第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)経営方針

当社は130年以上という長きにわたり、大きな社会変動を乗り越えて良質な製品とより良いサービスを提供してきました。この伝統と実績を受け継ぎ、「人を大切に、技を大切に」を経営理念とし、如何なる市場環境変化の時代においても、高収益体質企業を実現させ、長年蓄積してきた「人と技術」を通して、高品質の製品とサービスを提供し、価値創造企業へ向けて更なる挑戦を行うことを経営の基本方針としております。

 

(2)中期経営計画

中期経営計画(2022年度~2024年度)におきましては、外部環境が悪化し、顧客需要が低調に推移する中、原燃料価格の上昇に合わせた価格改定や新製品の売上寄与などがあり、売上高は計画を上回る水準で推移しました。営業利益につきましては、需要低迷に伴う操業度低下などにより、2022年度、2023年度ともに計画に対して大幅に未達の状況となっておりますが、そのような中でも、2023年度の営業利益は前期との比較では75.2%の増益と大幅に回復しております。

中期経営計画の2年目である2023年度までの成果としましては、電子セラミック材料や半導体材料向けの投資や、グローバル化推進に向けた海外販売拠点の体制強化、サステナビリティ経営を推進する体制構築など、中長期成長に資する取り組みを積極的に進めたことが挙げられます。一方で、課題としましては、成長分野製品の売上拡大が遅れていることや、ROE、EBITDAといった、企業価値向上に資する指標が非常に低調であることが挙げられます。また、サステナビリティの取り組みについては、更に踏み込んだ対応を進める必要があると認識いたしました。

このような状況から、中期経営計画の見直しを行い、2024年度を初年度とする中期経営計画を作成致しました。

 

(新中期経営計画)

2024年度を1年目とする新中期経営計画(2024-2026)におきましては、「成長戦略の推進と新たな価値の創造」の方針のもと、サステナビリティ経営の推進をベースとした3つの重点施策により、安定的な収益基盤の構築と収益力の向上に向けて取り組んでまいります。

 

サステナビリティ経営の推進

サステナビリティ経営の実践には、環境、社会、経済のバランスが大切と認識しております。環境、社会、ガバナンスに関わる様々な要請を考慮しつつ、ありたい姿からバックキャスティングによる新たな価値の創出を通して、持続的な経済成長を目指してまいります。サステナビリティ経営の推進により、新たな価値の創出に注力します。

 

①事業拡大と体質強化

電子セラミック材料への戦略的投資継続による事業機会の獲得と、半導体向け材料の生産効率化および安定化追求により、事業拡大を目指します。また、基礎分野においては、生産スケールの最適化などによりコスト競争力を強化し、製品の価値を最大限に高め、確実に利益を出せる企業体質への改善に取り組んでまいります。さらに、固有技術の見える化や、デジタル・AI技術の導入による生産体制の向上にも取り組み、顧客の要求品質を満たす製品を安定かつ安全に生産する体制を構築してまいります。

 

②グローバル化の推進

海外拠点の組織力の強化と、拠点間の連携を高めることで、現地ニーズに合った製品の販売を促進し、新たなビジネスモデルを探求・発展させることによりグローバル化を推進してまいります。

 

③新たな価値の創造

積み重ねてきたコア技術・知的財産に加え、外部リソースを活用して技術プラットフォームを広げ、多様化・高度化する顧客ニーズに対応してまいります。また、カーボンニュートラルをはじめとする事業環境の変化を的確に捉え、社会課題の解決に繋がる製品開発にチャレンジしてまいります。

 

 

当社では、企業価値をさらに向上すべく、2030年のありたい姿として営業利益60億円、ROE8%(連結)を目標数値として設定しております。このありたい姿を実現するため、2027年3月期を最終年度とする中期経営計画において、営業利益33億円、ROE6%(連結)を目標数値として設定しております。持続的成長を可能とするため、中長期的な戦略や優先的に対処すべき事業上の課題につきましては、部門横断的に分析および検討を行っております。さらに、資本コストについて、取締役会を通じて定期的に検証する体制を有しており、その分析および検討の結果、構築された収益向上に向けた施策につきましては、中期経営計画等に反映し公表しております。中期経営計画等の各種施策により収益力を向上させ、事業構造の見直しや資産の効率化、キャッシュ創出強化を図ることで、企業価値およびPBRの向上を目指してまいります。

 

・中期経営計画資料:下記URLをご参照ください。

https://www.nippon-chem.co.jp/ir/financial/presentations.html

 

・資本コスト経営の推進について:下記URLをご参照ください。

https://www.nippon-chem.co.jp/dcms_media/other/20240514_irrelease.pdf

 

「株主との対話の実施状況」

・株主との対話の実施状況について:下記URLをご参照ください。

https://www.nippon-chem.co.jp/ir/stockholder/dialogue.html

 

(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

中期経営計画(2024~2026年度)の最終年度において売上高490億円、営業利益33億円を目標といたします。また、EBITDA80億円、ROE6%を重要経営指標に設定しております。

 

 

中期経営計画

最終年度(2026年度)

目標値

売上高

490億円

営業利益

33億円

重要経営指標

EBITDA(※)

80億円

ROE

6%

(※)EBITDA=営業利益+減価償却費

 

(4)経営環境並びに優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

わが国経済は、新型コロナウイルス感染症における社会経済活動の制限が緩和され、緩やかに回復しつつあるものの、原燃料価格の高止まりや円安の影響、さらに国際情勢の悪化等により、依然として先行き不透明な状況が続いております。このような状況のもと、当社グループは、中期経営計画に掲げる成長戦略の推進と成果の実現に向け、「成長事業の拡大」、「グローバル化の推進」、「経営基盤の強化」という3つの重点施策に全社一丸となって取り組んでまいりました。また、事業活動を通じた中長期的な企業価値向上を実現すべく、サステナビリティ経営を推進しております。

当社グループは『如何なる市場環境変化の時代においても、高収益体質企業を実現させ、長年蓄積してきた「人と技術」を通して、高品質の製品とサービスを提供し、価値創造企業へ向けて更なる挑戦を行う』を経営の基本方針に掲げております。

 

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

1.サステナビリティ基本方針

当社グループは「人を大切に、技を大切に」の企業理念に基づき、ステークホルダーとの対話と価値創造を通じて社会課題の解決を図り、地球規模まで視野に入れたあらゆる「人」の幸せと持続可能な社会の実現に取り組みます。

・事業活動を通じて、環境負荷を低減し、地球温暖化防止に取り組みます。

・環境に配慮した製品を提供し、低炭素社会、循環経済の実現を目指します。

・社会貢献活動を積極的に推進し、地域社会の活性化や信頼関係の醸成を目指します。

・人権・労働・安全・環境等、事業活動に適用されるすべての法令や規則を厳格に遵守します。

・社会課題の解決に貢献する製品の開発と販売を促進します。

・多様化する働き方やワークライフバランスを重視した職場環境の構築を進めます。

・サプライヤーから顧客にいたる強靭なサプライチェーンを構築します。

 

2.気候変動への対応

気候変動が経済・社会・環境に及ぼす影響は年々深刻さを増しております。世界規模で脱炭素社会の実現に向けた動きが加速しており、企業にも確実な対応が求められております。

当社グループは、2022年10月「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」へ賛同しました。

今後、TCFDの提言に沿った気候変動に対する取り組みを推進し、積極的な開示を進めてまいります。

 

(1)ガバナンス

 当社グループは、企業理念に立脚して様々なステークホルダーと良好な関係を築き、信頼され必要とされる企業となるため、CSR(企業の社会的責任)活動から、企業活動を通じた価値創造により、全てのステークホルダーに貢献するサステナビリティ活動へ軸足を移し、スピード感を持った活動を推進することを目的にサステナビリティ推進委員会を設置しました。サステナビリティ推進委員会は、代表取締役社長が委員長となり、委員は生産技術本部、研究開発本部、営業本部、経営戦略本部、事業推進本部を担当する取締役及び執行役員と、その目的に照らし、委員長が適切と認めて選任したメンバーにより構成され、サステナビリティ基本方針を始めとしたサステナビリティに関する事項の審議を行います。サステナビリティ推進委員会の開催頻度は、原則年2回、また必要に応じて別途開催致します。

 取締役会は、サステナビリティ推進委員会で審議された重要事項についての報告や提言を受け、気候関連課題への対応方針および実行計画等についても指示・監督を行っております。サステナビリティ推進委員会のもとに、「サステナビリティ委員会」、「全社RC委員会」、「NBCP(日本化学事業継続計画)運営委員会」、「倫理委員会」の4つの委員会を配置し、サステナビリティ推進委員会はこれら4つの委員会の活動を統括・指導し、定例会議等を通じてマネジメント強化と推進に努めております。サステナビリティ委員会は、常務執行役員のもとで、全てのステークホルダーへの価値の提供や、気候変動や循環経済への対応等、サステナビリティに関する取り組みを進めております。全社RC委員会は、代表取締役社長を委員長とし、環境・安全におけるレスポンシブル・ケア活動を推進し、法規制の遵守、環境保全、保安防災、労働安全衛生、製品安全、物流安全等のレベルの維持向上に努めております。NBCP(日本化学事業継続計画)運営委員会は、生産技術本部を担当する執行役員を委員長とし、顕在化した危機および潜在的な危機に対する方針や計画、訓練の継続的改善を推進しております。倫理委員会は、事業推進本部を担当する執行役員を委員長とし、日々の企業活動において遵守すべき行動指針の周知徹底を図るとともに、定期的に遵守状況の確認を行い、継続的な改善に努めております。

 

 

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(2)戦略

シナリオ分析の概要

 当社グループでは、TCFD提言にて例示されている気候変動がもたらすリスク・機会を元に、シナリオ分析を実施しました。

 シナリオ分析においては、2℃以下シナリオを含む複数の温度帯のシナリオを選択、設定していく必要があるため、移行面で影響が顕在化する1.5℃シナリオと物理面での影響が顕在化する4℃シナリオの2つのシナリオを選択しました。

 

移行リスク・機会:脱炭素シナリオ(1.5℃)

 移行リスク・機会については、1.5℃目標達成に向けて、低炭素経済への移行に関連した様々な規制等が導入される脱炭素シナリオに基づいて検討しました。

 脱炭素シナリオ(1.5℃)においては、政府の環境規制強化にともなう炭素税導入や、再生可能エネルギー需要の増加による価格上昇等費用の増加、世界規模での地球温暖化対策が講じられることによる資源調達費用の増加が想定されます。一方で、当社グループの成長分野である電子セラミック材料、電池材料、半導体材料等をはじめとする各種機能性材料では、化学産業に求められる脱炭素イノベーションの高まりによる研究開発の推進、川下産業の環境貢献製品向け材料としての需要増加が想定されます。当社グループには、顧客ニーズに応える技術開発力、これを再現よく生産するための生産技術力があり、これらに磨きを掛けることで競合他社との差別化を図っています。この取り組みを継続することで、ビジネスチャンスが増え収益が向上していくものと考えています。

 また、当社グループは化学品・機能品を基幹事業としており、生産工程で使用される燃料、電気、蒸気の消費によるCO2排出量削減を重要な課題と認識しています。全工場における生産活動の中で、省エネ活動、電化、再エネ活用、燃料及びプロセス変換に着目し、自社排出のCO2発生量の削減に取り組んでいます。

 調達面のリスクに関しても、強靭な原料調達体制の確立を推進し、サプライチェーンを切らさずにお客様へ安定品質の製品提供を継続していきます。

 

物理的リスク・機会:温暖化進行シナリオ(4℃)

 物理的リスク・機会では、異常気象による自然災害の発生にともなう、事業活動の停止やサプライチェーンの断絶が大きなリスクとなります。

 自然災害は、発生の予測が難しく、一度発生すれば、当社グループの製造拠点が被災し、化学物質の漏洩等甚大な被害をもたらす可能性があります。

 設備損傷や化学物質漏洩による操業停止等を回避するためには、災害対策に関する設備投資が必要となり、投資による製造コスト上昇も想定され、温暖化進行シナリオ(4℃)では、この傾向はさらに強まることが想定されます。

 当社グループは気候変動リスクを含む大災害に対応できるよう、専門の委員会を設置しBCP(事業継続計画)体制を全社ベ一スで策定、緊急時においても事業活動への影響を最小限にとどめるよう備えています。引き続き、BCP体制の継続的改善を推進してまいります。

 

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(3)リスク管理

 当社グループのリスク管理についての審議及び決定機関はサステナビリティ推進委員会としております。また、リスク対応は、サステナビリティ推進委員会の指示を受けて、各本部長の指示により、各部長、各工場長が行うこととしております。

 気候変動に関するリスク・機会も重要な課題の一つと位置付けており、サステナビリティ委員会を中心に協議、検討しております。サステナビリティ委員会では、気候変動によって受ける影響を把握・評価し、TCFDの枠組みに基づいたシナリオ分析を行い、気候変動リスク・機会を特定しています。気候変動リスク管理の状況や特定した重大な気候変動リスクに関しては、サステナビリティ推進委員会への報告・提言を行ってまいります。

 

(4)指標及び目標

 2021年度の当社グループの温室効果ガス排出量は、67,887t(Scope1,2)でした。脱炭素社会の実現に向けて、パリ協定で求められる温室効果ガス排出削減レベルを考慮し、Scope1,2の排出量について、2020年度の排出量63,356t(2023年11月改定値)を基準に、「2030年度23%削減」の目標を設定しております。社内の省エネ、節電を心掛けるとともに、再生可能エネルギーや製造現場における脱炭素技術導入等により温室効果ガス排出量を削減し、脱炭素社会の実現を目指します。

 

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3.サステナビリティの主な取組み

当社グループにおいて、2023年度の取組みについてご報告致します。

 ・マテリアリティに関するKPIの設定

 ・CO2フリーの電気(再生可能エネルギー電源を活用した電源)導入開始

 ・環境貢献製品の認定制度を導入し、4製品を認定。

 ・外部評価、イニシアチブへの賛同

CDP(気候変動において「B」スコア)

EcoVadis(Silver)

経団連生物多様性宣言への賛同

 

 詳細は、インターネット上の当社ウェブサイトをご参照ください。

 https://www.nippon-chem.co.jp/sustainability.html

 

4.人的資本

企業理念「人を大切に、技を大切に」が表すように、当社にとって「人」は日本化学らしいサステナビリティ経営を遂行し、発展させていくために大切な「財産」と認識しており、それを担うことができる多くの人材を育成していくことが重要と考えております。そのために、中期経営計画(2024-2026)に掲げる方針「成長戦略の推進と新たな価値の創造」に基づき、「事業拡大と体質強化」、「グローバル化の推進」、「新たな価値の創造」の3つの重点施策を実行できる人材の育成を目指し、人材戦略として3つの方針「多様な人材の確保」、「人材の育成」、「職場環境の整備」を掲げました。また、個の育成に留まらず、組織全体を育成するという当社独自の考えの下で、会社全体をレベルアップさせ、サステナブルな企業体質を築いていきたいと考えております。

 

(1)ガバナンス

 人材戦略に関しては、取締役会で決定した経営戦略を経て、経営トップである代表取締役社長をはじめとする執行役員で構成された経営会議にて、具体的な課題や施策(重要な組織の新設と改編、人事制度の改革等)に関する検討と決裁、進捗状況の確認を実施しております。また、定期的に経営会議から取締役会に報告し、取締役会は報告を受けた内容に関してモニタリングし、監督しております。

 

 

(2)戦略

 組織の発展につながる人材の拡充を実現するためには、様々な能力を持つ人材の確保と社員一人ひとりの成長が重要です。社員の自律的なキャリア形成を後押しする体系的な教育体制を整えております。

 また、社員の自発的行動を促し、組織全体を育成するという当社独自の観点からコーチング・プログラムを展開しております。

 さらに、多様な働き方やワークライフバランスを重視した職場環境の整備を進めるとともに、健康経営や労働安全衛生の推進にも取り組んでまいります。

 

 

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①多様な人材の確保

 変化の激しい事業環境に対応していくためには、多様な視点や経験を活かすことが必要です。≪女性活躍推進≫≪キャリア採用推進≫≪外国人採用推進≫を実施し、サステナブルな企業体質を目指します。

 

≪女性活躍推進≫

 女性活躍推進においては、女性が仕事と生活を両立しながら活躍することを推進しており、女性活躍機会の拡大は、今後の当社の成長戦略には欠かせません。しかし、当社人事制度における総合職及び管理職に占める女性社員の比率は2024年3月末11.1%で、依然少ない状況であり、女性社員を増やしていくこと、並びに女性社員の育児離職を防ぐことが重要な課題であると認識しております。女性管理職比率の向上を目指し、新卒採用(大卒以上)の女性比率を2026年度の目標として30%以上とする取組みを推進しております。

 

≪キャリア採用推進≫

 多様な価値観や高度な専門性を持った即戦力となる人材を確保するため、キャリア採用を積極的に実施しております。採用者全体(大卒以上)に占めるキャリア採用の割合を2026年度の目標として20%以上とする取組みを推進しております。

 

≪外国人採用推進≫

 外国人の雇用については海外子会社を中心に採用をより一層進めます。

 

②人材の育成

 社員教育は、会社の成長を支える大切な要素の一つです。「成長戦略の推進と新たな価値の創造」の実現に向けて、社員一人ひとりが最新の知識やスキルを身につけ、業務遂行上必要な知識・技術・技能を修得し、能力向上を図るため≪体系的教育制度≫を設けております。また、「未来に続く日本化学」の実現に向け「何が必要で、それはどうしたらできるのか」を一人ひとりが考えて動くことのできる組織づくりを目指すため、≪コーチング・プログラム≫を実施し、社員の自発的行動を促進してまいります。

 

≪体系的教育制度≫

 日常の業務活動を通じて、それぞれに必要な知識・技術・技能の啓発向上を図る職場内教育(OJT)に加え、新入社員から幹部職までの階層別研修や、職層にかかわらず業務を遂行するうえで必要となるスキルアップ・プログラムやグローバル人材育成プログラム等に注力し、教育機会の拡充を図っております。当社は、以下に掲げる「教育基本方針」のもと、下記の「教育体系図」・「階層別教育体系図」に示す通り、教育の機会を提供しております。また、個人の育成では、多様な教育・研修の場を提供しているほか、化学系資格取得支援として公害防止管理者や危険物取扱責任者等の資格取得について積極的にサポートしております。その結果、化学系資格取得者の割合は徐々に増加しております 。さらに、グローバル人材の育成としてオンライン語学研修制度や海外トレイニー制度を導入しております。管理職上級者に対しては、次世代の経営人材育成のため教育制度の充実化を図ってまいります。

 

(当社の教育基本方針)

・教育は、会社の方針に沿って、計画的・組織的かつ継続的に行う。

・能力育成は、社員各自が向上意欲に燃え、自己啓発に努めることによって、その成果が期待されるものであり、会社は機会をとらえて必要な施設及び援助を行う。

・指導的立場にある者は、能力育成の環境を醸成すると共に、常に率先垂範して自己啓発に努めなければならない。

 

(教育体系図)

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日本化学工業 階層別教育 体系図

 

対象

教育名

教育内容

必須能力

獲得スキル・知識・技能

管理職上級

部長・工場長

経営幹部教育

会社を経営して行くために、経営幹部として必要な知識、技術、技能を修得することを目的とし、役員および管理職上級者を対象として行う。

リーダーシップ

 

目標達成マネジメント/(創造型)問題解決/活力ある職場づくり/リーダーシップ/経営戦略構築

管理職

シニアマネジャー

マネジャー

管理者教育

管理者として、組織運営上必要な管理に関する知識、技術、技能を修得することを目的とし、管理職を対象として行う。

共通

専門

能力

マネジメントの原理原則/組織活性化/意思決定/問題解決能力/部下指導

10~15年

指導職層

監督者教育

監督者として、職場における指導、監督に関する知識、技術、技能を修得することを目的とし、総合職及び専任職の指導職層を対象として行う。

 

プロジェクトマネジメント/(潜在型)問題解決力/論理的思考力/表現・説得力/後輩指導力/仕事管理力(段取り)/業務改善/(顕在型)課題解決力

5~10年

一般職層

一般社員教育

会社の現状、業界の動向、その他業務遂行上必要な基礎的知識を深め、従業員としての自己啓発を図ることを目的として、総合職及び専任職の一般職層を対象として行う。

自律

行動

 

プロフェッショナル意識(コスト・協調・規律・行動意識)/企画・発想力

1~2年

若手

新人社員教育

新入社員に対し、会社の概要、業務上必要な基礎知識等を修得させて、社員としての自覚と誇り、仕事への意欲を持たせると共に、速やかに会社になじませることを目的として行う。

基本

動作

ビジネスマナー

基礎知識/自立心、客観的視点/報告・連絡・相談/モチベーション/コミュニケーションスキル

採用時

新入社員

 

心構え

ビジネスマナー

 

≪コーチング・プログラム≫

 当社では、人材育成の一環として「未来への種まきプロジェクト」と称したコーチング・プログラム(「対話」を通して企業課題への解決策を模索する組織力向上プログラム)を2021年度から毎年実施しております。このプログラムでは、組織を越えたコミュニケーションの機会を意識的に増やすことにより、社員一人ひとりが自立し、考え、動くことで組織全体が育成されていくことを目指します。2023年度までに累計約180名(全社員対比27.6%)が受講しており、2024年度も実施する予定です。また、このプログラムで育成されたインターナル・コーチは2023年度までに累計15名となり、自職場内外を問わず組織の活性化を図り、組織力の強化に努めております。

 

③職場環境の整備

 社員がやりがいを持ち、互いに尊重しあい、心理的に安心して働ける職場の実現を目指し、「働き方改革」の一環として≪ワークライフバランスの充実≫≪健康経営の推進≫≪労働安全衛生の推進≫を実施してまいります。

 

≪ワークライフバランスの充実≫

 多様化する働き方やワークライフバランスを重視し、働きやすさの向上につながる職場環境の整備として以下の施策を実施しております。

 

 

 

イ.自己申告制度

 職場環境の整備を目的の1つとした自己申告制度を年に1回実施しております。職場環境の整備につながる申告に対しては各部門の責任者である執行役員が当該社員との面談等を通じて、職場の環境改善に取り組んでおります。また、総合職層には仕事の難易度、仕事の量、仕事の適性、自己の能力発揮度、趣味、やりがいについて5段階で評価してもらい、仕事の満足度を測定しております。さらに、女性ならではの視点から女性が長く働きやすい職場環境を作るために会社に取り組んで欲しいことを提案する機会を設けております。今後は、この制度は維持しながらも、社員のエンゲージメント向上を図るため、エンゲージメントスコアの測定と運用の導入を検討してまいります。

 

ロ.人事制度委員会による制度見直し

 社員の代表である労働組合本部と総務人事部による人事制度委員会を年3回以上開催し、社員のエンゲージメント向上につながる制度の見直しを実施しております。委員会で取り上げ、改訂又は新規導入されたものとしては、リフレッシュ休暇利用回数の増加、積立年休の限度日数を50日に引き上げ、男性の10日間の育児休暇(有給)の導入、時間単位年休の導入、定年退職時の慰労目的の旅行補助制度の導入等があります。

 

ハ.賃金改定・賞与(一時金)に関する委員会の開催

 社員の代表である労働組合本部と総務人事部による賃金改定・賞与(一時金)に関する委員会を開催し、賃金改定を実施しております。賃上げに関しては、組合の要求に対して9年連続満額回答をしており、2023年の3.32%に引き続き、2024年は5.96%(組合員平均)の賃上げを実施しました。

 

ニ.各種離職防止制度の導入

 育児離職や介護離職を防ぐ施策として人事制度委員会を通じた職場環境の整備に取り組んでおります。その結果、育児短時間勤務制度、所定外労働の制限、時間外労働の制限(1か月24時間 1年150時間)、深夜業の免除は法定以上の期間に改善され、他にも子どもの看護休暇・介護休暇の有給化、育児のための時差通勤、学級閉鎖時の有給利用等の制度が整備されました。

 

≪健康経営の推進≫

 社員が心身ともに健康で、その能力を十分に発揮できる職場は、組織力を向上させることができます。社員がチームワークを重視し、主体的かつ創造的な行動をとることで企業の活力や生産性が向上し、家庭生活の充実にも繋がります。こうした考えに基づき、健康を重視した経営を推進します。そのため日本化学工業健康保険組合と総務人事部及び安全衛生委員会とのコラボヘルスにより、体と心の健康推進のための施策を下記の通り立案しております。

 ・生活習慣病対策として生活習慣病検診

 ・特定保健指導実施率の向上(目標100%)

 ・人間ドック補助

 ・全女性社員への乳がん・子宮がん検診補助

 ・歯科健診

 ・健康管理委員会による健康増進のための中期的な計画の立案と実行

 ・外部健康相談窓口の設置

 ・メンタルヘルス対策としてストレスチェックの実施と改善活動

 ・ラインケア及びセルフケア研修

 ・ハラスメントに関する研修

 ・ハラスメントに関する内部相談窓口と外部相談窓口を設置

 

≪労働安全衛生の推進≫

 職場の「安全」は最重要課題です。労働災害ゼロを実現するために、潜在的な危険有害性の低減を図るよう取り組んでおります。安全衛生委員会を事業所ごとに月1回開催し、経営者・社員・協力会社が一体となって、安全衛生活動を積極的に推進し、安全で安心できる職場環境の構築に努めていきます。

 

 

(3)リスク管理

 人的資本に関するリスクと機会につきましては、サステナビリティ推進委員会にてリスクを識別・評価・管理をしております。取締役会はその内容について報告・提言を受け、サステナビリティ対応について指示・監督を行っております。

 当社としては社員の働きがいの低下や社員の健康管理ができずに組織力が低下することが最大のリスクと考えております。多様化する働き方やワークライフバランスを重視した職場環境の整備を進めるとともに社員とその家族の安全・健康を第一に考えた対応を積極的に進めることでリスク低減に努めてまいります。

 

(4)指標と目標

 人的資本に関する戦略において記載した、方針及び施策に係る指標については、連結グループにおける記載が困難である事から、当社単体での記載となっております。

人材戦略方針

項目

2026年度

目標

2023年度

実績

2022年度

実績

方針1

多様性の確保

女性活躍推進

女性採用比率

(注)1.

30以上

22

16%

キャリア採用推進

キャリア採用比率

(注)2.

20以上

10

25%

方針2

人材の育成

体系的教育制度

オンライン語学研修受講比率(注)3.

30%/年以上

25%/年

6%/年

技術系推奨公的資格取得人数(注)4.

10人/年以上

コーチング・プログラム

社内インターナル・

コーチ育成

延べ30

延べ15

延べ10名

方針3

職場環境の整備

健康経営の推進

特定保健指導実施率

100

88

74%

有給休暇取得率

85以上

81

76%

ワークライフバランの充実

男性育休等取得率

100

93

100%

労働安全衛生

人事制度委員会の

開催

6回/年以上

6回/年

3回/年

当社社員休業災害

発生率

0

2

1件

(注)1.新卒採用(大学以上)に占める女性採用の割合

  2.採用者全体(大学以上)に占めるキャリア採用の割合

  3.当社人事制度における総合職及び管理職で受講した者の比率

  4.当社研究開発本部及び生産技術本部に所属する当社人事制度における総合職以上の技術者が技術系推奨公的資格を新たに取得した人数

 

 

3【事業等のリスク】

 当社グループの財政状態及び経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性のあるリスクには以下のようなものがあります。

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

①経済状況の変動に係るリスク

当社グループは、クロム製品(自動車部品等のめっき、顔料等)、シリカ製品(土壌硬化剤、紙・パルプ向け等)、燐製品(液晶・半導体向け、食品添加物等)等の基礎化学品から、ホスフィン誘導体(量子ドット用原材料、触媒等)、農薬、電池材料(リチウムイオン二次電池用正極材等)、回路材料(液晶パネル向け導電フィラー等)、高純度電子材料等のスペシャリティーケミカルに渡る多種多様な製品を扱い、グローバルかつ幅広い用途に事業を展開しています。そのため、当社グループの製品及び商品が販売されている国又は地域の経済状況が大幅に変化した場合、当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。また、最終用途が自動車、電子部品である製品を多く取り扱っており、これら業界の生産動向に大きな変化が生じた場合にも、同様の影響を与える可能性があります。

リスク対策:当社グループを取り巻く環境の変化を把握するために常に情報収集を行い、製品需要に応じた生産及び在庫調整等を行い、これらの影響の低減を図っています。

 

②海外事業活動に係るリスク

当社グループは、米国、中国、タイに現地法人を設置し、グローバルな事業展開を行っております。しかしながら、事業展開エリアにおいて経済成長の鈍化をはじめ、政情不安、労働問題、インフラ障害、テロ・戦争の勃発による社会的混乱、予期しない法的規制の変更、異常気象、天候不順等による自然災害、感染症等が発生した場合、当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

リスク対策:海外拠点ごとで定期的に情報を収集し、リスクの洗い出しを行い、グループで情報を共有することで、海外事業の戦略見直しを行っています。

 

③為替レートの変動に係るリスク

当社グループは、製品の一部を海外に輸出し、原材料の一部を海外から輸入しております。そのため、為替レートに大幅な変動があった場合は、当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

リスク対策:短期的な変動の影響を最小限に抑えるため、一部の取引について為替予約によるヘッジを行っております。

 

④原材料調達及び価格変動に係るリスク

当社グループが使用する原材料のうち、地政学リスク等を受けた需給のタイト化による調達リスクや、相場上昇による仕入価格変動リスクを抱えております。いずれも、当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

リスク対策:サプライヤーを分散させるために多国・複数購買化を推進し、地政学リスクや物流における課題にも対応できる強靭なサプライチェーンを構築いたします。

 

⑤在庫に係るリスク

当社グループは、顧客の需要予測をもとに適正在庫を保有しながら販売を行っている製品や商品があります。しかしながら、実際の受注が需要予測を下回った場合には、大量の在庫を抱える可能性があり、在庫の削減が進まなければ廃棄処分や評価損によって、当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

リスク対策:適正な在庫量を保つため、顧客の需要動向と景気動向から生産量と購買量をマネジメントしています。また、定期的に在庫量と在庫回転数を管理評価し、適正在庫量の見直しを行っています。

 

⑥固定資産の減損に係るリスク

当社グループは、さまざまな有形固定資産及び無形固定資産を有しております。事業環境の急激な変化に伴う生産設備の遊休化や稼動率の低下等により、保有資産から得られる将来キャッシュ・フロー見込額が減少した場合には、固定資産の減損会計の適用による減損損失が発生し、当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

リスク対策:設備投資の計画段階から、将来の収益計画や投資額の回収見込を意識して取り組み、重要な生産設備の新設、改造及び処分については、取締役会の承認を経て、減損リスクの極小化に努めています。

 

⑦法的規制等に係るリスク

当社グループは、化学工業薬品の製造及び販売を主たる事業としており、それに関連した各種の法的規制を受けております。これらの法的規制の大幅な変更等があった場合は、生産活動に支障をきたし、当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

リスク対策:化学品の法的規制の動向に関し、社内に専門部署を設置し最新の情報を入手して適切に対応しております。

 

⑧研究開発に係るリスク

当社グループでは、既存製品の改良や新規製品の開発を積極的に行っております。その開発には、多くの人的、財務的資源及び長い期間を必要とします。しかし、開発期間中の市場環境の変化や技術の進歩により、新製品の開発中止や開発後の利益計画が変更となり、当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

リスク対策:研究開発テーマの選択及びその後の管理の徹底、他企業や大学・研究機関との連携やアウトソーシング等による開発の迅速化を図っています。

 

⑨知的財産に係るリスク

当社グループは、研究開発や製品製造において独自の技術を有しており、その保護のため、知的財産権の取得を積極的に行っており、第三者の知的財産の尊重にも努めております。当社グループの知的財産が第三者により侵害を受けた場合、また第三者から知的財産権の侵害を訴えられた場合、当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

リスク対策:知的財産権保護のための体制を整え、第三者の知的財産権を侵害しないよう、先行する技術の調査を行っております。

 

⑩情報セキュリティーに係るリスク

当社グループでは、サイバー攻撃や不正アクセス等により、情報の流出やネットワーク障害等の問題が発生した場合、競争力の低下、事業活動の停滞及び信用の低下等により、当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

リスク対策:当社グループで使用する情報システムに、様々なセキュリティーを施すことで、防衛策を施しております。

 

⑪気候変動に係るリスク

気候変動が経済・社会・環境に及ぼす影響は年々深刻さを増しております。世界規模で脱炭素社会の実現に向けた動きが加速しており、企業にも確実な対応が求められております。当社グループは、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)に賛同し、TCFDの提言に沿った気候変動に対する取り組みを推進し、積極的な開示を進めております。

気候変動1.5℃シナリオにおいては、政府の環境規制強化にともなう炭素税導入や、再生可能エネルギー需要の増加による価格上昇等費用の増加、世界規模での地球温暖化対策が講じられることによる資源調達費用の増加が想定されます。また、気候変動4℃シナリオにおいては、異常気象による自然災害の発生に伴う事業活動の停止やサプライチェーンの断絶が大きなリスクとなります。自然災害は、発生の予測が難しく、一度発生すれば、当社の製造拠点が被災し、化学物質の漏洩等甚大な被害をもたらす可能性があります。設備損傷や化学物質漏洩による操業停止等を回避するためには、災害対策に関する設備投資が必要となり、投資による製造コスト上昇も想定されます。

リスク対策:気候変動リスクを含む大災害に対応できるよう、専門の委員会を設置しBCP(事業継続計画)体制を全社ベ一スで策定し、緊急時においても事業活動への影響を最小限にとどめるよう備えています。

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次の通りであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症における社会経済活動の制限が緩和され、緩やかに回復しつつあるものの、原燃料価格の高止まりや円安の影響、さらに国際情勢の悪化等により、依然として先行き不透明な状況が続いております。

このような状況のもと、当社グループは、中期経営計画に掲げる成長戦略の推進と成果の実現に向け、「成長事業の拡大」、「グローバル化の推進」、「経営基盤の強化」という3つの重点施策に全社一丸となって取り組んでまいりました。また、事業活動を通じた中長期的な企業価値向上を実現すべく、サステナビリティ経営を推進しております。

 

「成長事業の拡大」

需要拡大が見込まれる成長分野向けの設備投資に取り組んでおり、当連結会計年度においては、積層セラミックコンデンサ(MLCC)の誘電体として使用されるチタン酸バリウムの設備能力増強を進めております。

徳山工場における能力増強は、2024年度の完了に向け順調に進捗しております。

 

「グローバル化の推進」

海外販売拠点の連携を一層強化し、海外における現地ニーズに即した製品、サービスの展開を積極的に進め、競争優位性の向上に繋げました。

また、海外売上高の向上を目指し、アジア地域を中心とした販売体制の強化に向けた取り組みを進めました。

 

「経営基盤の強化」

原料ソースの多角化や工程改善、生産スケールの最適化等、コスト競争力の強化に繋がる施策の検討および実施を行いました。

さらにサステナビリティ経営をより一層推進し、マテリアリティに対するKPIの設定や環境貢献製品の認定、中長期的な成長に向けたアクションプランを策定しました。

 

この結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下の通りとなりました。

 

a.財政状態

当連結会計年度末の資産は、前年同期に比べ36億5百万円増加し、765億3百万円となりました。

当連結会計年度末の負債は、前年同期に比べ7億9千9百万円増加し、314億5千5百万円となりました。

当連結会計年度末の純資産は、前年同期に比べ28億5百万円増加し、450億4千7百万円となりました。

 

b.経営成績

当連結会計年度の売上高は385億3千8百万円(前年同期比4億6千2百万円増)となり、経常利益は23億8千3百万円(同9億7千1百万円増)となりました。この経常利益に固定資産売却益1千2百万円、投資有価証券売却益6億4千6百万円の特別利益を加え、固定資産除却損4億5千9百万円、関係会社株式評価損3億2千3百万円、投資有価証券評価損3千3百万円の特別損失及び法人税等6億9千5百万円を差引き、更に法人税等調整額6千1百万円を計上した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は15億9千万円(同7億3千4百万円増)となりました。

セグメントの業績は次の通りであります。

 

(化学品事業)

化学品事業は、クロム製品、シリカ製品、燐製品等の化学品の製造・販売を行っております。当社の燐製品は、燐酸、燐酸塩、無水燐酸等であり、工業薬品の原料としてばかりでなく、食品の添加剤、医薬原料、分析試薬、金属表面処理、近年では電材用途でご使用いただく等、数多くの分野に利用されています。クロム製品は、国内唯一のクロム化合物メーカーとして世界屈指の技術と設備を用いて製造され、国内の大部分の需要を賄っているばかりでなく、東南アジアをはじめ多くの国々に輸出されており、めっき、耐火レンガ、顔料等に用いられています。シリカ製品は、1902年(明治35年)に日本で初めて珪酸ソーダの試作に成功して以来、たゆまぬ研究と設備の拡充に努め、これまで世の中のニーズに合ったシリカ製品を数多く販売してまいりました。当社の製品は、古紙の脱インク、土壌硬化材、食品のろ過材原料等に用いられています。

化学品事業の売上高は177億7千7百万円(同25億5千万円減)、セグメント利益は10億6千9百万円(同6千万円減)となりました。

 

(機能品事業)

機能品事業は、ホスフィン誘導体、農薬、電池材料、電子セラミック材料、回路材料、高純度電子材料等の製造・販売を行っています。ホスフィン誘導体は、様々な化成品や樹脂を合成する際の触媒、量子ドットの原料等に利用されています。電池材料は、リチウムイオン二次電池用正極活物質として、コバルト酸リチウムを製造しています。最近では独自の製造方法技術により微粉化も成功しており、さまざま用途から高い評価を得ています。電子セラミック材料は、積層セラミックコンデンサの誘電体であるチタン酸バリウムと、誘電体材料である高純度炭酸バリウムから構成されております。長年にわたりバリウム原料を扱ってきた強みを生かし、蓚酸塩法、アルコキシド法等の製法でチタン酸バリウムを製造販売しています。次世代高速通信(5G)関連やIoT関連及び自動車向けで長期的な需要の拡大が見込まれます。回路材料は、主にACF(異方導電性フィルム)やACP(異方導電性接着剤)用の導電性粒子と、導電性粒子を使用した異方導電性接着剤を製造しています。高純度電子材料は、主に半導体向けの高純度ホスフィンガス、高純度赤燐で、半導体市場の拡大に伴い、需要の増大が見込まれます。

機能品事業の売上高は190億6千1百万円(同30億7千7百万円増)、セグメント利益は5億8千9百万円(同10億2千7百万円増)となりました。

 

(賃貸事業)

賃貸事業は、大阪府大阪市西淀川区と福島県郡山市において、病院・小売業等への土地・建屋の賃貸を行っております。

賃貸事業の売上高は、9億1千5百万円(同0百万円増)、セグメント利益は5億2千8百万円(同1千2百万円減)となりました。

 

(その他)

報告セグメントに含まれない事業セグメントは書籍等の販売、環境測定、当社の原材料、製品等の分析業務を行っています。

報告セグメントに含まれない事業セグメントの売上高は、7億8千4百万円(同6千4百万円減)、セグメント利益は4千9百万円(同3千2百万円減)となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは61億5千2百万円の収入(前年同期は14億9千4百万円の収入)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益22億2千5百万円、減価償却費36億8千3百万円、投資有価証券売却益6億4千6百万円、売上債権の増加額25億3百万円、棚卸資産の減少額16億3百万円、仕入債務の増加額6億6千3百万円、未払消費税等の増加額5億6千7百万円を加減したことによるものであります。

投資活動によるキャッシュ・フローは固定資産の取得による支出等があり、44億1千4百万円の支出(前年同期は28億1千7百万円の支出)となりました。

財務活動によるキャッシュ・フローは借入金の返済による支出や配当金の支払等により、8億7千万円の支出(前年同期は1億2百万円の収入)となりました。

この結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前年同期に比べ9億円増加し、87億3千1百万円となりました。

また、営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローの合計額から、配当金の支払額を控除したフリーキャッシュ・フローは、11億2千2百万円の収入(前年同期は20億6千9百万円の支出)となりました。

 

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

  当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次の通りであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

前年同期比(%)

化学品事業(百万円)

13,848

84.9

機能品事業(百万円)

19,585

110.1

賃貸事業(百万円)

 報告セグメント計(百万円)

33,434

98.1

その他(百万円)

合計(百万円)

33,434

98.1

(注)1.金額は販売価格によっており、セグメント間の内部振替後の数値によっております。

 

b.商品仕入実績

  当連結会計年度の商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次の通りであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

前年同期比(%)

化学品事業(百万円)

3,514

85.4

機能品事業(百万円)

125

14.1

賃貸事業(百万円)

 報告セグメント計(百万円)

3,639

72.8

その他(百万円)

398

92.9

合計(百万円)

4,037

74.4

 

c.受注実績

  当社グループ(当社及び連結子会社)は主として見込み生産を行っているため、受注実績を記載しておりません。

 

d.販売実績

  当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次の通りであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

前年同期比(%)

化学品事業(百万円)

17,777

87.5

機能品事業(百万円)

19,061

119.3

賃貸事業(百万円)

915

100.0

 報告セグメント計(百万円)

37,754

101.4

その他(百万円)

784

92.4

合計(百万円)

38,538

101.2

(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次の通りであります。

 

   前連結会計年度(自  2022年4月1日  至  2023年3月31日)

(単位:百万円)

相手先

売上高

割合(%)

TDK株式会社

5,278

13.9

小西安株式会社

4,568

12.0

 

   当連結会計年度(自  2023年4月1日  至  2024年3月31日)

(単位:百万円)

相手先

売上高

割合(%)

TDK株式会社

6,859

17.8

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。連結財務諸表の作成に際しては、経営者による会計方針の選択と適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、見積りに当たって過去の実績や状況等を勘案し合理的な判断を行っていますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果は見積りと異なる場合があります。

当社グループの連結財務諸表の作成に際して採用している重要な会計方針は、「第5  経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しております。

また、連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 重要な会計上の見積り」に記載のとおりであります。

 

②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.経営成績等

1)財政状態

当連結会計年度末の総資産は、前年同期に比べ36億5百万円増加し、純資産は、28億5百万円増加しております。

増減の主なものは次の通りであります。

流動資産では、現金及び預金が9億円増加、売掛金が21億8千9百万円増加、商品及び製品が4億5千4百万円減少、原材料及び貯蔵品が8億3千6百万円減少しております。

固定資産では、有形固定資産が2億6千9百万円増加、無形固定資産が5千1百万円増加、投資有価証券が3億9千4百万円減少、退職給付に係る資産が19億2千7百万円増加しております。

流動負債では、支払手形及び買掛金が5億3千6百万円増加、短期借入金が16億6千9百万円増加、未払法人税等が6億7千7百万円増加、未払消費税等が4億6千6百万円増加しております。

固定負債では、長期借入金が19億1千4百万円減少、退職給付に係る負債が5億6千9百万円減少、繰延税金負債が7億2千6百万円増加しております。

株主資本では、利益剰余金が9億6千4百万円増加しております。

その他の包括利益累計額では、その他有価証券評価差額金が1億1千2百万円増加、退職給付に係る調整累計額が16億7千万円増加しております。

 

2)経営成績

経営成績につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 b.経営成績」に記載しています。

 

3)キャッシュ・フローの状況

キャッシュ・フローの状況の分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載しております。

 

b.経営成績に重要な影響を与える要因

経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2「事業の状況」 3「事業等のリスク」」に記載しています。

 

c.当社グループの資本の財源及び資金の流動性

当社グループの運転資金需要のうち主なものは、原材料の購入費用のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、主に生産設備投資によるものであります。

当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としており、短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入、設備投資や長期運転資金の調達につきましては、金融機関からの長期借入を基本としております。また、短期運転資金の一部は、コミットメントライン契約を取引先金融機関と締結しており、機動的な資金調達を図っております。

 

d.経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

「第2「事業の状況」 1「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載しています。

 

e.セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

(化学品事業)

クロム製品はめっきや表面処理、耐火物向けが低調に推移したことにより、売上高は減少しました。シリカ製品は堅調に推移したことにより、売上高は前年同期並みとなりました。燐製品は液晶や半導体、工業用向けが大幅に落ち込んだことにより、売上高は大きく減少しました。この結果、化学品事業の売上高は、177億7千7百万円(同25億5千万円減)となりました。

 

(機能品事業)

ホスフィン誘導体は量子ドット向けが大幅に落ち込んだものの、新製品の売上や海外向け触媒が大幅に伸びたことにより、売上高は大きく増加しました。農薬原体は主要顧客向けが大幅に伸びたことにより、売上高は大きく増加しました。電池材料は原燃料高を起因とする販売価格の改定により、売上高は大きく増加しました。電子セラミック材料は通信向けが大幅に落ち込んだものの、車載向けが大幅に伸びたことにより、売上高は大きく増加しました。回路材料は、異方性導電材料向けの需要が回復したことや、接着剤向けが好調に推移したことにより、売上高は増加しました。高純度電子材料は、半導体向けの一部製品の需要が回復したことにより、売上高は前年同期並みとなりました。この結果、機能品事業の売上高は、190億6千1百万円(同30億7千7百万円増)となりました。

 

(賃貸事業)

賃貸事業は堅調に推移したことにより、売上高は前年同期並みとなりました。この結果、賃貸事業の売上高は、9億1千5百万円(同0百万円増)となりました。

 

(その他)

書店事業は低調に推移したことにより、売上高は減少しました。この結果、報告セグメントに含まれない事業セグメントの売上高は、7億8千4百万円(同6千4百万円減)となりました。

 

 

5【経営上の重要な契約等】

当連結会計年度において、特記すべき事項はありません。

 

6【研究開発活動】

研究開発活動は、当社が長年培ってきた技術やノウハウをベースとして、「快適性の追求」「エネルギーマネジメント」「健康(命)を守る」の3つの価値を社会に提供すべく、研究開発を行っております。

また、大学研究機関との連携を積極的に活用し、オープンイノベーションによる新規事業の開発を行っております。

なお、当連結会計年度の研究開発費の総額は、1,452百万円となっております。

 

主な研究開発活動

(化学品事業)

化学品事業では、優位な技術を活用して、各種のシリカ製品、燐製品、クロム製品、バリウム製品、リチウム製品などユーザーニーズに対応する各種機能を付与した製品の開発や基礎研究を進めております。シリカ製品関係では、土木関連向けや環境関連向けの材料開発を進めております。燐製品では高機能性を有する各種の燐酸塩、電子工業向けの高純度薬品などの開発を行っております。

なお、当連結会計年度の化学品事業に係る研究開発費は、142百万円となっております。

 

(機能品事業)

電子セラミック材料関係では、積層セラミックコンデンサー材料のチタン酸バリウムを中心に小型軽量化、高機能化が進む電子部品の要望に応えるべく、高性能な誘電材料の開発を進めております。

電池材料関係では、リチウムイオン二次電池用正極材、小型全固体電池材料の開発を行っております。

回路材料関係では、異方性導電接続に使用する金属被覆粉体と導電性ペーストの開発を行っております。

有機化学品関係では、新しい有機材料の研究開発に積極的に取り組んでおります。ホスフィンガスを出発原料とするアルキルホスフィン誘導体、ホスホニウム塩系イオン液体、各種不斉反応に用いられるキラルホスフィンリガンド、クロスカップリング反応で常用されるBuchwaldリガンド群、ライフサイエンス向け量子ドットの開発を進めており、今後の市場拡大が期待されます。

その他では、負熱膨張材料、CO2吸収材料等の開発も行っております。

なお、当連結会計年度の機能品事業に係る研究開発費は、1,310百万円となっております。

 

(賃貸事業)

 該当事項はありません。

 

(その他)

該当事項はありません。