当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
<経営理念> 革新と挑戦と夢 夢に向かってイノベーションを起こし挑戦し続けるという、当社グループに受け継がれる創業精神を表したもの。
<社 是> 感謝 即 実行 自然の恵み、お客様や取引先様をはじめすべてのステークホルダーに対して感謝の心を持つこと、そしてそれを実行(行動)によってお返しすることを表したもの。
<理念体系>
(注)Well-beingとは、Well(よい)とBeing(状態)からなる言葉で、個人の権利や自己実現が保証され、身体的、精神的、社会的に良好な状態にあることを意味する概念のことです。当社グループにおいては、その範囲を「人」に留めず、私たちを取り巻く自然環境や地域社会においてもWell-beingであることを目指しています。
(2)経営環境
当社グループを取り巻く経営環境は、地政学リスクの顕在化、世界的なインフレに伴う消費活動の減退など、対応すべき様々なリスクが混在していると認識しております。
(国内食品事業)
国内食品事業を取り巻く経営環境は、全体として厳しい状況が継続すると想定しております。エネルギー価格等のコスト上昇に加えて、物価高と実質賃金の上昇までに時間を要していることから消費者の節約志向も依然として続くと予想しております。一方、2020年4月以降の国内における水産練り製品市場については、「内食需要」や「健康志向」の高まりを受け、主要企業の主力商品年間販売高が前年同時期より伸長(㈱富士経済「2024年食品マーケティング便覧」より)している等、明るい兆しも見えてきております。
中長期的には、総務省「令和2年(2020年)国勢調査」によると日本の総人口は、2015年以降95万人程度減少しており、今後も高齢化率を上昇させながら総人口は減少していくことが予測されております。国内食品事業の主力商品である水産練り製品は、50代から70代の年齢層をロイヤルユーザーとしており、統計上この年齢層の人口は当面は増加するとされております。また、共働きや単身世帯の増加、女性の就業率上昇により、平均世帯人員の減少と世帯数の増加が進んでおります。これらの影響により、簡便性や即食性の高い商品や賞味期限を長期化した商品、健康志向に応える高付加価値食品の需要が増加し、加えて宅配、中食市場の拡大が予想されます。
(海外食品事業)
海外食品事業を取り巻く経営環境は、和食への関心が世界的に広がりを見せる中において、同時に健康志向も高まっており、市場規模の成長・拡大が継続すると想定しております。アジア・アフリカの人口が増加し、特にアジア諸国の購買力が向上する中で、品質を重視する方向へ消費者の嗜好が変化しております。また、水産練り製品のグローバル商品となったカニカマは年々消費量が拡大しており、当社グループにおいても販売数量が増加傾向にあります。
一方で、先進諸国におけるインフレによる消費意欲の減退や、ウクライナ・中東情勢緊迫化等の国際的政治対立による世界経済の不透明感は継続しており、海外での事業活動の見通しについては予断を許さない状況が続いております。
(食品関連事業)
食品関連事業を取り巻く経営環境は、通信販売の拡大に起因した物流需要が急激に増加する一方、物流の担い手不足を受けたトラック乗務員の労働環境や処遇の改善を背景とした「2024年問題」と称される物流事業に関する規制が強化され、管理コストやエネルギーコストの増加も相まって、厳しい競争環境が続くものと予想されます。
これら経営環境の変化に端を発した物流業者間の提携や合併の動きも活発となり、さらに安全・安心、環境への関心の高まりを受け、多様な物流サービスを提供するソリューションの展開はさらに活発化すると予想され、当社グループが展開する共同配送事業への注目も高まっております。
また、AIやIoT等の高度化した情報技術と車の自動運転やドローン等の新技術が融合し、省人化や自働化への応用が活発化していくことにより、市場規模だけでなく物流サプライチェーン自体が変容していく可能性があります。
(3)中期的な経営戦略等
当社グループは、創業100周年を迎える2038年における「目指す姿」を「総合食品グループ」・「開発型企業」・「グローバルカンパニー」とする長期経営戦略を策定いたしました。この15年後の「目指す姿」から現在を概観することにより課題を抽出し、その実現に向けて3ヶ年ごと計5回の中期経営計画を立案し実行することで、目標達成に向けた歩みを進めてまいります。
<2038年に「目指す姿」>
①総合食品グループ ・・・・・ おいしさと共に健康に貢献する
水産練り製品を中心に、魚肉以外のタンパク質製品の拡充も進め、中核事業として「タンパク質製品」・「日本食」という軸を確立する。また、健康面での価値を積極的に発信し続けることで、「健康の紀文グループ」というイメージをより強固なものとする。商材の拡大とともに、物流や調達をはじめとする関連機能を強化し、総合食品グループへと成長する。
②開発型企業 ・・・・・・・・ 新たなおいしさと楽しさを創造する
マーケティング・商品開発機能の強化を進め、既存事業にとらわれすぎない新たな事業を開拓する。将来のニーズに対応できる商品の開発に力を入れ、新技術も積極的に採用することで、開発型企業としての組織力を強化し、新たな価値を持つ商品・事業を創造し続ける。
③グローバルカンパニー ・・・ おいしさで世界の食文化に根付く
企画・開発力を高め、商品の具現化サイクルを加速する。
日本食の横展開と商社機能をドライバーに、海外でのマーケティング強化と商流の構築を進め、地域ごとのおいしさと食文化に対応した製品の展開に力を入れ、グローバルカンパニーへと成長する。
<中期経営計画における基本方針>
当社グループの長期経営戦略の実現に向けた第一段階となる、2024年4月からの「紀文グループ 中期経営計画2026」においては、「持続的に成長できる強固な企業体質を確立する」を基本方針としております。その取組み内容は以下のとおりであります。
①成長戦略の推進と新たな価値創造
既存領域における確実な成長と事業領域の拡大により、「目指す姿」の一つである「総合食品グループ」の実現に向けた布石とすべく、以下の事項に取り組んでまいります。
マーケティング・商品開発機能を強化し、健康機能の付加や健康コンセプトを確立するほか、消費者の食嗜好の変化に対応してまいります。また、差別化や競争優位性の源泉となるブランディング戦略を構築し、実行してまいります。各事業セグメント別の成長戦略は以下のとおりです。
(国内食品事業)
国内シェアの更なる伸長が期待できるカニカマ・竹輪カテゴリーを、供給能力の増強や製品ラインアップの拡充を通じて重点的に強化してまいります。また、気温による需要の変動が少ない商品の開発、拡販に注力してまいります。
高たんぱくや低脂質、低糖質などの健康志向と簡便性、たのしさ等のお客様のニーズに合致した商品ラインアップの充実、SNSを活用したプロモーションの実施、小売店での店頭演出の強化に取り組んでまいります。
また、業務用を中心にチャネルを拡大し、水産練り製品をはじめ農産物・畜産物・鶏卵等の販売を強化することによって、着実な成長を図ってまいります。
加えて、今後の成長に向け当社の有する経営資源を活用した新たな事業領域の拡大に向けた探索も続けてまいります。
(海外食品事業)
水産練り製品を中心とした日本食をコア領域とし、マーケティング機能と商品開発の強化により和食・日本食を通じた現地食文化への「紀文ブランド」の浸透と、市場トレンドである健康志向ニーズに対応した商品展開を進めるとともに、新規市場開拓を進めてまいります。また、それを支えるグローバルワイドでの供給能力の増強も図ってまいります。
(食品関連事業)
ITと物流の高度な連動を更に強化し、高品質かつ環境負荷に配慮したチルド物流サービスを推進するとともに、グループ企業との事業で培った食の「安全・安心」に関わるノウハウ等の外販にも取り組んでまいります。
②資本効率の改善
売上規模拡大による成長とコスト削減や生産性の向上による収益性の改善とともに、運転資本をはじめとする投下資本の圧縮を通じたROIC経営の推進に取り組み、キャッシュ創出力を高めてまいります。
こうして生み出したキャッシュを株主様還元の向上、借入金の圧縮に振り向けてまいります。さらに生産能力の増強・新商品や新規事業の対応や生産性の向上、環境負荷低減に向けた投資に加えて、国内工場の老朽化や今後の供給機能強化に向けた対応のための準備をしてまいります。
③経営基盤の整備
将来の成長に向けた経営基盤の整備に取り組んでまいります。
「企業は、“人”だけ」の理念に基づき、多様な人財が活躍により多彩な能力の発揮を期待し、人財への投資を通じて働きやすさと働き甲斐を高めることで今後の当社グループの成長に資する有能な人財の育成と社員のWell-beingの実現に貢献してまいります。
また、当社グループの将来の成長に向けた新たな商品価値創造の基盤となる研究開発の推進と、より高いレベルでの食の「安全・安心」の実現を推進してまいります。
加えて、サステナビリティに関する課題にも積極的に取り組み、より高いコーポレート・ガバナンス体制の構築を目指した経営の進化を続けます。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループを取り巻く環境は、国内においては消費者の節約志向が一層強まる中、世界的な原材料費の上昇傾向、生産現場と物流における人件費とエネルギーコストの上昇が起きております。また、海外では、世界的な和食への関心の広がり、健康志向の高まり等から、当社グループ事業の成長・拡大の機会が予想される中、現地の需要にマッチした商品の供給能力拡大が求められております。
加えて、エシカル消費などの生活者の意識・行動の変化及びサステナビリティに対する意識の高まりがみられ、企業行動にも変化を求められております。
こうした中で、当社グループが対処すべき課題は、以下のとおりと認識しております。
①収益力強化への取組み
国内事業の安定成長のために、流通企業との直接取引による全国販売網・チルド配送システム等によって築いてきた水産練り製品シェア№1(㈱富士経済「2024年食品マーケティング便覧」より)の強みを活かし、また物流の高度化にも取り組むことで、既存商品市場でのより一層のシェア拡大に取り組みます。
また、国内外における健康志向の高まりを事業機会とするため、水産練り製品によるたんぱく質摂取及び糖質0g麺の糖質オフ等を訴求して、健康価値を備えたおいしい商品を多様なチャネルで提供してまいります。
さらに、これらの取組みを支えるものとして、生産設備の刷新により生産力向上を図るとともに、生産効率の改善により製造原価の低減にも取り組んでまいります。
②海外事業拡大への取組み
当社グループの更なる成長のためには海外事業の拡大が必須であります。北米・中国・東南アジアを重点地区と定め、グローバル戦略商品であるカニカマを中心とする水産練り製品と、食による健康に貢献する「Healthy Noodle(糖質0g麺)」等の商品を、重点的かつ積極的に販売を拡大することにより、水産練り製品の現地食文化への一層の進展と業容拡大を図り、海外食品市場での「紀文ブランド」の存在感を高めつつ連続的な成長を実現してまいります。
③原材料調達力から製造段階までの一貫した競争優位性の追求と研究開発
世界的な「魚」の需要拡大や、海洋環境の変化と漁獲国での資源保護政策等に起因する原材料価格の急激な変動を踏まえ、原材料の調達力の向上や新規原材料の開発、製造技術の革新や配合ノウハウの蓄積に至るまでの一貫した競争優位性を追求し、中長期視点での原材料相場に左右されない経営体質の構築を図ってまいります。
その一環として、2024年4月1日付にて当社と当社子会社である㈱紀文産業の間で、重複する業務の効率化とスケールメリットを活かした購買力向上のため、原材料等の調達機能を統合いたしました。
④新規事業ドメインの拡大
成長を加速させるため、「食」に関連する分野において、既存事業と親和性の高い新規事業領域への進出に向けた商品開発等に取り組みます。当社グループは事業上の強みとして企業ブランド力、タンパク加工技術、調達ネットワーク、物流・販売ネットワークを有しております。これら当社グループが有する経営資源を最大限に活用しつつ、また外部とも互恵関係を構築・機能的な連携を推進することで、「商材」・「食シーン」・「販路」・「機能面」において事業ドメインを拡大してまいります。
また、将来の成長に向けた「すこやかなおいしさ」といった新たな商品価値創造の基盤となる基礎研究、「安全・安心」という商品価値向上のための商品の保存性・安全衛生の向上、環境負荷を低減する容器包装の改良等に向けた研究開発を推進します。その一例として、食品業界では消費者のライフスタイルの多様化に並行して、調理の簡便性・即食性に加え、保存性の需要が高まっております。これを受け、当社グループでは、さつま揚やカニカマ、中華惣菜などにおいてロングライフ商品(従来よりも賞味期限を延長した商品)のラインアップを拡充させております。今後はチルド商品のロングライフ化のみならず、レトルト商品等の常温保存商品等温度帯の多様化にも取り組み、これらの需要に応えてまいります。
⑤財務体質の改善と経営基盤整備
更なる成長と経営効率の改善を図るためには、財務面から経営の効率化を図る必要があります。売上成長と収益性の向上による営業活動によるキャッシュ・フローの拡大と運転資本の圧縮に努め、自己資本比率の向上と財務体質の改善に取り組んでまいります。
また、今後の成長に向けた経営基盤として、グループの成長に資する有能な人財の確保・育成が必要と考えております。マーケティング・商品開発・製造技術・安全衛生・研究開発・海外市場開拓・経営管理等の各分野において、将来の当社グループの中核を担う有能な人財の確保と育成に、ダイバーシティに配慮しつつ取り組んでまいります。
⑥サステナビリティ課題への取組み
現中期経営計画の基本方針における「経営基盤の整備」の一環として、当社グループを取り巻くさまざまな社会課題の解決と、当社グループの持続的な成長の両立を軸としたサステナビリティ課題に対応するため、サステナビリティ委員会(委員長:代表取締役社長)を設置しております。同委員会において、サステナビリティ課題への対応が事業環境におけるリスク低減であるとともに収益機会でもあるとし、世の中に「すこやかなおいしさ」を提供し続けるため、当社グループが重点的に取り組むべき課題を「重要取組課題(マテリアリティ)」として特定しております。そのうち、特に重要であると判断した項目については「2030年までの目標」として測定可能な目標を以下のとおり設定しております。これらの目標の実現に向けた各施策の遂行状況や、経営方針・経営計画をサステナビリティ視点で横断的に検討・議論し、その内容を取締役会に報告・提言を行うことでサステナビリティ経営を推進してまいります。なお、詳細は「第2 事業の状況-2 サステナビリティに関する考え方及び取組」に記載しております。
重要取組課題と当社「2030年までの目標」
取組カテゴリー |
重要取組課題 |
当社「2030年度までの目標」 |
地球環境の保全 |
・気候変動への適応と抑制 ・食品ロスの削減 (・持続可能な資源利用) |
・当社の事業活動におけるCO₂総排出量を30%削減(2013年度比) ・食品廃棄物量を20%削減(2013年度比) ・食品廃棄物の再生利用率99%以上 |
持続可能な資源調達 |
・持続可能な資源利用 ・プラスチック使用量の削減 ・生物多様性の保全 ・サプライチェーンの人権尊重 |
・資源管理が証明されたすり身の使用率75%以上 ・IUU漁業(※2)や児童労働、強制労働が疑われる資源の調達ゼロ ・石油原料由来プラスチックの新規使用量を30%削減(2018年度比) |
多様な人財の活躍 |
・安全・安心な職場環境 ・ダイバーシティの推進 ・多様な活躍機会の提供 (・サプライチェーンの人権尊重) |
・女性管理職比率15%の達成 ・男女別の育児休業取得率100%の達成 ・職場における安全衛生の推進 (労災発生ゼロ、健診受診率100%の維持) |
※2 IUU漁業・・・Illegal, Unreported and Unregulated漁業(違法・無報告・無規制に行われている漁業)
⑦気候変動への対応
当社グループでは、気候変動は、地球環境や企業活動に重大な影響を及ぼすものであり、気候変動問題への対応や改善に向けた取組みにより紀文グループの持続可能性(サステナビリティ)が高まるとの考えのもと、TCFD提言に基づく情報開示に取り組んでおり、その内容は「第2 事業の状況-2 サステナビリティに関する考え方及び取組‐(2)気候変動への対応」に記載しております。
(5)経営上の目標達成のための指標等
当社グループは、2024年度から2026年度までの中期経営計画において、最終年度の連結業績として、売上高1,203億円、営業利益60億円を目指しており、その他の経営上の目標達成のための管理指標は以下のとおりです。
管理指標 |
2026年度 目標 |
<参考>2023年度 実績 |
売上高成長率(2023年度比) |
12.8% |
- |
海外売上高比率 |
13%以上 |
11% |
営業利益率 |
5.0%以上 |
4.4% |
自己資本比率 |
30%以上 |
26.4% |
ROE |
15%以上 |
17.4% |
ROIC(投下資本利益率) |
10%以上 |
8.1% |
営業キャッシュ・フロー |
年間 50億円以上 |
年間 55.5億円 |
注)ROICは、税引後営業利益÷投下資本(純有利子負債+純資産)で算出しております。
(1)サステナビリティ全般
当社グループは、自然から素材をいただき“豊かな食”へと創造させる企業集団として、また企業市民として、自然の恵みに感謝し、環境との調和を図らなければならないと考えており、現在の「紀文グループ中期経営計画2026」においても「サステナビリティ経営の推進」を掲げております。“すこやかなおいしさ”で満たされた、持続可能な社会と当社グループの中長期的な成長の実現のため、当社グループによる価値創造プロセスの継続的な改善を図ってまいります。
当社グループの各工場においては、省エネルギー対応やCO₂削減等の地球温暖化対策に向け、製造設備や消費エネルギー量に留意した対応、あるいは環境配慮型パッケージの採用等を進めております。それら持続可能な社会の実現のための各種取組みの基礎となる基本方針及び行動規範は以下のとおりです。
<サステナビリティ基本方針>
私たち紀文グループは、社是である『感謝 即 実行』に基づき、自然の恵みとお客様・ステークホルダーに感謝し、SDGs(※1)の達成を柱としてESGに配慮した経営を推進する。
<基本方針に基づく行動規範>
私たち紀文グループは、「革新と挑戦と夢」という経営理念のもと、「日本の食の力でWell-beingな世界に貢献する食の総合グループ」を目指し、事業活動を行っています。この行動規範は、世の中を“すこやかなおいしさ”で満たし続けるため、私たちが遵守すべき基本的な事柄を定めたものです。
1)安心・安全な商品・サービスを提供します
2)公正な事業活動を行います
3)事業資産・情報を保全し適切に利用します
4)働きやすい環境の整備を行います
5)人権、個性を尊重します
6)社会の共有財である資源や環境に配慮します
7)各国、地域の伝統、文化を尊重します
8)事業活動に係る情報を適切に開示します
※1 Sustainable Development Goalsの略称。2015年9月の国連サミットで加盟国の全会一致で採択された、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指すための国際目標
①ガバナンス
当社グループのサステナビリティに関する活動を推進・管理するための組織としてサステナビリティ委員会(委員長:代表取締役社長)を設置しております。同委員会においては、サステナビリティ課題を横断的に検討・議論していく体制を整え、経営方針や経営計画に対するサステナビリティ視点での検証を行うとともに、サステナビリティ基本方針等の策定や「2030年までの目標」の設定及び進捗管理を行っており、その内容は適宜取締役会に報告・提言を行っております。
②戦略
当社グループが中長期にわたって価値を創造し続けるためサステナビリティに係る戦略に資する目的で、価値創造プロセスを策定しております。
当社グループのビジョンは、「日本の食の力でWell-beingな世界に貢献する食の総合グループ」であり、その実現のため、社会に「すこやかなおいしさ」を提供することを実現すべきこと(=ミッション)と認識しております。
「すこやかなおいしさ」とは、当社グループが生み出し、世の中に提供する「食」が安全・安心であるだけでなく、体にも、心にもおいしくあるべきだと考えております。 その事業活動の中心には『ものづくり理念(右記参照)』があり、これは当社グループの全ての社員の行動原則となっており、何よりも安全・安心を優先する「紀文ブランド」の礎となってきた理念であります。 中長期的に価値を提供しつづけていくためには、この理念はその範囲を拡大し、従来の安全・安心のみならず、地球環境の保全や人権尊重等といった社会課題の面においても「疑わしく無い」ことを当社グループが自信をもつこと、そして和食・日本食文化の継承者として「食」における文化的背景や空間・時間の豊かさをお伝えすることが心にもおいしい食の提供につながると考えております。 |
|
また、当社グループが中長期的に世の中に「すこやかなおいしさ」を提供し続けるにあたって取り組むべき課題のうち、当社グループの事業活動にとって特に重要度が高く、かつステークホルダーが受け取る価値としても大きいと想定するものを重要取組課題(マテリアリティ)として特定しており、その内容は以下のとおりです。
<重要取組課題>
構成要素 |
主な重要取組課題 |
SDGsとの関連性 |
食による、すこやかな体と心
<お客様のために> |
食の安心・安全 タンパク質加工技術の深化 和食・日本食文化の継承 食育、食の啓発 健康価値の探求 など |
|
協創/共創パートナーの尊重
<社員や取引先のために> |
安心・安全な職場環境 ダイバーシティの推進 サプライチェーン上の人権尊重 地域社会との連携 公正な取引、汚職防止 など |
|
地球環境との調和
<自然と環境のために> |
気候変動への対応と抑制 生物多様性の保全 持続可能な資源利用 プラスチック使用量の削減 食品ロスの削減 など |
|
誠実な事業運営
<私たち自身のために> |
各地の法令、規則、価値観の遵守 コーポレート・ガバナンスの向上 適切な情報開示 資本効率を意識した経営 など |
- |
③リスク管理
当社グループを取り巻くリスクについて、リスク管理委員会(委員長:代表取締役社長)にて網羅的に把握し、管理しております。このうち、サステナビリティに関するリスクについては、サステナビリティ委員会を主管部門として、その対応策の立案や進捗の管理を行っており、その内容はリスク管理委員会を経て取締役会に報告することで全社的リスク管理との統合を図っております。
④指標及び目標
当社グループにおける重要課題のうち、特にステークホルダーに与える影響度が大きいと想定されるものを抽出し、「2030年までの目標」として設定しております。その内容及び進捗状況等については以下のとおりです。
a.温室効果ガスの排出量の削減
当社のCO₂の総排出量は、再生可能エネルギー由来の電力の導入等に取り組んだ結果、
注)2023年度におけるCO₂排出量は現在算定中のため、2022年度の実績値を記載しております。
b.食品ロスの削減
当社の製造拠点が排出する食品廃棄物総量は、2,086.5t(2023年度)であり、基準年度である2019年度の91.7%(約8.3%の削減)であります。また、食品廃棄物の再生利用率は、99.6%(2023年度)であります。今後も、継続した工程改善等により、食品廃棄物の削減に取り組んでまいります。
c.持続可能な資源調達
当社が使用している「すり身」のうち、米国産が約5割、国産が約2割を占めており、大部分はMSC認証取得をはじめとする資源管理がなされたものを使用しております。今後、さらにその比率を高めるため、またIUU漁業からの調達ゼロを達成するため、「持続可能な資源調達」を推進し、サプライヤーと協働した各種取組みを進めてまいります。
d.プラスチック使用量の削減
包装形態の変更等によりプラスチック使用量の削減に取り組んでおりますが、商品のロングライフ化(バリア性能向上のための包材の厚肉化)や小容量・個包装化に伴い、包材の使用量としては増加する傾向にありますが、当事業年度においては、チルド餃子類に使用しているトレーを薄肉化したことで、年間約50tのプラスチック使用量を削減いたしました。今後も包材使用量のさらなる削減や、代替プラスチック等への置換を進めてまいります。
e.人財育成
当社における人財育成(多様な人財の活躍)を表す測定指標として女性管理職比率を設定しております。2024年3月末日現在の女性管理職比率は5.6%でありますが、「2030年までの目標」である15%を達成するための各種施策に取り組んでおります。その具体的な内容は「本項-(3)人的資本」に記載しております。
(2)気候変動への対応
当社グループの経営戦略に大きな影響を及ぼし得るサステナビリティ関連のリスク及び機会のうち、気候変動に対応するためTCFD(※2)提言に基づく情報開示に取り組んでおり、その内容は以下のとおりです。
①ガバナンス
気候変動に関するサステナビリティ課題については、サステナビリティ委員会における「環境保全チーム」においてCO₂排出量のモニタリングと削減に向けた各種取組みの検討を行っております。
また、TCFD提言に基づく情報開示の取り組みについては、サステナビリティ委員会事務局が中心となり構成する気候変動ワーキンググループにて検討し、その内容はサステナビリティ委員会に報告し、審議のうえ決定しております。
これら同委員会で検討及び決定した事項は取締役会に上程し、審議・決議された後に関連する各部門/各社に展開し、それぞれの経営計画・事業運営に反映いたします。
②戦略
当社グループの中長期的なリスクの一つとして気候変動を捉え、関連するリスク及び機会を踏まえた戦略と組織のレジリエンスについて、検討しております。IEA(国際エネルギー機関)やIPCC(気候変動に関する政府間パネル)による気候変動シナリオ(2℃未満シナリオ※3および4℃シナリオ※4)を参照したシナリオ分析を実施し、国内食品事業を中心に考察した、2030年・2050年時点で想定される事業への影響は以下のとおりです。なお、特定したリスク・機会は今当社グループの戦略に反映し、対応しております。
<2℃未満シナリオ>
要因 |
分類 |
内容 |
影響度 |
炭素税の導入 |
リスク |
すり身価格や包装材価格に炭素税が賦課され、調達コストが増加する |
大 |
|
リスク |
操業時のCO₂排出量に炭素税が賦課され、操業コストが増加する。 |
大 |
|
機会 |
省エネ設備への投資を積極的に進め、消費エネルギー量を減少させることで炭素税影響を軽減し、かつ生産効率が向上する。 |
中 |
再生可能エネルギーの導入 |
リスク |
温室効果ガス排出削減の観点から再生可能エネルギー使用比率を高めることにより、エネルギー調達コストが増加する。 |
小 |
環境配慮意識の向上 |
機会 |
脱炭素への取組みを推進することで、取引先との連携が強まる、また他業種との業容拡大につながる。 |
中 |
|
機会 |
温室効果ガス排出量の大きい畜産肉から水産資源へと消費者の嗜好が変化し、水産加工品の需要が高まる。 |
中 |
これら認識したリスク/機会への対応のため、以下の取組みに注力してまいります。
・生産効率の改善による消費エネルギー量の削減
・再生可能エネルギーやグリーン電力、バイオマス燃料等の導入
・環境負荷の少ない包材資材の導入
・環境政策や新技術に合わせた投資計画の適宜見直し
<4℃シナリオ>
要因 |
分類 |
内容 |
影響度 |
気象災害の激甚化 |
リスク |
調達先、取引先、納品先等の被災による操業停止や店舗営業の混乱等が発生し、サプライチェーンが寸断される。 |
大 |
|
リスク |
工場/本社が大雨や洪水等の自然災害を受け、操業停止となる。 |
大 |
|
リスク |
真夏日の劇的な増加による、品質衛生リスクが上昇する。 |
大 |
秋冬期の気温上昇 |
リスク |
秋冬期の平均気温が上昇することで、主力のおでん・鍋物関連商材の売上が減少し、収益に影響を与える。 |
大 |
夏季日数の増加 |
機会 |
真夏日などは、家庭で火を使用した調理が好まれなくなることから、調理が手軽な商材の需要が高まる。 |
中 |
これら認識したリスク/機会への対応のため、以下の取組みに注力してまいります。
・原料産地の多様化と、調達ルート/輸送ルートの複線化
・適正な在庫量の検討
・代替すり身の導入に向けた研究開発の推進
・工場の水害対策の強化(浸水防止策/浸水被害軽減策の実施等)
・衛生認証の取得による品質管理水準の向上
・当社および仕入先/協力企業の衛生管理、社員の健康管理の強化
・秋冬期における水産練り製品のおでん/鍋物以外の利用シーンの外部訴求
・新たな商品カテゴリーの開発を推進
・通年需要がある商品の開発を強化
・季節変動が少ない事業分野(海外食品事業など)を伸長
・調理の手間が少ない商品の開発を推進、外部訴求を強化
③リスク管理
気候変動ワーキンググループにて実施したシナリオ分析により、想定される気候関連リスク・機会を、発生可能性と影響度に基づき優先順位付けを実施しております。その結果、上記の重要度の大きな事項に注力して取り組み、そのリスク・機会に関する分析、対策の立案と推進、進捗管理等の状況はサステナビリティ委員会を通じて管理してまいります。
なお、サステナビリティ委員会で分析・検討した内容は、取締役会に報告し、全社的リスク管理と統合しております。
④指標と目標
温室効果ガスの総排出量の削減を指標として設定し、気候関連問題が経営に及ぼす影響を評価・管理しております。2030年度までの温室効果ガス削減目標として、CO₂総排出量の30%削減(2013年度比・当社単体)を掲げており、進捗状況は右記のとおりです。
注)2023年度におけるCO₂排出量は現在算定中のため、2022年度の実績値を記載しております。
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※2 TCFD・・・Task Force on Climate-related Financial Disclosures(気候変動関連財務情報開示タスクフォース)の略で、G20財務大臣・中央銀行総裁会議の要請を受けた金融安定理事会(FSB)により、気候関連の情報開示及び気候変動への対応を検討するため、2015年12月に設立された。
※3 2℃未満シナリオ・・・気温上昇を最低限に抑えるための規制の強化や市場の変化等、積極的な対策が取られるシナリオ
※4 4℃シナリオ・・・・・気温上昇の結果、異常気象などの物理的影響が生じるシナリオ
(3)人的資本
当社グループのバリューは、すべて<人>が有するもの、<人>が存在することによって成り立つもの、すなわち、当社グループにとっては<人>こそが経営資源のすべてであり、人以外の経営資源もまた、すべて<人>が中心となって生み出すことから、「企業は、<人>だけ」という理念を掲げ、人材を「人財」と呼称しております。
<当社グループのバリュー>
ひらめき:常識の枠にとらわれず、新しいことに挑戦すること
わざあり:タンパク加工技術等の独自技術で価値を生むこと
つながり:グループ全体の連携により、大きな価値を生み出すこと
まっすぐ:感謝の気持ちや公正さを大切にし、誠実に動くこと
当社グループの経営計画及び成長戦略を達成するため、また当社グループのバリューをより確かなものとし、かつ事業上の強みである「商品開発力」・「販売力」及び「企業ブランド」を維持向上させるため、同理念に基づいた人財の育成に取り組んでおります。
当社グループが目指す「ありたい人財像」としては、以下の内容を定義しております。
<ありたい人財像>
・変化を先取りし、常に新しいこと/困難なことに能動的に挑戦する人財
・自律的なキャリア育成を通じて、自身と組織の可能性を広げられる人財
・柔軟な発想でお客様に満足と安心を提供し続けられる人財
一方、人財の成長を育む土壌となる、会社組織の「ありたい組織像」として、以下の内容を定義しております。
<ありたい組織像>
・多様な「個」を活かし、多彩な能力が発揮できる組織
・あらゆる挑戦を奨励し、認め合い、称え合う組織
・社員と家族を大切にし、安心して、健康的に、誇りをもって働くことができる組織
これらの<ありたい姿>を実現することを「人財育成方針」・「職場環境整備方針」として定め、各種施策の企画立案・実施に取り組んでまいります。
<ありたい人財像>の実現に向けて |
<ありたい組織像>の実現に向けて |
社員一人ひとりの能力開発と成長の促進
・成長機会の提供 → 個々の目標の明確化、チャレンジ奨励面談 → 教育研修体系の充実 → 部門間(会社間)異動の活性化 → 社内公募制度の活性化
・人財採用の積極化 → 社員登用制度の拡充 → 採用ルートの多様化、キャリア採用比率の向上 |
働きやすさと、働きがいの向上
・ダイバーシティの推進と職場環境の整備 → 多様な人財に活躍の場を提供 女性管理職比率の向上 → 勤務環境・体制の整備 → デジタル技術の導入による業務効率化の推進
・職場を通じた健康の促進 →「健康」イメージの体現に向けた体制の整備
・労働条件の改善 → 継続した労働時間の削減 → 会社業績に連動した処遇(給与・賞与)の改善 |
その基本をなす当社(提出会社及び一部の連結子会社)の人事制度の骨子は、「適所適材」の考え方に基づく人員配置と、会社が期待する「役割」の達成度に応じて評価・処遇を行う「役割等級制度」であります。業務を通じたリーダーシップや専門性の向上と、ワーク・ライフバランスの両立を図るため、自らの意思でキャリアプランを選択可能とする、複線型の人事制度(管理職を除く。)としております。
また、個人が持つ能力を最大限発揮できるよう、職場環境整備の一環として総労働時間数の削減や有給休暇取得の促進等の労働条件の改善にも取り組んでおります。特に総労働時間数については継続した削減を進めており、当事業年度において年間所定休日数を6日増加(計 121日/年)し、年間所定労働時間数は1,952時間となりました。
その他にも、育児支援策の拡充、コンプライアンス研修の実施なども並行して取り組んでおり、当事業年度における当社の人財育成・職場環境整備に関連する指標ならびに施策の実施状況は以下のとおりです。
<提出会社における指標・実施状況>
項目 |
数値・その他 |
補足説明 |
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当事業年度における新規学卒者 |
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育児休業取得率 |
男性 |
25.0% |
(参考:前事業年度 22.2%) |
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女性 |
100.0% |
(参考:前事業年度 100.0%) |
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目標:前事業年度比 10%の削減 (参考:前事業年度 20.9時間/月) |
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目標:新規付与日数の70% (参考:前事業年度 11.9日) |
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全社員を対象としたコンプライアンスに係る研修・啓発及びメールマガジンの配信 |
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2022年3月期~2024年3月期に入社した新規学卒者のうち離職した人数 (参考:前事業年度 12.8%) |
これら取組内容及び実績等については、定期的に取締役会に報告・審議することで経営陣と現状及び課題の認識を共有し、当社グループが掲げる<人>を基盤とした経営を推進してまいります。
当社グループの事業の状況及び経理の状況に関する事項のうち、経営者が当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を及ぼす可能性があると認識している主要なリスクと、必ずしもそのようなリスクに該当しない事項についても、投資者の判断に重要な影響を及ぼすと当社グループが考える事項について、積極的な情報開示の観点から以下に記載しております。
当社グループは、これらのリスクの顕在化の可能性を認識した上で、当該リスクの回避及び顕在化した場合の対応に努めております。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであり、不確実性を内包しているため、実際の結果とは異なる可能性がありますので、ご留意ください。
影響の大きさ |
大 |
2-① 食品の安全性に関するリスク |
2-② 業績の季節変動リスク 2-③ 為替レートの変動リスク 4-① 自然災害に関するリスク |
1-① 原材料の市況に関するリスク 1-② 気候変動に関するリスク 2-④ 情報セキュリティに関するリスク
|
中 |
3-② 訴訟によるリスク |
1-⑤ 海外事業に関するリスク 3-① 法的規制リスク 4-② 新型コロナウイルス等の感染症発生リスク |
1-③ 秋冬期の気温と売上の関係によるリスク 1-④ 価格競争に関するリスク 5-① 借入依存度に係るリスク 5-③ 退職給付会計に係る変動リスク |
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小 |
5-② 固定資産の減損に係るリスク |
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|
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低 |
中 |
大 |
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発生の可能性 |
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(1)事業環境の変化に関するリスク
リスク項目 |
リスクの説明 |
リスク対策 |
影響の内容 |
① 原材料の市況に関するリスク |
当社グループの主力商品である水産練り製品の主原料は、国内外から調達するスケソウダラのすり身をはじめとした水産資源であります。水産資源の減少や漁獲規制の強化、あるいは国際的な水産資源の需要変化に伴う供給減等により原料価格が上昇する可能性があります。 また、原油等の需給逼迫が起き原材料市況が高騰した場合には、包装資材、容器類等の価格も上昇する可能性があります。 |
当社グループでは、安定的な原料確保に努め、これらを複数のルートから調達しております。また、当社と当社子会社である㈱紀文産業において、原材料購買力の向上と業務効率化を目的に、両社において重複する業務の統合を行っております。 このほか、当社グループでは、包装資材の削減や包装形態・材質の見直し等を進めており、原材料の調達価格の安定化を図りつつ原材料消費量の削減にも取り組んでおります。
|
・売上原価の上昇 |
② 気候変動に関するリスク |
世界的な気候変動により、年平均気温の上昇や気象災害の激甚化が引き起こされた場合には、サプライチェーンの途絶や消費者の購買行動の変化等により、当社グループ事業に影響を及ぼす可能性があります。 また、将来的な気候変動対策として炭素税が導入される等の場合には、当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。 |
当社グループでは、気候変動による事業への影響を低減させるため、あるいはそれに適応するため、TCFD提言に基づく影響度分析及び情報開示に取り組んでおり、その内容は「2 サステナビリティに関する考え方-(2) 気候変動への対応」に記載しております。 |
・事業所の被災による事業の停止又はサプライチェーンの途絶 ・災害復旧費用等の発生
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③ 秋冬期の気温と売上の関係によるリスク |
当社グループの主力商品である水産練り製品は、季節に応じて需要の変動が生じます。特に、おでん・鍋物等の寒冷な時期に需要が増加する商品が多いことから、秋冬期に想定以上の温暖な天候、特に暖冬傾向が続く場合は、おでん・鍋物関連商品を中心に売上が減少し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。 |
当社グループでは、これに対して一年を通してお客様の需要を取込むための新商品開発や販売促進活動の強化等、業績の季節変動を最小限に抑えるための対策、又は生産設備の更新又は新設による環境負荷の低減策等を講じております。 |
・年度業績の低下 |
④ 価格競争に関するリスク |
当社グループは、主力商品である水産練り製品の小売り市場において、今後さらに競争が激化した場合には、販売単価の低下又は販売促進費用の増加等により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。 |
当社グループでは、価格競争に巻き込まれないように、競合他社に対し差別化した商品の開発やプロモーション施策等の実施により、競争力の確保を図っております。 |
・年度業績の低下 |
⑤ 海外事業に関するリスク |
当社グループは、海外においても製造及び販売活動を行っており、事業を展開する各国における政治・経済・社会情勢の変化等、予期せぬ事象により当該事業の活動に問題が生じた場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。 |
当社のグループ会社統括部門において、月次事業概況報告を徴求するほか、日常的には国際事業統轄部門が業況を把握しております。 |
・海外事業セグメントの業績悪化 |
(2)当社グループの事業活動に関わるリスク
リスク項目 |
リスクの説明 |
リスク対策 |
影響の内容 |
① 食品の安全性に関するリスク |
当社グループでは、お客様に安全な食品を提供するために、当社商品衛生管理室及び当社グループの工場に品質管理課を設け、品質衛生基準に基づき、日々徹底した衛生管理を行っております。また、㈱紀文安全食品センターを設置し、品質衛生管理体制を強化しております。 しかし万が一、当社グループが提供する商品に問題が発生した場合、お客様への健康被害に加え、社会的信用の低下等による商品の販売の悪化、商品の回収や損害賠償等にかかる費用の発生等により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。 |
当社グループでは、商品の製造にあたりHACCP(注1)の考え方に則った衛生管理をしており、これを確実にするために、国内の主要な工場では食品安全マネジメントシステムの認証を取得し、製造委託先及び仕入先についても品質衛生基準に基づく管理を行っております。 さらに㈱紀文安全食品センター及び当社グループ工場の品質管理課では微生物検査、理化学検査を実施し、食品の安全を保証する活動に努めております。 |
・社会的信用の低下 ・販売状況の悪化 ・商品回収、損害賠償等の費用の発生 |
② 業績の季節変動リスク |
当社グループの業績は、第3四半期連結会計期間の売上高及び利益が他の四半期連結会計期間に比べ高くなる傾向があります(注2)。 これは、主力商品である水産練り製品・惣菜は10月~12月の第3四半期連結会計期間に需要が集中(おでん・鍋物・おせち料理等)するためであり、当該四半期連結会計期間の販売状況によっては、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。 |
当社グループでは、国内においては春夏商品の開発及びプロモーション展開、また季節変動の少ない海外において販売拡大に取り組むことで、通年での事業拡大を進めております。 |
・年度業績の低下 |
③ 為替レートの変動リスク |
当社グループは、原材料を海外から調達していると共に、海外においても製造・販売の事業を営んでおり、製商品の輸出入も行っております。 そのため、製商品と原材料の輸出入取引において予測の範囲を超える急激な為替レートの変動が起きた場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。 |
当社グループでは、原材料の調達における円建て取引や為替変動リスクをヘッジするための為替予約取引を利用しております。 |
・年度業績の低下 |
④ 情報セキュリティに関するリスク |
近年、コンピューターウイルスや不正アクセス等のサイバー攻撃が高度化してきており、それら外部からのサイバー攻撃を受け、当社グループのシステムが停止又は混乱することで、事業に大きな影響が出る可能性があります。 また、当社は個人向けにオンラインショップを運営しており、不正アクセスや運用トラブル等により、個人情報が外部漏洩する事件・事故が発生した場合は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。 |
当社グループでは、情報セキュリティ強化のため、サイバー攻撃等への対策や従業員に対する教育訓練に取り組んでおります。 また、顧客情報管理につきましては「個人情報管理規程」、「情報セキュリティガイドライン」等の社内ルールを制定・運用しており、特に個人情報の取扱いに細心の注意を払っております。 |
・事業の一部又は全部の停止 ・訴訟費用等の発生 ・社会的信用の低下による販売状況の悪化
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(3)法的規制・訴訟に関するリスク
リスク項目 |
リスクの説明 |
リスク対策 |
影響の内容 |
① 法的規制リスク |
当社グループは日本国内においては、食品衛生法、食品表示法等の法的規制を受けていると共に、海外各国においても法的規制を受けております。 将来において予期し得ない法的規制等が設けられた場合、当社グループの事業活動が制限され業績に影響を及ぼす可能性があります。 |
当社グループでは、関係法令の改廃動向について、コンプライアンス委員会、各部署門が行政機関や加盟団体主催セミナーや外部専門家からの情報提供から把握し、周知徹底を行っております。また、相談窓口としての弁護士事務所とも契約しております。 |
・売上の低下 ・対応コストの発生 |
② 訴訟によるリスク |
当社グループは、現在まで業績に影響を及ぼす訴訟を提起されている事実はありませんが、商品のクレームや事故等により訴訟を提起された場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。 |
当社グループでは、前述の「(2)‐①食品の安全性について」に記載のとおり、厳格な商品衛生管理及び品質管理のもとに製造を行っております。 |
・訴訟費用等の発生 |
(4)自然災害等に関するリスク
リスク項目 |
リスクの説明 |
リスク対策 |
影響の内容 |
① 自然災害に関するリスク |
当社グループの国内における工場等の事業所の多くは、東京都・神奈川県・千葉県・静岡県・岡山県・北海道に立地し、日本全国のマーケットをカバーしております。 したがって、消費地又は製造拠点において大規模な地震や想定を超える水害等が発生した場合には、当社グループ工場の操業停止による売上高の減少、さらに設備の修復のための費用の発生、物流の停滞等により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。 |
当社グループでは、自然災害の発生等の非常事態時の事業継続のための供給体制を整備しております。 |
・事業所の被災による事業の停止、又はサプライチェーンの途絶 ・災害復旧費用等の発生 |
② 新型コロナウイルス等の感染症発生リスク |
現時点においては、新型コロナウイルス感染症が当社グループに及ぼす影響は重大なものとはなっておりませんが、今後再び同感染症の感染が拡大した場合、あるいは新たな感染症の世界的な流行が発生した場合、社員の感染による操業停止やサプライチェーンの停滞等により、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。 |
当社グループでは、感染症拡大防止及び事業継続のため、衛生管理の徹底、社内外でのリモート会議の利用の推進と出張の削減、テレワーク・時差出勤等の効率的な事業運営を実施しております。 |
・工場の操業停止 ・サプライチェーンの停滞による売上低下と原価の上昇 |
(5)財務状況に関するリスク
リスク項目 |
リスクの説明 |
リスク対策 |
影響の内容 |
① 借入依存度に係るリスク |
当社グループの借入依存度(総資産における長期借入金、短期借入金、社債を合計した金額の割合)は、2024年3月期で35.2%であります。 したがって、今後予期せず金利水準が上昇した場合には、当社グループが望む条件での資金調達が十分に行えず、業績に影響を及ぼす可能性があります。 |
借入実行に際しては金利動向に応じ適宜、変動ないし固定金利にて調達している他、金利スワップ等のデリバティブ取引を活用することで、支払利息の増加を防いでおります。 また、現在の中計2026において資本効率の改善により財務体質の強化を掲げており、当該リスクによる影響の低減を図ってまいります。 |
・支払利息の増加 |
② 固定資産の減損に係るリスク |
当社グループでは、生産工場の土地建物等を自社保有しております。 将来において、事業環境の急変等により業績が悪化し、これらの事業用設備の収益性が低下した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。 |
設備投資の実施にあたっては、事前に収益性や投資回収の可能性について様々な観点から検討を行っております。 事業環境の急変等に備えて、平時から生産性の向上や工場稼働の確保に努めており、当該リスクの低減を図っております。 |
・特別損失の計上 |
③ 退職給付会計に係る変動リスク |
当社グループは、主に確定給付型を中心とした複数の退職給付制度を有しております。 そのため、当社グループの退職給付費用及び退職給付に係る資産及び負債は、年金資産と退職給付債務の動向によって変動し、当社グループの財政状態又は業績に影響を及ぼす可能性があります。 |
年金資産について、定期的に退職給付債務の将来予測に基づく資産運用方針、運用機関の見直しを行っております。 また、数理計算上の前提条件と年金資産の期待運用収益率についても、毎年度事業年度開始前に検討のうえ見直しを行っております。 |
・多額の退職給付費用の発生 ・退職給付に係る資産の減少による純資産額の減少 |
(注1)HACCPとは、健康危害を及ぼす恐れがある危害要因をあらかじめ把握(Hazard Analysis)した上で、原材料の入荷から製品出荷までの全工程の中で、危害要因を除去及び低減させるために特に重要な工程(Critical Control Point)を管理し、製品の安全性を確保する衛生管理手法であります。
(注2)業績の季節変動
連結業績(2024年3月期連結会計年度)
|
売上高 |
営業利益 |
|
金額(百万円) |
百分比(%) |
金額(百万円) |
|
当連結会計年度の第1四半期連結会計期間(4月~6月) |
23,699 |
22.2 |
101 |
当連結会計年度の第2四半期連結会計期間(7月~9月) |
23,993 |
22.5 |
△56 |
当連結会計年度の第3四半期連結会計期間(10月~12月) |
34,370 |
32.2 |
3,823 |
当連結会計年度の第4四半期連結会計期間(1月~3月) |
24,621 |
23.1 |
771 |
合計 |
106,684 |
100.0 |
4,641 |
(1)経営成績等の状況の概要
当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況は次のとおりであります。
① 財政状態の状況
(資産)
当連結会計年度末における流動資産は30,955百万円となり、前連結会計年度末に比べ2,990百万円増加いたしました。これは主に現金及び預金が2,090百万円、受取手形、売掛金及び契約資産が1,763百万円増加した一方で、商品及び製品が623百万円減少したことによるものです。
固定資産は40,036百万円となり、前連結会計年度末に比べ4,251百万円増加いたしました。これは主に退職給付に係る資産が4,460百万円増加したことによるものです。
この結果、総資産は、70,992百万円となり、前連結会計年度末に比べ7,241百万円増加いたしました。
(負債)
当連結会計年度末における流動負債は26,457百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,076百万円増加いたしました。これは主に支払手形及び買掛金が1,474百万円増加したことによるものです。
固定負債は25,333百万円となり、前連結会計年度末に比べ802百万円増加いたしました。これは主に繰延税金負債が1,352百万円、社債が878百万円増加した一方で、長期借入金の返済により1,117百万円減少したことによるものです。
この結果、負債合計は、51,791百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,879百万円増加いたしました。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産合計は19,201百万円となり、前連結会計年度末に比べ5,362百万円増加いたしました。これは主に利益剰余金が2,471百万円増加、退職給付に係る調整累計額が2,163百万円増加したことによるものです。
この結果、自己資本比率は26.4%(前連結会計年度末は21.2%)となりました。
② 経営成績の状況
当連結会計年度は、新型コロナウイルスによる行動制限の解除後の経済活動回復により、全体的な景況感としては緩やかな改善傾向がみられました。その一方、物価上昇による生活防衛のため日常品における消費者の節約志向は続いており、依然として先行き不透明な状況にあります。このような環境下において当社グループでは、2021年4月よりスタートした中期経営計画において収益性向上と財務体質改善による『持続的成長サイクルの確立』を目指した取り組みを推進し、企業価値の更なる向上に努めてまいりました。また、当社グループの持続的な成長とともに社会課題の解決を軸としたESG課題への対応や、コーポレート・ガバナンスの充実にも継続して取り組んでおります。この結果、当連結会計年度の業績は、売上高106,684百万円と前年同期比992百万円の増収(前年同期比0.9%増)となりました。営業利益は4,641百万円と前年同期比2,619百万円の増益(前年同期比129.5%増)、経常利益は4,404百万円と前年同期比2,643百万円の増益(前年同期比150.1%増)となりました。また、親会社株主に帰属する当期純利益は2,836百万円と前年同期比2,393百万円の増益(前年同期比540.9%増)となりました。
(単位:百万円)
|
売上高 |
営業利益 |
経常利益 |
親会社株主に 帰属する当期純利益 |
2024年3月期連結会計年度 |
106,684 |
4,641 |
4,404 |
2,836 |
2023年3月期連結会計年度 |
105,691 |
2,022 |
1,760 |
442 |
なお、当社グループの売上高・営業利益は、主力商品である水産練り製品・惣菜が秋季・冬季に需要が高まることと12月のおせち料理関連商品の売上により、第3四半期に集中する傾向にあります。前期及び当期における当社グループの各四半期における売上高及び通期の売上高に対する割合、営業利益又は営業損失(△)は次のとおりであります。
(単位:百万円)
|
2023年3月期 前連結会計年度 |
2024年3月期 当連結会計年度 |
||||||
第1 四半期 |
第2 四半期 |
第3 四半期 |
第4 四半期 |
第1 四半期 |
第2 四半期 |
第3 四半期 |
第4 四半期 |
|
売上高 |
22,848 |
23,940 |
34,982 |
23,921 |
23,699 |
23,993 |
34,370 |
24,621 |
(通期割合) |
(21.6%) |
(22.7%) |
(33.1%) |
(22.6%) |
(22.2%) |
(22.5%) |
(32.2%) |
(23.1%) |
営業利益又は 営業損失(△) |
△70 |
△715 |
2,371 |
437 |
101 |
△56 |
3,823 |
771 |
各セグメントの経営成績は、次のとおりであります。
(国内食品事業)
国内食品事業では、国内において食品の製造及び販売を行っております。
売上面では、カニカマやはんぺん等の主力である水産練り製品が年間を通して大幅な増加となりました。水産練り製品は近年、高たんぱくで低脂質なヘルシーさが着目され、またコロナ禍を経て家庭内の備蓄食材としての使い勝手の良さが再認識されております。昨年度に実施した価格改定後も販売数量が増加する商品も多く、大きく売上を伸長しました。また、食シーンの提案やSNSを活用したプロモーションを正月商戦も含め年間を通して実施したことで、当社並びに当社商品への認知度・理解度の向上に奏功していると考えております。一方で、競争環境の厳しい中華惣菜や麺状商品の売上は減少しました。今後、プロモーション施策などを通じて挽回を図ってまいります。商事部門では、年間を通して米糠油や蕎麦などの商材の売上が安定して好調を維持しました。
利益面では、価格改定の浸透と主原料のすり身価格が落ち着きを取り戻したことにより、大幅増益となりました。
この結果、当セグメントの売上高は76,077百万円と前年同期比656百万円の増収(0.9%増)となり、セグメント利益は2,836百万円と前年同期比2,796百万円の増益(前年同期はセグメント利益40百万円)となりました。
(単位:百万円)
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
||
売上高 |
セグメント利益 |
売上高 |
セグメント利益 |
75,420 |
40 |
76,077 |
2,836 |
(海外食品事業)
海外食品事業では、海外において食品の製造及び販売を行っております。
売上面では、タイ国内向けは営業活動の強化により下期から回復基調が顕在化しました。他のアジア圏、中国、米国の各市場では、インフレや経済活動の鈍化傾向等、マクロ経済の要因が年間を通じて影響しました。消費者の生活必需品を優先する節約志向や、低価格商品への購買シフト、外食産業の回復遅れなどにより、主力商品であるカニカマやHealthy Noodle(糖質0g麺)の販売が前期比で減少しました。
利益面でも、自社製品の売上減の影響が大きく、減益となりました。
この結果、当セグメントの売上高は11,999百万円と前年同期比655百万円の減収(5.2%減)となり、セグメント利益は797百万円と前年同期比331百万円の減益(29.4%減)となりました。
(単位:百万円)
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
||
売上高 |
セグメント利益 |
売上高 |
セグメント利益 |
12,654 |
1,128 |
11,999 |
797 |
(食品関連事業)
食品関連事業では、国内において食品の運送、その他食品に関連した事業を行っております。
売上面では、当セグメントの中心である物流事業で、人流の回復に伴い経済活動が活性化され、外食店舗や百貨店、観光地の土産物店向け等の物量が大きく復調したことで、堅調な業績を確保しました。さらに継続して注力してきた新規顧客の獲得や、料金・料率の改定も増収に寄与しました。
利益面では、人件費や輸送全般における諸々のコストの増加、倉庫内の安定した空調管理のための電力費の上昇が減益要因としてある一方、売上増加分やさまざまな効率化策が奏功し、利益額と利益率を確実に獲得し、増益となりました。
この結果、当セグメントの売上高は18,608百万円と前年同期比992百万円の増収(5.6%増)となり、セグメント利益は991百万円と前年同期比99百万円の増益(11.2%増)となりました。
(単位:百万円)
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
||
売上高 |
セグメント利益 |
売上高 |
セグメント利益 |
17,616 |
891 |
18,608 |
991 |
③ キャッシュ・フローの状況
(単位:百万円)
|
前連結会計年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
営業活動によるキャッシュ・フロー |
921 |
5,548 |
投資活動によるキャッシュ・フロー |
△1,422 |
△871 |
財務活動によるキャッシュ・フロー |
△755 |
△2,590 |
現金及び現金同等物の増減額 |
△1,238 |
2,132 |
現金及び現金同等物の期首残高 |
7,633 |
6,395 |
現金及び現金同等物の期末残高 |
6,395 |
8,527 |
当連結会計年度における現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末に比べ2,132百万円増加し、8,527百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業キャッシュ・フローは、5,548百万円の収入(前連結会計年度は921百万円の収入)となりました。これは、税金等調整前当期純利益3,913百万円、減価償却費1,929百万円、棚卸資産の減少額950百万円及び退職給付に係る資産及び負債の減少額1,204百万円などによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、871百万円の支出(前連結会計年度は1,422百万円の支出)となりました。これは、有形固定資産の取得による支出1,015百万円などによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、2,590百万円の支出(前連結会計年度は755百万円の支出)となりました。これは、短期借入金の純減少額1,130百万円、リース債務の返済による支出834百万円などによるものであります。
④ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
|
金額(百万円) |
前年同期比(%) |
|
国内食品事業 |
62,852 |
101.5 |
海外食品事業 |
6,373 |
97.1 |
食品関連事業 |
- |
- |
合計 |
69,225 |
101.1 |
(注)食品関連事業は、食品の配送等を主な事業とするセグメントであることから、生産に該当する事項がありませんので、記載しておりません。
b.受注実績
当社グループは、見込み生産を行っているため、該当事項はありません。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
|
金額(百万円) |
前年同期比(%) |
|
国内食品事業 |
76,077 |
100.9 |
海外食品事業 |
11,999 |
94.8 |
食品関連事業 |
18,608 |
105.6 |
合計 |
106,684 |
100.9 |
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、当該割合が100分の10未満であるため記載を省略しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しており、連結財務諸表の作成に当たり、資産、負債、収益及び費用の報告に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いております。これらの見積り及び仮定に基づく会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しておりますが、次の会計方針は、連結財務諸表における重要な見積りの判断に影響を及ぼすものと考えております。
a.退職給付会計の基礎率
当社グループは、確定給付型を含む複数の退職給付制度を有しております。
確定給付制度の債務の現在価値及び関連する勤務費用等は、数理計算上の仮定に基づいて算定しております。数理計算上の仮定については、割引率、年金資産の長期期待運用収益率や予想昇給率等の変数についての見積り及び判断が求められます。
数理計算上の仮定は、経営者の最善の見積りと判断により決定しておりますが、将来の不確実な経済条件の変動結果によって影響を受ける可能性があり、見直しが必要となった場合、連結財務諸表において認識する金額に重要な影響を与える可能性があります。
b.固定資産の減損
当社グループは、減損損失の認識の判定及び測定を行う単位として資産のグルーピングを行い、減損の兆候の有無を判定しております。減損の兆候が存在する場合、当該資産又は資産グループから得られる将来キャッシュ・フローに基づき、減損損失の認識の要否を判定しております。
減損損失を認識すべきと判定された資産又は資産グループについては、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。回収可能価額は使用価値又は正味売却可能価額により算定しております。使用価値は、当該資産から得られる将来キャッシュ・フローに基づき算定しております。
将来キャッシュ・フローの算定には、中期経営計画の前提となった数値を基に、主原料価格の過去の推移も踏まえた将来の相場予測、当社グループ内で用いている将来の収益予測等の仮定を考慮して見積っております。
当該見積り及び仮定については、見積り特有の不確実性が存在するため、実際の結果が異なった場合には、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において、固定資産の減損損失(特別損失)が発生する可能性があります。
c.繰延税金資産の回収可能性
当社グループは、繰延税金資産について、将来の利益計画に基づいた課税所得が十分に確保できること、回収可能性があると判断した将来減算一時差異について繰延税金資産に計上しております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りとなるため、事業環境等の変化により見積りが減少した場合、繰延税金資産が減額され税金費用が計上される可能性があります。
② 財政状態及び経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.財政状態及び経営成績の分析
当連結会計年度における財政状態及び経営成績の分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要① 財政状態の状況及び② 経営成績の状況」に記載のとおりであります。
b.キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの資金需要は、主に水産練り製品・惣菜向けの製造設備に係る設備投資であります。これらの資金の源泉は、営業キャッシュ・フロー及び金融機関からの借入等により調達することとしております。調達した資金は、成長と経営効率改善のための投資を実施し、資本の充実と借入の返済を進めるとともに、株主還元の安定的拡大を目指してまいります。
なお、当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
c.経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
d.経営戦略の現状と見通し
当連結会計年度を最終年度とする中期経営計画2023では、成長性と収益性の基盤づくりに取り組み、売上成長率10.2%(2020年度比)、海外売上比率13%、営業利益率4.2%、自己資本比率30%を目標値としておりました。最終年度である2023年度の業績は、会計基準変更の影響分を加味した売上伸長率と営業利益率は目標値を上回り一定の成長と利益拡大は実現できたと評価しております。一方、自己資本比率と海外売上比率は、原材料価格の高騰や国際的なインフレなど、策定時の事業環境とは異なるマクロ的な状況の変化による影響が大きく未達となりました。
当社グループは2026年度を最終年度とする新たな中期経営計画を策定し、その内容・経営目標については、前述の「第2 事業の方針 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)中期的な経営戦略等」に記載のとおりであります。
2038年の創業100周年に向けた「長期経営戦略」の実現に向け、持続的に成長できる強固な企業体質を確立いたします。
そのための基本戦略として以下の取り組みをしてまいります。
①成長戦略の推進と新たな価値創造
マーケティング力と商品開発力の強化をベースに、国内市場における既存拡大による売上増加、チャネル強化による売上規模拡大、新規進出による売上増加への挑戦、海外市場の拡大
②資本効率の改善
ROIC経営の推進、営業キャッシュ・フローの拡大、生産性の向上・コスト削減、デジタル活用の推進、財務体質の強化
③経営基盤の整備
社員のWell-being、多彩な人財の活躍推進、サステナビリティ経営の強化、コーポレート・ガバナンスの強化、研究開発の強化、安全・安心の取組
e.経営者の問題意識と今後の方針
経営者の問題意識と今後の方針につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。
経営上の重要な契約等は以下のとおりです。
(1)資本業務提携契約
当社は、マルハニチロ㈱との間で資本業務契約を締結しており、その内容は以下のとおりであります。
契約締結日 |
2024年3月25日 |
契約の名称 |
資本業務提携契約 |
契約会社名 |
マルハニチロ㈱ |
所在地 |
東京都江東区豊洲三丁目2番20号 |
契約の概要 |
当社は、マルハニチロ㈱との間で、両社の協業を通じた事業展開を目的として、国内及び海外事業における製品の開発・製造・販売等に関する資本業務提携契約を締結しております。 マルハニチロ㈱は、当該契約に基づき当社の普通株式2,261,200株(発行済株式総数の9.90%)を保有するとともに、当社の取締役候補者1名を推薦できる権利(以下、「推薦権」という。)を有しております。 なお、この推薦権に関しましては、当社においては下記の対応を行うことを当該契約に合わせて規定しておりますため、当社のガバナンスに悪影響を生じさせることはないと考えております。 マルハニチロ㈱より取締役候補者の推薦を受けたときの当社の対応は次のとおりであります。当社は、マルハニチロ㈱より取締役候補者の推薦を受けたときは、推薦を受けた取締役候補者の業務経験、見識、専門性等を総合的に評価、判断するとともに、取締役会全体としてのバランス及び多様性を考慮した上で、指名報酬委員会の答申を経て、適任と判断した場合に取締役候補者として株主総会に上程いたします。 |
当社グループの当連結会計年度における研究開発活動として、当社開発室研究開発部が中心となり差別化された商品を開発するための研究開発に、また供給本部技術部自働化推進センターが中心となり自働化技術導入による新工法などの設備開発に取り組んでおります。
当社グループの研究開発活動は、原材料の研究と製品の機能性向上、生産における効率化向上に関連する新技術・新工法の開発、製品のおいしさ・健康等のお客様への提供価値に関する研究及び新規事業に関する研究が大きなテーマであります。
当社グループ製品の原材料となるスケソウダラ等の漁獲変動に加え、水産資源の世界的な需要増加の影響を受けてすり身価格が予測しづらい変動をするほか、消費者の低価格志向の継続や健康志向の高まりや国内の労働人口の減少など、当社グループを取巻く経営環境は大きく変化しております。
そうした環境下でも安定した事業を継続するために、水産練り製品の持続可能性の向上を企図した原材料の研究及び大豆タンパク加工食品の研究開発、自働化や省人化に向けた技術開発を主とする設備開発を中心に活動を行っております。当連結会計年度における主要な研究開発活動は以下のとおりであります。
(1)原材料及び製品の機能性向上に関する研究
練り製品のおいしさの指標でもある、しなやかな食感を付与するための基礎研究を継続して進め、さまざまな魚種のすり身利用を促進し、品質の向上と安定に繋げてまいりました。
(2)おいしさ・健康等の提供価値の探求
糖質0g麺の食感改良を行い、従来品よりも麺の食感を向上させる技術を開発いたしました。今春発売のリニューアル商品に開発技術が活用されております。
糖質0g麺の健康価値に関する基礎研究を行い、その成果を学術専門誌で論文発表(国際誌1報告)いたしました。また、水産練り製品の健康価値に関する基礎研究にも継続して取り組んでおり、そのうち当社既存商品の健康価値に関する学術論文情報を、当社コーポレートサイト内で紹介いたしました。
(3)事業領域・技術領域を拡大するための技術開発
大豆やおからの利用拡大のための技術開発に取り組んでおります。
(4)工程の省人化・自働化に向けた技術開発
さつま揚の全国トップシェア商品である野菜天ぷら、玉ねぎ天の製造工程において梱包の自働化システム・設備を開発・導入し、省人化と効率化を実現いたしました。またカニカマの検品工程でセンサーカメラを含めた検品自働化システムを導入し、工程の高速化と検品精度向上を実現いたしました。
これらの結果として、当連結会計年度において支出した研究開発費は
なお、研究開発は基礎技術の確立を中心とし、また設備開発は製造工程の自働化を主眼とした独自の生産ラインの設計と具体化を中心として、いずれも当社のみで行っております。その成果は当社グループ全体の製造・販売活動に還元しており、各セグメントには配分できないため、セグメント別の記載はしておりません。