第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営の基本方針

当社グループは、「人間尊重と優良品の生産を基礎として、会社をめぐるすべての関係者との共存共栄をはかる」という創業の精神を変えてはならない経糸(たていと)、社会からの期待に誠意をもって柔軟に応えることを緯糸(よこいと)とし、様々な製品やサービスの提供を通じて時代に求められた社会課題の解決に取り組み、企業価値の持続的向上を目指しております。

 

(2) 中期的な経営戦略

当社グループは、①新たな価値の創出 ②資本コスト重視の経営 ③企業体質の進化 ④環境に配慮した経営を基本戦略として2022年度~2024年度の3ヵ年を推進期間とする中期経営計画「VISION 2030 stage1」を推進しております。中期経営計画「VISION 2030 stage1」では、2030年ビジョンとして「新しい価値を創造し『ここちよさ』を提供することで持続可能な社会の実現に貢献します」を掲げ、「変革と挑戦」をキーワードに、経済的利益と社会的利益を両立させるサステナブル経営を通じて社会貢献と当社グループの持続的成長の実現を目指します。また、各事業セグメントの役割・位置づけを明確にして「VISION 2030 stage1」を推進しております。

 

(2030年に向けた各事業セグメントの役割・位置づけ)

 


成長牽引

メディカル

利益拡大/貢献

プラスチックフィルム

エンジニアリングプラスチックス

コーポレート

ブランド価値向上

アパレル

ライフクリエイト

 

※上図ではメディカル事業を機能ソリューションセグメントに含めておりますが、成長牽引の位置づけをより明確にするため、2023年度より「メディカル」セグメントとして区分しております。

 

※GVA(Gunze Value Added)= 税引後営業利益 + 配当金 - 期末投下資本 × WACC(加重平均資本コスト)

 

(VISION 2030 stage1の基本戦略)

新たな価値の創出

・新規事業の創出と既存事業の成長(M&A含む)

・サステナビリティを追求した新商品、新サービスの提供

資本コスト重視の経営

・経営資源の戦略的配分

・資本効率の追求によるGVA黒字化

企業体質の進化

・多様な人財が活躍する風土づくり

・働き方改革による意識・業務改革の推進

・デジタルの積極活用によるプロセス変革

(生産、販売、開発、物流、間接等すべて)

環境に配慮した経営

・事業活動における環境負荷の低減

 

 

① 新たな価値の創出

・新規事業の創出と既存事業の成長(M&A含む)

機能性フィルムの開発推進、ベンチャー企業等との提携・M&A推進、新規事業創出の仕組みづくり

プラスチック分野、メディカル分野でのグローバル拡販

エンジニアリングプラスチックス分野での半導体関連製品の拡大

アパレル分野でのDtoCビジネスシフト加速(EC、直営店舗)、レディスインナー・レギンス等強化

 

・サステナビリティを追求した新商品、新サービスの提供

吸収性製品を中心とした革新的なメディカル新商品の上市

バイオマス、リサイクル原料を活用したプラスチック環境対応新商品の拡販

アパレル事業での気候変動対応型商品、ウエルネス&ヘルス商品の拡充

人と環境に配慮した「つかしんタウンセンター」のリニューアル

 

② 資本コスト重視の経営

・経営資源の戦略的配分

成長分野、サステナビリティに寄与する事業への重点投資

・資本効率の追求によるGVA(経済的付加価値)黒字化

GVA向上ツリー展開による取り組み強化

 

③ 企業体質の進化

・D&I、働き方改革とエンゲージメント向上への取り組み

女性活躍推進、次世代支援、シニア活躍推進、職場環境整備、オフィス改革、

年休取得率向上、総労働時間削減、

1on1ミーティング推進、心理的安全性醸成、キャリアローテーション/形成支援、

人事処遇制度改革、健康経営

 ・デジタルの積極的活用によるプロセス変革

経営情報の連携(全社/事業部の経営ポータル刷新)

AIを活用した商品・顧客分析とSCM改革

センシング・AIを活用したスマート工場化(自働化・省力化による生産性向上)

RPA等自働化ツール活用による間接業務の省力化

 

④ 環境に配慮した経営

・事業活動における環境負荷の低減

省エネ・創エネ・再エネ活動の推進(高効率設備・太陽光発電設備の導入等)

資源循環の取り組み

サステナブル調達

 

(目標とする経営指標)

VISION 2030 stage1の経営目標はグループ売上高1,400億円、営業利益100億円、GVA(経済的付加価値)黒字化、株主資本コストを上回るROE6.32%以上としております。中でもROE(自己資本利益率)をグループ重点指標として掲げ、引き続きGVAによる業績管理を事業毎に月度単位で実施するとともに、GVA黒字事業には、投下資本収益率(ROIC)を導入し、事業運営において意識づけを強化してまいります。

上記財務目標に加え、サステナブル経営の視点から2030年度までの非財務目標を以下のとおり設定しております。上述の基本戦略に基づき諸施策を強力に推進してまいります。

[非財務目標]

区分

目標指標

2024年度目標

2030年度目標

環境対応

CO2排出量 削減率(対2013年度比)

28%以上

35%以上

エネルギー原単位削減率(対前年)

1%/年以上

企業体質の進化

女性活躍推進

女性管理職比率

6%以上

20%以上

女性社員比率

35%

41%

女性総合職採用比率

50%

50%

子育て支援

男性育休取得率

50%

70%

組織風土づくり

エンゲージメントスコア

70点想定

80点想定

働き方改革

年休取得率

75%

100%

その他

生産性向上率(対前年)

103%

103%

 

 

 

(財務戦略)

強固な財務基盤を維持しつつ、環境関連を含めた設備投資と資本コスト低減を両立させ、GVA向上・フリーキャッシュフローの創出を図ってまいります。株主への利益還元については、ROEが株主資本コストを上回るまで総還元性向100%を維持するとともに、株主資本配当率DOE2.2%以上の安定的な配当を実施してまいります。

 

(3) 当社グループの対処すべき課題

新型コロナウイルス感染症の5類移行に伴う行動制限の緩和等により、社会経済活動の正常化が進み、景気は緩やかな回復基調となる一方、地政学的問題を背景とした原材料価格の高騰に伴う物価上昇や、国内外の金融政策の違いに伴う円安影響及び海外経済の減速懸念など、先行き不透明な状況が継続しております。各事業においては自働化とDX推進による生産性向上の取り組みやグローバル最適生産体制によるコスト競争力の強化、原材料調達網の拡充とともに、市場の様々な変化を捉えた新たな価値創出活動に取り組んでまいります。

なお、2023年度より、現在推進中の中期経営計画「VISION 2030 stage1」における成長牽引の位置づけをより明確にするため、機能ソリューションセグメントに含まれていたメディカル事業を「メディカル」セグメントとして区分しております。

(セグメント別戦略課題)

機能ソリューション事業では、プラスチックフィルム分野は環境対応型新商品の積極的な投入とともに、サーキュラーファクトリー(資源循環型工場)の本格稼働とサーキュラーメーカーへ変革するための基礎となるリサイクルセンター設置を進めてまいります。また、設備の自働化や再生可能エネルギーの活用による生産革新を進める一方、米国・中国・アセアン等海外拡販を強化してまいります。エンジニアリングプラスチックス分野は、主力のOA市場向け製品のシェア拡大に加え、医療・半導体分野の需要増に対応するため、2025年3月完成を目標に主力である江南工場拡張を実施します。また経営資源の戦略的配分を推進するため電子部品分野については連結子会社の株式(85.1%)及び日本と米国のタッチパネル事業の商権を2024年10月1日(予定)に譲渡することとしております。メカトロ分野においても事業譲渡の交渉を行っております。

メディカル事業では、事業の成長を加速するため、2025年2月竣工を目標に京都府綾部工場敷地内に新工場(第三工場)建設とメディカルの開発力強化のための研究開発施設の増強を実施します。新工場では需要が拡大している癒着防止材「テナリーフ」の増産体制を整備します。また米国・中国の販売強化・継続的な新商品開発により、事業拡大を加速させてまいります。

アパレル事業では、競争力向上を目的とした業種横断型の組織再編を通じて、消費行動変化に伴い伸長しているECチャネルや直営店舗のDtoCルートでの更なる拡販と他社とのコラボレーションを積極的に推進し、ライフスタイル分野への拡大、差異化新商品を通じたレディスインナーの拡販を図ってまいります。また生産拠点の集約など構造改革を行ってまいりましたが、今後もオートメーション化とグローバル最適生産体制の構築によりコスト競争力の強化を推進してまいります。加えて「物流の2024年問題」については、効率化(ロットまとめ、輸送量の標準化)に取り組み事業への影響の極小化を図ってまいります。

ライフクリエイト事業では、商業施設の収益力向上の推進や投資効率を重視した物件別管理を強化してまいります。グリーン分野では、大阪万博等への緑化需要の取り込みとCO2削減に向け固定量増加に積極的に取り組んでまいります。スポーツクラブ分野は、不採算店舗の閉鎖等、課題店舗への対応を強化するとともに、スクール事業の拡大と地域・店舗特性に合わせた特長のあるサービス提供や新業態の開発に取り組んでまいります。

 

 

(財務戦略課題)

当連結会計年度末の当社グループPBRは0.8倍となっており、企業価値が毀損している状態が継続しております。このPBR低迷の主要因はROEにあると捉えており、エクイティスプレッド(ROE-株主資本コスト)が継続的にプラスとなれば、PBR1.0倍超えを実現できるものと考えております。

中期経営計画「VISION 2030 stage1」における当社グループの株主資本コストは6.32%に設定しておりますが、投資家との対話や日本銀行の金融政策転換を踏まえた直近の推計結果から、エクイティスプレッドのプラス化には更に高い水準のROEが必要と認識しております。

また、年々赤字幅を縮小しているGVA(Gunze Value Added= 税引後営業利益 + 配当金- 期末投下資本 × WACC)が継続的に黒字となれば、PBR上昇に寄与すると考えております。しかし、資本コスト経営を推進する中で構造改革や政策保有株式縮減(※)を優先的に進めてきた結果、当連結会計年度末のDEレシオ(負債資本倍率=有利子負債÷自己資本)は過去最低水準に低下しております。このDEレシオ水準では、WACCが中期経営計画「VISION 2030 stage1」における設定値5.15%よりも高くなり、GVA黒字化までに更に時間を要することとなります。当社グループの自己資本の大きさが財務健全性を支える一方、エクイティスプレッドプラス化、GVA黒字化の高いハードルとなっていることも踏まえ、利益水準・財務健全性・資本効率を考慮した最適資本構成の構築が必要と考えております。

当社グループの将来の利益及び投下資本の伸長を踏まえた、継続的にエクイティスプレッドプラス、GVA黒字となる理想的なDEレシオを設定してまいります。当社グループにおける資本コスト経営マネジメントの下、メディカル事業・エンジニアリングプラスチックス分野の増産に向けた工場拡張投資やプラスチックフィルム分野のリサイクルセンター設置など、積極的かつ効率的な成長投資により既存事業の利益伸長を図るとともに、財務レバレッジを高めてまいります。また、状況に応じてM&Aなどのインオーガニック投資や追加の株主還元も検討し、最適資本構成の実現を図ってまいります。

 

※ 政策保有株式縮減の状況は、「第4 提出会社の状況 4コーポレート・ガバナンスの状況等 (5)株式の保有状況」に記載しております。

 

(温浴施設取水量過少申告に関する対応について)

2024年1月24日に、「温浴施設取水量過少申告に関するお知らせ」(以下「本件」という)を公表し、同年1月末に、当該温浴施設を運営する当社連結子会社のグンゼ開発㈱は、伊丹市・尼崎市に対し、2004年~2023年の期間に係る552百万円の未払下水道料等を納付しました。

関係者の皆様にはご迷惑、ご心配をおかけしましたこと、あらためて深くお詫び申し上げます。

本件公表後、詳細な調査と原因究明のために調査チームを立ち上げ、2004年の温浴事業開始時の関連文書の収集、及び関係者(当社従業員、関係業者)への聞き取り調査を実施しました。

 

<調査結果と原因>

本件は、当該施設の保守点検のため配管状況を確認する目的で現場を掘削した際に、迂回配管が地中埋設されていることを発見したことから発覚したものですが、20年前の工事ということもあり、グンゼ開発㈱からの具体的指示や迂回配管を設置した施工業者を特定できる明確な証言、証拠等は得られませんでした。しかしながら、迂回配管が設置されていた事実を鑑み、当時の当社従業員や施工業者が何等かの形で関与していたのではないかと推定せざるを得ないと考えております。

いずれにしても当社としては、知見のない事業への参入ということから業者に全面的に委ねる形となり、施主として工事のチェック・判断能力が欠如していたこと、また後に全国の温浴施設において迂回配管の問題が報道されていたにもかかわらず、グンゼ開発㈱・施工業者とも当事者としてコンプライアンス意識が希薄で適切なチェックや対応を怠り、結果として長期にわたり放置することに繋がったと考えております。

加えて、グンゼグループの経営を監督する経営陣のチェックが行き届かなかったこと、当社グループのガバナンス体制が不十分であったことも反省すべきであると考えております。

 

<再発防止策>

ガバナンス体制の強化及び構成員の意識付けの両面から、以下の再発防止策を講じてまいります。

①建築工事に関する本社技術開発部での契約書・図面チェックの徹底

②部門長教育、構成員研修の実施

③各部門リスクについて年一回の自主チェックと機能部門によるモニタリング実施

④コンプライアンス監査の継続

⑤トップによる全従業員へのメッセージ発信

 

<経営責任>

長期にわたる過少申告を発見できず多額の損失を計上する事態となったことに対する経営責任と社会的責任を果たすため、代表取締役2名(会長、社長)の月額報酬(2024年5月~6月)を20%減額することとしました。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) サステナビリティ全般への対応

近年、企業を取り巻く環境は不透明感を増しつつあるとともに、変化が激しくなってきております。このような中、当社グループは、経営理念及び経営方針にもとづき、自社事業活動を通じて持続可能な社会の実現及び企業価値向上を目指して、サステナビリティへの取り組みとして以下の中長期的テーマと主要推進事項に取り組んでおります。
  1.気候変動への対応

2.資源循環型社会の実現

3.サステナブルな調達

4.ウエルネス&ヘルス

5.人と社会への配慮

  ガバナンス

サステナビリティに関する基本方針や実施事項等を検討・審議する組織として、サステナビリティ担当取締役又は執行役員を委員長とし、本社部門や事業部門の責任者を委員とした「サステナビリティ委員会」を設置しております。

加えて、当社グループにおいて発生しうるリスクの予防・管理体制の整備及び発生したリスクへの迅速な対応を目的として、コンプライアンス担当取締役又は執行役員を委員長とし、本社部門の主要部門の責任者を委員とした「リスクマネジメント委員会」を設置しております。

 

[グンゼグループ サステナビリティ推進におけるガバナンス体制図]


 

[サステナビリティ推進における会議体・組織の役割]

会議体・組織

役割

取締役会

業務執行において協議・決定されたサステナビリティ課題(気候変動を中心とした環境課題や人的資本等に関する課題)に関する取り組み施策の進捗を監督 

経営執行会議

全社グループにまたがるサステナビリティ課題(気候変動を中心とした環境課題や人的資本等に関する課題)に関する経営管理上の重要事項、業務執行に関する重要事項を協議・決定

サステナビリティ委員会

(原則四半期一回開催)

サステナビリティに関する基本方針や対応方針の審議・決定

リスクマネジメント委員会

(原則四半期一回開催)

サステナビリティに関するリスク事象の発生、採られた、又は採られる予定の措置、リスク予防などについて協議

主担当部門

サステナビリティ課題に合わせて主導的に当該課題への対応推進、リスクと機会を特定

(環境戦略推進室:気候変動を中心とした環境課題、人事総務部:グンゼグループの人的資本等)

 

 

②リスク管理

サステナビリティ課題に関するリスクとその対応策及び機会に関して、テーマに合わせて主担当部門で内容を検討し、課題を事業部門、その他本社部門と共有しております。事業部門、本社部門は対応策に関して互いに連携し、主担当部門から「サステナビリティ委員会」と「リスクマネジメント委員会」に報告します。

一連のサステナビリティに関する重要な課題は「サステナビリティ委員会」、「リスクマネジメント委員会」より経営執行会議に報告の上、取締役会に報告されることにより全社リスクを統合・管理しております。

 

③ 戦略

当社グループは、現在推進中の中期経営計画「VISION 2030 stage1」にて、①新たな価値の創出 ②資本コスト重視の経営 ③企業体質の進化 ④環境に配慮した経営 の基本戦略を掲げており、経済的利益と社会的利益を両立させるサステナブル経営を通じて社会貢献と当社グループの持続的成長の実現を目指しております。具体的な内容については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2) 中期的な経営戦略の(VISION 2030 stage1の基本戦略)」を参照ください。

 

④ 指標と目標

中期経営計画「VISION 2030 stage1」では財務目標に加え、2030年度までの非財務目標を設定しております。上記ガバナンス体制において各指標の指標状況がモニタリングされ、結果に基づき取り組みに反映しております。指標と目標の内容については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2) 中期的な経営戦略の(目標とする経営指標)」を参照ください。

 

(2) 気候変動への取り組みとTCFDへの対応

当社グループは、2021年10月に金融安定理事会(FSB)の「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言」に賛同を表明しました。TCFDでは、気候変動に関する検討体制や、気候変動が中・長期の企業価値に及ぼす影響、及び気候変動によるリスク・機会の特定について評価するための指標と目標、さらにこれらの検討内容が企業経営にどのように反映されるか等の開示が求められております。

 

  ガバナンス

気候変動に関するガバナンスは、サステナビリティガバナンス体制に組み込んでおります。詳細については「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (1) サステナビリティ全般への対応」を参照ください。

 

②リスク管理

気候変動に関する主なリスクはサステナビリティ課題へのリスクに含めて管理しております。詳細については「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (1) サステナビリティ全般への対応」を参照ください。

 

③ 戦略

当社の主要事業として「プラスチックフィルム分野」と「アパレル(インナーウエア)分野」をシナリオ分析実施対象事業に選定し、短期~長期におけるリスクの特定とその対応策の検討及び機会の抽出を実施しました。

今回は、1.5℃目標が世界的に主流になっていることを踏まえ、1.5℃目標に対応した分析を実施いたしました。 具体的には、IEA「World Energy Outlook」で示されているNZE2050(※1)などの「脱炭素シナリオ (1.5℃シナリオ)」と、IPCC AR5のRCP8.5シナリオ(※2)などを踏まえた「温暖化進行シナリオ (4℃シナリオ)」を始めとした政府や国際機関が発行した将来予測に関するレポートなどを参考に、2つのシナリオを設定し、脱炭素経済への「移行リスク」及び温暖化進行に伴う「物理リスク」の分析を行っております。

グンゼグループは、今後も継続的にシナリオ分析の内容を見直し、戦略のレベルアップを図ります。

※1 NZE2050:Net Zero by 2050 IEAによる「World Energy Outlook 2020」にて示されたシナリオの1つ。パリ協定の目標を上回る1.5℃シナリオにあたり、2050年までにCO2排出量ゼロをめざすシナリオ。

※2 RCP8.5シナリオ:IPCC(気候変動に関する政府間パネル)第5次評価報告書(AR5)統合報告書(SYR)の政策決定者向け要約 図SPM6の2100年に2.6℃~4.8℃の気温上昇が予想されているシナリオ

 

リスク項目

リスク

時期

財務インパクト
影響度

プラスチックフィルム分野

インナーウエア
分野

リスクへの対応と機会

移行

リスク

(1.5℃)

炭素価格

各国で排出権取引や炭素税が導入され、操業コストが上昇

中期~
長期 

<リスク対応>

再エネ投資拡大や低炭素エネルギーへの移行により炭素税の財務影響を抑える

各国のプラスチック規制

規制強化によるバイオ素材やリサイクル素材の導入により原材料価格が上昇

中期~
長期 

<リスク対応>

廃プラの分解・再利用技術を確立し、顧客ニーズをとらえた製品提供を実施

エネルギーミックスの変化
(電力価格)

電力会社の再生エネ比率が上昇し、電力価格が上昇

中期~
長期 

<リスク対応>

消費電力の少ない機器の利用

自家消費型太陽光発電の設置を推進する

EV・再エネ
普及率

中期~
長期 

 

<機会>

EV普及に伴うリチウムイオン電池用フィルムや、半導体用フィルム販売を強化

重要商品の価格増減

原油由来の合成繊維の製造コストが上昇

中期~
長期 

 

<リスク対応>

原油由来から自然由来素材への転換を推進

顧客行動の
変化

環境負荷影響度に応じて購買決定する消費者の増加

中期~
長期 

 

<リスク対応>

エシカル消費に対応した環境配慮型商品の販売を拡大

物理

リスク

(4℃)

異常気象

風水災による事業活動の停止及びサプライチェーンの途絶により売上減少

短期~
中期 

<リスク対応>

製造拠点・物流におけるサプライチェーンの防災強化により、事業継続能力を強化

気温上昇

(綿花栽培量)

気温上昇により綿花価格が上昇

中期~
長期 

 

<リスク対応>

バイオマテリアル、リサイクル素材の開発

気温上昇

中期~
長期 

<機会>

気温上昇に対応した商品

(シュリンクフィルム、肌着)販売強化

 

※時期: 短期 1~2年、中期3年~5年、長期6~10年
※2050年の財務インパクト影響度: 小 1億円未満、中 1〜10億円未満、大 10億円以上

 

④ 指標と目標

計画的なCO2排出量削減に向けて、各事業活動において省エネ・創エネ・再エネ利用等の取り組みを強化し、3R(リサイクル・リユース・リデュース)の推進など資源循環、環境負荷に配慮した対応を行います。2022年度より、Scope1,2(※)でのCO2排出量削減の取り組みを強化するとともに、Scope3(※)における削減シナリオの策定を進めております。

また、当社グループの重点取り組みとして、プラスチックフィルム分野での「サーキュラーファクトリー計画」、アパレル(インナーウエア)分野での「ネットゼロファクトリー計画」を強力に推進いたします。

「サーキュラーファクトリー計画」はグリーンローンによる資金調達において、株式会社日本格付研究所(JCR)からグリーンボンド・ローン原則/ガイドラインへの適合性について最上位の「Green1(F)」の評価を受けております。なお、本フレームワークにおける「サーキュラーファクトリープロジェクト」は、本邦初の資源循環型工場の取り組み全体での評価取得となっております。(評価取得時点)

同ローンにより調達した資金は「サーキュラーファクトリープロジェクト」の他、CO₂排出量削減の取り組みとして、2023年2月に竣工しました BELS(※)5つ星およびZEB(※)認証を取得した江南工場(愛知県)事務所建設にも活用されております。

2023年度の主な取り組みとしては、創エネ活動の一環としてグループ関係会社である綾部エンプラ㈱に当社グループ保有の太陽光パネルを新たに設置致しました。また、プラスチックフィルム分野ではサーキュラーファクトリーにおいて新設製造機の稼働を開始し、再生エネルギーの活用や高効率生産を通じてエネルギー原単位削減に貢献しております。

シナリオ分析により得られた、リスクと機会に対応した製品の開発、上市も積極的に進めております。具体的にはプラスチックフィルム分野では、ラベル包装用収縮フィルムの環境対応グレード「GEOPLAS®」において、マスバランス方式のリサイクル原料を5%以上使用し、自動ラベル装着機に対応した国内最軽量収縮フィルムを開発、上市致しました。さらに、アパレル(インナーウエア)分野では、年々厳しさを増す夏の暑さに対し、独自の汗解消テクノロジーで不快感の解決を図るインナーブランド「アセドロン」を開発、上市致しました。今後もエシカル消費への対応を含め環境配慮型商品の開発、上市を積極的に進めてまいります。

※ Scope1:当社グループによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)

Scope2:他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出

Scope3:Scope1、Scope2以外の間接排出(当社グループの活動に関連する他社の排出)

BELS:建築物省エネルギー性能表示制度 省エネルギー性能を客観的に評価し、5段階の星マークで表示。

ZEB:ネット・ゼロ・エネルギー・ビルディング。建物で消費する一次エネルギー収支をゼロにすることを目指した建物。

 

[CO2 削減実績(Scope1,2)]

 

2023年度

対2022年度比

対2013年度比

排出量(t-CO2)

削減量(t-CO2)

削減率

削減量(t-CO2)

削減率

実績

Scope1+2

115,517

2,807

2.4%

56,991

33.0%

Scope1

34,732

3,912

10.1%

17,581

33.6%

Scope2

80,785

△1,105

△1.4%

39,411

32.8%

 

※Scope1、2 は国内・海外のグンゼグループ全事業所を対象に算定(Scope2の算定はマーケット基準)

[CO2 削減ロードマップ]


[Scope1,2 削減目標及び計画]

Scope1,2 削減目標

 

 

 

Scope1,2 削減計画

 

 

ベンチマーク

2030年度目標

 

 

対象事業所

施策内容

CO2排出量の削減率

Scope1+2

2013年度

35%以上

 

省エネ

全事業所

エネルギー監視、高効率設備への置き換え、省エネ診断等

エネルギー原単位削減率

前年実績

1%/年以上

 

創エネ

特定事業所

太陽光発電設備の設置等

 

 

 

 

再エネ

特定事業所

グリーンエネルギーの導入等

 

環境関連投資計画(2030年度までに120億円を計画)

 

投資額(億円)

主な内容

2022年度~2024年度

86

サーキュラーファクトリー(守山)

ネットゼロファクトリー  (梁瀬)

高効率設備導入

太陽光発電設備導入

廃棄溶剤のリサイクル設備

2025年度~2027年度

25

2028年度~2030年度

9

合計

120

 

 


守山工場サーキュラーファクトリー

 

2022年6月建屋竣工

 

建築物や街区、都市などに係わる環境性能をさまざまな視点から総合的に評価し格付けする「建築環境総合性能評価システムCASBEE®(キャスビー)(※)」のAランクを初めて取得いたしました。

2023年度より、新設製造機の稼働を開始しました。


江南工場 新事務所棟

 

2023年2月竣工

 

高効率空調、断熱材、LED照明器具による省エネと太陽光発電などによる創エネを組み合わせ、従来の建物で消費される一次エネルギーを基準に、削減率約102%を実現、建築物エネルギー性能表示制度BELSの最高評価の星5つを獲得すると同時に、『ZEB』認証を取得いたしました。当社『ZEB』認証取得施設の第一号となりました。


綾部エンプラ㈱(京都府綾部市)

 

2023年9月 当社グループ保有 太陽光パネルを設置。

 

※CASBEE(建築環境総合性能評価システム):省エネや環境負荷の少ない資機材の使用といった環境配慮はもとより、室内の快適性や景観への配慮なども含めた建築物の品質を総合的に評価するシステム。S、A、B+、B-、Cの5段階がある。

[Scope3 排出量]

 

2022年度

対2021年度比

排出量(t-CO2)

削減量(t-CO2)

削減率(%)

実績

423,860

△13,192

△3.2%

 

※Scope3 は国内のグンゼグループ全事業所を対象に算定

[Scope3 の事業部門別・カテゴリー別排出量]

事業部門別排出量

 

カテゴリー別排出量

事業部門

Scope3排出量割合

 

事業部門

Scope3排出量割合

2022年度

2021年度

 

2022年度

2021年度

プラスチックカンパニー

52%

49%

 

カテゴリー1(購入した製品・サービス)

59%

61%

アパレルカンパニー

27%

30%

 

カテゴリー12(販売した製品の廃棄)

24%

25%

その他事業部門

21%

21%

 

その他カテゴリー

17%

14%

 

[Scope3 の取り組み方向性]

当社のCO2排出量はScope1,2に比べ、Scope3が大きく、その中で大きな排出量を占めるプラスチックカンパニーとアパレルカンパニーを中心に、「カテゴリー1」(購入した製品・サービス)と「カテゴリー12」(販売した製品の廃棄)へのアプローチとして全社視点での資源循環、サステナブル調達を重点的に推進しています。2022年度のScope3排出量は前年に比べ増加していますが、これはサーキュラーファクトリー建設等の投資による「カテゴリー2」(資本財)の増加が要因です。このような投資による一時的な増加を除くとScope3は減少傾向にあり、さらにScope3削減への取り組みを強化するために、今後、削減目標の設定、公表を検討してまいります。Scope3算定・削減の取り組みは国内から開始していますが、今後海外事業所におけるScope3の影響度の確認も進めてまいります。

 

 ※2023年度Scope3実績につきましては集計出来次第、当社ホームページ(https://www.gunze.co.jp/)に掲載予定です。

 

 

(3)人的資本への対応

① ガバナンス

人的資本に関するガバナンスは、サステナビリティガバナンス体制に組み込んでおります。詳細については「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (1) サステナビリティ全般への対応」を参照ください。

 

②リスク管理

人的資本に関する主なリスクはサステナビリティ課題へのリスクに含めて管理しております。詳細については「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (1) サステナビリティ全般への対応」を参照ください。

 

③ 戦略

当社は、中期経営計画(VISION 2030)において持続可能な社会の実現に向けて、「変革と挑戦」をキーワードに経営戦略を策定し、そのうちの“ヒト”戦略として「企業体質の進化」を掲げております。そしてこれに連動した人財戦略の基本的な考え方を以下のように定めました。

「人財」は最大の経営資源、企業競争力の礎であり、全ての構成員が働きがいを持ちながら能力を十分に発揮できる企業風土を醸成し、夢のある元気な会社になる

 

 

④ 人財マネジメント方針

人財戦略に基づき、求める人財像を「異なる価値観を受容し、自ら行動しやり抜ける、得意分野で価値提供できる人財」としました。このような人財を採用・育成し、また個人の自律・組織の成長を牽引する配置戦略により活躍の場を提供することで、会社の成長に繋げていきたいと考えており、「多様性」「自律性」「活躍」の3本柱に集約した人財マネジメント方針を策定いたしました。

 

 


a.[多様性] 多様な人財の強みをもつ

多様な人財を受容し、多様性を競争力として変革と挑戦に取り組める夢のある元気な会社を目指します。

b.[自律性] 人財の強みを伸ばす

自律した個の成長に向けて、従業員が積極的に挑戦する機会を創出します。

c.[活躍] 人財の強みを活かす

様々な世代が成長実感を持てるよう、意識改革の取組みやキャリア開発支援、ローテーションを進めます。

 

 

⑤ 人財育成と自律的キャリア形成の推進

自律的なキャリア形成を促す組織風土を醸成するためには、以下のような機会の創出が不可欠であると考えております。

 

企業(グンゼ)

 


 

自律的キャリアを支援し戦略的な人財配置を実施

 

◇ 一人ひとりがキャリアを考え、知り、自分の進むべき方向性を定める為に「キャリアを学ぶ・相談する」ことができる

 

 

 

個人(従業員)

 

 

多様性と自律性を備え

自らの強みを活かした

自律的キャリアを実現

 

◇自らのキャリアを選択する為に「キャリアを伝える・選ぶ」ことができる

 

 

 

当社グループは、既存の階層研修やキャリア研修に加え、1on1ミーティングの継続・手上げ式キャリア研修の拡充・リカレント教育の推進・キャリア相談窓口の設置等により、キャリアを自ら主体的に考える機会を提供し、支援を拡大しています。


⑥ ダイバーシティ&インクルージョン《D&I》

当社グループではD&Iを最も重要な人財戦略の一つと位置付けております。そして性別・年齢・就労ニーズなど、属性や価値観などの多様性に関わらず、すべての構成員が働きがいを持ちながら自らの能力を十分に発揮できている姿を目指します。中でも女性活躍のさらなる進化が不可欠と考えており、「各組織の意思決定者の一定割合を女性が占めている」状態の実現に向け、その前提となる女性総合職の母集団の充実に積極的に取り組んでおります。具体的には女性採用比率アップ、定着とリーダー層への登用を見据えた育成プログラムの充実などの施策を推進します。また女性活躍の後押しと働き方の多様性推進という意味での男性従業員の育児休業取得率の向上も図ってまいります。

⑦ 社内環境の整備方針

経営理念の一つである「人間尊重」を社内環境整備においても最も大切にしております。従業員が安全、健康に、かつ力を発揮できる環境整備として、DXによる業務改善、労働時間管理の徹底、長時間労働の削減、多様なバックグラウンドを持つ従業員が自分に合った働き方を選択できるような諸制度(テレワーク、フレックス制度など)の整備・拡充などを継続して行っております。また、業務効率向上により削減した仕事時間を従業員が自由に使える時間に充てるという趣旨で、年次有給休暇取得率向上を推進しております。さらに24年度は生産現場の年間休日数増と育児休職の一部有給化を実施いたします。そして、人権への配慮としてハラスメント撲滅をかかげ、職場におけるハラスメント防止活動として、実態把握のためのアンケートおよび結果に応じた研修を継続的に実施することで「ハラスメントをしない、させない、放置しない」風土づくりに積極的に取り組んでおります。

⑧ 指標と目標

人的資本に係る「戦略」で記載した方針に関する指標の目標及び実績については、以下の通りとなります。

なお、当該指標の目標及び実績について、当社は関連する指標のデータ管理及び具体的な取り組みを行っていますが、連結グループに属する全ての会社では行われておらず、連結グループ合計での記載が困難であります。このため、次の指標に関する目標及び実績は、連結グループにおける主要な事業を営む提出会社のものを記載しております。

区分

目標指標

2024年度

2023年度

目標

目標

実績

企業体質
 の進化

女性活躍推進

管理職に占める女性労働者の割合

6%以上

5.0%

7.0%

子育て支援

男性労働者の育児休業取得率

50%

40.0%

42.0%

組織風土づくり

エンゲージメントスコア

70点想定

64想定

62

働き方改革

年休取得率

75%(15日)

15.0

14.9

 

※男女の賃金格差につきましては、「第1 企業の概況 5 従業員の状況 (4) 管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異」に記載しております。

 

3 【事業等のリスク】

 1. 当社グループのリスクマネジメント体制

当社グループにおいて発生しうるリスクの防止に係る管理体制の整備及び発生したリスクへの対応について「リスク管理規程」を定めております。

本規程ではリスクを「企業の妨げとなる可能性のある、社内外から受ける不確実な危険性であって、当社グループの経営にとってマイナスの結果をもたらす可能性のあるもの」と定義し、ステークホルダーに対する責任及び影響に鑑み、リスクを可能な限り排除することを基本方針としております。ただし、関係法令、社内諸規則及び社会秩序に反しない限りで、事業遂行に必要と認められるときは、適切なリスクを取ることがあります。

当社グループにおいて、リスクが事象として発生した際には、ステークホルダーに対する影響を最小限にとどめることを第一の目的とし、以下の行動を実施いたします。

(1) 当該リスクに対する方策の迅速な実施

(2) 当該リスクの発生の原因究明及び適切な再発防止策の策定

(3) ステークホルダーに対しての適切な情報提供

また、当社グループでは、必要に応じコンプライアンス担当責任者を委員長とするリスクマネジメント委員会を開催し、リスク事象の発生、採られた又は採られる予定の措置、リスク予防などについて協議しております。

リスクマネジメント委員会においては、人権侵害、環境問題、法令違反、贈収賄等を含む腐敗行為、感染症・天災などの災害、労働災害など当社が直面する可能性のあるリスクを分析・評価し、重点経営リスクを抽出し、施策及び対応方針の検討を行っています。また、それぞれのリスクに対して主担当部門による定期的なモニタリング体制を整え、関係部門に対するフォローアップや研修を実施する等、取組みを強化しています。

 

2. 主要リスク

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

(事業運営上生じうるリスク)

(1) 経営戦略的リスクについて

当社グループの成長戦略の一つとして、新規事業創出を掲げており、「M&A活用による事業拡大」、「新規テーマ創出の仕組み構築」に向けた取り組みを強化しております。M&A等外部の経営資源獲得に当たっては、慎重に検討を行い、将来の当社グループの業績に貢献すると判断した場合に限り実行いたします。しかしながら、期待したシナジー効果が創出できなかった場合や、買収した事業における製品・サービス等の需要を維持できない場合等により、期待する成果が得られない可能性があります。

また、研究開発部門を中心として新規テーマに取り組んだ結果、市場環境の変化や技術革新、消費者ニーズの変化等により、そのテーマの事業化が困難と判断した場合は、研究開発等に要したコストが回収されず、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

加えて、当社グループは、経営の効率化及び競争力強化のため、子会社や関連会社を含めた不採算事業の構造改革や製造・販売・物流拠点の再編等、事業の再構築を行うことがあります。これらの施策を実施する場合、一時的な損失の発生等により、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(2) 製品・サービスの安全性、品質について

当社グループは「品質第一主義 優良品の提供」を事業の根幹に置き、より安心・安全で、より快適な、魅力ある製品とサービスの提供のために、徹底した安全性と品質の確認を実施しております。しかしながら当社グループの製品の重大な品質トラブルや、当社グループの商業施設やスポーツクラブ内においてお客様の事故が発生した場合には、該当する製品・施設のみならず、当社グループの社会的信用やブランドイメージにも重大な影響を与え、売上高の減少によって、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 競合他社との競争について

当社グループの各事業分野における製品・サービスは、国内外の市場で競合他社との激しい競争にさらされております。当社グループの競合先には、各事業分野でのシェアの優位性の他、研究開発や製造、販売面で有力な企業が存在しております。

当社グループは、2030年ビジョンとして「新しい価値を創造し『ここちよさ』を提供することで持続可能な社会の実現に貢献します」を掲げ、「変革と挑戦」をキーワードに、経済的利益と社会的利益を両立させるサステナブル経営を通じて社会貢献と当社グループの持続的成長の実現を目指し、これら競合他社との差異化を図るべく、商品開発、生産・販売革新及び提供サービスの向上を行っております。

しかしながら、競合他社が提供する商品・サービスに対して当社グループが適切に対応できず、当社グループが提供する製品・サービスが競合他社に劣後した場合は、当社グループの経営成績及び財政状態に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 情報セキュリティについて

当社グループは、事業に関連する情報の大部分を電子データとして保有し、セキュリティ対策を施したIT機器、ソフトウエア、ネットワークインフラ環境で運用しております。またアパレル事業の公式通販サイトの顧客情報、スポーツクラブや商業施設の会員情報といった個人情報に対しては、アクセスできる端末・人を限定しております。

各種情報の取り扱いに関し、「ITセキュリティ方針」を定め、各種のセキュリティ対策を施し、情報管理に関する従業員への教育、外部委託先との機密保持契約などを行い、その管理に万全を期しておりますが、外部からのサイバー攻撃やウイルス感染等、予期せぬ事態により重要情報が漏えいまたは不正使用された場合、当社グループの社会的信用に影響を与え、更には損害賠償責任の発生等により、当社グループの経営成績及び財政状態に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) 人財確保について

我が国の労働力人口は減少傾向にあり、労働市場における人財獲得競争は近年益々激しさを増しており当社グループでも優秀な人財の確保が課題となっております。特に当社は、50歳以上が約50%を占める従業員構成となっており、技術革新による効率化を推進する一方で、継続的な一定数の人財確保と活性化が事業継続と成長、技術伝承には必要不可欠となっております。

また開発・生産・販売の各活動において、多様な資質の高い人財を採用し、 自律性・挑戦性ある人財への育成とその後の活用を図って参りますが、十分な人財確保ができず、事業を担い新たな価値を創造する人財の育成ができなかった場合、当社グループの成長性と将来における経営成績に大きな影響を与える可能性があります。

 

(6) 固定資産の減損について

当社グループは固定資産の減損に係る会計基準を適用しています。投資判断については事業部門ごとにWACC(加重平均資本コスト)を設定し、低収益事業への投資に歯止めをかけておりますが、当社グループが保有する固定資産について、投資判断時に想定できなかった水準で経営環境が著しく悪化し、収益性の低下や市場価格の下落等により期待されるキャッシュ・フローが生み出せない場合、設備投資により計上した固定資産や、M&Aにより計上したのれんの減損処理により、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

なお、当連結会計年度末時点で当社グループが保有している有形固定資産は635億円、無形固定資産は19億円であります。

 

 

(7) 人権リスクについて

「ビジネスと人権」に関する意識が世界的に高まる中、当社グループは「人間尊重」、「優良品の生産」、「共存共栄」を創業の精神として受け継いでおり、事業活動を継続していくうえで、人権尊重を重要課題と位置付けて取り組んでおります。しかしながら、万一、当社グループおよびサプライチェーンにおける児童労働、強制労働、外国人労働者の差別等の人権にかかる問題が生じた場合、当社グループの社会的な信用低下により、経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8) 訴訟リスクについて

当社グループは、事業を遂行していくうえで、知的財産権、製造物責任、環境、労務等について、様々な訴訟を提起される可能性があります。万一当社グループが訴訟を提起された場合、また訴訟の結果によっては、損害賠償責任の発生等により当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(9) ライセンス契約に関連するリスク

当社グループは、アパレル部門において国内外企業が所有する商標の使用許諾を得て製造・販売している製品がありますが、不測の事由によりライセンス契約が継続できない状況が発生し、当該製品の製造・販売ができなくなった場合、売上高の減少等により当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10) レピュテーションリスクについて

ソーシャルネットワーキングサービス(以下、SNS)は社会一般に浸透しております。SNSは利用するメリットが大きい一方で、誤った使い方をするとお客様や取引先のみならず、会社や自分自身に多大な損害を与えるリスクがあります。当社グループにおいても、広告等での不適切な表現や、不適切な書き込み等がSNSを通じて拡散した場合、また、当社製品やブランド、事業活動等について誤った投稿が拡散した場合、当社グループのブランドイメージや社会的信用の低下につながり、経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(11) メディカル事業のコンプライアンスリスク

当社グループのメディカル事業は、生体吸収性材料を中心とした医療機器の開発、製造、販売を行っておりますが、医療機器の品質保持については、薬機法、臨床試験法、各種省令等の法令遵守が厳しく求められています。当社グループは、高い倫理性と公共性が求められる医療関連企業の一員として、法令遵守については当然のことながら、営業活動についても、日本医療機器産業連合会が策定する「医療機器業界における医療機関等との透明性ガイドライン」 および医療機器業公正取引協議会が定める「医療機器業公正競争規約」とそれらの精神に従い、 医療機関等との関係の透明性に関する企業方針として、「医療機関等との関係の透明性に関する指針」を公表しております。

これらを遵守するために、法令および社内規定の遵守をモニタリングしておりますが、法令違反等が発生した場合、法令による処罰や制裁、訴訟の提起を受ける可能性があり、社会的な信頼を失うとともに金銭的損害等により、当社グループの経営成績、財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(12) プラスチック使用規制強化に伴うリスク

海洋プラスチック問題に対する国際的意識の高まりから、使い捨てプラスチックに対する規制強化の流れが加速しており、当社としてもプラスチック資源循環基本方針を策定し、プラスチック包装材料等を製造販売、使用する企業として、事業を通じてプラスチックの3R+Renewableを推進し、社会的責任を果たしてまいる所存であります。

しかしながら、プラスチックを大量に使用する製品に対する社会の目は厳しくなっており、当社グループのプラスチック包装材料等に関する施策を上回るスピードでプラスチック代替品が普及した場合、売上高の減少・在庫の増加などにより当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(13) 保有不動産の環境汚染によるリスク

当社グループが所有する不動産について、土壌汚染等環境問題が判明した場合には資産価値の毀損や多額の対策費用が発生する可能性があり、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、PCBやアスベスト等建物に関して有害物質が使用されている場合には、解体費用や処分等多額の費用が発生する可能性があり、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(財務上のリスク)

(1) 為替相場の変動

当社グループの取引には外貨による輸出・輸入が含まれており、外国為替レートの変動の影響を受けます。特に海外からの原材料・商品等の仕入については、その多くが米ドルでの決済となることから、当社グループにおいては米ドルの為替変動による影響が大きくなっております。そのため為替予約等により為替相場の変動リスクをヘッジしておりますが、そのリスクを全て排除することは不可能であります。また外貨建取引により生ずる収益・費用及び外貨建債権・債務の円貨換算額並びに外貨建で作成されている海外連結対象会社等の財務諸表の円貨換算額についても外国為替レートの変動の影響を受け、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(2) 投資有価証券の価格変動

当社グループは取引関係の維持・強化を目的として一部の取引先について株式を所有しております。これらのいわゆる政策保有株式については、株式保有リスクの低減、資本効率向上の観点から、取引先企業との十分な対話を経た上で、縮減を進めております。しかしながらこれらの投資有価証券は金融商品会計基準に基づき時価評価を行っており、保有銘柄の株価が著しく下落した場合、基準に基づき減損処理を実施しております。また、減損に至らない場合でも時価の変動により包括利益は大きく変動することが考えられるなど、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。なお、当連結会計年度末時点において当社グループが保有している時価のある有価証券は51億円であります。

 

(3) 退職給付債務

当社グループの退職給付制度の一部は、確定給付型制度を採用しております。退職給付債務については安全性の高い長期の債券の利回りを基準とした割引率に基づいて算定しており、金利の変動は退職給付債務に影響を与えます。また、確定給付型年金制度における年金資産はその一部を株式等のリスク資産に投資しており、株式市場の下落等により、その運用利回りは悪化する可能性があります。このように長期金利の変動及び株式市場の下落等運用環境の悪化は、退職給付債務の増加につながり、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。なお、当社グループが連結貸借対照表に計上した退職給付に係る負債は当連結会計年度末時点で39億円であります。

 

(4) 資金の流動性に関するリスク

当社グループは、事業資金の一部を主に金融機関からの借入、コマーシャル・ペーパーの発行等により調達しており、金融市場の不安定化や金利上昇、または格付機関による当社グループの信用格付けの引下げが行われた場合等には、資金調達に大きな制約が出る、もしくは資金調達コストが大幅に増加し、当社グループの業績・財政状態に影響を及ぼす可能性があります。なお、当連結会計年度末時点で当社グループが連結貸借対照表に計上している長短借入金の残高は89億円であります。

 

 

(外部環境に起因するリスク)

(1) 市場トレンドや消費者の嗜好変化について

当社グループのアパレル事業は、市場トレンドや消費者の嗜好の変化に的確に対応するために、フレキシブルに対応する生産構造の変革に取り組んでおりますが、消費者の嗜好及び需要が想定外に変化し、市場動向の判断を誤った場合は売上高の減少・在庫の増加などにより、当社グループの経営成績及び財政状態に大きな影響を与える可能性があります。

 

(2) 事業展開国のカントリーリスクについて

当社グループは、中国、東南アジアを中心に海外に生産・販売拠点を設置しております。海外事業所においては、事業の進捗管理や財政状態等の情報収集、内部統制の体制構築に加えて、当該事業所との密接なコミュニケーションを通してガバナンス体制を強化しております。しかしながら、事業展開する海外各国において、法律・規制の大きな変化、政治・経済状況の急激な変化、テロや戦争、知的財産権訴訟、疾病といった予測し難い事態が生じ、事業活動に大きな影響を受け、事業継続が困難になった場合、海外での事業活動の停滞や不測の事態による損害の発生等、当社グループの経営成績及び財政状態に大きな影響を与える可能性があります。

 

(3)気候変動について

当社グループは2021年10月に金融安定理事会(FSB)の「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言」に賛同を表明し、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」に記載の通り、短期~長期におけるリスクの特定とその対応策の検討及び機会の抽出を実施し、計画的なCO2 排出量削減に向けた取り組みを進めております。低炭素社会に移行する中で、排出権取引や炭素税導入による操業コストの上昇、規制強化によるバイオ素材、リサイクル素材の導入に伴う原材料価格の上昇等により、当社グループの経営成績及び財政状態に大きな影響を与える可能性があります。

 

(4) 原材料価格の変動

当社グループはメーカーとして、アパレル事業のインナーウエア分野、レッグウエア分野は原糸(綿糸・合繊糸)、機能ソリューション事業のプラスチック分野、エンジニアリングプラスチックス分野はプラスチック樹脂、メディカル事業は生分解性高分子材料等多岐にわたる原材料を購入し、それぞれの事業を通じて製品化しております。原材料価格は市況により変動するため、原材料価格が高騰した場合は原価高となり採算性が悪化し、製品価格に転嫁できない場合には、製品の収益性が低下することにより当社グループの経営成績及び財政状態に大きな影響を与える可能性があります。

 

(5) 天候不順について

当社グループのアパレル事業は、お客様に心からここちよいと感じていただくために、インナーウエアでは、年々厳しさを増す夏の暑さに対し独自の汗解消テクノロジーで不快感の解決を図る「アセドロン」等、シーズンに応じて機能性を高めた商品を展開しております。冷夏・暖冬等の天候不順となった場合は、当社製品の機能性のニーズは減少し、販売量は想定を下回る可能性があります。

また、プラスチック事業においては、飲料用途向けシュリンクラベルを生産し、飲料メーカーに販売しておりますが、最需要期の夏場において、長雨等でレジャー、イベント等の消費動向が低調となり、飲料の販売量が低迷する場合は、売上高の減少・在庫の増加などにより当社グループの経営成績及び財政状態に大きな影響を与える可能性があります。

 

 

(6) 自然災害の発生・感染症の流行

当社グループは、機能ソリューション事業、メディカル事業およびアパレル事業において国内外に生産工場等の事業所を配置しております。それぞれにおいて自然災害に対する被害・損害を最小限にするための防災、減災に努めていますが、想定を上回る大規模な地震や台風、洪水等の自然災害の発生により、生産拠点や物流拠点が被災した場合や、感染症の流行により生産活動を中断せざるを得なくなった場合、別拠点からの商品供給のバックアップ対応を行うものの、一部商品については供給がストップするなどサプライチェーンに支障を来す可能性があり、ライフクリエイト事業の商業施設においては、商品の納品遅れや、施設の一時的な休館により、テナントの売上高が減少する可能性があります。

また、感染症の流行により、外出自粛や休業要請などの経済活動の制約が発生した場合、アパレル事業ではインナーウエア、レッグウエア分野において店頭販売が低迷し、ライフクリエイト事業では不動産関連分野において商業施設の休館に伴うテナント売上減少等により賃料収入が減少し、スポーツクラブ分野においては休館等により収入が減少するなど、当社グループの経営成績及び財政状態に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

なお、当連結会計年度より、報告セグメントの区分を変更しており、前連結会計年度の数値につきましては、変更後のセグメント区分に組み替えて比較しております。

 

① 経営成績の状況

当連結会計年度(2023年4月1日~2024年3月31日)における日本経済は、社会経済活動の正常化が進み、景気は緩やかな回復基調となりました。一方で、地政学的緊張を背景とした原材料価格の高騰に伴う物価上昇や急激な為替変動及び世界経済の減速懸念など、先行き不透明な状況が継続しております。このような事業環境のもと、当社グループでは、中期経営計画「VISION 2030 stage1」の2年目にあたり、引き続き「新たな価値の創出」「資本コスト重視の経営」「企業体質の進化」「環境に配慮した経営」の4つの基本戦略への取り組みを進めました。

当連結会計年度における当社グループの経営成績は以下のとおりであります。

売上高

132,885百万円

(前期比  2.3%減)

営業利益

6,777百万円

(前期比 16.6%増)

経常利益

6,774百万円

(前期比 12.5%増

親会社株主に帰属する当期純利益

5,109百万円

(前期比 13.5%増)

 

売上高は、前期の電子部品フィルム事業譲渡及び不動産開発プロジェクト要因により、減収となりました。営業利益、経常利益は、アパレル事業の収益改善等により、増益となりました。また、親会社株主に帰属する当期純利益は、電子部品事業、スポーツクラブ事業、アパレル事業において構造改革を進めたことから、事業構造改善費用2,801百万円を計上しましたが、子会社への投資に係る将来減算一時差異等に対して法人税等調整額(益)2,575百万円を計上したことや、政策保有株式の売却による投資有価証券売却益2,009百万円の計上等により、増益となりました。

 

 

セグメント別の概況については、次のとおりであります。


 


機能ソリューション事業の売上高は48,975百万円(前期比1.2%減)、営業利益は6,028百万円(前期比11.8%減)となりました。

<主要な変動要因>

・プラスチックフィルムは、米国の包装用フィルムが堅調に推移しましたが、国内・アジアでは需要停滞の影響を受けました。

・エンジニアリングプラスチックスは、OA機器向けが停滞しましたが、半導体及び一般産業向けが堅調に推移しました。

・電子部品は、中国経済の停滞及びPC市場低迷の影響を受けました。

 

 


 


メディカル事業の売上高は11,697百万円(前期比6.8%増)となりましたが、営業利益は今後の成長に向けた人財投資コスト等の増加により1,991百万円(前期比4.4%減)となりました。

<主要な変動要因>

・主力の国内医療用途市場の回復に伴い癒着防止材等の新製品の市場浸透が進みました。

・新たな代理店との取り組み強化により、中国では生体吸収性製品が伸長しました。

・コロナ後の美容医療機関の開院減少等により、医療用レーザーの受注が減少しました。

 

 


 


 

アパレル事業の売上高は60,114百万円(前期比1.4%減)、営業利益は1,465百万円(前期は営業損失222百万円)となりました。

<主要な変動要因>

・アパレル事業全体では、残暑や暖冬影響によりシーズン商品は苦戦しましたが、差異化訴求した年間商品は好調に推移し、商品の高付加価値化を含めた価格改定及び事業構造改革により収益性が改善しました。

・強化を進めるEC・直営店ルートが引き続き伸長、今後もDtoCシフトによる成長戦略に取り組みます。

・インナーウエアは、顧客ニーズに対応した付加価値商品が好調に推移しました。

・レッグウエアは、主力商品「サブリナ」のリニューアル効果により、ストッキング、タイツが好調に推移しました。

 

 


 


ライフクリエイト事業の売上高は12,826百万円(前期比16.3%減)、営業利益は833百万円(前期比18.1%増)となりました。

<主要な変動要因>

・不動産関連は、前期の遊休地再開発プロジェクト売上影響により減収となりました。

・人流の回復により、ショッピングセンターとスポーツクラブは、ともに回復傾向にあります。

 

 

② 財政状態の概況

総資産は161,971百万円となり、前連結会計年度末に比べ3,956百万円減少しました。主な増加要因は、プラスチックフィルム分野でのサーキュラーファクトリー(資源循環型工場)稼働による機械装置及び運搬具(純額)の増加3,203百万円繰延税金資産の増加2,130百万円退職給付に係る資産の増加1,088百万円であり、主な減少要因は、政策保有株式の売却等による投資有価証券の減少4,864百万円建設仮勘定の減少2,291百万円、流動資産その他の減少1,646百万円(未収入金等)、原材料及び貯蔵品の減少1,027百万円であります。

負債は41,503百万円となり、前連結会計年度末に比べ6,732百万円減少しました。主な増加要因は、事業構造改善引当金の増加1,783百万円未払法人税等の増加1,093百万円であり、主な減少要因は、長短借入金の減少6,209百万円、支払手形及び買掛金の減少1,724百万円であります。

純資産は120,467百万円となり、前連結会計年度末に比べ2,776百万円増加しました。主な増加要因は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上による増加5,109百万円為替換算調整勘定の増加1,177百万円であり、主な減少要因は、配当による減少2,505百万円自己株式の取得による減少2,006百万円であります

 

セグメントごとの資産は、次のとおりであります。

 

機能ソリューション事業のセグメント資産は55,443百万円となり、前連結会計年度末に比べ184百万円増加しました。主な増加要因は、プラスチックフィルム分野でのサーキュラーファクトリー(資源循環型工場)稼働による機械装置及び運搬具(純額)の増加等であり、主な減少要因は、プラスチックフィルム分野での建設仮勘定の減少等であります。

メディカル事業のセグメント資産は10,856百万円となり、前連結会計年度末に比べ384百万円増加しました。主な増加要因は、商品及び製品の増加、仕掛品の増加等であります。

アパレル事業のセグメント資産は51,815百万円となり、前連結会計年度末に比べ909百万円増加しました。主な増加要因は、インナーウエア分野及びレッグウエア分野での受取手形、売掛金及び契約資産の増加、インナーウエア分野での商品及び製品の増加等であります。

ライフクリエイト事業のセグメント資産は25,977百万円となり、前連結会計年度末に比べ680百万円減少しました。主な減少要因は、不動産関連分野での受取手形、売掛金及び契約資産の減少等であります。

また、各報告セグメントに配分していない全社資産の調整額は17,878百万円となり、前連結会計年度末に比べ4,754百万円減少しました。主な減少要因は、政策保有株式の売却による投資有価証券の減少等であります。

 

③ キャッシュ・フローの概況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ728百万円減少し、10,818百万円となりました。当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況と主な要因は次のとおりであります。

営業活動によって得られたキャッシュ・フローは、前連結会計年度と比較して8,614百万円増加し、10,409百万円となりました。主なキャッシュ・インの要因は税金等調整前当期純利益4,504百万円、減価償却費6,149百万円であります。

投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度と比較して5,729百万円増加し、190百万円の支出となりました。主なキャッシュ・インの要因は投資有価証券の売却による収入7,094百万円であり、主なキャッシュ・アウトの要因は固定資産の取得による支出7,166百万円であります。

財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度と比較して12,355百万円減少し、11,347百万円の支出となりました。主なキャッシュ・アウトの要因は長短借入金の減少6,697百万円、配当金の支払額2,497百万円、自己株式の取得による支出2,006百万円であります。

 

④ 生産、受注及び販売の実績

a. 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

生産高(百万円)

前期比(%)

機能ソリューション事業

36,625

△2.6

メディカル事業

1,131

5.2

アパレル事業

38,527

△1.4

合計

76,284

△1.9

 

(注) 1.上記金額は、製造原価ベースで表示しており、外注生産高を含んでおります。

2.上記生産実績以外に、下記の商品仕入高があります。

セグメントの名称

仕入高(百万円)

前期比(%)

機能ソリューション事業

194

△13.2

メディカル事業

3,356

△11.6

アパレル事業

5,222

△10.5

ライフクリエイト事業

2,260

7.2

合計

11,034

△7.8

 

 

b. 受注実績

当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

区分

受注高(百万円)

前期比(%)

受注残高(百万円)

前期比(%)

機能ソリューション事業

2,464

14.1

1,601

17.7

ライフクリエイト事業

△100.0

合計

2,464

14.1

1,601

△10.0

 

(注)1.当社グループは、機能ソリューション事業に含まれる機械類、ライフクリエイト事業に含まれる建築工事を除き、原則として見込生産であります。

2.ライフクリエイト事業における受注残高の著しい変動は、工場跡地再開発に伴い受注した建築工事において、履行義務の充足に係る進捗度に基づき収益を認識したことによるものであります。

 

c. 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(百万円)

前期比(%)

機能ソリューション事業

48,975

△1.2

メディカル事業

11,697

6.8

アパレル事業

60,114

△1.4

ライフクリエイト事業

12,826

△16.3

小計

133,614

△2.3

内部売上控除

△728

△8.6

合計

132,885

△2.3

 

(注) 販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10を超える販売先はありません。

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において判断したものであります。

 

 ① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社グループは、①新たな価値の創出 ②資本コスト重視の経営 ③企業体質の進化 ④環境に配慮した経営 を基本戦略として2022年度~2024年度の3ヵ年を推進期間とする中期経営計画「VISION 2030 stage1」を推進しております。中期経営計画「VISION 2030 stage1」は、2030年のビジョンと目標を明確化し、バックキャスト方式で現状とのギャップを埋めゴールを目指すという考え方に基づき、その第一段階の経営計画として位置付けています。2030年ビジョンとして「新しい価値を創造し『ここちよさ』を提供することで持続可能な社会の実現に貢献します」を掲げ、「変革と挑戦」をキーワードに、経済的利益と社会的利益を両立させるサステナブル経営を通じて社会貢献と当社グループの持続的成長の実現を目指します。また、各事業セグメントの役割・位置づけを明確にして「VISION 2030 stage1」を推進しております。

VISION 2030 stage1の経営目標はグループ売上高1,400億円、営業利益100億円、GVA黒字化、株主資本コストを上回るROE6.32%以上としております。中でもROE(自己資本利益率)をグループ重点指標として掲げ、引き続きGVAによる業績管理を事業毎に月度単位で実施するとともに、GVA黒字事業には、投下資本収益率(ROIC)を導入し、事業運営において意識づけを強化してまいります。

上記財務目標に加え、サステナブル経営の視点から2030年度までの非財務目標を以下の通り設定しております。上述の基本戦略に基づき諸施策を強力に推進してまいります。

[非財務目標]

区分

目標指標

2024年度目標

2030年度目標

環境対応

CO2排出量 削減率(対2013年度比)

28%以上

35%以上

エネルギー原単位削減率(対前年)

1%/年以上

企業体質の進化

女性活躍推進

女性管理職比率

6%以上

20%以上

女性社員比率

35%

41%

女性総合職採用比率

50%

50%

子育て支援

男性育休取得率

50%

70%

組織風土づくり

エンゲージメントスコア

70点想定

80点想定

働き方改革

年休取得率

75%

100%

その他

生産性向上率(対前年)

103%

103%

 

 

当連結会計年度は、VISION2030 stage1の2年目にあたり、「新たな価値の創出」「資本コスト重視の経営」「企業体質の進化」「環境に配慮した経営」の4つの基本戦略に取り組みました。

売上高は、前期の電子部品フィルム事業譲渡及び不動産開発プロジェクト要因により、減収となりました。営業利益、経常利益は、アパレル事業の収益改善等により、増益となりました。また、親会社株主に帰属する当期純利益は、電子部品事業、スポーツクラブ事業、アパレル事業において構造改革を進めたことから、事業構造改善費用2,801百万円を計上しましたが、子会社への投資に係る将来減算一時差異等に対して法人税等調整額(益)2,575百万円を計上したことや、政策保有株式の売却による投資有価証券売却益2,009百万円の計上等により、増益となりました。

一方、計画しておりました政策保有株式の売却実施により、有利子負債の圧縮に取り組みました。

その結果、ROEは4.4%(前年同期3.9%)、GVAは△16億円(前年同期△23億円)となりました。

 

(VISION 2030 stage1の経営目標と進捗状況)

(単位:億円)

 

 

2021年度
 (2022年3月期)

実績

VISION 2030 stage1

2022年度
(2023年3月期)

実績

 2023年度
(2024年3月期)

実績

2024年度
(2025年3月期)

業績予想

2024年度
(2025年3月期)

目標

売上高

1,243

1,360

1,328

1,400

1,400

営業利益

48

58

67

90

100

営業利益率

3.9%

4.3%

5.1%

6.4%

7.1%

ROE

2.6%

3.9%

4.4%

6.3%

6.32%以上

GVA

△26

△23

△16

黒字化

黒字化

 

 ※GVA(Gunze Value Added)= 税引後営業利益 + 配当金 - 期末投下資本 × WACC(加重平均資本コスト)

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

キャッシュ・フローの状況の分析内容につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要③キャッシュ・フローの概況」に記載のとおりであります。

当社グループは、企業価値向上に向けて安定的財務基盤を維持しながら資本効率を向上させることを財務戦略の基本方針としております。

安定的財務基盤を維持するために自己資本比率および有利子負債/EBITDA倍率について適正値を定め、事業資金の財源確保を図っております。事業資金は、長期資金による調達比率50%程度を目安とし、銀行借入やコマーシャルペーパー(CP)を中心に調達しております。また、取引銀行と当座貸越やコミットメントラインの契約を締結しており、CP発行限度額と合わせて、成長投資をはじめとする今後の資金需要だけでなく、緊急時の想定資金需要も含めた十分な資金調達枠を確保していると考えております。さらに、2022年度に策定した環境改善に資する投資に関するフレームワークについて格付会社の評価を取得しており、グリーンファイナンスによる資金調達も可能となっております。このように、当社グループでは多様な調達手段を確保することで、過剰に手元流動性を保持することなく、安定的かつ調達環境に応じた有利調達が出来る体制を構築しております。

資本効率向上については、NPV法による資本コストを加味した投資採算性の検証や遊休資産の売却推進など、資本コストを意識した経営を通じて、より資本収益性の高い資産への転換を図っております。また、負債による資金調達において、償還期間をキャッシュ・フローの精度が担保出来る範囲までで設定することを基本とし、過度な現預金・有利子負債を保有することがないように努めております。還元戦略については、中期経営計画「VISION2030」期間中は、連結ROEが株主資本コストを上回るまで、連結総還元性向((配当+自己株式取得)÷連結当期純利益)100%維持、かつDOE(株主資本配当率)2.2%以上の配当を実施することとしております。このように安定的・継続的な利益還元を実施するとともに自己資本を一定に維持し、負債の増加を必要最小限に抑制しながら収益拡大による資本収益性向上に努めております。

このような方針のもと、当連結会計年度では、移転価格事務運営要領改正や海外におけるUSD調達コストの上昇などを鑑み、海外のグループファイナンス体制を再編いたしました。再編に際し、政策保有株式の売却やキャッシュポジション見直しにより創出したキャッシュを活用し、一部関係会社について資本構成の最適化や銀行借入から親子ローンへの切替も実施することで、調達コスト上昇によるグループ損益影響を最小限に抑制しております。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

(特定融資枠契約)

当社は、機動的かつ安定的な資金調達手段の確保を目的として、取引銀行4行と総額50億円の協調融資型特定融資枠契約を締結しております。

 

6 【研究開発活動】

当社グループの研究開発活動は、各事業部門傘下での開発部門による商品開発に加え、研究開発部と技術開発部において、新規付加価値商品の開発や新規技術の開発、生産技術革新等事業部門支援に取り組んでおります。あわせて研究成果の知財権利化を進め、事業基盤の強化を図っております。

当連結会計年度における研究開発費は2,471百万円であります。セグメントの主な研究開発活動及び研究開発費の金額は次のとおりであります。

 

(1)機能ソリューション事業

プラスチックフィルム分野では、多層押出延伸技術をベースに高付加価値包装フィルムの開発及び新規分野への展開を目指した取り組みを行っております。また、SDGs対応として、環境対応プラスチックフィルムの開発及びプラスチックフィルム製造工場から廃プラを排出させないゼロエミッション化に向けた取り組みを行っております。

エンジニアリングプラスチックス分野では、複写機やプリンター用機能性ベルトで培った成形技術を活かした高機能部材やフッ素樹脂の特性を活かした半導体関連向け製品、医療機器向け製品などの産業資材の開発を進めております。

また、新市場の創出を目指して、機能ソリューション事業の保有技術の進化や組合せによって、新たな価値を有するフィルムの開発に取り組んでおります。生産部門においては、デジタル技術等の導入による生産工程の自働化など、製造技術開発に取り組んでおります。

当該セグメントに係る研究開発費は1,461百万円であります。

 

(2)メディカル事業

メディカル事業では、革新的な“バイオマテリアル×デバイス”の提供を目指して研究、開発に取り組んでおります。バイオマテリアル領域では、コア技術である生体吸収性材料の特性や加工技術を活かし、医療市場のニーズに適応した高付加価値製品の開発と、足場材等の再生医療分野に向けた研究に取り組んでおります。デバイス領域では、当社生体吸収性材料が使用される医療領域において、医師が使用するロボティクスや電子医療機器の開発を中長期的に推進しております。

また、生産部門においては、事業拡大に伴う生産能力拡大と製品特性に応じた生産効率を実現するため、生産工程の自働化に向けた製造技術開発に取り組んでおります。

当該セグメントに係る研究開発費は554百万円であります。

 

(3)アパレル事業

アパレル事業では、「お客さまのためのここちよさの追求」をキーワードに、人の生理学的研究と、綿糸の主成分であるセルロースの加工等の蓄積した繊維加工技術を活かした商品の開発を進めております。また、アパレル製品の技術を活用して医療に貢献するメディカル衣料(衣療)の開発を進めており、手術後の患者様や皮膚疾患にお悩みの方などのQOL向上に貢献すべく取り組んでおります。

また、生産部門においては、無縫製商品群の拡大と労働環境の改善、生産性向上につなげる為に、独自開発の接着縫製技術を更に進化させ、IoT技術を活用した無人化接着縫製ラインの開発に取り組んでおります。

当該セグメントに係る研究開発費は455百万円であります。