当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは、以下のグループ理念を全ての事業活動の起点とし、広く社会、経済の発展に貢献すると共に、当社グループの持続的な成長発展により企業価値の向上を図り、全てのステークホルダーの期待に応えてまいります。
<社是>
信・望・愛
創業の精神 ~人が人らしく生きるために~
<パーパス>
人々の本質的な豊かさを支える
私たちは、社是である「信・望・愛」を土台として、人々の生活をより良いものにするために、製品・サービスに込めた想いや、お客様に寄り添う心を大切にした「ものづくり」を磨いてきました。
天馬グループはこれからも、創業時から受け継がれてきた、人々の暮らしをより豊かに、より幸せにすることへの思いを胸に、すべての製品・サービス・事業活動において、人々の本質的な豊かさとは何かを常に考え、行動することで、「人々の本質的な豊かさを支える」企業であり続けます。
<大切にする価値観>
・誠実に行動する
私たちは、常に感謝の気持ちを忘れず、すべての仕事に誠実に取り組み、人々の暮らしの中で長く愛される製品と、お客様の期待を超えた感動されるサービスを提供します。
・人を大切にする
私たちは、思いやりの心を持ち、お互いを尊重する企業風土の醸成に努めるとともに、楽しく働ける職場環境を築き、活発な意見交換とチームワークによって高い成果をあげる強い組織を目指します。
・挑戦を誇りにする
私たちは、環境の変化に適応し、常に挑戦することで未来を切り拓き、失敗しても挑戦したことに誇りを持ち、その失敗から学びを得て成長し続けます。
・「なぜ」「どうして」の好奇心を大切にする
私たちは、好奇心を持って物事を深く考え、多角的な視点から課題解決に挑み、新たな価値を創造し続けます。
・限りある資源を大切にする
私たちは、限りある資源を大切にして環境保全に努めることで、地球環境と子ども達の未来に貢献します。
(2) 目標とする経営指標
持続的な成長により企業価値を高める観点から、「ROE」及び「ROIC」を重要な指標と位置付け、事業の継続的な拡大を目指してまいります。
(3) 経営環境
当社グループを取り巻く事業環境は、海外においては、中東及びウクライナ情勢は予断を許さない状況が続いており、また中国の不動産不況は打開の道筋が見えず、全体での成長率も低水準での推移が見込まれる等、依然として不透明な状況が続く見通しであります。 国内においては、人手不足が成長の足かせとなる可能があるものの、設備投資の拡大や実質賃金の増加も見込まれ、経済全体の活性化が期待できます。
当社の主業である樹脂成形事業は、業界全体としては売上・利益ともにコロナ前の水準を回復しており、射出成型に対する需要は底堅いと認識しております。
製品分野別では、工業品合成樹脂製品分野においては車両分野や空調等の家電分野における需要が見込まれる一方、OA分野は市場全体として縮小に向かうと想定されます。ハウスウエア合成樹脂製品分野及び関連商品においては国内需要に大きな伸びが見込めず、海外市場の開拓が必要であります。
地域別では、中国から東南アジアへの生産移管の流れが特にOA分野において加速する見込みであります。
(4) 中長期的な会社の経営戦略及び優先的に対処すべき課題
このような経営環境のもと、当社グループは2027年3月期(第79期)を最終年度とする3ヶ年の「第4次中期経営計画」(2024年5月24日公表)を策定いたしました。
事業分野ごとに定めた基本戦略及び主要施策等を着実に実行し、足元の低収益性から脱却するとともに、中長期的な視座に基づき非財務資本を蓄積することにより、主業である樹脂成形事業のサステナビリティを確かなものとし、企業価値向上を目指してまいります。
●第4次中期経営計画の概要
<目指す姿>
当社グループは「百年企業」を目指して、「人とプラスチックの調和した豊かな社会の実現」を目指します。
<基本方針>
第4次中期経営計画期間は、「目指す姿」達成に向けた2nd Stepと位置付け、「サステナブル経営推進による企業価値向上」を基本方針として取り組みます。
<主要施策>
① マテリアリティ(重要課題)に対する各種施策の推進
「GHG排出量30%削減」「使用済み樹脂の再資源化によるサーキュラーエコノミーの実現」「日本国内女性管理職比率の向上と海外子会社の人材育成」「安全・安心な職場環境」「コーポレートガバナンス体制の維持・強化」「自動化とDX推進による生産体制の変革」に取り組んでまいります。
② 事業ポートフォリオの変革
「研究開発とM&Aを梃子にした車両分野の成長」「タイ拠点の能力増強による家電事業の強化」「受託製品事業における新規事業領域開拓」に取り組んでまいります。
③ 不採算事業領域(ハウスウエア(HW)分野)の再建
「主力ブランドFitsのリブランディング」「EC戦略の強化」「海外HW事業の強化」「固定費圧縮と組織再編」に取り組んでまいります。
<数値目標>
2027年3月期(第79期)
連結売上高 107,000百万円
連結営業利益 4,700百万円
ROE 5.0%
ROIC 5.1%
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、実際の結果とは様々な要因により大きく異なる可能性があります。
(サステナビリティ基本方針)
天馬グループは、「人々の本質的な豊かさを支える」をパーパスとして掲げています。この理念を原点に、環境・社会・経済の持続可能性に配慮したサステナブル経営を推進します。
私たちは、地球環境や社会との調和を大切にし、事業を通じてグループ全体で社会課題の解決に取り組み、持続的な企業価値の向上と持続可能な社会の実現に貢献していきます。
(1)ガバナンス
当社グループは、サステナビリティを巡る課題が重要な経営課題であると認識しており、この課題解決に取り組むため、代表取締役社長直下の組織としてサステナビリティ推進委員会を設置しています。
サステナビリティ推進委員会は、サステナビリティに関する基本方針やマテリアリティ(重要課題)の特定、特定したマテリアリティに対する取り組み方針の策定や進捗管理、サステナビリティ関連の情報開示に関する事項等の審議を行い、取締役会への上申を行うとともに、適宜、取締役会に本委員会の活動・進捗状況を報告する体制としています。また、マテリアリティに対する具体的な取り組み等について討議し、サステナビリティ活動を推進するため、必要に応じて委員会直下にワーキンググループを設置し、グループを挙げて取り組む体制としています。サステナビリティ推進委員会の事務局はサステナビリティ推進室が担い、マテイアリティへの取り組みの推進及び進捗管理、温室効果ガス排出量の算定、気候変動シナリオ分析を主導しております。
取締役会は、サステナビリティ推進委員会から、適宜、報告及び提案を受けて議論、決議をするとともに、サステナビリティ課題に関する取り組み全般を監督しています。
(2)戦略
当社グループは、ステークホルダー及び当社グループ双方の観点から、優先して取り組むべき重要な課題を天馬のマテリアリティとして特定しました。
8つのマテリアリティと21の構成要素は中期経営計画とも密接に関連しており、これらに取り組むことで当社グループの目指す姿の実現と、社会課題の解決に貢献してまいります。
(天馬グループのマテリアリティ)
①気候変動への対応
当社グループは、2023年5月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同を表明し、TCFDの提言に基づいた、「ガバナンス」、「戦略」、「リスク管理」及び「指標と目標」の4項目に関する情報開示に取り組んでいます。当社グループは、「気候変動の緩和と適応」をマテリアリティ(重要課題)の一つとして掲げ、気候変動対応の強化に努め、持続可能な社会の実現と当社グループの持続的な企業価値向上の両立に向けて、グループ全体で戦略的にサステナビリティ活動を推進していきます。
※TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)
当社グループにおける事業戦略のレジリエンスを評価するため、気候関連リスク及び機会について、「リスク・機会の識別」、「シナリオの作成」、「財務影響の測定」、「対応策の検討」の4つのプロセスによりシナリオ分析を実施しました。
シナリオ分析では、IEAなどの科学的知見に基づくレポートやパリ協定をはじめとする国際動向を踏まえ、低炭素社会へ移行する1.5℃シナリオ及び温暖化が進行する4℃シナリオを選択し、2030年時点での財務影響を測定しました。
その結果、1.5℃シナリオにおける事業への影響では、カーボンニュートラル実現を目指した取り組みが進み、炭素税や排出量取引、プラスチック規制など、脱炭素に向けた政策が強化されることにより、原材料等の調達コストや電力等の操業コストが増加することが想定される一方、環境に配慮した低炭素製品等の販売機会が増加することが想定されます。
4℃シナリオにおける事業への影響では、気温上昇に対応するための空調設備等への投資や熱中症対策に係る費用の増加が想定されます。また、気象災害の激甚化による当社グループの事業拠点の被災やサプライチェーンの寸断により操業が停止することが懸念されます。
シナリオ分析の結果は、当社グループの長期ビジョンや中期経営計画へ反映し、対応策の実行及び進捗状況のモニタリングを行うことにより、レジリエンスな戦略の構築を進めてまいります。
詳細につきましては、当社WEBサイトに掲載しております「TCFD提言に基づく情報開示」をご参照ください。
https://www.tenmacorp.co.jp/sustainability/tcfd/
②人的資本、ダイバーシティ&インクルージョン
当社グループは、「人とプラスチックの調和した豊かな社会の実現」を長期ビジョンとして掲げ、事業の発展と進化を続け、全てのステークホルダーと共に成長の果実を享受することを目指すと共に、従業員の成長と幸福を考え、ワクワクする働きがいのある会社へとなるよう環境づくりを進めています。
当社では競争力の源泉である「人財」の活躍を推進するため、多様な人財の登用に向けた取り組みを行っています。
(ⅰ)ダイバーシティ&インクルージョン
当社グループに関わるすべての人々の人権を尊重し、性別・年齢・国籍に関わらず全従業員が能力を発揮できる職場づくりに取り組んでおります。また、当社では女性活躍推進法に基づく行動計画を策定し、職場と家庭の両方において男女がともに貢献できる職場風土づくりや有休休暇を取得しやすい職場環境への取り組みを推進しております。
(ア)実施策
(キャリア形成支援)
・多様なコースやキャリア選択が可能な人事制度の導入
・ライフステージ・ライフイベントの変化に対して相談、支援できる環境を整備
・育児休業からスムーズに復職するためのサポート体制の充実
(働き方改革の継続実施)
・テレワーク勤務等、ライフステージに応じた柔軟な働き方に関する制度の整備と拡充
・アニバーサリー休暇制度等の特別休暇の拡充によるワークライフバランスの実現に向けた環境整備
(働きやすい職場環境)
・自動化推進による作業負荷軽減など、多様な人財が働きやすい職場環境を整備
・女性の活躍機会拡大を検討するワーキンググループを活用した意識改革の推進
・健康経営推進により社員が健康で快適に働ける環境を整備
(イ)実績
〇採用した女性労働者の比率(正社員)
2023年度の女性採用比率(正社員)は34.8%となっています。
〇2024年3月末時点での女性の平均勤続年数は対男性52%となっています。
〇有給休暇取得率
2023年9月(有給休暇付与基準日)までの1年間の有給休暇取得率は64.8%と前年の63.5%と比較して増加傾向となっています。
(ⅱ)人材育成
(ア)人材育成の考え方
当社グループは、「多様な人財の活躍」をマテリアリティ(重要課題)の一つとして掲げております。新たな価値を創出し持続的に企業価値を向上させていくためには、多様な人財が個々の能力を最大限に発揮し、すべての従業員が意欲と誇りを持っていきいきと働くことができる職場環境を整えるとともに、公平・公正な人事評価と人材育成を行うことが必要不可欠と考えています。組織風土の醸成や働きがいのある職場づくり、従業員の成長を支援する取り組みを推進し、企業が健全で持続的な経営を行うための基盤となる人材育成に取り組んでいます。
(イ)社内環境整備
当社グループでは、従業員一人ひとりが最大限の能力を発揮し、心身共に健康で安全に安心して働ける職場環境を構築し、ワクワクする働きがいのある会社へとなるよう職場の環境づくりに取り組んでいます。
(実施策及び取り組み)
■新人事制度の導入
・男女や国籍等に関わりなく活躍できる公正公平な人事評価が行われるように新人事制度を2023年4月から導入しています。
・グローバルで活躍出来る人材育成を行うと共に、ライフステージに応じた柔軟な働き方の選択を可能としています。
■教育
・従業員の成長を促進する階層別の研修や教育機会を提供しています。
・従業員が受講する通信教育に関わる費用を補助し、社員自身の学びをサポートしています。
■働き方の多様性
・従業員がワクワクして働くことが出来る職場を目指し、テレワーク勤務の実施や特別休暇制度の拡充など社員のワークライフバランスを推進するための取り組みを行っています。
(3)リスク管理
当社グループは、リスク管理統括責任者を長とし、総務部内部統制室を事務局とするリスク管理委員会が、年間のリスク管理計画を立てて、グループ横断的なリスク管理体制の整備、運営を行い、リスクの網羅性の確保を図るとともに、重要リスクを抽出しリスク軽減措置をとることにより、グループ全体のリスクコントロールを図っています。
サステナビリティに関わるリスクと機会については、サステナビリティ推進委員会において分析し、取り組み方針の策定、進捗管理を行うとともに、識別されたリスクは、必要に応じてリスク管理委員会に報告や提言を行うことにより、全社的なリスク管理へ統合しています。
(4)指標と目標
①気候変動への対応
当社グループは、「気候変動の緩和と適応」をマテリアリティの一つとして特定しており、気候関連リスク及び機会を測定・管理するために、Scope1及びScope2の排出量を指標として定めています。
2050年カーボンニュートラル達成を目指すため、当社グループの中期目標を「2030年度までにGHG排出量(Scope1+2)を2019年度比で30%削減」及び「2030年度までにGHG排出原単位((Scope1+2)/売上高)を2019年度比で43%削減」に設定しました。
当社グループは中期目標の達成に向けて、省エネ設備の導入、再生可能エネルギーの活用、高効率な生産体制を構築することによるエネルギー効率の向上等に取り組んでまいります。
(GHG排出量削減の中期目標)
指標 |
基準年 |
目標年 |
目標 |
2023年度 実績 |
GHG排出量(Scope1+2)削減率 |
2019年度 |
2030年度 |
△30% |
△21% |
GHG排出原単位※ 削減率 |
△43% |
△27% |
※GHG排出原単位:GHG排出量(Scope1+2)/売上高
(Scope1・Scope2の排出量実績) (t-CO2)
指標 |
2022年度 |
2023年度 |
Scope1 |
|
|
Scope2 |
|
|
Scope1+2 |
|
|
GHG排出原単位 |
1.00 |
0.93 |
※算定対象:提出会社及び連結子会社
※算定期間:連結会計年度と同期間
②人的資本、ダイバーシティ&インクルージョン
多様な人財の活躍を推進するための主な指標と目標は以下のとおりであります。
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2020年度実績 |
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※ |
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※有休休暇取得率のみ2020年9月を基準としています。
※当社グループでは、人的資本を含むマテリアリティに対してグループ全体で取り組みを推進しておりますが、具体的な実績及び目標に関しては連結ベースの数値ではなく、当社の数値を記載しております。
経営成績及び財政状態に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性がある事項として、主に以下の事項があります。
本項に記載した将来や想定に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。将来や想定に関する事項は、不確実性を内在しており、あるいはリスクを含んでいるため、実際の結果と大きく異なる可能性があります。当社グループは、これらの事業を取り巻く様々なリスクや不確定要因等に対して、その予防、分散又はリスクヘッジ等を実施することにより、企業活動への影響について最大限の軽減を図っております。
(1) 国内外の経済情勢・需要変動、競合
国内外の顧客や市場の動向、経済情勢の変動により、当社グループの製品マーケットの縮小や市況の下落が生じた場合は、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。また、競合他社による生産能力増強や低価格販売などの事業展開により、当社グループの製品マーケットのシェア低下や需給バランスが崩れることによる製品価格の下落が生じた場合は、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 市場環境変動リスク
当社グループは、日本国内、中国、東南アジア及び北米で製品、部品、金型等を販売し、主要取行先である小売、電機・電子、自動車等の各業界は、日本、アジア、欧州、米州等の様々な国・地域に最終製品を販売しております。そのため、これらの国・地域の経済状況の変化や主要取引先若しくは各業界の需要動向は、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
(3) 在庫評価リスク
当社グループは、棚卸資産の評価方法及び評価基準について、主として移動平均法による原価法を採用しております。そのため、ナフサ等の原料価格が在庫単価に比べて下落する局面においては、期初の相対的に高価な在庫の影響により売上原価が押上げられるなど、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。また、収益性の低下に基づく簿価切り下げを行った場合は、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
(4) 取引先信用リスク
当社グループは、国内外の様々な顧客及びサプライヤーと取引を行っており、売掛金や前渡金などの信用供与を行っております。取引先の財政状態の悪化や経営破綻等が生じた場合は、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
(5) 他社との業務提携、戦略的投資
当社グループは、お客様のニーズの変化に対応して、様々な製品等を提供するため、必要に応じて他社との業務提携、合弁事業や戦略的投資を行っております。これらの施策は、双方の経営資源を有効に活用し、タイムリーに新製品・新サービス等を開発・販売する上で有効な手段と考えております。しかし、事業、技術、製品及び人材等の統合について期待する成果や効果が得られない等の状況に陥る可能性があります。
(6) 原材料価格変動リスク
当社グループの事業は、原油価格の動向に大きく左右されます。原油価格の高騰に伴い、原材料価格が上昇し、一方で製品売価への転嫁に遅れが生じた場合は、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
(7) 株価変動リスク
当社グループは、上場株式を保有しておりますので、株価変動の影響を受けます。今後著しい株価下落が生じた場合は、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
(8) 為替レート変動リスク
当社グループは、中国(含む香港)、ベトナム、タイ、インドネシア、メキシコ及びアメリカに子会社を展開しております。これらの子会社の売上、費用、資産及び負債等の現地通貨建て項目は、連結財務諸表を作成する際、円換算しております。これらの項目は換算時の為替レートにより、現地通貨の価値に変動が生じなかったとしても、円換算後の価値に変動が生じた場合は、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
(9) 海外事業リスク
当社グループは、中国(含む香港)、ベトナム、タイ、インドネシア、メキシコ及びアメリカに子会社を展開しております。これらの国において、今後、予期しない法規制の変更、政治又は社会経済状況の変化等により、原材料の購入、生産又は製品の販売等に遅延や停止が生じた場合は、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
(10) 固定資産の減損会計
当社グループは、「固定資産の減損に係る会計基準」及び「固定資産の減損に係る会計基準の適用指針」を適用し、会計処理を行っております。今後、原油価格の市場動向や固定資産の市場動向等により、保有資産から得られる将来キャッシュ・フロー見込額が減少した場合は、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
(11) 繰延税金資産に関するリスク
当社グループは、税効果会計における繰延税金資産の回収可能性について、将来の課税所得に関する予測等に基づき判断しております。しかし、収益力の低下等により課税所得が十分に確保されないとの判断により、繰延税金資産を取り崩すこととなった場合は、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
(12) 人材の確保
当社グループの競争力を維持するためには、事業遂行に必要な優秀な人材を採用し、確保し続ける必要があります。しかし、優秀な人材は限られており、かかる人材の採用及び確保の競争は激化しており、当社グループがこのような優秀な人材を新たに採用又は雇用し続けることができない場合は、事業の成長・継続が困難になる等の支障をきたし、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
(13) 訴訟・その他の法的手続き
当社グループは、国内及び海外で事業展開する上で、訴訟その他の法的手続きの対象になる可能性があります。当社グループにおいては、既に発生している又は発生のおそれがある重大な訴訟案件等について、適宜モニタリングを実施するとともに、必要に応じて対策を講じております。しかし、当社グループがその当事者となり、多額の損害賠償金等が発生した場合は、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
(14) 知的財産
当社グループの事業は、製品のデザインに係る知的財産権を保有しているとしても、競争上優位に立てるという保証はありません。様々な当事者が当社グループの特許権、意匠権、商標権及びその他の知的財産権について異議を申し立て、無効とし、又はその使用を退ける可能性があります。また、当社グループが事業を行っている国において、意匠権等企業秘密に対する有効な保護手段が整備されていない又は不十分である可能性があり、当社グループの企業秘密が従業員又は契約先等により開示又は不正流用された場合は、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
(15) 情報セキュリティリスク
当社グループは、セキュリティ対策やシステムの安定性を確保するため、適宜継続的な改善を通じて、情報管理体制の強化を図っております。
当社グループは、コンピュータシステム及び通信ネットワークに依存しております。そのため、予期せぬシステム障害の発生やサイバー攻撃によるシステムダウンが発生した場合は、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
(16) 自然災害リスク
当社グループは、日本国内においては東北から九州まで全国に工場、支店及び営業所を展開しております。また、海外においては中国(含む香港)、ベトナム、タイ、インドネシア、メキシコ及びアメリカに子会社を展開しております。これらの地域で大地震や風水害等の大規模な自然災害が発生した場合は、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)における世界経済は、長引く高インフレを背景とする欧州の需要低迷に加え、中東の地政学的リスクが高まり、また中国経済も回復に力強さを欠き、依然として不透明な状況が続いております。
日本経済におきましては、コスト増加分の価格転嫁や円安等に伴い企業業績に改善が見られるうえ、賃金上昇の継続や物価上昇率の鈍化等に伴う個人消費の回復やインバウンド需要の拡大も期待でき、緩やかな回復が見込まれます。
このような状況の中、当社グループは、2021年5月に公表した「第3次中期経営計画」に基づき、中長期的な成長戦略の実現に向けた基盤構築を進めつつ、生産体制の最適化・効率化に努めてまいりました。
この結果、売上高は92,931百万円(前期比8.9%減)となり、第3次中期経営計画の最終年度目標である87,000百万円を上回りました。
利益面につきましては、日本におけるハウスウエア合成樹脂製品分野及び関連商品の販売価格改定の効果や原材料の仕入れ方法見直しによる採算性の改善等がありましたが、工業品合成樹脂製品分野において、在庫過多を背景とする取引先の生産調整が多く見られ、つれて当社工場の稼働率が低下する等、生産効率が悪化いたしました。結果、営業利益は第3次中期経営計画の最終年度目標である4,200百万円を大きく下回り、1,362百万円(前期比54.7%減)となりました。経常利益は純投資目的の有価証券売却益等もあり、3,985百万円(前期比4.8%増)となり、親会社株主に帰属する当期純利益は3,091百万円(前期比10.4%増)となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
なお、当連結会計年度より、報告セグメントの区分を変更しており、前連結会計年度との比較・分析は変更後の区分に基づいて記載しております。
(日本)
ハウスウエア合成樹脂製品分野及び関連商品においては、製品の販売個数が減少したものの、価格改定効果や新製品の拡販、また輸入商材の取り扱い増加等により、売上は微減に留まりました。また工業品合成樹脂製品分野においては、第3四半期連結累計期間までは前年同期を上回っていたものの、当第4四半期において車両関連売上が落ち込んだこともあり、全体の売上はほぼ横ばいとなりました。
利益面につきましては、ハウスウエア合成樹脂製品分野及び関連商品における価格改定や新製品の販売効果があり、また原材料の仕入れ方法見直しや物流効率改善等が奏功し、大きく改善しました。
この結果、当セグメントの売上高は19,965百万円(前期比1.1%減)となり、セグメント利益(営業利益)は545百万円(前期はセグメント損失96百万円)となりました。
(中国)
工業品合成樹脂製品分野においては、什器や住設等への事業領域拡大に取り組むも、既存取引先における東南アジアへの生産シフトや生産調整の影響もあり、売上は大きく減少しました。ハウスウエア合成樹脂製品分野及び関連商品においては不動産市況や個人消費が低迷しており、売上はリアル店舗・EC販売ともに減少しました。
利益面につきましては、人員の最適化や業務効率化等による収益性改善に取り組んでいるものの、売上の減少が大きく、前年を下回りました。
この結果、当セグメントの売上高は20,985百万円(前期比19.8%減)、セグメント利益(営業利益)は673百万円(前期比55.5%減)となりました。
(東南アジア)
工業品合成樹脂製品分野においては、取引先における生産調整が拡大し、全体の売上は大きく減少しました。ハウスウエア合成樹脂製品分野及び関連商品については、インドネシアでの生産・販売を本格化させ、またタイでのEC販売に着手する等、アセアン地域での将来的な業容拡大に向けた地盤固めに取り組んでおります。
利益面につきましては、売上の減少に加え、一部拠点での新機種立上げに伴う生産効率悪化等もあり、前年を下回りました。
この結果、当セグメントの売上高は50,879百万円(前期比8.6%減)となり、セグメント利益(営業利益)は1,498百万円(前期比47.5%減)となりました。
(北米)
2023年5月にメキシコにて車両部品等の製造を行うTENMA PLASTIC MEXICO, S. A. DE C. V.及びその親会社でアメリカ合衆国にて車両部品等の販売を行うTenma America Corporationの株式を取得し、当第3四半期連結会計期間より連結損益計算書への計上を開始しました。北米では主に車両の安全部品を製造販売しており、当セグメントの売上高は1,102百万円となりました。
利益面につきましては、米ドルに対するペソ高が続いており、またメキシコにおける賃金上昇等により、米ドル換算の支払コストが増加したことから、セグメント損失(営業損失)は89百万円となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べて4,196百万円増加し、26,600百万円となりました。
各活動別のキャッシュ・フローの状況とその要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
仕入債務の減少4,093百万円、投資有価証券売却益1,728百万円、法人税等の支払1,105百万円等がありましたが、減価償却費4,768百万円、売上債権の減少4,154百万円、税金等調整前当期純利益3,881百万円、棚卸資産の減少1,161百万円等があり、5,898百万円の増加(前期比は1,616百万円の減少)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
定期預金の預入6,963百万円、有形固定資産の取得4,831百万円等がありましたが、定期預金の払戻12,248百万円、投資有価証券の売却2,912百万円等があり、1,263百万円の増加(前期比は43百万円の減少)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
配当金の支払1,776百万円、自己株式の増加1,472百万円等があり、4,054百万円の減少(前期比は820百万円の減少)となりました。
③生産、受注及び販売の実績
a. 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
生産高(千円) |
前期比(%) |
日本 |
17,784,630 |
96.4 |
中国 |
19,738,312 |
78.6 |
東南アジア |
49,308,093 |
90.5 |
北米 |
994,857 |
- |
合計 |
87,825,892 |
89.6 |
(注)1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 金額は、販売価格により算出しております。
3 金額は、千円未満の端数を四捨五入して表示しております。
b. 受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
受注高 (千円) |
前期比 (%) |
受注残高 (千円) |
前期比 (%) |
日本 |
5,143,432 |
101.9 |
1,154,045 |
109.4 |
中国 |
18,195,416 |
75.8 |
1,262,605 |
51.9 |
東南アジア |
43,902,859 |
78.5 |
6,169,884 |
138.0 |
北米 |
1,134,779 |
- |
93,379 |
- |
合計 |
68,376,485 |
80.4 |
8,679,913 |
109.1 |
(注)1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 主にハウスウエア合成樹脂製品分野については見込み生産を行っているため、受注実績には含まれておりません。
3 金額は、千円未満の端数を四捨五入して表示しております。
c. 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
販売高(千円) |
前期比(%) |
日本 |
19,964,639 |
98.9 |
中国 |
20,984,766 |
80.2 |
東南アジア |
50,879,279 |
91.4 |
北米 |
1,102,269 |
- |
合計 |
92,930,953 |
91.1 |
(注)1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 金額は、千円未満の端数を四捨五入して表示しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって必要と思われる見積りは、過去の実績値や状況に応じ合理的と判断される前提に基づき実施しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
(a) 繰延税金資産の回収可能性
当社グループは、繰延税金資産について、将来の利益計画に基づいた課税所得が十分に確保でき、回収可能性があると判断した将来減算一時差異について繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、繰延税金資産が減額され税金費用が計上される可能性があります。
(b) 減損会計における将来キャッシュ・フロー
当社グループは、固定資産のうち減損の兆候がある資産又は資産グループについて、当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定に当たっては慎重に検討しておりますが、割引前将来キャッシュ・フローの算定は長期的な見積りに基づくため、将来の当該資産及び資産グループを取り巻く経営環境の変化による収益性の変動や市況の変動により、その見積り額の前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、減損損失の計上が必要となる可能性があります。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
(売上高)
工業品合成樹脂製品分野について、多くの取引先で生産が回復した前期の反動減に加え、取引先での在庫過多を背景とする生産調整が多く見られ、当社工場の稼働が落ち込み、売上が減少しました。またハウスウエア合成樹脂製品分野及び関連商品についても、国内においては消費財における消費回復の動きは鈍く、中国においては不動産不況や個人消費が低迷しており、売上が減少しました。この結果、売上高は92,931百万円(前期比8.9%減)となりました。
(営業利益)
ハウスウエア合成樹脂製品分野及び関連商品について、国内での価格改定効果や原材料の仕入れ方法見直し、物流効率改善等に取り組み、採算性は改善しましたが、工業品合成樹脂製品分野の減収幅が大きく、全体では大幅な減益となりました。この結果、営業利益は1,362百万円(前期比54.7%減)となりました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
営業外損益において、投資有価証券売却益があったこと、また海外での受取利息が増加したこと等により、経常利益は3,985百万円(前期比4.8%増)となりました。
特別損益において、負ののれん発生益や従業員住宅積立金拠出額等を計上した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は3,091百万円(前期比10.4%増)となりました。
(財政状態)
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べて880百万円減少し、101,921百万円となりました。これは、有形固定資産の建設仮勘定が1,024百万円、無形固定資産のその他のうち建設仮勘定が582百万円、退職給付に係る資産が849百万円増加したものの、受取手形及び売掛金が2,434百万円、投資有価証券のうちその他有価証券が1,383百万円減少したことこと等によります。
負債合計は、前連結会計年度末に比べて3,633百万円減少し、20,858百万円となりました。これは支払手形及び買掛金が2,890百万円減少したこと等によります。
純資産合計は、前連結会計年度末に比べて2,753百万円増加し、81,063百万円となりました。これは、資本剰余金が1,872百万円減少したものの、為替換算調整勘定が3,190百万円、利益剰余金が1,315百万円増加したこと等によります。
(資本の財源及び資金の流動性)
当社グループは、国内及び海外拠点網の有機的な連携強化により、国内外での様々なニーズに迅速かつ的確にお応えし、グローバルベースで業容拡大を目指しております。特に、成長が期待される東南アジアでの事業拡大を図るため、各国にて積極的に設備投資を行っております。これらの投資資金につきましては、主にグループ各社の自己資金で賄うこととしております。
該当事項はありません。
研究開発につきましては、お客様最優先、品質第一主義の立場に立って、お客様に信頼され愛され、お客様と喜びを分かち合える製品を開発すべく、日々努力を重ねております。
当連結会計年度における当社グループ全体の研究開発費は
特に、新たにラボ施設を開設し、研究開発室が技術開発に専念しておりますが、その中で、素材関連に関しましては、材料評価試験機を導入し、材料の機械特性を評価する等、環境問題への取り組みとして、各種環境配慮素材の成形研究を実施しております。特殊成形に関しましては、研究用多色多素材成形機を導入し、国内展示会に成形品を展示する等、研究開発活動の幅を広げております。
また当社グループの国内におけるコア事業であるハウスウエア合成樹脂製品分野におきましては、再生材100%を使用した「樹脂と暮らすR100シリーズ」を製品化し、販売を開始しております。その他、主力ブランドであるフィッツケースの新型FC40シリーズを開発し、販売を開始しております。