第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

(1)会社の経営の基本方針

当社グループは、「わが社は、「食べる喜び」を基本のテーマとし、時代を画する文化を創造し、社会に貢献する。」「わが社は、従業員が真の幸せと生き甲斐を求める場として存在する。」という2つの企業理念を掲げております。「食べる喜び」とは、「食」を通してもたらされる「おいしさの感動」と「健康の喜び」を表しており、このことは人々の幸せな生活の原点であると考えます。「食べる喜び」をお届けすることで、人々の楽しく健やかな暮らしに貢献することが私たちの使命です。また当社グループは従業員全てが生涯を託すに足る企業グループを目指しています。自分自身のため、会社のため、社会のために全力を尽くすことが、全ての従業員に幸福をもたらすとともに、ニッポンハムグループの経営の基盤となります。

2021年4月に、企業理念を追求するうえでのマイルストーンとしてニッポンハムグループ「Vision2030」を策定しました。また、「Vision2030」の実現に向けて取り組むべき重要な社会課題を、ニッポンハムグループ「5つのマテリアリティ」として特定しました。企業理念に掲げている「食べる喜び」をお届けするために、当社グループは事業戦略とマテリアリティの実践を通したサステナビリティ戦略を両輪で進め、事業を通した社会課題の解決に努めていきます。

 

(2)目標とする経営指標

当社グループは、2024年4月1日から2027年3月31日の3年間を「中期経営計画2026」とし、事業計画を策定しました。「中期経営計画2026」最終年度となる2027年3月期において、売上高1兆3,800億円、事業利益610億円、事業利益率4.4%、ROE7.0~8.0%、ROIC5.0~6.0%を経営目標とし、達成を目指してまいります。また、「中期経営計画2026」の初年度にあたる次期の業績目標につきましては、連結売上高1兆3,400億円、事業利益480億円、事業利益率3.6%、ROE5.2%、ROIC4.4%の目標を掲げております。

 

(注) 1 事業利益は、売上高から売上原価、販売費及び一般管理費を控除し、当社グループが定める為替差損益を加味するとともにIFRSへの調整及び非経常項目を除外して算出しております。

     2 「中期経営計画2026」並びにその見直し・修正計画等(以下、「当中期経営計画」)は、現時点で入手可能な情報や、合理的と判断した一定の前提に基づいて策定した計画・目標であり、潜在的なリスクや不確実性等を含んでいることから、その達成や将来の業績を保証するものではありません。また実際の業績等も当中期経営計画とは大きく異なる結果となる可能性がありますので、当中期経営計画のみに依拠して投資判断を下すことはお控え下さい。なお、将来における情報・事象及びそれらに起因する結果にかかわらず、当社グループは当中期経営計画を見直すとは限らず、またその義務を負うものではありません。

 

(3)中長期的な会社の経営戦略及び会社の対処すべき課題

当社グループは企業理念である「食べる喜び」をお届けし続けるために、2030年のありたい姿として定めた「Vision2030」“たんぱく質を、もっと自由に。”の実現に向け、新たな挑戦に取り組んでまいります。

「中期経営計画2026」は、「たんぱく質の価値を共に創る企業へ」をテーマに掲げ、「Vision2030」で示した新たなステージへ到達するため、バックキャストで特定したビジネスモデル変革に向けた課題に対し、構造改革と成長戦略、風土改革を三位一体で進め、価値創造企業に進化する3年間と位置付けております。これまでの食のインフラを担う企業としてたんぱく質を安定的にお届けすることに加え、様々なパートナーと力を掛け合わせ、たんぱく質の新たな価値創造に取り組むことで、社会課題の解決に努めてまいります。加えて、資本コストを上回るリターンの追求と株主還元の強化等の資本最適化施策の推進により企業価値の向上に努めてまいります。

 

 


 


 

<ニッポンハムグループ「Vision2030」>“たんぱく質を、もっと自由に。”

ニッポンハムグループ「Vision2030」は、これまでの提供価値である「安全・安心」「おいしさ」に加え、常識にとらわれない「自由」な発想で「たんぱく質」の可能性を広げることで、社会環境や人々のライフスタイルの変化に対応する多様な食シーンを創出し、毎日の幸せな食生活を支え続けたいという当社グループの想いを「2030年におけるありたい姿」として表現しております。

 

 


 

<全社戦略>

新たなステージに向け、挑戦と共創をキーワードに取り組む「中期経営計画2026」では、構造改革と成長戦略、風土改革を通し、環境変化への対応力を身に付け、より高い価値を生み出す力を獲得していきます。構造改革では、「最適生産体制」、「低収益事業見直し」、「商品ミックス改善」への取組みを通し、不透明な環境下を勝ち残る競争力を獲得します。成長戦略では、「ブランド強化」、「グローバル強化」、「営業横断」、「R&D強化」、「ボールパーク」への取組みを通し、価値の源泉となる無形資産の育成・強化を図ります。風土改革を通して、目指す「挑戦する組織風土の醸成」に向け、「変革型経営人財の育成・獲得」と「多様な人材の活躍推進」に取り組むことで、価値を生み出す基盤を構築してまいります。

 

ニッポンハムグループ 中期経営計画2026全体構想


 

<会社の対処すべき課題>

近年、世界的な人口増加、気候変動等の地球環境問題の深刻化等に加え、ウクライナ危機等の地政学的リスクを要因とした原燃料や飼料価格の高騰、日米金利差等を要因とする円安の進行、国内外の人件費高騰等、かつてない事業環境に直面しております。

そのような環境の中においても、当社の企業理念である「食べる喜びを基本のテーマとし、時代を画する文化を創造し、社会に貢献する」ため、これまでの食のインフラを担う企業としてたんぱく質を安定的にお届けすることに加え、様々なパートナーと力を掛け合わせることで、たんぱく質の新たな価値を創造することに取り組んでいきたいと強く考えております。

 

 

 

<ニッポンハムグループのサステナビリティ戦略と「5つのマテリアリティ」>

当社グループは事業活動を通じた社会課題解決によって、人々の楽しく健やかなくらしに貢献し、生命の恵みを育む地球環境との調和を目指してサステナビリティ戦略を策定しました。

戦略の4つの柱として「地球環境の保全」、「レジリエントな事業基盤の強化」、「食べる喜びの提供」、「新たな価値の創出」を設定しております。

さらに、ビジネス環境の変化及びステークホルダーからのサステナビリティに関する期待の変化を鑑みて、マテリアリティの見直しを実施しました。事業戦略とサステナビリティ戦略を両輪で進めることで、持続可能な社会の実現に寄与してまいります。

 


 

①たんぱく質の安定調達・供給

畜産業が抱える課題に真摯に向きあい、人が生きる上で欠かせないたんぱく質を将来にわたり安定的に提供し続けます。

課題

施策

目指す姿

畜肉の安定調達・供給

畜肉の安定した供給量の拡大

国内産畜肉の販売数量伸長率

2023年度比 104%(2026年度)

疾病発生の未然防止への継続的取組み

持続可能な畜産の実現

農家への支援・共創

・PIG LABO®、鶏生産事業における技 

 術指導

・スマート畜産等の新たな技術の 

 開発と活用

 

 

②食を通した豊かな生活への貢献

世の中の変化を的確に捉えて、お客様の期待を超える商品やサービスを提供します。潜在的なニーズを掘り起こし、常識にとらわれない自由な発想で、新たな「食べる喜び」を創出します。

課題

施策

目指す姿

多様化するライフスタイルや価値観への対応

多様なニーズに合わせた商品の開発、提供

・ハムソーセージ、加工食品の主要コ

  ンシューマ商品のうち

 Mealin’Good対象製品を50%

 (2026年度)※

・海外加工品事業売上伸長率

 2023年度比 200%(2026年度)

笑顔あふれる食体験の提供

日本で培った知見を各国・地域に浸透

食課題解決への貢献

健やかなからだづくりに貢献する商品の開発、提供

 

※「Mealin’Good」はフィーリングッドにミールを掛け合わせ「人も地球も心地よく、より良い毎日へ。」という想いを込めた当社のブランドです。様々な倫理観や価値観に対し選択肢を増やしていくこと、今までの取組みを大切にしながら、もっと人と地球によいものを提供することを目指しております。

 

③持続可能な地域環境への貢献

自然の恵みや生命の恵みに感謝するとともに、将来世代に豊かな地球環境をつないでいくために、サプライチェーンを通して環境課題の解決に向けて積極的に取り組みます。

課題

施策

目指す姿

気候変動への対応

化石燃料由来のCO2削減(Scope1、Scope2)

国内 2013年比△ 46%(2030年度)

海外 2021年比△ 24%(2030年度)

国内 2013年比△ 29%(2026年度)

海外 2021年比△ 17%(2026年度)

家畜由来GHGの抑制、削減、有効活用に関する研究開発

省資源の推進

プラスチック使用量削減※

2013年比△ 20%(2030年度)

2013年比△ 17%(2026年度)

 

※対象範囲:容器包装リサイクル法対象製品のうち、化石燃料由来の包装資材

 

④新たな価値の創出

前例にとらわれず、様々なパートナーと共に、今までにない商品やサービス、体験等新たな価値を創出します。

課題

施策

目指す姿

食とスポーツによる新たな価値の提供

北海道ボールパークFビレッジにおける、食品事業とスポーツ事業を核とした街づくりへの取組み

Fビレッジ内の施設・サービスの充実による来場者数及び定住人口の増加(2030年度)

たんぱく質の可能性を広げる事業の創造

R&D強化による価値創造

・事業立ち上げと収益化(2030年度)

・商品化に向けての技術確立(2030年

 度)

様々なたんぱく質の可能性の探索

 

 

⑤挑戦する組織風土の醸成

多様な従業員一人ひとりが主体性を持ち、変革に向かって挑戦し続けることのできる組織風土を醸成します。

課題

施策

目指す姿

変革型経営人財の育成、獲得

役員評価項目見直し、経営者サクセッションプランの強化

変革、挑戦、従業員エンゲージメントの取り組み進捗(2030年度)

多様な人財の活躍推進

一人ひとりの挑戦を促し認める仕組みの強化、浸透

重点管理項目の進捗(2030年度)

多様な個が尊重され、生き生きと活躍できる環境づくり

 

 

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

本項においては将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は、当連結会計年度末現在における一定の前提に基づき当社グループが判断したものであり、様々な要因により実際の結果は大きく異なる可能性があります。

 

(1)当社グループのサステナビリティに関する基本的な考え方

当社グループは「食べる喜び」を基本のテーマとし、時代を画する文化を創造し、社会に貢献することを企業理念の一つに掲げております。また、企業理念の実現を追求するうえでのマイルストーンとして、2021年3月に「Vision2030」を策定しました。これは、2030年における「ありたい姿」を描いたもので、これまでの提供価値である「安全・安心」「おいしさ」に加え、環境・社会に配慮した安定供給に取り組み続けることや、常識にとらわれない自由な発想でたんぱく質の可能性を広げ、社会環境や人々のライフスタイルの変化に対応する多様な食シーンを創出し、毎日の幸せな食生活を支え続けたいという想いを込めております。

このビジョンの策定を機に、従来の「5つの重要課題」を見直し、「Vision2030」の実現に向けて優先的に解決すべき社会課題を「5つのマテリアリティ」として再特定しました。

当社グループは、持続可能な社会の実現に向けて「5つのマテリアリティ」の達成を目指してまいります。

 

「5つのマテリアリティ」は「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております。また、最新情報につきましては、当社ウェブサイト「サステナビリティ」に掲載しておりますので、ご参照ください。(https://www.nipponham.co.jp/csr/

 

① ガバナンス

当社グループは、当社の取締役会長を委員長とする「サステナビリティ委員会」を設置しております。同委員会は原則として四半期に1回開催しており、ESGに関する知見をお持ちの社外有識者や社外取締役からの意見を伺いながら、サステナビリティに関する方針、戦略の策定、グループ各社の取り組み状況の確認等を行います。その内容をまとめ、決定機関である取締役会に諮っております。

下部組織である「ES(環境・社会)部会」と「TCFDタスク会議」は、サステナビリティ担当取締役と関係部署の部室長で構成されており、委員会で話し合われた戦略を具体化し、事業本部の施策に展開しております。また、これら会議体の事務局であるサステナビリティ部の担当取締役がサステナビリティ担当取締役としてこの分野を統括する責任を担っております。

 

推進体制図


 

 

組織体ごとの活動

組織体

役割

構成

開催頻度

サステナビリティ委員会

グループのサステナビリティに関する方針の策定、戦略の検討

・取締役

・社外取締役

・事業本部長

・監査役・社外有識者

年4回

ES(環境・社会)部会

取締役会で決定された戦略の事業本部への落とし込みの具体化と重要課題の施策、指標策定

・サステナビリティ担当取締役

・関係部署部室長

年4回

TCFDタスク会議

自社の気候関連リスク・機会の評価、シナリオ策定

・サステナビリティ担当取締役

・各事業本部統括管理担当役員

・関係部署部室長及び担当者

年2回

 

 

TCFD提言に関する検討プロセス

時期

会議名等

主な議論内容

2023年9月

 TCFDタスク会議

上期進捗確認等

2024年2月

 サステナビリティ委員会

進捗、開示概要の報告

2024年2月

 TCFDタスク会議

開示概要について説明・合意

2024年5月

 サステナビリティ委員会

開示内容について最終報告

2024年6月

 取締役会

報告

 

 

② 戦略

 当社グループは、「Vision2030」の実現に向け、「5つのマテリアリティ」を掲げ、サステナビリティ戦略と事業戦略の融合による持続的な企業価値の向上に取り組んでおります。「5つのマテリアリティ」に沿った各種の施策について、様々なステークホルダーと対話を重ねながら実行することにより、事業を通した社会課題の解決に努め、持続可能な社会の形成に寄与してまいります。

 具体的な施策については、「④指標と目標」に記載のとおりです。

 

③ リスク管理

当社グループにおける全般的なリスク管理については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク (1) リスクマネジメントに関する体制」に記載しております。サステナビリティに関するリスクにつきましても、基本的にはこの枠組みでマネジメントされますが、とりわけ、気候関連のリスクや機会の特定、戦略並びに具体的な施策の検討は「TCFDタスク会議」が行い、上部組織である「サステナビリティ委員会」での討議を経て、取締役会に報告されます。

 

 

④ 指標と目標

当社グループは、「5つのマテリアリティ」に沿って、それぞれ施策・指標を策定しております。各施策や指標の進捗状況については、業務執行部門により定期的に取締役会に報告されております。

5つのマテリアリティ

指標と目標及び施策

たんぱく質の安定調達・供給

 

たんぱく質の

安定調達・供給

生きる力となるたんぱく質の摂取量向上(国内)

家畜の疾病対策

サステナブル調達の推進
(2030年度までに重要な一次サプライヤーへの方針周知とSAQ実施率100%、重要な二次サプライヤーへの方針周知とSAQ実施)

サプライヤーへの人権デュー・デリジェンスの実施

アニマルウェルフェアに配慮した取り組み推進(*1)

国内全農場の妊娠ストール廃止(豚)(2030年度まで)

国内全処理場内の係留所へ飲水設備の設置(牛・豚)(2023年度まで)

国内全農場・処理場への環境品質カメラの設置(2024年度まで)

スマート畜産等の新たな技術の開発と活用

たんぱく質の

選択肢の拡大

植物由来のたんぱく質商品の拡充拡販(2030年度 出荷金額100億円)

代替肉の技術開発の取組み

食の安全・安心

第三者認証の取得推進(FSSC22000、SQF、BRC、JFS等)

専門技術認定をはじめ研修を通じた人財育成

・eラーニング受講者数(2030年度までに67,000名)

・基礎技術研修の修了者数(2030年度までに2,400名)

・専門認定試験の合格者数(2030年度までに90名)

・食品表示検定(中級) (2030年度までに760名)

・食品表示検定(上級)(2030年度までに90名)

食の多様化と健康への対応

 

食物アレルギー対応

食物アレルギー関連商品の拡充及び啓発(2030年度 出荷金額40億円)

食物アレルギーに関する研究や情報発信

健康増進

認知機能を改善する新たな素材の研究と商品化(2026年度までに年間300万食相当を供給)

健康に寄与する商品の開発

健康寿命の延伸についての情報発信

食の多様化

多様な文化・宗教等に対応した商品の開発、販売の実施

持続可能な地球環境への貢献 

 

気候変動への対応

化石燃料由来のCO2排出量削減(*2)

省資源・資源循環

国内の廃棄物排出量削減(2030年度までに2019年度比で製造数量当たりの原単位5%削減)

生物多様性の対応

2030年度までにRSPO認証パーム油使用率100%(ブック アンド クレームを含む)

森林保全活動の推進

 

 

食やスポーツを通じた地域・社会との共創共栄

 

地域社会の発展

スポーツを通じた地域共創の活動の推進(北海道新球場、スポーツ・食育教室等)

文化的活動を含めた地域貢献活動の推進(地域イベントへの協力や清掃活動等)

食を通じた社会福祉活動の推進(フードバンクや子ども食堂への食材の提供等)

食育等を通じた次世代育成の支援(出前授業、キャリア教育支援等)

従業員の成長と多様性の尊重(*3)

 

従業員の

働き甲斐向上

仕事に対するやり甲斐の支援、挑戦できる組織風土の醸成等

多様性の尊重

人権尊重(人権教育の実施)、人権デュー・デリジェンス体制の構築等

 

(注)1 SAQはSelf-Assessment Questionnaire(自己評価シート)のことを指しております。

      2 *1は当社グループの連結子会社を対象としております。

      3 *2の詳細については「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2) 気候関連財

     務情報開示タスクフォース(TCFD)提言への取組」をご参照ください。

      4 *3の詳細については「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (3) 人的資本」

     をご参照ください。

   5 「中期経営計画2026」の策定と合わせて、「5つのマテリアリティ」の見直しを行いました。

    見直し後の指標や目標、施策につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。

 

(2) 気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言への取組

当社グループは、2020年に「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言への賛同を表明し、2022年5月にシナリオ分析結果等の開示を行いました。

2023年度においては、特定したリスクにおける財務インパクトの算定や対応について議論や評価を進めました。

 

① ガバナンス

気候変動対応を含むサステナビリティのガバナンスについては、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (1) 当社グループのサステナビリティに関する基本的な考え方 ① ガバナンス」をご参照ください。

 

② 戦略

 サステナビリティの戦略のうち特に重要となる気候変動対応に関しては、パリ協定(2015年)、IPCCによる「1.5℃特別報告書(2018年)」、「第6次報告(2023年)」の内容も踏まえ、当社グループの主要事業において気候変動が与えるリスク・機会について以下のように考えております。

重要なリスクと機会

発生

時間軸

事業への影響

物理

リスク

飼料価格の上昇・不安定化による飼育コストの上昇

自社飼育の豚鶏

中~

長期

財務影響:影響なし~53億円

・原材料調達の不安定化

・畜肉生産コストの上昇

加工食品原料

(豚肉)

中~

長期

財務影響:影響なし~22億円

・加工食品生産コストの上昇

家畜生育への気温上昇影響

中~

長期

・畜肉生産量の減少

・畜肉生産コストの上昇

拠点における水災害リスクの高まり

短~

長期

・保有設備への損害

・製造活動の低下、出荷遅延

拠点における水ストレスの高まり

短~

長期

・製造活動の低下

 

 

移行

リスク

炭素税導入によるエネルギー費用の高まり

中~

長期

財務影響:130~200億円

・生産コストの上昇

機会

環境に配慮した消費動向の強まり

短~

長期

・包材コストの削減

・将来の市場獲得

新たんぱく質市場の拡大

短~

長期

・将来の市場獲得

 

 (注)各発生時間軸が示す期間は以下のとおりです。

    短期:3年未満、中期:3~10年、長期:10年超

 

③ リスク管理

気候関連のリスク特定とマネジメントは、「持続可能な地球環境への貢献」に向けた重要な課題と位置付けております。これらの取組みはTCFDタスク会議でリスクや機会の特定、戦略並びに具体的な施策の検討が行われ、その上位組織であるサステナビリティ委員会での議論を経て、取締役会で審議・決定をしております。 

また、全社的な気候変動のリスクについてはリスクマネジメント委員会(*)でのリスクを発生可能性と影響度で分類したリスクマップで抽出しており、具体的な気候変動リスクへの対応についてはTCFDタスク会議で検討し、推進しております。

 

(注)「*」は、全社的なリスクを一元的にカバーし、各種リスクの識別、評価、重点リスクの特定及び対応方針の検討等を行う場として設置する委員会をいいます。同委員会の方針を踏まえ、各事業部門及び各部署は自らの事業領域や職掌に関するリスクの統制活動を実施しており、これらの結果は同委員会を通して取締役会に報告され、必要に応じた対応がとられる体制を構築しております。

 

④ 指標と目標

当社グループは、マテリアリティにおける「持続可能な地球環境への貢献」を実現するため、2030年度を見据えた化石燃料由来のCO2排出量削減を設定しております(中長期環境目標)。また、2050年に向けては、カーボンニュートラルの実現を目指し、日々の活動を推進していきます。また、物理リスクとしては水ストレスに関する指標も中長期環境目標として設定、水資源の有効活用に努めております。

 

指標

2030年度目標

対象

2022年度実績

化石燃料由来

CO2排出量

46%以上削減(2013年度比)

国内全拠点

増減量:△ 102,828t-CO2

進捗率:40.6%

24%以上削減(2021年度比)

海外全拠点

増減量:△ 2,809t-CO2

進捗率:8.2%

用水使用量
原単位

5%削減(2019年度比)

2030年度目標削減値:0.8㎥/t

国内処理・製造拠点

増減量:0.2㎥/t
進捗率:△ 25.0%

5%削減(2021年度比)

2030年度目標削減値:0.6㎥/t

海外処理・製造拠点

増減量:0.5㎥/t

進捗率:△ 83.3%

 

 

また、日本最大級(*)のたんぱく質供給企業として、より環境負荷に配慮した畜産業を追求することは使命と考えております。家畜由来の温室効果ガス排出量をグループ全体で可視化、開示しております。削減に向けて、GHG削減に向けた研究開発を社外研究機関と協力して推進しております。

 

(注) 1 「*」は当社取り扱い重量データ及び外部データを基に当社で推計しております。

   2 当社グループのスコープ1~3については、下記URLに開示しております。

    (https://www.nipponham.co.jp/ir/library/data_book/pdf/2023/all.pdf

 

 

⑤シナリオ分析と対応

 脱炭素社会をキーワードとし、2つの対比的な気候変動シナリオパターンを設定、分析を実施しております。2023年度の活動において、物理リスクのインパクト大の項目について財務インパクトの算定を行いました。

 

シナリオの概要

 


 

 

パターン

参照

シナリオ

考える世界観

1.5/2℃

SSP1-1.9/2.6
IEA-NetZero

・脱炭素トレンド(炭素税等の規制コストが高まる)

・気候変動への関心を背景に、新たんぱく質市場の活性化、環境へ配慮した製品の

  選択機会増加

4℃

SSP3-7.0

・気温上昇、水害、渇水等による飼料価格の上昇や畜肉調達価格の上昇

・家畜への気温上昇影響

・自社拠点における水リスクの懸念

 

 

シナリオ分析結果

リスクと機会

財務インパクト

1.5/2℃~4℃

対応状況

物理

リスク

飼料価格の上昇・

不安定化による飼育コストの上昇

自社飼育の

豚鶏

(影響なし~53億円)

・飼料要求率(*)改善の取組み

・飼料会社と連携、地産原料を使った飼料の開発

・自社で豚ふん堆肥を活用した循環型農業による穀物確保

加工食品原料

(豚肉)

(影響なし~22億円)

・気候変動を考慮し、国や地域、さらにはその中で新たな取引先を開拓、調達先を拡大

・製造コストの改善や商品価格改定

家畜生育への気温上昇影響

・暑熱対策の実施

拠点における水災害リスクの高まり

・洪水リスクに対する設備の強化

・災害時の製品供給体制の強化

拠点における水ストレスの高まり

・水ストレスリスク高拠点における水資源有

  効活用

移行

リスク

炭素税導入によるエネルギー費用の高まり

(130~200億円)

・処理・製造工程でのエネルギー利用の効率化・燃料転換

・再生可能エネルギーの利用拡大

・低排出車両への転換・物流効率化による物流での排出削減

 

 

機会

環境に配慮した消費動向の強まり

・サステナビリティ価値の高い商品の開発

・新たんぱく質を活用した商品開発

・新たんぱく質の研究開発

新たんぱく質市場の拡大

 

(注)「*」は、配合飼料における穀物等の配合を成長に適したものに調整し、効率の良い体重増加を促すことをいいま

    す。飼料要求率のシナリオ分析の結果、部分的に影響が出る可能性はありますが大きな影響には至らないと想定

    しております。

 

a. 飼料価格の上昇・不安定化

(特定理由)

当社グループでは家畜の生産事業を行っており、今後、人口増による食糧需要の拡大、気温上昇や渇水による影響、穀物のバイオマス燃料需要との競合の可能性等から、穀物飼料の価格が上昇する可能性が考えられました。

シナリオ分析を実施した結果、気温上昇の程度によっては一部の穀物は増収の可能性があるものの、4℃シナリオでは気候変動の影響により穀物は減収、調達コストが増加する可能性がありました。家畜の畜種や飼育地域によっても気候変動の影響が異なるため、今後もそれら固有のリスク/機会分析を継続していきます。

加えて、昨今の穀物輸出国の情勢の不安定化等により、飼料価格も上昇しました。このトレンドは今後も発生する可能性があるため、対策を継続的に検討しております。

 

(対応状況)

穀物飼料価格高騰への対策について、商品の価格改定の他に、従来より飼料要求率の改善に取り組んでおり、技術開発を進めることで、飼料コストの削減を進めております。

また、グループ外からの畜肉調達におけるコスト上昇や不足の影響下でも、安定した供給を維持するため、新たな取引先を開拓して調達先を拡大し、より安定的な畜肉調達網の構築を進めております。

 

(事例)

「自社で豚ふん堆肥を活用した飼料穀物確保の取組み」
  グループ会社が保有する北海道内の畑で栽培した小麦を、飼料メーカーと協力して飼料にし、豚に給餌しておりま

す。また、養豚場で発生したふん尿は肥料へ加工して畑へ散布し、循環型農業に挑戦しております(*)。

 

 (注)「*」については、一部の農場で実施しております。

 

b. 家畜生育への気温上昇影響

(特定理由)

家畜の生育には気温や湿度等の環境が大きく影響します。当社グループの生産飼育拠点が存在する日本、豪州、トルコにおいて分析を行った結果、気温上昇に伴い、一日あたりの増体量が低下する可能性がありました。また、気温の上昇はグループ外からの畜肉調達コストについても長期的リスクの可能性となると考えております。

 

(対応状況)

畜種

主な施策

日本

クーリングパッド、ミスト装置

トルコ

クーリングパッド

日本

・全地域:遮光ネット

・一部地域:スポットクーラー、クーリングパッド、屋根の散水、

 送風・排気ファンの増設

豪州

区画ごとにサンシェードの設置

 

 

 

(事例)

「鶏舎のクーリングパッド/ミスト装置の設置」

養鶏の暑熱対策として、クーリングパッド(※1)、ミスト装置(※2)の設置を進めております。前年度までは設置予定のなかった東北地域の農場についても、気温の急変の影響及び将来の気温上昇の影響を考慮し、ミスト装置を設置する方針に変更しました。設置予定に対する進捗は以下のとおりです。今後については、飼育管理等の改善を行うとともに、暑熱環境下での生産成績を上げるための技術開発の検討を進めます。

地域

設置率

日本

北海道

84%

青森・山形・新潟

80%
 

宮崎・鹿児島

大分・熊本

100%

トルコ

イズミル

100%

 

 

※1 クーリングパッド

※2 ミスト装置

 


クーリングパッドは、湿らせたパッドを外気取り入れ口に設置して、外気が通過することで気化熱を利用して空気を冷やします。

 


ミスト装置は、鶏舎内に霧状の水を散布する装置で、霧状の水を蒸発させることで気化熱により空気の温度を下げます。

 

 

c. 拠点における災害リスクの高まり

(特定理由)

気候変動に伴い異常気象が増加する中、激甚災害のリスクが高まると言われています。当社グループでは、農場、処理・製造工場、物流センターのうち、一部の拠点が洪水や高潮の高リスクの地域に位置していることを確認しました。

 

(対応状況)

洪水高リスクの地域に位置している拠点については、現在の対応状況等をヒアリングした結果、引き続き洪水による影響は軽微と判断されました。今後もリスクモニタリングを継続します。

地域

拠点数

水災害(*1)

主な対応

リスク
評価

洪水

高潮

アジア

212

11

-

-

内訳

日本

205

・主要製品の供給体制を含めたBCPの見直し

・水害に対する付保

軽微

中国

台湾

・現地確認の結果、発生の可能性が低い

軽微

東南

アジア

・設備の床上げ等対策の実施済み

・工業団地における共同対策実施済み

軽微

オセアニア

・サイトを分散させて配置しており、万が一自然災害による影響を受けた場合でも事業影響は軽微 

軽微

北米

-

-

南米

-

-

中東

(*2)

・現地確認の結果発生の可能性が低い

軽微

 

(注)1 「*1」について、 日本国のデータはハザードマップを、海外拠点のデータは

     World Resources InstituteのAqueductを参照しております。

   2 「*2」について、中東地域は複数拠点がありますが、管理上1拠点とカウントしております。

 

d. 拠点における水ストレスの高まり

(特定理由)

グループ内の農場、処理・製造工場について、水ストレスの評価や高ストレス地域の取水量について把握をしております。調査の結果、多くの拠点では水ストレスは少ないものの、一部では高い水ストレスとされる地域に所在することがわかりました。

 

(対応状況)

高い水ストレスとされる地域にある拠点に対し、ヒアリングを継続して実施した結果、2023年度に改めて状況を確認したところ変化はありませんでした。

水ストレスに関するリスクは、今後も継続的にモニタリングを行います。また、環境目標の達成に向けて、取組みを継続します。

 

国・地域

拠点数

水ストレス高地域

の拠点数(*)

主な対応

リスク

評価

1.5/2℃

4℃

アジア

196

-

-

内訳

日本

189

-

-

中国・台湾

-

-

東南アジア

過去の水ストレスによる事業影響や現地ヒアリングによりリスクは軽微と判断

軽微

オセアニア

-

-

北米

過去の水ストレスによる事業影響や現地ヒアリングによりリスクは軽微と判断

軽微

南米

-

-

中東

過去の水ストレスによる事業影響や現地ヒアリングによりリスクは軽微と判断

軽微

 

(注)「*」はWorld Resources InstituteのAqueductを参照しております。

 

水ストレス高地域における取水量(2022年度)

 

グループ全体

内)4℃における

水ストレス高地域

生産・製造拠点数

208

7 (3.4%)

取水量 (千㎥)

16,311

1,149 (7.0%)

 

 

e. 炭素税によるコスト増

(特定理由)

1.5℃/2℃シナリオにおいて、化石燃料由来のCO2排出に対する炭素税の導入が考えられました。財務インパクトを評価した結果、事業に大きなインパクトを与える可能性が特定されました。また、中長期的には家畜由来の排出に対しても炭素税導入の可能性があり、削減施策の検討を進めます。

国際情勢の影響により、化石燃料の高騰が続いています。この状況が2030年まで続いた場合、国内の電気料金が2022年度と比べて年間約10~20億円程度の影響を受ける可能性があります。

 

 

シナリオ

地域

項目

2030年

2050年

2022年度排出量前提

国内

炭素税インパクト(億円)

84

161

排出量(千t-CO2)

459

459

海外

炭素税インパクト(億円)

26

49

排出量(千t-CO2)

141

141

削減目標達成前提

(2030年以降は横引き)

国内

炭素税インパクト(億円)

54

104

排出量(千t-CO2)

297

297

海外

炭素税インパクト(億円)

20

38

排出量(千t-CO2)

109

109

 

(注)1 財務インパクトは、2022年度の排出量での計算と2030年度の削減目標が達成された場合を

     比較しております。

   2 炭素税価格については、IEAの World Energy Outlook 2021のNet Zero by 2050シナリオ

    (1.5℃目標相当)を参考にしております。

     また、2030年度はUSD130/t- CO2、2050年度はUSD250/t- CO2、1USD=140円で算出しております。

 

(対応状況)

化石燃料由来のCO2排出の削減

 当社グループは自社敷地等における太陽光発電の導入推進や、使用済みのフライ油や排水中の油分を回収したものを燃料として活用する廃油ボイラーの利用を進めております。これらの取り組み状況については、以下のとおりです。

取組み 

2021年設置拠点数

2023年 設置拠点数

CO2削減量

太陽光発電

稼働:8拠点

(2,442 MWh)

稼働:29拠点

 (7,254 MWh/年)

2,855t-CO2

廃油ボイラー

稼働:5拠点

稼働:7拠点

約2,100t-CO2(*)

 

(注)1 設定拠点数は、2023年1~12月実績を記載しております。

   2 CO2削減量は、太陽光発電導入拠点の電力供給会社の排出係数に基づき算出しております。

   3 「*」については、2023年度見込み値を記載しております。

 

 また、北海道南幌町に設置予定の年間約3,000MWhの発電量を有する太陽光発電施設で発電した電力を当社グループの養豚施設に供給し、エネルギー利用の効率化や生体由来のGHGのクレジットによるオフセット等によって、2026年までにカーボンニュートラル農場稼働を目指しております。

 その他では、豪州で排水由来のバイオガスプラントの設置や、省エネ機器の導入、一定金額以上の設備導入・更新時にインターナルカーボンプライシング(ICP)の考え方を取り入れ、CO2のコスト意識づけを行っております。

 

家畜由来の温室効果ガス排出削減

 当社グループでは、国内の養豚事業で排せつ物・排水処理から発生するバイオガスのエネルギー利用を行っております。また、家畜由来のメタン排出量抑制につながる研究については、北海道大学、徳島大学とそれぞれ連携して進めております。

連携先

研究テーマ

北海道大学

ウシルーメンにおけるメタン発生抑制法の開発

徳島大学

ブタにおける温室効果ガス排出に関する研究

 

 

f. 環境に配慮した消費動向の強まり

(特定理由)

 脱炭素が進む社会では、気候変動への関心が高まり、環境対応が進む企業や商品が選ばれやすくなることが予想されます。当社グループは、サステナビリティ価値を実現し、消費者に伝えることがますます重要になると認識しております。

 このため、グループ全体で持続可能な社会の実現に向けた取組みを推進し、サステナブルな商品・サービスを提供することを目指しております。さらに、消費者の期待に応えるため、持続可能性に配慮したパッケージングや、環境負荷の低い商品開発等も積極的に取り組んでおります。

 

(対応状況)

当社グループでは、プラスチック使用量の削減を通したCO2排出量の削減に取り組んでおります。

「中華名菜®」のノントレイ化を実施したことで、プラスチック使用量を2022年より約21%削減し、さらに、2023年には対象商品を拡大しました。また、主要ウインナー商品の包装形態をエコ・ピロタイプへ変更したことで、包装資材重量を2022年より28%削減しました。

その他にも、2024年より「石窯工房®」の包装形態の変更や包装サイズの見直しを行い、トレイサイズを2.4%削減しました。「Isey SKYRシリーズ」では、2022年より容器をプラスチックから紙に変更し、また、加工食品の一部製品や鶏肉「桜姫®」及び「北のこめこっこ®」では、包装原料の一部にバイオマス素材を使用したプラスチックを利用する等の取組みを展開しております。




中華名菜® 

包装からトレイをなくし、プラスチック使用量を約21%削減(※)

 

※2021年中華名菜15品中10品の出荷数に基づき算定

主力ウインナー商品

包装形態を巾着タイプからエコ・ピロタイプへ変更し包装資材重量28%削減(※)   

 

※「シャウエッセン®」巾着127g

2束と比較(フィルム重量比)

桜姫®、北のこめこっこ®

包材プラスチックの一部にバイオマス素材を使用

 

 

g. 新たんぱく質市場の拡大

(特定理由)

将来的には世界人口増によるたんぱく質需要の増大を背景に、畜肉市場に加えて新たんぱく質を含めた市場の拡大が見込まれます。さらに、健康への意識向上や、脱炭素社会への移行に伴う消費者意識の変化や技術革新等も背景となり、新たんぱく質市場は大きな成長が予想されます。外部機関が公開している新たんぱく質の将来市場規模の推計値には幅がありますが、脱炭素への移行が進むシナリオにおいては、グローバルで数十兆円超規模の市場が見込まれており、中長期的に大きな事業機会が生まれることが予想されることから、引き続き研究開発に取り組んでおります。

 

(対応状況)

 当社グループでは、植物由来商品である「ナチュミート」シリーズをコンシューマ向け、外食・流通企業向け双方で展開しており、さらに海外での展開も検討しております。





 

 

 また、水産物代替品の開発を進め、フィッシュ風フライに加え、マグロ刺身やポップコーンシュリンプ等の商品開発を実施しております。



プラントベース

マグロ刺身タイプ

プラントベース

ポップコーンシュリンプ

 

 

 家畜由来の細胞を大量に増やして食品とする細胞性食品(培養肉)に関して、外部研究機関やスタートアップとの共同研究を実施しております。コストの高い動物血清を使用しない、食品を主成分とした培養液を使用し、これまでより安価に細胞を培養する方法の開発等、将来の商品化に向けた研究を行っております。


当社技術を用いて作成した細胞性食品の試作品

 

 

 

(3) 人的資本

 

①人財戦略

 当社グループは企業理念である「わが社は、従業員が真の幸せと生き甲斐を求める場として存在する」の実現に向けて、社会価値と事業価値の向上に取り組み、企業価値の最大化を目指しております。そして、その重要な原動力である人財を「人的資本」と捉え、その価値を最大化するための「人財戦略」を策定しております。 人的資本の最大化に向けて、「個の成長」「組織の成長」「ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)」を3本柱に据え、それぞれの求める成果に紐づく施策を人的資本投資として推進しております。

 

人財戦略の全体像


 

a. 個の成長

 従業員の働き甲斐は、社会への貢献のほかに、自らの挑戦と成長の実感によっても得られると考えております。当社グループでは、従業員一人ひとりが自らの成長ストーリ―を描き、「ありたい自分」への成長意志とキャリアプランを持ち、自己実現に向けた挑戦や実践・研鑽ができるよう、様々な支援に取り組んでおります。

 

b. 組織の成長

 価値創造力の強化を主眼とし、多様な強みを統合することで、より大きな価値を創造する力を養います。事業戦略に応じたリーダーシップ開発支援をおこない、価値創造機会を創出・拡充し、学習する組織を実現します。

 

 

c. ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)

 心理的安全性実感の下、多様な価値観が尊重され一人ひとりが生き生きと活躍できる環境を提供しております。また、多様なキャリア・働き方が選択できるような、働き方改革・学び方改革、両立支援の取組みを進めていくと同時に、多様な個・経験・スキルが活かされ、共に成長できる場の実現にも取り組んでおります。

 

(注)これまでの取組みの詳細については、下記URLをご参照ください。

      統合報告書/アニュアルレポート(https://www.nipponham.co.jp/ir/library/annual/

      データブック (https://www.nipponham.co.jp/ir/library/data_book/

     サステナビリティレポート (https://www.nipponham.co.jp/csr/report/

 

②経営戦略との連動

当社グループは2024年4月1日から2027年3月31日(第80期~第82期)の3年間を「中期経営計画2026」とし、「たんぱく質の価値を共に創る企業へ」をテーマに掲げております。「Vision2030」で示した新たなステージへ到達するため、構造改革と成長戦略、風土改革を三位一体で進め、価値創造企業へ進化する3年間と位置づけました。

企業価値の最大化に向けて、構造改革と成長戦略を推進していくための重要な基盤となるのが変革に向けた従業員一人ひとり、そして組織としての挑戦です。「中期経営計画2026」においては、「挑戦する組織風土の醸成」を重点課題とし、人財戦略の実行を通じてその実現を目指します。

重点施策としては、変革型経営人財の育成・獲得及び多様な人財の活躍推進に向けた各種取組みを進めてまいります。

 

ニッポンハムグループ 中期経営計画2026全体構想


 

③指標と目標 

 当社グループは人的資本の最大化に向け、多様な人財の活躍推進として、各施策に対する指標を設定し、可視化することでその実効性を高めております。

 各社、事業特性や経営方針に応じた取組みを設定し、グループ全体で取組みを推進しております。

 なお、指標及び目標は、法律や制度が異なる海外グループ会社を含めた連結グループ統一の目標設定はしていないため、当社の指標及び目標を記載します。

 

 

施策

測定指標

2023年度

実績

2030年度

目標

個の成長

仕事に対するやり甲斐の向上

従業員サーベイ好意的回答率

66.7

80%以上

挑戦できる組織風土醸成

従業員サーベイ好意的回答率

66.5

80%以上

組織の成長

戦略的な採用

キャリア採用比率

8.9

15%以上

DE&I

女性活躍の推進

女性管理職比率

10.7

20%以上

女性監督職以上比率

24.1

35%以上

障がい者雇用の推進

障がい者雇用率

2.6

2.7%以上*

総労働時間の削減

総労働時間

1,968時間

1,870時間

時間外労働時間

225時間

200時間

こころとからだの健康

再検査実施率

83.5

100

喫煙率

25.6

12

 

 (注) 「*」については、法律の改正に伴い目標を随時変更する可能性があります。

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、本項においては将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は、特段の断りがない限り当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1) リスクマネジメントに関する体制

当社は、リスクマネジメントに関する基本方針や管理体制の概要を定める「リスクマネジメント規程」に基づき、代表取締役社長を最高責任者とするリスクマネジメント体制を採用しております。

代表取締役社長により設置される「リスクマネジメント委員会」では、全社的なリスクを一元的にカバーしており、各種リスクの識別、評価、重点リスクの特定及び対応方針の検討に努めております。同委員会の方針を踏まえ、各事業部門及び各部署は自らの事業領域や職掌に関するリスクの統制活動を実施しており、これらの結果は同委員会を通じて取締役会に報告されます。取締役会では、同委員会で検討した当社グループの経営活動に大きな影響を及ぼす可能性のある重要なリスクについて対応方法の検討を行っております。また、重大なリスクの顕在化を認識した際には、想定される影響度に応じた対策機関を組成し、迅速かつ適切な対応に努めております。

なお、日常的な事業活動から生じる商品市況リスクへの対処は各事業部門、財務リスクへの対処は経理財務部及び関係する各事業部門が実施しております。

 

リスクマネジメント委員会の機能・位置付け


 

 

(2) 事業遂行上のリスク

リスクマネジメント年間スケジュール

当社では、リスクマネジメント委員会においてグループで対応すべき重点リスクを特定し、優先順位をつけ年間を通じてリスク対応を行っております。

当連結会計年度は、情報セキュリティのリスク対応として、全社にてサイバー攻撃に対するBCPの強化を進めています。


 

グループを取り巻くリスク全般から大きな影響を及ぼす可能性があるリスクを抽出しプロットしたリスクマップを掲載します(下図)。

当社グループで取り組む重点リスクを特定する際には、本リスクマップや社会状況、当社グループの状況を勘案し決定します。その他、グループ各社別のリスクマネジメントの状況を監督し、適時顕在化してきたリスクをリスクマネジメント委員会で取り上げ、必要に応じてグループ全体でリスク対応を実施します。

なお、リスクマップ中のリスク項目について、以下に記載しますが、これらは、当連結会計年度末現在の状況に基づき、当社グループにて判断したものになります。

 


 

リスク項目

ライフスタイル・価値観の変化

発生可能性 中

影響度 小

リスク内容

ライフスタイルや価値観の変化に伴い、食においても多様な対応が求められております。食物アレルギー、グルテンフリー、減塩及び低糖質等の健康志向、ヴィーガン、ハラル及びオーガニック等の価値観の浸透、リモートワークでの新たな食スタイル等、ニーズがますます多様化し、細分化しております。多種多様なニーズに応えることで、品目拡大により生産性が低下するリスクはありますが、品目数管理を徹底して取り組んでおります。また、目まぐるしいニーズの変化に追いつけないリスクがあります。その場合、当社グループの業績及び財政状態が影響を受ける可能性があります。

リスク対応

景気変動、世界情勢及び地球温暖化等、ライフスタイルや価値観に影響を及ぼす要因は幅広く、価値観の多様化は今後も続くと予測されます。当社は、お客様とのコミュニケーションを担当する部門、多様な食生活を分析し商品提案につなげる部門、新たな代替たんぱく質を研究開発する部門、各事業本部のマーケティング担当部門等が連携し、お客様のニーズを把握し対応する体制を確立しております。今後は、食物アレルギー関連サービス、植物由来のたんぱく質商品、細胞性食品(培養肉)等、付加価値のある商品やサービスの提供によって収益化を図ってまいります。また、国内にとどまらず、海外のニーズにも合わせて商品を供給してまいります。

 

 

リスク項目

世界人口増加による食糧需給の変化

発生可能性 中

影響度 大

リスク内容

世界人口は、今後も開発途上国を中心に増加することが見込まれております。世界の穀物等の需要は、人口増加や食生活の多様化、経済成長に伴い、食用の需要が増加するとともに、多くの穀物等を飼料とする肉類の需要も大幅に増加することが見込まれており、将来の食糧不足が問題になっております。このリスクは、食のインフラを担う当社グループの安定調達・安定供給に将来的に大きな影響を及ぼす可能性があります。

リスク対応

このリスクは、世界の人口動態や食需要の変化等、当社グループにとって制御不能な要因が大きいため、中期経営計画策定時の環境分析において、将来的な人口動態、食肉需要予測等を調査し、事業戦略立案の基礎資料としております。

畜肉及び食糧需要の拡大への対応は、当社グループが事業を通して取り組む社会課題であり、畜肉生産における生産性向上、商品及び原材料調達地域・ルートの分散化、仕入先(サプライヤー)の開拓を通した安定調達・供給体制の構築に取り組んでおります。また、たんぱく質の安定調達・供給への施策として、植物性たんぱく質商品の開発と新たなたんぱく質の研究・開発にも取り組んでおりますが、当該リスクを完全に回避できる保証はありません。

 

 

リスク項目

原材料価格の高騰・原料調達難

発生可能性 中

影響度 大

リスク内容

当社グループは食肉及び食肉関連加工品を中心に取り扱っており、販売用食肉はもとより、ハム・ソーセージ、加工食品等の原材料にも食肉を使用しているため、畜産物の相場変動によるリスクがあります。これらの食肉を供給する国内及び海外の生産飼育事業においては、商品市況はもちろん、飼料価格や原油価格の変動にも影響を受けることとなります。加えて、当社グループが取り扱う乳製品及び加工食品副原料(小麦、水産物等)についても、商品市況や原材料の価格変動リスクがあります。また、家畜の疾病(BSE、鳥インフルエンザ、口蹄疫、豚流行性下痢、豚熱、アフリカ豚熱等)の発生やセーフガード(緊急輸入制限措置)が発動された場合等には、畜産市場全体並びに当社グループの業績及び財政状態が影響を受ける可能性があります。

リスク対応

これらのリスクは、世界的な需給動向や景気の変動等、当社グループにとって制御不能な要因が大きく、正負両面において常時顕在化していきます。想定を超える負の影響を可能な限り軽減するため、商品、原材料及び飼料の調達ルート分散化、高付加価値商品の開発やブランド化等に努めており、商品需要の変動を見越した安定的な原材料の確保、生産飼育事業における防疫体制の強化と生産性の向上、食肉の適正在庫水準の維持等にも取り組んでおりますが、当該リスクを完全に回避できる保証はありません。

 

 

リスク項目

人財確保

発生可能性 高

影響度 中

リスク内容

生産年齢人口の減少、労働観や生活スタイルの多様化、人財流動性の高まり等を受け、企業の人財確保はますます難しくなっております。優秀で多様な人財の獲得、育成、定着は、新たな価値創造やイノベーションに必要不可欠であり、計画どおりに進まない場合は、当社グループの業績及び財政状態が影響を受ける可能性があります。

リスク対応

当社グループでは、「求められる人財像」としてあるべき姿を示し、人事施策の根幹に据えております。具体的には、新卒採用及びキャリア採用による優秀な人財の獲得、体系的な教育プログラムやサクセッションプランによる育成、キャリア面談等による人財定着に取り組んでおります。また、時代に即した柔軟な働き方や誰もが働きやすい職場環境づくりも推進しておりますが、当該リスクを完全に回避できる保証はありません。

 

 

リスク項目

商品の品質事故(健康危害発生)

発生可能性 中

影響度 中

リスク内容

当社グループは、食肉及び食肉関連加工品を始め、乳製品及び水産物等幅広い食品を取り扱っており、異物混入や不適切な表示等に起因する商品の品質や安全性の毀損、また、食品衛生法等関連法令への未対応等による回収費用や損害賠償、事業活動の制約等が生じ、当社グループの業績及び財政状態が影響を受ける可能性があります。

リスク対応

こうしたリスクを可能な限り予防及び軽減することを目的とし、当社グループ全体で品質保証体制を構築し、表示・規格の法令への適合を審査、国内外の製造工場等を監査、有害微生物や残留動物用医薬品等を検査、そして品質保証教育を継続的に実施しております。製造工場では食品安全に関する第三者認証を取得し、食品安全の取組みの向上を図っております。また、時代の変化や要請に合わせて改定した品質方針を当連結会計年度より展開しており、全役職員がこれを理解し実践することでお客様に安全でより良い品質の商品・サービスをお届けする取組みを推進しております。

万が一当社グループが提供する商品等に問題が生じた場合は、速やかな情報開示と拡大防止策の徹底を行い、お客様の安全を第一に考えた対応と、レピュテーションリスクの軽減を図ります。しかしながら、これらの取組みを超えた事象や、食の安全を脅かすような社会全般にわたる問題が発生した場合等、当該リスクが顕在化する可能性の程度、時期及び影響度を予見することは困難であり、完全に回避できる保証はありません。

 

 

リスク項目

大規模自然災害、感染症

発生可能性 中

影響度 大

リスク内容

当社グループは、生産・製造・物流・販売・研究開発等の拠点を国内外に置き、グローバルに事業活動を展開しております。地震、火災、気候変動に伴う大規模自然災害や新型コロナウィルスのような大規模感染症が発生した場合、設備が損害を受けたり要員確保に支障をきたすことにより、操業停止や生産及び出荷の遅延、販売活動の制約等が生じ、当社グループの業績及び財政状態が影響を受ける可能性があります。

リスク対応

当社グループは、定期的に防災マニュアルとBCPマニュアルを整備・改編し、危機的な状況下に置かれた場合にも、従業員の安全を最優先とし、重要な業務が継続できるように対策を講じております。

現行のBCPでは、大規模自然災害やパンデミック、海外有事を主に想定しております。事業に大きな影響を及ぼすシナリオを策定し、優先業務選定による初動対応を整備し、確実な事業復旧施策につなげる体制を構築しております。しかしながら、これらの取組みを超えた事象が発生した場合等、当該リスクが顕在化する可能性の程度、時期及び影響度を予見することは困難であり、完全に回避できる保証はありません。

 

 

リスク項目

カントリーリスク

発生可能性 低

影響度 大

リスク内容

当社グループ海外進出国では、異常気象による自然災害、感染症の発生、地政学的な緊張の高まりや経済環境の激変等、事業継続が危ぶまれるようなリスクが想定されます。また、海外進出国や輸出入対象国における急激な法制度の変更が生じた場合には、当社グループの業績及び財政状態が影響を受ける可能性があります

リスク対応

海外有事発生の際には、従業員の安全を優先した上で、事業継続判断にまで及ぶ初動対応について取りまとめております。また、海外進出国や輸出入対象国での法制度の急激な変化があった場合には、所在国のグループ会社及び当社において速やかに情報収集及び対策を検討実行してまいりますが、当該リスクを完全に回避できる保証はありません。

 

 

リスク項目

家畜の疾病

発生可能性 中

影響度 大

リスク内容     

当社グループでは、国内外において家畜の生産や調達を実施しており、家畜の疾病(BSE、鳥インフルエンザ、口蹄疫、豚流行性下痢、豚熱、アフリカ豚熱等)が発生した場合には、当社グループの食肉事業並びに加工事業の業績及び財政状態が影響を受ける可能性があります。

リスク対応

当社グループは、生産飼育事業における防疫体制の強化に努めておりますが、制御不能な要因が大きく、当該リスクを完全に回避できる保証はありません。また、国内外からの調達については、想定を超える負の影響を可能な限り軽減するため、仕入先の地域を分散し調達ルートの多様性確保に努めております。国内外で家畜の疾病が発生し、輸入原料の調達が困難になった場合には国産原料で補い、国産原料の調達が困難になった場合には輸入原料での代替に努めております。

 

 

リスク項目

為替リスク

発生可能性 中

影響度 中

リスク内容

当社グループが行う外貨建取引から生ずる費用・収益及び外貨建債権・債務の円換算額は、為替相場の変動の影響を受ける場合があり、正負両面において常時顕在化していきます。また、外貨建で作成されている海外連結子会社の財務諸表を円貨に換算する際の換算差額によって、連結財務諸表の親会社の所有者に帰属する持分が在外営業活動体の換算差額を通じて変動するリスクがあり、その他の包括利益を通じて当社グループの業績及び財政状態が影響を受ける可能性があります。

リスク対応

 

当社グループはこれらの外貨建取引にかかわるリスクヘッジを行うための「為替リスク管理規程」を定め、為替相場を継続的に監視し、為替相場の変動リスクを定期的に評価しております。先物外国為替契約等、デリバティブを用いた全てのヘッジ取引は、当該「為替リスク管理規程」、取引権限及び取引限度額を定めた社内規程に基づいて行っております。

為替相場の変動により外貨建取引から発生する将来のキャッシュ・フローが変動するリスクを軽減するため、先物外国為替契約等のデリバティブを用いたヘッジ取引を利用しておりますが、当該リスクを完全に回避できる保証はありません。また、当該リスクを軽減するためのヘッジ取引についても、想定した範囲を超えて為替相場が変動した場合には、機会損失等の別のリスクが発生する可能性があります。

 

 

リスク項目

資金調達および金利変動

発生可能性 中

影響度 小

リスク内容

当社グループは、必要資金の大部分を外部からの借入金等の有利子負債により調達しております。2024年3月末時点での有利子負債額約2,149億円の大部分は固定金利であり、金利上昇による直接的な影響については当面軽微であると判断されますが、将来的な金利上昇局面においては資金調達における利息負担の増加により、当社グループの業績及び財政状態が影響を受ける可能性があります。

リスク対応

当社グループは、調達コストとリスク分散の観点から、直接金融と間接金融を組み合わせ、長期と短期のバランスを勘案しながら、低コストかつ安定的な資金を確保するよう努めております。また、調達環境の急変時に当面の運転資金を確保できるよう、コミットメントラインを設定しております。併せて、グループ全体の資金効率の向上と金融費用の削減を目的として、日本国内及び海外においてCMS(キャッシュ・マネジメント・システム)を導入しております。

 しかしながら、金融危機の発生等により、想定を超えて調達環境が悪化した場合、当該リスクを完全に回避できる保証はありません。

 

 

リスク項目

非流動資産の減損リスク

発生可能性 低

影響度 大

リスク内容

当社グループが保有する非流動資産の価値が収益性の低下や経済情勢等の変化により下落した場合には、必要な減損処理を実施することになります。2024年3月末時点における有形固定資産、使用権資産、無形資産及びのれん及びその他の非流動資産に含まれる投資不動産の帳簿価額の合計は約4,479億円で、減損処理を実施した金額はその他の費用に計上され、当社グループの業績及び財政状態が影響を受ける可能性があります。

リスク対応

当社グループにおける一定額以上の投資案件については、定められた金額基準や重要性に応じた経営会議において前提条件や想定されるリスクの分析、収支計画の妥当性や回収可能性に関する審議を実施し、投資採算性の精度向上に努めております。

投資実行後は、承認会議体に対する定期的な進捗報告が定められており、計画に対する下方乖離が大きい場合は改善施策に関する審議がなされ、その実行を通じて当該リスクの軽減に努めております。

しかしながら、想定を超える事業環境の悪化や経済情勢等の変化が生じた場合、当該リスクを完全に回避できる保証はありません。

 

 

リスク項目

情報セキュリティ

発生可能性 中

影響度 大

リスク内容

当社グループは、事業を営む上において生産、販売、会計等の情報システムを利用しております。これらの情報システムは、地震その他の自然災害、機器の故障、高度なサイバー攻撃、その他セキュリティ上の問題等により個人情報や機密情報の漏洩、情報システムの一定期間の停止等が生じる可能性があります。この場合、当社グループの業績及び財政状態が影響を受ける可能性があります。

リスク対応

情報セキュリティは経営に関する重大な課題と認識しており、グループ全体を対象にリスクを評価し、適切な情報セキュリティ対策を計画的に実施しております。ファイアウォール、不正侵入防止システム、ウイルス対策等の技術的対策の導入や従業員へのセキュリティ教育・訓練を実施しております。また、不正アクセスを受けた際の早期発見・早期対応の仕組みづくりやマルウェア感染でも復旧可能なバックアップ方式の見直し等、継続的にセキュリティ強化を図っております。しかし、これらの取組みを超えた事象や、社会全般にわたる問題が発生した場合等、サイバー攻撃を含めた脅威を100%防ぐことは困難であり、当該リスクを完全に回避できる保証はありません。

 

 

リスク項目

人権リスク

発生可能性 中

影響度 中

リスク内容

当社グループは、事業及びサプライチェーン上における人権問題を重要なリスクと認識しております。事業及びサプライチェーン上において人権問題が発生し、適切に対応できなかった場合には、当社グループの社会的な信用が低下し、当社グループの業績及び財政状態が影響を受ける可能性があります。

リスク対応

当社グループは、人権デュー・デリジェンスを実施し、労働災害(労働安全衛生)、ハラスメント及び長時間労働を重点リスクとして特定しております。グループ各社は、これらの重点リスクのうち最低1項目以上を選定し、予防活動に取り組んでおります。また、これらのリスクが顕在化した場合には、迅速な対処はもとより、優先的に再発防止に努めております。加えて、サステナブル調達の取組みを通じたサプライヤーとのエンゲージメント強化も推進しております。

こうした活動を通じて人権問題顕在化の予防に努めておりますが、想定を超える事態が発生した場合には、当該リスクを完全に回避できる保証はありません。

 

 

リスク項目

役職員の重大な違反行為

発生可能性 低

影響度 中

リスク内容

当社グループは、透明性のある誠実な企業グループを目指し、コンプライアンス意識の徹底と定着に継続的に取り組んでおります。しかしながら、役職員個人による法令違反を含むコンプライアンス上の問題が発生した場合には、法令による処罰等や社会的制裁を受けることによりグループブランドの失墜を招き、当社グループの業績及び財政状態が影響を受ける可能性があります。

リスク対応

コンプライアンス問題については、代表取締役社長が指名する取締役、執行役員等で構成されるコンプライアンス委員会が当社グループ全体を統括し、当社コンプライアンス部が当社グループ全役職員のコンプライアンス意識を高める施策を継続的に行っております。また、国内外に内部通報窓口を整備し、適正な処理の仕組み及び通報者の保護に関する事項を定めることにより、不正行為等の早期発見と是正を図っております。

贈賄防止については、国内では「ニッポンハムグループ行動基準(日本版)」、海外グループ各社は「ニッポンハムグループ海外ガバナンスポリシー」にて公務員への接待や贈答を禁止しております。

 

 

リスク項目

気候変動

発生可能性 低

影響度 大

リスク内容

干ばつや豪雨、気温上昇等の異常気象による生産・製造活動の停滞、あるいは関係法令の改正による環境投資が大幅に増加する可能性があります。その場合、当社グループの業績及び財政状態が影響を受ける可能性があります。

リスク対応

当社グループは気候変動による飼料価格の上昇を重要なリスクと認識し、飼料要求率(家畜の増体重量当たりの必要飼料量)の向上や、飼料会社との連携強化、国産飼料の活用等を通じて影響緩和を図っております。

詳しくは、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組(2) 気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言への取組」をご覧ください。

 

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」)の状況の概況は以下のとおりです。

 

 ①財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度における食品業界は、地政学的リスクを要因とした原燃料などの高騰、日米金利差などを要因とする円安の進行などを背景に、昨年に続き各種商品の値上げの動きが継続したことにより、消費者の節約志向・低価格帯へのシフトがより一層顕著となりました。足元では賃上げの動きは2023年よりも強まりを見せておりますが、実質賃金のマイナスは依然続いており、先行き不透明な状況が続いております。

このような中、当期は「中期経営計画2023」 の最終年として、再成長への礎を築く一年と位置づけ、強みの強化と仕組みの変革を通し、収益力の早期回復に取り組んでまいりました。

以上の結果、当連結会計年度の売上高は、食肉事業における国産鶏肉の価格転嫁や加工事業での価格改定の浸透に加え、ボールパーク事業において来場者数が増加したことなどにより、対前年同期比3.5%増の1,303,432百万円となりました。事業利益は、食肉事業の牽引に加え、加工事業における収益性改善、海外事業において販売環境が好転したことなどから、対前年同期比75.6%増の44,939百万円、税引前当期利益は持分法による投資利益が減少したものの事業利益が大幅に増加したことなどから対前年同期比83.2%増の40,599百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益は対前年同期比68.8%増の28,078百万円となりました。

 

(注) 事業利益は、売上高から売上原価、販売費及び一般管理費を控除し、当社グループが定める為替差損益を加味するとともにIFRS会計基準への調整及び非経常項目を除外して算出しております。

 

 セグメントの概況は以下のとおりです。

海外事業本部には、非継続事業に区分したBPUに関連する牛肉事業を含めております。

 

〔加工事業本部〕

売上高は、乳製品・エキス・一次加工品において価格改定が浸透したことや、ブランディング強化により主力商品である「シャウエッセン」の販売量が伸長したこと等から、対前年同期比3.2%増の431,233百万円となりました。事業利益は、商品ミックスの改善ならびに業務用商品や乳製品・エキス・一次加工品の販売伸長に加え、原材料価格の高騰に対する価格改定効果等により、対前年同期比93.9%増の9,730百万円となりました。

 

〔食肉事業本部〕

売上高は、量販店向けの国産鶏肉・豚肉販売が好調に推移したことや、インバウンド需要の増加に伴い外食向けの牛肉販売が伸長したこと等から、対前年同期比4.1%増の780,596百万円となりました。事業利益は、輸入食肉において冷凍商品を中心とした在庫の適正化に伴い収益性が改善したことや、国産鶏肉・豚肉における相場・需要がいずれも堅調に推移し利益確保が進んだことから、対前年同期比17.0%増の34,026百万円となりました。

 

〔海外事業本部〕

売上高は、BPUの株式譲渡や豪州産牛肉の販売単価が下落したこと等の影響で、対前年同期比9.8%減の289,964百万円となりました。事業利益は、豪州の牛肉事業における生体牛価格の下落、販売量増加による収益改善に加え、トルコの鶏肉事業において飼料高に対する価格転嫁の浸透が進んだことなどから、2,460百万円(前連結会計年度は5,036百万円の事業損失)となりました。

 

〔その他〕

売上高は、ボールパーク事業において「北海道ボールパークFビレッジ」の開業に伴い、観客動員数が増加したことに加え、非試合日に季節に合わせた種々のイベントを実施したことにより来場者数が当初年間計画の300万人を超えたこと等から、対前年同期比40.0%増の23,866百万円となりました。事業利益は、ボールパーク事業における新たなビジネスモデルにより広告・チケット・飲食収入等の収益性が大幅に改善したこと等から、1,920百万円(前連結会計年度は483百万円の事業損失)となりました。

 

地域別売上高の状況は以下のとおりです。

① 日本

日本では、食肉及び加工食品の販売単価が上昇したことにより、売上高(外部顧客に対する売上高)は、対前年同期比4.0%増の1,144,565百万円となりました。

② その他の地域

その他の地域では、主に食肉の販売単価が下落したことにより、売上高(外部顧客に対する売上高)は、対前年同期比0.1%減の158,867百万円となりました。

 

当連結会計年度末の総資産は、前年同期末比2.2%増の958,237百万円となりました。流動資産は、当連結会計年度末が金融機関の休業日であった影響等により営業債権及びその他の債権が前年同期末比12.5%増の165,022百万円となりましたが、BPUの株式譲渡に伴い売却目的保有資産が前年同期末比99.5%減の65百万円、その他の流動資産が前年同期末比19.3%減の20,318百万円となったこと等から、前年同期末比1.1%減の423,430百万円となりました。非流動資産は、繰延税金資産が前年同期末比9.7%減の28,072百万円となりましたが、無形資産及びのれんが前年同期末比27.9%増の25,822百万円となったことで、前年同期末比5.0%増の534,807百万円となりました。

負債につきましては、相場高と需要回復を受けた仕入の増加等により営業債務及びその他の債務が前年同期末比10.1%増の116,773百万円となりましたが、キャッシュ・マネジメント・システムの海外グループ会社への展開に伴う資金効率の向上等により有利子負債が前年同期末比11.2%減の214,852百万円となったこと等から、前年同期末比3.5%減の419,035百万円となりました。

親会社の所有者に帰属する持分につきましては、現金配当11,275百万円等により減少しましたが、当期利益28,078百万円による増加、円安の進行による在外営業活動体の換算差額11,656百万円の増加等により、前年同期末比7.0%増の527,503百万円となりました。

以上の結果、親会社所有者帰属持分比率は2.4ポイント増の55.0%となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における現金及び現金同等物残高は、前年同期末に比べ479百万円増加し、65,465百万円となりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー) 86,586百万円の純キャッシュ増

 営業活動によるキャッシュ・フローは、営業債権及びその他の債権の増加17,559百万円等がありましたが、税引前当期利益40,599百万円、減価償却費及び償却費39,719百万円、営業債務及びその他の債務の増加9,953百万円等により、86,586百万円の純キャッシュ増となりました。(前期は、11,331百万円の純キャッシュ増)

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー) 39,224百万円の純キャッシュ減

 投資活動によるキャッシュ・フローは、固定資産の取得48,479百万円等により、39,224百万円の純キャッシュ減となりました。(前期は、63,677百万円の純キャッシュ減)

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー) 53,189百万円の純キャッシュ減

 財務活動によるキャッシュ・フローは、借入債務による調達51,230百万円等がありましたが、短期借入金の減少30,798百万円、借入債務の返済62,898百万円等により、53,189百万円の純キャッシュ減となりました。(前期は、28,417百万円の純キャッシュ増)

 

③生産、受注及び販売の状況

a. 生産実績(製造原価ベース)

区分

当連結会計年度
(自 2023年4月1日
  至 2024年3月31日)

前年同期比(%)

ハム・ソーセージ(百万円)

109,560

103.0%

加 工 食 品(百万円)

206,767

103.9%

 

(注) 主に加工事業本部の生産実績であります。当社グループでは、生産飼育から処理・加工・販売までの全てを一貫して行っており、その生産・販売品目も主として食肉に関連した広範囲かつ多種多様なものとなっております。また、同種の品目についても容量、形態、包装等も一様でなく、食肉等については、販売用とハム・ソーセージ、加工食品等の原料用にも使用されており食肉等の生産実績を金額あるいは数量で示すことが困難であります。

 

b. 受注実績

当社グループは、主に需要予測に基づく予定生産を行っております。一部、当社の子会社プレミアムキッチン㈱は受注生産を行っておりますが、受注当日ないし翌日に製造、出荷しているため、受注高並びに受注残高の記載を省略しております。

 

c. 販売実績

   販売実績については、「(1)① 財政状態及び経営成績の状況」において記載しております。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析検討内容は以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①重要性がある会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、IFRS会計基準に準拠して作成しております。したがって、当連結財務諸表の作成にあたっては、主としてわが国の会計慣行に準拠して作成された会計帳簿に記帳された数値に対していくつかの修正を加えております。IFRS会計基準に準拠した財務諸表の作成にあたり、連結会計年度末日現在の資産・負債の金額、偶発的な資産・負債の開示及び報告対象期間の収益・費用の金額に影響を与える様々な見積りや仮定を用いております。実際の結果は、これらの見積り等と異なる場合があります。

なお、重要性がある会計方針及び見積りの内容については、「第5経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要性がある会計方針 及び 4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載しております。

 

②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a. 経営者の問題認識と今後の方針について

当社グループが、2021年4月からスタートした「中期経営計画2023」は2024年3月期に最終年度を迎えました。「中期経営計画2023」では、経営理念の実現に向け、2030年における当社グループのありたい姿であるニッポンハムグループ「Vision2030」をマイルストーンとして位置付け、その達成に向け、既存事業の強化と構造改革、持続可能性の追求、成長領域における事業育成について中長期視点で取り組んでまいりました。また、ニッポンハムグループ「Vision2030」の実現に向けて取り組むべき重要な社会課題として特定したニッポンハムグループ「5つのマテリアリティ」の取り組みを「中期経営計画2023」における各施策とリンクさせ実行してまいりました。

 

当連結会計年度の取り組み成果としては、加工事業に関しては、ハム・ソーセージ及びデリ商品について、商品構成の見直しを進めたことや主力ブランドの販売に集中したことで収益性が改善しました。食肉事業に関しては、国産鶏肉・豚肉の需要増に伴う増収効果に加え、輸入食肉の在庫適正化に伴う収益性改善、食肉販売会社による外食向け販売の伸長などが寄与し増益となりました。海外事業に関しては、豪州牛肉事業の素牛仕入れ価格の低下と販売量増加による収益改善に加え、米州加工事業の販売数量増加などが寄与し増益となりました。

 

「中期経営計画2023」の策定時の目標とする経営指標としては、連結売上高1兆2,600億円、事業利益380億円、事業利益率3.0%、ROE4.6%、ROIC3.5%を掲げておりました。当連結会計年度の結果としては、連結売上高1兆3,034億円、事業利益449億円、事業利益率3.5%、ROE5.5%、ROIC4.1%となりましたが、新たなステージへ向け構造改革と成長戦略・風土改革に取り組み、更なる成長を目指してまいります。

 

当社グループは、2030年のありたい姿「Vision2030」 “たんぱく質を、もっと自由に。”の実現に向けて、2025年3月期から2027年3月期の3カ年の経営計画として「中期経営計画2026」を策定しました。「中期経営計画2026」は「たんぱく質の価値を共に創る企業へ」をテーマとして掲げ、たんぱく質を日本で最も供給する食品企業から、たんぱく質の価値を共に創る企業への変革を目指します。また、2021年からの当社ビジネス環境とサステナビリティに関するステークホルダーからの期待の変化を鑑み、マテリアリティの見直しを行いました。これまでの食のインフラを担う企業としてたんぱく質を安定的にお届けすることに加え、様々なパートナーと力を掛け合わせ、たんぱく質の新たな価値創造に取り組むことで、社会課題の解決に努めてまいります。

「中期経営計画2026」最終年度となる2027年3月期において、売上高1兆3,800億円、事業利益610億円、事業利益率4.4%、ROE7.0~8.0%、ROIC5.0~6.0%を経営目標とし、達成を目指してまいります。

 

中期経営計画2026の取り組み

<構造改革>

商品ミックス改善

ハムソーセージ、デリ商品の商品ミックス改善

ブランド牛肉の販売強化による利益安定化

最適生産体制

ハムソーセージ、デリ商品の最適生産体制(拠点再編)

国内豚事業の再構築

低収益事業見直し

水産/乳製品/エキス・一次加工事業内の低収益ライン見直し

<成長戦略>

ブランド強化

主力ブランド伸長(シャウエッセン)

主力ブランド伸長(桜姫)

営業横断

加工品販売拡大

グローバル強化

北米・アセアンの加工事業拡大

R&D強化

新領域での事業創造実現に向けた取組み

ボールパーク

ボールパークの更なる魅力度向上とチーム力強化

 

 

セグメントごとの見通しは、以下のとおりであります。

 

〔加工事業本部〕

加工事業につきましては、戦略的な商品統廃合の影響により減収を見込むものの、主力商品の更なるブランディング強化に加え、「シャウエッセン」を中心とした収益性の高い商品に注力することで商品ミックスを改善し、利益確保を進めてまいります。

<構造改革>

商品ミックス改善

利益の最大化に向けた商品ポートフォリオの構築

・コンシューマ、PB向け商品の収益性改善の継続と、高収益のブランド商品販売伸長によるブランド比率の向上

<構造改革>

最適生産体制/

低収益事業見直し

ハムソーセージ、デリ商品事業の最適生産体制(拠点再編)水産/乳製品/エキス・一次加工事業内の低収益ライン見直し

・ライン削減により製造経費を圧縮

<成長戦略>

ブランド強化

(シャウエッセン)

若年購買層の拡大

・ブランドエクステンションとプロモーション強化でブランド浸透を継続

海外での販路拡大

・テストマーケティングを継続し、海外でのブランド認知度向上

(24年4月シンガポールへの輸出認可取得)

生産性改善

・高生産ラインへの投資を継続し、コスト競争力を向上

 

 

〔食肉事業本部〕

食肉事業につきましては、収益基盤となる国産鶏肉及び外食向け豪州産牛肉の販売拡大を図るとともに、生産部門の生産性改善や、輸入牛肉を中心とした高付加価値商品の販売強化により、収益性向上に取り組みます。

<成長戦略>

営業横断

お肉をもっとおいしく食べてもらうために加工品販売強化

・加工品販売スキルの向上に向け、加工事業本部人財を配置

・DXによる加工/食肉のシステム連携・業務支援

<成長戦略>

ブランド強化

(桜姫)

サプライヤー起点から、顧客・生活者視点に立った商品開発

・加工事業本部のマーケティング人財や社外人財を採用し、BtoCビジネスのマーケティングを強化(産地パック開発等)

・社外共創で自社生産能力拡大し、桜姫の生産比率を向上

<構造改革>

最適生産体制

国内豚事業の再構築に向けて、社外共創を進展

・生産・処理工場の再編効果最大化、販売戦略の見直し

 

 

〔海外事業本部〕

海外事業につきましては、豪州牛肉事業において、処理頭数増加による生産性向上並びに付加価値の高いブランド商品の販売拡大を図りつつ、北米加工事業では、アイテム数増加によるトップライン拡大を進めるとともに、製造の安定化により収益性の向上に取り組んでまいります。 

<成長戦略>
グローバル強化

(加工品事業拡大)

日本で培った加工技術を海外に(Taste of Japan)

北米 

・新たな販路拡大に向け、商品開発機能を強化

・製造拠点拡充も視野に、数量拡大に向けた生産体制を構築

アセアン

・社外との共創を深化させ、販売力を強化

・将来の基盤強化へ、国内商品の輸出販売強化

<構造改革>

商品ミックス改善

豪州他

・ブランドカテゴリー(グラスフェッド・グレインフェッド)の構成比UPによる利益の安定化

・継続的な事業見直しによる利益安定化

<構造改革>

低収益事業の見直し

 

 

〔その他〕

ボールパーク事業につきましては、チーム強化費用の増加を見込むものの、開業2年目となる次期においても来場者数300万人以上を目標とし、当連結会計年度と同水準の利益確保を目指してまいります。

 

b. 資本の財源及び資金の流動性について

当社グループの主な資金需要は、「中期経営計画2026」における「構造改革」「成長戦略」「風土改革」をテーマとした戦略実行に必要な設備投資、成長・R&D投資、株主還元の他、運転資金、借入金の返済及び利息の支払等であります。

資金調達については、調達コストの適正化とリスク分散を意識し、直接金融と間接金融を組み合わせ、長期と短期のバランスを勘案しながら、低コストかつ安定的な資金を確保するよう努めております。また、グループ全体の資金効率の向上と金融費用の削減を目的として、日本国内及び海外においてCMS(キャッシュ・マネジメント・システム)を導入しております。

 

5 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

当社グループの事業を支える基盤研究から、応用研究、商品開発に及ぶ研究開発活動は、中央研究所、及び各セグメントの開発部門によって展開されております。その中核となる中央研究所では、「Vision2030」“たんぱく質を、もっと自由に”の実現に向けた5つのマテリアリティ「たんぱく質の安定調達・供給」、「食の多様化と健康への対応」、「持続可能な地球環境への貢献」、「食やスポーツを通じた地域・社会との共創共栄」、「従業員の成長と多様性の尊重」における技術革新及び新規事業を目指した研究開発を推進してまいりました。

 

当連結会計年度の主な取組みは以下のとおりです。

(1) 「たんぱく質の安定調達・供給」に関する研究開発

当社基幹事業である食肉事業領域における研究開発として、健全で生産性の高い食肉生産を目指した取組みを継続しております。定期的な家畜の健康診断による農場衛生管理の支援を行うとともに、家畜の生産管理に寄与する新しい技術や新たなブランド食肉の開発につなげる研究開発を進めております。

持続可能な畜産業を目指した研究開発の一つとしてIoT・AIを活用した養豚管理の技術開発に関する取り組み「スマート養豚プロジェクト」を継続いたしました。本プロジェクトは養豚事業における働き方の改革と生産性の向上を実現することを目指しており、当社中央研究所とグループ会社の日本クリーンファーム㈱が㈱NTTデータグループ及び㈱NTTデータSBCと連携して進めております。前連結会計年度取り組んだ繁殖業務支援システムの開発に続き、当連結会計年度におきましては、豚の体重と相関がある指標の一つとして知られている臀部幅から豚群体重を推定できるシステムの開発を行いました。これにより、養豚業界の活性化と労働人口の減少という社会課題の解決に繋がるものと期待しております。今後、さらに本取り組みを推進し、グループ事業の生産性を向上させる技術を確立し、将来的には畜産の持続可能性と環境負荷低減に貢献することを目指してまいります。前連結会計年度に取り組んだ研究成果である、AI技術を活用して豚の発情を検知し繁殖業務を支援するシステム「PIG LABO Breeding Master」が農林水産省及び公益社団法人農林水産・食品産業技術振興協会が共催する令和5年度民間部門農林水産研究開発功績者表彰において会長賞を受賞しました。

国内の家畜防疫及び畜産物の安定供給への貢献を目指した研究開発の一つとして、家畜伝染病の一種である口蹄疫※を迅速に検出する技術開発に取り組みました。この度、食品検査用キットの研究開発で培った技術を活用し新たに検査キットを開発、動物用体外診断用医薬品として承認されました。簡易迅速性を有するため、早期段階での察知、被害の最小化への寄与が期待されます。今後も当該キットの供給を通じて、家畜伝染病予防法に基づく国内の口蹄疫防疫対策、畜産物の安定供給に貢献してまいります。なお、当該キットは、農林水産省が実施する「戦略的監視・診断体制整備推進委託事業」により開発され、全国の家畜保健衛生所に配備されました。

また、持続可能なたんぱく質として期待されている細胞性食品(培養肉)分野におきましては、最適な家畜由来細胞や安全な培養液、生産効率の良い培養システムの研究開発を外部研究機関やスタートアップ企業と共同で進めています。未来のたんぱく質供給の一つの選択肢となるよう研究開発を推進してまいります。

 

※口蹄疫とは、口蹄疫ウイルスによって起こる伝染病で、主に偶蹄動物(牛、豚、羊、山羊等)が感染します。伝染力が非常に強く、感染拡大のスピードが速いため、世界的な食料需給に大きな影響を及ぼし、経済的被害が最も大きい疾病のひとつです。

 

(2) 「食の多様化と健康への対応」に関する研究開発

国内最大級のたんぱく質供給企業として、中央研究所では当社グループからお届けしている様々な商品におけるお客様の安全・安心の向上に寄与するために、当社グループ品質保証を支える食品検査とその技術開発を積極的に進めております。当連結会計年度におきましても、消費者に安心して当社グループ商品を手にしてもらうために、引き続きグループ商品とその原材料の安全を確認するための検査を継続いたしました。さらに、食品衛生管理技術の研究開発を進め、事業を通じて社会の課題解決を行い、食の多様化への貢献を図りました。

今後も食品衛生および品質管理のための検査機能強化と、その基盤技術を生み出す研究開発を推進し、当社グループ商品の品質向上と世界の食品産業全体の多様化、安全・安心に貢献していく技術の開発を進めてまいります。

環境負荷低減を目的として未利用・低利用の畜産資源の高度利用を目指した健康食品、健康機能素材の研究開発を継続して実施いたします。

また、中央研究所に所属する管理栄養士(公認スポーツ栄養士)が、北海道日本ハムファイターズやセレッソ大阪及びジュニアの選手に対し栄養指導を行っており、今後も「食と健康」分野の取り組みを継続し、社会の発展に貢献してまいります。

当連結会計年度の当社グループ全体の研究開発費は、3,155百万円です。

なお、当社グループの研究開発活動は、主として食品事業活動に必要な基盤研究から商品開発に及ぶ様々な研究開発を推進しており、特定のセグメントに関連付けることが困難であります。