文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは持株会社体制のもと、社会に貢献できる可能性をあらゆる角度から検討し、傘下の事業会社のそれぞれの特性と機能を活かし、活力と調和のとれたグループ経営を推し進めるとともに、世界市場をターゲットとした事業を展開してまいります。
また、当社グループでは、2019年に創立75周年を迎えたことを機に、これまでの伝統を踏まえつつ、これからの当社グループの方針・理念をより明確にするため、あらたに下記のとおりMission, Vision, Yamato SPIRITを制定いたしました。
鉄鋼事業・軌道事業ともに日本国内市場は成熟していることから、当社グループとしてこれからも更に発展していくために、需要が堅実な市場や今後インフラ投資の伸びが期待出来る新興国などに拠点を持ち、その国の成長に寄与していくと同時に成長の果実として収益を取り込んでいく所存です。このMission, Vision, Yamato SPIRITのもと、当社グループの成長の源泉が、海外事業にあることを改めて発信し、今後も海外事業を更に安定・発展・拡大させてまいります。そのためにも、モノづくり企業として技術、経営のベースである国内姫路の工場を当社の海外展開を支えるグループのマザー工場として位置付け、更なる基盤強化を推し進めるとともに、コスト競争力の強化、品質の安定と向上、デリバリーを含む顧客サービスの向上に不断の努力を続けてまいります。また、人材教育・育成にもより一層力を入れ、更なる事業の発展に努めてまいります。
当社は、世界的な経済構造の激しい変革に対応できる経営方針として、事業の一極化をさけ、主に海外に事業投資を行い、投資の分散化を進めてまいりました。健全な財務体質を維持しつつ、将来の成長分野へ投資する方針であり、キャッシュ・フローを重視した経営を行ってまいります。なお、当社グループの業績は、製品販売価格と原材料価格の変動に大きく影響され、各々の市場価格は、国内外の経済情勢をはじめ外部環境に大きく影響を受けることから、中長期の収益計画は作成しておりません。
短期的な業績の見通しにつきましては、米国経済は底堅さを保っているものの、中国経済の長期停滞やウクライナ問題の長期化及び中東情勢の緊迫化など世界経済は不安要素が多く、先行き不透明感は強まっております。当社グループの主要製品であるH形鋼等の土木・建築用鋼材の需要も全体的に盛り上がりに欠ける状況が続いており、また、中国の鋼材輸出量は増加傾向にあるなど、経営環境は悪化しております。各拠点において、中国材への対抗策を図り、引続き販売数量の確保、鋼材マージンの維持及びコスト低減等に努めてまいります。
以上を踏まえ、次期の業績予想につきましては、売上高は182,000百万円、営業利益は11,000百万円、経常利益は77,000百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は55,000百万円を予想しております。
なお、現時点での各国・地域の事業状況の前提は以下のとおりとしております。
日本
大型建築案件向けや土木関連需要は底堅いものの、中小建築案件向けは引続き低調であり、建設業の2024年問題による工期の遅れから需要の鈍化が懸念されます。
鉄スクラップ価格は円安も相俟って高値圏で推移し、電力料金や物流費は大幅に上昇する見込みであります。また、第1四半期には圧延設備の矯正機更新に伴い1ヵ月強の生産停止を予定しており、償却負担増も含め、収益低下要因となります。業績につきましては、短納期対応等による販売数量確保及びコスト高を反映した販売価格の浸透に努めてまいりますが、前期比で減益を予想しております。
タイ
タイ経済は中国景気の影響を受けやすく、回復ペースは鈍化傾向にあります。民間プロジェクトや公共投資計画の後ろ倒しも見られ、国内形鋼需要に力強さを欠くなか、安価な中国材との競争が激しさを増しております。また、ASEAN市場においても中国メーカー等との厳しい競争環境が続く見通しです。業績につきましては、販売価格の下落によるマージン低下により、前期比で減益を予想しております。
米国
インフレは緩やかに減速する見通しであり、大幅な景気後退リスクは低下しております。流通顧客が在庫積み上げ局面に入るにはまだ時間を要する見込みであり、中国以外の輸入材も増加傾向にありますが、半導体工場などの米国回帰に向けた工場建設や政府主導のインフラ投資等により、大型サイズのH形鋼及び鋼矢板は安定的な受注が見込まれます。業績につきましては、引続き高収益を確保する見込みであるものの、形鋼市況は軟化傾向にあり、前期比で減益を予想しております。
中東
世界経済に減速感が見られるなか、石油減産政策により油価は高値圏で推移しているものの、域内の景気は鈍化傾向にあります。サウジアラビアを中心に建設プロジェクト等の形鋼需要は底堅いものの、安価な中国材流入による市況軟化や中東情勢の緊迫化など先行き不安が続いております。業績につきましては、連続黒字を継続し、安定した収益を確保する見込みであるものの、前期比で減益を予想しております。
ベトナム
ベトナム経済は、不動産業界が持ち直しつつあり、回復局面にあるものの、中国経済への依存度も高く、形鋼需要の本格的な回復には時間を要する見込みです。また、中国製鋼板を加工した建築材との競合も厳しさを増しており、市況軟化の要因になっております。業績につきましては、販売数量増により前期比で増益を予想しております。
韓国
金融引き締めの影響による不動産市場の低迷及び資材コスト高等による建設業界不況が深刻化しており、鉄筋需要は先行き更に減少する見込みです。また、鉄筋市況は下落基調が続くなど、経営環境の厳しさが増しております。業績につきましては、一定の収益を確保する見通しながらも、前期比で大幅な減益を予想しております。
インドネシア
2023年8月8日付「特定子会社の異動を伴うインドネシア法人の株式取得に関するお知らせ」にて公表いたしましたPT Nusantara Baja Profil社の株式取得を、2024年5月31日付「特定子会社の異動を伴うインドネシア法人の株式取得完了及び商号変更のお知らせ」にて公表の通り完了いたしました。また、同社は同日付で商号をPT Garuda Yamato Steel社(以下、GYS社)へ変更しております。12月決算であるGYS社の2025年3月期連結業績への反映につきましては、みなし取得日を2024年3月31日として、第1四半期連結会計期間末に連結を開始し、損益計算書の連結は、第2四半期連結累計期間から開始することを想定し、GYS社の9ヵ月間の業績(連結決算上の「のれんの償却」含む)を織り込んでおります。なお、本件に係るのれんの金額は、現時点の概算額で約100百万米ドルと想定しており、その償却期間は13年を見込んでおります。
業績につきましては、一定の収益を確保し、連結業績に貢献する見通しです。
当社グループは、グローバルな鉄事業を通して、国際社会の発展や豊かな地域社会の実現に貢献することをミッションとして、これからもサステナブルな社会の実現に向けた取り組みを継続して参ります。
また、更なる事業の成長に向け、当社グループは、「2030年ありたい姿」に掲げた重点戦略を進めていく所存です。カーボンニュートラル・循環型社会実現に向け、「コア事業である形鋼事業の強靭化」において、アジア等の成長地域での販売拡大、高度な操業ノウハウと最先端技術の導入による各拠点の収益力維持・向上を推し進めると共に、「新たな鉄・インフラ・グリーン事業領域への進出」において、国内外での積極的なM&Aなどを通じた製品群の拡充やバリューチェーンの強化、技術獲得に挑戦し、それらを支えるプロフェッショナル人材の育成と充実に一層注力して参ります。
国内におきましては、グループのマザー工場であるヤマトスチールにおいて、最新の技術・設備を導入し、安全性の向上、コスト競争力の強化、品質の安定と向上に取り組み、国内事業の基盤強化を推し進めるだけでなく、そこで培ったノウハウをグループ展開して参ります。この取り組みの一環として、圧延ライン更新などの戦略的設備投資をここ数年掛けて実施して参ります。
海外におきましては、2024年5月31日に、タイ、ベトナムに続くASEAN域内第3の拠点として、域内最大の人口を誇るインドネシアでの拠点を獲得いたしました。これは、インドネシア大手鉄鋼メーカーであるPTグヌン・ラジャ・パクシ社が営む形鋼事業並びにPTグヌン・ガルーダ社が保有する事業用不動産を承継した新設会社の80%の株式を取得(約352百万米ドル)したものであります。
これにより、当社グループの重要戦略である「ASEAN 300万トン体制」の事業基盤が整うことになるため、その果実として収益を最大化するための施策を着実に実行して参ります。
まずは、経済成長・人口増加・首都移転などによって伸びゆくインドネシアマーケットにおいて、市場シェアおよび利益の拡大に注力して参ります。さらに、ASEAN地域での地位を確立するために、ASEAN地域のマザー工場であるタイのサイアム・ヤマト・スチールカンパニーリミテッドを核に、タイ・インドネシア・ベトナムの3拠点で製造・販売・調達のそれぞれの分野でシナジー最大化を図り、域内で過半のシェア獲得を目指して参ります。
なお、当社グループにおきましては従来から鉄鋼製品製造会社間で技術会議を定期的に開催し、技術情報の交換と技術向上に努めておりますが、人材育成面や更なる技術交流の機会を創出していくためにも、海外の関係会社と姫路のヤマトスチールとの間でエンジニアの交流等を一層活発化させることでグループの技術情報の共有及び人材の底上げを図り、競争力の強化にも努めていく所存です。
当社グループはサステナビリティへの取り組みを重要な経営課題と位置づけ、事業活動を通じて各国・各地域の発展と人々の未来を支え、持続可能な社会の実現に寄与して参ります。2025年度をターゲットとした「サステナビリティ中期計画」を策定しており、中期的な視点から当社グループのサステナビリティへの取り組みを具体的に推進し、持続的な成長を支えるためのリスクと機会への対応について積極的に進めて参ります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) サステナビリティ基本方針
大和工業グループは、「鉄で未来を 未来の鉄を」をミッションに掲げ、鉄事業で新たな価値を創造し豊かな社会の実現に貢献することを目指しています。この理念の下、当社はサステナビリティへの取り組みを重要な経営課題と位置づけ、事業活動を通じて各国・各地域の発展と人々の未来を支え、持続可能な社会の実現に寄与していきます。
◆ マテリアリティの特定と取り組み推進
当社は、サステナブルな社会の実現と、当社グループの持続的成長・企業価値の向上を両立するサステナビリティ経営を実現するために、当社グループ及びステークホルダーにとって重要度が高いと考えるテーマをマテリアリティとして特定しています。マテリアリティは中・長期的にリスクまたは機会となる優先的に取り組むべき課題であることから、これらを当社の経営戦略やサステナビリティ中期計画の中に組み込み、事業活動を通じて本方針を実践します。
◆ 当社のサステナビリティ経営
当社は、サステナビリティ経営を「事業基盤である環境・社会を維持しながら企業が持続的に成長すること」と定義し、以下の各点に取り組んでまいります。
1 長期に亘り市場から求め続けられること
市場・経営環境を十分に見極め、将来予測に基づき迅速かつ適切に対応し、競争力の維持・向上とサステナブルな社会の実現に取り組みます。
2 供給(原材料・人材・知財)を長期的に維持すること
鉄スクラップを資源として活用し新たな鉄鋼製品として蘇らせるリサイクル事業を通じて、サーキュラーエコノミー(循環型経済)を実践します。
多様なプロフェッショナル人材が国籍、性別、年齢を超えてチームワークを発揮し、持続的に高付加価値な製品・サービスを創出できるよう人材育成に取り組みます。
鉄・軌道のプロフェッショナルとして、鉄鋼事業・軌道用品事業におけるモノづくりの技術を一層進化させ、社会・環境課題の解決と経済価値の創造を両立します。
3 社会から信頼されること
世界基準の製品・サービスを徹底した安全のもと提供します。
高い倫理観を持ち、公正・誠実に判断・行動します。
(2) サステナビリティ推進体制(ガバナンス)
当社グループは2020年8月、社長を委員長とし、独立社外取締役を含む取締役がサステナビリティ委員として構成する「CSR委員会(現・サステナビリティ委員会)」を設置しました。
サステナビリティ委員会のもと、環境・社会・ガバナンスの各部会において、サステナビリティ中期計画で定めたテーマを中心に当社グループのサステナビリティへの取り組みを具体的に推進し、持続的な成長を支えるためのリスクと機会への対応について積極的に進めてまいります。また、サステナビリティ委員会運営規則を制定し審議決裁に係る整備を実施、事務局も設置してサステナビリティ活動状況の管理体制も確保しています。
2023年度のサステナビリティ委員会は3回開催されました。
(3) リスク管理
当社グループは、定期的に開催されるサステナビリティ委員会において審議されたサステナビリティに関する事項を、大和工業株式会社の取締役会または経営会議に報告し、取締役会・経営会議は事業計画や年度予算などを検討する際、サステナビリティ課題が経営に与えるリスク、機会といった影響を考慮し判断しています。
当社グループは、自社のサステナビリティへの取り組みの現状から短期と中長期の時間軸で把握した課題を「ステークホルダーにとっての重要度」と、リスク・機会の観点による「大和工業グループにとっての重要度」の2軸で総合的に評価し、さらに有識者(2名)に妥当性を確認いただき、サステナビリティ課題のリスク・機会を評価しています。ステークホルダー・当社グループ両者にとって重要度が高いテーマをマテリアリティとして特定し、サステナビリティ委員会で審議した上で承認されました。特定したマテリアリティについて、中期的な目標と、それを実現するための短期的な年度目標を設定したサステナビリティ中期計画を策定し、リスク・機会への対応を進めております。
(4) マテリアリティの特定
① マテリアリティ特定プロセス
グループ各社のそれぞれの担当部署にてサステナビリティ課題を抽出し、対応してきましたが、グループとして優先的に取り組むべき課題の特定が重要であると考え、以下のとおり、マテリアリティ(最重要テーマ)を定めました。
② 特定したマテリアリティ
上記のプロセスを経て、環境(Environment)、社会(Society)において、以下のとおりマテリアリティを特定しました。ガバナンス(Governance)は企業経営の基盤と位置付けています。
(5) 戦略・指標及び目標
サステナビリティ中期計画
特定したマテリアリティについて、2025年度をターゲットとした中期的な目標と、それを実現するための短期的な年度目標を設定しました。これに基づき、PDCAを回し、推進していくとともに、サステナビリティ委員会での検討を経て深化させていきます。
2025年度をターゲットとした中期的な目標及び2024年度の年度目標は以下の通りです。
※1 特段の記載が無い限り、大和工業グループにとって最も影響の大きい鉄鋼事業を対象とした記載となります。
※2 日本政府の削減目標に従い2013年度を基準年としています。
※3 Scope1・2合計を対象。電炉は事業の特性上、大量の電力を使用することから、電力会社の電源割合の変動による影響を大きく受けます。
※4 エコリーフ及びカーボンフットプリント認証
その他、サステナブルな社会の実現に向けた取り組みについては、当社ホームページをご参照ください。
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また、2023年度の年度目標及び2023年度の取り組みと実績は以下の通りです。
※1 特段の記載が無い限り、大和工業グループにとって最も影響の大きい鉄鋼事業を対象とした記載となります。
※2 エコリーフ及びカーボンフットプリント認証
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社は、世界市場をターゲットとして、グローバルに事業を展開しております。2007年に中東地域への進出を決定し、中東事業の合弁パートナーであるFoulath社と共に、2009年にバーレーンにスルブカンパニーBSC(c)(以下、SULB)を設立し、主にH形鋼の生産・販売のため、直接還元鉄から製鋼、圧延の一貫工場を建設いたしました。また、Foulath社と共に2011年には特別目的会社を通じてサウジアラビアの中小型形鋼メーカーの資産買収を行い、ユナイテッド・スルブカンパニー(“サウジスルブ”)LLC(以下、Saudi Sulb)を設立し、中東地域での合弁事業を拡大いたしました。
SULBは2013年7月末より商業生産を開始し、早期にフル生産体制を確立いたしましたが、中東地域での公共投資の低迷、安価な輸入品の流入、政府補助カットに伴う湾岸諸国での電気、ガス、水道価格の実質上の値上げによるコスト増などその経営環境は当初想定していなかった様々な要因の影響を受けてきました。
ここ数年は原油高を背景に中東諸国の経済情勢が上向き、公共投資などの建設需要も回復基調にあり、フル生産が続いております。3年連続黒字を計上するなど業績は改善傾向にあり、金融機関への借入金返済に伴う債務保証額の減少やSULB社に対する貸付金の回収が一部実行されるなど、中東合弁事業への多額の投資(貸付、債務保証含む)に対するリスクは軽減してきております。しかしながら、直近は中東情勢の緊迫化に加え、中国経済低迷の長期化により安価な中国材の流入が再び増しており、また更なるコスト上昇懸念もあるなど、当該リスクを払拭できる状況には至っておりません。今後、経営環境の変化により、中東の営業活動に伴う損失に加え、多額の投資損失が発生した場合は、当社グループの業績及び財務状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。
(2) 海外進出に潜在するリスク
当社グループの生産及び販売活動は、国内のみならず、米国、タイ、韓国、バーレーン、サウジアラビア並びにベトナムで行われ、世界市場をターゲットとして、グローバルに事業を展開しております。これらの海外市場への事業進出においては、各国で発生する恐れのあるテロ、戦争、その他の要因による社会的混乱により関係会社の業績と財務状況に大きな悪影響を及ぼす可能性があります。また、各国での予期し得ない政治又は法環境の変化、経済状況の変化等により、事業の遂行に問題が生じる可能性もあります。
(3) 製品販売価格と主原料価格の変動
当社グループの主力である鉄鋼事業の業績は、製品販売価格と主原料であるスクラップ価格の変動に大きく影響されます。また、SULBでは当社グループで唯一、鉄鉱石ペレットを主原料としております。これらの市場価格は、国内外の経済情勢をはじめ外部環境により大きく影響を受ける可能性があります。
(4) 為替レートの変動
当社グループは、世界市場をターゲットとして、グローバルに事業を展開しており、在外子会社、関連会社等の業績が連結の経営成績に大きく影響を及ぼします。連結財務諸表は、各国の現地通貨を円換算して作成しているため、為替レートの変動により財務内容に影響を及ぼします。また、当社グループが保有する現金及び預金のうち、外貨の占める割合は高く、一般に、他の通貨に対する円高は、当社に悪影響を及ぼし、円安は当社に好影響をもたらすことになります。なお、為替レートの変動による為替換算調整勘定の増減が包括利益並びに純資産に大きく影響を及ぼしますが、為替換算調整勘定は在外子会社等を保有することで生じる連結財務諸表の報告上のものであり、当社の業績そのものを左右するものでなく、今後とも引き続き海外事業の展開を続ける方針であることから為替換算調整勘定の変動に対してヘッジは行っておりません。
当社グループはグローバルに事業を展開する電炉メーカーであり、大量の電力を使用する当社グループにとって、大幅な電力単価の引上げや電力使用制限があれば、当社の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
気候変動リスクにつきましては、原材料、電力等エネルギー、水等のコストが上昇、または供給が不安定になる可能性及びカーボンプライシングなどに伴い燃料価格が高騰し、コストが上昇する可能性などがあります。
詳細につきましては、当社ホームページをご参照ください。
(https://www.yamatokogyo.co.jp/sustainability/environment/climate.php)
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用関連会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
(1) 経営成績
当連結会計年度における当社グループの経営環境は、中国の景気減速等による世界的な鋼材需要・市況軟化の影響を受けたため、主要製品であるH形鋼等の土木・建築用鋼材需要は全体的に盛り上がりに欠け、グループ総販売数量は減少傾向にあり、拠点によっては安価な中国材との競争が激しさを増すなど先行き不透明な状況が続いております。そのような環境のなか、継続して鋼材マージン維持及びコスト低減等に努めることで全拠点において収益を確保したことに加え、円安進行及び米国の高金利も当社グループ業績の押上げ要因となりました。
日本におきましては、都市再開発や半導体工場など大型建築案件向けや土木関連などの形鋼需要は堅調に推移したものの、人手不足等による工期の遅れが顕著化してきており、また、中小建築案件向けは建設費用の高止まりによる需要低迷が続いております。ヤマトスチールにおきましては、大型サイズの生産・販売強化及び短納期対応に製販一体となって取り組み、主力の物件向けH形鋼や鋼矢板の受注量確保及び販売価格維持に努めました。業績につきましては、圧延設備の更新工事を計画的に順次実施している影響もあり販売数量は減少したものの、鋼材マージンの改善により前期比で増益となりました。
連結子会社を有するタイ、また持分法適用関連会社を有する米国、バーレーン、サウジアラビア、ベトナム、韓国におきましては、いずれも2023年1月~12月の業績が当連結会計年度に反映されます。
タイの連結子会社サイアム・ヤマト・スチールカンパニーリミテッド(SYS)におきましては、タイ国内では経済の持ち直しや政権の安定化により、形鋼需要・市況は緩やかな回復基調となりました。一方、ASEAN市場では、昨年度下期以降、安価な中国材との厳しい競争が続いており、総販売数量は前期比で大幅に減少しました。業績につきましては、鉄スクラップ価格の下落もあり鋼材マージンは高水準を維持したものの、販売数量減の影響が大きく前期比で減益となりました。
なお、SYSはタイ国歳入局の税務調査を受け、当連結会計年度に過年度付加価値税等914百万円(特別損失)を計上しておりますが、不服申し立てを行っております。
米国の持分法適用関連会社ニューコア・ヤマト・スチールカンパニー(NYS)におきましては、半導体や電気自動車関連などの大型工場建設案件を中心に形鋼需要は底堅く推移したものの、金融引締めが長期化するなか、流通顧客の買い控え等により一部サイズでは競合他社や輸入材との競争が高まり、販売数量は伸び悩みました。業績につきましては、総じて需給が引き締まった状態が続き、形鋼市況は前年ほどではないものの比較的高値圏で推移したことで、前期比で減益となったものの引続き高収益を確保しました。
中東の持分法適用関連会社スルブカンパニー(SULB)におきましては、原油高を背景に、中東地域における形鋼需要はインフラ投資を中心に堅調であり、フル生産が続いております。一方、製品及び中間材の販売価格は、昨年度はロシアのウクライナ侵攻による鉄スクラップ市況の高騰等により一時的に高値圏で推移しましたが、今年度は鉄スクラップ市況が下落したことに加え、安価な中国材の流入の影響も受け軟化傾向となりました。業績につきましては、前期比で減益となったものの好業績が続いております。
ベトナムの持分法適用関連会社ポスコ・ヤマト・ビナ・スチールジョイントストックカンパニー(PY VINA)におきましては、インフラ投資等による需要回復が期待ほど進まず、また中国製鋼板を加工した建築材との競合も影響し、国内販売数量が伸び悩むなか、輸出強化により、生産・販売数量の確保に努めました。業績につきましては、前期比で若干の増益となりました。
韓国の持分法適用関連会社ワイケー・スチールコーポレーション(YKS)におきましては、インフレと金利上昇の影響を受け鉄筋需要が悪化し、販売数量が大幅に減少しました。鉄筋市況は軟化傾向が強まっているものの、鉄スクラップ価格も下落したため、鋼材マージンは比較的高水準を維持しましたが、業績につきましては、前期比で減益となりました。
なお、韓国の関係会社に対する訴訟提起の件に関して、当連結会計年度に当社グループの損失見込額1,968百万円(持分法による投資利益のマイナス652百万円及び訴訟損失引当金繰入額(特別損失)1,315百万円)を計上しておりますが、同社は反論のため答弁書を提出しております。詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (連結損益計算書関係) ※5 訴訟損失引当金繰入額」をご参照下さい。
なお、当連結会計年度の経営分析の結果は以下のとおりです。
(売上高)
当連結会計年度の売上高は163,479百万円であり、前連結会計年度に比べ16,958百万円減少しました。
(売上原価、販売費及び一般管理費)
当連結会計年度の売上原価は131,678百万円であり、前連結会計年度に比べ17,076百万円減少しました。また、販売費及び一般管理費は14,517百万円であり、前連結会計年度に比べ352百万円減少しました。
(営業外収益、営業外費用)
当連結会計年度の営業外収益は82,099百万円であり、前連結会計年度に比べ8,241百万円増加しました。これは、主に受取利息が11,814百万円と前連結会計年度に比べ8,177百万円増加したことによります。また、営業外費用は158百万円であり、前連結会計年度に比べ17百万円減少しました。
(特別利益、特別損失)
当連結会計年度の特別利益は16百万円であり、特別損失は2,710百万円でありました。
(法人税、住民税及び事業税、法人税等調整額)
当連結会計年度の法人税、住民税及び事業税と法人税等調整額の総額は24,405百万円であり、前連結会計年度に比べ3,375百万円増加しました。
(非支配株主に帰属する当期純利益)
当連結会計年度の非支配株主に帰属する当期純利益は2,105百万円であり、前連結会計年度に比べ782百万円減少しました。
以上の結果、当連結会計年度の売上高は、前連結会計年度比16,958百万円減の163,479百万円となりました。利益につきましては、営業利益は前連結会計年度比469百万円増の17,282百万円、経常利益は前連結会計年度比8,729百万円増の99,223百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度比4,700百万円増の70,018百万円となりました。経常利益と親会社株主に帰属する当期純利益は3期連続で過去最高益を更新しております。
セグメントの業績は、次のとおりです。
都市再開発や半導体工場など大型建築案件向けや土木関連などの形鋼需要は堅調に推移したものの、人手不足等による工期の遅れが顕著化してきており、また、中小建築案件向けは建設費用の高止まりによる需要低迷が続いております。ヤマトスチールにおきましては、大型サイズの生産・販売強化及び短納期対応に製販一体となって取り組み、主力の物件向けH形鋼や鋼矢板の受注量確保及び販売価格維持に努めました。業績につきましては、圧延設備の更新工事を計画的に順次実施している影響もあり販売数量は減少したものの、鋼材マージンの改善により前期比で増益となりました。
以上により、当事業の売上高は、前連結会計年度比302百万円減の72,570百万円、セグメント利益(営業利益)は、前連結会計年度比2,161百万円増の10,863百万円となりました。
タイ国内では経済の持ち直しや政権の安定化により、形鋼需要・市況は緩やかな回復基調となりました。一方、ASEAN市場では、昨年度下期以降、安価な中国材との厳しい競争が続いており、総販売数量は前期比で大幅に減少しました。業績につきましては、鉄スクラップ価格の下落もあり鋼材マージンは高水準を維持したものの、販売数量減の影響が大きく前期比で減益となりました。
以上により、当事業の売上高は、前連結会計年度比16,921百万円減の80,409百万円、セグメント利益(営業利益)は、前連結会計年度比1,898百万円減の8,836百万円となりました。
当事業の売上高は、前連結会計年度比1,062百万円増の7,554百万円、セグメント利益(営業利益)は前連結会計年度比655百万円増の905百万円となりました。
その他の売上高は、前連結会計年度比798百万円減の2,943百万円、セグメント利益(営業利益)は前連結会計年度比12百万円増の141百万円となりました。
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 金額は販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。
当連結会計年度における受注状況をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 セグメント間の取引については相殺消去しております。
2 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
(2) 財政状態
(流動資産)
当連結会計年度末における流動資産の残高は311,449百万円であり、前連結会計年度に比べ73,206百万円増加しました。増加の主な要因は、現金及び預金の残高が74,800百万円増加したことによります。
(固定資産)
当連結会計年度末における固定資産の残高は297,333百万円であり、前連結会計年度に比べ20,576百万円増加しました。増加の主な要因は、投資有価証券の残高が18,252百万円増加したことによります。
(流動負債)
当連結会計年度末における流動負債の残高は25,250百万円であり、前連結会計年度に比べ3,751百万円増加しました。増加の主な要因は、未払金の残高が1,764百万円増加したことによります。
(固定負債)
当連結会計年度末における固定負債の残高は28,591百万円であり、前連結会計年度に比べ5,301百万円増加しました。増加の主な要因は、繰延税金負債の残高が3,573百万円増加したことによります。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産の残高は554,941百万円であり、前連結会計年度に比べ84,730百万円増加しました。増加の主な要因は、利益剰余金の残高が50,973百万円増加したことによります。
また、自己資本比率は85.9%であり、前連結会計年度に比べ0.3ポイント増加しております。
(3) キャッシュ・フロー並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
① キャッシュ・フロー
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、営業活動によるキャッシュ・フローが80,915百万円増加し、投資活動によるキャッシュ・フローが33,292百万円減少し、財務活動によるキャッシュ・フローが21,256百万円減少いたしました。これに資金に係る換算差額の増加8,469百万円を加えた結果、当連結会計年度末の資金残高は、前連結会計年度末比34,836百万円増の168,695百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において、営業活動による資金の増加は80,915百万円(前連結会計年度は52,654百万円の増加)となりました。これは主に、当連結会計年度において、税金等調整前当期純利益が96,529百万円(前連結会計年度は89,235百万円)及び、利息及び配当金の受取額が76,027百万円(前連結会計年度は50,888百万円)であったこと等によります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において、投資活動による資金の減少は33,292百万円(前連結会計年度は10,346百万円の減少)となりました。これは主に、当連結会計年度において、定期預金の預入による支出が76,150百万円(前連結会計年度は7,365百万円)及び、有形固定資産の取得による支出が6,341百万円(前連結会計年度は3,866百万円)であったこと等によります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において、財務活動による資金の減少は21,256百万円(前連結会計年度は17,719百万円の減少)となりました。これは主に、当連結会計年度において、配当金の支払額による支出が19,022百万円(前連結会計年度は15,854百万円)であったこと等によります。
② 資金需要
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、製品製造のための原材料、副資材、電気代、燃料代等の製造費用と販売費及び一般管理費等、営業費用によるものです。また、当社グループの投資資金需要のうち主なものは、安定収益源としての既存設備の維持更新、生産効率向上・品質強化・省力化及び省エネルギー化等を伴う既存設備能力の戦略的増強のための投資、将来の成長に向けた新たな事業拠点・事業領域への投資や環境対策等によるものです。当社グループが事業を営む業界では、新規工場建設、買収資金等の投資額が非常に多額となること、市況産業であることから業績は景気変動に大きく影響を受けること、当社が展開している中東事業において、多額の貸付金、債務保証等を実施していること等を踏まえ、今後も財務健全性の維持に努めながら、将来の成長投資にも積極的に手元資金を配分していく方針です。なお、株主還元につきましては、毎期の営業キャッシュ・フロー未使用分を適切に配分してまいります。配当につきましては、連結配当性向40%を目処に毎期の配当額を決定するとともに、継続的かつ安定的な配当の維持にも努め、当面の間は1株当たり最低配当額を年間300円としております。また、自己株式の取得につきましては、中長期的に株主価値を高める観点から、市場環境や事業投資機会などを総合的に勘案し、機動的に実施を検討してまいります。
③ 資金調達
当社グループの運転資金及び設備投資資金については、営業活動により獲得した資金及び内部資金を充当することを基本方針としております。また、戦略的な資金についても主として内部資金によって充当していく方針です。なお、不測の事態に備え、当社と金融機関3社との間で10,000百万円のコミットメントライン契約を設定しており、資金調達が適時滞りなく実施可能と認識しております。
(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されております。連結財務諸表の作成にあたっては、可能な限り合理的な根拠に基づいた仮定を用いて会計上の見積りを行っております。
当社並びに当社の連結子会社であるタイのサイアム・ヤマト・スチールカンパニーリミテッド(以下、SYS)は、インドネシア証券取引所に上場する大手民営鉄鋼メーカーPT Gunung Raja Paksi Tbk(以下、GRP)社が営む形鋼事業並びにPT Gunung Garuda(以下、GRD)社が保有する事業用不動産を現物出資により承継する新設会社PT Nusantara Baja Profil社の株式の80%を取得することでGRP社並びにGRD社と合意しました。2023年8月8日開催の取締役会において、当該新設会社の株式取得に向けて株式譲渡契約を締結することを決議し、同日付で当該契約を締結いたしました。また、2024年5月31日付で株式の取得を完了し、同日付で商号をPT Garuda Yamato Steel社へ変更いたしました。なお、株式取得後の当社グループの同社に対する出資比率は合計80.00%(当社45.00%、SYS35.00%)となり、同社は当社の連結子会社となりました。
詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な後発事象)」をご参照ください。
当社グループの研究開発は、鉄鋼事業(日本)及び軌道用品事業を中心に各製造工程の技術スタッフが共同して行っております。
鉄鋼事業(日本)では主に製鋼・圧延工程の生産効率及び品質向上等に関連した生産技術及び付加価値の高い新製品の開発に取り組んでおります。
軌道用品事業では新しい締結方法の開発に取り組み、ユーザーの求める鉄道の高速化・重量物輸送に適し、かつ保守性に優れた軌道用品の開発に努めております。
当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は
当連結会計年度における各セグメント別の主な研究の目的、主要課題、研究成果及び研究開発費は以下のとおりであります。
新製品の開発、生産工程の効率化及び省力化並びに製品の品質向上に関する研究を自社並びに産学連携等で行っております。
当事業に係る研究開発費は
無給油床板、PCまくらぎ分岐器、各種軌道用品等の開発を行うことにより、分岐器の省メンテナンス化に取り組んでおります。また、新幹線用の地震対策に関する脱線防止ガード等の受託研究を顧客と共同で行っております。
当事業に係る研究開発費は、受託研究費を含めて