第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(1)経営理念及び中長期的な会社の経営戦略

当社は、社会全体の大きな変革の中で、直面する事業環境にあわせて、当社の経営理念としての存在意義を「化学を礎に、環境と調和した幸せな未来を顧客と共に創造する」と定義しました。持続可能な社会に貢献するために環境と調和して事業を継続させ、顧客と共に未来を創造することのできるトクヤマでありたいとの思いを込めています。
 そして、存在意義に基づいた経営方針として、以下のありたい姿を策定しています。
 ①マーケティングと研究開発から始める価値創造型企業
 ②独自の強みを磨き、活かし、新領域に挑み続ける企業
 ③社員と家族が健康で自分の仕事と会社に誇りを持てる企業
 ④世界中の地域・社会の人々との繋がりを大切にする企業

 

(2)対処すべき課題とその対応

当社は、中長期的な当社の経営戦略として2021年2月25日に中期経営計画2025を策定し、3項目の重点課題を設定しました。当連結会計年度における課題の対応及び進捗等は以下のとおりです。

 

1.事業ポートフォリオの転換
 成長事業を「電子」「健康」「環境」と位置付け、これに重点的に投資を行い、2025年度の連結売上高比率目標を50%以上とした上で2030年度には60%以上を目指します。化成品・セメント事業は効率化を進め、安定的に収益を確保いたします。

 「電子」分野では、当連結会計年度においてOCI Company, Ltd.(韓国)と半導体用多結晶シリコンの半製品の共同生産を行うことを目的としてマレーシアに合弁会社を設立することを決定しました。将来の半導体市場拡大に伴う多結晶シリコンの需要増加を見据え、クリーンエネルギーを使用した半導体用多結晶シリコンの生産・供給体制の構築を推進していきます。
 「健康」分野では、株式会社トクヤマデンタルで開発した歯科充填用コンポジットレジン「オムニクロマ®」に関して、第55回日化協技術賞・技術特別賞、日本化学会第72回化学技術賞、そして公益財団法人市村清新技術財団の第56回市村産業賞貢献賞を受賞しました。同社は歯科充填用コンポジットレジン・CAD/CAM冠用ハイブリッドレジンブロック等の製造能力強化に向けて鹿島工場内に新棟を建設し、2024年10月に生産を開始する予定です。また、株式会社エイアンドティーは、湘南サイト内に電解質事業強化のため新棟を建設し、これにより電解質分析装置用電極の生産能力を約1.5倍に向上させる計画です。
 「環境」分野では、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と共同開発中の「太陽光パネル低温熱分解リサイクル技術」を用いて分離処理した太陽光パネルのカバーガラスを原料として活用した結果、AGC株式会社によるフロート板ガラス向けリサイクル実証試験が成功しました。これにより太陽光パネルのリサイクルにおける環境負荷低減を可能とする一方、事業化に向けた取り組みも加速させていきます。

 当社グループは、今後も事業ポートフォリオの転換に向けて、成長事業を中心に積極的に経営資源を投入していきます。

 

2.地球温暖化防止への貢献

 世界的な環境意識の高まりを受け、当社は「2050年度カーボンニュートラル達成」を目標として掲げました。その達成のために原燃料の脱炭素化、環境貢献製品の開発・実装及び水素やアンモニアなどの次世代エネルギーの技術開発の加速、事業化を目指します。また、徳山製造所内のプロセス改善に取り組むとともに、国内外のバイオマス燃料の開発・利活用を推進し、2030年度に温室効果ガス(GHG)排出量(Scope1、2)を30%削減(2019年度比)することを実現します。
 当社は、2022年度より経済産業省が公表した「GXリーグ基本構想」への賛同を表明、2023年度に「GXリーグ」に参画いたしました。2050年カーボンニュートラル実現に向けて、自ら挑戦的なGHG排出削減目標及びトランジション戦略を定め、その達成のための課題取り組みを一層強化し、COをはじめとするGHG排出削減を推進していきます。
 また、当社は周南コンビナート脱炭素推進協議会に参画し、コンビナート全体のグリーン化・脱炭素化に取り組んできました。このたび、同協議会参画5社によるカーボンニュートラル実現に向けた共同行為について公正取引委員会へ相談を申し入れ、本共同行為は「独占禁止法上問題がない」旨の回答を受領しました。これを受けて、周南コンビナートのグリーン化・脱炭素化に一層貢献していきます。

 

3.CSR経営の推進

 当社は、社会に必要とされる企業であり続けるために企業価値を追求し、サステナブルな社会の実現に向けて活動しています。その実現に向けて、CSR経営に関わる社会的な課題を抽出しマテリアリティ(CSRの重要課題)として、以下の10項目を特定し各課題の解決に取り組んでいます。
 当連結会計年度におきましては、当社は、経済産業省と東京証券取引所が共同で選定する「健康経営銘柄」に2年連続で選定され、また、「健康経営優良法人(大規模法人部門)ホワイト500」に3年連続で認定されました。従業員とその家族の心と体の健康づくりと働きやすい職場づくりを実現するために、経営トップである社長が健康経営統括責任者を務めています。今後も適切な職場環境を築くことで、生産性の向上などの組織の活性化を図り、事業を通じた持続可能な社会の発展に貢献していきます。
 また、当社はサステナビリティ基本原則を制定したことに加え、コーポレートガバナンス・ポリシーを新たに定めました。これらにより当社のCSR経営がより体系的に進められると同時に、ガバナンスの透明性も強化されると考えております。

 


 

(3)中期経営計画2025 達成目標

最終年度における達成目標は以下のとおりです。

 

指標

2023年度

(実績)

2025年度

(計画)

  達成に向けたポイント

売上高

3,419億円

4,000億円

事業ポートフォリオ転換注力
コストインフレ反映により計画値を修正

営業利益

256億円

450億円

2025年度に向け伸長
償却方法変更により修正

成長事業の売上高成長率(CAGR)

8.5%

10%以上

研究開発強化・国際展開加速

ROE

7.4%

11%以上

株主資本効率と財務基盤の両立
償却方法変更により修正

 

なお、当該将来に関する事項については、その作成時点での予想や一定の前提に基づいており、その達成及び将来の業績について保証するものではありません。

 

(4)トクヤマの価値創造プロセス

「化学を礎に、環境と調和した幸せな未来を顧客と共に創造する」という存在意義のもと、様々な社会課題の中から私たちの強みを活かせる領域を「電子」「健康」「環境」に特定し、これら3分野を新たな成長市場と位置づけています。100年超の歴史の中で培った特有技術や価値観を共有する人材、ステークホルダーとの関係といった経営資源を活かしつつ「ありたい姿」に向けた変革を行います。そしてこれらの成長市場に向け、他社にない価値を提供するソリューション型のビジネスを展開していくことで、持続可能な未来の実現に寄与します。この取り組みの流れを価値創造プロセスとして示します。

なお、詳細につきましては2024年7月に当社ウェブサイトへ掲載予定の統合報告書をご参照ください。

 

 


 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

文中の将来に対する記載事項は、当社グループが有価証券報告書提出日現在において合理的であると判断する一定の前提に基づいており、実際の結果とは様々な要因により異なる可能性があります。

 

(1)サステナビリティに関する考え方

 「化学を礎に、環境と調和した幸せな未来を顧客と共に創造する」という存在意義、ありたい姿、価値観から成る「トクヤマのビジョン」のもと、当社グループの持続的成長と中長期的な企業価値向上を目指す8項目の「トクヤマグループ サステナビリティ基本原則」を2023年4月に制定しています。当ビジョン及び基本原則に則り、当社グループは事業活動に起因する環境負荷を最小化しながら、社会課題の解決に資する製品の供給を通じて、環境と調和した新しい価値を創造していきます。

 


 

 


 

① ガバナンス(サステナビリティ・ガバナンス)

 サステナビリティに関する方針と目標を決定し、活動を円滑に進めるため、社長執行役員が議長となり、全執行役員が委員であり、かつ社外取締役を含む監査等委員も出席可能なCSR推進会議(開催頻度:原則1回/年)が設置されています。本会議では、適切なコーポレート・ガバナンスの推進及びサステナビリティ課題に関するリスクと機会を含む重要事項を議論しています。本会議で決定した内容は取締役会に報告を行い、当社戦略へと反映させると同時に、取締役会からは監督を受けています。

 また、CSR推進会議の中に、CSR担当取締役を委員長とするリスク・コンプライアンス委員会(開催頻度:原則2回/年)を設置し、本委員会を中心に内部統制の中核かつ両輪と位置付けているリスクマネジメントとコンプライアンスの推進を図っています。併せて、特に専門性・重要性の高い分野については、リスク・コンプライアンス委員会から分離させた専門委員会(委員長:各担当取締役)を設置しています。

 下図はサステナビリティに関する会議体の全体像を示しており、2023年度の開催回数を()内に記しています。

 


② 戦略

 サステナビリティを巡る課題を重要な経営課題であると認識し、中期経営計画2025の重点課題の一つとして「CSR経営の推進」を掲げ、持続的な成長と中長期的な企業価値向上のため、取り組みを強化しています。

その土台となる姿勢・考え方として掲げた「トクヤマグループ サステナビリティ基本原則」及び「トクヤマグループ行動憲章」に基づき、方針類の体系を下図のように整備し、マテリアリティ(CSRの重要課題)への取り組みを進めています。

2023年度は、当社のコーポレート・ガバナンスに対する思想を明文化し、取締役の役割と責務を明確にするために、「コーポレートガバナンス・ポリシー」を策定し、2024年4月1日に制定しました。これにより、サステナビリティを含む経営課題への取り組みをガバナンス面から促進するとともに、取締役の職務執行の実効性をより高める体制を築いています。


 

③ リスク管理

 当社グループでは、企業価値毀損に繋がる、事業の持続性に影響を及ぼす、組織目標の達成を阻害する事象・要因のうち、組織横断的な対応が必要となるものを企業経営に係るリスクととらえ、確実に対応するためのマネジメントシステムを構築しています。

 下図に、リスクの特定プロセスを示します。CSR担当取締役が委員長となり、各部門を統括する執行役員が委員であり、かつ社外取締役を含む監査等委員も出席可能なリスク・コンプライアンス委員会では、出席者全員の議論のもとトップダウンでのリスク対応の優先順位づけなど、全社的リスクマネジメントを定期的に実施しています。

 


 

 具体的には、社会情勢のモニタリングや各専門委員会との連携を通じ、新たに発現したり影響の度合いが変化したりした事象・要因を抽出します。それらを影響度(損失金額、マーケットシェアの減少、影響規模など)や発生頻度・蓋然性、脆弱性の観点で定量・定性の両面からリスクの度合いを下図のように可視化・マッピングし、リスクとして識別し優先順位づけをするとともに、対応する専門委員会の決定を行っています。

 

 

 


 2023年度のリスク・コンプライアンス委員会では、当社グループの喫緊の重要リスクである「脱炭素社会への対応リスク」に対し、当該リスクに包含される小分類リスクの再定義を行いました。また、世の中の潮流や社会課題から新たに対応すべきリスクの追加を行いました(「重大な環境リスク」に水リスク、生物多様性の追加など)。

 


 

 各担当取締役が委員長となる専門委員会では、管掌するリスクの対応方針(低減、回避、移転、保有)を検討・決定します。決定した方針に基づき、リスクへの施策を立案・実行し定期的なレビューを行うなど、マネジメントシステムに沿った実行管理をしています。

 なお、それぞれのリスクの詳細及び対応については、次項の「3 事業等のリスク」で記載します。

 また、リスクだけでなくサステナビリティに係る機会を的確に捉え、企業価値向上に繋げていくため、8つの専門委員会のひとつであるサステナビリティ委員会では、積極的にサステナビリティ課題に向き合い、取り組み事項についての開示を行っています。2023年度は、人権対応の一環として、全事業活動にかかわる人権への負の影響をリストアップの上、マッピングに落とし込み、優先順位の高い「サプライチェーンにおける人権デュー・ディリジェンス」と「救済へのメカニズム構築」に取り組みました。具体的には、取引先に対し、自己評価アンケート(SAQ)や対話による関係構築といったエンゲージメントを実施するとともに、海外グループ会社向けにグローバル内部通報体制を構築しました。併せて、気候変動に係る情報開示では、TCFDレポートの開示内容の拡充と当社グループ全体でのScope3の目標設定に取り組みました(「(2)気候変動への対応」に詳細を記載)。

 


 

④ 指標と目標

当社グループは、各種サステナビリティ課題でもあり、当社グループの成長の土台となるマテリアリティへの取り組みを強化することで、社会との信頼関係をより強固なものとすることを目指しています。

 各マテリアリティには指標(KPI)と目標などが設定され、それぞれの進捗状況については、サステナビリティに関する方針と目標を決定し活動を推進していくCSR推進会議において定期的にモニタリングされ、取り組みの調整・強化などを図っています。

 

[マテリアリティ及び指標]

マテリアリティ

目指す姿

目標・KPI

2023年度の実績

地球温暖化防止

への貢献

2050年度カーボンニュートラル(CN)の達成

・当社グループ全体のGHG排出量削減、いずれも2030年度までに

・Scope1、2

 △30%(2019年度比)

・Scope3(カテゴリー 1、3、4)
 △10%(2022年度比)

・気候関連情報の積極的な開示

・2023年度GHG削減量:
  ・Scope1、2 △13%

  ・Scope3 △5%

・CNに向け地域・自治体・コンビナート内の連携を推進

・バイオマス、アンモニア等代替燃料について検討

・TCFD提言に基づく取り組み状況開示

・GXリーグ基準年度GHG排出量提出

CDP気候変動質問書回答評価:A-

環境保全

・リサイクルの推進と廃棄物ゼロエミッション率の維持継続 

・環境負荷物質の低排出状態の維持

・法的要求事項等の遵守と環境事故ゼロの継続

・生物多様性保全への貢献

・法的要求事項等の遵守の徹底:違反等件数ゼロ

・環境事故ゼロの継続:事故件数ゼロ

・環境負荷の低減

  ・廃棄物有効利用率

   ≧94%

  ・廃棄物ゼロエミッ

   ション率≧99%

・ステークホルダーとの対話と情報開示の充実

・生物多様性保全への貢献:TNFDへの対応

・水資源の有効利用:水使用量削減(海水除く)(2019年度基準以下)

・法的要求事項等の違反等件数ゼロ

・環境事故件数ゼロ

・環境負荷の低減:未達成

  ・廃棄物有効利用率:92%

  ・廃棄物ゼロエミッション

   率:97%

・生物多様性への関心啓発

・水使用量削減率(海水除く)2019年度比 △19%

 

無事故・無災害

・無事故・無災害

・保安管理レベルの向上

・安全文化の醸成・向上

・事故・休業災害ゼロ

・リスクアセスメントの深化

・スマート保安の推進 

・重大な事故・災害の発生ゼロ

・リスクアセスメントによる各種リスクの特定と低減対策の実施

・スマート保安の推進

社会課題解決型

製品・技術の開発

・SDGsを意識した社会課題解決型製品・技術開発の拡充

・事業ポートフォリオの転換

・SDGsを意識した社会課題解決型製品・技術開発の推進

・電子領域:マーケティング機能強化により顧客起点の製品化に向けた取り組みを加速し、一部テーマが事業化フェーズに移行

・健康領域:事業化テーマを絞り込みリソースを集中し開発を加速

・環境領域:複数テーマが事業化フェーズへ移行。新規のカーボンニュートラル関連テーマを推進

・伝統事業領域:環境問題に対応する製品の開発・上市と、プロセス技術の開発

・その他:学術・研究を目的とした助成金の実施

 

 

 

マテリアリティ

目指す姿

目標・KPI

2023年度の実績

化学品管理・製品安全の強化

・当社グループの適正な化学品管理の維持、製品安全の推進

・各国の化学品法令遵守:化学品規制違反ゼロ

・グループを含めた化学製品のリスクマネジメント:製品安全に起因した事故ゼロ

・化学品規制違反ゼロ

・製品審査(2次・3次):計61件、表示審査:計787件

・国内外規制動向の把握と対応

・製品含有化学物質管理の推進

・化学品管理に関わる各部門・グループ会社に教育を行い、管理状況について定期点検・ヒアリングを実施

地域社会との共存、連携、貢献

・地域社会との共存・連携

・地域社会への貢献

・地域社会との共存・連携

・地域の課題解決と持続的発展への貢献

・地域との対話:地域対話、懇談会、工場見学等

・社会貢献活動:ボランティア活動、近隣学校への教育支援、地域貢献のための寄付の実施

・事業による貢献:周南市への電力特定供給

CSR調達の推進

・CSR調達ガイドラインに基づくサプライチェーン管理

・管理プロセスの構築

CSR調達ガイドラインに基づくサプライチェーンの管理・調査の拡充と遂行

・2022年12月改正のCSR調達ガイドラインの周知。取引額3,000万円以上の会社に承諾書を要請。323社中310社回収済

・GCNJが公開しているSAQを用い、取引額1億円以上の会社に対しサプライヤー評価を実施。181社中173社より回収

・SAQの回収結果を分析し、高リスク懸念先5件に対しエンゲージメントを実施 

(上記全て単体)

人材育成

経営戦略の実現に寄与しつつ、従業員の価値向上を実現する

・業務の生産性向上

・成長分野、新規PJへの人材の供与

・会社の成長を推進する人材の採用と創出

・生産性向上を支援するインセンティブ制度の確立 ※1

・人材計画に対する人員補充の充足率:毎年度100%±10%

・管理職重要ポスト後継者候補充足率:毎年度100%

・NBL(Next Business Leader)研修受講者人数:2030年度累計100名 ※1

・グローバル人材育成研修:2025年度まで毎年度15名受講 ※1

・事業遂行を支える高度技術者の育成 ※2

 

※1:単体

※2:単体及び

   国内連結子会社

 

・インセンティブ制度の確立:制度設計の準備 ※1

・人材計画に対する人員補充の充足率:目標設定の実施(2024年度から測定を開始する指標のため、実績値はなし)

・管理職重要ポスト後継者候補充足率:目標設定の実施(2024年度から測定を開始する指標のため、実績値はなし)

・NBL研修の実施:30名を選抜受講(累計67名)※1

・グローバル人材育成研修の実施:16名を選抜受講 ※1

・事業遂行を支える高度技術者の育成 ※2

  ・DX職場リーダー研修、

   デジタルエンジニア研修の

   実施

  ・DXリテラシー向上教育

    (eラーニング)の開始:

   1,400名受講

 

 

 

 

 

マテリアリティ

目指す姿

目標・KPI

2023年度の実績

多様性(ダイバーシティ)と働きがいの重視

・価値観の多様性に対応し公平性を確保する

・エンゲージメントの向上

・人権の尊重

・ダイバーシティ&インクルージョンの推進

  ・学卒以上の女性採用

     比率:毎年度20%

   ※2

  ・管理職以上の女性

   比率:2030年度15%

  ・障がい者雇用の推進

  :法定雇用率達成 ※1

・従業員エンゲージメント:継続改善 ※1

・ワークライフバランスの推進

  ・男性育児休業取得率

  :2030年度100% ※2

  ・年次有給休暇取得率

  :毎年度75% ※2

・人権の尊重の推進

 

※1:単体

※2:単体及び

      国内連結子会社

 

・ダイバーシティ&インクルージョンの推進

  ・学卒以上の女性採用比率:

   30.1% ※2

  ・管理職以上の女性比率:

   8.2%

  ・障がい者雇用率:2.29%

            ※1

・従業員エンゲージメント調査実施:回答率94.7%、優先課題の可視化 ※1

・ワークライフバランスの推進

  ・男性育児休業取得率:

    47.3% ※2

  ・年次有給休暇取得率:

   76.5% ※2

・人権デュー・ディリジェンスの実施等(詳細は前項「人権対応の一覧」参照)

心と体の健康推進

従業員とその家族の心と体の健康づくりと働きやすい職場づくりの実践により、従業員がイキイキと働き活躍できる状態

・個人の健康意識の向上

  ・喫煙率:<15%

・有所見率の維持・低減

・定期健康診断受診率:

  100%

・再検査受診率:≧90%

・特定保健指導実施率:

  ≧80%

・休業率の低減:<0.5%

・ストレスチェック

 受検率:≧95%

・健康優良法人認定:ホワイト500認定継続取得

 

(上記全て単体)

・喫煙対策の推進
  ・喫煙率:17.8% 

  ・喫煙可能時間帯の設定

  ・禁煙キャンペーンの実施

・健康指導・健康診断事後処置の

  実施
  ・定期健康診断受診率:100%
  ・再検査受診率:87.4%
  ・特定保健指導実施率:93.0%

・メンタルヘルスケア対応
  ・休業率:0.69%
  ・ストレスチェック受検率:

     97.7%
   ・メンタルヘルス研修、

   eラーニングの実施

・2024年度健康経営銘柄、健康優良法人ホワイト500認定取得

 

       (上記全て単体)

 

 

 

 

(2)気候変動への対応

 当社グループは、TCFD提言に賛同し、TCFDのフレームワークに基づいて気候変動に対する検討を重ねています。

① ガバナンス

 当社グループでは、気候変動を最も大きな経営リスクの一つに位置づけており、中期経営計画2025では「地球温暖化防止への貢献」を重点課題の一つとして掲げています。

 2021年2月にはTCFD提言への賛同を表明し、同年4月には社長直轄組織として「カーボンニュートラル戦略室」を設置、その後2023年4月からは、取り組みが構想段階から実践フェーズへ移行したことに伴い、独立した部門相当となる「カーボンニュートラル戦略本部」に格上げし、その取り組みを加速させています。

a)取締役会の監督

 気候変動に係る事項(気候変動に取り組む会社方針や、それらに対応するための中長期戦略の策定や投資案件の選定など)は随時経営会議での審議を経て決議され、取締役会に報告を行い、取締役会からは監督を受けています。また、その中でも特に重要性が高い案件については経営会議での審議を経て取締役会で決議されます。

b)経営陣の役割

 当社グループの気候変動に対する責任者は社長執行役員です。環境監査の全体統括や省エネ活動等は環境対策委員会で報告され、気候変動に関する組織横断的な課題についてはサステナビリティ委員会で検討しています。これら専門委員会での検討事項はCSR推進会議にて報告・議論され、決定した内容は必要に応じて取締役会に報告を行い、当社戦略へと反映すると同時に取締役会からは監督を受けています。更に、全執行役員や社外取締役を対象とした気候変動に対する勉強会も2023年度は3回実施し、気候変動に係る最新動向や法制度を確認し、速やかに対応していく準備も行っています。

 


② 戦略

 中期経営計画2025には、インターナルカーボンプライシングの導入による炭素コストの見える化による影響、顧客の調達方針の変更による影響、金融・投資会社の方針変更による資金調達への影響といった「リスク」と、環境領域での新たな「事業機会」を織り込んでいます。また、IEA(国際エネルギー機関)作成のNZE等の移行リスクシナリオ、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)のRCP8.5やSSP-7.0等の物理リスクシナリオを参照し、現時点から2050年までの時間軸で、1.5℃シナリオと4℃シナリオ分析を実施しました。これに基づき中期経営計画2025では、エネルギー多消費型から価値創造型企業への事業ポートフォリオ転換によって、気候変動のリスクを低減しつつ有望な事業機会の収益化を目指しています。

 

a)短期・中期・長期の気候関連のリスクと機会 及び c)組織戦略のレジリエンス

 2021年度より気候変動による当社グループのリスクと機会の分析を行っています。2022年度は、それらリスクや機会が当社に及ぼす財務への影響度、発生時期、事業への影響度、優先順位を評価しました。2023年度は、その評価結果を基に具体的な対策の検討を進めました。

 リスク分析とそれに基づく具体的な対策を定期的に見直すことにより、組織戦略のレジリエンスを高めています。

 

[気候変動によるリスク(シナリオ分析)]

シナリオ

リスク区分

リスクの

評価対象

当社グループへの影響(財務)

(特定されたリスク)

財務への影響度

リスク

発生時期

事業への影響度

優先順位

対応策

1.5℃

政策

法規制

カーボンプライシングとエネルギー調達コスト

・カーボンプライシング強化に伴う操業コストの増加

中期~長期

・燃料転換(バイオマス、アンモニア)によるGHG排出量削減の取り組み

・インターナルカーボンプライシング導入によるGHG排出量削減施策の促進

・GXリーグへの参画によるGX実現に資する取り組みの強化

・GHG排出規制強化による対策コストの増加

中期~長期

技術

グリーン化対応

・グリーンエネルギー生産・調達コストの増加

中期

・周南コンビナートにおけるアンモニアサプライチェーンの構築検討

・サプライヤーとの関係構築による認証バイオマス燃料の安定調達

・ブラックペレットの開発

・製品カーボンフットプリント(CFP)の算定

・技術・市場が成熟していないことによるグリーン材料調達・グリーンプロセス切り替えコストの増加

中期~長期

評判

ステークホルダーからの評価

・取り組み劣後との評価による市場価値の下落、資金調達コストの増加

・石炭火力発電設備停止、廃止を求める住民訴訟リスク

・バイオマス燃料のサステナビリティリスク

中期~

長期

 

 

・開示情報の充実とGHG排出量削減の着実な取り組み

・地域社会との対話

・事業ポートフォリオの転換

・認証バイオマス燃料の調達

市場

顧客によるグリーン調達の浸透

・GHG多排出製品と評価されることによる市場からの排除

・グリーン化に係るコストが適切に価格転嫁できないことによる収益悪化

中期~

長期

・省エネ・燃料転換等による着実なGHG排出量削減

・マスバランス認証取得の検討

・適切なグリーン市場形成のためのサプライチェーン連携強化

・CFP評価システム構築

グリーン市場の拡大に追随できないことによる機会損失

・大規模グリーンサプライチェーン化推進による拠点競争力強化への取り組みが遅れることによる機会損失

・廃棄物処理・資源有効利用産業、温暖化対策産業への取り組みの遅れによる機会損失

・カーボンリサイクル分野への進出の遅れによる機会損失

中期~長期

・施策の遅滞ない推進

 

 

 

 

シナリオ

リスク区分

リスクの

評価対象

当社グループへの影響(財務)

(特定されたリスク)

財務への影響度

リスク

発生時期

事業への影響度

優先

順位

対応策

4℃

物理

リスク

(急性)

異常気象の激甚化/海面の上昇

・風水害による生産設備への浸水被害、サプライチェーンの寸断などによる生産計画の遅延やコスト増加

長期

・BCP対応を拡充

物理

リスク

(慢性)

長期的な異常気象の激甚化/海面の上昇

・平均気温上昇によるプラントの冷却能力不足による生産能力減少

・海面上昇に伴う高潮の発生による稼働停止

長期

・設備改造等による能力維持

 

短期:~2025年度  中期:~2030年度  長期:~2050年度

 

[気候変動による機会(シナリオ分析)]

シナ

リオ

機会

区分

機会の

評価対象

当社グループへの影響

影響度

時間的

範囲

優先

順位

対応策

1.5℃

市場

環境産業の

需要拡大

廃棄物処理・資源有効利用産業の拡大、地球温暖化対策産業の拡大

中期~

長期

・再生可能資源・エネルギーの事業化

 

地域・コンビナートのカーボンニュートラル化

エネルギー・マテリアルの大規模グリーンサプライチェーン化推進による拠点競争力の強化

 

中期~

長期

・周南コンビナート脱炭素推進協議会を通じたグリーンサプライチェーンの構築、技術開発の積極参画と推進

資源

効率

CCU関連製品・サービスの要請

カーボンリサイクルシステムの確立による新たな事業分野への進出

中期

・研究開発、実証実験を加速し、実ビジネスへの実装を加速

 

短期:~2025年度  中期:~2030年度  長期:~2050年度

 

 

b)事業、戦略、財務計画に及ぼす影響

気候変動による機会の分析から、環境領域での新たな「事業機会」の検討についても、より内容を具体化すると共に、時間的範囲、財務への影響度、優先順位を評価しました。

 

[気候変動による事業機会の検討]

シナリオ

顕在化する事象

事業機会

製品・技術

時間的

範囲

財務

影響度

優先

順位

1.5℃

低炭素水素の普及

・水電解設備への需要急増

・水素需要・流通の拡大

水電解装置

食塩電解装置の拡販

水素キャリア(水素化マグネシウム)

中期~長期

モビリティの電動化の拡大

・リチウム電池の需要拡大

・放熱材料の需要拡大

イオン交換膜

放熱材料

短期~中期

急速なデジタル化

・半導体需要の拡大

多結晶シリコン

フォトレジスト用現像液

CMP用乾式シリカ

電子工業用高純度IPA

放熱材料など

短期

循環型社会の形成

・廃材、廃棄物の再資源化

 の需要増

廃石膏ボードリサイクル技術

イオン交換膜

バイオマス燃焼灰の有効活用(CCUS)

カーボンネガティブコンクリートの開発

短期

・太陽光パネル

 大量廃棄への対応

太陽電池モジュール

リサイクル技術

中期

小~中

 

短期:~2025年度  中期:~2030年度  長期:~2050年度

 

③ リスク管理

a)リスクの特定と評価プロセス

 当該項目の説明につきましては、前述の「(1)サステナビリティに関する考え方 ③ リスク管理」をご参照ください。

b)リスクマネジメントのプロセス

 リスク・コンプライアンス委員会では「脱炭素社会への対応リスク」を最も大きなリスクと位置づけ、複数の専門委員会による対応を決定しました。環境に関する法規制は環境対策委員会、製造拠点における高潮などの物理リスクは保安対策委員会、気候変動に対するイニシアチブや外部開示に関するソフトロー対応はサステナビリティ委員会が受け持ち、連携して対応を進めています。

 サステナビリティ委員会では、積極的にサステナビリティ課題に向き合い、取り組み事項についての開示を行っています。気候変動に係る情報開示では、TCFDレポートの開示内容の拡充と当社グループ全体でのScope3の目標設定に取り組みました。

 気候変動に関連する個別の活動については、例えば徳山製造所においては製造所長を委員長とするエネルギー管理委員会を定期的に開催し、原単位改善を含む省エネルギー活動の計画を協議し進捗を確認しています。さらに、経営に関連する重要案件については、必要に応じ経営会議や取締役会に報告されます。

c)全社リスクへの統合(重要リスクの特定プロセス)

 当社グループの中期経営計画2025では、社会の潮流が脱炭素へと加速する中、これまで強みとしてきたエネルギー多消費型事業を中心とした事業構造からの脱却が不可欠であると判断しました。

 当社は徳山製造所のインテグレートされた高効率な生産プロセスが競争力の源泉であり、石炭火力発電所に依存したエネルギー多消費型事業が収益を牽引してまいりました。しかし産業構造の変化が加速し、循環型社会実現に向けての環境意識の向上や規制強化が進むことが想定され、これまでの延長線上にない事業の構築・成長によって収益力・競争力を確保していくことが必須であると考えています。

 そのため、中期経営計画2025では、私たちの存在意義を「化学を礎に、環境と調和した幸せな未来を顧客と共に創造する」と定義し、重点課題の一つとして「地球温暖化防止への貢献」を挙げ、全社的な取り組みを進めています。

 サステナビリティ上の機会とリスクについては、前述のとおりCSR推進会議を頂点とする体制で取り組みますが、投資判断など経営に関連する重要な意思決定を伴うものについては、必要に応じ経営会議や取締役会に報告されます。

 

④ 指標と目標

 当社グループは、短期を2025年度(中期経営計画2025の設定年度)、中期を2030年度、長期を2050年度ととらえ、指標と目標を定めて管理しています。

a)気候関連の指標

当社グループはこれまで、GHG排出量及び原単位、エネルギー消費原単位を管理してきましたが、中期経営計画2025ではGHG排出量(Scope1、2)を単体及び連結生産子会社において測定・管理指標に定め、下図のとおり2030年度には2019年度比で30%の削減、2050年度にはカーボンニュートラルを達成することを目標に定めました。

また、全執行役員の役員報酬算定時に、当社が定めたマテリアリティのうち関連するものを指標として組み込み、貢献度による評価を行っています。これにより、具体的な役割や責任などを一定の要素として勘案しています。

 


 

 当社グループは、サプライチェーン全体のカーボンニュートラルに挑戦するため、新たにScope3についても、排出量削減目標を設定しました。

 当社グループのScope3は、カテゴリー1、3、4が全体の90%以上を占めるので、この三つのカテゴリーの総量に対し、2030年度までに10%削減(2022年度比)を目指します。目標達成に向けて、サプライチェーンエンゲージメント活動の強化を図ります。

 

 


 その他、気候変動に関連する重要な目標は下記のとおりです。

SBT(Science Based Target)認証を目指し検討を開始

 2023年3月に認定機関へコミットメントレターを提出、2年後の次期中期経営計画の策定では、SBTに沿った目標に更新すべく、検討を開始しました。

・エネルギーに関する目標

 当社グループは、2030年度に燃料起源GHG排出量のうち、自家発電由来のGHG排出量を2019年度比で50%削減する努力目標を設定しており、自家発電における非化石燃料(バイオマス、アンモニア)への転換を行う計画にしています。バイオマスは2023年度から段階的に混焼率を上げていき、アンモニアは2028年度以降に導入する予定にしており、現在導入に向けての検討を実施しています(資源エネルギー庁『令和5年度石油供給構造高度化事業費補助金(次世代燃料安定供給のためのトランジション促進事業)』)。

 この取り組みにより、2030年度における再生可能エネルギー(アンモニア燃焼含)の比率は30%を目指しています。

 2023年度におけるグループ全体での再生可能エネルギーの比率は3.3%でした。

 


 

・GXリーグ

 当社は、2022年度より経済産業省が公表した「GXリーグ基本構想」への賛同を表明し、2023年度より本格稼働した「GXリーグ」に参画しました。GXリーグ参画にあたっては、GXリーグの定める基準に沿ってGHG排出量削減目標を定めることになっており、当社がGHGプロトコルに準拠して設けたGHG排出量削減目標とは別に、単体及び国内連結生産子会社のScope1、2について目標を定めました。

 


 

 GXリーグのデータは、GHGプロトコルに準拠して設定したものとは基準年度や排出量の計算方法が異なりますが、元となるデータは共通のものであり、削減目標も整合を取っています。

・インターナルカーボンプライシング(ICP)の導入に関する指標(取り組み)

 当社は、GHG排出量削減策を促進するため、2019年度に投資案件の評価基準にICPを導入しました。当初は欧州連合域内排出量取引制度(EU-ETS)取引価格を参考にして、3,700/t-COに設定していましたが、GHG排出量削減の更なる取組強化のため、2022年度より10,000/t-COに引き上げました。これにより短中期的に脱炭素に向けた活動を推進していきます。

 

b)Scope1、2、3のGHG排出量

 下表は、GHG排出量(Scope1、2、3)の推移を表したものです。2023年度は、バイオマス混焼や積極的な省エネ活動により、GHG排出量(Scope1、2)は基準年度2019年度比で13%削減できました。

 


 

下表は、カテゴリー別の内訳を示したものです。

GHG排出量(Scope3)は基準年度2022年度比で5%削減できました。

 


 

 下表はGHG排出量(GXリーグ)の推移を示したものです。2023年度は、基準年度2021年度比で11%削減できました。

 


 

c)目標及びその目標に対するパフォーマンス

当社グループは、燃料起源GHG排出量削減を目指すとともに、原料起源GHG排出量や革新的技術開発等によりカーボンニュートラルを目指しています。下図は、2030年度、2050年度に向けた削減の内訳と多方面に渡るアプローチを表しています。

GHG排出量削減を着実に進めることが企業としての責任である一方で、製品が世の中で使われることによるGHG排出量削減も重要な役割であると認識しています。今後、更なる革新的技術開発を行っていくことで、世界のカーボンニュートラル達成に貢献していきます。

 


 

(3)人的資本の拡充

 当社グループは、人材を企業の持続的成長に不可欠な最重要の「経営資本」と捉えています。その視点から、2019年にトクヤマグループのビジョンを実現する人材に期待するあるべき姿や成長の方向性を「人事ポリシー」として具体的に定め、ビジョンで掲げた4つの価値観を体現する人材を育成し、多様で生産性が高い人的資本を形成する事を目指しています。

 

① ガバナンス

 当社では人的資本・人事に関する会議体を定期的に開催し、人的資本における重要な施策や戦略の実行、人材計画や人材の配置について決定しております。また、従業員に関する人事施策や人事異動の実施に関しては、予め労使間での協議を行った上で、十分な従業員の理解を得ながら進めています。 

 監督機能である取締役会においては、重要な人的資本に関する施策や戦略に関して経営視点での議論に参加し方向付けを行うとともに、策定された戦略を決議し、その進捗を定期的にモニタリングし、課題を継続的に議論することで当社グループの人的資本経営が適正に行われていることを監督しています。 

 なお、役員の人事及び報酬に関しては、委員の過半数を社外取締役で構成する指名・報酬委員会において、後継者計画の策定および役員候補者の選出・評価、役員報酬制度、基本報酬・賞与の個別支給額などを審議し、取締役会に適切な答申又は提言を行っています。

 

  [人事に関する報告・決定プロセス・モニタリングの仕組み]

会議体名称

構成員

内容

取締役会

取締役(社外取締役を含む)

役員の人事異動の決定

重要事項の決定

経営会議

執行役員

管理職の人事異動の決定

人事制度の制定、改廃の決定

指名・報酬委員会

代表取締役

社外取締役

役員の人事異動・報酬等を協議

人材定例部会

社長・人事担当執行役員・執行役員のうち社長が指名した者

管理職の異動・配置、処遇、グループ会社の社長および取締役の人事・報酬等の協議

人材評価部会

人事担当執行役員及び専務・常務・執行役員のうち人事担当執行役員が指名した者

管理職の評価の決定、登用・昇格の協議

健康経営推進委員会

人事担当執行役員・事業所等の総括安全衛生管理者・人事グループリーダー・労働組合執行委員長・健康保険組合事務長

健康経営方針の計画・目標を制定

労使協議会

会社:人事担当執行役員をはじめとする代表者(非組合員)

労働組合:執行委員長をはじめとする組合員の代表者

(各13名以内及び幹事各1名)

労働協約及び規程の制定、改廃の協議決定

組合員の人事異動の協議決定

 

 

② 戦略

■人材戦略の位置付け 

 当社グループでは中期経営計画2025に定める経営戦略を実現するために、2024年度から実行すべき人材戦略を新たに策定しました。これは重要な経営課題である事業ポートフォリオ転換等を見据えた上で、経営計画を実現するために必要な人的資本と現状とのギャップを経営戦略、労働市場、ESG投資の3つの視点から特定し、それを埋める活動の軸となる考え方を人事ポリシーの理念を踏まえつつ戦略として策定したものです。「経営戦略の実現に寄与しつつ、従業員の価値向上を実現する人材戦略」というメッセージを掲げ、経営戦略の実現や当社グループの企業価値向上につながるストーリーを具体的に示し、働き方のニーズに応じた多様で生産性が高い人的資本を形成することを目的としています。

 


 

■人材戦略の取り組み

 a)経営戦略の視点

中期経営計画2025の実現を図り、またその延長線上にある当社グループの経営環境を推定すると、電子・健康・環境の成長事業においてグローバルに活躍できる人材や、厳しい環境における事業やプロジェクトを運営できる人材、M&Aのマネジメントをできる人材が今後更に必要となります。現有の人的資本と将来想定される必要人材とのギャップを埋めるために、多角的な採用ルートと人材の育成を行う「会社の成長を推進する人材の採用と創出」に取り組んでいます。また2023年度に取締役会で決議した人材計画において、将来の事業計画に対する人材の質と量に関する人材ポートフォリオをシミュレートした結果、成長事業において化学系の技術者及び、グループ企業における人材不足が起こる可能性が具体的に特定されたため、「グループを横断した人事体制の構築」と「成長分野、新規PJへの人材の供与」にも合わせて取り組みを開始しています。

また、既存の事業においては競争環境が激しくなることが想定され、「業務の生産性向上」が喫緊の課題です。人事制度においても生産性向上のモチベーションを後押しする施策を導入して参ります。

 b)労働市場/ESG投資の視点

一方、このような経営戦略の視点から見た人的資本に関する課題を解決し、サステナブルな企業成長に繋げていくためには、労働市場のニーズに合った人材体制を整えることも必要です。少子高齢化により労働力が減少した日本の労働市場から優秀な人材を確保し、当社グループの中で成長・活躍するための基盤整備は従業員エンゲージメント向上と多様性確保への取り組みであると捉えており、これらの課題に積極的に取り組むことで、投資市場からも昨今において注目度が高い企業成長を支える優秀な人的資本の安定的な確保を実現します。

2023年度に実施したエンゲージメント調査では全従業員の94.7%が設問に回答し、回答結果からエンゲージメントに関わる課題を明らかにしました。今後は、その結果を踏まえて「エンゲージメント向上」への対策を継続的に進めて参ります。また、当社グループのマテリアリティにも掲げている多様性への取り組みも、昨今の労働市場の強いニーズの一つである事は充分に認識しているところであり、「価値観の多様性に対応し公平性を確保する」取り組みを実施しています。

 c)インフラ/効果測定

最近ではDXの発展に伴い人事関連業務においても、タレントマネジメントシステムなどを利用したデータ活用が盛んになっています。当社においては既にタレントマネジメントシステムを導入済みですが、2024年度から導入した管理職ジョブ型人事制度とのシナジーを追求し、各管理職ポストに必要なスキルや経験を見える化し、個々人が保有するスキルとマッチングさせることで、経営戦略実現に重要な管理職ポストに対する戦略的な人材配置と、適正な後継者計画を策定していきます。このような「人事関連データの見える化と活用」により科学的で戦略的な人材配置を実現するとともに、各戦略がしっかりと進捗していることを示す「KPI設定」を行う事で着実に人的資本経営を展開します。

 

■8つの戦略軸

当社グループの人材戦略においては、事業ポートフォリオ転換を可能にする高いパフォーマンスを発揮できる人材を採用、育成するとともに、一方で成長事業を支える伝統事業の労働生産性をしっかりと向上させ、確実にキャッシュを生み出すことを狙っています。また、変化し続ける経営環境や進化するグループ経営に対応するために、多才なタレントが活躍できるような多様性を重んじる制度、風土を形成することや、グループ全体を見渡した人的資本経営の実現を図る事も今回の人材戦略がターゲットとする重要な分野となります。「人材戦略の取り組み」の項で記載したそれぞれの内容は人材戦略において8つの戦略軸として定義されており、この戦略軸に従って各施策を遂行していきます。

 

③ リスク管理

人的資本に関するリスクは、その特定プロセスを「サステナビリティに関する考え方及び取組」内の「(1)サステナビリティに関する考え方 ③ リスク管理」に記載するとともに、「3 事業等のリスク」にも内容を記載していますが、人材戦略を作成する過程においても改めて抽出を行いました。

人的資本に関わるリスクについては、人材戦略を作成する過程において調査を行い、経営戦略を実現するために発生する可能性があるリスクを概念的に抽出しました。また、2023年度に行われた人材計画の策定において、人材ポートフォリオのあるべき姿と現状のギャップを定量的に評価しております。

当社グループにおけるリスクを概括的に記載すると、少子高齢化による労働力人口の減少や人材の流動化が進む中で、採用競争力が低下して計画通りの人材獲得が進まなくなること、社員の離職により組織の総合力が低下し、成長事業に必要な人材の投入が進まず事業ポートフォリオ転換が阻害されることが最大のリスクと考えています。

当社グループが認識するリスクについては、人材戦略の中に網羅的に摂取されており取締役会などで関連するKPIと合わせて取り組み状況の進捗を報告することにより適切に管理して参ります。

 

④ 指標及び目標

 当社は人材戦略の戦略軸に応じてKPIを設定し、主要な施策について目標を明確にするとともに、その目標に対する進捗状況を管理しています。

 

[指標・目標・実績]

戦略軸

指標

目標

2023年度の実績

目標年度

業務の生産性向上

生産性向上を支援するインセンティブ支払額(注)1、3

成長分野、新規PJへの人材の供与

人材計画に対する人員補充の充足率

毎年度

100±10%

-(注)4

管理職重要ポスト後継者候補充足率

毎年度

100

-(注)4

会社の成長を推進する人材の採用と創出

NBL研修受講者人数
(注)1、5

2030

累積100

累積67

グローバル人材育成研修(注)1

2025

毎年15

16

価値観の多様性に対応し公平性を確保する

学卒以上の女性採用比率(注)2

毎年度

20

30.1

管理職以上の女性比率

2030

15

8.2

障がい者雇用の推進
(注)1、6

毎年度

法定雇用率(2.3)達成

2.29

エンゲージメントの向上

従業員エンゲージメント(注)1

毎年度

継続改善

従業員エンゲージメントの可視化

男性育児休業取得率(注)2

2030

100

47.3

年次有給休暇取得率(注)2

毎年度

75

76.5

健康優良法人認定
(注)1、7

毎年度

ホワイト500継続取得

取得

 

(注)1 単体

(注)2 単体及び国内連結子会社

(注)3 インセンティブ制度を2024年度中に設計予定

(注)4 2024年度から測定を開始する指標のため、実績値を記載しておりません。

(注)5 「NBL研修」:「Next Business Leader研修」

将来の会社の発展を担う経営人材や事業ポートフォリオ転換に必要なハイパフォーマーを育成する研修

制度

(注)6 障がい者の雇用については、法定雇用率の充足を目指し、バリアフリー化など職場環境の整備に努めて

     います。加えて、2021年10月には障がい者雇用施設「ゆうゆうてらす」を開設し、2021年12月には、障

     がい者の自立支援と地域社会への貢献に向けた農業法人「株式会社トクヤマゆうゆうファーム」を設立

     するなど、新しい取り組みも始めています。

(注)7 当社グループは、従業員とその家族の心と体の健康づくりと働きやすい職場づくりを目指しています。

     この考えに基づき、当社は2020年10月1日に「健康経営宣言」を表明し、その後2021年度から2023年度

     まで健康経営優良法人ホワイト500に3年連続で認定されているとともに、経済産業省と東京証券取引所

     が共同で選定する「健康経営銘柄」に2年連続で選定されました。また、健康経営の推進をグループ全

     体に浸透すべく、2024年3月に「トクヤマグループ健康経営基本方針」を制定し、グループ会社への周

     知を図っています。

 

 

■その他の取り組み

 a)ワークライフバランス支援

当社グループでは、ライフスタイルに応じた柔軟な働き方の実現を目指しています。例えば、当社ではフレックスタイム勤務や在宅勤務を導入しています。仕事と育児の両立支援制度では、短時間勤務、フレックスタイムの弾力運用、有給育児休暇、育児休業など、法定を超えた制度や当社独自の制度を整備しています。介護休業についても法定を超えた日数の取得が可能な制度となっています。また、育児・介護等によりやむなく退職した社員の復職を受け入れる退職者復職登録制度も整えています。

 b)DXの推進

当社グループはDX推進を、事業ポートフォリオの転換という大きな変革の実現に向けたグループ全体で取り組む重要施策と位置づけ、トクヤマDXとして取り組んでいます。DX推進で得られたキャッシュや人材余力などの経営資源は今後、成長事業と定義した3つの領域に投入し、企業価値の向上を図っていきます。

2023年度は、2022年度に策定したDX教育計画に従い、全社員を対象としたリテラシー教育を開始し、1,400名が受講しました。また、役割ごとのスキル向上研修を段階的に進めていきます。

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項を以下に記載します。ただし、以下に記載した事項が当社グループに関する全てのリスクを網羅したものではなく、記載事項以外にも投資家の判断に影響を及ぼす可能性のあるリスクが存在するものと考えられます。リスク選出のプロセスは、前項の「サステナビリティに関する考え方及び取組」内の「(1)サステナビリティに関する考え方 ③ リスク管理」をご参照ください。
なお、記載している事項は、有価証券報告書提出日現在において判断したものです。

 

リスクの項目

リスクの内容

リスクに対する対応策

自然災害

地震、津波、天変地異、異常気象(台風、高潮、豪雨、他)による生産設備や調達・製品販売に係る物流への影響を完全に予防又は軽減できる保証はありません。また、生産量の著しい低下や、最悪の場合には長期間生産停止を余儀なくされる場合もあり、当社グループの業績及び財務内容に大きな影響を与える可能性が存在します。

 

事業継続マネジメントを構築し、大規模地震を想定したBCP訓練や安否確認訓練を実施しています。合わせて、地域・行政と一体となった訓練を実施して、課題発見と対応力の強化を図っています。

事故・故障

生産設備における火災・爆発・漏洩、設備・機械の損傷・故障の発生や、船舶・鉄道事故等による原燃料調達の遅延により、生産活動に重大な支障を生じた場合、当社グループの業績及び財務内容に大きな影響を与える可能性が存在します。また、負傷者等人的被害、環境・近隣地域への影響が生じる可能性があります。

 

生産活動の中断による悪影響を最小限に抑えるために、日常的及び定期的な設備保全を実施しています。加えて、災害対策に関する規程を策定し、グループ会社と一体となって防災に取り組んでいます。
 

感染症パンデミック

当社グループにおいては、新型コロナウイルス等の重大な感染症が拡大した場合、業務の一部又は全部が停止する事態が生じ、当社グループの業績及び財務内容に大きな影響を与える可能性が存在します。

従業員・顧客等の安全を確保し、当社の事業活動への影響を最小限に抑えるため、感染症危機管理基準に則り、感染症危機対策本部(本部長:社長)を設置し情報共有と対策を検討します。なお、感染症は、感染力・毒性の強弱により影響度・リスク度が変化するため、危機レベルに応じた適切な対応を実施していきます。

 

カントリーリスク

当社グループの製品は、日本、米国、アジア、欧州等に販売されており、各国の経済状況及び市場・業界の構造変化が、当社グループの製品販売に大きな影響を与える可能性があります。加えて、テロ・戦争その他要因による社会的混乱やその長期化等のリスクが発生した場合は、当社グループの業績及び財務内容に大きな影響を与える可能性が存在します。

 

当社グループは経済環境の変動に強く、持続的に成長する強靭な事業体質に転換すべく、生産性の向上や高品質を目指しながら、コスト削減を推進しています。加えて、顧客動向、当該国・エリアにおける政治的・社会的状況、事業環境を常に注視して適切な対応を取っていきます。

 

 

 

 

リスクの項目

リスクの内容

リスクに対する対応策

情報セキュリティリスク

サイバー攻撃やシステム設備・機器の故障等により、当社グループが利用するシステムで障害が発生した場合、生産、販売、研究開発、調達、会計等、ITに依存するビジネスプロセスが停止し、当社グループの事業継続に重大な影響が生じる可能性が存在します。また、研究開発等を通じて得た新技術やノウハウ、情報等が、外部に漏洩した場合、社会的信頼の失墜を招くとともに、研究開発等に投下したコストが回収できない可能性があり、当社グループの業績及び財務内容に大きな影響を与える可能性が存在します。

当社では、基幹システムのサーバーをセキュリティの高いデータセンターに設置し、運用しています。加えて、定期的にデータのバックアップを取得し、万が一の時のリスク分散を行っています。また、グループ内で推進体制整備、教育等を実施し、機密情報や個人情報の管理の徹底を図り、情報セキュリティの保護強化に努めています。さらに、サイバー攻撃による電子データの漏えいやITシステムの停止等の不具合が生じるリスクの低減に向け、サイバーセキュリティに係る専担組織を中心に、サイバー攻撃の早期検知・早期対処、IT導入・改変時のリスクアセスメント、従事者教育など、平時・有事のサイバーセキュリティ管理体制の強化に取り組んでいます。
 

脱炭素社会への対応リスク

当社グループは、石炭火力発電所を有し、資源・エネルギーを大量に使用して様々な事業を営んでいます。今後環境に関する規制の強化や環境保護の新たな社会的責任を要求される事態が発生する場合、また、カーボンプライス等が導入された場合、これに対応する設備・研究開発への投資や既存事業の再評価を行うことにより当社グループの業績及び財務内容に大きな影響を与える可能性が存在します。また、ESGなどの非財務情報に係る風評等が当社グループの資金調達に大きな影響を及ぼす可能性が存在します。

中期経営計画2025において「地球温暖化防止への貢献」を重点課題の一つとし、「2050年度カーボンニュートラル達成」を目標としました。その達成のために原燃料の脱炭素化、環境貢献製品の開発・実装及び水素やアンモニア等の次世代エネルギーの技術開発の加速、事業化を目指します。また、徳山製造所内のプロセス改善に取り組むとともに、国内外のバイオマス燃料の開発・利活用を推進し、GHG排出量(Scope1、2)は2030年度に2019年度比30%削減の実現を目指します。加えて、サステナビリティ委員会内に当リスク対応のタスクフォースを立上げ、世界情勢・動向をウォッチし、経営への提言を行っています。

 

市場リスク

市場ニーズの変化、マーケティングの失敗・不足、新規競合の出現、開発の失敗・陳腐化、急速な技術革新への対応遅れ、海外展開の遅れ等により当社グループの製品の競争力が失われた場合、当社グループの業績及び財務内容に大きな影響を与える可能性が存在します。

 

当社グループの製品に係る市場調査は継続的に実施するとともに、顧客との情報交換及び関係強化を図り、市場変動のリスクに対応できる事業計画の立案と精査を進めていきます。

人的資源に対するリスク

日本国内においては少子高齢化が進み労働力人口が減少すると見込まれることから、将来的に生産活動に必要な人材の確保が困難になる可能性が存在します。その場合、当社グループの業績及び財務内容に大きな影響を与える可能性が存在します。加えて、先端材料の研究開発に係る人材、DXやサイバーセキュリティ対策を推進する人材の確保が困難になる可能性があり、その場合、当社の考える成長戦略を達成することが困難となり、当社グループの業績に大きな影響を与える可能性が存在します。

 

計画的な定期採用に加え、高度専門職を確保する仕組みとしてジョブ型雇用制度なども導入し、積極的な経験者採用を実施しています。また、DXを推進して省人化・省力化を進め、得られた人員余力を事業ポートフォリオ転換の要員として仕向けてまいります。さらに、仕事と育児の両立支援制度をはじめとするワークライフバランスの支援制度を充実させ、働きやすさと働きがいを追求し、必要な人材の確保に努めていきます。

 

 

リスクの項目

リスクの内容

リスクに対する対応策

財務リスク

当社グループは、金融機関からの借入や社債発行により事業運営に必要な資金を調達しています。金融環境の変化や外部格付の状況により、借入や社債発行が適時に適切な期間で実施できない場合、当社グループの資金調達に大きな影響を及ぼす可能性が存在します。また、金利等の市場環境の変化により、資金調達コストが増加し、当社グループの業績及び財務内容に大きな影響を与える可能性が存在します。加えて、当社グループは、外貨建ての製品輸出及び原燃料等の輸入を行っており、為替相場の変動が当社グループの業績及び財務内容に大きな影響を与える可能性が存在します。また、連結財務諸表の作成において海外連結子会社の財務諸表の円換算額に影響を及ぼす可能性が存在します。

 

金利等の市場環境の変化に備え、原則、固定金利での契約もしくは金利スワップによる固定化等のヘッジ取引によりリスクを軽減する措置を講じています。また、不測の事態に備えて流動性資金確保のためコミットメントラインの設定を必要に応じて実施するとともに、ESGの観点に配慮したサステナブルな事業運営に努めています。為替変動に対しては外貨建て資産と負債の均衡化による為替エクスポージャー管理や為替予約等のヘッジ取引によりリスクを軽減する措置を講じています。
 

製造上のリスク

当社の生産設備は導入後、相当期間が経過したものも多く、設備の老朽化により長期間にわたり生産設備が停止した場合、当社グループの業績及び財務内容に大きな影響を与える可能性が存在します。

 

日常的なメンテナンスに加えて、定期的なメンテナンスを行い、生産設備が安全・安定稼働出来るよう努めています。

事業リスク

当社グループは、生産に必要な原燃料を全世界から調達しており、一部の製品においては調達先が限られる特殊な原料、資材等を使用しています。市況の高騰や資源ナショナリズム等による原燃料等の供給の逼迫、納期の遅延等が発生する場合、当社グループの生産活動に大きな支障をきたす可能性が存在し、また、製造コストが急激に上昇する場合、当社グループの業績及び財務内容に大きな影響を与える可能性が存在します。加えて、当社グループが展開する各事業においては、競合他社が全世界に存在します。安価な競合品が市場に流入したり、あるいは予期せぬ事情により競合他社との間で価格競争が発生し、その期間が長期化した場合、当社グループの収益性を低下させ、当社グループの業績及び財務内容に大きな影響を与える可能性が存在します。
 

当社グループは、顧客に対して安定的かつ継続的に製品供給を果たすため、品質、価格等の競争優位性の維持が重要と考えています。このため、原燃料の調達においては、中長期契約及びスポット市場での購入等を組み合わせて、長期的、安定的、かつ安価な調達を可能にするよう取り組んでいます。併せて、複数調達先の確保や、代替原料・資材調達の検討を進めています。

重大な製品・品質リスク

想定外の事情により、当社製品の無償回収等に発展する品質問題や製品の安全性に関連する製造物責任(PL)問題が発生した場合、また、輸出時の化学品安全性管理上の不備があった場合、当社グループの業績及び財務内容に大きな影響を与える可能性があります。

 

製品特性に応じた適正な品質を確保できるよう、品質管理の強化・化学品管理・製品安全の強化に全力をあげて取り組んでいます。また、製造物責任賠償保険に加入し、万一の事故に備えています。

 

 

リスクの項目

リスクの内容

リスクに対する対応策

重大な環境リスク

当社グループは、原料調達から製品の製造、流通、販売、廃棄、リサイクルの各過程において、環境事故や取り扱いの不備による有害汚染物質流出、土壌地下水汚染、地域住民からの騒音・臭気等クレーム、廃棄物の不法投棄・違法処理といった環境や生物多様性に対して負の影響を与えるリスクを有しています。
また、水源の枯渇といった水リスクの発生により、生産量の減少など操業に影響を及ぼす可能性があります。それら、重大な環境事故や事象等が発生した場合は、当社グループの業績及び財務内容に大きな影響を与える可能性があります。

 

環境事故や汚染の防止のため、法規制に則った管理に加え、自主規制値による管理、定期的なモニタリング、機器校正などを行っています。また、水資源の維持のため新たに淡水使用量の目標を設定、水使用量及び水質の管理、生物多様性を守るための活動を行うなど環境保全に全力をあげて取り組んでいます。サプライチェーンに対しても、社会的責任を果たし持続可能な調達を実現するためにCSR調達ガイドラインを制定・公表するとともにサプライヤーとのエンゲージメントに取り組んでいます。

ビジネスと人権

当社グループは、事業活動を通じて様々なステークホルダーの人権に負の影響を引き起こし又は助長する可能性があること、当社グループの事業・製品・サービスが人権への負の影響と直接関連する可能性があることを認識しています。当社グループでは、生産に必要不可欠な原燃料を全世界から調達しており、生産した製品は世界各国に販売しています。これらのサプライチェーンにおいて、人権侵害に直接あるいは間接的に関係があるとみなされた場合、取引停止、不買運動、事業縮小・撤退、企業価値毀損につながる恐れがあります。その場合、当社グループの業績及び財務内容に大きな影響を与える可能性があります。

当社グループは、人権尊重をあらゆる事業活動の基本に据え、企業としての人権尊重責任を果たすため、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に準拠した「トクヤマグループ人権方針」を2022年12月1日に制定し、全従業員にて遵守しています。人権対応等の組織横断的な取り組みについては、サステナビリティ委員会が中心となって推進しています。特に、人権に負の影響が発生しやすいとされるサプライチェーンにおいては、CSR調達に関するガイドラインを制定・公表し、取引先への遵守を求めるとともに、セルフアセスメントシートを用いたエンゲージメントを行うなど、人権デュー・ディリジェンスの取り組みを進めています。
 

法務・コンプライアンス上のリスク

当社グループは、国内及び海外事業に関して、法的な紛争・訴訟の対象となる可能性が存在します。また、大規模な訴訟等が提起された場合、当社グループの業績及び財務内容に大きな影響を与える可能性が存在します。また、当社グループの従業員、役員にコンプライアンス上の違反が判明した場合、当社グループの社会的信用やブランドイメージの低下、課徴金の支払い等により、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。

 

特許紛争・契約紛争・訴訟等に対しては、法務グループや知的財産部を中心に日常的な予防措置を講じています。加えて、コンプライアンスリスクを低減するため、新任のグループ会社取締役及び監査役に対する法的責務研修を実施しているほか、従業員を対象にした独占禁止法、下請法他の各種コンプライアンス研修を実施しています。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績に関する分析

① 当期の業績全般に関する概況

当期の世界経済は、ウクライナ情勢や中東紛争による地政学リスクが高まる中、欧米における金融引き締めや中国不動産不況による急速な景気鈍化が懸念されましたが、米国や新興国の経済の底堅さに支えられ、緩やかな減速傾向に留まりました。

日本経済においては、インバウンド需要の回復や、企業の設備投資及び賃上げ努力によりデフレ脱却に向けた動きが期待されたものの、個人消費を十分喚起するには至りませんでした。

このような経済環境のもと、当社は中期経営計画2025の重点課題である「事業ポートフォリオの転換」 「地球温暖化防止への貢献」「CSR経営の推進」に取り組んでまいりました。

業績につきましては、半導体市場の低迷により、半導体関連製品の販売が低調に推移したことや、株式会社エクセルシャノンの株式の一部譲渡に伴う連結除外等により売上高は減少しましたが、セメント、化学品の国内販売価格修正や製造コストの改善が進んだこと等により、増益となりました。

 

(単位:百万円)

 

売上高

営業利益

経常利益

親会社株主に帰属する
当期純利益

2024年3月

341,990

25,637

26,292

17,751

2023年3月

351,790

14,336

14,783

9,364

増減率

△2.8%

78.8%

77.9%

89.6%

 

 

(売上高)

セメントの国内販売価格修正や、ヘルスケア関連製品の販売が堅調だったものの、半導体市場の低迷により、半導体関連製品の販売が低調に推移したことや、株式会社エクセルシャノンを第2四半期連結会計期間より連結の範囲から除外したこと等により、前期より9,800百万円減少し、341,990百万円前期比2.8%減)となりました。

 

(売上原価)

販売数量の減少や原燃料価格の下落等により、前期より18,539百万円減少し、242,470百万円前期比7.1%減)となりました。

 

(販売費及び一般管理費)

販売数量が低調に推移したことに伴う物流費の減少等により、前期より2,561百万円減少し、73,882百万円前期比3.4%減)となりました。

 

(営業利益)

半導体市場の低迷により半導体関連製品の販売が低調に推移したものの、セメントや化学品の国内販売価格の修正や、製造コストの改善が進んだこと等により、前期より11,300百万円増加し、25,637百万円前期比78.8%増)となりました。

 

(営業外損益・経常利益)

営業外損益は、持分法による投資利益の減少等はあったものの、前期の為替差損が当期は為替差益に転じたこと等により、前期より208百万円改善しました。

以上の結果、経常利益は前期より11,509百万円増加し、26,292百万円前期比77.9%増)となりました。

 

(特別損益・税金等調整前当期純利益・当期純利益・親会社株主に帰属する当期純利益)

特別損益は、前期より77百万円悪化しました。

以上の結果、税金等調整前当期純利益は、前期より11,431百万円増加し、25,856百万円前期比79.2%増)となりました。

応分の税金費用を加味した当期純利益は、前期より8,048百万円増加し、17,411百万円前期比86.0%増)となりました。

親会社株主に帰属する当期純利益は、前期より8,387百万円増加し、17,751百万円前期比89.6%増)となりました。

 

② 当期のセグメント別の状況

(セグメント別の状況)

当連結会計年度より、報告セグメントの名称を見直し、「電子材料」から「電子先端材料」に変更しております。この変更はセグメント名称の変更のみであり、セグメント情報に与える影響はありません。

以下の前期比較については、当該名称変更を反映しております。

 

売上高

(単位:百万円)

 

報告セグメント

その他

合計

調整額

連結損益
計算書
計上額

 

化成品

セメント

電子先端

材料

ライフ

サイエンス

環境事業

2024年3月

115,594

67,187

77,969

41,424

7,392

43,653

353,222

△11,231

341,990

2023年3月

116,263

58,511

91,589

37,567

13,842

47,331

365,105

△13,314

351,790

増減率

△0.6%

14.8%

△14.9%

10.3%

△46.6%

△7.8%

△3.3%

△2.8%

 

 

営業利益又は営業損失(△)     

(単位:百万円)

 

報告セグメント

その他

合計

調整額

連結損益
計算書
計上額

 

化成品

セメント

電子先端

材料

ライフ

サイエンス

環境事業

2024年3月

11,530

6,710

3,341

8,476

△102

1,476

31,432

△5,795

25,637

2023年3月

6,887

△3,718

7,011

7,377

46

2,036

19,640

△5,303

14,336

増減率

67.4%

-%

△52.3%

14.9%

-%

△27.5%

60.0%

78.8%

 

(注) 各セグメントの売上高、営業利益又は営業損失(△)にはセグメント間取引を含めております。

 

(化成品セグメント)

苛性ソーダは、販売数量は減少したものの、国内の販売価格修正を進めたことにより、増益となりました。

塩化ビニルモノマー及び塩化ビニル樹脂は、塩化ビニルモノマーの海外市況が下落したことや塩化ビニル樹脂の販売数量の減少等により、減益となりました。

ソーダ灰・塩化カルシウム等は、販売数量は減少したものの、販売価格修正を進めたことにより、増益となりました。

以上の結果、当セグメントの売上高は115,594百万円前期比0.6%減)、営業利益は11,530百万円前期比67.4%増)で減収増益となりました。

 

(セメントセグメント)

セメントは、国内出荷は前期比で微減となったものの、販売価格是正を進めたことにより、損益が改善しました。

以上の結果、当セグメントの売上高は67,187百万円前期比14.8%増)、営業利益は6,710百万円(前期は営業損失3,718百万円)となりました。

 

(電子先端材料セグメント)

半導体向けの多結晶シリコンは、半導体市場の低迷により販売数量が減少し、減益となりました。

ICケミカルは、台塑德山精密化學股份有限公司の稼働率向上やコスト削減等により収益が改善しました。

乾式シリカは、半導体市場や中国景気の低迷により販売数量が減少し、減益となりました。

放熱材は、パワーデバイス用途の販売が堅調だったこと等により、増益となりました。

以上の結果、当セグメントの売上高は77,969百万円前期比14.9%減)、営業利益は3,341百万円前期比52.3%減)で減収減益となりました。

 

(ライフサイエンスセグメント)

歯科器材は、国内外の販売が堅調だったことにより、増益となりました。

医療診断システムは、臨床検査情報システム、検体検査自動化システム、及び電解質分析装置の販売が増加し、増益となりました。

以上の結果、当セグメントの売上高は41,424百万円前期比10.3%増)、営業利益は8,476百万円前期比14.9%増)で増収増益となりました。

 

(環境事業セグメント)

イオン交換膜は、出荷が減少したことにより、減益となりました。

廃石膏ボードリサイクルは、廃石膏ボード収集量の減少等により、減益となりました。

樹脂サッシの製造・加工・販売を行う株式会社エクセルシャノンの株式の一部を譲渡したことに伴い、第2四半期連結会計期間より、同社を連結の範囲から除外しました。

以上の結果、当セグメントの売上高は7,392百万円前期比46.6%減)、営業損失は102百万円(前期は営業利益46百万円)となりました。

 

③ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

 

セグメントの名称

当連結会計年度
(自 2023年4月1日
 至 2024年3月31日)

前期比(%)

化成品(百万円)

122,066

0.4

セメント(百万円)

65,911

14.2

電子先端材料(百万円)

85,984

△6.9

ライフサイエンス(百万円)

37,689

8.2

環境事業(百万円)

6,810

△47.2

報告セグメント計(百万円)

318,462

△0.3

その他(百万円)

14,837

△11.9

合計(百万円)

333,300

△0.9

 

(注)1 金額は、販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。

   2 当連結会計年度より、報告セグメントの名称を見直し、「電子材料」から「電子先端材料」に変更しており

     ます。この変更はセグメント名称の変更のみであり、セグメント情報に与える影響はありません。

 

b.受注実績

環境事業セグメントの一部を除いて受注生産を行っておりません。

 

c.販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

 

セグメントの名称

当連結会計年度
(自 2023年4月1日
 至 2024年3月31日)

前期比(%)

化成品(百万円)

115,401

△0.4

セメント(百万円)

66,308

14.7

電子先端材料(百万円)

77,316

△14.9

ライフサイエンス(百万円)

41,404

10.3

環境事業(百万円)

7,024

△48.3

報告セグメント計(百万円)

307,455

△2.6

その他(百万円)

34,534

△4.4

合計(百万円)

341,990

△2.8

 

(注)1 セグメント間の取引については、相殺消去しております。

   2 当連結会計年度より、報告セグメントの名称を見直し、「電子材料」から「電子先端材料」に変更しており

     ます。この変更はセグメント名称の変更のみであり、セグメント情報に与える影響はありません。

 

(2)財政状態に関する分析

① 当期の資産、負債及び純資産の状況に関する分析

 

連結貸借対照表の要約

 

 

 

(単位:百万円)

 

2023年3月期末

2024年3月期末

増減

増減率

資産

478,342

457,360

△20,982

△4.4%

負債

236,739

197,411

△39,328

△16.6%

(内、有利子負債)

(142,447)

(105,784)

(△36,662)

(△25.7%)

純資産

241,602

259,948

18,346

7.6%

(内、自己資本)

(229,450)

(249,256)

(19,806)

(8.6%)

 

 

財務関連指標の増減

 

2023年3月期末

2024年3月期末

増減

D/Eレシオ

0.62倍

0.42倍

△0.20

ネットD/Eレシオ

0.32倍

0.23倍

△0.09

自己資本比率

48.0%

54.5%

6.5ポイント

時価ベースの自己資本比率

31.7%

42.7%

11.0ポイント

 

(注) D/Eレシオ        :有利子負債/自己資本

ネットD/Eレシオ     :(有利子負債-現金及び現金同等物)/自己資本

自己資本比率       :自己資本/資産合計

時価ベースの自己資本比率 :株式時価総額/資産合計

 

(資産)

有形固定資産が13,419百万円増加した一方、現金及び預金が19,396百万円、原材料及び貯蔵品が12,371百万円減少しました。

以上の結果、資産は前連結会計年度末に比べ20,982百万円減少し、457,360百万円となりました。

 

(負債)

コマーシャル・ペーパーが15,000百万円増加した一方、長期借入金及び1年内返済予定の長期借入金が54,252百万円減少しました。

以上の結果、負債は前連結会計年度末に比べ39,328百万円減少し、197,411百万円となりました。

 

(純資産)

親会社株主に帰属する当期純利益の積み上げ等により利益剰余金が12,566百万円、その他有価証券評価差額金が5,168百万円増加しました。

以上の結果、純資産は前連結会計年度末に比べ18,346百万円増加し、259,948百万円となりました。

 

(財務指標)

当連結会計年度におきましては、有利子負債が36,662百万円減少した一方で、自己資本が19,806百万円増加したことにより、D/Eレシオは前連結会計年度末に比べ0.20改善し、0.42倍となりました。

 

② 当期のキャッシュ・フローの状況に関する分析

 

連結キャッシュ・フロー計算書の要約

 

(単位:百万円)

 

2023年3月

2024年3月

営業活動によるキャッシュ・フロー

△11,800

55,828

投資活動によるキャッシュ・フロー

△33,757

△30,405

財務活動によるキャッシュ・フロー

30,151

△46,508

現金及び現金同等物に係る換算差額

445

1,461

現金及び現金同等物の増減額

△14,961

△19,623

連結子会社の決算期変更に伴う現金及び現金同等物の増減額

△27

連結の範囲の変更に伴う現金及び現金同等物の増減額

21

0

現金及び現金同等物の期末残高

67,556

47,905

 

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

税金等調整前当期純利益が25,856百万円、減価償却費17,690百万円、棚卸資産の減少額8,834百万円、売上債権の減少額3,705百万円などの資金増加要因により営業活動の結果得られた資金は、55,828百万円(前期は11,800百万円の使用)となりました。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

有形固定資産の取得による支出31,591百万円などにより、投資活動の結果使用した資金は、30,405百万円(前期比3,352百万円の減少)となりました。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

コマーシャル・ペーパーの増加額15,000百万円、長期借入れによる収入6,582百万円などの資金増加要因に対し、長期借入金の返済による支出61,396百万円、配当金の支払額5,038百万円などの資金減少要因により、財務活動の結果使用した資金は、46,508百万円(前期は30,151百万円の獲得)となりました。

 

(3)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。

 

① 中期経営計画2025に関する認識及び分析

(経営目標の状況)

当社グループでは2021年度を初年度とする5年間の中期経営計画2025を策定し取り組んでおります。当社が経営上の目標として掲げる指標については「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)中期経営計画2025 達成目標」に記載のとおりです。

 

(重点施策の状況)

中期経営計画2025では、重点施策として、「事業ポートフォリオの転換」、「地球温暖化防止への貢献」、「CSR経営の推進」の3つを掲げており、それぞれについての取り組み状況については「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)対処すべき課題とその対応」に記載のとおりです。

 

 

② 経営成績等の分析・経営目標の進捗状況

(経営成績等の分析)

経営成績の分析については「(1)経営成績に関する分析 ① 当期の業績全般に関する概況」に記載のとおりです。

財政状態の分析については「(2)財政状態に関する分析 ① 当期の資産、負債及び純資産の状況に関する分析」に記載のとおりです。

 

(中期経営計画2025(2021年度~2025年度)の目標達成状況)

当連結会計年度については、成長事業の売上高成長率(CAGR)は、電子先端材料セグメントにおける半導体不況に伴う販売数量減少、及び環境事業セグメントにおける樹脂サッシ事業譲渡に伴う売上減少により8.5%に留まり、目標の10%を下回りました。一方、ROEは7.4%となり、前期の水準を上回りました。

 

(セグメントごとの経営成績分析)

セグメントごとの内容は、「(1)経営成績に関する分析 ② 当期のセグメント別の状況」に記載のとおりです。

 

③ キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容ならびに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

(キャッシュ・フローの状況の分析)

キャッシュ・フローの状況の分析については「(2)財政状態に関する分析 ② 当期のキャッシュ・フローの状況に関する分析」に記載のとおりです。

 

(資本の財源の分析)

当社グループでは、事業活動のための適切な運転資金の確保、及び事業ポートフォリオの転換を目的とした成長分野への重点投資、地球温暖化防止への貢献を目的とした合理化・省エネ・CO対策投資等の設備投資、戦略的投資を推進するために一定の資金を必要としています。主な資金手当ての手段としましては、継続的な事業収益の計上による自己資金の積み上げの他、金融機関からの借入、社債の発行等となります。なお、次期の設備投資予定額は32,390百万円であり、主に自己資金、金融機関からの借入金及び社債の発行で充当する予定です。

 

(資金の流動性の分析)

当社グループの当連結会計年度末の現金及び現金同等物は47,905百万円となっており、当社グループの事業活動を推進していく上で充分な流動性を確保していると考えています。また、金融機関との間にリボルビング・クレジット・ファシリティ契約や当座貸越契約、債権流動化契約も締結しており、流動性に一部支障をきたす事象が発生した場合にも、一定の流動性を維持できると考えています。加えて、不測の事態に備え流動性資金の確保のため、コミットメントラインの設定も必要に応じて実施してまいります。

 

④ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

(完全子会社の吸収合併)

 当社は、2023年9月21日開催の取締役会において、2024年4月1日を合併効力発生日として当社の完全子会社である新第一塩ビ株式会社(以下、「新第一塩ビ」)を吸収合併することを決議しました。

 

(1)吸収合併の目的

新第一塩ビは当社製品を原料として塩化ビニル樹脂の製造及び販売を行っておりました。このたび、組織運営の効率化を目的として吸収合併することといたしました。

 

(2)合併の日程

合併契約取締役会決議日

2023年9月21日

合併契約締結日

2023年9月21日

合併効力発生日

2024年4月1日

 

 

(3)合併方式

当社を吸収合併存続会社とする吸収合併方式で、新第一塩ビは2024年4月1日付で解散いたしました。

 

(4)合併に係る割当の内容

新第一塩ビは当社完全子会社であるため、本吸収合併による新株の発行及び合併交付金の支払いはありません。

 

(5)合併に係る割当の内容の算定根拠

本吸収合併に際して新株の発行及び合併交付金の支払いはないため、該当事項はありません。

 

(6)引継資産・負債の状況

当社は、合併効力発生日をもって新第一塩ビの資産・負債及びその他の権利義務の一切を継承いたしました。

 

(7)合併後の吸収合併存続会社の資本金・事業内容等

商号

株式会社トクヤマ

資本金

10,000百万円

事業内容

無機・有機工業薬品、セメント・建材、電子材料、ライフサイエンス、環境事業各種製品の製造・販売

 

 

 

 

6 【研究開発活動】

当社グループは「化学を礎に、環境と調和した幸せな未来を顧客と共に創造する」ことを基本とし、研究開発本部は、特有技術の深耕と新たな技術の獲得によってトクヤマの技術力を進化させ、「電子」「健康」「環境」事業領域において、新規事業を創出する事で、当社グループの事業ポートフォリオ転換に貢献することを存在意義として活動しています。

 

研究開発本部は、つくば研究所、徳山研究所、マーケティンググループ、分析・解析センター、知的財産部、プロセス開発グループ、研究開発企画グループ、品質保証課、DX推進課の9組織により構成され、各セグメントに所属する事業部門開発グループと協働して、事業部門・グループ会社の次世代テーマや既存事業関連テーマの技術開発を行っています。

 

つくば研究所、徳山研究所では主な開発テーマとして、先端半導体周辺材料、有機無機複合材料、ナノ粒子材料、医療材料、動物医療材料、フロー合成技術、水電解用アニオン交換膜材料の開発を進めました。

 

中期経営計画2025で掲げた事業ポートフォリオ転換の達成を目的として開設したつくば第二研究所においては、医療材料や診断試薬開発等の健康領域、カーボンニュートラル関連材料等の環境領域の研究開発機能の移転と整備を進めました。

 

德山台灣股份有限公司では、電子材料等の開発設備の拡充を行いました。台湾の工業技術研究院(Industrial Technology Research Institute)との共同研究の実施に加え、自社開発機能の強化により、台湾における新規製品の開発・上市を加速いたします。

 

マーケティンググループでは、中長期テーマの提案及びロードマップの策定などを進めました。

 

研究開発企画グループは、研究開発本部のアドミ業務に加え、化学系人材の採用・育成・人材配置機能及びM&A、合弁会社の設立等の他社との交渉の開発側の担当業務を行います。

 

知的財産部は、戦略的知財マネジメント能力により新規製品・事業の創出、マーケティング支援、及びグループ収益拡大に貢献すること、分析・解析センターは、分析・解析技術の高度化によって、グループ全体の事業遂行へ貢献することを目指しています。

 

プロセス開発グループは、研究開発テーマの初期段階から開発チームと並走し、製造プロセス開発や設備対応など多方面から将来の量産化を見据えたサポートを行います。

 

当連結会計年度における当社グループの研究開発費は14,454百万円(セグメント間の取引消去後)です。なお、研究開発費についてはその他セグメントに係わる研究開発費484百万円及び各セグメントに配分できない基礎研究費用等5,975百万円が含まれております。

 

セグメント別の研究開発の状況及び研究開発費は次のとおりです。

 

<化成品セグメント>

当社の強みである食塩電解水素については、環境価値向上や水素普及に向けた取り組みや活用モデルの検討を継続しています。また、2023年度には水素化マグネシウムを製造する為の水素化反応器を徳山製造所に導入し、量産を開始しました。水素化マグネシウムは、高密度の水素貯蔵が可能であり、常温・常圧下で化学的に安定を維持することから、次世代の安全な水素キャリアとして期待されています。エネルギー多消費型事業の厳しさが増していく中でも、省エネや水素を活用した新たなビジネスに積極的に挑戦し、開発を進めていきます。

当セグメントに係わる研究開発費は209百万円(セグメント間の取引消去後)です。

 

<セメントセグメント>

地球温暖化対策の一環として、COの回収・固定化に関する基礎検討を継続しました。またCO排出量の削減を目指し、通常のセメントよりCO排出量の少ない材料開発を開始しました。循環型社会の構築に向けて、廃棄物・副産物をセメント製造工程で活用するための技術開発を継続しています。特に今後増加が見込まれるバイオマス燃焼灰の有効活用技術の開発に注力しました。製品開発の分野では、セメントを基材とした各種製品の開発に注力しました。セメント系固化材は、各地域の特殊な土壌に対応するために既存製品の配合改良を行いました。建材製品は、断面修復材、道路床版の補修・補強材などコンクリート構造物の補修・補強分野に適用される製品の開発に注力しました。

当セグメントに係わる研究開発費は786百万円(セグメント間の取引消去後)です。

 

<電子先端材料セグメント>

シリカについては、既存シリカ製品の特性改良や新規用途開拓に加え、微細化が進む半導体技術に対応した表面処理技術の開発やシリカ製造技術を応用した新規酸化物粉末の開発を進めました。市場から認められた開発品について顧客への供給を随時開始しました。

放熱材については、パワー半導体や高度通信機器などの放熱性樹脂部材に用いられる窒化アルミニウムフィラーや窒化ホウ素フィラーの新規グレードの開発・特性改良と顧客評価を進めました。市場における放熱材料ニーズの多様化に対応するため各フィラーの粒子サイズや表面処理のラインナップを拡充しました。また、窒化アルミニウムフィラーの本格量産を開始致しました。

窒化ケイ素の粉末と白板については、先進技術事業化センター内に建設した量産試作設備を用いて量産技術の改良を進め、顧客へのサンプル評価を行いました。

顧客からの要請、及び今後のパワーデバイスの品質要求を見据え、現在は白板の高強度化に取り組んでいます。

電子工業用高純度薬品については、半導体デバイスの微細化・3次元プロセスに伴う高純度化ニーズに対応するため、高品質化の取り組みを強化しました。

当セグメントに係わる研究開発費は3,547百万円(セグメント間の取引消去後)です。

 

ライフサイエンスセグメント

プラスチックレンズ関連材料では次世代フォトクロミック材料の開発を進めました。医薬品原薬ではプロセス開発を進めました。医療分野、臨床検査分野では、臨床検査用の試薬・電極や情報システム、検体検査に係わる装置や検査自動化システムの総合的な製品開発を進めました。歯科医療分野では、充填用コンポジットレジン、歯科用接着材料、金属代替歯冠用レジンブロックなどの製品開発を進めました。ヘルスケア材料関連では化粧品用シリカエアロゲル、酪農用材料の開発を進めました。

当セグメントに係わる研究開発費は2,989百万円(セグメント間の取引消去後)です。

 

環境事業セグメント

環境負荷低減に寄与する技術として、石膏ボード及び太陽光パネルのリサイクル技術の開発に注力しました。石膏ボードについては、より効率的な処理技術の開発を継続しました。太陽光パネルについては、新エネルギー・産業技術総合開発機構 (NEDO)との共同開発を進め、低温熱分解リサイクル技術を用いて分離処理した太陽光パネルのカバーガラスのフロート板ガラスへのリサイクルに成功しました。

当セグメントに係わる研究開発費は462百万円(セグメント間の取引消去後)です。