化を図る

<取締役会実効性評価>

・取締役会並びに取締役会の補完機能である経営会議での議論充実のため主に下記取組を実施

 - 戦略的議論の充実:2030年ありたい姿の策定

 - 資料の早期提供(1週間前送付)の徹底

 - 経営会議へ出席されていない取締役への議案内容説明の継続

<非財務資本の活用>

・サステナブルな成長を支える非財務資本の活用について、下記テーマを経営会議にて議論し方針を決定

- 人的資本経営において、国内全社員サーベイ結果も踏まえた社員エンゲージメント向上のための具体的施策

- ヤマトスチールでのSVC(電圧フリッカ対策等に用いる静止型無効電力補償装置)設置後におけるクリーンエネルギー活用の具体的施策

<株主・投資家のみなさまの声の経営への反映>

・年間100社を超える投資家・市場関係者とのIR面談等において頂戴したご意見をもとに、四半期ごとに経営会議に報告のうえ経営にどのように反映すべきかを議論し方向性を整理

<リスクマネジメントの高度化>

・2023年7月1日付けでリスクマネジメント部を新設し、高度化に向けて主に下記取組みを推進

- Bad News Firstや経営危機管理規定との関係を議論・整理し、リスクマネジメント活動では、潜在的なリスクへの対応・リスク発生の予防強化に取り組むことを決定

- グループ横断的なリスクマネジメント活動の実施のため、活動の基盤となる基本方針及び規定を制定

コンプライアンス

・グループ会社の社内研修におけるコンプライアンス教育を強化・継続的に実施する

・階層別研修等の既存のプログラムに加えて、各種法令に関する研修の充実化を図る

<コンプライアンス教育の強化と継続>

・国内外グループ会社にコンプライアンスメールマガジンを発行し社員への啓蒙を実施(毎月発行、全12回)

・グループ新入社員、キャリア採用社員を対象に外部講師を招聘しコンプライアンス研修を実施

・初任監督者を対象に外部講師を招聘しコンプライアンス研修を実施

<法令研修の充実化>

・インサイダー取引防止(金融商品取引法)に向けた情報管理ルールや社内運用改善案の検討を実施し、次年度からの定期研修プログラム化を計画

・役員及び社員を対象に警察関係者による経済安全保障(不正競争防止法)に関する研修を実施

 

 

※1 特段の記載が無い限り、大和工業グループにとって最も影響の大きい鉄鋼事業を対象とした記載となります。

※2 エコリーフ及びカーボンフットプリント認証

 

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 中東合弁事業のリスク

当社は、世界市場をターゲットとして、グローバルに事業を展開しております。2007年に中東地域への進出を決定し、中東事業の合弁パートナーであるFoulath社と共に、2009年にバーレーンにスルブカンパニーBSC(c)(以下、SULB)を設立し、主にH形鋼の生産・販売のため、直接還元鉄から製鋼、圧延の一貫工場を建設いたしました。また、Foulath社と共に2011年には特別目的会社を通じてサウジアラビアの中小型形鋼メーカーの資産買収を行い、ユナイテッド・スルブカンパニー(“サウジスルブ”)LLC(以下、Saudi Sulb)を設立し、中東地域での合弁事業を拡大いたしました。

SULBは2013年7月末より商業生産を開始し、早期にフル生産体制を確立いたしましたが、中東地域での公共投資の低迷、安価な輸入品の流入、政府補助カットに伴う湾岸諸国での電気、ガス、水道価格の実質上の値上げによるコスト増などその経営環境は当初想定していなかった様々な要因の影響を受けてきました。

ここ数年は原油高を背景に中東諸国の経済情勢が上向き、公共投資などの建設需要も回復基調にあり、フル生産が続いております。3年連続黒字を計上するなど業績は改善傾向にあり、金融機関への借入金返済に伴う債務保証額の減少やSULB社に対する貸付金の回収が一部実行されるなど、中東合弁事業への多額の投資(貸付、債務保証含む)に対するリスクは軽減してきております。しかしながら、直近は中東情勢の緊迫化に加え、中国経済低迷の長期化により安価な中国材の流入が再び増しており、また更なるコスト上昇懸念もあるなど、当該リスクを払拭できる状況には至っておりません。今後、経営環境の変化により、中東の営業活動に伴う損失に加え、多額の投資損失が発生した場合は、当社グループの業績及び財務状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 海外進出に潜在するリスク

当社グループの生産及び販売活動は、国内のみならず、米国、タイ、韓国、バーレーン、サウジアラビア並びにベトナムで行われ、世界市場をターゲットとして、グローバルに事業を展開しております。これらの海外市場への事業進出においては、各国で発生する恐れのあるテロ、戦争、その他の要因による社会的混乱により関係会社の業績と財務状況に大きな悪影響を及ぼす可能性があります。また、各国での予期し得ない政治又は法環境の変化、経済状況の変化等により、事業の遂行に問題が生じる可能性もあります。

 

(3) 製品販売価格と主原料価格の変動

当社グループの主力である鉄鋼事業の業績は、製品販売価格と主原料であるスクラップ価格の変動に大きく影響されます。また、SULBでは当社グループで唯一、鉄鉱石ペレットを主原料としております。これらの市場価格は、国内外の経済情勢をはじめ外部環境により大きく影響を受ける可能性があります。

 

 

(4) 為替レートの変動

当社グループは、世界市場をターゲットとして、グローバルに事業を展開しており、在外子会社、関連会社等の業績が連結の経営成績に大きく影響を及ぼします。連結財務諸表は、各国の現地通貨を円換算して作成しているため、為替レートの変動により財務内容に影響を及ぼします。また、当社グループが保有する現金及び預金のうち、外貨の占める割合は高く、一般に、他の通貨に対する円高は、当社に悪影響を及ぼし、円安は当社に好影響をもたらすことになります。なお、為替レートの変動による為替換算調整勘定の増減が包括利益並びに純資産に大きく影響を及ぼしますが、為替換算調整勘定は在外子会社等を保有することで生じる連結財務諸表の報告上のものであり、当社の業績そのものを左右するものでなく、今後とも引き続き海外事業の展開を続ける方針であることから為替換算調整勘定の変動に対してヘッジは行っておりません。

 

(5) 電力リスク

当社グループはグローバルに事業を展開する電炉メーカーであり、大量の電力を使用する当社グループにとって、大幅な電力単価の引上げや電力使用制限があれば、当社の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) 気候変動リスク

気候変動リスクにつきましては、原材料、電力等エネルギー、水等のコストが上昇、または供給が不安定になる可能性及びカーボンプライシングなどに伴い燃料価格が高騰し、コストが上昇する可能性などがあります。

詳細につきましては、当社ホームページをご参照ください。

(https://www.yamatokogyo.co.jp/sustainability/environment/climate.php)

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用関連会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

(1) 経営成績

 当連結会計年度における当社グループの経営環境は、中国の景気減速等による世界的な鋼材需要・市況軟化の影響を受けたため、主要製品であるH形鋼等の土木・建築用鋼材需要は全体的に盛り上がりに欠け、グループ総販売数量は減少傾向にあり、拠点によっては安価な中国材との競争が激しさを増すなど先行き不透明な状況が続いております。そのような環境のなか、継続して鋼材マージン維持及びコスト低減等に努めることで全拠点において収益を確保したことに加え、円安進行及び米国の高金利も当社グループ業績の押上げ要因となりました。

 

日本におきましては、都市再開発や半導体工場など大型建築案件向けや土木関連などの形鋼需要は堅調に推移したものの、人手不足等による工期の遅れが顕著化してきており、また、中小建築案件向けは建設費用の高止まりによる需要低迷が続いております。ヤマトスチールにおきましては、大型サイズの生産・販売強化及び短納期対応に製販一体となって取り組み、主力の物件向けH形鋼や鋼矢板の受注量確保及び販売価格維持に努めました。業績につきましては、圧延設備の更新工事を計画的に順次実施している影響もあり販売数量は減少したものの、鋼材マージンの改善により前期比で増益となりました。

 

連結子会社を有するタイ、また持分法適用関連会社を有する米国、バーレーン、サウジアラビア、ベトナム、韓国におきましては、いずれも2023年1月~12月の業績が当連結会計年度に反映されます。

 

タイの連結子会社サイアム・ヤマト・スチールカンパニーリミテッド(SYS)におきましては、タイ国内では経済の持ち直しや政権の安定化により、形鋼需要・市況は緩やかな回復基調となりました。一方、ASEAN市場では、昨年度下期以降、安価な中国材との厳しい競争が続いており、総販売数量は前期比で大幅に減少しました。業績につきましては、鉄スクラップ価格の下落もあり鋼材マージンは高水準を維持したものの、販売数量減の影響が大きく前期比で減益となりました。

なお、SYSはタイ国歳入局の税務調査を受け、当連結会計年度に過年度付加価値税等914百万円(特別損失)を計上しておりますが、不服申し立てを行っております。

 

米国の持分法適用関連会社ニューコア・ヤマト・スチールカンパニー(NYS)におきましては、半導体や電気自動車関連などの大型工場建設案件を中心に形鋼需要は底堅く推移したものの、金融引締めが長期化するなか、流通顧客の買い控え等により一部サイズでは競合他社や輸入材との競争が高まり、販売数量は伸び悩みました。業績につきましては、総じて需給が引き締まった状態が続き、形鋼市況は前年ほどではないものの比較的高値圏で推移したことで、前期比で減益となったものの引続き高収益を確保しました。

 

中東の持分法適用関連会社スルブカンパニー(SULB)におきましては、原油高を背景に、中東地域における形鋼需要はインフラ投資を中心に堅調であり、フル生産が続いております。一方、製品及び中間材の販売価格は、昨年度はロシアのウクライナ侵攻による鉄スクラップ市況の高騰等により一時的に高値圏で推移しましたが、今年度は鉄スクラップ市況が下落したことに加え、安価な中国材の流入の影響も受け軟化傾向となりました。業績につきましては、前期比で減益となったものの好業績が続いております。

 

ベトナムの持分法適用関連会社ポスコ・ヤマト・ビナ・スチールジョイントストックカンパニー(PY VINA)におきましては、インフラ投資等による需要回復が期待ほど進まず、また中国製鋼板を加工した建築材との競合も影響し、国内販売数量が伸び悩むなか、輸出強化により、生産・販売数量の確保に努めました。業績につきましては、前期比で若干の増益となりました。

 

 

韓国の持分法適用関連会社ワイケー・スチールコーポレーション(YKS)におきましては、インフレと金利上昇の影響を受け鉄筋需要が悪化し、販売数量が大幅に減少しました。鉄筋市況は軟化傾向が強まっているものの、鉄スクラップ価格も下落したため、鋼材マージンは比較的高水準を維持しましたが、業績につきましては、前期比で減益となりました。

なお、韓国の関係会社に対する訴訟提起の件に関して、当連結会計年度に当社グループの損失見込額1,968百万円(持分法による投資利益のマイナス652百万円及び訴訟損失引当金繰入額(特別損失)1,315百万円)を計上しておりますが、同社は反論のため答弁書を提出しております。詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (連結損益計算書関係) ※5 訴訟損失引当金繰入額」をご参照下さい。

 

なお、当連結会計年度の経営分析の結果は以下のとおりです。

 

(売上高)

当連結会計年度の売上高163,479百万円であり、前連結会計年度に比べ16,958百万円減少しました。

 

(売上原価、販売費及び一般管理費)

当連結会計年度の売上原価131,678百万円であり、前連結会計年度に比べ17,076百万円減少しました。また、販売費及び一般管理費は14,517百万円であり、前連結会計年度に比べ352百万円減少しました。

 

(営業外収益、営業外費用)

当連結会計年度の営業外収益は82,099百万円であり、前連結会計年度に比べ8,241百万円増加しました。これは、主に受取利息11,814百万円と前連結会計年度に比べ8,177百万円増加したことによります。また、営業外費用は158百万円であり、前連結会計年度に比べ17百万円減少しました。

 

(特別利益、特別損失)

当連結会計年度の特別利益は16百万円であり、特別損失は2,710百万円でありました。

 

(法人税、住民税及び事業税、法人税等調整額)

当連結会計年度の法人税、住民税及び事業税法人税等調整額の総額は24,405百万円であり、前連結会計年度に比べ3,375百万円増加しました。

 

(非支配株主に帰属する当期純利益)

当連結会計年度の非支配株主に帰属する当期純利益2,105百万円であり、前連結会計年度に比べ782百万円減少しました。

 

以上の結果、当連結会計年度の売上高は、前連結会計年度比16,958百万円減163,479百万円となりました。利益につきましては、営業利益は前連結会計年度比469百万円増17,282百万円、経常利益は前連結会計年度比8,729百万円増99,223百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度比4,700百万円増70,018百万円となりました。経常利益と親会社株主に帰属する当期純利益は3期連続で過去最高益を更新しております。

 

 

 セグメントの業績は、次のとおりです。

① 鉄鋼事業(日本)

都市再開発や半導体工場など大型建築案件向けや土木関連などの形鋼需要は堅調に推移したものの、人手不足等による工期の遅れが顕著化してきており、また、中小建築案件向けは建設費用の高止まりによる需要低迷が続いております。ヤマトスチールにおきましては、大型サイズの生産・販売強化及び短納期対応に製販一体となって取り組み、主力の物件向けH形鋼や鋼矢板の受注量確保及び販売価格維持に努めました。業績につきましては、圧延設備の更新工事を計画的に順次実施している影響もあり販売数量は減少したものの、鋼材マージンの改善により前期比で増益となりました。

以上により、当事業の売上高は、前連結会計年度比302百万円減72,570百万円、セグメント利益(営業利益)は、前連結会計年度比2,161百万円増10,863百万円となりました。

 

② 鉄鋼事業(タイ国)

タイ国内では経済の持ち直しや政権の安定化により、形鋼需要・市況は緩やかな回復基調となりました。一方、ASEAN市場では、昨年度下期以降、安価な中国材との厳しい競争が続いており、総販売数量は前期比で大幅に減少しました。業績につきましては、鉄スクラップ価格の下落もあり鋼材マージンは高水準を維持したものの、販売数量減の影響が大きく前期比で減益となりました。

以上により、当事業の売上高は、前連結会計年度比16,921百万円減80,409百万円、セグメント利益(営業利益)は、前連結会計年度比1,898百万円減8,836百万円となりました。

 

③ 軌道用品事業

当事業の売上高は、前連結会計年度比1,062百万円増7,554百万円、セグメント利益(営業利益)は前連結会計年度比655百万円増905百万円となりました。

 

④ その他

その他の売上高は、前連結会計年度比798百万円減2,943百万円、セグメント利益(営業利益)は前連結会計年度比12百万円増141百万円となりました。

 

 

 生産、受注及び販売の実績は以下のとおりであります。

① 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

鉄鋼事業(日本)

71,918

△2.1

鉄鋼事業(タイ国)

80,185

△16.9

軌道用品事業

7,954

+20.5

その他

2,303

△27.6

合計

162,362

△9.6

 

(注) 金額は販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。

 

② 受注状況

当連結会計年度における受注状況をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前期比(%)

受注残高(百万円)

前期比(%)

鉄鋼事業(日本)

67,542

△5.8

10,030

△33.4

鉄鋼事業(タイ国)

80,752

△15.7

7,305

+4.9

軌道用品事業

8,263

+25.7

1,621

+77.7

その他

2,339

△25.4

77

△4.2

合計

158,898

△10.4

19,034

△17.3

 

 

③ 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

鉄鋼事業(日本)

72,570

△0.4

鉄鋼事業(タイ国)

80,409

△17.4

軌道用品事業

7,554

+16.4

その他

2,943

△21.3

合計

163,479

△9.4

 

(注) 1 セグメント間の取引については相殺消去しております。

2 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自 2022年4月1日

   至 2023年3月31日

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

    至 2024年3月31日

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

阪和興業㈱

20,982

11.6

17,926

11.0

 

 

 

(2) 財政状態

(流動資産)

当連結会計年度末における流動資産の残高は311,449百万円であり、前連結会計年度に比べ73,206百万円増加しました。増加の主な要因は、現金及び預金の残高が74,800百万円増加したことによります。

 

(固定資産)

当連結会計年度末における固定資産の残高は297,333百万円であり、前連結会計年度に比べ20,576百万円増加しました。増加の主な要因は、投資有価証券の残高が18,252百万円増加したことによります。

 

(流動負債)

当連結会計年度末における流動負債の残高は25,250百万円であり、前連結会計年度に比べ3,751百万円増加しました。増加の主な要因は、未払金の残高が1,764百万円増加したことによります。

 

(固定負債)

当連結会計年度末における固定負債の残高は28,591百万円であり、前連結会計年度に比べ5,301百万円増加しました。増加の主な要因は、繰延税金負債の残高が3,573百万円増加したことによります。

 

(純資産)

当連結会計年度末における純資産の残高は554,941百万円であり、前連結会計年度に比べ84,730百万円増加しました。増加の主な要因は、利益剰余金の残高が50,973百万円増加したことによります。

また、自己資本比率は85.9%であり、前連結会計年度に比べ0.3ポイント増加しております。

 

(3) キャッシュ・フロー並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

① キャッシュ・フロー

 当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、営業活動によるキャッシュ・フローが80,915百万円増加し、投資活動によるキャッシュ・フローが33,292百万円減少し、財務活動によるキャッシュ・フローが21,256百万円減少いたしました。これに資金に係る換算差額の増加8,469百万円を加えた結果、当連結会計年度末の資金残高は、前連結会計年度末比34,836百万円増168,695百万円となりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度において、営業活動による資金の増加は80,915百万円(前連結会計年度は52,654百万円の増加)となりました。これは主に、当連結会計年度において、税金等調整前当期純利益96,529百万円(前連結会計年度は89,235百万円)及び、利息及び配当金の受取額76,027百万円(前連結会計年度は50,888百万円)であったこと等によります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度において、投資活動による資金の減少は33,292百万円(前連結会計年度は10,346百万円の減少)となりました。これは主に、当連結会計年度において、定期預金の預入による支出76,150百万円(前連結会計年度は7,365百万円)及び、有形固定資産の取得による支出6,341百万円(前連結会計年度は3,866百万円)であったこと等によります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度において、財務活動による資金の減少は21,256百万円(前連結会計年度は17,719百万円の減少)となりました。これは主に、当連結会計年度において、配当金の支払額による支出が19,022百万円(前連結会計年度は15,854百万円)であったこと等によります。

 

 

② 資金需要

当社グループの運転資金需要のうち主なものは、製品製造のための原材料、副資材、電気代、燃料代等の製造費用と販売費及び一般管理費等、営業費用によるものです。また、当社グループの投資資金需要のうち主なものは、安定収益源としての既存設備の維持更新、生産効率向上・品質強化・省力化及び省エネルギー化等を伴う既存設備能力の戦略的増強のための投資、将来の成長に向けた新たな事業拠点・事業領域への投資や環境対策等によるものです。当社グループが事業を営む業界では、新規工場建設、買収資金等の投資額が非常に多額となること、市況産業であることから業績は景気変動に大きく影響を受けること、当社が展開している中東事業において、多額の貸付金、債務保証等を実施していること等を踏まえ、今後も財務健全性の維持に努めながら、将来の成長投資にも積極的に手元資金を配分していく方針です。なお、株主還元につきましては、毎期の営業キャッシュ・フロー未使用分を適切に配分してまいります。配当につきましては、連結配当性向40%を目処に毎期の配当額を決定するとともに、継続的かつ安定的な配当の維持にも努め、当面の間は1株当たり最低配当額を年間300円としております。また、自己株式の取得につきましては、中長期的に株主価値を高める観点から、市場環境や事業投資機会などを総合的に勘案し、機動的に実施を検討してまいります。

 

③ 資金調達

当社グループの運転資金及び設備投資資金については、営業活動により獲得した資金及び内部資金を充当することを基本方針としております。また、戦略的な資金についても主として内部資金によって充当していく方針です。なお、不測の事態に備え、当社と金融機関3社との間で10,000百万円のコミットメントライン契約を設定しており、資金調達が適時滞りなく実施可能と認識しております。

 

(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されております。連結財務諸表の作成にあたっては、可能な限り合理的な根拠に基づいた仮定を用いて会計上の見積りを行っております。

 

5 【経営上の重要な契約等】

当社並びに当社の連結子会社であるタイのサイアム・ヤマト・スチールカンパニーリミテッド(以下、SYS)は、インドネシア証券取引所に上場する大手民営鉄鋼メーカーPT Gunung Raja Paksi Tbk(以下、GRP)社が営む形鋼事業並びにPT Gunung Garuda(以下、GRD)社が保有する事業用不動産を現物出資により承継する新設会社PT Nusantara Baja Profil社の株式の80%を取得することでGRP社並びにGRD社と合意しました。2023年8月8日開催の取締役会において、当該新設会社の株式取得に向けて株式譲渡契約を締結することを決議し、同日付で当該契約を締結いたしました。また、2024年5月31日付で株式の取得を完了し、同日付で商号をPT Garuda Yamato Steel社へ変更いたしました。なお、株式取得後の当社グループの同社に対する出資比率は合計80.00%(当社45.00%、SYS35.00%)となり、同社は当社の連結子会社となりました。

 

詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な後発事象)」をご参照ください。

 

 

6 【研究開発活動】

当社グループの研究開発は、鉄鋼事業(日本)及び軌道用品事業を中心に各製造工程の技術スタッフが共同して行っております。

鉄鋼事業(日本)では主に製鋼・圧延工程の生産効率及び品質向上等に関連した生産技術及び付加価値の高い新製品の開発に取り組んでおります。

軌道用品事業では新しい締結方法の開発に取り組み、ユーザーの求める鉄道の高速化・重量物輸送に適し、かつ保守性に優れた軌道用品の開発に努めております。

当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は45百万円であります。

当連結会計年度における各セグメント別の主な研究の目的、主要課題、研究成果及び研究開発費は以下のとおりであります。

 

(1) 鉄鋼事業(日本)

新製品の開発、生産工程の効率化及び省力化並びに製品の品質向上に関する研究を自社並びに産学連携等で行っております。

当事業に係る研究開発費は7百万円であります。
 

(2) 軌道用品事業

無給油床板、PCまくらぎ分岐器、各種軌道用品等の開発を行うことにより、分岐器の省メンテナンス化に取り組んでおります。また、新幹線用の地震対策に関する脱線防止ガード等の受託研究を顧客と共同で行っております。

当事業に係る研究開発費は、受託研究費を含めて37百万円であります。