当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1)経営方針・企業理念・行動方針
当社グループを取り巻く事業環境の変化は日増しに加速しており、事業は複雑性を増しています。こうした状況下で、当社グループはさまざまな社会課題を解決し、商用車業界をリードしていくために、自らの存在意義、そしてお客様・社会に対する提供価値を問い直すことが必要とされています。
このような課題認識のもと、当社グループは、従業員一人ひとりが高い視座に立ち、同じ価値観を共有し、一丸となって社会課題の解決に取り組むことが必要と考え、2023年5月に新たな経営理念体系「ISUZU ID」を策定しました。
「ISUZU ID」の概要は以下の通りです。
◆PURPOSE(使命):地球の「運ぶ」を創造する
お客様、そしてパートナーの皆さまと地球上のすべてのモノ・ヒトの「運ぶ」を主体的に創造するとともに、カーボンニュートラルへの対応や、進化する物流への貢献など、新たな「運ぶ」の価値を提供し、社会を豊かにしていきたい、という決意を表しています。
◆VISION(将来像):「安心×斬新」で世界を進化させるイノベーションリーダー
あらゆる社会課題の解決に貢献していくために、従来大切にしてきた「安心」に、「斬新」を掛け合わせ、イノベーションリーダーを目指します。
◆MISSION(任務):あなたと共に「運ぶ」の課題を解決する
すべての人々と共に社会を前進させるという意志を込め、4つの分野(お客様満足度・地球へのやさしさ・働きがい・社会への影響力)でNo.1を目指し、日々努力します。
◆CORE VALUE(コア・バリュー):相互成長
イノベーションリーダーとして、一人ひとりが挑戦・変化・貢献する意欲を持ち、集団として尊重・信頼・刺激し合うことで、成長していきます。
今後、当社グループは「ISUZU ID」を起点に、既存事業の更なる強化と新事業への挑戦を通じて社会課題の解決に貢献し、世界を進化させるイノベーションリーダーを目指します。
(2)対処すべき課題
「地球の『運ぶ』を創造する」をPURPOSE(使命)として、「運ぶ」に関わるさまざまな社会課題を解決するためには、多様化するお客様ニーズや不確実性の高い事業環境にもしなやかに対応し、絶えず柔軟に変革し続けることが不可欠です。
変革の実現に向け、当社グループでは2024年4月に、中期経営計画「ISUZU Transformation – Growth to 2030」(以下、「IX」)を公表しました。「IX」は「ISUZU ID」のVISION(将来像)とMISSION(任務)を、足元からのフォーキャストと「ISUZU ID」からのバックキャストで、2030年目線で具体化し策定したものです。当社グループは2030年に向けて、創造・提供する価値を従来の商品軸から、新たにソリューションへと広げ、ビジネスモデルを変革します。現在の収益拡大と、未来の収益への投資を両輪として、お客様・社会をはじめ、あらゆるステークホルダーが抱える課題を「安心×斬新」な「運ぶ」で解決する、「商用モビリティソリューションカンパニー」を目指していきます。
次に挙げる課題は、「ISUZU ID」の実現のみならず、自動車業界・商用車業界におけるお客様のご期待や技術的変革に対応するため中長期的な観点から抽出したものです。
「運ぶ」を創造する新事業への挑戦
物流業界を取り巻く環境は、カーボンニュートラル(以下、「CN」)社会の実現が急がれるなか、昨今の慢性的なドライバー不足等の課題を抱えています。こうしたお客様・社会課題の解決に貢献し、未来の新たな収益へと成長させるため、従来培ってきた当社の強みである「安心」を活かし、「自動運転ソリューション」、「コネクテッドサービス」、「カーボンニュートラルソリューション」の3領域を軸に、「安心×斬新」でお客様と社会の課題を解決する新事業に挑戦します。これら新事業への挑戦に向け、総額1兆円規模のイノベーション投資を着実に実行します。
(前中期経営計画期間中の取組み)
「自動運転ソリューション」については、自動運転に関する新技術の開発実証を推進してきました。同時に、アライアンスパートナーの拡充にも努め、2024年3月には路線バス領域における自動運転システムの開発を目的に、世界初のオープンソース自動運転ソフトウェア「Autoware」の開発リーダーである株式会社ティアフォーと、資本業務提携について合意しました。
「コネクテッドサービス」では、かねてより運行管理・ドライバー支援サービス「MIMAMORI」、高度純正装備「PREISM」等の先進的なコネクテッドサービスを、業界に先駆けて導入してきました。前中期経営計画期間中には、株式会社トランストロン及び富士通株式会社と共同で、商用車情報基盤「GATEX」の提供を開始しました。商用車の運行管理や稼働サポートサービスの提供に加え、多様なデータ連携により、物流業界が抱えるさまざまな課題の解決に貢献する仕組みを提供可能となります。
「カーボンニュートラルソリューション」では、CN時代を見据え、小型車市場にBEV(※1)及びFCV(※2)を上市したほか、大型市場でのFCVの上市に向けて、2023年度には燃料電池システムの開発及び供給パートナーである本田技研工業とともに、モニター車による公道での実証実験を開始しました。さらに、商用BEVの導入検討や課題解決のサポート、温室効果ガス排出削減効果を定量化するトータルソリューションプログラム「EVision」を構築し、商品販売のみならず、お客様のニーズに合わせた柔軟なEV導入・運用の提案を可能にしました。また、2022年6月には「いすゞ環境長期ビジョン2050」の取組みを着実に実現するために、2030年までのロードマップを示した「2030環境ロードマップ」を策定しました。
(※1)BEV:Battery Electric Vehicle
(※2)FCV:Fuel Cell Vehicle
(今後の計画)
「自動運転ソリューション」では、2027年度に、日本及び北米を皮切りに自動運転レベル4技術を活用したトラック・バス事業を開始します。この実現に向けて、2024年4月より自動運転技術の獲得や基礎的なサービスの作り込みを本格的にスタートさせ、2026年よりアライアンスパートナーとの協働によるモニター実証を行う予定です。また、当社内に自動運転技術を活用した事業の検討組織を設立し、中長期的には数百名規模への拡大を見込んでいます。これらの取組みと、当社が従来培ってきた「通常時、緊急時の車両制御技術」、「お客様による使われ方の熟知」を掛け合わせることで、2027年度より順次、高速道路・ハブ間での輸送や、市街地をはじめとする路線バスの自動運転ソリューションを提供していきます。
「コネクテッドサービス」では、国内においては運送事業者・荷主の輸配送効率を高めるサービスを提供するほか、業界を超えたさまざまなデータを前述の商用車情報基盤「GATEX」と連携させることで新たなサービスを創出します。さらに、北米より高度純正整備「PREISM」と「EVision」を展開し、2028年までに北米以外の主要地域へも対象エリアを拡大します。
「カーボンニュートラルソリューション」では、「いすゞ環境長期ビジョン2050」に基づき、マルチパスウェイで技術開発を進め、各国の使われ方・地域状況・社会動向に適した商品を展開することで、CN社会実現に貢献します。具体的には、2030年までに全車種でCN商品をラインナップに加える予定です。CN商品の開発加速のため、藤沢工場内に電動開発実験棟を新設し2026年6月の稼働開始を目指します。
さらに、2030年代の普及期を見据え、価格競争力のあるBEVの投入や、バッテリー交換式ソリューション「EVision Cycle Concept」をはじめとする周辺事業の展開を本格的に推進し、社会のCN化を牽引します。
「運ぶ」を支える既存事業の強化
当社グループは150カ国以上で事業を展開し、うち37カ国以上でシェア第1位、グローバル販売台数は66万台以上と、世界中のお客様・社会の「運ぶ」を支えてきました。今後も業界を牽引するとともに、お客様・社会の「運ぶ」を支え続けるためには、既存事業の商品力・販売力を強化し、グループの事業基盤を一層強固にする必要があります。当社グループは、商用車市場のグローバルリーディングカンパニーとして、2030年度に新車販売85万台以上、売上高5兆円以上を目指します。
(前中期経営計画期間中の取組み)
無事故社会の実現、ドライバーの労働環境改善等、ますます高度化・複雑化する物流業界の課題解決に資するため、市場ニーズの変化を見据えた商品開発に取り組みました。具体的には、主力商品である小型トラック「エルフ」や中型トラック「フォワード」のフルモデルチェンジ、ピックアップトラック「D-MAX」の大幅改良、量産BEVの市場投入、各種快適装備・安全支援機能の大幅拡充を進めてきました。
また、ボルボ・グループより全株式を取得し連結子会社化したUDトラックスとは、技術・事業における相互連携を強化し、スケールメリットを追求すると共に、お客様・社会の課題解決に向けたソリューションの提供に努めました。具体的には、初の共同開発商品である新型トラクタヘッド「ギガ」と「クオン」の市場投入、400拠点以上のサービスネットワークや物流・部品デポ、海外オフィスの相互活用、そして「Japan Mobility Show」の両ブランド共同出展を事例に、グループ一体で効率化を追求し、2024年3月期には140億円のシナジーを創出しました。
(今後の計画)
CV(※1)事業では、いすゞ・UDトラックスの販売・サービスチャネル及び商品の相互補完でシナジー創出をさらに加速させることにより、グローバルでの徹底的な拡販を実現します。また、コンポーネント組合せ開発基盤「I-MACS」の活用により、迅速かつ柔軟な仕様設定を実現し、圧倒的なラインナップで各国・地域のニーズに応えていきます。加えて、CN時代を見据え、従来培ってきたメンテナンスリースや、「EVision」をはじめとする「トータルライフサイクルで稼働を支えるサービス」を地域毎のニーズに合わせて海外へ展開し、確かな収益源であるアフターセールスの一層の強化を目指します。
LCV(※2)事業は、グローバルサウスへの拡販を進めるとともに、2030年に向けては、さまざまなユースケースを踏まえた多様な動力源(高効率ICE(※3)、PHEV、BEV)の提供及び次世代に求められる要素技術開発を推進し、事業成長を目指します。
(※1)CV:Commercial Vehicle
(※2)LCV:Light Commercial Vehicle
(※3)ICE:Internal Combustion Engine
「ISUZU ID」を基軸とした経営基盤の確立
「ISUZU ID」で示すVISION(将来像)・MISSION(任務)、「IX」で示す「商用モビリティソリューションカンパニー」への変革を実現するためには、人的資本経営やグローバル視点でのグループ経営を支える経営基盤の確立が必要不可欠です。当社グループではグローバル基準の人財マネジメント基盤の整備、「安心×斬新」を実現する人財への投資を加速し、更なる事業成長を目指していきます。
(前中期経営計画期間中の取組み)
人財マネジメントの一環として、2022年5月に横浜へと本社を移転しました。グループ企業を集約するとともに、新本社の最新オフィス設備・IT環境を活用し、海外拠点も含めた社内、そしてグループ内コミュニケーションの活性化を図っています。また、従業員の自律的成長を促すため、ダイバーシティ&インクルージョン推進を目的としたボルボ・グループのソーシャルネットワーク「VOIS」に参画しています。 さらに、グローバル視点でのグループ経営を支える、ガバナンス体制の実効性向上のため、2022年3月期より監査等委員会設置会社へ移行し、経営の監督機能の一層の強化を図りました。また、社外取締役を5名(取締役総数13名)、うち女性2名とすることで、取締役会における多様性を向上しました。
(今後の計画)
「ISUZU ID」を基軸として、機能軸組織・人財戦略・人事制度の基盤整備を行います。具体的な取組みとして、従業員の専門性強化と挑戦を後押しする、グローバル基準の人財マネジメント基盤整備に着手します。変革の第一弾として、従来の職能型を改め、職務型を採用した新人事制度を2024年4月よりスタートしています。順次対象を拡大し、2026年度にはグループ全体で運用します。職務(ジョブ)の明確化とそれに基づいた適所適財の人財配置、公正な評価・報酬を実現することで、対話と育成の文化を醸成し、従業員の更なる成長を支援します。
また、新事業展開に向けた技術・サービスの開発や、既存事業運営の効率化への取り組みを通して、事業戦略の推進に必要なDXケイパビリティの充実を図ります。具体的には、各パートナーとの協力による全従業員の基礎スキル及び専門領域のスキル向上、技術革新に対応する新たなスキルの獲得を進めます。専門人財の獲得とリソースシフトの促進により、デジタルを用いてイノベーションを創出する集団へと変革し、世の中に提供する価値の拡大を目指します。
強固な収益基盤・財務基盤の確立及び成長投資と株主還元の両立
当社グループは、企業価値の持続的な向上を目指し、事業継続及び将来成長に必要な投資を優先に実行していきます。グループ全体での既存事業の強化を軸に、新事業を強力に推進することで、2030年度には売上高6兆円、営業利益率10%以上を目指します。
(前中期経営計画期間中の取組み)
資材費の高騰をはじめとする、さまざまな事業環境変化がありながらも、売上高目標・営業利益目標を達成し、事業規模の拡大を実現しました。
収益性として、前中期経営計画最終年度には、売上高3兆3,867億円、営業利益率8.7%、ROE12.7%を達成しました。また、前中期経営計画期間における設備投資及びR&Dの累計金額は6,369億円にのぼります。さらに、株主還元では、配当累計1,829億円、自己株式取得は500億円と、適正な自己資本水準を維持した、機動的な自己株式取得に取り組みました。財務健全性としては、各格付にてA格を取得しています。
(今後の計画)
企業価値の持続的な向上を目指し、先述の事業により得られた収益をもとに、将来成長に必要な投資を優先して実行するとともに、株主還元と財務健全性を両立していきます。
収益面は、2030年度には売上高6兆円、営業利益率10%以上、ROE15%以上を目指します。積極的なイノベーション投資を推進しつつ、既存事業ではDXを活用することで業務効率化を図り、収益を確保します。株主還元は、配当性向は平均で40%を維持し、着実な配当成長を目指します。また、固定資産と自己資本のバランスを考慮しつつ、自己株式取得を継続します。また、財務健全性は、各格付でのA格を維持しつつ、有利子負債も活用していきます。
投資について、2030年代に向けて積極的な投資を実行します。まず、「成長の可能性」として、「運ぶ」を創造するイノベーション領域に総額1兆円を投資します。具体的な内容として、CN社会実現に向けた基礎研究・技術開発・環境ロードマップの推進、自動運転の事業化に向けた技術開発、事業・設備投資、コネクテッドサービスの進化・拡充、次世代商品・SDV対応等が挙げられます。また、「経営の安定性」として、「運ぶ」を支える既存事業領域に対し、総額1.6兆円を投資します。具体的には、当社グループの生産拠点強化や、販売・サービスのインフラ投資、商品ラインナップの拡充等を見込んでいます。
当社グループはこうした投資によって、持続的成長と付加価値の提供を実現します。
文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2024年6月26日)現在において当社グループが判断したものです。
当社グループは、2023年5月に新たな経営理念体系として策定した「ISUZU ID」において、「MISSION(任務):あなたと共に「運ぶ」の課題を解決する」として4つの分野(お客さま満足度・地球へのやさしさ・働きがい・社会への影響力)でのNo.1を目指していくことを掲げました。さらに、2024年4月に中期経営計画として策定した「IX」において、2030年に目指す姿と道筋を具体化しました。
従来取り組んできた「ESGを視点とした経営」を加速し、カーボンニュートラルソリューションの創出・提供や、人的資本経営への進化、人財マネジメントの変革、DX ケイパビリティの充実等、「ISUZU ID」の実現に向けたサステナビリティ活動を推進していきます。
(1)サステナビリティ共通
①ガバナンス
当社は、グループ全体でサステナビリティの推進を図るため、取締役副社長を委員長とし、各領域の担当役員をはじめとする経営層を常任委員とするサステナビリティ委員会を設置しています。
サステナビリティ委員会は、定期的(年4回以上)に開催し、気候変動リスクや人権・多様性への対応など、サステナビリティに関わる事項の審議・決定を行っており、審議事項は、内容の重要度などを鑑み、必要に応じて経営会議、取締役会へ報告を行っています。
また、サステナビリティ委員会の傘下には、関連する常任委員を部会長とする環境系、社会系の専門部会を設置し、個別課題について具体的な議論を行っています。
(サステナビリティ委員会の構成)
CN:カーボンニュートラル
(サステナビリティ委員会の開催状況)
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2022年度 |
2023年度 |
開催実績 |
6回 |
5回 |
主な議題 |
・人権課題への取り組み ・事業活動におけるCN実現に向けたエネルギー調 達推進体制の構築について ・DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョ ン)推進活動計画 ・GX(グリーントランスフォーメーション)リーグ参画 について ・各部会の活動報告 |
・サステナビリティに関する方針の見直し等の審議 ・環境ロードマップの推進についての審議、報告 ・人権デュー・ディリジェンス進捗報告 ・各部会の活動報告 |
②リスク管理
当社は、グループでのリスク管理プロセスを主導するグループCRMO(Chief Risk Management Officer/リスクマネジメント責任役員)を設置したリスク管理体制を構築しています。グループCRMOは、社会と当社のサステナビリティの視点から、定期的にグループの経営上・事業遂行上でのリスクを特定・評価するとともに、これらのリスクを適切に管理し、特に低減に努めています。
特定した具体的なリスクについては、後段の
(2)気候変動
①ガバナンス
CNの達成に向けた取り組みを着実に推進する体制として、前述の「サステナビリティ委員会」のもと、気候変動に関する事項の審議・決定を行っています。また、傘下に生産活動を中心に事業活動のCN達成に向けた活動を推進する「事業系CN推進部会」と脱炭素技術/エネルギーなどによる製品のCNに資するさまざまな活動を推進する「製品系CN推進部会」を設置し、具体的な対応方針や活動の検討、実務展開を行う体制を整えています。
②戦略
当社グループは、環境面における長期的な視野で目指すべき姿としての「いすゞ環境長期ビジョン2050」、及び同ビジョンを実現するために2030年までの道筋とチャレンジを示した「2030環境ロードマップ」を策定しています。
中長期における気候変動への対応戦略を具体化するため、当社では、IPCC(※1)による気候シナリオや、IPCC/IEA(※2)が作成した社会経済シナリオを参考に、2050年に向けた環境長期シナリオに基づくシナリオ分析を行いました。脱炭素社会への移行に伴う「移行リスク・機会」と、自然災害の増大等により物理的な影響を及ぼす「物理的リスク・機会」に分け、以下のとおり特定しています。
前述の「ISUZU ID」の実現に向けて、マルチパスウェイ(全方位)での技術開発、BEVの価格競争力向上、EV・バッテリーの利活用に関連する様々なパートナーとの協創等、カーボンニュートラルソリューションを創出・推進し、グローバルでのCN化の牽引を目指します。
(※1)ⅠPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change:気候変動に関する政府間パネル)
(※2)ⅠEA(International Energy Agency:国際エネルギー機関)
(リスクと機会)
分類 |
リスク |
機会 |
対策 |
事業への 影響度 |
移行リスク・機会 (脱炭素社会への移行に伴うリスク・機会) |
・更なる環境対応規制の強化への対応遅れによる、シェア低下 |
・ゼロエミッション車の需要増加 |
・CN化に対応出来るフルラインナップ確立に向けた取り組み推進 |
大 |
・EV、FCVなど多様なパワートレインに対応するための開発、生産コストの増加 |
・オープンイノベーションの拡大 ・安価なクリーンエネルギーの普及拡大 |
・アライアンスを活用した効率的な共同開発 ・安価なクリーンエネルギーへの切り替えによる低炭素な操業とコスト低減 |
大 |
|
・化石燃料を使う内燃機関車の市場縮小 |
- |
・次世代燃料(CN燃料)の活用による既存内燃機関技術やインフラの活用 |
大 |
|
・物流インフラの多様なニーズに対応出来ないことによるブランド力低下 |
・自動運転、隊列走行、フルトレーラーのニーズ拡大 |
・お客様との協創活動によるCNに資する物流イノベーションの創出 |
大 |
|
・事業全般におけるGHG(温室効果ガス)削減対策や再生可能エネルギー導入の遅れによるエネルギーコストの増加、評判リスクの増加 |
・早期の再生可能エネルギー導入によるコスト低減と企業イメージ向上 |
・再生可能エネルギーの導入拡大 ・省エネ活動の更なる推進によるエネルギーコスト低減 |
中 |
|
物理的リスク・機会 (自然災害の増大や水資源の枯渇等の物理的リスク・機会) |
・異常気象(洪水、台風等)発生増加による事業被害 |
・災害対応可能な車両へ需要増加 ・自然災害に強靭なインフラサービスへのニーズ拡大 |
・災害対応車の提供 ・水害等で被水した車両の復旧サービス提供 ・BCPの拡充による企業体質の強靭化 |
大 |
当社グループの製品・サービス、及び事業活動におけるCNに向けた具体的な取り組みや環境長期シナリオについては、
③リスク管理
気候変動に関するリスク全般については、「(1)②リスク管理」に記載のとおり、全社グループのリスク管理体制の下で管理しています。「(2)②戦略」に記載した、個々の具体的な気候変動リスクと機会については、サステナビリティ委員会が特定・評価を行い、事業への影響を踏まえた対策の進捗を管理しています。
④指標と目標
当社は、「いすゞ環境長期ビジョン2050」において、2050年までに、当社グループ製品のライフサイクル全体でGHGゼロを目標に掲げました。また、この目標を実現するために、「2030環境ロードマップ」において、2030年までに当社グループのCO2排出量(Scope1+2)を2013年度比で50%削減する目標を設定しました。
CO2排出量の推移
2022年度は新型コロナウイルス感染症拡大に伴う経済活動停滞からの回復に伴い、生産活動が復調したことでエネルギー使用量が増加しました。一方、環境長期ビジョンで掲げる「使用エネルギーの低減」に順じ、全社で省エネルギー活動の徹底を図ることで、無駄なエネルギー使用が無いようにしています。また、「クリーンエネルギーの創出」として2022年度から栃木工場に新たに1,156kWの太陽光発電設備を導入しました。「クリーンエネルギーへの転換」としては、事業所で使用するエネルギーについても、順次再生可能エネルギー由来のクリーンエネルギーへの転換を進めており、環境長期ビジョン、環境ロードマップ達成に向けた活動を全社挙げて進めています。
なお、2023年度CO2排出量実績については、2024年8月に発行する「サステナビリティレポート」(https://www.isuzu.co.jp/company/sustainability/report.html)に記載する予定です。
(提出会社の2022年度CO2排出量実績)
算定項目 |
2021年度 |
2022年度 |
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Scope1 |
直接排出 |
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Scope2 |
間接排出 |
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Scope3 |
合計 |
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カテゴリー1 購入した製品・サービス |
4,903,215 |
6,006,103 |
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カテゴリー2 資本財※ |
0 |
21,510 |
|
カテゴリー3 Scope1、2 に含まれない燃料及びエネルギー関連活動 |
44,081 |
46,263 |
|
カテゴリー4 輸送、配送(上流) |
37,402 |
40,733 |
|
カテゴリー5 事業から出る廃棄物 |
5,312 |
1,533 |
|
カテゴリー6 出張 |
1,050 |
1,050 |
|
カテゴリー7 雇用者の通勤 |
3,486 |
3,476 |
|
カテゴリー10 販売した製品の加工 |
166,537 |
184,204 |
|
カテゴリー11 販売した製品の使用 |
89,314,699 |
96,174,036 |
|
カテゴリー12 販売した製品の廃棄 |
1,689 |
1,816 |
|
カテゴリー8、9、13、14、15は該当する活動なし |
※2022年度は本社移転に伴い、排出量が増加
(3)人的資本・多様性
①ガバナンス
人的資本経営
当社は、グループ全体で「ISUZU ID」に掲げる「働きがいNo.1」を目指し、「やりがい」と「働きやすさ」の両面から課題や施策について検討を図り、下記の体制で推進してきました。
・ やりがい:「人事制度改革プロジェクト会議」にて新人事制度について毎月議論
・ 働きやすさ:働き方改革に関する検討会議にて在宅勤務やノンコアフレックス等の勤務制度について毎月議論
上記の部門横断的な会議で検討した結果は、適宜「経営会議」へ諮問し、制度・施策・対応等を決定する体制としています。
労働安全衛生
労働安全衛生に関しては、取締役社長を委員長とする安全推進特別委員会を設置しています。委員会の活動状況は、社内規則に基づき、経営会議及び取締役会に付議・報告されます。
また、各事業所にて月1回、「安全衛生委員会」を開催し、従業員の労働安全・交通安全・健康管理、職場の環境改善などについて労使間で議論を行っています。安全衛生委員会での議論の内容等については、その内容や必要性に応じて、安全衛生担当部署を所管する役員に対し適宜報告する仕組みとしています。
②戦略
「ISUZU ID」を起点とする人的資本経営への進化とグローバル視点でのグループ経営を実現するため、人事制度の大きな改革に取り組んでいます。
人財育成に関する考え方
「ISUZU ID」を実現するためのビジョンとして、「『安心×斬新』で世界を進化させるイノベーションリーダー」を掲げています。このビジョンに近づくためには、社員一人ひとりが常に「変化」「挑戦」「貢献」するという成長意欲を持ち、個々が能力・個性を惜しみなく発揮する集団になることが必要であると考え、2024年4月より新人事制度をスタートしました。本制度のコンセプトは、
・ ①成長機会を見出す、②仕事で成長する、③成長が報われる、という「人財成長サイクル」を回していく
・ このサイクルにより、会社は社員一人ひとりの成長意欲を最大限に引き出し、社員は自分らしく成長し「ISUZU ID」の実現に貢献するというものです。本制度は、2026年度までに当社グループ全体へ展開する予定です。
(新人事制度のコンセプト:人財成長サイクル)
社内環境整備方針
当社は、「従業員の尊重」の基本的な考え方として、従業員が自身の能力を最大限に発揮でき、また安全で快適に働くことのできる環境を整備することで、従業員と会社が共に成長することを示しています。
「働きやすさ」の面では、「仕事に適した働き方を追求し、生産性を向上すること」を基本的な考え方とし、心身の健康維持・増進、感染症対策、ワーク・ライフ・バランスの増進などに関する環境整備・制度運用を通じて、従業員の生産性やモチベーションの向上に努めています。
従業員の安全面については、「安全衛生活動方針」として、社員一人ひとりが「わが社の安全衛生理念」に立ち返り、安全を最優先に考え行動すること、さらに、安全・衛生意識を向上させて、全員で全員の「安全」を保つ活動を展開することを定め、各職場における安全管理目標達成に向けて日々積極的に取り組んでいます。
③リスク管理
「(1)②リスク管理」に記載のとおり、人的資本・多様性に関するリスクとして「優秀な人財の確保・定着、成果創出等」を特定し、全社グループとしての体制のもとで管理しています。また、本リスクの管理は、当社グループの提供価値の拡大と変革を実現する、という機会の側面を併せ持っています。
本リスク・機会への対策・施策として、前述の「人財成長サイクル」を回していき、社員一人ひとりが自分らしく成長して「ISUZU ID」の実現に貢献しつつ、個々人の成長が多面的に確認されて報われる仕組みに展開していきます。
また、本リスクへの対策の前提となる人権尊重について、「いすゞグループ人権方針」に従い、人権意識を高めるための教育・啓発活動を役員・従業員に対し実施しています。
④指標と目標
当社では、人財育成方針、社内環境整備方針に関して、取組状況を測る指標として、以下の項目を設定しています。
新人事制度のコンセプトである「人財成長サイクル」を実効的に回していくため、マネージャー(管理職)にはOne on One研修を、メンバーにはキャリア研修等を実施していき、これを指標としています。今後、「人財成長サイクル」の実践を確認するための追加的な指標を検討・設置していきます。
なお、新人事制度の展開は、2026年度にかけてグループ全体に展開する予定であり、下記の実績は、当社単体での値となります。
人財育成に関する指標
指標 |
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実績(当連結会計年度) |
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社内環境整備に関する指標
指標 |
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実績(当連結会計年度) |
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育児・介護支援制度 の利用者数 |
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労働災害件数 |
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件 |
経営及び事業を取り巻く環境が大きく変化し、不確実性がますます高まる中、当社はグループでのリスク管理プロセスを主導する「グループCRMO」を設置したリスク管理体制を構築しています。また、リスクマネジメント推進組織としての独立性を担保し、より専門性を高める目的で、グループCRMOの下に「リスクマネジメント部」を設置しています。
グループCRMOは、当社各部門及びグループ企業が重要視している各種リスクを分析したうえで、経営に大きな影響を及ぼしうるリスクを「グループ重点リスク」として定め、当社各部門及びグループ企業にリスクを低減するための予防的取組(リスク対応計画)の策定、実行を指示しています。そして、予防的取組の取組み状況をモニタリング、適宜助言し、その内容を定期的に経営会議、取締役会に報告しています。
またグループCRMOは、インシデント発生時には、発生部門又はグループ企業に解決に向けた速やかな対応を指示するとともに、大きな危機に転化するおそれがある場合は、その影響を極小化するために、グループCRMO指名メンバーによる対応チームを組成し、各種対応方針等を決定実行することにより、常に危機管理を徹底しています。
なお、事業影響が生じる重大なインシデントに繋がる可能性がある場合は、速やかに経営層に報告し、対応方針について審議・決定しています。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。
なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2024年6月26日)現在において当社グループが判断したものです。
1.世界経済・金融市場・自動車市場に起因するリスク
(1)主要市場の経済状況・総需要の変動
当社グループの全世界における売上高のうち、主要な部分を占める自動車の需要は、当社グループが製品を販売している国・地域、特に日本、タイ、米国などの主要国市場における経済状況の影響を受けます。
また商用車市場は日本においては今後漸減が予想される一方で、新興国においては物流需要の増加が見込まれることから、当社グループは一部の新興国市場を戦略地域と定め、拡販活動を進めています。そのため、一部の新興国市場における経済状況もまた、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは経済状況・需要動向の見通しの正確な把握に努めるとともに、製品を販売する市場の分散によって影響を極小化していますが、当社グループの主要市場における景気後退、及びそれに伴う需要の縮小は、当社グループの業績及び財政状態に大きな悪影響を及ぼす可能性があります。
また、半導体をはじめとした外製品不足による生産制約が再び顕在化した場合、資材費・エネルギー費用・物流費等が高騰した場合、当社グループの事業活動、業績及び財政状態に大きな悪影響を及ぼす可能性があります。
(2)自動車市場における競争
当社グループの全世界における売上高のうち、主要な部分を占める自動車市場は、激しい競争が繰り広げられています。競争環境の激化は当社製品の競争力に影響を及ぼし、価格変動やシェア変動を引き起こす可能性があります。競争に影響を与える要素は製品性能、安全性、燃費、環境負荷、価格、アフターサービスといった当社製品に起因する事項の他、各国の電気自動車(EV)等への補助金政策をはじめとする外部起因の事項を含め多岐にわたり、各国の市場によって状況は異なります。
当社グループは主要市場での競争力を維持・強化するため、当社製品に起因する要素の改善に取り組みながら、競争力の高い製品について継続的に開発・生産・販売並びにそのアフターサービスを実施していますが、主要市場や新興国市場等での他社との競争に劣後した場合や予期しない業界再編が生じた場合、及び各国の補助金政策等が当社グループに不利な内容となる等の場合、当社グループの業績及び財政状態に大きな悪影響を及ぼす可能性があります。
(3)為替及び金利の変動
当社グループの事業には、世界各地における製品の生産と販売が含まれています。各地域における売上、費用、資産、負債を含む現地通貨建の項目は、連結財務諸表の作成のために円換算されています。換算時の為替レート、特に米ドルやタイバーツの為替レートにより、これらの項目は元の現地通貨における価値が変わらなかったとしても、円換算後の価値が影響を受ける可能性があります。さらに、為替変動は、当社グループが購入する原材料の価格や販売する製品の価格設定に影響し、2022年以降は円相場が複数通貨に対し値下がりしたことで、実際に原材料価格や製品価格の変動が生じています。
また、当社グループは日頃よりキャッシュ・フローの管理に努めていますが、資金調達に関わるコストは、市場金利が急激に上昇した場合、支払利息の負担が増大するなど、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは為替及び金利の変動による影響を極小化すべく、現地生産に加えて、先物為替予約取引を含むデリバティブ金融商品の活用を行っています。
しかし、為替及び金利の大きな変動が生じた場合、当社グループの業績及び財政状態に大きな悪影響を及ぼす可能性があります。
(4)原材料等価格の変動
当社グループは、自動車製造にあたり、鉄、非鉄金属、樹脂等の原材料を使用しており、加えて、xEVの研究・開発やBEVの市場投入等によってレアメタル等の使用が増加することを見込んでいます。
世界的な需給逼迫等によりこれらの原材料価格やエネルギー価格が上昇すると、当社グループとしての製造コストもそれに伴い上昇する可能性があります。その際、生産性向上などの内部努力や製品価格への転嫁などをもってしても上昇分のコストを吸収できなかった場合には、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
2.事業に関するリスク
(5)新しい技術革新やビジネスモデル変化などへの対応
当社グループの事業に関わる外部環境は大きく変化しています。商用車市場のお客様ニーズの多様化や商用車を用いたビジネスモデルの変化、「CASE」に代表される技術革新、生産・販売・アフターサービス・バックオフィス業務におけるデジタルイノベーションの推進、ESG投資やSDGs達成への期待の高まりなどの技術変化や社会変化は、当社グループの事業の拡大と深耕の好機です。
当社グループはこうした技術変化や社会変化に速やかに対応するため、常設部署を設置し、全社横断の複数プロジェクトを推進しています。また、当社グループは商用モビリティソリューションカンパニーへの進化を掲げ、自動運転ソリューション、コネクテッドサービス、カーボンニュートラルソリューション等の「運ぶ」を創造する新事業の創出・拡大を目指しています。しかし、万が一、これらの技術変化や社会変化に速やかかつ十分に対応できない場合には、当社グループの業績及び財政状態に大きな悪影響を及ぼす可能性があります。
(6)研究開発
当社グループの置かれた事業環境は競争の激化や市場ごとに異なる商品ニーズの多様化などが見込まれます。
このような経営環境に対応し、「運ぶ」を支える「ものづくり事業」を推進していくには高い技術と市場のニーズを的確にとらえた製品を提供する研究開発への取組みが不可欠です。
当社グループは、将来の市場ニーズの予測、研究開発分野の優先順位付けを通じて、新たな技術や製品の開発に取組んでいますが、もし求められる技術水準への到達や適正な市場ニーズの把握に失敗や遅延した場合には、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、アライアンス及び部品メーカーとの協業を通じて新たな技術や製品の入手をしていますが、もしアライアンス先や部品メーカーから求められる技術水準への到達に失敗や遅延した場合には、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(7)合弁事業をはじめとするアライアンス
当社グループは、いくつかの国において、各国の法律上の、あるいはその他の要件により合弁で事業を行っています。また、国内外の販売ではディーラーやディストリビュータと提携し、研究開発では合弁事業や業務提携を行っています。
当社グループは合弁相手やアライアンス先の経営状況、ガバナンス、その他重要な非財務情報も含め、様々な情報をもとに業務提携の要否を検討します。
しかし、合弁相手やアライアンス先の経営方針、経営環境の変化等当社グループが管理できない要因により、当社グループの業績及び財政状態に大きな悪影響を及ぼす可能性があります。
(8)販売・供給における特定チャネルへの依存
当社グループは、当社製品である自動車やその構成部品等を、トリペッチいすゞセールス㈱(タイ国バンコク市)や、ゼネラルモーターズ・コーポレーション(アメリカ合衆国ミシガン州デトロイト市)など当社グループ内外の特定チャネルを通じて販売・供給しています。当社グループの販売・供給における特定チャネルの依存について、取引先の業績悪化等により市場への供給・流通量が減少した場合、又は取引先の信用不安等による貸倒れが発生した場合、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは大口顧客企業との関係を維持するとともに、新規顧客の開拓によるリスク分散を図っています。しかし、これらの顧客企業への売上は、顧客企業の生産・販売量の変動など当社グループが管理できない要因により影響を受け、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(9)資材、部品等の調達の遅れや不足
当社グループは、生産に必要な原材料、部品及び製品を外部のサプライヤーから調達しています。以下のような事象が当社グループのサプライヤーや調達網で発生した際には、供給・輸送能力の低下や供給・輸送の中断が引き起こされ、生産に必要な量の原材料、部品及び製品が確保できなくなる、又は確保が遅れる可能性があります。
・サプライヤーや物流網において自然災害や大規模な事故等の不測の事態が発生した場合
・サプライヤーや物流網で大規模なシステム障害が発生した場合
・サプライヤーの供給能力を大幅に超えるような需給状況になった場合
・サプライヤーにおいて許認可取り消し等による製品の出荷停止が生じた場合
・サプライチェーン上の人権侵害等、品質・コスト・納期以外の問題が顕在化した場合
・海上交通の要衝での事件・事故等により物流網で混乱が生じた場合
当社グループは、サプライヤー各社の生産能力、信用リスク、製品等の品質、コスト等製品の供給に直接関わる事項を定期的に把握するとともに、各社の法令・コンプライアンス遵守や気候変動問題への対応状況を確認し、調達の支障が生じないように努めています。しかし、以上のような事象が発生した場合は、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(10)コンプライアンス・レピュテーション
当社グループでは、関係法令等の遵守はもちろん、ステークホルダーからの期待に応えるという意味でもコンプライアンスを徹底しています。
当社グループでは、法令等の違反を未然に防止する体制並びにコンプライアンスに関わる案件を察知した場合には速やかに対応する体制を構築しています。
またコンプライアンスの推進や体制整備について、客観的な助言・監督・評価を仰ぐことを目的として、社外委員も含めた社長の諮問機関であるコンプライアンス委員会を設置しています。
しかし、コンプライアンスの徹底にもかかわらず、将来にわたって法令違反が発生する可能性は皆無ではなく、法令違反の重篤性及び、発生時の対応内容や迅速性等が不十分な場合には、当社グループの社会的信用に重大な影響を与える場合があり、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。特に、道路運送車両法違反による生産停止や、各国の個人情報保護、贈収賄禁止、独占禁止・不正競争禁止に関する法令等への重大な違反が認められ、高額な制裁金が課せられた場合、当社グループの業績及び財政状態に大きな悪影響を及ぼす可能性があります。
(11)製品の欠陥
当社グループは、厳格な品質管理基準に従って各種の製品を開発・生産しています。品質の維持及び改善のため、当社グループは「品証・CS委員会」を通じて、不具合情報の早期発見と共有、品質向上のための全社横断的検討、全社的な品質マネジメントの運用状況の監視を実施しています。また製品の欠陥等を原因とする損害賠償が必要な場合に備えて、製造物賠償責任保険に加入しています。
しかし、万が一大規模なリコールを実施する場合、当社グループの業績及び財政状態に大きな悪影響を及ぼす可能性があります。加えて、実際に発生した費用が事前に計上した未払費用を大きく上回る場合や、製造物責任賠償金が製造物賠償責任保険により填補できない場合には、当社グループの業績及び財政状態に大きな悪影響を及ぼす可能性があります。
(12)デジタル社会におけるサイバーセキュリティに関するリスク
当社グループの事業は多くのシステムに依存しており、情報の機密性、完全性、可用性を一定以上で維持するための高度な態勢を確保しています。具体的には、個人情報や機密情報の保護、データやシステムの可用性の維持、各種情報の改竄防止等の情報セキュリティの維持・改善を目的に、様々なリスク対策を実施しています。また、製品のサイバーセキュリティ法規(R155 CSMS認証、R156 SUMS認証)にも遵守し、お客様が安心安全にご利用できるように努めています。
しかし、不測の事態により情報漏洩等が発生した場合や、製品の安心安全に影響がある事象が発生した場合、当社グループの業績及び財政状態に大きな悪影響を及ぼす可能性があります。また、システム障害やコンピューターウイルスへの感染、サイバー攻撃等が発生した場合には、業務の中断や、データの破損・喪失などを引き起こす可能性があります。その結果、当社グループの業績及び財政状態に大きな悪影響を及ぼす可能性があります。
また当社グループは、アライアンス先との情報セキュリティに関する契約を締結し、個人情報や機密情報の保護、データやシステムの可用性の維持、各種情報の改竄防止等の情報セキュリティの維持・改善を目的に、様々なリスク対策を実施しています。しかし、不測の事態により情報漏洩等が発生した場合、企業としての信用低下、顧客等に対する損害賠償責任、アライアンス先に対する損害賠償責任が発生するなど、当社グループの業績及び財政状態に大きな悪影響を及ぼす可能性があります。
(13)知的財産保護に関するリスク
当社グループは他社製品と差別化できる技術とノウハウを蓄積してきましたが、当社グループ独自の技術とノウハウの一部は、特定の国・地域では法的制限のため知的財産権による完全な保護が不可能、又は限定的にしか保護されない状況にあります。
当社グループは知的財産保護のための取組みを進めています。しかし、第三者が当社グループの知的財産を使って類似した製品を製造することを効果的に防止できない場合や当社グループに対する知的財産権侵害訴訟による製造・販売の差し止めや損害賠償の請求が認められた場合、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(14)優秀な人財の確保・定着、成果創出等
当社グループの事業では、人財が最も重要な資産と考え、当社グループの事業推進に必要となる技能・能力をもった多様な人財の確保に努めるとともに、従業員一人一人のモチベーション、熱意、技能、能力、パフォーマンスを高め、当社グループに定着させるための取組みを進めています。しかし、今後の人財獲得競争の一層の激化により、優秀な人財確保・定着がより困難になっていく可能性があります。
また、当社グループの従業員構成は日本企業の多くと同様に、シニア層に集中しています。それに伴って、将来的には円滑な技能伝承や適切な人員配置が困難となる可能性があります。
こうした状況を踏まえて、当社グループでは「ISUZU ID」に掲げる「働きがいNo.1」を目指し、また「IX」で2030年に目指す姿の一つとして掲げた「人的資本経営への進化」を実践しています。従業員の専門性強化と挑戦を後押しするグローバル基準の人財マネジメント基盤を整備すべく、当社では2024年4月より新人事制度をスタートしました。2026年度までにグループ全体に展開します(詳細は「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」中の「(3)人的資本・多様性」を参照ください。)。
さらに当社グループでは「人的資本経営」や「働きがいNo.1」の前提となる人権尊重について、「いすゞグループ人権方針」に従い、役員・従業員に対する人権意識を高めるための教育・啓発活動、人権DD等に取り組んでいます。また、ビジネスにおける人権尊重の重要性を踏まえ、ステークホルダーとの対話を行い、事業パートナー及び取引先の皆様に対しても理解促進に努めています。
しかし、これらの対応が十分ではない場合、従業員の離職、モチベーション低下、期待値に満たない成果、技能伝承の失敗、競争力の低下によって、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(15)地政学リスク
当社グループの製品の生産及び販売活動は、日本国内のみならず広く海外で行われ、事業展開する各国・地域において許認可をはじめとした各種政策の影響を受けます。また、戦争や政権交代等の政治情勢の変化、経済状況の変化、社会状況の変化は、当社グループの経営・事業活動及びサプライチェーンに影響を与えます。当社グループでは、こうした不確実性を地政学リスクとして認識し、特に以下の予期せぬ事象(ただし、以下に限定されません)が発生した場合、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
・事業・投資の許可
・輸出入、技術移転の制限
・潜在的に不利な租税政策の変更
・排出ガス規制並びに燃費/CO2規制
・当社グループ財産の直接的又は間接的収用
・情報やデータの管理や移転の制限
・安全保障上のリスクがある設備、ソフトウェア、クラウドサービス、委託先等の利用・調達に関する制限
・送金や兌換の規制
・為替政策
・その他、経済安全保障や国家安全保障に由来する政策
・国家間紛争・内戦、革命、クーデタ、騒擾、テロ
・重要な海上交通路の寸断
当社グループは各国・地域、特に日本、米国、アセアン地域、中国、欧州地域における地政学リスクの情報収集を行い、法規制の変化に備えた投資や新技術・製品の開発を行う等、様々な対策を実施しています。しかし、こうしたリスクが顕在化した場合、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(16)災害等
当社グループは全世界で事業を展開しているため、様々な災害リスクにさらされています。大規模地震、風水害や噴火等の自然災害、停電又はその他の中断事象、疫病・感染症が顕在化した場合、当社グループの生産活動、販売活動、その他事業活動に影響が生じる可能性があります。特に主要な事業拠点が集中する日本・南関東に大規模な災害等が発生した場合、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。また、設備不良、オペレーションミスによる事故、火災等の人為的災害が発生した場合、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。当社グループは災害等が発生した場合の行動計画を予め策定、それに基づいた訓練を実施しています。また新型インフルエンザやその他の未知の感染症等についても予防・対応計画を予め策定し、それに基づいた訓練を実施しています。
さらに、当社グループでは、従業員や関係者の労働災害を防止すべく、労働安全衛生を最優先事項として取り組んでいます。具体的には、「安全衛生活動方針」に基づき、従業員一人ひとりが「安全衛生理念」に立ち返り、安全を最優先に考え行動すること、さらに、安全・衛生意識を向上させて、全員で「安全」を保つ活動を展開することを定め、各職場における安全管理目標達成に向けて日々積極的に取り組んでいます。
しかし、これらの取り組みにもかかわらず、災害等による影響を完全に防止又は軽減できない場合、当社グループの業績及び財政状態に大きな悪影響を及ぼす可能性があります。
(17)気候変動
当社グループは、気候変動対応を最も重要な経営課題の一つとして位置づけ、気候変動に関する規制強化と、頻発・激甚化している自然災害への対応に取り組んでいます。一方で、更なる成長機会の獲得のため、脱炭素社会に貢献するイノベーションの創出を進めています。
気候変動に関するリスク全般については、当社グループのリスク管理体制の下で管理しています。個々の具体的な気候変動リスクについては、サステナビリティ委員会が特定・評価を行い、事業への影響を踏まえた対策の進捗を管理しています。適切に評価したリスクについては、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)のフレームワークに沿った情報開示を行っています。詳細については、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組(2)気候変動」を参照ください。
当社グループは、長期的視野で地球環境問題に取り組むための方向性を示す「いすゞ環境長期ビジョン2050」を、2020年3月に策定しました。「いすゞ環境長期ビジョン2050」では2050年までに、当社グループ製品のライフサイクル全体での温室効果ガス(GHG)ゼロ、及び当社グループの事業活動から直接排出されるGHGゼロを掲げ、GHG削減に取り組んでいます。
2024年4月に中期経営計画として策定した「IX」においても、「運ぶ」を創造する新事業として、「カーボンニュートラルソリューション」を掲げています。具体的には、「いすゞ環境長期ビジョン2050」に基づきマルチパスウェイで技術開発を進め、地域の状況や社会動向に適した商品を展開することで、CN社会実現に貢献します。また、燃料代や電気代までを含む総所有コスト(TCO)の観点で価格競争力のあるBEVを投入し、周辺事業の展開を推進します。
しかし、気候変動そのものを緩和するための取組みや気候変動による影響への対応・取組みが不十分である場合、当社グループの業績及び財政状態に大きな悪影響を及ぼす可能性があります。
(1)経営成績等の状況の概要
①経営成績の状況
当連結会計年度における国内と海外を合わせた総販売台数は、前連結会計年度に比べ84,835台(11.3%)減少し、666,809台となりました。
国内車両販売台数につきましては、部品不足が改善し、前連結会計年度に比べ5,084台(8.8%)増加の62,932台となりました。海外車両販売台数につきましては、インフレーション及び金利上昇による影響を受けた結果、CV(商用車(トラック及びバス))は39,032台(13.8%)減少の244,305台、LCV(ピックアップトラック及び派生車)はタイを中心に50,887台(12.4%)減少し359,572台となりました。
また、産業用エンジンの売上高は、前連結会計年度に比べ51億円(4.3%)減少の1,146億円となり、その他の売上高につきましては、保有事業等の伸長により前連結会計年度に比べ330億円(4.7%)増加の7,420億円となりました。
これらの結果、売上高につきましては、前連結会計年度に比べ1,911億円(6.0%)増加の3兆3,867億円となりました。内訳は、国内が1兆1,089億円(前連結会計年度比12.0%増)、海外が2兆2,778億円(前連結会計年度比3.3%増)です。
当連結会計年度の業績は次のとおりです。
|
当連結会計年度 |
|
前連結会計年度比 |
|||
売上高 |
33,867 |
億円 |
|
1,911 |
億円 |
6.0% |
営業利益 |
2,931 |
億円 |
|
395 |
億円 |
15.6% |
経常利益 |
3,130 |
億円 |
|
432 |
億円 |
16.0% |
親会社株主に帰属する当期純利益 |
1,764 |
億円 |
|
247 |
億円 |
16.3% |
(為替レート)
USD/JPY |
144.6円(135.5円) |
AUD/JPY |
95.1円 (92.6円) |
EUR/JPY |
156.8円(140.9円) |
THB/JPY |
4.10円 (3.84円) |
注:( )内は前連結会計年度の為替レート
損益につきましては、新興国を中心とした市況悪化及び資材費等の変動による減益影響はあるものの、価格対応、原価低減活動及び円安影響が寄与し、営業利益は2,931億円(前連結会計年度比15.6%増)となりました。また、経常利益は3,130億円(前連結会計年度比16.0%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は1,764億円(前連結会計年度比16.3%増)となりました。
当社グループは、自動車及び部品並びに産業用エンジンの製造、販売(自動車事業)を主な事業とする単一セグメントであるため、セグメントの業績の記載を省略しています。
②財政状態の状況
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べて2,162億円増加し、3兆2,630億円となりました。
負債は、前連結会計年度末に比べて674億円増加し、1兆6,040億円となりました。
純資産は、前連結会計年度末に比べて1,488億円増加し、1兆6,590億円となりました。
自己資本比率は44.8%(前連結会計年度末42.9%)となりました。
有利子負債につきましては、前連結会計年度末に比べて437億円増加の5,568億円となりました。
③キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)につきましては、営業活動により2,986億円獲得した資金を、投資活動で1,551億円、財務活動で1,450億円使用したこと等により、前連結会計年度末に比べて205億円増加し、3,849億円となりました。
なお、営業活動によるキャッシュ・フローから投資活動によるキャッシュ・フローを控除して計算した、フリーキャッシュ・フローは、1,435億円の資金流入(前連結会計年度は1,466億円の資金流入)となっています。
[営業活動によるキャッシュ・フロー]
営業活動により獲得した資金は、2,986億円(前連結会計年度比31.5%増)となりました。
これは、税金等調整前当期純利益を3,056億円、減価償却費を1,150億円計上し、売上債権の減少により95億円の資金流入があった一方で、仕入債務の減少により504億円、棚卸資産の増加により236億円、法人税等の支払により745億円の資金流出などがあったことによります。
[投資活動によるキャッシュ・フロー]
投資活動により使用した資金は、1,551億円(前連結会計年度比92.6%増)となりました。
これは、固定資産の取得で1,614億円の資金流出があったことが主な要因です。
[財務活動によるキャッシュ・フロー]
財務活動により使用した資金は、1,450億円(前連結会計年度比3.3%増)となりました。
これは、短期借入金の増加で590億円、長期借入の実行で921億円の資金流入があった一方で、長期借入金の返済で1,101億円、配当金の支払で668億円、非支配株主への配当金の支払で529億円及び自己株式の取得で500億円の資金流出があったことが主な要因です。
④生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績は、次のとおりです。
|
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
前連結会計年度比 |
||
台数 (台) |
金額 (百万円) |
台数 (%) |
金額 (%) |
|
大型・中型CV |
91,844 |
- |
△4.4 |
- |
小型CV |
196,485 |
- |
△18.0 |
- |
LCV |
411,535 |
- |
△10.2 |
- |
計 |
699,864 |
- |
△11.8 |
- |
産業用エンジン |
- |
97,565 |
- |
△1.3 |
その他 |
- |
203,609 |
- |
△7.2 |
(注)1.当連結会計年度より、従来「大型・中型車」及び「小型車」として表示していた区分の名称をそれぞれ「大型・中型CV」及び「小型CV」に名称変更しています。また、「小型車」に含んでいたピックアップトラック等を「LCV」に組み替えています。なお、「CV」及び「LCV」はそれぞれ「商用車(トラック及びバス)」並びに「ピックアップトラック及び派生車」を示しています。
2.当連結会計年度より、「海外生産用部品」を車種別に応じてそれぞれ「大型・中型CV」、「小型CV」及び「LCV」に組み替えています。
3.当連結会計年度より、「エンジン・コンポーネント」を「産業用エンジン」に名称を変更し、「エンジン・コンポーネント」に含まれていたコンポーネントを「その他」に組み替えています。
4.前連結会計年度比は、変更後の区分方法により算出しています。
5.産業用エンジン、その他の金額は、販売価格によります。
6.上記の表には、関連会社の生産実績は含まれていません。
b.受注実績
当社グループ(当社及び連結子会社)は、過去の販売実績と将来の予想に基づいて、見込み生産を行っています。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績は、次のとおりです。
|
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
前連結会計年度比 |
|
金額(百万円) |
増減率(%) |
||
|
国 内 |
389,900 |
17.4 |
|
海 外 |
416,237 |
3.6 |
大型・中型CV計 |
806,137 |
9.9 |
|
|
国 内 |
133,830 |
15.2 |
|
海 外 |
594,800 |
12.9 |
小型CV計 |
728,630 |
13.3 |
|
|
海 外 |
995,310 |
0.5 |
LCV計 |
995,310 |
0.5 |
|
|
国 内 |
523,730 |
16.8 |
|
海 外 |
2,006,347 |
4.6 |
車両計 |
2,530,077 |
6.9 |
|
|
国 内 |
64,840 |
17.1 |
|
海 外 |
49,720 |
△22.7 |
産業用エンジン |
114,561 |
△4.3 |
|
|
国 内 |
520,332 |
7.0 |
|
海 外 |
221,705 |
△0.5 |
その他 |
742,038 |
4.7 |
|
|
国 内 |
1,108,903 |
12.0 |
|
海 外 |
2,277,773 |
3.3 |
売上高合計 |
3,386,676 |
6.0 |
(注)1.当連結会計年度より、従来「大型・中型車」及び「小型車他」として表示していた区分の名称をそれぞれ「大型・中型CV」及び「小型CV」に名称変更しています。また、「小型車他」に含んでいたピックアップトラック等を「LCV」に組み替えています。なお、「CV」及び「LCV」はそれぞれ「商用車(トラック及びバス)」並びに「ピックアップトラック及び派生車」を示しています。
2.当連結会計年度より、「海外生産用部品」を車種別に応じてそれぞれ「大型・中型CV」、「小型CV」及び「LCV」に組み替えています。
3.当連結会計年度より、「エンジン・コンポーネント」を「産業用エンジン」に名称を変更し、「エンジン・コンポーネント」に含まれていたコンポーネントを「その他」に組み替えています。
4.前連結会計年度比は、変更後の区分方法により算出しています。
主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は、次のとおりです。
相手先 |
前連結会計年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
||
金額(百万円) |
割合(%) |
金額(百万円) |
割合(%) |
|
トリペッチ いすゞ セールス㈱ |
559,810 |
17.5 |
433,384 |
13.0 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2024年6月26日)現在において当社グループが判断したものです。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.概観
[CV販売]
当連結会計年度におけるCV車両の販売台数は、前連結会計年度から33,498台(10.0%)減少の307,237台となりました。
国内では、部品不足が改善し、前連結会計年度から5,084台(8.8%)増加の62,932台となりました。海外では、北米向けで部品不足の改善により増加しましたが、アジアを中心にインフレーション及び金利上昇の影響により、前連結会計年度から39,032台(13.8%)減少の244,305台となりました。
なお、当社の国内の普通トラックのシェアは、前連結会計年度比0.7%増加の40.6%となりました(UDトラックスを含む当社グループの国内の普通トラックのシェアは55.1%)。また、小型トラックのシェアは、部品不足が改善したことにより、前連結会計年度比5.4%増加の42.4%となりました。
・CV車両販売台数
|
|
前連結会計年度 (台) |
当連結会計年度 (台) |
|
増減台数 (台) |
増減率 (%) |
国内 |
大型・中型 |
30,157 |
33,931 |
|
3,774 |
12.5 |
|
小型 |
27,691 |
29,001 |
|
1,310 |
4.7 |
|
計 |
57,848 |
62,932 |
|
5,084 |
8.8 |
北米 |
大型・中型 |
4,568 |
5,289 |
|
721 |
15.8 |
|
小型 |
27,042 |
38,299 |
|
11,257 |
41.6 |
|
計 |
31,610 |
43,588 |
|
11,978 |
37.9 |
アジア |
大型・中型 |
28,441 |
25,694 |
|
△2,747 |
△ 9.7 |
|
小型 |
104,883 |
70,089 |
|
△34,794 |
△ 33.2 |
|
計 |
133,324 |
95,783 |
|
△37,541 |
△ 28.2 |
その他地域 |
大型・中型 |
30,043 |
27,579 |
|
△2,464 |
△ 8.2 |
|
小型 |
88,360 |
77,355 |
|
△11,005 |
△ 12.5 |
|
計 |
118,403 |
104,934 |
|
△13,469 |
△ 11.4 |
合計 |
大型・中型 |
93,209 |
92,493 |
|
△716 |
△ 0.8 |
|
小型 |
247,976 |
214,744 |
|
△33,232 |
△ 13.4 |
|
計 |
341,185 |
307,237 |
|
△33,948 |
△ 10.0 |
[LCV販売]
当連結会計年度におけるLCV車両の販売台数は、前連結会計年度から50,887台(12.4%)減少の359,572台となりました。
アジアでは、タイ国内向けにおいてファイナンス環境が悪化したことで、前連結会計年度から大幅に減少しました。その結果、販売台数は前連結会計年度から82,099台(34.2%)減少の157,829台となりました。その他地域は、豪州を中心に前連結会計年度の部品不足により積み上がったバックオーダーの消化等により、全体では前連結会計年度から31,212台(18.3%)増加の201,743台となりました。
・LCV車両販売台数
|
前連結会計年度 (台) |
当連結会計年度 (台) |
|
増減台数 (台) |
増減率 (%) |
アジア |
239,928 |
157,829 |
|
△82,099 |
△34.2 |
その他地域 |
170,531 |
201,743 |
|
31,212 |
18.3 |
計 |
410,459 |
359,572 |
|
△50,887 |
△12.4 |
[パワートレイン出荷]
当連結会計年度における産業用エンジンの出荷基数は、中国の厳しい市況が継続しており前連結会計年度から21,077台(15.5%)減少の115,085台となりました。
・産業用エンジン出荷基数
|
前連結会計年度 (台) |
当連結会計年度 (台) |
|
増減台数 (台) |
増減率 (%) |
計 |
136,162 |
115,085 |
|
△21,077 |
△15.5 |
b.当連結会計年度の経営成績についての分析
[売上高]
売上高につきましては、海外でインフレーション及び金利上昇による影響を受けた結果、車両販売台数は減少しましたが、円安の進行及び価格の改定により増収となったことに加え、国内で部品不足が改善し、車両販売台数が増加したこと等により前連結会計年度に比べ、1,911億円(6.0%)増加の3兆3,867億円となりました。内訳は、国内が1兆1,089億円(前連結会計年度比12.0%増)、海外が2兆2,778億円(前連結会計年度比3.3%増)です。
[営業利益]
当連結会計年度の営業利益は2,931億円(前連結会計年度比15.6%増)となりました。
当連結会計年度における資材費等の変動の影響は、前連結会計年度に対して420億円の減益となり、大幅な減益要因となりました。一方で、価格対応の影響は、前連結会計年度に対して745億円の増益、原価低減活動の影響は、205億円の増益、為替変動の影響は、円安の進行により170億円の増益となりました。
この結果、当連結会計年度における売上高営業利益率は8.7%(前連結会計年度は7.9%)となりました。
なお、前連結会計年度からの営業利益の主な増減要因は、次のとおりです。
・営業利益の増減分析(前連結会計年度比)
(億円)
価格対応 |
745 |
原価低減活動 |
205 |
為替変動 |
170 |
売上変動/構成差 |
△85 |
費用増減他 |
△219 |
資材費等の変動 |
△420 |
合計 |
396 |
[営業外損益]
営業外損益につきましては、200億円の利益となり、前連結会計年度に比べて36億円の増益となりました。
受取利息及び受取配当金から支払利息を差し引いた純額が118億円の利益となり、前連結会計年度に比べて29億円増加したことにより増益となりました。
[特別損益]
当連結会計年度における特別利益が55億円、特別損失が130億円となり、前連結会計年度に比べて74億円の減益となりました。当連結会計年度の主な項目として、特別損失で、減損損失、子会社株式売却損、子会社関連損失を計上し、特別利益で、固定資産売却益を計上しました。
[税金費用]
法人税、住民税及び事業税と法人税等調整額とを加えた金額は、前連結会計年度では732億円の損失でしたが、当連結会計年度では842億円の損失となりました。
[非支配株主に帰属する当期純利益]
非支配株主に帰属する当期純利益は、主にアセアン現地法人、北米現地法人、国内の製造会社の非支配株主等に帰属する当期純利益からなり、前連結会計年度の449億円に対し、当連結会計年度も449億円となりました。
[親会社株主に帰属する当期純利益]
当連結会計年度における親会社株主に帰属する当期純利益は1,764億円となり、前連結会計年度に比べて247億円の増益となりました。1株当たり当期純利益は229.92円となりました。
c.当連結会計年度の財政状態についての分析
[資産]
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べて2,162億円増加し、3兆2,630億円となりました。
主な要因としましては、投資有価証券が647億円、棚卸資産が583億円、有形固定資産が400億円増加したことによります。
[負債]
負債は、前連結会計年度末に比べて674億円増加し、1兆6,040億円となりました。
主な要因としましては、仕入債務が116億円減少した一方で、有利子負債が437億円、未払費用が248億円増加したことによります。
[純資産]
純資産は、前連結会計年度末に比べて1,488億円増加し、1兆6,590億円となりました。
主な要因としましては、剰余金の配当を669億円及び自己株式の取得を500億円行ったことにより減少した一方で、親会社株主に帰属する当期純利益を1,764億円計上したことにより増加したほか、その他有価証券評価差額金が401億円及び為替換算調整勘定が446億円増加したことによります。
d.経営上の目標の達成状況についての分析
「中期経営計画2024」(2022年3月期から2024年3月期まで)において、当社グループが掲げた経営上の目標とそれに対する当期の達成状況は次のとおりです。
|
当連結会計年度 (2024年3月期) |
|
中期目標 (2024年3月期) |
||
売上高 |
33,867 |
億円 |
|
27,500 |
億円 |
営業利益 |
2,931 |
億円 |
|
2,500 |
億円 |
ROE |
12.7 |
% |
|
12.5 |
% |
配当性向 |
40.0 |
% |
|
期間平均40.0 |
% |
「中期経営計画2024」の最終年度である当連結会計年度において、当社グループの事業環境は、新興国を中心とした市況の悪化、資材費・物流費・エネルギーコストの高騰による影響などを受けましたが、価格の改定や原価低減活動を実施したほか、円安が進行したことやアフターセールスが堅調だったことなどにより、当社グループの業績は、売上高及びすべての利益項目において過去最高を計上しました。
ROEについては、資本効率の向上に努めた結果、当連結会計年度においては、中期目標の12.5%を上回る12.7%となりました。
配当性向については、株主への利益還元、経営基盤の強化及び将来への事業展開に備えるための内部留保の充実等のバランスを総合的に勘案した結果、当連結会計年度においては、前連結会計年度から13円の増配となる年間92円の配当を実施し、中期目標の40.0%を達成しました。
e.資本の財源及び資金の流動性に係る情報
[キャッシュ・フローの状況]
第2「事業の状況」3「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」(1)「経営成績等の状況の概要」に記載のとおりです。
[資金需要]
当社グループにおける主な資金需要は、製品製造のための材料・部品の購入費、製造費用、製品・商品の仕入、販売費及び一般管理費、運転資金及び設備投資資金です。
設備投資の状況については、第3「設備の状況」1「設備投資等の概要」に記載のとおりです。
[資金調達の状況]
運転資金については返済期限が1年以内の短期借入金で、基本は各々の会社が運転資金として使用する現地の通貨で調達しています。設備投資資金については原則として資本金、内部留保といった自己資金でまかなうこととしています。今後、投融資の実行に伴い借入金・社債等による資金調達を検討する可能性があります。
なお、当連結会計年度末における有利子負債の年度別返済額は第5「経理の状況」1「連結財務諸表等」⑤「連結附属明細表」「社債明細表」「借入金等明細表」に記載のとおりです。
[資金の流動性]
当社は、2030年にグローバル市場における「商用モビリティソリューションカンパニー」への変革を目指す中期経営計画「IX」を策定しました。新たな中期経営計画の財務目標としては、2030年度の売上高6兆円、営業利益10%以上を掲げ、そのために自動運転ソリューション、コネクテッドサービス、カーボンニュートラルソリューションの新技術3領域を柱に据えた「イノベーション投資」に1兆円、グループ全体の既存事業の強化のための「既存事業投資」に1.6兆円の投資を実行していきます。また、財務健全性は確保しながら、株主還元として配当性向(期間平均)40%を維持、適正な自己資本水準を意識した機動的な自己株式取得を継続していきます。
それら成長投資や株主還元、借入金返済の資金としては、事業で創出される営業キャッシュ・フローを原資に充当し、M&A等に係る資金は主として借入金、社債等で対応することによって、新たな中期経営計画の達成実現に向けて取り組みます。
なお、手元資金の流動性には絶えず注視が必要ですが、当社グループは現金及び現金同等物に加え、主要銀行とコミットメントライン契約を締結しており、金融市場の急激な環境変化にも対応できる流動性を保持していると考えています。
②重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されています。当社経営陣は、連結財務諸表の作成に際し、会計方針の適用並びに資産、負債、収益及び費用に影響を与える判断、見積り及び仮定を必要としていますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、当初の見積りとは異なる場合があり、業績に悪影響を与える可能性があります。
当社は、特に以下の重要な会計方針が、当社の連結財務諸表の作成において使用される当社の重要な見積りと判断に大きな影響を及ぼすと考えています。
なお、翌連結会計年度及び翌事業年度に特に重要な影響を及ぼす可能性のある一部の項目については、第5「経理の状況」1.「連結財務諸表等」(重要な会計上の見積り)及び第5「経理の状況」2.「財務諸表等」(重要な会計上の見積り)に記載しています。
[貸倒引当金]
当社グループの保有する債権は、その大半がディストリビューター・販売会社向けの売掛金で構成されています。これら債権のうち、一般債権については貸倒実績率等により、貸倒懸念債権等特定の債権については個別に回収可能性を勘案し、回収不能見込額を計上しています。
従って、景気動向による貸倒実績率の上昇や、貸倒懸念債権等特定の債権の債務者の財務状況が悪化するなどその支払能力が低下した場合、追加引当が必要となる可能性があります。
[棚卸資産]
当社グループでは、車両・エンジン等の製品及び仕掛品に加え、原材料・部品等の棚卸資産を保有しています。これらの棚卸資産については、市況の悪化等により収益性の低下が認められる場合には、将来需要及び供給等の推定に基づきその収益性の低下の程度を見積もり、評価減を計上しています。
従って、実際の需要又は供給等が推定より悪化した場合、追加の評価減が必要となる可能性があります。
[繰延税金資産]
当社グループは繰延税金資産について、将来の実現性が高い税務計画に基づき回収可能性があると判断した金額まで計上しています。
従って、市場や経済情勢の悪化、当社グループの競争力の低下等の要因により、当社グループの業績が悪化し、繰延税金資産の全部又は一部を将来回収できないと判断した場合、当該判断を行った期間に繰延税金資産が調整され、費用が増加する可能性があります。
[退職給付に係る費用及び負債]
退職給付費用及び退職給付債務は、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出しています。これらの前提条件には、割引率、将来の報酬水準、退職率、死亡率及び年金資産の長期収益率などが含まれます。
それぞれの前提条件は、現時点で十分に合理的と考えられる方法で計算されていますが、今後、経済環境の変化による割引率の低下や市場環境の悪化による年金資産の長期期待収益率の低下等、さらには退職率・死亡率等の変化が発生した場合、退職給付費用及び負債に悪影響を与え、費用及び負債が増加する可能性があります。
[製品保証引当金]
当社グループは、製品のアフターサービスに対する費用の支出に充てるために、製品保証引当金を計上しています。製品保証引当金は、製品・地域毎の保証書の約定に従い、保証期間中の当社製品に対して、保証期間にわたって発生しうる費用を、過去の保証実績率を基に見積りを行っています。
従って、実際の発生費用が見積りの金額よりも悪化した場合等においては、見積り額の修正が必要となる可能性があります。
契約締結時期 |
相手方 |
契約の種類 |
契約の概要 |
|
国籍 |
名称 |
|||
2004年8月 |
日本 |
日野自動車株式会社 |
株主間 |
両社の共同出資により設立したジェイ・バス株式会社とその100%子会社であるいすゞバス製造株式会社並びに日野車体工業株式会社の3社が合併するにあたり、日野自動車株式会社との間において、バスの開発の一部及び生産に関する事業をジェイ・バス株式会社に統合。 |
2014年10月 |
日本 |
三菱商事株式会社 |
基本覚書 |
タイにおける両社協業の最適化を目指し、泰国いすゞエンジン製造株式会社、いすゞモーターズインターナショナルオペレーションズタイランドリミテッドその他の現地事業体の当社出資比率引き上げを含む協業枠組みの変更につき合意。 |
2020年10月 |
スウェーデン |
Aktiebolaget Volvo (AB Volvo社) |
協業基本 |
AB Volvo社との協業分野及び同社との協業における意思決定の枠組について合意。 |
同上 |
同上 |
Volvo Technology Aktiebolaget (VTEC社) |
技術協業 |
AB Volvo社が100%保有する開発管理会社であるVTEC社との間において、技術協業の意思決定の枠組、費用負担の原則及び知的財産権の取扱いについて合意。 |
2021年3月 |
日本 |
トヨタ自動車株式会社 |
資本提携に関する合意 |
トヨタ自動車株式会社との間において、相互に株式を保有する形での資本提携について合意。 |
2024年2月 |
日本 |
トヨタ自動車株式会社 スズキ株式会社 日野自動車株式会社 |
共同企画 |
トヨタ自動車株式会社、スズキ株式会社、日野自動車株式会社との間において、商用車CASE領域における協業について合意(当該契約に基づき、2023年10月に締結した、トヨタ自動車株式会社、スズキ株式会社、日野自動車株式会社、ダイハツ工業株式会社との共同企画契約を終了)。 |
当社グループでは、世界中のお客様に満足していただける商品とサービスを提供していくため、トラック・バスやピックアップトラック、ディーゼルエンジン等における最新技術の研究開発を行うとともに、その技術を用いることで多くの国・地域のお客様のニーズに対応した最適な商品の開発に取り組んでいます。
当社グループを取り巻く事業環境が絶え間なく変化する中で、商用車業界における重要な環境変化は「電動化/脱CO2化の潮流加速」及び「止まらない物流インフラへの期待増」と考えています。これらの変化へ対応し、脱炭素社会や新たな物流社会の実現に貢献していく事は、社会的使命であり責務であると認識しています。
当社グループでは「中期経営計画2024」(2022年3月期から2024年3月期まで)の中でイノベーションの基軸として据えた「カーボンニュートラル戦略」と「進化する物流へ商用車メーカーとして貢献」の取組みの基、研究開発活動を進めてきました。また、2023年5月には新経営理念体系「ISUZU ID」を策定しました。「ISUZU ID」の使命である「地球の『運ぶ』を創造する」ために、2030年までにCNや物流DXなどの対応に総額1兆円規模の研究開発・設備投資・事業投資を行います。
当連結会計年度の研究開発活動の成果として、小型トラック「エルフ」については、かねてよりドライバー不足の問題に着目し、2017年に改定された普通自動車免許に対応するために、車両総重量3.5t未満の「エルフミオEV」を新たに追加しました。ドライバーの労働環境改善のため、国内小型トラック初となる、キャブ後方の室内空間を拡大したスペースキャブを「エルフ」のラインアップに新たに追加し、居住性と利便性、快適性を向上しました。
中型トラック「フォワード」については、16年ぶりにフルモデルチェンジして販売を開始しました。強みである豊富なラインアップはそのままに、先進安全装備の選択肢をさらに広げ、ドライバーに安全と快適を提供します。今回の改良では、近距離ミリ波レーダーとドライバーステータスモニターを追加することで、アクティブにドライバーをサポートし、事故抑制に貢献します。また、キャビン内のデザインは、広がりを感じる特徴的なスタイルに一新し、居住性を向上しました。さらに、大型トラック「ギガ」に採用している高機能シートを、クラスを超えて採用し、長時間でも快適な運転を可能にしました。
大型トラック「ギガ」については、輸送の効率化に対応するため、国内大型トラック初となる車両総重量25トン低床3軸車を新たに設定しました。さらには、ダブル連結トラックにも採用可能な、フルエアサスペンション仕様のフルトラクタ、JR貨物新規格コンテナ輸送に対応したフルトラクタを新規設定し、フルトラクタの展開を拡大しました。また、安全への対応として、ブラインドスポットモニター(BSM)の検知範囲拡大による性能向上やレーンキープアシスト(LKA)のオプション展開を拡大しました。
バスについては、大型路線バス「エルガハイブリッド」と大型観光バス「ガーラ」を一部改良して発売しました。「エルガハイブリッド」は、新たに自動検知式ドライバー異常時対応システム(EDSS)、オートライト、バックカメラ・モニターを標準搭載し、安全運転をサポートします。さらに、車内の換気能力を向上させ、ウイルス感染拡大防止に取り組みました。そのほか、本モデルにおいて2025年度燃費基準値を達成しています。「ガーラ」においては、レーンキープアシスト(LKA)の新規設定、ドライバー異常時対応システム(EDSS)の車線内停止機能追加のほか、衝突被害軽減ブレーキ(AEBS)の作動条件を拡大し、先進安全装置の充実化を図りました。また、BEVフルフラット路線バス「ERGA EV」を「JAPAN MOBILITY SHOW 2023」で世界初公開しました。BEV化によるレイアウトの自由度を生かし、フロアのフルフラット化を実現することで、車室内後部の段差をなくし、車内移動のバリアフリー化を達成しました。スムーズな加減速、低振動かつ低騒音で安全性と快適性を大幅に向上し、環境面への貢献だけでなく、未来の公共交通を体現する車両として、2024年度中の発売を目指しています。
LCVについては、「D-MAX」を大幅改良してタイで販売を開始しました。今回の改良では、好評の内外装デザインに磨きをかけ、お客さまから求められる幅広いニーズに対応することで、市場により適したピックアップトラックを目指しました。安全面においては、新世代ステレオカメラを新たに採用することで、交差点進入時の歩行者検知・自動ブレーキに対応しました。また、タイのバンコクで開幕する「BANGKOK INTERNATIONAL MOTOR SHOW 45th」(バンコク国際モーターショー)で、参考出品として、いすゞ初の1トン積みピックアップトラック「D-MAX」のBEVを一般向けに世界初公開しました。ピックアップトラックのタフな基本性能はそのままに、商用・乗用の幅広いニーズに対応するため、新開発のeアクスルをフロントとリアに搭載したフルタイム4WDシステムにより、高い悪路走破性及びBEV特有のリニアな加速感と、低騒音・低振動を両立させました。
このほか、自動運転技術開発については、株式会社ティアフォーと路線バス領域における自動運転システムの開発を目的とした資本業務提携を行うことで合意しました。両者はこの提携を基に、強固なパートナーシップを構築し、自動運転レベル4による移動サービスの社会実現を目指して、路線バス向けの自動運転システムの開発・確立を加速させます。また、CNの技術開発については、バッテリー交換式ソリューション「EVision Cycle Concept」を「JAPAN MOBILITY SHOW 2023」で世界初公開しました。充電による非稼働時間が課題であるBEVにおいて、充電済みのバッテリーと素早く交換できるため、待機時間の大幅な短縮と効率的な稼働を実現します。さらに、車両とバッテリーを分離運用することで、トラック間でのバッテリーシェアによる資源や再生可能エネルギーの有効活用などを行い、様々な社会課題の解決が期待できます。燃料電池大型トラックについては、2027年をめどに市場導入予定の燃料電池大型トラックに搭載する燃料電池システムの開発及び供給パートナーとして本田技研工業株式会社と2023年5月に合意書を締結し、同年12月に両社の共同研究による「GIGA FUEL CELL」の公道での実証走行を開始しました。本実証実験を通じて、市場導入へ向けたデータの取得、知見の蓄積、技術的課題の抽出などを進めます。
最後に、2030年のCN対応車フルラインアップに向けた車両開発を加速させるため、藤沢工場内に電動開発実験棟を新設します。商用電動車に最適なシステムやコンポーネントを開発するための実験・評価設備を導入する計画で、2026年の稼働開始を目指します。
なお、当連結会計年度における研究開発費の総額は