(1) 経営の基本方針
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものである。
2050年カーボンニュートラル実現に向けた動きやコロナ禍を契機とした急速なデジタルシフトなど、取り巻く環境はかつてないほど変化している。加えて、当社グループでは、導管部門の分社化という大きな体制変更があり、時代の大きな変曲点にある。
そうした中、2022年3月に公表した「東邦ガスグループビジョン」において、当社グループの社員が共通認識に立ち、新たな時代を切り拓けるよう2050年の社会像を思い描くとともに、中間地点となる2030年代半ばに目指す姿として、「地域におけるゆるぎないエネルギー事業者」「エネルギーの枠を超えたくらし・ビジネスのパートナー」「持続可能な社会の実現をリードする企業グループ」の3つを掲げている。
目指す姿の実現に向けた第一ステップとして、中期経営計画(2022~2025年度)で定めた「カーボンニュートラルの推進」、「エネルギー事業者としての進化」、「多様な価値の創造」、「SDGs達成への貢献」の4つのテーマへの取組みにより、新たな成長に向けた道筋を確かなものにする。
○目標とする経営指標
<東邦ガスグループ 中期経営計画>
方針 ・営業キャッシュ・フローの創出力を維持しつつ、持続的な成長に向けた投資を加速。
・投資拡大局面においても効率性や健全性のバランスをとって全体を管理。
※1 2025年度の連結経常利益250億円程度 ※2 WACC=資本コスト:2%台半ば
<株主還元方針>
安定配当を基本とし、機動的な自己株取得・消却を合わせ、中長期的に連結当期純利益の4~5割を目安として実施。加えて、自己資本の最適化に向け、当面の期間、追加の株主還元を実施する。
(2) 対処すべき課題
「東邦ガスグループビジョン」実現の第一ステップとした現行中期経営計画(2022~2025年度)の達成を確実なものとすべく、2024年度は、カーボンニュートラルへの要請の高まりやお客さまニーズの多様化・高度化、国際情勢の不安定化、防災意識の高まりなど足元の環境変化を踏まえた以下の重点施策を設定し、グループ一丸となって取組みを推進する。また、公正取引委員会からの警告等を厳粛かつ真摯に受け止め、コンプライアンス強化に取り組んでいく。
①カーボンニュートラル対応の加速
将来の都市ガス原料として期待されるe-methane※の製造実証を開始し、国内初の都市ガス利用を実現する。国内外のパートナー企業と連携し、2030年までのe-methane輸入開始を目指した海外での活動も推進する。
水素サプライチェーンの構築に向け、知多緑浜工場で水素製造を開始するとともに、水素バーナの拡充など需要拡大に向けた取組みを進める。また、CO2をコンクリートとして固定化するプロジェクトやCO2分離回収の技術開発を着実に推進する。
お客さま先のカーボンニュートラル実現を支援する「CN×P事業」の商材拡充や体制強化を進める。
八代(熊本県)、唐津(佐賀県)のバイオマス発電所の運転を開始するとともに、太陽光発電所の開発等を進め、再生可能エネルギー電源を拡大する。
※グリーン水素等の非化石エネルギー源を原料として製造する合成メタン
②「東邦ガスくらし」の拡充
「東邦ガスくらしショップ」では、くらしのパートナーとして、エネルギーだけでなく、リフォームや蓄電池など、くらし周りのサービス・商品を充実し、ワンストップで提供する。
お客さま会員サイト「Club TOHOGAS」内のECサイト「東邦ガスくらし創庫」では、安全安心、住まい、食・健康分野のくらしが豊かになるモノ・サービスを幅広く届けていく。
③新規事業の成長
当社グループのアセットを活用した「知多クールサーモン」の陸上養殖の規模拡大や、スタートアップ企業TOWINGと連携した高機能バイオ炭「宙炭(そらたん)」の製造プラント建設など新規事業を強化する。
国内エネルギー事業で培った知見・ノウハウを生かし、海外でもガス販売やLNG関連事業、再生可能エネルギー事業等の拡大を目指す。
④安定供給の確保と供給基盤の拡大
LNG・電力の調達では、エネルギーセキュリティ確保の観点から、調達先を増やすなど様々な方法でリスク分散を行い、安定的な調達に努める。
岐阜・三重を中心に供給エリアを拡大し、導管網を拡充するとともに、スマートメーターなどの新たな技術を導入しつつ、防災対策や保安対策を推進する。
⑤デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進
AIやデータ分析などの先端技術を活用し、ガス管図面の自動作成の実用化や開閉栓・機器修理などの基盤業務の一層の高度化を目指す。
加えて、DXの取組みをさらに加速させ、労働集約型業務の抜本的な改善等を進める。
⑥ダイバーシティ・地域共生の推進
「東邦ガスグループサステナビリティ方針」の下、女性やシニア層の活躍推進や障がい者の活躍機会の創出など、ダイバーシティ推進に取り組む。
2023年度に包括連携協定を締結した名古屋市・幸田町に続き、今後も自治体との連携を強め、地域の課題解決や魅力向上に貢献する。
公正取引委員会からの警告等を踏まえたコンプライアンスの強化
当社は、2024年3月4日、中部地区における家庭用都市ガス等の供給、ならびに再生可能エネルギーの固定価格買取制度による買取期間満了後の電力に関して、独占禁止法第3条(不当な取引制限の禁止)の規定に違反するおそれがある行為を行っていたものとして、公正取引委員会から警告を受けた。また、当社は、同日、中部地区における大口需要家向け都市ガスの供給に関して、独占禁止法第3条の規定に違反する行為があったと認定された。
当社は、本件を厳粛かつ真摯に受け止め、再発防止に向けた取組みを徹底し、皆さまからの信頼回復に努めていく。
《主な再発防止策》
①企業風土の刷新 ②競合会社との接触に係る報告・承認制度の新設・施行
③独占禁止法に関する社内教育等の拡充 ④再発防止策の遵守状況の監査および実効性検証
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、以下の通りである。文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものである。
(1) サステナビリティ全般に関するガバナンス及びリスク管理
当社グループは、「東邦ガスグループ サステナビリティ方針」のもと、環境性に優れたエネルギーの安定的な供給と新たな価値の共創を通じて、持続可能な社会の実現に貢献すべく、サステナビリティに関するガバナンスの強化と適切なリスク管理に努めている。
①ガバナンス
当社グループでは、CSR環境部担当執行役員を委員長とし、当社と主要関係会社の取締役・部長等で構成する「サステナビリティ委員会」を設置し、サステナビリティに関する方針・目標等に関する事項等について審議するとともに、必要に応じて経営会議及び取締役会に付議することとしている。
特に、当社グループが重要な経営課題と認識している気候変動に関しては、当社の代表取締役社長を委員長とし、当社の関連部署の担当執行役員等で構成する「カーボンニュートラル推進委員会」を設置し、カーボンニュートラルに関わる方針・計画の策定をはじめとする重要な事項について、その方向性を定めるための議論をしている。気候変動のリスクや機会、戦略、リスク管理、指標報告などの重要事項は、経営会議を経て、取締役会へ付議し、その執行状況を監督している。
②リスク管理
当社グループでは、リスク管理規程に基づき、気候変動を含むリスク要因を毎年洗い出した上で、リスクごとに主管部署が対応策を検討し、計画的にサステナビリティ全般を含めたリスク低減に取り組んでいる。
総合的な進捗状況・評価等は、経営会議を経て、取締役会に年1回以上付議し、取締役会は当社グループのリスク管理と執行状況を監督している。
(2) 気候変動への取組み
当社グループは、2020年4月に、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース:Task Force on Climate-related Financial Disclosures)へ賛同し、TCFDの提言に沿った気候変動への取組みを推進してきており、2021年7月には「東邦ガスグループ 2050年カーボンニュートラルへの挑戦」を策定・公表している。
引き続き、お客さま先の低・脱炭素化を推進するとともに、将来のガス自体の脱炭素化を見据えた技術開発に取り組む。また、水素の普及拡大、電気の低・脱炭素化にも取り組み、カーボンニュートラルへの移行を推進する。
①戦略
TCFDの提言に沿って、将来の気候変動によるリスクや機会、対応する戦略を把握・評価するため、2050年断面のシナリオ分析を実施している。
外部シナリオとして、気温上昇を抑制するシナリオと低炭素化が進まないシナリオを選定し、シナリオから導かれる2050年の社会像に基づき、 時間軸を考慮してリスクと機会を洗い出し、その影響を把握するとともに、当社グループのレジリエンス性を評価している。
再生可能エネルギーへの移行によって、省エネの進展及び熱分野の過度の電化シフトが起こる場合には、財務影響への「リスク」は比較的大きくなる。
一方で、当社グループでも取り組んでいる「e-methane」、カーボンリサイクル、水素利用などの脱炭素技術及びサプライチェーンの確立、国内のカーボンニュートラルなエネルギーの活用促進等により、財務影響への「機会」は比較的大きくなる。
これらのリスクや機会への対応策は、2021年7月公表の「東邦ガスグループ 2050年カーボンニュートラルへの挑戦」で整理している。
戦略に関する詳細な情報については、当社ウェブサイトに公表している「統合レポート2023」(2023年8月25日発行)の「TCFD提言に基づく情報開示」 を参照。
②指標と目標
指標、目標として、環境行動目標等を使用している。
これらの指標、目標の進捗は、経営会議を経て、取締役会に付議のうえ、取締役会は執行状況を監督している。
環境行動目標等の2023年度実績値は「
(3) 人材育成方針、社内環境整備方針
①戦略
当社グループは、企業理念の中で示す経営方針の1つとして「意欲と能力の発揮を重視し、ひとを育てます」と掲げており、従業員のエンゲージメントを高め、多様な人材が能力を最大限発揮できるよう「人材マネジメント」、「ダイバーシティ&インクルージョン」、「柔軟な働き方」、「安全・健康管理」の観点から、働きがい・働きやすさの向上に努めることで、持続的な企業価値の向上を実現する。
<人材の育成に関する方針>
当社グループは、2022年3月に公表した「東邦ガスグループビジョン」において、2030年代半ばに目指す姿として「地域におけるゆるぎないエネルギー事業者」「エネルギーの枠を超えたくらし・ビジネスのパートナー」「持続可能な社会の実現をリードする企業グループ」の3つを掲げている。
このグループビジョンの達成に向けては、これまでの延長ではない新たな取組みに挑戦し、事業構造を変革していかなければならない。そのためには、当社グループ一丸となった挑戦をしていく必要があり、その挑戦の主体は、従業員一人ひとりであると考える。
そこで、当社グループは、従業員の挑戦を後押しするため、人材への投資を拡充するとともに、各従業員がパフォーマンスを最大限発揮できる環境を整備していく。また、コア事業を支える人材とともに、戦略事業や業務変革・効率化など、変革期の事業運営を牽引するマネジメント力や専門性を備えた人材の採用、育成、活躍促進に注力することで、「東邦ガスグループビジョン」の達成に向けた人材育成を実施していく。
<社内環境整備に関する方針>
ア.人材マネジメント
多様な人材の採用や育成・配置、公正かつ適切な評価・処遇を通じて、従業員の一層の活躍を促進するとともに、挑戦できる「場」の拡大と挑戦を支える「仕組み」の充実を図る。
2023年度は、「挑戦意欲・行動を促進する挑戦機会の充実」を図るため、公募型ローテーションや海外研修、若手社員向けの外部講師による講演会等を実施した。
2024年度は、公募型ローテーションを定着させるとともに、海外研修を拡大し、挑戦する従業員への支援を強化する。また、上司面談においてキャリアについて話す仕組みを作るなど従業員の自律的なキャリア形成を支援する。さらに、DX人材の育成を強化するため、業務変革等を担うDX推進人材を各部署に配置し、重点的に研修を実施していく。
イ.ダイバーシティ&インクルージョン
当社グループが企業価値を向上させ持続的に成長するためには、様々な分野の知識や経験、価値観を持つ人材が意見を出し合うことで、新たな発想を生み出すことが必要との認識のもと、多様な人材を確保し活躍を支援することで、ダイバーシティ&インクルージョンを推進する。
2023年度は、ダイバーシティ&インクルージョンの意識啓発や風土醸成を目的としてダイバーシティ月間を設定し、「管理者向け講演会」等を実施した。また、多様な人材の確保に向け、一度退職して社外で経験を積んだ社員が再び当社グループに戻り、活躍することを目的とした「カムバック制度」を導入した。
2024年度は、女性活躍推進に向け、育児との両立支援、若手女性向けのキャリア研修等を通じて、女性のキャリア形成支援を強化するとともに、心理的安全性の高い職場作りを推進するため、管理者向けのワークショップ型研修等を実施する。また、2019年に設立した特例子会社の東邦フラワー㈱を中心に、障がい者の雇用拡大及び活躍を目指して業務領域を拡大するとともに、地域の障がいのある子どもとその家族を支援するため、障がい児支援事業に取り組む。
ウ.柔軟な働き方
働き方に関する制度の見直しや業務のオンライン化を進めることで働き方の柔軟性を高め、従業員の仕事と生活のより一層の充実を図る。
2023年度は、男性従業員が安心して育児休業を取得できるようセミナーおよび男性の育児期社員同士の交流会を開催した。また、副業の解禁を行い、従業員が社外でも成長することができる機会を創出した。
2024年度は、育児や介護との両立支援を切り口に、既存制度の定着や必要に応じた見直しを進める。
エ.安全・健康管理
「働く人の安全と健康」は企業としての基盤であると考え、当社グループ全体で安全衛生活動の推進に取り組み、従業員の安全と健康の確保とともに、安心・快適な職場づくりに努める。
各職場において、安全衛生推進計画に基づいた活動を通じ、交通災害と作業災害の防止に取り組んでいる。特に交通災害については、社有車を運転する従業員を対象とした社内運転免許制度を設け、新規取得時の入門訓練や定期的な添乗試験・適性検査等の実施を通じて災害防止に努めている。また、従業員の健康増進を目的に、喫煙に関する取組みを段階的に進めており、2024年4月からは就業時間内禁煙を実施し、2026年からは、構内における全面禁煙を目指す。
②指標と目標
以下の指標及び目標を用いて、それぞれの人材戦略が推進されているかを継続的に測っていく。
なお、各指標のデータ管理及び具体的な取組みは、連結グループに属する全ての会社では行われておらず、連結グループにおける記載が困難であるため、当社及び一部の連結子会社の実績を記載している。
(注)1 面談力の強化を図る等、組織のアウトプット向上を目的に、2022年度から開始した外部講師によるマネジメント研修の受講進捗率。
2 各部署においてDX推進を主導する担当者に、以下の3段階による教育プログラムを実施することで育成した「DX推進人材」の人数。
<教育プログラム> ①ベース教育(基礎知識) ②コア教育(実務上の課題解決による実践教育)
③オプション教育(システム開発・RPAスキル等)
3 総合職採用人数に占める女性の割合。
4 子が生まれた男性従業員のうち、育児休業や育児目的の特別休暇を取得した従業員の割合。なお、育児休業を取得した割合は51.5%。
5 従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践するもの。従業員等への健康投資を行うことで、活力向上や生産性の向上をもたらし、業績向上につながると期待される。
6 ㈱リンクアンドモチベーションによるエンゲージメント調査結果より。
有価証券報告書に記載した事業の状況等に関する事項のうち、経営者が当社グループの経営成績及び財務状況等に重要な影響を及ぼす可能性があると認識している主要なリスクとしては、以下のようなものがある。
文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末(2024年3月31日)現在において当社グループが判断したものである。
当社グループの主要な事業である都市ガス・LPG・電気事業は、当地域の社会・経済動向のほか、猛暑や暖冬等の気候変動、小売全面自由化に伴う競争環境の変化、省エネルギーの進展や産業構造の変化、お客さまのエネルギー選好の変化等により、販売量が変動し、当社グループの業績に影響を受ける可能性がある。
当社グループは、新規需要開発を推進するとともに、新サービス等による付加価値の提供やデジタル技術活用等により、当地域におけるトータルエネルギーシェアの拡大を進めている。
都市ガスの原料であるLNG(液化天然ガス)の価格は、原油価格・為替相場等の変動の影響を受ける。原料価格の変動は、原料費調整制度によって一定の範囲内でガス販売価格に反映されることから業績への影響は緩和されるが、反映までのタイムラグにより期間収支に影響を受ける可能性がある。
また、LNG調達先との契約更改、価格交渉の動向により原料価格が変動した場合、当社グループの業績に影響を受ける可能性がある。
原油価格や為替相場等の変動リスクを一定程度抑制するため、商品スワップ取引を利用している。当社は、2023年3月1日に一部の選択約款を変更し、2023年4月検針分のガス料金から、原料費調整額の算定に用いる平均原料価格の上限を撤廃した。
電力調達は発電事業者・卸電力取引市場からの調達と自社電源を組み合わせているが、調達価格が変動した場合、当社グループの業績に影響を受ける可能性がある。
当社グループは、発電事業者との相対契約の弾力性向上に取り組むとともに、調達比率の最適化を図り、調達コストの低減と収支安定化のバランスを図っている。
当社グループの保有する株式・年金資産等は株価・金利等が変動することによって、当社グループの業績に影響を受ける可能性がある。また、市場金利の動向により調達金利が変動することによって、当社グループの業績に影響を受ける可能性がある。ただし、有利子負債の大部分は固定金利で調達した長期借入金や社債であり、短期の金利変動による影響は限定的である。
変動金利での調達は、一部に金利スワップ取引を利用して固定化を行っている。
2050年カーボンニュートラルに向けた動きが広がり、新たな環境規制や制度の導入等により追加的な対応や費用負担が発生した場合、当社グループの業績に影響を受ける可能性がある。
当社グループは、2021年7月、「東邦ガスグループ2050年カーボンニュートラルへの挑戦」、2022年3月、「東邦ガスグループビジョン」及び新たな中期経営計画(2022~2025年度)を策定し、カーボンニュートラルの実現に向けた対応の方向性と具体的な取組みを示した。中期経営計画期間では、重油等から都市ガスへの燃料転換、コージェネや蓄熱材等を活用したエネルギーの高度利用、カーボンニュートラルLNGの調達・販売及び太陽光、バイオマス、風力等の再生可能エネルギーの電源開発・調達の拡大を進める。また、お客さまのカーボンニュートラル実現に向けた取組みをワンストップで支援する。さらに、CО2分離回収やメタネーションの技術開発を進めるとともに、知多緑浜工場を拠点とした水素サプライチェーンの構築や水素利用技術の実用化に取り組む。
(6) 自然災害等による影響
大規模な自然災害により、製造設備や供給設備、お客さま設備に広範に被害が発生した場合、当社グループの業績に影響を受ける可能性がある。また、不測の大規模停電等が発生した場合にも、当社グループの業績に影響を受ける可能性がある。
当社グループは、自家発電設備や防消火設備等の設置に加え、防災体制の整備や工業用水等の備蓄など、災害の影響を最小限に止める対策を実施するとともに、ガス導管の耐震化など製造設備や供給設備等の耐震性の向上を図っている。
都市ガスの主な原料であるLNGは海外から輸入しているため、輸入先のカントリーリスクや天然ガス生産設備・液化設備での操業上のトラブル、LNG船の運航上でのトラブル等により、原料が長期にわたり調達できない場合には、当社グループの業績に影響を受ける可能性がある。
LNGの低廉かつ安定的な調達に向け、当社グループは、LNG調達地域の分散化により安定的な調達体制構築や受入基地の柔軟な運用に取り組んでいる。また、上流権益・中流事業や、LNG船への出資等により、調達するLNGのバリューチェーンへの関与を強化している。
事故等による大規模な設備トラブルに伴い都市ガスの製造、供給に重大な支障が生じた場合、当社グループの業績に影響を受ける可能性がある。
当社グループは、工場やガス導管等の高経年設備の修繕、他工事による損傷防止、ガス導管の定期的な点検を実施するとともに、緊急保安体制を整備することで、一層のリスク低減に努めている。
(9) 情報システム支障による影響
システム障害やサイバー攻撃等により基幹となる情報システムに重大な支障が生じた場合、当社グループの業績に影響を受ける可能性がある。
当社グループは、システムの維持管理を徹底するとともに、各種のセキュリティ対策を実施し、サイバー攻撃対策訓練の実施やセキュリティ規程類に基づくチェックを継続的に行っている。
ガスの消費機器・設備に関する重大なトラブルが生じた場合、社会的な責任を含めて有形無形の損害が発生する可能性がある。
当社グループは、ガス消費機器の調査、安全点検、メンテナンス業務等の品質向上とともに、安全使用のための周知や安全機器への取替促進を行っている。
当社グループ及び委託先が取り扱う商品・サービス等に関する品質にトラブルが発生した場合、社会的な責任を含めて有形無形の損害が発生する可能性がある。
当社グループは、社内外の研修等を通じて、当社グループ及び委託先が取り扱う商品・サービス等の品質向上に取り組んでいる。
調達先の工場操業停止等により商品・資機材等に重大な納入遅延が生じた場合、当社グループの業績に影響を受ける可能性がある。
当社グループは、調達先と連携し生産及び納期状況を確認するとともに、調達多様化に向けた代替調達先の調査・検討を実施している。
(13) 投資環境の変化による影響
原油価格等の市況の変化や景気動向等によっては、国内外投資について、将来の収益性の低下等により、適切に回収されず、当社グループの業績に影響を受ける可能性がある。また、海外投資については、事業を行う各国における法規制や商慣習等の変化により、事業運営の遅延や停滞、費用の増加などが発生する可能性がある。
当社グループは、案件ごとに収益性やリスク等の事業性を慎重に吟味の上、必要な投資を行っている。また、市況の変化や景気動向等を注視し、減損の兆候がある場合、減損損失の認識・測定の要否に関する判定を行っている。
法令、約款、若しくは企業倫理や社会的規範に反する行為が発生した場合、社会的な責任を含めて有形無形の損害が発生する可能性がある。
当社グループは、コンプライアンス委員会を設置して、コンプライアンス活動の進捗確認と課題把握を行うとともに、教育・啓発や点検・調査活動を推進し、コンプライアンスの徹底を図っている。また、コンプライアンスに関する相談窓口を社内外に設置している。
なお、当社は、2024年3月4日、電力・ガスの営業行為において、公正取引委員会から独占禁止法に基づく警告等を受けた。同様の事例を二度と発生させないよう、法令遵守及び再発防止を徹底する。
当社グループが取得、管理しているお客さまの個人情報が外部に流出した場合、社会的な責任を含めて有形無形の損害が発生する可能性がある。
当社グループは、個人情報保護委員会を設置して、個人情報保護に関する活動計画等の審議を行うとともに、教育・啓発や自主監査の活動を推進し、情報管理の徹底に取り組んでいる。
新型コロナウイルス等の感染症の拡大に伴い、当社グループの業績に影響を受ける可能性がある。当社グループは、感染防止策を徹底することで、ガス事業者としての使命である安定供給、保安の確保等に取り組んでいる。
当連結会計年度(以下、当期という。)における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりである。
(1)経営成績
当地域の経済は、人手不足や物価上昇への対応などの課題もあったが、新型コロナウイルスの行動制限解除や半導体供給不足の緩和により、総じて改善が見られた。
エネルギー需給は、ウクライナや中東情勢など予断を許さない状況が続いた。また、能登半島地震を機に自然災害への対策の重要性が再認識された。
このような状況のもと、当社グループは、エネルギーの安定供給と安全・安心の確保を果たすとともに、需要開拓を進め、エネルギーお客さま数を300万件まで拡大することができた。加えて、お客さまサービスの推進体制の整備や、カーボンニュートラルを見据えたe-methane・水素の社会実装の推進などの将来の成長につながる準備を着実に進めた。
当期末のお客さま数は、ガス・LPG・電気の合計で前期末と比べて7万9千件増加し300万件となった。ガスのお客さま数は、同6千件増加し174万7千件となった。LPGのお客さま数は、同1万1千件増加し61万5千件となった。電気のお客さま数は、同6万2千件増加し63万8千件となった。
ガス販売量は、前期と比べて2.4%減少し33億7千万㎥となった。用途別では、家庭用は、冬場の気温が高めに推移した影響等により同3.5%の減少となった。業務用等は、お客さま先設備の稼働が前期を下回ったことにより同2.2%の減少となった。LPGの販売量は同2.1%減少し46万5千トン、電気の販売量は同8.8%増加し25億7千9百万kWhとなった。
売上高は、前期と比べて730億8千8百万円減少し6,329億8千5百万円となった。売上原価は、同644億3千2百万円減少し4,614億4千9百万円となった。供給販売費及び一般管理費は、前期並みの1,379億3千8百万円となった。これらの結果、経常利益は前期と比べて73億7千3百万円減少し407億9千7百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は同64億1千7百万円減少し273億4百万円となった。
当期は、ガス販売量の減少に加え、原料市況を反映し販売価格が低下したことなどにより、前期に比べて減益となった。
<参考>平均気温・原油価格・為替レート
セグメントごとの経営成績は、次のとおりである。
当期末の都市ガスのお客さま数は174万7千件(前期末比6千件増)となった。
販売量は33億7千万㎥(前期比2.4%減)となり、用途別では、家庭用は冬場の気温が高めに推移した影響等により3.5%減、業務用等はお客さま先設備の稼働が前期を下回ったことにより2.2%減となった。
ガス事業の売上高は、販売量の減少に加え、スライド単価が低下したことにより4,190億3千4百万円(前期比9.0%減)となった。
当期末のLPGのお客さま数は61万5千件(前期末比1万1千件増)となり、販売量は気温影響などにより46万5千トン(前期比2.1%減)となった。
LPG・その他エネルギー事業の売上高は、LPG販売量の減少などにより1,015億5千万円(前期比8.1%減)となった。
<電気>
当期末の電気のお客さま数は、需要開拓により63万8千件(前期末比6万2千件増)となり、販売量はお客さま数の増加に伴い25億7千9百万kWh(前期比8.8%増)となった。
電気事業の売上高は、お客さま数や販売量の増加などのプラス要因があった一方、単価の低下などのマイナス要因が大きく、885億9千7百万円(前期比18.2%減)となった。
その他事業の売上高は543億6千4百万円(前期比0.4%減)となった。
(単位:百万円、%表示は対前期増減率)
当社グループにおいては、当社及び子会社が行うガス事業が生産及び販売活動の中心であり、外部顧客に対する売上高及び営業費用において連結合計の大半を占めている。ガス事業以外のセグメントにおける生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であるが、生産規模は小さく、また受注生産形態をとらない製品も多い。このため以下は、ガス事業セグメントについて記載している。
当社及び水島瓦斯㈱においてガスの生産を行っている。
最近2連結会計年度のガスの生産実績は次のとおりである。
ガス事業については、その性質上受注生産は行っていない。
当社は愛知県、三重県、岐阜県で、水島瓦斯㈱は岡山県内においてそれぞれガスの販売を行っている。
最近2連結会計年度におけるガス販売実績は次のとおりである。
総資産は、前期末比410億5百万円の増加となった。これは、投資有価証券が増加したことなどによる。
負債は、前期末比133億4千4百万円の減少となった。これは、有利子負債を削減したことなどによる。
純資産は、前期末比543億4千9百万円の増加となった。これは、親会社株主に帰属する当期純利益を273億4百万円計上したことなどによる。
これらの結果、自己資本比率は前期末の58.0%から62.2%となり、総資産当期純利益率(ROA)は、前期の 5.0%から3.8%となった。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益の計上などにより、473億7千6百万円の収入となった。前期比では、90億3千8百万円の収入の減少となった。
投資活動によるキャッシュ・フローは、設備投資をはじめとして420億7千8百万円の支出となった。前期比では、103億5千6百万円の支出の減少となった。
財務活動によるキャッシュ・フローは、有利子負債の削減や配当金の支払いなどにより、142億4千3百万円の支出となった。前期比では、113億4百万円の支出の増加となった。
これらの結果、当期における現金及び現金同等物の期末残高は、前期末に比べ83億9千3百万円減少し、254億3千1百万円となった。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、次のとおりである。
資金調達については社債、コマーシャル・ペーパー及び銀行等金融機関からの借入により行っている。社債については、当期中の発行はない。なお、当期中の社債償還額は100億円である。当期末の借入金は前期末に比べて27億4千万円増加した。また、適時に資金繰計画を作成・更新するなどの方法により、流動性リスクを管理している。
当社グループは、「第2 事業の状況 1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、2022年3月に策定した中期経営計画(2022~2025年度)にて、「期間累計営業キャッシュ・フロー 2,100億円以上」「2025年度ROA 3%程度」「2025年度D/Eレシオ 0.6程度」を経営目標として掲げている。
中期経営計画2年目となる当期は、中東で紛争が起こるなど、先行きが見通しづらい中にあったが、エネルギー安定供給の責務を果たしつつ、中期経営計画に掲げた取組みを着実に進め、収支の面においても、2022年度に続き高水準の利益を創出することができた。
具体的な活動としては、カーボンニュートラル関連では、e-methaneやCCSの社会実装に向けた国内外の様々な企業との連携強化やCО2分離回収等の技術開発の推進に取り組んだ。また、エネルギーの安定供給を継続しつつ、お客さま数は、中期経営計画の目標である300万件を達成することができた。加えて、お客さまの理想のくらし実現のサポートを目指す「東邦ガスくらし」を立ち上げ、地域共生活動としても、自治体との包括連携協定は名古屋市を含め累計8自治体まで拡大し、自治体と共同で立ち上げた地域新電力も5社となった。
○目標とする経営指標
(5)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されている。
この連結財務諸表作成にあたり、見積りが必要な事項については、一定の会計基準の範囲内にて合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っている。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載している。
(注) 本書面でのガス販売量は、すべて1㎥当たり45メガジュール換算で表示している。
特記すべき事項はない。
当社グループでは、カーボンニュートラル関連技術及び、多様な価値の創造に資するデジタル技術の開発・活用を強化・推進するとともに、天然ガスの普及・促進のためにその高効率・高度利用や、安定供給・保安の確保に向けた研究開発に継続的に取り組んでいる。
現在、当社グループの研究開発は、当社のイノベーション推進本部等において行っている。
具体的には以下のとおりである。
<カーボンニュートラル関連技術、デジタル技術の開発・活用>
CO2分離回収技術、メタネーション技術、ガス差圧発電システム等の未利用エネルギー活用技術、コージェネレーションシステム用ガスエンジンでの都市ガス・水素混焼技術の開発や、水素燃焼バーナの開発、緑浜水素プラントの整備、水素ステーションの整備・運営、蓄電池等を活用したバーチャルパワープラントの開発・実証、CCUSの調査を実施している。また、デジタル技術を活用した新たなサービスの開発、データ分析技術を活用したマーケティング、量子コンピュータを活用した予測・最適化技術の開発、新規技術・新サービスの創出を図るオープンイノベーションの活用等を推進している。
<天然ガスの高効率・高度利用>
家庭用分野では、エネファームの機能向上や低コスト化などに取り組んでいるほか、快適な生活を実現する温水機器や厨房機器などの商品性向上、省エネ診断ソフトの開発・改善、ガス機器のIoT化開発、調理・入浴等に関する研究に取り組んでいる。
業務用分野では、電力負荷の平準化にもつながるガス空調システムとして、ガスエンジンヒートポンプの新機種開発や、業務用厨房機器などの性能向上にも取り組み、随時商品化している。
<安定供給・保安の確保>
安定供給・保安の確保や安全・安心の一層の向上を目指して、ガス管劣化予測技術の高度化や、製造・供給設備の適切な維持管理に資する研究開発等に取り組んでいる。
また、ガス供給のコストダウンに向けて導管工事を効率的に行う非開削工法、導管の検査や修理などを効率的に実施する技術、製造設備の改良などの開発を行っている。
なお、当連結会計年度における当社グループの研究開発費は、