文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
当社グループは、「人と技術を活かし、常に社会から必要とされる集団を目指す。」の経営理念のもと、公共事業を中心とした社会基盤の整備と維持管理にかかわる事業活動を通じ、社会の発展に貢献できるよう努めております。そして、社会から支持され、信頼される企業となることによって業績の向上を図り、企業価値を高めていくことを経営の基本方針としております。
公共投資市場は、防災・減災対策や将来を見据えたインフラ老朽化対策の推進、整備新幹線の着実な整備やリニア中央新幹線プロジェクトの推進、全国の高速道路の大規模更新工事及び4車線化といった事業が引き続き展開され、今後の建設需要は底堅い見通しであります。しかしながら、建設業においては、技能労働者の減少による担い手確保、ICT等の技術革新による生産性の向上、工事現場における長時間労働の是正といった働き方改革への対応等、課題も山積しております。
このような環境のもと、当社グループでは、主力事業の強化のため公入札における総合評価力の強化による受注確保への対応、当社グループの持つ特化技術採用に向けた技術営業の推進、競争力を高める研究開発・設備投資の推進、教育の充実と多様な人材活用による組織強化、生産性向上とコスト競争力向上等の戦略を進めてまいります。
工事現場における長時間労働を是正するため、生産性の向上、社員能力の向上という観点から“人材の育成”“生産性の向上”“働き方改革”の3つの課題をテーマとして対策を進めております。
同時に、当社グループの事業を支える協力会社に対して研修設備の建設や社員研修、資格取得の支援により技能労働者の確保への環境整備も進めてまいります。
又、当社グループは、サステナブルな経営を目指し、環境問題等の課題に取組むための議論を活性化し、中長期的な企業価値創出のビジョンを企画してまいります。
当社グループは、これまで培ってきた経営資源をもとに、「事業」、「投資」、「財務」、「サステナビリティ」に対する戦略を構築し、長期ビジョン「オリエンタル白石グループ2030年の将来像」に向け一丸となって挑戦と前進を続けるため、2023年度(2024年3月期)を初年度とし、2025年度(2026年3月期)までの3か年を対象とした「中期経営計画2023-2025~さらなる成長に向けた競争力の向上と新たな挑戦~」を策定しスタートさせております。この中期経営計画では、オリエンタル白石グループの2030年像を「人財と技術の多様性を活かし、社会インフラ整備の様々な需要に応え、挑戦と前進を続ける企業集団」とし、グループの2030年の将来像に向け、基幹事業の充実、連結事業の強化、新規・周辺事業による事業領域の拡大、サステナブル経営への取組を進め、企業価値の一層の向上に努めてまいります。
中期経営計画の主な内容は、以下のとおりであります。
中期経営計画の基本方針
①国土強靭化、インフラ老朽化対策などの社会的課題の解決に貢献し、これを業績の向上につなげる。
②基幹事業のさらなる充実、連結事業の強化、新規・周辺事業の成長と領域拡大を推進しグループ全体の発展を図る。
③DXや技術開発、他社・他業種との連携により、事業生産性を高める。
④教育、研修など“人への投資”を促進し、競争力豊かな人財の構築を図る。
⑤バランスのとれた投資、還元戦略を実行する。
⑥カーボンニュートラルに向け、脱炭素施策の推進と技術開発を継続する。
中期経営計画における経営指標目標(2026年3月期)
企業価値向上と成長戦略
持続的な売上の増加と収益の向上
売上高 730億円
営業利益 62億円
親会社株主に帰属する当期純利益 45億円
成長事業の基盤固め
投資額 220億円
D/Eレシオ 0.29倍
株主に対する還元効率
自己資本当期純利益率(ROE) 9%以上
配当性向 50%以上
総還元性向 70%程度
PBR 1倍以上
(事業戦略)
基幹事業(PC土木、ニューマチックケーソン/一般土木、補修補強、PC建築)
・公共工事におけるシェアと実績の拡大
・ニューマチックケーソンの橋梁と治水設備等への事業拡大
・事業量の確保と収益力の維持を図る
・プレキャストコンクリートのすう勢の中でのPC構造の採用を拡大する
連結事業(鋼構造物事業、港湾事業)
・新設橋梁と補修補強のバランスの中で売上・利益の拡大を図る
・港湾、土木の中小工事で受注・売上を確保するとともに今後本格化するカーボンニュートラルポートプロジェクトへの準備を進める
新規・周辺事業(工場製品外販、地域戦略事業、橋梁維持管理事業、官民連携事業、海外事業、環境事業)
・成長投資、技術開発、生産性向上、他社・他業種との連携、顧客基盤の強化
新規・周辺事業の領域拡大を図ることで基幹事業の拡充、連結事業の強化にも寄与
生産性向上
・新たな取組やシステム導入時の必要人員、またその運用による一時的な生産性低下は発生するが、本中計期間に克服し、その後の単位生産量上昇を図る
(投資戦略)
・基幹事業や連結事業の拡充と強化、新規・周辺事業の拡大を図る
経常投資(既存事業継続投資) 50億円
成長投資(成長機会創出投資) 110億円
戦略投資(資本業務提携) 60億円
投資総額(2023-2025年度) 220億円規模
*戦略投資(資本業務提携)資金として伊藤忠商事株式会社への第三者割当増資により約50億円を調達
(財務戦略)
営業CF(堅実なCF創出力の向上)と財務CF(財務健全性を維持した有利子負債の活用、資本業務提携による第三者割当増資)を経常投資・成長投資・戦略投資へ投下し好循環を生み出すことにより企業価値を高めると共に、安定した配当の継続に加え、戦略投資の成果を踏まえた機動的な自己株式取得を実施します。
(サステナビリティ戦略)
・環境(カーボンニュートラルの実現に向けた取組)
2030年度目標 CO2排出量(Scope1,2) 19,000t-CO2
売上高原単位21t-CO2/億円
削減率 約31%(2021年度比)
・人材戦略
人財と技術の多様性を活かす働きやすさと働きがいのある魅力的な企業づくり
・ガバナンス・対話
グループの持続的な成長を支えるガバナンスとステークホルダーとの対話の充実
当該経営数値目標を採用した理由は、当社の経営方針・経営戦略を理解する上でステークホルダーにとって重要な指標であり、目標に対する進捗状況を継続的にモニタリングし、実現可能性の評価等を行うことが可能となるためであります。
当社グループは社会から必要とされる集団を理念として掲げており、持続的な社会の実現を図るため、社会から必要とされる価値提供を続けてまいります。そこでサステナビリティ基本方針を定め、定めたプロセスに基づき、当社グループの理念を達成するべきマテリアリティを特定しております。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
サステナビリティ基本方針
経営理念の「人と技術を活かし、常に社会から必要とされる集団を目指す」に基づき、私たちは社会資本の整備・維持や地域社会及び地球環境の課題解決に向けたあらゆる事業活動を通じ、持続可能な社会への貢献と企業価値の向上を追求していきます。
・脱炭素、再生可能エネルギー、廃棄物の削減、リサイクル活動を推進し、環境保全と汚染の予防に資する技術開発に尽力し、地球環境に配慮した技術提案を行う。
・安心・安全で快適な職場環境を実現するとともに、個人の人権や多様な価値観を尊重し、個々の能力を最大限活 かせる、働きがいのある職場作りに努める。
・協力会社と公平で信頼感のある協力関係の維持に努め、人材育成やリスク管理において一体となった取り組みを実践する。
・全ての企業活動でコンプライアンスを遵守するとともに、リスクマネジメントを徹底する。
マテリアリティ特定のプロセス
当社グループのマテリアリティ
・安全安心な生活に貢献するインフラ建築物の提供
・豊かな生活を維持、享受しながら進める気候変動対策
・働きがいのある魅力的な職場環境
・イノベーションによる省力化、高付加価値の創造
・地域特性を加味した発展と貢献
・コーポレートカルチャーの醸成
当社グループは、サステナビリティの推進機関として「サステナビリティ委員会」を設置しております。サステナビリティ基本方針や戦略を策定し、マテリアリティに対するサステナビリティ推進策の進捗をモニタリング、指導し、ステークホルダーとの対話を充実させる施策を審議し、取締役会に報告・提言する役割を担います。サステナビリティ委員会は、代表取締役社長を委員長とし、社内取締役、社外取締役(監査等委員を除く)、担当執行役員、委員長が定める担当部門長で構成し、2回/年の開催を実施しております。
中期経営計画(2023-2025)において、ガバナンスの更なる推進として、①取締役会機能の強化、②ステークホルダーとの対話の充実を掲げ、2023年度は以下の活動拡充を図りました。
① 取締役会機能の強化
・取締役会の構成として、社外取締役を増員し、過半数とすると共に女性取締役を2名に増員しました。
・取締役の株式報酬制度を改定し、業績連動部分を新たに追加し、KPIとしてTSR、ROE、CO2排出削減の基準を採
用しました。
・取締役会の実効性評価項目として、「中期経営計画の進捗のフォローアップ実施」と「サステナビリティの取
組や開示についての議論の有無」を加えました。
② ステークホルダーとの対話の充実
・投資家との対話の充実として、IRミーティング延べ40回(年度を通じて四半期ごとに実施)、SRミーティング12回(12月~3月)、決算説明会を年2回実施しました。
・開示情報の充実として、非財務情報の拡充を図った「統合報告書」を発刊し、開示資料の英語対応を増加する
とともに即時開示を行いました。
(気候変動対策に関する方針、戦略)
当社グループの事業構成では、建設事業と鋼構造物事業の使用材料であるセメントや鉄などの製造時に、また港湾事業の主要機材である船舶の使用時に多くの温室効果ガスを排出します。したがって、気候変動対策としてこれに関連する政策の変化や規制の強化が経営に与える影響は大きく、さらに、地球温暖化による物理的変化が事業活動及び事業環境へ与える影響も大きいと考えました。
シナリオ分析においては、2100年までに世界の気温が4℃上昇することを想定した4℃シナリオと1.5℃に抑えることを想定した1.5℃シナリオを検討し、さらに短中長期の時間軸により、リスクと機会を特定、分析、評価を当社事業に当てはめて抽出しました。今後、下記表に示すリスク・機会について、リスクは克服、機会は挑戦する具体的な対策を計画、実行してまいります。
リスク・機会の特定表
(人材の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略)
当社グループの人材に対しての考え方は、経営理念に示す重要なリソースの一つとしての観点から「人財」として扱っており、人財と技術の多様性を活かす働きやすさと働きがいのある魅力的な企業づくりを目指しております。そしてその実践において、「人財基本方針」を定め、それに基づいた「採用方針」「教育方針」を設定し、更に協力会社も含めた職場環境を考慮した「労働安全衛生方針」を基準に各活動計画を立案し、実行いたします。
当社グループの人財戦略としては、中期経営計画(2023-2025)において、新たな人財投資としての大きな枠を設け、以下に示す戦略を実践しております。
・多様な人財の獲得・育成
多様なキャリア・経験者の獲得・育成
IT人財の獲得・育成
個々の能力を最大限に引き出す能力開発
グループ間での成長ローテーション
・人財が活躍できる環境整備
多様な働き方・就業制度の整備
安心して働ける職場環境への取組み
安全な職務環境への取組み
・人財のエンゲージメントの強化
エンゲージメントサーベイ実施、分析
人事評価制度の見直し
サクセッションプランの実践
人財データのクラウド一元管理
当社グループのリスク管理は「リスク管理委員会」がその役目を担っておりますが、サステナビリティに関するリスクは基本「サステナビリティ委員会」にて審議、対応を図り、その情報はリスク管理委員会でも共有することとしております。
(気候変動対策に関するCO2排出量並びに削減目標)
・3か年 CO2排出量一覧(単位はt-CO2)
※ 計測値は収集データから算出した値で、推定値は標本調査結果を原単位として拡張して算出した値です。
※ 2023年度は、再生可能エネルギーの使用量153,865kWhにより67.4t-CO2の削減を含んでいます。
・2030年度CO2排出量削減目標
2021年度の当社グループのCO2排出量を基準とし、中期目標となる2030年度までのCO2削減目標を設定しました。まずはScope1,2排出量のみを対象とし、当排出量から単位売上当たりの排出量原単位を求め、2030年度CO2排出量を想定し、排出削減手段や実施に伴う影響を総合的に判断して削減目標としました。
なお、日本政府が提示する2013年度比46%削減(2030年度7.6億t-CO2)とする目標と同期を図るため、2021年度のCO2排出量を使用した削減率を求め、目標値を設定しました。また削減ロードマップとして2024年度まではCO2排出量算出の精度向上、削減策の試行や効果確認を行う準備期間とし、2025年度より本格的な削減を開始いたします。
※ 2030年度売上高は中期経営計画の目標値です。
(人材の育成及び社内環境整備に関する方針に関する指標の内容並びに当該指標を用いた目標及び実績、
指標及び目標)
当社グループでは、上記「戦略」で示した取組みの実行に対して、その効果を検証するため、まずは多様性の確保を意識した「新卒女性採用率」「女性・外国人、中途採用の社員割合」「障害者雇用率」を指標としています。また、「女性活躍推進法」「育児・介護休業法」で公表を推進する項目に関する「管理職に占める女性労働者の割合」「男性労働者の育児休業取得率」についても以下に示します。
本取組みはグループ会社までの実行には至っておりませんので、以下に示す実績、目標は提出会社であるオリエンタル白石株式会社のみのデータになります。
※ 男女賃金格差について、2023年度の実績は「
2023年度は、「人財が活躍できる環境整備」の一環として、賃金制度の改善、更新を行い士気向上を図るとともに、毎年実施している社員エンゲージメント調査結果では、特徴的課題や期待の抽出に対応したことでエンゲージメントスコアの向上が図れました。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。当社グループでは、これらのリスクの発生を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める所存であります。
当社グループは、年2回のリスク管理委員会を開催し、各事業部門において事業年度におけるリスクを把握しリスク低減に関する施策を討議するとともに、その有効性の評価と施策結果の確認を行い、その結果を受け翌事業年度のリスク低減へ反映させるサイクルを行っております。また、リスク管理委員会における経過、結果は取締役会に報告しております。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループの主要な事業は、建設事業であり、その事業サイクルは受注・施工・売上・回収の流れとなっております。リスクの区分としては、このサイクルに直接的に該当する(特に重要なリスク)と関連する(重要なリスク)に区分されます。
(特に重要なリスク)
① 市場リスク
当社グループの事業は、その大半が国・地方自治体及び高速道路会社からの公共事業に依存しております。これらの発注状況については情報収集に努めておりますが、予想を超える公共事業の削減が行われた場合には、目指すべき受注の確保ができず、売上の減少により業績に影響を与える可能性があります。受注への対応のため、本社において営業戦略会議を毎週開催し、これらの発注状況の共有、各支店の受注活動状況の確認、注力事業分野の指示等の受注量確保のための戦略会議を行っております。
② 資材価格・労務費上昇リスク
請負金額に反映することが困難になる水準で資材価格・労務費が高騰した場合には、工事原価の上昇による利益減少により業績に影響を与える可能性があります。資材価格・労務費については、入札時において見積徴収等を行い価格の動向を確認するとともに施工中における資材価格の高騰について発注者と情報を共有することにより請負金額へ反映されるよう協議を行っております。
③ 事故などの安全上のリスク
事業に関して大規模な事故が発生した場合は、多大な損害が発生する可能性があります。当社グループでは、安全を最優先として、事故防止に努めておりますが、万一事故が発生した場合は、社会的信用の失墜、各発注者からの指名停止措置等の行政処分、損害賠償等により、受注機会の喪失、利益の減少、資金負担の増加等の事業に重大な影響を及ぼす可能性があります。
④ 品質管理に関するリスク
当社グループの製品の製作及び施工につきましては、品質管理に細心の注意をはらい万全を期しておりますが、万一、重大な契約不適合責任や製造物責任による損害賠償が発生した場合、修復に多大な費用負担、施工遅延の発生や信用力の低下による受注機会の減少等により業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑤ 取引先の信用リスク
当社グループは、民間からの請負工事を行っており、与信管理、情報収集、債権管理等の対応を取っておりますが、工事代金受領前に取引先が信用不安に陥った場合、貸倒損失の計上による利益の減少、資金回収不能による資金繰りの悪化等により業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(重要なリスク)
① 金利上昇による業績変動リスク
資金調達については、当社を中心としたグループ内資金運用を基本に財務体質の維持・強化に努めており、金融機関からの借入期間の検討等により金利負担の低減に努めておりますが、現行金利が予想以上に高騰した場合には、調達資金コストの上昇が当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
② 法的規制に関するリスク
事業を営むにあたり建設業法等の法的規制を受けております。法令遵守の意識徹底は対処すべき課題の最優先課題と位置づけておりコンプライアンス教育による意識の徹底に努めておりますが、万一法令違反があった場合には、行政処分や刑事処分、訴訟による損害賠償等が発生し、受注機会の減少、資金負担の増加等により業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
③ 訴訟等のリスク
事業等に関連して訴訟、紛争、その他法的手続きに関わる判決、和解、決定等により、信用力の低下による受注機会の減少や資金負担の増加等の業績に影響を及ぼす可能性があります。
④ 感染症に関するリスク
感染拡大や収束時期の長期化による上記①市場リスク(建設投資計画の見直しや工事発注時期の延期による受注機会の減少)や、②資材価格・労務費上昇リスク(工事中断の発生に伴う工程遅延による売上高減少や、関連する経費・労務補償等の原価が増加)等により、業績に影響を与える可能性があります。
⑤ 情報セキュリティリスク
当社グループは、施工物件に関する情報、経営・技術・知的財産に関する情報、個人情報等様々な情報を取り扱っております。情報セキュリティ規程を定め従業員教育を行うとともに、サイバーセキュリティ対策として、働き方の多様化を踏まえたエンドポイントセキュリティの強化やマネージメント・セキュリティ・サービスを導入しておりますが、これらの情報が外部からの攻撃や従業員の過失等により漏洩または消失等した場合は、信用の毀損、損害賠償や復旧費用等の発生により業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑥ 気候変動に関するリスク
TCFDの枠組みに則り、気候変動に関するリスクは移行リスクと物理的リスクに区分して特定しております。 移行リスクにおいては、CO2削減に伴うエネルギー、材料、資機材等の価格高騰、施主や顧客によるCO2削減要求に対する制約、事業に関する法規則の厳格化が挙げられます。また物理的リスクは気象、環境変化による現場作業不能や災害、労働者の健康被害が挙げられます。
(経営成績等の状況の概要及び経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)
文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において判断したものであります。
受注高、売上高及び受注残高の状況
損益の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、世界的な金融引締めに伴う影響や中国経済の先行き懸念など、海外景気の下振れによって、国内景気が下押しのリスクにさらされるなか、全体としては、雇用・所得環境が改善する下、各種政策の効果もあって、緩やかな回復基調にあるものと評されております。また、アジア・アメリカ・EU等、各地域からの輸入は概ね横ばい傾向ながら、輸出においては円安効果もあって、アメリカ向けが増加しており、弱含んでいるアジア・EU向けの持ち直しとともに更なる増加が期待されるところです。徐々に高まる消費者マインドに基づく個人消費の回復や改善基調にある企業の業況判断と併せれば、今後さらなる企業収益改善が期待されるところですが、令和6年1月に発生した能登半島地震の経済に与える影響にも十分留意しつつ、これら動向や先行きを見定めようとする状況が続いております。
一方、公共投資につきましては、国の令和5年度一般会計予算の補正予算において約2.2兆円の予算措置が講じられ、補正後は前年度比2.5%増となり、令和6年度一般会計予算の公共工事関係費でも、当初予算は前年並みの予算水準となっております。公共工事請負金額が、対前年同期比74.6百億円増の105.3%の実績となっていることから、補正予算の効果とともに、引き続き堅調に推移していくことが見込まれております。
このような状況におきまして、当社グループ全体で受注活動に取り組んだ結果、当連結会計年度の受注高は、677億4千6百万円(前年同期比4.9%減)となりました。前連結会計年度比で建設事業、鋼構造物事業ともに減少となりグループ全体としても減少となりました。
当社グループの当連結会計年度における売上高は673億8千2百万円(前年同期比9.6%増)となりました。各セグメントにおいて前年同期比で増加となり、特に、鋼構造物事業において高い増加率となりました。また、受注残高につきましては、上記の受注及び売上の状況により、981億9千2百万円(前年同期比0.4%増)となりました。
当連結会計年度における売上原価は547億6千7百万円(前年同期比8.1%増)となり、売上総利益は126億1千4百万円(前年同期比16.5%増)となりました。売上高の増加に伴い、売上原価は増加となりましたが売上総利益においても増加となりました。
当連結会計年度における販売費及び一般管理費は、試験研究費、諸経費の増加により60億8千万円(前年同期比8.4%増)となりました。営業利益は65億3千3百万円(前年同期比25.3%増)、経常利益は65億8千万円(前年同期比21.2%増)となりました。
当連結会計年度における親会社株主に帰属する当期純利益は、46億3千2百万円(前年同期比18.1%増)となりました。
なお、当社グループの報告セグメントごとの業績を示すと、次のとおりであります。
受注高、売上高、受注残高及びセグメント利益の状況
(注) 「その他」は、太陽光発電による売電事業、不動産賃貸事業及びインターネット関連事業であります。
① 建設事業
当セグメントにおきましては、売上高は549億9千7百万円(前年同期比9.4%増)、セグメント利益(営業利益)は59億3千4百万円(前年同期比25.2%増)となりました。前年同期比で主にPC土木(新設橋梁)、ニューマチックケーソン工事における売上高の増加に伴い、利益についても増加となりました。
② 鋼構造物事業
当セグメントにおきましては、売上高は85億1百万円(前年同期比12.3%増)、セグメント利益(営業利益)は5億6千1百万円(前年同期比12.0%増)となりました。前年同期比で主に新設橋梁工事における売上高の増加に伴い、利益についても増加となりました。
③ 港湾事業
当セグメントにおきましては、売上高は36億7千4百万円(前年同期比5.5%増)、セグメント損失(営業損失)は1千5百万円(前年同期はセグメント損失(営業損失)1千5百万円)となりました。
④ その他
太陽光発電による売電事業、不動産賃貸事業及びインターネット関連事業により、売上高は2億8百万円(前年同期比19.8%増)、セグメント利益(営業利益)は4千万円(前年同期はセグメント損失(営業損失)1千5百万円)となりました。
当社グループは、2023年度(2024年3月期)を初年度とし、2025年度(2026年3月期)までの3か年を対象とした「中期経営計画2023-2025 ~さらなる成長に向けた競争力の向上と新たな挑戦~」を策定しスタートさせており、当連結会計年度は中期経営計画の初年度にあたります。当社グループの2026年3月期の目標と当連結会計年度での主な指標の達成率は以下のとおりであります。
売上高につきましては、各セグメントにおいて前年同期比で増加となり、特に、建設事業、鋼構造物事業において高い増加率となり、当連結会計年度においては92.3%の達成率となりました。
営業利益につきましては、当連結会計年度において達成率105.4%となりました。これは、前年同期比で、建設事業、鋼構造物事業における利益の増加が寄与しており、特に建設事業における主として材料費・労務費等工事コストの縮減により利益率が向上したことで、計画を上回る達成率となりました。
経営成績に重要な影響を与える主な要因は、事業の大半を国・地方自治体及び高速道路会社等からの公共事業に依存する中、急激な公共投資の削減や建設コストの上昇等の事業環境の変化であります。当連結会計年度における事業環境は良好に推移したものと考えております。
今後の建設需要は底堅い見通しであるものの、働き方改革に伴う工期延伸、発注ロットの大型化により繰越工事が増加していることによる協力業者を含めた配置人員と受注のバランス、引続き懸念される地政学的影響による資源価格の高騰が経費へ影響を及ぼす恐れや原材料価格の高騰等、今後の経営環境は厳しさを増すことが予想され、より緻密な戦略、対策、計画が求められるものと考えられます。
(2) 財政状態の状況
(流動資産)
流動資産は、前連結会計年度に比べ10.6%増加し570億2千9百万円となりました。これは主に受取手形・完成工事未収入金等が34億9百万円減少しましたが、現金及び預金が56億4千万円、未成工事支出金が5億3千9百万円、未収消費税等が19億1千3百万円増加したことなどによるものであります。
(固定資産)
固定資産は、前連結会計年度に比べ4.5%増加し158億9千4百万円となりました。これは主に減価償却費等により無形固定資産が5億円減少しましたが、建設仮勘定が5億8千5百万円、投資有価証券が5億9千7百万円増加したことなどによるものであります。
(流動負債)
流動負債は、前連結会計年度に比べ11.5%減少し173億2千6百万円となりました。これは主に支払手形・工事未払金が13億3千2百万円増加しましたが、未払法人税等が3億4千7百万円、未払消費税等が19億8千5百万円、未成工事受入金が4億3百万円減少したことなどによるものであります。
(固定負債)
固定負債は、前連結会計年度に比べ1.0%増加し56億3千3百万円となりました。これは主に退職給付に係る負債が3億6千5百万円減少しましたが、繰延税金負債が3億1千2百万円、株式報酬引当金が6千6百万円増加したことなどによるものであります。
(純資産)
純資産は、第三者割当増資の要因もあり前連結会計年度に比べ20.1%増加し499億6千2百万円となり、自己資本比率は68.5%となりました。
当社グループの報告セグメントごとの財政状態は、次のとおりであります。
セグメント資産
(注) 「その他」は、太陽光発電による売電事業、不動産賃貸事業及びインターネット関連事業であります。
① 建設事業
当セグメント資産は636億8千1百万円(前年同期比9.0%増)となりました。第三者割当増資による新株式発行に伴う現金及び預金等の流動資産の増加等によりセグメント資産は前年同期から増加しております。
② 鋼構造物事業
当セグメント資産は76億9千6百万円(前年同期比14.2%減)となりました。短期借入金の返済に伴う現金及び預金等の流動資産の減少等によりセグメント資産は前年同期から減少しております。
③ 港湾事業
当セグメント資産は58億3千3百万円(前年同期比1.5%減)となりました。のれんの償却に伴う無形固定資産の減少等によりセグメント資産は前年同期から減少しております。
(単位:百万円)
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)の残高は、対前年62億7千7百万円増加の201億8千万円(前年同期比45.1%増)となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は、以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動による資金の増加は52億7千3百万円(前年同期比29.2%増)となりました。これは主に減価償却費14億9千6百万円、売上債権の減少30億5百万円、未収消費税等の増加19億1千3百万円、未払消費税等の減少19億8千5百万円、法人税等の支払額21億6千6百万円、税金等調整前当期純利益65億8千2百万円などによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動による資金の減少は9億9千6百万円(前年同期比19.1%減)となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出15億3千万円、定期預金の預入による支出6億8千6百万円、定期預金の払戻による収入13億2千2百万円などによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動による資金の増加は19億9千9百万円(前年同期は22億5千9百万円の減少)となりました。これは主に長期借入金の返済による支出5億8千8百万円、配当金の支払額24億4千6百万円、株式の発行による収入51億1千3百万円などによるものであります。
当社グループの資本の財源は、営業活動による確実な代金回収を基礎としており、当連結会計年度末において現金及び現金同等物を201億8千万円保有しております。
当社グループは、月商の約2.0か月分を安定的な経営に必要な手元資金水準とし、それを超える分については、企業価値の向上に資する研究開発の強化や戦略的投資へ配分しております。当連結会計年度の設備投資は18億4千8百万円、研究開発は7億4千5百万円でありました。これらの設備投資及び研究開発費は、自己資金で賄っております。
資金の流動性につきましては、運転資金は内部資金及び金融機関からの借入金によって調達しており、機動的かつ安定的な資金調達のため、取引銀行5行との間で、シンジケーション方式による総額100億円のコミットメントライン契約を締結しております。なお、当連結会計年度末において当該契約に基づく実行残高はありません。また、子会社において、取引銀行2行との間でシンジケーション方式による総額15億円のコミットメントライン契約を締結しており、当連結会計年度末において当該契約に基づく実行残高は3億円であります。
当社は、2023年5月16日に、2023年度からの3か年を計画期間とする「中期経営計画(2023年~2025年)」を発表しており、事業への資源配分及び株主還元について次のとおり考えております。
事業への資源配分については、企業成長の好循環を目指し、経常投資(既存事業継続投資)、成長投資(成長機会創出投資)、戦略投資(資本業務提携)を2023年度からの3年間で総額220億円で実施する投資計画を設定しております。
株主還元については、安定した利益還元を経営における最重要課題のひとつと考え、安定した利益配当を継続して実施することを基本方針としております。2026年3月期においては、配当性向50%以上、総還元性向70%程度を目標としております。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、経営者により一定の会計基準の範囲内で見積りが行われている部分があり、資産・負債や収益・費用の数値に反映されております。これらの見積りについては、継続して評価し、必要に応じて見直しを行っておりますが、見積りには不確実性が伴うため、実際の結果はこれらとは異なることがあります。
連結財務諸表に与える影響が大きいと考えられる項目・事象は以下の通りです。
一定の期間にわたり認識する方法による収益
請負工事契約に関する収益は、収益認識会計基準等により、一定の期間にわたり充足される履行義務は、履行義務の充足に係る進捗度を見積り、当該進捗度に基づき収益を一定の期間にわたり認識しております。なお、履行義務の充足に係る進捗度の見積りの方法は、工事原価が履行義務の充足における進捗度に比例して発生すると判断しているため、主として、見積総原価に対する発生原価の割合(インプット法)で算出しております。
見積総原価としての工事原価総額は、原価要素別・作業内容別に個別に積み上げ、所定の承認手続を経て確定された実行予算に基づいて見積っております。工事の進行途上において工事内容の変更等が行われる場合には、当該状況の変化に関する情報を適時に適切な部署・権限者に伝達し、当該情報をもとに実行予算の見直しを行うことで、工事原価総額の見積りに反映させております。対象となる請負工事は、工事ごとに内容や工期が異なるため個別性が強く、また、進行途上において当初想定していなかった事象の発生により工事内容の変更が行われる等の特徴があるため、今後、想定していなかった状況の変化等により工事原価総額の見積りの見直しが改めて必要となった場合、将来の業績に影響を及ぼす可能性があります。
(生産、受注及び売上の状況)
当社グループでは生産実績を定義することが困難であるため、記載はしておりません。
当連結会計年度における受注実績をセグメント別に示すと、次のとおりであります。
(注) 「その他」は、太陽光発電による売電事業、不動産賃貸事業及びインターネット関連事業であります。
当社グループの主な事業である建設事業は、請負形態をとっており「販売」という概念には適合しないため、販売実績に替えて売上実績にて記載しております。
当連結会計年度における売上実績をセグメント別に示すと、次のとおりであります。
(注) 1 「その他」は太陽光発電による売電事業、不動産賃貸事業及びインターネット関連事業であります。
2 主な相手先別の売上実績及びそれぞれの総売上実績に対する割合は次のとおりであります。
前連結会計年度(自 2022年4月1日 至 2023年3月31日)
当連結会計年度(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)
(資本業務提携契約の締結、及び第三者割当による新株式の発行)
当社は、2023年5月16日開催の取締役会において、伊藤忠商事株式会社(以下「伊藤忠商事」といいます。)と資本業務提携(以下「本資本業務提携」といいます。)を行うことに関する資本業務提携契約の締結、同社を割当予定先として第三者割当による新株式(以下「本新株式」といいます。)の発行(以下、本新株式の発行を「本第三者割当増資」といいます。)について決議し、2023年5月31日に同社からの払込みが完了しております。その結果、当社の主要株主である筆頭株主に異動がありました。
Ⅰ. 本資本業務提携の概要
1. 本資本業務提携の目的及び理由
当社は、2023年5月16日公表の新中期経営計画(2023-2025)『~さらなる成長に向けた競争力の向上と新たな挑戦~』の中で、以下の基本方針を掲げています。
① 国土強靭化、インフラ老朽化対策などの社会的課題の解決に貢献し、これを業績の向上につなげる
② 基幹事業のさらなる充実、連結事業の強化、新規・周辺事業の成長と領域拡大を推進し、グループ全体の発展を図る
③ DXや技術開発、他社・他業種との連携により、事業生産性を高める
④ 教育、研修など“人への投資”を促進し、競争力豊かな人財の構築を図る
⑤ バランスのとれた投資、還元戦略を実行する
⑥ カーボンニュートラルに向け、脱炭素施策の推進と技術開発を継続する
当社は、これらの基本方針に基づき、社業発展やグループの成長のため、また当社が自らの責務と考えるインフラ整備を通じた社会貢献のために、多くのプロジェクトへの対応や、インフラ整備・更新への注力、事業の担い手の確保・育成や協力会社との連携など、社内外の課題に対応していくことが肝要と捉えています。
このような観点から、当社は、総合商社として、子会社及び関連会社約300社と共に、10万社以上におよぶ豊富な取引顧客網とネットワークを有し、特に建設・建材事業では、国内トップの木材建材メーカーや建材商社、エンジニアリング会社等による資機材ビジネスのバリューチェーンを展開している伊藤忠商事と、中長期にわたって事業を補完、強化し合うことが期待できることから、当社が新中期経営計画において掲げる2030年像である『人財と技術の多様性を活かし、社会インフラ整備の様々な需要に応え、挑戦と前進を続ける企業集団』を実現するのに最良・最適なパートナー企業と判断し、同社と資本業務提携契約を締結することにいたしました。
本資本業務提携を踏まえ、当社は、伊藤忠商事の豊富な取引顧客網、ネットワーク及び資機材ビジネスのバリューチェーンを、伊藤忠商事は、当社のプレストレストコンクリート(注1)やニューマチックケーソン(注2)等の技術及びインフラ整備に対する知見や実績をそれぞれ活用することが可能となります。これにより、両社は、橋梁インフラメンテナンス領域においての事業展開やアライアンスの構築、インフラ分野におけるPPP(注3)及びPFI(注4)における協業、製品・技術の海外展開等において、シナジーを発揮できるものと考えております。
これらの取り組みやシナジーの実現を通じて両社の競争力の向上を目指すにあたり、後記 「Ⅱ.本第三者割当増資の概要 2.調達する資金の具体的な使途」に記載の資金需要が発生します。本資本業務提携は、上記を実現する資金調達の必要性に対応するとともに、企業価値及び株主利益の一層の向上を図る上で非常に有効な施策であると考えており、特に、当社の主力事業である建設事業においては、生産性向上とコスト競争力の向上による大きな事業成長を見込んでおります。
(注1) 「プレストレストコンクリート」とは、コンクリートに予め圧縮力を与え、部材の強度・耐久性を向上させる技術をいいます。
(注2) 「ニューマチックケーソン」とは、基礎下部に圧縮空気を送り込み、地下水の浸入を抑えて掘削する技術をいいます。
(注3) 「PPP」とは、「Public Private Partnership」の略であり、公共施設等の建設、維持管理、運営等を行政と民間が連携して行うことにより、民間の創意工夫等を活用し、財政資金の効率的使用や行政の効率化等を図る取り組みをいいます。
(注4) 「PFI」とは、「Private Finance Initiative」をいい、公共施設等の建設、維持管理、運営等を民間の資金、経営能力及び技術的能力を活用して行うPPPの手法の1つをいいます。
2. 本資本業務提携の内容
(1) 資本提携の内容
当社は、本第三者割当増資により、伊藤忠商事に本新株式16,310,964株(本第三者割当増資後の所有議決権割合12.26%、自己株式を除く発行済株式総数に対する所有割合12.25%)を割り当てました。
(2) 業務提携の内容
当社と伊藤忠商事は、今後「国土強靭化」・「インフラ老朽化対策」が社会基盤整備への貢献の柱であることを踏まえ、両社が有するリソース、ノウハウを結集し、両社の収益強化と事業安定性の向上のために「橋梁インフラメンテナンス事業の強化及び事業領域の拡大」、「安心安全社会の実現に向けた取組推進」、「顧客基盤拡充・競争力向上」等の施策による両社の中長期的企業価値の向上を実現することを目的として、以下の基本方針に基づき、業務提携を推進してまいります。なお、業務提携の内容の詳細につきましては、今後、両社間にて検討を進めてまいります。
① 橋梁インフラメンテナンス事業の強化及び事業領域の拡大
② 安心安全社会の実現に向けた取組推進
③ 顧客基盤拡充・競争力強化
以下のとおり、伊藤忠商事の機能活用により、当社の顧客基盤拡充や競争力強化を図り、当社の企業価値を向上させる
・伊藤忠商事及び伊藤忠商事懇意先企業群のネットワークを活用したPC 建築等の民間工事受注の拡大
・伊藤忠商事グループの調達機能を活用した原料・資機材等コストの低減
・伊藤忠商事の機能を活用した不動産の有効活用、物流効率化、DX 等の推進により、当社の定性・定量面の企業価値向上
3. 本資本業務提携の相手先の概要
(注)割当先である伊藤忠商事は、東京証券取引所プライム市場に上場しており、同社が東京証券取引所に提出した2023年4月3日付「コーポレート・ガバナンス報告書」のうち「Ⅳ内部統制システム等に関する事項 2.反社会的勢力排除に向けた基本的な考え方及びその整備状況」において、市民社会の秩序や安全に脅威を与える反社会的勢力との一切の関係・取引を遮断することを基本方針とし、これを実現するために、社員への教育啓蒙を定期的に実施すると共に、取引等の相手方が反社会的勢力に該当しないことの事前確認を徹底する等、必要な社内体制の整備・強化を行っている旨を表明しており、同社及びその役員は反社会的勢力とは関係がないものと判断しております。さらに、当社は、2023年5月16日付で伊藤忠商事との間で締結する資本業務提携契約において、伊藤忠商事から、反社会的勢力ではなく、又は反社会的勢力と何らかの関係を有していない旨の表明及び保証を受けております。
Ⅱ. 本第三者割当増資の概要
1.募集の概要
(1) 払込期日 2023 年5月31日
(2) 発行新株式数 普通株式 16,310,964株
(3) 発行価額 1株につき329円
(4) 調達資金の額 5,366,307,156円(差引手取概算額:5,081,051,196円)
(5) 資本組入額の総額 4,000,000,000円
(6) 募集又は割当方法(割当先) 伊藤忠商事株式会社に対する第三者割当方式
2.調達する資金の具体的な使途
(注1)今回調達した資金については、実際に支出するまでは、当社金融機関普通預金口座にて管理いたします。
(注2)各資金使途における投資金額と差引手取概算額との差額分については、自己資金を充当する予定です。
当連結会計年度における当社グループが支出した研究開発費の総額は
(1)建設事業
建設事業では、プレストレストコンクリートとニューマチックケーソン技術を中心とした豊富な知識と経験を活かし、技術的により優れた企業を目指して、基礎的研究から新製品及び新工法の開発まで幅広く取り組んでおります。近年ますます高度化、多様化するニーズに対応するために、当社グループの独自技術を研鑽するとともに、大学、各種研究機関及び異業種企業との共同研究に加え、持続可能な社会のためのCO2削減技術や、少子高齢化による生産人口減少に対する生産性向上技術に関する研究開発も進めております。当連結会計年度における研究開発費の金額は
① ニューマチックケーソン工法における無人化施工システムの開発
建設業全体における労働人口の減少や、大規模・大深度化に対応するためのニューマチックケーソン無人化及び自動化技術の開発、機器の故障診断ならびに働き方改革への取り組みとしての超遠隔地でのケーソン掘削集中管理に対する開発など、合理的かつ安全な施工方法に関する研究ならびに実工事での展開の上での改良を図っております。
② 補修・補強技術の開発
複雑化する高速道路の大規模更新工事に的確に対応するため、床版取替工法「SLJスラブ工法」・非鉄材料で構成するプレキャストPC床版である「MeLスラブ工法」・桁取替工法「SCBR工法」ならびに維持管理性を向上させた「dVIP桁」や、PC合成桁の床版取替にプレキャスト部材を活用した「SPスランプ工法」や電気化学的補修工法、ならびに、PCグラウト再注入工法「PC-Rev工法」の充填及び防錆性能に優れる材料開発など、さらなる開発・改良・実装化を進めております。また、橋脚・基礎補強工法「SSP工法」「ピアリフレ工法(曲げ補強対応)」「STEP工法」をはじめとする各種補修・補強技術の改良を実施しております。
③ 橋梁技術の開発
「SCBR工法」や「プレキャスト壁高欄」などプレキャスト部材を多用した省力化技術の適用拡大や、IoT技術活用による安全管理、AR空間によるバイブレーター充填管理、X線画像によるグラウト充填に関するAI診断など、生産性向上の観点から検討を進め、実工事への展開や改良を図っております。
④ 港湾構造物の開発
港湾分野など新たな市場開拓を目指した「港湾桟橋用SLJスラブ」・「CFRPスラブ」の実用化、過酷な塩害環境下での要求性能を満足する構造開発に注力するとともに、岸壁構造へのケーソン構造の適用について研究を行っております。
⑤ サステナブル社会に向けた開発
CO2削減コンクリートやリユース材の利活用ならびにCO2削減に資する工法について、開発ならびに実工事への展開を図り、サステナブルな社会の実現を目指しております。また、CO2排出量削減と生産性向上を企図した「エフキュア・コンクリート」の実用化を図っております。
(2)鋼構造物事業
当連結会計年度における研究開発費の金額は