文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
当社グループでは、グループとしての存在価値を明文化した「京王グループ理念」を制定し、これをグループ内外に発信することで、グループ全体の価値観や方向性の共有化をはかっております。
<京王グループ理念>
2022年度を初年度とする「京王グループ中期3カ年経営計画(以下、「中期経営計画」といいます。)」は、将来の新型コロナウイルス感染症の影響が明確に見通せない状況下での策定であったため「各事業の足元の出血をできる限り早期に止める」ことを最優先にするとともに、生活様式の変化により輸送人員をはじめとする人流がコロナ禍以前と同等には戻らないことを前提とし、大規模投資がピークを迎える2030年代を見据えた「事業変革」を基本方針としました。
2023年度は中期経営計画の目標を達成しましたが、主たる要因はホテル業の大幅な客室単価上昇による売上高の回復や鉄道およびバスの輸送人員の回復が想定以上に進んだことなどにより当社グループの一部が業績回復したことによるものです。
これらを踏まえて2024年度は、中期経営計画のテーマのうち「2030年代を見据えた事業変革の完遂」に注力し、あらゆる事業における営業利益率や資産効率の向上、新規利益創出を果たすための事業構造の変革を完遂することを主な目標とし、以下の施策に取り組んでまいります。なお、中長期的な当社グループの課題については2025年度を初年度とする次期の中期経営計画を見据えながら、2024年度から着手してまいります。
安全・安心
〇「日本一安全でサービスの良い鉄道」を目指し、テロ対策、災害対策、ホームドア整備、京王線(笹塚駅~仙川駅間)連続立体交差事業を推進
まちづくりへの注力
〇新宿・京王多摩川・橋本・聖蹟桜ヶ丘の各エリアおよび京王線(笹塚駅~仙川駅間)連続立体交差事業で生まれる高架下など沿線拠点のエリア価値向上
〇スポーツ等の沿線コンテンツ深耕(Wリーグプレーオフ冠協賛やFC東京との包括連携協定等)を通じた、沿線内での移動需要創出による地域活性化や沿線力向上
稼ぐ力の強化
〇連結子会社化した㈱サンウッドとの連携強化など、不動産セグメント一体での事業運営を推進し、販売業による利益規模を拡大
〇京王建設㈱と京王建設横浜㈱のシナジー最大化のために、人財交流などの経営協力を推進し、競争力を強化
〇㈱京王SCクリエイションに当社グループの商業施設運営事業を集約、業務推進体制を確立し、収益力を強化
社会課題対応
〇マテリアリティに対して一部単体で設定されているKPIを連結ベースへ引き上げ
〇カーボンニュートラルに関して、Scope3の開示に向けた方針の策定や再生可能エネルギー利用の拡大
活躍する人財
〇各事業領域における高い専門性と経験を保有する人財の採用と育成に向けた人事制度の見直し
〇「人財戦略」に基づき、人財確保、人財育成、エンゲージメント、DE&I、組織風土・組織構造の各種施策を推進
生産性の向上
〇DXによる事業構造改革を通じた業務効率化や自動化の推進による労働力不足への対応
需要創造
〇「KEIO OPEN INNOVATION PROGRAM」について、これまでの取組みに加え、「社員起点」の新たなプログラムを通じた共創を推進
〇グループ顧客基盤の強化のために「京王NEOBANK」「鉄道乗車ポイント」を軸としてデジタル顧客との接点を拡充
中長期課題への対応
〇2030年代の大規模投資期を見据えて、資産効率や資本効率の向上に寄与できる資本・財務戦略を検討
中期経営計画では、ニューノーマルに適合した事業体質への変革を進めたうえで、2024年度にコロナ禍以前の水準の利益金額、EBITDAを目標としておりました。その目標は、ホテル業の大幅な客室単価上昇による売上高の回復や鉄道およびバスの輸送人員の回復が想定以上に進んだことなどにより、2023年度に達成しました。
中期経営計画の最終年度である2024年度については、2030年以降を見据えたあらゆる事業・施策を推進することで、更なる利益拡大を実現し、過去最高益である営業利益460億円、EBITDA796億円を目標とします。
財務指標に関しては、ネット有利子負債/EBITDA倍率6倍以内、自己資本比率38%程度を目標とすることで、格付けを維持し、2030年代の大規模投資本格化によるキャッシュアウトに備えます。なお、ROEは8.6%、ROAは4.2%を見込みます。
(単位:億円)
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、公共交通事業者としての社会的責務を果たすという使命を軸に、流通業、不動産業、レジャー・サービス業など幅広い事業を通じて、幸せな暮らしの実現や地域の発展を目指してまいりました。当社グループでは、このような幅広い事業活動を通じて持続可能な社会の実現に貢献し、長期的な企業価値の向上を目指す旨を明文化した、「京王グループ サステナビリティ基本方針」を策定しています。
<京王グループ サステナビリティ基本方針>
当社グループではサステナビリティの視点を踏まえた経営を推進するため、当社代表取締役社長 社長執行役員が委員長を務める「サステナビリティ推進委員会」を設置しています。同委員会では、サステナビリティに関する全社方針や推進体制の整備、サステナビリティを巡るリスク・機会の把握、マテリアリティの設定と指標と目標策定・実績把握等について審議・決定を行い、当社取締役会に報告することとしています。 また、グループ共通課題についてはグループ会社や各部門と連携しながら対応しています。
<サステナビリティ推進体制>
<マネジメントサイクル>
<当連結会計年度における開催状況等>
(2)リスク管理
当社では、「鉄道安全管理委員会」「拡大鉄道安全管理委員会」「リスク管理委員会」「内部統制委員会」を設置し、リスクの把握と対応に努めています。
「鉄道安全管理委員会」では、安全統括管理者(鉄道事業本部長)を中心に、他社で発生した事案も含めて事故・トラブルの原因を把握し、対応策の検討・検証などを行っています。また、代表取締役社長 社長執行役員が出席する「拡大鉄道安全管理委員会」を年2回開催し、鉄道事業の安全管理体制全般のマネジメントレビューを行っています。
「リスク管理委員会」では、「京王グループリスク管理方針」のもと、リスク低減と事故・トラブルの発生防止を目的として、対策重点項目の設定と対策の実施状況の確認を行っています。
「内部統制委員会」では、「京王グループ内部統制システムに関する基本方針」のもと、リスク管理に関わる事項や内部監査・財務報告に係る内部統制について、整備状況を確認・検証し、必要に応じた見直しを行っています。
サステナビリティを巡るリスクと機会については、これらの委員会で審議した事項も踏まえて、「サステナビリティ推進委員会」で認識・評価を行い、対応について経営計画に反映させ、当社取締役会に報告しております。
なお、気候変動におけるリスクと機会(鉄道事業)については下図の通りです。この他のマテリアリティに関するリスクを含む、当社グループ全体のリスクについては、第2〔事業の状況〕3〔事業等のリスク〕に記載しております。
<気候変動におけるリスク・機会一覧(鉄道事業)>
「京王グループ サステナビリティ基本方針」のもと長期的に取り組むべき主要課題として、SDGs等のガイドラインにおける社会課題の視点も取り入れた7つのマテリアリティ(重要課題)を設定し、企業価値の向上と持続可能な社会の実現を目指しています。以下の社会課題を当社グループの事業を通じて解決していく中で、ステークホルダーに対して価値を提供し、沿線力を向上させ、長期的に「住んでもらえる、選んでもらえる沿線」であり続け、そこで生活する人の「幸せな暮らし」を実現することで、当社グループの価値を創造してまいります。
<マテリアリティ別の戦略、指標及び目標>
①安全・安心
②「まち」との共生・発展/③幸せな暮らし
④デジタル社会への対応
⑤活躍する人財(人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針)
(注)1.当社グループでは、上記「⑤活躍する人財」において記載した、「人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針」に係る指標については、当社においては、関連する指標のデータ管理とともに、具体的な取組みが行われているものの、連結グループに属する全ての会社では行われてはいないため、連結グループにおける記載が困難であります。このため、連結グループの中核会社である当社のものを記載しております。
2.外部の調査専門会社が提供するエンゲージメント調査サービスにおける評価指標で、「一人ひとりが今の仕事や職場・会社で働くことに意味や価値を感じ、自ら貢献する意思をもって働いているか」などの度合いについて、当社全社員を対象とした調査結果を点数化したもの(3.5点以上が「良好」)であります。
3.(注2)と同様の評価指標で、「職場にはお互いを尊重し、協力し合う雰囲気や何でも言い合える安心感があるか」などの度合いについて、当社全社員を対象とした調査結果を点数化したもの(3.5点以上が「良好」)であります。
⑥環境にやさしく
(注)1.中・長期かつ特に影響が大きいと特定したリスク・機会と、リスクへの対応策は、第2〔事業の状況〕2〔サステナビリティに関する考え方及び取組〕(2)リスク管理<気候変動におけるリスク・機会一覧(鉄道事業)>に記載しております。
2.対象範囲はScope1、Scope2であります。
⑦経営基盤
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。当社グループは、これらのリスクを認識した上で、事態の発生の回避に努め、発生した場合には事業への影響を最小限にとどめるべく対策を講じる所存です。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2024年6月26日)現在において入手可能な情報に基づき、当社グループが判断したものです。
(1)気候変動・自然災害等
大規模地震の発生のほか、気候変動により発生頻度が高まっている大型台風や集中豪雨等の自然災害が発生した場合、当社グループの事業運営に支障をきたし、営業休止やお客様の減少等により売上が減少するほか、施設等の復旧費用が発生するなど、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。当社グループでは、鉄道事業において「自然災害への対応力と危機管理体制の強化」を目指し、安全性向上に向けた取組みを行っております。気象情報システムによる監視体制の構築や耐震補強工事などの施設改良の推進、災害発生を想定した各種訓練の実施など、策定しているBCP(事業継続計画)の改善もはかりながら各種対策に取り組んでおります。
(2)事故等の発生
人為的要因を含む機器の誤作動などによるトラブルや事故、踏切などにおける第三者に起因する事故、テロ等不法行為による被害等により、当社グループにおける施設に損害が発生し、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。当社では、皆様から信頼され、愛される鉄道であるために、「『安全』は最大の使命であり、最高のサービスである」ことを常に意識し、「全社員が一丸となり継続的改善に取り組み、安全最優先の鉄道を創る」ことを最大の命題として、日々の業務に取り組んでおります。鉄道事故やトラブルが発生した際は、原因究明と再発防止策を速やかに実行するなど、継続的改善を進めております。
なお、2021年10月31日に京王線布田駅~国領駅間を走行中の車内で発生した傷害事件に対し、当連結会計年度においては、リアルタイム伝送機能を持つ防犯カメラの全車両、全駅への設置を完了するなどの取組みを進めました。
(3)品質管理
当社グループでは多数の資産を保有しているほか、物件の施工販売、食品の販売等を行っているため、当社グループ固有の品質問題のみならず、社会全般にわたる一般的な品質問題などが発生した場合、売上の減少や損害賠償費用の発生等により、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
(4)経営環境の変化
テレワークなど新たな生活様式の定着や長期的な人口減少・少子高齢化に加え、当社グループの競争力低下等により、当社グループが提供する商品・サービスの需要が減退する場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。当社グループでは、ステークホルダーに対して価値を提供し、長期的に「住んでもらえる、選んでもらえる沿線」であり続けるため、沿線力を向上させ、そこで生活する人の「幸せな暮らし」を実現することで、当社グループの価値を創造してまいります。
(5)デジタル社会への対応
当社グループは、多数のITシステムやクラウドサービス等の情報通信ネットワークを活用して事業を行っているほか、お客様の個人情報を含む機密情報を保持しております。また、取引先や委託先等のサプライチェーンも多岐に渡っております。そのため、重大なシステム障害や個人情報流出が発生した場合、システム復旧や損害賠償費用等が発生するほか、信用の低下等により、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。当社グループでは、情報セキュリティ分科会が中心となり、適切な情報管理を推進するとともに、個人情報については、京王グループ個人情報管理体制のもと、適切な管理に努めております。
また、当社グループは、今後の競争力強化のため事業のデジタルトランスフォーメーション(DX)にかかる投資を行っております。DXに対する資金、人財、その他リソースが不足した場合、また将来の技術革新や顧客志向・社会情勢の変化に適切に対応できない場合、当社グループの競争力が低下する可能性があります。
(6)人財の確保
当社グループは鉄道事業を中心に、沿線地域の方々への生活サービスに関連する幅広い事業を展開しています。鉄道・開発事業に限らず、グループの業種が多岐にわたるため、それぞれの分野で専門的知見と経験を積んだ人財の確保・育成が、事業の発展には不可欠であると考えております。このため、雇用の流動化等により、適切な人財の確保・育成の継続が困難な場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。当社グループでは、「京王グループ DE&I宣言」に基づき、多様な価値観・ライフスタイルを持つ従業員がその能力を存分に発揮できるよう働きやすく、働きがいのある職場環境づくりを継続することで、グループ全体としての多様かつ専門的な人財を確保してまいります。
(7)感染症の流行
新型コロナウイルス感染症の流行により、当社グループは、出控えや渡航制限に伴う運輸業における輸送人員の減少、流通業における来店客数の減少や休業・短縮営業による売上低迷、ホテル業における外国人宿泊客・国内宿泊客の減少のほか、感染対策に伴う事業運営体制への制約など、各事業で多大な影響を受けました。今後、新たな感染症の流行が発生した場合も、各事業で多大な影響を受ける可能性があります。当社グループでは、社会インフラを担う企業グループとして、当社を中心としたBCPに基づき、引き続き感染症の流行への対策に取り組んでまいります。
(8)コンプライアンス
当社グループは、鉄道事業をはじめとする各事業において関係法令を遵守しておりますが、これらに反する行為が発生した場合、信用の低下等により、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。当社グループでは、グループ全体のコンプライアンス体制を推進し、コンプライアンスに関する各種取組みの検証や改善策の検討等を行っています。
(9)大規模投資期における財務負担
当社グループでは、鉄道事業における安全対策をはじめ、事業の継続性を確保するための中長期的な視点に立った設備投資を実施しているほか、2030年代に新宿・橋本エリアでの再開発等の大規模投資の本格化を計画しております。このため、大規模投資期においては、当社グループの財務負担の増加が見込まれます。当社グループでは、金利の長期固定化により市場金利の変動リスクを低減しているほか、余剰資金の活用等により有利子負債を適正水準に管理して財務健全性を維持し、大規模投資期のキャッシュアウトに耐えうる財務基盤づくりを進めてまいります。
(10)経済環境
当社グループは、鉄道事業を中心に、当社沿線を主たるマーケットとして事業を展開しており、国内の経済情勢の影響を受けております。消費の低迷、所有資産の価値低下、資材・原材料費の上昇や供給不足等が、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。現在、エネルギー価格や労務費、資材・原材料等の価格上昇の長期化に伴う、建設コストの大幅な上昇などの影響を受けておりますが、引き続き効率化や費用の削減に向けて、あらゆる施策に取り組んでまいります。
(11)法的規制
鉄道事業をはじめとする当社グループが展開する各事業については、様々な法令・規則等による規制を受けており、これらの規制に重大な変更があった場合、当社グループの事業活動が制限されるほか、法令・規則・開示制度等を遵守するための費用が発生するなど、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
なお、上記は当社グループの事業その他に関し、予想される主なリスクを具体的に示したものであり、ここに記載されたものが当社グループのすべてのリスクではありません。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
ホテル業の大幅な客室単価上昇による売上高の回復や、鉄道事業およびバス事業の輸送人員の回復が進んだことに加え、2023年10月の鉄道旅客運賃の改定などにより、連結営業収益はすべてのセグメントで増収となり4,086億9千4百万円(前期比17.7%増)、連結営業利益は不動産業を除く各セグメントで改善し438億4千万円(前期比104.1%増)となりました。連結経常利益は434億8千5百万円(前期比99.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は292億4千3百万円(前期比123.0%増)となりました。
なお、連結EBITDAは746億9千2百万円(前期比47.6%増)となりました。
また、連結減価償却費は306億4千3百万円(前期比5.2%増)となりました。
(単位:百万円)
(注)連結EBITDAは、連結営業利益 + 減価償却費 + のれん償却額により算出しております。
セグメントごとの経営成績の概要は、次のとおりであります。
当連結会計年度末の総資産は、㈱サンウッドの連結子会社化や販売用不動産の取得による棚卸資産の増加などにより1,241億5千5百万円増加し、1兆793億8千8百万円となりました。
負債は、㈱サンウッドの連結子会社化に伴う借入金等の増加や、資産除去債務の計上などにより817億9千2百万円増加し、6,854億5千8百万円となりました。
純資産は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上などにより423億6千3百万円増加し、3,939億3千万円となりました。
(単位:百万円)
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益の増加などにより、流入額は前連結会計年度に比べ272億1千8百万円増加し、522億5千8百万円となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形及び無形固定資産の取得による支出の減少があったものの、有形及び無形固定資産の売却による収入の減少や連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出などにより、流出額は前連結会計年度に比べ4億3千9百万円増加し、424億8千5百万円となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の返済による支出などにより、流出額は77億5千8百万円となりました。
これらの結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は730億3千5百万円となりました。
また、有利子負債の当連結会計年度末残高は、4,353億5千2百万円となりました。
(注) 有利子負債は、借入金 + 社債により算出しております。
当社グループの業種構成はサービス業が中心であり、受注生産形態をとらない会社が多いため、セグメントごとに生産規模および受注規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。このため第2〔事業の状況〕4〔経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析〕(1)経営成績等の状況の概要①財政状態及び経営成績の状況においてセグメントごとの営業収益を示すこととしております。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。その作成には、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債および収益・費用の報告金額ならびに開示に影響を与える見積りを必要とします。これらの見積りについては、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果と異なる場合があります。重要な会計方針および見積りには、以下のようなものがあります。
当社グループは金融機関や取引先等の株式を保有しております。これらの株式の評価、時価が著しく下落した場合の回復可能性については、当社グループで定める「金融商品取扱規程」により合理的に判断しておりますが、価格変動リスクを負っているため、将来、損失が発生する可能性があります。
当社グループは多くの固定資産を保有しております。これらの価値は個別物件の将来キャッシュ・フロー、割引率、正味売却価額など多くの前提条件に基づいて算出しているため、当初見込んだ収益が得られなかった場合、または算出の前提条件に変更があった場合には、損失が発生する可能性があります。
当社グループの退職給付債務および費用は、年金資産の長期期待運用収益率や割引率等数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出しているため、実際の結果が前提条件と異なる場合、または算出の前提条件に変更があった場合には、損失が発生する可能性があります。
当社グループは、繰延税金資産の回収可能性を判断するに際して将来の課税所得等を合理的に見積っております。そのため、将来の課税所得の見積額等に変更が生じた場合、繰延税金資産が増額または減額され、税金費用に影響を及ぼす可能性があります。
当期のわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の影響が和らいだことによる社会経済活動の一層の正常化を背景に、ポストコロナとしてコロナ禍以前を超える水準での訪日外国人旅行客の増加や個人消費の持ち直しが見られました。一方で、新型コロナウイルス感染症の流行がきっかけとなったリモートワークをはじめとする生活様式の変化は、今後の当社グループの事業活動に影響を及ぼす社会変容として定着しました。加えて、建設コストの大幅な上昇、人財確保難など、構造的な経営課題が顕在化しています。
このような情勢のもとで当社グループは、2022年度を初年度とする「京王グループ中期3カ年経営計画」に基づき、将来的な大規模投資期を見据えて、資産効率の向上と利益規模拡大の両立を目指して不動産販売業の強化を推進しました。また、鉄道事業においては、駅・車両の安全対策を着実に推進したほか、バリアフリー設備の整備などお客様の利便性向上施策に取り組み、総額232億円(前期比24.7%増)の設備投資を行いました。このほか、企業の責任として社会課題への対応を促進するとともに、働き方改革やデジタル化促進による生産性向上など、人財面での課題克服に向けた施策に着手しました。
なお、セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。
〔運輸業〕
鉄道事業およびバス事業では、前期と比べて輸送人員の回復が進んだことなどにより、増収となりました。
鉄道事業では、京王線(笹塚駅~仙川駅間)連続立体交差事業について、事業主体である東京都と引き続き用地取得を進めたほか、笹塚駅側取付部や仙川駅側取付部での仮高架橋の設置など仮線への切替え準備工事、千歳烏山駅付近などで高架橋構築工事を進めました。安全への取組みでは、京王線布田駅~国領駅間を走行中の車内で発生した傷害事件を受けて進めていた、リアルタイム伝送機能を持つ防犯カメラの全車両・全駅への設置を完了したほか、渋谷駅(1番線降車専用ホーム)、神泉駅、笹塚駅(2番線、3番線)、三鷹台駅でホームドアの使用を開始しました。
運輸業の各事業は、移動需要がコロナ禍以前の水準まで回復が見込めないと想定される中でも、公共交通事業者としてお客様が安全・安心・快適にご利用いただけるサービスを提供し続けていくため、さらなる経営努力を前提として、2023年10月に鉄道運賃を、2023年9月と2024年3月にバス事業の一部の路線の運賃を、2023年11月にタクシー業の一部エリアで運賃を改定しました。
これらの結果、運輸業の営業収益は1,241億2千1百万円(前期比11.6%増)、営業利益は131億9千7百万円(前期比235.9%増)となりました。
百貨店業では、「京王百貨店」新宿店において、食品を扱うMB階・B1階、家庭用品を扱う6階、子供服売場や大催場のある7階をリニューアルし、新規顧客取り込みによる売上高増加などにより増収となりました。当期のリニューアルにより、2022年度から実施していた全館にわたる改装を完了しました。
ストア業では、スーパーマーケット事業およびコンビニ事業が好調に推移し増収となりました。また、「京王多摩境駅前ビル」の開業に合わせ「京王ストア」多摩境店をオープンしました。
これらの結果、流通業の営業収益は1,112億4百万円(前期比8.1%増)、営業利益は56億1千万円(前期比42.9%増)となりました。
(注)前連結会計年度において「流通業」として独立掲記しておりました「書籍販売業」につきましては、第1四半期連結会計期間より「流通業」の「その他」に含めて表示しております。それに伴い、前期比較において、「書籍販売業」を「流通業」の「その他」に組み替えて表示しております。
〔不動産業〕
不動産開発事業の仕入・企画・設計・販売などにおける事業協力をはじめとする資本業務提携のメリット・シナジーの一層の実現などのため、㈱サンウッドの株券等を公開買付けを通じて追加取得し、2023年12月に同社を連結子会社化しました。
不動産販売業ではこのほか、既存のサービスアパートメントをリノベーションしバリューアップした中央区日本橋堀留町の賃貸マンションを一棟販売するなどリノベーション物件の売上増により増収となりました。
これらの結果、不動産業の営業収益は654億2千8百万円(前期比23.8%増)、営業利益は120億1千8百万円(前期比0.6%減)となりました。
ホテル業では、訪日外国人旅行客の宿泊需要の取り込みなどにより、「京王プラザホテル(新宿)」や「京王プレッソイン」などの客室単価が、コロナ禍以前を上回る水準まで大きく回復し増収となりました。「京王プラザホテル(新宿)」においては、本館最上階(47階)の約1,100㎡の広々とした空間に「ラウンジ」「パーク」など6つのゾーンからなる新スペース「SKY PLAZA IBASHO」をオープンしました。また、本館32階から34階の客室を改装しました。
これらの結果、レジャー・サービス業の営業収益は727億3千1百万円(前期比37.9%増)、営業利益は83億4千5百万円となりました。
建築・土木業では、中期経営計画の重点施策である「稼ぐ力の強化」の取組みの一環として実施した、京王建設㈱の㈱NB建設(※)子会社化により増収となりました。
ビル総合管理業では、株式会社ゆりかもめの新橋駅から豊洲駅の全16駅や車両基地の昇降機等の機械設備保守点検業務を受注したほか、多摩都市モノレール株式会社の多摩都市モノレール線14駅について昇降機設備修繕作業を受注したことなどにより増収となりました。
これらの結果、その他業では営業収益は784億8千9百万円(前期比21.3%増)、営業利益は56億2千7百万円(前期比25.6%増)となりました。
(※)㈱NB建設は、2024年4月1日付で「京王建設横浜㈱」に商号変更しております。
2022年度を初年度とする「京王グループ中期3カ年経営計画」においては、引き続き、京王線(笹塚駅~仙川駅間)連続立体交差事業、ホームドアや段差隙間対策などホーム安全対策の推進等、安全性向上を中心とした投資のほか、販売業の事業展開を加速させ、販売用不動産等の仕入を継続してまいります。
連結資本的支出
鉄道事業投資額
重要な資本的支出に要する資金は、営業活動によるキャッシュ・フローを充てるほか、不足する資金については、経済情勢や金利動向を勘案し、社債の発行や金融機関からの借入などによる調達を予定しております。なお、主力事業である鉄道事業の特性を鑑み、その設備資金は長期の負債(社債、長期借入金)を中心に調達してまいります。
短期的な運転資金は、運輸業などの日々の収入金を中心に、必要な流動性資金を十分に確保しております。また、CMS(キャッシュマネジメントシステム)によりグループ内の余剰資金を有効に活用しているほか、必要に応じてコマーシャル・ペーパーの発行による調達も実施してまいります。
2023年度における当社グループは、2022年度を初年度とする「京王グループ中期3カ年経営計画」に基づき、将来的な大規模投資期を見据えて、資産効率の向上と利益規模拡大の両立を目指して不動産販売業の強化を推進しました。また、鉄道事業においては、駅・車両の安全対策を着実に推進したほか、バリアフリー設備の整備などお客様の利便性向上施策に取り組み、総額232億円(前期比24.7%増)の設備投資を行いました。このほか、企業の責任として社会課題への対応を促進するとともに、働き方改革やデジタル化促進による生産性向上など、人財面での課題克服に向けた施策に着手しました。「京王グループ中期3カ年経営計画」については、第2〔事業の状況〕1〔経営方針、経営環境及び対処すべき課題等〕(2)経営環境及び対処すべき課題に記載のとおりです。
(単位:億円)
(1)公開買付けによる株券等の取得について
当社は、株式会社サンウッドの株券等を公開買付けを通じて追加取得した結果、同社は2023年12月26日をもって当社の連結子会社となりました。詳細は第5〔経理の状況〕1〔連結財務諸表等〕〔注記事項〕(企業結合等関係)に記載しております。
(2)会社分割による連結子会社への事業承継
当社は、2023年12月26日開催の取締役会において、当社完全子会社の「株式会社京王SCクリエイション」を設立し、簡易吸収分割の方法により、当社が営む商業施設運営事業(ショッピングセンター事業および不動産賃貸業の一部)を株式会社京王SCクリエイションに承継させることを決議いたしました。詳細は第5〔経理の状況〕1〔連結財務諸表等〕〔注記事項〕(追加情報)に記載しております。
(3)連結子会社の吸収合併
当社は、2023年12月26日開催の取締役会において、当社完全子会社の京王地下駐車場株式会社について、すべての事業を吸収分割にて株式会社京王SCクリエイションに移管したのち、当社に吸収合併することを決議いたしました。詳細は第5〔経理の状況〕1〔連結財務諸表等〕〔注記事項〕(追加情報)に記載しております。
該当事項はありません。