当社は、中央卸売市場の卸売業者としての公共的使命を担い、生産から消費に至る流通全般の動向を見極め、グループ会社と連携して水産物の安定的供給を通じて消費者に健康的で安全な食生活の支援を目途としてまいります。当社グループは内外より集荷し、販売に努め、経営の効率化・合理化により収益力を強化し、会社の財務内容の充実を図り、将来にわたる安定した健全経営を基本方針としてまいります。
当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
・当社グループは、「消費者の皆様の豊かで魅力的な食生活を第一義に考え、その満足度向上に貢献する」ことを社会的使命・存在意義(ミッション)と定め、このミッションのもと「ワンランク上の対応ができる水産物流通企業」をめざします(ビジョン)。
・当社は、上記ビジョンの実現に向けて、東京中央卸売市場という「伝統的で信頼性の高い」市場の維持・発展に貢献するとともに、時代の変化に即した「革新的で将来性のある」新しい流通市場を創出していきます。
・当社グループは、新たな事業への挑戦とリスクの適切なコントロールを両立させ、持続的な成長を達成するため、「変化に興味を持つ」「広い視野を持つ」「鮮度と旬を極める」という行動指針(バリュー)を掲げています。こうした行動指針に従いながら、高度な倫理観にもとづくフェアで透明性の高い組織運営を実現し、社会的責任の遂行に努めます。
(2)経営戦略等
当社グループは、持続的な企業価値の向上を図るため、「着実な成長の実現」「さらなる成長への挑戦」「事業基盤強化への改革」を3つの基本方針とし、それら方針のもと具体的な戦略・戦術へと展開してまいります。
<持続的な企業価値向上のための基本方針>
① 着実な成長の実現
*資源アクセスの強化
*粗利益率向上へのこだわり
*直接販売経費のさらなる削減
*強化すべき商品カテゴリーの見極め
*高付加価値商品の深耕
*新たな販売先の選定
*AERO TRADING社の持続的成長
② さらなる成長への挑戦
*海外事業の積極的拡大
*業務提携事業の積極的展開・推進
*機動的なM&Aの検討
③ 事業基盤強化への改革
*業務の効率化によるさらなる生産性向上
*人材投資の拡大
*強固なグループ経営の深耕
*選択と集中の継続
*株主還元の充実
*DX(デジタルトランスフォーメーション)への積極的取組み
*ESG経営の推進
サステナビリティに関しましては、当社グループが事業を推進する上での必須条件であり「E:環境」への配慮と保全、「S:社会」との共生、さらにそれを支える「G:ガバナンス」体制の強化が重要であるとの考えのもと、働き方改革の積極的な推進によりワークライフバランスの向上を図り、さらなる生産性向上、人財基盤の強化を目指すとともに、水産物卸売事業を継続していくための根幹である水産資源の持続可能性に配慮した取組みにも努めてまいります。グループ運営においては、より実効的なガバナンス体制の構築に努めるとともに、選択と集中によるグループ横断的な経営・人的資源の再配分を実施してまいります。
中央卸売市場における卸売業者である当社は、市民の豊かな食生活を支える基幹的インフラとしての機能を担っており、集荷、分荷、価格形成、決済と公正な取引等の役割を引き続き果たす矜持をもって、80有余年を超える豊富な経験やグループ内外のネットワークを背景に新たな商流・新たなサービス・新たなドメインに果敢に挑戦し、勝ち残るのではなく勝ち進んでいく水産物卸売市場業界の唯一無二のリーディングカンパニーとして、一層の企業価値向上と株主共同の利益の最大化に取り組んでまいります。
(3)経営環境
水産物卸売市場業界におきましては、少子高齢化の進行や国内人口の減少、ライフスタイルの変化等により魚食が減少する状況にあり、さらに、海水温の上昇による水産資源への影響やそれに伴う漁獲規制、生産者の高齢化や漁業就労者数の減少、市場外流通や市場間競争の激化、海外での魚食普及による調達コストの上昇から、取扱数量が伸び悩む傾向が恒常化し、引き続き厳しい事業環境で推移するものと思われます。
また、トラックドライバーの年間時間外労働時間の上限が制限される、「物流の2024年問題」を受け、物流費の増加による利益の減少、荷物の入荷遅延に伴う鮮度への影響、特定の日に荷物が集中することによる集荷販売計画の見直し等、水産物流通を取り巻く環境も大きく変化してきております。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上課題
上記経営環境のなか当社グループにおきましては、社会・事業環境の変化に対応すべく、機動的かつサステナブルな事業遂行と経営基盤の強化が必須であるとの考えのもと、主力事業である水産物卸売事業についての持続的成長を経営の最優先課題と認識して取り組み、その中で、グループ各社との連携を強化し、集荷機能、保管機能、物流機能での効率化を図りシナジー効果を高めてきた他、在外子会社であるAERO TRADING社(カナダ・バンクーバー市)における漁業権の取得等、資源アクセスの強化や、産地と連携した商材の確保と品質改善の促進、海外事業の積極的拡大、直接販売経費の削減等の施策を推し進めてまいりました。
また、当事業年度において、祖業である卸売業務に加え、これまで蓄積してきた様々なノウハウや施策を掛け合わせ、新たな価値を創出する事を目的としてリテールサポート室を当社に設置いたしました。今後、サプライチェーンの川上から川下の双方へビジネス領域の更なる拡大を図り、当社のみならずグループ全体での収益拡大を目指してまいります。
(5)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、売上高だけではなく利益を重視した業績管理の徹底と一層のコストの削減及び効率性の高い投資により自己資本利益率(ROE)について8%を上回ることを目標とし、企業価値を高めることを目指してまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(東都水産グループ サステナビリティ基本方針)
当社グループは、「消費者の皆様の豊かで魅力的な食生活を第一義に考え、その満足度向上に貢献する」との社会的使命・存在意義(ミッション)のもと、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の観点から持続可能なオペレーション並びにサプライチェーンを追求するとともに、商品やサービスの提供により新たな価値を生み出し、社会課題解決への貢献と、企業価値の持続的成長を目指します。
1.安全・安心な水産物・サービスの提供
安全・安心な水産物・サービスを提供し、消費者の皆様の豊かな食生活に貢献します。
2.資源の有効活用と環境の保全
環境問題の重要性を認識し、資源の有効活用と環境の保全に努めます。
3.ステークホルダーとの協調
すべてのステークホルダーとの積極的なコミュニケーションを推進し、公正かつ透明性の高い経営に努めるとともに、豊かな社会づくりに貢献します。
4.社員の安全・健康の確保と人格・人権の尊重
職場における社員の安全・健康の確保に努めるとともに、多様な社員一人ひとりの人格・人権を尊重し、ゆとりのある豊かな職場環境の実現に努めます。
5.ガバナンスの充実
市場における自由な競争を尊び、法令と社会倫理にもとづくフェアで透明な企業活動を行うとともに、コーポレートガバナンスの充実に努めます。
(1)ガバナンス
当社は、以下の「経営理念」の実現を通じて、当社の企業価値を長期的に最大化するため、「どのような経営戦略を策定し、どのような組織体制で業務を執行し、これを監督すべきなのか、あるいは、どのように経営の透明性を確保し、どのように株主をはじめとするステークホルダーとの良好な関係を維持していくべきなのか、倫理観とコミットメントを持って常に最良のものを追求し続けること」をコーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方としています。なお、当社におけるサステナビリティ関連のリスク及び機会を監視し、管理するためのガバナンス体制に関しては、コーポレート・ガバナンス体制と同様となります。
(経営理念)
〇当社は、「消費者の皆様の豊かで魅力的な食生活を第一義に考え、その満足度向上に貢献する」ことを社会的使命・存在意義(ミッション)と定め、このミッションのもと「ワンランク上の対応ができる水産物流通企業」をめざします(ビジョン)。
〇当社は、上記ビジョンの実現に向けて、東京中央卸売市場という「伝統的で信頼性の高い」市場の維持・発展に貢献するとともに、時代の変化に即した「革新的で将来性のある」新しい流通市場を創出していきます。
〇当社は、新たな事業への挑戦とリスクの適切なコントロールを両立させ、持続的な成長を達成するため、「変化に興味を持つ」「広い視野を持つ」「鮮度と旬を極める」という行動指針(バリュー)を掲げています。こうした行動指針に従いながら、高度な倫理観にもとづくフェアで透明性の高い組織運営を実現し、社会的責任の遂行に努めます。
取締役会は、当社の企業価値を長期的に最大化するため、環境変化の洞察、優先順位の決定とゴール設定、正しい情報収集と適切なリスクマネジメントを期待役割として、経営戦略に関する基本方針をはじめ、法令・定款及び取締役会規則で定められた重要な業務執行に関する意思決定を行います。また、当社では経営の意思決定及び業務執行の迅速化と効率化を図るため執行役員制度を採用しており、常勤取締役・執行役員ミーティングをその都度開催しております。また、グループ各社の代表者等とグループ会議(取締役会に統合)を定期的に行っております。
当社は、コーポレート・ガバナンスに関する基本方針を実現する制度として、現在の事業の構造や規模を勘案した結果、いわゆるオペレーティングモデルといわれる監査役会設置会社を採用しています。取締役会は、機動的かつ機能的な意思決定を可能とするため少数精鋭の陣容としています。そのうえで、社外取締役の選任や執行役員制度の導入、評価・報酬協議会の設置等により、モニタリング機能の確保・強化も図り、オペレーティングモデルを前提としつつ、モニタリングモデルの考え方も導入したハイブリッドなガバナンス体制を構築しています。
(2)戦略
①サステナビリティ戦略
当社グループは、今後も持続的な企業価値の向上を図るため、「着実な成長の実現」、「さらなる成長への挑戦」、「事業基盤強化への改革」を3つの基本方針とし、それら方針のもと戦略・戦術へと展開して参ります。
<持続的な企業価値向上のための基本方針>
①着実な成長の実現
*資源アクセスの強化
*粗利益率向上へのこだわり
*直接販売経費のさらなる削減
*強化すべき商品カテゴリーの見極め
*高付加価値商品の深耕
*新たな販売先の選定
*AERO TRADING社の持続的成長
②さらなる成長への挑戦
*海外事業の積極的拡大
*業務提携事業の積極的展開・推進
*機動的なM&Aの検討
③事業基盤強化への改革
*業務の効率化によるさらなる生産性向上
*人材投資の拡大
*強固なグループ経営の深耕
*選択と集中の継続
*株主還元の充実
*DX(デジタルトランスフォーメーション)への積極的取組み
*ESG経営の推進
②人的資本戦略
当社グループの幹となる水産物卸売事業は、古くからの人と人との直接的つながりを重視するビジネスモデルであり、人的資本が様々な資本の価値創造の源泉であると認識しております。しかしながら、水産物卸売事業は深夜業であり、食料安定供給のため市場開場日が多いことから所定休日が一般的な企業と比して少なく、人口動態の変化により若年労働人口が減少する中で、新卒・既卒とも就業希望者が減少する傾向にあり、その確保に苦慮しております。当社グループは、働きやすい職場環境実現のため、残業時間の低減や有給休暇取得推奨に積極的に取り組み、法定を超える産前休暇制度の導入、定年後再雇用制度の導入等、多様な人材がやりがいをもって働き続けられるよう職場環境の整備をすすめております。
(3)リスク管理
当社グループでは、各種組織会議体(※)を設置し、サステナビリティに関するリスクのみならず、経営に重要な影響を与えるリスクにつき、網羅的・総括的に管理しております。各種組織会議体において発見されたリスクは、抽出・分析・評価を行ったうえで、対応が必要と判断したリスクに対して所管部署が中心となって、各種施策を実施しております。
各種組織会議体は、各種施策の進捗状況やリスクの最新の状況等を、執行役員等を通じて、トップマネジメント、取締役会、監査役会に報告する体制を構築しております。
(※)内部監査室、業務監査室、遅延売掛金会議、在庫会議、安全衛生委員会
(4)指標及び目標
①サステナビリティに関する指標及び目標
前述のとおり、当社グループは今後も持続的な企業価値の向上を図るため、「着実な成長の実現」、「さらなる成長への挑戦」、「事業基盤強化への改革」を3つの基本方針としておりますが、当社グループを取り巻く事業環境は複雑かつ不透明であり、近年の海水温の変化による水産資源への影響やそれに伴う漁獲規制等、不確定要素が多々あり、合理的な指標及び目標を立てることが困難であるため、中長期的な指標及び目標を掲げる重要性は低いと判断しております。
②人材の育成及び社内環境整備に関する指標及び目標
当社グループでは、社員がその能力をいかんなく発揮し、仕事と生活の調和を図ることができる働きやすい雇用環境とするため、月の法定外労働時間の削減、年次有給休暇取得率の向上、また、人材の多様性を確保するため、女性労働者の積極的な採用、中途採用者の拡充、外国人労働者の採用を行っていく方針です。
なお、人材育成及び社内環境整備に関する方針に係る目標について、当社グループとして定めているものはありませんが、提出会社では女性活躍推進法に基づく「一般事業主行動計画」において次のとおり目標を掲げております。
「一般事業主行動計画」に基づく目標の設定は、連結グループに属する全ての会社では行われてはいないため、次の指標に関する目標及び実績は、提出会社のものを記載しております。
指標 |
目標 |
実績(2023年度) |
女性労働者数 |
営業職の女性労働者の採用を2021年度から比較し、2人以上増やす。 |
増減なし |
法定外労働 |
社員の育児時間確保にも資するワークライフバランス充実のため、月の法定外労働時間を最高でも50時間以内に削減する。 |
超過者割合 24.1% |
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年次有給休暇取得率を年間付与日数の |
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有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
①水産資源の減少による漁獲規制及び国際価格の上昇に関するリスク
世界的に水産資源が減少し、タコ・マグロ・カニ・ウナギ等の漁獲規制が年々厳しくなっております。また、欧米での健康志向の高まりやアジア地域での所得の上昇によって魚食需要が増大してきており、それに伴う水産物の国際価額上昇による、いわゆる日本企業の「買い負け」現象が強まり、また、漁獲規制が今後も続くと、卸売市場への入荷量の減少により売上高が減少し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、資源アクセスの強化を事業戦略の基軸に据え、資源の有効活用と環境の保全、消費者の嗜好の変化や消費動向を見据えつつ、漁獲動向や市況の精緻な情報収集、仕入先の多様化等の取組みを進めております。
②市場外流通に関するリスク
当社グループの国内の会社のうち、一部を除く会社は卸売市場において水産物の卸売業務を行っておりますが、年々、卸売市場を経由する取扱数量が減少しており、大型量販店等への市場外流通の取引が増加しております。この傾向が今後も続くと、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、資源アクセスの強化を事業戦略の基軸に据え、資源の有効活用と環境の保全、消費者の嗜好の変化や消費動向を見据えつつ、出荷者との緊密な連携、強化すべき商品カテゴリーの見極めや高付加価値商品の深耕、新たな販売先の開拓等の取組みを進めております。
③市場間競争に関するリスク
水産物卸売市場における取扱高が年々減少しておりますが、それに対応して市場数は減少していないため年々市場間の競合が厳しくなっております。今後この傾向が続きますと当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、資源アクセスの強化を事業戦略の基軸に据え、資源の有効活用と環境の保全、消費者の嗜好の変化や消費動向を見据えつつ、出荷者との緊密な連携、強化すべき商品カテゴリーの見極めや高付加価値商品の深耕、新たな販売先の開拓等の取組みを進めております。
④市場法の改正に関するリスク
当社グループの会社のうち、国内で水産物卸売事業を営む会社は卸売市場法の適用を受けております。2020年6月に改正卸売市場法が施行され、同法改正により取引ルールの緩和や開設者・卸売業者の許認可見直しが行われ、流通の効率化や民間資本の参入拡大が進み、市場内はもとより市場外の業者も含め、さらなる競争の激化が予想されております。これらにより当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、資源アクセスの強化を事業戦略の基軸に据え、資源の有効活用と環境の保全、消費者の嗜好の変化や消費動向を見据えつつ、強化すべき商品カテゴリーの見極めや高付加価値商品の深耕、新たな販売先の開拓等の取組みを進めております。
⑤水産食料品の安全・安心に関するリスク
食料品に係る安全・安心について消費者の意識が年々高まってきております。当社グループも食料品の流通を担う卸売業者として最重要項目であることと認識し、最善の注意をもって取り組んでおりますが、水産食料品に係る品質・表示問題が発生した場合、業績に影響を与える可能性があります。
当社グループでは、東都水産グループサステナビリティ基本方針の中で「安全・安心な水産物・サービスを提供し、消費者の皆様の豊かな食生活に貢献する。」と定めるとともに、お客様・お取引先様に安心・安全な商品をお届けするため、「食品安全方針」を策定し、豊洲市場における当社すべての売場において、食品安全のリスクを低減し、安全なフードサプライチェーンの展開を実現するための食品安全マネジメントシステムに関する国際規格であるISO22000を取得しております。
⑥得意先に対する不良債権に関するリスク
当社グループの得意先に対する売掛債権の信用リスクが年々高まっており、今後より一層債権管理体制の整備・充実を図り債権の回収と保全に努めてまいります。回収不能見込額に対しては必要十分な貸倒引当金を計上しておりますが、その変動によっては当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、得意先に対する不良債権に関するリスクへの対応策として、日常業務の中で得意先ごとの入金状況・債権残高の徹底した管理を行うとともに、定期的に売掛債権に関する遅延対策会議を開催する等の取組みを進めております。
⑦冷蔵倉庫業界に関するリスク
当社グループの冷蔵倉庫部門は、同業他社との価格競争、また、想定を上回る電気料金の高騰など予断を許さない状況が継続しております。当社グループとしても諸経費を圧縮し、合理化に努めておりますが、老朽化に伴う維持費の増加、冷凍機の更新が完了していない一部冷蔵倉庫において、モントリオール議定書に端を発し、2020年にHCFCフロン生産が全廃となったことに伴うフロン価格の高騰及び冷媒転換に伴う設備更新負担等により当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
当社グループの冷蔵倉庫部門では、逐次冷凍機の更新を行っており、脱フロン化・省電力化冷凍機への切り替えに取り組んでいる状況です。冷凍冷蔵設備の老朽化に伴う維持費の増加については、冷凍機入替に伴う電力使用料の削減で相殺される部分もありますが、今後のグループ全体の事業戦略の方向性を見極めながら、冷蔵倉庫そのものの建て替えを含めた検討を進めていきます。
⑧在庫品に関するリスク
当社グループは、市況を勘案して商品を買い付けておりますが、一定期間保有するため市場価格の変動に伴うリスクを有しております。将来の需給の状況や市場価格を予測して在庫管理を行っておりますが、将来の需給バランスによっては価格の変動により当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、在庫品に関するリスクへの対応策として、市況動向等に細心の注意を払った商品の買付け、定期的な在庫会議の開催等の取組みを進めております。
⑨大規模災害による影響に関するリスク
当社グループの仕入先並びに在庫品の保管冷蔵・冷凍倉庫は沿岸地域に集中しており、当該地域で大地震や大津波が発生した場合には、当該地域からの集荷が著しく困難になり、また、当該地域に立地する冷蔵・冷凍倉庫内の在庫品が毀損又は滅失する恐れがあります。被害の状況によっては、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
当社グループでは、大規模災害による影響に関するリスクへの対応策として、仕入先の多様化や在庫品の保管先分散化等の取組みを進めております。
⑩人材確保・育成に関するリスク
当社グループの卸売事業は深夜業であり、食料安定供給のため市場開場日が多いことから所定休日が一般的な企業に比して少なく、人口動態の変化により若年労働人口が減少する中で、新卒・既卒とも就業希望者が減少する傾向にあり、その確保に苦慮していることから、必要とする人材の確保ができない恐れがあります。また、当社営業業務が古くからの人と人との直接的つながりを重視するビジネスモデルに立脚していることから、スマホ世代の直接的なコミュニケーションを比較的苦手とする若年層の育成が難しく、営業スタイルの継承に支障をきたす恐れがあり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、働きやすい職場環境の実現のため、残業時間の低減や有給休暇の取得推奨に積極的に取り組み、法定を超える産前休暇制度の導入、定年後再雇用制度の導入等、多様な人材がやりがいをもって働き続けられるよう職場環境の整備を進め、また、健康経営への取り組みとして、人間ドック受診費用やインフルエンザ予防接種費用に対する補助、法定の健康診断に際しては、受診項目の追加を行っています。人材育成への取り組みとして、新卒新入社員に対しては、配属前にビジネスマナーや社内規則、現場営業社員等から業務に関する基礎知識を習得するための研修を実施しています。既存社員の人材育成は職場におけるOJTをベースとし、海外子会社への派遣や専門知識のスキルアップのための外部研修の受講を推奨しております。
⑪ITシステムに関するリスク
当社グループは、本社に設置しておりますサーバー内の情報システムにより、水産物卸売に関する業務及び会計処理等を行っております。経済産業省、独立行政法人情報処理推進機構作成のサイバーセキュリティ経営ガイドラインの方針に基づき、サイバーセキュリティリスクの軽減に努めておりますが、自然災害、事故、コンピュータ・ウイルス、不正アクセス、電力供給の制約や大規模停電、故障や不具合等によりシステムあるいは通信ネットワークに重大な障害が発生した場合、当社グループの業務に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、東都水産株式会社及びグループ企業の情報セキュリティ基本方針(セキュリティポリシー)と、ITセキュリティ規程を策定し、経済産業省、独立行政法人情報処理推進機構作成のサイバーセキュリティ経営ガイドラインの方針に基づき、サイバーセキュリティリスクを軽減するため、外部接続のネットワークに対してはファイアウォール、Webフィルター、侵入防御、アンチウイルスを、社内の情報機器のサーバー、パソコンにはアンチウイルスソフトを導入しウイルスの脅威に対応しています。また事業の継続のため、情報システムBCP対策、重要データの保存、データアクセス管理を行い、データの保全とデータ漏洩、改ざん防止等の対策を行っています。今後もそれら対策が有効に機能しているかを定期的に確認するとともに、情報セキュリティの更なる確保へ向けた継続的な改善に努めていきます。
⑫感染症拡大に関するリスク
新型コロナウイルス等をはじめとする重大で強毒性の感染症が発生・蔓延した場合には、水産物卸売事業はもとより、付随する水産加工品の製造販売や冷蔵倉庫業等のグループ全事業部門において需要減退リスクが生じます。仮に食料品を取り扱う当社グループの事業拠点で当該感染症が発生した場合には、風評等により取引が激減し、当社グループの経営に影響を及ぼす可能性があります。また、当該感染症が蔓延し、社員や取引先・物流業者等で大量の感染者が発生すると、事業継続そのものに影響が及ぶ可能性があります。
当社グループでは、感染症拡大に関するリスクへの対応策として、感染予防に関する注意喚起、必要に応じたテレワークの導入、通常業務の中での衛生管理の徹底、罹患者が発生した場合の対策等、現時点で考えられる出来得る限りの措置を講じており、今後においても状況に応じた改善に努めていきます。
⑬気候変動に関するリスク
水産業界においては、近年特に、温暖化が原因とされる海水温の上昇による漁獲水域の変化や、これまで見られなかったような極端な不漁に見舞われる魚種が現れてきています。また、台風等の悪天候による時化の増加により、出漁日数が減少し、その影響で漁獲量の減少が顕著になってきています。当社グループの主要な事業である水産物卸売事業においては、天然の水産物を扱っているという性質上、かかる状況がさらに増大するようなことがあれば、卸売市場への入荷量の減少により売上高が減少し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、資源アクセスの強化を事業戦略の基軸に据え、資源の有効活用と環境の保全、消費者の嗜好の変化や消費動向を見据えつつ、漁獲動向や市況の精緻な情報収集、仕入先の多様化等の取組みを進めております。
⑭国際紛争をはじめとする地政学に関するリスク
当社グループでは、世界各地で漁獲された水産物を扱うとともに、輸出を通じ海外市場への展開を図っております。加えて、グループ内に在外子会社が存在しています。それらに関連する諸国において、地政学的問題、予期せぬ法令の変更、労働環境や習慣等に起因する予測不可能な事態の発生、治安の悪化、国家間の経済制裁、テロ・戦争・感染症の発生、その他の要因による社会的または政治的混乱等が発生した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
これらのリスクに対し、当社グループでは、展開を図る海外市場や在外子会社が所在する各国の情勢を定期的にモニタリングし、経営サポート等を図るとともに、多様な地域、多様な魚種の取扱いが可能となるよう資源アクセスの強化を進めております。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、2023年5月に新型コロナウイルス感染症の感染法上の分類が5類に引き下げられたこと等により、人流が徐々に拡大し、訪日外国人の増加によるインバウンド需要の拡大も相まって緩やかな回復基調で推移いたしました。一方で、国内では円安に起因するインフレや2024年問題に伴う物流抑制、少子高齢化に伴う労働人口の減少等により、また、海外ではロシア・ウクライナ紛争の長期化や中東情勢等、地政学的リスクに起因した不安定要素が増大し、先行きについては予断を許さない状況が継続するものと思われます。
このような状況のなか当社グループは、引き続き諸経費全般の増加抑制に努めるとともに、多様なニーズに対応するための商品調達力の強化や、新規取引先や新しい販路の開拓及び既存得意先への拡販に努め、グループ会社間の連携強化、人材採用の積極化、「東都水産グループサステナビリティ基本方針」に則ったESG経営の推進など、更なる収益構造の改革・経営基盤の強化を図ってまいりました。また、新型コロナウイルス感染症の影響もあり、消費者の健康意識や食の安全安心への意識が一層高まるとともに、取引先の要望も多様化してきており、これに応えるべく集荷・販売への機動性確保と、消費者の皆様の豊かで魅力的な食生活の創出を第一義に考えた商品提供に取り組んでまいりました。
サステナビリティに関しては、ESG(Environment:環境、Social:社会、Governance:ガバナンス)の観点から持続可能なオペレーション並びにサプライチェーンを追求することや、商品やサービスの提供による社会課題解決への貢献と企業価値の持続的成長を目指すことを基本理念として昨年度策定いたしました「東都水産グループサステナビリティ基本方針」に則り、ESG経営への取組みを進めてまいりました。
当連結会計年度の財政状態及び経営成績は次のとおりであります。
a.財政状態
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末と比べ5,007百万円増加の40,247百万円となりました。
当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末と比べ1,427百万円増加の13,319百万円となりました。
当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末と比べ3,580百万円増加の26,928百万円となりました。
b.経営成績
当連結会計年度の経営成績は、売上高104,802百万円(前年同期比8.8%増)、営業利益2,923百万円(同1.8%増)、経常利益3,573百万円(同13.8%増)、親会社株主に帰属する当期純利益2,488百万円(同7.8%減)となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
水産物卸売事業は、売上高96,266百万円(前年同期比10.5%増)、セグメント利益1,831百万円(同19.6%増)となりました。
冷蔵倉庫及びその関連事業は、売上高7,865百万円(同8.6%減)、セグメント利益845百万円(同28.7%減)となりました。
不動産賃貸事業は、売上高670百万円(同1.0%増)、セグメント利益218百万円(同20.1%増)となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、税金等調整前当期純利益の計上及び 仕入債務の増加等により、前連結会計年度末と比べ2,183百万円増加(前連結会計年度 資金の減少1,981百万円)し、8,594百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において営業活動の結果増加した資金は3,432百万円(前連結会計年度 資金の増加256百万円) となりました。これは税金等調整前当期純利益の計上及び仕入債務の増加等によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において投資活動の結果減少した資金は1,005百万円(前連結会計年度 資金の減少1,946百万円) となりました。これは主に無形固定資産の取得による支出によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において財務活動の結果減少した資金は393百万円(前連結会計年度 資金の減少490百万円)と なりました。これは主に長期借入金の返済による支出によるものです。
なお、キャッシュ・フロー指標のトレンドは、以下のとおりであります。
(参考)キャッシュ・フロー関連指標の推移
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第72期 2020年3月期 |
第73期 2021年3月期 |
第74期 2022年3月期 |
第75期 2023年3月期 |
第76期 2024年3月期 |
自己資本比率(%) |
58.1 |
60.7 |
64.8 |
66.3 |
66.9 |
時価ベースの自己資本比率(%) |
35.1 |
57.7 |
58.9 |
76.8 |
63.6 |
キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年) |
2.4 |
1.6 |
9.6 |
18.2 |
1.4 |
インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍) |
86.9 |
132.0 |
22.8 |
14.7 |
160.8 |
(注)自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い
1.いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。
2.株式時価総額は、自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しております。
3.キャッシュ・フローは営業キャッシュ・フローを利用しております。
4.有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。
③仕入及び販売の実績
a.仕入実績
セグメントの名称 |
取引区分
|
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
||
数量(屯) |
金額(百万円) |
前年同期比(%) |
||
水産物卸売事業 |
受託品 |
23,434 |
- |
- |
買付品 |
84,312 |
89,318 |
108.5 |
|
水産物卸売事業計 |
107,747 |
89,318 |
108.5 |
(注)セグメント間の取引については相殺消去しております。
b.販売実績
セグメントの名称 |
取引区分 |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
||
|
数量(屯) |
金額(百万円) |
前年同期比(%) |
|
水産物卸売事業 |
受託品 |
23,434 |
1,662 |
109.1 |
買付品 |
85,770 |
94,604 |
110.6 |
|
水産物卸売事業計 |
109,204 |
96,266 |
110.5 |
|
冷蔵倉庫及びその関連事業 |
- |
- |
7,865 |
91.4 |
不動産賃貸事業 |
- |
- |
670 |
101.0 |
合計 |
109,204 |
104,802 |
108.8 |
(注)セグメント間の取引については相殺消去しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。
②当連結会計年度の財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績等
1) 財政状態
当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末と比べ5,007百万円増加し、40,247百万円となりました。
流動資産は、前連結会計年度末と比べ3,477百万円増加の23,651百万円となりました。主な要因は、現金及び預金が1,914百万円、売掛金が667百万円増加したことによるものです。
固定資産は、前連結会計年度末と比べ1,530百万円増加の16,596百万円となりました。
有形固定資産は、前連結会計年度末と比べ213百万円減少の7,516百万円となりました。主な要因は、建設仮勘定が222百万円減少したことによるものです。
無形固定資産は、前連結会計年度末と比べ1,152百万円増加の5,112百万円となりました。主な要因は、漁業権が1,148百万円増加したことによるものです。
投資その他の資産は、前連結会計年度末と比べ590百万円増加の3,967百万円となりました。主な要因は、投資有価証券の増加によるものです。
当連結会計年度末における負債合計は、前連結会計年度末と比べ1,427百万円増加の13,319百万円となりました。
流動負債は前連結会計年度末と比べ693百万円増加の7,757百万円となりました。主な要因は、支払手形及び買掛金が866百万円増加したことによるものです。
固定負債は、前連結会計年度末と比べ734百万円増加の5,561百万円となりました。主な要因は、繰延税金負債が614百万円増加したことによるものです。
当連結会計年度末における株主資本は、1,951百万円増加の23,454百万円となりました。主な要因は、利益剰余金が1,951百万円増加したことによるものです。
その他の包括利益累計額は、前連結会計年度末と比べ1,628百万円増加の3,473百万円となりました。主な要因は、為替換算調整勘定が812百万円増加したことによるものです。
この結果、自己資本比率は前連結会計年度末の66.3%から66.9%となりました。
2) 経営成績
当社グループの当連結会計年度の経営成績等は、売上高につきましては、取扱数量の増加等により前連結会計年度と比較して8.8%、8,440百万円増加の104,802百万円となりました。
売上総利益は、前連結会計年度と比較して2.8%、208百万円増加の7,758百万円となり、売上総利益率は7.40%となりました。
販売費及び一般管理費は、前連結会計年度と比較して3.4%、158百万円増加の4,835百万円となりました。主な要因は、雑費や人件費の増加によるものです。その結果、営業利益は前連結会計年度と比較して1.8%、50百万円増加の2,923百万円となりました。
営業外収益は、前連結会計年度と比較して91.2%、324百万円増加の681百万円となりました。
営業外費用は、前連結会計年度と比較して65.0%、57百万円減少の30百万円となりました。
その結果、経常利益は、前連結会計年度と比較して13.8%、432百万円増加の3,573百万円となりました。
特別利益として固定資産売却益、特別損失として減損損失33百万円等を計上しました結果、親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度と比較して7.8%、209百万円減少の2,488百万円となりました。
3) キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
b.経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの主たる事業は水産物卸売事業であります。当社グループの経営に影響を与える要因として、水産資源の減少による漁獲規制、国際価格の上昇による日本企業の「買い負け」及び市場外流通の増加等による取扱数量の減少が挙げられます。これらにつきましては、大手量販店等、新規取引先の開拓及び新規出荷者の開拓等、検討を行っております。また、在外子会社のAERO TRADING CO.,LTD.(カナダ・バンクーバー市)において、北米・中国向け高単価商材のさらなる販売強化に努めるとともに、漁業権の積極的な取得を進めることによって集荷力の強化を図り、同社からの商材供給を通じたグループ全体の収益拡大も進めます。
前述の他に当社グループの経営に影響を与える要因は、「3.事業等のリスク」に記載のとおりであります。これらにつきましてもリスクを回避すべく検討を行っております。
c.資本の財源及び資金の流動性
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、商品の仕入、製造費及び販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、設備投資や漁業権の取得等であります。
当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を確保することを基本方針としております。
短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資や長期運転資金の調達につきましては、金融機関からの長期借入を基本としております。
なお、当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は、4,825百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、8,594百万円となっております。
d.経営方針・経営戦略、経営上の目標達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、売上高だけではなく利益を重視した業績管理の徹底と一層のコストの削減及び効率性の高い投資により自己資本利益率(ROE)を現在の水準より向上させ、企業価値を高めることを目指しております。
当社グループの自己資本利益率(ROE)は前連結会計年度末と比較して、2.45ポイント減少し9.90%となりましたが、当社グループが目標としております8.00%を上回りました。今後も企業価値を高めることを目指してまいります。
e.セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
水産物卸売事業
当社グループの主要部門である水産物卸売事業の全体的概況として、鮮魚はカツオ、イワシ、エビ類が量販店への販売強化により、ハマチやカニ類は単価の値下がりはあったものの積極的な集荷により、それぞれ数量・金額とも前年を上回る結果となりました。主力商品のマグロは国内天然物を中心に機動的に販売を行い、数量は微増ながらも単価高の影響もあり、取扱金額は前年を上回る結果となりました。他方、サンマ、イカは記録的な不漁により、ウニは浜値高により集荷が進まず、数量・金額とも前年を下回る結果となりました。鮮魚全体では、水揚量の減少や単価高により取扱数量を減らす魚種がみられたものの、集荷販売努力により、数量・金額とも前年を上回る結果となりました。
冷凍魚は、冷鮭鱒が水揚げ量の減少により、冷ギンダラ、冷エビ類は円安の影響から他国に買い負け、数量を扱えず、数量・金額共に前年を下回る結果となりました。冷マグロは単価の大幅な下落による値ごろ感から、数量は伸長したものの、取扱金額では前年を下回る結果となりました。他方、冷カレイ、冷イカ、冷タコは、荷主や販売先との取組の強化により、それぞれ数量・金額とも前年を上回る結果となりました。冷凍魚全体では、単価が前年の大幅な上昇基調から一転、反落したものの、積極的な集荷、販売に努めた結果、数量、金額共に前年を上回る結果となりました。
塩干加工品は、イクラが相場の乱高下による買い控えの影響が出たことにより数量、金額ともに前年を下回る結果となりました。他方、明太子は原材料価格の高騰に伴う単価の上昇により取扱数量は減少したものの、取扱金額は前年を上回る結果となりました。練製品、塩鮭、数の子は、量販店・スーパーへ向けての積極的な営業により、数量・金額ともに前年を上回る結果となりました。塩干加工品全体では、原料の調達コスト上昇に伴い単価高となったものの、取引先への様々な提案を行うことで取扱数量は前年並みを確保、取扱金額では前年を上回る結果となりました。
以上の結果、水産物卸売事業部門の当連結会計年度の売上高は、前連結会計年度と比較して10.5%、9,176百万円増加の96,266百万円となりました。
セグメント利益は、前連結会計年度と比較して19.6%、300百万円増加の1,831百万円となりました。これは主に、売上高の拡大に伴う売上総利益の増加によるものです。
セグメント資産は、前連結会計年度末と比較して1,109百万円増加の15,644百万円となりました。これは主に、売掛金の増加によるものです。
冷蔵倉庫及びその関連事業
冷蔵倉庫及びその関連事業部門の当連結会計年度の売上高は、前連結会計年度と比較して8.6%、743百万円減少の7,865百万円となりました。これは主に、AERO TRADING社(カナダ・バンクーバー市)においてギンダラやオヒョウの販売が減少したことによるものです。
セグメント利益は、前連結会計年度と比較して28.7%、340百万円減少の845百万円となりました。これは主に、売上高の減少に伴う売上総利益率の減少によるものです。
セグメント資産は、前連結会計年度末に比べ1,194百万円増加の13,011百万円となりました。これは主に漁業権の取得や商品及び製品の増加によるものです。
不動産賃貸事業
不動産賃貸事業部門の当連結会計年度の売上高は、前連結会計年度と比較して1.0%、6百万円増加の670百万円となりました。これは主に既存管理物件の稼働率向上によるものです。
セグメント利益は、前連結会計年度と比較して20.1%、36百万円増加の218百万円となりました。これは主に、管理コストの減少によるものです。
セグメント資産は、前連結会計年度末に比べ61百万円増加の4,222百万円となりました。これは主に有形固定資産の取得によるものです。
該当事項はありません。
該当事項はありません。